JP2009242542A - ポリイミド前駆体、ポリイミド前駆体樹脂組成物、及び電子部品 - Google Patents

ポリイミド前駆体、ポリイミド前駆体樹脂組成物、及び電子部品 Download PDF

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Abstract

【課題】最終的に得られるポリイミドの化学構造を問わず、簡便に合成できて安価に入手可能な、保存安定性が高く、イミド化後に不純物の残留の少ないポリイミドとなるポリイミド前駆体、及びそれを用いたポリイミド前駆体樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリイミド前駆体である式(1)のポリアミック酸であり、Rは4価の有機基、Rは、2価の有機基であり、R、Rのいずれか一つが、カルボキシル基を3級のビニルエーテル化合物などとの反応により、ヘミアセタール構造とするものである。
Figure 2009242542

【選択図】なし

Description

本発明は、高い耐熱性を有する絶縁材料や、感光性ポリイミドの主成分として好適に利用することが出来る、ポリイミド前駆体、及び、それを含む樹脂組成物、並びにそれを用いた電子部品に関するものである。
高分子材料は、加工が容易、軽量などの特性から身の回りのさまざまな製品に用いられている。1955年に米国デュポン社で開発されたポリイミドは、耐熱性に優れることから航空宇宙分野などへの適用が検討されるなど、開発が進められてきた。以後、多くの研究者によって詳細な検討がなされ、耐熱性、寸法安定性、絶縁特性といった性能が有機物の中でもトップクラスの性能を示すことが明らかとなり、航空宇宙分野にとどまらず、電子部品の絶縁材料等への適用が進められた。現在では、半導体素子の中のチップコーティング膜や、フレキシブルプリント配線板の基材などとしてさかんに利用されてきている。
ポリイミドは、ジアミンと酸二無水物から合成される高分子である。ジアミンと酸二無水物を溶液中で反応させることで、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸(ポリアミック酸)となり、その後、脱水閉環反応を経てポリイミドとなる。一般に、ポリイミドは溶媒への溶解性に乏しく加工が困難なため、前駆体の状態で所望の形状にし、その後、加熱を行うことでポリイミドとする場合が多い。ポリイミド前駆体は熱や水に対し不安定な場合が多く、保存安定性がよくない。
ポリアミック酸は、一般に酸二無水物とジアミンを溶液中で混合し合成されるが、酸無水物基とアミノ基からなる付加反応は可逆反応である為、付加反応に平行して分解反応も進行している。この付加反応は発熱反応であることから、一般にポリアミック酸は低温で保管することにより、分子量の低下を抑制している。ポリアミック酸溶液が水分を含んでいる場合、ある一定の確率で逆反応により生成した酸無水物基がその水分と反応しジカルボン酸となる。ジカルボン酸になるとアミノ基との付加反応は進行せず、その部分は失活してしまう。その為、ポリアミック酸は保管とともに分子量が低下する。(非特許文献1)
この点を考慮し、分子構造に溶解性に優れた骨格を導入し、ポリイミドとした後に溶媒に溶解して成形又は塗布できるように改良が施されたポリイミドも開発されたが、これを用いる場合にはポリイミド前駆体を用いる方式に比べ耐薬品性や、基板との密着性に劣る傾向にある。そのため、目的に応じてポリイミド前駆体を用いる方式と溶媒溶解性ポリイミドを用いる方式とが使い分けられている。
さらに、ポリアミック酸のカルボキシル基をエステル化したポリイミド前駆体も提案されている。カルボキシル基をエステル化すると、逆反応が進行しない。その為、分子量の低下が見られず、保存安定性が良好となる。(特許文献1)
しかし、ポリアミック酸は1段階で合成が可能であるのに対して、特許文献1のようなポリアミック酸エステルは、ジハーフエステル化合物を合成しその後にジアミンとジシクロヘキシルカルボジイミドなどの縮合剤を用いて脱水縮合するため、2段階の反応になることと縮合剤を除去するための精製が必要であり、製造コストがかかるという課題がある。
さらには、エステル結合は熱分解しにくいため、300℃以上の熱処理によってポリイミド前駆体からポリイミドへとイミド化した後にも、エステル部位由来の分解残渣が残存してしまい、線熱膨張係数や湿度膨張係数などのポリイミドの特性を低下させてしまう原因となっていた。
特許文献2及び特許文献3では、感光性ポリイミド前駆体樹脂組成物の主成分としてポリイミド前駆体のカルボキシル基にビニルエーテル化合物を反応させた化合物が開示されている。しかし、特許文献2では、ビニルエーテル化合物の導入率(カルボキシル基のビニルエーテル化合物による保護率)が確認されておらず、カルボキシル基の保護率が管理できないという問題があった。また、特許文献3では、感光性樹脂組成物であるため、光開始剤としてアミンが含まれており、カルボキシル基濃度が5モル%以上であった。ポリイミド前駆体中に未反応のカルボキシル基が残存している場合、カルボキシル基の作用によりヘミアセタールエステル結合が経時的に分解され、樹脂組成物の保存安定性が低下するという課題がある。さらにはネガ型感光性ポリイミドとするために、ポリイミド前駆体に導入されるビニルエーテル由来の部位の50%以上に反応性基が導入されていることにより、ゲル化の進行もしやすく総じて保存安定性の悪いポリイミド前駆体となっていた。加えて、反応性基を多量に含有しているため、前駆体からポリイミドへ変化させる、加熱によるイミド化の過程で、反応性基が重合し、分解しにくくなる為、イミド化後もビニルエーテル由来の部位の分解残渣がポリイミド膜中に残存し、アウトガスの原因となったり、線熱膨張係数や吸湿性を悪化させる原因となっていた。
特開昭61−293204公報 特開2002−121382号公報 特開2001−194784号公報 Kreuz, J. A., "J Polym Sci Part A: Polym Chem", 1990, 28, p.3787.
本発明は、上記実情を鑑みて成し遂げられたものであり、その目的は、最終的に得られるポリイミドの化学構造を問わず、簡便に合成できて安価に入手可能な、イミド化後に不純物の残留の少ないポリイミドとなるポリイミド前駆体、及び、当該ポリイミド前駆体を用いた保存安定性が高いポリイミド前駆体樹脂組成物を提供するものである。
本発明に係るポリイミド前駆体は、下記式(1)で表わされる繰り返し単位を有する。
Figure 2009242542
(式(1)中、Rは、4価の有機基、Rは、2価の有機基であり、繰り返されるR同士及びR同士はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。RおよびRはそれぞれ独立に下記式(2)の構造を有する1価の有機基であり、それらは同一であっても異なっていてもよく、繰り返されるR同士及びR同士はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
Figure 2009242542
(式(2)中、R、R、Rはそれぞれ独立に水素、ハロゲン原子、または1価の有機基である。R、R、R10はそれぞれ独立に1価の有機基である。R、R、R、R、R、R10はそれぞれ互いに結合して環状構造を示していても良い。)
本発明の、上記式(1)で表わされる繰り返し単位からなるポリイミド前駆体は、ポリアミック酸のカルボキシル基が3級のビニルエーテル化合物などとの反応により、ヘミアセタールエステル構造になっている。
発明者は、上記ポリイミド前駆体のヘミアセタールエステル結合について詳細に検討を行うことにより、3級のビニルエーテル化合物によって、ヘミアセタールエステル結合を介してポリイミド前駆体へと導入された保護基は、乾燥時に用いる程度の低温の加熱によって速やかに分解するため、ポリイミド前駆体の成膜時にはポリアミック酸となり得ること、且つ、イミド化のポリイミドにその分解物の残存が極めて少ないことを見出した。
特に3級のビニルエーテル化合物より得られる芳香族ヘミアセタールエステル結合は、80℃〜100℃以下の加熱により、ポリアミック酸とビニルエーテル、または、アセトアルデヒド、アルコールなどに分解する。ヘミアセタールエステル結合の熱分解によって発生するこれらの化合物は、200℃以下に沸点を持つ常温で液体の場合が多く、加熱の過程でその大部分が揮発する。さらに、イミド化に要する250℃以上の加熱によって、ほぼ全てが膜中より放散されると推測される。その為、最終的に得られたポリイミド膜は、ビニルエーテル化合物由来の残存物はほとんどなく、純粋なポリイミド膜に非常に近いものが得られる。
また、3級のビニルエーテル化合物より得られる芳香族ヘミアセタールエステル結合は比較的分解しやすいが、本発明者は、当該へミアセタールエステル結合により保護されたポリイミド前駆体とビニルエーテル化合物を共存させることにより、ポリイミド前駆体の保存安定性が高くなることを見出した。
これにより、保存時はカルボキシル基が保護され安定な状態であるにもかかわらず、イミド化後はほぼ純粋なポリイミドとなるポリイミド前駆体を得ることができる。
この場合の3級のビニルエーテル化合物とは、ビニルエーテル化合物のビニル基と直接結合している酸素原子と直接結合を形成している炭素原子が第3級炭素原子である化合物のことを言う。
前記ポリイミド前駆体は、ポリアミック酸と3級のビニルエーテル化合物を混合し室温で撹拌するのみで得られる為、低コストで非常に簡便に入手することが可能である。芳香族カルボン酸とビニルエーテル化合物の反応は、脂肪族カルボン酸との場合と挙動が若干異なる。脂肪族カルボン酸とビニルエーテル化合物との反応は加熱や酸触媒が必要な場合が多いが、発明者は、鋭意検討の結果、芳香族カルボン酸とビニルエーテル化合物は室温で撹拌するのみで得られることを見出した。さらに、その際に、脱水条件の下、ラクトン類及びスルホキシド類のような窒素原子を含有しない溶媒を用いることでポリアミック酸とビニルエーテル化合物の反応収率を劇的に向上させることに成功し、ポリアミック酸のカルボキシル基を完全にヘミアセタールエステル結合とすることが可能となった。
上記ポリイミド前駆体の一つとしては、前記式(2)中のR、R、Rが水素である構造、すなわち、下記式(1’)で表されるポリイミド前駆体を用いることができる。
Figure 2009242542
(式(1’)中、R、R、R、R、R10は、それぞれ式(1)又は式(2)と同様である。)
本発明のポリイミド前駆体においては、前記式(2)中のR、R、R10はそれぞれ独立に、炭素数1〜15の有機基であり、活性水素を含有しないことが、保存安定性の点から好ましい。
本発明のポリイミド前駆体においては、前記式(2)中のR、R、及びR10の少なくとも1つが、エーテル結合を含有することが、基板への密着性や保存安定性、耐はじき性、分解物の揮発性の観点から好ましい。
本発明のポリイミド前駆体においては、ラクトン類及びスルホキシド類より選択される1種以上の溶媒中で、当該溶媒に完全に溶解しないポリアミック酸と、ビニルエーテル化合物とを反応させて得られたものであることが好ましい。ラクトン類及びスルホキシド類より選択される1種以上の溶媒に完全に溶解しないポリアミック酸は、通常、線膨張係数が低いポリイミドを達成するものである。このようなポリアミック酸であっても、ラクトン類及びスルホキシド類より選択される1種以上の溶媒中で適宜反応温度を調整してビニルエーテル化合物と反応を行うと、ポリアミック酸のカルボキシル基を100%へミアセタールエステル結合とした本発明のポリイミド前駆体を調製することが可能である。本発明のポリイミド前駆体はラクトン類及びスルホキシド類に良好に溶解するため、ポリアミック酸のカルボキシル基をへミアセタールエステル結合としていく過程で当初溶解していない固形分(ポリアミック酸)が徐々に溶解していく。また、このような条件で調製されたポリイミド前駆体は、合成の容易さ、構造選択の幅の広さの点から好ましい。
ラクトン類及びスルホキシド類より選択される1種以上の溶媒中で、ポリアミック酸とビニルエーテル化合物とを、反応温度が5℃〜35℃で反応させて得られたものであることが、ポリアミック酸のカルボキシル基を100%へミアセタールエステル結合としたポリイミド前駆体を得る点から好ましい。
本発明のポリイミド前駆体においては、重量平均分子量または、数平均分子量のいずれかが3000〜1000000であることが、得られるポリイミド膜の機械的特性などの観点から好ましい。重量平均分子量または、数平均分子量のいずれかが3000より小さいと本発明のポリイミド前駆体から得られるポリイミドの機械的強度が低下し、1000000より大きいと溶解性が低下し高濃度の溶液を得にくいことから好ましくない。
本発明のポリイミド前駆体においては、ポリマーの末端が、酸無水物基、または活性水素を含まない構造で末端封止されていることが保存安定性の観点から好ましい。活性水素を有するアミノ基などが末端の場合、ヘミアセタールエステル結合の分解を促進してしまい、結果的に保存安定性を低下させる恐れがある。
本発明のポリイミド前駆体においては、前記式(1)中のRが、芳香族テトラカルボン酸二無水物由来の骨格であることが、ヘミアセタール結合を形成する反応が触媒を用いずとも室温で速やかに進行するため、合成が容易であることから好ましい。
本発明の前記ポリイミド前駆体においては、前記式(1)中のRのうち33モル%以上が、下記式(3)で表わされるいずれかの構造であることが好ましい。
Figure 2009242542
上記のような構造を有するポリアミック酸は、高耐熱、低線熱膨張率を示すポリイミドの前駆体であるばかりではなく、芳香族カルボン酸を有している為、室温でビニルエーテル化合物と反応し、ヘミアセタールエステル結合を生成することが可能である。さらには、上記のような芳香族カルボン酸から得られるヘミアセタールエステル結合は、脂肪族カルボン酸から得られるヘミアセタールエステル結合よりも、より低温の加熱により熱分解する為、イミド化時の加熱の際により速やかに分解し、最終的に得られるポリイミド中のビニルエーテル由来の分解物が少ない。その為、上記式(3)で表わされる構造の含有量は前記式(1)中のRのうち100モル%に近ければ近いほど、本発明の目標を達成しやすくなるが、少なくとも前記式(1)中のRのうち33%以上含有すれば目的を達成できる。
本発明の前記ポリイミド前駆体においては、前記式(1)中のRのうち33モル%以上が下記式(4)で表わされるいずれかの構造であることが好ましい。
Figure 2009242542
(R10は2価の有機基、酸素原子、硫黄原子、又はスルホン基であり、R11及びR12は1価の有機基、又はハロゲン原子である。)
上記のような構造を有する場合、最終的に得られるポリイミドの耐熱性が向上する。その為、前記式(1)中のRのうち100モル%に近ければ近いほど、本発明の目標を達成しやすくなるが、前記式(1)中のRのうち少なくとも33%以上含有すれば目的を達成できる。
本発明に係るポリイミド前駆体樹脂組成物は、前記本発明に係るポリイミド前駆体とビニルエーテル化合物を含有する。ビニルエーテル化合物と共存させることにより、前記ポリイミド前駆体の保存安定性が向上する。
本発明のポリイミド前駆体樹脂組成物においては、酸性物質、及び、アミンを実質的に含まないことが保存安定性の点から好ましい。
本発明のポリイミド前駆体樹脂組成物においては、更に溶媒を含み、当該溶媒100重量部に対して前記ビニルエーテル化合物が55重量部以上含まれていることが、保存安定性の点から好ましい。
本発明のポリイミド前駆体樹脂組成物においては、イミド化後のガラス転移温度が260℃以上であることが耐熱性の観点から好ましい。
本発明のポリイミド前駆体樹脂組成物においては、イミド化後の線熱膨張係数が60ppm以下であることが寸法安定性の観点から好ましい。
本発明のポリイミド前駆体樹脂組成物においては、イミド化後の湿度膨張係数が40ppm以下であることが寸法安定性の観点から好ましい。
本発明のポリイミド前駆体樹脂組成物においては、保存安定性の点から、窒素原子を含有しない溶媒を含むことが好ましく、更に、窒素原子を含有する溶媒を含まないことが保存安定性の点から好ましい。
また、保存安定性を向上させる観点から、組成物中の水分含有量が1重量%以下であることが好ましい。芳香族カルボン酸から形成されるヘミアセタールエステル結合は、水の存在下室温で分解する。つまり、上記ポリイミド前駆体は、水と作用し、ポリアミック酸とアセトアルデヒドとアルコールなってしまう。さらに、アルコールはヘミアセタールエステル結合と交換反応を起こし、アセタールとカルボキシル基を生成する。つまり、水1分子が、2つのヘミアセタールエステル結合を分解することになる為、上記ポリイミド前駆体樹脂組成物の保存安定性を低下させる。
本発明のポリイミド前駆体樹脂組成物は、電子部品用絶縁材料として好適に用いられる。
本発明の電子部品は、上記本発明のポリイミド前駆体及び/又はその熱硬化物、或いは、上記本発明のポリイミド前駆体樹脂組成物及び/又はその熱硬化物により少なくとも一部分が形成されている電子部品である。
以上に述べたように、本発明のポリイミド前駆体は、イミド化後の不純物の残存が非常に少ないポリイミドを得ることができる。本発明のポリイミド前駆体は、ポリアミック酸とビニルエーテル化合物と室温で混合するのみで簡便に合成可能である。
また、ポリイミド前駆体はヘミアセタールエステル結合を有していれば、広範な構造のポリイミド前駆体を選択できる為、構造選択の幅が広い。従って、そのイミド環化物の特性を生かすことの出来る分野に広く応用される。
本発明のポリイミド前駆体においては、3級のビニルエーテル化合物を用いたため、特に反応性が良好で短時間で合成可能であり、一方で、ヘミアセタール結合の分解が塗膜の乾燥時程度の低温で行われる。
本発明に係るポリイミド前駆体は、窒素原子を含まない溶媒を選択し、ビニルエーテル化合物を含有することで、保存安定性が極めて良好となる。
従って、本発明に係るポリイミド前駆体は、窒素原子を含まない溶媒を選択し、且つ、ビニルエーテル化合物共存下の状態では、保存安定性良く保管できるにもかかわらず、ヘミアセタール結合が乾燥時の温度で分解するため、成膜後はポリアミック酸の膜を形成可能である。
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明のポリイミド前駆体は、下記式(1)で表わされる繰り返し単位を有する。
Figure 2009242542
(式(1)中、Rは、4価の有機基、Rは、2価の有機基であり、繰り返されるR同士及びR同士はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。RおよびRはそれぞれ独立に下記式(2)の構造を有する1価の有機基であり、それらは同一であっても異なっていてもよく、繰り返されるR同士及びR同士はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
Figure 2009242542
(式(2)中、R、R、Rはそれぞれ独立に水素、ハロゲン原子、または1価の有機基である。R、R、R10はそれぞれ独立に1価の有機基である。R、R、R、R、R、R10はそれぞれ互いに結合して環状構造を示していても良い。)
本発明者は、イミド化後にカルボキシル基の保護成分由来の残留物が少なく、室温における保存安定性が良好なポリイミド前駆体を得ることを目的として、加熱により容易に解裂し、カルボキシル基を生成するヘミアセタールエステル結合に着目し研究を進めたところ以下のような知見を得た。
ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸は一般に室温において加水分解されやすく分子量低下が起こることが知られている。これは、ポリアミック酸を得る重付加反応が平衡反応であることに由来するといわれている。つまり、ポリアミック酸のアミド結合は常に、酸無水物とアミノ基に解裂したり再結合したりを繰り返している。そうして系中に含まれる酸無水物基が、同じく系中の水分と反応しジカルボン酸となると、上記の平衡反応の系からはずれ、アミド結合が切れる方向へ(ポリアミック酸の分子量が小さくなる方向へ)平衡が移動するからだといわれている。
その為、同じくポリイミドの前駆体であるポリアミック酸エステルは、カルボン酸がエステル化されている為、分子鎖が切れる逆反応は進行せず、分子量の低下が見られない。
これらの知見から発明者は、ポリアミック酸のカルボキシル基をヘミアセタールエステル化することで保存安定性を付与し、一方で、イミド化に伴う加熱の過程でヘミアセタールエステル結合が熱分解しポリアミック酸へ戻り、カルボキシル基保護成分が揮発すれば、カルボキシル基保護成分由来の残存物が膜中にないポリイミドを創出できるのではないかと考え、鋭意検討し本発明にいたった。
特にヘミアセタールエステル結合は、エステル結合に比べ加熱のみで容易に熱分解することから、より低温の加熱によって結合の解裂が起こる。ポリイミド前駆体の多くは、一般に加熱に伴い140℃付近の温度から徐々にイミド化が進行して行くと言われており、イミド化率の上昇に伴い膜のガラス転位温度(Tg)が上昇していく。Tgが上昇すると、分子鎖の振動が抑制されるため、膜内部からの物質の揮発が困難になる。その点、ヘミアセタールエステル結合の場合は、場合により、室温付近から分解する為、イミド化率が低い状態で分解反応が起こる。そのため、ヘミアセタールエステル結合をポリイミド前駆体に組み合わせた場合は、分解成分の揮発性が良好であり、ポリイミド前駆体からポリイミドにする際の加熱の過程で、分解成分が揮発し、ポリイミド膜中に残存するヘミアセタールエステル結合部位由来の分解物がほとんどないという特徴を有する。
以上のことから、本発明におけるヘミアセタールエステル結合によってポリイミド前駆体主鎖と結合して後に脱離させたい部位(以後、保護部位、という)は、分子量が小さく、分解後の構造の揮発性が高いほうが分解物のポリイミド膜への残存を抑制する点から好ましい。
さらに保護部位には、実質的に架橋性(反応性)部位を含まない方がポリイミド前駆体を合成中のゲル化を抑制でき、さらには、膜中への残存物を抑制できるので好ましい。
前記ポリイミド前駆体は、ポリアミック酸とビニルエーテル化合物を混合し室温で撹拌するのみで得られる為、低コストで非常に簡便に入手することが可能である。芳香族カルボン酸とビニルエーテル化合物の反応は、脂肪族カルボン酸との場合と挙動が若干異なる。脂肪族カルボン酸とビニルエーテル化合物との反応は加熱や酸触媒が必要な場合が多いが、発明者は、鋭意検討の結果、芳香族カルボン酸とビニルエーテル化合物は室温で撹拌するのみで得られることを見出した。さらに、その際に窒素原子を含有しない溶媒を用い、更に温度を制御することで劇的にポリアミック酸とビニルエーテル化合物の反応収率を向上させることに成功し、ポリアミック酸のカルボキシル基を完全にヘミアセタールエステル結合とすることが可能となった。
本発明のポリイミド前駆体を得る際に使用するビニルエーテル化合物を3級のビニルエーテル化合物とすることにより、ヘミアセタールエステル結合を得るためのビニルエーテル化合物とカルボン酸の反応率が最も高くなり、且つ、得られたヘミアセタールエステル結合の分解温度が最も低くなる。
すなわち、使用するビニルエーテル化合物を3級のビニルエーテル化合物とすることにより、塗膜形成時の乾燥温度でもヘミアセタールエステル結合が分解する。その為、保存時や塗布時にはヘミアセタール結合により保護されていながら、塗膜乾燥後にはポリアミック酸の膜を得ることができる。このようなポリアミック酸の膜は、例えば、その上にレジスト膜を形成してパターニングを行う場合に有効である。
また、イミド化の為の加熱の過程でよりスムーズにヘミアセタールエステル結合の分解、及び、分解物の揮発が起こり、より短時間の加熱においても最終的に得られるポリイミド膜中の保護基由来の分解物の残存成分の量をより少なく、多くの場合は実質的にゼロにすることが出来る。また、短い反応時間でヘミアセタールエステル結合を有するポリイミド前駆体を得ることができる。
ポリアミック酸、特に芳香族ポリアミック酸は溶解性に乏しいため、アミド系の高極性溶媒に溶解させる場合が多い。しかし、アミド系の溶媒は揮発性に乏しく水分を吸収しやすいため、取り扱いが難しいという課題があった。高濃度のポリアミック酸溶液が水分を吸収すると、ポリアミック酸の溶解性が低下し析出する。
それに対して、本発明のポリイミド前駆体は、ヘミアセタールエステル結合によりカルボキシル基が保護されている事により、比較的極性の低い溶媒に対しても溶解する。特にエステル結合を含む溶媒に対する溶解性が向上する。そのため、高濃度の塗膜形成用溶液を調製することも可能である。
次に、本発明のポリイミド前駆体の構造について詳細に説明する。
上記式(1)において、一般に、Rは、テトラカルボン酸二無水物由来の構造であり、Rはジアミン由来の構造である。
本発明のポリイミド前駆体に適用可能な酸二無水物としては、例えば、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,6,6’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、1,4−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、2,2−ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、
2,2−ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、4,4’−ビス〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、4,4’−ビス〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、2,2−ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルプロパン二無水物、2,2−ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}−1,1,1,3,3,3−プロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ぺリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
これらは単独あるいは2種以上混合して用いられる。
最終的に得られるポリイミド膜の耐熱性、線熱膨張係数や、前駆体への保護反応の反応性などの観点から好ましく用いられるテトラカルボン酸二無水物は、芳香族テトラカルボン酸二無水物であることが好ましく、特に好ましく用いられるテトラカルボン酸二無水物としてピロメリット酸二無水物、メロファン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,6,6’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物が挙げられる。
なかでも、ヘミアセタールエステル結合の安定性の観点から、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物が特に好ましい。
併用する酸二無水物としてフッ素が導入された酸二無水物や、脂環骨格を有する酸二無水物を用いると、ポリイミド前駆体の透明性が向上する。また、ピロメリット酸二無水物、メロファン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物などの剛直な酸二無水物を用いると、最終的に得られるポリイミドの線熱膨張係数が小さくなるので好ましい。なかでも、ヘミアセタールエステル結合の安定性の観点から、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、が特に好ましい。
酸二無水物として脂環骨格を有する場合、ポリイミド前駆体の透明性が向上するため、高感度のポリイミド前駆体樹脂組成物となる。さらに、ヘミアセタールエステル結合を形成する反応の際に加熱や触媒が必要となる場合があるが、安定性の比較的高いヘミアセタールエステル結合を形成することが可能であるので保存安定性を重視する場合は好ましい。
一方、芳香族のテトラカルボン酸二無水物を用いた場合、耐熱性に優れ、低線熱膨張係数を示すポリイミド前駆体となる。さらにヘミアセタールエステル結合を形成する反応が室温で進行するため、非常に容易に目的のポリイミド前駆体を得ることが出来る。さらに、より低温で分解するため、イミド化後の膜に分解物が残りにくいというメリットがある。従って、本発明のポリイミド前駆体においては、前記式(1)中のRのうち33モル%以上が、下記式(3)で表わされるいずれかの構造であることが好ましい。
Figure 2009242542
上記のような構造を有するポリイミド前駆体は、高耐熱、低線熱膨張率を示すポリイミドの前駆体であるばかりではなく、芳香族カルボン酸を有している為、室温でビニルエーテル化合物と反応し、ヘミアセタールエステル結合を生成することが可能である。さらには、上記のような芳香族カルボン酸から得られるヘミアセタールエステル結合は、脂肪族カルボン酸から得られるヘミアセタールエステル結合よりも、より低温の加熱により熱分解する為、イミド化時の加熱の際により速やかに分解し、最終的に得られるポリイミド中のビニルエーテル由来の分解物が少ない。その為、上記式(3)で表わされる構造の含有量は前記式(1)中のRのうち100モル%に近ければ近いほど、本発明の目標を達成しやすくなるが、少なくとも前記式(1)中のRのうち33%以上含有すれば目的を達成できる。中でも上記式(3)で表わされる構造の含有量は前記式(1)中のRのうち50モル%以上であることが好ましく、更に、70モル%以上であることが好ましい。
一方、本発明のポリイミド前駆体に適用可能なジアミン成分も、1種類のジアミン単独で、または2種類以上のジアミンを併用して用いることができる。用いられるジアミン成分は限定されるわけではないが、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、
3,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,1−ジ(3−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ジ(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1−(3−アミノフェニル)−1−(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゾニトリル、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ピリジン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、
ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ]ジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、6,6’−ビス(3−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ビス(4−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(4−アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノブチル)ポリジメチルシロキサン、ビス(アミノメチル)エーテル、ビス(2−アミノエチル)エーテル、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、ビス(2−アミノメトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(2−アミノエトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(3−アミノプロトキシ)エチル]エーテル、
1,2−ビス(アミノメトキシ)エタン、1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタン、
1,2−ビス[2−(アミノメトキシ)エトキシ]エタン、1,2−ビス[2−(2−アミノエトキシ)エトキシ]エタン、エチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、ジエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,2−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、1,3−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、1,4−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロへキシル)メタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、また、上記ジアミンの芳香環上水素原子の一部若しくは全てをフルオロ基、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、又はトリフルオロメトキシ基から選ばれた置換基で置換したジアミンも使用することができる。
さらに目的に応じ、架橋点となるエチニル基、ベンゾシクロブテン−4’−イル基、ビニル基、アリル基、シアノ基、イソシアネート基、及びイソプロペニル基のいずれか1種又は2種以上を、上記ジアミンの芳香環上水素原子の一部若しくは全てに置換基として導入しても使用することができる。
ジアミンは、目的の物性によって選択することができ、p−フェニレンジアミンなどの剛直なジアミンを用いれば、最終的に得られるポリイミドは低膨張率となる。剛直なジアミンとしては、同一の芳香環に2つアミノ基が結合しているジアミンとして、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、2、6−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノナフタレン、1,4−ジアミノアントラセンなどが挙げられる。
さらに、2つ以上の芳香族環が単結合により結合し、2つ以上のアミノ基がそれぞれ別々の芳香族環上に直接又は置換基の一部として結合しているジアミンが挙げられ、例えば、下記式(5)により表されるものがある。具体例としては、ベンジジン等が挙げられる。
Figure 2009242542
(aは1以上の自然数、アミノ基はベンゼン環同士の結合に対して、メタ位または、パラ位に結合する。R11及びR12は1価の有機基、又はハロゲン原子である。)
さらに、上記式(5)において、他のベンゼン環との結合に関与せず、ベンゼン環上のアミノ基が置換していない位置に置換基を有するジアミンも用いることができる。これら置換基は、1価の有機基であるがそれらは互いに結合していてもよい。
具体例としては、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル等が挙げられる。
また、最終的に得られるポリイミドを光導波路、光回路部品として用いる場合には、芳香環の置換基としてフッ素を導入すると1μm以上の波長の電磁波に対しての透過率を向上させることができる。
一方、ジアミンとして、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンなどのシロキサン骨格を有するジアミンを用いると、最終的に得られるポリイミドの弾性率が低下し、ガラス転移温度を低下させることができる。
ここで、選択されるジアミンは耐熱性の観点より芳香族ジアミンが好ましいが、目的の物性に応じてジアミンの全体の60モル%、好ましくは40モル%を超えない範囲で、脂肪族ジアミンやシロキサン系ジアミン等の芳香族以外のジアミンを用いても良い。
また、前記ポリイミド前駆体においては、前記式(1)中のRのうち33モル%以上が下記式(4)で表わされるいずれかの構造であることが好ましい。
Figure 2009242542
(R10は2価の有機基、酸素原子、硫黄原子、又はスルホン基であり、R11及びR12は1価の有機基、又はハロゲン原子である。)
上記のような構造を有する場合、最終的に得られるポリイミドの耐熱性が向上する。その為、前記式(1)中のRのうち100モル%に近ければ近いほど、本発明の目標を達成しやすくなるが、前記式(1)中のRのうち少なくとも33%以上含有すれば目的を達成できる。中でも上記式(4)で表わされる構造の含有量は前記式(1)中のRのうち50モル%以上であることが好ましく、更に、70モル%以上であることが好ましい。
また、式(1)中、RおよびRはそれぞれ独立に下記式(2)の構造を有する1価の有機基であり、それらは同一であっても異なっていてもよく、繰り返されるR同士及びR同士はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
Figure 2009242542
(式(2)中、R、R、Rはそれぞれ独立に水素、ハロゲン原子、または1価の有機基である。R、R、R10はそれぞれ独立に1価の有機基である。R、R、R、R、R、R10はそれぞれ互いに結合して環状構造を示していても良い。)
上記式(2)で表されるヘミアセタールエステル結合は、例えば以下のようなカルボキシル基とビニルエーテル化合物との反応により得ることができる。
Figure 2009242542
つまり、ヘミアセタールエステル結合をカルボン酸とビニルエーテル化合物の付加反応により形成する場合、上記式(2)のR〜R10はビニルエーテル化合物の構造によって決まる。上記式(2)で表される構造は、ジヒドロピラン類のような環状ビニルエーテル化合物を用いて形成しても良いが、この場合には反応性が悪く、反応時間が長くなるため、非環状ビニルエーテル化合物を用いて形成することが好ましい。
、R、Rは、水素、または、置換または無置換のアルキル基、アリル基、アリール基が好ましい。特に原料入手の容易性から、水素であることが好ましい。また、1級、2級、3級のアミノ基や、水酸基などの活性水素を有する置換基は含まないことが好ましい。
この場合の活性水素を有する置換基とは、ヘミアセタールエステル結合と交換反応可能な置換基を示し、具体的には水酸基、1級アミノ基、2級アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基などが挙げられる(化学辞典 東京化学同人)。
上記式(2)のR、R、R10はそれぞれ独立に炭素数が1以上の1価の有機基である。R、R、R10としては、炭化水素骨格を有する基が例示される。それらは、ヘテロ原子等の炭化水素以外の結合や置換基を含んでいてもよいし、そのようなヘテロ原子の部分が芳香環に組み込まれて複素環となっていても良い。炭化水素骨格を有する基としては、例えば、直鎖又は分岐鎖或いは脂環式の飽和又は不飽和炭化水素基、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和ハロゲン化アルキル基、又は、フェニル、ナフチル等の芳香族基、さらには、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素骨格中にエーテル結合を含有する基(例えば、−(R−O)n−R’、ここでR及びR’は置換又は無置換の飽和又は不飽和炭化水素、nは1以上の整数;−R”−(O−R”’)、ここでR”及びR”’は置換又は無置換の飽和又は不飽和炭化水素、mは1以上の整数、−(O−R”’)はR”の末端とは異なる炭素に結合している;などが挙げられる。)、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素骨格中にチオエーテル結合を含有する基、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素骨格上にハロゲン原子、シアノ基、シリル基、ニトロ基、アセチル基、アセトキシ基、スルホン基等のヘテロ原子又はヘテロ原子を含有する基が結合してなるさまざまな基が挙げられる。R、R、R10はそれぞれ互いに結合して環状構造を示していても良い。
1級、2級、3級のアミノ基や、水酸基などの活性水素を有する置換基を含むと、ヘミアセタールエステル結合が分解しやすくなることから保存安定性が低下するので、上記式(2)のR、R、R10は、活性水素を含有しないことが好ましい。
更に、上記式(2)のR、R、R10は、反応性を有するエチレン性不飽和結合などの反応性基が含まれる場合には、保存安定性が悪くなる傾向がある。さらには、イミド化後のポリイミドに分解残渣が残存しやすくなる。そのため、反応性を有する不飽和結合を含有する場合であっても少量であることが好ましく、R、R、R10のうち反応性基を有する有機基は35モル%以下であることが好ましい。すなわち、保護部位R、R及びR10の合計モル数を100モル%とした場合に、反応性基を有するR、反応性基を有するR及び反応性基を有するR10の合計が35モル%以下であることが好ましい。ヘミアセタールエステル結合が切断された後のR、R、R10の分解物をポリイミド膜中に、より残存し難くする点からは、上記式(2)のR、R、R10には反応性基は含有しないことが好ましい。
上記式(2)のR、R、及びR10の少なくとも1つは、特に基板への密着性や保存安定性、耐はじき性、分解物の揮発性の観点から、炭化水素骨格中にエーテル結合を含有することが好ましい。ポリオキシアルキレン骨格を含んでいても良い。ポリオキシアルキレン骨格を含む場合のオキシアルキレンの繰り返し数は15以下であることが分解物の揮発性の点から好ましい。
ヘミアセタールエステル結合は、加熱によりカルボン酸とその他の生成物に分解するが、その分解温度は一般に、上記式(2)中のR〜R10が結合している炭素、すなわち、酸素原子と結合する炭素が、第3級炭素原子<第2級炭素原子<第1級炭素原子の置換基の順で高くなる。すなわち分解温度は、第3級炭素原子が最も低くなる。
一方、ヘミアセタールエステル結合を得るためのビニルエーテル化合物とカルボン酸の反応は、一般に、上記式(2)中のR〜R10が結合している炭素、すなわち、酸素原子と結合する炭素が、第1級炭素原子<第2級炭素原子<第3級炭素原子の置換基の順で高い反応率を示す。
従って、本発明のように、酸素原子と結合する炭素が第3級炭素原子である3級のビニルエーテル化合物を用いて得られたポリイミド前駆体の場合、短い反応時間でヘミアセタールエステル結合を有するポリイミド前駆体を得ることができる。
また、塗膜形成時の乾燥温度でもヘミアセタールエステル結合が分解するため、保存及び塗布時にはヘミアセタール結合により保護されていながら、特別な操作をしなくても製膜後はポリアミック酸となった膜を得ることができる。
また、イミド化の為の加熱の過程でよりスムーズにヘミアセタールエステル結合の分解、及び、分解物の揮発が起こり、より短時間の加熱においても最終的に得られるポリイミド膜中の保護基由来の分解物の残存成分の量をより少なく、多くの場合は実質的にゼロにすることが出来る。
前記式(2)中のR、R、R10はそれぞれ独立に、炭素数が1〜15であることが、分解物の揮発性の点から好ましく、炭素数が1〜10であることが更に好ましい。
前記式(2)中のR、R、R10の構造において特に好ましい組み合わせは、活性水素を含まない構造であって、且つ、直鎖または分岐または環状の飽和炭化水素骨格中にエーテル結合を1つ以上含む構造である。
前記式(2)中のR、R、R10としては特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、エチニル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル基、ブトキシエチル基、シクロヘキシロキシエチル基、メトキシプロピル基、エトキシプロピル基、プロポキシプロピル基、ブトキシプロピル基、シクロヘキシロキシプロピル基、等が挙げられる。
本発明のポリイミド前駆体を製造する方法としては、例えば、酸二無水物とジアミンから前駆体であるポリアミド酸を合成し、それにビニルエーテル化合物を反応させる方法などが挙げられるがこれに限定されない。テトラカルボン酸に2等量のビニルエーテル化合物を反応させ、ジカルボキシジヘミアセタールエステル化合物をとした後、ジアミンと脱水縮合反応によってポリマー化しても良い。
上記ポリイミド前駆体は、一般に、ポリアミック酸とビニルエーテル化合物から得られるが、発明者の検討結果によれば、その反応は、アミノ基や水酸基などの活性水素を有している溶媒中や、アミノ基や水酸基などの活性水素を有している化合物と共存下ではヘミアセタールエステル結合を得る収率が低い傾向があった。また、骨格中にニトロ基以外の形で窒素原子を含有する溶媒を用いた際も収率が低くなったことから、骨格中にニトロ基以外の形で窒素原子を含有する溶媒を含む場合も好ましくない。
一般に低線熱膨張係数を示すポリイミドは、芳香族ポリイミドである場合が多く、その前駆体である芳香族ポリアミック酸は、N−メチルピロリドンやジメチルアセトアミドのような窒素原子を含有するアミド系溶媒には高い溶解度を示すが、非アミド系溶媒のような窒素原子を含有しない溶媒には溶解性が低い場合が多い。特に、低膨張性を実現できる、Rが上記式(3)で表わされるいずれかの構造であり、且つRが上記式(5)で表わされるいずれかの構造であるような芳香族ポリアミック酸は、ラクトン類やスルホキシド類のような非アミド系溶媒には完全に溶解しない。ここで完全に溶解しないとは、反応時や塗膜形成時に必要な濃度、例えば23℃で溶媒中16.5重量%の濃度でポリアミック酸が完全に溶解できない状態をいう。
上述した特許文献3のような従来技術では、芳香族ポリアミック酸を溶媒中に溶解させた状態でビニルエーテル化合物と反応を行うようにしている。そのため従来は、低膨張性を実現できる、Rが上記式(3)で表わされるいずれかの構造であり且つRが上記式(5)で表わされるいずれかの構造であるような芳香族ポリアミック酸由来の100%ヘミアセタールエステル化したポリイミド前駆体を合成できていない。
しかし、本発明に用いられるヘミアセタールエステル結合を有するポリイミド前駆体は、カルボキシル基がヘミアセタールエステル化されることによって、溶解性が向上し非アミド系溶媒のような窒素原子を含有しない溶媒に対しても高い溶解性を示す。
その為、上記のポリアミック酸とビニルエーテル化合物との反応は窒素原子を含有しない溶媒で行うと反応効率が良好となるが、その場合は、当初、上述のように線膨張係数が低いポリイミドを達成するポリアミック酸は完全には溶けていない場合が多い。しかし、本発明においては、ポリアミック酸の反応の進行とともにポリイミド前駆体が反応溶媒に溶解して行き、最終的には完全に溶解するようにして調製した。
ポリアミック酸のカルボキシル基を100%へミアセタールエステル結合とした本発明のポリイミド前駆体を調製することが可能な点から、ポリアミック酸とビニルエーテルとの反応溶媒としては、窒素原子を含有しない溶媒の中でもラクトン類、スルホキシド類を用いることが好ましい。ジメチルスルホキシドは、高い溶解性を有する一方で、酸化され難く変異原性も確認されており、溶媒としての安定性や安全性に課題があるため、中でもラクトン類が特に好ましい。ラクトン類としては、γ−ブチロラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン、γ−ヘキサノラクトン、δ−ヘキサノラクトンなどが挙げられ、スルホキシド類としては、ジメチルスルホキシド、メチルエチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどが挙げられる。
また、ポリアミック酸のカルボキシル基を100%へミアセタールエステル結合とした本発明のポリイミド前駆体を調製することが可能な点から、ポリアミック酸とビニルエーテルの反応時の温度としては、5〜35℃が好ましく、更に10〜30℃が好ましい。これよりも反応温度が高い場合には、ヘミアセタールエステル結合の分解等の副反応が進行することから、100%へミアセタールエステル結合としたポリイミド前駆体を得られない傾向がある。
なお、本発明に用いられるポリイミド前駆体は、低沸点の非アミド系溶媒に対して高い溶解性を示すので、塗布などのプロセスにおいて操作性が向上する。
3級のビニルエーテル化合物は、所望のへミアセタールエステル結合の構造に合わせて適宜選択して用いられる。例えば具体的には、tert−ブチルビニルエーテル、tert−アミルビニルエーテル、等の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素骨格を有するビニルエーテル化合物;1−メチルシクロヘキシルビニルエーテル、1−アダマンチルビニルエーテル等の脂環式飽和炭化水素骨格を含有するビニルエーテル化合物;1,1−ジメチル−2−メトキシエチルビニルエーテル等の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素骨格中にエーテル結合を含有するビニルエーテル類などが挙げられる。
本発明のポリイミド前駆体は、塗膜を形成する前の保存安定性の点からは、上記式(1)で表わされる繰り返し単位を100モル%含有することが好ましい。上記式(1)で表わされる繰り返し単位の構造のうち、ヘミアセタールエステル結合が切れてカルボキシル酸を有する構造となっている繰り返し単位が含まれていると、存在するカルボキシル酸の触媒効果でヘミアセタールエステル結合の分解が進行しやすい。
しかしながら、上記式(1)で表わされる繰り返し単位の構造のうち、ヘミアセタールエステル結合が切れてカルボキシル基を有する構造となっている繰り返し単位が若干含まれている状態であっても、不純物の残留が少ないポリイミドが得られる。従って、本発明のポリイミド前駆体は、上記式(1)で表わされる繰り返し単位を70モル%以上含有することが好ましく、更に90モル%以上、より更に98モル%以上含有することが望ましい。
また、本発明のポリイミド前駆体は、活性水素を含まなければ、ポリイミド前駆体、及び、または、ポリベンゾオキサゾール前駆体などの高分子の繰り返し単位と上記式(1)で示される繰り返し単位が混在していてもよい。しかし、本発明の目的を達成するためには、上記式(1)の繰り返し単位は、ポリイミド前駆体の全繰り返し単位中に少なくとも50モル%以上含むことが好ましく、より更に70モル%以上、特に90モル%以上含むことが好ましい。
活性水素を含まないポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール前駆体、その他高分子化合物の例としては、ポリアミド酸エステルの繰り返し単位、ポリアミドフェノールエステルの繰り返し単位、ポリアミドフェノールエーテルの繰り返し単位、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレン、ポリエステルなどが挙げられる。
また、本発明のポリイミド前駆体においては、ポリマーの末端が、酸無水物基、または活性水素を含まない構造で末端封止されていることが、保存安定性の点から好ましい。
酸無水物基、または活性水素を含まない構造で末端封止する方法としては、例えば、アミン末端のポリイミド前駆体の場合は、無水酢酸でアミド化する方法や、フタル酸無水物や2,3−ナフタル酸無水物などの酸無水物で末端をアミック酸とする方法などが挙げられる。
末端が、芳香族カルボン酸であれば活性水素を持っていても、室温でビニルエーテルと反応しヘミアセタールエステル化されるので、この場合は、保存安定性を低下させない。
ポリイミド前駆体の重量平均分子量、または数平均分子量は、その用途にもよるが、3,000〜1,000,000の範囲であることが好ましく、5,000〜700,000の範囲であることがさらに好ましく、7,000〜100,000の範囲であることがさらに好ましい。重量平均分子量または数平均分子量が3,000未満であると、塗膜又はフィルムとした場合に十分な強度が得られにくい。また、加熱処理等を施しポリイミドとした際の膜の強度も低くなる。一方、重量平均分子量または数平均分子量が1,000,000を超えると粘度が上昇し、溶解性も落ちてくるため、表面が平滑で膜厚が均一な塗膜又はフィルムが得られにくい。
ここで用いている分子量とは、公知の手法により得られる分子量であり、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の値が例示され、数平均分子量は1H−NMRスペクトルから求めた末端部の繰り返し単位由来のピークと非末端部の繰り返し単位由来のピークの積分比から求める方法などが例示される。
次に、本発明に係るポリイミド前駆体樹脂組成物は、前記本発明に係るポリイミド前駆体と、ビニルエーテル化合物とを含有するものである。
本発明のポリイミド前駆体樹脂組成物は、ビニルエーテル化合物を含有することから、保存安定性が飛躍的に向上する。
上記ポリイミド前駆体を単離すると、保存の過程で時間の経過とともに空気中の水分等の作用により加水分解され、徐々にポリアミック酸へ戻り得る。特に、比較的安定な脂肪族カルボン酸とビニルエーテル化合物からなる脂肪族ヘミアセタールエステル結合と異なり、芳香族カルボン酸とビニルエーテル化合物の反応などから得られる芳香族ヘミアセタールエステル結合は、両者を混合するだけで室温で反応が進行する反面、単体で存在すると空気中の水分などと反応し加水分解される場合が多い。
しかし、ヘミアセタールエステル結合を有するポリイミド前駆体はビニルエーテル化合物と共存させることで、加水分解によって生成したカルボン酸が、再度、ヘミアセタールエステル化される。すなわち、合成直後のヘミアセタールエステル結合を有するポリイミド前駆体と同様、実質的に全てのカルボキシル基がヘミアセタールエステル化されたポリイミド前駆体となる。その為、上記ポリイミド前駆体はビニルエーテル化合物と共存させることにより樹脂組成物としての保存安定性が良好となる。
本発明に用いられるポリイミド前駆体は3級のビニルエーテル化合物を反応させて得られる構造を有するが、3級のビニルエーテル化合物はカルボン酸との反応率が1級や2級のビニルエーテル化合物に比べて高いため、本発明に用いられるポリイミド前駆体をビニルエーテル化合物と共存させると、特に高い保存安定性を示す。
さらにビニルエーテル化合物と共存していると、ポリアミック酸と同時に生成するアセトアルデヒドも酸化され難く、酢酸になり難くなる。さらに、アルコールも、他のヘミアセタールエステル結合と交換反応によってアセタール化合物となる為、結果的に樹脂組成物中に、活性水素を含まない状態となる。
従って、活性水素を含む化合物の量に対して、過剰のビニルエーテル化合物が含まれている場合には、活性水素によって形成されたポリアミック酸が、速やかにヘミアセタールエステル結合となるために、実質的に上記樹脂組成物の特性は変化しない。
このサイクルが続くことで、空気中などから樹脂組成物中に混入した水分などが消費され、ヘミアセタールエステル結合が再生されることから、良好な溶液安定性を示す。
ビニルエーテル化合物の含有量としては、溶剤を含むポリイミド前駆体樹脂組成物全体中に1重量%〜90重量%であることが好ましく5重量%〜70重量%であることがさらに好ましい。またビニルエーテル化合物は、溶媒を含む場合には、溶媒100重量部に対して、55重量部以上含まれていることがポリイミド前駆体の保存安定性の点から好ましい。溶媒を含まない場合には、ビニルエーテル化合物が溶媒の代わりになる。
ビニルエーテル化合物の量が多ければ多いほど保存安定性が良好となる一方、特に芳香族骨格を多く含んだポリイミド前駆体を用いた場合には、溶解性が低下する傾向ある。
その為、保存安定性を良好にする観点では、ポリイミド前駆体樹脂組成物中の固形分が析出しない範囲でビニルエーテル化合物の量が出来るだけ多い方がよい。
また、本発明のポリイミド前駆体の合成に用いられるビニルエーテル化合物が3級のビニルエーテル化合物であることから、ポリイミド前駆体樹脂組成物に混合されるビニルエーテル化合物は3級のビニルエーテル化合物であることが好ましい。しかしながら、1級や2級のビニルエーテル化合物を用いても良いし、1級、2級、3級のビニルエーテル化合物を適宜混合して用いても良い。
本発明に係るポリイミド前駆体樹脂組成物において、上記本発明に係るポリイミド前駆体は、別々に合成した2種以上のポリイミド前駆体を混合して用いても良い。更に、目的に応じて、1級のビニルエーテル化合物を用いて合成されたポリイミド前駆体や2級のビニルエーテル化合物を用いて合成されたポリイミド前駆体を適宜混合して用いても良い。
本発明に係るポリイミド前駆体樹脂組成物において、上記ポリイミド前駆体の固形分は、得られる膜の膜物性、特に膜強度や耐熱性の点から、溶剤を含む樹脂組成物全体中に、0.1重量%〜80重量%であることが好ましく、0.5重量%〜50重量%であることがさらに好ましい。固形分濃度が0.1重量%よりも小さい場合は、得られる塗膜の膜厚が薄く、表面に凹凸のある基板に対しての追従性が低下し、塗布むらが発生しやすい。一方、固形分濃度が80重量%より大きい場合は、粘度が大きくなり塗布途中での溶媒の揮発等による膜厚むらが発生しやすくなる。
また、本発明に係る樹脂組成物において、上記ポリイミド前駆体の固形分は、得られる膜物性、特に膜強度や耐熱性の点から、樹脂組成物中の溶剤と後述するビニルエーテル化合物を除いた固形分全体に対し、30重量%以上、50重量%以上含有することが好ましい。
本発明の樹脂組成物には、活性水素を含まないことが好ましく、活性水素を含有する化合物を含まないことが好ましい。特に、水を含まないことが好ましい。これらを含むと、ヘミアセタールエステル結合が徐々に分解し、保存安定性が低下する。
ヘミアセタールエステル結合は、水酸基などの活性水素を有する化合物と共存するとそれらとの交換反応が起こる場合がある。通常ヘミアセタール結合はヘミアセタールエステル結合よりも安定であるため、上記ポリイミド前駆体と水酸基含有化合物が共存すると、ヘミアセタールエステル結合が水酸基により消費されポリアミック酸が生成する。つまり、上記ポリイミド前駆体は水酸基など活性な水素を有する化合物と共存させると安定性が低下する。ヘミアセタールエステル結合の分解反応の速度は、その化学構造により異なり、ヘミアセタールエステル結合を生成する反応の速度が速いほど、分解の速度も速い傾向がある。
また保存安定性を良好にする観点から、樹脂組成物中の水分含有量は1重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以下であることがさらに好ましい。さらには、実質的に水分を含まないことがもっとも好ましい。なおここで”実質的に水を含まない”とは、水による保存安定性の低下が観察されないほど組成物中の水の含有量が少ないことをいう。具体的には、組成物中の含水率が0.005重量%未満程度、更に0.001重量%未満である状態をいう。
さらに、ヘミアセタールエステル結合は酸や塩基の存在下、加水分解が触媒的に進行する。その為、樹脂組成物中に酸性物質や塩基を実質的に含まないことで、100%へミアセタールエステル結合とした本発明のポリイミド前駆体の保存安定性を向上させることが出来る。樹脂組成物中に酸性物質や塩基が含まれると、ポリイミド前駆体がポリアミック酸へと分解していき、更に分子量が低下していきやすい。
なおここで”酸性物質や塩基を実質的に含まない”とは、酸性物質や塩基による保存安定性の低下が観察されないほど組成物中の酸性物質や塩基の含有量が少ないことをいう。具体的には、組成物中の酸性物質又は塩基含有率が0.005重量%未満程度、更に0.001重量%未満である状態をいう。
樹脂組成物を溶解、分散又は希釈する溶剤としては各種の汎用溶剤を用いることが出来る。また、ポリイミド前駆体を調製した時の反応溶媒をそのまま用いても良い。これらは単独でも、2種以上を混合して用いてもよい。ただ、樹脂組成物の保存安定性を高めるためには、活性水素を含まない溶媒を用いることが好ましい。さらに、同様の目的から骨格中にアミド結合など窒素原子を含有しない溶媒であることが好ましい。また、窒素原子を含有する溶媒を含まないことが好ましい。
また、ポリイミド前駆体の合成反応により得られた溶液をそのまま用い、必要に応じて他の成分を混合しても良い。
本発明の樹脂組成物に含まれるビニルエーテル化合物は、その構造の選択により、当該溶剤の代わりになる場合もある。その場合には、ポリイミド前駆体樹脂組成物を溶解、分散又は希釈するための溶剤は含まれなくても良い。
使用可能な汎用溶剤としては、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル等のエーテル類;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、前記グリコールモノエーテル類の酢酸エステル(例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート)、メトキシプロピルアセテート、エトキシプロピルアセテート、蓚酸ジメチル、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル類;塩化メチレン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエチレン、1−クロロプロパン、1−クロロブタン、1−クロロペンタン、クロロベンゼン、ブロムベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、その他の有機極性溶媒類等が挙げられ、更には、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、及び、その他の有機非極性溶媒類等も挙げられる。これらの溶媒は単独若しくは組み合わせて用いられる。
この中でも、保存安定性が高く、溶解性に優れ高濃度の溶液を調製できる観点から、ラクトン類、スルホキシド類を用いることが好ましい。
本発明に係る樹脂組成物は、ポリイミド前駆体とビニルエーテル化合物と、必要に応じて溶媒だけの単純な混合物であってもよいが、さらに適宜、界面活性剤等のその他の成分を配合して、樹脂組成物を調製してもよい。
本発明に係る樹脂組成物には、本発明の目的と効果を妨げない限り、加工特性や各種機能性を付与するために、その他に様々な有機又は無機の低分子又は高分子化合物を配合してもよい。例えば、染料、界面活性剤、レベリング剤、可塑剤、微粒子等を用いることができる。微粒子には、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン等の有機微粒子、コロイダルシリカ、カーボン、層状珪酸塩等の無機微粒子等が含まれ、それらは多孔質や中空構造であってもよい。また、その機能又は形態としては顔料、フィラー、繊維等がある。
その他の任意成分の配合割合は、任意成分の性質により適宜選択され特に限定されないが、樹脂組成物の溶剤とビニルエーテル化合物を除いた固形分全体に対し、0.1重量%〜30重量%の範囲が好ましい。0.1重量%未満だと、添加物を添加した効果が発揮されにくく、30重量%を超えると、最終的に得られる樹脂硬化物の特性が最終生成物に反映されにくい。
本発明に係る樹脂組成物は、さまざまなコーティングプロセスや成形プロセスに用いられて、膜(フィルム)や3次元的形状の成形体を作製することができる。
本発明の樹脂組成物より得られるポリイミドは、その前駆体のヘミアセタールエステル化部位の脱離性が優れるため保護成分由来の分解残渣の含有が少ない。その為、ポリイミドの耐熱性、寸法安定性、絶縁性等の本来の特性も損なわれておらず、良好である。
例えば、本発明の樹脂組成物から得られるポリイミドの窒素中で測定した5%重量減少温度は、250℃以上であることが好ましく、300℃以上であることがさらに好ましい。特に、はんだリフローの工程を通るような電子部品等の用途に用いる場合は、5%重量減少温度が300℃以下であると、はんだリフローの工程で発生した分解ガスにより気泡等の不具合が発生する恐れがある。
ここで、5%重量減少温度とは、熱重量分析装置を用いて重量減少を測定した時に、サンプルの重量が初期重量から5%減少した時点(換言すればサンプル重量が初期の95%となった時点)の温度である。同様に10%重量減少温度とはサンプル重量が初期重量から10%減少した時点の温度である。
本発明の樹脂組成物から得られるポリイミドのガラス転移温度は、耐熱性の観点から260℃以上であることが好ましい。半田リフローの工程がある電子部材などでは、重要である。光導波路のように熱成形プロセスが考えられる用途においては、120℃〜400℃程度のガラス転移温度を示すことが好ましく、200℃〜370℃程度のガラス転移温度を示すことがさらに好ましい。
ここで本発明におけるガラス転移温度は、樹脂組成物から得られるポリイミドをフィルム形状にすることが出来る場合には、動的粘弾性測定によって、tanδ(tanδ=損失弾性率(E’’)/貯蔵弾性率(E’))のピーク温度から求められる。動的粘弾性測定としては、例えば、粘弾性測定装置Solid Analyzer RSA II(Rheometric Scientific社製)によって、周波数1Hz、昇温速度5℃/minにより行うことができる。樹脂組成物から得られるポリイミドをフィルム形状にできない場合には、示差熱分析装置(DSC)のベースラインの変曲点の温度で判断する。
本発明の樹脂組成物から得られるポリイミドは寸法安定性の観点から、線熱膨張係数は60ppm以下が好ましく、0ppm〜40ppmの範囲がさらに好ましい。半導体素子等の製造プロセスにおいてシリコンウェハ上に膜を形成する場合には、密着性、基板のそりの観点から0ppm〜25ppmの範囲がさらに好ましい。ここで、本発明における線熱膨張係数とは、本発明で得られるポリイミド前駆体樹脂組成物から得られるポリイミドのフィルムの熱機械的分析装置(TMA)によって求めることができる。熱機械的分析装置(例えばThermo Plus TMA8310(リガク社製)によって、昇温速度を10℃/min、評価サンプルの断面積当たりの加重が同じになるように引張り加重を1g/25000μm2として得られる。
本発明の樹脂組成物から得られるポリイミドは、同様に寸法安定性の観点から、湿度膨張係数は40ppm以下が好ましく、20ppm以下がさらに好ましい。理想的には10ppm〜0ppmが好ましい。
ここで、本発明における湿度膨張係数とは、本発明で得られる樹脂組成物から得られるポリイミドのフィルムの湿度可変機械的分析装置(S−TMA)によって求めることができる。湿度可変機械的分析装置(例えばThermo Plus TMA8310改(リガク社製))によって、温度を25℃で一定とし、湿度を20%RHの環境下でサンプルが安定となった状態で、湿度を50%Rhに変化させ、それが安定となった際のサンプル長の変化を、湿度の変化(この場合50−20の30)で割り、その値を、サンプル長で割った値が湿度膨張係数である。評価サンプルの断面積当たりの加重が同じになるように引張り加重を1g/25000μm2として得られる。
本発明に係る樹脂組成物からなる膜又は成形体は、公知の方法により作製することができる。例えば膜は、本発明の樹脂組成物を基板上に塗布し、乾燥させて得ることができる。このとき、基板とはポリイミド膜を形成したい対象物であり、銅やステンレス等の金属や、シリコンや金属酸化物、金属窒化物などの無機物、ポリイミドや、ポリベンゾオキサゾールなどの有機物などが例示されるが、本発明においては基板によって密着性等が若干変化するものの、パターン形成や得られる膜の特性については、本質的には変化しないので基板は特に限定されない。
塗布方法についても、スピンコート法、ダイコート法、ディップコート法などの手法が挙げられるが、特に限定されず、公知の手法を用いることができる。本発明のパターン形成方法は、どの塗布方法で得られた膜においても用いることが出来る。
乾燥は、ホットプレートやオーブンなど、適宜、公知の加熱手法を用いることが出来る。
本発明のポリイミド前駆体は、公知の手法によってポリイミドとすることが可能である。通常は、オーブンやホットプレートなどにより加熱することでイミド化を行う場合が多い。
一般にポリアミック酸は150℃程度から徐々にイミド化が進行し、200℃以上の温度においてほぼイミド化が完了すると言われている。ただし、より高度な信頼性を求める場合には、より完全にイミド化を進行させることが必要であり、その場合は、最終的に得られるポリイミド膜のTg以上の温度での加熱が理想的である。しかし、一般には300℃〜400℃の温度で加熱すれば十分実用的な信頼性を示すポリイミド膜が得られる。
本発明の樹脂組成物の場合、ヘミアセタールエステル結合が、150℃程度でほぼ完全に分解することから、150℃以下の温度での加熱時間を長くすることで、保護基由来の成分のより完全な脱離を促進することが出来る。加熱時間は長ければ長いほどポリイミド中の残存物を減らす観点からは好ましいが、生産性とのバランスをとる上で40℃以上150℃以下の範囲の温度で通算1分〜180分で加熱されることが好ましく、5分〜120分の加熱が行われることが、より好ましい。
さらにその後、イミド化を完全に進行させるために、目的に応じて180℃〜450℃、好ましくは200℃〜400℃の範囲で加熱を行う。好ましくは、加熱温度の最高温度が251℃以上400℃以下である。
特に100℃以上の温度を加える際には、ポリイミドや基板の酸化を防止するため窒素やアルゴンなどの不活性雰囲気下で行うことが好ましい。さらに、ポリイミド中への残存物を減らすためには、減圧下で行うことが好ましい。
以上に述べたように、本発明に係るポリイミド前駆体は、簡便に安価な原料で合成することが可能であるヘミアセタールエステル結合を有することで、保存安定性が高い。加えて、ヘミアセタールエステル結合を有するポリイミド前駆体は、ヘミアセタールエステル結合が容易に分解し且つヘミアセタールエステル結合の分解によって発生したポリアミック酸以外の分解物の揮発性が高いことにより、最終的に得られるポリイミド膜中への残存物がほとんどない。さらには、ヘミアセタールエステル化は種々の骨格へ適用可能であるので、用いるポリイミド前駆体の骨格の選択の幅が広い。
本発明に係るポリイミド前駆体および樹脂組成物は、印刷インキ、接着剤、充填剤、電子材料、光回路部品、成形材料、レジスト材料、建築材料、3次元造形、光学部材等、樹脂材料が用いられる公知の全ての分野・製品に利用できる
本発明に係るポリイミド前駆体および樹脂組成物は、広範な構造のポリイミド前駆体を選択できる為、それによって得られる硬化物は、耐熱性、寸法安定性、絶縁性等のポリイミドが特徴的に有する機能を付与することが可能であることから、ポリイミドが適用されている公知の全ての部材用のフィルム、塗膜又は3次元構造物として好適である。
本発明に係るポリイミド前駆体および樹脂組成物は、耐熱性、寸法安定性、絶縁性等の特性が有効とされる広範な分野・製品、例えば、塗料又は印刷インキ、或いは、カラーフィルター、フレキシブルディスプレー用フィルム、半導体装置、電子部品、層間絶縁膜、配線被覆膜、光回路、光回路部品、反射防止膜、ホログラム、光学部材又は建築材料の形成材料として好適に用いられる。中でも、本発明のポリイミド前駆体樹脂組成物は、電子部品用絶縁材料として好適に用いられる。
また、本発明においては、本発明に係るポリイミド前駆体及び/又はその熱硬化物、或いは、ポリイミド前駆体樹脂組成物及び/又はその熱硬化物により少なくとも一部分が形成されている電子部品が提供される。ここでその熱硬化物とは、ポリイミド前駆体が熱により一部又は完全にポリイミド化されて硬化した物をいう。
(実施例1)
100mlの3つ口フラスコを窒素気流下加熱し、十分乾燥させた後、空気中の水分に対して十分注意しながら、ジメチルアセトアミド溶媒で重合し、アセトンのよって再沈殿生成後、乾燥させたBPDA−ODA(3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルからなるポリアミック酸 NMRから求めた数平均分子量Mn=12000)の白色固体 0.99g、乾燥させたγ-ブチロラクトン5mlを投入し、tert−ブチルビニルエーテル(t−BVE) 5gを添加した。添加してから1時間後に、ポリアミック酸は完全に溶解していなかった。
乾燥させた窒素気流下、室温(25℃)で、48時間マグネティックスターラーによって撹拌した。当初は、BPDA−ODAがγ−ブチロラクトンに溶解していなかったが、反応の進行とともに固体が溶解していき、褐色の溶液となった。その後、反応液の半分を乾燥させたジエチルエーテルで再沈殿し、下記式で表されるBPDA−ODAのtert−ブチルビニルエーテル保護体(ポリイミド前駆体1)の白色固体を定量的に得た。H−NMRによって解析を行い6.2ppm付近のヘミアセタールエステル結合の酸素と酸素の間の炭素に結合する水素のピークの積分値とジフェニルエーテルの芳香環の水素のピークの積分比より保護率(カルボキシル基に対するヘミアセタールエステル結合の反応率)が100%であることを確認した。
Figure 2009242542
(実施例2)
ポリアミック酸を、BPDA−4PPD−1ODA(酸二無水物は、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用い、ジアミンはパラフェニレンジアミンと4,4‘−ジアミノジフェニルエーテルをモル比で4:1で混合し合成したポリアミック酸 NMRから求めた数平均分子量Mn=14000)、に変えた以外は、実施例1と同様の条件で、ポリイミド前駆体2の合成を行った。
また同時に実施例1〜2で半分残した反応液をポリイミド前駆体樹脂組成物1〜2としとした。当該ポリイミド前駆体樹脂組成物1〜2は、室温で保管後300時間までゲル化や沈殿物の生成等の変化はなかった。
(比較例1)
実施例1と同様の条件で、用いるビニルエーテルを、下記構造式を有するVEEA(日本触媒製)を5gに変更して反応を行った。その結果、200時間後に反応液がゲル化した。
Figure 2009242542
(比較例2)
実施例1の条件で用いるビニルエーテルを、n−ブチルビニルエーテル(n−BVE)を5gに変更して反応を行ったところ、反応開始後112時間後に保護率が100%であった(比較ポリイミド前駆体2)。比較例2で半分残した反応液を比較ポリイミド前駆体樹脂組成物2とした。
(比較例3)
実施例1の条件で用いるビニルエーテルを、シクロヘキシルビニルエーテル(CVE)を5gに変更して反応を行ったところ、反応開始後88時間後に保護率が100%であった(比較ポリイミド前駆体3)。比較例3で半分残した反応液を比較ポリイミド前駆体樹脂組成物3とした。
(比較例4)
実施例1の条件で用いるビニルエーテルを、エチレングリコールブチルビニルエーテル(EGBVE)を5gに変更して反応を行ったところ、反応開始後112時間後に保護率が100%であった(比較ポリイミド前駆体4)。比較例4で半分残した反応液を比較ポリイミド前駆体樹脂組成物4とした。
以上の結果から、3級のビニルエーテル化合物由来の本発明のポリイミド前駆体1及び2は、1級のビニルエーテル化合物由来の比較ポリイミド前駆体2及び4や2級のビニルエーテル化合物由来の比較ポリイミド前駆体3と比べて、最も反応終了までの時間が短く、高い反応性を示すことが確認された。
◎モデル化合物の合成
(合成例1〜6)
実施例1と同様の手法で、下記の構造のモデル化合物1〜6を合成した。いずれの実験もゲル化は起こらず、カルボキシル基の保護率は100%であった。
Figure 2009242542
<分解率の評価>
上記合成例で得られたモデル化合物1〜6の2重量%重ジメチルスルホキシド溶液(非脱水)について、室温で24時間保管後のヘミアセタールエステル結合の分解率を測定した。分解率は、実施例1と同様に1H−NMRを用いて保護率を測定し、下記式により求めた。
分解率(%)=(1−保管後の保護率/調製直後の保護率)×100
Figure 2009242542
これらの結果から、保護に用いるビニルエーテル化合物は、3級>2級>1級の順で分解率が高かった。
3級ビニルエーテル化合物を用いたモデル化合物は、溶液中で24時間後には、低線熱膨張係数を示すようなポリイミドに対して用いられる代表的な酸二無水物であるPMDA、BPDAのいずれの骨格でも完全に分解していることが明らかとなった。
同様の実験を、上記実施例、および比較例で得られたポリイミド前駆体1、並びに、比較ポリイミド前駆体2、比較ポリイミド前駆体3および比較ポリイミド前駆体4の2重量%重ジメチルスルホキシド溶液(非脱水、ビニルエーテル化合物非含有)について、室温で24時間保管後、及び120時間保管後のヘミアセタールエステル結合の分解率を測定した。
Figure 2009242542
<熱分解性評価>
ポリイミド前駆体1、並びに、比較ポリイミド前駆体2、比較ポリイミド前駆体3および比較ポリイミド前駆体4の2重量%重ジメチルスルホキシド溶液(非脱水、ビニルエーテル化合物非含有)を用いて、加熱した際の保護率を測定した。保護率は、各温度においてNMRチューブ中において5分加熱を行ったのち、実施例1と同様に1H−NMRを用い、そのピークの積分比より求めた。加熱温度と各ポリイミド前駆体の保護率の関係を表したグラフを図1に示す。
図1に示されるように、熱分解性は、上記分解率と同様の傾向が示された。この結果より、溶液中では、ポリイミド前駆体1は80℃で完全に保護基が脱離しており、成膜時に乾燥の温度を80℃以上に設定することで、成膜後は脱保護しポリアミック酸とすることが可能となることがわかる。従って、前記ポリイミド前駆体樹脂組成物1のように、脱水し、且つ、ビニルエーテル化合物共存下の状態では、ヘミアセタール結合により保護された状態で保存安定性良く保管できるにもかかわらず、成膜後はポリアミック酸の膜が形成可能であることがわかる。
またポリイミド前駆体1は、調製直後(精製前)は保護率が100%であったが、測定の為、共存していたビニルエーテル化合物を除去したことにより、作業中に保護基の分解が進行し、測定開始時の室温での保護率が100%ではなかった。
<熱重量減少評価>
ポリイミド前駆体1について、窒素を50mL/minの流量で流しながら、10℃/minで昇温し熱重量減少を求めた。
その結果、300℃における重量減少が28.7%となった。脱保護及び、イミド化が完全に進行した際の理論的な重量減少28.8%に近い値となり、保護基の脱離反応とイミド化がほぼ完全に進行していることが確認された。このことから、本発明のポリイミド前駆体を用いると、分解物のポリイミド膜中への残存はなく、アウトガスや信頼性低下が起こらないことが示唆された。
<赤外分光評価>
ポリイミド前駆体1およびBPDA−ODAのそれぞれを、窒素雰囲気下、350℃ 1時間(室温からの昇温速度 10℃/min)で熱処理したサンプルについて、各々赤外分光スペクトルを測定したところ、ベースラインが若干ずれていたものの、主要なピークは全て同じ波数であり、ほぼ同じスペクトルを示した。
<イミド化後のガラス転移温度>
上記ポリイミド前駆体樹脂組成物1とポリイミド前駆体樹脂組成物2を、ガラス上に貼り付けたユーピレックスS 50S(商品名:宇部興産)フィルムに塗布し、80℃のホットプレート上で10分乾燥させた後、乾燥させた後、剥離し、それぞれ膜厚20μmのフィルムを得た。
同様に、BPDA−ODAおよびBPDA−4PPD−1ODAの15重量%NMP溶液をガラス上に貼り付けたユーピレックスS 50S(商品名:宇部興産)フィルムに塗布し、80℃のホットプレート上で10分乾燥させた後、剥離し、それぞれ膜厚15μmのフィルムを得た。
上記の4種のサンプルを、窒素雰囲気下、350℃ 1時間加熱し(昇温速度 10℃/分)、ポリイミド前駆体1、ポリイミド前駆体2、BPDA−ODA、BPDA−4PPD−1ODA(それぞれ厚み11μm±1μm)、それぞれのイミド化物のフィルムを得た。
上記のフィルムを、粘弾性測定装置Solid Analyzer RSA II(Rheometric Scientific社製)によって、周波数1Hz、昇温速度5℃/minで動的粘弾性測定を行った。
その結果、ポリイミド前駆体1のイミド化後のガラス転移温度は、259℃、ポリイミド前駆体2のイミド化後のガラス転移温度は、308℃であり、BPDA−ODAのイミド化後のフィルムは、258℃、BPDA−4PPD−1ODAのイミド化後のフィルムは、308℃であった。
<イミド化後の線熱膨張係数>
上記ガラス転移温度測定用に作製したフィルム4種を幅5mm×長さ20mmに切断し、評価サンプルとして用いた。線熱膨張係数は、熱機械的分析装置Thermo Plus TMA8310(リガク社製)によって測定した。測定条件は、評価サンプルの観測長を15mm、昇温速度を10℃/min、評価サンプルの断面積当たりの加重が同じになるように引張り加重を1g/25000μm2とした。
その結果、ポリイミド前駆体1のイミド化後の線熱膨張係数は、43.1ppm、ポリイミド前駆体2のイミド化後の線熱膨張係数は、19.0ppm、BPDA−ODAのイミド化後のフィルムは、43.9ppm、BPDA−4PPD−1ODAのイミド化後のフィルムは、18.9ppmであった。
<イミド化後の湿度膨張係数>
上記ガラス転移温度測定用に作製したフィルム4種を幅5mm×長さ20mmに切断し、評価サンプルとして用いた。湿度膨張係数は、湿度可変機械的分析装置Thermo Plus TMA8310改(リガク社製)によって測定した。温度を25℃で一定とし、湿度を20%RHの環境下でサンプルが安定となった状態で、湿度を50%Rhに変化させ、それが安定となった際のサンプル長の変化を、湿度の変化(この場合50−20の30)で割り、その値を、サンプル長で割った値を湿度膨張係数とした。評価サンプルの断面積当たりの加重が同じになるように引張り加重を1g/25000μm2とした。
その結果、ポリイミド前駆体1のイミド化後の湿度膨張係数は、21.7ppmであり、ポリイミド前駆体2のイミド化後の湿度熱膨張係数は、11.4ppm、BPDA−ODAのフィルムは、21.8ppm、BPDA−4PPD−1ODAのイミド化後のフィルムは、11.4ppmであった。
加熱温度と各ポリイミド前駆体の保護率の関係を表したグラフである。

Claims (21)

  1. 下記式(1)で表わされる繰り返し単位を有するポリイミド前駆体。
    Figure 2009242542
    (式(1)中、Rは、4価の有機基、Rは、2価の有機基であり、繰り返されるR同士及びR同士はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。RおよびRはそれぞれ独立に下記式(2)の構造を有する1価の有機基であり、それらは同一であっても異なっていてもよく、繰り返されるR同士及びR同士はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
    Figure 2009242542
    (式(2)中、R、R、Rはそれぞれ独立に水素、ハロゲン原子、または1価の有機基である。R、R、R10はそれぞれ独立に1価の有機基である。R、R、R、R、R、R10はそれぞれ互いに結合して環状構造を示していても良い。)
  2. 前記式(2)中のR、R、Rが水素である、請求項1に記載のポリイミド前駆体。
  3. 前記式(2)中のR、R、R10はそれぞれ独立に、炭素数1〜15の有機基であり、活性水素を含有しないことを特徴とする、請求項1又は2に記載のポリイミド前駆体。
  4. 前記式(2)中のR、R、及びR10の少なくとも1つが、エーテル結合を含有する、請求項1乃至3のいずれかに記載のポリイミド前駆体。
  5. ラクトン類及びスルホキシド類より選択される1種以上の溶媒中で、当該溶媒に完全に溶解しないポリアミック酸と、ビニルエーテル化合物とを反応させて得られたものである、請求項1乃至4のいずれかに記載のポリイミド前駆体。
  6. ラクトン類及びスルホキシド類より選択される1種以上の溶媒中で、ポリアミック酸とビニルエーテル化合物とを、反応温度が5℃〜35℃で反応させて得られたものである、請求項1乃至5のいずれかに記載のポリイミド前駆体。
  7. 重量平均分子量又は数平均分子量が3000〜1000000である、請求項1乃至6のいずれかに記載のポリイミド前駆体。
  8. ポリマーの末端が、酸無水物基、または活性水素を含まない構造で末端封止されている、請求項1乃至7のいずれかに記載のポリイミド前駆体。
  9. 前記式(1)中のRが、芳香族テトラカルボン酸二無水物由来の骨格である、請求項1乃至8のいずれかに記載のポリイミド前駆体。
  10. 前記式(1)中のRのうち33モル%以上が、下記式(3)で表わされるいずれかの構造である、請求項1乃至9のいずれかに記載のポリイミド前駆体。
    Figure 2009242542
  11. 前記式(1)中のRのうち33モル%以上が、下記式(4)で表わされるいずれかの構造である、請求項1乃至10のいずれかに記載のポリイミド前駆体。
    Figure 2009242542
    (R10は2価の有機基、酸素原子、硫黄原子、又はスルホン基であり、R11及びR12は1価の有機基、又はハロゲン原子である。)
  12. 前記請求項1乃至11のいずれかに記載のポリイミド前駆体とビニルエーテル化合物を含有する、ポリイミド前駆体樹脂組成物。
  13. 酸性物質、及び、アミンを実質的に含まない、請求項12に記載のポリイミド前駆体樹脂組成物。
  14. 更に溶媒を含み、当該溶媒100重量部に対して前記ビニルエーテル化合物が55重量部以上含まれている、請求項12又は13に記載のポリイミド前駆体樹脂組成物。
  15. イミド化後のガラス転移温度が260℃以上である、請求項12乃至14のいずれかに記載のポリイミド前駆体樹脂組成物。
  16. イミド化後の線熱膨張係数が60ppm以下である、請求項12乃至15のいずれかに記載のポリイミド前駆体樹脂組成物。
  17. イミド化後の湿度膨張係数が40ppm以下である、請求項12乃至16のいずれかに記載のポリイミド前駆体樹脂組成物。
  18. 窒素原子を含有しない溶媒を含む、請求項12乃至17のいずれかに記載のポリイミド前駆体樹脂組成物。
  19. 組成物中の水分含有量が1重量%以下である、請求項12乃至18のいずれかに記載のポリイミド前駆体樹脂組成物。
  20. 電子部品用絶縁材料として用いられる、請求項12乃至19のいずれかに記載のポリイミド前駆体樹脂組成物。
  21. 前記請求項1乃至11のいずれかに記載のポリイミド前駆体及び/又はその熱硬化物、或いは、前記請求項12乃至19のいずれかに記載のポリイミド前駆体樹脂組成物及び/又はその熱硬化物により少なくとも一部分が形成されている電子部品。
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