JP2009257418A - 遊星差動式運動変換機構及びその組み立て方法、並びに同遊星差動式運動変換機構を具備する動力装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】組み立て作業の煩雑化を極力抑制しつつ、プラネタリシャフトに形成されるギアやこれと噛合するギアの耐久性の低下を好適に抑制することのできる遊星差動式運動変換機構を提供する。
【解決手段】遊星差動式運動変換機構100にあっては、荷重Fが作用することに起因してプラネタリシャフト30が傾くときにフロント側プラネタリギア32aの歯面の方向とこれに噛合するフロント側リングギア12a及びフロント側サンギア22aの歯面の方向とが平行に近づくように、フロント側リングギア12a及びフロント側サンギア22aと、フロント側プラネタリギア32aとのうち一方をハス歯ギアするとともに、これと噛合する他方を平歯ギアにしている。一方で、螺子螺合部を挟んで反対側に位置するリア側ギア噛合部にあっては、互いに噛合するリア側プラネタリギア32bと、リア側リングギア12b並びにリア側サンギア22bの双方を平歯ギアにしている。
【選択図】図1
【解決手段】遊星差動式運動変換機構100にあっては、荷重Fが作用することに起因してプラネタリシャフト30が傾くときにフロント側プラネタリギア32aの歯面の方向とこれに噛合するフロント側リングギア12a及びフロント側サンギア22aの歯面の方向とが平行に近づくように、フロント側リングギア12a及びフロント側サンギア22aと、フロント側プラネタリギア32aとのうち一方をハス歯ギアするとともに、これと噛合する他方を平歯ギアにしている。一方で、螺子螺合部を挟んで反対側に位置するリア側ギア噛合部にあっては、互いに噛合するリア側プラネタリギア32bと、リア側リングギア12b並びにリア側サンギア22bの双方を平歯ギアにしている。
【選択図】図1
Description
この発明は、円環状のロータと、このロータに内挿されるサンシャフトと、これらロータ及びサンシャフトの間に介装されるプラネタリシャフトとを備え、これらの各部材に形成されて互いに螺合する螺子の作用を利用してロータの回転運動をサンシャフトの直線運動に変換する遊星差動式運動変換機構及びその組み立て方法、並びに同遊星差動式運動変換機構を具備する動力装置に関する。
モータの回転力を利用して制御軸をその軸方向に変位させる動力装置には、モータの回転運動を制御軸の直線運動に変換する運動変換機構が搭載されている。例えば、こうした運動変換機構として、特許文献1には、モータによって回転駆動される円環状のロータにサンシャフトを内挿し、ロータとサンシャフトとの間に複数のプラネタリシャフトを介装させるとともに、各部材にそれぞれ設けられた螺子同士を互いに螺合させた遊星差動式運動変換機構が記載されている。
この遊星差動式運動変換機構は、いわゆる差動ねじを有しており、プラネタリシャフトに形成された螺子とサンシャフトに形成された螺子とのリード角が異なっている。これにより、ロータの回転運動に伴ってプラネタリシャフトがサンシャフトの外周面上を転動すると、このリード角の違いの分だけサンシャフトが軸方向に変位する。
また、こうした遊星差動式運動変換機構にあっては、プラネタリシャフトの両端部に同プラネタリシャフトに形成された螺子を挟むように一対のプラネタリギアを配設し、サンシャフトの外周面に形成されたサンギア及びロータの内周面に設けられたリングギアにこのプラネタリギアを噛合させるようにしている。こうした構成によれば、これらのギアを介してロータの回転力が確実に伝達されるようになるため、螺子の滑りを抑制してロータの回転運動をサンシャフトの直線運動に変換する効率を向上させることができる。
ところで、上述したようにプラネタリシャフトに形成される螺子のリード角とサンシャフトに形成される螺子のリード角は僅かに異なっている。そのため、サンシャフトに形成された螺子と、プラネタリシャフトに形成された螺子とが螺合している部分にあっては、互いの螺子の螺子山の方向が僅かにずれている。制御軸を軸方向に往復動させる動力装置に搭載される遊星差動式運動変換機構にあっては、制御軸側から入力される荷重や、駆動時の制御軸の駆動抵抗に起因する反力等、サンシャフトに軸方向の荷重が作用する。
図12に矢印で示されるように、サンシャフト120に軸方向の荷重Fが作用しているときには、サンシャフト120に形成された螺子121とプラネタリシャフト130に形成された螺子131とを平行に近づけるようにプラネタリシャフト130を傾けるトルクTが発生する。そして、このトルクTの作用によって図12に示されるようにプラネタリシャフト130が傾くと、プラネタリシャフト130の両端部に形成されたプラネタリギア132a,132bとこれと噛合するサンギア122a,122bとの噛合部分においてこれらの歯面が互いに傾いた状態で接触することになる。また、プラネタリギア132a,132bにはロータの内周面に設けられるリングギアも噛合しているため、このリングギアとプラネタリギア132a,132bとの噛合部分にあっても、同様に互いの歯面が傾いた状態で接触するようになる。その結果、これらの噛合部分における歯面の偏磨耗や欠損等が生じやすくなり、プラネタリギア132a,132bやこれと噛合するサンギア122a,122b及びリングギアの耐久性が低下するおそれがある。
これに対して、特許文献1にはサンギア122a,122b及びリングギアと、プラネタリギア132a,132bとのうち、いずれか一方をプラネタリシャフト130が傾く角度に合わせて傾斜したハス歯ギアにする構成が記載されている。例えば、サンギア122a,122bと図示しないリングギアとをハス歯ギアにする構成を採用した場合には、螺子121と螺子131とのリード角の差によってプラネタリシャフト130が傾いた場合であっても、図13に示されるようにサンギア122a,122bとプラネタリギア132a,132bとの噛合部分において歯面同士が平行な状態で接触しやすくなる。また同様にリングギアとプラネタリギア132a,132bとの噛合部分においても歯面同士が平行な状態で接触しやすくなる。これにより、歯面の偏磨耗や欠損の発生を抑制し、プラネタリギア132a,132bやこれと噛合するサンギア122a,122b及びリングギアの耐久性の低下を抑制することができるようになる。
特開2007‐192388号公報
ところで、上記のように互いに噛合するギアの一方をハス歯ギアにした場合には、遊星差動式運動変換機構を組み立てる際に、ハス歯ギアと平歯ギアとを噛合させるためにこれらのギアが形成された部材を傾けて互いの歯面の向きを揃えながらこれらを組み立てる必要がある。そのため、上記のように螺子螺合部を挟むように軸方向に離間して配設される一対のギア噛合部を有する遊星差動式運動変換機構にあっては、双方のギア噛合部に対して互いの歯面の向きを揃えながらギア同士を噛合させる作業を行わなければならない。その結果、これらを組み立てる作業が困難且つ煩雑なものとなり、その製造コストが増大することとなる。
本願発明はこうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は組み立て作業の煩雑化を極力抑制しつつ、プラネタリシャフトに形成されるギアやこれと噛合するギアの耐久性の低下を好適に抑制することのできる遊星差動式運動変換機構、並びに同遊星差動式運動変換機構を具備する動力装置を提供するとともに、こうした遊星差動式運動変換機構の容易な組み立て方法を提供することにある。
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、円環状のロータと同ロータに内挿されるサンシャフトとの間に複数のプラネタリシャフトを介装し、これら各部材のそれぞれに形成された螺子が互いに螺合する螺子螺合部と、これら各部材の軸方向において前記螺子螺合部を挟むように配設された一対のギア噛合部とにおいてこれら各部材を噛合させ、前記サンシャフトに形成された螺子のリード角と前記プラネタリシャフトに形成された螺子のリード角との差を利用して前記ロータの回転運動を前記サンシャフトの直線運動に変換する遊星差動式運動変換機構において、同遊星差動式運動変換機構は前記サンシャフトにその軸方向の一方に向かう荷重が常に作用する状況下で使用されるものであり、前記ギア噛合部のうち前記荷重の作用方向側に位置するギア噛合部にあっては、前記荷重が作用することに起因して前記プラネタリシャフトが傾斜するときに同プラネタリシャフトに形成されたギアの歯面の方向とこれに噛合するギアの歯面の方向とが平行に近づくように同ギア噛合部において互いに噛合する前記ギアのうち一方のギアをハス歯ギアにするとともに、これと噛合する他方のギアを平歯ギアにする一方、前記螺子螺合部を挟んで反対側に位置するギア噛合部にあっては、互いに噛合する前記ギアの双方を平歯ギアにすることをその要旨とする。
請求項1に記載の発明は、円環状のロータと同ロータに内挿されるサンシャフトとの間に複数のプラネタリシャフトを介装し、これら各部材のそれぞれに形成された螺子が互いに螺合する螺子螺合部と、これら各部材の軸方向において前記螺子螺合部を挟むように配設された一対のギア噛合部とにおいてこれら各部材を噛合させ、前記サンシャフトに形成された螺子のリード角と前記プラネタリシャフトに形成された螺子のリード角との差を利用して前記ロータの回転運動を前記サンシャフトの直線運動に変換する遊星差動式運動変換機構において、同遊星差動式運動変換機構は前記サンシャフトにその軸方向の一方に向かう荷重が常に作用する状況下で使用されるものであり、前記ギア噛合部のうち前記荷重の作用方向側に位置するギア噛合部にあっては、前記荷重が作用することに起因して前記プラネタリシャフトが傾斜するときに同プラネタリシャフトに形成されたギアの歯面の方向とこれに噛合するギアの歯面の方向とが平行に近づくように同ギア噛合部において互いに噛合する前記ギアのうち一方のギアをハス歯ギアにするとともに、これと噛合する他方のギアを平歯ギアにする一方、前記螺子螺合部を挟んで反対側に位置するギア噛合部にあっては、互いに噛合する前記ギアの双方を平歯ギアにすることをその要旨とする。
例えば、図14に矢印で示されるようにサンシャフト120に図14における右側に向かって荷重Fが作用している場合には、プラネタリシャフト130の螺子131におけるサンシャフト120の螺子121と噛合する部分には図14の右側に向かう方向の荷重f1が作用する。一方で、プラネタリシャフト130の螺子131におけるロータ110の螺子111と噛合する部分にはロータ110から受ける抵抗力によって図14の左側に向かう方向の荷重f2が作用する。その結果、プラネタリシャフト130には、図14の中央に矢印で示されるように同プラネタリシャフト130を左周りに回転させるモーメントMが作用するようになる。これにより、荷重Fの作用方向側に位置するギア噛合部におけるプラネタリギア132aとリングギア112aとが噛合する部分A(図14において破線で囲んだ部分)にあっては、矢印で示されるようにプラネタリギア132aをリングギア112aに押し付ける荷重Ftが作用する。また、ロータ110の回転に伴ってプラネタリシャフト130がサンシャフト120の外周面上を転動しているときには同プラネタリシャフト130には、図14に破線矢印で示されるように遠心力Fcが作用する。そのため、部分Aにあっては、この遠心力Fcと上記のモーメントMが作用することに起因する荷重Ftとの合力により、プラネタリギア132aをリングギア112aに押し付ける方向に大きな荷重が作用するようになり、その接触面圧が特に高くなる。
尚、荷重Fの作用方向とは反対側に位置する噛合部分におけるプラネタリギア132bとサンギア122bとが噛合する部分にあってもモーメントMが作用することに起因して図14の左側に矢印で示されるようにプラネタリギア132bをサンギア122bに押し付ける荷重Ftが作用する。そのため、この部分にあっても接触面圧が高くなるが、遠心力Fcの作用により荷重Ftの一部が相殺されるため、この部分における接触面圧は上記部分Aにおける接触面圧よりも低くなる。
このように、軸方向の荷重Fがサンシャフト120に作用することに起因して荷重Fの作用方向側に位置するリングギア112aとプラネタリギア132aとが噛合する部分Aにあっては、その接触面圧が特に高くなる。そのため、荷重Fがサンシャフト120に作用することに起因してサンシャフト120に形成された螺子121とプラネタリシャフト130に形成された螺子131との歯面の方向が平行になるように同プラネタリシャフト130が傾斜してプラネタリギア132a,132bの歯面と、リングギア112a,112b及びサンギア122a,122bの歯面とが傾いた状態で接触するときには、この部分Aにおける歯面の偏磨耗や欠損の発生が特に顕著になる。
この点、上記請求項1に記載の構成では、このようにモーメントMの作用に起因してギア噛合部の接触面圧が特に高くなる荷重Fの作用方向側のギア噛合部のみにおいて、互いに噛合するギア、すなわちロータの内周面及びサンシャフトの外周面にそれぞれ形成されたギア並びにプラネタリシャフトに形成されたギアのうち一方のギアをハス歯ギアにするとともに、他方のギアについてはこれを平歯ギアにする構成を採用するようにしている。そのため、螺子螺合部を挟むように配設される一対のギア噛合部のうち、ハス歯ギアと平歯ギアとが噛合されるのは一方のみとなり、他方のギア噛合部にあっては平歯ギア同士が噛み合わされる。そして、この部分にあっては各部材を傾けて歯面の方向を揃えるといった作業を行わずに互いのギアを容易に噛合させることができるため、一対のギア噛合部の双方において平歯ギアとハス歯ギアとを噛合させる構成を採用した場合と比較して組み立て作業の煩雑化を抑制することができる。また、上記のようにプラネタリシャフトが傾くことに起因してギア歯面の偏磨耗や欠損の発生が特に顕著になる荷重Fの作用方向側のギア噛合部においてハス歯ギアと平歯ギアを噛合させる構成を採用するようにしているため、ギア歯面の接触面積を増大させて同ギア歯面における偏磨耗や欠損の発生による耐久性の低下を好適に抑制することができる。すなわち上記請求項1に記載の構成によれば組み立て作業の煩雑化を極力抑制しつつ、プラネタリシャフトに形成されるギアやこれと噛合するギアの耐久性の低下を好適に抑制することができるようになる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の遊星差動式運動変換機構において、前記荷重の作用方向側に位置するギア噛合部にあっては、前記ロータの内周面に固定されるリングギアと、前記サンシャフトの外周面に形成されるサンギアとをハス歯ギアにする一方、プラネタリシャフトの外周面に形成されて前記リングギア及び前記サンギアと噛合するプラネタリギアを平歯ギアにすることをその要旨とする。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の遊星差動式運動変換機構において、前記荷重の作用方向側に位置するギア噛合部にあっては、前記ロータの内周面に固定されるリングギアと、前記サンシャフトの外周面に形成されるサンギアとを平歯ギアにする一方、プラネタリシャフトの外周面に形成されて前記リングギア及び前記サンギアと噛合するプラネタリギアをハス歯ギアにすることをその要旨とする。
具体的には、上記請求項2に記載の発明のように、荷重の作用方向側に位置するギア噛合部において、ロータの内周面に固定されるリングギアと、サンシャフトの外周面に形成されるサンギアとをハス歯ギアにする一方、プラネタリシャフトの外周面に形成されてリングギア及びサンギアと噛合するプラネタリギアを平歯ギアにすることにより上記請求項1に記載の構成を具体化することができる。
また、上記請求項3に記載の発明のようにロータの内周面に固定されるリングギアと、サンシャフトの外周面に形成されるサンギアとを平歯ギアにする一方、プラネタリシャフトの外周面に形成されてリングギア及びサンギアと噛合するプラネタリギアをハス歯ギアにすることにより上記請求項1に記載の構成を具体化することもできる。
請求項4に記載の発明は、請求項2又は請求項3に記載の遊星差動式運動変換機構において、前記プラネタリシャフトは、前記螺子を挟むように配設される一対の前記プラネタリギアのうち前記荷重の作用方向側に位置する第1プラネタリギアが、他方の第2プラネタリギア及び前記螺子を含むシャフト本体に対して着脱可能に形成されてなることをその要旨とする。
上述のように荷重の作用方向側に位置するギア噛合部にあっては、ハス歯ギアと平歯ギアとが噛合されるようになる。そこで、上記請求項4に記載の発明では、荷重の作用方向側に位置するギア噛合部に配設される第1プラネタリギアをシャフト本体に対して着脱可能に形成するようにしている。これにより、組み立てに際してこれと噛合するリングギア及びサンギアと同第1プラネタリギアとを噛合させるときに、シャフト本体から取り外した状態の同第1プラネタリギアを傾けることによってリングギア及びサンギアの歯面の方向と同第1プラネタリギアの歯面の方向とを容易に揃えることができるようになる。そのため、ハス歯ギアと平歯ギアとを噛合させる場合であっても互いの歯面の方向を揃えながら容易に組み立てを行うことができるようになる。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の遊星差動式運動変換機構の組み立て方法であって、前記第1プラネタリギアを取り外した状態の複数の前記シャフト本体を前記サンシャフトの外周面上に配設し、これに前記シャフト本体の前記第1プラネタリギアが取り外されている方向から前記リングギアが取り付けられる前の前記ロータを被せて前記シャフト本体の螺子に対し同ロータの内周面に形成された螺子を螺合させ、その後に前記ロータの内周面に前記リングギアを固定してから同リングギアと前記サンギアとの双方に噛合させつつ前記第1プラネタリギアを前記シャフト本体に連結することをその要旨とする。
上記請求項5に記載の組み立て方法によれば、シャフト本体から取り外した第1プラネタリギアを1つずつリングギア及びサンギアの双方に噛合させながら組み立てることができる。これにより、製造誤差や組み立て時に生じる僅かなずれに起因してリングギアの歯面とサンギアの歯面との方向やその位相に僅かなずれが生じていた場合であっても、各第1プラネタリギアをそのずれに応じて適宜傾斜、回転させてこれを容易に組み立てることができるようになる。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の遊星差動式運動変換機構を具備し、モータの駆動力によって前記ロータを回転させることにより前記サンシャフトを軸方向に変位させる動力装置である。
具体的には、上記構成のように請求項1〜4に記載の遊星差動式運動変換機構は、ロータを回転させるモータと組み合わされ、モータの回転力を利用してサンシャフトを軸方向に変位させる動力装置に適用される。
請求項7に記載の発明は、制御軸の軸方向の変位に伴って機関バルブの最大リフト量及びリフト期間を変更する内燃機関のバルブ特性変更機構と組み合わされ、前記制御軸を軸方向に変位させる動力装置として適用される請求項6に記載の動力装置である。
機関バルブの最大リフト量及びリフト期間を変更する内燃機関のバルブ特性変更機構の制御軸には、バルブスプリングの反力によって機関バルブの最大リフト量及びリフト期間を小さくする方向に制御軸を変位させる一方向の荷重が常に作用する。そのため、請求項7に記載の発明のように、こうしたバルブ特性変更機構の制御軸を駆動する動力装置として上記請求項6に記載の動力装置を適用することが望ましい。
以下、この発明にかかる遊星差動式運動変換機構を、内燃機関の吸気バルブの最大リフト量及びリフト期間を変更するバルブ特性変更機構を駆動する動力装置に搭載される遊星差動式運動変換機構として具体化した一実施形態について、図1〜9を参照して説明する。
図1は本実施形態にかかる遊星差動式運動変換機構100を具備する動力装置200の断面図である。図1に示されるように本実施形態の動力装置200は、内燃機関のシリンダヘッド300に取り付けられ、吸気バルブの最大リフト量及びリフト期間を変更するバルブ特性変更機構を駆動する。バルブ特性変更機構は、制御軸310を軸方向に変位させることにより同制御軸310の位置に対応して吸気バルブの最大リフト量及びリフト期間を変更するものであり、図1の右方向に制御軸310を変位させるほど吸気バルブの最大リフト量及びリフト期間が小さくなる。
動力装置200にあっては、モータが回転することによってハウジング210から突出したサンシャフト20がその軸方向に変位する。図1の右側に示されるようにサンシャフト20は、その先端部が留め具320によってバルブ特性変更機構の制御軸310と連結されている。これにより、動力装置200を制御してサンシャフト20の軸方向の変位量を制御することにより、バルブ特性変更機構の制御軸310を軸方向に変位させ、吸気バルブの最大リフト量及びリフト期間を変更することができる。
動力装置200は、その内部にモータの回転運動をサンシャフト20の軸方向の直線運動に変換する遊星差動式運動変換機構100を有している。図1に示されるように遊星差動式運動変換機構100は、円筒状のロータ10にサンシャフト20を内挿するとともに、サンシャフト20とロータ10との間に複数のプラネタリシャフト30を介装させることにより構成されている。尚、本実施形態の遊星差動式運動変換機構100にあっては、サンシャフト20を取り囲むように9本のプラネタリシャフト30を等角度間隔で配設している。
以下、この遊星差動式運動変換機構100の構成を詳しく説明する。尚、以下の説明では図1における右側、すなわちサンシャフト20が突出している方向を遊星差動式運動変換機構100のフロント側、図1における左側を遊星差動式運動変換機構100のリア側として説明を行う。
図1に示されるようにロータ10の外側には、外周面上に永久磁石が取り付けられたカバー15が固定されている。カバー15は、図1に示されるようにベアリング220を介して動力装置200のハウジング210に回動可能に固定されている。尚、ハウジング210の内周面におけるカバー15に固定された永久磁石と対向可能な位置には、ステータ230が取り付けられており、このステータ230を励磁することによりカバー15とともにロータ10が回転するようになっている。すなわち、このステータ230とカバー15に固定された永久磁石とによりロータ10を回転させるモータが構成されている。
また、ロータ10の内周面には、その中央部分にフロント側からリア側に向かって左回りに進行する5条の左螺子からなる螺子部11が形成されている。そして、ロータ10の内周面にはこの螺子部11を挟むようにフロント側リングギア12aとリア側リングギア12bとが固定されている。
このロータ10に内挿されたサンシャフト20の外周面には、ロータ10に形成された螺子部11と対向する位置にフロント側からリア側に向かって右回りに進行する4条の右螺子からなる螺子部21が形成されている。また、サンシャフト20の外周面にはこの螺子部21を挟むようにフロント側サンギア22aとリア側サンギア22bとが形成されている。
尚、図1の右側に示されるようにサンシャフト20の外周面にはストレートスプライン23が形成されている。このストレートスプライン23は、ハウジング210の開口部分に形成されているストレートスプライン215に噛み合わされる。これにより、サンシャフト20は、これらストレートスプライン23,215の噛み合いの作用によってハウジング210に対して軸方向の移動は許されるが、回転は規制されている。
ロータ10とサンシャフト20との間に介装された各プラネタリシャフト30の外周面には、図1に示されるようにロータ10の内周面に形成された螺子部11とサンシャフト20の外周面に形成された螺子部21との双方に螺合する螺子部31が形成されている。この螺子部31に形成される螺子はフロント側からリア側に向かって左回りに進行する1条の左螺子である。
また、図1に示されるように各プラネタリシャフト30には、この螺子部31を挟むように、そのフロント側の端部にフロント側プラネタリギア32aが、リア側の端部にリア側プラネタリギア32bがそれぞれ形成されている。そして、フロント側プラネタリギア32aがロータ10に形成されたフロント側リングギア12aとサンシャフト20に形成されたフロント側サンギア22aとの双方に噛合しており、リア側プラネタリギア32bがロータ10に形成されたリア側リングギア12bとサンシャフト20に形成されたリア側サンギア22bとの双方に噛合している。
このように本実施形態の遊星差動式運動変換機構100にあっては、ロータ10、サンシャフト20及びプラネタリシャフト30のそれぞれが各部材に形成された螺子及びギアを介して互いに噛合している。
ここで、ロータ10の螺子部11とプラネタリシャフト30の螺子部31とは、そのピッチ円径の比と螺子条数の比とがどちらも「5:1」に設定されている。そのため、ロータ10の螺子部11に形成されている螺子とプラネタリシャフト30の螺子部31に形成されている螺子とは、そのリード角がともに等しくなっている。これにより、プラネタリシャフト30がロータ10の内周面に沿って転動した場合にはロータ10とプラネタリシャフト30との間では軸方向の相対的な変位は生じない。
一方、プラネタリシャフト30の螺子部31とサンシャフト20の螺子部21とは、ピッチ円径の比と螺子条数の比とが異なっている。具体的にはピッチ円径の比が「1:3」に設定されているのに対して、上述したようにプラネタリシャフト30の螺子部31の螺子条数が1条であり、サンシャフト20の螺子部21の螺子条数は4条であるため、螺子条数の比は「1:4」に設定されている。そのため、サンシャフト20の螺子部21に形成されている螺子とプラネタリシャフト30の螺子部31に形成されている螺子は、そのリード角が異なっている。これにより、プラネタリシャフト30が、サンシャフト20の外周面に沿って転動した場合にはこのリード角の差の分だけサンシャフト20とプラネタリシャフト30とが軸方向にずれて、その相対的な位置が変化するようになる。
上記のように遊星差動式運動変換機構100にあっては、螺子及びギアを介してロータ10、サンシャフト20及びプラネタリシャフト30が互いに噛合されている。そのため、モータの駆動力によってロータ10をサンシャフト20に対して相対回動させることにより、ロータ10の回転力が螺子及びギアを介してプラネタリシャフト30に伝達され、プラネタリシャフト30がサンシャフト20の外周面上で転動するようになる。そして、プラネタリシャフト30がサンシャフト20の外周面上で転動すると、上述したリード角の違いの分だけサンシャフト20が軸方向に変位するようになる。すなわち遊星差動式運動変換機構100を通じてロータ10に入力される回転運動をサンシャフト20の直線運動に変換して出力することができる。
ところで、バルブ特性変更機構の制御軸310には、バルブスプリングの反力によって吸気バルブの最大リフト量及びリフト期間を小さくする方向に同制御軸310を変位させる荷重Fが常に作用する。そのため、遊星差動式運動変換機構100のサンシャフト20には、図1に矢印で示されるように一方向の荷重Fが常に作用することになる。
上述したようにプラネタリシャフト30の螺子部31に形成された螺子のリード角とサンシャフト20の螺子部21に形成された螺子のリード角は僅かに異なっている。そのため、このようにサンシャフト20に一方向の荷重Fが作用しているときには、螺子部21に形成された螺子と螺子部31に形成された螺子とを平行に近づけるようにプラネタリシャフト30を傾けるトルクが発生する。そして、このトルクの作用によってプラネタリシャフト30が傾くと、プラネタリシャフト30の両端部に形成された各プラネタリギア32a,32bとこれに噛合している各リングギア12a,12b並びに各サンギア22a,22bとの噛合部分においてこれらの歯面が互いに傾いた状態で接触することになる。その結果、これらの噛合部分における歯面の偏磨耗や欠損等が生じやすくなり、プラネタリギア32a,32bや、これと噛合するサンギア22a,22b及びリングギア12a,12bの耐久性が低下するおそれがある。
また、サンシャフト20に荷重Fが作用しているときには、プラネタリシャフト30のフロント側をサンシャフト20から離間させるとともに、リア側をサンシャフト20に押し付けるようなモーメントがプラネタリシャフト30に作用する。また、プラネタリシャフト30がサンシャフト20の外周面上を転動しているときには、プラネタリシャフト30に遠心力が作用する。この遠心力と上記のモーメントとの合力により、特にフロント側プラネタリギア32aには、これをフロント側リングギア12aに押し付ける荷重が作用するようになり、遊星差動式運動変換機構100にあっては、この部分におけるギアの歯面同士の接触面圧が他の部分における接触面圧よりも大きくなる。
そのため、荷重Fがサンシャフト20に作用することに起因してサンシャフト20の螺子部21に形成された螺子とプラネタリシャフト30の螺子部31に形成された螺子との歯面の方向が平行になるように同プラネタリシャフト30が傾斜してプラネタリギア32a,32bの歯面と、リングギア12a,12b及びサンギア22a,22bの歯面とが傾いた状態で接触するときには、この部分における歯面の偏磨耗や欠損の発生が特に顕著になる。
そこで、本実施形態の遊星差動式運動変換機構100にあっては、フロント側のギア噛合部におけるフロント側プラネタリギア32aを平歯ギアにする一方で、フロント側リングギア12a及びフロント側サンギア22aをプラネタリシャフト30が傾く角度に合わせて傾斜したハス歯ギアにしている。
以下、図2〜4を参照して本実施形態にかかる遊星差動式運動変換機構100を構成する各部材の構成を詳しく説明する。
図2は、ロータ10の斜視図である。図2に示されるようにロータ10は、円筒状をなし、その内周面には上述したように螺子部11が形成されている。また、ロータ10の内周面には、この螺子部11を挟むようにフロント側リングギア12aとリア側リングギア12bとが固定される。図2の右側に示されるようにフロント側リングギア12aはその歯面がフロント側からリア側に向かって右回りに進行するようにロータ10の中心軸延伸方向に対して僅かに傾斜したハス歯ギアになっている。この傾斜の向き及び角度は、上述したようにプラネタリシャフト30が傾いたときにこれと一緒に傾くフロント側プラネタリギア32aの歯面と、このフロント側リングギア12aの歯面とが平行になるように螺子部21と螺子部31のリード角の差に基づいて設定されている。一方で、図2の左側に示されるようにリア側リングギア12bはその歯面がロータ10の中心軸延伸方向に沿って延びる平歯ギアになっている。
図2は、ロータ10の斜視図である。図2に示されるようにロータ10は、円筒状をなし、その内周面には上述したように螺子部11が形成されている。また、ロータ10の内周面には、この螺子部11を挟むようにフロント側リングギア12aとリア側リングギア12bとが固定される。図2の右側に示されるようにフロント側リングギア12aはその歯面がフロント側からリア側に向かって右回りに進行するようにロータ10の中心軸延伸方向に対して僅かに傾斜したハス歯ギアになっている。この傾斜の向き及び角度は、上述したようにプラネタリシャフト30が傾いたときにこれと一緒に傾くフロント側プラネタリギア32aの歯面と、このフロント側リングギア12aの歯面とが平行になるように螺子部21と螺子部31のリード角の差に基づいて設定されている。一方で、図2の左側に示されるようにリア側リングギア12bはその歯面がロータ10の中心軸延伸方向に沿って延びる平歯ギアになっている。
図3は、サンシャフト20の斜視図である。図3の左側に示されるようにロータ10に内挿されるリア側の部分には、螺子部21を挟んでフロント側サンギア22aとリア側サンギア22bとが形成されている。一方、サンシャフト20のフロント側の部分には、ハウジング210のストレートスプライン215と噛合されるストレートスプライン23が形成されている。また、サンシャフト20のフロント側先端部には図3の右側に示されるように留め具320が嵌合される溝24が形成されている。
フロント側サンギア22aは、上記フロント側リングギア12aと同様にその歯面がフロント側からリア側に向かって右回りに進行するようにサンシャフト20の中心軸延伸方向に対して僅かに傾斜したハス歯ギアになっている。この傾斜の向き及び角度は、フロント側リングギア12aと同様にプラネタリシャフト30が傾いたときにフロント側プラネタリギア32aの歯面と、このフロント側サンギア22aの歯面とが平行になるように螺子部21と螺子部31のリード角の差に基づいて設定されている。一方で、リア側サンギア22bはその歯面がサンシャフト20の中心軸延伸方向に沿って延びる平歯ギアになっている。
図4は、プラネタリシャフト30を分解して示す分解図である。図4に示されるように、プラネタリシャフト30は、螺子部31及びリア側プラネタリギア32bが一体に形成されたシャフト本体35と、同シャフト本体35と別体に形成されたフロント側プラネタリギア32aとによって構成されている。
フロント側プラネタリギア32aには、その中心軸に沿って延びる軸受孔34が形成されている。一方、これに対してシャフト本体35には螺子部31側の先端部にこの軸受孔34に挿入される軸部33が設けられている。これにより、シャフト本体35に形成された軸部33をフロント側プラネタリギア32aの軸受孔34に挿入することによってフロント側プラネタリギア32aとシャフト本体35とを連結することができる。また、フロント側プラネタリギア32a及びリア側プラネタリギア32bはともにその歯面がプラネタリシャフト30の中心軸延伸方向に沿って延びる平歯ギアになっている。
以下、図5〜8を参照してこれらロータ10、サンシャフト20及びプラネタリシャフト30を組み合わせ、遊星差動式運動変換機構100を組み立てる方法を説明する。
まず、図5に示されるようにフロント側プラネタリギア32aを取り外した状態のシャフト本体35をサンシャフト20の周囲に配設し、リア側サンギア22bとリア側プラネタリギア32bとを噛合させるとともに、サンシャフト20の螺子部21に螺子部31を噛合させる。そして、図5に示されるようにこの状態でサンシャフト20及びシャフト本体35にフロント側からロータ10を被せ、これを回転させながらその螺子部11をシャフト本体35の螺子部31に螺合させる。
まず、図5に示されるようにフロント側プラネタリギア32aを取り外した状態のシャフト本体35をサンシャフト20の周囲に配設し、リア側サンギア22bとリア側プラネタリギア32bとを噛合させるとともに、サンシャフト20の螺子部21に螺子部31を噛合させる。そして、図5に示されるようにこの状態でサンシャフト20及びシャフト本体35にフロント側からロータ10を被せ、これを回転させながらその螺子部11をシャフト本体35の螺子部31に螺合させる。
こうしてサンシャフト20、シャフト本体35及びロータ10をそれぞれ噛合させて一体に組み付けた後、図6に示されるようにロータ10の内周面にフロント側リングギア12aとリア側リングギア12bとをそれぞれ固定する。このとき、リア側リングギア12b及びこれと噛合するリア側プラネタリギア32bはともに平歯ギアになっている。そのため、リア側リングギア12bを取り付ける際には、これらを容易に噛合させながら、同リア側リングギア12bをロータ10の内周面に固定することができる。一方、フロント側リングギア12aにあっては、これと噛合するフロント側プラネタリギア32aが取り付けられていないため、同フロント側リングギア12aをロータ10の内周面に取り付けることにより、フロント側サンギア22aとフロント側リングギア12aとが対向するようになる。
こうしてリングギア12a,12bを取り付けた後、図7に示されるようにフロント側プラネタリギア32aを1つずつシャフト本体35に取り付ける。ここでは、フロント側リングギア12aとフロント側サンギア22aがともに歯面の傾斜したハス歯ギアとなっている。そのため、この平歯ギアとなっているフロント側プラネタリギア32aを傾けるとともに、これを僅かに回転させる等して、これらの歯面の方向及び位相を揃えながら同フロント側プラネタリギア32aをフロント側リングギア12a及びフロント側サンギア22aの双方に噛合させつつ、シャフト本体35に組み付ける。
こうしてフロント側プラネタリギア32aを組み付け、ロータ10、サンシャフト20及びプラネタリシャフト30をそれぞれギア及び螺子によって噛合させた状態に組み立てた後、図8に示されるようにロータ10の外側にカバー15を固定することにより、遊星差動式運動変換機構100の組み立てが完了する。
こうして組み立てられた遊星差動式運動変換機構100は、動力装置200のハウジング210に納められ、モータの駆動力によるロータ10の回転運動をサンシャフト20の直線運動に変換する。
上記のように組み立てられた本実施形態の遊星差動式運動変換機構100の作用について図9を参照して説明する。尚、図9はプラネタリシャフト30とサンシャフト20との噛合状態、特にフロント側の噛合状態を示す模式図であり、図9にあっては、サンシャフト20を実線で示すとともに、これと噛合しているプラネタリシャフト30を一点鎖線で示している。
上述したように本実施形態の遊星差動式運動変換機構100にあっては、フロント側サンギア22aとフロント側リングギア12aとをハス歯ギアにするとともに、これと噛合するフロント側プラネタリギア32aを平歯ギアにしている。そのため、図9に示されるように荷重Fの作用によってサンシャフト20の螺子部21に形成された螺子とプラネタリシャフト30の螺子部31に形成された螺子とが平行になるようにプラネタリシャフト30が傾いたときには、フロント側プラネタリギア32aの歯面とフロント側サンギア22aの歯面とが平行になる。尚、図示しないフロント側リングギア12aとフロント側プラネタリギア32aとの噛合部分にあっても同様にこれらの歯面が互いに平行になる。
これによりフロント側のギア噛合部にあっては、プラネタリシャフト30が傾いたときに、互いに噛合するギアの歯面が平行な状態で接触するようになる。
以上説明した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
以上説明した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)フロント側のギア噛合部にあっては、リングギア12a及びサンギア22aをハス歯ギアにするとともに、プラネタリギア32aを平歯ギアにしている一方、リア側のギア噛合部にあっては、リングギア12b、サンギア22b及びプラネタリギア32bを全て平歯ギアにしている。すなわち、ギア噛合部の接触面圧が特に高くなる荷重Fの作用方向側であるフロント側のギア噛合部のみにおいて、互いに噛合するギア、すなわちロータ10の内周面及びサンシャフト20の外周面にそれぞれ形成されたギア並びにプラネタリシャフト30に形成されたギアのうち一方のギアをハス歯ギアにするとともに、他方のギアについてはこれを平歯ギアにする構成を採用するようにしている。そのため、螺子螺合部を挟むように配設されるフロント側とリア側のギア噛合部のうち、ハス歯ギアと平歯ギアとが噛合されるのはフロント側のみとなり、リア側のギア噛合部にあっては平歯ギア同士が噛み合わされる。そして、この部分にあっては各部材を傾けて歯面の方向を揃えるといった作業を行わずに互いのギアを容易に噛合させることができるため、フロント側とリア側のギア噛合部の双方において平歯ギアとハス歯ギアとを噛合させる構成を採用した場合と比較して組み立て作業の煩雑化を抑制することができる。また、上記のようにプラネタリシャフト30が傾くことに起因してギア歯面の偏磨耗や欠損の発生が特に顕著になるフロント側のギア噛合部においてハス歯ギアと平歯ギアを噛合させる構成を採用するようにしているため、ギア歯面の接触面積を増大させて同ギア歯面における偏磨耗や欠損の発生による耐久性の低下を好適に抑制することができる。すなわち組み立て作業の煩雑化を極力抑制しつつ、プラネタリシャフト30に形成されるプラネタリギア32aやこれと噛合するリングギア12a及びサンギア22aの耐久性の低下を好適に抑制することができる。
(2)荷重Fの作用方向側に位置するギア噛合部に配設されるフロント側プラネタリギア32aをシャフト本体35に対して着脱可能に形成するようにしている。そのため、組み立てに際してフロント側リングギア12a及びフロント側サンギア22aと同フロント側プラネタリギア32aとを噛合させるときに、シャフト本体35から取り外した状態の同フロント側プラネタリギア32aを傾けることによって、同フロント側プラネタリギア32aの歯面の方向とフロント側リングギア12a及びフロント側サンギア22aの歯面の方向とを容易に揃えることができる。すなわち、ハス歯ギアと平歯ギアとを噛合させる場合であっても互いの歯面の方向を揃えながら容易に組み立てを行うことができるようになる。
(3)図5〜8を参照して説明した組み立て方法によれば、シャフト本体35から取り外したフロント側プラネタリギア32aを1つずつフロント側リングギア12a及びフロント側サンギア22aの双方に噛合させながら組み立てることができる。これにより、製造誤差や組み立て時に生じる僅かなずれに起因してフロント側リングギア12aの歯面とフロント側サンギア22aの歯面との方向やその位相に僅かなずれが生じていた場合であっても、各フロント側プラネタリギア32aをそのずれに応じて適宜傾斜、回転させてこれを容易に組み立てることができるようになる。
尚、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・上記実施形態ではフロント側のギア噛合部におけるフロント側リングギア12aとフロント側サンギア22aとをハス歯ギアにする一方、これらと噛合するフロント側プラネタリギア32aを平歯ギアにする構成を示した。これに対して、フロント側リングギア12aと、フロント側サンギア22aとを平歯ギアにする一方、図10に示されるようにフロント側プラネタリギア32aをハス歯ギアにする構成を採用することもできる。
・上記実施形態ではフロント側のギア噛合部におけるフロント側リングギア12aとフロント側サンギア22aとをハス歯ギアにする一方、これらと噛合するフロント側プラネタリギア32aを平歯ギアにする構成を示した。これに対して、フロント側リングギア12aと、フロント側サンギア22aとを平歯ギアにする一方、図10に示されるようにフロント側プラネタリギア32aをハス歯ギアにする構成を採用することもできる。
こうした構成を採用した場合にも図11に示されるように荷重Fの作用によってサンシャフト20の螺子部21に形成された螺子とプラネタリシャフト30の螺子部31に形成された螺子とが平行になるようにプラネタリシャフト30が傾いたときには、フロント側プラネタリギア32aの歯面とフロント側サンギア22aの歯面とが平行になる。尚、図示しないフロント側リングギア12aとフロント側プラネタリギア32aとの噛合部分にあっても同様にこれらの歯面が互いに平行になる。そのため、こうした構成を採用した場合であっても、上記実施形態の(1)〜(3)の効果と同様の効果を得ることができる。
・また、上記実施形態では、シャフト本体35に軸部33を設ける一方、フロント側プラネタリギア32aにこの軸部33が挿入される軸受孔34を形成する構成を示したが、これとは逆にシャフト本体35に軸受孔を形成し、フロント側プラネタリギア32aに軸部を設ける構成を採用することもできる。
・上記実施形態では、ロータ10の螺子部11に形成される螺子を左螺子、サンシャフト20の螺子部21に形成される螺子を右螺子、プラネタリシャフト30の螺子部31に形成される螺子を左螺子にした構成を示したが、これらの螺子は互いに噛合する螺子の関係が同じであれば、その向きが反対であってもよい。すなわち、螺子部11に5条の右螺子を形成し、螺子部21に4条の左螺子を形成し、螺子部31に1条の右螺子を形成することもできる。こうした構成を採用した場合であっても、ロータ10を回転させることによりサンシャフト20を軸方向に変位させることができる。
尚、このように螺子の向きを反対にした場合には、荷重Fの作用によって螺子部21に形成された螺子と螺子部31に形成された螺子とが平行になるようにプラネタリシャフト30が傾くときの傾斜方向も上記実施形態とは反対向きになるため、これに合わせてハス歯ギアの傾斜方向も反対にする必要がある。
・また、上記実施形態において示した螺子部11,21,31にそれぞれ形成される螺子の条数は、螺子部21に形成された螺子のリード角と螺子部31に形成された螺子のリード角との差を利用してロータ10の回転運動をサンシャフト20の直線運動に変換することのできる螺子条数の設定態様のほんの一例である。すなわち、本願発明はここで示した螺子条数で形成された各螺子部11,21,31を有する遊星差動式運動変換機構100に限定して適用されるものではない。
・遊星差動式運動変換機構100のロータ10に永久磁石が取り付けられたカバー15を固定し、ロータ10自体をモータのロータとして構成する動力装置200を例示したが、本願発明にかかる遊星差動式運動変換機構100は、こうした構成の動力装置に限定して適用されるものではない。例えば、電動モータの駆動力をギアやベルト、チェーン等を介してロータ10に伝達する動力装置であっても本願発明の遊星差動式運動変換機構100を適用することができる。
・また上記実施形態では、バルブスプリングの反力によってサンシャフト20に図1における右向きの荷重Fが作用することを説明したが、バルブ特性変更機構の構成によってはバルブスプリングの反力によって図1における左向きの荷重が作用する場合もある。尚、この場合には、プラネタリシャフト30に作用するモーメントの方向が上記実施形態におけるモーメントの方向とは反対になるため、リア側のギア噛合部におけるリア側プラネタリギア32bとリア側リングギア12bとの噛合部分における接触面圧が特に大きくなる。そのため、こうした場合にあっては、リア側のギア噛合部において平歯ギアとハス歯ギアとを噛合させる一方、フロント側のギア噛合部にあっては平歯ギア同士を噛合させる構成を採用すればよい。すなわち、いずれにせよ一対のギア噛合部のうち、荷重の作用方向側に位置するギア噛合部において平歯ギアとハス歯ギアとを噛合させる一方、他方のギア噛合部にあっては平歯ギア同士を噛合させる構成を採用すればよい。
・吸気バルブの最大リフト量及びリフト期間を変更するバルブ特性変更機構を駆動するに本願発明にかかる遊星差動式運動変換機構100を具備する動力装置200を適用する構成を例示した。これに対して本願発明の遊星差動式運動変換機構100を具備する動力装置200を排気バルブの最大リフト量及びリフト期間を変更するバルブ特性変更機構のアクチュエータとして適用することもできる。
・尚、本願発明は、上記のようなバルブ特性変更機構の動力装置に搭載される遊星差動式運動変換機構100に限らず、制御軸から一方向の荷重を受ける動力装置に搭載される遊星差動式運動変換機構全般に適用することができる。
10…ロータ、11…螺子部、12a…フロント側リングギア、12b…リア側リングギア、15…カバー、20…サンシャフト、21…螺子部、22a…フロント側サンギア、22b…リア側サンギア、23…ストレートスプライン、24…溝、30…プラネタリシャフト、31…螺子部、32a…フロント側プラネタリギア、32b…リア側プラネタリギア、33…軸部、34…軸受孔、35…シャフト本体、100…遊星差動式運動変換機構、200…動力装置、210…ハウジング、215…ストレートスプライン、220…ベアリング、230…ステータ、300…シリンダヘッド、310…制御軸、320…留め具。
Claims (7)
- 円環状のロータと同ロータに内挿されるサンシャフトとの間に複数のプラネタリシャフトを介装し、これら各部材のそれぞれに形成された螺子が互いに螺合する螺子螺合部と、これら各部材の軸方向において前記螺子螺合部を挟むように配設された一対のギア噛合部とにおいてこれら各部材を噛合させ、前記サンシャフトに形成された螺子のリード角と前記プラネタリシャフトに形成された螺子のリード角との差を利用して前記ロータの回転運動を前記サンシャフトの直線運動に変換する遊星差動式運動変換機構において、
同遊星差動式運動変換機構は前記サンシャフトにその軸方向の一方に向かう荷重が常に作用する状況下で使用されるものであり、前記ギア噛合部のうち前記荷重の作用方向側に位置するギア噛合部にあっては、前記荷重が作用することに起因して前記プラネタリシャフトが傾斜するときに同プラネタリシャフトに形成されたギアの歯面の方向とこれに噛合するギアの歯面の方向とが平行に近づくように同ギア噛合部において互いに噛合する前記ギアのうち一方のギアをハス歯ギアにするとともに、これと噛合する他方のギアを平歯ギアにする一方、前記螺子螺合部を挟んで反対側に位置するギア噛合部にあっては、互いに噛合する前記ギアの双方を平歯ギアにする
ことを特徴とする遊星差動式運動変換機構。 - 前記荷重の作用方向側に位置するギア噛合部にあっては、前記ロータの内周面に固定されるリングギアと、前記サンシャフトの外周面に形成されるサンギアとをハス歯ギアにする一方、
プラネタリシャフトの外周面に形成されて前記リングギア及び前記サンギアと噛合するプラネタリギアを平歯ギアにする
請求項1に記載の遊星差動式運動変換機構。 - 前記荷重の作用方向側に位置するギア噛合部にあっては、前記ロータの内周面に固定されるリングギアと、前記サンシャフトの外周面に形成されるサンギアとを平歯ギアにする一方、
プラネタリシャフトの外周面に形成されて前記リングギア及び前記サンギアと噛合するプラネタリギアをハス歯ギアにする
請求項1に記載の遊星差動式運動変換機構。 - 請求項2又は請求項3に記載の遊星差動式運動変換機構において、
前記プラネタリシャフトは、前記螺子を挟むように配設される一対の前記プラネタリギアのうち前記荷重の作用方向側に位置する第1プラネタリギアが、他方の第2プラネタリギア及び前記螺子を含むシャフト本体に対して着脱可能に形成されてなる
ことを特徴とする遊星差動式運動変換機構。 - 請求項4に記載の遊星差動式運動変換機構の組み立て方法であって、
前記第1プラネタリギアを取り外した状態の複数の前記シャフト本体を前記サンシャフトの外周面上に配設し、これに前記シャフト本体の前記第1プラネタリギアが取り外されている方向から前記リングギアが取り付けられる前の前記ロータを被せて前記シャフト本体の螺子に対し同ロータの内周面に形成された螺子を螺合させ、その後に前記ロータの内周面に前記リングギアを固定してから同リングギアと前記サンギアとの双方に噛合させつつ前記第1プラネタリギアを前記シャフト本体に連結する
ことを特徴とする遊星差動式運動変換機構の組み立て方法。 - 請求項1〜4のいずれか一項に記載の遊星差動式運動変換機構を具備し、モータの駆動力によって前記ロータを回転させることにより前記サンシャフトを軸方向に変位させる動力装置。
- 制御軸の軸方向の変位に伴って機関バルブの最大リフト量及びリフト期間を変更する内燃機関のバルブ特性変更機構と組み合わされ、前記制御軸を軸方向に変位させる動力装置として適用される
請求項6に記載の動力装置。
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CN111487742A (zh) * | 2020-05-29 | 2020-08-04 | 中国科学院长春光学精密机械与物理研究所 | 一种差动重载微调机构 |
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2008
- 2008-04-15 JP JP2008105814A patent/JP2009257418A/ja active Pending
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