JP2009241102A - Di缶の成形方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】有機樹脂フィルムラミネート鋼板を素材としてDI成形するにあたり、フィルムの損傷を回避し、従来のDI成形を用いた場合にもパンチからの缶体の抜き取りが容易であるDI缶の成形方法を提供する。
【解決手段】しごきダイスの進入角を2°以上5°以下とし、第n回目のしごき成形での原板板厚からの板厚減少率をX(n)%としたとき、式(1)を満たすようにしごき成形を行い、複数回からなるしごき工程により板厚を減少させる。この時、ラミネート鋼板の降伏強度は300〜500MPaが好ましい。また、クーラントは粘度が0.3〜1.0mPa・sである液体を用いるのが好ましい。X(n)≦0.0004X(n−1)3+0.0025X(n−1)2+0.0956X(n−1)+31.1・・・式(1)ただし、X(0)=0
【選択図】図2

Description

本発明は、有機樹脂フィルムを被覆したラミネート鋼板を素材とするDI缶の成形方法に関するものである。
食缶や飲料缶用途の2ピース缶として、DRD缶、DTR缶、DI缶などが使用されている。中でもDI缶は、素材としてアルミ板、鋼板の両者が用いられ、広く普及した缶である。
ここで、DI缶の成形方法について説明する。まず金属板を円形ブランクに打抜き、次にカッピングプレス機で絞り成形を行い浅い絞りカップを作る。更に、DI缶成形機において、図3に示すように、パンチ4が高速で再絞りダイス6、しごきダイス7、8、9を通過することにより、再絞り加工、しごき加工を施し、背の高いDI缶を作製する。しごき加工は通常3〜4工程になっており、絞り工程、再絞り工程を含めて5〜6工程以上の成形でダイスを順次通過する。このとき、潤滑と冷却の目的でクーラントを用いる。そして、このような複数回の工程により成形された後に、パンチ4の進行方向が反転し、最終段のしごきダイスの先に配置されたストリッパー10のフィンガーにより缶体はパンチ4から抜き取られる。さらに、DI缶成形機での成形後に、缶上端のトリム、ネック成形、フランジ成形などを行うことで、巻締が可能な形状のDI缶になる。
従来のDI缶は、アルミ板、スチール(鋼板)ともに成形後に塗装が施されていた。しかし、近年、環境対策、食品安全性等の観点から塗装工程の省略が志向され、アルミ板や鋼板に有機樹脂フィルムをラミネートした材料が開発され、ラミネートした材料をDI缶に成形する試みが行われている。
ただし、ラミネートした材料をDI缶に用いた場合、DI缶での特有のしごき成形時にラミネートフィルムが損傷するという問題があった。この問題を解決する試みとして、特許文献1では、リング状しごき加工ダイスのダイス面を1〜4°の傾斜角(進入角θ)で細め、その末端にカップ側壁と平行な短い長さのランド部を設け、その末端から5〜15°の傾斜角で広げた出口面を有した構造のしごき加工ダイスを、50W/m℃以上の熱伝導率を有する耐摩耗性材料で製作し、そのしごき加工ダイスを用いて、冷却用の液体を供給しながら樹脂被覆金属板よりなるカップをしごき加工して缶体に成形する方法が開示されている。
また、有機樹脂フィルムラミネート鋼板を用いてDI成形を行う場合、パンチからの缶体の抜取りが困難であった。ポリエステル樹脂フィルムラミネート鋼板のDI成形におけるパンチ抜取り性に関しては、特許文献2において、最終段のしごき加工を行うしごきダイスよりも前にストリッパーを配置することにより、抜き取り性が向上することが示されている。
特許第2852403号公報 特開2001−300644号公報
特許文献1の技術は有機樹脂被覆されたアルミ板に関する技術である。この技術を有機樹脂フィルムラミネート鋼板に用いた場合、確かにフィルムの損傷は軽減する傾向にある。しかしながら、50W/m℃以上の熱伝導率を有する耐摩耗性材料として特許文献1に例示されているものは一般的な超硬工具材料であり、これと冷却用の液体を供給することを併用して発熱を抑制したとしても、有機樹脂フィルムラミネート鋼板を用いた場合はフィルムの損傷を安定的に回避することは困難である。
一方、パンチからの缶体の抜き取りに関する特許文献2の技術は確かに効果的であると考えられる。しかし、この技術は従来にない新たな機構のDI成形機で初めて採用することのできるもので、広く普及した従来のDI成形機には適用できないという問題がある。
本発明は、かかる事情に鑑みなされたもので、有機樹脂フィルムラミネート鋼板を素材としてDI成形するにあたり、フィルムの損傷を回避し、また、従来のDI成形を用いた場合にもパンチからの缶体の抜き取りが容易であるDI缶の成形方法を提供することを目的とする。
本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]有機樹脂フィルムを被覆したラミネート鋼板を素材とするDI缶の成形方法であって、複数回からなるしごき成形により板厚を減少させるにあたり、しごきダイスの進入角を2°以上5°以下とし、第n回目のしごき成形での原板板厚からの板厚減少率をX(n)%としたとき、式(1)を満たすことを特徴とするDI缶の成形方法。
X(n)≦0.0004X(n−1)3+0.0025X(n−1)2+0.0956X(n−1)+31.1・・・式(1)
ただし、X(0)=0
[2]前記[1]において、前記ラミネート鋼板は、降伏強度が300〜500MPaである鋼板の両面に、有機樹脂樹脂フィルムを被覆したラミネート鋼板であることを特徴とするDI缶の成形方法。
[3]前記[1]または[2]において、粘度が0.3〜1.0mPa・sである液体をクーラントとして用いることを特徴とするDI缶の成形方法。
本発明によれば、フィルムの損傷を回避し、従来のDI成形を用いた場合にもパンチからの缶体の抜き取りが容易である成形方法を提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
ラミネート鋼板をDI成形するにあたり、本発明者らはまずポリエステル膜とアルミシートもしくはアルミ合金シートとからなる積層板(以降、ラミネートアルミ板とする)のDI成形に関する発明である特許文献1に開示された条件で成形実験を行った。
具体的には、図1に示したしごきダイス(特許文献1ではしごきリング)1の進入角2(特許文献1では入口角)を2°、ランドの軸方向長さ3を1mmとした。しごきダイス1の素材はコバルトを母体とする炭化タングステンを用いた。これは特許文献1に規定された条件の熱伝導率を備えるものである。しごき成形の板厚減少率は、しごきダイス1のパンチとのクリアランスを調整することにより、特許文献1の明細書中に記載された板厚減少率となるようにした。すなわち、第1回目のしごき成形での板厚減少率を26%、第1回目から第2回目までを26%、第2回目から第3回目を41%とした。この板厚減少率は、原板からの板厚減少率に換算すると、第1回目は26%、第2回目は45%、第3回目は68%となる。なお、以降、本発明では特に断わらない限り板厚減少率は原板板厚からの板厚減少率とする。また、成形では、市販のぶりき材DI缶成形用潤滑剤を水に対して1.5%添加したクーラントを用いた。用いたラミネート鋼板は、フィルム厚15μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを、板厚が0.2mm、降伏強度が400MPaの鋼板の両面に熱融着法でラミネートしたものを用いた。
上記条件で成形実験を行った結果、素材にラミネート鋼板を用いた場合は、フィルムがしごきダイスによって削られるフィルム損傷が生じ健全な缶体を得ることができなかった。調査したところ、このフィルム損傷は第2回目のしごき成形の段階で発生していることが判明した。つまり、ラミネートアルミ板を対象とする特許文献1に開示された条件は、ラミネート鋼板には必ずしも適用できないことを確認した。
そこで、第2回目のしごき成形での板厚減少率を45%から40%としたところ、2回目のフィルム損傷は回避できた。ただし、第3回目のしごき成形でフィルム損傷が生じた。この結果は、第1回目から第2回目のしごき成形における板厚減少率を低減したことで第2回目のしごき成形でのフィルム損傷は回避されたが、一方で、第2回目から第3回目のしごき成形での板厚減少率が高いため、フィルム損傷が生じたものと考えられる。
そこで、第2回目から第3回目のしごき成形における板厚減少率を低減するため、第1回目、第2回目の板厚減少率を再設定した実験を行った。つまり、第1回目の板厚減少率を以前の実験よりも高い30%とし、第2回目の板厚減少率を45%、第3回目の板厚減少率を68%とした。その結果、各回数目のしごき成形でのフィルム損傷は発生せず、合計3回のしごき成形によってフィルム損傷のない健全な缶体を得ることができた。
以上の実験から、ラミネートアルミ板では成形が可能である条件でも、ラミネート鋼板を用いた場合にはフィルム損傷によって成形が不可能となる場合があり、ラミネート鋼板のフィルム損傷を回避するには、複数回のしごき成形における各回数目の板厚減少率を適切に設定する必要があることがわかった。そして、各回数目の板厚減少率でフィルム損傷を発生させないためには、その前段での板厚減少率を適切に設定する必要があることがわかる。
そこで、上記検討結果を踏まえ、次いで、板厚減少率を適切に設定するために必要な条件を決定するため、複数回のしごき成形において板厚減少率を変化させた実験を行った。この際、しごきダイスの進入角は1°、2°、5°、8°を用い、ラミネート鋼板としては、フィルム厚15μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを、板厚が0.2mm、降伏強度が400MPaの鋼板の両面に熱融着法でラミネートしたものを用いた。最終的な板厚減少率は75%までとした。実験を行った結果、以下の結論を得た。
しごきダイスの進入角:2°以上5°以下
従来のぶりき材を用いたDI缶では、最終的な板厚減少率は50〜75%程度のものが主流であり、ラミネート鋼板を用いた場合も同程度の板厚減少率を得ることが必要である。しごきダイスの進入角が1°の場合は、2°以上の場合とを比較して同一のクリアランスであっても得られる板厚減少率が極端に低くなってしまう。そして、DI缶で最も板厚減少率の高いレベルの73%の板厚減少率を得るためにはしごき成形の回数は、しごきダイスの進入角が1°の場合は5回以上必要となる。通常のDI成形機は3〜4回のしごき成形に対応しているため、進入角1°のしごきダイスでは目標の板厚減少率が得られないことになる。
しごきダイスの進入角が2°以上であれば73%程度の板厚減少率が得られ、缶高さも規定以上のものが得られる。よって、本発明では、しごきダイスの進入角は2°以上とする。一方、しごきダイスの進入角が8°の場合、複数回のしごき成形における板厚減少率を如何に設定しても、フィルム損傷が発生するために最終的な板厚減少率は30%程度までしか得られないことがわかった。そして、しごきダイスの進入角が5°以下であればフィルム損傷を発生させずに75%程度までの板厚減少率が得られる。よって、しごきダイスの進入角の上限は5°以下とする。
板厚減少率の設定条件
図2は、3回のしごき成形において板厚減少率を変化させて実験を行った結果である。これまでの実験から各回数目のしごき成形でフィルム損傷を発生させないためにはその前段での板厚減少率を適切に設定する必要があることがわかったので、図2では、縦軸にn回目までのしごき成形での板厚減少率を、横軸に(n−1)回目までのしごき成形での板厚減少率をとり、フィルム損傷の有無を示した。
図2より、フィルム損傷の有無の境界線が、フィルム損傷を発生させないための板厚減少率の適切な設定条件を与える上限の板厚減少率となることがわかる。すなわち、この境界線よりも下側の領域であれば、フィルム損傷を回避することができることになる。
ここで、この領域を、n回目までのしごき成形での板厚減少率をX(n)%として多項式で表現すると式(1)の関係となる。
X(n)≦0.0004X(n−1)3+0.0025X(n−1)2+0.0956X(n−1)+31.1 ・・・ 式(1)
ただし、X(0)は0回目のしごき成形での板厚減少率であるのでX(0)=0である。
以上より、本発明においては、第n回目のしごき成形での原板板厚からの板厚減少率をX(n)%としたとき、上記式(1)を満たすこととする。
前述した成形実験で明らかとなったように、ラミネートアルミ板では成形が可能である条件でも、ラミネート鋼板を用いた場合にはフィルム損傷によって成形が不可能となる場合がある。これは、アルミ板と鋼板の機械特性の相違に基づくと考えられる。しごき成形でのフィルム損傷はラミネートされた材料がしごきダイスとパンチとの間に高い圧縮状態で挟まれつつしごき伸ばされる際に発生することから、フィルムに作用する圧縮力が大きく影響する。その圧縮力はラミネートの基板となる材料の変形抵抗によって生じるため、アルミ板と鋼板とでフィルム損傷に相違が生じたと考えられる。アルミ板は鋼板と比較して著しく降伏強度が低い(規格3004系の場合、降伏強度は70MPa程度)ため、フィルムに作用する圧縮力が低く、フィルム損傷が発生し難い結果となったと考えられる。この観点から、ラミネート鋼板を対象とした上記式(1)で示した板厚減少率の設定条件にも鋼板の降伏強度に適用範囲があると考えられる。
そこで、次に、降伏強度を変更した材料を用いて成形実験を行った。この際、しごきダイスの進入角には2°を用い、ラミネート鋼板としては、フィルム厚15μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを、板厚が0.2mmで降伏強度が260MPaから550Mpaと異なる鋼板の両面に熱融着法でラミネートしたものを用いた。しごき成形の板厚減少率は式(1)に合致する条件とし、第3回目までの最終的な板厚減少率は77%までとした。以上の実験の結果、以下の結論を得た。
鋼板の降伏強度
上記考察のようにフィルム損傷は降伏強度が高い場合に生じ、フィルム損傷を回避することのできる鋼板の降伏強度の上限は500MPaであった。つまり、式(1)の条件で設定した板厚減少率において、フィルム損傷を回避することのできる鋼板の降伏強度は500MPa以下にすることが好ましい。一方、降伏強度が低い場合にはフィルム損傷は発生しなかった。ただし、DI缶が実際に用いられる際には、必要な缶体強度を備える必要がある。例えば、缶の内部が加圧された状態でDI缶を用いる場合、鋼板の降伏強度が低いと缶底部の耐圧強度は不足し、缶底部が膨張する不具合が生じる。また、蓋の缶体への巻き締めは缶体に蓋を押し付けた状態で行われるため、鋼板の降伏強度が低いと缶底部の座屈強度不足し、缶低部が押し潰される不具合が生じる。そのため鋼板の降伏強度は一定以上の値を備える必要があり、上記のような不具合を回避するためには降伏強度が300MPa以上であることが好ましい。
これまでの実験では、しごき成形を行った後の缶体をパンチから抜取る際に、缶体の上端部がストリッパーのフィンガー部分で潰れ、正常に抜き取れない場合があった。すなわち、抜き取り性が劣る場合があった。これは従来のぶりき材を用いたDI缶でも知られた現象である。そして、特許文献2の明細書中では、ラミネート鋼板の抜き取り性は、ぶりき材よりも劣ると記載されている。
抜き取り性を改善する方法として、ぶりきDI缶では複数回のしごき成形の最終段の板厚減少率を低く設定するという手段が用いられてきた。しかし、この方法をラミネート鋼板を素材とするDI缶に適用した場合、最終段以前のしごき成形での板厚減少率を高くする必要があり、式(1)の条件を満たした上で各回数目の板厚減少率を設定することが困難となる。
そこで、抜き取り性について検討すべき、抜き取り性は缶体内面とパンチとの間の潤滑が影響することに着目し、しごき成形において潤滑性を支配するクーラント(潤滑剤を水で希釈した潤滑/冷却材)の条件を変更して成形実験を行った。
具体的には、クーラントの粘度、クーラント温度を変更した。この際、クーラントの粘度を変化させるため、クーラント中に添加する潤滑剤(市販のぶりきDI缶用潤滑剤)の濃度を、0%以上で変更したものを用いた。クーラントの温度は20〜80℃とした。また、しごきダイスの進入角には2°を用い、ラミネート鋼板としては、フィルム厚15μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを板厚が0.2mmで降伏強度が400MPaの鋼板の両面に熱融着法でラミネートしたものを用いた。しごき成形の板厚減少率は式(1)に合致する条件とし、第3回目までの最終的な板厚減少率は77%までとした。以上の結果、以下の結論を得た。
クーラントの粘度
一般に潤滑作用はクーラント中の潤滑剤の濃度が高い方が優れるが、ラミネート鋼板を用いたDI缶の成形では、潤滑剤の濃度が低い方が抜き取り性に優れた特性を示した。実験に用いたクーラントの粘度を、回転式粘度測定機を用いて測定したところ、潤滑剤の濃度が低い場合は粘度も低くなっており、この粘度が抜取り性を支配していると考えられる。つまり、ラミネート鋼板を用いて式(1)に合致した条件でしごき成形を行った際に優れた抜取り性を発揮するクーラントの粘度には上限があり、1.0mPa・s以下が好ましい。しかし、粘度が過剰に低いと、抜き取り性は優れるが、フィルム損傷が発生するようになった。これは、しごき成形の際にクーラントがラミネート鋼板としごきダイス、パンチの接触部分に十分に保持されず、必要な潤滑作用を発揮しえなくなるためと考えられる。フィルム損傷を回避するためには0.3mPa・s以上の粘度が好ましい。
以上より、ラミネート鋼板を用いて式(1)に合致した条件でしごき成形を行った際に優れた抜取り性とフィルム損傷の回避を両立するためには、クーラントの粘度は0.3〜1.0mPa・sとするのが好ましい。
本発明で用いるラミネート鋼板において望ましい条件を以下に述べる。
鋼板
本発明のラミネート鋼板の基板となる鋼板は特に問わない。ただし、降伏強度は300Mpa以上500Mpa以下が好ましい。また、以下のような成分、製法のものが望ましい。
(1)C量が0.01〜0.10%程度の低炭素鋼を用い、箱焼鈍で再結晶焼鈍したもの。
(2)C量が0.01〜0.10%程度の低炭素鋼を用い、連続焼鈍で再結晶焼鈍したもの。
(3)C量が0.01〜0.10%程度の低炭素鋼を用い、連続焼鈍で再結晶焼鈍及び過時効処理したもの。
(4)C量が0.01〜0.10%程度の低炭素鋼を用い、箱焼鈍または連続焼鈍で再結晶焼鈍した後、二次冷間圧延(DR)したもの。
(5)C量が概ね0.003%以下程度の極低炭素鋼にNb、Ti等の強力な固溶C固定元素を添加したIF鋼を用い、連続焼鈍で再結晶焼鈍したもの。
降伏強度以外の機械的特性としては、塑性異方性の指標であるr値が0.8以上のものが望ましく、塑性異方性r値の面内異方性Δrはその絶対値が0.7以下ものが望ましい。鋼板の板厚は、目的の缶の形状、必要となる缶体強度から適宜設定することができる。鋼板自体および缶体のコスト上昇を抑制する観点から、概ね0.15〜0.4mm程度のものを用いることが望ましい。
鋼板表面処理
本発明で用いるラミネート鋼板と基板とする鋼板には、表面に各種表面処理を施した表面処理鋼板を用いることが望ましい。表面処理としては、錫めっき、クロームめっき、金属酸化物被覆処理などがある。特に下層が金属クロム、上層がクロム水酸化物からなる二層皮膜を形成させた表面処理鋼板(いわゆるTFS)等が最適である。これを用いる場合は、金属クロム層、クロム水酸化物層の付着量については、特に限定されないが、何れもCr換算で、金属クロム層は70〜200mg/m、クロム水酸化物層は10〜30mg/cmの範囲とすることが望ましい。
フィルム
本発明で用いるフィルムラミネート鋼板を構成する有機樹脂フィルムとしては、以下のものが好ましい。
例えば、ポリエステル樹脂がカルボン酸成分とジオール成分の縮重合で得られる樹脂層である。カルボン酸成分はテレフタル酸を主成分とし、その他の共重合成分に、イソフタル酸成分を含んでもよい。グリコール成分としては、エチレングリコール及び/またはブチレングリコールを主成分として、その他の共重合成分に、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノールを含んでもよい。あるいは、ポリエステル樹脂の主相が前記樹脂であり、副相として、非相溶であり、かつ、ガラス転移点Tgが5℃以下である樹脂を含有し、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びあるいはその酸変性体、あるいはアイオノマーである。また、樹脂組成中に顔料や滑剤、安定剤などの添加剤を加えて用いても良いし、樹脂層に加えて他の機能を有する樹脂層を上層または中間層に配置しても良い。
鋼板へのラミネート方法は特に限定されないが、2軸延伸フィルム、あるいは無延伸フィルムを熱圧着させる熱圧着法、Tダイなどを用いて鋼板上に直接樹脂層を形成させる押し出し法など適宜選択することができる。
以下、実施例について説明する。
フィルム厚15μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを、板厚が0.2mm、降伏強度が400MPaの鋼板の両面に熱融着法でラミネートし、ラミネート鋼板を得た。次いで、得られたラミネート鋼板を円形ブランクに打抜き、カッピングプレス機で絞り比1.74で絞り成形した後、DI缶成形機で再絞り比1.4での再絞り成形とそれに続くしごき成形でDI缶に成形した。しごきダイスの進入角は2°、5°、8°とし、ランドの軸方向長さは1mmとした。また、成形では、市販のぶりき材DI缶成形用潤滑剤を水に対して1.5%添加したクーラントを用いた。
しごき成形での目標板厚減少率(原板厚基準)を52%、73%とし、1〜4工程のしごき成形を行い、成形後に缶体の外面側および内面側のフィルム損傷を目視により評価した。得られた結果を、各しごき工程での板厚減少率X(n)、式(1)の値と併せて表1に示す。
Figure 2009241102
表1より、しごきダイスの進入角が2°、5°で、各しごき工程での板厚減少率X(n)が式(1)の値よりも低い本発明で規定した条件の場合は、フィルム損傷が発生せず、3工程または4工程でのしごき工程で目標の板圧減少率を得ることができる。
一方、しごきダイスの進入角が2°、5°でも、各しごき工程での板厚減少率X(n)が式(1)の値よりも高い比較例の場合は、フィルム損傷が発生している。
また、しごきダイスの進入角が8°の場合は、各しごき工程での板厚減少率X(n)が式(1)の値よりも低い条件でも、フィルム損傷が発生して目標の板厚減少率を得ることができない。
フィルム厚15μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを、板厚が0.2mm、降伏強度が260〜550MPaの鋼板の両面に熱融着法でラミネートし、ラミネート鋼板を得た。得られたラミネート鋼板を円形ブランクに打抜き、カッピングプレス機で絞り比1.74で絞り成形した後、DI缶成形機で再絞り比1.4での再絞り成形とそれに続くしごき成形でDI缶に成形した。その際、しごきダイスの進入角は2°とし、ランドの軸方向長さは1mmとした。また、しごき工程の回数は3工程とし、各回数目の板厚減少率X(n)を、第1回目は30.5%、第2回目は45.5%、第3回目は73.0%とした。尚、この条件において式(1)の値は、第1回目のしごき成形では31.1%、第2回目のしごき成形では47.7%、第3回目のしごき成形では78.3%であり、本発明の規定した条件となっている。成形では、市販のぶりき材DI缶成形用潤滑剤を水に対して1.5%添加したクーラントを用いた。
成形後に、缶体の外面側および内面側のフィルム損傷を目視により評価した。
また、DI成形後の缶底部に市販の炭酸飲料に用いられているDI缶に準拠した形状のボトム成形を行い、缶体上部をトリムした後、耐圧強度試験機に装着して缶体内部を空気で加圧し、缶底部の耐圧強度を測定した。評価は、耐圧強度が7kgf/cm2以上であるものを○、7kgf/cm2未満であるものを×とした。
さらに、DI成形後の缶底部に市販の魚肉缶に準拠した形状のボトム成形を行い、缶体上部をトリムした後、フランジ成形して蓋を巻きつけ、圧縮試験機に装着して缶体を缶高さ方向で圧縮して缶底部の座屈強度を測定した。評価は、座屈強度が100kgf以上であるものを○、100kgf未満であるものを×とした。
以上により得られた結果を表2に示す。
Figure 2009241102
鋼板の降伏強度が500MPa以下であれば、フィルム損傷が発生しなかった。一方、降伏強度が300MPa以上であれば耐圧強度、座屈強度が十分であった。
フィルム厚15μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを、板厚が0.2mm、降伏強度が400MPaの鋼板の両面に熱融着法でラミネートし、ラミネート鋼板を得た。得られたラミネート鋼板を円形ブランクに打抜き、カッピングプレス機で絞り比1.74で絞り成形した後、DI缶成形機で再絞り比1.4での再絞り成形とそれに続くしごき成形でDI缶に成形した。その際、しごきダイスの進入角は2°とし、ランドの軸方向長さは1mmとした。また、しごき工程の回数は3工程とし、各回数目の板厚減少率X(n)を、第1回目は30.5%、第2回目は45.5%、第3回目は73.0%とした。尚、この条件において式(1)の値は、第1回目のしごき成形では31.1%、第2回目のしごき成形では47.7%、第3回目のしごき成形では78.3%であり、本発明の規定した条件となっている。成形では、クーラントの粘度を変化させるため、クーラント中に添加する潤滑剤(市販のぶりきDI缶用潤滑剤)の濃度を、0%以上で変更したものを用いた。クーラントの温度は20〜80℃とした。クーラントの粘度は回転式粘度測定機を用いた。
成形後に、缶体の外面側および内面側のフィルム損傷を目視により評価した。
また、缶体からのパンチの抜き取り性を評価した。缶体からのパンチの抜き取り性は、ストリッパーのフィンガー部分で潰れ状態で評価し、潰れが小さく規定のトリム高さが確保できるものを○、確保できないものを×とした。得られた結果を表3に示す。
Figure 2009241102
クーラントの粘度が1.0mPa・s以下であれば抜き取り性に問題がない。一方、クーラントの粘度が0.3mPa・s以上であればフィルム損傷が発生しない。
本発明は食缶や飲料缶として最適である。そして、これら以外にも、本発明で想定されているような有機樹脂フィルムラミネート鋼板を素材として従来のDI成形を用いて、フィルムの損傷を回避し、缶体の抜き取り性が要求される用途にも好適に使用される。
しごきダイスの進入角を示す図である。 しごき成形における板厚減少率とフィルム損傷との関係を示す図である。 DI缶成形機を示す簡略図である。
符号の説明
1 しごきダイス
2 しごきダイスの進入角
3 ランドの軸方向長さ
4 パンチ
5 絞りカップ
6 再絞りダイス
7 しごきダイス(1工程目)
8 しごきダイス(2工程目)
9 しごきダイス(3工程目)
10 ストリッパー

Claims (3)

  1. 有機樹脂フィルムを被覆したラミネート鋼板を素材とするDI缶の成形方法であって、複数回からなるしごき成形により板厚を減少させるにあたり、しごきダイスの進入角を2°以上5°以下とし、第n回目のしごき成形での原板板厚からの板厚減少率をX(n)%としたとき、式(1)を満たすことを特徴とするDI缶の成形方法。
    X(n)≦0.0004X(n−1)3+0.0025X(n−1)2+0.0956X(n−1)+31.1・・・式(1)
    ただし、X(0)=0
  2. 前記ラミネート鋼板は、降伏強度が300〜500MPaである鋼板の両面に、有機樹脂樹脂フィルムを被覆したラミネート鋼板であることを特徴とする請求項1に記載のDI缶の成形方法。
  3. 粘度が0.3〜1.0mPa・sである液体をクーラントとして用いることを特徴とする請求項1または2に記載のDI缶の成形方法。
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