JP5860323B2 - 電気刺激用生体電極 - Google Patents
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そこで本発明は、こうした不具合の生じない電気刺激用生体電極を提供することを目的としてなされたものである。
電気刺激用生体電極のインピーダンスを20Ω〜100Ω以下としたため、生体に電気刺激を与える電気刺激機器用の生体電極として、生体にピリピリ感などの不快感を与えずに所望の治療効果を発揮することができる。
また、電極エレメントが80Ω〜1200Ωの表面抵抗と1〜20kΩ・cmの抵抗率を有するカーボン素材であるため、カーボンファイバーを用いた電線コードとの組合せで通電性が好適である。さらに、電線コードの芯材がカーボンファイバーであるため、その抵抗(μΩ・cm)自体は高いものの、カーボン素材である電極エレメントとの組み合わせに優れ、局所的な発熱、温度上昇を防止することができる。
こうした芯材や電極エレメントに用いられるカーボン素材は、腐蝕の問題が起きにくく、また軽量であって取扱い性にも優れている。
カーボンファイバーの太さを4μm〜10μmとしたため、電極エレメントとの間で十分な接触面積を確保することができる。そのため、電極エレメントと電線コードとの接続部分での無用な発熱や温度上昇、電気刺激用生体電極自体のインピーダンスの上昇を抑えることができる。
電線コード14は、電気を流す芯材14aを絶縁樹脂で被覆した被覆電線14bの一方側に電気刺激機器への接続端子となるコネクタ14cを有し、もう一方側には絶縁樹脂が削がれ芯材14aが剥き出しになっている。
この導電性ゲル12を設けずに電極エレメント13を皮膚に直接的に接触させただけでは、電極エレメント13と生体とが電気的に接合されず、電極エレメント13と皮膚との不安定な接触による複雑な電位やインピーダンスが生じて生体に電気信号を精度良く送ることができないが、導電性ゲル12を設けることで、電気刺激用生体電極11を生体表面に密着させることが可能となる。この導電性ゲル12の厚みは、電流が均一に流れること、生体へのフィット性の向上などの理由から0.3mm〜2.0mm程度が好ましい。
多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール等のジオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の2価以上の多価アルコール類、ポリエチレングリコール、ポリグリセリン等の多価アルコール縮合体、ポリオキシエチレングリセリン等の多価アルコール変性体等が使用可能である。これら多価アルコールは、1種のみ使用してもよく、2種以上組み合わせて使用してもよい。これら多価アルコールの内、常温で液状であることが、ゲルの粘弾性特性を維持する点、重合反応後のゲル体の透明性を確保する点、製造時のハンドリング性を向上させる点で望ましい。そのような多価アルコールとして、グリセリン、ポリグリセリン等が挙げられる。
電解質塩としては、ハロゲン化ナトリウム、ハロゲン化カリウム、ハロゲン化マグネシウム、ハロゲン化カルシウム等のハロゲン化アルカリ金属、ハロゲン化アルカリ土類金属又はその他の金属ハロゲン化物や、各種金属の次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、燐酸塩、アンモニウム塩や、各種錯塩等の無機塩類や、酢酸、安息香酸、乳酸、酒石酸等の一価有機カルボン酸塩や、フマル酸、コハク酸、アジビン酸、クエン酸等の多価カルボン酸の一価又は二価以上の塩や、スルホン酸、アミノ酸等の有機酸の金属塩及び有機アンモニウム塩や、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリビニルスルホン酸、ポリターシャルブチルアクリルアミドスルホン酸、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン等の高分子電解質の塩が使用できる。これら電解質塩は、1種のみ使用してもよく、2種以上組み合わせて使用してもよい。
カーボン素材を用いた電極エレメント13には、カーボンファイバーシートや、カーボンガスケット素材、カーボン練り込みフィルム等の態様が挙げられる。
カーボンファイバーを織布とするカーボンファイバーシートは、一般的には表面抵抗は低抵抗であるが抵抗率が高く、また硬く高価である。カーボンを圧縮して得たカーボンガスケット素材からなる態様は、カーボン単体であるため一般的には表面抵抗は低抵抗であるが抵抗率が高く、また強度が弱い。ポリエチレンや塩化ビニル、ポリウレタンなどの樹脂バインダーにカーボンを練り込んでシート状としたカーボン練り込みフィルムは、強度が向上し、柔軟性を有しているが、樹脂バインダーの非導電性が影響し一般的には100Ω〜500Ωほどの高抵抗である。こうした態様の中で、電極エレメント13としては80Ω〜1200Ωの表面抵抗と1〜20kΩ・cmの抵抗率とに調製したカーボン素材を用いる。したがって、カーボン練り込みフィルムは、抵抗値が高いものの、強度や取扱い性の点で優れている。また、カーボン練り込みフィルムに用いられる樹脂バインダーはポリウレタン系樹脂が好ましい。柔軟性があることや、導電性ゲル12との接着性に優れているからである。
このカーボンファイバー14a1の太さは4μm〜10μmが好ましい。4μmより細いと強度が低く折れやすくなるからであり、10μmより太いと電極エレメントとの接触部分が少なくなり、接触不良を起こすおそれがあるからである。また、1本の被覆電線14bあたりのカーボンファイバー14a1の本数は、1000本〜5000本が好ましい。1000本〜5000本の範囲とすれば通電が安定し、屈曲強度に優れ、被覆電線14bとしての柔軟性も良好だからである。
しかしながら、後述の各例で示した実験結果からわかるように、電線コード14に金属線を用いて抵抗値を下げても、あるいは、電極エレメント13のカーボン素材に低抵抗のカーボン素材を用いても結果は好ましくなく、抵抗値が所定の範囲にあるカーボン素材からなる電極エレメント13とカーボンファイバー14a1製の芯材14aの組合せが要求するインピーダンス特性や、刺激感、出力特性、消費電力特性を満足している。
即ち、電極エレメント13がカーボン素材であり、芯材14aがカーボンファイバー14a1であることは、それぞれ単独では高インピーダンスの部材でありながら、電極エレメント13と芯材14aとの間での接触抵抗を下げることができ、電気刺激用生体電極11全体のインピーダンスを下げること、そして局所的な発熱を抑制すること、ができたものと思われる。
なお、カーボンファイバー14a1も図示したように一つにまとめずに、分散させて電極エレメント13に固定することもできる。
また、電極エレメント13には孔が開いていないことが好ましい。その理由は、導電性ゲル12の水分や塩分が電極コード14に移行して電極コード14を傷めることがないようにするためである。
電極エレメント13の厚みは、生体へのフィット性や電流が均一に流れるように50μm〜200μmとすることが好ましい。
例1:
電極エレメントとして厚さ100μm、10mm間隔表面抵抗値250Ω、抵抗率16600Ω・cmのカーボン練り込みフィルム(クレハエラストマー社製)に、導電性ゲルとしてハイドロゲル(積水化成品工業社製テクノゲルSRRA)を貼り合わせ、50mm×90mm×10mmの形状に打ち抜いた。さらに、電極エレメントのハイドロゲルを積層した面とは反対側の面に電極エレメントの長手方向に沿って電線コードを配置した。このとき、60mm長の剥出しになったカーボンファイバーがその電極エレメントの中央に来るようにし、同長のナイロン製の補強線はこのカーボンファイバーから選り分けて配置した。このように電線コードには太さ7μmの3000本のカーボンファイバーと、太さ250デニールの6000本のナイロン繊維とをまとめて塩化ビニール被覆した比抵抗1700μΩ・cmの被覆電線(荻野電線社製)100mmを用いており、その一方の先端60mmでは芯材を剥き出しにし、他方ではコネクタを接続している。そして、さらにその上に、不織布(デュポン社製ソンタラ(商品名))にアクリル粘着剤を塗布して粘着加工してある支持基材の粘着面を貼り付け、電線コードを固定させるとともに電極エレメントが皮膚に接触しないようにした。こうして例1の電気刺激用生体電極を得た。
電極エレメントとしてのカーボン練り込みフィルムを、厚さ100μm、10mm間隔表面抵抗値600Ω、抵抗率2400Ω・cmのカーボン練り込みフィルム(三菱樹脂社製)に代えた以外は例1と同様にして例2の電気刺激用生体電極を得た。
電極エレメントとしてのカーボン練り込みフィルムを、厚さ100μm、10mm間隔表面抵抗値120Ω、抵抗率15000Ω・cmのカーボン練り込みフィルム(クレハエラストマー社製)に代えた以外は例1と同様にして例3の電気刺激用生体電極を得た。
電極エレメントとしてのカーボン練り込みフィルムを、厚さ100μm、10mm間隔表面抵抗値1150Ω、抵抗率3000Ω・cmのカーボン練り込みフィルム(ケミテック社製)に代えた以外は例1と同様にして例4の電気刺激用生体電極を得た。
電極エレメントとしてのカーボン練り込みフィルムを、厚さ100μm、10mm間隔表面抵抗値40Ω、抵抗率2800Ω・cmのカーボン練り込みフィルム(ケミテック社製)に代えた以外は例1と同様にして例5の電気刺激用生体電極を得た。
電線コードとしての被覆電線を、8μmのステンレスファイバーを1000本まとめて塩化ビニール被覆した比抵抗72μΩ・cmの被覆電線(セキセー産業社製)に代えた以外は例1と同様にして例6の電気刺激用生体電極を得た。
電線コードとしての被覆電線を、50μmの銅線を130本まとめて塩化ビニール被覆した比抵抗1.7μΩ・cmの被覆電線(セキセー産業社製)に代えた以外は例1と同様にして例7の電気刺激用生体電極を得た。
電極エレメントとしてのカーボン練り込みフィルムを、厚さ100μm、10mm間隔表面抵抗値600Ω、抵抗率16600Ω・cmのカーボン練り込みフィルム(クレハエラストマー社製)に代え、電線コードとしての被覆電線を、50μmの銅線を130本まとめて塩化ビニール被覆した比抵抗1.7μΩ・cmの被覆電線(セキセー産業社製)に代えた以外は例1と同様にして例8の電気刺激用生体電極を得た。
電極エレメントとしてのカーボン練り込みフィルムを、厚さ100μm、10mm間隔表面抵抗値40Ω、抵抗率2800Ω・cmのカーボン練り込みフィルム(ケミテック社製)に代え、電線コードとしての被覆電線を、50μmの銅線を130本まとめて塩化ビニール被覆した比抵抗1.7μΩ・cmの被覆電線(セキセー産業社製)に代えた以外は例1と同様にして例9の電気刺激用生体電極を得た。
電極エレメントとしてのカーボン練り込みフィルムを、厚さ100μm、10mm間隔表面抵抗値220Ω、抵抗率49000Ω・cmのカーボン練り込みフィルム(ケミテック社製)に代え、電線コードとしては、ステンレスファイバーを芯材とした例6で用いた電線コードに代えた以外は例1と同様にして例10の電気刺激用生体電極を得た。
(1)電極エレメントの抵抗値測定方法
電極エレメントの表面で10mmの間隔を開け、デジタルマルチメーターCDM−11(カスタム社製、商品名)を用いて電極エレメントの表面抵抗を測定した。
また、同じ測定機器を用いて電極エレメントの表裏両面の厚み方向の抵抗を測定した。即ち、電極エレメントの厚みは厚み計で測定し、この値から単位厚み当たりの抵抗値を算出した。
(2)電気刺激用生体電極のインピーダンス測定方法
大型(75mm×150mm×1mm)のステンレス板上に空気を挟まないように例1〜例9で作製した電気刺激用生体電極を貼り付け、LCZメーター(カスタム社製LC−131R(商品名))を電線コードのコネクタとステンレス板に接続し、その間のインピーダンス(1kHz)を測定した。
電気刺激用生体電極4枚を腹部に貼付し、電気治療器(伊藤超短波社製ES−520(商品名))を用いて30分間通電治療を行った。治療モードは、IF4, Carrier Freq. =5kHz, 250 Beats, Sweep 0 °として、出力は40mAとした。そして、電線コード取付部(電線コードと電極エレメントの接合部分)に直近の導電性ゲルの表面温度の温度上昇を、サーモグラフG−100(NEC AVIO社製、商品名)で測定した。この温度上昇は、電気刺激用生体電極を生体に貼り付ける前の状態の導電性ゲルの表面温度と、治療を終了してから15秒以内の導電性ゲルの表面温度との差から求めた。
また、通電時の刺激(ピリピリ感や痛感)については、刺激がない場合を「○」、刺激がある場合を「×」と評価した。
以上の結果を表1に示す。なお、表1において電極エレメントの抵抗率は「厚み抵抗」と略記した。
これに対して、電線コードの芯材にカーボン以外のステンレスや銅を用いた例6〜例10の電気刺激用生体電極では、電線コード自体の抵抗は72μΩ・cm以下と低いものの、電気刺激用生体電極インピーダンスでは何れも100Ω以上となってしまい、電線コード取付部の温度上昇が6.7℃〜9.6℃と何れも5℃を超える温度上昇となった。5℃を超える温度上昇は、低温火傷を引き起こす可能性があり好ましいものではない。
この結果から異種素材が接触すると接触抵抗が高くなるのに対し、同素材のカーボン同士ではそれぞれの抵抗が多少高くても接触抵抗を低く抑えることができ、結果的に電気刺激用生体電極のインピーダンスを下げることができたと考えられる。
12 導電性ゲル
13 電極エレメント
14 電線コード
14a 芯材
14a1 カーボンファイバー
14a2 補強線
14b 被覆電線
14c コネクタ
15 粘着剤層
16 支持基材
Claims (5)
- 導電性ゲル、電極エレメント、電線コード、粘着剤層、支持基材の順に積層した積層構造を有しインピーダンスが20Ω〜100Ωの電気刺激用生体電極であって、
電極エレメントが80Ω〜1200Ωの表面抵抗と1〜20kΩ・cmの抵抗率を有するカーボン素材であり、電線コードがカーボンファイバーを含む芯材を絶縁樹脂で被覆したものであり、電極エレメントと電線コードのカーボンファイバーが接触している電気刺激用生体電極。
- 電極エレメントのカーボン素材がカーボン練り込みフィルムである請求項1記載の電気刺激用生体電極。
- カーボンファイバーの太さが4μm〜10μmである請求項1または請求項2記載の電気刺激用生体電極。
- 電線コードの芯材にカーボンファイバーに加えて補強線を含む請求項1〜請求項3何れか1項記載の電気刺激用生体電極。
- 電極エレメント上に前記カーボンファイバーと補強線とを分離して固定する請求項4記載の電気刺激用生体電極。
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