JP2009228778A - 車両用可変容量型トルクコンバータの制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】重量および寸法が大きな大出力エンジンを搭載しなくても、車両の駆動力増大要求時において車両の加速感を十分に高めることができる車両用可変容量型トルクコンバータの制御装置を提供する。
【解決手段】車両の駆動力増大要求があった場合には、容量係数制御手段124により、トルクコンバータ6の容量係数Cがステータ翼車6sの非回転状態の値に比較して減少させるように電動機10の回転が制御されることから、その容量係数Cの減少に応じて大きなトルク比tが得られるので、重量および寸法が大きな大出力エンジンを搭載しなくても、車両の駆動力増大要求時において車両の加速感を十分に高めることができる。
【選択図】図11
【解決手段】車両の駆動力増大要求があった場合には、容量係数制御手段124により、トルクコンバータ6の容量係数Cがステータ翼車6sの非回転状態の値に比較して減少させるように電動機10の回転が制御されることから、その容量係数Cの減少に応じて大きなトルク比tが得られるので、重量および寸法が大きな大出力エンジンを搭載しなくても、車両の駆動力増大要求時において車両の加速感を十分に高めることができる。
【選択図】図11
Description
本発明は、駆動源から入力されたトルクを流体を介して伝達するとともに、容量係数を変更することが可能な車両用可変容量型トルクコンバータの制御装置に関するものである。
流体式伝動装置の一種に、内燃機関により回転駆動されることによって流体流を発生させるポンプ翼車と、そのポンプ翼車からの流体流を受けて回転させられるタービン翼車と、そのタービン翼車からポンプ翼車への流体流中に回転可能に配置されたステータ翼車とを備えたトルクコンバータが知られている。このようなトルクコンバータでは、ステータ翼車が一方向クラッチを介して非回転部材に連結されており、可変容量特性を備えない。一般に、トルクコンバータの流体特性としては、燃費指向であるときは高い容量(容量係数)であること、加速指向であるときは低い容量(容量係数)であることが望まれるが、上記従来の構成では、ポンプ翼車、タービン翼車、ステータ翼車の形状によって一義的に定められてしまうため、走行パターンに拘わらず同一流体特性となり、燃費性能および動力性能を同時に向上させることには限界があった。
これに対し、特許文献1に示されているように、ステータ翼車と非回転部材との間にブレーキ手段を設け、そのブレーキ手段の制動トルクを調節して容量を可変とした可変容量型トルクコンバータが提案されている。これによれば、ブレーキ手段による制動トルクを調節することによってトルクコンバータのトルク比および容量係数を無段階或いは多段階に変化させることが可能となり、運転条件や走行条件に応じて最適なトルク比および容量係数を設定でき、車両の走行性能を高めることができる。
特開平1−169170号公報
しかしながら、上記従来の可変容量型トルクコンバータでは、そのステータ翼車の回転はポンプ翼車の回転方向とは反対の負回転方向の範囲で制御されるに過ぎず、それにより得られるトルク比の上限値や容量係数の下限値には限界があり、駆動源の動力発生状態に応じてトルクコンバータの容量係数を低下させることができず、車両の動力性能を十分に高めることができなかった。たとえば、車両の要求駆動力が増大させられたとき、トルクコンバータのステータ翼車は非回転とされていることからそれによって得られるトルク比は十分ではない場合があり、さらに大きな加速性能を得ようとすると、出力が大きなエンジンを搭載しなければならないという不都合があった。出力が大きなエンジンは、形状および重量が大きいため、車両に搭載することが困難であるばかりか、常時はそれほどの加速性能が必要とされないことから、通常は無駄な大きさおよび重量のエンジンを搭載して走行することになり、燃費およびコスト面で合理的ではなかった。
本発明は以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、重量および寸法が大きな大出力エンジンを搭載しなくても、車両の駆動力増大要求時において車両の加速感を十分に高めることができる車両用可変容量型トルクコンバータの制御装置を提供することにある。
本発明者等は、以上の事情を背景として種々検討を重ねた結果、ステータ翼車を車両の駆動源とは別の動力源である電動機を用いてポンプ翼車の回転方向と同じ正回転方向或いはポンプ翼車の回転方向と反対の負回転方向へ回転させると、従来に比較して容量係数を低くしたり高くしたりできると共に、この容量係数を制御することで車両の駆動力増大要求時すなわちスロットル開度の増加操作時において、大出力のエンジンを用いなくても車両の加速性能を十分に高め得ることを見いだした。本発明はかかる知見に基づいて為されたものである。
すなわち、請求項1にかかる発明の要旨とするところは、回転駆動されることによって流体流を発生させるポンプ翼車と、該ポンプ翼車からの流体流を受けて回転させられるタービン翼車と、該タービン翼車からポンプ翼車への流体流中に回転可能に配置されたステータ翼車と、容量係数を調節するために前記ステータ翼車を回転駆動する電動機とを備え、動力源から駆動輪への動力伝達経路に介挿された車両用可変容量型トルクコンバータの制御装置であって、車両の駆動力増大要求があった場合には、前記トルクコンバータの容量係数を、前記ステータ翼車の非回転状態の値に比較して減少させるように前記電動機の回転を制御する容量係数制御手段を、含むことにある。
また、請求項2にかかる発明の要旨とするところは、請求項1にかかる発明において、前記容量係数制御手段は、前記トルクコンバータの速度比の変化に対する該トルクコンバータの容量係数の変化を、前記ステータ翼車の非回転状態の値に比較して抑制させるものであることにある。
また、請求項3にかかる発明の要旨とするところは、請求項1または2にかかる発明において、前記容量係数制御手段は、前記トルクコンバータの容量係数を該トルクコンバータの速度比の増加に伴って減少させるものであることにある。
また、請求項4にかかる発明の要旨とするところは、請求項1乃至3のいずれか1にかかる発明において、前記容量係数制御手段は、前記トルクコンバータのトルク比が一定となるように該トルクコンバータの容量係数を制御するものであることにある。
また、請求項5にかかる発明の要旨とするところは、請求項1乃至4のいずれか1にかかる発明において、前記容量係数制御手段は、前記トルクコンバータのトルク比がストールトルク比に維持されるように該トルクコンバータの容量係数を制御するものであることにある。
また、請求項6にかかる発明の要旨とするところは、請求項1乃至5のいずれか1にかかる発明において、前記駆動力増大要求の度合いに応じて求められた要求駆動力に基づいて目標トルク比を決定する目標トルク比算出手段と、その目標トルク比算出手段により算出された目標トルク比を発生させるための目標容量係数を実際の速度比に基づいて算出する目標容量係数算出手段とを、含み、前記容量係数制御手段は、前記目標容量係数と前記トルクコンバータの実際の容量係数とが一致するように前記電動機の回転を制御するものであることにある。
請求項1にかかる発明の車両用可変容量型トルクコンバータの制御装置によれば、車両の駆動力増大要求があった場合には、前記容量係数制御手段により、トルクコンバータの容量係数が前記ステータ翼車の非回転状態の値に比較して減少させるように前記電動機の回転が制御されることから、その容量係数の減少に応じて大きなトルク比が得られるので、重量および寸法が大きな大出力エンジンを搭載しなくても、車両の駆動力増大要求時において車両の加速感を十分に高めることができる。
また、請求項2にかかる発明の車両用可変容量型トルクコンバータの制御装置によれば、容量係数制御手段により、前記トルクコンバータの速度比の変化に対する該トルクコンバータの容量係数の変化が、前記ステータ翼車の非回転状態の値に比較して抑制されることから、車両の駆動力増大要求があった場合にエンジン回転速度の上昇が直線的となるので、車両の加速感が好適に得られる。
また、請求項3にかかる発明の車両用可変容量型トルクコンバータの制御装置によれば、容量係数制御手段により、前記トルクコンバータの容量係数がそのトルクコンバータの速度比の増加に伴って減少させられることから、車両の駆動力増大要求があった場合に滑らかな加速が得られ、好適な加速感が得られる。
また、請求項4にかかる発明の車両用可変容量型トルクコンバータの制御装置によれば、容量係数制御手段により、前記トルクコンバータのトルク比が一定となるように該トルクコンバータの容量係数が制御されることから、車両の駆動力増大要求があった場合に車両の等加速が得られ、好適な加速感が得られる。
また、請求項5にかかる発明の車両用可変容量型トルクコンバータの制御装置によれば、容量係数制御手段により、前記トルクコンバータのトルク比がストールトルク比に維持されるように該トルクコンバータの容量係数が制御されることから、車両の駆動力増大要求があった場合に比較的大きな等加速が得られ、好適な加速感が得られる。
また、請求項6にかかる発明の車両用可変容量型トルクコンバータの制御装置によれば、前記駆動力増大要求の度合いに応じて求められた要求駆動力に基づいて目標トルク比を決定する目標トルク比算出手段と、その目標トルク比算出手段により算出された目標トルク比を発生させるための目標容量係数を実際の速度比に基づいて算出する目標容量係数算出手段とが、含まれ、容量係数制御手段により、前記目標容量係数と前記トルクコンバータの実際の容量係数とが一致するように前記電動機の回転が制御されることから、車両の駆動力増大要求があった場合にそれに対応する大きさの等加速が得られ、好適な加速感が得られる。
ここで、好適には、前記車両用可変容量型トルクコンバータには、前記電動機と前記ステータ翼車との間を選択的に連結するクラッチがさらに含まれる。このクラッチを常時は係合させる一方で急激なトルクが印加されるときにスリップさせることにより電動機或いはこれにより回転制御されるステータ翼車が保護されるようにするとともに、電動機のフェイル時においては解放させることでステータ翼車からその電動機を切り離すことができる。
また、好適には、前記車両用可変容量型トルクコンバータには、前記ステータ翼車と非回転部材との間を選択的に連結するブレーキがさらに含まれる。そのブレーキを係合作動させることにより、電動機のフェイル時などではその電動機を用いないでステータ翼車に反力を付与することができる。
また、好適には、前記車両用可変容量型トルクコンバータにおいて、ステータ翼車と前記クラッチまたは前記ブレーキとの間には、そのステータ翼車のポンプ翼車の回転方向と同じ正回転方向の回転を許容するがそのポンプ翼車の回転方向と反対の負回転方向の回転を阻止する一方向クラッチが設けられる。電動機のフェイル時であっても、従来の一定容量のトルクコンバータと同様の、一定のトルクコンバータ特性が得られる。
また、好適には、前記車両用可変容量型トルクコンバータは、動力伝達装置として有段式の自動変速機が設けられている車両に適用されるだけに限られず、例えば、手動変速機、無段変速機(CVT)等その他の形式の動力伝達装置が設けられている車両等にも適用されうる。
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明の一実施例の制御装置により制御される車両用のトルクコンバータ6(可変容量型トルクコンバータ)を含む動力伝達装置7の構成を説明する骨子図である。この車両用動力伝達装置7は、上記トルクコンバータ6と縦置型の自動変速機8とを有するものであって、FR(フロントエンジン・リヤドライブ)型車両に好適に採用されるものであり、車両走行用の動力源としてエンジン9を備えている。このエンジン9は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関にて構成され、必要に応じてターボチャージャ、スーパチャージャなどの過給器を備えるものである。エンジン9の出力は、トルクコンバータ6、自動変速機8、図示しない差動歯車装置(終減速機)、一対の車軸などを介して左右の駆動輪へ伝達されるようになっている。トルクコンバータは、動力源としてのエンジン9から上記駆動輪までの動力伝達経路に介挿された流体伝動装置として機能する。
トルクコンバータ6は、エンジン9のクランク軸に連結され、そのエンジン9から回転駆動されることによってトルクコンバータ6内の作動油の流動による流体流を発生させるポンプ翼車6pと、自動変速機8の入力軸22に連結され、そのポンプ翼車6pからの流体流を受けて回転させられるタービン翼車6tと、タービン翼車6tからポンプ翼車6pへの流体流中に回転可能に配置されたステータ翼車6sとを備えており、作動油(流体)を介して動力伝達を行うようになっている。
また、上記ポンプ翼車6pとタービン翼車6tとの間にはロックアップクラッチL/Cが設けられており、後述の油圧制御回路30によってそのロックアップクラッチL/Cの係合状態、スリップ状態、或いは解放状態が制御されるようになっており、完全係合状態とされることによってポンプ翼車6pおよびタービン翼車6tが一体回転させられるようになっている。すなわち、エンジン9のクランク軸と自動変速機8の入力軸22とが相互に直結状態とされるようになっている。
また、トルクコンバータ6は、ステータ翼車6sを回転駆動する電動機10と、その電動機10とステータ翼車6sとの間に設けられてそれらを選択的に連結するクラッチC0と、ステータ翼車6sと非回転部材であるトランスミッションケース(以下、ケースと表す)11との間に設けられてそれらを選択的に連結するブレーキB0とを備えている。
上記電動機10は、ブレーキB0が解放され且つクラッチC0が係合された状態で、その駆動によってステータ翼車6sのポンプ翼車6pの回転方向である正回転方向の回転数を制御するようになっている。この際、ステータ翼車6sには、例えば、図2(a)に示すように後述の電子制御装置78から回転駆動のために電動機10に供給される駆動電流IDの大きさに比例する上記正回転方向の駆動トルクTDが与えられる。また、電動機10は、その駆動によってステータ翼車6sの負回転方向の回転数を制御するようになっている。この際、ステータ翼車6sには、例えば、電動機10に供給される駆動電流IDの大きさに比例する上記負回転方向の駆動トルクTDが与えられる。
また、電動機10は、ブレーキB0が解放され且つクラッチC0が係合された状態で、ステータ翼車6sに加えられる流体流によって回転させられることによる回生(発電)によってもステータ翼車6sのポンプ翼車6pの回転方向とは反対の負回転方向の回転数を制御するようになっている。この際、ステータ翼車6sには、例えば、図2(b)に示すように例えば車両に設けられた蓄電装置等に供給すなわち蓄電される発電電流IGの大きさに比例する上記負回転方向の負荷(反力)トルクすなわち制動トルクTBが与えられる。
上記クラッチC0およびブレーキB0は、油圧アクチュエータとその油圧アクチュエータに供給される油圧により摩擦係合或いは解放される多板式のクラッチあるいはブレーキとを備える油圧式摩擦係合装置である。ステータ翼車6sは、ブレーキB0が係合されることにより非回転部材であるケース11に固定され回転不能にされる。また、ステータ翼車6sは、ブレーキB0の係合度合いすなわち係合圧が調整されることで発生されるスリップによっても、上記ポンプ翼車6pの回転方向とは反対の負回転方向に回転させられるようになっている。この際、ステータ翼車6sには、例えば上記係合圧が大きくなるとともに増大する上記負回転方向の負荷トルクすなわち制動トルクTBが与えられる。また、ステータ翼車6sには、クラッチC0が係合されることにより上記電動機10による駆動トルクTDあるいは制動トルクTBがそのまま伝達されるようになっており、また、クラッチC0の係合度合いすなわち係合圧が調整されることで発生されるスリップによりその係合圧の大きさに応じて上記駆動トルクTDあるいは制動トルクTBの伝達割合が変化させられるようになっている。
自動変速機8は、車体に取り付けられる非回転部材としてのケース11内において、ダブルピニオン型の第1遊星歯車装置12を主体として構成されている第1変速部14と、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置16及びダブルピニオン型の第3遊星歯車装置18を主体として構成されている第2変速部20とを共通の軸心上に有し、入力軸22の回転を変速して出力軸24から出力する。入力軸22は、走行用の動力源であるエンジン9からの動力により回転駆動されるトルクコンバータ6のタービン軸でもある。なお、このトルクコンバータ6および自動変速機8はその軸心に対して略対称的に構成されており、図1の骨子図においてはそれら軸心の下半分が省略されている。
上記第1遊星歯車装置12は、サンギヤS1、互いに噛み合う複数対のピニオンギヤP1、そのピニオンギヤP1を自転及び公転可能に支持するキャリアCA1、ピニオンギヤP1を介してサンギヤS1と噛み合うリングギヤR1を備えている。また、第2遊星歯車装置16は、サンギヤS2、ピニオンギヤP2、そのピニオンギヤP2を自転及び公転可能に支持するキャリアCA2、ピニオンギヤP2を介してサンギヤS2と噛み合うリングギヤR2を備えている。また、第3遊星歯車装置18は、サンギヤS3、互いに噛み合う複数対のピニオンギヤP2及びP3、そのピニオンギヤP2及びP3を自転及び公転可能に支持するキャリアCA3、ピニオンギヤP2及びP3を介してサンギヤS3と噛み合うリングギヤR3を備えている。
図1において、クラッチC1〜C4およびブレーキB1、B2は、クラッチC0およびブレーキB0と同様に油圧アクチュエータとその油圧アクチュエータに供給される油圧により係合或いは解放される多板式のクラッチあるいはブレーキとを備える油圧式摩擦係合装置であって、第1回転要素RM1(サンギヤS2)は、第1ブレーキB1を介してケース11に選択的に連結されて回転停止され、第3クラッチC3を介して中間出力部材である第1遊星歯車装置12のリングギヤR1(すなわち第2中間出力経路PA2)に選択的に連結され、さらに第4クラッチC4を介して第1遊星歯車装置12のキャリアCA1(すなわち第1中間出力経路PA1の間接経路PA1b)に選択的に連結されるようになっている。
また、第2回転要素RM2(キャリアCA2およびCA3)は、第2ブレーキB2を介してケース11に選択的に連結されて回転停止され、第2クラッチC2を介して入力軸22(すなわち第1中間出力経路PA1の直結経路PA1a)に選択的に連結されるようになっている。また、第3回転要素RM3(リングギヤR2およびR3)は、出力軸24に一体的に連結されて回転を出力するようになっている。また、第4回転要素RM4(サンギヤS3)は、第1クラッチC1を介してリングギヤR1に連結されるようになっている。なお、第2回転要素RM2とケース11との間には、第2回転要素RM2の正回転(入力軸22と同じ回転方向)を許容しつつ逆回転を阻止する一方向クラッチF1が第2ブレーキB2と並列に設けられている。
図3は、自動変速機8において各変速段を成立させる際の各係合要素の作動状態を説明する図表であり、「○」は係合状態を、「(○)」はエンジンブレーキ時のみ係合状態を、空欄は解放状態をそれぞれ表している。図3に示すように、本実施例の自動変速機8は、上記各係合装置すなわち複数の油圧式摩擦係合装置(クラッチC1〜C4、ブレーキB1、B2)が選択的に係合させられることにより変速比(=自動変速機8の入力軸回転数NIN/自動変速機8の出力軸回転数NOUT)が異なる前進8段を含む複数の変速段が成立するようになっている。なお、各変速段の変速比は、第1遊星歯車装置12、第2遊星歯車装置16、および第3遊星歯車装置18の各ギヤ比ρ1、ρ2、ρ3によって適宜定められる。
図4は、上記複数の油圧式摩擦係合装置であるクラッチC0〜C4、ブレーキB0〜B2(以下特に区別しない場合にはクラッチC、ブレーキBと記載する)に対して油圧を供給する油圧制御回路30のうち、その複数の油圧式摩擦係合装置に供給される油圧を制御するための部分を示す回路図である。図4に示すように、本実施例の油圧制御回路30には、前記クラッチC0〜C4、およびブレーキB0〜B2の各油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)32、33、34、35、36、37、38、39に応じてリニアソレノイド弁SL1、SL2、SL3、SL4、SL5、SL6、SL7、SL8(以下、特に区別しない場合にはSLと記載する)がそれぞれ個別に設けられている。上記各油圧アクチュエータ32〜39には、油圧供給装置40から出力される元圧すなわちライン圧PLがそれらリニアソレノイド弁SLにより個別に調圧されて供給されるようになっている。
油圧供給装置40は、後述の電子制御装置78により励磁されて油路を開閉するソレノイド弁や油圧制御を行うリニアソレノイド弁、それらソレノイド弁やリニアソレノイド弁から出力される信号圧に従って油路を開閉したり油圧制御を行ったりする開閉弁、調圧弁などを備えて構成されており、エンジン9によって回転駆動される機械式の油圧ポンプ42(図1参照)から発生する油圧を元にして上記ライン圧PLを調圧する。
図5は、リニアソレノイド弁SLの構成を説明する断面図である。ここで、本実施例の油圧制御回路30に備えられたリニアソレノイド弁SL1〜SL8は、基本的には何れも同じ構成であるため、図5にはリニアソレノイド弁SL1を例示している。このリニアソレノイド弁SL1は、通電されることにより電気を駆動力に変換する装置であるソレノイド50と、そのソレノイド50の駆動により元圧であるライン圧PLを調圧して所定の出力油圧PSL1を発生させる調圧部52とを備えている。
ソレノイド50は、円筒状の巻芯54と、その巻芯54の外周に導線が巻回されたコイル56と、その巻芯54の内部を軸心方向に移動可能に設けられたコア58と、そのコア58における調圧部52とは反対側の端部に固設された鉄片60と、それら巻芯54、コイル56、コア58、および鉄片60を格納するための有底円筒状のヨーク62と、そのヨーク62の開口に嵌め着けられたカバー64とを備えている。調圧部52は、ヨーク62に嵌め着けられたスリーブ66と、そのスリーブ66の内部を軸心方向に移動可能に設けられて入力ポート72と出力ポート76との間を開閉する弁子68と、その弁子68をソレノイド50に向かう方向すなわち閉弁方向に付勢するスプリング70とを備えており、その弁子68におけるソレノイド50側の端部は、コア58における調圧部52側の端部に当接させられている。
コイル56に駆動電流ISDが流されることによりコア58を介して弁子68を開弁方向に付勢する上記駆動電流ISDに比例するソレノイド推力をFSOL、スプリング70によって弁子68を閉弁方向に付勢するばね力をFS、弁子68に設けられた通路73を介して油室75に供給される出力油圧PSL1とその油室75における弁子68の軸心方向の面積差との積で表され、弁子68を閉弁方向に付勢するフィードバック推力をFFとしたとき、弁子68は、次式(1)が釣り合うように作動させられる。
FSOL=FS+FF ・・・式(1)
このため、リニアソレノイド弁SL1では、上記弁子68の開弁あるいは閉弁方向の移動位置すなわち作動位置に応じて入力ポート72から流入する作動油の流量およびドレンポート74から排出される作動油の流量が調整される。そして、たとえば図6に示されるような駆動電流ISDと出力油圧PSL1との関係を示す特性にしたがって、入力ポート72から入力されるライン圧PLから駆動電流ISDに応じた所定の出力油圧PSL1が調圧されて、その出力油圧PSL1が出力ポート76から出力されるようになっている。
図7は、図1のエンジン9や自動変速機8やトルクコンバータ6などを制御するために車両に設けられた制御系統を説明するブロック線図である。電子制御装置78には、例えばエンジン9のクランク角度およびエンジン回転数NE[rpm]に対応するクランクポジションACR[°]を検出するクランクポジションセンサ80、トルクコンバータ6のタービン回転数NT[rpm]すなわち自動変速機8の入力軸回転数NIN[rpm]を検出するタービン回転数センサ82、車速V[km/h]に対応する自動変速機8の出力軸回転数NOUT[rpm]を検出する出力軸回転数センサ84、エンジン9の吸入空気量QA[m3]を検出する吸入空気量センサ86、エンジン9の吸入空気温度TA[℃]を検出する吸入空気温度センサ88、エンジン9の図示しない吸気配管に設けられたスロットル弁の開き角すなわちスロットル弁開度θTH[%]を検出するスロットルセンサ90、エンジン9等の冷却に使用される冷却水の温度すなわち冷却水温TW[℃]を検出する冷却水温センサ92、油圧制御回路30内の作動油の温度すなわち作動油温度TOIL[℃]を検出するAT油温センサ94、アクセルペダル98の操作量すなわちアクセル開度Acc[%]を検出するアクセル開度センサ96、常用ブレーキであるフットブレーキ102の操作の有無を表すブレーキ操作信号BONを検出するフットブレーキスイッチ100、変速操作装置としてのシフトレバー106のシフトポジション(操作位置)PSHを検出するシフトポジションセンサ104等から、クランクポジションACR[°](エンジン回転数NE[rpm])タービン回転数NT[rpm](入力軸回転数NIN[rpm])出力軸回転数NOUT[rpm](車速V[km/h])、吸入空気量QA[m3]、吸入空気温度TA[℃]、スロットル弁開度θTH[%]、冷却水温TW[℃]、作動油温度TOIL[℃]、アクセル開度Acc[%]、ブレーキ操作信号BON、シフトポジション(操作位置)PSHなどを表す信号が電子制御装置78に供給される。
上記アクセルペダル98は、運転者の要求する車両の駆動力に応じて踏み込み操作されるものであって、その操作量であるアクセルペダル98の踏込量すなわちアクセル開度Accは、駆動力増大要求量に相当する。
電子制御装置78は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って上記各入力信号を処理し、その処理結果として算出された処理信号すなわち出力信号を電子スロットル弁108、燃料噴射装置110、点火装置112、油圧制御回路30、および電動機10などにそれぞれ出力するようになっている。電子制御装置78は、このような入出力信号処理を行うことにより、エンジン9の出力制御や自動変速機8の変速制御、あるいはトルクコンバータ6のステータ翼車6sの回転制御などを実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用や変速制御用やトルクコンバータ制御用などに分けて構成される。
本実施例では上記エンジン9の出力制御は、電子スロットル弁108、燃料噴射装置110、点火装置112などによって行われ、たとえば、実際のエンジン回転数NEにおいて運転者の要求する車両の駆動力が得られるように、後述の図13に示すような予め設定されて記憶された所謂トルクマップに従って上記電子スロットル弁108のスロットル弁開度θTHを制御する他、燃料噴射装置110により燃料噴射量を制御したり、点火装置112により点火時期を制御する。
また、上記自動変速機8の変速制御は、油圧制御回路30によって行われ、例えば車速軸とスロットル弁開度軸またはアクセル開度軸との二次元座標内において設定された複数本の変速線から構成される予め記憶された変速線図(変速マップ)から実際のスロットル弁開度θTHまたはアクセル開度Accおよび車速Vに基づいて自動変速機8の変速すべきギヤ段を決定し、その決定されたギヤ段を成立させるように前記図3に示す作動表に従ってクラッチC1〜C4およびブレーキB1、B2の係合解放状態を切り換える。このクラッチCおよびブレーキBの係合解放状態の切換は、駆動力変化などの変速ショックが発生したり摩擦材の耐久性が損なわれたりすることを防止するために、油圧制御回路30のリニアソレノイド弁SLの駆動電流ISDの制御により上記クラッチCおよびブレーキBの係合圧が連続的に制御されることによって行われる。なお、上記変速制御は、スロットル弁開度θTHまたはアクセル開度Accの他に、吸入空気量QA、路面勾配などに基づいて行われる等、種々の態様が可能である。
また、上記トルクコンバータ6のステータ翼車6sの回転制御は、電動機10またはクラッチC0やブレーキB0によって行われる。具体的には、上記ステータ翼車6sの回転制御は、電子制御装置78の指令に従って、図示しないインバータから電動機10に供給される駆動電流IDの大きさに比例する駆動トルクTD、あるいはその電動機10の回生により出力される発電電流IGの大きさに比例する制動トルクTB、あるいはクラッチC0やブレーキB0にそれぞれ対応して設けられたリニアソレノイド弁SL7、SL8に供給される駆動電流ISDの大きさに応じたクラッチC0やブレーキB0の係合圧が、それぞれ適宜調整されることにより実行される。
ここで、本実施例のトルクコンバータ6において、遠心力により外周側に張り付く作動油は、トルクコンバータ6の断面において図1の流線FLに沿うようにポンプ翼車6p、タービン翼車6t、スタータ翼車6sの順に循環する。図8に示すように、ポンプ翼車6p、タービン翼車6t、ステータ翼車6sは、周方向において一定間隔に隔てられた複数の羽根を備えている。図8は、各翼車におけるトルクコンバータ6内の作動油の流線FLに沿った羽根の形状をそれぞれ表している。ポンプ翼車6pの羽根によってエネルギーが与えられることにより流動させられた作動油は、タービン翼車6tの羽根に作用してタービン翼車6tを回転させる。タービン翼車6tを通過した作動油は、コンバータ領域では、ステータ翼車6sの羽根に当たって方向変換させられた後、ポンプ翼車6pへ循環させられる。上記ステータ翼車6sの羽根に作動油が当たって方向変換させられることにより、そのステータ翼車6sに反力トルクが発生させられる。この反力トルクは、上記作動油の方向変換量(角度)に対応しており、後述のトルク比tの大きさに対応している。
角運動量の定義によれば各翼車(ポンプ翼車6p、タービン翼車6t、およびステータ翼車6s)が作動油(流体)に与えるトルクT[N・m]は、次式(2)のように表される。
T=(γ/g)×Q×△(r×vU) ・・・式(2)
式(2)において、γはトルクコンバータ6内の作動油の比重量[kg/m3]、gは重力加速度[m/s2]、Qは上記作動油の体積流量[m3/s]、△(r×vU)は各翼車における流体流の出口と入口とにおける作動油の各絶対速度のモーメントr×vU[m2/s]の差である。
上記式(2)から、ポンプ翼車6pが作動油に与えるトルクT1[N・m]、タービン翼車6tが作動油に与えるトルクT2[N・m]、およびステータ翼車6sが作動油に与えるトルクT3[N・m]は、次式(3)乃至(5)のように表される。式(3)乃至(5)において、TPはポンプトルク[N・m]すなわちエンジン出力トルクTE、TTはタービントルク[N・m]すなわち自動変速機8への入力トルク、TSはステータ翼車6sの反力トルクの大きさと一致するステータトルク[N・m]すなわちステータ翼車6sにより作動油の流れの向きが変えられる際にそのステータ翼車6sに対してポンプ翼車6pの回転方向である正回転方向に作用するトルクである。
T1= TP=(γ/g)×Q×(VUP×r2−VUS×r1)・・・式(3)
T2=−TT=(γ/g)×Q×(VUT×r3−VUP×r2)・・・式(4)
T3= TS=(γ/g)×Q×(VUS×r1−VUT×r3)・・・式(5)
T2=−TT=(γ/g)×Q×(VUT×r3−VUP×r2)・・・式(4)
T3= TS=(γ/g)×Q×(VUS×r1−VUT×r3)・・・式(5)
式(3)乃至(5)において、r1はポンプ翼車6pの流体流の出口bpおよびタービン翼車6tの流体流の入口atにおける回転軸心すなわち自動変速機8の入力軸(タービン軸)22からの距離[m]、r2はタービン翼車6tの流体流の出口btおよびステータ翼車6sの流体流の入口asにおける回転軸心からの距離[m]、r3はステータ翼車6sの流体流の出口bsおよびポンプ翼車6pの流体流の入口apにおける回転軸心からの距離[m]である。また、式(3)乃至(5)中において、VUPはポンプ翼車6pの絶対速度の円周分速度[m/s]、VUTはタービン翼車6tの絶対速度の円周分速度[m/s]、VUSはステータ翼車6sの絶対速度の円周分速度[m/s]である。
式(3)乃至(5)からT1+T2+T3=0(零)が成立するため、ポンプトルクTP、タービントルクTT、およびステータトルクTSは次式(6)のように表される。つまり、トルクコンバータ6におけるポンプトルクTPに対するタービントルクTTのトルク増加分は、ステータトルクTSに一致することになる。
TT=TP+TS・・・式(6)
本実施例のトルクコンバータ6では、ステータ翼車6sの反力が前述のステータ翼車6sの回転制御により増減させられることから、その増減に伴ってタービン翼車6tから出力される出力トルクすなわちタービントルクTTが従来の一定容量のトルクコンバータで得られる出力トルクに対して増減させられるようになっている。
図9および図10は、上述の内容を示す、本実施例のトルクコンバータ6の特性を示す図である。図9は、タービン翼車6tのタービン回転数NT[rpm]とポンプ翼車6pのポンプ回転数NP[rpm]との回転数比すなわち速度比e(=NT/NP)に対する、タービントルクTTとポンプトルクTPとのトルク比(トルク増幅率)t(=TT/TP)を示す図であり、図10は、上記速度比e(=NT/NP)に対する、容量係数C(=TP/NP 2)[N・m/rpm2]を示す図である。上記容量係数Cは、ポンプ翼車6pを回転させるのにどれだけのトルクが必要か、すなわちポンプ翼車6pがどれだけ回されにくいかを表すものであり、この容量係数Cが小さいと、ポンプ翼車6pがタービン翼車6tに対して滑りやすくなる、すなわちエンジン9のエンジン回転数NE変化が素早く行われるようになり、容量係数Cが大きいと、ポンプ翼車6pがタービン翼車6tに対して滑りにくくなる、すなわちエンジン9のエンジン回転数NEとトルクコンバータ6のタービン翼車6tとの回転数差が小さくされるようになっている。
図9および図10において、制動トルクTBが所定の値に調整されるかあるいはブレーキB0が係合されることにより、ステータ翼車6sがケース11に固定され、図9の実線に示すベースラインBtで示すように従来の一定容量のトルクコンバータと同様に設計上定まる所定のトルク比tでトルクの伝達が行われる。なお、このときのトルクコンバータ6の容量係数Cは、図10の実線で示すベースラインBCで示すようになる。
また、クラッチC0が適宜係合された状態で電動機10により駆動トルクTDが所定の値に調整されてステータ翼車6sがポンプ翼車6pと同一回転数で回転させられると、ステータトルクTSが増加し、図9のステータ正転を示す長点線のように従来の一定容量のトルクコンバータで得られるよりも大きいトルク比tでトルクの伝達が行われる。このときのトルクコンバータ6の容量係数Cは、図10のステータ正転を示す長点線のようになる。なお、トルク比tおよび容量係数Cは、同じ速度比eであっても電動機10により駆動トルクTDがさらに増減されることにより、図9の矢印aで示すように図9のベースラインBtからステータ正転を示す長点線あるいはその長点線以上、および図10の矢印dに示すように図10のベースラインBCからステータ正転を示す長点線あるいはその長点線以下の範囲で適宜変更される。
また、クラッチC0およびブレーキB0が解放されることによりステータトルクTSが零とされると、図9のステータフリーを示す1点鎖線で示すようにトルクの増大が行われずトルク比t=1でトルクの伝達が行われる。その結果、トルクコンバータ6が流体継手として作動するようになる。このときのトルクコンバータ6の容量係数Cは、図10のステータフリーを示す1転鎖線のようになる。
また、制動トルクTBが所定の値に調整されるかあるいはブレーキB0の係合圧が所定の値に調整されてブレーキB0がスリップさせられると、ステータトルクTSがステータ翼車6sが固定される場合に比較して減少し、図9のステータモータ回生で示す短点線で示すように従来の一定容量のトルクコンバータで得られるよりも小さいトルク比tでトルクの伝達が行われる。このときのトルクコンバータ6の容量係数Cは、図10のステータモータ回生で示す短点線のようになる。なお、トルク比tおよび容量係数Cは、同じ速度比eであっても制動トルクTBあるいはブレーキB0の係合圧がさらに増減されることにより、図9および図10の矢印b、cに示すようにベースラインBt又はBCからステータフリーで示す1点鎖線までの範囲で適宜変更される。
つまり、本実施例における電動機10は、ステータ翼車6sをポンプ翼車6pの回転方向と同じ方向である正回転方向に回転制御することにより、ステータ翼車6sがケースに対して固定されている従来の一定容量のトルクコンバータと同様に設計上定まる所定のトルク比tおよび容量係数Cに対して、トルク比tを増大させ、容量係数Cを減少させるものである。さらに、本実施例における電動機10は、その回生制御によってステータ翼車6sをポンプ翼車6pの回転方向とは反対の負回転方向に回転制御することにより、ステータ翼車6sがケースに対して固定されているときよりもトルク比tを減少させ、容量係数Cを増大させるものである。さらに、本実施例におけるブレーキB0は、そのスリップによってステータ翼車6sをポンプ翼車6pの回転方向とは反対の負回転方向に回転制御することにより、ステータ翼車6sがケースに対して固定されているときよりもトルク比tを減少させ、容量係数Cを増大させるものである。
具体的には、トルクコンバータ6の制御装置として機能する電子制御装置78は、車両の発進時あるいは加速走行時に、ブレーキB0を解放させてクラッチC0を係合させるとともに電動機10によりステータ翼車6sをポンプ翼車6pと同回転方向へ回転させる回転制御を行う。これにより、前述のようにトルクコンバータ6のトルク比tが増大制御され容量係数Cが低減制御される。このトルク比tの増大により発進トルクあるいは加速トルクすなわち駆動力が増大し、容量係数Cの低減によりエンジン回転のスムーズな上昇が可能となる。このような制御は、高アクセル開度等の加速(動力性能)指向走行時において有効であり、特に、エンジン回転のよりスムーズな上昇が求められるターボチャージャ付エンジンあるいはディーゼルエンジン等にて実行されると有効である。
また、電子制御装置78は、車両の発進時あるいは加速走行時に、ブレーキB0を解放させるとともに、クラッチC0を解放させるかあるいは電動機10を空転状態とする制御を行う。これにより、ステータ翼車6sの回転が非回転部材に対してフリーにされ、前述のようにトルクコンバータ6のトルク比tが1となり、容量係数Cが増大される。この容量係数Cの増大によりトルクコンバータ6が滑りにくくなる、すなわちトルクコンバータ6の入力側のポンプ翼車6pが回されにくくなりエンジン回転数NEの上昇を抑制させることが可能となる。このような制御は、低アクセル開度等の低燃費指向走行時において有効である。
また、電子制御装置78は、車両の発進時あるいは加速走行時に、ブレーキB0を解放し且つクラッチC0を係合させるとともに、電動機10をステータ翼車6sに作用するトルクにより回転させられるようにする制御を行う。すなわち、電子制御装置78は、車両の発進時あるいは加速走行時にトルクコンバータ6がトルク増幅を行っている場合において、前述のようにステータ翼車6sが流体流から受けるトルクすなわち反力トルクによりポンプ翼車6pの回転方向とは反対方向の負回転方向に回転されるに伴う電動機10の回生量を制御する。これにより、トルクコンバータ6のトルク比tが低減制御され、容量係数Cが増大制御される。このような制御は、低アクセル開度等の低燃費指向走行時において有効である。さらに、電動機10の回生による燃費向上が可能となる。
また、電子制御装置78は、クラッチC0を常時は係合させる一方で急激なトルクすなわち駆動トルクTDあるいは制動トルクTBが印加されるときにスリップさせることにより、電動機10或いはこれにより回転制御されるステータ翼車6sが保護されるようにするとともに、電動機10のフェイル時においては解放させることでステータ翼車6sからその電動機10を切り離す。また、ブレーキB0を係合作動させることにより、電動機10のフェイル時などではその電動機10を用いないでステータ翼車6sに反力を付与する。
また、電子制御装置78は、ブレーキB0を常時は係合させる一方で、トルクコンバータ6がコンバータ領域からカップリング領域に移行するとき、すなわちタービン翼車6tから出力された作動油がステータ翼車6sの羽根の背面に当たってステータ翼車6sの反力トルクが正回転方向に作用し始めるときに、ブレーキB0の係合を解放してトルクコンバータ6の特性を流体継手と同一のものとする。
図11は、トルクコンバータ6の制御装置として機能する電子制御装置78の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
図11において、駆動力増大要求判定手段116は、実際のアクセル開度Accが予め記憶された所定値TAP1よりも大きい場合に、車両の駆動力F[N]を増大させるように要求されたことすなわち駆動力増大要求を判定する。上記所定値TAP1は、後述の容量係数変更制御を実施することにより要求駆動力F*を満足させる場合に相当するアクセル開度Accに予め設定されており、たとえば95[%]程度に設定される。なお、本実施例では上記所定値TAP1が95[%]程度に予め設定されるが、これに限らず0乃至100[%]の間で適宜設定され得る。
車両状態算出手段118は、車両状態を示す車両の現在の駆動力Fや車速V、あるいはエンジン9の現在のエンジン回転数NEやエンジントルクTE、あるいはトルクコンバータ6の現在の速度比eやトルク比t等の車両状態値を逐次算出する。
車両状態算出手段118は、車速Vに対応する自動変速機8の実際の出力軸回転数NOUTに基づいて、予め実験的に求められて記憶された関係から車両の現在の車速Vを算出する。そして、車両状態算出手段118は、その算出された車速Vに基づいて、その車速Vが0(零)である場合に車両が停止状態であると判断する。
また、車両状態算出手段118は、エンジン回転数NEに対応するエンジン9のクランク軸の位置であるクランクポジションACRを表す電気的信号を基に求められた、例えば上記クランク軸の所定時間内の回転回数に基づいて、予め設定されて記憶された関係からエンジン9の現在のエンジン回転数NEを算出する。
また、車両状態算出手段118は、後述の図13に示すような所謂トルクマップと称される、スロットル弁開度θTHをパラメータにしてエンジントルクTEとエンジン回転数NEとの予め実験的に求められて記憶された関係から、実際のスロットル弁開度θTHおよび現在のエンジン回転数NEに基づいて現在のエンジントルクTEを算出する。
また、車両状態算出手段118は、予め記憶された関係から実際のタービン回転数NTおよび現在のエンジン回転数NEに基づいて、トルクコンバータ6の現在の速度比e(=NT/NE)を算出する。
また、車両状態算出手段118は、予め記憶された関係から現在のエンジン回転数NEおよび現在のエンジントルクTEに基づいて、トルクコンバータ6の現在の容量係数C(=TP/NP 2=TE/NE 2)を算出する。
また、車両状態算出手段118は、トルクコンバータ6のトルク比tと速度比eと容量係数Cとの予め実験的に求められて記憶された関係(マップ)から、現在の速度比eと現在の容量係数Cとに基づいて現在のトルク比tを算出する。
また、車両状態算出手段118は、現在のエンジントルクTEと、自動変速機8の現在の変速段における変速比(トランスミッションギヤ比)γと、エンジン9から駆動輪までの動力伝達経路における自動変速機8以外の変速装置としての終減速装置(差動歯車装置)の減速比(ファイナルギヤ比)iと、駆動輪のタイヤ有効半径rWと、エンジン9から駆動輪までの動力伝達経路における動力伝達効率η1と、トルクコンバータ6の現在のトルク比tとに基づいて、予め設定されて記憶された関係である次式(9)に従って現在の駆動力Fを算出する。なお、上記変速比γ、減速比i、タイヤ有効半径rW、および動力伝達効率η1は、予め設定されて記憶されている。
F= (TE×t×η1×γ×i) /rW ・・・式(9)
目標トルク比算出手段120は、駆動力増大要求の度合いを示す駆動力増大要求量に応じて算出された要求駆動力F*に基づいて、その要求駆動力F*を得るためにそれに対応する大きさのストールトルク比tSTALLを決定し、そのストールトルク比tSTALLから目標トルク比t*を決定する。例えばストールトルク比tSTALLを目標トルク比t*とする。ここで、上記ストールトルク比tSTALLとは、車両が停止時から発進しようとしている状態すなわち速度比eが0(零)の時における、トルクコンバータ6のトルク比tのことである。たとえば、目標トルク比算出手段120は、図12に示すようなアクセル開度Accをパラメータとして車速Vと要求駆動力F*との予め実験的に求められて記憶された関係(駆動力マップ)から、駆動力増大要求量に対応する実際のアクセル開度Accおよび実際の車速Vに基づいて要求駆動力F*を算出する。また、目標トルク比算出手段120は、要求駆動力F*とストールトルク比tSTALLとの予め実験的に求められて記憶された関係(マップ)に従って、上記算出された要求駆動力F*を基にストールトルク比tSTALLを決定する。
目標容量係数算出手段122は、目標トルク比算出手段120により決定された目標トルク比t*を発生させるための目標容量係数C*を、速度比eをパラメータとして容量係数Cとトルク比tとの予め設定されて記憶された関係(マップ)から、現在の速度比eおよび目標トルク比t*に基づいて逐次算出する。
容量係数制御手段124は、予め記憶された関係から車両状態算出手段118にて算出されたエンジン9の現在のエンジン回転数NEおよび現在のエンジントルクTEに基づいて、トルクコンバータ6の現在の容量係数C(=TP/NP 2=TE/NE 2)を算出する。次いで、容量係数制御手段124は、目標容量係数算出手段122により算出された目標容量係数C*と上記現在の容量係数Cとが一致するようにステータ翼車6sを回転駆動する電動機10を制御する容量係数変更制御を実施する。これにより、容量係数制御手段124は、前記駆動力増大要求があった場合に、トルクコンバータ6の容量係数Cを、そのトルクコンバータ6のステータ翼車6sが非回転状態すなわちケース11に固定されている状態の容量係数Cに比較して、減少させるようにステータ翼車10の回転制御を行うようになっている。具体的には、容量係数制御手段124は、トルクコンバータ6の速度比eの変化に対するそのトルクコンバータ6の容量係数Cの変化をステータ翼車6sの非回転状態の値に比較して抑制させ、且つトルクコンバータ6の容量係数Cをそのトルクコンバータ6の速度比eの増加に伴って減少させる。これにより、容量係数制御手段124は、トルクコンバータ6のトルク比tがストールトルク比tSTALLに維持されて一定となるように、トルクコンバータ6の容量係数Cを制御するものとなっている。
つまり、目標容量係数算出手段122により算出されて容量係数制御手段124にて用いられる目標容量係数C*は、その容量係数制御手段124が実施される際の車両状態を示す前記車両状態値に基づいてトルクコンバータ6のトルク比tがストールトルク比tSTALLに維持されて一定となるように予め実験的に求められて記憶されている。
また、容量係数制御手段124は、クランクポジションACRを表す電気的信号を基に求められた例えば前記クランク軸の所定時間内の回転回数に基づいて、予め設定されて記憶された関係からエンジン9の現在のエンジン回転数NEを算出し、続いて、実際のタービン回転数NTおよび現在のエンジン回転数NEに基づいてトルクコンバータ6の現在の速度比e(=NT/NE)を算出し、続いて、トルクコンバータ6のトルク比tと速度比eと容量係数Cとの予め実験的に求められて記憶された関係(マップ)から、現在の速度比eと現在の容量係数Cとに基づいて現在のトルク比tを算出する。そして、容量係数制御手段124は、上記算出された現在のトルク比tと、目標トルク比算出手段120にて決定された目標トルク比t*との差の絶対値が、予め例えば目標トルク比t*の5%に設定されている閾値K以下であるか否かを判定する。なお、本実施例では、上記閾値Kが目標トルク比t*の5%に設定されているが、これに限らず適宜所望の値に設定され得る。
容量係数制御手段124は、上記判断が肯定された場合に容量係数変更制御終了判定を行う。すなわち、容量係数制御手段124は、現在のトルク比tと目標トルク比t*との差の絶対値が閾値K以下であると判定された場合には、車両の現在の駆動力Fが要求駆動力F*に達したか否かに基づく容量係数変更制御終了判定を行う。なお、車両の現在の駆動力Fが要求駆動力F*に達した場合には、上記容量係数変更制御終了判定の成立が肯定される。
通常走行制御手段126は、上記容量係数制御手段124における容量係数変更制御終了判定の成立が肯定された場合に、可変容量終了制御を実施する。本実施例における上記可変容量終了制御とは、例えば、ブレーキB0を徐々に係合しつつクラッチC0を徐々に解放することによって、回転制御されていたステータ翼車6sを徐々に非回転状態にするものである。
また、通常走行制御手段126は、車両が停止状態であり且つ駆動力増大要求判定手段116においてアクセル開度AccがTAP1以下であると判定された場合に、通常走行制御を実施する。上記通常走行制御とは、たとえば、常時は係合されているブレーキB0をそのまま係合し続け且つ常時は解放されているクラッチC0をそのまま解放し続けることによって、ステータ翼車6sの非回転状態を維持し、トルクコンバータ6を従来の一定容量のトルクコンバータと同様の、一定のトルクコンバータ特性にするものである。なお、通常走行制御手段126は、前記容量係数制御手段124による容量係数変更制御が実施済みである場合すなわちトルクコンバータ6のステータ翼車6sの回転制御が実施されている状態である場合には、上記通常走行制御に先立って前記可変容量終了制御を実施するようになっている。
図13は、所謂トルクマップと称される、スロットル弁開度θTHをパラメータとしてエンジン出力トルクTEとエンジン回転数NEとの予め実験的に求められて記憶された関係を示す図において、全開発進時のエンジン9の動作点の移行経路を示す図である。図13において、本実施例のトルクコンバータ6の制御装置では、たとえば、エンジン9の動作点が点aで示されるような動力発生状態、すなわちスロットル弁開度θTHが3[%]程度、エンジン出力トルクTEが0(零)[N・m]、エンジン回転数NEが1000[rpm]程度のトルク領域を使用している所謂アイドリング状態であるときに、比較的大きな駆動力増大要求に対して点bで示される所謂トルクスポット域と称される最大トルク付近且つ中速回転域の動作点への移行が目標とされた場合に、前記好適に逐次算出される目標容量係数C*に従いトルクコンバータ6の容量係数Cを低容量高トルク比側に逐次変更することによって、シームレスにエンジン回転数NEを引き上げながら点aから点bに至る1点鎖線で示される経路をたどって所望の駆動トルクを迅速に発生させるようになっている。
ちなみに、従来の一定容量のトルクコンバータでは、例えばターボチャージャ付エンジンやディーゼルエンジンのようなエンジン9を搭載した車両において、スロットル弁開度θTHの比較的大きな増加操作たとえばWOTまでの増加操作によってそのエンジン9の動作点が上記点aから点bへ移行される場合には、点aから点bの点線で示すようにエンジントルクTEがその時のエンジン回転数NEに対応する最大値付近まで増加させられ、それ以後はエンジン回転数NEの増加に伴ってエンジントルクTEが最大トルク曲線(WOT曲線)に沿って増加されて所謂トルクスポット域と称される最大トルク付近且つ中速回転域まで到達させられるので、スロットル弁開度θTHの増加操作から所望のトルクが得られるまでの間に遅れ時間が生じることになる。
図14は、たとえば図13の1点差線で示すような全開発進時のトルクコンバータ6の速度比eの変化に対するそのトルクコンバータ6の容量係数Cの変化を示す図であって、所謂トルクコンバータ性能曲線と称されるものである。なお、図14には、速度比eの変化に対するトルク比tの変化も併せて示す。図14において、縦軸に示す容量係数Cは、上述のように本実施例のトルクコンバータ6の制御装置により前記好適に逐次算出される目標容量係数C*に従って逐次変更されるものであることから、その逐次算出される目標容量係数C*に略等しいものとなっている。本実施例におけるトルクコンバータ性能曲線においては、速度比eの変化に対して逐次変更される容量係数Cの変化がステータ翼車6sの非回転状態の値に比較して抑制されており、また容量係数Cが速度比eの増加に伴って減少させられている。これにより、トルクコンバータ6のトルク比tは、ストールトルク比tSTALLに維持されて一定となっている。
図15は、トルクコンバータ6の制御装置として機能する電子制御装置78の制御作動の要部、すなわち駆動力増大要求が検出されたときのトルクコンバータ6の容量係数Cを変更する容量係数変更制御を説明するフローチャートであり、例えば数msec〜数十msecの所定の周期で繰り返し実行される。
図15において、車両状態算出手段118に対応するステップS1(以下、ステップを省略する)では、車両の現在の車速Vが算出され、その車速Vに基づいて車両が停止状態であるか否かが判定される。
S1の判断が否定される場合には、本ルーチンは終了させられるが、肯定される場合には、駆動力増大要求判定手段116に対応するステップS2において、アクセルペダル98のアクセル踏込量に対応するアクセル開度Accが予め設定されて記憶された所定量TAP1より大きいか否かに基づいて、駆動力増大要求があるか否かが判断される。なお、アクセル開度Accが所定量TAP1より大きい場合に、上記駆動力増大要求があると判断される。
S2の判断が否定される場合には、通常走行制御手段126に対応するS3において、本ルーチンにおいて後述のS9の容量係数変更制御が未実施である際は、常時は係合されているブレーキB0をそのまま係合し続け且つ常時は解放されているクラッチC0をそのまま解放し続ける通常走行制御が実施され、また、本ルーチンにおいて後述のS9の容量係数変更制御が実施済みである際は、本実施例における可変容量終了制御すなわちブレーキB0が徐々に係合されつつクラッチC0が徐々に解放されることによって回転制御されていたステータ翼車6sが徐々に非回転状態にされる制御が実施されたのち、上記通常走行制御が実施されて、本ルーチンが終了される。
また、S2の判断が肯定される場合には、目標トルク比算出手段120に対応するS4において、図12に示すような駆動力マップから、駆動力増大要求量に対応する実際のアクセル開度Accおよび実際の車速Vに基づいて要求駆動力F*が算出される。
次いで、目標トルク比算出手段120に対応するS5では、要求駆動力F*とストールトルク比tSTALLとの予め実験的に求められて記憶された関係(マップ)に従って、S4にて算出された要求駆動力F*に基づいてその要求駆動力F*を得るためにそれに対応する大きさのストールトルク比tSTALLが決定される。
次いで、目標トルク比算出手段120に対応するS6では、S5にて決定されたストールトルク比tSTALLが目標トルク比t*とされる。
次いで、車両状態算出手段118に対応するS7では、クランクポジションACRを表す電気的信号に基づいて、現在のエンジン回転数NEが算出される。また、所謂トルクマップと称される予め記憶された関係から実際のスロットル弁開度θTHおよび現在のエンジン回転数NEに基づいて現在のエンジントルクTEが算出される。また、予め記憶された関係から現在のエンジン回転数NEおよび現在のエンジントルクTEに基づいて、トルクコンバータ6の現在の容量係数Cが算出される。
次いで、目標容量係数算出手段122に対応するS8では、速度比eをパラメータとして容量係数Cとトルク比tとの予め設定されて記憶された関係(マップ)から、実際の速度比eおよび目標トルク比t*に基づいて、目標トルク比算出手段120により算出された目標トルク比t*を発生させるための目標容量係数C*が算出される。
次いで、容量係数制御手段124に対応するS9では、S8にて算出された目標容量係数C*と逐次算出されるトルクコンバータ6の現在の容量係数Cとが一致するようにステータ翼車6sの回転を制御する容量係数変更制御が実施される。
次いで、容量係数制御手段124に対応するS10では、先ず、クランクポジションACRに基づいてエンジン9の現在のエンジン回転数NEが算出され、続いて、実際のタービン回転数NTおよび現在のエンジン回転数NEに基づいてトルクコンバータ6の現在の速度比e(=NT/NE)が算出され、続いて、トルクコンバータ6のトルク比tと速度比eと容量係数Cとの予め実験的に求められて記憶された関係(マップ)から現在の速度比eと現在の容量係数Cとに基づいて現在のトルク比tが算出される。そして、上記算出された現在のトルク比tと、S6にて決定された目標トルク比t*との差の絶対値が、予め例えば目標トルク比t*の5%に設定されている閾値K以下であるか否かが判定される。
S10の判断が否定される場合には、S7以下が繰り返し実行される。また、S10の判断が肯定される場合には、容量係数制御手段124に対応するS11において、車両の現在の駆動力Fが要求駆動力F*に達したか否かに基づく容量係数変更制御終了判定が行われる。なお、車両の現在の駆動力Fが要求駆動力F*に達した場合には、上記容量係数変更制御終了判定の成立が肯定される。
S11の判断が否定される場合には、S2以下が繰り返し実行される。また、S11の判断が肯定される場合には、通常走行制御手段126に対応するS12において、ブレーキB0が徐々に係合されつつクラッチC0が徐々に解放されることによって、回転制御されていたステータ翼車6sが徐々に非回転状態にされる可変容量終了制御が実施されて、本ルーチンが終了される。
図16は、図15のフローチャートに示す制御作動を説明するタイムチャートである。図16において、t1時点より前は、タービン回転数NTが0(零)すなわち車速Vが0(零)であり、車両が停止状態にある。この状態においては前記図15のS1の判断が肯定される。
t1時点は、アクセルペダル98が比較的大きく踏み込まれてアクセル開度Accが95[%]以上に増加させられた時点を示している。これにより、前記図15のS2の判断が肯定され駆動力増大要求が判定される。
t2時点は、t1時点にて駆動力増大要求が判定された後に前記図15のS15にて算出された目標容量係数C*に基づいて、トルクコンバータ6の容量係数Cの変更制御すなわち前記容量係数変更制御が開始される時点を示している。このt2時点より速度比eの増加に伴って容量係数Cが徐々に小さく変更されており、トルク比tが一定に維持されている。これにより、t2時点以降、エンジン回転数NEがシームレスに引き上げられながら、自動変速機8の出力トルクTOUTが一時的に停留することなく上昇している。なお、図16中の点線にて示すトルク比tは、従来の一定容量のトルクコンバータのものである。
ちなみに、図17に示すように、上記従来の一定容量のトルクコンバータにおいては、タービン回転数NTが0(零)である車両の停止状態におけるt1時点でアクセルペダル98が比較的大きく踏み込まれることにより、エンジン回転数NEが上昇すると共に出力トルクTOUTも上昇するが、図10に示す容量係数CのうちベースラインBCの極大値に対応する速度比e付近において出力トルクTOUTが一時的に停留することになり、車両の加速も停留する。
上述のように、本実施例の車両用可変容量型トルクコンバータ6の制御装置によれば、車両の駆動力増大要求があった場合には、容量係数制御手段124により、トルクコンバータ6の容量係数Cがステータ翼車6sの非回転状態の値に比較して減少させるように電動機10の回転が制御されることから、その容量係数Cの減少に応じて大きなトルク比tが得られるので、重量および寸法が大きな大出力エンジンを搭載しなくても、車両の駆動力増大要求時において車両の加速感を十分に高めることができる。
また、本実施例の車両用可変容量型トルクコンバータ6の制御装置によれば、容量係数制御手段124により、トルクコンバータ6の速度比eの変化に対するそのトルクコンバータ6の容量係数Cの変化が、ステータ翼車6sの非回転状態の値に比較して抑制されることから、車両の駆動力増大要求があった場合にエンジン回転速度NEの上昇が直線的となるので、車両の加速感が好適に得られる。
また、本実施例の車両用可変容量型トルクコンバータ6の制御装置によれば、容量係数制御手段124により、トルクコンバータ6の容量係数Cがそのトルクコンバータ6の速度比eの増加に伴って減少させられることから、車両の駆動力増大要求があった場合に滑らかな加速が得られ、好適な加速感が得られる。
また、本実施例の車両用可変容量型トルクコンバータ6の制御装置によれば、容量係数制御手段124により、トルクコンバータ6のトルク比tが一定となるようにトルクコンバータ6の容量係数Cが制御されることから、車両の駆動力増大要求があった場合に車両の等加速が得られ、好適な加速感が得られる。
また、本実施例の車両用可変容量型トルクコンバータ6の制御装置によれば、容量係数制御手段124により、トルクコンバータ6のトルク比tがストールトルク比tSTALLに維持されるようにトルクコンバータ6の容量係数Cが制御されることから、車両の駆動力増大要求があった場合に比較的大きな等加速が得られ、好適な加速感が得られる。
また、本実施例の車両用可変容量型トルクコンバータ6の制御装置によれば、前記駆動力増大要求の度合いに応じて求められた要求駆動力F*に基づいて目標トルク比t*を決定する目標トルク比算出手段120と、その目標トルク比算出手段120により算出された目標トルク比t*を発生させるための目標容量係数C*を実際の速度比eに基づいて算出する目標容量係数算出手段122とが、含まれ、容量係数制御手段124により、目標容量係数C*とトルクコンバータ6の実際の容量係数Cとが一致するように電動機10の回転が制御されることから、車両の駆動力増大要求があった場合にそれに対応する大きさの等加速が得られ、好適な加速感が得られる。
以上、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、別の態様でも実施され得る。
例えば、前述の実施例において、容量係数制御手段124は、トルクコンバータ6の速度比eの変化に対するそのトルクコンバータ6の容量係数Cの変化をステータ翼車6sの非回転状態の値に比較して抑制させ、且つトルクコンバータ6の容量係数Cをそのトルクコンバータ6の速度比eの増加に伴って減少させるものであり、また、トルクコンバータ6のトルク比tがストールトルク比tSTALLに維持されて一定となるように、トルクコンバータ6の容量係数Cを制御するものとなっていたが、必ずしもこれに限らず、トルクコンバータ6の容量係数Cをそのトルクコンバータ6のステータ翼車6sが非回転状態すなわちケース11に固定されている状態の容量係数Cに比較して、減少させるようにステータ翼車10の回転制御を行うものであればよい。
また、前述の実施例において、駆動力増大要求判定手段116は、アクセル開度Accに基づいて駆動力増大要求を判定するものであったが、これに限られず、例えば、アクセル開度Accに対応するスロットル弁開度θTH等の加速操作量、あるいはエンジン9の吸気管に設けられたチャンバ内やシリンダ内へ噴射される燃料の噴射量を示す燃料噴射量、あるいはエンジン9の吸気管により吸入される吸入空気量QAなどに基づいて駆動力増大要求を判定するものであってもよい。
また、前述の実施例において、ブレーキB0、クラッチC0のうちの一部又は全部が設けられていなくても差し支えない。たとえば、電動機10とステータ翼車6sとの間のクラッチC0が除去されて構成されても差し支えない。また、たとえば、電動機10とステータ翼車6sとの間のクラッチC0が除去されて電動機10がステータ翼車6sと直接接続されて構成されても差し支えない。また、たとえば、電動機10とステータ翼車6sとの間のクラッチC0、およびハウジング11とステータ翼車6sとの間のブレーキB0が除去されて、電動機10がステータ翼車6sと直接接続されて構成されても差し支えない。
また、前述の実施例において、動力源としてのエンジン9は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関から構成されるものであったが、さらに、補助的な動力源として電動機等がこのエンジン9に加えて用いられても良い。また、動力源として電動機のみが用いられても良い。
また、前述の実施例において本発明が適用された車両は、変速機の軸線が車両の前後方向となりFR(フロントエンジン・リヤドライブ)型車両に好適に採用される縦置き型の自動変速機8を有する車両であったが、これに限らず、変速機の軸線が車両の幅方向となる横置き型の自動変速機を備えるものであってもよいし、その他の種々の駆動方式の車両であってもよい。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、その他一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々変更、改良を加えた態様で実施することができる。
6:トルクコンバータ(車両用可変容量型トルクコンバータ)
6p:ポンプ翼車
6t:タービン翼車
6s:ステータ翼車
9:エンジン(動力源)
10:電動機
78:電子制御装置(制御装置)
116:駆動力増大要求判定手段
118:車両状態算出手段
120:目標トルク比算出手段
122:目標容量係数算出手段
124:容量係数制御手段
126:通常走行制御手段
C:容量係数(=TP/NP 2)
C*:目標容量係数
F*:要求駆動力
e:速度比(=NT/NP)
t:トルク比(トルク増幅率、=TT/TP)
t*:目標トルク比
tSTALL:ストールトルク比
6p:ポンプ翼車
6t:タービン翼車
6s:ステータ翼車
9:エンジン(動力源)
10:電動機
78:電子制御装置(制御装置)
116:駆動力増大要求判定手段
118:車両状態算出手段
120:目標トルク比算出手段
122:目標容量係数算出手段
124:容量係数制御手段
126:通常走行制御手段
C:容量係数(=TP/NP 2)
C*:目標容量係数
F*:要求駆動力
e:速度比(=NT/NP)
t:トルク比(トルク増幅率、=TT/TP)
t*:目標トルク比
tSTALL:ストールトルク比
Claims (6)
- 回転駆動されることによって流体流を発生させるポンプ翼車と、該ポンプ翼車からの流体流を受けて回転させられるタービン翼車と、該タービン翼車からポンプ翼車への流体流中に回転可能に配置されたステータ翼車と、容量係数を調節するために前記ステータ翼車を回転駆動する電動機とを備え、動力源から駆動輪への動力伝達経路に介挿された車両用可変容量型トルクコンバータの制御装置であって、
車両の駆動力増大要求があった場合には、前記トルクコンバータの容量係数を、前記ステータ翼車の非回転状態の値に比較して減少させるように前記電動機の回転を制御する容量係数制御手段を、含むことを特徴とする車両用可変容量型トルクコンバータの制御装置。 - 前記容量係数制御手段は、前記トルクコンバータの速度比の変化に対する該トルクコンバータの容量係数の変化を、前記ステータ翼車の非回転状態の値に比較して抑制させるものである請求項1の車両用可変容量型トルクコンバータの制御装置。
- 前記容量係数制御手段は、前記トルクコンバータの容量係数を該トルクコンバータの速度比の増加に伴って減少させるものである請求項1または2の車両用可変容量型トルクコンバータの制御装置。
- 前記容量係数制御手段は、前記トルクコンバータのトルク比が一定となるように該トルクコンバータの容量係数を制御するものである請求項1乃至3のいずれか1の車両用可変容量型トルクコンバータの制御装置。
- 前記容量係数制御手段は、前記トルクコンバータのトルク比がストールトルク比に維持されるように該トルクコンバータの容量係数を制御するものである請求項1乃至4のいずれか1の車両用可変容量型トルクコンバータの制御装置。
- 前記駆動力増大要求の度合いに応じて求められた要求駆動力に基づいて目標トルク比を決定する目標トルク比算出手段と、
該目標トルク比算出手段により算出された目標トルク比を発生させるための目標容量係数を実際の速度比に基づいて算出する目標容量係数算出手段とを、含み、
前記容量係数制御手段は、前記目標容量係数と前記トルクコンバータの実際の容量係数とが一致するように前記電動機の回転を制御するものである請求項1乃至5のいずれか1の車両用可変容量型トルクコンバータの制御装置。
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JP2008074600A JP2009228778A (ja) | 2008-03-21 | 2008-03-21 | 車両用可変容量型トルクコンバータの制御装置 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2011058616A1 (ja) * | 2009-11-16 | 2011-05-19 | トヨタ自動車株式会社 | 流体伝達装置 |
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-
2008
- 2008-03-21 JP JP2008074600A patent/JP2009228778A/ja active Pending
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