JP2009257398A - 車両用駆動装置の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】トルク比を高め且つ容量係数を低く変化させることができ、車両の動力性能を十分に高めることができ、且つ、変速ショックを抑制し変速機の変速性を向上させることができる車両用駆動装置の制御装置を提供する。
【解決手段】駆動系からの慣性力(イナーシャ)を電動モータ10がステータ翼車6sを介して回生するステータ回生制御手段124を備えるため、自動変速機8がアップシフトされる際に発生するイナーシャトルクTINSを、ステータ回生制御手段124による回生によって迅速に吸収することができる。これにより、自動変速機8のアップシフト時の変速ショックを抑制することができ、変速性を向上させることができる。
【選択図】図8

Description

本発明は、流体を介してトルクを増幅可能なトルクコンバータに係り、特に、電動機によってトルクコンバータの容量係数を変更可能な可変容量型トルクコンバータの制御装置に関するものである。
ポンプ翼車と、タービン翼車と、そのタービン翼車とポンプ翼車との間に回転可能に配設されたステータ翼車とを、有するトルクコンバータがよく知られている。このような従来のトルクコンバータでは、ステータ翼車が一方向クラッチを介して非回転部材に連結されており、可変容量特性を備えない。一般に、トルクコンバータの流体特性としては、燃費指向であるときは高い容量(容量係数)であることが望まれるが、上記従来の構造では、ポンプ翼車、タービン翼車、ステータ翼車の形状によって一義的に定められてしまうため、走行パターンに拘わらず同一流体特性となり、燃費性能および動力性能を同時に向上させることには限界があった。
例えば、トルクコンバータの容量係数が高い場合、ポンプ翼車の回転速度すなわち駆動源の回転速度とタービン翼車の回転速度の回転速度差が小さいため、例えば定常状態から運転者がアクセルペダルを踏み込んで加速しようとしたとき、ダウンシフトをしない場合はタービン翼車の回転速度が引き上がらないため、駆動力を迅速に発生させられない。これにより、高容量のトルクコンバータを採用した場合、踏み込み時にトルクを発生しやすいように定常走行時においても駆動源を高回転低負荷の領域で運転させることとなる。一方、トルクコンバータの容量係数が低い場合、ポンプ翼車の回転速度とタービン翼車の回転速度との回転速度差が大きいため、アクセルペダル踏み込み時の応答性は向上する。但し、定常走行時でもポンプ翼車の回転速度とタービン翼車の回転速度との回転速度差が大きくなるため、トルクコンバータの内部損失が大きくなる。
これに対し、特許文献1に示されているように、ステータ翼車と非回転部材との間にブレーキ手段を設け、そのブレーキ手段の制動トルクを調節して容量を可変をした可変容量型トルクコンバータが提案されている。これによれば、ブレーキ手段による制動トルクを調節することによってトルクコンバータのトルク比および容量係数を無段階或いは多段階に変化させることが可能となり、運転条件や走行条件に応じて最適なトルク比および容量係数を設定でき、車両の走行性能を高めることができる。
特開平1−169170号公報
しかしながら、上記従来の可変容量型トルクコンバータでは、そのステータ翼車の回転は、ポンプ翼車の回転方向とは反対の負回転方向の範囲で制御されるに過ぎず、それにより得られるトルク比の上限や容量係数の下限値には限界があり、運転条件や走行状態に応じて必ずしも十分にトルクコンバータのトルク比を高め、容量係数を低く変化させることができず、車両の動力性能を十分に高めることができなかった。
また、車両用駆動装置に備えられている変速機がアップシフトされると、駆動源および変速機の回転速度変化に伴うイナーシャトルクが発生する。このイナーシャトルクを吸収する手段として、従来では、駆動源の遅角制御が実施されてきた。ところが、この駆動源の遅角制御はエンジンの効率を悪化させる制御であり、さらに、排ガスや触媒劣化等の問題があり、十分なトルクダウンを実施することは困難であった。また、イナーシャトルクを吸収する他の手段として、スロットル弁を閉じる制御が提案されているが、この制御は遅れが生じ易く、変速応答性に問題があった。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、トルク比を高め且つ容量係数を低く変化させることができ、車両の動力性能を十分に高めることができ、且つ、変速ショックを抑制し変速機の変速性を向上させることができる車両用駆動装置の制御装置を提供することにある。
上記目的を達成するための、請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a)ポンプ翼車と、タービン翼車と、そのタービン翼車とポンプ翼車との間に回転可能に配設されたステータ翼車とを、有するトルクコンバータと、複数の変速比に変速可能な変速機とを、備え、駆動源から出力される動力を駆動輪へ伝達する車両用駆動装置の制御装置において、(b)前記ステータ翼車に動力伝達可能に連結された電動機と、(c)前記変速機のアップシフト時において、駆動系からの回転慣性力を前記電動機が前記ステータ翼車を介して回生するステータ回生制御手段を備えることを特徴とする。
また、請求項2にかかる発明の要旨とするところは、請求項1の車両用駆動装置の制御装置において、前記変速機の変速中のイナーシャ相を判定するイナーシャ相判定手段を備え、前記ステータ回生制御手段は、前記変速機のイナーシャ相中のイナーシャトルクを回生するものであることを特徴とする。
また、請求項3にかかる発明の要旨とするところは、請求項1または2の車両用駆動装置の制御装置において、前記ステータ翼車と前記電動機との間の動力伝達経路を断続可能な第1断続手段が設けられていることを特徴とする。
また、請求項4にかかる発明の要旨とするところは、請求項1乃至3のいずれか1つの車両用駆動装置の制御装置において、前記ステータ翼車と非回転部材とを断続可能な第2断続手段が設けられていることを特徴とする。
請求項1にかかる発明の車両用駆動装置の制御装置によれば、ポンプ翼車とタービン翼車とそのタービン翼車とポンプ翼車との間に回転可能に配設されたステータ翼車とを有するトルクコンバータと、前記ステータ翼車を駆動可能な電動機を備えることから、電動機を用いてステータ翼車をポンプ翼車の回転方向である正回転方向、およびポンプ翼車の回転方向とは反対の負回転方向へ回転させることにより、従来に比較してトルク比および容量係数の変化範囲が広範囲となるので、車両の燃費性能および動力性能を大幅に向上させることができる。
また、駆動系からの回転慣性力を前記電動機が前記ステータ翼車を介して回生するステータ回生制御手段を備えるため、変速機がアップシフトされる際に発生するイナーシャトルクを、ステータ回生制御手段による回生によって迅速に吸収することができる。これにより、変速機のアップシフト時の変速ショックを抑制することができ、変速性を向上させることができる。また、ステータ翼車を介してイナーシャトルクが回生される、すなわちトルクコンバータの流体流を介してイナーシャトルクが回生されるため、例えば変速機の入力軸から直接回生する場合に比べて、回生制御実施時のショックがさらに小さくなる。
また、請求項2にかかる発明の車両用駆動装置の制御装置によれば、前記変速機の変速中のイナーシャ相を判定するイナーシャ相判定手段を備え、前記ステータ回生制御手段は、前記変速機のイナーシャ相中のイナーシャトルクを回生するものであるため、イナーシャ相中のイナーシャトルクのみを効果的に吸収することができ、変速ショックを効果的に抑制することができる。
また、請求項3にかかる発明の車両用駆動装置の制御装置によれば、前記ステータ翼車と前記電動機との間の動力伝達経路を断続可能な第1断続手段が設けられているため、トルクコンバータの容量係数を制御したいときのみステータ翼車と電動機とを接続状態とすることができる。
また、請求項4にかかる発明の車両用駆動装置の制御装置によれば、前記ステータ翼車と非回転部材とを断続可能な第2断続手段が設けられているため、第2断続手段を適宜接続状態とすることで、従来のトルクコンバータと同様の機能を持たせることができる。例えば、トルクコンバータのトルクコンバータレンジにおいて、第2断続手段を接続状態とすることで、ステータ翼車を回転停止させてトルクを増幅させる。また、カップリングレンジでは、第2断続手段を解放状態とすることで、ステータ翼車を空転させて、ステータ翼車への作動油の不要な衝突を回避させる。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明の一実施例のトルクコンバータ6(可変容量型トルクコンバータ)が適用された車両用駆動装置7の骨子図である。この車両用駆動装置7は縦置き型の自動変速機8を有するものであって、FR(フロントエンジン・リアドライブ)型車両に好適に採用されるものであり、走行用の駆動力源としてエンジン9を備えている。内燃機関にて構成されるエンジン9からの動力を、流体伝動装置として機能するトルクコンバータ6、自動変速機8、図示しない差動歯車装置(終減速機)、一対の車軸などを介して左右の駆動輪13(図8参照)へ伝達されるようになっている。なお、本実施例のエンジン9が本発明の駆動源に対応しており、自動変速機8が本発明の変速機に対応している。
トルクコンバータ6は、エンジン9のクランク軸に連結され、そのエンジン9から回転駆動されることによってトルクコンバータ6内の作動油の流動による流体流を発生させるポンプ翼車6pと、自動変速機8の入力軸22に連結され、そのポンプ翼車6pからの流体流を受けて回転させられるタービン翼車6tと、タービン翼車6tからポンプ翼車6pへの流体流中に回転可能に配置されたステータ翼車6sとを備えており、作動油(流体)を介して動力伝達を行うようになっている。
また、上記ポンプ翼車6pとタービン翼車6tとの間にはロックアップクラッチL/Uが設けられており、後述の油圧制御回路30によってそのロックアップクラッチL/Uの係合状態、スリップ状態、或いは解放状態が制御されるようになっており、完全係合状態とされることによってポンプ翼車6pおよびタービン翼車6tが一体回転させられるすなわちエンジン9のクランク軸および入力軸22が相互に直結状態とされるようになっている。
また、車両用駆動装置7は、トルクコンバータ6のステータ翼車6sに動力伝達可能に連結された電動モータ(電動機)10と、その電動モータ10とステータ翼車6sとの間の動力伝達経路を断続可能なクラッチCsと、ステータ翼車6sと非回転部材であるトランスミッションケース(以下、ケースと表す)11との間を断続可能なブレーキBsとを、備えている。なお、電動モータ10が本発明の電動機に対応しており、クラッチCsが本発明の第1断続手段に対応しており、ブレーキBsが本発明の第2断続手段に対応している。
上記電動モータ10は、その駆動によってステータ翼車6sのポンプ翼車6pの回転方向である正回転方向の回転数を制御するようになっている。この際、ステータ翼車6sには、例えば、図2(a)に示すように後述の電子制御装置78から回転駆動のために電動モータ10に供給される駆動電流IDの大きさに比例する上記正回転方向の駆動トルクTDが与えられる。また、電動モータ10は、その駆動によってステータ翼車6sの負回転方向の回転数を制御するようになっている。この際、ステータ翼車6sには、例えば、電動モータ10に供給される駆動電流IDの大きさに比例する上記負回転方向の駆動トルクTDが与えられる。
また、電動モータ10は、その制動(回生)によってもステータ翼車6sのポンプ翼車6pの回転方向とは反対の負回転方向の回転数を制御するようになっている。この際、ステータ翼車6sには、例えば、図2(b)に示すように例えば車両に設けられた蓄電装置等に供給すなわち蓄電される発電電流IGの大きさに比例する上記負回転方向の負荷トルクすなわち制動(回生)トルクTBが与えられる。
上記クラッチCsおよびブレーキBsは、油圧アクチュエータとその油圧アクチュエータに供給される油圧により摩擦係合或いは解放される多板式のクラッチあるいはブレーキとを備える油圧式摩擦係合装置である。ステータ翼車6sは、ブレーキBsが係合されることによりケース11に固定され回転不能にされる。また、ステータ翼車6sは、ブレーキBsの係合度合いすなわち係合圧が調整されることで発生されるスリップによっても、上記正回転方向に回転するポンプ翼車6pに対して相対的にその正回転方向とは反対の負回転方向に回転させられるようになっている。この際、ステータ翼車6sには、例えば上記係合圧が大きくなるとともに増大する上記負回転方向の負荷トルクすなわち制動トルクTBが与えられる。また、ステータ翼車6sには、クラッチCsが係合されることにより上記電動モータ10による駆動トルクTDあるいは制動トルクTBがそのまま伝達されるようになっており、また、クラッチCsの係合度合いすなわち係合圧が調整されることで発生されるスリップによりその係合圧の大きさに応じて上記駆動トルクTDあるいは制動トルクTBの伝達割合が変化させられるようになっている。
複数の変速比に変速可能な自動変速機8は、車体に取り付けられる非回転部材としてのケース11内において、ダブルピニオン型の第1遊星歯車装置12を主体として構成されている第1変速部14と、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置16及びダブルピニオン型の第3遊星歯車装置18を主体として構成されている第2変速部20とを共通の軸心上に有し、入力軸22の回転を変速して出力軸24から出力する。入力軸22は、走行用の動力源であるエンジン9からの動力により回転駆動されるトルクコンバータ6のタービン軸でもある。なお、このトルクコンバータ6および自動変速機8はその軸心に対して略対称的に構成されており、図1の骨子図においてはそれら軸心の下半分が省略されている。
上記第1遊星歯車装置12は、サンギヤS1、互いに噛み合う複数対のピニオンギヤP1、そのピニオンギヤP1を自転及び公転可能に支持するキャリアCA1、ピニオンギヤP1を介してサンギヤS1と噛み合うリングギヤR1を備えている。また、第2遊星歯車装置16は、サンギヤS2、ピニオンギヤP2、そのピニオンギヤP2を自転及び公転可能に支持するキャリアCA2、ピニオンギヤP2を介してサンギヤS2と噛み合うリングギヤR2を備えている。また、第3遊星歯車装置18は、サンギヤS3、互いに噛み合う複数対のピニオンギヤP2及びP3、そのピニオンギヤP2及びP3を自転及び公転可能に支持するキャリアCA3、ピニオンギヤP2及びP3を介してサンギヤS3と噛み合うリングギヤR3を備えている。
図1において、クラッチC1〜C4およびブレーキB1、B2は、クラッチCsおよびブレーキBsと同様に油圧アクチュエータとその油圧アクチュエータに供給される油圧により係合或いは解放される多板式のクラッチあるいはブレーキとを備える油圧式摩擦係合装置であって、第1回転要素RM1(サンギヤS2)は、第1ブレーキB1を介してケース11に選択的に連結されて回転停止され、第3クラッチC3を介して中間出力部材である第1遊星歯車装置12のリングギヤR1(すなわち第2中間出力経路PA2)に選択的に連結され、さらに第4クラッチC4を介して第1遊星歯車装置12のキャリアCA1(すなわち第1中間出力経路PA1の間接経路PA1b)に選択的に連結されるようになっている。
また、第2回転要素RM2(キャリアCA2およびCA3)は、第2ブレーキB2を介してケース11に選択的に連結されて回転停止され、第2クラッチC2を介して入力軸22(すなわち第1中間出力経路PA1の直結経路PA1a)に選択的に連結されるようになっている。また、第3回転要素RM3(リングギヤR2およびR3)は、出力軸24に一体的に連結されて回転を出力するようになっている。また、第4回転要素RM4(サンギヤS3)は、第1クラッチC1を介してリングギヤR1に連結されるようになっている。なお、第2回転要素RM2とケース11との間には、第2回転要素RM2の正回転(入力軸22と同じ回転方向)を許容しつつ逆回転を阻止する一方向クラッチF1が第2ブレーキB2と並列に設けられている。
図3は、自動変速機8において各変速段を成立させる際の各係合要素の作動状態を説明する図表であり、「○」は係合状態を、「(○)」はエンジンブレーキ時のみ係合状態を、空欄は解放状態をそれぞれ表している。図3に示すように、本実施例の自動変速機8は、上記各係合装置すなわち複数の油圧式摩擦係合装置(クラッチC1〜C4、ブレーキB1、B2)が選択的に係合させられることにより変速比(=自動変速機8の入力軸回転速度NIN/自動変速機8の出力軸回転速度NOUT)が異なる前進8段を含む複数の変速段が成立するようになっている。なお、各変速段の変速比は、第1遊星歯車装置12、第2遊星歯車装置16、および第3遊星歯車装置18の各ギヤ比ρ1、ρ2、ρ3によって適宜定められる。
図4は、図1のエンジン9や自動変速機8、あるいはトルクコンバータ6などを制御するために車両に設けられた制御系統を説明するブロック線図である。電子制御装置78には、エンジン回転速度センサ80からのエンジン回転速度NEを示す信号、タービン回転速度センサ82からのタービン回転速度NTすなわち入力軸回転速度NINを示す信号、ステータ回転速度センサ83からのステータ回転速度Nを示す信号、吸入空気量センサ84からの吸入空気量QAを示す信号、吸入空気温度センサ86からの吸入空気温度TAを示す信号、車速センサ88からの車速Vすなわち出力軸回転速度NOUTを示す信号、スロットルセンサ90からのスロットル弁開度θTHを示す信号、冷却水温センサ92からの冷却水温TWを示す信号、油温センサ94からの油圧制御回路30の作動油温度TOILを示す信号、アクセル操作量センサ96からのアクセルペダル98等のアクセル操作部材の操作量であるアクセル開度ACCを示す信号、フットブレーキスイッチ100からの常用ブレーキであるフットブレーキ102の操作の有無を示す信号、レバーポジションセンサ104からのシフトレバー106のレバーポジション(操作位置)PSHを示す信号などが供給されるようになっている。
電子制御装置78は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUは、RAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って上記各入力信号を処理し、電子スロットル弁108や燃料噴射装置110、点火装置112、油圧制御回路30のリニアソレノイド弁等、あるいは電動モータ10などに信号すなわち出力信号をそれぞれ出力するようになっている。電子制御装置78は、このような入出力信号処理を行うことにより、エンジン9の出力制御やトルクコンバータ6のステータ6sの回転制御などを実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用や変速制御用などに分けて構成される。
本実施例においては、上記エンジン9の出力制御は、エンジン出力制御装置の一部を構成する電子スロットル弁108、燃料噴射装置110、および点火装置112などによって行われる。
自動変速機8の変速制御は、油圧制御回路30によって行われ、例えば予め記憶された変速線図(変速マップ)からアクセル開度Accおよび車速Vに基づいて自動変速機8の変速すべきギヤ段を決定し、その決定されたギヤ段を成立させるように前記図3に示す作動表に従ってクラッチC1〜C4およびブレーキB1、B2の係合解放状態を切り換える。
トルクコンバータ6のステータ翼車6sの回転制御は、油圧制御回路30のクラッチCsやブレーキBs、および電動モータ10によって行われる。具体的には、上記ステータ翼車6sの回転制御は、電子制御装置78の指令に従ってインバータから電動モータ10に供給される駆動電流IDの大きさに比例する駆動トルクTD、あるいは例えばその電動モータ10から出力される発電電流IGの大きさに比例する制動トルクTBが適宜調整されることにより実行される。
ここで、本実施例のトルクコンバータ6において、遠心力により外周側に張り付く作動油は、トルクコンバータ6の断面において図1の流線FLに沿うようにポンプ翼車6p、タービン翼車6t、ステータ翼車6sの順に循環する。図5に示すように、ポンプ翼車6p、タービン翼車6t、ステータ翼車6sは、周方向において一定間隔に隔てられた複数の羽根を備えている。図5は、各翼車におけるトルクコンバータ6内の作動油の流線FLに沿った羽根の形状をそれぞれ表している。ポンプ翼車6pの羽根によってエネルギーが与えられることにより流動させられた作動油は、タービン翼車6tの羽根に作用してタービン翼車6tを回転させる。タービン翼車6tを通過した作動油は、コンバータ領域では、ステータ翼車6sの羽根に当たって方向変換させられた後、ポンプ翼車6pへ循環させられる。上記ステータ翼車6sの羽根に作動油が当たって方向変換させられることにより、そのステータ翼車6sに反力トルクが発生させられる。この反力トルクは、上記作動油の方向変換量(角度)に対応しており、後述のトルク比tの大きさに対応している。
角運動量の定義によれば各翼車(ポンプ翼車6p、タービン翼車6t、およびステータ翼車6s)が作動油(流体)に与えるトルクT[N・m]は、次式(1)のように表される。
T=(γ/g)×Q×△(r×v) ・・・式(1)
式(1)において、γはトルクコンバータ6内の作動油の比重量[kg/m3]、gは重力加速度[m/s2]、Qは上記作動油の体積流量[m3/s]、△(r×v)は各翼車における流体流の出口と入口とにおける作動油の各絶対速度のモーメントr×v[m2/s]の差である。
上記式(1)から、ポンプ翼車6pが作動油に与えるトルクT[N・m]、タービン翼車6tが作動油に与えるトルクT[N・m]、およびステータ翼車6sが作動油に与えるトルクT[N・m]は、次式(2)乃至(4)のように表される。式(2)乃至(4)において、Tはポンプトルク[N・m]すなわちエンジントルク、Tはタービントルク[N・m]すなわち出力トルク、Tはステータ翼車6sの反力トルクの大きさと一致するステータトルク[N・m]すなわちステータ翼車6sにより作動油の流れの向きが変えられる際にそのステータ翼車6sに対してポンプ翼車6pの回転方向である正回転方向に作用するトルクである。
= T =(γ/g)×Q×(VUP×r−VUS×r)・・・式(2)
=−T=(γ/g)×Q×(VUT×r−VUP×r)・・・式(3)
= T =(γ/g)×Q×(VUS×r−VUT×r)・・・式(4)
式(2)乃至(4)において、rはポンプ翼車6pの流体流の出口bpおよびタービン翼車6tの流体流の入口atにおける回転軸心すなわち自動変速機8の入力軸(タービン軸)22からの距離[m]、rはタービン翼車6tの流体流の出口btおよびステータ翼車6sの流体流の入口asにおける回転軸心からの距離[m]、rはステータ翼車6sの流体流の出口bsおよびポンプ翼車6pの流体流の入口apにおける回転軸心からの距離[m]である。また、式(2)乃至(4)中において、VUPはポンプ翼車6pの絶対速度の円周分速度[m/s]、VUTはタービン翼車6tの絶対速度の円周分速度[m/s]、VUSはステータ翼車6sの絶対速度の円周分速度[m/s]である。
式(2)乃至(4)からT+T+T=0(零)が成立するため、ポンプトルクT、タービントルクT、およびステータトルクTは次式(5)のように表される。つまり、トルクコンバータ6におけるポンプトルクTに対するタービントルクTのトルク増加分は、ステータトルクTに一致する。
=T+T ・・・式(5)
ここで、本実施例のトルクコンバータ6は、ステータ翼車6sの反力が前述の電動モータ10の回転制御により調整される駆動トルクTDあるいは制動トルクTBにより増減されることから、タービン翼車から出力される出力トルクが従来の一定容量のトルクコンバータで得られる出力トルクに対して増減させられるようになっている。
図6および図7は、上述の内容を示す本実施例のトルクコンバータ6の特性を示す図である。図6は、タービン翼車6tのタービン回転数N[rpm]とポンプ翼車6pのポンプ回転数N[rpm]との回転速度比すなわち速度比e(=N/N)に対する、タービントルクTとポンプトルクTとのトルク比(トルク増幅率)t(=T/T)を示す図であり、図7は、上記速度比e(=N/N)に対する、容量係数C(=T/N )[N・m/rpm2]を示す図である。
図6および図7において、制動トルクTBが所定の値に調整されるかあるいはブレーキBsが係合されることにより、ステータ翼車6sがケース11に固定され、図6の実線に示すベースラインBtで示すように従来の一定容量のトルクコンバータと同様に設計上定まる所定のトルク比tでトルクの伝達が行われる。なお、このときのトルクコンバータ6の容量係数Cは、図7の実線で示すベースラインBCで示すようになる。
また、クラッチCsが適宜係合された状態で電動モータ10により駆動トルクTDが所定の値に調整されてステータ翼車6sがポンプ翼車6pと同一回転方向で回転させられると、ステータトルクTが増加し、図6のステータ正転を示す長鎖線のように従来の一定容量のトルクコンバータで得られるよりも大きいトルク比tでトルクの伝達が行われる。このときのトルクコンバータ6の容量係数Cは、図7のステータ正転を示す長鎖線のようになる。なお、トルク比tおよび容量係数Cは、同じ速度比eであっても、電動モータ10により駆動トルクTDがさらに増減されることにより図6および図7の矢印a、dに示すように図6のベースラインBtからステータ正転を示す長鎖線以上または図7のベースラインBCからステータ正転を示す長鎖線以下の範囲で適宜設定される。
また、クラッチCsおよびブレーキBsが解放されることによりステータトルクTが零とされると、図6のステータフリーを示す1点鎖線で示すようにトルクの増大が行われず、トルク比t=1でトルクの伝達が行われる。その結果、トルクコンバータ6が流体継手として作動するようになる。このときのトルクコンバータ6の容量係数Cは、図7のステータフリーを示す1転鎖線のようになる。
また、制動(回生)トルクTBが所定の値に調整されるかあるいはブレーキBsの係合圧が所定の値に調整されてブレーキBsがスリップさせられると、ステータトルクTがステータ翼車6sが固定される場合に比較して減少し、図6のステータモータ回生で示す短鎖線で示すように従来の一定容量のトルクコンバータで得られるよりも小さいトルク比tでトルクの伝達が行われる。このときのトルクコンバータ6の容量係数Cは、図6のステータモータ回生で示す短鎖線のようになる。なお、トルク比tおよび容量係数Cは、同じ速度比eであっても、制動(回生)トルクTあるいはブレーキBsの係合圧がさらに増減されることにより図6および図7の矢印b、cに示すようにベースラインBt又はBCからステータフリーで示す1点鎖線までの範囲で適宜設定される。
つまり、本実施例における電動モータ10は、ステータ翼車6sをポンプ翼車6pの回転方向である正回転方向に回転制御することによりトルク比tを増加させるものである。さらに、本実施例における電動モータ10は、その駆動および制動(回生)によってステータ翼車6sをポンプ翼車6pの回転方向とは反対の負回転方向に回転制御することによりトルク比tを減少させるものである。さらに、本実施例におけるブレーキBsは、そのスリップによってステータ翼車6sをポンプ翼車6pの回転方向とは反対の負回転方向に回転制御することによりトルク比tを減少させるものである。
図8は、電子制御装置78による制御作動の要部を説明する機能ブロック線図である。変速制御手段120は、自動変速機8の変速を行う制御手段として機能するものである。変速制御手段120は、例えば、予め記憶された変速線図から車速Vとエンジン9の出力を操作するアクセル開度Accに基づいて、自動変速機8のギヤ比を段階的に切り換える。
容量係数制御手段122は、ステータ翼車6sの回転速度を制御する、或いは、ブレーキBsの係合圧を制御することで、トルクコンバータ6の容量係数Cを好適に制御する。
具体的には、容量係数制御手段122は、例えば車両の発進時あるいは加速走行時に、クラッチCsを係合させるとともに電動モータ10によりステータ翼車6sをポンプ翼車6pと同回転方向へ回転させる制御を行う。これにより、前述のようにトルクコンバータ6のトルク比tが増大制御され容量係数Cが低減制御される。このトルク比tの増大により発進トルクあるいは加速トルクが増大し、容量係数Cの低減によりエンジン回転のスムーズな上昇が可能となる。このような制御は、高アクセル開度等の加速(動力性能)指向走行時において有効であり、特に、エンジン回転のよりスムーズな上昇が求められるターボチャージャーエンジン等にて実行されると有効である。
また、容量係数制御手段122は、例えば車両の発進時あるいは加速走行時に、クラッチCsを係合させるとともに、電動モータ10をステータ翼車6sに作用するトルクにより回転させられるようにする制御を行う。これにより、車両の発進時あるいは加速走行時にトルクコンバータ6がトルク増幅を行っている場合において、前述のようにステータ翼車6sが流体流から受けるトルクすなわち反力トルクによりポンプ翼車6pの回転方向とは反対方向の負回転方向に回転されるに伴う電動モータ10の回生量を制御する。これにより、トルクコンバータ6のトルク比tが低減制御され、容量係数Cが増大制御される。このような制御は、低アクセル開度等の低燃費指向走行時において有効である。さらに、電動モータ10の回生による燃費向上が可能となる。
また、容量係数制御手段122は、容量係数Cを制御することでエンジン9の作動領域を燃料消費特性の優れた領域に変更することができる。具体的には、容量係数Cを変更することで、エンジン9にかかる負荷を変更することができるため、同じ要求駆動力に対して、エンジン9の作動領域を燃料消費特性の優れた領域(例えば低回転高トルク領域)で作動されるように制御することができる。
また、容量係数制御手段122は、ブレーキBsの係合圧を制御することで容量係数Cを制御する。例えば、容量係数制御手段122は、トルクコンバータレンジにおいて、ブレーキBsの係合圧をブレーキBsが完全係合される大きさまで増圧することで、ステータ翼車6sを回転停止させる。これより、トルクコンバータ6の容量係数Cが図7に示すベースラインBCとなるように制御される。また、トルクコンバータ6がカップリングレンジとなるとブレーキBsを解放させることで、ステータ翼車6sを空転させる。また、容量係数制御手段122は、例えば走行中の駆動トルクを低減させる必要が生じた場合などにおいて、ブレーキBsの係合圧を制御してブレーキBsをスリップ係合させることにより、容量係数Cを増大制御する。
ところで、自動変速機8がアップシフトされると、図9に示すように、エンジン9および自動変速機8の入力軸として機能するタービン回転速度Nの回転速度が変化するイナーシャ相において、車両用駆動装置7(駆動系)からのイナーシャトルクTINS(慣性トルク)が発生する。このイナーシャトルクTINSを吸収する手段として、エンジン9の遅角制御やスロットル弁を閉じる制御などによるトルクダウンが実施されていた。しかし、エンジン9の遅角制御はエンジン9の効率を悪化させる制御であり、しかも、排ガスや触媒劣化等の問題があり、十分なトルクダウンを実施することは困難であった。また、スロットル弁を閉じる閉じ制御に関しても、制御に遅れが出やすい制御であるため、応答性に問題があり、図9のように、イナーシャ相時間を長く調整するなどの必要があった。そこで、本実施例では、自動変速機8のアップシフト時において発生するイナーシャトルクTINSを、電動モータ10がステータ翼車6sを介して回生するステータ回生制御手段124を備えることで、変速ショックの抑制および変速性の向上を可能としている。以下、上記ステータ回生制御手段124を中心に説明する。
アップシフト判定手段126は、自動変速機8がアップシフトされるか否かを判定する。具体的には、アップシフト判定手段126は、例えば、予め設定された車速Vおよびアクセル開度Accをパラメータとする自動変速機8の図示しない変速線図において、車両の状態が変速線図上のアップシフトを指示するアップシフト線を通過した否かに基づいて、自動変速機8がアップシフトされるか否かを判定する。或いは、アップシフト判定手段126は、シフトレバー106のレバーポジションPSHが、運転者の操作によって変速段を選択可能なマニュアルポジションに操作されると共に、さらに運転者によってアップシフト操作されたか否かに基づいて、自動変速機8がアップシフトされるか否かを判定する。
回生制御可否判定手段128は、例えばステータ翼車6sと電動モータ10とを動力伝達可能を連結するクラッチCsが故障していないか否か、電動モータ10が故障していないか否か、さらに、電動モータ10によって回生された電力の供給先である蓄電装置50の充電容量SOCが、充電可能な上限値を超えていないか否かなどに基づいて、電動モータ10による回生が実施可能か否かを判定する。
イナーシャ相判定手段130は、自動変速機8がアップシフトされる際、その自動変速機8の変速中におけるイナーシャ相の開始時期および終了時期を判定する。具体的には、エンジン9のエンジン回転速度NEを検出し、その回転速度NEの回転速度変化に基づいて、イナーシャ相の開始時期および終了時期を判定する。例えば、自動変速機8のアップシフトである場合、イナーシャ相が開始されると、エンジン回転速度NEが低下し始める。また、イナーシャ相が終了すると、エンジン回転速度NEの低下が終了する。これらに基づいて、イナーシャ相判定手段130は、イナーシャ相の開始時期および終了時期を判定する。なお、イナーシャ相の判定は、エンジン回転速度NEに代えて、タービン回転速度Nや出力軸回転速度NOUTなどに基づいて判定しても構わない。
或いは、イナーシャ相判定手段130は、イナーシャ相の開始時期および終了時期を、例えば自動変速機8の変速進行度に基づいて判定する。具体的には、先ず、現在の自動変速機8の変速比(=入力軸回転速度NIN/出力軸回転速度NOUT)を算出する。そして、その算出された現在の変速比および機械的に決定される変速前後の変速比に基づいて、変速進行度を算出する。そして、算出された変速進行度の度合いに応じてイナーシャ相の開始時期および終了時期を判定する。
そして、ステータ回生制御手段124は、自動変速機8のアップシフト時において発生するイナーシャトルクTINSをステータ翼車6sを介して電動モータ10によって回生する。すなわち、自動変速機8のイナーシャ相中のイナーシャトルクTINSを電動モータ10の回生制御によって吸収する。
ステータ回生制御手段124は、アップシフト判定手段126によって自動変速機8のアップシフトが実施されると判定され、回生制御可否判定手段128によって回生制御実施可能と判定され、さらに、イナーシャ判定手段130によってイナーシャ相が開始されたと判定されると実施される。ステータ回生制御手段124は、イナーシャ相の開始が判定されるに伴い、クラッチCsを係合させてステータ翼車6sと電動モータ10とを動力伝達可能に連結する。そして、ステータ回生制御手段124は、吸収されるべきイナーシャトルクTINSを算出する。なお、イナーシャトルクTINSは、図9において、斜線部に対応しており、予め設定された算術式に基づいてイナーシャトルクTINSが逐次算出される。具体的には、前回検出されたエンジン回転速度NE1および現在検出されたエンジン回転速度NE2に基づいて、エンジン回転速度NEの単位時間当りの回転変化率ΔNを逐次算出し、その回転変化率ΔNに基づいて、角加速度αを算出する。そして、予め算出されて記憶されている車両用駆動装置7(駆動系)の回転体全体としての慣性モーメントIに前記角加速度αを乗算することで、イナーシャトルクTINS(=I・α)が逐次算出される。
そして、ステータ回生制御手段124は、算出されたイナーシャトルクTINSを吸収するように、容量係数制御手段122に対してステータ翼車6sを介して電動モータ10によって回生する回生制御を実施させる命令を出力する。ここで、回生制御による回生量は、算出されたイナーシャトルクTINSの大きさに基づいて適宜制御される。例えば、算出されたイナーシャトルクTINSに対応する好適な回生量が予め実験的に設定されており、その回生量が得られるように、電動モータ10が適宜制御される。そして、イナーシャ判定手段130によって自動変速機8のイナーシャ相の終了が判定されると、ステータ回生制御手段124は、容量係数制御手段122に対して、回生制御を終了する命令を出力することで、クラッチCsが解放される。
図10は、電子制御装置78の制御作動の要部すなわち自動変速機8のアップシフトの際に変速ショックを抑制すると共に、変速性を向上させるための制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実施されるものである。
先ず、アップシフト判定手段126に対応するステップSA1(以下、ステップを省略する)において、自動変速機8がアップシフトされるか否かが判定される。SA1が否定されると、本ルーチンは終了させられる。一方、SA1が肯定されると、容量係数制御手段122に対応するSA2において、ポンプ翼車6pおよびタービン翼車6tの回転速度およびトルク等が検出されることで、現在の走行状態が把握される。そして、回生制御可否判定手段128に対応するSA3において、電動モータ10による回生制御が実施可能か否かが判定される。SA3が否定されると、変速制御手段120に対応するSA10において、通常の自動変速機8の変速制御が実施される。SA3が肯定されると、変速制御手段120に対応するSA4において、自動変速機8の変速進行度が算出される。なお、変速進行度は、例えば、変速前後の変速比と、現在の自動変速機8の変速比(=入力軸回転速度NIN/出力軸回転速度NOUT)とに基づいて算出される。
次いで、SA5に対応するイナーシャ判定手段130において、自動変速機8のイナーシャ相が開始されたか否かが、例えばSA4において算出された変速進行度、或いは、エンジン回転速度NEの回転速度変化などに基づいて判定される。SA5が否定されると、SA4に戻り、イナーシャ相が開始されるまで繰り返しSA5のイナーシャ相開始判定が実施される。そして、SA5が肯定される、すなわち自動変速機8のイナーシャ相が開始されるものと判定されると、ステータ回生制御手段124に対応するSA6において、イナーシャトルクTINSが算出される。そして、ステータ回生制御手段124および容量係数制御手段122に対応するSA7において、SA6において算出されたイナーシャトルクTINSを吸収するようにステータ翼車6sを介して電動モータ10による回生制御が実施される。次いで、イナーシャ相判定手段130に対応するSA8において、自動変速機8のイナーシャ相が終了したか否かが判定される。SA8が否定されると、再びSA4に戻り、同様の制御が繰り返し実施される。そして、SA8が肯定される、すなわち自動変速機8のイナーシャ相が終了されると、ステータ回生制御手段124および容量係数制御手段122に対応するSA9において、電動モータ10による回生制御が終了される。
図11は、自動変速機8のアップシフト時において、電動モータ10による回生制御を実施したときの制御作動を説明するタイムチャートである。t1時点において、自動変速機8のアップシフト変速指令が出力され、t2時点において、自動変速機8の変速が開始される。これに伴い、自動変速機8内の摩擦係合要素の掴み換えが開始されて、出力軸トルクTOUTが低下され始める。なお、このt2時点乃至t3時点が出力軸トルクTOUTが変化するトルク相となる。そして、t3時点においてエンジン回転速度NEが変化するイナーシャ相が開始されるに伴い、ステータ回生制御手段124による回生制御が開始される。なお、回生制御による回生量は、ステータ回生制御手段124によって算出されたイナーシャトルクTINSに応じて適宜制御される。ここで、前記回生制御によってイナーシャトルクTINSが吸収されるので、自動変速機8のアップシフト時の変速ショックが抑制される。また、変速ショックが抑制されるに伴い、イナーシャ相時間を短く設定することも可能となる。そして、t4時点においてイナーシャ相が終了されると、ステータ回生制御手段124による回生制御が終了される。
上述のように、本実施例によれば、ポンプ翼車6pとタービン翼車6tとそのタービン翼車6tとポンプ翼車6pとの間に回転可能に配設されたステータ翼車6sとを有するトルクコンバータ6と、ステータ翼車6sを駆動可能な電動モータ10を備えることから、電動モータ10を用いてステータ翼車6sをポンプ翼車6pの回転方向である正回転方向、およびポンプ翼車6pの回転方向とは反対の負回転方向へ回転させることにより、従来に比較してトルク比tおよび容量係数Cの変化範囲が広範囲となるので、車両の燃費性能および動力性能を大幅に向上させることができる。
また、本実施例によれば、駆動系からの回転慣性力(イナーシャ)を電動モータ10がステータ翼車6sを介して回生するステータ回生制御手段124を備えるため、自動変速機8がアップシフトされる際に発生するイナーシャトルクTINSを、ステータ回生制御手段124による回生によって迅速に吸収することができる。これにより、自動変速機8のアップシフト時の変速ショックを抑制することができ、変速性を向上させることができる。また、ステータ翼車6sを介してイナーシャトルクTINSが回生される、すなわちトルクコンバータ6の流体流を介してイナーシャトルクTINSが回生されるため、例えば自動変速機8の入力軸22から直接回生する場合に比べて、回生制御実施時のショックが小さくなる。
また、本実施例によれば、自動変速機8の変速中のイナーシャ相を判定するイナーシャ相判定手段130を備え、ステータ回生制御手段124は、自動変速機8のイナーシャ相中のイナーシャトルクTINSを回生するものであるため、イナーシャ相中のイナーシャトルクTINSのみを効果的に吸収することができ、変速ショックを効果的に抑制することができる。
また、本実施例によれば、ステータ翼車6sと電動モータ10との間の動力伝達経路を断続可能なクラッチCsが設けられているため、トルクコンバータ6の容量係数Cを制御したいときのみステータ翼車6sと電動モータ10とを接続状態とすることができる。
また、本実施例によれば、ステータ翼車6sとケース11とを断続可能なブレーキBsが設けられているため、ブレーキBsを適宜接続状態とすることで、従来のトルクコンバータ6と同様の機能を持たせることができる。例えば、トルクコンバータ6のトルクコンバータレンジにおいて、ブレーキBsを接続状態とすることで、ステータ翼車6sを回転停止させてトルクを増幅させる。また、カップリングレンジでは、ブレーキBsを解放状態とすることで、ステータ翼車6sを空転させて、ステータ翼車6sへの作動油の不要な衝突を回避させる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例では、イナーシャ相の判定は、変速進行度またはエンジン回転速度NEに基づいて実施されているが、これら以外にもタービン回転速度N、出力軸回転速度NOUTなどに基づいてイナーシャ相を判定しても構わない。
また、前述の実施例では、算出されたイナーシャトルクTINSを吸収するように電動モータ10による回生制御が実施されるが、回生量はイナーシャトルクTINSの一部を吸収する設定であっても構わない。
また、前述の実施例では、車両用駆動装置7の後段部には、有段式の自動変速機8が設けられているが、この自動変速機8は、有段式の変速機に限定されず、例えばベルト式無段変速機などの無段変速機であっても構わない。すなわち、変速機の構造は本発明において、矛盾のない範囲で自由に変更することができる。
また、前述の実施例では、電動モータ10とステータ翼車6sとを選択的に連結するクラッチCsおよびケース11とステータ翼車6sとを選択的に連結するブレーキBsが設けられているが、例えばさらに、電動モータ10と入力軸22とを選択的に連結するクラッチを設けた構成などであっても構わない。すなわち、電動モータ10と入力軸22とが連結されることで、電動モータ10をハイブリッド用の電動機として兼用することもできる。
また、前述の実施例では、電動モータ10とステータ翼車6sとがクラッチCsを介して直接的に連結されているが、例えば、遊星歯車装置をこれらの間に介装させるなどして、遊星歯車装置によるトルク変換を可能とする構成であっても構わない。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
本発明の一実施例のトルクコンバータ(可変容量型トルクコンバータ)が適用された車両用駆動装置の骨子図である。 電動モータと駆動電流および発電電流との関係を示す図である。 自動変速機において各変速段を成立させる際の各係合要素の作動状態を説明する図表である。 図1のエンジンや自動変速機、あるいはトルクコンバータなどを制御するために車両に設けられた制御系統を説明するブロック線図である。 各翼車におけるトルクコンバータ内の作動油の流線に沿った羽根の形状をそれぞれ示す図である。 タービン翼車のタービン回転数とポンプ翼車のポンプ回転数との回転速度比すなわち速度比に対する、タービントルクとポンプトルクとのトルク比(トルク増幅率)を示す図である。 速度比に対する、容量係数の関係を示す図である。 電子制御装置による制御作動の要部を説明する機能ブロック線図である。 自動変速機のアップシフト時に発生するイナーシャトルクを説明する図である。 電子制御装置の制御作動の要部すなわち自動変速機のアップシフトの際に変速性を控除歌させるための制御作動を説明するフローチャートである。 自動変速機のアップシフト時において、発電機による回生制御を実施したときの制御作動を説明するタイムチャートである。
符号の説明
6:トルクコンバータ 6p:ポンプ翼車 6t:タービン翼車 6s:ステータ翼車 7:車両用駆動装置 8:自動変速機(変速機) 9:エンジン(駆動源) 11:ケース(非回転部材) 13:駆動輪 124:ステータ回生制御手段 130:イナーシャ相判定手段 Bs:クラッチ(第2断続手段) Cs:クラッチ(第1断続手段)

Claims (4)

  1. ポンプ翼車と、タービン翼車と、該タービン翼車とポンプ翼車との間に回転可能に配設されたステータ翼車とを、有するトルクコンバータと、複数の変速比に変速可能な変速機とを、備え、駆動源から出力される動力を駆動輪へ伝達する車両用駆動装置の制御装置であって、
    前記ステータ翼車に動力伝達可能に連結された電動機と、
    前記変速機のアップシフト時において、駆動系からの回転慣性力を前記電動機が前記ステータ翼車を介して回生するステータ回生制御手段を備えることを特徴とする車両用駆動装置の制御装置。
  2. 前記変速機の変速中のイナーシャ相を判定するイナーシャ相判定手段を備え、
    前記ステータ回生制御手段は、前記変速機のイナーシャ相中のイナーシャトルクを回生するものであることを特徴とする請求項1の車両用駆動装置の制御装置。
  3. 前記ステータ翼車と前記電動機との間の動力伝達経路を断続可能な第1断続手段が設けられていることを特徴とする請求項1または2の車両用駆動装置の制御装置。
  4. 前記ステータ翼車と非回転部材とを断続可能な第2断続手段が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つの車両用駆動装置の制御装置。
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