〔実施例〕
図2に、半導体装置の製造プロセスのフローのブロック図を示す。同図からわかるように、半導体装置の製造に当たっては、半導体装置のウエハ上への多数のパターン形成ステップ51〜55が繰り返され、その各々のパターン形成ステップは大まかに成膜56,レジスト塗布57,感光58,現像59,エッチング60,レジスト除去61及び洗浄62のステップからなる。各ステップにおいて製造条件が最適化されていないと、半導体ウエハの回路パターンが正常に形成されない。そこで、ステップ間に自動外観検査ステップ63及び64を設け、回路パターンの検査が実行される。
図3に、製造過程における半導体ウエハ上の回路パターンを走査電子顕微鏡(SEM)で観察した像の概略を示す。図3(a)は正常に加工されたパターン、図3(b)は加工不良が発生したパターンを示す。たとえば図2の成膜56のステップで異常が発生すると、パーティクルが半導体ウエハ表面に付着し、図3(b)中の孤立欠陥Aとなる。また、レジスト塗布後感光時に焦点や露光時間等の条件が最適でないと、レジストを照射する光の量や強さが多すぎる箇所や足りない箇所が発生し、図3(b)中のショートCや断線E,パターン細りや欠けDを伴う。露光時のマスクやレチクル上に欠陥があると、同様のパターンの形状異常が発生しやすい。また、エッチング量が最適化されていない場合及びエッチング途中に生成された薄膜やパーティクルが存在した場合、ショートCや突起B,孤立欠陥Aをはじめ、開口不良Gも発生する。洗浄時には、乾燥時の水切れ条件によりパターン角部その他の箇所に異常酸化を発生しやすい上、光学顕微鏡では観察しづらい薄膜残りFが発生する。したがって、ウエハ製造プロセスでは、これらの不良が発生しないよう加工条件を最適化する必要があると共に、異常発生を早期発見し、当該ステップにフィードバックする必要がある。
以上のような欠陥を検出するために、たとえば図2中の現像59のステップの後、及び、レジスト除去61のステップの後に自動外観検査が行われる。この検査に本発明による電子ビームを用いた検査装置が使用される。
図1は、本発明の実施例であり、電子ビームを用いた検査装置の構成の概略を示す縦断面図である。
図1において、電子銃1は電子源2,引出電極3及び加速電極4から構成される。電子源2と引出電極3の間には引出電圧V1が引出電源5によって印加され、これにより電子源2からは電子ビーム36が引出される。加速電極4はアース電位に維持され、そして加速電極4と電子源2との間には加速電圧Vaccが加速電源6によって印加され、したがって、電子ビーム36はこの加速電圧Vaccによって加速される。加速された電子ビームはレンズ電源7に接続された第1収束レンズ8によって、該第1収束レンズ8とレンズ電源7に接続された第2収束レンズである対物レンズ9との間にクロスオーバ10が生じるように収束され、更に対物レンズ9によって、ステージ駆動装置(図示せず)及び位置モニタ用測長装置11により水平移動可能にされた試料ステージ12上の半導体ウエハ等の試料13に収束される。すなわち、試料13は収束された電子ビームによって照射される。図示していないが、以上の構成が電子ビームを照射するのに適するように真空を保った容器中に収納される。
試料13には電子ビーム36を減速させるリターディング電圧として負の電圧が可変減速電源14によって印加され、更に、試料13と対物レンズ9との間に設けられた電極34に、試料13に対して正の方向の電圧が印加され、したがって、電子ビーム36はリターディング電圧によって減速される。通常、電極34はアース電位とされ、リターディング電圧は可変減速電源14を調整することによって任意に変えることができる。
第1収束レンズ8とクロスオーバ10との間には絞り15が配置されている。この絞り15は余分な電子を遮断し、更に電子ビーム36の開口角を決めるのに役立つ。クロスオーバ10と対物レンズ9との間には電子ビーム走査用偏向器16が配置され、これは収束された電子ビーム36で試料13を走査するように電子ビーム36を偏向させる機能をもつ。電子ビーム走査用偏向器16は対物レンズ9の中に設けられ、その偏向の支点と対物レンズ9の磁極ギャップの中心とが実質的に一致するようにしており、これにより、偏向歪を低減することができる。絞り15と電子ビーム走査用偏向器16との間には、電子ビーム36をクロスオーバ10が形成される位置において偏向してブランキングする、走査信号発生装置24に接続されたブランキング用偏向器17が配置されている。
電子ビーム36をブランキングするために、クロスオーバ10以外の点を支点として偏向すると、その偏向時に試料13上の電子ビーム照射位置が移動してしまう。また、電子ビームが平行ビームである場合にブランキングすると、ブランキングの最中に絞り15で遮断できない電子ビームが存在し、照射したくない隣接した領域をわずかながら照射してしまう。このように、ブランキングが始まって完了までの間中、本来電子ビームで照射されては好ましくない箇所が電子ビームで照射されることになる。これに対して、本発明の実施例では、ブランキング時には電子ビーム36はクロスオーバ10を支点として偏向されるので、試料13上の電子ビーム照射位置は変化せず、したがって上述したような問題は生じない。
試料13が収束された電子ビーム36で照射され、走査されると、試料13からは荷電粒子である2次電子及び反射電子が発生する。そのうちの2次電子33は50eV以下のエネルギーをもったものとして定義される。試料13を照射する電子ビーム36に対するリターディング電圧は、発生した2次電子に対しては正負の方向が逆になるため、加速電圧として作用する。したがって、発生した2次電子33はリターディング電圧によって加速されるため、方向がほぼそろい、ほぼ平行ビームとなって、試料13と対物レンズ9の間に配置されたE×B(イー・クロス・ビー)偏向器18に入射する。E×B偏向器18は2次電子33を偏向する偏向電界を発生させる偏向電界発生器を含むと共に、試料13を照射する電子ビームの前記偏向電界による偏向を打ち消す、前記偏向電界と直交する偏向磁界を発生させる偏向磁界発生器を含んでいる。この偏向磁界は2次電子33に対しては前記偏向電界と同一方向への偏向作用をもつ。したがって、E×B偏向器18によって発生される偏向電界及び偏向磁界は、試料13を照射する電子ビームに悪影響を与えることなしに、加速された2次電子33を偏向する。この偏向角をほぼ一定に維持するために、E×B偏向器18によって発生される偏向電界及び偏向磁界をリターディング電圧の変更に連動して変えることができる。E×B偏向器18は偏向電界及び偏向磁界を発生するものであるため、偏向電界及び偏向磁界発生器と呼ばれる場合もある。
E×B偏向器18の偏向電界及び偏向磁界によって偏向された2次電子33は導電性の2次電子発生体19を衝撃ないしは照射する。2次電子発生体19は対物レンズ9とE×B偏向器18の間において電子ビームの軸の周りに配置され、かつその軸に沿って電子銃1の方に向かうにしたがって末広がりの円錐形状にされている。この2次電子発生体19はCuBeOで作られていて、入射電子数の約5倍の2次電子発生能をもつ。2次電子発生体19から発生した第2の2次電子20(これは50eV以下のエネルギーをもつ)は荷電粒子検出器21によって検出され、電気信号に変換される。
試料13の高さは光学式試料高さ測定装置22によりリアルタイムで測定されて、その測定結果は補正制御回路23からレンズ電源7にフィードバックされ、それによって対物レンズ9の焦点距離がダイナミックに補正される。また、電子ビームの試料照射位置は位置モニタ用測長装置11によって検出されて、その結果が補正制御回路23から走査信号発生装置24にフィードバックされ、それによって電子ビームの試料照射位置が制御される。
試料13は図示しないステージ駆動装置によりX−Y座標のY方向に連続的に移動され、一方、電子ビーム36による試料13の走査はX方向に、走査とブランキングとが交互に繰り返し行われる。試料13が始点位置から終点位置まで連続移動し終わると、試料13が電子ビームによる走査の幅に相当する量だけX方向に移動され、続けて試料13の−Y方向への連続移動が再開され、そしてその連続移動の間中、試料13の電子ビーム36によるX方向への走査とブランキングとが交互に繰り返される。このような動作が繰り返されることによって電子ビーム36による試料13の全面の走査が完了する。試料13の電子ビーム36による照射を時間的,空間的に均一にするために、各走査の帰線期間中、電子ビーム36が試料13に向けられないように、電子ビーム36をブランキング用偏向器17を用いて偏向してブランキングする。
荷電粒子検出器21によって検出された第2の2次電子20の電気信号は、増幅器25により増幅され、A/D変換器26によりディジタル化される。そのディジタル化された信号は画像信号として記憶部27及び28に記憶される。具体的には、まず第1の検査領域の2次電子画像信号を記憶部27に記憶する。次いで隣接する同一回路パターンの第2の検査領域の2次電子画像信号を記憶部28に記憶しながら同時に記憶部27の第1の検査領域の2次電子画像信号と比較する。更に、第3の検査領域の2次電子画像信号は記憶部27に上書き記憶され、同時に記憶部28の第2の検査領域の画像と比較する。これを繰り返し、すべての検査領域について画像信号の記憶及び比較を実行する。なお、記憶部28に記憶された画像信号はモニタ32に表示される。
画像比較は演算部29及び欠陥判定部30において行われる。すなわち、記憶部27及び28に記憶された2次電子画像信号については、すでに求めてある欠陥判定条件にもとづき、演算部29で各種統計量、具体的には画像濃度値の平均,分散等の統計量,周辺画素間の差分値,ラングレス統計量,共起行列等を算出する。これらの処理が実行された後、その処理が施された画像信号は欠陥判定部30に転送され、比較されて差分信号が抽出され、すでに求めて記憶してある欠陥判定条件を参照して欠陥信号とそれ以外の信号が分離される。
また、予め標準となる回路パターンの検査領域の2次電子画像信号を記憶部27に記憶しておき、試料13の回路パターンの検査領域の2次電子画像信号を記憶部28に記憶しながら、記憶部27の記憶画像信号と比較するようにしてもよい。すなわち、まず、予め制御部31より良品の半導体装置について検査領域及び検査条件を入力し、そのデータにもとづき良品の検査を実行し、所望の領域の2次電子画像信号を記憶部27に取り込んで記憶する。次に、検査対象である試料13について同様の方法で検査し、その2次電子画像を記憶部28に取り込み、記憶する。同時に、これと記憶部27に記憶された良品の2次電子画像とを位置合わせ後比較することにより欠陥のみを検出する。この際、良品の半導体装置としては、試料13における良品の部分あるいは試料13とは別の良品ウエハあるいはチップを用いる。たとえば、試料13において、回路パターンを形成する際に下層パターンと上層パターンが合わせずれを生じて形成したような不良を発生することがある。比較対象が同一ウエハあるいは同一チップ内の回路パターン同士であると、上記のようなウエハ全体に同様に発生した不良は見落としてしまうが、予め良品の画像信号を記憶し、それと試料13の画像信号を比較することにより上記のような全体に発生した不良も検出することができるようになる。検査装置各部に対する動作命令及び条件設定は制御部31から行われる。したがって、制御部31には加速電圧,電子ビームの偏向幅(走査幅)及び偏向速度(走査速度),試料ステージの移動速度,検出器の出力信号取り込みタイミング等々の条件が予め入力されている。
次に、本発明にもとづく電子ビームを用いた検査装置と通常の走査電子顕微鏡(SEM)との違いについて、特に高速性の観点から説明する。
SEMは非常に限られた領域、たとえば数十μm角の領域、を高倍率で時間をかけて観察する装置である。半導体検査装置の一つである測長用走査電子顕微鏡(測長SEM)でさえもウエハ上の複数点のみの観察及び測定を高倍率で行うにすぎない。これに対して、本発明の対象である画像比較にもとづく電子ビーム検査装置はウエハのような試料上のどこに欠陥があるかを探し出す装置である。したがって、非常に広い領域をくまなく検査しなければならないから、検査の高速性が極めて重要である。
一般に電子ビーム画像におけるS/N比は、試料を照射する電子ビームの単位画素当たりの照射電子数の平方根の値と相関がある。試料上の検出されるべき欠陥は、画素比較による検査が望ましい程度の微小欠陥であり、検査対象のパターンの大きさから検査装置に要求される分解能を0.1μm程度としたとき、この観点からと発明者らの経験とから、画像処理前の生画像のS/N比は10以上、望ましくは18以上であることが望ましい。また、そのような微小欠陥を検出対象とするためには、画素サイズは0.1μm程度であることが望ましい。一方、ウエハの回路パターンの検査に要求される検査時間は、製造プロセスのタクトを考慮すると、おおよそ200sec/cm2程度であり、画像取得のみに要する時間は検査時間の約半分の100sec/cm2程度である。これらの値から1画素当たりの所要時間は10nsecとなり、1画素当たりの必要電子数は約6000個となり、これは電子ビーム電流が100nAであることに対応する。
以上のような事項を考慮して、本発明の実施例では、試料を照射する電子ビーム電流を100nA、画素サイズを0.1μm、試料上での電子ビームのスポットサイズを0.08μm、試料ステージ12の連続移動速度を10mm/secにそれぞれ設定し、そしてこれらの条件下で、試料の同じ領域を電子ビームで一回だけ走査することで、200sec/cm2程度の高速度検査を可能にしている。従来のSEMや測長SEMでは、試料を照射する電子ビーム電流は数pAから数百pA程度であるから、1cm2当たりの検査時間は数百時間にもなり、したがってSEMや測長SEMは実質的に実用にならない。
また、本発明の実施例では、大電流電子ビームが得られ、高速度検査ができるように電子銃1の電子源2としては拡散補給型の熱電界放出電子源(Zr/O/W)が用いられている。更に、1画素当たりの所要時間が10nsecであることはサンプリング時間が100MHzであることに相当し、したがって荷電粒子検出器21はそれに対応する高速応答速度をもつものであることが必要である。この条件を満たすように荷電粒子検出器21はPIN型半導体検出器からなっている。
導電性が小さいか又はない試料の場合は、試料は電子ビームで照射されることによって帯電する。この帯電量は電子ビームの加速電圧に依存し、そのエネルギーを低くすることによって解決される。しかし、画像比較にもとづく電子ビーム検査装置では、100nAという大電流電子ビームが用いられるため、加速電圧を低くすると、空間電荷効果により収差(電子ビームの径方向への広がり)が増大し、0.08μmという試料上での電子ビームスポットサイズを得ることが困難となり、したがって分解能の低下は避けがたい。本発明の実施例では、空間電荷効果による分解能の低下及び変化を防止して0.08μmという試料上での電子ビームスポットサイズを安定に得るために、加速電圧Vaccは10kV一定に設定されている。
画像の質は試料を照射する電子ビームのエネルギーによって大きく左右され、そしてそのエネルギーは試料の種類によって異なる。帯電しにくい試料や画像のコントラストを強調して回路パターンのエッジ部を特に知りたい試料の場合はエネルギーを大きくし、帯電しやすい試料の場合はエネルギーを小さくする。このため、検査されるべき試料の種類が変わるごとに最適な電子ビーム照射エネルギーを見つけ出して、設定する必要がある。
本発明の実施例では、試料を照射する電子ビームの最適照射エネルギーは、加速電圧Vaccを変えずに試料13に印加される負の電圧、すなわち、リターディング電圧を変えることによって設定される。このリターディング電圧は可変減速電源14によって変えることができる。
従来、試料13から発生する荷電粒子は対物レンズ9を通して検出されていた。これは既述のように、TTL(Through The Lens)方式と呼ばれる。TTL方式によれば、対物レンズを短焦点で働かせることによって分解能をあげることができる。これに対して、本発明の実施例では、試料から発生する荷電粒子は、対物レンズ9の下で、具体的には対物レンズ9と試料13の間で検出される。このため、対物レンズ9の焦点距離はTTL方式に比べて長い。すなわち、通常のTTL方式では対物レンズの焦点距離は5mm程度(短焦点)であるのに対して、本発明の実施例ではその値は40mm(長焦点)に設定されている。このため、本発明の実施例によれば、試料13の画像を取得するために行われる電子ビーム36の偏向幅、すなわち、電子ビームによる走査幅を大きくすることができる。例えば、TTL方式のビーム偏向幅は100μm程度であるのに対して、本発明の実施例ではそれは500μmに設定されている。
既述のように、試料13が始点位置から終点位置まで連続移動し終わると、試料13は該試料の電子ビーム36による走査幅に相当する量だけ移動され、再び連続移動を開始する。この移動に伴い、試料ステージが整定するまで検査を行うことができない時間が生じる。
図4に、試料ステージ12のこの整定時間の積算値(単位sec)と電子ビーム36の偏向幅(単位μm)との関係を示す。この図から、偏向幅が100μmであるか500μmであるかによって試料ステージ整定時間の積算値に極端な差があることがわかる。すなわち、本発明の実施例によれば、試料ステージ整定時間を小さくすることができ、その分だけ検査速度の向上を図ることができる。
試料13の表面は完全な平面ではないため、検査する領域が移動すると試料の高さも変化する。したがって、対物レンズ9の励磁を変化させて、常に試料13に焦点を合わせる動作が必要である。従来のTTL方式では、対物レンズを短焦点で働かせるように強励磁する必要がある。しかし、強励磁の対物レンズでは試料の高さの変化に伴い、電子ビームの水平方向の回転によって画像の回転が生じるので、その補正が必要となる。これに対して本発明の実施例では、対物レンズ9は長焦点で作動されるように弱励磁される。例えば、Iを対物レンズの電流値(単位A)、Nを対物レンズのコイルのターン数、Eを電子ビームのエネルギー(単位eV)とすると、IN/√E=9程度に励磁される。このため、試料13の高さの変化に伴い、焦点を微調整しても電子ビーム36の回転,画像の回転は実質的に無視できる程度にしか発生しないので、その補正が不要となる。
図5に、2次電子検出効率(単位%)とリターディング電圧(単位kV)との関係を示す。同図中の曲線(1)は本発明の実施例によるもの、曲線(2)はTTL方式によるものである。既述のように、リターディング電圧は試料の種類によって変えられるべきである。また、リターディング電圧は2次電子に対して加速させる作用がある。図5において、2次電子検出効率は、リターディング電圧を変えると、TTL方式の場合は大幅に変化してしまうのに対して、本発明の実施例の場合は、あまり変化しない。TTL方式の場合は、試料から発生する2次電子が対物レンズの磁場を通り収束されるが、その軸方向の収束位置はリターディング電圧を変えることによって変化する。これが2次電子検出効率を大きく変えてしまう主たる原因である。本発明の実施例では2次電子33が対物レンズ9の磁場を通らないので影響が小さい。したがって、本発明の実施例では、画像の回転が少なく、2次電子検出効率の変動が小さいので、検査画像の安定化をもたらす。
既述のように、試料13から発生する2次電子33は、リターディング電圧によって加速されてほぼ平行ビームとなるので、2次電子33の収集率が向上する。その平行化された2次電子33は、更に、E×B偏向器18の偏向電界及び偏向磁界によってある角度、たとえば5°だけ偏向されて2次電子発生体19を衝撃し、それによって更に第2の2次電子20が大量に発生する。このように、2次電子の検出効率は、平行ビームと、2次電子発生体19の衝撃によって、大幅に向上する。
試料13の電子ビーム36による走査は、試料13をY方向に連続移動しながら電子ビーム36をX方向に偏向させるが、走査とブランキングとを交互に繰り返すのでなく、走査を往復偏向させてもよい。この場合は、行きの偏向時の偏向速度(走査速度)と帰りの偏向時の偏向速度(走査速度)とが同じにされる。このようにすれば、ブランキング用偏向器17を省略することができ、ブランキング時間分の節約が可能となる。しかし、この場合、以下に注意する必要がある。試料13の、電子ビーム36の往復偏向の始めの部分と終わりの部分とが電子ビーム36によって短時間に集中して照射される。すなわち、例えば、左から右へのX方向の走査の場合、照射領域の端部では電子ビームのX方向への移動が停止し、試料13がY方向に走査幅だけ移動するのを待ってから、次の列を右から左へX方向へ移動して走査する。このY方向への移動を待っている間に、試料13の端部がY方向に照射が続けられる。このため、帯電現象の時定数が非常に短い試料の場合は、その画像を取得したとき、その画像の明るさが不均一になってしまう。そこで、電子ビーム36による照射量を試料13の全面にわたってほぼ同じにするために、電子ビーム36の偏向速度が走査の端部では走査の中心部よりも速くなるように、その偏向速度を制御するとよい。
なお、以上の説明では、画像形成のために試料13から発生した2次電子33を用いているが、電子ビーム36の照射によって試料から後方散乱された反射電子を用いても、同様の効果を得ることが出来る。