JP2009248411A - 成形体および成形方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物からなる成形基材と配向層が接着剤を用いることなく一体化させた成形体を提供することを目的とするものである。
【解決手段】本発明の成形フィルムは、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物からなる成形基材(A)とポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を主成分とする配向層(B)が接着剤を介することなく一体化されてなる成形体であり、p−フェニレンスルフィドを主成分とする二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムの少なくとも片側に、p−フェニレンスルフィド以外の少なくとも1種以上の共重合成分を有する共重合ポリフェニレンスルフィド層が積層された積層二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムである配向層(B)をあらかじめ賦形したのち金型に配置し、配向層(B)の共重合ポリフェニレンスルフィド層側にポリアリーレンスルフィドを主成分とする樹脂組成物からなる成形基材(A)を射出成形により一体化する成形方法である。
【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂組成物からなる成形基材と配向層とが接着剤を介することなく一体化された成形体に関し、さらに詳しくは、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物からなる成形基材と、ポリアリーレンスルフィドを主成分とする樹脂組成物からなる配向層が接着剤を介することなく一体化されてなる成形体に関する。
従来、ポリフェニレンスルフィド(以下、PPSと略称することがある。)は、優れた耐熱性、難燃性、剛性、耐薬品性、電気絶縁性および低吸湿性などの性質を有しており、特に電気・電子機器、機械部品および自動車部品などに好適に使用されている。例えば、(1)ポリフェニレンスルフィドの樹脂組成物が開示されている(特許文献1)。また、(2)ポリフェニレンスルフィドの二軸配向フィルムが開示されている(特許文献2)。PPSは射出成形等の溶融成形法により種々の形状に成形することが可能であるが、強度を保つには肉厚を厚くする必要があった。一方、ポリフェニレンスルフィドは、二軸配向することにより靭性、強度が向上でき、肉厚を低減することができるが、膜厚が一定であり、かつ、その厚みの上限があるため、複雑な形状の加工に関して制限があった。そして、両者の利点を生かして、二軸配向PPSフィルムと、PPS基材とを熱融着しようとするとき、フィルムの外観(平滑性)や、機械物性(靭性、強度)を保つと熱不足で十分な接着強度が得られず、一方、熱融着できるまで十分加熱すると、フィルムの特性や外観を損なう場合があった。
従来、接着性を向上する方法としては、(3)コロナ処理を行うことが開示されているが(特許文献3)、未処理に比べて若干の向上は認められるもののほとんど改良は認められなかった。さらに、(4)接着剤を塗布することも提案されているが(特許文献4)、接着剤が耐熱性や耐加水分解性に劣る場合、例えば、コンプレッサーモータ絶縁材などでは使用できない場合があった。また、オイル中や、溶剤中に浸漬する用途など、接着剤が使用できない場合があり用途が制限されていた。
特開2007−246883号公報 特開昭54-142275号公報 特開平2−228333号公報 特開昭62-292431号公報
ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物からなる成形基材と配向層とが接着剤を用いることなく一体化させた成形体、およびその成形方法を提供することを目的とするものである。
本発明の成形フィルムは、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物からなる成形基材(A)とポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を主成分とする配向層(B)が接着剤を介することなく一体化されてなる成形体である。また、p−フェニレンスルフィドを主成分とする二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムの少なくとも片側に、p−フェニレンスルフィド以外の少なくとも1種以上の共重合成分を有する共重合ポリフェニレンスルフィド層が積層された積層二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムである配向層(B)をあらかじめ賦形したのち金型に配置し、配向層(B)の共重合ポリフェニレンスルフィド層側にポリアリーレンスルフィドを主成分とする樹脂組成物からなる成形基材(A)を射出成形により一体化する成形方法。

本発明によれば、以下に説明するとおり、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物からなる成形基材と、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を主成分とする配向層が接着剤を介することなく一体化された成形体を得ることができる。
本発明の成形体は、電気絶縁用、回路基板用、一般工業用等に幅広く用いることが可能であり、特に電気絶縁用として用いるとその効果が一層顕著に発現する。
本発明の成形基材(A)および配向層(B)を構成するポリアリーレンスルフィドは、−(Ar−S)−の繰り返し単位を有するホモポリマーあるいはコポリマーである。Arとしては下記の式(A)〜式(K)などで表される構成単位などが挙げられる。
Figure 2009248411
(R1,R2は、水素、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、R1とR2は同一でも異なっていてもよい。)
本発明で用いるポリアリーレンスルフィドの繰り返し単位としては、上記の式(A)で表される構造式が好ましく、これらの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトン、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましいポリアリーレンスルフィドとしては、耐熱性と経済性の観点から、ポリフェニレンスルフィド(PPS)が好ましく例示される。本発明の成形基材(A)を構成する樹脂組成物に用いるポリアリーレンスルフィドとしては、ポリマーの主要構成単位として下記構造式で示されるp−フェニレンスルフィド単位を好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上含むPPS樹脂であることが好ましい。かかるp−フェニレンスルフィド単位が80モル%未満では、ポリマーの結晶性やガラス転移温度などが低く、PPSの特徴である耐熱性、寸法安定性、機械特性および誘電特性などを損なうことがある。
Figure 2009248411
本発明の配向層(B)は、p−フェニレンスルフィドを主成分とする二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムであることが好ましい。
さらに配向層(B)がp−フェニレンスルフィドを主成分とする二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルム層(B1)の少なくとも片側に、p−フェニレンスルフィド以外の少なくとも1種以上の共重合成分を有する共重合ポリフェニレンスルフィド層(B2)が積層された積層二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムであることが好ましい。p−フェニレンスルフィドを主成分とする二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムあるいは積層二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムを構成する配向層(B1)のPPS樹脂は、上記PPS樹脂中繰り返し単位の8モル%未満、好ましくは5モル%未満であれば、共重合可能な他のスルフィド結合を含有する単位が含まれていても差し支えない。また、積層二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムを構成する共重合ポリフェニレンスルフィド層(B2)においては、上記PPS樹脂中繰り返し単位の8モル%以上、20モル%以下であれば、共重合可能な他のスルフィド結合を含有する単位が含まれていても差し支えない。共重合可能なスルフィド結合を含有する単位としては、例えば、3官能単位、エーテル単位、スルホン単位、ケトン単位、メタ結合単位、アルキル基などの置換基を有するアリール単位、ビフェニル単位、ターフェニレン単位、ビニレン単位およびカーボネート単位などが例として挙げられる。これらのうち一つまたは二つ以上共存させて構成することができる。この場合、該構成単位は、ランダム型またはブロック型のいずれの共重合方法であってもよい。
PPS樹脂の溶融粘度は、溶融混練が可能であれば特に限定されないが、温度315℃で剪断速度1,000(1/sec)のもとで、100〜2000Pa・sの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは200〜1,000Pa・sの範囲である。
上記で得られたPPS樹脂を、空気中加熱による架橋/高分子量化、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下での熱処理、有機溶媒、熱水および酸水溶液などによる洗浄、酸無水物、アミン、イソシアネートおよび官能基ジスルフィド化合物などの官能基含有化合物による活性化など、種々の処理を施した上で使用することも可能である。
次に、PPS樹脂の製造法を例示するが、本発明では特にこれに限定されない。例えば、硫化ナトリウムとp−ジクロロベンゼンをN-メチル-2ーピロリドン(NMP)などのアミド系極性溶媒中で、高温高圧下で反応させる。必要に応じて、トリハロベンゼンなどの共重合成分を含ませることも可能である。重合度調整剤として苛性カリやカルボン酸アルカリ金属塩などを添加し230〜280℃で重合反応させる。重合後にポリマーを冷却し、ポリマーを水スラリーとしてフィルターで濾過後、粒状ポリマーを得る。これを酢酸塩などの水溶液中で30〜100℃、10〜60分攪拌処理し、イオン交換水にて30〜80℃で数回洗浄、乾燥してPPS粉末を得る。この粉末ポリマーを酸素分圧10トール以下、好ましくは5トール以下でNMPにて洗浄後、30〜80℃のイオン交換水で数回洗浄し、5トール以下の減圧下で乾燥する。
PPS樹脂の加熱による架橋/高分子量化する場合の具体的方法としては、空気や酸素などの酸化性ガス雰囲気下あるいは前記酸化性ガスと窒素やアルゴンなどの不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で、加熱容器中で所定の温度において希望する溶融粘度が得られるまで加熱を行う方法を例示することができる。加熱処理温度は、通常170〜280℃が選択され、より好ましくは200〜270℃であり、また、加熱処理時間は、通常0.5〜100時間が選択され、より好ましくは2〜50時間であるが、この両者を制御することにより目標とする粘度レベルを得ることができる。加熱処理の装置は、通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは攪拌翼つきの加熱装置であってもよいが、効率よくしかも均一に処理するためには、回転式あるいは攪拌翼つきの加熱装置を用いることが好ましい。
PPS樹脂を窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で熱処理する場合の具体的方法としては、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で、加熱処理温度150〜280℃、好ましくは200〜270℃、加熱時間は0.5〜100時間、好ましくは2〜50時間加熱処理する方法を例示することができる。加熱処理の装置は、通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは攪拌翼つきの加熱装置でもよいが、効率よく、しかもより均一に処理するためには回転式あるいは攪拌翼つきの加熱装置を用いることが好ましい。本発明で用いるPPS樹脂は、引張破断伸度の向上の目標を達成するために熱酸化架橋処理による高分子量化を行わない実質的に直鎖状のPPSであることが好ましい。
本発明で用いられるPPS樹脂は、脱イオン処理を施されたPPS樹脂を少なくとも含んでいることが好ましい。脱イオン処理の具体的方法としては、酸水溶液洗浄処理、熱水洗浄処理、および有機溶剤洗浄処理などを例示することができ、これらの処理は2種以上の方法を組み合わせて用いてもよい。
PPS樹脂の有機溶剤洗浄処理の具体的方法としては、以下の方法を例示することができる。すなわち、有機溶剤としては、PPS樹脂を分解する作用などを有していないものであれば特に制限はなく、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホンなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒、ベンゼン、トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。これらの有機溶媒の中で、N−メチルピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミドおよびクロロホルムが特に好ましく用いられる。また、これらの有機溶媒は、1種類または2種類以上の混合で使用される。
有機溶媒による洗浄の方法としては、有機溶媒中にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要に応じて適宜攪拌または加熱することも可能である。有機溶媒でPPS樹脂を洗浄する際の洗浄温度について特に制限はなく、常温〜300℃の範囲で任意の温度を選択することができる。洗浄温度が高くなるほど、洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温〜150℃の温度で十分効果が得られる。また、有機溶媒洗浄を施されたPPS樹脂は残留している有機溶媒を除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。
PPS樹脂の熱水洗浄処理の具体的方法としては、以下の方法を例示することができる。すなわち、熱水洗浄によるPPS樹脂の好ましい化学変性の効果を発現するために、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。熱水処理の操作は、通常、所定量の水に所定量のPPS樹脂を投入し、常圧であるいは圧力容器内で加熱し攪拌することにより行われる。PPS樹脂と水との割合は、水の方が多い方が好ましいが、通常、水1リットルに対し、PPS樹脂200g以下の浴比が選択される。
PPS樹脂の酸水溶液洗浄処理の具体的方法としては、以下の方法を例示することができる。すなわち、酸または酸の水溶液にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要に応じて適宜攪拌または加熱することも可能である。用いられる酸は、PPS樹脂を分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、ギ酸、酢酸、プロピオン酸および酪酸などの脂肪族飽和モノカルボン酸、クロロ酢酸やジクロロ酢酸などのハロゲン置換脂肪族飽和カルボン酸、アクリル酸やクロトン酸などの脂肪族不飽和モノカルボン酸、安息香酸やサリチル酸などの芳香族カルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸およびフマル酸などのジカルボンン酸、硫酸、リン酸、塩酸、炭酸および珪酸などの無機酸性化合物などが挙げられる。中でも酢酸と塩酸が好ましく用いられる。酸処理を施されたPPS樹脂は、残留している酸または塩などを除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。また、洗浄に用いられる水は、酸処理によりPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を損なわない意味で、蒸留水または脱イオン水であることが好ましい。
本発明を構成する成形基材(A)は、上記PPS樹脂を含有する樹脂組成物からなり、上記PPS樹脂を30重量%以上含有していることが好ましい。30重量%未満であれば、PPS樹脂以外のポリマ、無機充填材などを含むことができる。PPS樹脂以外のポリマは、例えば、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリエステル、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリエーテルエーテルケトンなどの各種ポリマおよびこれらのポリマの少なくとも1種を含むブレンド物を挙げることができる。
また、PPS樹脂以外の無機充填材としては、例えば、繊維状、板状、粉末状、粒状などを使用することができる。具体的には、例えば、炭素繊維、チタン酸カリウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石ユウ繊維などの繊維状充填剤、ワラステナイト、フロゴパイト、マスコバイト、ゼオライト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミナシリケートなどの珪酸塩、モンモリロナイト、合成雲母などの膨潤性の層状珪酸塩、アルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、セラミックビーズ、窒化硼素、炭化珪素、グラファイト、パイロフィライト、リン酸カルシウムなどの非繊維状充填剤が挙げられる。これらは、中空であってもよく、さらにはこれらの充填剤を2種類以上併用することも可能である。
本発明の成形体は、上記PPS樹脂組成物からなる成形基材(A)と、ポリアリーレンスルフィドを主成分とする樹脂組成物からなる配向層(B)とが接着剤を介することなく一体化された成形体である。上記接着剤とは、ポリアリーレンスルフィド樹脂以外の組成を有するものであり、特に限定されないが、ポリウレタン系、エポキシ系、ポリエステル系、シリコーン系などを挙げることができる。
本発明の配向層(B)が2層以上からを構成される場合、配向層(B)を構成するp−フェニレンスルフィドを主成分とする二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルム層(B1)とは、p−フェニレンスルフィド単位を主成分とするポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を溶融成形してシート状とし、少なくとも一軸延伸、好ましくは二軸延伸した後、熱処理してなるフィルムである。含有するp−フェニレンスルフィド単位は好ましくは92モル%以上、より好ましくは95モル%以上であることが好ましい。p−フェニレンスルフィド単位が92モル%未満では、二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムの結晶性が低下し、フィルムの耐熱性、熱寸法安定性などが損なわれる場合がある。p−フェニレンスルフィドを主成分とするポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、p−フェニレンスルフィドを主成分とするポリフェニレンスルフィド樹脂を90重量%以上含有していることが好ましく、10重量%未満では、ポリフェニレンスルフィド樹脂以外のポリマを含むことができる。ポリフェニレンスルフィド樹脂以外のポリマは、例えば、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリエステル、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリエーテルエーテルケトンなどの各種ポリマおよびこれらのポリマの少なくとも1種を含むブレンド物を挙げることができる。本発明の場合、ポリエーテルイミドが成形性向上の観点から好ましい。
本発明に用いられるポリエーテルイミドとしては、脂肪族、脂環族または芳香族系のエーテル単位と環状イミド基を繰り返し単位として含有するポリマであり、溶融成形性を有するポリマであれば、特に限定されない。例えば、米国特許第4141927号、特許第2622678号、特許第2606912号、特許第2606914号、特許第2596565号、特許第2596566号、特許第2598478号のポリエーテルイミド、特許第2598536号、特許第2599171号、特開平9−48852号公報、特許第2565556号、特許第2564636号、特許第2564637号、特許第2563548号、特許第2563547号、特許第2558341号、特許第2558339号、特許第2834580号に記載のポリマである。本発明の効果を阻害しない範囲であれば、ポリエーテルイミドの主鎖に環状イミド、エーテル単位以外の構造単位、例えば、芳香族、脂肪族、脂環族エステル単位、オキシカルボニル単位等が含有されていても良い。本発明では、2,2−ビス[4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物とm−フェニレンジアミンまたはp−フェニレンジアミンとの縮合物が、溶融成型性等の観点から好ましい。このポリエーテルイミドは、“Ultem”(登録商標)の商標名で、General Electric社より入手可能である。
さらに、ポリフェニレンスルフィド樹脂中にポリエーテルイミドを添加する際には、相溶化剤を添加することが好ましく、好ましい相溶化剤の例としては、例えば、エポキシ基、アミノ基、イソシアネ−ト基から選択される一種以上の官能基を有するアルコキシシランが挙げられる。かかる化合物の具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシシラン、γ−(2−ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのウレイド基含有アルコキシシラン化合物、γ−イソシアネ−トプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネ−トプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネ−トプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアネ−トプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアネ−トプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアネ−トプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアナネ−トプロピルトリクロロシランなどのイソシアネ−ト基含有アルコキシシラン化合物、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合物などが挙げられる。中でも、γ−イソシアネ−トプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネ−トプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネ−トプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアネ−トプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアネ−トプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアネ−トプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアナネ−トプロピルトリクロロシランなどのイソシアネ−ト基含有アルコキシシラン化合物を用いると、ポリエーテルイミドの分散性を向上させることができるため好ましく用いられる。
また、無機または有機フィラー、滑剤、着色剤、紫外線吸収剤、相溶化剤などの添加剤を含むこともできる。
本発明においては、上記二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルム層(B1)の少なくとも片側に、p−フェニレンスルフィド単位以外の少なくとも1種以上の共重合単位が共重合された共重合ポリフェニレンスルフィド層(B2)が積層されていることが成形基材との接着性向上の観点から好ましい態様である。本発明で用いる共重合ポリフェニレンスルフィドとは、好ましくは繰り返し単位の80モル%以上92モル%以下が主成分としてp−フェニレンスルフィド単位で構成されていることが好ましい。かかる主成分が80モル%未満では、フィルムの耐熱性低下が著しくなる場合があり、92モル%を超えると樹脂組成物からなる成形体との接着性を十分高められない場合がある。
共重合単位としては、下記式に示すm−フェニレンスルフィド単位、
Figure 2009248411
Figure 2009248411
Figure 2009248411
(ここでXは、アルキレン、CO、SO単位を示す。)
Figure 2009248411
Figure 2009248411
(ここでRはアルキル、ニトロ、フェニレン、アルコキシ基を示す。)が挙げられ、これらの複合の単位が存在してもかまわない。好ましい共重合単位は、m−フェニレンスルフィド単位である。これらの単位の共重合量は、8モル%以上20モル%以下が好ましく、より好ましくは10モル%以上18モル%以下である。かかる共重合成分が8モル%未満では、樹脂組成物との一体成形時、樹脂組成物との接着性が十分高められない場合があり、20モル%を超えると配向層の耐熱性が低下する場合がある。
本発明で用いられる共重合ポリフェニレンスルフィドの上記主成分と共重合成分との共重合の態様は特に限定はないが、ランダムコポリマーであることが好ましい。
本発明においては、共重合ポリフェニレンスルフィドを構成する共重合体の繰り返し単位の残りの部分においては、さらに他の共重合可能な構成単位で構成されてもよいが、例えば、下記式に代表される3官能性フェニルスルフィドは、共重合体全体の1モル%以下であることが好ましい。
Figure 2009248411
本発明の共重合ポリフェニレンスルフィド層(B2)を構成する共重合ポリフェニレンスルフィドの融点は、二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルム層(B1)を構成するポリアリーレンスルフィドの融点より1〜100℃低いことが好ましく、より好ましくは、10℃〜50℃であり、さらに好ましくは、20℃〜40℃である。共重合ポリフェニレンスルフィドの融点と二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルム層(B1)を構成するポリアリーレンスルフィドの融点との差が1℃未満の場合、二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルム層(B1)との接着性が十分高められなかったり、配向層(B)の平面性の悪化や熱収縮する場合があり、共重合ポリフェニレンスルフィドの融点と二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルム層(B1)を構成するポリアリーレンスルフィドの融点との差が100℃を超える場合、配向層(B)の耐熱性の低下が著しくなる場合がある。共重合ポリフェニレンスルフィドの融点は、共重合成分のモル比によって適宜調製できる。例えば、共重合ポリフェニレンスルフィドの融点を210℃とする場合は、共重合成分のモル比を20モル%とすることにより得ることができる。
本発明においては、上記共重合ポリフェニレンスルフィドを、溶融成形してシート状とし、二軸延伸、熱処理して用いることが好ましい。共重合ポリフェニレンスルフィド層を二軸配向することで、耐熱性、靭性を向上することができる。共重合ポリフェニレンスルフィド層を積層する方法は、特に限定されないが、p−フェニレンスルフィド単位を主成分とするポリフェニレンスルフィド樹脂組成物と共押出する方法が好ましく用いられる。
上記共重合ポリフェニレンスルフィド層(B2)の厚みは、特に限定されないが、5μm以上、50μm以下であることが好ましい。より好ましくは10μm以上30μm以下である。共重合ポリフェニレンスルフィド層の厚みが5μm未満の場合、樹脂組成物からなる成形体との接着性を十分高められない場合があり、50μmを超えると、配向層の耐熱性が低下する場合がある。
本発明の配向層(B)は、必要に応じて、熱処理、成形、表面処理、ラミネート、コーティング、印刷、エンボス加工およびエッチングなどの任意の加工を行ってもよい。
本発明の配向層(B)を構成する二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルム層(B1)あるいは共重合ポリフェニレンスルフィド層(B2)の配向は、レーザーラマン分光により測定することができる配向パラメータによって確認することができる。本発明においては、配向層(B)の配向パラメータが1.1以上である場合、配向層(B)が配向しているものと判断する。また、配向層(B)が(B1)と(B2)から構成される場合、少なくともいずれかの配向パラメータが1.1以上であれば、配向層(B)は配向しているものと判断する。レーザーラマン分光により得られる配向パラメータは、2.0〜8.0の範囲であることが好ましい。配向パラメータのより好ましい範囲は、2.5〜6.0である。レーザーラマン分光による配向パラメータは、分子配向や結晶量を反映する。配向パラメータが8.0を超えると、分子鎖配向が進み過ぎたり、結晶化が進行しすぎたりして、引張破断伸度が小さくなり、フィルムの加工時や使用時に破損したり、実用上使用に耐えないことがあったりすることがある。また、配向パラメータが2.0未満の場合、分子鎖配向が不十分であったり、結晶化の進行が不十分であったりして、配向層の耐熱性が低下する場合がある。配向層B1あるいはB2のレーザーラマン分光による配向パラメータは、例えば、縦延伸における延伸温度や延伸倍率、横延伸前の予熱温度、横延伸における延伸温度や延伸倍率、さらに、延伸後の熱固定温度を本発明の好ましい範囲にすることにより、本発明の範囲にすることができる。
上記レーザーラマン分光による測定方法は特に限定されないが、例えば、レーザーラマン装置(PDP320(フォトンデザイン社製))を用い、マイクロプロ−ブ対物レンズ100倍、対物レンズは、近赤外域(1064〜1300nm)に透過性を有し、NA0.95、色収差補正されているものを使用することができる。クロススリット1mm、スポット径1μm、光源Nd−YAG(波長1064nm、出力:1W)、回折格子 Spectrograph300g/mm、スリット:100μm、検出器InGaAs(Roper Scientific 512)が好ましく用いられる。
測定に用いるフィルムは、サンプリングしてエポキシ樹脂に包理後、ミクロト−ムでフィルム 断面を出した。フィルム断面がフィルム長手方向または幅方向に平行なものを調整し、各試料の 中央点を測定点として、長手方向および幅方向のそれぞれに対して5個の試料を測定して平均値 をとった。測定は、入射光の偏光方向に平行な偏光方向に配置した偏光子を通して検出し、試料 を回転させ、レーザー光の偏光方向に対して、フィルム面に平行な偏光方向と垂直な偏光方向を でスペクトルを得た。配向パラメータは、
(配向パラメータ)=(I1575/I740)(平行)/(I1575/I740)(垂直)
I1575/I740(平行):フィルム面に平行な偏光方向で測定したラマンスペクトルにおいて、1575cm-1付近のラマンバンドを740cm-1付近のラマンバンド強度で除したもの。
I1575/I740(垂直):フィルム面に垂直な偏光方向で測定したラマンスペクトルにおいて、1575cm-1付近のラマンバンドを740cm-1付近のラマンバンド強度で除したもの。
本発明の配向層(B)の破断伸度は、100%以上150%以下であることが本発明のインサート成形における金型状賦形の観点から好ましい。より好ましくは120%以上150%以下であり、さらに好ましくは130%以上150%以下である。破断伸度が100%未満の場合、金型賦形の際、フィルム割れが発生する場合があり、破断伸度の上限は特に設けないが150%を超えるためには製膜における面積延伸倍率を低下させる必要があり、フィルムの平面性および製膜安定性が悪化する場合がある。破断伸度を上記範囲とするためには、本願規定の製膜延伸条件、および熱固定条件とすることにより得ることができる。
本発明の配向層(B)の厚みは、5μm以上1000μm以下が好ましい。より好ましくは、10μm以上500μm以下であり、さらに好ましくは、20μm以上300μm以下である。厚みが5μm未満の場合、機械強度が十分でない場合があり、厚みが1000μmを超えるとインサート成形性が低下する場合がある。
上記配向層(B)とポリアリーレンスルフィド樹脂組成物からなる成形基材(A)とを一体化する方法は、特に限定されないが、あらかじめ成形した成形基材(A)表面に賦形した配向層(B)を共重合ポリフェニレンスルフィド層(B2)の融点―20℃以上、二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルム層(B1)融点未満に加熱し、B1層の平面性が損なわれない程度に加熱し、圧力をかけて熱圧着させる方法あるいは、金型にあらかじめ賦形したフィルムをインサートした射出成形法による一体化の方法が好ましく用いられ、特に後者の方法は、経済的観点から好ましく用いられる。
本発明においては、共重合ポリフェニレンスルフィド層(B2)側に成形基材(A)が接触するように射出成形を行うことが、成形基材と配向層との接着性向上の観点から好ましい。
本発明においては、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物からなる成形基材(A)と、配向層(B)とが一体化されていることが重要であるが、成形基材(A)と配向層(B)が一体化されているとは、配向層Bが材料破壊する以上の強度で基材Aに接着していることを言い、配向層Bを剥がそうとしたとき、配向層Bの表面が元々の表面として現れる場合、一体化していないとみなす。
次いで、本発明の成形体を製造する方法について説明するが、本発明は、下記の記載に限定されないことは無論である。
ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS)の製造方法としては、例えば、次のような方法が挙げられる。硫化ナトリウムとp−ジクロロベンゼンを、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などのアミド系極性溶媒中で高温高圧下で反応させる。必要によって、トリハロベンゼンなどの共重合成分を含ませることもできる。重合度調整剤として、苛性カリやカルボン酸アルカリ金属塩などを添加し、230〜280℃の温度で重合反応させる。重合後にポリマを冷却し、ポリマを水スラリーとしてフィルターで濾過後、粒状ポリマを得る。これを酢酸塩などの水溶液中で30〜100℃の温度で10〜60分間攪拌処理し、イオン交換水にて30〜80℃の温度で数回洗浄、乾燥してPPS粒状ポリマを得る。得られた粒状ポリマを、酸素分圧10トール以下、好ましくは5トール以下でNMPにて洗浄後、30〜80℃の温度のイオン交換水で数回洗浄し、副生塩、重合助剤および未反応モノマ等を分離しPPS樹脂を得る。上記で得られたPPS樹脂に必要に応じて、他のポリマ、あるいは無機または有機の添加剤等を本発明の目的に支障を与えない程度添加し、PPS樹脂組成物を得る。
共重合ポリフェニレンスルフィド樹脂の製造方法としては、例えば、次のような方法がある。硫化ナトリウムとp−ジクロロベンゼンおよび副成分モノマを本発明でいう比率で配合し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などのアミド系極性溶媒中で重合助剤の存在下、高温高圧下で反応させる。副成分モノマとしては、
Figure 2009248411
Figure 2009248411
Figure 2009248411
(ここでXは、アルキレン、CO、SO単位を示す。)
Figure 2009248411
Figure 2009248411
(ここでRは、アルキル、ニトロ、フェニレン、アルコキシ基を示す。)が挙げられ、これらの複数の副成分モノマが存在してもかまわない。好ましい副成分モノマは、化14である。
Figure 2009248411
上記で得られたポリマに必要に応じて、あるいは無機または有機の添加剤等を本発明の目的に支障を与えない程度添加し、共重合ポリフェニレンスルフィド樹脂を得る。
次に、本発明の配向層(B)の製造方法について説明する。上記のPPS樹脂組成物と、共重合ポリフェニレンスルフィド樹脂を別々の溶融押出装置に供給し、個々の原料の融点以上に加熱する。加熱により溶融された各原料は、溶融押出装置と口金出口の間に設けられた合流装置で溶融状態で2層または3層に積層され、スリット状の口金出口から押し出される。かかる溶融積層体を冷却ドラム上でPPS樹脂のガラス転移点以下に冷却し、実質的に非晶状態の2層積層シートを得る。溶融押出装置は周知の装置が適用可能であるが、1軸または2軸のエクストルーダが簡便であり好ましく用いられる。
次に、この未延伸フィルムを一軸延伸し、一軸配向、もしくは、二軸延伸し、二軸配向させる。延伸方法としては、逐次二軸延伸法(長手方向に延伸した後に幅方向に延伸を行う方法などの一方向ずつの延伸を組み合わせた延伸法)、同時二軸延伸法(長手方向と幅方向を同時に延伸する方法)、又はそれらを組み合わせた方法を用いることができる。ここでは、最初に長手方向、次に幅方向の延伸を行う逐次二軸延伸法を用いる。
未延伸ポリフェニレンスルフィドフィルムを加熱ロール群で加熱し、延伸倍率は電気特性向上させる観点から長手方向(MD方向)に3〜4倍、好ましくは3.0〜3.5倍に1段もしくは2段以上の多段で延伸する(MD延伸)。延伸温度は、Tg(ガラス転移温度)〜(Tg+40)℃、好ましくは(Tg+5)〜(Tg+30)℃の範囲である。ここで、Tgとはポリフェニレンスルフィドのガラス転移温度を表すが、配向層(B)が積層フィルムの場合、すなわち、(B1)層と(B2)層から構成される場合、Tgが高い(B1)層に合わせて上記範囲で延伸することが好ましい。その後20〜50℃の冷却ロール群で冷却する。
MD延伸に続く幅方向(TD方向)の延伸方法としては、例えば、テンターを用いる方法が一般的である。このフィルムの両端部をクリップで把持して、テンターに導き、幅方向の延伸を行う(TD延伸)。延伸温度はTg〜(Tg+40)℃が好ましく、より好ましくは(Tg+5)〜(Tg+30)℃の範囲である。延伸倍率は破断伸度を向上させる観点から3〜4倍、好ましくは3.0〜3.5倍に1段もしくは2段以上の多段で延伸する(TD延伸)。
次に、この延伸フィルムを緊張下で熱固定する。1段熱固定の場合の好ましい熱固定温度は240〜280℃であり、熱固定工程と緩和処理工程の合計時間は1〜10秒、好ましくは3〜8秒である。より好ましい熱処理は多段熱固定である。この場合、1段目の熱固定温度は160〜220℃、好ましくは180〜220℃であり、処理時間は1〜15秒、好ましくは1〜8秒である。続いて行う後段の熱固定の最高温度は240〜280℃、好ましくは、260〜280℃である。さらにこのフィルムを240〜280℃、より好ましく260〜280℃で幅方向に弛緩処理する。弛緩率は、0.1〜8%であることが好ましく、より好ましくは2〜5%の範囲である。240℃以上の後段の熱固定工程および弛緩処理工程の合計時間は1〜15秒が好ましく、さらに好ましくは2〜10秒である。
さらに、フィルムを室温まで、必要ならば、長手および幅方向に弛緩処理を施しながら、フィルムを冷やして巻き取り、目的とする二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムを得る。
本発明で用いられる二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムはより強固な接着性を付与する観点から、共重合ポリフェニレンスルフィド層にコロナ放電処理やプラズマ処理を施すことも本発明の好ましい態様に含まれる。
上記で得られた二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムを金型に合わせて円形にカットし、直径150mm×厚み3mmの円盤状金型(中心部、ダイレクトゲート)にインサートした。次に射出成形機(住友重機製SE−100DU)にペレット状のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物からなる成形基材(A)を導入し、上記金型に射出成形を行い、フィルムと射出成形樹脂の複合体を得た(金型温度、130℃、成形機樹脂温300〜350℃)。
[特性の測定方法]
(1)樹脂およびフィルムの融解温度
JIS K7121―1987に準じて示差走査熱量計セイコーインスツルメンツ社製DSC(RDC220)、データ解析装置として同社製ディスクステーション(SSC/5200)を用いて、試料5mgをアルミニウム製受皿上で室温から340℃まで昇温速度20℃/分で昇温し、340℃で5分間溶融保持し、急冷固化して5分間保持した後、室温から昇温速度20℃/分で昇温した。そのとき、観測される融解の吸熱ピークのピーク温度を融解温度(Tm)とした。
(2)ガラス転移温度
JIS K7121−1987に準じて測定した。示差走査熱量計セイコーインスツルメンツ社製DSC(RDC220)、データ解析装置として同社製ディスクステーション(SSC/5200)を用いて、試料5mgをアルミニウム製受皿上350℃で5分間溶融保持し、急冷固化した後、室温から昇温速度20℃/分で昇温した。なお、ガラス転移温度(Tg)は下記式により算出した。
ガラス転移温度=(補外ガラス転移開始温度+補外ガラス転移終了温度)/2
(3)溶融粘度
溶融粘度はキャピログラフ1C(東洋精機(株)社製、ダイス長10mm、孔直径0.5〜1mm)を用い、310℃、剪断速度1000/秒の条件で測定した。
(4)灰分
白金皿を純水で洗浄後、700℃で1時間焼成しデシケーター内で乾燥する。本白金皿の重量を、化学天秤を用いて0.1mgまで精秤し、この値をAgとする。次に、ボリマー試料を白金皿の中におよそ5g採り、白金皿と試料の合計量を化学天秤で0.1mgまで精秤した。この値をBgとする。その後、ステンレスバットにボリマー試料の入った白金皿を乗せ、440℃にセットされた高温オーブン内に入れ5時間焼成し、次いで高温オーブン設定を500℃に上げ、500℃に達してから5時間焼成した。処理後、高温オーブン温度が300℃以下になるまで冷却し、300℃以下に達した後白金皿を乗せたステンレスバットを取り出し、デシケーター内で処理後の白金皿を12時間保管した。その後、白金皿をデシケーター中から取り出し、538℃で安定しているマッフル炉に入れ、6時間焼成した。処理後、白金皿をマッフル炉から取り出し、試料中に炭化物(黒色)が完全に無くなっていることを確認した。なお、僅かでも炭化物が認められる場合は、焼成をさらに実施する。焼成終了後、マッフル炉から白金皿を取りだし、汚れのないステンレスバットに乗せデシケーター内で30分冷却した後、白金皿の重量を化学天秤で0.1mgまで精秤した。この値をCgとする。以上の方法で測定した重量A、B、Cを用い、以下式に従って灰分を算出した。
灰分(重量%)=(C−A)/(B−A)×100
(5)ナトリウム濃度
白金皿を純水で洗浄後、700℃で1時間焼成しデシケーター内で乾燥した。本白金皿の重量を、化学天秤を用いて0.1mgまで精秤した。この値をAgとする。次に、ボリマー試料を白金皿の中におよそ5g採り、白金皿と試料の合計量を化学天秤で0.1mgまで精秤した。この値をBgとする。その後、ステンレスバットにボリマー試料の入った白金皿を乗せ、440℃にセットされた高温オーブン内に入れ5時間焼成し、次いで高温オーブン設定を500℃に上げ、500℃に達してから5時間焼成した。処理後、高温オーブン温度が300℃以下になるまで冷却し、300℃以下に達した後白金皿を乗せたステンレスバットを取り出し、デシケーター内で処理後の白金皿を12時間保管した。その後、白金皿をデシケーター中から取り出し、538℃で安定しているマッフル炉に入れ、6時間焼成した。処理後、白金皿をマッフル炉から取り出し、試料中に炭化物(黒色)が完全に無くなっていることを確認した。なお、僅かでも炭化物が認められる場合は、焼成をさらに実施する。焼成終了後、マッフル炉から白金皿を取りだし、汚れのないステンレスバットに乗せデシケーター内で30分冷却した。次いで、白金皿内に純水:塩酸=1:1(以下1:1塩酸と称する)の液体を約2ml加えた。塩酸は特級品を使用した。その後、ホットプレートを用い1:1塩酸の入った白金皿を加熱した。加熱は溶液が緩く沸騰する程度で実施した。蒸発乾固近くまでになったら加熱を止め、白金皿を室温に冷却した。その後、TPX製50mlメスフラスコにTPX製ロートを用いて白金皿の内容物をイオン交換水で洗浄しながら数回に分けメスフラスコ内に入れ、メスフラスコの標線をイオン交換水で合わせた。このように調整した試料液を用い、イオン交換水をブランクとして原子吸光測定装置を用いて測定実施する。具体的には、測定前にナトリウムを含む標準液を用い検量線を作成し、試料液をXml採取し、イオン交換水で希釈しYmlにし、検量線の範囲に来るよう濃度を調整し、本試料液を用い測定実施した。得られた値をCppmとする。以上の数値を用い、以下に従って金属濃度を算出した。
濃度[ppm]=C/(B−A)×50×Y/X
(6)インサート射出成形性
射出成形機(住友重機械工業株式会社製)を用い、直径150mmの円板型金型を用い、射出/冷却速度12/15秒で加工し、得られた一体成形品の配向層(B)を剥離し、配向層(B)が材料破壊することなく、元々の表面を有して剥離した場合、また、成形基材(A)と配向層(B)の界面に1mm以上の気泡が存在し、ふくれ、剥がれが発生し、界面剥離した場合は不良品とした。不良品発生率を次の基準で評価した。なお、加工個数は各試料100個ずつとする。
○:不良率が0%を超え5%以下
△:不良率が6%を超え20%以下
×:不良率が20%を超える。
(参考例1)成形基材(A)PPS樹脂組成物の製造方法
[使用原材料](A)PPS−1:撹拌機および底栓弁付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8.27kg(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2.94kg(70.63モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11.45kg(115.50モル)、酢酸ナトリウム0.513kg(6.25モル)、及びイオン交換水3.82kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水8.09kgおよびNMP0.28kgを留出した後、反応容器を200℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。その後200℃まで冷却し、p−ジクロロベンゼン10.34kg(70.32モル)、NMP9.37kg(94.50モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら0.6℃/分の速度で200℃から270℃まで昇温し、270℃で140分反応した。その後、270℃から250℃まで15分かけて冷却しながら水2.67kg(148.4モル)を圧入した。ついで250℃から220℃まで75分かけて徐々に冷却した後、室温近傍まで急冷し内容物を取り出した。内容物を約35リットルのNMPで希釈しスラリーとして85℃で30分撹拌後、80メッシュ金網(目開き0.175mm)で濾別して固形物を得た。得られた固形物を同様にNMP約35リットルで洗浄濾別した。得られた固形物を70リットルのイオン交換水で希釈し、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網で濾過して固形物を回収する操作を合計3回繰り返した。得られた固形物および酢酸32gを70リットルのイオン交換水で希釈し、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網で濾過し、更に得られた固形物を70リットルのイオン交換水で希釈し、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網で濾過して固形物を回収した。このようにして得られた固形物を窒素気流下、120℃で乾燥することにより、乾燥PPSを得た。得られたPPSは、溶融粘度が45Pa・s、灰分が0.02重量%、ナトリウム濃度85ppmであった。
このように重合したPPS樹脂100重量部にガラス繊維を67重量部配合し、2軸押出機で
溶融混練/ペレタイズを行った。
(参考例2)共重合ポリフェニレンスルフィド樹脂の製造
オートクレ−ブに100モルの硫化ナトリウム9水塩、45モルの酢酸ナトリウムおよび25リットルのN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略称する。)を仕込み、撹拌しながら徐々に220℃の温度まで昇温して、含有されている水分を蒸留により除去した。脱水の終了した系内に、主成分モノマとして91モルのp−ジクロベンゼン、副成分モノマとして10モルのm−ジクロロベンゼン、および0.2モルの1,2,4−トリクロルベンゼンを5リットルのNMPとともに添加し、170℃の温度で窒素を3kg/cmで加圧封入後、昇温し、260℃の温度にて4時間重合した。重合終了後冷却し、蒸留水中にポリマを沈殿させ、150メッシュ目開きを有する金網によって、小塊状ポリマを採取した。このようにして得られた小塊状ポリマを90℃の蒸留水により5回洗浄した後、減圧下120℃の温度にて乾燥して、溶融粘度が100Pa・sであり、融点が250℃の共重合ポリフェニレンスルフィド樹脂を得た。次いで、平均粒径1.2μmの炭酸カルシウム粉末0.3重量%を添加し均一に分散配合して、320℃の温度にて30mmφ2軸押出機によりガット状に押出し、共重合ポリフェニレンスルフィドのペレットを得た。
(参考例3)PPS樹脂の製造
p−フェニレンスルフィド単位を主成分とするPPS樹脂は、主成分モノマとして101モルのp−ジクロベンゼンを用い、副成分モノマを用いないこと以外は参考例(2)の共重合ポリフェニレンスルフィド樹脂の製造と同様に実施して、PPS樹脂を製造した。なお、PPS樹脂の溶融粘度は、300Pa・sであり、融点は283℃であった。
(実施例1)
参考例(2)および(3)で得られた共重合ポリフェニレンスルフィド樹脂およびPPS樹脂を、それぞれ180℃の温度で3時間、1mmHgの減圧下で乾燥後、別々のエクストルーダに供給し、溶融状態で口金上部にある二重管型の積層装置で2層になるように導き、続いて設けられたTダイ型口金から吐出させ、25℃の温度の冷却ドラムで急冷し、実質的に共重合ポリフェニレンスルフィド/PPSの2層積層シートを得た。次いで、得られた各積層シートを、表面温度95℃の複数の加熱ロールに接触走行させ、加熱ロールの次に設けられた周速の異なる30℃の冷却ロールとの間で長手方向に3.5倍延伸した。このようにして得られた1軸延伸シートを、テンターを用いて長手方向と直交方向に100℃の温度で3.7倍に延伸し、引き続いて温度200℃で4秒間熱処理(1段目熱処理)を行い、続いて260℃4秒間熱処理(2段目熱処理)を行った。引き続き、260℃の弛緩処理ゾーンで4秒間横方向に5%弛緩処理を行った後、室温まで冷却した後、フィルムエッジを除去し、共重合ポリフェニレンスルフィド/PPS(10/65μm)の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムを得た。
得られた二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムの共重合ポリフェニレンスルフィド側を射出成形側にくるようにインサートし、参考例1で得られたPPS樹脂を射出温度330℃、射出圧力40MPaで射出し、金型80℃、PPS樹脂組成物成形基材−フィルムの一体成形体を作製した。得られた成形体の不良率は、成形体100個中3個であり、不良率が5%未満であった。
(実施例2)
実施例1と同様にしてあらかじめ射出成形して得られた成形基材の表面に、実施例1で用いた共重合ポリフェニレンスルフィド/PPS(10/65μm)の二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムを260℃、300kg/cm2の圧力をかけて熱プレスして、PPS樹脂組成物成形基材−フィルムの一体成形体を作製した。得られた成形体の不良率は、成形体100個中10個であり、不良率が10%であった。
(実施例3)
参考例3のPPS樹脂のみを用いること以外は実施例1と同様にして二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムを得た。得られた二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムを参考例5と同様にしてインサート射出成形し、PPS樹脂組成物成形体−フィルムの成形体を作製した。得られた成形体の不良率は、成形体100個中50個であり、不良率が50%であった。
(比較例1)
接着剤:ウレタン系接着剤、“アドコート”76P1
上記の接着剤の主剤と硬化剤の混合比を主剤/硬化剤=100/8とし酢酸エチルで固形分濃度が32%になるように調整し、グラビアロール法で実施例3で得られた二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムのコロナ放電処理面に塗布した。乾燥条件は、80℃で3分間であり、塗布厚みは乾燥後で8μmにように調整した。また、実施例1でPPS樹脂組成物成形基材のみを射出成形して作製したものを、接着剤層側が成形基材側となるよう配置し、PPS樹脂組成物成形体−接着剤フィルムの成形体を80℃、10MPaでプレス圧着して作製した。得られた成形体を60℃の温度で50時間加熱し、接着剤を硬化させた。成形体の不良率は、成形体100個中100個であり、不良率100%であった。
(比較例2)
接着剤:“ケミットエポキシ”TE5920(東レ(株)社製)固形分濃度30wt%
接着剤の配合:A剤/B剤=15/100
グラビアロール法で比較例1と同様に二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムのコロナ放電処理面に塗布したのち、乾燥条件を100℃、3分とする以外は比較例1と同様にしてPPS樹脂組成物成形体−フィルムの成形体を作製した。得られた成形体を150℃の温度で1時間加熱し、接着剤を硬化させた。成形体の不良率は、成形体100個中100個であり、不良率100%であった。
本発明の成形体は、樹脂組成物成形基材とフィルムとが接着剤を介することなく一体化された成形体であり、電気絶縁用、回路基板用、一般工業用等に幅広く用いることが可能であり、特に電気絶縁用途に好適であり、産業上有用である。

Claims (5)

  1. ポリアリーレンスルフィドを含有する樹脂組成物からなる成形基材(A)と、ポリアリーレンスルフィドを主成分とする樹脂組成物からなる配向層(B)とが接着剤を介することなく一体化されてなることを特徴とする成形体。
  2. 配向層(B)が、p−フェニレンスルフィドを主成分とする二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムからなる請求項1に記載の成形体。
  3. 配向層(B)が、p−フェニレンスルフィドを主成分とする二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルム層(B1)の少なくとも片側に、p−フェニレンスルフィド以外の少なくとも1種以上の共重合成分を有する共重合ポリフェニレンスルフィド層(B2)が積層された積層二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムである請求項1に記載の成形体。
  4. インサート成形法により成形されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の成形体。
  5. p−フェニレンスルフィドを主成分とする二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルム層(B1)の少なくとも片側に、p−フェニレンスルフィド以外の少なくとも1種以上の共重合成分を有する共重合ポリフェニレンスルフィド層(B2)が積層された積層二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムである配向層(B)をあらかじめ賦形したのち金型に配置し、配向層(B)の共重合ポリフェニレンスルフィド層側にポリアリーレンスルフィドを含有する樹脂組成物からなる成形基材(A)を射出成形して一体化する成形方法。
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