JP3977217B2 - 電極パッド - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気メス装置の対極板等に好適に用いられる電極パッドに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から手術において電気メス装置が汎用されており、この電気メス装置は、電源と、この電源にリード線を介して接続されたメス先電極及び対極板とからなる。
【0003】
上記電気メス装置は、その対極板を生体に貼着した上でメス先電極を生体表面に接触させ、メス先電極が接触した生体表面に電流密度の高い高周波電流を流すことによって生体組織の切開、凝固を行うものである。
【0004】
このような電気メス装置の対極板としては、特許文献1に、基材上に積層一体化された電極シート上に、上記基材と同一大きさ、同一形状を有する粘着剤層が上記電極シートを全面的に被覆した状態、即ち、上記基材に完全に合致させた状態に重ね合わせられた状態に積層一体化されてなる電極パッドが開示されている。
【0005】
しかしながら、上記電極パッドでは、その粘着剤層としてアクリル系粘着剤を用いており、このアクリル系粘着剤は皮膚刺激が強くて生体上に貼着した場合に発赤等を引き起こすことがあるといった問題点があった。
【0006】
更に、上記電極パッドは、柔軟性に乏しいアクリル系粘着剤層が電極パッドの上面全面に積層一体化されていることから柔軟性に劣り、その結果、電極パッドが生体表面に沿って円滑に順応し変形することができずに使用中に部分的に生体表面から剥離してしまって、電極パッドと生体との接触面積が小さくなり、電極パッド側に電流密度の高い高周波電流が流れてしまう虞れがあるといった問題点があった。
【0007】
【特許文献1】
特許第2874947号公報(第3図、第3頁左欄第22行〜右欄第2行)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、皮膚刺激性が低く且つ生体に沿って柔軟に変形、貼着させることができると共に、電極シートの外周縁部を絶縁性粘着剤層によって被覆して電極シートの外周端面に指先等が接触したり或いは液体が進入する虞れがない電極パッドを提供する。
【0009】
【課題を解決する手段】
請求項1に記載の電極パッドは、高周波電流を生体に流すために生体表面に貼着して用いられる電極パッドであって、絶縁性表面シート上に該絶縁性表面シートの外周縁部を除いた部分に電極シートを積層一体化させ、上記絶縁性表面シートの上面外周縁部に枠状の絶縁性粘着剤層を積層一体化させていると共に上記絶縁性粘着剤層の内周側部分を全周に亘って上記電極シートの外周縁部に重ね合わせることにより、上記電極シートの外周縁部及び外周端面が上記絶縁性粘着剤層によって全面的に被覆隠蔽されており、上記絶縁性粘着剤層で囲まれた電極シート上に粘着性ハイドロゲルを積層一体化させていることを特徴とする。
【0010】
そして、請求項2に記載の電極パッドは、請求項1に記載の電極パッドにおいて、粘着性ハイドロゲルは、複数のハイドロゲル片に分割されており、互いに隣接するハイドロゲル片間には隙間が形成されていると共に、最外方に位置する各ハイドロゲル片は絶縁性粘着剤層の内周縁から離間しており、各ハイドロゲル片が生体表面の凹凸に沿って互いに独立して変形できるように構成していることを特徴とする。
【0011】
又、請求項3に記載の電極パッドは、請求項1又は請求項2に記載の電極パッドにおいて、絶縁性粘着剤層がアクリル系粘着剤からなることを特徴とする。
【0012】
更に、請求項4に記載の電極パッドは、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の電極パッドにおいて、電極シートと粘着性ハイドロゲルとの間に誘電フィルムを介在させていることを特徴とする。
【0013】
加えて、請求項5に記載の電極パッドは、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の電極パッドにおいて、粘着性ハイドロゲルが導電性を有することを特徴とする。
【0014】
【作用】
本発明の電極パッドは、その電極シートの外周縁部を枠状の絶縁性粘着剤層によって全面的に被覆して電極シートの外周端面の全面を完全に被覆した状態に構成されており、電極パッドの使用中に電極シートに接触して火傷をすることはない。
【0015】
そして、本発明の電極パッドは、粘着性の強い絶縁性粘着剤層を電極シートの外周縁部に沿って枠状に用いることによって絶縁性粘着剤層の使用を最小限度にしていると共に、絶縁性粘着剤層で囲まれた電極シート表面に柔軟性に優れた粘着性ハイドロゲルを配設しており、よって、電極パッドは、絶縁性粘着剤層による優れた粘着性を維持しつつ優れた柔軟性を有している。
【0016】
しかも、本発明の電極パッドにおける電極シートの外周縁部を絶縁性接着剤層によって生体表面に強固に貼着させることにより、電極シートとこれに対向する生体表面との間に外部から水分が進入するのを確実に防止することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の電極パッドの一例を図面を参照しつつ説明する。電極パッドAの絶縁性表面シート1は、図1及び図2に示したように、平面横長長方形状の柔軟性を有する一定厚みの発泡シートからなり、その一端中央部には平面横長長方形状の舌片部11が突設されており、この舌片部11にはリード線の先端を後述する電極シート2に接続するための接続孔11a が上下面間に貫通した状態に形成されている。
【0018】
そして、上記絶縁性表面シート1の上面には、この絶縁性表面シート1よりも一回り小さい大きさで且つ同一形状を有する一定厚みの電極シート2が積層一体化されている。
【0019】
具体的には、上記電極シート2は、平面横長長方形状に形成され且つ一端中央部に平面横長長方形状の突片部21が突設されてなり、この電極シート2を上記絶縁性表面シート1上における外周縁部を除いた部分に積層一体化させている。なお、上記電極シート2の突片部21の一部が上記表面シート1の接続孔11a を通じて外部に露出した状態となっている。
【0020】
ここで、上記電極シート2は、可撓性を有して生体表面に沿って変形でき且つ電気抵抗の小さいものであれば、特に限定されず、例えば、アルミニウム箔、ステンレス箔、銅箔、ニッケル箔等の金属箔、合成樹脂フィルム上にカーボン、銀、塩化銀等の導電性材料を合成樹脂等のバインダーを介して層状に付着させた複合フィルム等が挙げられ、金属箔が好ましく、アルミニウム箔がより好ましい。
【0021】
又、上記電極シート2の厚みは、厚いと、可撓性が低下して電極パッドAを生体に沿って変形させることができないことがあり、又、薄いと、機械的強度が低下することがあるので、5〜50μmが好ましい。
【0022】
更に、上記電極シート2上には、この電極シート2と同一形状、同一大きさの誘電フィルム3が完全に重ね合わせられた状態に積層一体化されている。この誘電フィルム3としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム等の非導電性フィルムが用いられる。なお、上記誘電フィルム3の厚みとしては、通常、10〜200μmのものが用いられる。
【0023】
そして、上記絶縁性表面シート1の上面外周縁部には、この表面シート1の外周縁に沿って、所定幅を有する四角枠状の絶縁性粘着剤層4が積層一体化されており、この四角枠状の絶縁性粘着剤層4の内周側部分を全周に亘って上記誘電フィルム3を介して上記電極シート2の外周縁部に重ね合わせることによって、電極シート2の外周縁部(外周端面)が絶縁性粘着剤層4によって全面的に被覆隠蔽されている。
【0024】
なお、上記四角枠状の絶縁性粘着剤層4の一端中央部には、上記表面シート1の舌片部11と同一大きさ、同一形状を有する平面横長長方形状の粘着舌片部41が突設されており、この粘着舌片部41を上記表面シート1の舌片部11上に全面的に積層一体化させることによって電極シート2の突片部21を誘電フィルム3を介して全面的に被覆隠蔽している。
【0025】
上記絶縁性粘着剤層4を構成する粘着剤としては、絶縁性及び耐水性(水等の液体に対して膨潤したり或いは粘着力が低下しないこと)を有し且つ皮膚に対する粘着性を有しておれば、特に限定されないが、(メタ)アクリル系粘着剤が好ましい。
【0026】
上記アクリル系粘着剤のベースポリマーであるアクリル系重合体に用いられるアクリル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ノニル等の(メタ)アクリル酸アルキルが挙げられ、これらは単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0027】
上記アクリル系重合体の製造には、公知の重合方法が用いられ、このような重合方法としては、例えば、バルク重合方法、溶液重合方法、懸濁重合方法等のラジカル重合方法等が用いられ、溶液重合方法が好ましい。なお、溶液重合方法において用いられる溶媒としては一般的に酢酸エチル、トルエン等の極性溶媒が用いられる。又、ラジカル重合開始剤としては、アゾ系、過酸化物系の各種公知のものを用いることができる。
【0028】
そして、上記アクリル系粘着剤は、架橋剤によって架橋されていることが好ましく、このような架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、ポリアミン化合物、メラミン化合物、尿素化合物、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0029】
又、上記アクリル系粘着剤には、物性を損なわない範囲内において、粘着付与剤、可塑剤、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤等の添加剤が添加されてもよい。
【0030】
そして、上記絶縁性粘着剤層4で囲まれた誘電フィルム3の露出した表面(上面)には粘着性ハイドロゲル5が積層一体化されている。具体的には、粘着性ハイドロゲル5は、略直方体形状の複数個のハイドロゲル片51、51・・・に分割され、このハイドロゲル片51、51・・・を上記誘電フィルム3の露出した上面に前後左右方向に所定間隔毎に格子状に積層一体化しており、互いに隣接するハイドロゲル片51、51同士は全面的に非接触状態となっていると共に、最外方に位置する各ハイドロゲル片51a は上記絶縁性粘着剤層4の内周縁から所定間隔だけ離間した状態となっている。
【0031】
このように粘着性ハイドロゲル5を複数個の小さなハイドロゲル片51、51・・・に分割することによって、各ハイドロゲル片51の可変性を高めて、各ハイドロゲル片51を生体表面の凹凸に沿って円滑に互いに独立して変形できるように構成しており、よって、電極パッドAは、優れた柔軟性を有し、生体表面の凹凸に沿って円滑に変形させた上で確実に貼着することができる。
【0032】
又、上記のように、最外方に位置する各ハイドロゲル片51a を絶縁性粘着剤層4の内周縁から所定間隔だけ離間させた状態とすることによって、ハイドロゲル片51a が不測に変形して粘着剤層4とこれに対向する生体表面との間に進入し、電極パッドAの粘着剤層4による生体表面への貼着が阻害されるのを確実に防止している。
【0033】
更に、互いに隣接するハイドロゲル片51、51間には、前後方向又は左右方向に指向する直条の溝部61、62が複数本づつ、格子状に互いに直交した状態に形成されており、生体から発生した汗等の液体を溝部61、62内に円滑に流動させることによって溝部61、62全体に均一に且つ円滑に拡散させて、汗等の液体によってハイドロゲル片51や絶縁性粘着剤層4の粘着性が低下しないように構成している。
【0034】
ここで、ハイドロゲル5としては、粘着性を有するものであれば、特に限定されず、ここに記載のハイドロゲル5とは、ポリマー分子鎖が三次元的に架橋された高分子マトリックス内に少なくとも水及び湿潤剤を保持しているものであり、高分子マトリックスとしては、重合性単量体と架橋性単量体とを重合架橋した高分子マトリックスが好ましく用いられる。
【0035】
上記重合性単量体としては、特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)グリセリン(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸誘導体;(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチ(メタ)ルアクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、t−ブチルアクリルアミドスルホン酸等の(メタ)アクリルアミド誘導体及びその塩;N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニルアミド誘導体;ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸等のスルホン酸系単量体及びその塩等が挙げられ、(メタ)アクリルアミド誘導体及びその塩が好ましく、(メタ)アクリルアミド誘導体がより好ましく、(メタ)アクリルアミドが特に好ましい。
【0036】
又、上記架橋性単量体としては、特に限定されず、例えば、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N−メチレンビスアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等の多官能(メタ)アクリルアミド系単量体;(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート系単量体;テトラアリロキシエタン;ジアリルアンモニウムクロライド等が挙げられ、多官能(メタ)アクリルアミド系単量体が好ましく、N,N−メチレンビスアクリルアミドがより好ましい。なお、上記架橋性単量体は単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0037】
上記粘着性ハイドロゲル5中の高分子マトリックスの含有量は、少ないと、ハイドロゲル中の高分子マトリックスが低くなり過ぎて水を抱えきれずにブリードし易くなって、ハイドロゲルの柔軟性が低下することがあり、又、多いと、ハイドロゲルの製造時における発熱が大きくなり過ぎて反応が暴走したり或いはハイドロゲル中に気泡が混入して柔軟性が低下することがある。
【0038】
又、上記粘着性ハイドロゲル5中の架橋性単量体の含有量は、少ないと、良好なハイドロゲルが得られないことがあり、又、多いと、主鎖間を結ぶ網目架橋点が増大し、見かけ上、ゲル強度の強いハイドロゲルが得られるが、ハイドロゲルの脆さ(切断性)が増大し、引っ張り力や圧縮力によるハイドロゲルの切断及び破壊が生じ易くなったり、或いは、架橋点の増大が主鎖の疎水化を増大させ、網目構造中に封じ込めた水を安定な状態に保持することを困難にし、ブリードが起こり易くなったり、更に、架橋点の増大による主鎖の自由度の低下によって、ハイドロゲルの柔軟性が低下することがあり、高分子マトリックス100重量部に対して0.005〜3重量部が好ましく、0.04〜1.5重量部がより好ましい。
【0039】
更に、上記粘着性ハイドロゲル4中の水の含有量は、少ないと、ハイドロゲルの柔軟性が低下することがあり、又、多いと、ハイドロゲルの平衡水分量との差が大きくなるために乾燥によるゲルの収縮や物性の変化が大きくなることがあるので、高分子マトリックス100重量部に対して20〜400重量部が好ましく、50〜300重量部がより好ましい。
【0040】
又、上記ハイドロゲル5中の湿潤剤の含有量は、少ないと、ハイドロゲルの保湿力が乏しく、水分の蒸散が著しくなってハイドロゲルの経時安定性に欠けると共に、柔軟性に欠け、粘着性が低下することがあるからであり、又、多いと、相対的に高分子マトリックスや水の濃度が小さくなってハイドロゲルの製造時に粘度が高くなり過ぎて取り扱い性が低下すると共にハイドロゲルの成形時に気泡が混入することがあり、或いは、気泡が混入した時の脱泡作業が困難になることがあるので、高分子マトリックス100重量部に対して80〜550重量部が好ましく、120〜500重量部がより好ましい。
【0041】
上記湿潤剤としては、特に限定されず、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール類;これら多価アルコールの一種又は二種以上を単量体として重合されたポリオール類;ブドウ糖、果糖、ショ糖、乳糖等の糖類等が挙げられる。なお、上記湿潤剤は単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。又、上記多価アルコール類の分子内或いは分子の末端にエステル結合、アルデヒド基、カルボキシル基等の官能基を有していても良い。
【0042】
更に、上記ハイドロゲル5中に電解質塩を含有させることによってハイドロゲル5に導電性を付与してもよい。このようにハイドロゲル5に導電性を付与させることによって、電極シート2と生体表面との間の電気抵抗を低くして生体に印加される電圧を低減することができると共に電極パッドAの発熱を抑えることができる。
【0043】
このような電解質塩としては、ハイドロゲル5に導電性を付与することができれば、特に限定されず、例えば、ハロゲン化ナトリウム、ハロゲン化カリウム等のハロゲン化アルカリ金属塩、ハロゲン化マグネシウム、ハロゲン化カルシウム等のハロゲン化アルカリ土類金属塩、その他の金属ハロゲン化物;各種金属の次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、燐酸塩、アンモニウム塩、各種錯塩等の無機塩類;酢酸、安息香酸、乳酸、酒石酸等の一価有機カルボン酸塩;フタル酸、コハク酸、アジピン酸、クエン酸等の多価カルボン酸の一価または二価以上の塩;スルホン酸、アミノ酸等の有機酸の金属塩;有機アンモニウム塩;ポリ(メタ)アクリル酸、ポリビニルスルホン酸、ポリt−ブチルアクリルアミドスルホン酸、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン等の高分子電解質の塩等が挙げられる。なお、ハイドロゲルの作製時には不溶性或いは分散状態であっても、時間経過とともにハイドロゲル中に溶解するものも使用することができ、このようなものとしては、珪酸塩、アルミン酸塩、金属酸化物、金属水酸化物等が挙げられる。
【0044】
そして、上記ハイドロゲル5中の電解質塩の含有量は、多いと、電解質塩の水に対する完全な溶解が困難となってハイドロゲル内に結晶として析出したり或いは他の成分の溶解を阻害する場合があるので、高分子マトリックス100重量部に対して100重量部以下が好ましく、80重量部以下がより好ましい。
【0045】
又、ハイドロゲル5の比抵抗値ρは、100kΩ・cm以下が好ましい。このハイドロゲル5の比抵抗値ρは下記に示した要領で測定される。先ず、ハイドロゲル5から一辺20mmの平面正方形状に切り出して試験片Eを作製し、この試験片Eの厚みL(cm)を測定する。次に、直径25mm、厚み1mmの上下一対のステンレス板S、S(SUS304)の対向面中央部間に試験片Eを挟持した上で図17に示した回路を作成し、一対のステンレス板S、S間の電圧V1 (V)を測定して下記式(1)(2)に基づいてインピーダンスZ(Ω)及び比抵抗値ρ(kΩ・cm)を算出する。なお、測定周波数は1kHz、抵抗Rの電圧V2 が1.0Vとなるように調整する。
Z(Ω)=V1 /0.01・・・式(1)
ρ(kΩ・cm)=Z(4/L)/1000・・・式(2)
【0046】
上記ハイドロゲル5には、必要に応じて、防腐剤、殺菌剤、防黴剤、防錆剤、酸化防止剤、安定剤、香料、界面活性剤、着色剤等、抗炎症剤、ビタミン剤、美白剤その他の薬効成分を適宜添加しても良い。
【0047】
そして、上記ハイドロゲル5の製造方法としては、例えば、重合性単量体、架橋性単量体、湿潤剤及び重合開始剤、必要に応じて電解質塩を加えたものを水中に均一に溶解或いは分散させて架橋、重合させるハイドロゲルの製造方法、重合性単量体、架橋性単量体、湿潤剤及び重合開始剤を水中に均一に溶解或いは分散させて架橋、重合させて得られた高分子マトリックス中に必要に応じて電解質塩を含浸させるハイドロゲルの製造方法、重合性単量体のみを湿潤剤の存在下で重合させた直鎖状高分子に必要に応じて電解質塩を均一に溶解或いは分散させてなる高分子配合水に架橋剤を添加して直鎖状高分子と架橋剤とを架橋反応させることにより高分子マトリックスを生成するハイドロゲルの製造方法等が挙げられる。
【0048】
次に、上記電極パッドAの製造方法を説明する。先ず、図3に示したように、一定幅を有する長尺状の電極シート原反2a上にこの電極シート原反2aと同一幅を有する長尺状の誘電フィルム原反3aを幅方向に合致させた状態に積層一体化してなる積層原反Bを、上記積層原反Bの幅よりも若干広い幅を有する支持体6上に剥離可能に連続的に積層する。
【0049】
続いて、図4に示したように、上記支持体6上の積層原反Bのみを順次、連続的に平面略横長長方形状に所望形状に打ち抜いて、電極シート2上に誘電フィルム3が積層一体化してなる積層シートC、C・・・が支持体6上に一定間隔毎に連続的に積層された状態とする。なお、各積層シートCの一端中央部には、電極シート2の突片部21に相当する平面横長長方形状の積層舌片部C1が突設されている。
【0050】
一方、上記支持体6と略同一幅を有する長尺状の剥離シート71の下面に絶縁性粘着剤72が全面的に層着されてなる長尺状の粘着シート7を別途用意し、この粘着シート7にその長さ方向の所定間隔毎に上記積層シートCよりも一回り小さな大きさを有する平面横長長方形状の貫通孔73、73・・・を上下面間に亘って貫通した状態に打抜き形成する。なお、上記粘着シート7の剥離シート71を打ち抜くことなく、上記粘着剤72のみをその上下面間に亘って貫通した状態に打ち抜いてもよい。
【0051】
そして、図5及び図6に示したように、上記支持体6上に上記粘着シート7を順次、連続的に積層して、この粘着シート7の粘着剤72を各積層シートC上に枠状に層着することによって、各積層シートCの外周縁部が粘着剤72により全面的に被覆隠蔽された状態とする。この状態では、各積層シートCの外周縁部を除いた部分が全面的に上記粘着シート7の貫通孔73、73・・・を通じて露出した状態となっている。
【0052】
又、図7に示したように、上記支持体6と同一幅を有する一定厚みの絶縁性表面シート原反8を別途用意し、この表面シート原反8にその長さ方向の所定間隔毎に平面矩形状の貫通孔81、81・・・を複数個、上下面間に亘って貫通した状態に打抜き形成する。なお、上記表面シート原反8の上面には粘着剤(図示せず)が全面的に層着されている。
【0053】
しかる後、図8に示したように、上記支持体6を上記積層シートC及び粘着シート7の粘着剤72から順次、連続的に剥離、除去した後、この支持体6の代わりに上記表面シート原反8を順次、連続的に上記積層シートCの下面に積層一体化させる。なお、上記表面シート原反8の各貫通孔81は、各積層シートCの積層舌片部C1の下面中央部に位置させた状態となっている。
【0054】
この状態では、表面シート原反8上に積層シートCが積層一体化されていると共に、この積層シートCの外周縁部及び表面シート原反8上における積層シートCを積層させていない部分には全面的に上記粘着シート7の粘着剤72が層着され、積層シートCの外周縁部が全面的に粘着剤72によって被覆隠蔽された状態となっている。
【0055】
次に、上記粘着シート7の剥離シート71を除去して粘着剤72が全面的に露出した状態とする(図9及び図10参照)。一方、上記表面シート原反8と同一幅を有する一定厚みの長尺状のゲル支持シート9の一面に、複数個のハイドロゲル片51、51・・・を所定間隔毎に配設してなる(図11では、ゲル支持シート9の幅及び長さ方向に所定間隔置きにハイドロゲル片51を格子状に配設)ものを一組とし、これを複数組、支持シート9の長さ方向に所定間隔毎に剥離可能に配置したものを用意する。なお、上記ゲル支持シート9とハイドロゲル片51との間の粘着力は、ハイドロゲル片51と上記積層体C上面との間の粘着力よりも弱くなるように調整されている。
【0056】
しかる後、図12及び図13に示したように、上記ゲル支持シート9をその各組のハイドロゲル片51、51・・・が粘着剤72に形成された各貫通孔73を通じて露出した積層シートCの上面の夫々に合致した状態にして順次、連続的に重ね合わせて最終積層体Dが連続的に製造される。
【0057】
そして、上記最終積層体Dから各積層シートCの外形に沿って積層シートCよりも一回り大きな大きさに上下方向に打ち抜くことによって電極パッドAを連続的に製造することができる。なお、上記電極パッドAにおいて、上記表面シート原反8から打ち抜かれたものが絶縁性表面シート1に、上記粘着剤72から打ち抜かれたものが枠状の絶縁性粘着剤層4に、上記表面シート原反8の各貫通孔81が表面シート1の接続孔11a に、上記ゲル支持シート9から打ち抜かれたものが剥離除去シート10となる。
【0058】
次に、上記電極パッドAの使用要領を説明する。この電極パッドAは、その表面シート1の接続孔11a を通じて外部に露出している電極シート2にリード線の先端を電気的に接続させて用いられる。そして、上記電極パッドAに接続されたリード線の基端は、交流電源に電気的に接続されていると共に、この交流電源には別のリード線を介してメス先電極が電気的に接続されており、上記電極パッドAを生体表面に貼着させた上でメス先電極が接触した生体表面に電流密度の高い高周波電流を流すことによって生体組織の切開、凝固を行う。なお、上記電極パッドAは、高周波電流を用いた治療器又はモニタリング等を行う装置のアース電極やセンシング電極としても用いることができる。
【0059】
上記電極パッドAの生体表面への貼着要領としては、上記電極パッドA上に剥離可能に積層された剥離除去シート10を剥離除去した後、電極パッドAを生体表面に沿わせて変形させつつ、全面的に露出した枠状の絶縁性粘着剤層4及び粘着性ハイドロゲル5(ハイドロゲル片51)によって生体表面に強固に貼着する。
【0060】
しかるに、電極パッドAの絶縁性粘着剤層4は枠状に形成されていることから柔軟性に優れており、生体表面の凹凸に沿って円滑に変形して生体表面に強固に粘着し、電極パッドAと生体表面との対向面間に外部から液体が進入したり或いは指が不測に入ってしまうといった事態は発生しない。
【0061】
しかも、電極パッドAが生体に粘着する全接触面積のうち、絶縁性粘着剤層4を枠状として必要最小限の面積でもって生体表面に接触させていると共に、大部分を占める残余の生体表面に対する接触面積を生体に刺激の少ない粘着性ハイドロゲル5にしていることから、電極パッドA全体の生体に対する強固な粘着性を絶縁性粘着剤層4によって保持しつつ、生体に刺激の少ない粘着性ハイドロゲル5によって絶縁性粘着剤層4の生体に対する粘着性を補助しており、よって、電極パッドAは、生体に対して強固な粘着力を有すると共に生体に与える刺激が少なく、発赤等の発生を効果的に抑制することができる。
【0062】
又、電極パッドAは、その電極シート2の外周縁部が全面的に絶縁性粘着剤層4によって被覆隠蔽されていることから、電極パッドAの使用中に電極シート2に触れて火傷を被ることはない。
【0063】
上記電極パッドAでは、電極シート2の上面に誘電フィルム3を積層一体化した場合を説明したが、以下のような電極パッドAであってもよい。なお、上記電極パッドAと同様の構成部分及び製造工程についてはその説明を省略する。
【0064】
即ち、図1の電極パッドAにおいて誘電フィルム3を設けなくてもよく、このような電極パッドAを製造する場合には、上記支持体6上に電極シート原反2aのみを積層させればよい(図14参照)。
【0065】
更に、図1の電極パッドAにおいて、電極シート2の下面に誘電フィルム3と同様のフィルムを補助フィルムA1として積層一体化させてもよい(図15参照)。このような電極パッドAを製造する場合には、長尺状の電極シート原反2aの上面に該電極シート原反2aと同一幅を有する誘電フィルム原反3aを積層一体化していると共に上記電極シート原反2aの下面に該電極シート原反2aと同一幅を有する補助フィルム原反を積層一体化してなる積層原反を支持体6上に剥離可能に連続的に積層すればよい。なお、表面シート1の接続孔11a に対応する補助フィルムA1部分には電極シート2に連通する貫通孔が上下面間に亘って貫通状態に貫設されている。
【0066】
又、図1の電極パッドAにおいて、誘電フィルム3を設けないと共に電極シート2の下面に誘電フィルム3と同様のフィルムを補助フィルムA1として積層一体化させたものであってもよい(図16参照)。このような電極パッドAを製造する場合には、一定幅を有する長尺状の電極シート原反2aの下面に幅方向に合致させた状態に上記電極シート原反2aと同一幅を有する補助フィルム原反を積層一体化してなる積層原反を支持体6上に剥離可能に連続的に積層すればよい。なお、表面シート1の接続孔11a に対応する補助フィルムA1部分には電極シート2に連通する貫通孔が上下面間に亘って貫通状態に貫設されている。
【0067】
【発明の効果】
請求項1に記載の電極パッドは、高周波電流を生体に流すために生体表面に貼着して用いられる電極パッドであって、絶縁性表面シート上に該絶縁性表面シートの外周縁部を除いた部分に電極シートを積層一体化させ、上記絶縁性表面シートの上面外周縁部に枠状の絶縁性粘着剤層を積層一体化させていると共に上記絶縁性粘着剤層の内周側部分を全周に亘って上記電極シートの外周縁部に重ね合わせることにより、上記電極シートの外周縁部及び外周端面が上記絶縁性粘着剤層によって全面的に被覆隠蔽されており、上記絶縁性粘着剤層で囲まれた電極シート上に粘着性ハイドロゲルを積層一体化させていることを特徴とするので、粘着力の強い絶縁性粘着剤層を枠状に形成して生体に対する接触面積を最小限なものとしつつ、生体に対して皮膚刺激の少ない粘着性ハイドロゲルを大きな接触面積でもって生体に接触させて、絶縁性粘着剤層及び粘着性ハイドロゲルの双方の総粘着力によって、電極パッド全体の生体に対する粘着力を十分なものに維持しつつ皮膚刺激を抑制している。
【0068】
しかも、絶縁性粘着剤層は枠状に形成されていることから、従来のように平面矩形状等の平板状に形成されている場合に比して、柔軟性に優れており、よって、絶縁性粘着剤層を生体表面の微妙な凹凸に沿って変形させつつ電極パッドを生体表面に強固に粘着させることができる。
【0069】
更に、電極シートの外周縁部は全面的に絶縁性粘着剤層によって被覆隠蔽されていることから、使用中に電極シートに接触して火傷を被ることはない。
【0070】
加えて、請求項2に記載の電極パッドは、請求項1に記載の電極パッドにおいて、粘着性ハイドロゲルは、複数のハイドロゲル片に分割されており、互いに隣接するハイドロゲル片間には隙間が形成されていると共に、最外方に位置する各ハイドロゲル片は絶縁性粘 着剤層の内周縁から離間しており、各ハイドロゲル片が生体表面の凹凸に沿って互いに独立して変形できるように構成していることを特徴とするので、ハイドロゲル片間の隙間に生体から発生した汗等の液体を分散させて、この液体が絶縁性粘着剤層及びハイドロゲル片と生体表面との間に流入して生体表面に対する粘着力が低下するのを確実に防止することができる。
【0071】
そして、粘着性ハイドロゲルを複数のハイドロゲル片に分割して、各ハイドロゲル片の可変性を向上させていると共に各ハイドロゲル片が互いに独立して異なった形状に円滑に変形できるように構成しており、各ハイドロゲル片を生体表面の凹凸に沿って円滑に変形させつつ生体表面に確実に粘着させることができ、よって、電極パッドを生体表面に強固に貼着させることができる。
【0072】
更に、請求項3に記載の電極パッドは、請求項1又は請求項2に記載の電極パッドにおいて、絶縁性粘着剤層がアクリル系粘着剤からなることを特徴とするので、電極パッドを粘着力の優れた絶縁性粘着剤層によって生体表面に強固に貼着させることができる。
【0073】
又、請求項4に記載の電極パッドは、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の電極パッドにおいて、電極シートと粘着性ハイドロゲルとの間に誘電フィルムを介在させていることを特徴とするので、生体に加わる電圧を低減させつつ、生体への低周波電流の流入を効果的に抑制することができる。
【0074】
更に、請求項5に記載の電極パッドは、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の電極パッドにおいて、粘着性ハイドロゲルが導電性を有することを特徴とするので、電極パッド全体の抵抗を低減させて電極パッドが発熱するのを効果的に防止することができる。
【0075】
最後に、支持体上に剥離可能に積層された所定形状を有する電極シート上に枠状に絶縁性粘着剤を層着して上記電極シートの外周縁部を全面的に被覆した後、上記電極シートから支持体を剥離、除去した上で上記電極シートの下面に絶縁性表面シートを積層一体化すると共に、上記絶縁性粘着剤で囲まれた電極シートの露出面に粘着性ハイドロゲルを積層一体化すると、生体刺激性が少ないと共に生体表面に対して強固な粘着力を有する電極パッドを簡単に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の電極パッドを示した斜視図である。
【図2】 図1の電極パッドを示した縦端面図である。
【図3】 支持体上に積層原反を積層させた状態を示した斜視図である。
【図4】 支持体上の積層原反から積層シートを打ち抜いた状態を示した斜視図である。
【図5】 支持体上に粘着シートを積層させた状態を示した斜視図である。
【図6】 図5の縦断面図である。
【図7】 表面シート原反を示した斜視図である。
【図8】 表面シート原反を積層させた状態を示した斜視図である。
【図9】 図8から剥離シートを除去した状態を示した斜視図である。
【図10】 図8の縦断面図である。
【図11】 ゲル支持シート上にハイドロゲル片を積層させた状態を示した斜視図である。
【図12】 ゲル支持シートを粘着剤上に積層させた状態を示した斜視図である。
【図13】 図12の縦断面図である。
【図14】 本発明の電極パッドの他の一例を示した縦端面図である。
【図15】 本発明の電極パッドの他の一例を示した縦端面図である。
【図16】 本発明の電極パッドの他の一例を示した縦端面図である。
【図17】 ハイドロゲルの比抵抗値を測定するための回路図である。
【符号の説明】
1 絶縁性表面シート
2 電極シート
3 誘電フィルム
4 枠状の絶縁性粘着剤層
5 ハイドロゲル
51 ハイドロゲル片
6 支持体
72 粘着剤
A 電極パッド
A1 補助フィルム
Claims (5)
- 高周波電流を生体に流すために生体表面に貼着して用いられる電極パッドであって、絶縁性表面シート上に該絶縁性表面シートの外周縁部を除いた部分に電極シートを積層一体化させ、上記絶縁性表面シートの上面外周縁部に枠状の絶縁性粘着剤層を積層一体化させていると共に上記絶縁性粘着剤層の内周側部分を全周に亘って上記電極シートの外周縁部に重ね合わせることにより、上記電極シートの外周縁部及び外周端面が上記絶縁性粘着剤層によって全面的に被覆隠蔽されており、上記絶縁性粘着剤層で囲まれた電極シート上に粘着性ハイドロゲルを積層一体化させていることを特徴とする電極パッド。
- 粘着性ハイドロゲルは、複数のハイドロゲル片に分割されており、互いに隣接するハイドロゲル片間には隙間が形成されていると共に、最外方に位置する各ハイドロゲル片は絶縁性粘着剤層の内周縁から離間しており、各ハイドロゲル片が生体表面の凹凸に沿って互いに独立して変形できるように構成していることを特徴とする請求項1に記載の電極パッド。
- 絶縁性粘着剤層がアクリル系粘着剤からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電極パッド。
- 電極シートと粘着性ハイドロゲルとの間に誘電フィルムを介在させていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の電極パッド。
- 粘着性ハイドロゲルが導電性を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の電極パッド。
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