JP2009256417A - ポリ乳酸系樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】低温金型で結晶化速度が速いポリ乳酸系樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリ乳酸系樹脂と、トリメシン酸系化合物と、他の結晶核剤成分とを含むポリ乳酸系樹脂組成物。
【選択図】なし
【解決手段】ポリ乳酸系樹脂と、トリメシン酸系化合物と、他の結晶核剤成分とを含むポリ乳酸系樹脂組成物。
【選択図】なし
Description
本発明は、結晶核剤を含むポリ乳酸系樹脂組成物、該ポリ乳酸系樹脂組成物を原料とするポリ乳酸系樹脂成形品の製造方法、及びポリ乳酸系樹脂用結晶核剤に関する。
大気中の炭酸ガス増加による地球温暖化防止のために、植物から製造されるプラスチックが注目されている。このような背景から、デンプン等を醗酵して得られる乳酸を原料としたプラスチックであるポリ乳酸の需要が高まりつつある。
しかしながら、ポリ乳酸系樹脂は結晶化速度が遅いため、成形品を得るためには、例えば射出成形において成形金型を結晶化可能な温度(120℃程度)に設定し、かつ長時間金型内で保持しかければならないといった問題がある。このような問題を解消するために各種ポリ乳酸用の結晶核剤が提案されている。
例えば、特許文献1は、ポリ乳酸用の結晶核剤としてトリメシン酸系化合物の使用することにより、得られるポリ乳酸系樹脂の結晶性及び金型離型性が向上することを開示している。
特許文献2は、ポリ乳酸用の結晶核剤として芳香環を有するホスホン酸金属塩を使用することにより、得られる乳酸系樹脂用樹脂組成物の優れた耐熱性及び成形性が達成できることを開示している。
しかしながら、さらに生産性を向上させるためには、より速い結晶化速度や低温での成形が可能であることが望まれる。
したがって、本発明は、低温金型で結晶化速度が速い新規ポリ乳酸系樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、結晶核剤として、トリメシン酸系化合物と、他の結晶核剤成分とを併用することにより、低温金型での射出成形において短い保持時間で優れた離型性を有するポリ乳酸系樹脂組成物が製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下の特徴を包含する。
(1) ポリ乳酸系樹脂と、トリメシン酸系化合物及びホスホン酸金属塩又はタルクを含む結晶核剤とを含むポリ乳酸系樹脂組成物。
(2) トリメシン酸系化合物は、トリメシン酸トリシクロヘキシルアミド、トリメシン酸トリス(t−ブチルアミド)、トリメシン酸トリ3−メチルフェニル、トリメシン酸トリ2,3−ジメチルフェニル、トリメシン酸トリ2,4−ジメチルフェニル、トリメシン酸トリ3,4−ジメチルフェニル、トリメシン酸トリ2,4,6−トリメチルフェニル、トリメシン酸トリ2−エチルフェニル、トリメシン酸トリ4−n−ブチルフェニル、トリメシン酸トリ4−メトキシフェニル、トリメシン酸トリ4−エトキシフェニル、トリメシン酸トリ4−(n−デシルオキシ)フェニル、トリメシン酸トリシクロプロピル、トリメシン酸トリシクロブチル、トリメシン酸トリシクロヘプチル、トリメシン酸トリ1−アダマンチル、トリメシン酸トリ3−メチルシクロヘキシル、トリメシン酸トリ2,3−ジメチルシクロヘキシル、トリメシン酸トリ3,3,5−トリメチルシクロヘキシル、トリメシン酸トリS(+)−1−シクロヘキシルエチル、トリメシン酸トリR(+)−1−シクロヘキシルエチル、トリメシン酸トリイソプロピル、トリメシン酸トリ1,1−ジメチルプロピル、トリメシン酸トリ1,2−ジメチルプロピル、トリメシン酸トリ2−ブチル、トリメシン酸トリ3−メチルブチル、トリメシン酸トリ1,1,3,3−テトラメチルブチル、トリメシン酸トリ3,5−ジフルオロフェニル、トリメシン酸トリペンタフルオルフェニル、トリメシン酸トリ4−(トリフルオロメトキシ)フェニル、トリメシン酸トリ1,2−ジメチルプロピル、トリメシン酸トリ3−メチルブチル、又はトリメシン酸トリ1,1,3,3−テトラメチルブチルであることを特徴とする上記(1)記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
(3) トリメシン酸系化合物は、トリメシン酸トリシクロヘキシルアミドであることを特徴とする上記(1)記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
(4) ホスホン酸金属塩は、フェニルホスホン酸、2−メトキシフェニルホスホン酸、4−メトキシフェニルホスホン酸、4−エチルフェニルホスホン酸、2−イソプロピルフェニルホスホン酸、3−ニトロフェニルホスホン酸、4−ニトロフェニルホスホン酸、2−メチル−4−ニトロフェニルホスホン酸、3−メチル−5−ニトロフェニルホスホン酸、2−クロロ−5−メチルフェニルホスホン酸、4−クロロフェニルホスホン酸、4−ブロモフェニルホスホン酸、2−ヨードフェニルホスホン酸又は2−フルオロフェニルホスホン酸の金属塩であることを特徴とする上記(1)記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
(5) ホスホン酸金属塩はフェニルホスホン酸亜鉛であることを特徴とする上記(1)記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
(6) 結晶核剤が、1.0〜2.0重量%であることを特徴とする、上記(1)記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
(7) トリメシン酸系化合物が0.3〜1.0重量%であり、ホスホン酸金属塩又はタルクが0.5〜1.5重量%であることを特徴とする上記(1)記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
(8) 上記(1)〜(7)のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂組成物を、金型温度80℃〜100℃、及び金型保持時間1分〜10分の成形処理に供することを含む、ポリ乳酸系樹脂成形品の製造方法。
(9) トリメシン酸系化合物と、ホスホン酸金属塩又はタルクとを主成分とする、ポリ乳酸用結晶核剤。
(10) トリメシン酸系化合物は、トリメシン酸トリシクロヘキシルアミド、トリメシン酸トリス(t-ブチルアミド)、トリメシン酸トリ3−メチルフェニル、トリメシン酸トリ2,3−ジメチルフェニル、トリメシン酸トリ2,4−ジメチルフェニル、トリメシン酸トリ3,4−ジメチルフェニル、トリメシン酸トリ2,4,6−トリメチルフェニル、トリメシン酸トリ2−エチルフェニル、トリメシン酸トリ4−n−ブチルフェニル、トリメシン酸トリ4−メトキシフェニル、トリメシン酸トリ4−エトキシフェニル、トリメシン酸トリ4−(n−デシルオキシ)フェニル、トリメシン酸トリシクロプロピル、トリメシン酸トリシクロブチル、トリメシン酸トリシクロヘプチル、トリメシン酸トリ1−アダマンチル、トリメシン酸トリ3−メチルシクロヘキシル、トリメシン酸トリ2,3−ジメチルシクロヘキシル、トリメシン酸トリ3,3,5−トリメチルシクロヘキシル、トリメシン酸トリS(+)−1−シクロヘキシルエチル、トリメシン酸トリR(+)−1−シクロヘキシルエチル、トリメシン酸トリイソプロピル、トリメシン酸トリ1,1−ジメチルプロピル、トリメシン酸トリ1,2−ジメチルプロピル、トリメシン酸トリ2−ブチル、トリメシン酸トリ3−メチルブチル、トリメシン酸トリ1,1,3,3−テトラメチルブチル、トリメシン酸トリ3,5−ジフルオロフェニル、トリメシン酸トリペンタフルオルフェニル、トリメシン酸トリ4−(トリフルオロメトキシ)フェニル、トリメシン酸トリ1,2−ジメチルプロピル、トリメシン酸トリ3−メチルブチル、又はトリメシン酸トリ1,1,3,3−テトラメチルブチルであることを特徴とする上記(9)記載のポリ乳酸用結晶核剤。
(11) トリメシン酸系化合物は、トリメシン酸トリシクロヘキシルアミドであることを特徴とする上記(9)記載のポリ乳酸用結晶核剤。
(12) ホスホン酸金属塩は、フェニルホスホン酸、2−メトキシフェニルホスホン酸、4−メトキシフェニルホスホン酸、4−エチルフェニルホスホン酸、2−イソプロピルフェニルホスホン酸、3−ニトロフェニルホスホン酸、4−ニトロフェニルホスホン酸、2−メチル−4−ニトロフェニルホスホン酸、3−メチル−5−ニトロフェニルホスホン酸、2−クロロ−5−メチルフェニルホスホン酸、4−クロロフェニルホスホン酸、4−ブロモフェニルホスホン酸、2−ヨードフェニルホスホン酸又は2−フルオロフェニルホスホン酸の金属塩であることを特徴とする上記(9)記載のポリ乳酸用結晶核剤。
(13) ホスホン酸金属塩はフェニルホスホン酸亜鉛であることを特徴とする上記(9)記載のポリ乳酸用結晶核剤。
本発明によれば、低温金型で結晶化速度が速い新規なポリ乳酸系樹脂組成物を提供することができる。これにより、従来のポリ乳酸樹脂組成物に比べて、成形サイクルの短縮が可能となり、生産性を大幅に改善することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、主として、ポリ乳酸系樹脂と、ポリ乳酸系樹脂用結晶核剤とを含有することを特徴とする。
本発明に係るポリ乳酸系樹脂組成物は、ポリ乳酸系樹脂を主成分としている。ポリ乳酸系樹脂としては、構成単位がL−乳酸のみからなるポリ(L−乳酸)、D−乳酸のみからなるポリ(D−乳酸)、及び構成単位としてL−乳酸及びD−乳酸を任意の割合で含むポリ(DL−乳酸)を挙げることができる。本発明に係る組成物においてポリ乳酸系樹脂としては、ポリ(L−乳酸)、ポリ(D−乳酸)及びポリ(DL−乳酸)から選ばれる一種又は複数種を使用することができる。なお、ポリ乳酸系樹脂としてポリ(DL−乳酸)を使用する場合には、主成分とするD−乳酸又はL−乳酸の割合が90%以下にすると、ポリ乳酸が結晶化しにくくなる点に留意すべきである。したがって、本発明で使用するポリ(DL−乳酸)は、L−乳酸及びD−乳酸を、L:D=100:0〜90:10又はL:D=10:90〜0:100、好ましくはL:D=100:0〜95:5又はL:D=5:95〜0:100の割合で含むことが好ましい。
また、本発明に係るポリ乳酸系樹脂組成物において、ポリ乳酸系樹脂は、乳酸モノマーと他のモノマーとを含む共重合体であってもよい。他のモノマーとしては、例えば、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン類、ジカルボン酸及びジオール等を挙げることができる。ヒドロキシカルボン酸の例としては、グリコール酸、ヒドロキシブチルカルボン酸、ヒドロキシ安息香酸などを挙げることができる。ラクトン類の例としては、ブチロラクトン、カプロラクトンなどを挙げることができる。ジカルボン酸の例としては、炭素数4〜20の脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸を挙げることができる。ジオールの例としては、炭素数2〜20の脂肪族ジオールが挙げられる。ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレンエーテルなどポリアルキレンエーテル、若しくはポリアルキレンカーボネートの重合体も共重合成分として使用することができる。なお、共重合体の配列様式は、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよい。この場合も、上記と同様、主成分とするD−乳酸又はL−乳酸の割合が90%であることが好ましい。
ポリ乳酸の重量平均分子量は、80,000〜250,000が好ましく、100,000〜200,000がさらに好ましく、130,000〜160,000が特に好ましい。ポリ乳酸の重量平均分子量が80,000以上であれば、ポリ乳酸の加水分解が生じにくく樹脂成形品の耐久性が向上する。一方、ポリ乳酸の重量平均分子量が250,000以下であれば、樹脂組成物の粘度が射出成形に好適な粘度範囲となり、成形品の形成が容易になる。
また、本発明に係る組成物は、上述したポリ乳酸系樹脂以外にも、その他の樹脂成分を含有していても良い。他の樹脂成分としては、いわゆる生分解性プラスチックとして使用されるものが好ましい。他の樹脂成分としては、例えば、ポリ乳酸を除く脂肪族ポリエステル成分を挙げることができる。脂肪族ポリエステル成分としては、ポリグリコール酸、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸)、ポリ(4−ヒドロキシ酪酸)、ポリ(4−ヒドロキシ吉草酸)、ポリカプロラクトン等の開環重付加系脂肪族ポリエステル、並びに、ポリエステルカーボネート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリヘキサメチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリエチレンオキサレート、ポリブチレンオキサレート、ポリヘキサメチレンオキサレート、ポリエチレンセバケート、ポリブチレンセバケート等の重縮合反応系脂肪族ポリエステルが挙げられる。脂肪族ポリエステル成分は、上述した各成分を単独で用いてもよいが、これらの2成分以上をブレンドしたもの若しくはこれら2成分以上を共重合させたものであってもよい。
本発明において、ポリ乳酸系樹脂用結晶核剤は、トリメシン酸系化合物と他の結晶核剤成分とを含む。本発明のポリ乳酸系樹脂用結晶核剤は、結晶核剤としてポリ乳酸系樹脂の結晶化を促進する限り、上記成分以外の他の成分を含んでもよい。トリメシン酸系化合物及び他の結晶核剤成分は、本発明のポリ乳酸系樹脂用結晶核剤の総重量に対して50重量%以上、好ましくは80重量%以上、より好ましくは100重量%で存在することが好ましい。
本明細書で使用する「トリメシン酸系化合物」とは、ポリ乳酸用結晶核剤として使用することができる任意のトリメシン酸系化合物を指す。このようなトリメシン酸系化合物は当業者に公知であり、例えば上記特許文献1、特表2004-515592、特表2005-528498、特表2006-518402、特開2008-50617などに開示されている。
具体的に、ポリ乳酸用結晶核剤として使用することができる公知のトリメシン酸系化合物として、トリメシン酸トリシクロヘキシルアミド、トリメシン酸トリス(t-ブチルアミド)、トリメシン酸トリ3−メチルフェニル、トリメシン酸トリ2,3−ジメチルフェニル、トリメシン酸トリ2,4−ジメチルフェニル、トリメシン酸トリ3,4−ジメチルフェニル、トリメシン酸トリ2,4,6−トリメチルフェニル、トリメシン酸トリ2−エチルフェニル、トリメシン酸トリ4−n−ブチルフェニル、トリメシン酸トリ4−メトキシフェニル、トリメシン酸トリ4−エトキシフェニル、トリメシン酸トリ4−(n−デシルオキシ)フェニル、トリメシン酸トリシクロプロピル、トリメシン酸トリシクロブチル、トリメシン酸トリシクロヘプチル、トリメシン酸トリ1−アダマンチル、トリメシン酸トリ3−メチルシクロヘキシル、トリメシン酸トリ2,3−ジメチルシクロヘキシル、トリメシン酸トリ3,3,5−トリメチルシクロヘキシル、トリメシン酸トリS(+)−1−シクロヘキシルエチル、トリメシン酸トリR(+)−1−シクロヘキシルエチル、トリメシン酸トリイソプロピル、トリメシン酸トリ1,1−ジメチルプロピル、トリメシン酸トリ1,2−ジメチルプロピル、トリメシン酸トリ2−ブチル、トリメシン酸トリ3−メチルブチル、トリメシン酸トリ1,1,3,3−テトラメチルブチル、トリメシン酸トリ3,5−ジフルオロフェニル、トリメシン酸トリペンタフルオルフェニル、トリメシン酸トリ4−(トリフルオロメトキシ)フェニル、トリメシン酸トリ1,2−ジメチルプロピル、トリメシン酸トリ3−メチルブチル、及びトリメシン酸トリ1,1,3,3−テトラメチルブチルなどを挙げることができ、いずれも本発明において使用することができる。特にトリメシン酸系化合物としてトリメシン酸トリシクロヘキシルアミドを使用することが好ましい。
本明細書で使用する「他の結晶核剤成分」とは、ポリ乳酸系樹脂組成物の低温金型での結晶化速度に関して、トリメシン酸系化合物との併用効果が認められる任意の成分を指す。かかる成分として、例えばホスホン酸金属塩、タルクなどを挙げることができる。ここで「併用効果」とは、トリメシン酸系化合物と他の結晶核剤成分とをある合計量で併用した際にポリ乳酸系樹脂組成物に及ぼす効果が、前記合計量と等量かそれ以上のトリメシン酸系化合物を単独で使用した場合よりも優れていることを指す。例えば、トリメシン酸系化合物とホスホン酸金属塩とを合計2.0重量%で使用した際のポリ乳酸系樹脂組成物の低温金型での結晶化速度が、2.0重量%以上のトリメシン酸系化合物を単独で使用した場合よりも速い場合には、併用効果を有する。
本発明において、他の結晶核剤成分として、一般的には単一の成分を使用するが、複数の成分の組合せを使用してもよい。例えば、本発明において、他の結晶核剤成分として、ホスホン酸金属塩及びタルクの組合せを使用することができる。
本明細書で使用する「ホスホン酸金属塩」とは、ポリ乳酸用結晶核剤として使用することができる任意のホスホン酸金属塩を指す。このようなホスホン酸金属塩は当業者に公知であり、例えば上記特許文献2に開示されている。
具体的に、ポリ乳酸用結晶核剤として使用することができる公知のホスホン酸金属塩として、フェニルホスホン酸、2-メトキシフェニルホスホン酸、4-メトキシフェニルホスホン酸、4-エチルフェニルホスホン酸、2-イソプロピルフェニルホスホン酸、3-ニトロフェニルホスホン酸、4-ニトロフェニルホスホン酸、2-メチル-4-ニトロフェニルホスホン酸、3-メチル-5-ニトロフェニルホスホン酸、2-クロロ-5-メチルフェニルホスホン酸、4-クロロフェニルホスホン酸、4-ブロモフェニルホスホン酸、2-ヨードフェニルホスホン酸、2-フルオロフェニルホスホン酸等の金属塩を挙げることができ、いずれも本発明において使用することができる。
本発明に使用することができるホスホン酸金属塩における金属として、これに限定されないが、例えば銅、亜鉛、コバルト、鉄などを挙げることができる。
本発明において、ホスホン酸金属塩としてフェニルホスホン酸亜鉛を使用することが好ましい。
本発明において、ポリ乳酸系樹脂用結晶核剤の量は、製造するポリ乳酸系樹脂組成物の総重量に対して、0.1〜3.0重量%とすることが好ましく、0.5〜2.5重量%とすることがさらに好ましく、1.0〜2.0重量%とすることがさらに好ましい。
トリメシン酸系化合物の量は、併用する他の結晶核剤成分の量、製造するポリ乳酸系樹脂組成物の所望の物性等に応じて、当業者は適宜選択することができる。トリメシン酸系化合物の量は、製造するポリ乳酸系樹脂組成物の総重量に対して、1.2重量%以下、例えば0.1〜1.2重量%とすることが好ましく、0.3〜1.0重量%とすることがさらに好ましく、0.3〜0.7重量%、例えば0.5重量%とすることがさらに好ましい。トリメシン酸系化合物の量が1.2重量%より多いと、かえって成形性が悪くなる場合がある。例えばトリメシン酸系化合物を2.0重量%で添加した場合、金型温度80℃での離型性が悪くなることが示唆されている(下記比較例9及び10参照)。一方、トリメシン酸系化合物の量が0.1重量%未満であると、結晶核剤としてのトリメシン酸系化合物の効果が認められない可能性がある(下記比較例11及び12参照)。
他の結晶核剤成分の量は、ポリ乳酸系樹脂組成物の低温金型での結晶化速度に関して、トリメシン酸系化合物との併用効果が認められる限り特に限定されず、当業者は適宜添加量を選択することができる。他の結晶核剤成分としてホスホン酸金属塩又はタルクを使用する場合には、これらの量を製造するポリ乳酸系樹脂組成物の総重量に対して、0.1〜2.0重量%とすること好ましく、0.5〜1.5重量%とすることがさらに好ましく、0.8〜1.2重量%、例えば1.0重量%とすることがさらに好ましい。なお、上記範囲を超えるホスホン酸金属塩、タルクの添加量は、成形性の向上にはそれほど寄与しないと考えられる。
またトリメシン酸系化合物及び他の結晶核剤成分の配合比は、ポリ乳酸系樹脂組成物の低温金型での結晶化速度に関して、トリメシン酸系化合物と他の結晶核剤成分との併用効果が認められる限り特に制限されない。例えば、トリメシン酸系化合物及び結晶核剤成分の配合比は、1:10〜1:0.3、好ましくは1:5〜1:0.5、より好ましくは1:3〜1:1、例えば1:2とすることができる。
なお、本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、ポリ乳酸系樹脂、ポリ乳酸系樹脂用結晶核剤に加えて、他の成分を含んでもよい。「他の成分」として、これに限定されるものではないが、例えば、顔料、カーボンブラックなどの帯電防止剤、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、ヒンダードアミン系などの耐光性安定剤、ヒンダードフェノール系、リン系などの耐熱性安定剤、難燃剤などを挙げることができる。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、ポリ乳酸系樹脂と、ポリ乳酸系樹脂用結晶核剤とを適当な温度で混練することによって製造することができる。
混練は、当業者に慣用的に使用されるブレンダー、ミキサー等を用いて行えばよく、特別な方法を用いる必要はない。
「適当な温度」とは、ポリ乳酸系樹脂及びポリ乳酸系樹脂用結晶核剤の十分な混練を可能にする温度であって、製造されるポリ乳酸系樹脂組成物に低温金型での速い結晶化特性を付与する温度である。ポリ乳酸系樹脂の十分な混練を可能にする温度は、混練温度の下限を規定する温度であり、180〜190℃とすることができる。一方、製造されるポリ乳酸系樹脂組成物に低温金型での速い結晶化特性を付与する温度は、混練温度の上限を規定する温度であるが、これはその後の成形方法に応じて変化し得る。例えば、200℃で混練することにより製造したポリ乳酸系樹脂組成物は、230℃で混練することにより製造したポリ乳酸系樹脂組成物よりも、低温金型での射出成形において、短い金型保持時間での離型性に優れている。
一方、低温金型でのスタンピング成形などの圧縮成形において、短い金型保持時間での離型性は、230℃で混練することにより製造したポリ乳酸系樹脂組成物の方が、200℃で混練することにより製造したものよりも優れている。
なお、短い金型保持間での離型性に及ぼす混練温度の影響は、動的な成形方法による場合の方が顕著であるため、動的な成形方法を使用してポリ乳酸系樹脂組成物を成形する場合には、上記混練温度に特に留意すべきである。
一般的に、本発明に従って製造するポリ乳酸系樹脂組成物を、射出成形などの動的な成形処理に供する場合には、混練温度を190℃〜220℃、好ましくは190℃〜210℃、例えば200℃とすることが好ましい。一方、本発明の方法に従って製造するポリ乳酸系樹脂組成物を、スタンピング成形等の静的な成形処理に供する場合には、混練温度を220℃〜240℃、好ましくは225℃〜235℃、例えば230℃とすることが好ましい。
本明細書で使用する「動的な成形方法」とは、短時間で融解した樹脂が金型内を流動しながら成形する成形方法を指し、例えば、射出成形、押出成形などを挙げることができる。
本明細書で使用する「静的な成形方法」とは、樹脂の流動をあまり行わない成形方法を指し、例えば圧縮成形(スタンピング成形など)、ブロー成形などを挙げることができる。
こうして製造されるポリ乳酸系樹脂組成物は、その後の成形処理において、低温金型でも速い結晶化速度を有する。
ここで、「低温金型」及び「低い金型温度」とは、固定金型又は可動金型、或いはその両方の温度が100℃以下、例えば70℃〜100℃、好ましくは80℃〜90℃、最も好ましくは80℃であることを指す。
また「結晶化速度が速い」及び「速い結晶化速度」とは、成形処理において、ポリ乳酸系樹脂組成物の優れた離型性が、10分以下、例えば1分〜10分、好ましくは1分〜5分、最も好ましくは1分の金型保持時間で達成される結晶化速度をいう。
このように、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、低い金型温度でも結晶化速度が速いため、エネルギーコスト及び成形サイクルの短縮の面で優れており、成形品の生産性を大幅に改善することができる。また、トリメシン酸系化合物は比較的高価な結晶核剤であるが、その使用量をタルク等の併用によって抑制することができるという利点もある。
本発明は、上記のようにして製造したポリ乳酸系樹脂組成物を、金型温度80℃〜100℃、及び金型保持時間1分〜10分の成形処理に供することを含む、ポリ乳酸系樹脂成形品の製造方法を包含する。
本発明のポリ乳酸系樹脂成形品の製造方法は、金型温度を80℃〜100℃とし、金型保持時間を1分〜10分とすること以外に特別な手法を用いる必要はなく、慣用の成形処理により製造することができる。例えば、成形処理として射出成形を用いる場合には、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物をシリンダ内で溶融し、80℃〜100℃に温度管理した金型キャビティー内に溶融樹脂を高い圧力で射出し、金型内に1分〜10分、好ましくは1分間保持し、結晶化後に可動金型を可動し、その後、押出ピンを駆動してキャビティー内から成形品を取り出すことによって、ポリ乳酸樹脂成形品を製造することができる。
本発明のポリ乳酸系樹脂成形品の製造方法に使用される成形処理は、ポリ乳酸系樹脂の成形に使用することができる成形方法であれば特に制限されず、上記の動的な成形方法であっても、静的な成形方法であってもよい。特に、本発明のポリ乳酸系樹脂成形品は、本発明のポリ乳酸系樹脂組成物を射出成形に供することにより成形されたものであることが好ましい。
本発明の成形品は、その種類、形態等について、特に制限はなく、電気・電子部品、自動車部品、機械部品、日用品などに使用することができる。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に制限されるものではない。
以下の実施例で使用した材料は以下の通りである:
1.ポリ乳酸系樹脂:レイシアH-100(三井化学社製)
2.トリメシン酸系化合物:TF-1(トリメシン酸トリシクロヘキシルアミド)(新日本理化社製)
3.ホスホン酸金属塩:PPA-Zn(フェニルホスホン酸亜鉛)(日産化学工業社製)
4.タルク:MICROACE P-6(日本タルク社製)
5.PDLA:ピューラック社製 ポリ-(D)-乳酸
1.ポリ乳酸系樹脂:レイシアH-100(三井化学社製)
2.トリメシン酸系化合物:TF-1(トリメシン酸トリシクロヘキシルアミド)(新日本理化社製)
3.ホスホン酸金属塩:PPA-Zn(フェニルホスホン酸亜鉛)(日産化学工業社製)
4.タルク:MICROACE P-6(日本タルク社製)
5.PDLA:ピューラック社製 ポリ-(D)-乳酸
射出成形における低温金型での離型性の検証
[実施例1]
(混練工程)
ポリ乳酸系樹脂98.0重量%、トリメシン酸系化合物1.0重量%及びホスホン酸金属塩1.0重量%を予めブレンドした後、2軸押出機にて混練造粒し、ペレット状のポリ乳酸系樹脂組成物を得た。このとき押出機内の樹脂温度を200℃に設定して混練を行った。
(成形工程)
上記ポリ乳酸系樹脂組成物を真空乾燥機にて60℃、12時間で乾燥した後、射出成形機を用いてISO型ダンベル形状成形品を成形した。その際に、金型温度80℃及び100℃とし、金型保持時間をそれぞれ1分、5分、10分に設定した。
[実施例1]
(混練工程)
ポリ乳酸系樹脂98.0重量%、トリメシン酸系化合物1.0重量%及びホスホン酸金属塩1.0重量%を予めブレンドした後、2軸押出機にて混練造粒し、ペレット状のポリ乳酸系樹脂組成物を得た。このとき押出機内の樹脂温度を200℃に設定して混練を行った。
(成形工程)
上記ポリ乳酸系樹脂組成物を真空乾燥機にて60℃、12時間で乾燥した後、射出成形機を用いてISO型ダンベル形状成形品を成形した。その際に、金型温度80℃及び100℃とし、金型保持時間をそれぞれ1分、5分、10分に設定した。
このときの金型離型性を次の4段階にて評価した:
◎:離型性が非常に良好
○:離型性が良好
△:離型性が悪い
×:成形できず
◎:離型性が非常に良好
○:離型性が良好
△:離型性が悪い
×:成形できず
[実施例2]
押出機内の樹脂温度を230℃に設定して混練を行った以外は、[実施例1]と同様に行った。
押出機内の樹脂温度を230℃に設定して混練を行った以外は、[実施例1]と同様に行った。
[実施例3]
ポリ乳酸系樹脂98.5重量%、トリメシン酸系化合物0.5重量%及びホスホン酸金属塩1.0重量%を予めブレンドした後、2軸押出機にて混練造粒し、ペレット状のポリ乳酸系樹脂組成物を得た。このとき押出機内の樹脂温度を200℃に設定して混練を行った。成形工程以降は[実施例1]と同様に行った。
ポリ乳酸系樹脂98.5重量%、トリメシン酸系化合物0.5重量%及びホスホン酸金属塩1.0重量%を予めブレンドした後、2軸押出機にて混練造粒し、ペレット状のポリ乳酸系樹脂組成物を得た。このとき押出機内の樹脂温度を200℃に設定して混練を行った。成形工程以降は[実施例1]と同様に行った。
[実施例4]
押出機内の樹脂温度を230℃に設定にして混練を行った以外は、[実施例3]と同様に行った。
押出機内の樹脂温度を230℃に設定にして混練を行った以外は、[実施例3]と同様に行った。
[実施例5]
ポリ乳酸系樹脂98.5重量%、トリメシン酸系化合物0.5重量%及びタルク1.0重量%を予めブレンドした後、2軸押出機にて混練造粒し、ペレット状のポリ乳酸系樹脂組成物を得た。このとき押出機内の樹脂温度を200℃に設定して混練を行った。成形工程以降は[実施例1]と同様に行った。
ポリ乳酸系樹脂98.5重量%、トリメシン酸系化合物0.5重量%及びタルク1.0重量%を予めブレンドした後、2軸押出機にて混練造粒し、ペレット状のポリ乳酸系樹脂組成物を得た。このとき押出機内の樹脂温度を200℃に設定して混練を行った。成形工程以降は[実施例1]と同様に行った。
[実施例6]
押出機内の樹脂温度を230℃に設定にして混練を行った以外は、[実施例5]と同様に行った。
押出機内の樹脂温度を230℃に設定にして混練を行った以外は、[実施例5]と同様に行った。
[比較例1]
ポリ乳酸系樹脂99.0重量%、トリメシン酸系化合物1.0重量%を予めブレンドした後、2軸押出機にて混練造粒し、ペレット状のポリ乳酸系樹脂組成物を得た。このとき押出機内の樹脂温度を200℃に設定して混練を行った。成形工程以降は[実施例1]と同様に行った。
ポリ乳酸系樹脂99.0重量%、トリメシン酸系化合物1.0重量%を予めブレンドした後、2軸押出機にて混練造粒し、ペレット状のポリ乳酸系樹脂組成物を得た。このとき押出機内の樹脂温度を200℃に設定して混練を行った。成形工程以降は[実施例1]と同様に行った。
[比較例2]
押出機内の樹脂温度を230℃に設定にして混練を行った以外は、[比較例1]と同様に行った。
押出機内の樹脂温度を230℃に設定にして混練を行った以外は、[比較例1]と同様に行った。
[比較例3]
ポリ乳酸系樹脂99.0重量%、ホスホン酸金属塩1.0重量%を予めブレンドした後、2軸押出機にて混練造粒し、ペレット状のポリ乳酸系樹脂組成物を得た。このとき押出機内の樹脂温度を200℃に設定して混練を行った。成形工程以降は[実施例1]と同様に行った。
ポリ乳酸系樹脂99.0重量%、ホスホン酸金属塩1.0重量%を予めブレンドした後、2軸押出機にて混練造粒し、ペレット状のポリ乳酸系樹脂組成物を得た。このとき押出機内の樹脂温度を200℃に設定して混練を行った。成形工程以降は[実施例1]と同様に行った。
[比較例4]
押出機内の樹脂温度を230℃に設定にして混練を行った以外は、[比較例3]と同様に行った。
押出機内の樹脂温度を230℃に設定にして混練を行った以外は、[比較例3]と同様に行った。
[比較例5]
ポリ乳酸系樹脂98.5重量%、トリメシン酸系化合物0.5重量%、PDLA 1.0重量%を予めブレンドした後、2軸押出機にて混練造粒し、ペレット状のポリ乳酸系樹脂組成物を得た。このとき押出機内の樹脂温度を200℃に設定して混練を行った。成形工程以降は[実施例1]と同様に行った。
ポリ乳酸系樹脂98.5重量%、トリメシン酸系化合物0.5重量%、PDLA 1.0重量%を予めブレンドした後、2軸押出機にて混練造粒し、ペレット状のポリ乳酸系樹脂組成物を得た。このとき押出機内の樹脂温度を200℃に設定して混練を行った。成形工程以降は[実施例1]と同様に行った。
[比較例6]
押出機内の樹脂温度を230℃に設定にして混練を行った以外は、[比較例5]と同様に行った。
押出機内の樹脂温度を230℃に設定にして混練を行った以外は、[比較例5]と同様に行った。
[比較例7]
ポリ乳酸系樹脂100重量%を2軸押出機にて混練造粒し、ペレット状のポリ乳酸系樹脂組成物を得た。このとき押出機内の樹脂温度を200℃に設定して混練を行った。成形工程以降は[実施例1]と同様に行った。
ポリ乳酸系樹脂100重量%を2軸押出機にて混練造粒し、ペレット状のポリ乳酸系樹脂組成物を得た。このとき押出機内の樹脂温度を200℃に設定して混練を行った。成形工程以降は[実施例1]と同様に行った。
[比較例8]
押出機内の樹脂温度を230℃に設定にして混練を行った以外は、[比較例7]と同様に行った。
押出機内の樹脂温度を230℃に設定にして混練を行った以外は、[比較例7]と同様に行った。
[比較例9]
ポリ乳酸系樹脂98.0重量%、トリメシン酸系化合物2.0重量%を予めブレンドした後、2軸押出機にて混練造粒し、ペレット状のポリ乳酸系樹脂組成物を得た。このとき押出機内の樹脂温度を200℃に設定して混練を行った。成形工程以降は[実施例1]と同様に行った。
ポリ乳酸系樹脂98.0重量%、トリメシン酸系化合物2.0重量%を予めブレンドした後、2軸押出機にて混練造粒し、ペレット状のポリ乳酸系樹脂組成物を得た。このとき押出機内の樹脂温度を200℃に設定して混練を行った。成形工程以降は[実施例1]と同様に行った。
[比較例10]
押出機内の樹脂温度を230℃に設定にして混練を行った以外は、[比較例9]と同様に行った。
押出機内の樹脂温度を230℃に設定にして混練を行った以外は、[比較例9]と同様に行った。
[比較例11]
ポリ乳酸系樹脂99.9重量%、トリメシン酸系化合物0.1重量%を予めブレンドした後、2軸押出機にて混練造粒し、ペレット状のポリ乳酸系樹脂組成物を得た。このとき押出機内の樹脂温度を200℃に設定して混練を行った。成形工程以降は[実施例1]と同様に行った。
ポリ乳酸系樹脂99.9重量%、トリメシン酸系化合物0.1重量%を予めブレンドした後、2軸押出機にて混練造粒し、ペレット状のポリ乳酸系樹脂組成物を得た。このとき押出機内の樹脂温度を200℃に設定して混練を行った。成形工程以降は[実施例1]と同様に行った。
[比較例12]
押出機内の樹脂温度を230℃に設定にして混練を行った以外は、[比較例11]と同様に行った。
押出機内の樹脂温度を230℃に設定にして混練を行った以外は、[比較例11]と同様に行った。
実施例1〜6及び比較例1〜12の結果を表1に示す。
表1から分かる通り、ポリ乳酸系樹脂の結晶核剤としてホスホン酸金属塩又はタルクをトリメシン酸系化合物と併用した実施例1〜6の系の大部分において、金型温度80℃、100℃で比較例1〜12より優れた離型性を有することが分かった。
特に、混練温度200℃にて製造したポリ乳酸系樹脂組成物の離型性の向上は顕著であり、混練温度が射出成形における離型性に影響することが示された。
圧縮成形における低温金型での離型性の検証
[実施例7]
(混練工程)
混練工程は、実施例1と同様にして行った。すなわち、ポリ乳酸系樹脂98.0重量%、トリメシン酸系化合物1.0重量%及びホスホン酸金属塩1.0重量%を予めブレンドした後、2軸押出機にて混練造粒し、ペレット状のポリ乳酸系樹脂組成物を得た。このときの押出機内の樹脂温度を200℃に設定して混練を行った。
(成形工程)上記ポリ乳酸系樹脂組成物を真空乾燥機にて60℃、12時間乾燥させた後、ラボプラストミル(東洋精機製)にて押出機と同じ温度で混練を行った。その後、混練トルクが一定になった時点で混練を止めて溶解樹脂を取り出し、80℃及び100℃に加熱した平板上に乗せた。2mnのスペーサーを設け、さらに同じ温度で加熱された平板を重ね合わせて樹脂の平板を成形した。そのときの保持時間を1分、5分、10分に設定した。
[実施例7]
(混練工程)
混練工程は、実施例1と同様にして行った。すなわち、ポリ乳酸系樹脂98.0重量%、トリメシン酸系化合物1.0重量%及びホスホン酸金属塩1.0重量%を予めブレンドした後、2軸押出機にて混練造粒し、ペレット状のポリ乳酸系樹脂組成物を得た。このときの押出機内の樹脂温度を200℃に設定して混練を行った。
(成形工程)上記ポリ乳酸系樹脂組成物を真空乾燥機にて60℃、12時間乾燥させた後、ラボプラストミル(東洋精機製)にて押出機と同じ温度で混練を行った。その後、混練トルクが一定になった時点で混練を止めて溶解樹脂を取り出し、80℃及び100℃に加熱した平板上に乗せた。2mnのスペーサーを設け、さらに同じ温度で加熱された平板を重ね合わせて樹脂の平板を成形した。そのときの保持時間を1分、5分、10分に設定した。
このときの金型離型性を次の4段階にて評価した:
◎:離型性が非常に良好
○:離型性が良好
△:離型性が悪い
×:成形できず
◎:離型性が非常に良好
○:離型性が良好
△:離型性が悪い
×:成形できず
[実施例8]
押出機内の樹脂温度を230℃に設定して混練を行った以外は、[実施例7]と同様に行った。
押出機内の樹脂温度を230℃に設定して混練を行った以外は、[実施例7]と同様に行った。
[実施例9]
ポリ乳酸系樹脂98.5重量%、トリメシン酸系化合物0.5重量%及びホスホン酸金属塩1.0重量%を予めブレンドした後、2軸押出機にて混練造粒し、ペレット状のポリ乳酸系樹脂組成物を得た。このときの押出機内の樹脂温度を200℃に設定して混練を行った。成形工程以降は[実施例7]と同様に行った。
ポリ乳酸系樹脂98.5重量%、トリメシン酸系化合物0.5重量%及びホスホン酸金属塩1.0重量%を予めブレンドした後、2軸押出機にて混練造粒し、ペレット状のポリ乳酸系樹脂組成物を得た。このときの押出機内の樹脂温度を200℃に設定して混練を行った。成形工程以降は[実施例7]と同様に行った。
[実施例10]
押出機内の樹脂温度を230℃に設定して混練を行った以外は、[実施例9]と同様に行った。
押出機内の樹脂温度を230℃に設定して混練を行った以外は、[実施例9]と同様に行った。
[比較例13]
ポリ乳酸系樹脂99.0重量%及びトリメシン酸系化合物1.0重量%を予めブレンドした後、2軸押出機にて混練造粒し、ペレット状のポリ乳酸系樹脂組成物を得た。このときの押出機内の樹脂温度を200℃に設定して混練を行った。成形工程以降は[実施例7]と同様に行った。
ポリ乳酸系樹脂99.0重量%及びトリメシン酸系化合物1.0重量%を予めブレンドした後、2軸押出機にて混練造粒し、ペレット状のポリ乳酸系樹脂組成物を得た。このときの押出機内の樹脂温度を200℃に設定して混練を行った。成形工程以降は[実施例7]と同様に行った。
[比較例14]
押出機内の樹脂温度を230℃に設定して混練を行った以外は、[比較例13]と同様に行った。
押出機内の樹脂温度を230℃に設定して混練を行った以外は、[比較例13]と同様に行った。
[比較例15]
ポリ乳酸系樹脂99.0重量%及びホスホン酸金属塩1.0重量%を予めブレンドした後、2軸押出機にて混練造粒し、ペレット状のポリ乳酸系樹脂組成物を得た。このときの押出機内の樹脂温度を200℃に設定して混練を行った。成形工程以降は[実施例7]と同様に行った。
ポリ乳酸系樹脂99.0重量%及びホスホン酸金属塩1.0重量%を予めブレンドした後、2軸押出機にて混練造粒し、ペレット状のポリ乳酸系樹脂組成物を得た。このときの押出機内の樹脂温度を200℃に設定して混練を行った。成形工程以降は[実施例7]と同様に行った。
[比較例16]
押出機内の樹脂温度を230℃に設定して混練を行った以外は、[比較例15]と同様に行った。
押出機内の樹脂温度を230℃に設定して混練を行った以外は、[比較例15]と同様に行った。
[比較例17]
ポリ乳酸系樹脂100.0重量%を2軸押出機にて混練造粒し、ペレット状のポリ乳酸系樹脂組成物を得た。このときの押出機内の樹脂温度を200℃に設定して混練を行った。成形工程以降は[実施例7]と同様に行った。
ポリ乳酸系樹脂100.0重量%を2軸押出機にて混練造粒し、ペレット状のポリ乳酸系樹脂組成物を得た。このときの押出機内の樹脂温度を200℃に設定して混練を行った。成形工程以降は[実施例7]と同様に行った。
[比較例18]
押出機内の樹脂温度を230℃に設定して混練を行った以外は、[比較例17]と同様に行った。
押出機内の樹脂温度を230℃に設定して混練を行った以外は、[比較例17]と同様に行った。
実施例7〜10及び比較例13〜18の結果を表2に示す。
表2から分かる通り、圧縮成形において、ポリ乳酸系樹脂の結晶核剤としてホスホン酸金属塩をトリメシン酸系化合物と併用した実施例7〜10は、トリメシン酸系化合物又はホスホン酸金属塩を結晶核剤として単独で使用した比較例13〜16に比べて、金型温度80℃、100℃で優れた離型成を有することが分かった。
また、トリメシン酸系化合物とホスホン酸系化合物とをそれぞれ1重量%で使用した系において、混練温度230℃とする方が、混練温度200℃に比べて金型温度80℃の離型性が優れていることが示された。
これは、圧縮成形などの静的な成形方法の場合には、射出成形等の動的な性的方法に比べて、より高い混練温度を採用することにより、優れた離型性を有するポリ乳酸系樹脂が得られることを示唆している。
Claims (13)
- ポリ乳酸系樹脂と、トリメシン酸系化合物及びホスホン酸金属塩又はタルクを含む結晶核剤とを含むポリ乳酸系樹脂組成物。
- トリメシン酸系化合物は、トリメシン酸トリシクロヘキシルアミド、トリメシン酸トリス(t−ブチルアミド)、トリメシン酸トリ3−メチルフェニル、トリメシン酸トリ2,3−ジメチルフェニル、トリメシン酸トリ2,4−ジメチルフェニル、トリメシン酸トリ3,4−ジメチルフェニル、トリメシン酸トリ2,4,6−トリメチルフェニル、トリメシン酸トリ2−エチルフェニル、トリメシン酸トリ4−n−ブチルフェニル、トリメシン酸トリ4−メトキシフェニル、トリメシン酸トリ4−エトキシフェニル、トリメシン酸トリ4−(n−デシルオキシ)フェニル、トリメシン酸トリシクロプロピル、トリメシン酸トリシクロブチル、トリメシン酸トリシクロヘプチル、トリメシン酸トリ1−アダマンチル、トリメシン酸トリ3−メチルシクロヘキシル、トリメシン酸トリ2,3−ジメチルシクロヘキシル、トリメシン酸トリ3,3,5−トリメチルシクロヘキシル、トリメシン酸トリS(+)−1−シクロヘキシルエチル、トリメシン酸トリR(+)−1−シクロヘキシルエチル、トリメシン酸トリイソプロピル、トリメシン酸トリ1,1−ジメチルプロピル、トリメシン酸トリ1,2−ジメチルプロピル、トリメシン酸トリ2−ブチル、トリメシン酸トリ3−メチルブチル、トリメシン酸トリ1,1,3,3−テトラメチルブチル、トリメシン酸トリ3,5−ジフルオロフェニル、トリメシン酸トリペンタフルオルフェニル、トリメシン酸トリ4−(トリフルオロメトキシ)フェニル、トリメシン酸トリ1,2−ジメチルプロピル、トリメシン酸トリ3−メチルブチル、又はトリメシン酸トリ1,1,3,3−テトラメチルブチルであることを特徴とする請求項1記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
- トリメシン酸系化合物は、トリメシン酸トリシクロヘキシルアミドであることを特徴とする請求項1記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
- ホスホン酸金属塩は、フェニルホスホン酸、2−メトキシフェニルホスホン酸、4−メトキシフェニルホスホン酸、4−エチルフェニルホスホン酸、2−イソプロピルフェニルホスホン酸、3−ニトロフェニルホスホン酸、4−ニトロフェニルホスホン酸、2−メチル−4−ニトロフェニルホスホン酸、3−メチル−5−ニトロフェニルホスホン酸、2−クロロ−5−メチルフェニルホスホン酸、4−クロロフェニルホスホン酸、4−ブロモフェニルホスホン酸、2−ヨードフェニルホスホン酸又は2−フルオロフェニルホスホン酸の金属塩であることを特徴とする請求項1記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
- ホスホン酸金属塩はフェニルホスホン酸亜鉛であることを特徴とする請求項1記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
- 結晶核剤が、1.0〜2.0重量%であることを特徴とする、請求項1記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
- トリメシン酸系化合物が0.3〜1.0重量%であり、ホスホン酸金属塩又はタルクが0.5〜1.5重量%であることを特徴とする請求項1記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリ乳酸系樹脂組成物を、金型温度80℃〜100℃、及び金型保持時間1分〜10分の成形処理に供することを含む、ポリ乳酸系樹脂成形品の製造方法。
- トリメシン酸系化合物と、ホスホン酸金属塩又はタルクとを主成分とする、ポリ乳酸用結晶核剤。
- トリメシン酸系化合物は、トリメシン酸トリシクロヘキシルアミド、トリメシン酸トリス(t-ブチルアミド)、トリメシン酸トリ3−メチルフェニル、トリメシン酸トリ2,3−ジメチルフェニル、トリメシン酸トリ2,4−ジメチルフェニル、トリメシン酸トリ3,4−ジメチルフェニル、トリメシン酸トリ2,4,6−トリメチルフェニル、トリメシン酸トリ2−エチルフェニル、トリメシン酸トリ4−n−ブチルフェニル、トリメシン酸トリ4−メトキシフェニル、トリメシン酸トリ4−エトキシフェニル、トリメシン酸トリ4−(n−デシルオキシ)フェニル、トリメシン酸トリシクロプロピル、トリメシン酸トリシクロブチル、トリメシン酸トリシクロヘプチル、トリメシン酸トリ1−アダマンチル、トリメシン酸トリ3−メチルシクロヘキシル、トリメシン酸トリ2,3−ジメチルシクロヘキシル、トリメシン酸トリ3,3,5−トリメチルシクロヘキシル、トリメシン酸トリS(+)−1−シクロヘキシルエチル、トリメシン酸トリR(+)−1−シクロヘキシルエチル、トリメシン酸トリイソプロピル、トリメシン酸トリ1,1−ジメチルプロピル、トリメシン酸トリ1,2−ジメチルプロピル、トリメシン酸トリ2−ブチル、トリメシン酸トリ3−メチルブチル、トリメシン酸トリ1,1,3,3−テトラメチルブチル、トリメシン酸トリ3,5−ジフルオロフェニル、トリメシン酸トリペンタフルオルフェニル、トリメシン酸トリ4−(トリフルオロメトキシ)フェニル、トリメシン酸トリ1,2−ジメチルプロピル、トリメシン酸トリ3−メチルブチル、又はトリメシン酸トリ1,1,3,3−テトラメチルブチルであることを特徴とする請求項9記載のポリ乳酸用結晶核剤。
- トリメシン酸系化合物は、トリメシン酸トリシクロヘキシルアミドであることを特徴とする請求項9記載のポリ乳酸用結晶核剤。
- ホスホン酸金属塩は、フェニルホスホン酸、2−メトキシフェニルホスホン酸、4−メトキシフェニルホスホン酸、4−エチルフェニルホスホン酸、2−イソプロピルフェニルホスホン酸、3−ニトロフェニルホスホン酸、4−ニトロフェニルホスホン酸、2−メチル−4−ニトロフェニルホスホン酸、3−メチル−5−ニトロフェニルホスホン酸、2−クロロ−5−メチルフェニルホスホン酸、4−クロロフェニルホスホン酸、4−ブロモフェニルホスホン酸、2−ヨードフェニルホスホン酸又は2−フルオロフェニルホスホン酸の金属塩であることを特徴とする請求項9記載のポリ乳酸用結晶核剤。
- ホスホン酸金属塩はフェニルホスホン酸亜鉛であることを特徴とする請求項9記載のポリ乳酸用結晶核剤。
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-
2008
- 2008-04-14 JP JP2008104681A patent/JP2009256417A/ja active Pending
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