JP2009240343A - ゲル電極 - Google Patents

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Abstract

【課題】取り扱い時に破損しにくく、長期の使用にわたって性能劣化が少ないゲル電極を提供することを課題とする。
【解決手段】支持基材上に導電層を備え、前記導電層上に導電性ゲル粘着剤層を備える領域と備えない領域とを有し、前記導電性ゲル粘着剤層を備えない領域上にリード線を有し、前記リード線上に補強材を備え、前記導電層が、20Ω/20mm以下の抵抗値を有する多孔体層であることを特徴とするゲル電極により上記課題を解決する。
【選択図】図1

Description

本発明は、ゲル電極に関する。更に詳しくは、本発明は、特定の抵抗値を有する多孔体層からなる導電層を備えたゲル電極に関する。
粘着性ゲルを供えたゲル電極は、心電図用電極や、筋トレに使用される電気刺激具用電極等の幅広い分野で利用されている。
例えば、特公平6−49076号公報(特許文献1)、特許第2821265号明細書(特許文献2)、特表2006−517130号公報(特許文献3)、特開2001−204827号公報(特許文献4)等で種々のゲル電極が報告されている。これら公報に記載のゲル電極は、通常、支持基板上に導電層と導電性ゲル粘着剤層とをこの順で備え、導電層と導電性ゲル粘着剤層との間に、リード線が一部又は全面に挿入された構成を有している。
特公平6−49076号公報 特許第2821265号明細書 特表2006−517130号公報 特開2001−204827号公報
上記公報に記載のゲル電極を被粘着体(例えば、皮膚)から剥がす場合、リード線を用いて行うことが一般的である。しかしながら、この方法では、リード線の取付け根元の部分が破壊したり、支持基材が導電層から浮き上がって、リード線と導電層との接触が不安定となって、リード線からの電流が、導電性ゲル粘着剤層を介して被着体に安定して流れなくなるという課題がある。この課題は、リード線を用いて被粘着体から剥がすのではなく、導電性ゲル粘着剤層を用いて剥がすことが考えられる。しかし、導電性ゲル粘着剤層は、粘着性が高いため指に強力に粘着し、ユーザーにとって不評であった。また、導電性ゲル粘着剤層に直接触れるため、剥離及び貼付回数を経ると、この層の粘着性が低下することがあった。
かくして本発明によれば、支持基材上に導電層を備え、前記導電層上に導電性ゲル粘着剤層を備える領域と備えない領域とを有し、前記導電性ゲル粘着剤層を備えない領域上にリード線を有し、前記リード線上に補強材を備え、前記導電層が、20Ω/20mm以下の抵抗値を有する多孔体層であることを特徴とするゲル電極が提供される。
本発明によれば、取り扱い時に破損しにくく、長期の使用にわたって性能劣化が少ないゲル電極を提供できる。また、広い周波数域で均一な電流分布が得られ、安定した電気性能を有するゲル電極も提供できる。
本発明のゲル電極は、繰り返し使用する用途に特に好適に使用できる。そのような用途として、電気刺激用電極、心電図用電極、除電用電極等の生体用電極、探査用電極のような工業用電極が挙げられる。この内、生体用電極に使用することが好ましい。
(ゲル電極の構成)
本発明のゲル電極は、支持基材、導電層、導電性ゲル粘着剤層、リード線及び補強材を備えている。導電層は、支持基材上に位置しており、導電性ゲル粘着剤層とリード線とは、導電層上に位置している。また、導電層上には、導電性ゲル粘着剤層を備える領域と備えない領域とを有している。更に、リード線は、導電性ゲル粘着剤層を備えない導電層の領域上に位置している。また、リード線上には補強材が位置している。ここで、導電層は、20Ω/20mm以下の抵抗値を有する多孔体層からなっている。
ゲル電極では、リード線が導電性ゲル粘着剤層を備えない導電層の領域上に位置し、かつリード線上に補強材が位置している。つまり、従来のゲル電極のように、リード線が導電層と導電性ゲル粘着剤層との間に位置していないため、ユーザーがリード線を用いてゲル電極を剥離しても、リード線の浮きや、支持基材及び導電層の破壊が抑制できる。加えて、特定の抵抗値の導電層を使用することで、従来のように導電性ゲル粘着剤層の全面にリード線を配置しなくても、被粘着体に十分な電流を流すことができる。
ゲル電極の平面形状は、特に限定されない。例えば、四角、丸、楕円等、任意に設定可能である。更に、リード線が位置する導電性ゲル粘着剤層を備えない導電層の領域(方端部)は、導電性ゲル粘着剤層を備える領域の一部から延在する突起であってもよく、突起でなくてもよい。突起である場合、ゲル電極の剥離がより容易となる。この突起には、ゲル電極の剥離の際のつまみ部分としての機能と共に、リード線を固定する機能を付与できる。なお、導電性ゲル粘着剤層を備えない導電層の領域は、ゲル電極全面の2.5〜25%の面積を占めることが好ましい。
リード線は、導電性ゲル粘着剤層を備えない導電層の領域上に位置しており、電流の供給箇所が特定されているが、特定されていても、導電層が特定の抵抗値を有しているため、ゲル電極全面に電流を容易に供給できる。
ゲル電極の平面形状としては、例えば、図1(a)〜(c)に示す構成が挙げられる。これら構成は、上記突起形状を有する構成の一例である。図中、1は導電層、2は導電性ゲル粘着剤層、3は補強材、4はリード線、5は端子を意味する。図1(a)は、導電性ゲル粘着剤層の平面形状が略正方形であり、図1(b)は、長方形であり、図1(c)は丸である。これらゲル電極では、補強材3が位置する部分が突起形状となっているため、ゲル電極の剥離の際のつまみ部分として利用できる。
導電性ゲル粘着剤層には、ゲルの表面を保護するためのセパレートフィルムを有していてもよい。
(ゲル電極の製法)
図1(a)の構成を例として、図2(a)〜(d)を用いてゲル電極の製法を説明する。
まず、支持基材6上に導電層1を積層する。支持基材6上には導電層1や導電性ゲル粘着剤層2と支持基材6とをより強固に固定するために接着剤層を備えていてもよい。次いで、導電層1上の端部に補強材3を積層する。ここで、補強材3と導電層1との間の端部には、後のリード線4の形成を容易にするために、両面剥離シート7を挟んでいてもよい。また、補強材3の導電層1側の表面には、支持基材6、導電層1と補強材3とリード線4とをより強固に固定するために、接着剤層を備えていてもよい。また、補強材3と支持基材6との内側の端部を、熱融着させることで、補強材3を支持基材6及び導電層1に強固に固定しておいてもよい。
次に、導電性ゲル粘着剤層2を導電層1上に積層する。導電性ゲル粘着剤層2は、補強材3上に延在していてもよい。ゲル電極の剥離容易性を考慮すると、補強材3は、その50%以下の面積が導電性ゲル粘着剤層2で覆われていることが好ましい。これら工程により、図2(a)の平面図及びその断面図である図2(b)の構成が得られる。なお、導電性ゲル粘着剤層2にはセパレータフィルム8が積層されていてもよい。
この後、両面剥離シート7を取り除き、リード線4を補強材3と導電層1との間に挟み、必要に応じてその部分を熱融着させることでリード線4をゲル電極に固定する。これら工程により図2(c)の平面図及びその断面図である図2(d)で示されるゲル電極が形成できる。
以下では、ゲル電極を構成する各部材について説明する。
(導電性ゲル粘着剤層)
導電性ゲル粘着剤層は、粘着性を有する導電性高分子ゲルが使用できる。粘着性を有するとは、被粘着体表面の界面で濡れが良好で均一に密着し、剥離時に導電性ゲル粘着剤層が崩壊しないことを意味する。このような粘着性を有する導電性ゲル粘着剤層を用いることで、被粘着体(例えば、皮膚)の表面に均一に密着し、ゲル電極に電流を印加した際に、効率的に電気エネルギーを伝達できる。また、剥離時に導電性ゲル粘着剤層が崩壊せず、剥離・貼付の繰り返しが可能となる。
導電性ゲル粘着剤層は、100〜2500μmの厚さを有していることが好ましい。
導電性ゲル粘着材には、重合性単量体に、架橋性単量体を共重合させた高分子マトリックス内に、可塑剤と、溶媒成分と、電解質塩とを含む導電性高分子ゲルを好適に使用できる。
(1)重合性単量体
重合性単量体としては、分子内に重合性を有する炭素−炭素二重結合を1つ有する単量体であれば特に制限されない。例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)グリセリン(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸誘導体、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)ルアクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、アクリロイルモルフォリン、ダイアセトンアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドとその塩、ターシャルブチルアクリルアミドスルホン酸とその塩等の(メタ)アクリルアミド誘導体、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニルアミド誘導体、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸及びその塩等のスルホン酸系単量体が挙げられる。これら単量体は、1種のみ使用してもよく、2種以上組み合わせて使用してもよい。なお、上記例示において、(メタ)アクリルは、アクリル又はメタクリルを意味する。
(2)架橋性単量体
架橋性単量体としては、分子内に重合性を有する二重結合を2以上有している単量体を使用することが好ましい。具体的には、メチレンビス〈メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ〈メタ)アクリレート、(ポリ)プロビレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリルアミド又は(メタ)アクリレート、テトラアリロキシエタン、ジアリルアンモニウムクロライド等が挙げられる。これら単量体は、1種のみ使用してもよく、2種以上組み合わせて使用してもよい。
(3)可塑剤
可塑剤としては、可塑性を向上させる多価アルコールを使用することが好ましい。また、溶媒成分の保持力があり、湿潤剤としての役割も果たす多価アルコールを使用することが好ましい。ゲルは、高分子マトリックス内に、可塑剤を含むことにより良好な粘弾性特性を有する。
多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール等のジオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の2価以上の多価アルコール類、ポリエチレングリコール、ポリグリセリン等の多価アルコール縮合体、ポリオキシエチレングリセリン等の多価アルコール変性体等が使用可能である。これら多価アルコールは、1種のみ使用してもよく、2種以上組み合わせて使用してもよい。これら多価アルコールの内、常温で液状であることが、ゲルの粘弾性特性を維持する点、重合反応後のゲル体の透明性を確保する点、製造時のハンドリング性を向上させる点で望ましい。そのような多価アルコールとして、グリセリン、ポリグリセリン等が挙げられる。
(4)溶媒成分
溶媒成分としては、沸点が高く、常温で低い蒸気圧の極性溶媒が好ましく、重合性単量体及び架橋性単量体と相溶性のあるものが好ましい。溶媒成分としては、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N’−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド類、スルホラン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これら溶媒成分は、1種のみ使用してもよく、2種以上組み合わせて使用してもよい。混合してもよい。また、溶媒成分は、水を全量の10重量%以上含むことが好ましい。
(5)電解質塩
導電性ゲル粘着剤層の導電性は、ゲルが電解質塩を含むことにより得られる。
電解質塩としては、ハロゲン化ナトリウム、ハロゲン化カリウム、ハロゲン化マグネシウム、ハロゲン化カルシウム等のハロゲン化アルカリ金属、ハロゲン化アルカリ土類金属又はその他の金属ハロゲン化物や、各種金属の次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、燐酸塩、アンモニウム塩や、各種錯塩等の無機塩類や、酢酸、安息香酸、乳酸、酒石酸等の一価有機カルボン酸塩や、フマル酸、コハク酸、アジビン酸、クエン酸等の多価カルボン酸の一価又は二価以上の塩や、スルホン酸、アミノ酸等の有機酸の金属塩及び有機アンモニウム塩や、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリビニルスルホン酸、ポリターシャルブチルアクリルアミドスルホン酸、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン等の高分子電解質の塩が使用できる。これら電解質塩は、1種のみ使用してもよく、2種以上組み合わせて使用してもよい。
(6)他の添加剤
ゲルには、必要に応じて防腐剤、殺菌剤、防黴剤、防錆剤、酸化防止剤、安定剤、pH調整剤、香料、界面活性剤、着色剤等の他の添加剤を適宜添加してもよい。添加する方法としては、あらかじめ配合液に他の添加剤を溶解又は分散させ、高分子マトリックスを形成する方法と、一旦生成した高分子ゲルに後から添加する方法がある。
(7)高分子マトリックスの濃度
導電性ゲル粘着剤層を構成する高分子マトリックスは、導電性ゲル粘着剤層全量に対して、5〜50重量%含まれていることが好ましく、より好ましくは5〜40重量%である。5重量%未満では、得られるゲルのマトリックス濃度が低いため、溶媒成分をかかえきれずブリードしやすく、腰強度の弱いゲルとなることがある。一方、50重量%を超える場合は、重合時の発熱が大きくなりすぎるため、溶媒の沸点を超え沸騰することがあり、製造上の問題がある。また、沸騰した場合は、気泡が混入するため透明性を損なうとともに、良好なゲルを得られないことがある。
(8)架橋性単量体の添加量
架橋性単量体の添加量は、高分子マトリックス総量に対して、0.05〜10重量%であるのが好ましい。0.05重量%未満の場合、架橋密度が低くなるため、形状安定性が乏しくなることがある。また、10重量%を超える場合は、硬く脆いゲルになる可能性がある。また、このようなゲルの場合、重合架橋時に白濁化して透明性が損なわれ、良好なゲルが得られないことがある。
(9)可塑剤の濃度
ゲル中の可塑剤の濃度は、10〜80重量%が好ましく、より好ましくは20〜70重量%である。10重量%未満では、ゲルの湿潤力(溶媒保持力)が乏しく、ゲルの経時安定性に欠けると共に、柔軟性に欠け、粘着性が必要な場合でも粘着性の付与が困難な場合が多い。また、80重量%を超える場合は、相対的に高分子マトリックスや溶媒成分の濃度が小さくなることがある。
(10)溶媒成分の濃度
溶媒成分の濃度は、5〜50重量%であることが好ましく、より好ましくは5〜40重量%である。5重量%未満では、ゲルが、低い可撓性(高い剛性)になり、電解質塩の添加が困難となるため、良好な導電性を得られないことがある。一方、50重量%を超える場合、ゲルの平衡溶媒保持量を大きく超えることがあるため、溶媒成分のブリード等が生じることがある。また、保持しきれない溶媒成分が流れ出て、ゲルの経時的物性の変化が大きくなることがある。
(11)電解質塩の濃度
電解質塩の濃度は、0.05〜13重量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜10重量%である。13重量%を超える場合は、電解質塩の溶解が困難になるため、ゲル内部で結晶の析出が生じたり、他の成分の溶解を阻害したりする場合がある。また、実質13重量%を超える塩を添加しても電離限界、言い換えれば導電性能は頭打ちとなるため、コストの観点から好ましくない。また、0.05重量%未満の添加では導電性が十分得られないことがある。
(12)導電性ゲル粘着剤層の製法
導電性ゲル粘着剤層は、重合性単量体、架橋性単量体、可塑剤、溶媒成分、電解質塩と、任意に重合開始剤とを溶解又は均一分散したモノマー配合液を、公知の方法で加熱又は紫外線照射を行うことにより重合架橋して得ることができる。また、予め形成された高分子マトリックスに、湿潤剤や溶媒等を含浸させてもよい。更に、重合性単量体のみを重合させて高分子を得、次いで、湿潤剤、溶媒等を溶解又は均一分散して得られるポリマー配合液に、架橋剤と任意に触媒とを添加した混合液に高分子を浸漬することで、高分子と架橋剤を架橋反応させることにより導電性ゲル粘着剤層を形成できる。
モノマー配合液が液状の場合、例えば成形された樹脂型等に流し込んで重合架橋させることにより任意形状の導電性ゲル粘着剤層を得ることができる。
また、一定の間隔に保持した2枚のフィルムの間にモノマー配合液を流し込んで重合架橋させることにより、シート状の導電性ゲル粘着剤層を得ることができる。
更に、フィルム上にモノマー配合液をシルクスクリーン等を用いて任意形状に印刷し、直後に公知の方法で加熱又は紫外線照射を行い重合架橋させることにより、任意形状の導電性ゲル粘着剤層を得ることができる。
(支持基材)
支持基材は、ゲル電極の表面材として使用する基材シートであり、柔軟で非導電性であることが好ましい。特に、ゲル電極として十分な柔軟性及び引張り強度を有していることが好ましい。支持基材としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)不織布、ポリプロピレン(PP)不織布、セルロース系不織布、レーヨン系不織布、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、アクリル系樹脂フィルム等が挙げられる。この内、引張り強度が高く、柔軟なポリプロピレン(PP)スパンボンド不織布を採用するのがより好ましい。なお、支持基材の厚さは、特に限定されないが、例えば10〜500μmの間で適宜設定できる。
(導電層)
導電層は、20Ω/20mm以下の抵抗値を有する多孔体層であり、柔軟で導電性ゲル粘着剤層を通して、被粘着体に対する通電を支障なく行うことができれば特に限定されない。例えば、導電メッキした糸で織成したニット、布、あるいは導電繊維を含む糸で織成したニット、布、あるいは導電繊維で織成したニット、布等を採用することができる。導電層に導電性を与える物質としては、例えば、銀、銀−塩化銀の化合物、ステンレス、チタン、ニッケル、モリブデン、カーボンブラック、グラファイト等が挙げられる。導電層にはこれら物質が、単独で、あるいは二種類以上含まれていてもよい。これら導電層の内、金属メッキ繊維を含む糸で織成したニットは、導電性に方向性がなく、低抵抗であり、変形性及び柔軟性を備えている。そのため、表面が曲面である被粘着体(例えば、皮膚)に違和感なく粘着できる。導電性に方向性があると、電極の電気特性にバラツキを生じる恐れがある。
より好適な導電層は、チュール織の織布である。チュール織において、開口部は6角形を有していることが、より導電性の方向性の相違を低減できるので好ましい。更に、導電層は、40〜80%の開口率を有していることが好ましい。この範囲の開口率は、導電層の導電性と、支持基材と導電性ゲル粘着剤層との接着性、支持基材と補強材との接着性を両立できる。
(リード線)
リード線は、本発明においては金属腐食性を有する導電性ゲル粘着剤層と直接接触することがないので、ステンレスのような耐腐食性の材質に限定されず、当該分野で使用されているリード線がいずれも使用できる。リード線の材質は、例えば、ステンレス、銅、銀、金、カーボン等が挙げられる。電気抵抗が小さいことから金属線材からなるものが好ましく、4Ω/cm以下の抵抗値を有する金属線材が好ましい。電気抵抗が小さく、使用時の発熱を抑制し、柔軟でゲル電極装着時の違和感が少なく、コストを下げる観点から、銅を使用することが、特に好ましい。リード線のより線外径は、0.2〜1.0mmの範囲であることが好ましい。リード線は、導電層と5〜20mm重なっていることが好ましい。
リード線は、ゲル電極外の部分において樹脂で被覆されていてもよい。被覆外径は0.5〜2.0mmが好ましい。
(補強材)
補強材としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂が挙げられる。補強材の厚さは、例えば、25〜125μmとできる。
補強材の表面には導電層及び支持基材と、補強材とをより強固に接着するために、接着剤層を備えていてもよい。接着剤層には、例えば、ホットメルト接着剤からなる層を使用できる。
(セパレートフィルム)
セパレートフィルムとしては、特に限定されず、例えばシリコン剥離処理したポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂からなるフィルムを用いることができる。
(両面剥離シート)
両面剥離シートとしては、特に限定されず、例えばシリコン剥離処理したポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂からなるシートを用いることができる。
以下、本発明を実施例により更に詳細に、説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、実施例及び比較例において測定する導電層の抵抗値、導電層の開口率、初回のインピーダンス、100回貼付・剥がし後のインピーダンス、インピーダンス分布、30回貼付・剥がし後のリード線付け根部分の状況、リード線取り付け部分の強度3kg静荷重の測定方法を下記する。
(導電層の抵抗値)
導電層に用いる材料から測定用サンプルとして、長さ50mm×幅20mmの切片を3枚切り出す。この切り出しにおいて、切片の長さ方向を方向Aとする。更に、方向Aと直交する方向Bが長さ方向となるように、長さ50mm×幅20mmの切片を3枚切り出す。長さ方向がA及びBの測定用サンプルの長さ方向の両端間の抵抗値を、LCRメータ(カスタム社製ELC−131D)を用い、周波数1kHzにて測定し、それぞれの方向の測定値の相加平均値を、それぞれの方向の抵抗値とする。この抵抗値は、幅20mmの測定治具を2個用いて、サンプル全幅20mmを挟んで測定した値である。単位はΩ/20mmである。
導電層の抵抗値は、方向A及びBのいずれにおいても、20Ω/20mm以下であることが必要とされる。10Ω/20mm以下であることが好ましい。
(導電層の開口率)
縦50mm×横50mmの導電層を平面に置き、15〜20倍の拡大写真を撮り、写真上の全体面積に対する開口部の面積を求める。全体面積と開口部の面積から、以下の式により開孔率を算出する。
開口率(%)=開口部の面積/全体面積×100
(リード線の抵抗値)
長さ5cmのリード線の両端間の抵抗値をLCRメータ(カスタム社製ELC−131D)を用い、周波数1kHzにて測定した値を5で除して、リード線1cm当りの抵抗値(Ω/cm)として算出する。
(初回のインピーダンス)
測定の回路図を図3に示す。測定は、次のようにして行う。すなわち、電極板10(SUS板)をエタノールでよく拭き、脱脂し、乾燥する。次いで、電極板10にゲル電極11を貼り付け、電極板10とリード線4間に1KHzの周波数で、10μAの電流を印加した時の電圧Vbを測定する。得られた電圧からインピーダンスを算出する。
(100回貼付・剥がし後のインピーダンス)
電極板をエタノールでよく拭き、脱脂し、乾燥する。次いで、電極板にゲル電極を貼り付ける。1分間後、摘み部をもって剥がす。なお、比較例1及び2は、摘み部がないので端部のゲルをもって剥がす。これを100回くり返し行なう。次いで、電極板に貼り付けた後に、上記初回のインピーダンスと同様にしてインピーダンスを算出する。
(インピーダンス分布)
測定の概説図を図4(a)及び(b)に示す。図4(a)は測定点を示しており、図4(b)は測定の回路図である。測定は、次のようにして行う。すなわち、電極端子12(SUS端子、φ6mm)をエタノールでよく拭き、脱脂し、乾燥する。次いで、電極端子12をゲル電極11に貼り付け、電極端子12とリード線4間に周波数を10Hz〜100KHzに変化させ、10μAの電流を印加した時の電圧Vbを測定する。得られた電圧からインピーダンスを算出する。この算出を図B(b)に示す50点の測定点13について行う。
(30回貼付・剥がし後のリード線付け根部分の状況)
ゲル電極をアルコールで清浄にした人体の皮膚に貼り付けて、リード線部をもって剥がす。これを30回繰り返した後、リード線取り付け部の付け根部分の破損状況を観察する。
(リード線取り付け部分の強度3kg静荷重)
ゲル電極のリード線取り付け部分と反対側の両端2箇所をクランプで挟んで固定し、リード線の垂直方向に3kgの静荷重をかける。リード線取り付け部が破断するまでの時間を計測する。
実施例1〜3及び比較例1〜3に使用する高分子ハイドロゲルの作製例
まず、重合性単量体としてのアクリルアミド(Ml)とN,N−ジメチルアクリルアミド(M2)、架橋性単量体としてのN,N−メチレンビスアクリルアミド(Cl)、電解質塩としての塩化ナトリウム(N)、pH調整剤としてのクエン酸Na:クエン酸の1:1の混合物(N2)、湿潤剤としてのグリセリン(G)とポリグリセリン(6量体)(G2)とを配合した。得られた配合物に、溶媒としてのイオン交換水を加えて100重量%とした。得られた混合物を溶解攪拌して、モノマー配合液を得た。次に、モノマー配合液100重量部に対して、光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン(商品名イルガキュア184、チバ・スベシヤリティーケミカルズ社製)を0.3重量部加え、更に攪拌して溶解した。表1に実施例1〜3及び比較例1〜3に使用したモノマー配合液を構成する各成分の配合量を示す。ただし、表1の数値は、イオン交換水を加えた配合液総量に対する重量%である。
得られたモノマー配合液を、初期温度を25℃に調整した後、シリコン離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム上に薄く展開した。次いで、このフィルム側面に厚さ1.0mmのスペーサーおき、更に、シリコン離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルムをのせた。この後、モノマー配合液に50mW/cm2の強度の紫外線を60秒間照射し、単量体の重合及び架橋反応を行うことで、厚さ1.0mmのシート状の導電性ゲル粘着剤層を得た。
実施例1〜3(ゲル電極の作製)
PP(ポリプロピレン)スパンボンド不織布(目付け70g/m2、シンワ社製)の片面上に、ホットメルト粘着剤(東洋インキ製造社製BPS4668)を40g/m2(乾燥時)塗布し乾燥させ、不織布粘着テープ材(支持基材)6とした。これに銀メッキ糸をチュール織りした導電繊維(セーレン社製SE−200−5、開口率62%)からなる導電層1を積層した。これを長さ70mm×幅50mmに裁断した。更に、その端部にあらかじめ作製しておいた、長さ25mm×幅50mm、厚み75μmのPETフィルムからなる補強材3(補強材、日清紡社製ピーチコート)を幅を合わせて貼り付けた。補強材3の片面上には、ホットメルト粘着剤(東洋インキ製造社製BPS4668)を40g/m2(乾燥時)塗布し、乾燥させた層を形成した。更に、補強材3の粘着面に、両面シリコン離型処理した紙セパレーター(両面剥離シート)7を端部から15mm巾で配置した。更に、補強材3の中央側の幅10mmをヒートシール機によって、温度160℃、2秒間熱融着することで、補強材3を不織布に強固に固定した。更に、長さ55mm×幅50mmにカットした上記導電性ゲル粘着剤層2を導電層1面に幅を合わせて端部から補強材3に約10mmかかるように貼り付けた。得られた積層体を、図2(a)に示すオフセット電極形状にカットした。更に、オフセット部分の紙セパレーター7を取り除き、リード線4を補強材3と導電層1との間にはさみ、その部分をヒートシール機によって、温度160℃、4秒間熱融着することで、リード線4をオフセット部に強固に固定した。リード線種を表1に示す。
上記工程により図2(c)に示すゲル電極を得た。
比較例1
実施例と同じPP(ポリプロピレン)スパンボンド不織布(支持基材)6の片面上に、ホットメルト粘着剤(東洋インキ製造社製BPS4668)を塗布し乾燥させて粘着剤層14を形成することで、不織布粘着テープ材とした。カーボン練り込みフィルム(クレハエラストマー社製EB90NES)からなる導電層1を準備した。それぞれを長さ50mm×幅50mmに裁断し、図5に示すようにリード線4を挟み込んで貼り合せた。更に、導電層1上に長さ50mm×幅50mmにカットした上記導電性ゲル粘着剤層2を幅を合わせて貼り付けた。更に、導電性ゲル粘着剤層2にセパレータフィルム8を貼り合せた。リード線種を表1に示す。
上記工程によりゲル電極を得た。
比較例2
カーボン練り込みフィルムの代わりに導電繊維(セーレン社製SE−200−5)を使用すること以外は比較例1と同様にしてゲル電極を得た。
得られたゲル電極の導電層の抵抗値、ゲル電極の初回のインピーダンス、100回貼付・剥がし後のインピーダンス及びリード線付け根部分の状況、リード線取り付け部分の強度3kg静荷重の測定結果を表2に示す。
表2から実施例のゲル電極は、比較例1及び2に比べて、リード線がより強固に固定されているため、インピーダンスの変化が抑制されていることが分かる。
実施例1と比較例1のゲル電極について、50箇所のインピーダンス分布を図6(a)及び(b)に示す。図6(a)の左側の表は、比較例1のゲル電極の周波数毎のインピーダンス分布の測定値であり、右側のグラフはそれをグラフ化したものである。図6(b)の左側の表は、実施例1のゲル電極の周波数毎のインピーダンス分布の測定値であり、右側のグラフはそれをグラフ化したものである。これら図から明らかなように、実施例1のゲル電極は、どの周波数においてもゲル電極全面にわたって均一なインピーダンスを得ることができている。
実施例1及び3で得られたゲル電極を高出力電気刺激機器(伊藤超短波社製ES−520)に使用し、ゲル電極の初期温度と10分後の温度を測定した。以下の条件で、温度上昇をサーモグラフィーにより測定した。
電気刺激装置の出力:5kHz、30mA
使用部位:腹部
使用ゲル電極サイズ:50×50
結果を表3に示す。
上記表3から、実施例のゲル電極は、周辺部及び中央部において、温度上昇が抑制されていることが分かる。
実施例1のリード線はステンレスからなっているため、端子部では温度上昇が見られる。実施例3ではリード線が銅からなっているため、端子部においても温度上昇が抑制されている。従って、リード線は抵抗が低い材料を使用することが好ましいことが分かる。
本発明のゲル電極の概略平面図である。 本発明のゲル電極の製造工程の概略図である。 インピーダンスの測定法の概略回路図である。 インピーダンス分布の測定法の概略回路図である。 比較例1のゲル電極の概略図である。 実施例1及び比較例1のゲル電極のインピーダンス分布の説明図である。
符号の説明
1 導電層
2 導電性ゲル粘着剤層
3 補強材
4 リード線
5 端子
6 支持基材
7 両面剥離シート
8 セパレータフィルム
10 電極板
11 ゲル電極
12 電極端子
13 測定点
14 粘着剤層

Claims (7)

  1. 支持基材上に導電層を備え、前記導電層上に導電性ゲル粘着剤層を備える領域と備えない領域とを有し、前記導電性ゲル粘着剤層を備えない領域上にリード線を有し、前記リード線上に補強材を備え、前記導電層が、20Ω/20mm以下の抵抗値を有する多孔体層であることを特徴とするゲル電極。
  2. 前記多孔体層が、織布からなり、前記織布が、金属被膜を有する糸により構成される請求項1に記載のゲル電極。
  3. 前記織布が、開口率40〜80%のチュール織布である請求項2に記載のゲル電極。
  4. 前記リード線が、4Ω/cm以下の抵抗値を有する金属線材からなる請求項1〜3のいずれか1つに記載のゲル電極。
  5. 前記リード線が、銅線からなる請求項1〜4のいずれか1つに記載のゲル電極。
  6. 前記補強材が、前記導電層を介して、前記支持基材と熱融着されている請求項1〜5のいずれか1つに記載のゲル電極。
  7. 前記導電層を備えた支持基材は、その平面視において、四角、丸及び楕円から選択される前記導電性ゲル粘着剤層が備えられた領域と、その領域の一部から延在する前記導電性ゲル粘着剤層を備えず、かつ前記リード線が位置する突起とを有する請求項1〜6のいずれか1つに記載のゲル電極。
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