JP2009248356A - インクジェット受容層 - Google Patents

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Abstract

【課題】
本発明が解決しようとする課題は、印刷するインク量が多くても、印刷面からのインク移りがなく、印刷面にべた付きやひび割れが生じないインクジェット受容層を提供することである。
【解決手段】
本発明は、インクジェット装置から吐出されるインクに対して適性を有しているインクジェット受容層において、インクジェット受容層は、塗工液を基材上に塗付して硬化させて、形成されるものであり、塗工液は、少なくとも、変性ウレタン樹脂と、カルボキシル基を含有した変性アクリル樹脂と、カルボキシル基と反応する架橋剤からなり、これらの樹脂は、どちらの樹脂においても一方の樹脂だけで成膜できるものであり、互いに相溶するように変性されているものである。
【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット装置から吐出されたインクに対して適性を有しているインクジェット受容層に関するものである。
インクジェット装置から吐出されたインクに対して適性を有しているものは、インクジェット用記録シートやインクジェット用記録媒体などといわれており、基材上にインクジェット受容層が形成されているものである。インクを吐出するインクジェット装置は、一般にはインクジェットプリンタといわれており、個人用途としては写真のフルカラー画像などを印刷して楽しむことに利用されている。産業用途としては機能性インクを吐出することで様々な産業分野で使用されている。
画像印刷目的のインクは、個人用途では水系インクが主であり、顔料タイプや染料タイプがある。産業用途では水系インクだけでなく、溶剤系インクもある。また、その他の機能性インクとして、例えば、スクリーン印刷製版のUV感光乳剤マスキング用インク(特許第4079327号公報、特開2005−023111号公報)、プラスチックや金属などの非吸収材料への定着性が良好な紫外線硬化型インク(特許第4082681号公報、特開2005−126540号公報、特開2005−162882号公報)、食品、化粧品、医薬品などに印刷する可食インク(特開2006−169301号公報)などがある。
ウレタン樹脂は、インクの吸収が良い材料である。この樹脂を成膜して、インクジェット受容層として用いることは、従来から行なわれている。しかし、そのようなインクジェット受容層のインクを印刷した印刷面では、インクを吸収したウレタン樹脂が膨潤して、その印刷面がべた付くというブロッキング現象が起こりやすかった。
このようなべた付くというブロッキング現象が起こると、インクジェット用記録シートを出力後に重ねると引っ付いてしまうことがあった。また、印刷面のインクが長時間を経て充分に乾燥して膨潤が解消されると、その印刷面にひび割れが生じることもあった。これらを防ぐのに、アクリル樹脂を混合するのが効果的であった。この混合により、べた付きやひび割れを防いで、さらに吸収性、乾燥性、発色性、耐水性が良好な透明なインクジェット用記録シートを作ることができた(特開2005−074880号公報、特開2006−088341号公報)。
特許第4079327号公報 特開2005−023111号公報 特許第4082681号公報 特開2005−126540号公報 特開2005−162882号公報 特開2006−169301号公報 特開2005−074880号公報 特開2006−088341号公報
このようにインクジェット受容層にウレタン樹脂とアクリル樹脂の混合を用いることで、それ以前に比べて性能を高めることはできたが、さらに性能を高めるように市場から求められるようになってきた。特に、インク吸収量を増やし、べた付きがなく、ひび割れが生じないようなインクジェット受容層が求められるようになってきた。本発明が解決しようとする課題は、印刷するインク量が多くても、印刷面からのインク移りがなく、印刷面にべた付きやひび割れが生じないインクジェット受容層を提供することである。
本発明は、インクジェット装置から吐出されるインクに対して適性を有しているインクジェット受容層において、インクジェット受容層は、塗工液を基材上に塗付して硬化させて、形成されるものであり、塗工液は、少なくとも、変性ウレタン樹脂と、カルボキシル基を含有した変性アクリル樹脂と、カルボキシル基と反応する架橋剤からなり、これらの樹脂は、どちらの樹脂においても一方の樹脂だけで成膜できるものであり、互いに相溶するように変性されていることを特徴とするものである。
本発明により、印刷するインク量が多くても、印刷面からのインク移りがなく、印刷面にべた付きやひび割れが生じないインクジェット受容層を提供することができるようになった。
本発明のインクジェット受容層が形成される基材は、インクジェット装置から吐出されるインクの目的によって、フィルム状や板状などを選択することができ、また、目的に適した素材を選択することができる。
インクジェット受容層となる塗工液の変性ウレタン樹脂とカルボキシル基を含有した変性アクリル樹脂は、どちらの樹脂においても一方の樹脂だけで成膜できるものであり、互いに相溶するように変性されているものである。このような樹脂の製造は、原料メーカーが得意としており、こちらの希望する樹脂を提供してくれている。さらには、特殊な機能性インクに対して適性を有した樹脂も製造してくれている。塗工液は、少なくとも、このような変性ウレタン樹脂とカルボキシル基を含有した変性アクリル樹脂と、カルボキシル基と反応する架橋剤からなるものである。架橋剤と反応するのは変性アクリル樹脂に含有させたカルボキシル基であり、変性ウレタン樹脂にはそのようなカルボキシル基がないということである。つまり、架橋剤と反応するカルボキシル基を含有していない変性ウレタン樹脂であるともいえる。これらのことを詳細に説明する。
インクジェット受容層において、ウレタン樹脂がインクを吸収しており、アクリル樹脂が存在することで、インクを吸収したウレタン樹脂のべた付きを防いでいる。また、インクによるウレタン樹脂の膨潤が解消された後のひび割れも防いでいる。ひび割れを防ぐのは、アクリル樹脂が硬化されると強靭になるので、アクリル樹脂がウレタン樹脂を保持するようになり、ウレタン樹脂の膨潤による体積膨張を抑えているからだと考えている。しかし、ウレタン樹脂のインク吸収量が増えると、アクリル樹脂がウレタン樹脂の膨潤を抑えきれなくなり、ひび割れがさらにはべた付きも、再び生じることになる。そこで、アクリル樹脂によるウレタン樹脂の保持をより強靭なものにするために、カルボキシル基を含有した変性アクリル樹脂と、カルボキシル基と反応する架橋剤を用いている。
変性ウレタン樹脂とカルボキシル基を含有した変性アクリル樹脂は、どちらの樹脂においても一方の樹脂だけで成膜できるものであるので、個々の樹脂はもともと基材との密着がよく、個々の樹脂だけで硬化されるものである。それらが互いに相溶するように変性されているので、基材上に塗布した時に、樹脂同士に大きな偏りがなく、おおよそ均等に分散されていることになり、その状態で硬化が始まると、それぞれの樹脂は個々に硬化して、ウレタン樹脂とアクリル樹脂がおおよそ均等に分散されて硬化した層が形成されるものである。そこに、アクリル樹脂だけが架橋剤と反応するように、カルボキシル基を含有した変性アクリル樹脂と、カルボキシル基と反応する架橋剤を用いている。すると、アクリル樹脂の硬化がウレタン樹脂よりも先に進み、分散されていることにより、適度な間を隔ててアクリル樹脂がつながっていき、層全体に広がる強靭な3次元骨格となって先に形成され、これにより、アクリル樹脂の強靭な3次元骨格があり、その3次元骨格の間にウレタン樹脂が存在しているような構造になると考えている。
このような構造により、アクリル樹脂の層全体に広がる強靭な3次元骨格が、大量のインクを吸収して膨潤するウレタン樹脂の大きな体積変化を防ぐことになる。大きな体積変化がないため、インクが充分に乾燥して膨潤が解消されても、ウレタン樹脂にひび割れが生じない。これと同時にアクリル樹脂の骨格が、ウレタン樹脂の膨潤によるベタ付きをなくし、ブロッキング現象を防いでいるとも考えている。
カルボキシル基を含有した樹脂が、変性ウレタン樹脂と変性アクリル樹脂の両方であると、このような効果が見られない。また、異なる架橋剤による異なる反応基を含有した変性ウレタン樹脂と変性アクリル樹脂であっても、このような効果が見られない。反応基を含有したのが変性アクリル樹脂の方だけであることによって、このような効果が得られるものである。
塗工液は、少なくともこれら、変性ウレタン樹脂と、カルボキシル基を含有した変性アクリル樹脂と、カルボキシル基と反応する架橋剤を、溶媒中で混合することによって、作製することができる。なお、塗工液を作製する前に、変性ウレタン樹脂だけで成膜できることと、カルボキシル基を含有した変性アクリル樹脂だけで成膜できることを確認する必要がある。これらの樹脂それぞれを、机上において基材上にアプリケータにて、硬化した層の厚さが20μmになるように塗布して、ハンディドライヤーの加熱乾燥により硬化させて、それぞれの樹脂だけからなる層を形成することができた。これにより、これらの樹脂は、どちらの樹脂においても一方の樹脂だけで成膜できるものである。
また、変性ウレタン樹脂と、カルボキシル基と反応する架橋剤からなる塗工液と、カルボキシル基を含有した変性アクリル樹脂と、カルボキシル基と反応する架橋剤からなる塗工液をそれぞれ作製して、これら塗工液それぞれを、机上において基材上にアプリケータにて、硬化した層の厚さが20μmになるように塗布して、ハンディドライヤーの加熱乾燥により硬化させて、それぞれの層を形成することができた。これらの架橋剤を添加した層と、前記の架橋剤を添加していない樹脂だけからなる層を比較した。
変性ウレタン樹脂の層においては、架橋剤を添加していない層と添加した層とでは、同等であった。つまり、架橋剤が変性ウレタン樹脂に何も影響していないということである。また同等であることにより、少なくとも成膜においては、何も悪い影響を与えていない。一方、変性アクリル樹脂の層においては、架橋剤を添加していない層と添加した層とでは、同等以上であった。つまり、架橋剤が変性アクリル樹脂に何かしら影響しているということである。これらのことが、塗工液を作製する前に、期待する性能が出るかどうかを確かめていることになる。
塗工液の樹脂が、互いに相溶するかどうかは、実際に混合して目視で確かめることができる。互いに相溶するものであるためには、ウレタン樹脂とアクリル樹脂が、例えば同じカチオン性に変性されている場合があるが、このようなイオン性が同じでなく、異なっている場合であっても、相溶するように変性されていればよい。
変性ウレタン樹脂と、カルボキシル基を含有した変性アクリル樹脂と、カルボキシル基と反応する架橋剤からなる塗工液における混合比は、インクジェット受容層に求められる性能によって異なり、限定されるものではないが、インクジェット受容層の固形分比率で、変性ウレタン樹脂が50〜95重量%、カルボキシル基を含有した変性アクリル樹脂が2〜50重量%、カルボキシル基と反応する架橋剤が20重量%未満であるのが好ましい。さらに好ましい条件としては、変性ウレタン樹脂が80〜95重量%、カルボキシル基を含有した変性アクリル樹脂が4〜20重量%、カルボキシル基と反応する架橋剤が10重量%未満である。
成膜方法としては、溶媒蒸発型、熱硬化型、硬化剤による硬化型などに分けられる。硬化剤として、熱開始型や、紫外線やエネルギー線などによる光開始型などが挙げられる。ここでの成膜とは、非可逆に層が形成されることである。本発明の変性ウレタン樹脂とカルボキシル基を含有した変性アクリル樹脂は、これらのような成膜方法で層が形成されるものであればよく、インクジェット受容層としての性能が出れば、限定されない。下記実施例においては、ウレタン樹脂とアクリル樹脂の成膜方法は、同じ熱硬化型である。ただし、これらの樹脂からなる塗工液は溶媒中で混合されており、長時間かかって溶媒が蒸発することで硬化がゆっくり進むことがあるので、その意味においては溶媒蒸発型でもあるといえるかもしれない。
インクジェット装置としては、個人用途の家庭用インクジェットプリンタが一般的に知られている。機能性インクを使用する場合、専用インクジェット装置を利用することもあれば、家庭用インクジェットプリンタのインクカートリッジを機能性インク用に取り替えて利用することもある。
インクジェット受容層を評価するために、基材上に形成したインクジェット受容層にインクジェット装置にて、3次色300%または1インク300%で、ベタ印刷した印刷面を作り、その印刷面を評価用として使用する。この3次色300%または1インク300%について説明する。
家庭用インクジェットプリンタのように、フルカラー画像を印刷する場合、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)を3原色とする減色法を用いる。以下、シアン、マゼンタ、イエローをCMYと省略して用いる。3次色とは、これらCMYの3色すべてを用いて表現された色のことである。そして、CMYの単色によるベタ印刷のインク量を100%としている。3次色300%とは、CMYのそれぞれの色が単色によるベタ印刷と同じインク量を同時に印刷したものである。
機能性インクを使用する場合でも、家庭用インクジェットプリンタのインクカートリッジを機能性インク用に取り替えて利用することができ、CMYに用いていた3つのカートリッジをすべて同じ機能性インク用に取り替えて利用することができる。この場合、3つのカートリッジから同じ1つの機能性インク(1インク)が印刷されることになる。1インク300%とは、3次色300%と同じように印刷したもの、つまり、1つの機能性インク(1インク)を3つのカートリッジを用いて1つのカートリッジのインクによるベタ印刷と同じインク量を同時に印刷したものである。
このような300%というインク量を吸収する性能が、インクジェット受容層に求められるようになってきたものである。インクを吸収しているかどうかは、インクジェット装置から出力後20分放置して、上記印刷面に上質紙を押し付けても印刷面からのインク移りがないことで確かめることができる。上質紙に印刷面からインクが移っていれば、インクジェット受容層にきちんとインクが吸収されていないことになる。
このようにインクが吸収される印刷面となり、さらに、べた付きやひび割れが生じない印刷面となる必要がある。べた付きがないかどうかは、インクジェット装置から出力後20分放置して、上記印刷面に直径4cmの円柱形の錘600gを乗せて1分後に印刷面から基材を離しても印刷面にべた付きがないことで確かめることができる。ひび割れが生じないかどうかは、インクジェット装置から出力後24時間放置しても印刷面にひび割れが生じないことで確かめることができる。印刷面にべた付きやひび割れがあれば、目的の性能に達していないことになる。
以下、インクジェット装置として家庭用インクジェットプリンタを用いた実施例にて詳細に説明するが、本発明がこれに限定されるものではない。
インクジェット装置は、セイコーエプソン株式会社製インクジェットプリンタMC−2000を、インクは、その純正インクCMYを使用した。基材は、透明基材であり、東レ株式会社製透明ポリエステルフィルム厚さ100μmを用いた。
塗工液は、次に挙げる変性ウレタン樹脂と変性アクリル樹脂と架橋剤を、インクジェット受容層の固形分比率でそれぞれ、82重量%、14重量%、4重量%となるように、溶媒としてのイオン交換水中で混合して作製した。互いに相溶していることは目視で確かめた。なお、この塗工液を作製する前に、変性ウレタン樹脂だけで成膜できることと、変性アクリル樹脂だけで成膜できることを、また、変性ウレタン樹脂と架橋剤からなる塗工液で成膜できることと、変性アクリル樹脂と架橋剤からなる塗工液で成膜できることを、机上において確認しており、これらの架橋剤を添加していない層と添加した層を比較確認している。
変性ウレタン樹脂にはパスコールJK−830(明成化学工業株式会社製)を、変性アクリル樹脂にはカルボキシル基を含有したジュリマー(日本純薬株式会社製)を、架橋剤にはカルボキシル基と反応するNKアシストCI(日華化学株式会社製)を用いた。この塗工液を基材上にコンマコーターにて、硬化した層の厚さが20μmになるように塗布して、加熱乾燥により硬化させて、インクジェット受容層を形成した。透明基材上に形成したインクジェット受容層は、透明基材と同様に透明となった。
インクジェット受容層にインクジェットプリンタMC−2000にて、CMYの3次色300%で、ベタ印刷した印刷面を作り、印刷面の出力後20分放置して、印刷面に上質紙を押し付けても印刷面からのインク移りがなく、印刷面の出力後20分放置して、印刷面に直径4cmの円柱形の錘600gを乗せて1分後に印刷面から基材を離しても印刷面にべた付きがなく、印刷面の出力後24時間放置しても印刷面にひび割れが生じないことを確認した。
変性ウレタン樹脂にパラサーフUP−28(大原パラジウム株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1と同じである。これにおいても、印刷面からのインク移りがなく、印刷面にべた付きがなく、印刷面にひび割れが生じないことを確認した。
変性アクリル樹脂にカルボキシル基を含有したリカボンド(中央理化工業株式会社製)を用いたこと以外は、実施例2と同じである。これにおいても、印刷面からのインク移りがなく、印刷面にべた付きがなく、印刷面にひび割れが生じないことを確認した。

Claims (1)

  1. インクジェット装置から吐出されるインクに対して適性を有しているインクジェット受容層において、インクジェット受容層は、塗工液を基材上に塗付して硬化させて、形成されるものであり、塗工液は、少なくとも、変性ウレタン樹脂と、カルボキシル基を含有した変性アクリル樹脂と、カルボキシル基と反応する架橋剤からなり、これらの樹脂は、どちらの樹脂においても一方の樹脂だけで成膜できるものであり、互いに相溶するように変性されていることを特徴とするインクジェット受容層。
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