JP2009247279A - 新規水草根圏微生物 - Google Patents

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Abstract


【課題】 芳香族系の有機汚染物質の浄化能を有する微生物、特にファイトレメディエーションによる環境中の有機汚染物質の浄化に利用可能な微生物を提供することを目的とする。
【解決手段】 水酸基を有する単環式芳香族化合物又は芳香族環の開裂反応によって芳香族環上に水酸基が生じる多環式芳香族化合物に対して分解能を有する、アシネトバクター(Acinetobacter)属微生物。本発明は、自然界に全く無害の微生物を用いて、フェノール等の環境汚染物質を浄化することができる。特に本発明の生物製剤は、環境中、特に湖沼や河川に漏出したフェノール等の環境汚染物質を、汚染された水等を回収することなく、自然環境の中で効率的かつ極めて安価に処理することができる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、水酸基を有する単環式芳香族化合物又は芳香族環の開裂反応によって芳香族環上に水酸基が生じる多環式芳香族化合物に対して分解能を有し、ウキクサの根に対して付着能を有するアシネトバクター(Acinetobacter)属微生物、及び当該微生物を用いて、水酸基を有する単環式芳香族化合物又は芳香族環の開裂反応によって芳香族環上に水酸基が生じる多環式芳香族化合物によって汚染された水又は土壌の浄化方法に関する。
フェノールやナフタレンは、消毒剤、防腐剤、防虫剤、染料中間体として用いられる他、合成樹脂、染料、爆薬、可塑剤、界面活性剤の製造原料として重要な芳香族化合物である。これらはいずれも生物に対する毒性が強く、工場等からの外部への流出は、深刻な環境汚染を引き起こすおそれがある。
そのため、例えばフェノール排出基準は、下水道法や水質汚濁防止法などで5mg/Lと定められており、化学工業等の製造過程において生じるフェノール性化合物を含む廃水を処理する方法として、焼却法、蒸留回収法、活性汚泥法等が実施されている。
上記の処理方法は、主として、工場等の排水が発生する施設の内部で実施されることを目的として開発された方法である。そのため、施設の外部、例えば土壌、河川、湖沼などのオープンな環境に漏出してしまったフェノール等の環境汚染源を、上記の方法で処理することは事実上不可能である。
こうした環境中に漏出してしまった汚染源を物理的又は化学的に回収あるいは分解するのは容易なことではないことから、植物や微生物を用いた生物学的な浄化技術が、環境中の汚染物質の除去方法として利用されている。特に植物の有機化合物の吸収能ならびに代謝能を利用した環境汚染源を浄化する技術は、一般にファイトレメディエーションと呼ばれる。この技術は、植物が自身の栄養源として利用する窒素、リンの除去や、植物体内への吸収、蓄積を利用した重金属の除去に対して、特に優れている。
植物を利用する環境浄化技術の最大のメリットは、太陽エネルギーを利用する経済性及び環境適合性という点であり、受動(パッシブ)システムとしてホテイアオイやヨシなどの植物が広く活用されている。しかし、植物による有機化合物等の環境汚染源の回収、除去反応は一般に長時間を要することから、効率的であるとは言い難い。
この問題を解消する方法として、植物と共存することができ、それ自体が環境浄化作用を有する微生物を組み合わせてファイトレメディエーションの効率を高める方法が提唱されている。その代表例が、植物の根の周囲における微生物と植物の共生関係を利用した、根圏浄化 (Rhizoremediation)と呼ばれる環境浄化技術である。
例えば、原油汚染砂漠における土着植物と原油分解微生物との組み合わせによって、当該土着植物の根周辺の原油の除去が行われた例がある(非特許文献1)。
また、水生植物の根圏微生物について、植物と根圏微生物の共存下では芳香族化合物の分解能が向上することが報告されている(非特許文献2)
Samir Radwanら、Nature、1995年、 第376巻、第6538号−302頁 Toyamaら、J.Biosci.Bioeng.、2006年、第101巻、第4号、346−353頁
本発明は、芳香族系の有機汚染物質の浄化能を有する微生物、特にファイトレメディエーションによる汚染された環境の浄化に利用可能な微生物を提供することを目的とする。
本発明者らは、ウキクサの根圏から、フェノール及びナフタレンを分解することのできる微生物を単離し、フェノール及びナフタレンの生物学的分解除去、特にファイトレメディエーションによる汚染物質の分解除去又は当該汚染物質によって汚染された環境の浄化に利用し得ることを見いだし、下記の各発明を完成させた。
(1)水酸基を有する単環式芳香族化合物又は芳香族環の開裂反応によって芳香族環上に水酸基が生じる多環式芳香族化合物に対して分解能を有する、アシネトバクター(Acinetobacter)属微生物。
(2)ベンゼンに対する分解能を示さない、(1)に記載のアシネトバクター属微生物。
(3)水生植物の根圏微生物である、(1)又は(2)に記載のアシネトバクター属微生物。
(4)水生植物がウキクサ科(Lemnaceae)植物である、(3)に記載のアシネトバクター属微生物。
(5)ウキクサ科植物がアオウキクサ(Lemna perpusilla)又はウキクサ(Spirodela polyrrhiza)である、(4)に記載のアシネトバクター属微生物。
(6)受託番号NITE P−523として受託された、アシネトバクター属微生物。
(7)(1)〜(6)の何れかに記載のアシネトバクター属微生物を含む、水酸基を有する単環式芳香族化合物又は芳香族環の開裂反応によって芳香族環上に水酸基が生じる多環式芳香族化合物を分解するための生物製剤。
(8)(1)〜(6)の何れかに記載のアシネトバクター属微生物とウキクサ科(Lemnaceae)植物とからなる、水酸基を有する単環式芳香族化合物又は芳香族環の開裂反応によって芳香族環上に水酸基が生じる多環式芳香族化合物を分解するための生物製剤。
(9)ウキクサ科植物がアオウキクサ(Lemna perpusilla)又はウキクサ(Spirodela polyrrhiza)である、(8)に記載のフェノール及び/又はナフタレン分解用生物製剤。
(10)(1)〜(6)のいずれかに記載のアシネトバクター属微生物と水酸基を有する単環式芳香族化合物若しくは芳香族環の開裂反応によって芳香族環上に水酸基が生じる多環式芳香族化合物によって汚染された水若しくは土壌とを接触させる工程a)を含む、前記汚染された水若しくは土壌に含まれる水酸基を有する単環式芳香族化合物若しくは芳香族環の開裂反応によって芳香族環上に水酸基が生じる多環式芳香族化合物を分解除去する方法。
(11)工程a)が、前記汚染された水若しくは土壌に(7)〜(9)の何れかに記載の生物製剤を投与することで、アシネトバクター属微生物と水酸基を有する単環式芳香族化合物若しくは芳香族環の開裂反応によって芳香族環上に水酸基が生じる多環式芳香族化合物によって汚染された水若しくは土壌とを接触させる工程である、(10)に記載の方法。
(12)(1)〜(6)のいずれかに記載のアシネトバクター属微生物と水酸基を有する単環式芳香族化合物若しくは芳香族環の開裂反応によって芳香族環上に水酸基が生じる多環式芳香族化合物によって汚染された水若しくは土壌とを接触させる工程a)、及び前記汚染された水若しくは土壌に含まれる水酸基を有する単環式芳香族化合物若しくは芳香族環の開裂反応によって芳香族環上に水酸基が生じる多環式芳香族化合物を分解除去する工程b)を含む、前記汚染された水若しくは土壌の浄化方法。
(13)工程a)が、前記汚染された水若しくは土壌に請求項7〜9の何れかに記載の生物製剤を投与することで、アシネトバクター属微生物と水酸基を有する単環式芳香族化合物若しくは芳香族環の開裂反応によって芳香族環上に水酸基が生じる多環式芳香族化合物によって汚染された水若しくは土壌とを接触させる工程である、(12)に記載の浄化方法。
本発明は、自然界に全く無害の微生物を用いて、フェノール等の環境汚染物質を分解除去して、環境を浄化することができる。特に本発明の生物製剤は、環境中、特に湖沼や河川に漏出したフェノール等の環境汚染物質を自然環境の中で効率的かつ極めて安価に分解処理して、環境を浄化することができる。
本発明は、水酸基を有する単環式芳香族化合物又は芳香族環の開裂反応によって芳香族環上に水酸基が生じる多環式芳香族化合物に対して分解能を有する、アシネトバクター(Acinetobacter)属微生物を提供する。
本発明のアシネトバクター属微生物は、下記表1に示す微生物学的性質を有する。その好ましい例は、産業技術総合研究所特許生物寄託センターに、受託番号NITE P−523として寄託されているアシネトバクター エスピー P23株である。
上記の微生物学的特徴を備えたアシネトバクター属微生物であって、水酸基を有する単環式芳香族化合物又は芳香族環の開裂反応によって芳香族環上に水酸基が生じる多環式芳香族化合物に対して分解能を有するアシネトバクター属微生物、特にウキクサ科植物の根圏微生物であるアシネトバクター属微生物であれば、何れのアシネトバクター属微生物も本発明に含まれ、前記受託番号NITE P−523として寄託されている特定のアシネトバクター属微生物株には限定はされないが、本発明で好ましいアシネトバクター属微生物は、受託番号NITE P−523として寄託されているアシネトバクター エスピー P23株である。以下、アシネトバクター エスピー P23株をA−P23株と表すこととする。
本発明のアシネトバクター属微生物を培養するために用いられる培地の栄養源としては、通常の微生物の生育に必要であって本菌が資化可能な栄養源であれば、いかなる炭素源、窒素源及び無機塩類等でもよい。
炭素源としては、グルコースやデンプンその他の糖類、酵母エキス等の天然物等が利用できるが、水酸基を有する単環式芳香族化合物又は芳香族環の開裂反応によって芳香族環上に水酸基が生じる多環式芳香族化合物も炭素源として利用することができる。
また窒素源としては、硫酸アンモニウム等のアンモニウム塩、硝酸ナトリウム等の硝酸塩、各種アミノ酸、酵母エキス、肉エキス、麦芽エキス、ペプトン等の天然物が利用できる。また、カリウム塩、カルシウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、マンガン塩、リン酸塩等を無機成分として用いることができる。
上記の窒素源ならびに炭素源を含む、本発明のアシネトバクター属微生物の培養に好適な培地の例としては、L培地、Hoagland培地(Hoaglandら、Soil Sci.,1940年、第50巻、第463−485頁)、BM(Basal salt Medium)培地などを挙げることができるが、これらには限定されない。
本発明のアシネトバクター属微生物は、20〜40℃の温度範囲、好ましくは25〜35℃の温度範囲、5〜9のpH範囲、好ましくは6〜8のpH範囲で、好気的に培養することができる。
本発明において、水酸基を有する単環式芳香族化合物とは、芳香族化合物の環に水酸基が直接結合した化合物で、フェノール類として表される化合物を意味する。代表的な例としては、フェノール、m−クレゾール、ビスフェノールF、サリチル酸、p−ヒドロキシ安息香酸等が挙げられる。また、本発明において、芳香族環の開裂反応によって芳香族環上に水酸基が生じる多環式芳香族化合物とは、多環式芳香族化合物の一部を構成する芳香族環における原子間の共有結合が切断されることにより、芳香族環上に新たに水酸基が形成される多環式芳香族化合物をいう。例えば、ナフタレン、ビフェニル、アントラセン、ピレンである。本発明の微生物は、この様な化合物を分解することで、当該化合物を培地乃至環境から除去することができる。以下、本発明では、水酸基を有する単環式芳香族化合物と多環式芳香族化合物の一部を構成する芳香族環における原子間の共有結合が切断されることにより芳香族環上に新たに水酸基が形成される多環式芳香族化合物とをまとめて、「汚染化合物」と、それぞれ表すこととする。
本発明のアシネトバクター属微生物は、工場、営業所あるいは家庭等からの排水、汚染された河川や湖沼、海水その他の水であって、「汚染化合物」が含まれることが予想され又は確認されている水(以下、「被汚染水」と表す)、あるいは「汚染化合物」が含まれることが予想され又は確認されている土壌(以下、「被汚染土壌」と表す)と接触させることで、「汚染化合物」を分解資化、すなわち分解処理して、「被汚染水」及び/「被汚染土壌」を浄化することができる。「汚染化合物」の分解処理ならびに「被汚染水」及び/又は「被汚染土壌」の浄化は、好ましくは、「被汚染水」又は「被汚染土壌」において本発明のアシネトバクター属微生物を培養し、増殖させることで行われる。
本発明のアシネトバクター属微生物は、これを「被汚染水」の中でそのまま培養することで、「汚染化合物」を分解処理させることができる。また、公知の方法で適当な担体に本発明のアシネトバクター属微生物を固定化させた固定化微生物を用意し、これを用いてバッチ式に、あるいは連続的に「被汚染水」を固定化微生物に接触させることで、「汚染化合物」を分解処理してもよい。「被汚染水」が本発明のアシネトバクター属微生物の培養、増殖に好適な栄養源に乏しい場合には、好適な栄養源を「被汚染水」に適宜添加してもよい。
また本発明のアシネトバクター属微生物は、これを「被汚染土壌」にそのまま散布することにより「汚染化合物」を分解処理させることができる。また、公知の方法で適当な担体に本発明のアシネトバクター属微生物を固定化させた固定化微生物を用意し、これを「被汚染土壌」に散布して「汚染化合物」を分解処理してもよい。「被汚染土壌」が本発明のアシネトバクター属微生物の培養、増殖に好適な栄養源に乏しい場合には、好適な栄養源を「被汚染土壌」に散布する、あるいは本発明のアシネトバクター属微生物と共に散布してもよい。
本発明のアシネトバクター属微生物、特に好ましいアシネトバクター属微生物であるA−P23株は、ウキクサ科植物、例えばアオウキクサ(Lemna perpusilla)と共に培養すると、アオウキクサの根に付着して根圏を形成する性質を有している。特に、A−P23株の「汚染化合物」の分解処理能力は当該根圏が形成されることによって上昇し、また、「汚染化合物」が含まれる環境下でのアオウキクサの株数の増加率も、A−P23株による根圏が形成されることによって上昇することが確認された。このことから、本発明のアシネトバクター属微生物は、ウキクサ科植物に対して根圏を形成して共生関係を成立させることによって成長を促進する性質を有する、PGPR(Plant Growth Promoting rhizobacteria)の一種であると考えられる。
この様に、本発明のアシネトバクター属微生物は、そのままあるいはウキクサ科植物と組み合わせることで、「汚染化合物」の分解処理を目的とした生物製剤として利用することができる。すなわち本発明は、アシネトバクター属微生物又は本発明のアシネトバクター属微生物とウキクサ科植物を含む、「汚染化合物」を分解処理するため、又は汚染化合物を分解処理して「被汚染水」及び/又は「被汚染土壌」を浄化するための生物製剤を提供するものである。
本発明の生物製剤は、本発明のアシネトバクター属微生物、アシネトバクター属微生物とウキクサ科植物の他に、適当な賦形剤、及び/又はアシネトバクター属微生物の培養に好適な培地その他の任意成分を含んでいてもよい。また、アシネトバクター属微生物とウキクサ科植物はそれぞれ分離されて製剤に含まれていてもよく、あるいはウキクサ科植物の根の表面にアシネトバクター属微生物が根圏を形成している形態にあってもよい。アシネトバクター属微生物が根圏を形成しているウキクサ科植物を生物製剤として用いて湖沼や河川における「汚染化合物」の分解処理を行う場合、処理が終了したあとはウキクサを回収することで、湖沼や河川から不要となった微生物を簡便に回収することができる。
本発明は、本発明に係るアシネトバクター属微生物と「被汚染水」又は「被汚染土壌」とを接触させる工程a)を含む、前記「被汚染水」又は「被汚染土壌」に含まれる「汚染化合物」を分解除去する方法を提供する。また、前記工程a)が、前記「被汚染水」又は「被汚染土壌」に本発明に係る生物製剤を投与することで、アシネトバクター属微生物と「被汚染水」又は「被汚染土壌」とを接触させる工程である、前記「被汚染水」又は「被汚染土壌」に含まれる「汚染化合物」を分解除去する方法を提供する。
更に本発明は、本発明に係るアシネトバクター属微生物と「被汚染水」又は「被汚染土壌」とを接触させる工程a)、及び前記「被汚染水」又は「被汚染土壌」に含まれる「汚染化合物」を分解除去する工程b)を含む、前記「被汚染水」又は「被汚染土壌」の浄化方法を提供する。また、前記工程a)が、前記「被汚染水」又は「被汚染土壌」に本発明に係る生物製剤を投与することで、アシネトバクター属微生物と「被汚染水」又は「被汚染土壌」とを接触させる工程である、「被汚染水」又は「被汚染土壌」の浄化方法を提供する。
本発明のアシネトバクター属微生物を用いた「被汚染水」中の「汚染化合物」の分解処理又は「被汚染水」の浄化は、例えば活性汚泥方式、バイオリアクター方式により、また「被汚染物土壌」においては、本発明のアシネトバクター属微生物を土壌に散布するあるいは注入することにより行われてもよく、目的に適した方式を適宜に選択することができる。
活性汚泥法では、本発明のアシネトバクター属微生物又は生物製剤と「被汚染水」とを接触させることで、「汚染化合物」を分解処理することができる。例えば、活性汚泥法による分解処理の場合には、本発明のアシネトバクター属微生物の菌体を10cfu/mL以上、好ましくは10cfu/mL以上の濃度でばっ気槽に添加し、前記の好適な培養条件下で培養して分解処理を行えばよい。また、散水濾床法、浸漬濾床法、菌体固定法においては、本発明のアシネトバクター属微生物を固定化した担体と、「被汚染水」と接触させることにより、「汚染化合物」を分解処理することができる。
本発明の分解処理方法によれば、20mg/Lという高濃度の汚染化合物(フェノール)を、25℃4時間の培養で0.01mg/L以下まで分解することができる。
土壌浄化においては、「被汚染土壌」と本発明のアシネトバクター属微生物とを、好ましくは本発明のアシネトバクター属微生物が増殖可能な条件下で接触させることにより、「被汚染土壌」中の「汚染化合物」を分解処理し、「被汚染土壌」を浄化することができる。
本発明にかかる方法の好ましい態様は、本発明に係るアシネトバクター属微生物を、「被汚染水」中で培養し、増殖させて、「被汚染水」に含まれる「汚染化合物」を分解除去する、あるいは「被汚染水」を浄化する方法である。本発明に係るアシネトバクター属微生物の培養条件は、先に述べたとおりである。
以下、実施例を示して本発明を更に詳しく説明するが、本発明はその実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
1−1)微生物の単離
3種類の炭化水素 (フェノール、ナフタレン、マレーシア原油)を終濃度20または200mg/Lとなるように添加したHoagland培地(表2)100mL/300mL容三角フラスコへ、北海道大学付属植物園幽庭湖から採取し、蒸留水で洗浄したアオウキクサ(Lemna perpusilla)を加え、温度:25℃の恒温室内、照度:4500−6000ルクス、明暗条件:16時間明8時間暗で培養した。
3週間後、アオウキクサを取り出して蒸留水10mLで2回洗浄した後、10株分の葉状態と根をそれぞれエッペンドルフチューブへ取り出した。ここへ5mg/Lトリポリリン酸ナトリウム水溶液1mLを添加し、超音波発振操作(操作1:5秒×6回、操作2:20秒×5回 )を行い、1〜1×105に段階希釈した溶液を調製した。これを50μLのBM(表3、Basal salt Medium)培地又はLB固形培地へ塗布し、25℃で平板培養を行った。このときBM培地には単一炭素源として集積培養の際添加した炭化水素を100μL添加した。平板上に表れたコロニーをそれぞれL培地、または各炭化水素を加えたBM培地へ植え継いだ。
固形培地上でコロニー形態の異なる細菌として、フェノール含有培地から109菌株、ナフタレン含有培地から79菌株、マレーシア原油含有培地から41菌株がそれぞれ取得された。単一菌株と確認されたコロニーを、それぞれで使用された炭化水素を10mg/L含む液体L培地5mLに植菌し、濁度が十分上昇したと確認されるまで25℃、150rpmで振とう培養した。菌体を遠心分離(1900×g、5分、20℃ )で集菌し、15%グリセロール溶液として−80℃のディープフリーザーで保存した。グリセロール溶液作製後、L固形培地に塗布し、単一種が保存されていることを確認した。
1−2)単離細菌の炭化水素分解活性の評価
1−2)−1.フェノール分解活性評価
終濃度2mg/Lのフェノールを添加したL液体培地5mL/試験管に各微生物を植菌後、濁度が十分上昇したと確認されるまで振とう培養(25℃、150rpm)を行い、遠心分離(1900×g、5分、20℃)により集菌し、1mLのBM培地で洗浄後、同量のBM培地に懸濁した。終濃度10mg/Lのフェノールを添加した4mLのBM培地へ1mLの細菌懸濁液を加え、振とう培養(25℃、150rpm)を行い、7日後の培養液1mLをポリプロピレンチューブに入れて遠心分離(13000×g、15分、4℃)して上清を回収し、その中のフェノール残存量を、HPLC(HP1100Series、HEWLETT PACKARD社)により測定した。HPLCの測定条件を表4に示す。
上記の測定から、培地に添加したフェノールの80%以上を分解した細菌を選択した。この選択された細菌の前培養液1mL(OD600=1.0)を、100mL容フラスコに終濃度20mg/L のフェノールを添加した50mLのHoagland培地に添加して振とう培養(25℃、150rpm)を行い、培養開始から1.5、3、4.5、6、9、12、24各時間後に培地を500μL回収し、菌体を遠心分離(13000rpm、15分、4℃)で除去した上清を上記と同じ条件でHPLCにかけ、培地中のフェノール残存量の経時変化を測定した。
この実験を通じて、培地に添加したフェノールの80%以上を分解することのできる細菌として5菌株が得られた。これらはいずれも、20mg/Lのフェノールを数時間で分解するような高い分解活性を有した。
1−2)−2.ナフタレン分解活性評価
終濃度30mg/Lのナフタレンを添加したBM液体培地10mL/遠心管に各微生物を植菌後、振とう培養(25℃、150rpm、7日間)を行った後、培地に10mLの抽出溶媒(ヘキサン:アセトン=1:1)を添加して撹拌し、遠心分離(2810×g、30分、4℃)した。1mLのヘキサン層をGC用ガラスバイアルチューブに移し、ナフタレン残存量を表5に示す条件でガスクロマトグラフィー(以下、GC−FID) を用いて測定した。ナフタレンと内部標準物質であるビフェニルのクロマトグラムピーク面積の値から、残存率、および分解率を算出した。
上記実験でナフタレン分解能が高いと判断された細菌について、上記実験と同様の条件で再度培養し、培地中のナフタレン残存量の経時変化を測定した。
この実験を通じて、ナフタレン分解能が高いと判断された細菌として、6菌株が得られた。
1−2)−3.スタンダードガスオイル分解活性評価
スタンダードガスオイル5000mg/Lを添加した10mLのBM培地/50mL容遠沈管に各微生物を植菌後、振とう培養 (25℃、150rpm、7日間)を行った後、上記2)と同様にして、培地からの残存原油又は残存スタンダードガスオイルの抽出操作及びGC−FIDを用いた測定、さらに栽培用による培地中の残存原油量等の経時変化を測定した。
この実験を通じて、スタンダードガスオイル分解能が高いと判断された細菌として、5菌株が得られた。
1−3)分離菌株の同定
1−2)で得られたフェノール分解能を有する5菌株、ナフタレン分解能を有する6菌株、スタンダードガスオイル分解能を有する5菌株について、16S rRNA後半部分約600塩基を解析することで各菌株の属同定を行った。
L固形培地に生育させた各菌株のコロニーを10μLの蒸留水を加えたポリプロピレンチューブに移して懸濁した後、99℃で15分間加熱して溶菌させた。この溶液を鋳型とし、表5に示す反応液組成において、94℃で1分の後、[94℃、30秒−52℃、2分−74℃、30秒]×30サイクルのPCR反応を行った。
アガロースゲル電気泳動法によって回収した増幅されたDNAをQiaquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社)を用いて精製した。この生成されたDNAを鋳型とし、表6に示すような反応駅組成において、BigDye(登録商標)Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems社)を用い、96℃で10分の後、[50℃、5分−60℃、4分]×25サイクルのシーケンスPCR反応を行った。
エタノール沈殿法で回収、精製したシーケンスPCR反応産物を、Hi−Di−Formamide(Applied Biosystems社)12μLに溶解し、ABI3100(ABI PRISM(登録商標)3100−Genetic Analyzer、Applied Biosystems社)を用いてシーケンスを決定し、Blast Search(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/blast.cgi)を用いて相同性の高い遺伝子の検索を行った。遺伝子解析は、GENETYX−WIN Ver.5.1(ソフトウエア開発株式会社)およびMEGA(Molecular Evolutionary Genetics Analysis社)を用いて行った。この実験の結果を表7に示す。
<実施例2>単離細菌のバイオフィルム形成能の測定
5mLの液体L培地に表7に示した各菌株を植菌し、濁度OD600 =0.3になるまで前培養した。フェノール分解性5菌株は、終濃度10mg/Lのフェノールを含むL培地、Hoagland培地、BM培地を、ナフタレン分解性6菌株は終濃度30mg/Lのナフタレンを含むL培地、Hoagland培地、BM培地それぞれ300μLを遠心チューブに用意して、前培養液を植菌し、25℃の温室内で静置培養した。培養開始から24時間後及び48時間後に遠心チューブ内の培養液を取り除き、350μL蒸留水1回洗浄した後、0.1%クリスタルバイオレット溶液400μLをチューブに加えて20分間染色した。染色液を取り除き、450μLの蒸留水で1回洗浄した後、自然乾燥させた。さらに500μLの95%エタノールを添加し、60分間抽出をおこなった。抽出溶液を95%エタノール溶液で適度に希釈し、590nmにおける吸光度の測定値をバイオフィルム活性とした。
その結果、図1に示されるように、フェノール分解能を有するRhodococcus sp. P22株(以下、R−P22株と表す)及びAcinetobacter sp.P23株(A−P23株と表す)が、特にL培地において24時間培養で高いバイオフィルム形成量を示した。また48時間後のバイオフィルム形成量は減少した(図2)。
また、ナフタレン分解能を有する菌株についてもフィルム形成は確認されたが、フェノール分解能を有する菌株と比較すると、フィルム形成量は少なかった。ナフタレン分解能を有する菌株のフィルム形成能(24時間培養後)を図3に示す。
<実施例3>単離細菌のアオウキクサへの付着評価
1)アオウキクサ付着細菌数の計測
北海道大学付属植物園幽庭湖から採取し、蒸留水で洗浄したアオウキクサ(Lemna perpusilla)数十株を、0.5%NaClO及び0.05%TritonX100を含む水溶液に入れて10分間緩やかに撹拌した後、同溶液を捨て、さらに滅菌済みの蒸留水を用いて1分間の撹拌を2回行い、アオウキクサを滅菌した。
表7に示した菌株からPseudomonas.sp.P2株(以下、P−P2株と表す)、Rhodococcus sp. P11c株(以下、R−P11c株と表す)及びA−P23株を選択し、それぞれL固形培地に生育させて形成させたコロニーを5mLの液体L培地に植菌し、振とう培養(25℃、170rpm、24時間)を行い、前培養液を調製した。100mL容のフラスコへ滅菌した50mLのHoagland培地、BM培地、L培地をそれぞれ用意し、滅菌済みのアオウキクサを入れ、さらにOD600=0.3に調製した前培養液を1%植菌し、25℃で48時間静置培養を行った。
培養後、アオウキクサを回収して500μLの5mg/Lトリポリリン酸ナトリウム溶液を加えたチューブへ入れた後、同溶液を捨て、再び500μLの同溶液を新たに加えてアオウキクサの表面を洗浄した。さらに500μLの同溶液を加え、超音波処理及び攪拌処理を行って、アオウキクサへ付着した細菌を溶液中に遊離させた。この溶液をL培地で希釈し、50μLをL固形培地へ塗布し、形成されたコロニー数を計測した。また、培養後の培養液の浮遊細胞濁度(OD600)を測定した。
その結果、培養開始から48時間後に、P−P2株とA−P23株において、アオウキクサと共に培養することで培養液の浮遊細胞濁度が1%ほどに減少した(A−P23株について、図4)。
一方、R−P11c株では、浮遊細胞濁度の変化は確認されなかった。また、アオウキクサへの付着菌数は、3種類の微生物の何れもアオウキクサ1株あたり1×109 〜 1×1010 CFUsの付着細菌数が確認された。またアオウキクサへの付着菌数は、24時間後に比べて48時間後にはおよそ2倍に増えていた。
また、培養終了後に回収したアオウキクサの水分をふき取った後に、Propidium iodide(Pi、緑)又はSyto9(S9、赤)各250μLを含む蛍光色素混合液0.5mLに入れて、5分間、蛍光染色した。Pi及びS9を用いた蛍光染色により、植物体表面はPi及びS9を共に取り込むことでオレンジに染色され、生菌は緑に染色され、死菌は赤に染色される。5分後、アオウキクサのみを取り出し、蛍光顕微鏡(BZ9000 KEYENCE)を用いて観察(対物レンズ×20)した。その結果(写真)を図5に示す。
滅菌したアオウキクサの表面はオレンジに染色される(図5のパネルE)が、P−P2株(図5のパネルAとC)、及びA−P23株(図5のパネルBとD)では、緑に染色された生菌がアオウキクサの表面に観察された。特に、P−P2株では、培養24時間後に比較して培養48時間後に明らかに多くの生菌がアオウキクサに付着していることが確認された。
<実施例4>A−P23株の特性解析
1)菌種同定のための生理学試験
BactoTrypticSoyBroth(TSB)を含む固形寒天培地にA−P23株を接種し、25℃で24時間培養して形成させた数十個のコロニーをまとめて、滅菌した0.85%NaCl水溶液へ懸濁した。この溶液をマクファーランド濁度0.5(OD550=0.125)に希釈して、ID 32E APIシステム(日本BIOMERIEUX社)用のキットプレートに55μLずつ注入した。さらにODC、ADH、LDC、URE、LARL、GAT及び5KGのカップにミネラルオイルを2滴ずつ滴下して、37℃、24時間インキュベーター内で静置した。24時間後、INDのカップへJames試薬を加えた。成績の読み取りは判定表に従って目視でおこなった。
その結果、P−AP23株は、インドール生産、L−Aspartic−allylamidase、Glucoseの酸性化について疑陽性であった。また、この表現型を元にAPIシステムデーターベース検索を行った結果、A−P23株はAcinetobacter baumannii と近種(99.9%の相同性)の微生物であると推察された。しかし、Acinetobacter baumanniiではフェノールの分解活性や植物根への付着活性に関する報告はなく、A−P23株はAcinetobacter属細菌の新種であると判断された。
2)分解汚染物質の特異性
固形L寒天培地上のA−P23株コロニーを5mLの液体L培地へ植菌し、振とう培養(25℃、150rpm、24時間)して、前培養液を調製した。各炭化水素(フェノール、ベンゼン、トルエン、ナフタレン、エタノール、グルコース)500mg/Lを含む5mLのBM液体培地(ナフタレンのみ、別途50mg/LのBM液体培地を追加して)用意し、前培養液を1%植菌し、振とう培養(25℃、150rpm)して、濁度上昇の有無を目視により確認した。培養開始から1日目、および5日目の濁度変化の有無を表8に示す。
表8に示される様に、A−P23株は、フェノールとナフタレンを炭素源とする培地において濁度上昇が観察されたが、グルコース、トルエン又はベンゼンを炭素源とする培地では濁度上昇は観察されなかった。
3)アオウキクサとの共培養によるフェノール分解活性
固形L寒天培地上のA−P23株コロニーを5mLの液体L培地へ植菌し、振とう培養(25℃、150rpm、24時間)して、前培養液を調製した。この前培養液から遠心操作(1900×g、5分、20℃) により集菌し、1mLのHoagland培地で菌体を洗浄後、OD600=15の懸濁液/Hoagland培地を調製した。100mL容の三角フラスコに、20mg/Lのフェノールを含む50mLのHoagland培地を用意し、実施例3の1)と同様にして用意した滅菌したアオウキクサを30株ずつ加えた。ここへ前記懸濁液1mLを添加し、人工気象器内(25℃、8500ルクス、16時間:明−8時間暗)で48時間静置培養した。48時間後、40mg/Lのフェノールを添加した新たな50mLのHoagland培地へアオウキクサ20株のみを移した。
アオウキクサを新たな培地に移した時点を0時間とし、4時間又は8時間毎にゆるく攪拌しながら培養液を250μL採取し、遠心分離(13000×g、10分、20℃)して回収した上清中のフェノール残存量を、実施例1−2)−1.と同様にしてHPLCを用いて測定した。40時間を経過したときに、採取された培地と等量の新鮮なHoagland培地を加え、さらに終濃度40mg/Lとなるように新たにフェノールを加えた。この時点を新たに0時間とし、上記と同様のサンプリング、フェノール残存量の測定、培地及びフェノールの補充を、2回繰り返した。コントロールは、滅菌処理していないアオウキクサ、及び滅菌処理をしたアオウキクサを用意した。この実験によるフェノール残存量の変化を図6に示す。
滅菌処理したアオウキクサのみの培養では、残存フェノール量は殆ど変化しなかった。一方、A−P23株の接種の有無について比較すると、1サイクル目では、A−P23株を接種した系 (図6の○)と滅菌処理をしていないアオウキクサ、すなわち常在菌を含むアオウキクサ(図6の●)ではその除去率に差は見られなかったが、2サイクル目ではフェノール除去率に差が生じ、さらに3サイクル目に入ると滅菌処理をしていないアオウキクサではフェノールの減少は殆ど認められなかった。
4)アオアウキクサの生育への影響
100mL容の三角フラスコに20mg・Lのフェノールを含むHoagland培地50mLを用意し、アオウキクサを30株ずつ加え、さらに前記3)で調製したOD600=15の懸濁液/Hoagland培地を添加して、人工気象器内(25℃、8500ルクス、16時間:明−8時間暗)で静置培養し、一定時間後、アオウキクサの増加数及び根の長さを測定した。
A−P23株を接種した培地における160時間培養後のアオウキクサの増殖は、A−P23株を摂取しなかった培地におけるアオウキクサの増殖のそれの1.7倍に達した(図7)。
また、160時間培養後のアオウキクサの根の伸長の様子を図8に示した。滅菌処理をしないアオウキクサ、A−P23株を接種した株、及びA−P23株を接種しなかった株の根の成長は、培養開始後約100時間を過ぎた頃より根の長さに変化が現れ、160時間培養後の上記3株のそれぞれの根の長さの平均値は、4.2cm、3.75cm及び6.5cmと、A−P23株の接種によって根の伸長が抑制されることが確認された。
アオウキクサから分離されたフェノール分解能を有する微生物株のバイオフィルム形成能(培養24時間)の測定結果を示すグラフである。図中、P2〜P24aはそれぞれ表7に示された微生物株を表す。 アオウキクサから分離された細菌のフェノールを含む培地におけるバイオフィルム形成能(培養48時間)の測定結果を示すグラフである。図中、P2〜P24aはそれぞれ表7に示された微生物株を表す。 アオウキクサから分離されたナフタレン分解能を有する微生物株のバイオフィルム形成能(培養24時間)の測定結果を示すグラフである。図中、N1−b〜N12−bはそれぞれ表7に示された微生物株を表す。 A−P23株をアオウキクサと共に培養したときの培養液における浮遊細胞濁度の現象を示す図(写真)である。 蛍光色素を用いてアオウキクサと共にA−P23株を培養したときの、アオウキクサの根圏に付着したA−P23株を示す蛍光顕微鏡観察結果(写真)である。 A−P23株をアオウキクサと共培養したときのフェノール分解活性の経時的変化を示すグラフである。図中、▲が滅菌したアオウキクサのみを、●が常在菌を有するアオウキクサを、○がA−P23株を接種したアオウキクサを、それぞれ示す。 フェノールを含む培地におけるアオウキクサの生育に対するA−P23株の影響を示す図(写真)である。図中、左がA−P23株を接種したアオウキクサを、右が滅菌したアオウキクサのみを示す。 フェノールを含む培地におけるアオウキクサの生育(根の伸展)に対するA−P23株の影響を示す図(写真)である。図中、aが常在菌を有するアオウキクサを、bがA−P23株を接種したアオウキクサを、cが滅菌したアオウキクサのみを示す。

Claims (13)

  1. 水酸基を有する単環式芳香族化合物又は芳香族環の開裂反応によって芳香族環上に水酸基が生じる多環式芳香族化合物に対して分解能を有する、アシネトバクター(Acinetobacter)属微生物。
  2. ベンゼンに対する分解能を示さない、請求項1に記載のアシネトバクター属微生物。
  3. 水生植物の根圏微生物である、請求項1又は2に記載のアシネトバクター属微生物。
  4. 水生植物がウキクサ科(Lemnaceae)植物である、請求項3に記載のアシネトバクター属微生物。
  5. ウキクサ科植物がアオウキクサ(Lemna perpusilla)又はウキクサ(Spirodela polyrrhiza)である、請求項4に記載のアシネトバクター属微生物。
  6. 受託番号NITE P−523として受託された、アシネトバクター属微生物。
  7. 請求項1〜6の何れかに記載のアシネトバクター属微生物を含む、水酸基を有する単環式芳香族化合物又は芳香族環の開裂反応によって芳香族環上に水酸基が生じる多環式芳香族化合物を分解処理するための生物製剤。
  8. 請求項1〜6の何れかに記載のアシネトバクター属微生物とウキクサ科(Lemnaceae)植物とからなる、水酸基を有する単環式芳香族化合物又は芳香族環の開裂反応によって芳香族環上に水酸基が生じる多環式芳香族化合物を分解処理するための生物製剤。
  9. ウキクサ科植物がアオウキクサ(Lemna perpusilla)又はウキクサ(Spirodela polyrrhiza)である、請求項8に記載のフェノール及び/又はナフタレン分解処理用生物製剤。
  10. 請求項1〜6のいずれかに記載のアシネトバクター属微生物と水酸基を有する単環式芳香族化合物若しくは芳香族環の開裂反応によって芳香族環上に水酸基が生じる多環式芳香族化合物によって汚染された水若しくは土壌とを接触させる工程a)を含む、前記汚染された水若しくは土壌に含まれる水酸基を有する単環式芳香族化合物若しくは芳香族環の開裂反応によって芳香族環上に水酸基が生じる多環式芳香族化合物を分解除去する方法。
  11. 工程a)が、前記汚染された水若しくは土壌に請求項7〜9の何れかに記載の生物製剤を投与することで、アシネトバクター属微生物と水酸基を有する単環式芳香族化合物若しくは芳香族環の開裂反応によって芳香族環上に水酸基が生じる多環式芳香族化合物によって汚染された水若しくは土壌とを接触させる工程である、請求項10に記載の方法。
  12. 請求項1〜6のいずれかに記載のアシネトバクター属微生物と水酸基を有する単環式芳香族化合物若しくは芳香族環の開裂反応によって芳香族環上に水酸基が生じる多環式芳香族化合物によって汚染された水若しくは土壌とを接触させる工程a)、及び前記汚染された水若しくは土壌に含まれる水酸基を有する単環式芳香族化合物若しくは芳香族環の開裂反応によって芳香族環上に水酸基が生じる多環式芳香族化合物を分解除去する工程b)を含む、前記汚染された水若しくは土壌の浄化方法。
  13. 工程a)が、前記汚染された水若しくは土壌に請求項7〜9の何れかに記載の生物製剤を投与することで、アシネトバクター属微生物と水酸基を有する単環式芳香族化合物若しくは芳香族環の開裂反応によって芳香族環上に水酸基が生じる多環式芳香族化合物によって汚染された水若しくは土壌とを接触させる工程である、請求項12に記載の浄化方法。
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