図1は、本発明が適用された車両に備えられた車両用駆動装置(以下駆動装置という)6の構成を説明する骨子図である。駆動装置6は、車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスミッションケース12内において、共通の軸心上に、第1電動機としての第1モータジェネレータMG1、直結クラッチCi、第2電動機としての第2モータジェネレータMG2、および自動変速機としての有段式自動変速機(以下自動変速機という)10が順次配設されている。この自動変速機10は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関であるエンジン8のクランク軸9に専ら直結クラッチCiを介して機械的に連結された入力軸16、第1遊星歯車装置18を主体として構成されている第1変速部20、第2遊星歯車装置22と第3遊星歯車装置24とを主体として構成されている第2変速部26、および出力軸28が順次配設され、入力軸16の回転を変速して出力軸28から出力する。上記入力軸16は直結クラッチCiの出力側回転部材として機能するものであると同時に、自動変速機10の入力回転部材としても機能するものである。また、出力軸28は自動変速機10の出力回転部材に相当するものであり、例えば図8に示すように差動歯車装置(終減速機)30や一対の車軸等を順次介して左右の駆動輪32を回転駆動する。また、第1モータジェネレータMG1は、エンジン8に直接作動的に連結され、第2モータジェネレータMG2は入力軸16に直接作動的に連結されている。
上述したように、本実施例の駆動装置6においてはクランク軸9と入力軸16とは直結クラッチCiを介して機械的に連結すなわち直結されている。この直結にはトルクコンバータやフルードカップリング等の流体式伝動装置を介することなく連結されているということであり、例えば脈動吸収ダンパー(振動減衰装置)などを介する連結はこの直結に含まれる。なお、駆動装置6はその軸心に対して対称的に構成されているため、第1図の骨子図においてはその下側が省略されている。
上記第1遊星歯車装置18はダブルピニオン型の遊星歯車装置であり、サンギヤS1、互いに噛み合う複数対のピニオンギヤP1、そのピニオンギヤP1を自転および公転可能に支持するキャリヤCA1、ピニオンギヤP1を介してサンギヤS1と噛み合うリングギヤR1を備えている。キャリヤCA1は入力軸16に連結されて回転駆動され、サンギヤS1は回転不能にトランスミッションケース12に一体的に固定されている。リングギヤR1は中間出力部材として機能し、入力軸16に対して減速回転させられて、回転を第2変速部26へ伝達する。本実施例では、入力軸16の回転をそのままの速度で第2変速部26へ伝達する経路が、予め定められた一定の変速比(=1.0)で回転を伝達する第1中間出力経路PA1であり、第1中間出力経路PA1には、入力軸16から第1遊星歯車装置18を経ることなく第2変速部26へ回転を伝達する直結経路PA1aと、入力軸16から第1遊星歯車装置18のキャリヤCA1を経て第2変速部26へ回転を伝達する間接経路PA1bとがある。また、入力軸16からキャリヤCA1、そのキャリヤCA1に配設されたピニオンギヤP1、およびリングギヤR1を経て第2変速部26へ伝達する経路が、第1中間出力経路PA1よりも大きい変速比(>1.0)で入力軸16の回転を変速(減速)して伝達する第2中間出力経路PA2である。
第2遊星歯車装置22はシングルピニオン型の遊星歯車装置であり、サンギヤS2、ピニオンギヤP2、そのピニオンギヤP2を自転および公転可能に支持するキャリヤCA2、ピニオンギヤP2を介してサンギヤS2と噛み合うリングギヤR2を備えている。第3遊星歯車装置24はダブルピニオン型の遊星歯車装置であり、サンギヤS3、互いに噛み合う複数対のピニオンギヤP2およびP3、そのピニオンギヤP2およびP3を自転および公転可能に支持するキャリヤCA3、ピニオンギヤP2およびP3を介してサンギヤS3と噛み合うリングギヤR3を備えている。
上記第2遊星歯車装置22および第3遊星歯車装置24では、ピニオンギヤP2を回転可能に支持するキャリヤCA2およびCA3、リングギヤR2およびR3は相互に共用されることによって4つの回転要素RM1〜RM4が構成されている。すなわち、第2遊星歯車装置22のサンギヤS2によって第1回転要素RM1が構成され、第2遊星歯車装置22のキャリヤCA2および第3遊星歯車装置のキャリヤCA3が互いに一体的に連結されて第2回転要素RM2が構成され、第2遊星歯車装置22のリングギヤR2および第3遊星歯車装置24のリングギヤR3が互いに一体的に連結されて第3回転要素RM3が構成され、第3遊星歯車装置24のサンギヤS3によって第4回転要素RM4が構成されている。
第1回転要素RM1(サンギヤS2)は、第1ブレーキB1を介してトランスミッションケース12に選択的に連結されて回転停止され、第3クラッチC3を介して中間出力部材である第1遊星歯車装置18のリングギヤR1(すなわち第2中間出力経路PA2)に選択的に連結され、さらに第4クラッチC4を介して第1遊星歯車装置18のキャリヤCA1(すなわち第1中間出力経路PA1の間接経路PA1b)に選択的に連結されている。第2回転要素RM2(キャリヤCA2およびCA3)は、第2ブレーキB2を介してトランスミッションケース12に選択的に連結されて回転停止させられるとともに、第2クラッチC2を介して入力軸16(すなわち第1中間出力経路PA1の直結経路PA1a)に選択的に連結されている。第3回転要素RM3(リングギヤR2およびR3)は、出力軸28に一体的に連結されて回転を出力するようになっている。第4回転要素RM4(サンギヤS3)は、第1クラッチC1を介してリングギヤR1に連結されている。なお、ブレーキB1、B2、およびクラッチC1〜C4は、何れも油圧シリンダによって摩擦係合させられる多板式等の油圧式摩擦係合装置である。
図2は、上記第1変速部20および第2変速部26の各回転要素の回転速度を直線で表すことができる共線図であり、下の横線が回転速度「0」を示し、上の横線が回転速度「1.0」すなわち入力軸16と同じ回転速度を示している。また、第1変速部20の各縦線は、左側から順番にサンギヤS1、リングギヤR1、キャリヤCA1を表しており、それ等の間隔は第1遊星歯車装置18のギヤ比ρ1(=サンギヤS1の歯数/リングギヤR1の歯数)に応じて定められる。図2は、例えばギヤ比ρ1=0.463の場合である。第2変速部26の4本の縦線は、左側から順番に第1回転要素RM1(サンギヤS2)、第2回転要素RM2(キャリヤCA2およびキャリヤCA3)、第3回転要素RM3(リングギヤR2およびリングギヤR3)、第4回転要素RM4(サンギヤS3)を表しており、それ等の間隔は第2遊星歯車装置22のギヤ比ρ2および第3遊星歯車装置24のギヤ比ρ3に応じて定められる。図2は、例えばギヤ比ρ2=0.463、ρ3=0.415の場合である。
そして、この共線図から明らかなように、第1クラッチC1および第2ブレーキB2が係合させられて、第4回転要素RM4が第1変速部20を介して入力軸16に対して減速回転させられるとともに、第2回転要素RM2が回転停止させられると、出力軸28に連結された第3回転要素RM3は「1st」で示す回転速度で回転させられ、最も大きい変速比(=入力軸16の回転速度/出力軸28の回転速度)の第1変速段「1st」が成立させられる。
第1クラッチC1および第1ブレーキB1が係合させられて、第4回転要素RM4が第1変速部20を介して入力軸16に対して減速回転させられるとともに、第1回転要素RM1が回転停止させられると、第3回転要素RM3は「2nd」で示す回転速度で回転させられ、第1変速段「1st」よりも変速比が小さい第2変速段「2nd」が成立させられる。
第1クラッチC1および第3クラッチC3が係合させられて、第4回転要素RM4および第1回転要素RM1が第1変速部20を介して入力軸16に対して減速回転させられて第2変速部26が一体回転させられると、第3回転要素RM3は「3rd」で示す回転速度で回転させられ、第2変速段「2nd」よりも変速比が小さい第3変速段「3rd」が成立させられる。
第1クラッチC1および第4クラッチC4が係合させられて、第4回転要素RM4が第1変速部20を介して入力軸16に対して減速回転させられるとともに、第1回転要素RM1が入力軸16と一体回転させられると、第3回転要素RM3は「4th」で示す回転速度で回転させられ、第3変速段「3rd」よりも変速比が小さい第4変速段「4th」が成立させられる。
第1クラッチC1および第2クラッチC2係合させられて、第4回転要素RM4が第1変速部20を介して入力軸16に対して減速回転させられるとともに、第2回転要素RM2が入力軸16と一体回転させられると、第3回転要素RM3は「5th」で示す回転速度で回転させられ、第4変速段「4th」よりも変速比が小さい第5変速段「5th」が成立させられる。
第2クラッチC2および第4クラッチC4が係合させられて、第2変速部26が入力軸16と一体回転させられると、第3回転要素RM3は「6th」で示す回転速度すなわち入力軸16と同じ回転速度で回転させられ、第5変速段「5th」よりも変速比が小さい第6変速段「6th」が成立させられる。この第6変速段「6th」の変速比は1である。
第2クラッチC2および第3クラッチC3が係合させられて、第1回転要素RM1が第1変速部20を介して入力軸16に対して減速回転させられるとともに、第2回転要素RM2が入力軸16と一体回転させられると、第3回転要素RM3は「7th」で示す回転速度で回転させられ、第6変速段「6th」よりも変速比が小さい第7変速段「7th」が成立させられる。
第2クラッチC2および第1ブレーキB1が係合させられて、第2回転要素RM2が入力軸16と一体回転させられるとともに、第1回転要素RM1が回転停止させられると、第3回転要素RM3は「8th」で示す回転速度で回転させられ、第7変速段「7th」よりも変速比が小さい第8変速段「8th」が成立させられる。
また、第3クラッチC3および第2ブレーキB2が係合させられると、第1回転要素RM1が第1変速部20を介して減速回転させられるとともに、第2回転要素RM2が回転停止させられて、第3回転要素RM3は「Rev1」で示す回転速度で逆回転させられ、逆回転方向で変速比が最も大きい第1後進変速段「Rev1」が成立させられる。第4クラッチC4および第2ブレーキB2が係合させられると、第1回転要素RM1が入力軸16と一体回転させられるとともに、第2回転要素RM2が回転停止させられ、第3回転要素RM3は「Rev2」で示す回転速度で逆回転させられ、第1後進変速段「Rev1」よりも変速比が小さい第2後進変速段「Rev2」が成立させられる。第1後進変速段「Rev1」、第2後進変速段「Rev2」は、それぞれ逆回転方向の第1変速段、第2変速段に相当する。
図3は、上記各変速段を成立させる際の係合要素および変速比を説明する作動表であり、「○」は係合状態を表しており、空欄は解放である。各変速段の変速比は、第1遊星歯車装置18、第2遊星歯車装置22、第3遊星歯車装置24の各ギヤ比ρ1〜ρ3によって適宜定められ、例えばρ1=0.463、ρ2=0.463、ρ3=0.415とすれば、変速比ステップ(各変速段間の変速比の比)の値が略適切であるとともにトータルの変速比幅(=4.532/0.667)も6.578程度と大きく、後進変速段「Rev1」、「Rev2」の変速比も適当で、全体として適切な変速比特性が得られる。
このように本実施例の自動変速機10は、変速比が異なる2つの中間出力経路PA1、PA2を有する第1変速部20および2組の遊星歯車装置22、24を有する第2変速部26により、4つのクラッチC1〜C4および2つのブレーキB1、B2の係合切換えで前進8速の変速ギヤ段が達成されるため、小型に構成され、車両への搭載性が向上する。また、図3に示されるように、本実施例の自動変速機10は、変速比幅を大きくとることができ且つ変速比ステップも適切となっている。しかも、図3から明らかなように、クラッチC1〜C4およびブレーキB1、B2の何れか2つを掴み替えるだけで各変速段の変速を行うことができるため、変速制御が容易で変速ショックの発生が抑制される。
図4は、本実施例の車両において、上記エンジン8、直結クラッチCi、自動変速機10の変速段、モータジェネレータMG1およびMG2などを制御するための制御系統を説明するブロック線図である。図4において、アクセルペダル50の操作量Accがアクセル操作量センサ51により検出されるようになっている。アクセルペダル50は、運転者の出力要求量に応じて大きく踏み込み操作されるものであることからアクセル操作部材に相当し、アクセル操作量Accは出力要求量に相当する。エンジン8の吸気配管には、スロットルアクチュエータ54によってアクセル操作量Accに応じた開き角(開度)θTHとされる電子スロットル弁56が設けられている。また、アイドル回転速度制御のために上記電子スロットル弁56をバイパスさせるバイパス通路52には、エンジン8のアイドル回転速度NIDL を制御するために電子スロットル弁56の全閉時の吸気量を制御するISC(アイドル回転速度制御)バルブ53が設けられている。
この他、エンジン8の回転速度NE(=第1モータジェネレータMG1の回転速度NMG1)を検出するためのエンジン回転速度センサ58、エンジン8の吸入空気量Qを検出するための吸入空気量センサ60、上記電子スロットル弁56の全閉状態(アイドル状態)およびその開度θTHを検出するためのアイドルスイッチ付スロットル弁開度センサ62、車速V(出力軸28の回転速度NOUTに対応)を検出するための車速センサ64、自動変速機10の入力軸16の回転速度NIN(=第2モータジェネレータMG2の回転速度NMG2)を検出するための入力軸回転速度センサ66、常用ブレーキであるフットブレーキの操作の有無を検出するためのブレーキスイッチ68、シフトレバー72のレバーポジション(操作位置)PSHを検出するためのレバーポジションセンサ74、エンジン8の冷却水温を検出するためのエンジン水温センサ76、モータジェネレータMG1、MG2に接続された蓄電装置108の蓄電量(残容量、充電量)SOCを検出するためのSOCセンサ78、自動変速機10の作動油温度を検出するための油温センサ80、排気ガスを浄化する触媒の温度を検出するための触媒温度センサ82、車両の加速度を検出するための加速度センサ84、油圧が前記クラッチC1〜C4、ブレーキB1〜B2の係合トルクを発生させるための所定圧以上となった場合に所定の信号例えばON信号を出力する油圧スイッチ86、などが設けられており、それらのセンサやスイッチなどから、エンジン回転速度NE(=第1モータジェネレータ回転速度NMG1)、吸入空気量Q、スロットル弁開度θTH、車速V、入力軸回転速度NIN(=第2モータジェネレータ回転速度NMG2)、ブレーキ操作の有無、シフトレバー72のレバーポジションPSH、冷却水温IW、蓄電量SOC、油温TOIL、触媒温度TRE、車両の加速度G、係合油圧のON信号などを表す信号が電子制御装置90に供給されるようになっている。
電子制御装置90は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、エンジン8の出力制御、自動変速機10の変速制御、第1モータジェネレータMG1や第2モータジェネレータMG2の力行制御や回生制御を行うハイブリッド制御などを実行するようになっており、必要に応じて、エンジン制御用、変速制御用、ハイブリッド制御用等に分けて構成される。
上記電子制御装置90によるエンジン8の出力制御では、スロットルアクチュエータ54により電子スロットル弁56を開閉制御する他、燃料噴射量制御のために燃料噴射装置92を制御し、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置94を制御し、アイドル回転速度制御のためにISCバルブ53を制御する。電子スロットル弁56の制御は、例えば図5に示す関係から実際のアクセル操作量Accに基づいてスロットルアクチュエータ54を駆動し、アクセル操作量Accが増加するほどスロットル弁開度θTHを増加させる。また、エンジン8の始動時には、例えば直結クラッチCiを解放させた状態で第1モータジェネレータMG1を電動モータとして作動させることによってエンジン8のクランク軸9を回転駆動(クランキング)する。
また、上記電子制御装置90による自動変速機10の変速制御では、例えば図6に示す予め記憶された関係から実際の車速Vおよびスロットル弁開度θTHに基づいて変速判断が行われ、その判断された変速が得られるように変速用の油圧制御回路98内のATシフトソレノイド99の励磁、非励磁により油圧回路を切り換えるなどして自動変速機10の変速制御が行われる。この変速制御は、少なくともパワーオン走行において、通常、油圧制御回路98に設けられた直結クラッチ制御弁96により直結クラッチCiが係合させられた状態で実行される。上記ATシフトソレノイド99は、切換弁などの作動状態を変更して油圧制御回路98を切り換えることにより、前記クラッチC1〜C4、ブレーキB1〜B2の係合、解放状態を切り換えて、前記複数の変速段やニュートラル「N」などを成立させるためのものであり、複数設けられている。上記電子制御装置90は、このATシフトソレノイド99により、上記図6に例示する車速Vおよびスロットル弁開度θTHをパラメータとして予め記憶された変速マップ(変速条件)に従って変速制御を行う変速制御手段110(図8参照)を機能的に備えており、車速Vが低くなったりスロットル弁開度θTHが大きくなったりするに従って変速比が大きい低速側の変速段が成立させられるようにする。また、その変速時に係合または解放される前記クラッチC1〜C4やブレーキB1〜B2の過渡油圧をATライン圧コントロールソレノイドやリニアソレノイド弁SLNなどにより制御し、滑らかな変速を実行させる。なお、図6の変速線図において、ダウン変速線は省略されている。
シフトレバー72は、図7に示すように、自動変速機10内の動力伝達経路を解放し且つその出力軸28の回転をロックするための「P」ポジション、自動変速機10の出力軸28を逆回転とするための「R」ポジション、自動変速機10内の動力伝達経路を解放するための「N」ポジション、自動変速機10の第1速乃至第8速の変速を許容する変速範囲(Dレンジ)で自動変速制御を実行させる「D」ポジション、手動変速モードに切り換えるための「M」ポジション、手動変速モードにおいて操作毎に変速範囲或いはギヤ段をアップ側にシフトさせるための「+」ポジション、手動変速モードにおいて操作毎に変速範囲或いはギヤ段をダウン側にシフトさせるための「−」ポジションへ操作されるようになっており、前記レバーポジションセンサ74はそのシフトレバー72の操作位置を検出する。上記電子制御装置90による自動変速機10の変速制御では、上記手動変速モードにおける手動操作に応答して、自動変速機10の変速範囲或いはギヤ段が変更される。
また、上記電子制御装置90によるハイブリッド制御では、車両の走行状態に応じて、モータ走行、エンジン走行、モータ及びエンジン走行、回生制動走行等を行うために、直結クラッチCiの開閉制御、第1モータジェネレータMG1や第2モータジェネレータMG2の力行制御、回生制御等が実行される。例えば、モータ走行制御では、静粛な車両発進や走行のために、油圧制御回路98に設けられた直結クラッチ制御弁96により直結クラッチCiが解放させられた状態で、MG2コントローラ102によりインバータ106から駆動電流が第2モータジェネレータMG2に供給されてそれが駆動される。また、エンジン走行制御では、蓄電装置108の充電残量が少なくなったような場合でも走行するために、直結クラッチ制御弁96により直結クラッチCiが係合されることによりエンジン8の出力が自動変速機10の入力軸16に直接伝達されるとともに、必要に応じて第1モータジェネレータMG1或いは第2モータジェネレータMG2がMG1コントローラ104或いはMG2コントローラ102により発電状態とされ、その発電エネルギEDが蓄電装置108に蓄電される。また、モータ及びエンジン走行制御では、加速走行のために、上記直結クラッチCiが連結された状態で、エンジン8の出力と第1モータジェネレータMG1および/または第2モータジェネレータMG2の出力が自動変速機10の入力軸16に直接伝達される。回生制動制御では、ブレーキペダルが操作された制動操作時或いはコースト走行時において、所望の制動力を得るためにMG1コントローラ104および/またはMG2コントローラ102によって第1モータジェネレータMG1および/または第2モータジェネレータMG2が発電状態とされ、その発電に消費される回生トルクにより制動力を得ると共に発電エネルギEDがインバータ106を介して蓄電装置108に貯えられる。
図8は、前記電子制御装置90の制御機能の要部すなわち暖機を促進するためにエンジン出力PEを増加させる必要がある時のエンジン8の作動状態を制御する制御作動を説明する機能ブロック線図である。図8において、変速制御手段110は、例えば図6に示す予め記憶された変速線図から実際の車速Vおよびスロットル開度θTHに基づいて変速判断を実行し、判断された変速を実行させるための変速出力を油圧制御回路98に対して行うことにより、自動変速機16のギヤ段を自動的に切り換える。例えば、2速→3速アップシフトでは、ブレーキB1を解放開始させ、その係合トルクがある程度維持されているときに、クラッチC3の係合を開始させてその係合トルクを発生させ、この状態で第2速の変速比γ2から第3速の変速比γ3へ移行させつつ、ブレーキB1の解放とクラッチC3の係合とを完了させる。
ハイブリッド制御手段112は、第2モータジェネレータMG2の出力により車両発進を実行するモータ発進のために、油圧制御回路98に設けられた直結クラッチ制御弁96により直結クラッチCiを解放させると共に、MG2コントローラ102により蓄電装置108からインバータ106を介して駆動電流を第2モータジェネレータMG2に供給させる。
暖機条件判定手段114は、エンジン8の暖機運転が必要となる条件が成立したか否かを、例えば電子制御装置90に供給されるエンジン水温センサ76により検出されたエンジン8の冷却水温IWを示す信号に基づいて実際の冷却水温IWが所定冷却水温IWP以下であるか否かにより判定する。この所定冷却水温IWPは、エンジン8の出力や燃費等の影響を考慮してエンジン8が適切に作動させられるようにエンジン8の暖機運転が必要とされるエンジン水温冷却水温IWとして予め実験等により求められて記憶された値である。暖機条件判定手段114は、エンジン8の暖機運転が必要となる条件が成立したか否かを判定することにより、エンジン8の暖機運転のためにエンジン出力PEを増加させる必要があるか否かを判定する暖機時エンジン出力増加要否判定手段としても機能する。
必要暖機量算出手段116は、上記暖機条件判定手段114によりエンジン8の暖機運転が必要となる条件が成立したと判定された場合には、エンジン8の暖機促進のためにエンジン8の暖機完了までに必要なエネルギ量を算出する。例えば、必要暖機量算出手段116は、エンジン8の暖機促進の過程すなわち所定暖機期間tにおけるエンジン8の暖機促進のために必要なエンジン出力PE *を、エンジン出力PEと冷却水温IWとの予め実験等により求められて記憶された関係から上記実際の冷却水温IWに基づいて算出する。例えば、このエンジン出力PEと冷却水温IWとの関係は、冷却水温IWが低い程エンジン出力PE *が大きくなるように定められている。また、所定暖機期間tは、暖機開始から完了までの予め定められた暖機期間tであり暖機促進の観点からエンジン出力PEが適切に出力可能な範囲で可及的に短く設定される。必要暖機量算出手段116は、エンジン8の暖機促進のためにエンジン8の暖機完了までに必要なエネルギ量として所定暖機期間tにおけるエンジン出力PE *の積分値(=∫PE *dt)を算出する。
エンジン出力制御手段118は、エンジン8の暖機促進のために所定暖機期間tにおいて上記必要暖機量算出手段116により算出されたエンジン出力PE *が得られるように燃料噴射装置92により燃料噴射量を制御する。例えば、エンジン出力制御手段118は、エンジン出力PE *が得られるようにアイドル回転速度NIDL時のエンジン出力PEIDLに対してエンジン出力PEを増加するようにアイドル回転速度NIDL時の燃料噴射量に対して燃料噴射量を多くする。また、エンジン出力制御手段118は、エンジン8の始動時には、油圧制御回路98に設けられた直結クラッチ制御弁96により直結クラッチCiを解放させると共に、MG1コントローラ104により第1モータジェネレータMG1を電動モータとして作動させてエンジン8のクランク軸9を回転駆動(クランキング)する。
ところで、前述したように本実施例の駆動装置6はトルクコンバータのような流体伝動装置をエンジン8と自動変速機10(入力軸16)との間に備えておらず、エンジン8と自動変速機10(入力軸16)とが直結クラッチCiを介して直接機械的に連結されている。そのため、車両発進時(車両停止時)にエンジン8の作動状態例えばエンジンアイドル回転速度NIDLを維持するには、エンジン回転速度NEが駆動輪32に拘束されないように直結クラッチCiがスリップ乃至解放状態とされる。
しかしながら、エンジン8の上記暖機促進のためにエンジン出力制御手段118によりエンジン出力PEが増加するように制御されるとき、直結クラッチCiがスリップ乃至解放状態とされることでエンジン負荷がほとんど無いために、エンジン8と自動変速機10とが例えばトルクコンバータを介して連結されている従来の車両に比較して、エンジン8の暖機促進のためにエンジン回転速度NEが不要に高くなる可能性があった。
そこで、前記ハイブリッド制御手段112は、エンジン8の暖機促進のためのエンジン出力PE増加によりエンジン回転速度NEが不要に高くなることを抑制するように、エンジン出力PEにより第1モータジェネレータMG1を発電させてエンジン8に対して負荷を与えることによりエンジン回転速度NEの上昇を抑制する。例えば、このときの第1モータジェネレータMG1による発電量は、エンジン回転速度NEがアイドル回転速度NIDL時からの上昇が抑制されるように必要暖機量算出手段116により算出されたエンジン出力PE *が大きい程大きくされるように予め定められて記憶されている。例えば、第1モータジェネレータMG1による発電量は、上記エンジン出力PE *が得られるためのアイドル回転速度NIDL時のエンジン出力PEIDLに対するエンジン出力PEの増加分だけ第1モータジェネレータMG1により発電されるように予め定められて記憶されている。言い換えれば、ハイブリッド制御手段112は第1モータジェネレータMG1の回転速度NMG1すなわちエンジン回転速度NEが可及的にアイドル回転速度NIDLに維持されるように第1モータジェネレータMG1による発電量を制御する。
エンジン8の所定暖機期間tにおいて上記ハイブリッド制御手段112により第1モータジェネレータMG1が発電させられるとその発電エネルギEDはインバータ106を介して蓄電装置108に充電される。しかし、蓄電装置108の蓄電量SOCが良好な場合はその暖機期間tに発生する発電エネルギEDを蓄電装置108に蓄えられない可能性がある。
そこで、充電状態判定手段120は、エンジン8の所定暖機期間tに発生することが予測される第1モータジェネレータMG1の発電エネルギEDを蓄電装置108に蓄えることが可能か否かを蓄電装置108の実際の蓄電量SOCに基づいて判定する。例えば、充電状態判定手段120は、所定の判定値である蓄電量SOCPを決定する充電可否判定値決定手段121を備え、上記所定暖機期間tに発生する発電エネルギEDを蓄電装置108に蓄えられ得るか否かを蓄電装置108の暖機直前の当初の蓄電量SOC1が上記充電可否判定値決定手段121により決定された所定の蓄電量SOCPを超えないか否かで判定する。この所定の蓄電量SOCPは、前記必要暖機量算出手段116により算出されたエネルギ量すなわち所定暖機期間tにおけるエンジン出力PE *の積分値(=∫PE *dt)が大きい程小さくされるように予め定められて記憶された蓄電量SOCであり、上記所定暖機期間t中に発生する発電エネルギEDによって蓄電装置108に充電される蓄電量と暖機直前の蓄電量SOC1との和が蓄電装置108の予め設定された蓄電量の上限値SOCMAX例えば満充電の80%程度の蓄電量SOC80%を超えないか否かを判定するために予め求められた値である。
例えば、上記充電可否判定値決定手段121は、暖機促進のためのエンジン出力PE増加に伴ってエンジン回転速度NEが不要に高くなることを抑制するために、エンジン8の暖機のために必要なエネルギ量と第1モータジェネレータMG1の発電エネルギEDとの予め実験的に求められて記憶された関係から、前記必要暖機量算出手段116により算出されたエネルギ量(=∫PE *dt)に基づいて上記所定暖機期間tに発生する発電エネルギEDを算出し、上記蓄電量SOC80%からこの発電エネルギEDを差し引いて所定の蓄電量SOCP(=SOC80%−ED)を決定する。
発進時エンジン作動状態切換制御手段122は、上記充電状態判定手段120を備え、暖機条件判定手段114により暖機のためにエンジン出力PEを増加する必要があると判定された時は、エンジン出力制御手段118にクランク軸9を回転駆動させずにエンジン8を停止状態とし且つ前記ハイブリッド制御手段112に第2モータジェネレータMG2の出力による車両発進を実行させるのか、或いはエンジン出力制御手段118にクランク軸9を回転駆動させてエンジン8を作動状態とし且つ前記ハイブリッド制御手段112にエンジン出力PEにより第1モータジェネレータMG1を発電させながら第2モータジェネレータMG2の出力による車両発進を実行させるのかを、充電状態判定手段120による判定結果に基づいて切り換える。
具体的には、上記発進時エンジン作動状態切換制御手段122は、充電状態判定手段120により蓄電装置108の蓄電量SOCが所定の蓄電量SOCP以上であると判定された場合には、必要暖機量算出手段116により算出されたエネルギ量(=∫PE *dt)に対する発電エネルギEDが蓄電装置108に蓄えられないので、エンジン出力制御手段118にクランク軸9を回転駆動させずにエンジン8を停止状態とし且つ前記ハイブリッド制御手段112に専ら第2モータジェネレータMG2の出力による車両発進を実行させる。
或いは、前記発進時エンジン作動状態切換制御手段122は、充電状態判定手段120により蓄電装置108の蓄電量SOCが所定の蓄電量SOCPに満たないと判定された場合には、必要暖機量算出手段116により算出されたエネルギ量(=∫PE *dt)に対する発電エネルギEDが蓄電装置108に蓄えられ得るので、エンジン出力制御手段118にクランク軸9を回転駆動させてエンジン8を始動させ、エンジン8の暖機促進のために上記必要暖機量算出手段116により算出されたエンジン出力PE *が得られるように燃料噴射装置92により燃料噴射量を制御させる。同時に、発進時エンジン作動状態切換制御手段122は、前記ハイブリッド制御手段112にエンジン8の暖機促進のためにエンジン回転速度NEが不要に高くなることを抑制するようにエンジン出力PEにより第1モータジェネレータMG1を発電させながら専ら第2モータジェネレータMG2の出力による車両発進を実行させる。
また、前記発進時エンジン作動状態切換制御手段122は、蓄電装置108の蓄電量SOCが所定の蓄電量SOCP以上であり上記必要暖機量算出手段116により算出されたエネルギ量(=∫PE *dt)に対する発電エネルギEDが蓄電装置108に蓄えられない場合であっても、エンジン出力PE *を得るためにアイドル回転速度NIDLに対して僅かなエンジン回転速度NEの増加でよい場合には、エンジン8を始動して第1モータジェネレータMG1を発電させることなく暖機のためにエンジン回転速度NEを上昇させる。
すなわち、前記発進時エンジン作動状態切換制御手段122は、暖機促進のためのエンジン出力PE *を得るためにアイドル回転速度NIDLに対して僅かなエンジン回転速度NEの増加でよいか否かを判定するエンジン回転判定手段124をさらに備え、前記充電状態判定手段120により蓄電装置108の蓄電量SOCが所定の蓄電量SOCP以上であると判定され且つ上記エンジン回転判定手段124により上記エンジン出力PE *を得るために僅かなエンジン回転速度NEの増加でよいと判定された場合には、エンジン出力制御手段118にクランク軸9を回転駆動させてエンジン8を始動させ、エンジン8の暖機促進のために上記必要暖機量算出手段116により算出されたエンジン出力PE *が得られるように燃料噴射装置92により燃料噴射量を制御させる。同時に、発進時エンジン作動状態切換制御手段122は、前記ハイブリッド制御手段112に第2モータジェネレータMG2の出力による車両発進を実行させる。
上記エンジン回転判定手段124は、暖機促進のためのエンジン出力PE *を得るためにアイドル回転速度NIDLに対して僅かなエンジン回転速度NEの増加でよいか否かを、例えばエンジン出力PE *を得るためのエンジン回転速度NE *が所定エンジン回転速度NE1より小さいか否かで判定する。例えば、そのエンジン回転速度NE *はエンジン出力PE *とエンジン回転速度NEとの予め定められて記憶されている関係から実際のエンジン出力PE *に基づいてエンジン回転判定手段124により算出される。また、上記所定エンジン回転速度NE1は、アイドル回転速度NIDLに対してエンジン回転速度NEの増加が第1モータジェネレータMG1を発電させて抑制する必要がないエンジン回転速度NEとして予め定められて記憶された値である。
図9は、前記電子制御装置90の制御作動の要部すなわちエンジン8の暖機を促進する暖機運転のためにエンジン出力PEを増加させる必要がある時のエンジン8の作動状態を制御する制御作動を説明するフローチャートである。このフローチャートは、所定の周期で繰り返し実行される。また、図10は、図9のフローチャートに示す制御作動の一例であって、イグニッションオン(IGON)に伴ってエンジン8が始動し暖機促進のために一定期間エンジン出力PEが増加させられる場合の制御作動を説明するタイムチャートである。
図9において、前記暖機条件判定手段114に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S1において、エンジン8の暖機運転が必要となる条件が成立したか否かが、例えば実際の冷却水温IWが所定冷却水温IWP以下であるか否かにより判定される。このS1の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられるが、肯定される場合は前記必要暖機量算出手段116に対応するS2において、エンジン8の暖機促進のためにエンジン8の暖機完了までに必要なエネルギ量例えば所定暖機期間tにおけるエンジン出力PE *の積分値(=∫PE *dt)が、エンジン出力PEと冷却水温IWとの予め実験等により求められて記憶された関係から実際の冷却水温IWに基づいて算出される。図10は、図10のt1時点にてイグニッションオンされてエンジン8の暖機促進のためにエンジン8の暖機完了までの一定期間必要なエンジン出力PE *が算出されたことを示している。
上記S2に続いて充電状態判定手段120に対応するS3において、上記S2にて算出された所定暖機期間tにおけるエンジン出力PE *の積分値(=∫PE *dt)に対して暖機促進のためのエンジン出力PE増加に伴ってエンジン回転速度NEが不要に高くなることを抑制するように予め定められた発電エネルギEDが蓄電装置108に蓄えられ得るか否かが、例えば蓄電装置108の暖機直前の蓄電量SOC1が前記充電可否判定値決定手段121により決定された所定の蓄電量SOCPを超えないか否かで判定される。
上記S3の判断が肯定される場合は発進時エンジン作動状態切換制御手段122に対応するS4、S5、S6およびS8において、エンジン出力制御手段118にクランク軸9を回転駆動させてエンジン8が始動させられ(S5)、エンジン8の暖機促進のために上記S2にて算出されたエンジン出力PE *が得られるように燃料噴射装置92により燃料噴射量を制御させる(S6)。同時に、ハイブリッド制御手段112にエンジン8の暖機促進のためにエンジン回転速度NEが不要に高くなることを抑制するようにエンジン出力PE *により第1モータジェネレータMG1を発電させながら(S4)第2モータジェネレータMG2の出力による車両発進を実行させる(S8)。
図10のt1時点乃至t6時点は、エンジン出力PEがアイドル回転速度NIDLにおけるエンジン無負荷時のエンジン出力PEIDL *からエンジン8の暖機促進のためにファーストアイドルが実施されて一定期間エンジン出力PE *に増加させられることを示している。また、図10のt3時点乃至t6時点は、そのエンジン出力PEの増加に対してエンジン回転速度NEが不要に高くなることが抑制されるように例えばアイドル回転速度NIDLが維持されるように、エンジン出力PEの増加分に略相当するエンジン出力PEにより第1モータジェネレータMG1が発電させられその発電エネルギEDが蓄電装置108に充電されることを示している。さらに、図9のフローチャートには示していないが、図10のt4時点に示すようにシフトレバー72が「N」ポジションから「D」ポジションへ操作されて第2モータジェネレータMG2の出力により車両が発進し、図10のt5時点に示すように所定の車速Vに達した時に直結クラッチCiが係合させられてエンジン8の出力が自動変速機10を介して駆動輪32へ伝達される。このように、発進時にはエンジン8の出力は専ら発電に為に用いられ、第2モータジェネレータMG2の出力により車両発進が実行される所謂シリーズ発進が実行される。図10のt6時点以降に示すようにエンジン8の暖機が終了した段階で通常状態すなわち暖機のためのエンジン出力増加が実行されない状態に戻る。
前記S3の判断が否定される場合はエンジン回転判定手段124に対応するS7において、暖機促進のためのエンジン出力PE *を得るためにアイドル回転速度NIDLに対して僅かなエンジン回転速度NEの増加でよいか否かが、例えばエンジン出力PE *を得るためのエンジン回転速度NE *が所定エンジン回転速度NE1より小さいか否かで判定される。
上記S7の判断が肯定される場合は発進時エンジン作動状態切換制御手段122に対応するS5、S6およびS8において、エンジン出力制御手段118にクランク軸9を回転駆動させてエンジン8が始動させられ(S5)、エンジン8の暖機促進のために上記S2にて算出されたエンジン出力PE *が得られるように燃料噴射装置92により燃料噴射量を制御させる(S6)。同時に、ハイブリッド制御手段112に第2モータジェネレータMG2の出力による車両発進を実行させる(S8)。
上記S7の判断が否定される場合は発進時エンジン作動状態切換制御手段122に対応するS8において、エンジン出力制御手段118にクランク軸9を回転駆動させずにエンジン8が停止状態とさせられたままハイブリッド制御手段112に第2モータジェネレータMG2の出力による車両発進を実行させる。
上述のように、本実施例によれば、暖機のためにエンジン出力PEを増加する必要がある時に、暖機直前の蓄電装置108の蓄電量SOCが所定の蓄電量SOCP以上である場合すなわちエンジン出力PEにより第1モータジェネレータMG1を発電させて蓄電装置108に充電させられずエンジン8に対する負荷を生じさせてエンジン回転速度NEの上昇を抑制させられない場合には、発進時エンジン作動状態切換制御手段122によりエンジン8を始動させず第2モータジェネレータMG2の出力による車両発進が実行されるので、エンジン回転速度NEが不要に高くなることが防止される。
また、本実施例によれば、暖機のためにエンジン出力PEを増加する必要がある時に、暖機直前の蓄電装置108の蓄電量SOCが所定の蓄電量SOCPを超えない場合すなわちエンジン出力PEにより第1モータジェネレータMG1を発電させてエンジン8対する負荷を生じさせエンジン回転速度NEの上昇を抑制させられる場合には、発進時エンジン作動状態切換制御手段122によりエンジン8を始動させてエンジン出力PEを無負荷のアイドル回転時のエンジン出力PEIDLよりも増加させ且つ第1モータジェネレータMG1を発電させながら第2モータジェネレータMG2の出力による車両発進が実行されるので、暖機のためにエンジン出力PEを増加することに伴ってエンジン回転速度NEが不要に高くなることが防止される。
また、本実施例によれば、所定の蓄電量SOCP(=SOCMAX−ED)は、暖機期間t中の第1モータジェネレータMG1の発電エネルギEDにより蓄電装置108へ充電される蓄電量と暖機直前の蓄電装置108の蓄電量SOC1との和が蓄電装置108の蓄電量の上限値SOCMAXを超えないか否かを判定するために予め求められた値であるので、エンジン出力PEにより第1モータジェネレータMG1を発電させてエンジン8に対する負荷を生じさせエンジン回転速度NEの上昇を抑制させられることが可能か否かが充電状態判定手段120により適切に判定されて、暖機のためにエンジン出力PEを増加する必要がある時にエンジン8の作動状態が適切に制御される。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例では、充電状態判定手段120は、暖機期間t中に発生する発電エネルギEDを蓄電装置108に蓄えられ得るか否かを、蓄電装置108の暖機直前の蓄電量SOC1が充電可否判定値決定手段121により決定された所定の蓄電量SOCPを超えないか否かで判定したが、その所定の蓄電量SOCPを用いることなく、上記暖機期間t中に発生する発電エネルギEDと暖機直前の蓄電量SOC1との和が蓄電装置108の蓄電量の上限値SOCMAX例えば満充電の80%程度の蓄電量SOC80%を超えないか否かで判定してもよい。
また、前述の実施例では、発進時エンジン作動状態切換制御手段122(図9のステップS4)は、暖機期間t中においてエンジン回転速度NEが可及的にアイドル回転速度NIDLに維持されるようにハイブリッド制御手段112にエンジン出力PE *が得られるためのエンジン出力PEの増加分だけ第1モータジェネレータMG1により発電させたが、必ずしもエンジン回転速度NEが可及的にアイドル回転速度NIDLに維持されるように実行される必要はなく、エンジン出力PEの増加分を越えない範囲で第1モータジェネレータMG1により発電させればよい。このようにしても、エンジン出力PEの増加によってエンジン回転速度NEが不要に高くなることが抑制される効果は得られる。
また、前述の実施例では、暖機条件判定手段114(図9のステップS1)は、エンジン8の暖機運転が必要となる条件が成立したか否かを、実際の冷却水温IWが所定冷却水温IWP以下であるか否かにより判定したが、実際の触媒温度TREが所定触媒温度TREP以下であるか否かにより判定してもよい。また、排気ガスを浄化する触媒は、一般的にその温度が低いと触媒の反応効率が低下して触媒としての機能が適切に働かないため、触媒を速やかに暖機する必要がある。触媒の暖機はエンジン8の排ガスにより行われるので、エンジン8の暖機運転と触媒の暖機とは関連性があることから、上記暖機条件判定手段114はエンジン8の暖機運転が必要となる条件が成立したか否かを判定することに替えて或いは加えて、触媒の暖機が必要となる条件が成立したか否かを判定してもよい。
また、前述の実施例では、必要暖機量算出手段116(図9のステップS2)は、エンジン8の暖機促進のためにエンジン8の暖機完了までに必要なエネルギ量を冷却水温IWに基づいて算出したが、触媒温度TREに基づいて算出してもよい。
また、前述の実施例では、第2モータジェネレータMG2は入力軸16に設けられていたが、自動変速機16の入力軸16よりも下流側例えば入力軸16と出力軸28との間に設けられていてもよい。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。