JP2009250078A - 燃料噴射ポンプ装置 - Google Patents

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尾崎正和
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Abstract

【課題】従来の燃料噴射ポンプ装置では、プランジャー5の下端に取付けられているタペットローラの外輪が、軸方向に移動してカム表面を磨耗,損傷していた。また、該ローラの転動体はニードル転動体であったので、軸方向に突出して他の部分に接触したり、スキュー現象を起こしたりして、外輪にねじれた回転をさせ、磨耗,損傷やエネルギー損失を生じさせていた。
【解決手段】タペットローラ18は、転動体を複列式ボール転動体とすると共に、外輪の外面部の断面形状を円弧とする。それと接触するカム19の断面形状は、軸方向中央部を窪ませたゴシックアーク形状とする。このようにすると、タペットローラ18はカム19に対し安定した位置で回転するし、外輪がねじれて回転させられることがない。
【選択図】図1

Description

本発明は、エンジンのシリンダ内に燃料を直接噴射するための燃料噴射ポンプ装置に関するものである。
エンジンのシリンダ内に燃料を直接噴射することは、ディーゼルエンジンでは古くから行われているが、ガソリンエンジンにおいても省エネとか排気ガス規制のための改善等から、次第に行われるようになって来ている。
図3は、燃料噴射ポンプ装置の概要を示す図である。図3において、1は燃料噴射ポンプ装置、2は電磁弁、3は弁体、4はチェックバルブ、5はプランジャー、6はタペットローラ、7はカム、8はポンプハウジングである。
電磁弁2は弁体3を開閉するためのものであり、電磁弁2の付勢,消勢は、別途設けられているコンピュータ(図示せず)からの信号によって行われる。弁体3が開かれたとき、燃料タンクから燃料をポンプハウジング8内に導き入れることが可能となる。
プランジャー5の下端にはタペットローラ6が取り付けられており、タペットローラ6はカム7と接触させられている。従って、カム7が回転すると、プランジャー5はポンプハウジング8内を上下に移動させられる。
チェックバルブ4は、所定の圧力がかかったら開くバルブである。
燃料タンクからの燃料は、弁体3が開けられているときプランジャー5が下げられることにより、ポンプハウジング8内に導き入れられる。弁体3が閉じられているときプランジャー5が上げられることにより、ポンプハウジング8内の燃料の圧力は高められる。燃料の圧力が所定以上の高圧になると、チェックバルブ4が開かれ、燃料はエンジンのインジェクターへ勢いよく送出され、シリンダ内へ噴射される。
図4は、従来の燃料噴射ポンプ装置のタペットローラ周辺を示す図である。符号は図3のものに対応し、9はスプリングシート、10はスプリング、11はスプリングシート、12はタペット、13はガイド溝、14はタペットガイドキー、15はカムシャフトである。
プランジャー5の下端にはタペット12が取り付けられ、タペット12のプランジャー5が取り付けられている側とは反対の側には、タペットローラ6が取り付けられている。 スプリング10は、その弾発力によりタペットローラ6をカム7に押し付け、常に接触させておくためのものである。従って、カム7がタペットローラ6を押し上げるときは、この弾発力に抗しながら押し上げることになる。
なお、カム7のカムシャフト15は、エンジンのクランクシャフト(図示せず)と連動して回転させられる。
タペット12の側面にはタペットガイドキー14が設けられており、これは、ポンプハウジング8の内壁に設けられているガイド溝13に係合されている。従って、カム7の回転によりタペット12が上下に動かされるとき、タペットガイドキー14はガイド溝13内を上下に動く。
タペットガイドキー14とガイド溝13との係合関係は、タペット12がポンプハウジング8に対して周方向に回るのを防止する役目を果している。
図5は、従来の燃料噴射ポンプ装置におけるタペットローラ部分の拡大図である。符号は図4のものに対応し、6Aは外輪、6Bはニードル転動体、6Cはローラ軸、12A,12Bはローラ支持部である。
従来、タペットローラ6としては、転動体としてニードル転動体を用いたローラが用いられていた。そのようなローラの構造は、周知のように、中心となるローラ軸6Cの周囲に、ニードル転動体6B,外輪6Aがこの順に配設されている構造である。
タペット12の一部であるローラ支持部12A,12Bは、タペットローラ6を取り付ける側に設けられている支持部であるが、これにローラ軸6Cを取り付けることにより、タペットローラ6はタペット12に取り付けられる。その外輪6Aが、カム7と接触させられている。
特許出願公表番号 特表2006−514204
(問題点)
前記した従来の燃料噴射ポンプ装置には、次のような問題点があった。
第1の問題点は、外輪6Aがカム7に対して左右方向に動く動きをし、これがカム7の表面を磨耗,損傷する原因の1つになっているという点である。
第2の問題点は、ニードル転動体6Bが左右方向へずれ、その端面がローラ支持部12A,12Bの壁面に接触することがあり、それによりタペット12やタペットローラ6を磨耗,損傷させたり、外輪6Aにねじれた動きをさせ、タペット12がポンプハウジング8に対して周方向に回転させたりすることがあるという点である。また、これによりエネルギー損失も大となる。
第3の問題点は、ニードル転動体6Bのスキュー現象が頻繁に起こり、磨耗,損傷が進行し易いという点である。
(問題点の説明)
まず第1の問題点について説明する。外輪6Aの外面に接触しているカム7は、エンジンの回転に連動して高速回転している(例、1分間に数千回転)。ところが外輪6Aは、図5によく示されているように、多くのニードル転動体6Bに接する形でその外側に配設されているから、高速回転中に左右方向(軸方向,図中矢印A参照)に動く動きをする。即ち、外輪6Aとカム7との間に、軸方向の滑り摩擦が生ずる。カム7は一般に鋳物で作られており、外輪6Aはそれより硬度大のベアリング鋼で作られているので、前記摩擦によりカム7の表面が磨耗,損傷されることになる。
次に第2の問題点について説明する。ニードル転動体6Bは、ローラ軸6Cと外輪6Aとの間に多数介在させられているが、高速回転しているうちに、左右方向(軸方向)へずれることがある。
図6は、ニードル転動体が側方へずれた状態を示す図であり、符号は図5のものに対応し、6B1 は左方へずれたニードル転動体を表している。ずれて出たニードル転動体6B1 の端面が、ローラ支持部12Aの壁面に瞬間的に接触することがある。
この接触により、ローラ支持部12Aの壁面およびニードル転動体6B1 の端面は、磨耗, 損傷される。また、この接触による摩擦力は、タペットローラ6の回転に対しブレーキ力として作用し、エネルギー損失をもたらす。
更に、ニードル転動体6B1 の両端が同時に左右のローラ支持部12A,12Bに平等に接触するわけではなく、どちらか片方のみと接触するから、ブレーキ力は片方からのみ加えられことになり、回転している外輪6Aに瞬間的にねじれを生じさせる。外輪6Aがまっすぐ正常に回転するのでなく、ねじられた姿勢で回転すると、外輪6Aはカム7に対して瞬間的に僅かに交叉する形で接触することとなる。
図7は、外輪とカムとの接触関係を説明する図である。符号は図6のものに対応し、16は接触箇所、17は接触面である。図7(1)は正常な接触関係を示し、図7(2)はその時の接触面17を示している。図7(3)は正常でない接触関係を示し、図7(4)はその時の接触面17を示している。なお、両者の違いを分かり易く説明するため、図は多少誇張して描いてある。
図7(1)の場合は、外輪6Aの外表面の軸方向部分は、カム7の軸方向部分に接触している。そのため、その場合の両者の接触面17は、図7(2)に示すように、細長く大きなものとなっている。
これに対し図7(3)の場合は、外輪6Aの外表面の軸方向部分は、カム7の軸方向部分に僅かに斜めに交叉して接触している。そのため、その場合の両者の接触面17は、図7(4)に示すように、短くて小さなものとなっている。
その結果、カム7と外輪6Aとの間に作用する力は、外輪6Aがねじれて回転している瞬間には、小さな接触面に集中してかかることになり、磨耗,損傷を早めることになる。
外輪6Aがねじられると、その力によりタペットローラ6全体もねじられ、図4のタペット12全体を周方向に回転させようとする。しかし、その回転は、タペットガイドキー14とガイド溝13との係合構造により阻止される。即ち、タペット12を回転させる力が発生すると、タペット12に一体に設けられているタペットガイドキー14が、ガイド溝13の内壁面のうち上記回転方向の内壁面に押し付けられ、そこで回転が阻止されるからである。
内壁面に押し付けられた状態でタペットガイドキー14が高速で上下運動をすると、内壁面での摩擦抵抗が大となり、エネルギー損失は大となる。
最後に第3の問題点について説明する。ニードル転動体が持つ特有の欠点であるが、ニードル転動体を用いている以上、スキュー現象が起こることは避けられない。
図8は、ニードル転動体のスキュー現象を説明する図である。図8(1)のように、ニードル転動体6Bが、ローラ軸方向に対して平行になっている場合は正常である。図8(2)のように傾いている場合が、スキュー現象を起こしている場合である。
ニードル転動体6Bがスキュー現象を起こすと、これも外輪6Aの回転にねじれを生じさせる原因となり、第2の問題点の説明で述べたのと同じ理屈により、磨耗,損傷をもたらすことになる。このスキュー現象と第2の問題点のところで述べたニードル転動体の端面接触とが相加わると、外輪6Aのねじれ回転はいよいよひどいものとなり、磨耗,損傷もひどくなる。
本発明は、以上のような問題点を解決することを課題とするものである。
前記課題を解決するため、本発明では、エンジンに連動して回転されるカムと、燃料を噴射する圧力を生ずるためのプランジャーと、該プランジャーの一端に取り付けられ、前記カムに従動されるタペットローラを具備したタペットとを具えた燃料噴射ポンプ装置において、前記タペットローラは、転動体をボール転動体とすると共に、外輪の外面部の断面形状を円弧としたものとし、前記カムの断面形状は、該カムの軸方向中央部を窪ませたゴシックアーク形状とすることとした。
本発明の燃料噴射ポンプ装置によれば、次のような効果を奏する。
1.タペットローラの外輪の外面部の断面形状を円弧とし、それと接触するカムの断面形状を軸方向中央部が窪んだゴシックアーク形状とした。そのため、外輪がカムに対して軸方向に移動するような動きをすることがなく、そのような動きによりカムの表面を磨耗,損傷することがない。
2.タペットローラとしてボール転動体を具えたローラを用いたので、転動体が軸方向へずれることがなく、ローラ支持部に接触することがない。そのため、タペットやタペットローラを磨耗,損傷させたり、外輪をねじれて回転させたりすることがなく、それらによりエネルギー損失をこうむることもない。
3.タペットローラの転動体がボール転動体であるので、スキュー現象が起こることがなく、スキュー現象に起因するローラ各部の磨耗,損傷も発生しない。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の燃料噴射ポンプ装置のタペットローラ周辺を示す図である。符号は図3のものに対応し、18はタペットローラ、19はカムである。
図3の従来例と構造的に相違する第1の点は、タペットローラとして、従来とは異なった構造のローラを用いた点である。第2の相違点は、タペットローラと接触するカムとして、従来とは異なった構造のカムを用いた点である。第3の相違点は、タペットの回り止めの作用をする構造を具えていない(不用とした)という点である。
図2は、本発明の燃料噴射ポンプ装置におけるタペットローラ部分の拡大図である。符号は図1,図5のものに対応し、18Aは外輪、18Bはボール転動体、18Cは保持器、18Dはローラ軸である。
本発明の燃料噴射ポンプ装置では、タペットローラ18として、ボール転動体を複列に具えたローラを使用すると共に、外輪18Aの形状を、その外面部の断面が円弧とされている形状とする。
なお、ボール転動体であるから、ニードル転動体とは異なり、下記のような性質を有している。
(1)転動体の端部がローラの軸方向へ突出することがなく、ローラ支持部と接触することがない。
(2)スキュー現象を起こすことがない。
一方、タペットローラ18と接触する相手のカム19としては、軸方向中央部が窪められ、その断面がいわゆるゴシックアーク形状とされたカムを使用することとする。ゴシックアーク(Gothic Arc)形状とは、2つの円弧が組み合わされ、全体としては尖った頂点を有する弧となるような形状であり、ゴシック建築等によく見られる形状である。
このようなカム19と前記したような外輪18Aを有するタペットローラ18とを接触させると、図2に示すように両者は2点A,Bで接触する。カム19からタペットローラ18に加えられる力は、この2点において加えられる(従来例では図7(2),(4)の接触面17の1箇所において加えられていた)。
カム19の断面は中央部が窪んだゴシックアーク形状とされ、外輪18Aの外面部断面が円弧とされているので、点A,Bで加えられる力FA ,FB は、斜め内側に向かう力となる。力FA は、ローラ軸方向への分力A1 と、それと直角方向の分力A2 とに分解することが出来る。同様に力FB は、ローラ軸方向への分力B1 と、それと直角方向の分力B2 とに分解することが出来る。
外輪18Aを軸方向(図の左右方向)にずらす力は、軸方向の力、即ち分力A1 と分力B1 である。これらは互いに反対方向となっているから、打ち消し合う。仮にA1 >B1 となったとすると、その差の力で外輪18Aは点Bの方へ押される。点Bが押されると、点Bがカム19から受ける力FB が大となり、その分力B1 も大となる。その結果、外輪18Aを点Aの方へ押し返すことになり、結局、外輪18Aは自動的にA1 =B1 となる位置で安定して回転することになり、いわゆる自動調芯作用が働くことになる。
本発明での外輪18Aは、上記のようにして安定した位置で回転するから、外輪18Aの外表面がカム19の表面を軸方向に摩擦するということはない(図5の矢印Aの方向に摩擦することなし)。
本発明の燃料噴射ポンプ装置では、タペットローラの転動体にボール転動体を用いているので、前記(1)で述べたように、転動体がローラ軸方向に突出してローラ支持部と接触することがない。また、ボール転動体であるから、前記(2)で述べたように、スキュー現象を起こすことがない。従って、ローラ支持部との接触やスキュー現象を原因とする外輪18Aのねじれ回転は、発生することがない。
外輪18Aの回転がねじれることがないから、それに起因してタペット12を周方向に回転させようとする力も発生しない。従って、タペット12の回り止め作用をする構造(図4のガイド溝13,タペットガイドキー14)を設ける必要もなくなる。それに伴い、この構造で生じていた摩擦によるエネルギー損失も生じることがなく、また、コストダウンをはかることができる。
以上の通りであるから、従来の燃料噴射ポンプ装置が有していた問題点は、本発明では悉く解消される。
本発明の燃料噴射ポンプ装置のタペットローラ周辺を示す図 本発明の燃料噴射ポンプ装置におけるタペットローラ部分の拡大図 燃料噴射ポンプ装置の概要を示す図 従来の燃料噴射ポンプ装置のタペットローラ周辺を示す図 従来の燃料噴射ポンプ装置におけるタペットローラ部分の拡大図 ニードル転動体が側方へずれた状態を示す図 外輪とカムとの接触関係を説明する図 ニードル転動体のスキュー現象を説明する図
符号の説明
1…燃料噴射ポンプ装置、2…電磁弁、3…弁体、4…チェックバルブ、5…プランジャー、6…タペットローラ、6A…外輪、6B…ニードル転動体、6C…ローラ軸、7…カム、8…ポンプハウジング、9…スプリングシート、10…スプリング、11…スプリングシート、12…タペット、13…ガイド溝、14…タペットガイドキー、15…カムシャフト、16…接触箇所,17…接触面、18…タペットローラ、18A…外輪、18B…ボール転動体、18C…保持器、18D…ローラ軸、19…カム

Claims (1)

  1. エンジンに連動して回転されるカムと、燃料を噴射する圧力を生ずるためのプランジャーと、該プランジャーの一端に取り付けられ、前記カムに従動されるタペットローラを具備したタペットとを具えた燃料噴射ポンプ装置において、
    前記タペットローラは、転動体をボール転動体とすると共に、外輪の外面部の断面形状を円弧としたものとし、
    前記カムの断面形状は、該カムの軸方向中央部を窪ませたゴシックアーク形状とした
    ことを特徴とする燃料噴射ポンプ装置。
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