JP2009242335A - 抗不安作用剤及び医薬品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】DP1レセプターを間接的又は直接的に活性化する成分を有効成分とする抗不安作用剤、及びかかる抗不安作用剤を含有する医薬品。DP1レセプターを間接的に活性化する成分としては、Met−Arg−Trpで表されるアミノ酸配列からなるペプチドが好適である。また、DP1レセプターを直接的に活性化する成分としては、DP1レセプターのアゴニスト又はプロスタグランジンD2が好適である。
【選択図】なし
Description
しかし、ベンゾジアゼピン系薬物は、運動障害、眠気、長期服用による依存性の発現などの副作用を引き起こすという問題点があった。そこで、ベンゾジアゼピン系薬物に代わる新規な抗不安剤が求められている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、十分な抗不安作用を有する新規な抗不安作用剤及び該不安作用剤を含有する新規な医薬品を提供することを課題とする。
請求項1に記載の発明は、DP1レセプターを間接的又は直接的に活性化する成分を有効成分とする抗不安作用剤である。
請求項2に記載の発明は、前記DP1レセプターを間接的に活性化する成分が、Met−Arg−Trpで表されるアミノ酸配列からなるペプチドである請求項1に記載の抗不安作用剤である。
請求項3に記載の発明は、前記DP1レセプターを直接的に活性化する成分が、DP1レセプターのアゴニストである請求項1に記載の抗不安作用剤である。
請求項4に記載の発明は、前記DP1レセプターを直接的に活性化する成分が、プロスタグランジンD2である請求項1に記載の抗不安作用剤である。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の抗不安作用剤を含有する医薬品である。
本発明の抗不安作用剤は、DP1レセプターを間接的又は直接的に活性化する成分を有効成分とするものである。
ここで、DP1レセプターを間接的に活性化する成分とは、DP1レセプターと直接相互作用することなく、これを活性化させる成分のことを指す。また、DP1レセプターを直接的に活性化する成分とは、DP1レセプターと直接相互作用して、これを活性化させる成分のことを指す。なお、相互作用とは、例えば、分子間で共有結合等により結合を形成することや、水素結合、疎水結合又はイオン結合等の分子間引力により結合を形成することを指す。
従来、DP1レセプターについては、例えば、プロスタグランジンD2が結合することで、炎症やアレルギーの発症に関与することが知られている。これに対し、本発明は、DP1レセプターを間接的又は直接的に活性化することで、抗不安作用が発現することを初めて見出し、かかる知見に基づいて、全く新規な抗不安作用剤を提供するものである。
そして、かかる抗不安作用剤は、本発明の効果を妨げない範囲で、前記活性成分1以外に如何なる成分を含んでいても良い。
ペプチド1は、合成反応後に適当な後処理や精製を行うことで単離できる。あるいは、ペプチド1の単離を行うことなく混合物のまま使用しても良い。ここで、後処理や精製は公知の方法で行えば良い。具体的には、pH調整、抽出、洗浄、遠心分離、ろ過、濃縮、乾燥、結晶化及びカラムクロマトグラフィー等、周知の処理を単独で又は必要に応じて複数の処理を組み合わせて行えば良い。例えば、濃縮であれば、常圧濃縮又は減圧濃縮等により溶媒を留去する方法や、逆浸透膜、限外ろ過膜又は精密ろ過膜等のろ過膜を使用して水を除去する方法が例示できる。乾燥であれば、加熱乾燥又は凍結乾燥が例示できる。カラムクロマトグラフィーであれば、シリカゲル又は適当な各種樹脂を充填剤として使用する、逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、分子ふるいクロマトグラフィーが例示できる。
取り出されたペプチド1は、例えば、エドマン分解法等の公知の方法で、アミノ酸配列を同定できる。
そして、かかる抗不安作用剤は、本発明の効果を妨げない範囲で、前記活性成分2以外に如何なる成分を含んでいても良い。
・BW245C
(3-(3-Cyclohexyl-3-hydroxypropyl)-2,5-dioxo-4-imidazolidineheptanoic acid)(「日本化学物質辞書web:http://nikkajiweb.jst.go.jp/nikkaji_web/pages/top.html」参照)
・AS702224
(「Brugger N et al, Pharmacological and Functional Characterization of Novel EP and DP Receptor Agonists: DP1 Receptor Mediates Penile Erection in Multiple Species., J Sex Med. 2008 Feb;5(2):344-56. Epub 2007 Nov 28」参照)
・TS−022
(「Sugimoto M et al, The anti-pruritic efficacy of TS-022, a prostanoid DP1 receptor agonist, is dependent on the endogenous prostaglandin D2 level in the skin of NC/Nga mice., Eur J Pharmacol. 2007 Jun 14;564(1-3):196-203. Epub 2007 Feb 8」参照)
・SQ27986
([1S-[1B,2B(5Z),3A(1E,3S),4B]]7-[3-(3-cyclohexyl-3-hydroxy-1-propenyl)-7-oxabi-cyclo-[2.2.1]hept-2-yl]5-heptenoic acid)(「Sharif et al, Affinities, selectivities, potencies, and intrinsic activities of natural and synthetic prostanoids using endogenous receptors: focus on DP class prostanoids., J Pharmacol Exp Ther. 2000 May;293(2):321-8.」参照)
・RS93520
((C3'S,1R,2R,3S,6R)-2-C3'-cyclohexyl-3'hydroxyprop-1-ynyl)-3-hydroxybicyclo[4.2.0]oct-7-ylidene)butyrate)(「Sharif et al, Affinities, selectivities, potencies, and intrinsic activities of natural and synthetic prostanoids using endogenous receptors: focus on DP class prostanoids., J Pharmacol Exp Ther. 2000 May;293(2):321-8.」参照)
・ZK118182
((5Z,13E)-(9R,11R,15S)-9-chloro-15-cyclohexyl-11,15-dihydroxy-3-oxa-16,17,18,19,20-pentanor-5,13-prostadienoic acid)(「Sharif et al, Affinities, selectivities, potencies, and intrinsic activities of natural and synthetic prostanoids using endogenous receptors: focus on DP class prostanoids., J Pharmacol Exp Ther. 2000 May;293(2):321-8.」参照)
・ZK110841
((5Z,13E)-(9R,11R,15S)-9-chlor-15-cyclohexyl-11,15-dihydroxy-16,17,18,19,20-pentanor-5,13-prostadienoic acid)(「Sharif et al, Affinities, selectivities, potencies, and intrinsic activities of natural and synthetic prostanoids using endogenous receptors: focus on DP class prostanoids., J Pharmacol Exp Ther. 2000 May;293(2):321-8.」参照)
そしてこれまでに、ルビスコの加水分解物の中には、いくつかの生理活性ペプチドが存在することが開示されている(例えば、特開2001−213897号公報、特開2003−300996号公報参照)。例えば、ホウレンソウ由来のルビスコをペプシン、又はペプシンとパンクレアチンとで段階的に加水分解したものから、Met−Arg−Trpで表されるアミノ酸配列からなるペプチド(すなわち、ペプチド1)が単離されている。そして、かかるペプチドは、アンジオテンシンI変換酵素(ACE)を阻害し、血圧降下作用を示すことが知られている(特開2003−300996号公報参照)。さらに、かかるペプチドについては、プロスタグランジンD2依存的に血管弛緩作用を示すことが知られている(「Zhao H et al, Met-Arg-Trp derived from Rubisco lowers blood pressure via prostaglandin D(2)-dependent vasorelaxation in spontaneously hypertensive rats., Peptides, 2008; 29(3): 345-349」参照)。
また、プロスタグランジンは、アラキドン酸などのエイコサポリエン酸から合成される一群の生理活性物質であり、細胞膜に存在するレセプターに結合することで、様々な生理作用を発現することが知られている。そして、プロスタグランジンの一種であるプロスタグランジンD2は、血小板凝集抑制作用や睡眠誘導作用を有することが知られている。
また、プロスタグランジンD2に特異的なレセプターとしては、DP1レセプター及びDP2レセプターが知られている。
例えば、ペプチド1は、実施例で具体的に説明するように、未知のレセプターに結合することでプロスタグランジンD2の合成を高め、DP1レセプターを活性化することで抗不安作用を示すことが示唆されている。また、上記のように、ペプチド1は、プロスタグランジンD2依存的に血管弛緩作用を示し、血圧降下作用を示すことが知られているが、後記する実施例で説明するように、ペプチド1は、血圧降下作用を示す投与量よりも格段に少ない投与量で抗不安作用を示す。すなわち、ペプチド1は、血圧降下作用に非依存的に抗不安作用を示すのであり、これは、ペプチド1の抗不安作用を発現する作用機序が、血圧降下作用を発現する作用機序とは異なる、従来知られていない新規なものであることを支持するものである。
また、例えば、プロスタグランジンD2及びBW245Cは、いずれも互いに異なる骨格を有する有機化合物である。そしてこれらは、実施例で具体的に説明するように、いずれも十分な抗不安作用を示す。一方、これらの有機化合物に共通する特徴は、DP1レセプターを直接的に活性化することである。したがってこれらの結果は、抗不安作用が、DP1レセプターの直接的活性化という従来知られていない新規な作用機序により発現することを支持するものである。
活性成分の薬学上許容される塩は、一種を単独で使用しても良く、二種以上を組み合わせて併用しても良い。二種以上を併用する場合には、塩の組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に調整し得る。
医薬品に含有される抗不安作用剤は、一種でも良く、二種以上でも良い。二種以上である場合、抗不安作用剤の組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に調整し得る。
これらは、公知の方法により製造できる。例えば、経口剤の場合には、これら製剤の製造で通常使用される賦形剤、滑沢剤、界面活性剤、結合剤、崩壊剤、安定剤、矯味剤、緩衝剤等を抗不安作用剤に配合し、常法にしたがって製造できる。賦形剤としては、乳糖、結晶セルロース及びデンプンが例示できる。滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、タルク及び水素添加植物油が例示できる。結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース及びポリビニルピロリドンが例示できる。崩壊剤としては、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースカルシウム塩が例示できる。
また、非経口剤の場合には、例えば、抗不安作用剤を注射用蒸留水、生理食塩水、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール又はグリセリン等に溶解又は懸濁させて、常法にしたがって製造できる。さらに、必要に応じて緩衝剤、防腐剤、抗酸化剤等を配合しても良い。
抗不安作用剤又は医薬品の投与量は、患者の年齢、性別、体重、症状等によっても異なるが、ペプチド1等の活性成分1の場合には、成人一人一日あたり、好ましくは0.1〜15mg/60kgであり、プロスタグランジンD2やDP1レセプターのアゴニスト等の活性成分2の場合には、成人一人一日あたり、好ましくは0.1〜20nmol/60kgである。かかる範囲となるように、抗不安作用剤又は医薬品を1日に1回または複数回に分けて投与すれば良い。
なお、以下の実施例においては、経口、非経口を問わず、活性成分の「投与量(mg/kg)」は、「マウスの体重1kgあたりの投与量(mg)」を示し、「投与量(pmol/マウス)」は、「マウス1匹あたりの投与量(pmol)」を示すものとする。
<ペプチド1の腹腔内投与による抗不安活性の評価>
以下に示す手順で、ペプチド1の抗不安作用について、検討を行った。
(A)材料及び方法
(A−1)動物
5週齢の雄性ddYマウスを日本エスエルシー株式会社から入手した。全てのマウスを、23℃に設定された部屋で、午前7時から午後7時までの間にライトを点ける12時間の明暗サイクルにて飼育した。飼育中、全てのマウスには、餌と水を自由摂取させた。
(A−2)ペプチド1
ペプチド1は、ペプチド合成機(PS−3、Protein Technologies社)を用いてFmoc法で化学合成し、脱保護の後、ODSカラム(Cosmosil 5C18 ARII(20×250mm),Nacalai Tesque)を装着したHPLCにより精製後、凍結乾燥することにより得た。
(A−3)高架十字迷路試験
高架十字迷路試験は、下記のように公知の方法に従って行った。
図1に示すように、2本のオープンアーム(L:24cm×W:5cm×H:0.5cm)、2本のクローズアーム(L:24cm×W:5cm×H:13cm)及び中央プラットフォームからなる高架十字迷路(Elevated plus−maze:EPM)を、その床面が実験台から高さ50cmに位置するように設置した。
高架十字迷路は、その床面が高い位置にあるが、クローズアームには囲いがあるため、マウスはクローズアーム内を安全に歩行できるようになっている。一方、オープンアームの周囲は開放されていて囲いがないため、マウスはオープンアーム内においては、高い位置から転落するという不安感を感じる。したがって、マウスのオープンアーム内での滞留時間が長いほど、マウスの不安感は緩和されていることになるので、オープンアーム内での滞留時間を、抗不安活性を評価する際の指標とした。
そして、マウスを中央プラットフォーム上に置いて、5分間試験を実施した。試験時間中、中央プラットフォームを基点に、4本のアーム内のいずれかに進入した回数(以下、総進入回数と略記する)、オープンアーム内に進入した回数、4本のアーム内のいずれかにおける滞留時間(以下、総進入時間と略記する)及びオープンアーム内における滞留時間を記録した。なお、試験に際しては、マウスの4本の手足がすべてアーム内に入った時に、「マウスがアーム内へ進入した」と定義した。
得られた記録からさらに、(I)総進入時間に対するオープンアーム内での滞留時間の割合、(II)総進入回数に対するオープンアーム内への進入回数の割合をそれぞれ算出し、(III)総進入回数とともに、下記の各試験群の間で比較した。なお、上記(I)〜(III)の全ての値は、平均値±標準誤差で示した。分散分析(ANOVA)に引き続き、多重比較のためにフィッシャー試験(Fisher’s test)を適用し、いずれにおいてもp値0.05未満である場合に、統計的に有意とみなした。
図2(a)及び(b)に示すように、ペプチド1を0.03〜0.3mg/kgの用量で腹腔内に投与した結果、0.1〜0.3mg/kgの用量で投与した場合、(I)オープンアーム内での滞留時間の割合、及び(II)オープンアーム内への進入回数の割合が増加した。
フィッシャー試験を適用した多重比較により、前記(I)及び(II)に関して、0.1〜0.3mg/kgの用量で、ペプチド1の抗不安作用効果は有意であることが示された。
一方、図2(c)に示すように、総進入回数については、いずれの試験群においても有意な差はなく、総運動量は変化しなかった。
<ペプチド1の経口投与による抗不安活性の評価>
(A)材料及び方法
ペプチド1を生理食塩水に溶解させたペプチド1溶液又はコントロールとして生理食塩水のみを、試験の30分前にマウスへ経口投与し、1匹ずつ高架十字迷路試験に供した。ペプチド1溶液は、マウスの体重1kgあたりのペプチド1の投与量がそれぞれ1.0mg/kg、3.0mg/kg、10.0mg/kgとなるように投与した。試験に供したマウスの数は、1.0mg/kg投与群:10匹、3.0mg/kg投与群:10匹、10.0mg/kg投与群:10匹、コントロール:10匹とした。これ以外は、実施例1と同様にペプチド1の抗不安活性を評価した。結果を図3に示す。図3(a)中、( )内の数値は、各試験群のマウスの数を示す。また、図3(a)及び(b)中、フィッシャー試験におけるp値に関して、「*」はp<0.05、「**」はp<0.01であることを示す。
図3(a)及び(b)に示すように、ペプチド1を1.0〜10.0mg/kgの用量で経口投与した結果、3.0〜10.0mg/kgの用量で投与した場合、(I)オープンアーム内での滞留時間の割合、及び(II)オープンアーム内への進入回数の割合が増加した。
フィッシャー試験を適用した多重比較により、前記(I)に関しては、3.0〜10.0mg/kgの用量でペプチド1の抗不安作用効果は有意であり、前記(II)に関しては、1.0〜10.0mg/kgの用量でペプチド1の抗不安作用効果は有意であることが示された。
一方、図3(c)に示すように、総進入回数については、いずれの試験群においても有意な差はなく、総運動量は変化しなかった。
以上より、ペプチド1の抗不安作用は、血圧降下作用に非依存的であると判断された。
また、ペプチド1は、腹腔内投与及び経口投与のいずれにおいても、特開2007−91656号公報に記載の五つのアミノ酸残基からなる抗不安作用を有するペプチドよりも、低用量で抗不安作用を示すことが示された。
<ペプチド1による抗不安作用の作用機序の推定>
これまでにペプチド1は、高血圧自然発症ラットに対して、プロスタグランジンD2依存的な血管弛緩を介して、血圧降下作用を示すことが知られている。そこで、ぺプチド1による抗不安作用の作用機序に、プロスタグランジンD2が関与しているか否かを考察するために、DP1レセプターのアンタゴニストであるBW A868Cの抗不安作用に対する効果を評価した。
実施例1と同様のペプチド1を生理食塩水に溶解させたペプチド1溶液、BW A868C(Cayma Chemical Company社製)を生理食塩水に溶解させたBW A868C溶液をそれぞれ調製した。そして、(i)ペプチド1溶液のみ、(ii)BW A868C溶液のみ、(iii)ペプチド1溶液及びBW A868C溶液、並びに(iv)コントロールとして生理食塩水のみを、それぞれ試験の30分前にマウスの腹腔内に投与した。ペプチド1溶液は、ペプチド1の投与量が0.1mg/kgとなるように投与した。BW A868C溶液は、BW A868Cの投与量が60μg/kgとなるように投与した。試験に供したマウスの数は、(i)投与群:7匹、(ii)投与群:9匹、(iii)投与群:9匹、(iv)投与群:8匹とした。これ以外は、実施例1と同様に抗不安活性を評価した。結果を図4に示す。図4(a)中、( )内の数値は、各試験群のマウスの数を示す。また、図4(a)及び(b)中、フィッシャー試験におけるp値に関して、「*」はp<0.05、「**」はp<0.01であることを示す。
図4(a)及び(b)に示すように、フィッシャー試験を適用した多重比較により、前記(I)及び(II)に関して、ペプチド1によって誘導された抗不安作用を抑制するBW A868Cの効果は有意であることが示された。
さらに、BW A868C自体は、抗不安作用を引き起こさないことが示された。
一方、図4(c)に示すように、総進入回数については、いずれの試験群においても有意な差はなく、総運動量は変化しなかった。
以上より、ペプチド1の抗不安作用は、DP1レセプターを介して、血圧降下作用を示す場合とは異なる作用機序で引き起こされることが示された。
また、ペプチド1は、DP1レセプターには直接結合しない(「Zhao H et al, Met-Arg-Trp derived from Rubisco lowers blood pressure via prostaglandin D(2)-dependent vasorelaxation in spontaneously hypertensive rats., Peptides, 2008; 29(3): 345-349」参照)ため、ペプチド1は、未知のレセプターに結合することでプロスタグランジンD2の合成を高め、DP1レセプターを活性化することで抗不安作用を示すことが示唆された。
<プロスタグランジンD2の脳室内投与による抗不安活性の評価>
上記のように、ペプチド1の抗不安作用は、DP1レセプターを介して引き起こされることが示されたので、さらに抗不安作用がプロスタグランジンD2によって示されるか否かを確認した。
プロスタグランジンD2(Cayma Chemical Company社製)を人工脳脊髄液(138.9mM NaCl、3.4mM KCl、1.3mM CaCl2、4.0mM NaHCO3、0.6mM NaH2PO4、5.6mM glucose、 pH 7.4)に溶解させたプロスタグランジンD2溶液又はコントロールとして人工脳脊髄液のみを、試験の10分前にマウスの脳室内へ投与し、1匹ずつ高架十字迷路試験に供した。プロスタグランジンD2溶液は、マウス1匹あたりのプロスタグランジンD2の投与量がそれぞれ1pmol/マウス、10pmol/マウス、100pmol/マウスとなるように投与した。試験に供したマウスの数は、1pmol/マウス投与群:6匹、10pmol/マウス投与群:5匹、100pmol/マウス投与群:6匹、コントロール:6匹とした。これ以外は、実施例1と同様にプロスタグランジンD2の抗不安活性を評価した。結果を図5に示す。図5(a)中、( )内の数値は、各試験群のマウスの数を示す。また、図5(a)及び(b)中、フィッシャー試験におけるp値に関して、「*」はp<0.05、「**」はp<0.01であることを示す。さらに、図5(c)中、「PGD2」は、プロスタグランジンD2を示す。
図5(a)及び(b)に示すように、プロスタグランジンD2を1〜100pmol/マウスの用量で脳室内へ投与した結果、10〜100pmol/マウスの用量で投与した場合、(I)オープンアーム内での滞留時間の割合、及び(II)オープンアーム内への進入回数の割合が増加した。
フィッシャー試験を適用した多重比較により、前記(I)及び(II)に関して、10〜100pmol/マウスの用量で、プロスタグランジンD2の抗不安作用効果は有意であることが示された。
一方、図5(c)に示すように、総進入回数については、いずれの試験群においても有意な差はなく、総運動量は変化しなかった。
以上より、プロスタグランジンD2は、運動量を変化させることなく、抗不安作用を引き起こすことが示された。
<BW245Cの脳室内投与による抗不安活性の評価>
抗不安作用が、DP1レセプターアゴニストによって示されるか否かを確認するために、BW245Cの抗不安作用に対する効果を評価した。
(A)材料及び方法
DP1レセプターアゴニストであるBW245C(Cayma Chemical Company社製)を人工脳脊髄液に溶解させたBW245C溶液又はコントロールとして人工脳脊髄液のみを、試験の10分前にマウスの脳室内へ投与し、1匹ずつ高架十字迷路試験に供した。人工脳脊髄液は、実施例4と同様のものを使用した。BW245C溶液は、マウス1匹あたりのBW245Cの投与量がそれぞれ0.1pmol/マウス、1pmol/マウスとなるように投与した。試験に供したマウスの数は、0.1pmol/マウス投与群:8匹、1pmol/マウス投与群:8匹、コントロール:8匹とした。これ以外は、実施例1と同様にBW245Cの抗不安活性を評価した。結果を図6に示す。図6(a)中、( )内の数値は、各試験群のマウスの数を示す。また、図6(a)及び(b)中、フィッシャー試験におけるp値に関して、「**」はp<0.01であることを示す。
図6(a)及び(b)に示すように、BW245Cを0.1〜1pmol/マウスの用量で脳室内へ投与した結果、1pmol/マウスの用量で投与した場合、(I)オープンアーム内での滞留時間の割合、及び(II)オープンアーム内への進入回数の割合が増加した。
フィッシャー試験を適用した多重比較により、前記(I)及び(II)に関して、1pmol/マウスの用量でBW245Cの抗不安作用効果は有意であることが示された。
一方、図6(c)に示すように、総進入回数については、いずれの試験群においても有意な差はなく、総運動量は変化しなかった。
以上より、BW245Cは、プロスタグランジンD2と同様に、運動量を変化させることなく、抗不安作用を引き起こすことが示された。
Claims (5)
- DP1レセプターを間接的又は直接的に活性化する成分を有効成分とする抗不安作用剤。
- 前記DP1レセプターを間接的に活性化する成分が、Met−Arg−Trpで表されるアミノ酸配列からなるペプチドである請求項1に記載の抗不安作用剤。
- 前記DP1レセプターを直接的に活性化する成分が、DP1レセプターのアゴニストである請求項1に記載の抗不安作用剤。
- 前記DP1レセプターを直接的に活性化する成分が、プロスタグランジンD2である請求項1に記載の抗不安作用剤。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載の抗不安作用剤を含有する医薬品。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2018164019A1 (en) * | 2017-03-04 | 2018-09-13 | Kyoto University | Therapeutic peptides |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP5222608B2 (ja) | 2013-06-26 |
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