図1は本発明による回路パターン検査装置の一実施例を示す。回路パターン検査装置は、室内が真空排気される検査室2と、検査室2内に被検査基板9を搬送するための予備室(本実施例では図示せず)を備えており、この予備室は検査室2とは独立して真空排気できるように構成されている。また、回路パターン検査装置は検査室2と予備室の他に制御部6、画像処理部5を含む。検査室2内は大別して、電子光学系3、二次電子検出部7、試料室8、光学顕微鏡部4から構成されている。
電子光学系3は、電子銃10、電子線引き出し電極11、コンデンサレンズ12、ブランキング偏向器13、走査偏向器15、絞り14、対物レンズ16、反射板17、ExB(イークロスビー)偏向器18から構成されている。二次電子検出部7の二次電子検出器20は検査室2内の対物レンズ16の上方に配置されている。二次電子検出器20の出力信号は、検査室2の外に設置されたプリアンプ21で増幅され、AD変換機22によりデジタルデータとなる。試料室8は、試料台30、Xステージ31、Yステージ32、位置モニタ測長器34、被検査基板高さ測定器35から構成されている。
光学顕微鏡部4は、検査室2の室内における電子光学系3の近傍であって、互いに影響を及ぼさない程度離れた位置に設置されており、電子光学系3と光学顕微鏡部4の間の距離は既知である。そして、Xステージ31またはYステージ32が電子光学系3と光学顕微鏡部4との間の既知の距離を往復移動するようになっている。光学顕微鏡部4は光源40、光学レンズ41、CCDカメラ42により構成されている。画像処理部5は、第一画像記憶部46、第二画像記憶部47、演算部48、欠陥判定部49、欠陥自動分類装置60より構成されている。取り込まれた電子線画像あるいは光学画像はモニタ50に表示される。装置各部の動作命令および動作条件は制御部6から入力される。
制御部6には、予め電子線発生時の加速電圧、電子線偏向幅、偏向速度、二次電子検出装置の信号取り込みタイミング、試料台移動速度等の条件が、目的に応じて任意にあるいは選択して設定できるよう入力されている。制御部6は、偏向制御回路43を用いて、位置モニタ測長器34、被検査基板高さ測定器35の信号から位置や高さのずれをモニタし、その結果より補正信号を生成し、電子線が常に正しい位置に照射されるよう対物レンズ電源45や走査信号発生器44に補正信号を送る。
被検査基板9の回路パターン(レジストパターン、CONT開口パターン、エッチング後のFineパターン(拡散系)、エッチング後のFineパターン(配線系)など)の画像を取得するためには、細く絞った一次電子線19を被検査基板9に照射して、二次電子51を発生させ、該二次電子を一次電子線19の走査およびステージ31、32の移動と同期して検出する。既述のように、自動検査では検査速度が速いことが望ましい。したがって、通常のSEMのようにpAオーダーの電子線電流の電子線を低速で走査したり、多数回の走査および各々の画像の重ね合せは行わない。また、絶縁材料への帯電を抑制するためにも、電子線走査は高速で一回あるいは数回程度にする必要がある。そこで実施例では、通常SEMに比べ約100倍以上の、例えば100nAの大電流電子線を一回のみ走査することにより画像を形成し、また、走査幅は100μm、1画素は0.1μm□とし、1回の走査を1μsで行うようにしている。
電子銃10には拡散補給型の熱電界放出電子源が使用されている。この電子銃10を用いることにより、従来の例えばタングステン(W)フィラメント電子源や、冷電界放出型電子源に比べて安定した電子線電流を確保することができるため、明るさ変動の少ない電子線画像が得られる。また、この電子銃10により電子線電流を大きく設定することができるため、後述するような高速検査を実現できる。
荷電粒子線である一次電子線19は、電子銃10と引き出し電極11との間に電圧を印加することで電子銃10から引き出される。一次電子線19の加速は、電子銃10に高電圧の負の電位を印加することでなされる。これにより、一次電子線19はその電位に相当するエネルギーで試料台30の方向に進み、コンデンサレンズ12で収束され、さらに対物レンズ16により細く絞られて試料台30上のX、Yステージ31、32の上に搭載された被検査基板9(半導体ウエハ、チップあるいは液晶、マスク等微細回路パターンを有する基板)に照射される。
なお、ブランキング偏向器13には、走査信号およびブランキング信号を発生する走査信号発生器44が接続され、コンデンサレンズ12および対物レンズ16には、各々レンズ電源45が接続されている。被検査基板9には、リターディング電源36により負の電圧を印加できるようになっている。このリターディング電源36の電圧を調節することにより一次電子線を減速し、電子銃10の電位を変えずに被検査基板9への電子線照射エネルギーを最適な値に調節することができる。
被検査基板9上に一次電子線19を照射することによって発生した二次電子51は、被検査基板9に印加された負の電圧により加速される。被検査基板9の上方に、ExB偏向器18が配置され、これにより加速された二次電子51は所定の方向へ偏向される。ExB偏向器18にかける電圧と磁界の強度により、偏向量を調整することができる。また、ExB偏向器18によって生成される電磁界は、試料に印加した負の電圧に連動して可変させることができる。ExB偏向器18により偏向された二次電子51は、所定の条件で反射板17に衝突する。この反射板17は、試料に照射する電子線(以下一次電子線と呼ぶ)の偏向器のシールドパイプと一体で円錐形状をしている。この反射板17に加速された二次電子51が衝突すると、反射板17からは数V〜50eVのエネルギーを持つ第二の二次電子52が発生する。
二次電子検出部7は、真空排気された検査室2内において対物レンズ16の上方に配置された二次電子検出器20、並びに検査室2の外部に設けられたプリアンプ21、AD変換器22、光変換手段23、光伝送手段24、電気変換手段25、高圧電源26、プリアンプ駆動電源27、AD変換器駆動電源28、および逆バイアス電源29から構成されている。二次電子検出器20、プリアンプ21、AD変換器22、光変換手段23、プリアンプ駆動電源27、AD変換器駆動電源28は、高圧電源26により正の電位にフローティングしている。
反射板17に衝突して発生した第二の二次電子52は、その吸引電界により二次電子検出器20へ導かれる。二次電子検出器20は、一次電子線19が被検査基板9に照射されている間に発生した二次電子51がその後加速されて反射板17に衝突して発生した第二の二次電子52を、一次電子線19の走査のタイミングと連動して検出するように構成されている。二次電子検出器20の出力信号は、検査室2の外に設置されたプリアンプ21で増幅され、AD変換器22によりデジタル信号に変換される。AD変換器22は、二次電子検出器20が検出したアナログ信号をプリアンプ21によって増幅した後に直ちにデジタル信号に変換して、画像処理部5に伝送するように構成されている。検出したアナログ信号を検出直後にデジタル化してから伝送するので、従来よりも高速で且つSN比の高い信号を得ることができる。
X、Yステージ31、32上には被検査基板9が搭載されており、検査実行時には、X、Yステージ31、32を静止させて一次電子線19を二次元に走査する方法と、検査実行時にX、Yステージ31、32をY方向に連続して一定速度で移動されるようにして一次電子線19をX方向に直線に走査する方法とのいずれかを選択できる。ある特定の比較的小さい領域を検査する場合には前者のステージを静止させて検査する方法、比較的広い領域を検査するときは、ステージを連続的に一定速度で移動して検査する方法が有効である。
なお、一次電子線19をブランキングする必要があるときには、ブランキング偏向器13により一次電子線19が偏向されて、電子線が絞り14を通過しないように制御できる。
位置モニタ測長器34として、実施例ではレーザ干渉による測長計が用いられている。これにより、Xステージ31およびYステージ32の位置が実時間でモニタでき、制御部6に転送されるようになっている。また、Xステージ31、Yステージ32のモータの回転数等のデータも同様に各々のドライバから制御部6に転送されるように構成されており、制御部6はこれらのデータにもとづいて一次電子線19が照射されている領域や位置が正確に把握できるようになっており、必要に応じて実時間で一次電子線19の照射位置の位置ずれを補正制御回路43より補正するようになっている。また、被検査基板毎に、電子線を照射した領域を記憶できるようになっている。
被検査基板高さ測定器35は、電子ビーム以外の測定方式である光学式測定器、例えばレーザ干渉測定器や反射光の位置で変化を測定する反射光式測定器が使用されており、X、Yステージ上31、32に搭載された被検査基板9の高さを実時間で測定するように構成されている。実施例では、スリットを通過した細長い白色光を透明な窓越しに被検査基板9に照射し、反射光の位置を位置検出モニタにて検出し、位置の変動から高さの変化量を算出する方式を用いている。この被検査基板高さ測定器35の測定データにもとづいて、一次電子線19を細く絞るための対物レンズ16の焦点距離がダイナミックに補正され、常に被検査領域に焦点が合った一次電子線19を照射できるようになっている。また、被検査基板9の反りや高さ歪みを電子線照射前に予め測定しており、そのデータをもとに対物レンズ16の検査領域毎の補正条件を設定するように構成することも可能である。
画像処理部5は第一画像記憶部46と第二画像記憶部47、演算部48、欠陥判定部49、モニタ50により構成されている。二次電子検出器20で検出された被検査基板9の画像信号は、プリアンプ21で増幅され、AD変換器22でデジタル化された後に光変換手段23で光信号に変換され、光伝送手段24によって伝送され、電気変換手段25にて再び電気信号に変換された後に第一画像記憶部46あるいは第二画像記憶部47に記憶される。演算部48は、この記憶された画像信号をもう一方の記憶部の画像信号との位置合わせ、信号レベルの規格化、ノイズ信号を除去するための各種画像処理を施し、双方の画像信号を比較演算する。欠陥判定部49は、演算部48にて比較演算された差画像信号の絶対値を所定のしきい値と比較し、所定のしきい値よりも差画像信号レベルが大きい場合にその画素を欠陥候補と判定し、モニタ50にその位置や欠陥数等を表示する。
これまで回路パターン検査装置全体の構成について説明してきたが、このうちの二次電子51の検出手段について、その構成と作用をさらに詳細に説明する。一次電子線19は、固体に入射すると内部に進入しながらそれぞれの深さにおいて殻内電子を励起してエネルギーを失っていく。また、それとともに一次電子線が後方に散乱された反射電子が、やはり固体内で電子を励起させながら表面へ向かって進む現象が生ずる。これら複数の過程を経て、殻内電子は固体表面から表面障壁を超えて二次電子となり、数V〜50eVのエネルギーを持って真空中へ出る。一次電子線と固体表面のなす角度が浅いほど、一次電子線の進入距離とその位置から固体表面までの距離との比が小さくなり、二次電子が表面から放出されやすくなる。したがって、二次電子の発生は一次電子線と固体表面の角度に依存しており、二次電子発生量は試料表面の凹凸や材料を示す情報となる。
一次電子線19は被検査基板9へ照射され、被検査基板9表面にて二次電子51を発生させる。この二次電子51は、被検査基板9に印加された負の高電圧により加速される。実施例では、被検査基板9に印加する負の電圧を3.5keVに設定している。二次電子51は、加速されるとともに対物レンズ16、ExB偏向器18により収束、偏向され、反射板17に衝突する。
反射板17は、検出器への印加電圧等が一次電子線に影響を及ぼずのを防止するためのシールドパイプと一体で30度のテーパーの円錐状をなしている。材料はCuBeOで、平均で照射電子数の約5倍の二次電子を放出させる構成として二次電子増倍効果を持たせている。加速された二次電子51が衝突することにより、反射板17からは数V〜50eVのエネルギーを持つ第二の二次電子52が発生する。この第二の二次電子52は、二次電子検出器20と二次電子検出器20に取り付けた吸引電極53により生成される吸引電界により二次電子検出器20前面へと吸引される。
実施例では、被検査基板9表面で発生した二次電子51をExB偏向器18で二次電子検出器20側へ約5度偏向させる構成としているので、ExB偏向器18にかける電圧と磁界、電極間隔は、被検査基板9に印加する負の高電圧が3.5keVの場合にはそれぞれ35V、1.0×10−6T(テスラ)、10mmとしている。この電磁界は、被検査基板9に印加する負の高電圧に連動して可変設定することができる。
以上の構成および条件により、〜5度程度の小角度偏向と、被検査基板9に印加する−3.5keV の電圧による加速、対物レンズによる収束により、被検査基板9表面で発生した二次電子51がExB偏向器18を通過する際に95%以上が通過できるようにし、反射板17にてこの95%の二次電子51が約5倍の量に増倍されて第二の二次電子52が発生することができる。
二次電子検出器20としては、実施例ではPIN型半導体検出器を用いている。PIN型半導体検出器は通常のPN型半導体検出器よりも応答性が速く、逆バイアス電源により逆バイアス電圧を印加することによりサンプリング周波数が〜100MHzの高周波の二次電子信号を検出することができる。二次電子検出器20および検出回路であるプリアンプ21、AD変換器22、光変換手段23は6keVにフローティングされ、吸引電極53の吸引電圧は0Vに設定される。なお、二次電子検出器20の有効な大きさは4mm 角である。
反射板17で生じた第二の二次電子52は、吸引電界により二次電子検出器20へと吸引され、高エネルギー状態で二次電子検出器20に入射して表面層で一定のエネルギーを消失した後に電子正孔対を生成し、電流となって電気信号に変換される。実施例で用いた二次電子検出器20は、信号検出感度も非常に高く、表面層でのエネルギー損失を考慮すると、吸引電界により6keVに加速されて入射した第二の二次電子52は約1000倍に増幅された電気信号になる。
二次電子検出器20の出力電気信号はプリアンプ21によりさらに増幅され、この増幅された信号(アナログ信号)はAD変換器22によりデジタル信号に変換される。ここではAD変換器22として12ビット、クロック周波数100MHzのものを用いている。AD変換器22の出力は各ビット毎に光変換手段23、光伝送手段24、電気変換手段25によりパラレルに伝送される。この構成によれば、個々の伝送手段はAD変換器22のクロック周波数と同じ伝送速度があれば良い。
光変換手段23により光デジタル信号に変換された信号は光伝送手段24により電気変換手段25へ伝送され、ここで光デジタル信号から再び電気信号に変換され、画像処理部5へ送られる。このように光信号に変換してから伝送するのは、二次電子検出器20から光変換手段23までの構成要素が高圧電源26により正の高電位にフローティングされているからであり、本実施例の構成により、高電位レベルの信号をアースレベルの信号に変換できる。また、実施例では、光変換手段23として電気信号を光信号に変換する発光素子を、光伝送手段24として光信号を伝送する光ファイバケーブルを、電気変換手段25として光信号を電気信号に変換する受光素子を用いている。光ファイバケーブルは高絶縁材料で形成されているため、高電位レベルの信号をアース電位レベルの信号に容易に変換できる。さらに、デジタル信号を光伝送しているため、光伝送時における信号の劣化が全くない。その結果、従来の技術であるアナログ信号を光伝送する構成と比べてノイズの影響の少ない画像を得ることができる。これらの構成により、二次電子検出器20への第二の二次電子52の入射電流が100nAの場合に、サンプリング周波数100MHzという高周波の二次電子信号をSN比50以上で検出することができるようになる。
なお、実施例では、二次電子検出器20には逆バイアス電源29により逆バイアス電圧が印加されているが、逆バイアス電圧を印加しない構成にしても良い。また、本実施例では二次電子検出器20にPIN型半導体検出器を用いているが、他のタイプの半導体検出器、例えばショットキー型半導体検出器やアバランシェ型半導体検出器等を用いても良い。また、応答性、感度等の条件を満たせば、MCP(マイクロチャネルプレート)を検出器として用いることも可能である。
次に、回路パターン検査装置により被検査基板9として製造過程のパターン加工が施された半導体ウエハを検査する場合の作用について説明する。まず、図1には記載されていないが、被検査基板9の搬送手段により半導体ウエハは試料交換室へロードされる。そこでこの被検査基板9は試料ホルダに搭載され、保持固定された後に真空排気され、試料交換室がある程度の真空度に達したら検査のための検査室2に移載される。検査室2では、試料台30、X、Yステージ31、32の上に試料ホルダごと載せられ、保持固定される。
セットされた被検査基板9は、予め登録された所定の検査条件にもとづきX、Yステージ31、32のXおよびY方向の移動により光学顕微鏡部4の下の所定の第一の座標に配置され、モニタ50により被検査基板9上に形成された回路パターンの光学顕微鏡画像が観察され、位置回転補正用に予め記憶された同じ位置の同等の回路パターン画像と比較され、第一の座標の位置補正値が算出される。
次に第一の座標から一定距離離れ第一の座標と同等の回路パターンが存在する第二の座標に移動し、同様に光学顕微鏡画像が観察され、位置回転補正用に記憶された回路パターン画像と比較され、第二の座標の位置補正値および第一の座標に対する回転ずれ量が算出される。この算出された回転ずれ量は電子線の走査偏向量を補正する方法で補正できる。この光学顕微鏡画像観察においては、光学顕微鏡画像のみならず電子線画像でも観察可能な回路パターンが選定される。また、今後の位置補正のために、第一の座標、光学顕微鏡画像観察による第一の回路パターンの位置ずれ量、第二の座標、光学顕微鏡画像観察による第二の回路パターンの位置ずれ量が記憶され、制御部6に転送される。
さらに、光学顕微鏡による画像が用いられて、被検査基板9上に形成された回路パターンが観察され、被検査基板9上の回路パターンのチップの位置やチップ間の距離、あるいはメモリセルのような繰り返しパターンの繰り返しピッチ等が予め測定され、制御部6に測定値が入力される。また、被検査基板9上における被検査チップおよびチップ内の被検査領域が光学顕微鏡の画像から設定され、上記と同様に制御部6に入力される。光学顕微鏡の画像は、比較的低い倍率によって観察が可能であり、また、被検査基板9の表面が例えばシリコン酸化膜等により覆われている場合には下地まで透過して観察可能であるので、チップの配列やチップ内の回路パターンのレイアイトを簡便に観察することができ、検査領域の設定を容易にできるためである。
以上のようにして光学顕微鏡部4による所定の補正作業や検査領域設定等の準備作業が完了すると、Xステージ31およびYステージ32の移動により、被検査基板9が電子光学系3の下に移動される。被検査基板9が電子光学系3の下に配置されると、光学顕微鏡部4により実施された補正作業や検査領域の設定と同様の作業を電子線画像により実施する。この際の電子線画像の取得は、次の方法でなされる。
光学顕微鏡画像による位置合せにおいて記憶され補正された座標値にもとづき、光学顕微鏡部4で観察されたものと同じ回路パターンに、一次電子線19が走査信号発生器44によりXY方向に二次元に走査されて照射される。この電子線の二次元走査により、被観察部位から発生する二次電子51が上記の二次電子検出のための各部の構成および作用によって検出されることにより、電子線画像が取得される。既に光学顕微鏡画像により簡便な検査位置確認や位置合せおよび位置調整が実施され、且つ回転補正も予め実施されているため、光学画像に比べ分解能が高く高倍率で高精度に位置合せや位置補正、回転補正を実施することができる。
なお、一次電子線19を被検査試料9に照射すると、その箇所が帯電する。検査の際にその帯電の影響を避けるために、上記位置回転補正あるいは検査領域設定等の検査前準備作業において一次電子線19を照射する回路パターンは予め被検査領域外に存在する回路パターンを選択するか、あるいは被検査チップ以外のチップにおける同等の回路パターンを制御部6から自動的に選択できるようにしておく。これにより、検査時に上記検査前準備作業により一次電子線19を照射した影響が検査画像に及ぶことはない。
次に、検査が実施される。検査時に被検査基板9に照射する一次電子線19の条件は以下の方法にて求める。まず、一般に電子線画像におけるSN比は、試料に照射する電子線の単位画素あたりの照射電子数Sの平方根と相関がある。画像同士を比較検査する場合には、電子線画像のSN比は正常部と欠陥部の信号量を検知できる値である必要があり、最低SN比は10以上、好ましくは50以上が必要である。前述のように、電子線画像のSN比は、試料に照射する電子線の単位画素あたりの照射電子数Sの平方根と相関があるため、SN比10を得るためには単一画素あたり少なくとも100個以上の電子が必要となり、SN比50を得るためには少なくとも2500個以上の電子が照射されなくてはならない。
また、回路パターン検査方法を適用するねらいは、前述の通り光学式パターン検査方法では検出が不可能な微小の欠陥を検知することであり、すなわち微小な画素における画像間の差を認識する必要がある。これを達成するために、本実施例では画素サイズは0.1μm とされる。したがって、最低限必要とされる単一画素あたりの電子数と上記画素サイズから、必要とされる単位面積あたりの電子線照射量は0.16μC/cm2、好ましくは4μC/cm2 となる。この電子照射量を通常のSEMの電子線電流(数pAから数百pA程度)により得ようとすると、例えば20pAの電子線電流によって1cm2 の領域に0.16μC/cm2の電子を照射するには8000秒を要し、さらに4μC/cm2 の電子を照射するには20万秒を要する。しかしながら、回路パターンの検査、例えば半導体ウエハの検査において要求される検査速度は600s/cm2 以下、好ましくは300s/cm2 以下であり、これよりも検査時間が長くなると半導体製造においては検査の実用性がきわめて低くなる。したがって、これらの条件を満たし、実用的な検査時間で必要な電子線を試料に照射するためには、電子線電流を最低でも270pA(1.6μC/cm2、600s/cm2 )以上、好ましくは13nA(4μC/cm2、300s/cm2)以上に設定する必要がある。そこで、実施例の回路パターンの検査方法では、13nA以上の大電流電子線を用いて一回の走査により電子線画像を形成する。
通常のSEMに比べ約100倍以上の大電流(270nA以上、好ましくは13nA以上)の電子線を用いてただ一回の走査によって電子線画像を形成することは、検査速度の点から必要とされるだけでなく、以下に述べる理由により、下地膜あるいは表面パターンが絶縁材料により形成された回路パターンを検査するのに必要である。
絶縁材料を有する回路パターンの電子線画像を通常のSEMにより取得すると、帯電の影響により実際の形状とは異なる電子線画像が得られたり、視野倍率によりコントラストがまったく異なることが多い。これは、微弱な電子線電流(数pAから数百pA)を局所的に繰り返し走査することにより、あるいは視野倍率を変える際に焦点や非点補正のために画像形成に必要な電子線量以上に電子線を局所的に走査することにより、電子線照射量がある一ヶ所に集中して照射され、その部分の帯電が不均等になるためである。その結果、絶縁材料で形成されたパターンの電子線画像の品質は、視野により全く異なってしまうので、このような画像は電子線画像を比較する検査には適用できない。したがって、絶縁材料を有する回路パターンについても導電性の材料の回路パターンと同様に検査できるようにするために、通常のSEMに比べ約100倍以上の大電流電子線を用いて一回の走査により電子線画像が形成される。すなわち、実施例では、単位面積あたり、および単位時間あたりの試料への電子線照射量が一定であって、比較検査を行うのに足る画質を形成するために必要な電子線量により、しかも、半導体ウエハ等の検査方法の実用性に適した走査速度により、電子線を一回走査することで電子線画像が取得される。そして、上記のように通常のSEMに比べ約100倍以上の大電流電子線を用いて一回の走査により絶縁材料を有する回路パターンの電子線画像を取得したことにより、一視野内の電子線画像を構成する各種回路パターンの構成材料や構造に依存して帯電量や画像のコントラストがそれぞれ異なることおよび同種の材料の同等のパターン同士では同様な画像コントラストが得られることが確認されている。なお、大電流電子線による走査は実施例では一回のみとしているが、実質的に前述の作用が実現される範囲内で数回の場合もあり得る。
実施例では図2に示すように上記回路パターン検査装置に欠陥画像取得用として欠陥観察用SEMに用いられている低速偏向(低速走査)可能な欠陥画像取得用一次電子線偏向制御回路56、シンチレータ33及び、シンチレータ用プリアンプ58、高圧電源59を追加している。欠陥画像取得時の欠陥画像はフレーム画像メモリ55に記憶され、制御部6によりフレーム画像メモリ55の欠陥画像は欠陥自動分類装置57に転送され、欠陥自動分類装置60からは自動欠陥分類された結果が制御部6に送られる。
シンチレータ33はAl蒸着された蛍光体とライトガイドと光電子増倍管により構成されており、捕らえられた二次電子は蛍光体で光に変換され、ライトガイドを通って光電子増倍管で増幅され、電気信号になる。シンチレータ33は半導体検出と比較して周波数特性は悪いが感度が良いという利点をもつ。
43は図1に示されている偏向制御回路で、ここでは検査用一次電子線偏向制御回路と呼ぶ。検査用一次電子線高速偏向制御回路43と欠陥画像取得用一次電子線偏向制御回路56はスイッチ54により切り替えられる。スイッチ54を検査用一次電子線高速偏向制御回路43に接続することによりステージ移動に追従した高速偏向が可能となり、スイッチ54を画像取得用一次電子線偏向制御56に接続することにより低速偏向(低速走査)が可能となる。シンチレータ33は、半導体検出器20の反対側に追加しておりスイッチ54により切替える。スイッチ54を半導体検出器20に接続すると高速に信号検出可能となり、スイッチ54をシンチレータ33に接続することにより信号はフレーム画像メモリ55に送られ、フレーム画像を積算して、さらに良好な画像が取得可能となる。スイッチ54の切替えに伴い、E×B偏向器による二次電子の偏向を反転する必要がある。
以上の回路パターン検査装置の構成により、回路パターン検査時はスイッチ54で検査用一次電子線高速偏向制御43、および半導体検出器20に接続することによりステージ移動しながら一次電子線の高速偏向を実施して信号を検出することが可能となる。パターン検査終了後の欠陥画像検出時にはスイッチ54をスロースキャン可能な一次電子線偏向制御56、及びシンチレータ33に接続することにより分解能が高くS/Nが良い欠陥画像を得ることができる。
図3は従来の回路パターン検査および欠陥画像検出のための処理の流れを示す。図3を参照しながら、本発明の説明に先立ってまずその処理の流れを説明するに、検査対象とするウェハをカセットセット(ステップ301)してカセット棚番、品種ファイル、工程ファイル、ウェハ情報の検査条件入力後(ステップ302)、ウェハローディング(ステップ303)を開始する。電子線照射、偏向補正、基準座標補正、焦点パラメータ補正の電子線絶対校正処理(ステップ304)を実施後、ウェハアライメントマーク位置へステージ移動してウェハアライメント処理(ステップ305)を実施する。次に、ゲイン調整して画像の明るさを決定する信号レベルキャリブレーション(ステップ306)を実施して、回路パターン検査(ステップ307)を開始する。
検査後、得られた欠陥位置にウェハ移動して欠陥画像を取得しながら欠陥種別を分類してカテゴリ番号を決定する欠陥確認処理(ステップ308)を実施する。欠陥分類が終了後、検査結果を指定された出力先に出力(ステップ309)してウェハアンロード(ステップ310)で検査を終了する。
従来例においては、回路パターン検査時および欠陥画像取得時ともに一次電子線は高速偏向(高速走査)され、また自動欠陥分類は行われ得ない。
図4は本発明にもとづく、回路パターン検査後の欠陥画像取得時の処理の流れを示す。すなわち、これは、回路パターン検査終了後に一次電子線を低速偏向状態に切り替えて得られた欠陥画像を使用してその欠陥の特徴量を抽出し欠陥の分類を自動的に行う処理の流れを示す。これは図3の欠陥確認ステップ308で実行することができる。すなわち、まず、回路パターン検査で得られた欠陥位置データより欠陥位置へステージ移動する(ステップ501)。欠陥画像を取得して(ステップ502)、欠陥自動分類装置57へ転送する(ステップ503)。自動分類装置で得られた欠陥分類のカテゴリ番号を受信して(ステップ504)、欠陥検査データに格納する(ステップ505)。以上の動作を指定された欠陥データ数だけ繰り返すことにより自動分類処理が実現される。もちろん、以上の欠陥画像取得時は一次電子線は低速偏向状態にされる。
以上の実施例によれば、欠陥画像取得時に高分解能でかつ高S/Nの欠陥画像を得るとともに欠陥種別の分類を高効率で行うことができる。
以上の実施例では、欠陥自動分類を回路パターン検査後に行っているが、別の実施例では回路パターン検査処理と並行して欠陥自動分類を行うこともできる。この実施例は、一次電子線を高速偏向にしたままの状態で回路パターン検査と自動欠陥分類とを並行して行うもので、したがってこの場合は図2に示す実施例は用いられない。この実施例を図1および図5を参照して説明するに、まず、検査対象位置に向かってステージ移動を開始する(ステップ601)。検査対象位置で一次電子線の照射を開始して位置の異なる第1(ステップ602)、第2画像を第1、第2画像記憶部46、47に取得し記憶する(ステップ603)。演算部48により第1、第2画像の差画像より欠陥位置を抽出する(ステップ604)。欠陥位置の第1及び、第2画像より欠陥の特徴量を欠陥判定部49により抽出し、欠陥自動分類装置60により欠陥を自動分類する(ステップ605)。この欠陥分類処理を実施しながら連続してステージ移動して検査実施することにより検査終了時には、欠陥位置と共に自動分類されたカテゴリ番号が同時に制御部6に格納される(ステップ606)。検査および自動分類が終了すると、ステージ移動が停止する(ステップ607)。
この実施例を使用すると、検査後の欠陥確認処理において人手による分類作業が軽減され、また、回路パターン検査と並列して欠陥自動分類処理が実行されるから、半導体装置製造の高スループット化を図ることが可能となる。
2…検査室、3…電子光学系、4…光学顕微鏡部、5…画像処理部、6…制御部、7…二次電子検出部、8…試料室、9…被検査基板、10…電子銃、11…引き出し電極、12…コンデンサレンズ、13…ブランキング偏向器、14…絞り、15…走査偏向器、16…対物レンズ、17…反射板、18…ExB偏向器、19…一次電子線、20…二次電子検出器、21…プリアンプ、22…AD変換機、23…光変換手段、24…光伝送手段、25…電気変換手段、26…高圧電源、27…プリアンプ駆動電源、28…AD変換器駆動電源、29…逆バイアス電源、30…試料台、31…Xステージ、32…Yステージ、33…シンチレータ、34…位置モニタ測長器、35…被検査基板高さ測定器、36…リターディング電源、40…白色光源、41…光学レンズ、42…CCDカメラ、43…補正制御回路、44…走査信号発生器、45…対物レンズ電源、46…第一画像記憶部、47…第二画像記憶部、48…演算部、49…欠陥判定部、50…モニタ、53…吸引電極、54…切替えスイッチ、55…フレームメモリ、56…欠陥画像取得用一次電子偏向制御、57…欠陥自動分類装置、58…プリアンプ、59…高圧電源、60…自動欠陥分類装置。