JP2009242327A - 多官能含フッ素化合物及び該化合物の製造方法 - Google Patents

多官能含フッ素化合物及び該化合物の製造方法 Download PDF

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義人 田中
Takuji Ishikawa
卓司 石川
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Abstract

【課題】多官能含フッ素化合物及び該化合物の製造方法、該化合物からなる架橋剤、該化合物を含む硬化性組成物及び該組成物を硬化させた硬化物の提供。
【解決手段】一般式(1)−S−CX2CHF−Z−O−Rf(1)[式中、Xは同一又は異なってH又はFであり、Zは−CF−又は単結合であり、Rfは置換基を有する炭素数1〜40の含フッ素アルキル基、又は置換基を有する炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基であり、該置換基は式(1−1):
Figure 2009242327

[式中、Tは同一又は異なってH、F、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよい含フッ素アルキル基]で表される基等]で表される基を2以上有する化合物。
【選択図】なし

Description

本発明は、多官能含フッ素化合物及び該化合物の製造方法、該化合物からなる架橋剤、該化合物を含む硬化性組成物及び該組成物を硬化させた硬化物に関する。
分子内にフッ素原子を有する含フッ素化合物は、光の透過性や光に対する耐久性に優れており、含フッ素化合物を含む材料は、塗料の架橋剤、光デバイス関連の封止部材用材料等として使用されている。これらの用途に使用される含フッ素化合物は、他の成分と反応する官能基を分子内に複数有することが望まれる。
しかしながら、含フッ素化合物の合成には、フッ素原子を有する特殊な原料が必要である。また、含フッ素化合物の反応性は一般的な有機化合物とは異なることが多いので、通常の有機合成の手法によって目的とする化合物を得ることは難しい。
特に、分子内に複数の官能基を有する多官能含フッ素化合物は合成が容易ではなく、官能基数が3以上の多官能含フッ素化合物になると、市販されているものは皆無の状況である。
このような状況下、分子内に複数の官能基を有する新規な多官能含フッ素化合物が求められている。
国際公開WO2004/016689パンフレット
本発明は、多官能含フッ素化合物及び該化合物の製造方法、該化合物からなる架橋剤、該化合物を含む硬化性組成物及び該組成物を硬化させた硬化物を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、分子内に2以上のチオール基を有する化合物と環状エーテル構造を有する含フッ素アリル化合物とのエンチオール反応、又は分子内に2以上のチオール基を有する化合物と環状エーテル構造を有する含フッ素ビニルエーテル化合物とのエンチオール反応により、容易に新規多官能含フッ素化合物を合成できることを見出した。得られた多官能含フッ素化合物は、分子内に複数の環状エーテル構造を有するので、塗料の架橋剤として好適に使用できる。また、環状エーテル構造を分子内に複数有する本発明の多官能含フッ素化合物を、他の成分と混合して硬化性組成物とし、これを硬化させて硬化物を製造することもできる。本発明は、この様な知見に基づき、さらに検討を重ねて完成されたものである。
本発明は、下記項1〜10に示す新規な多官能含フッ素化合物、該化合物の製造方法、該化合物からなる架橋剤、該化合物を含む硬化性組成物及び該組成物を硬化させた硬化物を提供する。
項1. 一般式(1)
−S−CX2CHF−Z−O−Rf (1)
[式中、Xは同一又は異なってH又はFであり、Zは−CF−又は単結合であり、Rfは置換基を有する炭素数1〜40の含フッ素アルキル基、又は置換基を有する炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基であり、該置換基は式(1−1):
Figure 2009242327
[式中、Tは同一又は異なってH、F、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよい含フッ素アルキル基]
で表される基、式(1−2):
Figure 2009242327
[式中、Mは脂肪族環又はヘテロ脂肪族環であり、Tは同一又は異なってH、F、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよい含フッ素アルキル基であり、mは3以上の整数である。]
で表される基、及び一般式(1−3):
Figure 2009242327
[式中、Tは同一又は異なってH、F、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよい含フッ素アルキル基]で表される基からなる群から選ばれる少なくとも1種である。]
で表される基を2以上有する化合物。
項2. 一般式(1a)
Figure 2009242327
[式中、TはO、N及びSからなる群から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を有していてもよい炭化水素であり、pは2以上の整数であり、X、Z及びRfはそれぞれ同一又は異なって前記に同じである。]
で表される項1に記載の化合物。
項3. 一般式(1b)
Figure 2009242327
[式中、Rは同一又は異なって単結合、−C2a−、−C2b−B−C2c−又は−S−C2d−であり、a、b、c及びdは同一又は異なって1以上の整数であり、Bは−S−、−C(=O)O−、−OC(=O)−又は−O−であり、Aは−C2e−又は−C2f−E−C2g−であり、e、f及びgは同一又は異なって1以上の整数であり、Eは−S−、−C(=O)O−、−OC(=O)−又は−O−であり、RはH、置換基を有していてもよいアルキル基又は式:−R−S−CX2CHF−Z−O−Rfで表される基であり、RはH、置換基を有していてもよいアルキル基又は式:−R−S−CX2CHF−Z−O−Rfで表される基であり、qは0以上の整数であり、X、Z及びRfはそれぞれ同一又は異なって前記に同じである。]
で表される項2に記載の化合物。
項4. 一般式(1c)
Figure 2009242327
[式中、Qは置換基を有していてもよい脂肪族環、置換基を有していてもよいヘテロ脂肪族環、置換基を有していてもよい芳香族環又は置換基を有していてもよいヘテロ芳香族環であり、該置換基はそれぞれ炭素数1〜12のアルキル基、−OH、−COOR、−CONR、―NH2、−COCl、―SOF、―SOH及び−CNからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、RはH、アルキル基又は含フッ素アルキル基であり、R及びRは同一又は異なってH、アルキル基又は含フッ素アルキル基であり、rは2以上の整数であり、X、Z及びRfはそれぞれ同一又は異なって前記に同じである。]
で表される項2に記載の化合物。
項5. XがHであり、Zが−CF−である項1〜4のいずれかに記載の化合物。
項6. XがFであり、Zが単結合である項1〜4のいずれかに記載の化合物。
項7. 分子内に2以上の一般式(1)
−S−CX2CHF−Z−O−Rf (1)
[式中、Xは同一又は異なってH又はFであり、Zは−CF−又は単結合であり、Rfは置換基を有する炭素数1〜40の含フッ素アルキル基、又は置換基を有する炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基であり、該置換基は式(1−1):
Figure 2009242327
[式中、Tは同一又は異なってH、F、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよい含フッ素アルキル基]
で表される基、式(1−2):
Figure 2009242327
[式中、Mは脂肪族環又はヘテロ脂肪族環であり、Tは同一又は異なってH、F、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよい含フッ素アルキル基であり、mは3以上の整数である。]
で表される基、及び一般式(1−3):
Figure 2009242327
[式中、Tは同一又は異なってH、F、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよい含フッ素アルキル基]で表される基からなる群から選ばれる少なくとも1種である。]
で表される基を2以上有する化合物の製造方法であって、分子内に2以上のチオール基を有する化合物を一般式(2)
CX2=CF−Z−O−Rf (2)
[式中、X、Z及びRfは前記に同じ。]
で表される化合物と反応させることを特徴とする製造方法。
項8. 項1〜6のいずれかに記載の化合物からなる塗料用架橋剤。
項9. 項1〜6のいずれかに記載の化合物を含有する硬化性組成物。
項10. 項9に記載の硬化性組成物を硬化して得られる硬化物。
多官能含フッ素化合物
本発明の多官能含フッ素化合物は、下記一般式(1)
−S−CX2CHF−Z−O−Rf (1)
[式中、Xは同一又は異なってH又はFであり、
Zは−CF−又は単結合であり、
Rfは置換基を有する炭素数1〜40の含フッ素アルキル基、又は置換基を有する炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基であり、
該置換基は式(1−1):
Figure 2009242327
[式中、Tは同一又は異なってH、F、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよい含フッ素アルキル基]
で表される基、式(1−2):
Figure 2009242327
[式中、Mは脂肪族環又はヘテロ脂肪族環であり、Tは同一又は異なってH、F、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよい含フッ素アルキル基であり、mは3以上の整数である。]
で表される基、及び一般式(1−3):
Figure 2009242327
[式中、Tは同一又は異なってH、F、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよい含フッ素アルキル基]で表される基からなる群から選ばれる少なくとも1種である。]
で表される基を2以上有する化合物である。
一般式(1)のRfにおいて、「置換基を有する炭素数1〜40の含フッ素アルキル基」の含フッ素アルキル基は、炭素数1〜20の含フッ素アルキル基が好ましく、炭素数1〜12の含フッ素アルキル基がより好ましい。該含フッ素アルキル基は、直鎖、分岐鎖又は環状のいずれであってもよい。
一般式(1)のRfにおいて、「置換基を有する炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基」の含フッ素アルキル基は、炭素数2〜50のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基が好ましく、炭素数2〜25のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基がより好ましい。該含フッ素アルキル基は、直鎖、分岐鎖又は環状のいずれであってもよい。
一般式(1)のRfにおいて、「置換基を有する炭素数1〜40の含フッ素アルキル基」及び「置換基を有する炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基」の置換基としては、エポキシ系、脂環式エポキシ系、グリシジル系、オキセタン系等の環状エーテル構造を有する置換基が挙げられる。
一般式(1)のRfにおいて、「置換基を有する炭素数1〜40の含フッ素アルキル基」及び「置換基を有する炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基」の置換基(環状エーテル構造を有する置換基)としては、例えば、下記一般式(1−1):
Figure 2009242327
[式中、Tは同一又は異なってH、F、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよい含フッ素アルキル基]
で表される基が挙げられる。
一般式(1−1)において、3つのTは、それぞれ同一又は異なってH、F、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよい含フッ素アルキル基である。
一般式(1−1)のTにおいて、「置換基を有していてもよいアルキル基」のアルキル基としては、炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が挙げられる。例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、シクロデシル等の炭素数1〜12のアルキル基が挙げられる。より好ましくは、炭素数1〜8のアルキル基である。該アルキル基は置換されていてもよく、該置換基としては、本発明に悪影響を与えないものであれば特に限定はない。該置換基としては、例えば、−OH、−COOH、−COOCH、−NH、−COOCHCH等が挙げられる。該アルキル基は、これらの群から選ばれる少なくとも1種で1〜3個置換されていてもよい。
また、一般式(1−1)のTにおいて、「置換基を有していてもよい含フッ素アルキル基」の含フッ素アルキル基としては、炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖又は環状の含フッ素アルキル基が挙げられる。例えば、−CF、−CHCF、CHCFCF、−CFCFCF等が挙げられる。より好ましくは、炭素数1〜8の含フッ素アルキル基である。該含フッ素アルキル基は置換されていてもよく、該置換基としては、本発明に悪影響を与えないものであれば特に限定はない。該置換基としては、例えば、−OH、−COOH、−COOCH、−NH、−COOCHCH、−COOCHCF等が挙げられる。該含フッ素アルキル基は、これらの群から選ばれる少なくとも1種で1〜3個置換されていてもよい。
一般式(1)のRfにおいて、一般式(1−1)で表される基の具体例としては、下記一般式で表される基が挙げられる。
Figure 2009242327
一般式(1−1)で表される基は、これらの中でも、下記一般式で表される基が好ましい。
Figure 2009242327
さらに、一般式(1−1)で表される基は、これらの中でも、下記一般式で表される基が、反応性が良好な点から好ましい。
Figure 2009242327
また、一般式(1)のRfにおいて、「置換基を有する炭素数1〜40の含フッ素アルキル基」及び「置換基を有する炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基」の置換基(環状エーテル構造を有する置換基)としては、例えば、下記一般式(1−2)で表される基も挙げられる。
Figure 2009242327
[式中、Mは脂肪族環又はヘテロ脂肪族環であり、Tは同一又は異なってH、F、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよい含フッ素アルキル基であり、mは3以上の整数である。]
一般式(1−2)において、m個のTは、それぞれ同一又は異なってH、F、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよい含フッ素アルキル基である。mは3以上の整数であり、mの数は脂肪族環及びヘテロ脂肪族環を構成する炭素の数、ヘテロ原子の数及び種類等によって決まる。
一般式(1−2)において、ヘテロ脂肪族環を構成するヘテロ原子としては、O、N及びSからなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
一般式(1−2)において、Mで表される脂肪族環及びヘテロ脂肪族環の炭素数は、通常3〜100程度、好ましくは3〜50程度、より好ましくは3〜20程度である。
一般式(1−2)のTにおいて、「置換基を有していてもよいアルキル基」のアルキル基としては、炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が挙げられる。例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、シクロデシル等の炭素数1〜12のアルキル基が挙げられる。より好ましくは、炭素数1〜8のアルキル基である。該アルキル基は置換されていてもよく、該置換基としては、本発明に悪影響を与えないものであれば特に限定はない。該置換基としては、例えば、−OH、−COOH、−COOCH、−NH、−COOCHCH等が挙げられる。該アルキル基は、これらの群から選ばれる少なくとも1種で1〜3個置換されていてもよい。
また、一般式(1−2)のTにおいて、「置換基を有していてもよい含フッ素アルキル基」の含フッ素アルキル基は、炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖又は環状の含フッ素アルキル基が挙げられる。例えば、−CF、−CHCF、CHCFCF、−CFCFCF等が挙げられる。より好ましくは、炭素数1〜8の含フッ素アルキル基である。該含フッ素アルキル基は置換されていてもよく、該置換基としては、本発明に悪影響を与えないものであれば特に限定はない。該置換基としては、例えば、−OH、−COOH、−COOCH、−NH、−COOCHCH、−COOCHCF等が挙げられる。該含フッ素アルキル基は、これらの群から選ばれる少なくとも1種で1〜3個置換されていてもよい。
一般式(1−2)で表される基の好ましい具体例としては、下記一般式で表される基が挙げられる。
Figure 2009242327
[式中、M、Tは、前記に同じ。mは3以上の整数であり、mの数は脂肪族環及びヘテロ脂肪族環を構成する炭素の数、ヘテロ原子の数及び種類等によって決まる。]
これらの中でも、下記一般式
Figure 2009242327
[式中、M、T及びmは、前記に同じ。]
で表される化合物が、反応性が良好な点から好ましい。
一般式(1−2)で表される基のさらに具体的な例としては、下記一般式で表される基が挙げられる。
Figure 2009242327
これらの中でも、下記一般式
Figure 2009242327
で表される基が、反応性が良好な点及び得られる皮膜に機械強度を付与できる点から好ましく挙げられる。
さらに、一般式(1)のRfにおいて、「置換基を有する炭素数1〜40の含フッ素アルキル基」及び「置換基を有する炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基」の置換基(環状エーテル構造を有する置換基)としては、例えば、下記一般式(1−3)で表される基も挙げられる。
Figure 2009242327
[式中、Tは同一又は異なってH、F、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよい含フッ素アルキル基]
一般式(1−3)において、5つのTは、それぞれ同一又は異なってH、F、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよい含フッ素アルキル基である。
一般式(1−3)のTにおいて、「置換基を有していてもよいアルキル基」のアルキル基としては、炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が挙げられる。例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、シクロデシル等の炭素数1〜12のアルキル基が挙げられる。より好ましくは、炭素数1〜8のアルキル基である。該アルキル基は置換されていてもよく、該置換基としては、本発明に悪影響を与えないものであれば特に限定はない。該置換基としては、例えば、−OH、−COOH、−COOCH、−NH、−COOCHCH等が挙げられる。該アルキル基は、これらの群から選ばれる少なくとも1種で1〜3個置換されていてもよい。
また、一般式(1−3)のTにおいて、「置換基を有していてもよい含フッ素アルキル基」の含フッ素アルキル基としては、炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖又は環状の含フッ素アルキル基が挙げられる。例えば、−CF、−CHCF、CHCFCF、−CFCFCF等が挙げられる。より好ましくは、炭素数1〜8の含フッ素アルキル基である。該含フッ素アルキル基は置換されていてもよく、該置換基としては、本発明に悪影響を与えないものであれば特に限定はない。該置換基としては、例えば、−OH、−COOH、−COOCH、−NH、−COOCHCH、−COOCHCF等が挙げられる。該含フッ素アルキル基は、これらの群から選ばれる少なくとも1種で1〜3個置換されていてもよい。
一般式(1)のRfにおいて、一般式(1−3)で表される基の具体例としては、下記一般式で表される基が挙げられる。
Figure 2009242327
これらの中でも、下記一般式
Figure 2009242327
で表される基が、反応性が良好な点から好ましい。
一般式(1)のRfにおいて、「置換基を有する炭素数1〜40の含フッ素アルキル基」及び「置換基を有する炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基」の好ましい具体的な構造式は、例えば、以下の構造式で表すことができる。下記式中、該置換基(環状構造を有するエーテル基)はYで表す。
Figure 2009242327
[式中、l及びmは同一又は異なって1〜10の整数であり、s、t及びuは同一又は異なって0又は1であり、nは0〜5の整数であり、n、n及びnは同一又は異なって0以上の整数であって、n+n+n=1〜10であり、X、X、X及びXは同一又は異なってF又はCF3であり、X、X及びX6は同一又は異なってH又はFであり、各繰り返し単位はこの順に限られず、ブロックでもよくランダムでもよい。]
Rfはこれらの中でも、下記構造式で表されるものが好ましい。
Figure 2009242327
[式中、nは前記に同じ。]
さらに、Rfはこれらの中でも特に下記構造式で表されるものが好ましい。
Figure 2009242327
[式中、RはH又はCHであり、Rf及びRfは同一又は異なって炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基であり、nは0〜30の整数である。]
Figure 2009242327
[式中、R、Rf、Rf、nは前記に同じ。]
一般式(1)−S−CX2CHF−Z−O−Rfにおいて、Xは同一又は異なってH又はFである。また、一般式(1)において、Zは−CF−又は単結合である。一般式(1)においては、XがHかつZが−CF−である化合物、又はXがFかつZが単結合である化合物が好ましい。
一般式(1)で表される化合物の中でも、下記一般式(1a)
Figure 2009242327
[式中、TはO、N及びSからなる群から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を有していてもよい炭化水素であり、pは2以上の整数であり、X、Z及びRfはそれぞれ同一又は異なって前記に同じである。]
で表される化合物が好ましい。
一般式(1a)において、X、Z及びRfはそれぞれ同一又は異なり、上記一般式(1)で表される化合物のものと同じである。
また、一般式(1a)で表される化合物において、式:−(S−CXCHF−Z−O−Rf)で表される基は、p個(pは2以上の整数)存在し、それぞれ同一又は異なる。
pは通常2〜20の整数、好ましくは2〜10の整数、より好ましくは2〜6の整数である。
一般式(1a)で表される化合物の具体例としては、例えば、下記一般式(1b)
Figure 2009242327
[式中、Rは同一又は異なって単結合、−C2a−、−C2b−B−C2c−又は−S−C2d−であり、
a、b、c及びdは同一又は異なって1以上の整数であり、
Bは−S−、−C(=O)O−、−OC(=O)−又は−O−であり、
Aは−C2e−又は−C2f−E−C2g−であり、
e、f及びgは同一又は異なって1以上の整数であり、
Eは−S−、−C(=O)O−、−OC(=O)−又は−O−であり、
はH、置換基を有していてもよいアルキル基又は式:−R−S−CX2CHF−Z−O−Rfで表される基であり、
はH、置換基を有していてもよいアルキル基又は式:−R−S−CX2CHF−Z−O−Rfで表される基であり、
qは0以上の整数であり、
X、Z及びRfはそれぞれ同一又は異なって前記に同じであり、
式:−(S−CXCHF−Z−O−Rf)で表される基は同一又は異なる。]
で表される化合物が挙げられる。
一般式(1b)において、X、Z及びRfはそれぞれ同一又は異なり、上記一般式(1)で表される化合物のものと同じである。
一般式(1b)中、Rは同一又は異なって単結合、−C2a−、−C2b−B−C2c−又は−S−C2d−である。a、b、c及びdは同一又は異なって1以上の整数であり、好ましくは1〜20の整数、より好ましくは1〜10の整数である。
また、Rが−C2b−B−C2c−で示される基において、Bは−S−、−C(=O)O−、−OC(=O)−又は−O−である。ただし、Rにおいて、−C2a−、−C2b−B−C2c−及び−S−C2d−はそれぞれ紙面の右側結合子が一般式(1b)中の−S−CX2CHF−Z−O−RfのS原子に結合する。Bはこれらの中でも、−OC(=O)−が好ましい。
一般式(1b)中、Aは−C2e−又は−C2f−E−C2g−である。e、f及びgは同一又は異なって1以上の整数であり、好ましくは1〜20の整数、より好ましくは1〜10の整数である。Eは−S−、−C(=O)O−、−OC(=O)−又は−O−である。Eはこれらの中でも、−O−が好ましい。
一般式(1b)において、RはH、置換基を有していてもよいアルキル基又は式:−R−S−CX2CHF−Z−O−Rfで表される基である。
で示される「置換基を有していてもよいアルキル基」のアルキル基としては、炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が挙げられる。例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、シクロデシル等の炭素数1〜12のアルキル基が挙げられる。より好ましくは、炭素数1〜8のアルキル基である。該アルキル基は置換されていてもよく、該置換基としては、本発明に悪影響を与えないものであれば特に限定はない。該置換基としては、例えば、−OH、−COOH、−COOCH、−NH、−COOCHCH、−COOCHCF等が挙げられる。該アルキル基は、これらの群から選ばれる少なくとも1種で1〜3個置換されていてもよい。
一般式(1b)において、RはH、置換基を有していてもよいアルキル基又は式:−R−S−CX2CHF−Z−O−Rfで表される基である。
で示される「置換基を有していてもよいアルキル基」のアルキル基としては、炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が挙げられる。例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、シクロデシル等の炭素数1〜12のアルキル基が挙げられる。より好ましくは、炭素数1〜8のアルキル基である。該アルキル基は置換されていてもよく、該置換基としては、本発明に悪影響を与えないものであれば特に限定はない。該置換基としては、例えば、−OH、−COOH、−COOCH、−NH、−COOCHCH、−COOCHCF等が挙げられる。該アルキル基は、これらの群から選ばれる少なくとも1種で1〜3個置換されていてもよい。
一般式(1b)において、qは0以上の整数である。qは0〜10の整数であることが好ましく、0〜5の整数であることがより好ましく、0又1であることが特に好ましい。
一般式(1b)で表される化合物の中でも、特に好ましい化合物として、下記一般式で表される化合物が挙げられる。
Figure 2009242327
[式中、X、Z、Rf、b及びcはそれぞれ同一又は異なって前記に同じである。]
Figure 2009242327
[式中、X、Z、Rf、b、c、f及びgはそれぞれ同一又は異なって前記に同じである。]
Figure 2009242327
[式中、X、Z、Rf、b、c及びeはそれぞれ同一又は異なって前記に同じである。]
Figure 2009242327
[式中、X、Z、Rf、b及びcはそれぞれ同一又は異なって前記に同じである。]
Figure 2009242327
[式中、X、Z、Rf、b及びcそれぞれ同一又は異なって前記に同じであり、Rは炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基である。]
さらに、一般式(1a)で表される化合物の具体例としては、例えば、下記一般式(1c)
Figure 2009242327
[式中、Qは置換基を有していてもよい脂肪族環、置換基を有していてもよいヘテロ脂肪族環、置換基を有していてもよい芳香族環又は置換基を有していてもよいヘテロ芳香族環であり、
該置換基はそれぞれ炭素数1〜12のアルキル基、−OH、−COOR、−CONR、―NH2、−COCl、―SOF、―SOH及び−CNからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
はH、アルキル基又は含フッ素アルキル基であり、
及びRは同一又は異なってH、アルキル基又は含フッ素アルキル基であり、
rは2以上の整数であり、
X、Z及びRfはそれぞれ同一又は異なって前記に同じであり、
式:−S−CXCHF−Z−O−Rfで表される基は同一又は異なる。]
で表される化合物が挙げられる。
一般式(1c)において、X、Z及びRfはそれぞれ同一又は異なり、上記一般式(1)で表される化合物のものと同じである。
一般式(1c)のQにおいて、置換基を有していてもよい脂肪族環は、単環、複環のいずれであってもよい。また、置換基を有する場合、該置換基はそれぞれ炭素数1〜12のアルキル基、−OH、−COOR、−CONR、―NH2、−COCl、―SOF、―SOH及び−CNからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
該置換基−COORにおいて、RはH、アルキル基又は含フッ素アルキル基である。該アルキル基としては、例えば、炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が挙げられる。該含フッ素アルキル基としては、例えば、炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖又は環状の含フッ素アルキル基が挙げられる。
また、置換基−CONRにおいて、R及びRは同一又は異なってH、アルキル基又は含フッ素アルキル基である。該アルキル基としては、例えば、炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が挙げられる。また、該含フッ素アルキル基としては、例えば、炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖又は環状の含フッ素アルキル基が挙げられる。
一般式(1c)で表される化合物において、rは2以上の整数であり、−S−CXCHF−Z−O−Rfで表される基は、一般式(1c)で表される化合物中に2つ以上存在する。rは通常2〜20の整数、好ましくは2〜10の整数、より好ましくは2〜6の整数である。
置換基を有していてもよい脂肪族環の炭素数は、通常3〜100程度、好ましくは3〜50程度、より好ましくは3〜12程度である。
置換基を有していてもよい脂肪族環の具体例としては、下記一般式で表される脂肪族環が挙げられる。
Figure 2009242327
[式中、それぞれの脂肪族環は一般式(1c)と同じ置換基を有していてもよく、X、Z及びRfは前記一般式(1)で表される化合物のものと同じであり、rは一般式(1c)のものと同じである。]
一般式(1c)のQにおいて、置換基を有していてもよいヘテロ脂肪族環は、単環、複環のいずれであってもよい。また、置換基を有する場合、該置換基はそれぞれ炭素数1〜12のアルキル基、−OH、−COOR、−CONR、―NH2、−COCl、―SOF、―SOH及び−CNからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
、R及びRは、前記置換基を有していてもよい脂肪族環のものと同じである。
置換基を有していてもよいヘテロ脂肪族環の炭素数は、通常2〜100程度、好ましくは2〜50程度、より好ましくは2〜12程度である。
ヘテロ脂肪族環に含まれるヘテロ原子としては、例えば、O、N及びSからなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
該置換基を有していてもよいヘテロ脂肪族環の具体例としては、下記一般式で表されるヘテロ脂肪族環が挙げられる。
Figure 2009242327
[式中、それぞれの脂肪族環は一般式(1c)と同じ置換基を有していてもよく、X、Z及びRfは前記一般式(1)で表される化合物のものと同じであり、rは一般式(1c)のものと同じである。]
一般式(1c)のQにおいて、置換基を有していてもよい芳香族環は、単環、複環のいずれであってもよい。また、置換基を有する場合、該置換基はそれぞれ炭素数1〜12のアルキル基、−OH、−COOR、−CONR、―NH2、−COCl、―SOF、―SOH及び−CNからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
、R及びRは、前記置換基を有していてもよい脂肪族環のものと同じである。
置換基を有していてもよい芳香族環の炭素数は、通常6〜100程度、好ましくは6〜50程度、より好ましくは6〜20程度である。
置換基を有していてもよい芳香族環の具体例としては、下記一般式で表される芳香族環が挙げられる。
Figure 2009242327
[式中、それぞれの芳香族環は一般式(1c)と同じ置換基を有していてもよく、X、Z及びRfは前記一般式(1)で表される化合物のものと同じであり、rは一般式(1c)のものと同じである。]
一般式(1c)のQにおいて、置換基を有していてもよいヘテロ芳香族環は、単環、複環のいずれであってもよい。また、置換基を有する場合、該置換基はそれぞれ炭素数1〜12のアルキル基、−OH、−COOR、−CONR、―NH2、−COCl、―SOF、―SOH及び−CNからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
、R及びRは、前記置換基を有していてもよい脂肪族環のものと同じである。
置換基を有していてもよいヘテロ芳香族環の炭素数は、通常4〜100程度、好ましくは4〜50程度、より好ましくは4〜20程度である。
置換基を有していてもよいヘテロ芳香族環の具体例としては、下記一般式で表されるヘテロ芳香族環が挙げられる。
Figure 2009242327
[式中、それぞれのヘテロ芳香族環は一般式(1c)と同じ置換基を有していてもよく、X、Z及びRfは前記一般式(1)で表される化合物のものと同じであり、rは一般式(1c)のものと同じである。]
製造方法
本発明の製造方法は、分子内に2以上のチオール基を有する化合物を一般式(2)
CX2=CF−Z−O−Rf (2)
[式中、X、Z及びRfは前記に同じである。]
で表される化合物と反応させて、一般式(1)
−S−CX2CHF−Z−O−Rf (1)
[式中、Rf、X及びZは前記に同じ。]
で表される基を2以上有する化合物を得ることを特徴とする。
本発明の製造方法において、分子内に2以上のチオール基を有する化合物としては、例えば下記一般式(3a)
Figure 2009242327
[式中、TはO、N及びSからなる群から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を有していてもよい炭化水素であり、pは2以上の整数である。]
で表される化合物が挙げられる。
一般式(3a)において、T及びpは一般式(1a)のものと同じである。
一般式(3a)で表される化合物の具体例としては、例えば、下記一般式(3b)
Figure 2009242327
[式中、R5bはH、置換基を有していてもよいアルキル基又は式:−R−SHで表される基であり、R6bはH、置換基を有していてもよいアルキル基又は式:−R−SHで表される基であり、R、A及びqは前記に同じである。]
で表される化合物が挙げられる。
一般式(3b)において、R5bはH、置換基を有していてもよいアルキル基又は式:−R−SHで表される基である。
5bで示される「置換基を有していてもよいアルキル基」のアルキル基としては、炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が挙げられる。例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、シクロデシル等の炭素数1〜12のアルキル基が挙げられる。より好ましくは、炭素数1〜8のアルキル基である。該アルキル基は置換されていてもよく、該置換基としては、本発明に悪影響を与えないものであれば特に限定はない。該置換基としては、例えば、−OH、−COOH、−COOCH、−NH、−COOCHCH、−COOCHCF等が挙げられる。該アルキル基は、これらの群から選ばれる少なくとも1種で1〜3個置換されていてもよい。
一般式(3b)において、R6bはH、置換基を有していてもよいアルキル基又は式:−R−SHで表される基である。
6bで示される「置換基を有していてもよいアルキル基」のアルキル基としては、炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が挙げられる。例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、シクロデシル等の炭素数1〜12のアルキル基が挙げられる。より好ましくは、炭素数1〜8のアルキル基である。該アルキル基は置換されていてもよく、該置換基としては、本発明に悪影響を与えないものであれば特に限定はない。該置換基としては、例えば、−OH、−COOH、−COOCH、−NH、−COOCHCH、−COOCHCF等が挙げられる。該アルキル基は、これらの群から選ばれる少なくとも1種で1〜3個置換されていてもよい。
一般式(3b)で表される化合物の中でも、特に好ましい化合物として、下記一般式で表される化合物が挙げられる。
Figure 2009242327
[式中、b及びcはそれぞれ同一又は異なって前記に同じである。]
Figure 2009242327
[式中、b、c及びeはそれぞれ同一又は異なって前記に同じである。]
Figure 2009242327
[式中、b、c、f及びgはそれぞれ同一又は異なって前記に同じである。]
Figure 2009242327
[式中、b及びcはそれぞれ同一又は異なって前記に同じである。]
Figure 2009242327
[式中、b及びcそれぞれ同一又は異なって前記に同じであり、Rは炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基である。]
一般式(3b)で表される化合物としては、例えば、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、1,2−ジメルカプトエタン、1,2−ジメルカプトプロパン、1,3−ジメルカプトプロパン、ジメルカプトブタン、ジメルカプトヘキサン、テトラキスメルカプトメチルメタン、ジメルカプトメタン、トリメルカプトメタン、1,2,3−トリメルカプトプロパン、1,2,3,4−テトラメルカプトブタン、ジメルカプトメタン、1,1−ジメルカプトエタン、1,2−ジメルカプトエタン、1,1−ジメルカプトプロパン、1,2−ジメルカプトプロパン、1,3−ジメルカプトプロパン、2,2−ジメルカプトプロパン、1,1−ジメルカプトブタン、1,2−ジメルカプトブタン、1,3−ジメルカプトブタン、1,4−ジメルカプトブタン、2,2−ジメルカプトブタン、2,3−ジメルカプトブタン、1,2−ジメルカプトエチルチオ−3−メルカプトプロパン、1,2−ビス−2−メルカプトエチルチオ−3−メルカプトプロパン、ビス(メルカプトメチル)スルフィド、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、ビス(メルカプトメチルチオ)メタン、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール等が挙げられる。
また、一般式(3a)で表される化合物の具体例としては、例えば、下記一般式(3c)
Figure 2009242327
[式中、Q及びrは前記一般式(1c)のものと同じである。]
で表される化合物が挙げられる。
一般式(3c)において、Qは、前記一般式(1c)と同じ置換基を有していてもよい脂肪族環、置換基を有していてもよいヘテロ脂肪族環、置換基を有していてもよい芳香族環又は置換基を有していてもよいヘテロ芳香族環である。該置換基はそれぞれ炭素数1〜12のアルキル基、−OH、−COOR、−CONR、―NH2、−COCl、―SOF、―SOH及び−CNからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
該置換基−COORにおいて、RはH、アルキル基又は含フッ素アルキル基である。該アルキル基としては、例えば、炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が挙げられる。また、該含フッ素アルキル基としては、例えば、炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖又は環状の含フッ素アルキル基が挙げられる。
また、置換基−CONRにおいて、R及びRは同一又は異なってH、アルキル基又は含フッ素アルキル基である。該アルキル基としては、例えば、炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が挙げられる。また、該含フッ素アルキル基としては、例えば、炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖又は環状の含フッ素アルキル基が挙げられる。
一般式(3c)で表される化合物において、rは2以上の整数であり、−(S−CXCHF−Z−O−Rf)で表される基は、一般式(3c)で表される化合物中に2つ以上存在する。rは通常2〜20の整数、好ましくは2〜10の整数、より好ましくは2〜6の整数である。
置換基を有していてもよい脂肪族環の炭素数は、通常3〜100程度、好ましくは3〜50程度、より好ましくは3〜12程度である。
該置換基を有していてもよい脂肪族環の具体例としては、下記一般式で表される脂肪族環が挙げられる。
Figure 2009242327
[式中、それぞれの脂肪族環は一般式(3c)と同じ置換基を有していてもよく、該置換基及びrは前記一般式(1c)で表される化合物のものと同じである。]
一般式(3c)のQにおいて、置換基を有していてもよいヘテロ脂肪族環は、単環、複環のいずれであってもよい。また、置換基を有する場合、該置換基はそれぞれ炭素数1〜12のアルキル基、−OH、−COOR、−CONR、―NH2、−COCl、―SOF、―SOH及び−CNからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
、R及びRは、前記置換基を有していてもよい脂肪族環のものと同じである。
置換基を有していてもよいヘテロ脂肪族環の炭素数は、通常2〜100程度、好ましくは2〜50程度、より好ましくは2〜12程度である。
ヘテロ脂肪族環に含まれるヘテロ原子としては、例えば、O、N及びSからなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
置換基を有していてもよいヘテロ脂肪族環の具体例としては、下記一般式で表されるヘテロ脂肪族が挙げられる。
Figure 2009242327
[式中、それぞれのヘテロ脂肪族環は一般式(3c)と同じ置換基を有していてもよく、該置換基及びrは前記一般式(1c)で表される化合物のものと同じである。]
一般式(3c)において、Qが置換基を有していてもよいヘテロ脂肪族環である化合物の具体例としては、2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン、4,5−ジメルカプトメチル−1,3−ジチアン等が挙げられる。
一般式(3c)のQにおいて、置換基を有していてもよい芳香族環は、単環、複環のいずれであってもよい。また、置換基を有する場合、該置換基はそれぞれ炭素数1〜12のアルキル基、−OH、−COOR、−CONR、―NH2、−COCl、―SOF、―SOH及び−CNからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
、R及びRは、前記置換基を有していてもよい脂肪族環のものと同じである。
置換基を有していてもよい芳香族環の炭素数は、通常6〜100程度、好ましくは6〜50程度、より好ましくは6〜20程度である。
置換基を有していてもよい芳香族環の具体例としては、下記一般式で表される芳香族環が挙げられる。
Figure 2009242327
[式中、それぞれの芳香族環は一般式(3c)と同じ置換基を有していてもよく、該置換基及びrは一般式(1c)で表される化合物のものと同じである。]
一般式(3c)において、Qが置換基を有していてもよい芳香族環である化合物の具体例としては、1,2−ジメルカプトベンゼン、1,3−ジメルカプトベンゼン、1,4−ジメルカプトベンゼン、1,3,5−トリメルカプトベンゼン、1,2−ジメルカプトトルエン、1,3−ジメルカプトトルエン、1,4−ジメルカプトトルエン、1,3,5−トリメルカプトトルエン、1,2−ジメルカプトキシレン、1,3−ジメルカプトキシレン、1,4−ジメルカプトキシレン、1,3−ジメルカプトトリレン、1,3,5−トリメルカプトトリレン等が挙げられる。
一般式(1c)のQにおいて、置換基を有していてもよいヘテロ芳香族環は、単環、複環のいずれであってもよい。また、置換基を有する場合、該置換基はそれぞれ炭素数1〜12のアルキル基、−OH、−COOR、−CONR、―NH2、−COCl、―SOF、―SOH及び−CNからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
、R及びRは、前記置換基を有していてもよい脂肪族環のものと同じである。
置換基を有していてもよいヘテロ芳香族環の炭素数は、通常4〜100程度、好ましくは〜50程度、より好ましくは4〜20程度である。
ヘテロ芳香族環に含まれるヘテロ原子としては、例えば、O、N及びSからなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
Figure 2009242327
[式中、それぞれのヘテロ芳香族環は一般式(3c)と同じ置換基を有していてもよく、該置換基及びrは一般式(1c)で表される化合物のものと同じである。]
本発明の分子内に2以上のチオール基(−SH基、メルカプト基)を有する化合物は、従来公知の製造方法によって得られる化合物であり、市販品を使用することもできる。本発明の分子内に2以上のチオール基を有する化合物は、例えば、TheChemistry of the thiol group(Chemistry of Functional Groups) By Saul Patai: John Wiley and Sons Ltd 出版等に記載の方法に準じて合成することができる。例えば、チオ尿素を反応させて、イソチウロニウム塩化し、これを加水分解するイソチウロニウム塩法等が挙げられる。
本発明の製造方法においては、分子内に2以上のチオール基を有する上記化合物と一般式(2)で表される化合物CX2=CF−Z−O−Rfを反応させて、本発明の多官能含フッ素化合物を得る。一般式(2)で表される化合物のX、Z及びRfは、一般式(1)で表される化合物のものと同じである。
一般式(2)で表される化合物の具体な構造式としては、一般式(1)で表される化合物と同じくRf中の前記置換基(一般式(1−1)、(1−2)、(1−3)等で表される環状構造を有するエーテル基)をYとすると、例えば以下の構造式が挙げられる。
Figure 2009242327
[式中、nは前記に同じ。]
Figure 2009242327
[式中、nは前記に同じ。]
さらに、一般式(2)で表される化合物はこれらの中でも、下記構造式で表されるものが特に好ましい。
Figure 2009242327
[式中、RはH又はCHであり、Rf及びRfは同一又は異なって炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基であり、nは0〜30の整数である。]
Figure 2009242327
[式中、R、Rf、Rf、及びnは前記に同じ。]
本発明の一般式(2)で表される化合物は、従来公知の製造方法によって得られる化合物であり、市販品を使用することもできる。
本発明の一般式(2)で表される化合物の製造方法としては、例えば、国際公開WO2004/016689パンフレットに記載されている方法が具体的に挙げられる。
また、三共出版 「フッ素化学入門」 独立行政法人 日本学術振興会 フッ素化学 第155委員会編 に記載されている具体的な合成ルートに従い製造することができる。
本発明の製造方法において、分子内に2以上のチオール基を有する化合物の使用量は、分子内のチオール基の数によって異なり、チオール基1つに対して一般式(2)で表される化合物が1つ反応するのに足る量を使用すればよい。本明細書においては、この量を当量という。分子内に2個チオール基をもつ化合物では当量は分子量の1/2、同様に分子内に3個チオール基をもつ化合物では当量は分子量の1/3となる。
分子内に2以上のチオール基を有する化合物の使用量は、一般式(2)で表される化合物に対して、通常、2〜0.1当量程度、好ましくは1.2〜0.2当量程度、より好ましくは1〜0.5当量程度の量である。換言すれば、分子内に2以上のチオール基をもつ化合物のチオール基1モルに対して、一般式(2)で表される化合物を通常、0.5〜10モル程度、好ましくは0.83〜5モル程度、より好ましくは1〜2モル程度使用すればよい。
本発明の製造方法においては、分子内に2以上のチオール基を有する化合物と一般式(2)で表される化合物とがエンチオール反応(付加反応)することにより、分子内に2以上のチオール基を有する化合物のS上のHが下記一般式(4)
−CX2CHF−Z−O−Rf (4)
[式中、X、Z及びRfは前記に同じ。]
で表される基で置換される。
すなわち、本発明のエンチオール反応では、一般式(2)で表される化合物中に存在する炭素−炭素二重結合が、分子内に2以上のチオール基を有する化合物中のチオール基と付加反応する。一方、一般式(2)で表される化合物中に存在する上記Rf中の環状エーテル基は、実質的に反応せずに、本発明の多官能含フッ素化合物の反応性官能基(環状エーテル基)となる。
本発明の多官能含フッ素化合物は、一般式(2)で表される化合物中に存在する環状エーテル基由来の反応性官能基が分子内に複数存在するので、塗料の架橋剤、添加剤として好適に使用できる。また、発明の多官能含フッ素化合物を含む硬化性組成物とし、これを硬化させて硬化物を製造することもできる。
エンチオール反応によって得られる本発明の多官能含フッ素化合物中に未反応のチオール基が存在する場合、該未反応のチオール基は、本発明の多官能含フッ素化合物を硬化性組成物として用いた際、硬化反応基として作用する。
本発明の製造方法において、分子内に2以上のチオール基を有する化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
該エンチオール反応は、分子内に2以上のチオール基を有する化合物と一般式(2)で表される化合物との混合物に、紫外線を照射することによって容易に進行する。
紫外線の照射量は、通常0.1〜10J/cm程度、好ましくは0.5〜8J/cm程度、より好ましくは1〜6J/cm程度である。
該エンチオール反応の反応温度は、通常5〜60℃程度、好ましくは10〜55℃程度、より好ましくは20〜50℃程度である。
本発明の製造方法においては、分子内に2以上のチオール基を有する化合物と一般式(2)で表される化合物に加えて、光重合開始剤を使用してもよい。光重合開始剤を使用しなくても、本発明の多官能含フッ素化合物が得られるが、光重合開始剤を使用することにより、より短時間でエンチオール反応が進行し、目的とする多官能含フッ素化合物が得られる。
光重合開始剤の種類は、特に限定されず、従来公知のものを使用すればよく、市販品が容易に入手可能である。
光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、クロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、α−アミノアセトフェノン等のアセトフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール等のベンゾイン系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4− フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシ−プロピルベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、ミヒラーケトン等のベンゾフェノン系化合物;チオキサンソン、クロロチオキサンソン、メチルチオキサンソン、ジエチルチオキサンソン、ジメチルチオキサンソン等のチオキサンソン類;ベンジル、α−アシルオキシムエステル、アシルホスフィンオキサイド、グリオキシエステル、3−ケトクマリン、2−エチルアンスラキノン、カンファーキノン、アンスラキノン等の光重合開始剤が挙げられる。また、光重合開始剤の市販品としては、例えば、長瀬産業株式会社製のイルガキュア907、イルガキュア127、イルガキュア369、イルガキュア819等が挙げられる。光重合開始剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
また、光重合開始剤には、必要に応じてアミン類、スルホン類、スルフィン類等の公知の光開始助剤を添加してもよい。
光重合開始剤を使用する場合、光重合開始剤の使用量は、特に限定されず、適宜調整すればよいが、例えば、一般式(2)で表される化合物100質量部に対して、通常0.01〜10質量部程度、好ましくは0.5〜7質量部程度、より好ましくは1〜5質量部程度である。
本発明の製造方法においては、さらに溶媒を使用してもよい。溶媒を使用する場合、溶媒としては、エンチオール反応の進行を妨げない一般的に使用される従来公知の溶媒を使用すればよい。溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、HCFC225(ジクロロペンタフルオロプロパン)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルエチルケトン(MEK)等を使用すればよい。
本発明の製造方法においては、必要に応じて、さらに他の成分を添加してもよい。他の成分としては、例えば、酸化防止剤、レべリング剤、無機フィラー、有機フィラー等が挙げられる。
酸化防止剤を使用する場合、使用量は、一般式(2)で表される化合物100質量部に対して、通常0.01〜10質量部程度、好ましくは0.1〜2質量部程度、より好ましくは0.5〜1質量部程度である。
また、エンチオール反応は、特に紫外線を照射しなくても、適当な方法でラジカルを発生させることにより反応を進行させることができる。
ラジカルを発生させる方法としては、例えば公知のラジカル重合開始剤を使用して、加熱によってラジカルを発生させる方法が好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、公知のパーオキサイド類、アゾ系開始剤等が利用できる。
ラジカル重合開始剤の量は、一般式(2)で表される化合物100質量部に対してに対して通常0.01〜10質量部程度、好ましくは0.05〜7質量部程度、より好ましくは0.5〜3質量部程度である。
塗料用架橋剤及び添加物
本発明の多官能含フッ素化合物は、分子内に複数の環状エーテル基を有するので、塗料の架橋剤、添加剤として好適に使用できる。
本発明の多官能含フッ素化合物を架橋剤として使用できる塗料としては、例えば、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系、フッ素系等が挙げられる。
硬化組成物及び硬化物
本発明の多官能含フッ素化合物は、反応性の環状エーテル構造を有する置換基を分子内に複数有するので、硬化性含フッ素樹脂組成物として好適に使用できる。
硬化性含フッ素樹脂組成物の硬化形態としては、例えば、光により硬化する光硬化系が挙げられる。本発明の多官能含フッ素化合物を光硬化性含フッ素樹脂組成物として使用する場合、該組成物には、
(a)本発明の多官能含フッ素化合物及び
(b)光酸発生剤
を含む。
また、本発明の多官能含フッ素化合物は、エポキシ樹脂の硬化系として広く知られている種々の硬化性樹脂組成物として使用することができる。本発明の多官能含フッ素化合物を含む硬化性樹脂組成物の硬化形態としては、光硬化系以外に、例えば、スリーボンド・テクニカルニュース No.32 「エポキシ樹脂の硬化剤」等に記載されている硬化系を適宜選択できる。
本発明の多官能含フッ素化合物は、例えば、
(a)本発明の多官能含フッ素化合物、
(b)酸無水物及び
(c)硬化促進剤
を含む酸無水物系の硬化性樹脂組成物、
(a)本発明の多官能含フッ素化合物、
(b)アミン類(脂肪族アミン、芳香族アミン等)
を含むアミン系の硬化性樹脂組成物として使用できる。
これらの硬化性樹脂組成物に使用する酸無水物、アミン類(脂肪族アミン、芳香族アミン)としては、スリーボンド・テクニカルニュース No.32 「エポキシ樹脂の硬化剤」の例示をそのまま挙げることができる。
また、本発明の多官能含フッ素化合物を使用できる硬化性樹脂組成物としては、これらの硬化性樹脂組成物の他にも、例えば、イミダゾール系の硬化性樹脂組成物、ポリメルカプタン系の硬化性樹脂組成物等が挙げられる。
本発明の硬化性含フッ素樹脂組成物を使用できるこれらの硬化性樹脂組成物の中でも、光硬化系の硬化性樹脂組成物及び酸無水物系の硬化性樹脂組成物が好ましい。光硬化系の硬化性樹脂組成物は、硬化時間が短い、アミンを用いなくてよい、作業性がよい等の点で優れる。また、酸無水物系の硬化性樹脂組成物は、硬化物の電気特性、化学特性、機械特性に優れる点で好ましい。
本発明の多官能含フッ素化合物を光硬化性含フッ素樹脂組成物として使用する場合、該組成物には、(a)本発明の多官能含フッ素化合物及び(b)光酸発生剤を含む。
光酸発生剤としては、可視光線、紫外光線、電子線、X線、γ線等の活性エネルギー線を照射することによって初めてカチオン(酸)等を発生し、本発明の多官能含フッ素化合物のRfの中に含まれる上記環状エーテルの開環付加反応(架橋反応)を開始させる触媒として働くものを使用する。
本発明の多官能含フッ素化合物を含む光硬化性含フッ素樹脂組成物を用いると、前記活性エネルギー線により容易に硬化反応を開始でき、高温で加熱する必要がなく比較的低温で硬化反応が可能であるので、耐熱性が低く熱で変形や分解や着色が起こりやすい基材、例えば透明樹脂基材等にも適応できる。
本発明の光硬化性含フッ素樹脂組成物に用いる光酸発生剤は、吸収波長域が120nm〜400nmのものが好ましく、さらに吸収波長域が200〜380nmのものが好ましく、特に250〜380nmの吸収波長域のものが好ましい。
また光酸発生剤がフッ素原子を含有する化合物であるときは、多官能含フッ素化合物との相溶性が向上する点から好ましい。
光酸発生剤の具体例としては、例えば、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩等のオニウム塩;鉄アレーン錯体等のメタロセン系化合物;β−ケトエステル、β−スルホニルスルホンとこれらのα−ジアゾ化合物等のスルホン化合物;アルキルスルホン酸エステル、ハロアルキルスルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステル、イミノスルホネート等のスルホン酸エステル類;スルホンイミド化合物類、ジアゾメタン化合物類等が挙げられる。これらの中でも、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩、メタロセン系化合物が好ましく、さらに好ましくは芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩およびメタロセン化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の芳香族化合物が好ましい。これらは光照射に対して量子効率よく、カチオン重合を開始するカチオン種を生じるため好ましいものである。
さらには、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩およびメタロセン化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の芳香族化合物であり、かつ芳香族環に1〜4個の有機基Ra1〜Ra4(Ra1〜Ra4は同じか又は異なり、エーテル結合を含んでいてもよい炭素数1〜10のアルキル基、ヒドロキシル基、チオアルキル基又はチオフェノキシ基)が結合している化合物が好ましい。これらの化合物は、本発明の多官能含フッ素化合物との相溶性に優れるため好ましい。また、Ra1〜Ra4の少なくとも1つがチオフェノキシ基である光酸発生剤は、特に吸収波長が比較的長波長であることから好ましい。
光酸発生剤(開始剤)の具体例としては、下記一般式
Figure 2009242327
[式中、Ra1〜Ra4は同一又は異なって、エーテル結合を含んでいてもよい炭素数1〜10のアルキル基、ヒドロキシル基、チオアルキル基又はチオフェノキシ基;Xa1−は対アニオンである。]で表される化合物が挙げられる。
a1〜Ra4は水素原子でもよいが、少なくとも1つが炭素数1〜5のエーテル結合を含むか又は含まないアルキル基、ヒドロキシル基、チオアルキル基又はチオフェノキシ基のいずれかであるものが好ましい。
a1−としては、含フッ素アニオンがフッ素ポリマーとの相溶性により優れるため好ましく、具体例としては、下記一般式
Figure 2009242327
で表される化合物が挙げられる。
また、Ra1〜Ra4が部分的にフッ素化されているとフッ素ポリマーとの相溶性がより優れるため好ましい。
このような開始剤の具体例としては、下記一般式
Figure 2009242327
[式中、Xa1−は前記に同じ。]
で表される化合物が挙げられる。
本発明の光硬化性含フッ素樹脂組成物には、本発明の多官能含フッ素化合物を1種のみ含んでいてもよく、また、2種以上を含んでいてもよい。
なお、本発明の光硬化性含フッ素樹脂組成物に用いる多官能含フッ素化合物は、波長200nm〜400nmの範囲での透明性が高いものが好ましく、特に吸収波長域が250〜380nmの範囲で光路長1mm当たりの透過率が30%以上、さらには40%以上であるものが好ましい。
本発明の多官能含フッ素化合物は、これら紫外領域の光に対しても透明性が高いものであり、好ましいものである。
本発明の硬化性含フッ素樹脂組成物において、光酸発生剤の添加量は、多官能含フッ素化合物中のカチオン重合性基(架橋性環状エーテル構造単位)の含有量、架橋剤の使用の有無や架橋剤の使用量によって、さらには用いる光酸発生剤(開始剤)、光源の波長や、照射エネルギー量(強さと時間等)によって適宜選択されるが、架橋剤を使用しない場合では、多官能含フッ素化合物100質量部に対して0.01質量部以上、さらには0.05質量部以上、最も好ましくは0.1質量部以上で、30質量部以下、さらには20質量部以下、最も好ましくは10質量部以下である。
本発明の多官能含フッ素化合物と光酸発生剤を含む本発明の硬化性含フッ素樹脂組成物には、さらにつぎの架橋剤を添加してもよい。
架橋剤としては、カチオン重合をする官能基を1つ以上有するものが好ましく、具体的にはオキシラン系、オキセタン系の単量体あるいはオリゴマー等といったカチオン重合可能な環状エーテル基をもつ単量体あるいはオリゴマーが挙げられる。また、ビニルエーテル系単量体等のカチオン重合性炭素−炭素二重結合を1つ以上有する単量体であってもよい。
これらのカチオン重合性基を有する架橋剤は、本発明の組成物中の光酸発生剤が光によって発生するカチオンと反応し、本発明の組成物中の多官能含フッ素化合物の側鎖の架橋部位である架橋性環状エーテルと共重合することができるものである。
架橋剤用の単量体としては、例えばエポキシ系、脂環式エポキシ系、グリシジル系、オキセタン系等が挙げられるが、屈折率を低く維持するためにフルオロアルキル基又はフルオロアルコキシ基を有する単量体が好ましく、例えば単官能の単量体としては、具体的には下記一般式
Figure 2009242327
[Rfa1は炭素数1〜40の含フッ素アルキル基又は炭素数1〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基;Ma1は脂肪族環又はヘテロ脂肪族環である。]等の含フッ素オキシラン化合物、下記一般式
Figure 2009242327
[Ma2は脂肪族環又はヘテロ脂肪族環であり、Xa2は同一又は異なって、H、F、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のエーテル結合を有していてもよい含フッ素アルキル基であり、Rfa1は前記に同じである。]で表される含フッ素オキセタン化合物である。
a1及びMa2のヘテロ脂肪族環を構成するヘテロ原子としては、O、N及びSからなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。Ma1及びMa2で表される脂肪族環及びヘテロ脂肪族環の炭素数は、それぞれ通常3〜100程度、好ましくは3〜50程度、より好ましくは3〜20程度である。また、Ma1及びMa2のHは、それぞれF、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のエーテル結合を有していてもよい含フッ素アルキル基で置換されていてもよい。
これら単官能の含フッ素オキシラン化合物又は含フッ素オキセタン化合物のより具体例としては、下記一般式
Figure 2009242327
[式中、Rfa2は炭素数1〜40の含フッ素アルキル基又は炭素数1〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基;Ra2はH又はCHである。]
で表わされる化合物が好ましい。
これらの化合物の具体例としては、例えば下記一般式
Figure 2009242327
[式中、nは1〜4の整数であり、R2aは前記に同じである。]
で表される化合物等が挙げられる。
多官能の単量体としては、例えば、下記一般式
Figure 2009242327
[式中、Rfa3は炭素数1〜40の2〜6価の含フッ素有機基又は炭素数1〜100のエーテル結合を有する2価〜6価の含フッ素有機基;nは2〜6の整数;Ma1は前記に同じである。]
で表される多官能含フッ素オキシラン化合物、下記一般式
Figure 2009242327
[式中、Ra3、Xa2、n及びMa2は前記に同じである。]
で表される多官能含フッ素オキセタン化合物が挙げられる。
これらの中でも下記一般式
Figure 2009242327
[式中、Ra4は炭素数1〜40の2価の含フッ素アルキレン基又は炭素数1〜100のエーテル結合を有する2価の含フッ素アルキレン基;Xa2は前記に同じである。]
、又は下記一般式
Figure 2009242327
[式中、Ra5は炭素数1〜40の4価の含フッ素アルキレン基又は炭素数1〜100のエーテル結合を有する4価の含フッ素アルキレン基;Xa2は前記に同じである。]
で表される化合物が好ましい。
より具体的には、下記一般式
Figure 2009242327
[Rfa6は炭素数1〜100の2価以上の含フッ素有機基;Ra2は前記に同じである。]
で表される化合物が好ましい。
具体的な化合物としては、下記一般式
Figure 2009242327
で表される化合物等が挙げられる。
他の架橋剤としては、オキシラン系オリゴマーおよびオキセタン系オリゴマーも用いることができ、例えば下記一般式
Figure 2009242327
[式中、Ra7は炭素数3〜20の2価の有機基;Ra8およびRa9は同一又は異なって、H又はCH;nは2〜100の整数である。]
で表されるオリゴマー等が挙げられる。
これらの中でも、有機基Ra7の一部又は全部の水素原子がフッ素原子に置換されているオリゴマーは特に透明性を高く、屈折率を低く維持できる点で好ましい。
また、これら例示の単官能、多官能の単量体およびオリゴマーを架橋剤として本発明の組成物に用いる場合、特に含フッ素オキセタン化合物および、含フッ素オキセタン化合物と含フッ素オキシラン化合物の混合物が硬化反応性が良好な点で好ましい。
本発明の組成物には要求される特性(硬化反応性や硬度、耐擦傷性、耐磨耗性等)に応じて、アクリル系、メタクリル系、α−フルオロアクリル系の単官能又は多官能モノマーを添加してもよい。なかでも、アクリル系、メタクリル系、α−フルオロアクリル系官能基のいずれか又は2種以上と架橋性環状エーテル構造の両方を有する多官能モノマーが硬化反応性や硬度、耐擦傷性、耐磨耗性等を高くできる点で好ましく、例えば、下記一般式
Figure 2009242327
[式中、Xa3はH、CH又はF;Xa4はH又はCH;Ra10は炭素数1〜10の2価の有機基;Ra11は炭素数1〜5のアルキル基である。]等が挙げられる。
より具体的には、下記一般式
Figure 2009242327
[式中、Xa3はH、CH又はFである。]
等が挙げられる。
これらの添加モノマーを添加して用いる場合に、触媒(開始剤)として前記の光酸発生剤のみを添加して硬化させることが可能であるが、光カチオン触媒と光ラジカル触媒を併用すると硬化反応性を高くすることができる点で好ましい。
本発明の組成物には、要求される特性(屈折率や硬化反応性等)に応じて架橋性環状エーテル構造を有さない含フッ素ポリマーをさらに添加してもよい。添加する含フッ素ポリマーは有機溶剤に可溶で非晶性のものが加工成形しやすく、透明である点で好ましい。特に、有機溶剤に可溶で非晶性でありかつラジカル反応性のC=C結合を有する含フッ素ポリマーは、硬度、耐擦傷性、耐磨耗性等が高い点で好ましい。なかでも、国際公開WO02/18457号パンフレットに記載のラジカル硬化性含フッ素ポリマーは、屈折率が低く、硬化反応性に優れ、硬度、耐擦傷性、耐磨耗性が高い点で特に好ましい。ラジカル反応性の架橋基を有する含フッ素ポリマーを添加する場合、開始剤として前記の光酸発生剤のみを添加して硬化させることが可能であるが、光カチオン触媒と光ラジカル発生剤を併用すると硬化反応性を高くすることができる点で好ましい。
本発明の組成物では、前述の化合物のほかに必要に応じて、透明性を低下させない範囲で種々の添加剤を配合してもよい。
そうした添加剤としては、例えばレベリング剤、粘度調整剤、光安定剤、水分吸収剤、顔料、染料、補強剤等が挙げられる。
本発明の含フッ素樹脂組成物は各種の溶剤に溶解又は分散させ、溶液又は分散液の形態で用いられる。
ここで溶液の調製に使用する溶剤は、多官能含フッ素化合物、光酸発生剤、および必要に応じて添加する架橋剤、他の添加剤が均一に溶解又は分散するものであれば特に制限はないが、特に多官能含フッ素化合物を均一に溶解するものが好ましい。
かかる溶剤としては、例えばメチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のセロソルブ系溶剤;ジエチルオキサレート、ピルビン酸エチル、エチル−2−ヒドロキシブチレート、エチルアセトアセテート、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル、酢酸アミル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、2−ヒドロキシイソ酪酸エチル等のエステル系溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のプロピレングリコール系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘキサノン、シクロヘキサノン、メチルアミノケトン、2−ヘプタノン等のケトン系溶剤;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、イソペンチルアルコール等のアルコール系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類あるいはこれらの2種以上の混合溶剤等が挙げられる。
またさらに、多官能含フッ素化合物の溶解性を向上させるために、必要に応じてフッ素系の溶剤を用いてもよい。
フッ素系の溶剤としては、例えばCHCClF(HCFC−141b)、CFCFCHCl/CClFCFCHClF混合物(HCFC−225)、パーフルオロヘキサン、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)、メトキシ−ノナフルオロブタン、1,3−ビストリフルオロメチルベンゼン等のほか、下記一般式
Figure 2009242327
等のフッ素系アルコール類;ベンゾトリフルオライド、パーフルオロベンゼン、パーフルオロ(トリブチルアミン)、ClCFCFClCFCFCl等が挙げられる。
これらフッ素系溶剤は単独でも、またフッ素系溶剤同士、非フッ素系とフッ素系の1種以上との混合溶剤として用いてもよい。
これらの中でもケトン系溶剤、酢酸エステル系溶剤、アルコール系溶剤、芳香族系溶剤等の汎用溶剤が、塗装性、塗布の生産性等の面で好ましいものである。
また、本発明の組成物は、用途(例えば反射防止膜、封止部材等)によって硬化物の硬度や低屈折率性、広帯域性や低反射性等の光学物性を高める目的で無機化合物の微粒子を配合することもできる。
本発明における無機化合物の形状は、超微粒子やコロイドゾルであってもよい。被膜中に添加する無機化合物の微粒子の量は、被膜重量の50〜75重量%程度でよい。
無機微粒子の配合割合が大きくなると硬化物中のフッ素含有成分が希釈されてフッ素含有成分による屈折率低下作用が減弱してくるが、その代わりに、塗膜中にミクロボイドが形成されるようになり、当該ミクロボイドの作用によって塗膜の屈折率が低下して空気の屈折率に近づいていくので、フッ素含有成分とミクロボイドの協調によってより顕著な低屈折率材料が得られる。
硬化物中の無機微粒子の配合割合が被膜重量に対して50重量%より少ないと、塗膜中にミクロボイドは通常形成されず、主にフッ素含有成分の作用によって塗膜の屈折率を低くすることができる。
硬化物中の無機微粒子の配合割合が被膜重量に対して50重量%を超えると、硬化物の組成にもよるが、塗膜中にミクロボイドが形成されるようになり、フッ素含有成分及びミクロボイド両方の作用により塗膜の屈折率をより顕著に低くすることができる。硬化物中の無機超微粒子の配合割合が被膜重量に対して75重量%を超えると、フッ素含有成分の作用は残ってはいるが、ミクロボイドの屈折率低下作用が相対的に強くなり、顕著な被膜の光学物性は維持されるが、物理的強度が低下していく。
無機化合物微粒子やコロイドゾルとしては特に限定されないが、屈折率が1.5以下の化合物が好ましい。具体的にはフッ化マグネシウム(屈折率1.38)、酸化珪素(屈折率1.46)、フッ化アルミニウム(屈折率1.33〜1.39)、フッ化カルシウム(屈折率1.44)、フッ化リチウム(屈折率1.36〜1.37)、フッ化ナトリウム(屈折率1.32〜1.34)、フッ化トリウム(屈折率1.45〜1.50)等の微粒子やコロイドゾルが望ましい。微粒子やコロイドゾルの粒径(体積平均粒径)については、低屈折率材料の透明性を確保するために可視光の波長に比べて充分に小さいことが望ましい。具体的には100nm以下、特に50nm以下が好ましい。
微粒子の体積平均粒径は、レーザー回析散乱法を用いた粒度分布測定装置を用いて(例えば、マイクロトラック社製の粒度分布測定装置9320HRA等)、エタノール等の有機溶剤に分散させて室温にて測定する。
無機化合物微粒子を使用する際は、組成物中での分散安定性、低屈折率材料中での密着性等を低下させないために、予め有機分散媒中に分散した有機ゾルの形態で使用するのが望ましい。さらに、組成物中において、無機化合物微粒子の分散安定性、低屈折率材料中での密着性等を向上させるために、予め無機微粒子化合物の表面を各種カップリング剤等を用いて修飾することができる。各種カップリング剤としては、例えば有機置換された珪素化合物;アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、アンチモン又はこれらの混合物等の金属アルコキシド;有機酸の塩;配位性化合物と結合した配位化合物等が挙げられる。
本発明の含フッ素樹脂組成物は、溶剤に対して多官能含フッ素化合物又は添加物がディスパージョン状のものでも、溶液状のものでもよいが、均一な薄膜を形成するため、また比較的低温で成膜が可能となる点で、均一な溶液状であることが好ましい。
塗装法としては用途に応じた適切な公知の方法を採用することができる。例えば膜厚をコントロールする必要がある場合は、ロールコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、フローコート法、バーコート法、スプレーコート法、ダイコート法、スピンコート法、ディップコート法等が採用できる。
本発明の多官能含フッ素化合物と光酸発生剤からなる硬化性樹脂組成物および上記の方法等で基材に塗布したのち乾燥により得られる被膜は、紫外線、電子線又は放射線等の活性エネルギー線を照射することによって光硬化させることができる。
光硬化すると多官能含フッ素化合物中の架橋性環状エーテルが開裂して開環し、多官能含フッ素化合物が直接又は架橋剤を介して結合し、硬化する。その結果、樹脂硬度が高くなり、機械的強度が向上したり、耐摩耗性、耐擦傷性が向上したり、さらには硬化前には溶解していた溶剤に対して不溶となるだけでなく、他の数多くの種類の溶剤に対して不溶となる。
本発明で用いる多官能含フッ素化合物の硬化反応特性は主に光酸発生剤の種類や添加量、光源の波長や照射エネルギー量によって異なるが、多官能含フッ素化合物の側鎖の環状エーテル構造の違いによっても異なる。
前述のように多官能含フッ素化合物の側鎖の環状エーテル構造はオキシラン類、オキセタン類、テトラヒドロフラン類、1,3−ジオキソラン類、1,3,5−トリオキサン類等が好ましいが、なかでもポリマーの低屈折率を維持しながら、高い硬化反応性を示すものとして、オキセタン類およびオキシラン類(なかでも脂環式エポキシ基、グリシジル基)が好ましい。
特にオキセタン類はオキシラン類よりも重合速度が速く、連鎖移動しにくい。また、架橋反応による水酸基の発生が少ないため、光導波路用材料としてより好ましい。また、側鎖にオキセタン構造を有する硬化性含フッ素ポリマーに、オキシラン構造(エポキシ、グリシジル等)を有するポリマー又はオリゴマー、モノマーのいずれかを混合するとさらに高速硬化が可能になり、より好ましい。
本発明の組成物は、光酸発生剤および必要に応じて使用される硬化剤の働きにより、通常の光硬化条件によって容易に硬化して、透明性や機械的物性に優れた硬化物を得ることができる。本発明の硬化物の好ましい硬化率、すなわち、官能基の好ましい反応率は、30〜100%、より好ましくは50〜100%、さらには80〜100%であり、近赤外スペクトルのC−O伸縮(2100〜2300nm)の吸収強度から求めることができる。これらの反応率の硬化物は、高Tg、耐熱性、耐溶剤性に優れたものである。
これらの反応率を達成する為の条件として、前述の光酸発生剤を用いた場合には、照射する光の波長が200〜400nmであることが、光酸発生剤の吸収波長にあたり好ましく、光の照射量は0.1J/cm以上であることが十分な反応率を与える点で好ましく、10J/cm以下であると膜に変色等の劣化を与えない点で好ましい。硬化する時の温度は特に限定されないが、変色等を防ぐ目的で通常150℃以下であり、光照射から反応完結までの時間を短くする目的で、20℃以上、好ましくは30℃以上、さらには40℃以上であることが好ましい。
本発明の光硬化性含フッ素樹脂組成物は、光導波路用材料等の光デバイス用光学材料や光デバイスの加工に必要な封止部材用材料として有用であり、また、反射防止膜等の表示デバイス用の光学材料としても有用である。そのほか、電子半導体用の封止部材用材料、耐水耐湿性接着剤、光学部品や素子用の接着剤としても使用できる。
本発明によれば、分子内に2以上のチオール基を有する化合物と環状エーテル構造を有する含フッ素アリル化合物とのエンチオール反応、又は分子内に2以上のチオール基を有する化合物と環状エーテル構造を有する含フッ素ビニルエーテル化合物とのエンチオール反応により、容易に新規多官能含フッ素化合物を合成できる。得られた多官能含フッ素化合物は、分子内に複数の環状エーテル基を有するので、塗料の架橋剤、添加剤として好適に使用できる。また、得られた多官能含フッ素化合物は、硬化性を有する環状エーテル基を分子内に複数有するので、硬化性組成物および硬化物を製造することもできる。
以下に、本発明の実施例を挙げて、本発明を一層明らかにするが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の実施例において、(1)フッ素含有量の測定、(2)屈折率(n)の測定、(3)赤外吸収分析(IR分析)、(4)19F−NMRの測定及び(5)相溶性(溶解性)の測定は、以下の方法により行った。
(1)フッ素含有量の測定
酸素フラスコ燃焼法により試料10mgを燃焼し、分解ガスを脱イオン水20mlに吸収させ、吸収液中のフッ素イオン濃度をフッ素選択電極法(フッ素イオンメーター、オリオン社製 901型)で測定することにより、試料中のフッ素含有量を求めた(質量%)。
(2)屈折率(n)の測定
ナトリウムD線(589nm)を光源とし、アッベ屈折率計(株式会社アタゴ光学機器製作所製)を用いて25℃における試料の屈折率(n)を測定した。
(3)赤外吸収分析(IR分析)
Perkin Elmer社製フーリエ変換赤外分光光度計1760Xを使用し、室温にて試料の赤外吸収分析を行った。
(4)19F−NMR測定
BRUKER社製のNMR測定装置を用いて試料の19F−NMRを測定した。
19F−NMR測定条件:282MHz(トリクロロフルオロメタン:0ppm)。
(5)相溶性(溶解性)の測定
試料とアセトンとを質量比1:1で混合し、相溶性を目視で確認した。相溶性の評価は、相溶を○、二相分離を×とした。
本実施例で使用した環状エーテル構造を有する含フッ素アリルエーテル化合物及び多官能チオール化合物の構造式及び略称を以下に示す。
含フッ素アリルエーテル化合物
Figure 2009242327
多官能チオール化合物
Figure 2009242327
(カレンズMT BD1 昭和電工社製)
Figure 2009242327
(TMMP(Trimethylolpropane tris-3-mercaptopropionate)堺化学社製)
Figure 2009242327
(PEMP(Pentaerythritol tetrakis-3-mercaptopropionate)堺化学社製)
Figure 2009242327
(DPMP(Dipentaerythritolhexa-3-mercaptopropionate) 堺化学社製)。
QE−340M:(ポリチオールQE−340M 東レ・ファインケミカル株式会社製 構造式は非開示)。
実施例1
(1)混合溶液(a1)の調整
以下の配合に従い、混合溶液(a1)を調製した。
混合溶液(a1)
(i) AEEp−1 78質量部
(ii) TMMP 22質量部
(iii) メタノール 100質量部
(iv) イルガキュア907 4質量部。
(2)混合溶液(a1)の反応及びIR吸収測定
混合溶液(a1)1gを5mlの硝子製サンプル瓶に入れた。フタをせずに、サンプル瓶の上から、高圧水銀灯を用いて、それぞれ強度500、2000及び5000 mJ/cm2Uの紫外線を混合溶液(a1)に照射した。その後、室温で風乾させて、メタノールを除去し、得られた溶液(a1)のIR吸収を測定した。
AEEp−1とTMMPとのエンチオール反応によって変化すると思われる−SH基及びC=C結合に基づくIR吸収の変化をそれぞれ図1及び図2に示す。
図1及び図2から分かるように、紫外線照射によってAEEp−1とTMMPとのエンチオール反応が進行し、溶液(a1)中のSH基の減少及びC=C結合の減少が確認された。
紫外照射後の溶液(a1)は、透明で、わずかに黄味かかった色であった。また、紫外照射後の溶液(a1)の粘度は、紫外線照射前の各混合溶液に比べて目視でわかる程度に上昇した。
(3)混合溶液(a1)の反応率の計算
上記(2)得られた溶液(a1)の19F−NMR測定により、C=C二重結合に結合したフッ素の吸収の積分強度変化でAEEp−1とTMMPとの反応率を計算した。結果を下表1に示す。
Figure 2009242327
(4)紫外線照射後の溶液(a1)のフッ素含有率、屈折率及び相容性の測定
上記(2)で得られた、強度5000 mJ/cm2Uの紫外線照射後の溶液(a1)のフッ素含有率、屈折率及び相容性を測定した。結果を下表2に示す。
Figure 2009242327
比較例1
(1)混合溶液(b1)の調整
以下の配合に従い、混合溶液(b1)を調製した。
混合溶液(b1)
(i) AEEp−1 78質量部
(ii) メタノール 100質量部
(iii) イルガキュア907 4質量部。
(2)混合溶液(b1)の反応、IR吸収測定及び19F−NMR測定
混合溶液(b1)1gを、5mlの硝子製サンプル瓶に入れた。フタをせずに、サンプル瓶の上から、高圧水銀灯を用いて、強度5000 mJ/cm2Uの紫外線を混合溶液(b1)に照射した。その後、室温で風乾させて、メタノールを除去した。
紫外線照射後の各溶液のIR吸収測定及び19F−NMRの測定を行ったが、C=C結合の減少は見られず、C=C二重結合に結合したフッ素の吸収の積分強度変化もみられなかった。また、紫外線照射前後の粘度変化も目視では見られなかった。
実施例2
(1)混合溶液(a2)〜(a5)の調整
以下の配合に従い、混合溶液(a2)〜(a5)を調製した。
混合溶液(a2)
(i) AEEp−1 76質量部
(ii) MTBD 24質量部
(iii) メチルイソブチルケトン(MIBK) 100質量部
(iv) イルガキュア907 4質量部。
混合溶液(a3)
(i) AEEp−1 79質量部
(ii) PEMP 21質量部
(iii) MIBK 100質量部
(iv) イルガキュア907 4質量部。
混合溶液(a4)
(i) AEEp−1 78質量部
(ii) DPMP 22質量部
(iii) MIBK 100質量部
(iv) イルガキュア907 4質量部。
混合溶液(a5)
(i) AEEp−1 68質量部
(ii) QE340 32質量部
(iii) MIBK 100質量部
(iv) イルガキュア907 4質量部。
(2)混合溶液(a2)〜(a5)の反応、フッ素含有率、屈折率、相容性及びIR吸収の測定
混合溶液(a2)〜(a5)を各1gずつ、それぞれ5mlの硝子製サンプル瓶に入れた。フタをせずに、サンプル瓶の上から、高圧水銀灯を用いて、5000 mJ/cm2U強度の紫外線を各混合物に照射した。その後、室温で風乾させて、MIBKを除去した。
紫外線照射によってAEEp−1とMTBD、PEMP、DPMP及びQE340とのエンチオール反応がそれぞれ進行し、各溶液においてSH基の減少及びC=C結合の減少が確認された。
また、紫外線照射後の各溶液のフッ素含有率、屈折率及び相溶性の測定結果を下表3に示す。
Figure 2009242327
紫外照射後の各溶液の粘度は、紫外線照射前の各混合溶液に比べて目視でわかる程度に上昇した。
実施例3
(1)混合溶液(a6)〜(a13)の調整
以下の配合に従い、混合溶液(a6)〜(a13)を調製した。
混合溶液(a6)
(i) AEOx−1 79質量部
(ii) TMMP 21質量部
(iii) MIBK 100質量部
(iv) イルガキュア907 4質量部。
混合溶液(a7)
(i) AEOx−1 77質量部
(ii) MTBD 23質量部
(iii) MIBK 100質量部
(iv) イルガキュア907 4質量部。
混合溶液(a8)
(i) AEOx−1 80質量部
(ii) PEMP 20質量部
(iii) MIBK 100質量部
(iv) イルガキュア907 4質量部。
混合溶液(a9)
(i) AEOx−1 78質量部
(ii) DPMP 22質量部
(iii) MIBK 100質量部
(iv) イルガキュア907 4質量部。
混合溶液(a10
(i) AEOx−1 68質量部
(ii) QE340 32質量部
(iii) MIBK 100質量部
(iv) イルガキュア907 4質量部。
混合溶液(a11
(i) AEEp−0 69質量部
(ii) TMMP 31質量部
(iii) MIBK 100質量部
(iv) イルガキュア907 4質量部。
混合溶液(a12
(i) AEEp−2 83質量部
(ii) TMMP 17質量部
(iii) MIBK 100質量部
(iv) イルガキュア907 4質量部。
混合溶液(a13
(i) AECH−1 79質量部
(ii) TMMP 21質量部
(iii) MIBK 100質量部
(iv) イルガキュア907 4質量部。
(2)混合溶液(a6)〜(a13)の反応、フッ素含有率、屈折率、相溶性及びIR吸収測定
混合溶液(a6)〜(a13)を各1gずつ、それぞれ5mlの硝子製サンプル瓶に入れた。フタをせずに、サンプル瓶の上から、高圧水銀灯を用い、強度5000 mJ/cm2Uの紫外線を各混合物に照射した。その後、室温で風乾させて、MIBKを除去した。紫外線照射後の各溶液のフッ素含有率、屈折率及び相溶性を測定した。結果を下表4に示す。
Figure 2009242327
また、紫外線照射前後における各溶液のIR吸収を測定したところ、SH基の減少及びC=C結合の減少が確認された。紫外照射後の各溶液の粘度は、紫外線照射前の各混合溶液に比べて目視でわかる程度に上昇した。
実施例4(硬化性組成物の作製)
実施例1の混合溶液(a1)から得られたエポキシ基含有フッ素化合物をAとする。また実施例3の混合溶液(a6)から得られたオキセタン基含有含フッ素化合物をBとする。
また、硬化性組成物の作製には、下記の試薬を使用した。
架橋剤:ジャパンエポキシレジン社製 YX−8000(水添ビスフェノールエポキシ)
酸無水物:日立化成社製 HN−5500 (脂環式酸無水物)
光酸発生剤:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製IRGACURE PAG103(以下PAG103)、サンアプロ社製 CPI−200K、硬化促進剤 サンアプロ社製 UCAT−5003を併用した。
以下の配合で各成分を混合し、硬化性組成物(c1)〜(c5)を作製した(光硬化性)。
硬化性組成物(c1)
(i)A 50質量部
(ii)YX−8000 50質量部
(iii)PAG103 2質量部。
硬化性組成物(c2)
(i)A 100質量部
(ii) PAG103 2質量部。
硬化性組成物(c3)
(i)A 50質量部
(ii)YX−8000 50質量部
(iii)CPI−200K 5質量部。
硬化性組成物(c4)
(i)B 50質量部
(ii)YX−8000 50質量部
(iii)CPI−200K 5質量部。
硬化性組成物(c5)
(i)A 25質量部
(ii)B 25質量部
(ii)YX−8000 50質量部
(iii)CPI−200K 5質量部。
得られた硬化性組成物(c1)〜(c5)はいずれも均一透明な組成物であった。なお、光酸発生剤としてPAG103を使用した(c1)、(c2)に関してはPAG103由来の黄色の着色を呈した。
次に、以下の配合で各成分を混合し、硬化性組成物(c6)〜(c10)を作製した(酸無水物系)。
硬化性組成物(c6)
(i)A 50質量部
(ii)YX−8000 50質量部
(iii)HN−500 90質量部
(iv)UCAT−5003 2質量部。
硬化性組成物(c7)
(i)A 100質量部
(ii)HN−500 90質量部
(iii)UCAT−5003 2質量部。
硬化性組成物(c8)
(i)A 25質量部
(ii)B 25質量部
(ii)YX−8000 50質量部
(iii)HN−500 90質量部
(iv)UCAT−5003 2質量部。
硬化性組成物(c9)
(i)B 50質量部
(ii)YX−8000 50質量部
(iii)HN−500 90質量部
(iv)UCAT−5003 2質量部。
硬化性組成物(c10)
(i)A 80質量部
(ii)YX−8000 20質量部
(iii)HN−500 90質量部
(iv)UCAT−5003 2質量部。
得られた硬化性組成物(c6)〜(c10)はいずれも均一透明な組成物であった。
実施例5(塗布物の作製(光硬化))
実施例4で得られた硬化性組成物(c1)〜(c5)を表面未処理のアクリル板上にスピンコーターにより室温でコートし、室温で5分間真空乾燥した。この際、乾燥後の膜厚が1μmとなるように、スピンコーターの回転数を調整した(500〜2000回転)。
また、スピンコーターによる塗布時の塗布性をつぎの基準で評価した。結果を表5に示す。
○ : 塗布ムラがない。
△ : 一部に塗布ムラが認められる。
× : 塗布できない。
実施例6(硬化膜の物性測定)
実施例5で塗布した硬化性組成物(c1)〜(c5)を乾燥させて得られた被膜に高圧水銀灯を用い、室温にて5000mJ/cmの強度で紫外線を照射して光硬化させて硬化被膜を作製した。
実施例5で光硬化させた膜の物性を以下の方法で評価した。結果を表5に示す。
外観
目視で評価した。
○ : 透明均一
△ : 一部、不均一
× : 白濁。
フッ素含有率
前記の通り。
耐薬品性
メタノールを含浸させた綿布で塗膜表面を擦った後の塗膜表面の状態(溶解または剥離)を目視で観察した。耐薬品性の評価は以下のように行った。
○ : 変化なし
△ : 一部溶解または剥離あり
× : 溶解または剥離あり
屈折率の測定
実施例4で得られた硬化性組成物(c1)〜(c5)を、膜厚が約50μmとなるようにフッ素樹脂フィルム上に塗布した。得られた塗布物をそれぞれ室温で60分間真空乾燥後、高圧水銀灯を用い室温にて5000mJ/cmの強度で紫外線を照射して硬化性組成物(c1)〜(c5)を硬化させた。硬化物をフッ素樹脂フィルムよりはがし、アッベ屈折率計を用いて25℃で589nmの波長の光について屈折率を測定した。結果を表5に示す。
ガラス密着性の測定
スライドガラスの端から1cm程度の部分の中央に硬化性組成物(c1)〜(c5)をそれぞれ数滴落とし、その上に別のスライドガラスを1枚、ずらせて重ね合わせた。2枚スライドガラスの重なった部分の間に硬化性組成物が挟まれている。次に高圧水銀灯を用い、スライドガラスごしに室温にて5000mJ/cmの強度で紫外線を照射して硬化性組成物を硬化させた。その後、スライドガラスの重なっていない部分を持ち、力を加えた。評価は下記のように行った。結果を表5に示す。
○ : 変化なし、
△ : 一部剥離した
× : 完全に剥離した
Figure 2009242327
実施例7(塗布物の作製(酸無水物))
実施例4で得られた熱硬化性組成物(c6)〜(c10)をスライドガラス上にバーコートにて室温で塗布し、室温で5分間真空乾燥した。この際、乾燥後の膜厚が10μmとなるようにバーの種類を選択した。
また、バーコートによる塗布時の塗布性をつぎの基準で評価した。結果を表6に示
す。
○ : 塗布ムラがない
△ : 一部に塗布ムラが認められる
× : 塗布できない。
実施例8(熱硬化膜の物性測定)
実施例7で塗布した硬化性組成物(c6)〜(c10)をそれぞれ乾燥後、得られた被膜を90℃の乾燥機に2時間、引き続いて140℃の乾燥機で3時間熱処理して硬化被膜を作製した。熱硬化させた膜の物性をそれぞれ以下の方法で評価した。結果を表6に示す。
外観
目視で評価した。
○ : 透明均一
△ : 一部、不均一
× : 白濁。
フッ素含有率
前記の通りである。
耐薬品性
メタノールを含浸させた綿布で塗膜表面を擦った後の塗膜表面の状態(溶解又は剥離)を目視で観察した。耐薬品性の評価は以下のように行った。
○ : 変化なし
△ : 一部溶解または剥離あり
× : 溶解または剥離あり。
対水接触角
接触角計(協和界面化学(株)製のCA−DT)を用いて、純水を室温下で3μlの液量を基材の表面に触れさせて液滴を作った。このときに生ずる液滴と面との角度を測定し対水接触角とした。結果を表6に示す。
比較例2
以下の組成の混合溶液を作製した。
硬化性組成物(d1)
(i)YX−8000 100質量部
(ii)HN−500 90質量部
(iii)UCAT−5003 2質量部。
硬化性組成物(d1)は均一透明であった。実施例7と同様にスライドガラス上にバーコートにて室温で塗布し、室温で5分間真空乾燥した。この際、乾燥後の膜厚が10μmとなるようにバーの種類を選択した。その後、乾燥後の被膜を90℃の乾燥機に2時間、引き続いて140℃の乾燥機で3時間熱処理して熱硬化させて硬化被膜を作製した。実施例8と同様に熱硬化膜の物性を測定した。結果を表6に示す。
Figure 2009242327
IR吸収の測定結果(−SH基の吸収)を示すグラフ(紫外線照射前、強度500 mJ/cm2U、2000 mJ/cm2U及び5000 mJ/cm2Uの紫外線照射後の混合溶液(a1)) IR吸収の測定結果(C=C結合の吸収)を示すグラフ(紫外線照射前、強度500 mJ/cm2U、2000 mJ/cm2U及び5000 mJ/cm2Uの紫外線照射後の混合溶液(a1))

Claims (10)

  1. 一般式(1)
    −S−CX2CHF−Z−O−Rf (1)
    [式中、Xは同一又は異なってH又はFであり、Zは−CF−又は単結合であり、Rfは置換基を有する炭素数1〜40の含フッ素アルキル基、又は置換基を有する炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基であり、該置換基は式(1−1):
    Figure 2009242327
    [式中、Tは同一又は異なってH、F、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよい含フッ素アルキル基]
    で表される基、式(1−2):
    Figure 2009242327
    [式中、Mは脂肪族環又はヘテロ脂肪族環であり、Tは同一又は異なってH、F、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよい含フッ素アルキル基であり、mは3以上の整数である。]
    で表される基、及び一般式(1−3):
    Figure 2009242327
    [式中、Tは同一又は異なってH、F、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよい含フッ素アルキル基]で表される基からなる群から選ばれる少なくとも1種である。]
    で表される基を2以上有する化合物。
  2. 一般式(1a)
    Figure 2009242327
    [式中、TはO、N及びSからなる群から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を有していてもよい炭化水素であり、pは2以上の整数であり、X、Z及びRfはそれぞれ同一又は異なって前記に同じである。]
    で表される請求項1に記載の化合物。
  3. 一般式(1b)
    Figure 2009242327
    [式中、Rは同一又は異なって単結合、−C2a−、−C2b−B−C2c−又は−S−C2d−であり、a、b、c及びdは同一又は異なって1以上の整数であり、Bは−S−、−C(=O)O−、−OC(=O)−又は−O−であり、Aは−C2e−又は−C2f−E−C2g−であり、e、f及びgは同一又は異なって1以上の整数であり、Eは−S−、−C(=O)O−、−OC(=O)−又は−O−であり、RはH、置換基を有していてもよいアルキル基又は式:−R−S−CX2CHF−Z−O−Rfで表される基であり、RはH、置換基を有していてもよいアルキル基又は式:−R−S−CX2CHF−Z−O−Rfで表される基であり、qは0以上の整数であり、X、Z及びRfはそれぞれ同一又は異なって前記に同じである。]
    で表される請求項2に記載の化合物。
  4. 一般式(1c)
    Figure 2009242327
    [式中、Qは置換基を有していてもよい脂肪族環、置換基を有していてもよいヘテロ脂肪族環、置換基を有していてもよい芳香族環又は置換基を有していてもよいヘテロ芳香族環であり、該置換基はそれぞれ炭素数1〜12のアルキル基、−OH、−COOR、−CONR、―NH2、−COCl、―SOF、―SOH及び−CNからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、RはH、アルキル基又は含フッ素アルキル基であり、R及びRは同一又は異なってH、アルキル基又は含フッ素アルキル基であり、rは2以上の整数であり、X、Z及びRfはそれぞれ同一又は異なって前記に同じである。]
    で表される請求項2に記載の化合物。
  5. XがHであり、Zが−CF−である請求項1〜4のいずれかに記載の化合物。
  6. XがFであり、Zが単結合である請求項1〜4のいずれかに記載の化合物。
  7. 分子内に2以上の一般式(1)
    −S−CX2CHF−Z−O−Rf (1)
    [式中、Xは同一又は異なってH又はFであり、Zは−CF−又は単結合であり、Rfは置換基を有する炭素数1〜40の含フッ素アルキル基、又は置換基を有する炭素数2〜100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基であり、該置換基は式(1−1):
    Figure 2009242327
    [式中、Tは同一又は異なってH、F、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよい含フッ素アルキル基]
    で表される基、式(1−2):
    Figure 2009242327
    [式中、Mは脂肪族環又はヘテロ脂肪族環であり、Tは同一又は異なってH、F、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよい含フッ素アルキル基であり、mは3以上の整数である。]
    で表される基、及び一般式(1−3):
    Figure 2009242327
    [式中、Tは同一又は異なってH、F、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよい含フッ素アルキル基]で表される基からなる群から選ばれる少なくとも1種である。]
    で表される基を2以上有する化合物の製造方法であって、分子内に2以上のチオール基を有する化合物を一般式(2)
    CX2=CF−Z−O−Rf (2)
    [式中、X、Z及びRfは前記に同じ。]
    で表される化合物と反応させることを特徴とする製造方法。
  8. 請求項1〜6のいずれかに記載の化合物からなる塗料用架橋剤。
  9. 請求項1〜6のいずれかに記載の化合物を含有する硬化性組成物。
  10. 請求項9に記載の硬化性組成物を硬化して得られる硬化物。
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