【発明の詳細な説明】
ベントを備える電極
発明の技術分野
この発明は一般に電極、さらに特定すれば医学的治療を行うために患者に電気
的なパルスを伝達するために用いる電極に関する。
発明の技術的背景
医療用電子機器を患者に接続するために電極が使用される。しばしば患者に取
り付けられる医療用電子機器の1つに刺激用機器がある。刺激用機器は、例えば
、患者の心臓を刺激して鼓動を発生させること(除細動)、患者の心臓の鼓動の
安定化(鼓動の調整)、痛みを制御するために経皮性神経を刺激すること、その
他の幾つかの異なる目的を有する。刺激用機器は、患者の皮膚に電極を介して1
つまたはそれ以上の電気的パルスを伝達する。
医療用電子機器と一緒に用いられる殆どの電極は、可撓性の導電性プレートと
患者の皮膚との間に配置された導電性の、インピーダンスを低下させるゲルを包
含している。典型的には、この導電性プレートは、錫合金のような金属箔または
カーボンを含浸した導電性プラスチックで作られる。ゲルは、患者とプレートの
良好な電気的接触を可能とし、電極を患者の皮膚に粘着させる役割を負っている
。プレートの皮膚と接触しない側は、一般に、電気的に絶縁性の裏打ち層によっ
て被覆されている。通常は、プレートに電気的に接続された柱部材が絶縁裏打ち
層から突出している。医療用電子機器から電極に電気的パルスを供給するために
柱部材に導線が接続される。
そのようなゲルを使用する場合の問題点は、電極を介して患者の皮膚に伝達さ
れる電気的パルスがゲルの加水分解を発生する原因となる点である。この問題は
、前記の除細動や鼓動の調整を行うために医療用電子機器を使用すると悪化する
。その理由は、このタイプの医療用電子機器は、通常よりは高い電圧と大きな電
流を患者に伝達するが、このことが加水分解の割合を増加するからである。例え
ば、除細動機器は、典型的には瞬間電流値が60アンペアで、最大5000ボルトに達
する電圧を患者に伝達する。鼓動調整機器は、普通最大電流値が0.2 アンペアで
、最大300 ボルトに達する電圧を患者に伝達する。
加水分解は、水素ガスと酸素ガスを発生するが、これらは、ゲルと可撓性の金
属プレートの間に蓄積されやすく、主として次の2つの望ましくない影響を作り
出す。第一に、蓄積した2つのガスは、一般に、電極と患者の間の導電率を低下
する。
第二に、この導電率を低下は電極表面に亘って均一ではない。ガスは普通ポケ
ットを形成して蓄積されるので、ガスポケットによって患者との接触から分離さ
れる電極の区域において、電極と患者との間の導電率が低下する。患者に対する
電流の流れを不変に維持するために、導電率が低下していない電極の他の区域に
おいては、電流の流量が増加する。前記の電極の他の区域における電流の流量の
増大は、この区域における電流密度の増大をもたらす。もしこれらの区域におけ
る電流密度が充分に大きくなると、患者の不快感が増す結果を招来する。電流密
度がさらに一層増加すると患者の皮膚に火傷が発生する可能性がある。小児用に
設計される電極にあっては、問題が悪化する。その理由は、電極は小形化する傾
向にあるのに、ここを流れる電流は成人用の電極に流れる電流に匹敵するからで
ある。
これらの問題点の解決が継続して望まれている。US特許第4,300,575 号は、患
者の皮膚が電極を介して「呼吸する」ことができるような通気性組成物を含む電
極を開示している。US特許第4,367,755 号は、患者の皮膚から電極によって吸着
された水蒸気を発散するために形成した多数の孔を有する電極を開示している。
幾つかの用途に満足すべき点はあるものの、前記2つのUS特許明細書に開示さ
れた電極は、ゲルの加水分解によって生じる問題点を解決するには一般に成功し
ていない。特定していえば、US特許第4,300,575 号および第4,367,755 号に開示
された電極においては、導電性のゲルが、前記の多数個の孔または通気性組成物
の被覆層を通り抜けて絶縁裏打ち層の上部表面に達し、これが治療関係者に電気
的な危険をもたらす。
さらに特定していえば、患者を処置する治療関係者は、無意識のうちに絶縁層
の上部表面に滲み出たゲルに接触して電気ショックに晒される。この問題は、心
臓の鼓動の調整および除細動に用いる電極にあっては特に重要である。何故なら
ば、これらの電極には、高電圧、大電流を使用するタイプのものが用いられるか
らである。治療関係者が、心臓の鼓動の調整および除細動の処置を受けつつある
患者と体で接触することは一般的には勧められない。それにもかかわらず、絶縁
層の上側面に現れるゲルは、さらに大きな危険を作り出す。何故ならば、このゲ
ルは、電極とこのゲルに接触する媒体との間に良好な電気的接続を形成するから
である。
したがって、この発明は、上に説明した問題に解決を与えるものである。
発明の概要
この発明は、患者の皮膚面に載置して、医療用電子機器から患者に電気的パル
スを伝達する電極を提供する。この電極は、皮膚面側と、これとは反対側の上部
側とを有する導電層を含む。実質的な非導電性裏打ち層が、前記導電層の上部側
と隣接しており、前記裏打ち層は実質的にインピーダンス低下層とは親和性を持
たない。最終的には、インピーダンス低下層と対周辺環境導電層の間に形成され
るガスを通気するためのベントが設けられる。
好ましい実施例においては、導電層がガスと親和性を有する。導電層の対ガス
親和性は、例えば、導電層に穿孔を施すこと、導電層をメッシュ製とすること、
または多孔性材料上にプリントされた導電性インクを使用することなどの様々な
態様によって実現することができる。
1実施例においては、通気性の付与が、導電層と裏打ち層との間にガス親和層
を設けることによって実現する。この好ましい実施例においては、インピーダン
ス低下層と導電層の間に形成されるガスが、導電層を通り抜けてガス親和層内へ
移動する。ガス親和層の一部が、インピーダンス低下層の周辺部を越えて突出す
る。こうして、ガス親和層内に収集されたガスは、インピーダンス低下層の周辺
部を越えて突出するガス親和層の部分から周辺環境内へ通気される。
1つの代替実施例においては、導電層と裏打ち層の間のガス親和層が必要とさ
れない。この代替実施例においては、導電層と裏打ち層の双方がともにガス親和
層である。インピーダンス低下層と導電層の間に形成されるガスは、こうして、
導電層を通り抜け、裏打ち層を介して周辺環境に通気される。しかしながら、患
者を処置する治療関係者に電気的危険を増大させないために、この裏打ち層は、
インピーダンス低下層に対しては親和性を持っていない。
この発明の他の様相においては、導電層と患者の皮膚との間の電気的接続が、
実質的にインピーダンス低下層を介してのみ発生する。さらに、導電層の医療用
電子機器に対する電気的接続は、実質的に、直流電流による腐食作用をなくすた
めに、インピーダンス低下層が存在しない場合の接続を介してのみ発生する。
この発明の、なお別の様相においては、導電層は必ずしもガス親和層である必
要がない。その代わりに、導電層内に溝または皺が形成されて、これがインピー
ダンス低下層と導電層の間に形成されるガスを収集する。これらの溝は、インピ
ーダンス低下層の周辺部を越えて突出する区域のような電極の通気性部分にガス
を導く。
図面の簡単な説明
先に述べた発明の各様相および発明が伴う多くの利点は、添付図面と関連する
下記の詳細な説明を参照することによって、より深く理解されるので、それによ
って一層明確になるであろう。
第1図は、患者の上胴部に取り付けられたこの発明の一対の電極の概念図であ
る。
第2図は、保護ライナーを含む第1図の両電極のうちの1つの電極の等角分解
組み立て図である。
第3図は、第1図の両電極のうちの1つの電極を、電極の患者に面する側から
見た図である。
第4図は、この発明の電極の代替実施例の等角分解組み立て図である。
第5図は、第4図の電極を、電極の患者に面する側から見た図である。
好ましい具体例の詳細な説明
第1図を参照すれば、この発明にしたがって形成された一対の電極10が、患
者12に取り付けられている。図示したように、両電極10は、大体患者の上胴
部の前面に取り付けられている。両電極10から出るリード線14はコネクター
15で終わる。コネクター15は、リード線14を医療用電子機器16からのリ
ード線17に接続している。医療用電子機器16は、患者12に治療を施すため
に電気的パルスを両電極10に供給する。
1つの電極10の組み立て分解図が第2図に示されている。電極10は、幾つ
かの材料層を含んでいる。ほぼフラットな裏打ち層18が、電極10の患者と対
面する側とは反対にある第1の層である。図示した実施例においては、裏打ち層
18は、形状がほぼ楕円状であるが、楕円形の主軸に沿う両端部の一方の端部が
突出している。裏打ち層18は、実質的に非導電性の薄い可撓性のある非吸湿性
の材料で形成される。裏打ち層を形成する適切な材料の一つにポリエチレンフォ
ームがある。
ガス親和層20が、裏打ち層18と隣合せになっている。図示の実施例では、
ガス親和層20は、多少とも楕円状をなしている。この楕円の長さは、裏打ち層
18の楕円の長さと比べて僅かながら小さく、その幅は、裏打ち層18の幅と比
べてはっきりとわかる程度に小さい。ガス親和層20は、好ましくは、低アレル
ゲン性アクリル接着剤(hypoallergenic acrylic adhesive)で、裏打ち層18の
主体部の中央付近に接着される。
ガス親和層20を形成する適当な材料には、実質的にガスと親和する材料であ
れば材質は問わない。これらは薄い可撓性を有するシートに形成される。そのよ
うな材料例としては、不織布材、開放セルフォームまたはプラスチックメッシュ
を挙げることができる。ポリエステルの不織布材は、この発明を実施する上で適
切であることがわかっている。この適切なポリエステルの不織布材の供給の源は
、オハイオ州の the Avery Dennison company of Painessville である。特に、
Avery Dennison 社が販売している、ほぼ、1.4 oz/ 平方ヤードの重量を有する
ポリエステルの不織布材がガス親和層20の形成に満足すべきものであることが
見出だされている。
ガス親和層20と実質上同一の形状を持つ導電層24は、ガス親和層20の患
者の方を向く側と患者との間に配置される。導電層24は、金属箔、炭素を含浸
した導電性プラスチック、プラスチック面にプリントされた導電性インク、その
他の類似した材料など、良好な導電体の薄い可撓性を備える適当な材料で作られ
る。
導電層24は、ここで参照するUS特許第4,979,517 号に記載されているように
して形成することが好ましい。すなわち、導電層24は、錫の含有率が99.98 %
、
厚さが約2 ミルの錫箔で構成することが好ましい。US特許第4,979,517 号に記載
されているように、こうして作られた導電層は薄く、したがって、電極10の製
造工程中で損傷を受けやすい。それゆえに導電層24と実質的に同じ形状を有す
る支持シート26を導電層24の患者に向く側とは反対の側に接着して、電極1
0の製造中における導電層24の耐久性を向上することが好ましい。支持シート
26は、耐摩耗性を備える薄い可撓性のある材料のうち、適当なもので製造する
。好ましくは、支持シート26は、厚さ1 ミルのポリエステルで作られ、低アレ
ルゲン性アクリル接着剤(hypoallergenic acrylic adhesive)で導電層24に接
着される。
導電層24は、次のようにしてガス親和性が付与される。間隔をおいた複数個
の規則的なボアホール28が、導電層24の表面にほぼ直角をなすように形成さ
れる。ボアホール28は、好ましくは、直径が約0.015′で、1個のボアホール
は、好ましくは隣のボアホールから0.120′以上は離れていない。前記の導電層
のボアホールに対応するボアホール29が支持シート26にも形成される。
電極10の好ましい製造方法は、先ず第1に支持シート26を導電層24のシ
ートに接着することである。この後、ガス親和層20のシートが、支持シートの
導電層とは反対側にある側に接着され、次いで、ボアホール28、29が、シー
ト状に形成されたアセンブリー全体を貫通して形成される。使用する接着剤は低
アレルゲン性アクリルが好ましい。このシート状アセンブリーから、導電層24
、支持シート26およびガス親和層20が、これら3つの各層が実質的に同一の
形状を備えるように、ダイを使用してアセンブリーユニットとして打ち抜かれる
。次に、前記のアセンブリーユニットとしてのガス親和層20が、前に説明した
裏打ち層18に接着される。
リング層21が、導電層24を跨ぎ越すように裏打ち層18に接着される。リ
ング層21は、実質的に非導電性である薄くて可撓性を備える適当な材料で作ら
れる。リング層21は、裏打ち層18を構成する材料と同一の材料で製造される
ことが好ましい。リング層21は電極10を患者12に滑らかに接触するために
設けられる。
リング層21は、裏打ち層18の形状とほぼ対応する形状を規定する外周部を
含んでおり、この外周部は、裏打ち層18の突出端部を含んでいる。リング層2
1の突出端部は、開放して切り欠かかれたダブテール(dovetail)区域22を含ん
でおり、前記ダブテールの長い方のベース部は楕円の頂軸とほぼ直交している。
リング層21の内周部は、大体楕円状をなす開放された中央区域23を規定する
。
第3図は、電極10の患者に向く側から眺めた図である。第3図を参照すれば
、リング層21は、裏打ち層18の大体中央に配置されており、導電層24を重
ね合わせている。リング層21の開放された中央区域23は、導電層24の主要
部を包含する。特定していえば、リング層21の開放された中央区域23は、導
電層24の長軸方向の一方の端部を除いて、導電層24の外周部を囲んでいる。
さらに特定すれば、導電層24のこの長軸方向の端部は、リング層21のダブテ
ール区域22と裏打ち層18との間に突出している。
ここで第2図に立ち帰ると、長方形状をなす従来のポリエステルテープ25が
リング層21と導電層24との間にあることが好ましい。テープ25は、リング
層21のダブテール区域22と導電層24の間に配置される。テープ25は、そ
の長手方向軸が、導電層24の楕円の主軸によってほぼ直角に大体二等分される
ように配置される。テープ25は、両面接着性のものであることが好ましく、そ
の長さが、導電層24の向かい合う両縁部に亘って延在することが好ましい。な
お、接着剤としては、低アレルゲン性アクリルのものが好ましい。
この好ましい実施例においては、裏打ち層18の患者側に向く面全体が低アレ
ルゲン性アクリル接着剤でコーティングされるが、リング層21の患者側に向い
ていない側には接着剤が施されない。このように、リング層21は、裏打ち層1
8の一部に接着しており、リング層21と裏打ち層18とが互いに接触する。し
かしながら、リング層21の突出端部を、導電層24に接着する接着剤は存在し
ない。したがって、両面接着テープ25は、リング層21の突出端部を導電層2
4に接着することを補助する。さらに、ここに詳しく説明したように、テープ2
5は、直流電流による腐食に抗してこれを防ぐ。
第1図を参照すると、リード線14は、医療用電子機器16によって供給され
る電流、電圧に見合うゲージを有する従来型のマルチストランドである。それぞ
れのリード線14は、医療用電子機器16からのリード線17を接続するための
端末部を含んでいる。リード線17とリード線14の接続は、リード線14とリ
ード線17とを一緒に電気的にしっかり結線するクイック型電気コネクター15
で行うことが好ましい。
第2図に示すように、リード線14の基端部は標準型の環状ラグ34で終って
おり、このラグ34は、リード線の端部を柱状部に接続するよく知られたタイプ
のものである。ラグ34は、テープ25に隣接して、すなわち、リング層21の
ダブテール区域22とほぼ向かい合って配置されており、リード線14は、大体
ダブテール区域22から放射状に外側に突出している。環状ラグ34とリード線
14は刺着環44で導電層24に電気的に接続されることが好ましい。刺着環4
4は、環体の内側に、突出する複数本の歯46を含み、これらが導電層24に向
かって或る角度で曲がっている。歯46は、環状ラグ34、テープ25、導電層
24、支持シート26、ダブテール区域22および裏打ち層18を刺し通す。
歯46がこれらの列挙物を刺し通すと、歯46は、裏打ち層18の患者と向き
合っていない側と隣接するように配置されたソケット36と係合する。ソケット
36は、裏打ち層18に向かってほぼ直角に突出する中央の柱体42を囲むリム
40で形成される。歯46は、裏打ち層18を通って突出しリム40と柱体42
の間の空隙内に進入し、ここで、先ず外側に、次に下側に向かって曲げられる。
歯46が先ず外側に、次に下側に向かって曲げられると、ソケット36のリム4
0が、歯46と刺着環44の環状外側部との間で密接するようにクランプされる
。
さらに、裏打ち層18、ガス親和層20、支持シート26、導電層24、テー
プ25および環状ラグ34はすべてが、刺着環44とソケット36の間にしっか
りとクランプされる。ソケット36と刺着環44は、薬莢黄銅で作り錫で被覆す
ることが好ましい。
絶縁体パッド48が、リング層21の突出端部に隣接しており、この絶縁体パ
ッド48がリング層21のダブテール区域22と刺着環44とを覆う。絶縁パッ
ド48は、リング層21の突出端部の形状と大体において一致しており、その両
縁部がリング層と同じ広がりを有する。絶縁体パッド48は、リング層21の中
央区域23の部分を全く覆わない方が好ましい。絶縁体パッド48は、ポリエツ
レンフォームのような、薄くて可撓性を有する誘電率の高い適当な材料で製造す
ることができる。絶縁体パッド48は、低アレルゲン性アクリル接着剤で電極1
0に接着することが好ましい。さらに、絶縁体パッド48の患者に向く側は、電
極10を患者12に貼付することを助けるために低アレルゲン性アクリル接着剤
でコーティングすることが好ましい。
絶縁体パッド48は、刺着環44が導電層24と電気的な接続が絶たれた場合
に患者の皮膚が火傷を負わないように守ることを目的とする。より特定していえ
ば、導電層24を構成する金属箔が、刺着環44の歯46から遮断され、歯46
が刺着環44から遮断されるであろう。またはその他の出来事によって、刺着環
44が導電層24から電気的に接続が遮断される原因となるであろう。いずれに
せよ、上に述べたように、絶縁体パッド48が電極10と一緒に存在しなければ
、医療用電子機器16から流れる電流の全量が、刺着環44によって区画される
比較的小さな区域を通過して患者に流れ込むであろうし、その結果、電流密度が
大きくなって患者の皮膚が火傷を負いやすくなろう。絶縁体パッド48は、この
ような事態の発生を防ぐ。
第2図に示すように、インピーダンス低下層32が、リング層21の中央区域
23から導電層24の患者に向く側に取り付けられる。インピーダンス低下層3
2は、導電層24と患者12との間のインピーダンスを低下させるのに役立ち、
電気的接触を良好にする。インピーダンス低下層32は、好ましくはゲルマトリ
クスすなわち電解質と水からなる従来型の導電性ゲルからなる。そのようなゲル
の供給源は、ミネソタ州のthe LecTec Corporation of Minnetonkaによって製造
されている。この発明の実施に適切な別のゲルは、前にこの場で参照したUS特許
第4,979,517 号に開示されたゲルである。
電解質の存在の下に異質の複数金属の間に電流が流れると、直流電流による腐
食が発生する可能性がある。テープ25、絶縁体パッド48およびリング層21
は、好ましくは電解質を含むインピーダンス低下層32が、刺着環44と導電層
24との間で接触しないようにして直流電流による腐食の発生を防ぐ。
電極10は、第2図に示すように保護ライナー50に包まれる(この保護ライ
ナー50は第1、3図には示されていない)。保護ライナー50は、取り外しが
可能なように電極10に取り付けられている。もっと特定していえば、保護ライ
ナー50は、電極10の患者に向く側の全面を覆う滑らかな面を含んでおり、前
記の患者に向く側の面を汚染から守っている。電極10が使用に供されるときは
、電極10を患者の皮膚に載置するのに先だって、この保護ライナー50が、電
極10の患者に向く側の面から剥離される。
実際上は、保護ライナー50が剥離された後、患者に隣接するインピーダンス
低下層32とともに患者12に圧着される。インピーダンス低下層32はガム状
をなしているので、電極10を患者に貼着するのに役立つ。さらに、リング層2
1の患者に向く側の面と絶縁体パッド48の患者に向く側の面は、低アレルゲン
性アクリル接着剤でコーティングされている。このことも、電極10を患者に接
着するのに役立つ。
電極10は、第1図に示すように、大体において組をなして用いられる。一方
のリード線14が、電極10の一方に取り付けられ、他方のリード線が、電極1
0の他方に取り付けられる。電極10に電流が流れて、インピーダンス低下層3
2が、加水分解を始めならば、気泡は、導電層24、支持シート26にそれぞれ
形成されているボアホール28、29を通って通気される。このことによって、
導電層24と患者12の間におけるガスのポケットの形成が防止される。かくて
、電極10と患者12の間には、良好な電気的接触が維持される。
気泡は、ボアホール28、29から、ガス親和層20に進入し、ここで、リン
グ層20の下に延在するガス親和層20のの端部から周辺環境に通気される。そ
の理由は、導電層24の副軸が、第3図に示されるように、リング層21の開放
された中央区域23の副軸よりも短いからである。したがって、リング層21の
実質状の内側縁部と、導電層24の外側縁部の間に、1つの環状ストリップ33
が形成される。導電層24が、インピーダンス低下層32で被覆されるとき、環
状ストリップ33は、インピーダンス低下層32で充填される。インピーダンス
低下層32はガス親和層20の幅よりも大きい幅を備えているので、気泡は一般
には、環状ストリップ33と接して区画される区域においては、ガス親和層20
の縁部から逃散することはできない。言い換えれば、インピーダンス低下層32
は、ガス親和層20の縁部をシールする傾向がある。
しかしながら、リング層21の下に延在するガス親和層20の部分は、環状ス
トリップ33と接する区画を形成していない。したがって、第3図において矢印
52で示すように、ガス親和層20の前記の部分を通って通気される。
1つの代替実施例においては、裏打ち層18が、実質的に非導電性で、液体お
よび/またはゲルと親和しない、非吸湿性の疎水性を備えるガス親和層で構成さ
れる。したがって、インピーダンス低下層32の加水分解によって生じた気泡は
、裏打ち層18から逃散することができる。しかしながら、インピーダンス低下
層32は裏打ち層を透過することができない。したがって、患者12を処置する
治療関係者が、裏打ち層18の患者に向かない側にあるインピーダンス低下層と
不用意に接触する危険は殆どない。それゆえに、電極が加水分解が原因で発生し
たガスを通気するという利点を提供する代替実施例による電極を使用する場合に
、治療関係者が偶然的な電気ショック晒される危険が増すことはない。
この代替実施例においては、ガス親和層は省かれる方が好ましい。さらに特定
すれば、ガスは、ガス親和層20に進入して、その「半島」型の部分22から通
気されるよりはむしろ、裏打ち層18から直接通気される。
この発明にしたがって形成される電極60の別の代替実施例が、第4図に示さ
れている。第4図は、電極60を組み立て分解フォーマットで示す。
電極60は、複数の材料層を含む。ほぼフラットな裏打ち層68が、電極60
のの患者に向く側とは反対側の第1の層である。この図示された実施例では、裏
打ち層68は、大体において楕円形状であり、すでに説明した実施例における裏
打ち層18と同じ要件にしたがって形成される。すなわち、裏打ち層60は、実
質的に非導電性である薄く非吸湿性の適当な材料で形成される。既述の実施例の
裏打ち層18を形成するのに適当なタイプの材料と同じ材料は、この実施例の裏
打ち層68の形成に適当である。
ガス親和層70は、裏打ち層68に隣接して設けられる。図示の実施例におい
ては、ガス親和層70は、ほぼ楕円形状で、裏打ち層68の形状に対応している
が寸法は小さい。「半島」型部72が、角部が深いベベル状に形成されたほぼ長
方形をなしており、ガス親和層70の一方の端部の中央に突出する。半島部72
の主軸は、ガス親和層70の長手方向軸に大体沿っている。
ガス親和層70の形成に適当な材料は、実質的にガスと親和性のある適当な材
料を含んでおり、この材料は薄い可撓性のあるシートに形成される。既述の実施
例ガス親和層の形成に適当な材料は、この実施例のガス親和層70の形成に適当
な材料である。好ましくは、ガス親和層70は、ポリエステルの不織布から形成
される。
ガス親和層70と実質的に同じ形状をなす導電層74は、ガス親和層70と患
者12との間に配置される。導電層74は、ガスど親和する良好な導電体である
薄く可撓性を備える材料で形成される。導電層74は薄くて可撓性を持ち、ガス
と親和する金属メッシュで形成することが好ましい。
電極60を製造する好ましい方法は、先ず最初にガス親和層70を導電性シー
ト74に接着することである。使用する接着剤は、低アレルゲン性のアクリルで
あることが好ましい。この組み立て体から、導電層74とガス親和層20とが組
み立てユニットとして、各層が実質的に同じ形状になるように、ダイで打ち抜か
れる。次ぎに、この組み立て体のガス親和層70が、好ましくは低アレルゲン性
のアクリル接着剤で裏打ち層68に接着される。
第5図は、電極を患者に向く側から眺めた電極60である。第4、5図に示す
ように、ガス親和層70と導電層74は、裏打ち層68の中央に配置される。第
5図を参照すれば、裏打ち層68は、ガス親和層70、導電層74よりも寸法が
大きい。したがって、これらの列挙層が裏打ち層68の上に、その中央で互いに
上下に重なって配置されると、裏打ち層68の外側環状リップ80が、その他の
層を越えて延在する。
ガス親和層70が、裏打ち層68に接着されると、裏打ち層68の患者に向く
側の面全体が、低アレルゲン性のアクリル接着剤でコーティングされる。したが
って、環状リップ80も低アレルゲン性のアクリル接着剤でコーティングされる
。以下にもっと詳しく記すように、環状リップ80に施された低アレルゲン性の
アクリル接着剤のコーティング層は、電極60を患者12の皮膚に接着すること
を助ける。
この代替実施例においては、裏打ち層68、ガス親和層70および導電層74
が一体に組み立てられたときは、インピーダンス低下層82が、導電層74と裏
打ち層68の患者に向く側の部分に適用される。第5図に示すように、導電層7
4は、形状が、ガス親和層70の半島部72の形と実質的に同一の形状をなす半
島部84を含んでいる。インピーダンス低下層82は、半島部84を除き、導電
層74の表面全体を被覆する。もっと特定すれば、インピーダンス低下層82は
、半島部84の基部のみを覆う。
さらに、インピーダンス低下層82は、導電層74の主体部を囲む環状ストリ
ップ83を覆う。したがって、裏打ち層68の環状リップ80の一部が、インピ
ーダンス低下層82で覆われる。インピーダンス低下層82は、既述の実施例の
インピーダンス低下層32と同じ材料で形成する。
第4図に戻れば、柱体86が、導電層74の半島部84の大体中心において、
上から裏打ち層68の患者に向く側とは反対の側に通じており、柱体86は、電
気的に導電層74に接続している。柱体86は、ハンダ付け、鋲着その他の類似
方法のような従来型の態様で電気的に導電層74と接続することができる。
この代替実施例では、柱体86が次ぎのようにして導電層74と電気的に接続
する。柱体86は、中央の突出柱体92を包囲する下方リム90を備える広がっ
た基部88を備えるように形成される。柱体86は、裏打ち層68に隣接する基
部88を備えるように配置される。刺着環44が、導電層74の他方の側で、柱
体86の基部88とは反対側に配置される。刺着環44は、その内側の複数本の
突出歯46を含んでおり、これらは、或る角度をなして曲り導電層74に向かっ
て突出している。柱体86は、導電層74、ガス親和層70および裏打ち層68
を貫通し、リム90と柱体86の突出柱体92との間の空隙内に突出する刺着環
44の歯46によって電極60に固定される。
歯46が上に列挙した層を貫通すると、歯は先ず外側へ、そして下側へ曲げら
れて、柱体86のリム90が歯46と刺着環44の外側環状部との間でクランプ
される。さらに、裏打ち層68、ガス親和層70、および導電層74は、これら
の全体が柱体86の基部88と向き合って強制的に密接する。柱体86と導電層
74との間の電気的接触は、刺着環44と導電層74との物理的接触と、歯46
と柱体86との物理的接触とによってもたらされる。
柱体86は薬莢黄銅で形成され、錫で被覆することが好ましい。柱体86が、
導電層74を形成する金属箔とは異なる少なくとも1種類の金属で形成される場
合は、インピーダンス低下層82は、この好ましい実施例におけるように、直流
による腐食を禁じるために柱体86または刺着環44の近傍に適用されることは
ない。
絶縁体パッド98は、導電層74の患者に向く側において、柱体86の反対側
で導電層74に接着される。絶縁体パッド98は、インピーダンス低下層82で
コーティングされない導電層74の部分を覆う。裏打ち層68の一部もまた絶縁
体パッド98によって覆われる。絶縁体パッド98は、ポリエチレンフォームの
ような非導電性の高い薄くて可撓性のある適当な材料で作られる。
絶縁体パッド98は、刺着環44が導電層74から電気的接続が外れた場合に
、患者の皮膚が火傷を負うことを防止する目的を有する。例えば、導電層74を
構成する金属箔が刺着環44の周辺から遮断されるか、または、他の現象によっ
て刺着環44と導電層74との電気的接続が遮断される。いずれにせよ、上に述
べたように、もし、絶縁体パッド98が電極60に含まれていないならば、医療
用電子機器16から流れる全電流が、刺着環44によって区画される比較的小さ
い区域を介して患者に流入し、結果的に発生する高い電流密度によって患者12
の皮膚が火傷を負いやすい。絶縁体パッド98は、このような事態の発生を防止
する。
絶縁体パッド98は、好ましくは低アレルゲン性アクリル接着剤で導電層74
に接着される。さらには、絶縁体パッド98の患者に向く側も、電極60を患者
12に接着しやすくするために低アレルゲン性アクリル接着剤でコーティングさ
れることが好ましい。
電極60は、第4図に示すように保護ライナー50に包まれる(保護ライナー
50は第5図には示されていない)。保護ライナー50は、別の実施例に関して
前に述べた通り、取り外しが可能なように電極60に取り付けられる。
実際問題としては、保護ライナー50が取り除かれた後、患者12と隣接する
ようにインピーダン−ス低下層82で患者12に圧着される。このインピーダン
−ス低下層82は、ガム状であるから電極60を患者12に貼着しやすくする。
さらに、裏打ち層68の環状リップ80、および、絶縁体パッド98の患者に向
く側は、好ましくは低アレルゲン性アクリル接着剤でコーティングされる。この
接着剤もまた、電極を患者12に接着しやすくする。
電極60は一般に組をなして使用される。一方のリード線14が一方の電極6
0の柱体86に取り付けられ、他方のリード線が、他方の電極60の柱体86に
取り付けられる。電極60に電流が流れると、導電層74と患者12の間に配置
されたインピーダン−ス低下層82が、患者12と電極60との電気的接触を容
易にする。
もしも、インピーダン−ス低下層82が加水分解を始めると、気泡が導電層7
4を構成するメッシュを介して通気される。この通気によって、導電層74と患
者12の間にガスのポケットが形成されることが防がれる。したがって、電極6
0と患者12との間に良好な電気的接触が維持される。
気泡は、導電層74からガス親和層70に進入し、ここでガス親和層70の半
島部72を通って周辺環境に通気される。もっと特定していえば、インピーダン
−ス低下層82が、導電層74から裏打ち層68までの間の環状ストリップ83
内に延在する。インピーダン−ス低下層82は、ガス親和層70よりも大きな幅
を備えているので、気泡は一般に環状ストリップ83上で区画される区域におい
てはガス親和層70の縁部からは逃散することができない。言い換えれば、イン
ピーダン−ス低下層82は、ガス親和層70の縁部を容易にシールしている。
しかしながら、ガス親和層70の半島部72の大部分は環状ストリップ83上
で区画されていない。したがって、気泡は、第2図に矢印102で示すように、
半島部72から周辺環境に通気される(ガス親和層70の半島部72は、導電層
74の半島部84の下側に配置されている)。
この発明の好ましい実施例を図示して説明したが、発明の精神と範囲を逸脱し
ない限り多くの改変が施される点を理解すべきである。例えば、既述の実施例の
ガス親和層20と70は、複数本の溝または皺を備える可撓性のシートで置換す
ることが可能である。気泡は前記溝内に集まり電極の通気部に向かうであろう。
またその代わりに、既述の実施例の導電層が溝や皺を備えることができ、ガス
親和層20、70を省くことも可能である。気泡は、導電層24および74の溝
内に集まり、電極の通気部に向かう。
この発明の範囲内の別の改変例は、導電層が、導電層の患者に向く側の面にプ
リントされた導電性インクを備える多孔性材料で置換することである。この多孔
性材料は、プラスチックのメッシュ、開放セルフォーム、不織布材またはその他
のガスと親和する材料である。
インピーダン−ス低下層32を用いる好ましい実施例においては、インピーダ
ン−ス低下層の環状ストリップ33を省くことができる。したがって、ガスは、
半島部22からよりはむしろガス親和層20の縁部全体から通気される。
この発明の範囲内におけるさらに別に可能な改変例は、柱体42が導電層24
にハンダ付けされる点であり、この場合は、支持シート26、ガス親和層20、
および裏打ち層18にボアホールを設けて、柱体42が上に向かって前記ボアホ
ールを貫通する。
当業者によって施されるこれら、および、その他の変形、代替、置換、改変を
考慮に入れ、付与される特許権は付属の請求の範囲の定義によってのみ制限を受
けるものである。
【手続補正書】特許法第184条の7第1項
【提出日】1996年1月22日
【補正内容】請求の範囲
1. 下記の(a)(b)(c)(d)からなる、医療用電子機器から患者に電気的パルス
を伝達すべく患者の皮膚に載置するための電極。
(a)皮膚に向く側と上部とを備える導電層、
(b)導電層の皮膚に向く側に配置されるインピーダンス低下層、
(c)導電層の上部に配置される電気的に実質的に非導電性である裏打ち層を備え
ており、前記裏打ち層は、実質的にインピーダンス低下層とは親和性を持たない
、
(d)インピーダンス低下層と導電層との間に形成されるガスを通気するためのベ
ント手段、
2. 導電層がガスど親和性を有する請求の範囲1項記載の電極。
3. ベント手段が、導電層と裏打ち層との間のガス親和層からなる請求の範
囲2項記載の電極。
4. インピーダンス低下層が外側の縁部を含み、ベント手段が、インピーダ
ンス低下層の縁部を越えて延在するガス親和層の一部を含む請求の範囲3項記載
の電極。
5. 導電層に孔が形成されている請求の範囲1項記載の電極。
6. 導電層がメッシュを含む請求の範囲1項記載の電極。
7. 導電層と裏打ち層との間に配置されたガス親和層をさらに含む請求の範
囲1項記載の電極。
8. ガス親和層が不織布材を含む請求の範囲7項記載の電極。
9. 不織布材がポリエステルを含む請求の範囲8項記載の電極。
10. 下記の(a)(b)(c)からなる、医療用電子機器から患者に電気的パルスを
伝達すべく患者の皮膚に載置するための電極。
(a)導電性を有する金属シートが皮膚に向く側と上部とを有し、導電性を有する
金属シートはガスと親和性を持つ、
(b)導電性シートの皮膚に向く側に配置されるインピーダンス低下層、
(c)導電性シートの上面に配置される実質的に非導電性である裏打ち層を備えて
おり、裏打ち層は、インピーダンス低下層に対し実質的に親和性を持たない、
11. 裏打ち層がガスに親和性を有する材料からなる請求の範囲10項記載の
電極。
12. 導電層と裏打ち層の間のガス親和層をさらに含み、ガス親和層は、ガス
親和層と周辺環境との間におけるガス交換を可能にするベント部を含む請求の範
囲10項記載の電極。
13. ガス親和層が不織布材を含む請求の範囲12項記載の電極。
14. 不織布材がポリエステルを含む請求の範囲12項記載の電極。
15. インピーダンス低下層が外側縁部を含み、ガス親和層が、インピーダン
ス低下層の縁部を越えて延在する部分を含む請求の範囲12項記載の電極。
16. インピーダンス低下層が外側縁部を含み、導電層が、インピーダンス低
下層の縁部を越えて延在する部分を含む請求の範囲10項記載の電極。
17. 導電層を電気的に医療用電子機器に接続するために、インピーダンス低
下層の縁部を越えて延在する導電層の部分と接続される電気的接続器をさらに含
む請求の範囲16項記載の電極。
18. 導電層と患者の皮膚の間の電気的接続が、実質的にインピーダンス低下
層を介してのみ発生する請求の範囲10項記載の電極。
【手続補正書】特許法第184条の8
【提出日】1996年6月25日
【補正内容】
加水分解は、水素ガスと酸素ガスを発生するが、これらは、ゲルと可撓性の金
属プレートの間に蓄積されやすく、主として次の2つの望ましくない影響を作り
出す。第一に、蓄積した2つのガスは、一般に、電極と患者の間の導電率を低下
する。
第二に、この導電率を低下は電極表面に亘って均一ではない。ガスは普通ポケ
ットを形成して蓄積されるので、ガスポケットによって患者との接触から分離さ
れる電極の区域において、電極と患者との間の導電率が低下する。患者に対する
電流の流れを不変に維持するために、導電率が低下していない電極の他の区域に
おいては、電流の流量が増加する。前記の電極の他の区域における電流の流量の
増大は、この区域における電流密度の増大をもたらす。もしこれらの区域におけ
る電流密度が充分に大きくなると、患者の不快感が増す結果を招来する。電流密
度がさらに一層増加すると患者の皮膚に火傷が発生する可能性がある。小児用に
設計される電極にあっては、問題が悪化する。その理由は、電極は小形化する傾
向にあるのに、ここを流れる電流は成人用の電極に流れる電流に匹敵するからで
ある。
これらの問題点の解決が継続して望まれている。US特許第4,300,575 号は、患
者の皮膚が電極を介して「呼吸する」ことができるような通気性組成物を含む電
極を開示している。US特許第4,367,755 号は、患者の皮膚から電極によって吸着
された水蒸気を発散するために形成した多数の孔を有する電極を開示している。
幾つかの用途に満足すべき点はあるものの、前記2つのUS特許明細書に開示さ
れた電極は、ゲルの加水分解によって生じる問題点を解決するには一般に成功し
ていない。特定していえば、US特許第4,300,575 号および第4,367,755 号に開示
された電極においては、導電性のゲルが、前記の多数個の孔または通気性組成物
の被覆層を通り抜けて絶縁裏打ち層の上部表面に達し、これが治療関係者に電気
的な危険をもたらす。
さらに特定していえば、患者を処置する治療関係者は、無意識のうちに絶縁層
の上部表面に滲み出たゲルに接触して電気ショックに晒される。この問題は、心
臓の鼓動の調整および除細動に用いる電極にあっては特に重要である。何故なら
ば、これらの電極には、高電圧、大電流を使用するタイプのものが用いられるか
らである。治療関係者が、心臓の鼓動の調整および除細動の処置を受けつつある
患者と体で接触することは一般的には勧められない。それにもかかわらず、絶縁
層の上側面に現れるゲルは、さらに大きな危険を作り出す。何故ならば、このゲ
ルは、電極とこのゲルに接触する媒体との間に良好な電気的接続を形成するから
である。
その他の電極構造体もまた、上に述べたゲルの加水分解に起因する問題を認識
して、これを解決することに失敗している。例えば、EP特許出願第0,409,067 号
は、導電性シート(8)と支持基部(4)を備えるバイオ電極(bioelectrode)について
述べている。このバイオ電極は、しかしながら、ガスを通気する構造を欠いてい
る。加水分解の問題に言及しそびれている他の電極構造体が、EP特許出願第0,22
6,658 号、同第0,504,715 号および同第0,367,320 号に開示されている。
したがって、この発明は、上に説明した問題に解決を与えるものである。
発明の概要
この発明は、患者の皮膚面に載置して、医療用電子機器から患者に電気的パル
スを伝達する電極を提供する。この電極は、皮膚面側と、これとは反対側の上部
側とを有する導電層を含む。実質的な非導電性裏打ち層が、前記導電層の上部側
と隣接しており、前記裏打ち層は実質的にインピーダンス低下層とは親和性を持
たない。最終的には、インピーダンス低下層と対周辺環境導電層の間に形成され
るガスを通気するためのベントが設けられる。
好ましい実施例においては、導電層がガスと親和性を有する。導電層の対ガス
親和性は、例えば、導電層に穿孔を施すこと、導電層をメッシュ製とすること、
または多孔性材料上にプリントされた導電性インクを使用することなどの様々な
態様によって実現することができる。
1実施例においては、通気性の付与が、導電層と裏打ち層との間にガス親和層
を設けることによって実現する。この好ましい実施例においては、インピーダン
ス低下層と導電層の間に形成されるガスが、導電層を通り抜けてガス親和層内へ
移動する。ガス親和層の一部が、インピーダンス低下層の周辺部を越えて突出す
る。こうして、ガス親和層内に収集されたガスは、インピーダンス低下層の周辺
部を越えて突出するガス親和層の部分から周辺環境内へ通気される。
1つの代替実施例においては、導電層と裏打ち層の間のガス親和層が必要とさ
れない。この代替実施例においては、導電層と裏打ち層の双方がともにガス親和
層である。インピーダンス低下層と導電層の間に形成されるガスは、こうして、
導電層を通り抜け、裏打ち層を介して周辺環境に通気される。しかしながら、患
者を処置する治療関係者に電気的危険を増大させないために、この裏打ち層は、
電極60は、第4図に示すように保護ライナー50に包まれる(保護ライナー
50は第5図には示されていない)。保護ライナー50は、別の実施例に関して
前に述べた通り、取り外しが可能なように電極60に取り付けられる。
実際問題としては、保護ライナー50が取り除かれた後、患者12と隣接する
ようにインピーダン−ス低下層82で患者12に圧着される。このインピーダン
−ス低下層82は、ガム状であるから電極60を患者12に貼着しやすくする。
さらに、裏打ち層68の環状リップ80、および、絶縁体パッド98の患者に向
く側は、好ましくは低アレルゲン性アクリル接着剤でコーティングされる。この
接着剤もまた、電極を患者12に接着しやすくする。
電極60は一般に組をなして使用される。一方のリード線14が一方の電極6
0の柱体86に取り付けられ、他方のリード線が、他方の電極60の柱体86に
取り付けられる。電極60に電流が流れると、導電層74と患者12の間に配置
されたインピーダン−ス低下層82が、患者12と電極60との電気的接触を容
易にする。
もしも、インピーダン−ス低下層82が加水分解を始めると、気泡が導電層7
4を構成するメッシュを介して通気される。この通気によって、導電層74と患
者12の間にガスのポケットが形成されることが防がれる。したがって、電極6
0と患者12との間に良好な電気的接触が維持される。
気泡は、導電層74からガス親和層70に進入し、ここでガス親和層70の半
島部72を通って周辺環境に通気される。もっと特定していえば、インピーダン
−ス低下層82が、導電層74から裏打ち層68までの間の環状ストリップ83
内に延在する。インピーダン−ス低下層82は、ガス親和層70よりも大きな幅
を備えているので、気泡は一般に環状ストリップ83上で区画される区域におい
てはガス親和層70の縁部からは逃散することができない。言い換えれば、イン
ピーダン−ス低下層82は、ガス親和層70の縁部を容易にシールしている。
しかしながら、ガス親和層70の半島部72の大部分は環状ストリップ83上
で区画されていない。したがって、気泡は、第2図に矢印102で示すように、
半島部72から周辺環境に通気される(ガス親和層70の半島部72は、導電層
74の半島部84の下側に配置されている)。
この発明の好ましい実施例を図示して説明したが、この発明には、多くの改変
が施される点を理解すべきである。例えば、既述の実施例のガス親和層20と7
0は、複数本の溝または皺を備える可撓性のシートで置換することが可能である
。気泡は前記溝内に集まり電極の通気部に向かうであろう。
またその代わりに、既述の実施例の導電層が溝や皺を備えることができ、ガス
親和層20、70を省くことも可能である。気泡は、導電層24および74の溝
内に集まり、電極の通気部に向かう。
この発明の範囲内の別の改変例は、導電層が、導電層の患者に向く側の面にプ
リントされた導電性インクを備える多孔性材料で置換することである。この多孔
性材料は、プラスチックのメッシュ、開放セルフォーム、不織布材またはその他
のガスと親和する材料である。
インピーダン−ス低下層32を用いる好ましい実施例においては、インピーダ
ン−ス低下層の環状ストリップ33を省くことができる。したがって、ガスは、
半島部22からよりはむしろガス親和層20の縁部全体から通気される。
この発明の範囲内におけるさらに別に可能な改変例は、柱体42が導電層24
にハンダ付けされる点であり、この場合は、支持シート26、ガス親和層20、
および裏打ち層18にボアホールを設けて、柱体42が上に向かって前記ボアホ
ールを貫通する。
当業者によって施されるこれら、および、その他の変形、代替、置換、改変を
考慮に入れ、付与される特許権は付属の請求の範囲の定義によってのみ制限を受
けるものである。請求の範囲
1. 下記の(a)(b)(c)(d)からなる、医療用電子機器(16)から患者(12)に電気
的パルスを伝達すべく患者の皮膚に載置するための電極(10,60)。
(a)皮膚に向く側と上部とを備える導電層(24,74)を備えており、導電層はガスと
親和性を持つ、
(b)導電層の皮膚に向く側に配置されるインピーダンス低下層(32,82)、
(c)導電層の上部に配置される電気的に実質的に非導電性である裏打ち層(18,68)
を備えており、前記裏打ち層は、実質的にガスど親和性を持たない、
(d)ガスを通気するためのベント手段(22,72)を備えており、ベント手段は導電層
と裏打ち層との間に配置される、
2. ベント手段が、導電層と裏打ち層との間にガス親和層(20,70)をさらに
含む請求の範囲1項記載の電極。
3. インピーダンス低下層が外側縁部を含み、ベント手段が、インピーダン
ス低下層の縁部を越えて延在するガス親和層の一部を含む請求の範囲2項記載の
電極。
4. 導電層に孔が形成されている請求の範囲1項記載の電極。
5. 導電層がメッシュを含む求の範囲1項記載の電極。
6. ガス親和層が、不織布材を含む請求の範囲2項記載の電極。
7. 不織布材がポリエステルを含む請求の範囲6項記載の電極。
8. 下記の(a)(b)(c)(d)からなる、医療用電子機器(16)から患者(12)に電気
的パルスを伝達すべく患者の皮膚に載置するための電極(10,60)。
(a)皮膚に向く側と上部とを備える導電性シート(24,74)を備えており、導電性シ
ートはガスと親和性を持つ、
(b)導電性シートの皮膚に向く側に配置されるインピーダンス低下層(32,82)、
(c)導電層の上部に配置される電気的に実質的に非導電性である裏打ち層(18,68)
を備えており、前記裏打ち層は、実質的にガスと親和性を持たない、
(d)導電層と裏打ち層との間にガス親和層(20,70)を備えており、ガス親和層は、
ガス親和層と周辺環境との間においてガス交換を可能にするためのベント部分(2
2,72)を含む、
9. 裏打ち層がガスと親和する材料を含む請求の範囲8項記載の電極。
10. ガス親和層が不織布材を含む請求の範囲8項記載の電極。
11. 不織布材ガポリエステルを含む請求の範囲10項記載の電極。
12. インピーダンス低下層が外側縁部を含み、ガス親和層が、インピーダン
ス低下層の縁部を越えて延在する部分を含む請求項8記載の電極。
13. インピーダンス低下層が外側縁部を含み、導電層が、インピーダンス低
下層の縁部を越えて延在する部分を含む請求の範囲8項記載の電極。
14. 導電層を医療用電子機器と接続するために、インピーダンス低下層の縁
部を越えて延在する導電層の部分と接続される電気的接続器をさらに含む請求の
範囲8項記載の電極。
15. 導電層と患者の皮膚の間の電気的接続が、実質的にインピーダンス低下
層を介してのみ発生する請求の範囲8項記載の電極。
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フロントページの続き
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AP(KE,MW,SD,SZ,UG),
AM,AT,AU,BB,BG,BR,BY,CA,C
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