JP2009254990A - 吸着材モジュール - Google Patents

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Abstract

【課題】室内の空気を除湿および/または加湿する例えば車両用の湿度調節装置に適用される吸着材モジュールであって、湿度調節装置の装置構成を簡素化でき且つ小型化し得る吸着材モジュールを提供する。
【解決手段】吸着材モジュール(1)は、各板面(3a)、(3b)が吸熱部および放熱部として機能する平板状のペルチェ素子(30)と、当該ペルチェ素子の各板面(3a)、(3b)に直接配置された第1の吸着素子(31)及び第2の吸着素子(32)とから成り、第1及び第2の吸着素子(31)、(32)は、通気可能なエレメント(33)に吸着材としての特定のゼオライトを担持させて構成される。各吸着素子(31)、(32)において互いに交互に吸着操作と脱着操作を行うと共に、ペルチェ素子(30)に流れる電流の逆転によって当該ペルチェ素子の吸熱部と放熱部を入れ替えて各吸着素子(31)、(32)における吸脱着操作を切り替える。
【選択図】図1

Description

本発明は、吸着材モジュールに関するものであり、詳しくは、吸着材の吸着、脱着機能により室内の空気を除湿および/または加湿する湿度調節装置に適用される吸着材モジュールに関するものである。本発明の吸着材モジュールは、特に、車両室内の除加湿を行う車両用湿度調節装置に好適である。
車両室内の空調技術の1つとして、車両室内をより快適にし且つ省エネルギー化を図るため、吸着材の水蒸気脱着機能を利用した除湿・加湿技術が種々検討されている。斯かる技術としては、例えば冬季において、室内の空気を循環させつつ、窓ガラス防曇用に室外の乾燥した外気を導入して窓ガラスに吹き付けるに当たり、室内から室外へ排出される一部の空気中の水分を活性炭、ゼオライト等の吸着材によって捕捉し、捕捉した水分を室内に戻すことにより、室内の乾燥を防ぐ様にした「車室内の空調方法」が提案されている(特許文献1参照)。
上記の空調方法においては、通気可能な円柱状のハニカム構造体から成るいわゆる吸着ローターに吸着材を担持させ、吸着ローターを一定速度で回転させながら、吸着ローターの一部が所定の吸着領域(室内空気の排出流路)を通過する際に水分を吸着し、所定の脱着領域(室内空気の循環流路)を通過する際に電熱ヒーターで加熱された空気によって吸着材を加熱し、吸着材の水分を脱着する。
また、除湿・加湿技術としては、例えば夏季において、冷房用の空調機(クーラー)の省エネルギー化を図り且つ除湿された快適な空気を乗員側へ供給するため、仕切り板によって2系列の送風路に仕切られ且つそれぞれの両端を吸気口と排気口とされた空気流路に対し、熱交換部および吸湿部材(吸着ローター)を2つの送風路に跨る様に順次に配置して成る湿度調節装置が「空気調和装置」として提案されている(特許文献2参照)。
上記の空気調和装置においては、熱交換部で一方の送風路を通過する空気を冷却し、他方の送風路を通過する空気を加熱すると共に、吸湿部材を2つの送風路の間で回動または揺動させて吸着、脱着操作を繰り返し、そして、一方の送風路を通じて除湿された空気を室内に供給し、他方の送風路を通じて加湿された空気を室外に排出する。また、熱交換部は、ペルチェ素子の吸熱部と放熱部にそれぞれ熱伝導部を配置して構成され、一方の送風路の空気をペルチェ素子の吸熱部側の熱伝導部によって冷却し、他方の送風路の空気をペルチェ素子の放熱部側の熱伝導部によって加熱することにより、吸湿部材に対し、吸着促進のための冷熱と脱着に必要な温熱とを供給している。
ところで、吸着材を使用した上記の様な湿度調節装置においては、吸着ローター等の回転部材に吸着材を担持させ、吸着領域および脱着領域を構成する送風路などの特定空間において回転部材を駆動させるため、その駆動機構が必要であり、装置構成を簡素化できないと言う問題がある。更に、回転部材およびその駆動機構を収納するに足る十分な容積のケーシングが必要であり、小型化し難いと言う問題がある。
更に、吸着ローター方式においては、除湿すべき空気によって吸着ローターの吸着材を冷却するため、吸着による放熱により、吸着ローターを通過する間に空気自体の温度が上昇し、吸着材全体として吸着機能が十分に発揮されず、また、加湿すべき空気によって吸着ローターの吸着材を加熱するため、脱着による吸熱により、吸着ローターを通過する間に空気自体の温度が低下し、同様に、吸着材全体として十分な脱着機能を発揮することが出来ない。その結果、通気面積を大きくして必要以上に多量の吸着材を担持しなければならず、吸着ローターが大型化する傾向にある。
また、上記の様に、ペルチェ素子を利用した場合は、電熱ヒーターによって吸着材の加熱脱着を行う従前のものに比べ、吸着材の加熱と冷却を同時に行うことが出来るため、吸着材の吸着効率を高めることが出来る。しかしながら、ペルチェ素子を利用する場合も、一旦、当該ペルチェ素子の両側の熱伝導部を介して送風路の空気を加熱、冷却し、そして、吸着ローターを通過する空気自体を介して吸着材を加熱、冷却するため、熱効率が低く、ペルチェ素子自体もその発熱量に比べて大型化すると言う問題がある。
更に、小型化を図るため、吸湿材を具備した伝熱板をペルチェ素子で直接加熱冷却することにより、水蒸気を除去する様にした装置が提案されている(特許文献3参照)。しかしながら、吸湿材が吸着した水分を脱着して、加湿用途に利用するためには高温での再生が必要であるが、上記の装置においては、ペルチェ素子を長時間高温にする必要があるため、十分に作動しなかったり、脱着を即すため、伝熱面への吸着材の塗布量を下げて伝熱効率を上げる必要があり、十分な性能が得られないと言う問題がある。更に、繰り返しペルチェ素子に長時間高い温度をかける必要があるために、高温に耐えられる素子を用いなければならず、かつ、耐久性も落ちるという問題がある。
特開2000−142096号公報 特開2000−146220号公報 特開2001−097038号公報
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、吸着材の吸着、脱着機能により室内の空気を除湿および/または加湿する湿度調節装置に適用される吸着材モジュールであって、湿度調節装置の装置構成を簡素化、小型化し且つ十分な水分吸脱着量を備えた吸着材モジュールを提供することにある。
上記の課題を解決するため、本発明においては、吸着材として特定のゼオライトを担持させた固定方式の一対の吸着素子をペルチェ素子の吸熱部および放熱部として機能する一対の板面にそれぞれ直接配置することにより吸着材モジュールを構成し、ペルチェ素子により、第1の吸着素子を直接例えば冷却して吸着材による吸着質の吸着を促進すると同時に、第2の吸着素子を直接例えば加熱して吸着材による吸着質の脱着を行い、第1の吸着素子および第2の吸着素子においてそれぞれ除湿された空気と加湿された空気を得る様にした。そして、ペルチェ素子へ流す電流の逆転によって吸熱部と放熱部を機能的に入れ替えることにより、各吸着素子に対する冷却と加熱を反転させ、各吸着素子の吸着操作と脱着操作を切り替える様にした。従って、上記の吸着材モジュールを使用した湿度調節装置においては、第1の吸着素子を通過した空気と第2の吸着素子を通過した空気の吹出流路を吸着操作と脱着操作の反転に応じて切り替えるならば、除湿された空気と加湿された空気を所定の吹出口から連続して吹き出すことが出来る。
すなわち、本発明の要旨は、空気を除湿および/または加湿する湿度調節装置に使用される吸着材モジュールであって、吸熱部および放熱部としてそれぞれ機能する一対の板面を備えたペルチェ素子と、当該ペルチェ素子の各板面にそれぞれ直接配置された第1の吸着素子および第2の吸着素子とから構成され、これら第1及び第2の吸着素子が、通気可能なエレメントに吸着材としての以下のゼオライトを担持させて構成されていることを特徴とする吸着材モジュールに存する。
上記のゼオライトは、骨格構造にアルミニウムとリンを含み、かつ、25℃で測定した水蒸気吸着等温線において、相対蒸気圧0.1〜0.25の範囲における相対蒸気圧の値が0.1増加したときの水の吸着量の増加が0.12g/g以上である。
本発明の吸着材モジュールによれば、一対の吸着素子に担持させる吸着材が、より低温での吸脱着が可能で且つ少量でも十分な水蒸気量を吸脱着可能な特定のゼオライトであり、そして、固定方式の一対の吸着素子とペルチェ素子により構成され、ペルチェ素子へ流す電流の逆転によって各吸着素子の吸着操作と脱着操作を切り替えられるため、従来の吸着ローター方式の様な回転駆動部を設ける必要がなく、しかも、ペルチェ素子の吸熱部および放熱部として機能する各板面に各吸着素子が直接配置されており、吸着素子を加熱・冷却する際のペルチェ素子と吸着素子との間の熱伝導性が高いため、モジュールを一層小型化でき、これにより、湿度調節装置の装置構成を簡素化でき且つ装置全体を一層小型化することが出来る。また、より低温での吸脱着が可能であるため、ペルチェ素子の発熱温度も低温に抑えることが出来、その結果、ペルチェ素子の耐久性を向上させることも出来る。
本発明に係る吸着材モジュールの一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る吸着材モジュールの一例を示す斜視図である。図2は、本発明に係る吸着材モジュールの他の例を示す斜視図である。図3は、本発明の吸着材モジュールに好適な吸着材の吸着特性を示す水蒸気吸着等温線である。図4は、本発明の吸着材モジュールに好適な吸着材の他の例の吸着特性を示す水蒸気吸着等温線である。図5は、本発明に係る吸着材モジュールの使用例としての湿度調節装置の構成を示す模式的なブロック図である。また、図6は、湿度調節装置に使用される流路切替装置の一例の内部構造を示す平面図および側面図であり、図7は、図6の流路切替装置の正面図および背面図である。そして、図8は、図6のB−B線に沿って破断した断面図であり、流路切替装置の機能を示す図である。
本発明の吸着材モジュールは、室内の空気を除湿および/または加湿する湿度調節装置において使用される。本発明の吸着材モジュールは、駆動機構を必要とせず且つ熱効率が高いため、殊に、車両室内の空気を除湿および/または加湿する湿度調節装置などの比較的小型の装置に好適である。
本発明の吸着材モジュールは、図1及び図2に符号(1)で示す様に、吸熱部および放熱部としてそれぞれ機能する一対の板面(3a)、(3b)を備えたペルチェ素子(30)と、通気可能なエレメント(33)に吸着材を担持させて成り且つペルチェ素子(30)の各板面(3a)、(3b)にそれぞれ直接配置された第1の吸着素子(31)及び第2の吸着素子(32)とから構成される。
吸着材モジュール(1)は、図1及び図2に示す様に扁平な直方体に形成されてもよいし、あるいは、適用する装置の構造に応じて曲面を備えた形状に形成されてもよい。また、吸着材モジュール(1)において、第1の吸着素子(31)及び第2の吸着素子(32)は、ペルチェ素子(30)の各板面(3a)、(3b)に対し、空気層や他の機械部品などの断熱要素が介在することなく、ペルチェ素子(30)で生成された温熱および冷熱が熱伝導によって伝わる様に配置されていればよく、銀ペースト、グリス等の熱伝導材料を介して配置されてもよい。
上記の吸着材モジュール(1)において、ペルチェ素子(30)は、周知の通り、ペルチェ効果を利用した素子であり、コンピュータ等の電子機器の冷却装置として使用される電子部品である。すなわち、ペルチェ素子は、2種の金属板の間にP型半導体とN型半導体を多数配置すると共に、一方の金属板によってN−P接合を構成し且つ他方の金属板によってP−N接合を構成した素子であり、斯かる素子においては、PN接合部分に電流を流すことにより熱移動が起こり、一方の金属板で吸熱現象が生じ、他方の金属板で放熱現象が生じる。
本発明の吸着材モジュール(1)においては、より小型化を図るため、各板面(3a)、(3b)がそれぞれ吸熱部、放熱部として機能する例えば平板状のペルチェ素子(30)が使用される。例えば車両用湿度調節装置などに使用する場合のペルチェ素子(30)の消費電力は1.4〜120W、発熱最高温度は80〜90℃、最大温度差は64〜83℃である。本発明では、ペルチェ素子(30)を設計するに当たり、当該ペルチェ素子に求められる放熱容量(W)及び吸熱容量(W)を次式に基づいて算出される。
Figure 2009254990
第1の吸着素子(31)及び第2の吸着素子(32)は、各々、通気可能なエレメント(33)に吸着材を担持させて構成され、車両用湿度調節装置などに収容するため、通常は外形形状を扁平な箱状に形成される。勿論、湿度調節装置などの適用装置の形状に応じた曲面を含む外形形状を備えていてもよい。各吸着素子(31)、(32)は、エレメント(33)とペルチェ素子(30)との間で熱(温熱および冷熱)を効率的に伝達するため、エレメント(33)を金属製ケーシングに収容して構成される。
エレメント(33)としては、小型化を図ることが出来、しかも、大きな吸着面積を確保でき且つ一層多量の粉体状の吸着材を保持し得る限り、各種の構造のものを使用できる。斯かるエレメント(33)の構造としては、例えば、波板状の基材シートによって通気セルの開口形状が略三角形に形成された図示する様ないわゆるコルゲート型、通気セルの開口形状が略六角形に形成されたハニカム型、通気セルの開口形状が四角形に形成された格子型などの構造が挙げられる。また、通過する空気の圧力損失を低減するため、通気セルの開口形状が他の多角形に形成された構造でもよい。エレメント(33)は、いわゆるヒートシンクや略波板状の基材がペルチェ素子(30)の板面に直交する様な形状のものでもよい。
例えば、コルゲート型のエレメント(33)は、図1に示す様に、略波板状に形成された基材シート及び略平板状に形成された基材シートを交互に積層して通気セルを多数構成したものである。すなわち、各吸着素子(31)、(32)のエレメント(33)は、平板状の基材シートに波板状の基材シートを重ねることにより一列のセルを形成したハニカムシートがペルチェ素子(30)の板面(3a)、(3b)に対して平行に複数隣接配置された構造、換言すれば、各ハニカムシートの略平板状の基材シートがペルチェ素子(30)の板面(3a)、(3b)と平行となる様に配置された構造を備えており、通気セルは、波板状の基材シートの各凸部と隣接する平板状の基材シートとを接合することにより、エレメント端面側(通気方向の両端面側)の開口形状が略三角形に形成される。
また、コルゲート型のエレメント(33)は、図2に示す様に構成されてもよい。図2に示すエレメント(33)は、平板状の基材シートに波板状の基材シートを重ねることにより一列のセルを形成したハニカムシートがペルチェ素子(30)の板面(3a)、(3b)に対して直交する状態で複数隣接配置された構造、すなわち、上記のハニカムシートがペルチェ素子(30)の板面(3a)、(3b)に沿って配列された構造を備えている。換言すれば、エレメント(33)は、各ハニカムシートの略平板状の基材シートがペルチェ素子(30)の板面(3a)、(3b)に直交する状態に配置された構造を備えている。上記の様に、吸着素子(31)、(32)として、エレメント(33)のハニカムシートがペルチェ素子(30)の板面(3a)、(3b)に対して垂直に配置された素子を使用した場合には、各吸着素子(31)、(32)のエレメント(33)を構成する各ハニカムシートに対し、ペルチェ素子(30)の温熱および冷熱を均一に且つ効率的に伝えることが出来、ペルチェ素子(30)による加熱、冷却効果を一層高めることが出来る。
上記の図1及び図2に示す様な各吸着素子(31)、(32)のエレメント(33)に使用されるハニカムシートは、長さの異なる2種類の基材シートを交互に積層し且つ長い方の基材シートを引き寄せながら一定間隔で接合する所謂ハニカム成形機によって作製することが出来、その際、隣接する平板状の基材シートと波板状の基材シートは、加熱溶着、超音波溶着または接着剤を使用した接着などにより接合される。そして、エレメント(33)は、基材シートとしてのセラミックペーパー等から成る例えばコルゲート型などのハニカムシートを上記の様な方法で作製し、ハニカムシートを積層してエレメントの構造体を作製した後、吸着材とバインダーと溶剤とから成るスラリーに前記の構造体を浸漬して製造される。なお、ハニカムシートの製造方法自体は、公知であり、例えば特開2004−209420号公報に開示されている。
また、上記の第1の吸着素子(31)及び第2の吸着素子(32)においては、各々、通気面積(エレメント(33)の通気方向に直交する総開口面積)が、例えば湿度調節装置内の吸着材モジュール(1)の上流側および下流側の流路の最小の断面積(通気方向に直交する開口面積)以上に設定されるのが好ましい。吸着素子(31)、(32)の通気面積を上記の様に設定した場合には、各吸着素子(31)、(32)内において通過する空気の流速を小さくすることが出来、吸着および脱着機能を一層高めることが出来る。
更に、第1の吸着素子(31)及び第2の吸着素子(32)は、各々、空気の入口および出口の開口面積に対して、内部の通気方向に直交する断面の面積が大きく形成されていてもよい。上記の様に、吸着素子(31)、(32)の内部の断面積を大きくした場合には、出入口近傍の幅方向側(平面視して左右)の側縁部分における通気時の圧力損失を低減できるため、各吸着素子(31)、(32)における吸脱着効率を高めることが出来る。
また、各吸着素子(31)、(32)内の空気の流速を小さくして吸着および脱着機能を高めるため、図示しないが、吸着材モジュール(1)は、例えば湿度調節装置内の流路の幅よりも大きな幅に形成され、吸着材モジュール(1)への入口部分の流路は、吸着材モジュール(1)の入口に向うに従い幅が漸次広くなる様に形成され、そして、吸着材モジュール(1)の下流側の部分の流路は、湿度調節装置の吹出口に向う従い幅が漸次狭くなる様に形成されてもよい。同様に、吸着材モジュール(1)は、例えば湿度調節装置内の流路の高さよりも厚く形成され、吸着材モジュール(1)への入口部分の流路は、吸着材モジュール(1)の入口に向って従い高さが漸次高くなる様に形成され、そして、吸着材モジュール(1)の下流側の部分の流路は、湿度調節装置の吹出口に向う従い高さが漸次低くなる様に形成されてもよい。
本発明の吸着材モジュール(1)においては、例えば、室内の湿度調節装置に適用し、外気が乾燥する冬季おいて、窓ガラス防曇用に吹き出す空気を十分に除湿し、また、乗員側に吹き出す空気を効果的に加湿するため、エレメント(33)に担持される吸着材としては、以下の様な吸着特性を備えたゼオライトが使用される。
すなわち、冬季において暖房時に室内を循環する空気は、その温度を25℃とした場合、相対湿度が25〜50%程度と比較的低湿度であるが、室内湿度調節装置から吹き出す空気によって例えば5℃の低温の窓ガラスに対する防曇効果を達成するため、吸着材は、前記の様な低湿度においても十分に水分を吸着し、そして、吹き出す空気の相対湿度を更に20%程度以下まで低減し得る特性を備えていることが望まれる。
一方、吸着材の再生においては、前述のペルチェ素子(30)が使用されるが、消費電力低減のため、吸着材は、温度が90℃以下、好ましくは70℃以下の比較的低い温度で水分を脱着できることが望まれる。そして、車室内が適度に快適な状態にある場合、例えば温度が25℃、湿度が50%の場合、エレメント(33)を通過する空気をペルチェ素子(30)で90℃に加熱した際の相対湿度は2%、70℃に加熱した際の相対湿度は4%となる。従って、吸着材においては、相対湿度が10〜25%の範囲、好ましくは10〜20%の範囲で容易に吸着・脱着し得る特性が望まれる。
また、吸着材に望まれる吸脱着量は次の通りである。すなわち、車室内の空気を防曇用に窓ガラスへ供給する場合、一般的に120m/h程度の空気が吹き出される。その際、窓ガラスの温度が5℃とすると、窓ガラスの結露を防止するには、吹き出す空気が5℃の飽和状態における絶対湿度以下、約5g/kg以下まで除湿されているのが好ましい。そして、前述の様に室内空気の温度が25℃、湿度が50%とすると、この空気の絶対湿度が9.8g/kgであるから、120m/h(=15.5kg/h)の空気について4.8g/kg以上除湿する必要がある。従って、吸着材によって例えば750g/hの水分を吸着し得るのが好ましい。
更に、車室内の空気を加湿して不快感を与えることなく乗員側に供給しようとすると、例えば1〜2m/sの風速で且つ4.7m/hの風量で空気を吹き出すのが望ましい。その際、吸込口(10)から吸い込む空気の温度が20℃、相対湿度が30%、絶対湿度が4.35g/kg(DA)であって、第2の吹出口(12)から乗員側へ温度が25℃、相対湿度が38%、絶対湿度が5.6g/kg(DA)の加湿空気を吹き出そうとすると、絶対湿度を1.2g/kg(DA)高めることが求められ、上記の風量では水分量で6.8g/h加湿することが求められる。
一方、吸着材モジュール(1)の作動においては、後述する様に、第1の吸着素子(31)と第2の吸着素子(32)とで吸着操作と脱着操作とを交互に切り替えるが、吸着・脱着操作の切替数を12回/h行うとすると、各吸着素子(31)、(32)の1回の吸着操作ならびに脱着操作において、吸着材により約0.6gの水分を吸着、脱着する必要がある。しかも、実用上、小型の車両用湿度調節装置に組み込むため、各吸着素子(31)、(32)の小型化を図る必要があり、各エレメント(33)における有効体積(吸着材を担持した状態における見かけ体積)の合計を33cmに設計した場合、両方のエレメント(33)に担持させ得る吸着材の合計質量は6g程度となる。従って、吸着材においては、少なくとも0.10g/gの吸脱着量が求められる。
すなわち、本発明において、吸着材モジュール(1)の各エレメント(33)に担持する吸着材としてのゼオライトは、骨格構造にアルミニウムとリンを含み、かつ、25℃の水蒸気吸着等温線における相対蒸気圧0.1〜0.25の範囲における相対蒸気圧の値が0.1増加したときの水の吸着量の増加が0.12g/g以上、好ましくは0.14g/g以上、より好ましくは0.15g/g以上の吸着特性を有する。上記の水蒸気吸着等温線は、図3及び図4に示す様に、例えば相対蒸気圧0.1〜0.2の範囲において、相対蒸気圧が高くなるに従い、水の吸着量が急激に増加し、また、相対蒸気圧が低くなるに従い、水の吸着量が急激に減少するような吸脱着特性を示すものである。好ましくは、25℃の水蒸気吸着等温線における相対蒸気圧0.1〜0.2の範囲における相対蒸気圧の値が0.1増加したときの水の吸着量の増加が0.12g/g以上、好ましくは0.14g/g以上、より好ましくは0.15g/g以上を示すものである。
上記の特性を満足するゼオライトとしては、骨格構造に少なくともAlとPを含む結晶性アルミノフォスフェート類が好ましい。吸着材個々の粒子における水蒸気の拡散を高める観点から、吸着材の粒子の大きさ(平均粒径)は、通常は0.1〜300μm、好ましくは0.5〜250μm、更に好ましくは1〜200μm、最も好ましくは2〜100μmとされる。
上記のアルミノフォスフェート類(以下、「ALPO類」と適宜略記する。)は、IZA(InternationalZeolite Association)の定める結晶性アルミノフォスフェートである。結晶性アルミノフォスフェートは、骨格構造を構成する原子がアルミニウム及びリンであり、その一部が他の原子で置換されていても良い。中でも、吸着特性の点から、(I)アルミニウムがヘテロ原子Me1で一部置換されたMe−アルミノフォスフェート(但し、Me1は周期表第三または第四周期に属し、2A族、7A族、8族、1B族、2B族、3B族(Alを除く)の元素から選ばれる少なくとも一種類の元素)、(II)リンがヘテロ原子Me2で置換されたMe−アルミノフォスフェート(但し、Me2は周期表第三または第四周期に属する4B族元素)、あるいは、(III)アルミニウムとリンの両方がそれぞれヘテロ原子Me1,Me2で置換されたMe−アルミノフォスフェートが特に好ましい。
Meは、1種でも2種以上含まれていても良い。好ましいMe(Me1,Me2)は、周期表第3、第4周期に属する元素である。Me1は2価の状態でイオン半径が0.3以上、0.8nm以下であるのが好ましく、更に好ましくは2価、4配位の状態でイオン半径が0.4以上、0.7nm以下である。上記の中でも、合成の容易さ、吸着特性の点から、Fe,Co,Ga,Mg,Znから選ばれる少なくとも一種類の元素であるのが好ましく、特にFeであるのが好ましい。Me2は、周期表第三または第四周期に属する4B族元素であり、好ましくはSiである。
また、上記のアルミノフォスフェート類としては、通常、そのフレームワーク密度(FD)が13T/nm以上で且つ20T/nm以下のものが使用される。フレームワーク密度の下限は、好ましくは13.5T/nm以上であり、更に好ましくは14T/nm以上である。一方、フレームワーク密度の上限は、好ましくは19T/nm以下である。フレームワーク密度が上記の範囲未満では、構造が不安定となる傾向があり、耐久性が低下する。一方、フレームワーク密度が上記の範囲を越えると、吸着容量が小さくなり、吸着材としての使用に適さなくなる。なお、フレームワーク密度(単位:T/nm)とは、単位体積(nm)あたりに存在するT原子(ゼオライト1nm当たりの酸素以外の骨格を構成する元素の数)を意味する。
アルミノフォスフェート類の構造としては、IZAが定める構造のコードで示すと、AEI、AEL、AET、AFI、AFN、AFR、AFS、AFT、AFX、ATO、ATS、CHA、ERI、LEV、SOD、VFIが挙げられる。中でも、吸着特性、耐久性の点からは、AEI、AEL、AFI、CHA、LEV、SODの構造を備えたものが好ましく、AFI,SODの構造を備えたものが好ましい。特に耐久性と吸着特性の面からAFI型が好ましい。
吸着材としては、上記の様なアルミノフォスフェート類の中、FAPO−5が特に好ましい。また、1種または2種以上のALPO類を組み合わせて使用することも出来る。なお、FAPOは、製造条件は特に限定されないが、通常、アルミニウム源、リン源、必要に応じてSi、Fe等のMe源、および、テンプレートを混合した後、水熱合成して製造される。また、ALPO類は、例えば特公平1−57041、特開2003−183020、特開2004−136269等の公報に記載の公知の合成法を利用して合成することが出来る。
因に、本発明の吸着材モジュール(1)に好適な吸着材、例えば結晶性鉄アルミノフォスフェート(FAPO−5)は、図3に示す様な吸着特性を備えており、25℃の水蒸気吸着等温線において、相対湿度10%から相対湿度25%の間で吸着量が急激に変化し、その吸着量の差が0.15g/g以上である。すなわち、吸着、脱着の際、より多くの水分を上記の相対蒸気圧の範囲において吸脱着する。これに対し、従来の吸着材、例えば、A型シリカゲルや活性炭は、25℃の水蒸気吸着等温線において、相対湿度10%から相対湿度25%の間で吸着量の変化が小さく、その差がFAPO−5の1/2以下程度である。換言すれば、本発明に適用される吸着材は、低い湿度範囲においてより多くの水分を吸着・脱着する特性を備えている。
また、本発明の吸着材モジュール(1)においては、保守管理を容易にするため、第1の吸着素子(31)及び第2の吸着素子(32)がそれぞれ交換可能に構成される。具体的には、吸着材モジュール(1)は、ペルチェ素子(30)に対して各吸着素子(31)、(32)を固定することなく密着させた状態で湿度調節装置などに装置に取外し可能に収容される。すなわち、吸着材を担持させた吸着素子、好ましくはゼオライトを担持させた吸着素子、より好ましくはアルミノフォスフェート類を担持させた吸着素子(31)、(32)をそれぞれ独立に取外し可能に収容される。これにより、吸着材の吸着能が低下した場合などに吸着材が担持された吸着素子(31)、(32)だけを交換できる。
本発明の吸着材モジュール(1)は、ペルチェ素子に流れる電流の逆転によって当該ペルチェ素子の吸熱部と放熱部を機能的に入れ替えることにより、前記各吸着素子における吸着操作と脱着操作を切替え可能になされている。これにより、吸着材モジュール(1)においては、第1の吸着素子(31)及び第2の吸着素子(32)において互いに交互に吸着操作と脱着操作を行う様になされている。従って、上記の吸着材モジュール(1)を使用した湿度調節装置においては、吸着操作と脱着操作の反転に応じて、第1の吸着素子(31)を通過した空気と第2の吸着素子(32)を通過した空気の吹出流路を切り替えることにより、除湿された空気と加湿された空気を所定の吹出口から連続して吹き出すことが出来る。
次に、本発明の吸着材モジュール(1)の使用例を説明する。本発明の吸着材モジュール(1)は、図5に示す様な構成の車両用の湿度調節装置に適用することが出来る。斯かる湿度調節装置は、外気が乾燥する例えば冬季において、窓ガラスに防曇用の除湿空気を供給し、乗員側に加湿空気を供給するために使用される。また、上記の湿度調節装置は、後述する流路切替装置の作動設定の変更により、外気が高湿度となる夏季において、乗員側に除湿空気を供給するために使用される。
図5(a)に例示する湿度調節装置は、送風機(2)、吸着材モジュール(1)及び流路切替装置(4)を順次に配置して構成される。送風機(2)は、吸着材モジュール(1)の一対の吸着素子(31)、(32)に対応させて2基設けられる。送風機(2)としては、通常、直流方式の遠心ファンが使用される。斯かる遠心ファンの回転数は3000〜6000rpm程度、最大静圧は100〜300Pa程度、最大風量は0.1〜0.5m/min程度である。なお、湿度調節装置においては、共通の1基の送風機により、一対の吸着素子(31)、(32)に空気を供給する様に構成されてもよい。
吸着材モジュール(1)においては、各吸着素子(31)、(32)の吸着操作、脱着操作を交互に切り替える。従って、上記の湿度調節装置においては、除湿された空気および加湿された空気を各別個に連続的に吹き出すため、上記の各空気を所定の吹出口に振向ける流路切替装置(4)が吸着材モジュール(1)の下流側に配置される。空気の吹出流路を切り替える機構としては、2つの可撓性管路を移動させてその接続先を変更する様な機構、リンク等によって同期作動する2つのシャッターを交互に開閉してその接続先を変更する機構、互いに隣接し且つ側面視して直交する同軸の2枚の回転シャッターを90度づつ回動させてその接続先を変更する機構なども使用できるが、装置構成を簡素化し且つ小型化を図る観点から、上記の流路切替装置(4)は、例えば図6に示す様に、アクチュエータ(45)によって回動するダンパー(44)により、上記の各空気の振向け先を切り替える様になされている。
具体的には、流路切替装置(4)は、当該流路切替装置の外郭を構成する箱状のケーシング内部に、吸着材モジュール(1)を通過した空気が流入する上部の第1の導入室(41)、同様に吸着材モジュール(1)を通過した空気が流入する下部の第2の導入室(42)、これら導入室(41)、(42)の間の振分室(43)、および、空気の流れを切り替えるダンパー(44)、ならびに、当該ダンパーを作動させるアクチュエータ(45)を配置して構成される。
図6及び図7に示す様に、流路切替装置(4)のケーシングの前端には、空気が流入する入口(51)、(52)が設けられ、ケーシングの後端には、振り分けた空気を吹き出す第1の吹出口(11)及び第2の吹出口(12)が設けられる。そして、ケーシング内部は、空気の流れ方向に沿ってリブ(15)で前後に区画され(図6(a)及び(b)参照)、上記の第1の導入室(41)、第2の導入室(42)及び振分室(43)は、リブ(15)よりも前方側の空間を2枚の仕切板(16)、(17)で上下3段に仕切って形成される(図6(b)及び図7(a)参照)。
第1の導入室(41)は、図6(b)及び図7(a)に示す様に、ケーシング前端の上部に設けられた導入口(51)を通じて、吸着材モジュール(1)の第1の吸着素子(31)を通過した空気が流入する様に構成される。他方、第2の導入室(42)は、ケーシング前端の下部に設けられた導入口(52)を通じて、吸着材モジュール(1)の第2の吸着素子(32)を通過した空気が流入する様に構成される。
振分室(43)は、ダンパー(44)と協働的に機能して空気の流出先を振り分ける空間であり、図6(b)及び図7(a)に示す様に、上記の第1の導入室(41)と第2の導入室(42)の間に配置される。そして、図8に示す様に、前述の2枚の仕切板(16)、(17)の各中央に通気穴(符号(61)及び(62)で示す穴)が設けられ、これらの通気穴が振分室(43)への空気の入口となっている。また、リブ(15)の振分室(43)の高さに相当する部位の左右に通気穴(符号(71)及び(72)で示す穴)が設けられ、これらの通気穴が振分室(43)からの空気の出口となっている。
すなわち、振分室(43)には、上記の各導入室(41)、(42)にそれぞれ通じる第1の流入口(61)及び第2の流入口(62)が設けられ、導入室(41)、(42)の空気が流入する様になされている。そして、振分室(43)には、第1の吹出口(11)及び第2の吹出口(12)にそれぞれ通じる第1の流出口(71)及び第2の流出口(72)が設けられ、振分室の空気が各吹出口(11)、(12)へ流出する様になされている。
ダンパー(44)は、図6、図7(a)及び図8に示す様に、上記の振分室(43)の中央、換言すれば、第1の流入口(61)と第2の流入口(62)の間に配置され、かつ、ケーシングの前端面およびリブ(15)の板面に直交する軸の周りに一定角度だけ回動可能に構成される。上記のダンパー(44)は、リブ(15)に対して振分室(43)と反対側(下流側)に配置されたアクチュエータ(45)によって作動し、当該ダンパーの左右の側縁が仕切板(16)、(17)に接触することにより、振分室(43)を2つの空間に仕切ることが出来る。なお、アクチュエータ(45)としては、ダンパー(44)を一定角度だけ正逆回転させるため、通常はギヤードタイプのステッピングモーターが使用される。
振分室(43)は、上記のダンパー(44)の一方への回動により、図8(a)に示す様に、第1の流入口(61)及び第1の流出口(71)を包含する空間(8a)と、第2の流入口(62)及び第2の流出口(72)を包含する空間(8b)とに仕切られ、上記のダンパー(44)の他方への回動により、図8(b)に示す様に、第1の流入口(61)及び第2の流出口(72)を包含する空間(9a)と、第2の流入口(62)及び第1の流出口(71)を包含する空間(9b)とに仕切られる様になされている。
上記の様な湿度調節装置においては、図5(a)に示す様に、例えば、第1の吹出口(11)から除湿された空気を連続して吹き出し、第2の吹出口(12)から加湿された空気を連続して吹き出すため、前述の様に、吸着材モジュール(1)においてペルチェ素子(30)に流れる電流を一定時間ごとに逆転させて当該ペルチェ素子の吸熱部と放熱部とを入れ替えると共に、流路切替装置(4)において前記の電流の逆転に応じて、吸着材モジュール(1)の第1の吸着素子(31)を通過した空気と第2の吸着素子(32)を通過した空気との振向け先を切り替える様に構成される。
すなわち、吸着材モジュール(1)においては、各吸着素子(31)、(32)の吸着・脱着操作に準じた時間間隔、例えば30〜600秒間隔でペルチェ素子(30)に流れる電流を逆転させ、ペルチェ素子(30)の板面(3a)、(3b)における吸熱機能と放熱機能とを入れ替える様になされている。また、流路切替装置(4)においては、ペルチェ素子(30)の電流の逆転と同時または逆転させて一定時間経過後、ダンパー(44)が作動し、吸着材モジュール(1)で処理された上記の各空気の振向け先を一方は第1の吹出口(11)から第2の吹出口(12)へ、他方は第2の吹出口(12)から第1の吹出口(11)へ切り替える様になされている。流路切替装置(4)を作動させるタイミングは、ペルチェ素子(30)の電流を逆転させて以降、ペルチェ素子(30)の各板面(3a)、(3b)の温度が高低逆転するまでの間である。
なお、図示しないが、湿度調節装置には、送風機(2)の制御、吸着材モジュール(1)におけるペルチェ素子(30)の電流の制御、および、流路切替装置(4)におけるアクチュエータ(45)の制御を行うための制御装置が設けられる。また、流路切替装置(4)の第1の吹出口(11)には、窓ガラスへ向けられたデフロスタ吹出口としての送風路が接続され、第2の吹出口(12)には、乗員側へ向けられたフェイス吹出口が接続される。
本発明の吸着材モジュール(1)は、例えば上記の湿度調節装置において以下の様に作動する。すなわち、図5(a)に示す様に、湿度調節装置において、送風機(2)は室内の空気を吸い込み、これを吸着材モジュール(1)の第1の吸着素子(31)及び第2の吸着素子(32)にそれぞれ送気する。吸着材モジュール(1)においては、例えば、ペルチェ素子(30)の一方の板面(3a)が吸熱部として機能し、他方の板面(3b)が放熱部として機能するため、前記の板面(3a)によって第1の吸着素子(31)が冷却され、そのエレメント(33)に担持された吸着材の吸着操作が進行し、エレメント(33)を通過する空気中の水蒸気を吸着する。一方、第2の吸着素子(32)は、ペルチェ素子(30)の板面(3b)によって冷却され、当該第2の吸着素子のエレメント(33)に担持された吸着材の脱着操作が進行し、エレメント(33)を通過する空気に水蒸気を放出する。
吸着材モジュール(1)の第1の吸着素子(31)を通過した除湿された空気、および、第2の吸着素子(32)を通過して加湿された空気は、各々、流路切替装置(4)の導入口(51)、(52)(図7参照)を通じて当該流路切替装置の第1の導入室(41)及び第2の導入室(42)に流れ込む。流路切替装置(4)においては、図8(a)に示す様に、ダンパー(44)が一方向に回動した状態にあり、振分室(43)を2つの空間(8a)、(8b)とに仕切っている。すなわち、振分室(43)は、第1の流入口(61)及び第1の流出口(71)を包含する空間(8a)と、第2の流入口(62)及び第2の流出口(72)を包含する空間(8b)とにダンパー(44)で仕切られている。従って、第1の導入室(41)に流れ込んだ除湿された空気は、第1の流出口(71)を通じて第1の吹出口(11)(図1参照)に送気される。一方、第2の導入室(42)に流れ込んだ加湿された空気は、第2の流出口(72)を通じて第2の吹出口(12)(図1参照)に送気される。
吸着材モジュール(1)においては、吸着操作および脱着操作が一定時間行われると、ペルチェ素子(30)に流れる電流が逆転され、当該ペルチェ素子の吸熱部と放熱部とが入れ替えられる。換言すれば、ペルチェ素子(30)の板面(3a)が放熱部として機能し、板面(3b)が吸熱部として機能する。そして、ペルチェ素子(30)の各板面(3a)、(3b)の機能の入れ替わりにより、各吸着素子(31)、(32)においては、各々、吸着材の吸脱着操作が切り替わる。
すなわち、上記の第1の吸着素子(31)は、冷却されていたそのエレメント(33)が加熱されることにより、それまで吸着した水蒸気を脱着する。他方、上記の第2の吸着素子(32)は、加熱されていたそのエレメント(33)が冷却されることにより、水蒸気の吸着を開始する。その結果、第1の吸着素子(31)は、これを通過する空気に水蒸気を放出して加湿し、第2の吸着素子(32)は、これを通過する空気中の水蒸気を吸着して除湿する。これにより、加湿された空気が流路切替装置(4)の第1の導入室(41)に流れ込み、除湿された空気が第2の導入室(42)に流れ込む。
また、ペルチェ素子(30)において電流が逆転されると、電流の逆転から例えば0〜60秒経過後、流路切替装置(4)にて流路が切り替えられる。すなわち、流路切替装置(4)においては、アクチュエータ(45)が作動し、ダンパー(44)が図8(a)に示す状態から図8(b)に示す状態に他方向に回動し、振分室(43)を空間(9a)と空間(9b)とに仕切る。換言すれば、振分室(43)は、第1の流入口(61)及び第2の流出口(72)を包含する空間(9a)と、第2の流入口(62)及び第1の流出口(71)を包含する空間(9b)とにダンパー(44)で仕切られる。従って、第1の導入室(41)の加湿された空気が振分室(43)の空間(9a)に流れ込み、これが第2の流出口(72)を通じて第2の吹出口(12)(図6(a)参照)に送気される。一方、第2の導入室(42)の除湿された空気が振分室(43)の空間(9b)に流れ込み、これが第1の流出口(71)を通じて第1の吹出口(11)(図6(a)参照)に送気される。
上記の湿度調節装置においては、吸着材モジュール(1)で吸脱着操作を一定のタイミングで切り替えると共に、これに応じて、除湿された空気と加湿された空気の吹出流路を流路切替装置(4)によって切り替え、これにより、例えば、第1の吹出口(11)から除湿された空気を連続して吹き出し、第2の吹出口(12)から加湿された空気を連続して吹き出すことが出来る。そして、除湿された空気を窓ガラスの防曇用に使用でき、加湿された空気を快適性向上のために使用できる。
本発明の吸着材モジュール(1)を使用した湿度調節装置は、図5(b)に示す様に構成することも出来る。図5(b)に例示する湿度調節装置は、送風機(2)、流路切替装置(4)、吸着材モジュール(1)、流路切替装置(4)及び送風機(2)を順次に配置して構成される。すなわち、吸着材モジュール(1)を中心として、当該吸着材モジュール(1)の前後にそれぞれ流路切替装置(4)と送風機(2)を対称的に配置して構成される。そして、各流路切替装置(4)は、これらの導入口(51)、(52)を吸着材モジュール(1)の各吸着素子(31)、(32)に対向する状態に配置され、各送風機(2)は、各流路切替装置(4)に対し、前述の例えば第2の吹出口(12)に相当する通気穴から室内空気を送気する様に構成されている。
図5(b)に示す湿度調節装置においても、吸着材モジュール(1)のペルチェ素子(30)へ流す電流の逆転によって吸熱部と放熱部を機能的に入れ替えて各吸着素子(31)、(32)に対する冷却と加熱を反転させ、各吸着素子(31)、(32)の吸着操作と脱着操作を一定のタイミングで切り替えると共に、これに応じて、除湿された空気と加湿された空気の吹出流路を各流路切替装置(4)によって切り替えることにより、例えば、一方(例えば図5(b)中の左側)の流路切替装置(4)の第1の吹出口(11)から除湿された空気を連続して吹き出し、他方(例えば図5(b)中の右側)の流路切替装置(4)の第1の吹出口(11)から加湿された空気を連続して吹き出すことが出来る。
上記の様に、本発明の吸着材モジュール(1)は、固定方式の一対の吸着素子(31)、(32)をペルチェ素子(30)の吸熱部および放熱部として機能する各板面にそれぞれ直接配置して構成され、しかも、吸着素子(31)、(32)に担持させる吸着材として、より低温での吸脱着が可能で且つ少量でも十分な水蒸気量を吸脱可能な特定のゼオライトを使用しており、ペルチェ素子(30)へ流す電流の逆転によって吸熱部と放熱部を機能的に入れ替え、各吸着素子(31)、(32)に対する冷却と加熱を反転させて吸着操作と脱着操作を切り替えることにより、除湿された空気と加湿された空気を連続して製造する。
すなわち、本発明の吸着材モジュール(1)においては、平板状のペルチェ素子(30)に各吸着素子(31)、(32)が直接配置されており、吸着素子(31)、(32)を加熱・冷却する際のペルチェ素子(30)と吸着素子との間の熱伝導性が高く、しかも、低い温度域での吸脱着性能に優れた特定のゼオライトを吸着材として各吸着素子(31)、(32)に使用しているため、従来の吸着ローター方式の様な回転駆動部を設ける必要がなく、吸着素子(31)、(32)及びペルチェ素子(30)を一層小型化できる。その結果、湿度調節装置を構成した場合、装置構成を簡素化でき、装置全体を一層小型化することが出来る。また、より低温での吸脱着が可能であるため、ペルチェ素子(30)の発熱温度も低温に抑えることが出来、その結果、ペルチェ素子(30)の耐久性を向上させることも出来る。
更に、本発明の吸着材モジュール(1)は、前述の様に、第1の吸着素子(31)及び第2の吸着素子(32)がそれぞれ交換可能に構成されていることにより、目詰まりや水蒸気以外の物質の吸着によって吸着能が低下した場合、湿度調節装置から吸着材モジュール(3)を取り出し、各吸着素子(31)、(32)を交換することが出来る。これにより、吸着素子(31)、(32)の交換だけで装置性能を回復できる。また、フィルターを使用せずに例えば数年単位で吸着素子を交換することにより、装置を長期に渡って維持でき、メンテナンス費用も低減できる。
また、上記の水蒸気以外の物質としては、例えば、VOC13物質(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレン、パラジクロロベンゼン、テトラデカン、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、ダイアジノン、フェノブカルブ、クロルピリホス)、酢酸、脂肪酸(n−酪酸)、アミン、アンモニア等の臭気物質が挙げられるが、上記の様に、第1の吸着素子(31)及び第2の吸着素子(32)が交換可能に構成されている場合には、室内が高温になった際に濃縮された前記の臭気物質などが室内に再放出されるのを防止することが出来る。
なお、吸着材モジュール(1)を使用した湿度調節装置においては、流路切替装置(4)のダンパー(44)の作動設定を切り替えることにより、例えば夏季において、第2の吹出口(12)から除湿された空気を乗員側へ吹き出すことも出来る。また、湿度調節装置においては、吸着材モジュール(3)の第1の吸着素子(31)で除湿(又は加湿)された空気と第2の吸着素子(32)で加湿(又は除湿)された空気との間で顕熱交換を行うため、吸着材モジュール(3)の下流側、好ましくは流路切替装置(4)の下流側にフィン型熱交換器や直交型熱交換器などの熱交換器が配置されてもよい。熱交換器を配置した場合には、ペルチェ素子(30)で加熱された高温の加湿空気と、ペルチェ素子(30)で冷却された低温の除湿空気との間で熱交換できるため、例えば冬季には、加湿され且つ適度に温度の低下した快適な空気を乗員側へ吹き出すことが出来る。更に、吸着材モジュール(1)の上流側または下流側には、室内で発生した臭気成分を捕捉するための脱臭用フィルターが配置されてもよい。
合成例1:
水15gと85%リン酸9.2gの混合物に、擬ベーマイト(25%水含有、サソール製)5.2gをゆっくりと加えて攪拌した。これを2時間攪拌し、次いで、硫酸第一鉄7水和物2.2gを水10gに溶かした水溶液を加え、更にトリエチルアミン4.8gを混合した後、1時間攪拌して出発反応物を得た。これをテフロン(登録商標)製内筒の入った100mlのステンレスオートクレーブに仕込み、オートクレーブごと15rpmで回転させ、190℃で24時間反応させた。反応後、冷却して、デカンテーションにより上澄みを除き、沈殿物を回収し、水洗、ろ過を繰り返し、100℃で乾燥した。このうち3gを縦型の石英管に入れ、室温から1℃/分の昇温速度で昇温し、550℃で6時間の空気焼成を行った。こうして得られた結晶性鉄アルミノフォスフェートのXRDを測定したところ、AFI型(フレームワーク密度は17.3T/1000Å3)であった。
実施例1:
合成例1において合成したAFI型ゼオライトの25℃における吸着等温線を吸着等温線測定装置(日本ベル製:商品名「ベルソープ18」)で測定した。なお、空気恒温槽温度50℃、吸着温度25℃、初期導入圧力3torr、飽和蒸気圧23.755torr、平衡時間500秒で行った。結果を図3に示す。
合成例2:
N−ジメチルホルムアミド12gと擬ベーマイト(25%水含有、サソール製)2.7gをゆっくりと加えて攪拌した。これを2時間攪拌し、次いで、85%リン酸4.6gを加え、更に2時間攪拌して出発反応物を得た。これをテフロン(登録商標)製内筒の入った100mlのステンレスオートクレーブに仕込み、静置状態で140℃で168時間反応させた。反応後、冷却して、デカンテーションにより上澄みを除き、沈殿物を回収し、水洗、ろ過を繰り返し、100℃で乾燥した。このうち3gを縦型の石英管に入れ、室温から1℃/分の昇温速度で昇温し、550℃で6時間の空気焼成を行った。こうして得られた結晶性アルミノフォスフェートのXRDを測定したところ、SOD型(フレームワーク密度は17.2T/1000Å3)であった。
実施例2:
合成例2で合成したSOD型ゼオライトの25℃における吸着等温線を実施例1と同様に測定した。結果を図4に示す。
実施例3:
合成例1で合成した吸着材を塗布した吸着モジュール(1)について、その加湿能力を評価するため、以下に示す簡易加湿量測定装置を使用して加湿量を測定した。簡易加湿量測定装置は、空気の温度・湿度・風量を所望の値にコントロールできる空気調整装置、天秤、および、天秤の上に乗せた温度コントロールが可能な図1に示す吸着モジュール(1)から成り、所望の温度・湿度・風量に調整した風を吸着モジュール(1)に流し、ペルチェ素子(30)を加熱・冷却したときの吸着モジュール(1)の重量の経時変化を測定可能に構成されている。加湿量およびエレメント(33)出口の絶対湿度は、吸着モジュール(1)の重量の経時変化より以下の様にして求められる。
Figure 2009254990
吸着モジュール(1)のエレメント(33)には、外径寸法が9.3mm×140mm×70mm(フィン厚み0.15mm、フィン数70枚、底板厚+1.3mm)のアルミ製のものを用いた。吸着モジュール(1)においては、合成例1で合成した吸着材をエレメント(33)1個について19g塗布した。ペルチェ素子(30)の温度は、20分毎に15℃、50℃を繰り返すようコントロールした。エレメント(33)の入口空気は、29℃、5.0g/kg(DA)、24m/hとなる様に空気調整装置をコントロールした。
上記の様に、吸着モジュール(1)のエレメント(33)に通気して加湿量を測定した結果、エレメント(33)を通過後の空気の絶対湿度は6.4g/kg(DA)であった。すなわち、上記の吸着モジュール(1)により、1.4g/kg(DA)加湿されたことが確認された。
本発明に係る吸着材モジュールの一例を示す斜視図である。 本発明に係る吸着材モジュールの他の例を示す斜視図である。 本発明の吸着材モジュールに好適な吸着材の一例の吸着特性を示す水蒸気吸着等温線である。 本発明の吸着材モジュールに好適な吸着材の他の例の吸着特性を示す水蒸気吸着等温線である。 本発明に係る吸着材モジュールの使用例としての湿度調節装置の構成を示す模式的なブロック図である。 湿度調節装置に使用される流路切替装置の一例の内部構造を示す平面図および側面図である。 図6の流路切替装置の正面図および背面図である。 図6のB−B線に沿って破断した断面図であり、流路切替装置の機能を示す図である。
符号の説明
1 :吸着材モジュール
2 :送風機
30:ペルチェ素子
3a:ペルチェ素子の板面(吸熱部または放熱部)
3b:ペルチェ素子の板面(放熱部または吸熱部)
31:第1の吸着素子
32:第2の吸着素子
33:エレメント
4 :流路切替装置

Claims (5)

  1. 空気を除湿および/または加湿する湿度調節装置に使用される吸着材モジュールであって、吸熱部および放熱部としてそれぞれ機能する一対の板面を備えたペルチェ素子と、当該ペルチェ素子の各板面にそれぞれ直接配置された第1の吸着素子および第2の吸着素子とから構成され、これら第1及び第2の吸着素子が、通気可能なエレメントに吸着材としての以下のゼオライトを担持させて構成されていることを特徴とする吸着材モジュール。
    上記のゼオライトは、骨格構造にアルミニウムとリンを含み、かつ、25℃で測定した水蒸気吸着等温線において、相対蒸気圧0.1〜0.25の範囲における相対蒸気圧の値が0.1増加したときの水の吸着量の増加が0.12g/g以上である。
  2. ペルチェ素子に流れる電流の逆転によって当該ペルチェ素子の吸熱部と放熱部を入れ替えることにより、各吸着素子における吸着操作と脱着操作を切替え可能になされている請求項1に記載の吸着材モジュール。
  3. 第1及び第2の吸着素子のエレメントが、略波板状の基材シート及び略平板状の基材シートから成るハニカムシートを複数積層したコルゲート型のエレメントであり、かつ、当該エレメントは、前記各ハニカムシートの略平板状の基材シートがペルチェ素子の板面と平行に配置された構造を備えている請求項1又は2に記載の吸着材モジュール。
  4. 第1及び第2の吸着素子のエレメントが、略波板状の基材シート及び略平板状の基材シートから成るハニカムシートを複数積層したコルゲート型のエレメントであり、かつ、当該エレメントは、前記各ハニカムシートの略平板状の基材シートがペルチェ素子の板面に直交する状態に配置された構造を備えている請求項1又は2に記載の吸着材モジュール。
  5. ゼオライトが、骨格構造にアルミニウム、リン及びヘテロ元素を含むゼオライトである請求項1〜4の何れかに記載の吸着材モジュール
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