JP2009240249A - 核酸配列の検出方法及び核酸配列検出用基板 - Google Patents
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Abstract
【課題】検出すべき特定の標的核酸配列の簡便な核酸増幅法を提供すること,またその増幅法を用いた高感度な検出が可能な核酸検出方法を提供すること。
【解決手段】一対のオリゴヌクレオチド鎖をプライマーとし,その一方の末端を基板表面に固定化し,固定化したオリゴヌクレオチド鎖それぞれと相補的な配列を有する標的核酸配列(1本鎖)を結合させ,この状態で増幅反応を繰り返す増幅方法,及びこの増幅反応を繰り返して,基板上に高密度の架橋状態の架橋体を形成させる増幅方法,及びこの方法を用いて作成した拡散配列検出用基板。前記架橋体により微細な網目状空間を作り出し,この網目状空間にリガンドを取り込み,或いは核酸伸長反応の基質に標識化リガンドを添加し伸長反応させてリガンドを鋳型鎖及び/又は非鋳型鎖に取り込み,前記リガンドと反応する活性物質で前記リガンドを発色又は発光させるようにした。
【選択図】図1
【解決手段】一対のオリゴヌクレオチド鎖をプライマーとし,その一方の末端を基板表面に固定化し,固定化したオリゴヌクレオチド鎖それぞれと相補的な配列を有する標的核酸配列(1本鎖)を結合させ,この状態で増幅反応を繰り返す増幅方法,及びこの増幅反応を繰り返して,基板上に高密度の架橋状態の架橋体を形成させる増幅方法,及びこの方法を用いて作成した拡散配列検出用基板。前記架橋体により微細な網目状空間を作り出し,この網目状空間にリガンドを取り込み,或いは核酸伸長反応の基質に標識化リガンドを添加し伸長反応させてリガンドを鋳型鎖及び/又は非鋳型鎖に取り込み,前記リガンドと反応する活性物質で前記リガンドを発色又は発光させるようにした。
【選択図】図1
Description
本発明は核酸配列の検出方法及び核酸配列検出用基板に係り,特に検体サンプル中に検出標的とする特定の標的核酸配列が存在するかどうかを高感度で,しかも簡易かつ低コストで検出するための技術に関する。
従来,検体固有の核酸配列を標的として検出する方法としては,基板上に固定化させたオリゴヌクレオチド鎖に標的核酸配列を結合させ,結合した標的核酸配列に蛍光物質を標識した,異なるオリゴヌクレオチド鎖を結合させる。そして,特定波長の光(レーザー光等)を当てることで,標識蛍光物質の蛍光シグナルを検出・増幅することで特定の核酸配列が検体サンプル中に存在するかどうかを検出する。
別の検出方法としては,基板上に固定化したオリゴヌクレオチド鎖に,標的核酸配列を結合させ,オリゴヌクレオチド鎖をプライマーとし,結合した標的核酸配列を鋳型として伸長反応させ,その際に取り込まれる塩基物質に蛍光物質を標識する。そして,特定波長の光(レーザー光等)を当てることで,標識蛍光物質の蛍光シグナルを検出・増幅する。
しかし,これらの検出方法は,蛍光物質を検出しなくてはならないため,特定波長光を出す特殊な検出装置を必要とし,検出装置が高価となり,一部の研究機関や大学機関等に使用が限定されている状況である。したがって,例えば水処理現場等において,水(検体サンプル)中におけるノロウイルス,クリプトスポリジウム等の病原微生物を簡易に検出する手法としては,操作が繁雑なうえ分析装置が高価な為,採用できないという問題がある。
このような背景から,例えば水処理等の検出を行う現場において低コストで簡便に特定の核酸配列を標的として検出する方法として,特許文献1,特許文献2,非特許文献1に記載されるMPEX法(Multiple Primers EXtension 法)が開発されている。この検出方法は,DNA基板上に固定化したオリゴヌクレオチド鎖が標的DNAに結合し,相補的な標識化DNAを増幅する手法である。本手法は,蛍光物質のみならず発色色素を標識に用い,吸光度装置,イメージスキャナ等の一般的装置で検出可能であり,更には可視化されることで目視により簡便に検出できる。
特許文献3には,基板上の電極上に2つのオリゴヌクレオチドプローブを固定し,標的核酸配列を持つ試料と接触させてプローブとハイブリダイズさせ,プローブ間に流れる電流を検出して標的核酸配列を検出することが記載されている。
特許文献4には,基板に一端を固定したカーボンナノチューブに金属を結合し,導電性のバイオ化合物を金属に結合した電子センサデバイスが記載されている。
又,特許文献5には,基板上に2つの電極を設け,電極間をDNAでブリッジした構造を持つナノデバイスが開示されている。
しかしながら,発色又は色素は蛍光物質に比べて検出シグナルの増幅感度が劣るため,例えばノロウイルス,クリプトスポリジウム等のように,水(検体サンプル)中に極微量のオーダでしか存在せず,しかも培養により増殖できない病原微生物を,MPEX法を用いて検出するには,高感度な検出ができないという課題がある。MPEX法により高感度で検出するには標識を増やす必要があり,そのためにはPCR法等により標的核酸配列の濃度を高める工程が必要となるため,結果が得られるまでに長時間を要するという欠点がある。
したがって,ノロウイルス,クリプトスポリジウム等のように,水中に極微量のオーダでしか存在せず,しかも培養により増殖できない病原微生物を,MPEX法を用いて検出するには更なる改良が必要となる。
また,たとえ蛍光物質を使用したとしても,上記の病原微生物のように検出すべき特定の遺伝子が極めて微量である場合には,検出感度の不安定化を招き,精度のよい検出ができない。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので,検出すべき特定の標的核酸配列の濃度が極めて微量である場合であっても,高感度な検出が可能であり,しかも低コスト・短時間での検出が可能である核酸配列の検出方法及びその方法を用いた核酸配列検出基板を提供することを目的とする。
本発明において,請求項1〜14記載の発明は,核酸検出方法にかかわり,請求項15〜18に係る発明は,前記核酸検出法に使用される基板である。
本発明は,標的核酸配列に対して相補的または相同的な核酸配列を有する一対のオリゴヌクレオチド鎖の3’末端または5’末端を基板上に固定化した前記一対のオリゴヌクレオチド鎖と前記標的核酸配列の相補的部分を結合させ微細な網目状空間を有する架橋構造体を形成する工程と,
前記架橋構造体を形成する核酸配列に発色又は発光物質を取り込み,又は前記網目状空間にリガンドを取り込む工程と,
前記取り込んだ発色又は発光物質に反応する活性物質を用いて発色又は発光させる工程と,
前記発色又は発光信号を検出することにより前記標的核酸配列を検出する検出工程と,を備えたことを特徴とする核酸配列の検出方法を提供するものである。
前記架橋構造体を形成する核酸配列に発色又は発光物質を取り込み,又は前記網目状空間にリガンドを取り込む工程と,
前記取り込んだ発色又は発光物質に反応する活性物質を用いて発色又は発光させる工程と,
前記発色又は発光信号を検出することにより前記標的核酸配列を検出する検出工程と,を備えたことを特徴とする核酸配列の検出方法を提供するものである。
更に本発明は,基板表面に5’末端を固定化したオリゴヌクレオチド鎖1に標的核酸配列をハイブリダイズする工程1と,
前記オリゴヌクレオチド鎖1をプライマーとし,標的核酸配列が第1の鋳型鎖となる核酸伸長反応により第1の伸長反応鎖を形成する工程2と,
前記第1の鋳型鎖の5’末端側と解離した第1の伸長反応鎖の3’末端側核酸配列が,基板表面に5’末端を固定化したオリゴヌクレオチド鎖2にハイブリダイズする工程3と,
前記オリゴヌクレオチド鎖2をプライマーとし,前記第1の伸長反応鎖が第2の鋳型鎖となる鎖置換型核酸伸長反応により第2の伸長反応鎖を形成する工程4と,
前記オリゴヌクレオチド鎖1側と解離した前記第2の伸長反応鎖の3’末端側核酸配列が,前記基板表面に5’末端を固定化したオリゴヌクレオチド鎖3にハイブリダイズする工程5と,
前記オリゴヌクレオチド鎖3をプライマーとし,前記第2の伸長反応鎖が第3の鋳型鎖となる鎖置換型核酸伸長反応により第3の伸長反応鎖を形成する工程6と,
前記オリゴヌクレオチド鎖2側と解離した前記第3の伸長反応鎖の3’末端側核酸配列が,基板表面に5’末端を固定化したオリゴヌクレオチド鎖4にハイブリダイズしてブリッジを形成する工程7と
を有する核酸増幅方法を提供するものである。
前記オリゴヌクレオチド鎖1をプライマーとし,標的核酸配列が第1の鋳型鎖となる核酸伸長反応により第1の伸長反応鎖を形成する工程2と,
前記第1の鋳型鎖の5’末端側と解離した第1の伸長反応鎖の3’末端側核酸配列が,基板表面に5’末端を固定化したオリゴヌクレオチド鎖2にハイブリダイズする工程3と,
前記オリゴヌクレオチド鎖2をプライマーとし,前記第1の伸長反応鎖が第2の鋳型鎖となる鎖置換型核酸伸長反応により第2の伸長反応鎖を形成する工程4と,
前記オリゴヌクレオチド鎖1側と解離した前記第2の伸長反応鎖の3’末端側核酸配列が,前記基板表面に5’末端を固定化したオリゴヌクレオチド鎖3にハイブリダイズする工程5と,
前記オリゴヌクレオチド鎖3をプライマーとし,前記第2の伸長反応鎖が第3の鋳型鎖となる鎖置換型核酸伸長反応により第3の伸長反応鎖を形成する工程6と,
前記オリゴヌクレオチド鎖2側と解離した前記第3の伸長反応鎖の3’末端側核酸配列が,基板表面に5’末端を固定化したオリゴヌクレオチド鎖4にハイブリダイズしてブリッジを形成する工程7と
を有する核酸増幅方法を提供するものである。
更に本発明は,上記核酸検出方法に適した基板を提供するものである。
本発明に係る核酸配列の検出方法及び核酸配列検出基板によれば,検出すべき特定の標的核酸配列の濃度が極めて微量である場合であっても,高感度な検出が可能であり,しかも低コスト・短時間での検出が可能である。
本発明において,標的核酸配列とは,検出標的の塩基配列を有するRNA又はDNAをいう。本発明の請求項1にかかわる発明によれば,基板表面に複数のオリゴヌクレオチド鎖の一方の末端を固定化して立設し,固定化したオリゴヌクレオチド鎖と相補的な配列を有する標的核酸配列(1本鎖)を結合させる。
ここで,標的核酸配列の情報は,DNAデータバンク(DDBJ(DNA Data Bank of Japan),EMBL(European Molecular Biology Laboratory),GenBank)等を利用してインターネット等により知ることができる。したがって,標的核酸配列の2箇所の部位において検体固有の核酸配列を探し出し,2つの固有核酸配列を,第1のオリゴヌクレオチド鎖と第2のオリゴヌクレオチド鎖とにそれぞれ割り当てればよい。
本発明において,鋳型鎖またはオリゴヌクレオチド鎖の5’末端側と伸長反応鎖の3’末端側核酸配列が解離するが,これは45〜65℃の伸長反応温度環境下では二本鎖核酸は部分的に解離するためである。
前記オリゴヌクレオチド鎖が5種類以上有り,前記工程7の後に工程4,5,6及び7を複数回繰り返すことによって,オリゴヌクレオチド鎖と標的核酸配列の相補部分を結合させて,架橋構造を形成することを特徴とする前記核酸増幅方法が提供される。基板上に架橋状態の架橋体を形成させることにより微細な網目状空間を作り出し,この網目状空間に発光又は発色物質例えばリガンド又は蛍光物質を例えば物理的な吸着作用で取り込み,リガンドに反応する活性物質で発色又は発光を検出し,あるいは同位元素の放射線を感光フィルム等により記録するようにした。
このように,検体サンプル中に検出標的とする特定の標的核酸配列が存在する場合には,基板上に網目状空間が形成されるようにし,この網目状空間に発色させるため発色関係物質の構成成分であるリガンドを例えば物理的な吸着作用で取り込まれるようにした。その結果,発色関係物質の構成成分でリガンドに反応する活性物質を投入することで,発色形成物質を網目状空間に高濃度に取り込むことができる。これにより,検出すべき特定の標的核酸配列の濃度が極めて微量である場合であっても,高感度な検出が可能である。また,架橋構造が形成されていれば伸長反応を必要としないので,検出に要する時間を短時間で行うことができる。更には,蛍光色素のほかに,発色色素を使用することもできるため,高価な検出装置等が必要なくなり,低コストでの検出を行うことができる。
本発明は,前記オリゴヌクレオチド鎖1および前記オリゴヌクレオチド鎖3の配列が同じであり,前記オリゴヌクレオチド鎖2および前記オリゴヌクレオチド鎖4の配列が同じであるものに適用することができる。
本発明は,前記工程7の後に工程4,5,6及び7を複数回繰り返すことを特徴とする前記核酸増幅方法を提供する。この繰り返し工程によってオリゴヌクレオチドと核酸配列の相補部分の結合により,多数の架橋構造を基板上に形成することができる。
本発明によれば,前記核酸伸長反応の基質となるdNTPに予めリガンド修飾をし,伸長反応産物である前記鋳型鎖および非鋳型鎖にリガンドを取り込み,このリガンドに活性物質を反応させることを特徴とする前記核酸増幅方法が提供される。この方法により,核酸増幅と同時にリガンドを鋳型鎖及び/又は非鋳型鎖に取り込むことができる。このリガンドは,核酸配列の検出のための標識となる。
本発明はまた,前記工程3,5及び7のハイブリダイゼーションにより,前記基板表面に架橋状態の核酸配列構造を形成させることで微細な網目状空間を作り出し,該空間へリガンドを吸着又は侵入効果により取り込み,このリガンドに活性物質を反応させることで検出可能な伸長反応産物を得ることができる。
前記リガンドはビオチン,アビジン,ストレプトアビジン,抗原,抗体,オリゴヌクレオチド,酵素よりなる群から選ばれたいずれかである。また,前記リガンドはビオチン化酵素,アビジン化酵素,ストレプトアビジン化酵素,酵素標識抗体,酵素標識オリゴヌクレオチドよりなる群から選ばれた,いずれかである。前記リガンドに反応する活性物質としては酵素標識レセプター,蛍光物質標識レセプター,基質よりなる群から選ばれたいずれかがある。
本発明は,前記核酸伸長反応の基質となるdNTPに予め蛍光物質,またはラジオアイソトープを修飾し,伸長反応産物である前記鋳型鎖および非鋳型鎖に蛍光物質,またはラジオアイソトープを取り込み,この蛍光物質,またはラジオアイソトープを活性化させ発光もしくは感光させることで伸長反応産物を検出することを特徴とする核酸検出方法を提供する。
本発明は,前記核酸増幅方法に続いて,発色,発光を検出し,或いは放射線を感光させることを特徴とする核酸検出方法を提供する。本発明は,前記リガンドと前記活性物質を反応させることにより発色もしくは発光信号を得ることを特徴とする核酸配列検出方法を提供する。
本発明により,前記核酸増幅方法によりオリゴヌクレオチド鎖と標的核酸の相補部分を結合させて架橋した網目構造の空間にリガンドを取り込ませ,活性物質を添加して発色又は発光させ,これを検出することを特徴とする核酸検出方法が提供される。
更に,核酸伸長反応の基質となるdNTPに予めリガンドを修飾し,伸長反応産物である前記鋳型鎖および非鋳型鎖にリガンドを取り込み,請求項6記載の核酸増幅方法によりオリゴヌクレオチド鎖と標的核酸の相補部分を結合させた後,前記リガンドに活性物質を反応させ発色又は発光させ,これを検出することを特徴とする核酸検出方法が提供される。
一対のオリゴヌクレオチド鎖は,熱変性により1本鎖となった標的核酸配列に対してそれぞれ相補的な配列部分を有するように設計されていることから,発色関係物質の構成成分であるリガンドを含む反応系においてハイブリダイゼーション反応を行うことにより,請求項1に示す架橋構造体が多数形成される。そして,この架橋体またはその架橋体によって形成される空間内にリガンドが多数取り込まれることにより,強い発色又は発光シグナルを発生することができ,高感度な検出が可能となる。
本発明において,網目状空間を前述の方法とは異なる形成することができる。即ち,基板表面に5’末端を固定化した第1のオリゴヌクレオチド鎖と標的核酸配列とを相補的に結合させた後,第1のオリゴヌクレオチド鎖がプライマーとなると共に標的核酸配列を鋳型として伸長反応することにより形成され,標的核酸配列と相補的な核酸配列である第1の伸長反応鎖の3’末端核酸配列が解離する。そして,解離した第1の伸長反応鎖の3’末端核酸配列と,基板表面に5’末端を固定化した第2のオリゴヌクレオチド鎖とを相補的に結合させた後,第2のオリゴヌクレオチド鎖をプライマーとすると共に第1の伸長反応産物を鋳型として鎖置換活性を有する核酸合成酵素をもちいて伸長反応させることにより第2の伸長反応鎖を形成し,それと同時に第2の伸長反応鎖から第1の鋳型鎖である標的核酸配列を引き剥がす。
これにより,基板上には,鎖置換型伸長反応及び解離反応,によって核酸配列による架橋構造が多数形成され,この多数の架橋構造体が複雑に絡み合うことにより,基板上に網目状空間を形成することができる。
本発明によれば,以下の核酸配列検出用基板が提供される。
(1)基板上に,標的核酸配列と相補的な核酸配列を含む多数のオリゴヌクレオチド鎖の一方の末端が固定され、リガンドがオリゴヌクレオチドに取り込まれていることを特徴とする核酸配列検出用基板。
(2)基板上に,標的核酸配列と相補的な核酸配列を含む複数のオリゴヌクレオチド鎖の5’末端又は3’末端が固定され,オリゴヌクレオチド鎖の伸長反応生産物にリガンドを含有することを特徴とする核酸配列検出用基板。
(3)基板上に,標的核酸配列と相補的な核酸配列を含む複数のオリゴヌクレオチド鎖の一方の末端が固定され,標的核酸配列もしくはオリゴヌクレオチド鎖の伸長反応生産物が固定化されたオリゴヌクレオチド鎖間を架橋していることを特徴とする核酸配列検出用基板。
(4)オリゴヌクレオチド鎖間の架橋構造体の空間内にリガンドが取り込まれていることを特徴とする核酸配列検出用基板。
本発明は,請求項1の架橋工程,または請求項4の繰返し架橋工程により,架橋構造体が多数絡み合った微細な網目状空間を形成する網目状空間形成し,前記網目状空間にリガンドを例えば物理的な吸着作用により取り込む取込み,前記取り込んだリガンドに対して,該リガンドに反応する活性物質を用いて発色させ,前記発色した発色シグナルを検出することにより前記標的核酸配列を検出することを備えたことを特徴とする核酸配列の検出方法を提供する。
本発明の請求項7は,請求項1と同様に,請求項3において,網目状空間にリガンドまたは蛍光物質を取り込み,リガンドと反応する活性物質により発色又は発光させるものである。
このように,検体サンプル中に検出標的とする特定の標的核酸配列が存在する場合には,基板上に網目状空間が形成されるようにし,この網目状空間に発色させるため発色関係物質の構成成分であるリガンドを取り込まれるようにし,このリガンドに対する活性物質を投入することで,発色又は発光形成物質を網目状空間に高濃度に取り込むことができる。これにより,検出すべき特定の標的核酸配列の濃度が極めて微量である場合であっても,高感度に検出できる。また,発色シグナル量は伸長反応量に大きく依存しない為,検出に要する時間を短時間で行うことができ,高価な検出装置等が必要なくなるので,低コストでの検出を行うことができる。
本発明の他の態様によれば,以下の工程のいずれかを含む核酸検出方法が提供される
(1)基板表面に5’末端を固定化したオリゴヌクレオチド鎖1に標的核酸配列をハイブリダイズさせ,前記オリゴヌクレオチド鎖1をプライマーとし,標的核酸配列が第1の鋳型鎖となる核酸伸長反応により第1の伸長反応鎖を形成し,前記第1の鋳型鎖の5’末端側と解離した第1の伸長反応鎖の3’末端側核酸配列が,基板表面に5’末端を固定化したオリゴヌクレオチド鎖2にハイブリダイズし第1の架橋構造を形成する工程。
(1)基板表面に5’末端を固定化したオリゴヌクレオチド鎖1に標的核酸配列をハイブリダイズさせ,前記オリゴヌクレオチド鎖1をプライマーとし,標的核酸配列が第1の鋳型鎖となる核酸伸長反応により第1の伸長反応鎖を形成し,前記第1の鋳型鎖の5’末端側と解離した第1の伸長反応鎖の3’末端側核酸配列が,基板表面に5’末端を固定化したオリゴヌクレオチド鎖2にハイブリダイズし第1の架橋構造を形成する工程。
このとき,標的核酸配列は2本鎖でもよく,その場合,標的核酸配列の3’末端側核酸配列が部分的に解離して前記オリゴヌクレオチド鎖1にハイブリダイズし,鎖置換型伸長反応により第1の伸長反応鎖が形成される。
(2)前記オリゴヌクレオチド鎖2をプライマーとし,前記第1の伸長反応鎖が第2の鋳型鎖となる第1の鎖置換型核酸伸長反応により標的核酸配列を第1の伸長反応鎖から引き剥がすのと同時に第2の伸長反応鎖を形成し,前記オリゴヌクレオチド鎖1側と解離した前記第2の伸長反応鎖の3’末端側核酸配列が,前記基板表面に5’末端を固定化したオリゴヌクレオチド鎖3にハイブリダイズし第2の架橋構造を形成する工程。
(3)前記オリゴヌクレオチド鎖3をプライマーとし,前記第2の伸長反応鎖が第3の鋳型鎖となる第2の鎖置換型核酸伸長反応により第1の伸長反応鎖を第2の伸長反応鎖から引き剥がすのと同時に第3の伸長反応鎖を形成し,前記オリゴヌクレオチド鎖2側と解離した前記第3の伸長反応鎖の3’末端側核酸配列が,基板表面に5’末端を固定化したオリゴヌクレオチド鎖4にハイブリダイズし第3の架橋構造を形成する工程。
(4)第1,第2と第3の架橋工程と同時に進行する第1,第2の鎖置換型核酸伸長反応により形成された1本鎖伸長反応鎖の3’末端側核酸配列が,オリゴヌクレオチド鎖1,2,3または4にハイブリダイズし第4と第5の架橋構造を形成する工程。
(5)多数の前記オリゴヌクレオチド鎖1,2,3及び4の間で行われる第1,第2,第3,第4及び第5の架橋構造を形成する工程を繰り返す,繰返し架橋工程を含む。
(2)前記オリゴヌクレオチド鎖2をプライマーとし,前記第1の伸長反応鎖が第2の鋳型鎖となる第1の鎖置換型核酸伸長反応により標的核酸配列を第1の伸長反応鎖から引き剥がすのと同時に第2の伸長反応鎖を形成し,前記オリゴヌクレオチド鎖1側と解離した前記第2の伸長反応鎖の3’末端側核酸配列が,前記基板表面に5’末端を固定化したオリゴヌクレオチド鎖3にハイブリダイズし第2の架橋構造を形成する工程。
(3)前記オリゴヌクレオチド鎖3をプライマーとし,前記第2の伸長反応鎖が第3の鋳型鎖となる第2の鎖置換型核酸伸長反応により第1の伸長反応鎖を第2の伸長反応鎖から引き剥がすのと同時に第3の伸長反応鎖を形成し,前記オリゴヌクレオチド鎖2側と解離した前記第3の伸長反応鎖の3’末端側核酸配列が,基板表面に5’末端を固定化したオリゴヌクレオチド鎖4にハイブリダイズし第3の架橋構造を形成する工程。
(4)第1,第2と第3の架橋工程と同時に進行する第1,第2の鎖置換型核酸伸長反応により形成された1本鎖伸長反応鎖の3’末端側核酸配列が,オリゴヌクレオチド鎖1,2,3または4にハイブリダイズし第4と第5の架橋構造を形成する工程。
(5)多数の前記オリゴヌクレオチド鎖1,2,3及び4の間で行われる第1,第2,第3,第4及び第5の架橋構造を形成する工程を繰り返す,繰返し架橋工程を含む。
伸長反応後に昇温処理すれば,前記伸長反応鎖と前記鋳型を,鎖置換反応を用いずに解離させることが可能となり,効率的に架橋構造を形成することができる
繰返し架橋工程により基板上には網目状空間を形成することができる。そのため,標的核酸配列の濃度が更に小さい場合でも高感度の検出が可能となる。また,仮に第1のオリゴヌクレオチド鎖が標的核酸配列に結合できなくとも,代わりに第3のオリゴヌクレオチド鎖が結合できれば反応は進行するため,検出感度の安定化を図ることができる。
繰返し架橋工程により基板上には網目状空間を形成することができる。そのため,標的核酸配列の濃度が更に小さい場合でも高感度の検出が可能となる。また,仮に第1のオリゴヌクレオチド鎖が標的核酸配列に結合できなくとも,代わりに第3のオリゴヌクレオチド鎖が結合できれば反応は進行するため,検出感度の安定化を図ることができる。
また,前記繰返し架橋工程後において,設定温度をオリゴヌクレオチド鎖のハイブリダイゼーション温度にするハイブリダイゼーション工程を行うことができる。これにより,前記繰返し架橋工程後において,架橋反応できていない伸長反応鎖を基板上に5’末端固定したオリゴヌクレオチド鎖と結合させ,より多くの架橋構造が多数形成され,この多数の架橋構造体が複雑に絡み合うことにより,より高い感度での検出が可能となる。
前記基板表面には親水性ポリマーからなる層と,アミノ基と反応する官能基とを有することが望ましい。また,このような基板表面構成とすることでオリゴヌクレオチド鎖の非特異的結合を抑制する性質と,オリゴヌクレオチド鎖を基板上に強固に固定化することができる。
核酸配列検出基板において,前記基板上にオリゴヌクレオチド鎖がスポットされていることが望ましい。即ち,標的核酸配列を検出するための検体サンプルを,本発明の核酸配列検出基板にスポット(滴下)し,基板と反応させることにより,目視により,検体サンプル中に検出標的とする特定の標的核酸配列が存在するかを高感度で検出することができる。
以下,添付図面を用いて本発明に係る核酸配列の検出方法及び核酸配列検出基板の好ましい実施形態について詳説する。
[第1の実施形態]
図1は,本発明による核酸配列の検出方法の第1の実施形態のメカニズムを概念的に示した概念図である。
[第1の実施形態]
図1は,本発明による核酸配列の検出方法の第1の実施形態のメカニズムを概念的に示した概念図である。
図1におけるA,C,G,Tは,核酸配列を構成する塩基を示し,A:アデニン,C:シトシン,G:グアニン,T:チミンである。
本発明の核酸配列の検出方法の第1の実施の形態は,主として,設計工程と,固定化工程と,架橋工程による網目状空間形成工程と,取込み工程と,発色工程と,検出工程とで構成される。
予め,検体サンプル中の検出標的である標的核酸配列(例えば標的DNA)10を一対のオリゴヌクレオチド鎖12,14に架橋させるためのオリゴヌクレオチド鎖12,14の核酸配列の設計を行う(設計工程)。ここで,架橋される標的核酸配列10は,熱変性により2本鎖から1本鎖になったものを指す。
即ち,インターネット等によりDNAデータバンクに保管されている情報の中から,検出しようとする標的核酸配列10の核酸配列を予め調べておき,その核酸配列の2箇所の部位と一対のオリゴヌクレオチド鎖12,14とがそれぞれ相補的に結合するように一対のオリゴヌクレオチド鎖12,14の核酸配列を設計する。
図1(A)の左下側のオリゴヌクレオチド鎖12の核酸配列を基板16側から3’−TAGGCA−5’として,標的核酸配列10の一方端の配列部分5’−ATCCGT−3’と相補性を有するように設計する。また,図1(A)の右下側のオリゴヌクレオチド鎖14の核酸配列を基板16側から5’−TCTGTC−3’として,標的核酸配列10の他方端の配列部分3’−AGACAG−5’と相補性を有するように設計する。即ち,標的核酸配列10の2箇所の部位において相補性を有する核酸配列を,一対のオリゴヌクレオチド鎖12,14にそれぞれ割り当てる。尚,設計するオリゴヌクレオチド鎖12,14の塩基数は,6〜30の範囲であることが好ましい。
オリゴヌクレオチド鎖12,14の設計において,検体サンプル中に含まれる標的核酸配列10以外の核酸配列(例えば,動物,植物,人等のDNA)が一対のオリゴヌクレオチド鎖12,14に結合されないように,標的核酸配列10固有の核酸配列を有するオリゴヌクレオチド鎖12,14を設計する。
一対のオリゴヌクレオチド鎖12,14は,核酸配列が同じものでもよく,あるいは異なっていてもよいが,標的核酸配列10が一対のオリゴヌクレオチド鎖12,14,標的核酸配列の間で架橋を形成可能なように,それぞれのオリゴヌクレオチド鎖12,14に対応する標的核酸配列10の2箇所の部位が離れていることが必要である。但し,2箇所の部位が標的核酸配列10の両端に位置することは必須ではない。
次に,図1(A)に示すように,基板16上に,一対のオリゴヌクレオチド鎖12,14の5’末端と3’末端のうちの一方の末端を固定化することにより,一対のオリゴヌクレオチド鎖12,14を基板上に立たせる(固定化工程)。図1(A)では,一対のオリゴヌクレオチド鎖12,14のみを示したが,基板16上には一対のオリゴヌクレオチド鎖12,14が多数組立設される。尚,一対のオリゴヌクレオチド鎖12,14が多数組とは,オリゴヌクレオチド鎖12とオリゴヌクレオチド鎖14とが完全に等量関係にあることを意味するものではない。
上記の如く準備された基板16上に,標的核酸配列10を含む検体サンプルをスポット(滴下して投入)して,増幅工程〜架橋工程〜検出工程までを行う。即ち,図1(B)に示すように,一対のオリゴヌクレオチド鎖12,14のそれぞれと,標的核酸配列10の相補的部分が結合し,架橋状態の架橋体18を形成する。
この架橋工程において,検体サンプルに含まれる標的核酸配列10以外の核酸配列は,一対のオリゴヌクレオチド鎖12,14と相補的な関係にはないので,架橋体18を形成することはない。
この一対のオリゴヌクレオチド鎖12,14の多数組について架橋工程を行うことにより,基板16上には,図2に示すように,架橋体18が多数複雑に絡み合った微細な網目状空間20を形成する(網目状空間形成工程)。尚,図2では分かり易いように,網目状空間18を簡素化して図示したが,実際には架橋体18が複雑に絡み合って密集した網目状空間を形成する。網目状空間が形成されることは,例えば電子顕微鏡で直接的に確認可能である。また,一対のオリゴヌクレオチド鎖12,14について,標的核酸配列10と相補性を小さくするように核酸配列を設計することで,発色工程での発色シグナルが小さくなり,オリゴヌクレオチド鎖のどちらか一方を排除すると,発色シグナルが得られないことから,架橋構造の形成を間接的に確認することができる。
この網目状空間20に,図1(C)に示すように,発色関係物質の構成成分である多数のリガンド22を例えば物理的な吸着作用により取り込むことができる(取込み工程)。尚,図1(C)では分かり易いように,1つの架橋体18で示してあるが,実際には図2に示したように,多数の架橋体18が複雑に絡み合った網目状空間20にリガンド22が取り込まれる。ここで物理的な吸着作用とは,小さい孔には小さな化学物質が入り込み易いことを利用したもので,特定の化学物質に特定の化学物質が結合し易いのとは異なり,非特異的な作用を意味する。しかし,本発明におけるリガンドの取込作用が,物理的な吸着であるということは断定できる段階にない。
したがって,取り込んだ多数のリガンド22に対して,該リガンド22に反応する発色関係物質の構成成分である活性物質(図示せず)を用いて発色させ(発色工程),発色した発色シグナルを検出すれば,高感度の検出を行うことができる。また,発色シグナルの検出は,吸光度装置,イメージスキャナ等の汎用装置を使用することができるだけでなく,発色色素により可視化されることで目視により簡便に検出することができる。
リガンド22としては,ビオチン,アビジン,抗原,抗体,オリゴヌクレオチド,酵素よりなる群から選ばれた何れかを使用するのが好ましい。更に,リガンドとして,ビオチン化酵素,アビジン化酵素,ストレプトアビジン化酵素,酵素標識体,酵素標識オリゴヌクレオチドよりなる群から選ばれた何れかを使用することができる。また,活性物質としては,酵素標識レセプター,蛍光物質標識レセプター,基質よりなる群から選ばれた何れかを使用するのが好ましい。
発色工程を,リガンドとしてビオチンを用い,リガンドと反応する活性物質としてアルカリフォスファターゼ標識アビジンを用いた例で説明すると,ビオチンはアビジンと反応(ビオチン反応)して,特異的に強固な結合を形成する。したがって,網目状空間20にビオチンを取り込み,アルカリフォスファターゼ標識アジビンをビオチンに反応させることで,たくさんのアルカリフォスファターゼ(AP)がビオチンに結合する。結合割合は,アジビン1に対してビオチン4の割合である。そして,アルカリフォスファターゼは,BCIP/NBTという基質に反応(BCIP/NBT反応)して青紫色になるので,この色を検出する。
BCIP:5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルリン酸
NBT:ニトロブルーテトラゾリウム
したがって,本発明のように網目状空間20にリガンド22であるビオチンを多量に取り込むことで,ビオチン反応と,アルカリフォスファターゼに対するBCIP/NBT反応とが増幅され,強い発色シグナルが形成される。
NBT:ニトロブルーテトラゾリウム
したがって,本発明のように網目状空間20にリガンド22であるビオチンを多量に取り込むことで,ビオチン反応と,アルカリフォスファターゼに対するBCIP/NBT反応とが増幅され,強い発色シグナルが形成される。
ビオチンの代わりに,薬用植物ジギタリスから得られる強心配糖体のジゴキシゲニン(DIG)を用いる方法もある。この場合アルカリフォスファターゼ標識抗ジゴキシゲニン抗体にて免疫反応を行わせる。これをビオチンの場合と同様にBCIP/NBTで青紫色に発色させる。これにより,高感度な検出が可能になる。
本発明の実施の形態において使用される基板16表面には,親水性ポリマーからなる層及びアミノ基と反応する官能基が存在することが好ましい。親水性ポリマーからなる層は,主としてオリゴヌクレオチド鎖の非特異的結合を抑制する役割を果たし,アミノ基と反応する官能基はオリゴヌクレオチド鎖を化学的に基板上に固定化する役割を果たす。特に,オリゴヌクレオチド鎖は,アミノ基と反応する官能基の部位で共有結合することによって,当該基板16の表面に強固に固定化される。
本実施の形態で使用する親水性ポリマーとしては,親水性基を主鎖又は側鎖に有する高分子物質が挙げられ,ポリアルキレンオキシド,ポリエチレンオキシド,ポリプロピレンオキシド,ポリアクリルアミド及びこれらの共重合体のいずれかを構造中に含むものであることが好ましい。特にポリアクリルアミドを光架橋性化合物等で3次元架橋した網目構造を有するポリアクリルアミドゲルが好ましい。
また,本実施の形態に使用するアミノ基と反応する官能基としては,アルデヒド基,活性エステル基等が挙げられるが,活性エステル基が好ましい。活性エステル基は,カルボン酸のカルボキシル基が活性化されたものであり,C=Oを介して脱離基を有するカルボン酸である。活性化されたカルボン酸誘導体としては,例えば,カルボン酸であるアクリル酸,メタクリル酸,クロトン酸,マレイン酸,フマル酸などのカルボキシル基が,酸無水物,酸ハロゲン化物,活性エステル,活性化アミドに変換された化合物が挙げられる。
活性エステル基としては,例えばp−ニトロフェニルエステル基,N−ヒドロキシスクシンイミドエステル基,コハク酸イミドエステル基,フタル酸イミドエステル基,5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドエステル基,等が好ましく,p−ニトロフェニルエステル基又はN−ヒドロキシスクシンイミドエステル基がより好ましい。
アミノ基と反応する官能基は,基板表面に直接導入されていても良いし,親水性ポリマー構造の主鎖又は側鎖に有していても良い。
(第1の実施形態の検出方法を行う操作手順)
次に,図3のフローチャートにより,第1の実施形態の検出方法を行う操作手順のフローを説明する。尚,基板16は,基板表面に,親水性ポリマーからなる層,及びアミノ基と反応する官能基が存在する場合で説明する。
(第1の実施形態の検出方法を行う操作手順)
次に,図3のフローチャートにより,第1の実施形態の検出方法を行う操作手順のフローを説明する。尚,基板16は,基板表面に,親水性ポリマーからなる層,及びアミノ基と反応する官能基が存在する場合で説明する。
S1では,上記したように,一対のオリゴヌクレオチド鎖12,14の間に標的核酸配列10が架橋するように,標的核酸配列10の2箇所の部位に対して,それぞれ相補的な関係を有する一対のオリゴヌクレオチド鎖12,14を設計する。
次に,S2において,基板16上に一対のオリゴヌクレオチド鎖12,14を固定化する。固定化する方法としては,基板16上の表面に存在する,又は親水性ポリマーに含まれるアミノ基と反応する官能基のうち,少なくとも一部のアミノ基と反応する官能基とオリゴヌクレオチド鎖12,14とを反応させて共有結合を形成させることにより,基板16表面でオリゴヌクレオチド鎖12,14を固定化する。
続いて,オリゴヌクレオチド鎖12,14を固定化した以外の基板16表面のアミノ基と反応する官能基を不活性化する。即ち,残りのアミノ基と反応する官能基を不活性化することにより,オリゴヌクレオチド鎖12,14を基板16の表面に固定することができる。基板16表面に固定化されなかったオリゴヌクレオチド鎖12,14を除去するため,純水や緩衝液で洗浄してもよい。洗浄後はオリゴヌクレオチド鎖12,14を固定化した以外の基板16表面のアミノ基と反応する官能基の不活性化処理をアルカリ化合物,あるいは一級アミノ基を有する化合物で行う。
S3では,標的核酸配列10を含む検体サンプルと発色関係物質の構成成分であるリガンド22(例えばビオチン)とを混合した混合液を調製する。
次に,S4では,標的核酸配列が一本鎖か,二本鎖かが判断され,NOであれば,S5において,検体サンプルを投入した反応系の温度を,標的核酸配列10の融解温度(melting temperature:Tm)以上,例えば90〜95℃に上昇させる。加熱時間は1〜10分程度が好ましい。これにより,2本鎖の標的核酸配列10を解離して1本鎖の標的核酸配列10にする。また,一本鎖であっても,複雑な二次構造等を形成している場合は,熱変性処理を行う。YESであれば,S6へ進む。
S6では,基板16及び検体サンプルとリガンドの混合液をハイブリダイゼーション温度に調節して,混合液を基板へ投入(滴下)する。ハイブリダイゼーション温度は,オリゴヌクレオチド鎖12,14の融解温度(Tm)よりも2〜8℃低い値が好ましい。
S7では,オリゴヌクレオチド鎖12,14の融解温度(Tm)よりも2〜8℃低い温度でハイブリダイゼーション反応を行う。反応時間としては,60分以上であることが好ましい。これにより,上記の如く設計された一対のオリゴヌクレオチド鎖12,14と,標的核酸配列10の相補的部分(2箇所)とがそれぞれ相補的に結合し,架橋状態の架橋体18を形成する。かかる架橋体18が多数形成され,複雑に絡み合うことで網目状空間20が形成される。そして,この網目状空間20に投入したリガンド22が物理的な吸着作用で取り込まれることにより,多数のリガンド22を取り込むことができる。
次に,S8では,基板16反応液を捨てて,基板16を洗浄液,例えば0.1wt%のSDS溶液を用いて洗浄する。
次に,S9では,活性物質(例えばアルカリフォスファターゼ標識アビジン)を基板16上に投入して,網目状空間20に取り込まれたリガンド22との反応により結合させる。反応温度及び反応時間としては,反応温度が20〜40℃の範囲が好ましく,反応時間が5〜60分の範囲が好ましい。
次のS10では,前記したS9の反応を更に続けるか否かが判断され,反応が十分であり,NOであれば次のS11に進み,反応が未だ不十分であり,YESであればS8に戻り,洗浄工程を経て,S9で,活性物質(例えばBCIP/NBT)を基板16上に投入して,網目状空間20に取り込まれたリガンド22と反応した活性物質に,更に反応させる。反応温度及び反応時間としては,反応温度が20〜40の範囲が好ましく,反応時間が5〜60の範囲が好ましい。
S11では,再び基板16の洗浄を行い,S12で発色シグナルの検出を行う。例えば,リガンド22としてビオチンを用い,活性物質としてアルカリフォスファターゼ標識アビジン用いた場合には,BCIP/NBT試薬中に基板16を浸漬して青紫色のスポットを発色させる。発色させた発色シグナルは,目視で検出してもよく,あるいは発色画像をイメージスキャナでパソコンに取り込んで解析してもよく,更には吸光度測定装置で発色度合いを測定してもよい。
このように,検体サンプル中に標的核酸配列10が存在する場合には,網目状空間20が形成され,網目状空間20に発色関係物質に構成成分であるリガンド22が多数保持されることになるので,強い発色シグナルを発色することが可能になる。これにより,検体サンプル中に標的核酸配列10が存在する場合には,高感度な検出が可能となる。
[第2の実施形態]
図4aA,図4bは,本発明による核酸配列の検出方法に関する第2の実施形態のメカニズムを概念的に示した図であり,図5に示す網目状空間20を第1の実施の形態とは別の方法で形成する。尚,第1の実施の形態と同じものについては同符号を付して説明する。
[第2の実施形態]
図4aA,図4bは,本発明による核酸配列の検出方法に関する第2の実施形態のメカニズムを概念的に示した図であり,図5に示す網目状空間20を第1の実施の形態とは別の方法で形成する。尚,第1の実施の形態と同じものについては同符号を付して説明する。
本発明による核酸配列の検出方法に関する第2の実施形態は,主として,固定化工程と,第1の伸長反応工程と,第1の解離工程と,第1の架橋工程と,第2の伸長反応工程と,第2の解離工程と,第2の架橋工程と,繰返し架橋工程と,ハイブリダイゼーション工程と,網目状空間形成工程と,取込み工程と,発色工程と,検出工程とで構成される。
予め,標的核酸配列19と,第1のオリゴヌクレオチド鎖24と,第2のオリゴヌクレオチド鎖26との各核酸配列の関係において,伸長反応により産出された伸長反応産物28,36が架橋構造を形成するように,第1及び第2のオリゴヌクレオチド鎖24,26の核酸配列を設計する(設計工程)。即ち,標的核酸配列19と第1のオリゴヌクレオチド鎖24とが相補的に結合した後に,第1のオリゴヌクレオチド鎖24をプライマーとすると共に標的核酸配列19を鋳型として第1の伸長反応をさせて形成される第1の伸長反応鎖30が標的核酸配列19から解離して,相補的な核酸配列を有する第2のオリゴヌクレオチド鎖26と結合できるように,第1及び第2のオリゴヌクレオチド鎖24,26を設計する。標的核酸配列19の核酸配列については,第1の実施の形態と同様にDNAデータバンクから情報を得ることができる。
図4a(A)の左下側の第1のオリゴヌクレオチド鎖24の核酸配列を基板16側から5’−TAGGCA−3’として,標的核酸配列19の片端の配列部分3’−ATCCGT−5’と相補性を有するように設計する。また,図4a(A)の右下側の第2のオリゴヌクレオチド鎖26の核酸配列を基板16側から5’−AGACAG−3’として,第1の伸長反応産物28の片端の配列部分3’−UCUGUC−5’と相補性を有するように設計する。尚,伸長反応に使用された塩基U(ウラシル)にはビオチンが付けられた場合を示してある。ビオチン非標識時は塩基Tを使用する。Uは本来RNAを構成する塩基であるが,ビオチンを標識することで化学構造的にTに近くなる為,DNAポリメラーゼでの伸長反応が可能となる。
次に,図4a(A)に示すように,基板16上に,第1及び第2のオリゴヌクレオチド鎖24,26の5’末端を固定化することにより,一対のオリゴヌクレオチド鎖24,26を基板上に立たせる(固定化工程)。この場合,オリゴヌクレオチド鎖が相互に接触しない程度に離して固定することが望ましい。あまりオリゴヌクレオチド鎖が接近すると,形成されるブリッジ(架橋構造体)の空間が狭すぎることが懸念されるからである。
図4a(A)では,第1及び第2のオリゴヌクレオチド鎖24,26をそれぞれ1本ずつのみを示したが,基板16上には第1及び第2のオリゴヌクレオチド鎖24,26が多数立設される。
上記の如く準備された基板16上に,標的核酸配列19を含む検体サンプルをスポット(滴下により投入)し,第1の伸長反応工程〜検出工程までを行う。即ち,第1のオリゴヌクレオチド鎖24と,熱変性により解離した1本鎖の標的核酸配列19の相補的部分が結合した後,標的核酸配列19を鋳型とし,第1のオリゴヌクレオチド鎖24をプライマーとして伸長反応を行うと,従来のMPEX法と同様に図4a(B)のような二本鎖核酸配列が形成される(第1の伸長反応工程)。しかし,伸長反応を第1及び第2のオリゴヌクレオチド鎖24,26のTm温度領域で行った場合,伸長反応産物28のオリゴヌクレオチド鎖24,26と相補的な領域は,常に一本鎖に解離する可能性があり,また,基板16上には,伸長反応産物28と相補的に結合するよう予め設計された第2のオリゴヌクレオチド26が固定化されているため,伸長反応産物28の一部は,標的核酸配列19と解離した後に(第1の解離工程),第2のオリゴヌクレオチド鎖26と結合し,架橋状態を形成する(第1の架橋工程)。
即ち,第1の伸長反応により伸長する第1の伸長反応産物28のオリゴヌクレオチド鎖24,26と相補的な領域は,Tm温度領域という不安定なエネルギー状態において,分子構造的に安定した状態を目指すため,相補的な配列を有する第2のオリゴヌクレオチド鎖26と結合することとなる。尚,検体サンプルに含まれる標的核酸配列19以外の核酸配列のものは,第1のオリゴヌクレオチド鎖24と相補的な関係にはないので,第1のオリゴヌクレオチド鎖24に結合して伸長反応を行うことはない。
図4a,図4bに示した「ブリッジング」とは,2つ以上の一端が固定化されたオリゴヌクレオチド間を標的核酸配列が架橋することを意味する。そうした意味で,図に示した第1の実施形態のように一対のオリゴヌクレオチド鎖24,26に標的核酸配列10が架橋することもブリッジングである。以上のようにして図5に示す架橋網目構造が形成される。図5の構造は図2に示したものとほぼ同じである。
第1の伸長反応の際,使用する酵素には,DNAポリメラーゼ,RNAポリメラーゼ又は双方を混合したものが含まれる。
次に,第2のオリゴヌクレオチド鎖26をプライマーとすると共に第1の伸長反応産物28を鋳型として図4b(D)に示すような伸長反応が起こる(第2の伸長反応工程)。尚,図4b(D)では,図を簡素化するために,標的核酸配列19は図示していないが,このとき標的核酸配列19は第1のオリゴヌクレオチド鎖24から解離し,別の第1のオリゴヌクレオチド鎖と結合する。
第2以降の伸長反応の際,酵素は鎖置換型DNAポリメラーゼを使用する。この時,DNAポリメラーゼはpolI型のもの(例えば,Taq(タカラバイオ製)),耐熱性α型のもの(例えば,KOD(TOYOBO製))でも可能であるが,鎖置換活性を有するものを使用することがより好ましい。鎖置換活性を有することにより,鋳型DNAもしくはcDNAに二本鎖を形成している箇所が存在しても,水素結合を切断しながら伸長反応を進めることが容易となる。鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼとしては,Bst DNAポリメラーゼ(ラージフラグメント),Bca(exo−)DNAポリメラーゼ,大腸菌DNA ポリメラーゼIのクレノウフラグメント,Vent(Exo−)DNAポリメラーゼ(Vent DNAポリメラーゼからエクソヌクレアーゼ活性を除いたもの),DeepVent(Exo−)DNAポリメラーゼ(DeepVent DNAポリメラーゼからエクソヌクレアーゼ活性を除いたもの)およびKOD DNAポリメラーゼ等が挙げられ,好ましくはBst DNAポリメラーゼ(ラージフラグメント)が挙げられる。反応温度は前記第1及び第2のオリゴヌクレオチド鎖24,26のTm値以上,67℃未満が好ましく,反応時間は20〜90分が好ましい。
前記第1及び第2のオリゴヌクレオチド鎖24,26は多数を基板16上に固定化している。そこで,第2の伸長反応工程で伸長した第2の伸長反応産物36が,第1の伸長反応産物28から解離し(第2の解離工程),前記第1のオリゴヌクレオチド鎖24とは別であり,かつ,同じ核酸配列の第1のオリゴヌクレオチド鎖24と結合し,架橋状態を形成する(第2の架橋工程)。この状態から,第1のオリゴヌクレオチド鎖24がプライマーとなるため,第1及び第2のオリゴヌクレオチド鎖24,26,の間で第1と第2の架橋工程が繰り返されることとなる(繰返し架橋工程)。その後,設定温度をオリゴヌクレオチド鎖のハイブリダイゼーション温度にすることで(ハイブリダイゼーション工程),基板16上に,より多くの架橋構造体を形成させることとなる。ハイブリダイゼーション温度は,オリゴヌクレオチド鎖24,26の融解温度(Tm)よりも2〜8℃低い温度が好ましい。これにより,架橋構造体が多数絡み合った微細な網目状空間20が形成され(網目状空間形成工程),第1の実施の形態と同様に,網目状空間20に取り込んだ多数のリガンド22に対して(取込み工程),該リガンド22に反応する活性物質を用いて発色させ(発色工程),発色した発色シグナルを検出すれば,高感度の検出を行うことができる。
(第2の実施形態における検出方法を行う操作手順)
次に,図6のフローチャートにより,第2の実施の形態の検出方法を行う操作手順のフローを説明する。尚,基板16は,基板表面に,親水性ポリマーからなる層,及びアミノ基と反応する官能基が存在する場合で説明する。
次に,図6のフローチャートにより,第2の実施の形態の検出方法を行う操作手順のフローを説明する。尚,基板16は,基板表面に,親水性ポリマーからなる層,及びアミノ基と反応する官能基が存在する場合で説明する。
S1では,上記したように,標的核酸配列19と,第1のオリゴヌクレオチド鎖24と,第2のオリゴヌクレオチド鎖26との各核酸配列の関係において,伸長反応により産出された第1の伸長反応産物28,36が架橋構造を形成するように,第1及び第2のオリゴヌクレオチド鎖24,26の核酸配列を設計する。
S2では,基板16上に,設計した第1及び第2のオリゴヌクレオチド鎖24,26を固定化する。固定化する方法としては第1の実施の形態で説明したので省略する。
S2では,基板16上に,設計した第1及び第2のオリゴヌクレオチド鎖24,26を固定化する。固定化する方法としては第1の実施の形態で説明したので省略する。
S3では,標的核酸配列19を含む検体サンプルと,発色関係物質の構成成分であるリガンド22(例えばビオチン標識dUTP)とを混合した混合液を調製する。
次に,S4では,標的核酸配列が一本鎖か,二本鎖かが判断され,NOであれば,S5において,検体サンプルを投入した反応系の温度を,標的核酸配列10の融解温度(melting temperature:Tm)以上,例えば90〜95℃に上昇させる。加熱時間は1〜10分程度が好ましい。これにより,2本鎖の標的核酸配列10を解離して1本鎖の標的核酸配列10にする。また,一本鎖であっても,複雑な二次構造等を形成している場合は,熱変性処理を行う。YESであれば,S6へ進む。S6では,基板16及び検体サンプルとリガンドの混合液を基板へ投入(滴下)する。
次に,S7では,第1の伸長反応工程と,第1の解離工程と,第1の架橋工程と,第2の伸長反応工程と,第2の解離工程と,第2の架橋工程と,繰返し架橋工程と,ハイブリダイゼーション工程と,網目状空間形成工程と,取込み工程と,を実施する。即ち,第1の伸長反応工程において,標的核酸配列19を鋳型とし,第1のオリゴヌクレオチド鎖24をプライマーとして伸長反応を行い,第1の解離工程において,伸長反応産物28を,標的核酸配列19と解離させ,第1の架橋工程において,第2のオリゴヌクレオチド鎖26と結合させ,架橋状態を形成させる。
次に,第2の伸長反応工程において,第2のオリゴヌクレオチド鎖26をプライマーとすると共に第1の伸長反応産物28を鋳型として伸長反応させ,第2の解離工程において,第2の伸長反応工程で伸長した第2の伸長反応産物36を,第1の伸長反応産物28から解離させ,第2の架橋工程において,前記第1のオリゴヌクレオチド鎖24とは別であり,かつ,同じ核酸配列の第1のオリゴヌクレオチド鎖24と結合させ,架橋状態を形成させる。その後,繰返し架橋工程において,第1及び第2のオリゴヌクレオチド鎖24,26,の間で第1と第2の架橋工程を繰り返させ,その後,ハイブリダイゼーション工程において,設定温度をオリゴヌクレオチド鎖のハイブリダイゼーション温度にし,基板16上に,より多くの架橋構造体を形成させる。これにより,基板16上に架橋構造体が多数絡み合った微細な網目状空間20が形成される(網目状空間形成工程)。
網目状空間20が形成された後は,第1の実施の形態と同様に,S8〜S12を実施することで,標的核酸配列19を高感度に検出することができる。
なお,S3において,標的核酸配列10とリンガド22の混合液を調製したが,リガンド22はS6とS7との間で投入してもよい。
[第3の実施形態]
上記説明した本発明の第2の実施形態では,第1及び第2の,2種類のオリゴヌクレオチド鎖24,26を用いることで説明したが,3種類以上のオリゴヌクレオチド鎖を使用することもできる。
上記説明した本発明の第2の実施形態では,第1及び第2の,2種類のオリゴヌクレオチド鎖24,26を用いることで説明したが,3種類以上のオリゴヌクレオチド鎖を使用することもできる。
例えば,3種類のオリゴヌクレオチド鎖の例で説明すると,第2の実施形態における第2の解離工程で解離した第2の伸長反応産物36が,該第2の伸長反応産物36と相補的な核酸配列を有するように設計された第3のオリゴヌクレオチド鎖に結合する。結合した後は,同様に伸長反応させ,伸長反応産物を解離し,第1のオリゴヌクレオチド鎖に結合し,基板16上に,架橋構造を形成する。これら第1から第3の繰返し架橋工程を経て微細な網目状空間を形成させる。
したがって,次々に解離される伸長反応産物と相補的な関係のオリゴヌクレオチド鎖を予め設計することで3種類以上のオリゴヌクレオチド鎖についても本発明の第2の実施形態を適用することができる。これが第3の実施形態である。
第3の実施形態において,基板16表面には,親水性ポリマーからなる層,及びアミノ基と反応する官能基が存在することが好ましい。これにより,伸長反応による2本鎖の伸長反応鎖が熱変性処理により解離し,解離した伸長反応産物が別のオリゴヌクレオチド鎖と結合して再び伸長反応する。
以下において,本発明の実施例により本発明を詳細に説明する。
[実施例1]
[核酸配列検出基板]
上述した第1及び第2の実施形態において,オリゴヌクレオチド鎖を基板に固定化した核酸配列検出基板を製作し,この核酸配列検出基板に,例えば標的核酸配列を含む検体サンプルをスポット(投入)するだけで,検体サンプル中に検出標的とする特定の標的核酸配列が存在するかを高感度で検出することができる。
[核酸配列検出基板]
上述した第1及び第2の実施形態において,オリゴヌクレオチド鎖を基板に固定化した核酸配列検出基板を製作し,この核酸配列検出基板に,例えば標的核酸配列を含む検体サンプルをスポット(投入)するだけで,検体サンプル中に検出標的とする特定の標的核酸配列が存在するかを高感度で検出することができる。
次に,本発明による第1の実施形態による検出方法の実施例を説明する。標的核酸配列としては,ノロウイスル固有の核酸配列を用い,この標的核酸配列を検出する例で説明する。
即ち,以下の手法により,標的核酸配列に対して相補的な一対のオリゴヌクレオチド鎖をプラスチック基板表面に固定化することで,検体サンプルとして標的核酸配列を投入した際に,基板上の一対のオリゴヌクレオチド鎖と結合し架橋状態の核酸配列構造を形成させ,その構造下に微細な網目状空間を作り出した。そして,その網目状空間に発色関係物質の構成成分であるリガンドを物理的な吸着作用で多量に取り込むことができ,これによって,標的核酸配列を高感度に検出した。
即ち,標的核酸配列を,ノロウイルスcDNAのPCR産物として実験を行った。このPCR産物は,ノロウイルスの構造蛋白質であるカプシド蛋白質をコードしている領域ORF2を対象とした。また,ノロウイルスはG1とG2の2つのグループに分けられるため,PCR産物は,G1とG2の2種類を準備して実験を行った。
(標的核酸配列の調整)
糞便をリン酸緩衝液に溶解し,10%乳剤を作製し,12,000rpmで冷却遠心後,遠心上清からRNAの抽出を行った。遠心上清を室温に戻し,RNA抽出精製キット(QIAamp Viral RNA Mini Kit(QIAGEN))を用いRNA抽出精製した。その後,RNA抽出液24μLに対し5倍濃縮したRT−PCR用Buffer3μL,滅菌水1μL,DNase(1U/μL)2μL(DNase I(タカラバイオ製))を加え,37℃−30分,75℃−5分を経て氷冷した。
糞便をリン酸緩衝液に溶解し,10%乳剤を作製し,12,000rpmで冷却遠心後,遠心上清からRNAの抽出を行った。遠心上清を室温に戻し,RNA抽出精製キット(QIAamp Viral RNA Mini Kit(QIAGEN))を用いRNA抽出精製した。その後,RNA抽出液24μLに対し5倍濃縮したRT−PCR用Buffer3μL,滅菌水1μL,DNase(1U/μL)2μL(DNase I(タカラバイオ製))を加え,37℃−30分,75℃−5分を経て氷冷した。
得られたRNAをランダムプライマー(Random Primer Hexamer(Amersham Pharmacia製))とRT反応キット(SuperScript II Reverse Transcriptase Rnase H− Reverse Transcriptase(Invitrogen製))を用いcDNAへ逆転写し(42℃−1時間(1サイクル),99℃−5分(1サイクル),4℃),そのcDNAを鋳型として,プライマー1(25μM)とプライマー2(25μM),プライマー3(25μM),プライマー4(25μM)と,DNAポリメラーゼ(Ex Taq(タカラバイオ製))とを用いたPCR反応(94℃−3分(1サイクル),94℃−1分,50℃−1分,72℃−2分(40サイクル),72℃−15分(1サイクル))によりG1のPCR産物,G2のPCR産物をそれぞれ準備し,電気泳動で増幅を確認し精製後,標的核酸配列として実験に用いた。
(使用したプラスチック基板)
プライマーを固定する基板といては種々の材料が知られており,プラスチック,金属,シリコン,ガラスなどがあるが,以下においてはプラスチック基板を用いた例を説明する。
プライマーを固定する基板といては種々の材料が知られており,プラスチック,金属,シリコン,ガラスなどがあるが,以下においてはプラスチック基板を用いた例を説明する。
市販のDNAアレイプラスチック基板(住友ベークライト製S−BIO(登録商標)PrimeSurface(登録商標))を実験に用いた。この基板は,実施の形態で述べた親水性ポリマーからなる層,及びアミノ基と反応する官能基を表面に有するプラスチック製の基板である。図7(A)〜(C)に示すように,横4(1〜4)×縦6(A〜F)の合計24箇所のスポット領域があり,各スポット領域で,各核酸配列の有無を評価した。本実験では,G1のPCR産物検出用スポット領域を12箇所,G2のPCR産物検出用スポット領域を12箇所のプラスチック基板を作製して使用した。
(オリゴヌクレオチド鎖の固定)
G1のPCR産物検出のため,下記に示す核酸配列で構成された一対のオリゴヌクレオチド鎖1及びオリゴヌクレオチド鎖2を合成した。それぞれのオリゴヌクレオチド鎖1,2は,G1のPCR産物と相補的な配列となるようにした。オリゴヌクレオチド鎖1は,5’末端がアミノ基で修飾されたヌクレオチド(20塩基鎖)であり,これを0.25M炭酸バッファ(pH9.0)で溶解し,1μMのオリゴヌクレオチド溶液を調製した。
G1のPCR産物検出のため,下記に示す核酸配列で構成された一対のオリゴヌクレオチド鎖1及びオリゴヌクレオチド鎖2を合成した。それぞれのオリゴヌクレオチド鎖1,2は,G1のPCR産物と相補的な配列となるようにした。オリゴヌクレオチド鎖1は,5’末端がアミノ基で修飾されたヌクレオチド(20塩基鎖)であり,これを0.25M炭酸バッファ(pH9.0)で溶解し,1μMのオリゴヌクレオチド溶液を調製した。
一方,オリゴヌクレオチド鎖2は,3’末端がアミノ基で修飾されたヌクレオチド(20塩基鎖)であり,これを0.25M炭酸バッファ(pH9.0)で溶解し,1μMのオリゴヌクレオチド溶液を調製した。
そして,オリゴヌクレオチド鎖1の溶液と,オリゴヌクレオチド鎖2の溶液とを混合し,スポッタ(日立ソフトウェア−エンジニアリング製Marks−I)を用い,100μm径クロスカットピンでプラスチック基板の表面上にスポットした。即ち,図7(C)に示すプラスチック基板の横1〜4×縦A〜Cで区画される12個のスポット領域にスポットした(スポット領域1〜12)。そして,オリゴヌクレオチド鎖をスポットした各基板を,80℃で1時間加熱して,各オリゴヌクレオチド鎖を固定化させた。
また,G2のPCR産物検出のため,下記に示す核酸配列のオリゴヌクレオチド鎖3及びオリゴヌクレオチド鎖4を合成した。それぞれのオリゴヌクレオチド鎖3,4は,G2のPCR産物と相補的な配列となるようにした。オリゴヌクレオチド鎖3は,5’末端がアミノ基で修飾されたヌクレオチド(20塩基鎖)であり,これを0.25M炭酸バッファ(pH9.0)で溶解し,1μMのオリゴヌクレオチド溶液を調製した。
一方,オリゴヌクレオチド鎖4は,3’末端がアミノ基で修飾されたヌクレオチド(23塩基鎖)であり,これを0.25M炭酸バッファ(pH9.0)で溶解し,1μMのオリゴヌクレオチド溶液を調製した。
そして,オリゴヌクレオチド鎖3の溶液と,オリゴヌクレオチド鎖4の溶液とを混合し,スポッタ(日立ソフトウェア−エンジニアリング製Marks−I)を用い,100μm径クロスカットピンでプラスチック基板の表面上にスポットした。即ち,図7(B)に示すプラスチック基板の横1〜4×縦D〜Fで区画される12個のスポット領域にスポットした(スポット領域13〜24)。そして,オリゴヌクレオチド鎖をスポットした各基板を,80℃で1時間加熱して,各オリゴヌクレオチド鎖を固定化させた。
上記したG1及びG2のPCR産物を調製したときのプライマー1〜4の核酸配列,及びプラスチック基板に固定化したオリゴヌクレオチド鎖1〜4の核酸配列は次のとおりである。
・プライマー1(COG1F):5’−CGYTGGATGCGNTTYCATGA−3’
・プライマー2(G1−SKR):5’−CCAACCCARCCATTRTACA−3’
・プライマー3(COG2F):5’−CARGARBCNATGTTYAGRTGGATGAG−3’
・プライマー4(G2−SKR):5’−CCRCCNGCATRHCCRTTRTACAT−3’
・オリゴヌクレオチド鎖1(G1SKF):5’−CTGCCCGAATTYGTAAATGA−3’
・オリゴヌクレオチド鎖2(G1−1’):5’−CCAACAAACATGGATGGCAC−3’
・オリゴヌクレオチド鎖3(RING2AL−TP):5’−TGGGAGGGSGATCGCRATCT−3’
・オリゴヌクレオチド鎖4(G2SKRrc)5’−ATGTAYAAYGGDYATGCNGGYGG−3’
上記核酸配列において,AGCT以外の記号はIUB Codes(Codes of International Union of Biochemistry)に従い,R=A or G;B=C,G or T;Y=C or T;D=A,G or T;K=G or T;H=A,C or T;M=A or C;V=A,C or G;S=G or C;W=A or T;N=any baseである。
・プライマー1(COG1F):5’−CGYTGGATGCGNTTYCATGA−3’
・プライマー2(G1−SKR):5’−CCAACCCARCCATTRTACA−3’
・プライマー3(COG2F):5’−CARGARBCNATGTTYAGRTGGATGAG−3’
・プライマー4(G2−SKR):5’−CCRCCNGCATRHCCRTTRTACAT−3’
・オリゴヌクレオチド鎖1(G1SKF):5’−CTGCCCGAATTYGTAAATGA−3’
・オリゴヌクレオチド鎖2(G1−1’):5’−CCAACAAACATGGATGGCAC−3’
・オリゴヌクレオチド鎖3(RING2AL−TP):5’−TGGGAGGGSGATCGCRATCT−3’
・オリゴヌクレオチド鎖4(G2SKRrc)5’−ATGTAYAAYGGDYATGCNGGYGG−3’
上記核酸配列において,AGCT以外の記号はIUB Codes(Codes of International Union of Biochemistry)に従い,R=A or G;B=C,G or T;Y=C or T;D=A,G or T;K=G or T;H=A,C or T;M=A or C;V=A,C or G;S=G or C;W=A or T;N=any baseである。
(ハイブリダイゼーション)
上記の如く一対のオリゴヌクレオチド鎖(オリゴヌクレオチド鎖1とオリゴヌクレオチド鎖2の一対,オリゴヌクレオチド鎖3とオリゴヌクレオチド鎖4の一対)を固定化したプラスチック基板に,準備した標的核酸配列を59μmと,ハイブリバッファを13μLと,8μLのビオチンを混合した混合液を投入した。
上記の如く一対のオリゴヌクレオチド鎖(オリゴヌクレオチド鎖1とオリゴヌクレオチド鎖2の一対,オリゴヌクレオチド鎖3とオリゴヌクレオチド鎖4の一対)を固定化したプラスチック基板に,準備した標的核酸配列を59μmと,ハイブリバッファを13μLと,8μLのビオチンを混合した混合液を投入した。
尚,図7(A)の基板は,上記の如く各オリゴヌクレオチド鎖を固定化した基板に,標的核酸配列を含まない検体サンプルを投入した場合である。
そして,基板上の反応系を95℃,8分間の加熱条件で加熱することにより,標的核酸配列の2本鎖を熱変性して解離させて1本鎖にし,更に反応系を54℃に保ち,90分間ハイブリダイズさせた。
次に,洗浄後,0.01mg/mLのアルカリフォスファターゼ標識ストレフトアビジンを基板上へ投入し,カバーガラスで覆い,反応系を37℃で30分反応させた。その後,洗浄を行い,BCIP/NBT(BCIP/NBT Phosphatase Substrate(1−Component System)(KPL))発色試薬中に基板を浸漬し,37℃で30分間反応させて洗浄し,青紫色のスポットを発色させた。発色画像はイメージスキャナ(キヤノン製,PIXUS MP470)でパソコンへ取り込み,画像解析ソフト(住友ベークライト製,誰でもDNAアレイ解析ソフト)で発色強度を数値化した。発色画像を図7に示す。また,数値化結果の平均S/N比(Signal to Noise Ratio)を式1から求め,図8の表1に示す。
S/N比 = S/(S+N) ・・・・式1
S/N:非測定時に対する測定時の発色強度の比率;最大値1.0
S:測定時の発色シグナル強度
N:非測定時の発色ノイズ強度
その結果,G1のPCR産物を標的核酸配列とした場合,図7(C)から分かるように,スポット領域1〜12のみが発色した。一方,G2のPCR産物を標的核酸配列とした場合,図7(B)から分かるように,スポット領域13〜24のみが発色した。
S/N:非測定時に対する測定時の発色強度の比率;最大値1.0
S:測定時の発色シグナル強度
N:非測定時の発色ノイズ強度
その結果,G1のPCR産物を標的核酸配列とした場合,図7(C)から分かるように,スポット領域1〜12のみが発色した。一方,G2のPCR産物を標的核酸配列とした場合,図7(B)から分かるように,スポット領域13〜24のみが発色した。
比較対象としてPCR産物(標的核酸配列)を加えなかった場合は,図7(A)から分かるように,オリゴヌクレオチド鎖1,2を固定化した場合,及びオリゴヌクレオチド鎖3,4を固定化した場合のいずれについても発色が得られなかった。
尚,図示しなかったが,DNAアレイプラスチック基板のオリゴヌクレオチド鎖の固定において,G1のPCR産物検出の為のスポットがオリゴヌクレオチド鎖1のみ(スポット領域1〜6),オリゴヌクレオチド鎖2のみ(スポット領域7〜12),G2のPCR産物検出の為のスポットがオリゴヌクレオチド鎖3のみ(スポット領域13〜18),オリゴヌクレオチド鎖4のみ(スポット領域19〜24)のものを18枚作製した。そして,G1のPCR産物,G2のPCR産物をそれぞれ6枚ずつ前記方法でハイブリダイズさせ,同時にビオチンを投入し,洗浄後,アルカリフォスファターゼ標識アビジンを基板上へ投入し,カバーガラスで覆い37℃で30分放置した後,洗浄を行い,BCIP/NBT発色試薬中に基板を浸漬し,37℃で30分間反応させ洗浄し,青紫色のスポットを発色させた。
発色画像はイメージスキャナ(キヤノン製,PIXUS MP470)でパソコンへ取り込み,画像解析ソフト(住友ベークライト製,誰でもDNAアレイ解析ソフト)で発色強度を数値化した。
その結果,スポット領域1〜24のいずれにおいても発色は確認されず,比較対象としてPCR産物を加えなかった6枚のDNAアレイプラスチック基板においても,発色が得られなかった。
また,図8の表1から分かるように,図7(C)のスポット1〜12に示したG1のPCR産物の発色シグナル強度(S)の平均値と,図7(A)での発色ノイズ強度(N)の平均値との,S/N比は0.97と極めて高感度な検出を行うことができた。
同様に,図7(B)のスポット13〜24に示したG2のPCR産物の発色シグナル(S)の平均値と,図7(A)での発色ノイズ(N)の平均値とのS/N比は0.98と極めて高感度な検出を行うことができた。
[実施例2]
次に,本発明における第2の実施形態の検出方法による実施例を説明する。標的核酸配列としては,実施例1と同様に,ノロウイスル固有の核酸配列を標的核酸配列として検出する例で説明する。
[実施例2]
次に,本発明における第2の実施形態の検出方法による実施例を説明する。標的核酸配列としては,実施例1と同様に,ノロウイスル固有の核酸配列を標的核酸配列として検出する例で説明する。
即ち,以下の手法により基板表面に5’末端を固定化したオリゴヌクレオチド鎖1に標的核酸配列をハイブリダイズさせ,前記オリゴヌクレオチド鎖1をプライマーとし,標的核酸配列が第1の鋳型鎖となる核酸伸長反応により第1の伸長反応鎖を形成し,前記第1の鋳型鎖の5’末端側と解離した第1の伸長反応鎖の3’末端側核酸配列が,基板表面に5’末端を固定化したオリゴヌクレオチド鎖2にハイブリダイズし第1の架橋構造を形成する。
そして,オリゴヌクレオチド鎖2をプライマーとし,第1の伸長反応鎖が第2の鋳型鎖となる第2の伸長反応鎖を形成し,前記オリゴヌクレオチド鎖1側と解離した前記第2の伸長反応鎖の3’末端側核酸配列が,前記オリゴヌクレオチド鎖1とは異なるが同じ配列のオリゴヌクレオチド鎖1−1(前記基板表面に5’末端を固定化)にハイブリダイズし第2の架橋構造を形成する。そして,このオリゴヌクレオチド鎖1−1をプライマーとし,前記第2の伸長反応鎖が第3の鋳型鎖となる第3の伸長反応鎖を形成し,前記オリゴヌクレオチド鎖2側と解離した前記第3の伸長反応鎖の3’末端側核酸配列が,前記オリゴヌクレオチド鎖2とは異なるが同じ配列のオリゴヌクレオチド鎖2−1(前記基板表面に5’末端を固定化)にハイブリダイズし第3の架橋構造を形成する。これを繰り返すことで基板上に微細な網目状空間を作り出し,該網目状空間にリガンドを物理的な吸着効果により取り込み,リガンドに反応する活性物質を用いることで,標的核酸配列を検出した。
(標的核酸配列の調整)
実施例1の調製方法で調整したノロウイルスcDNAのG1のPCR産物,G2のPCR産物をそれぞれ準備し精製後,100,101,102,104,106,108copies/μLとなるよう濃度調整し,標的核酸配列として実験に用いた。
実施例1の調製方法で調整したノロウイルスcDNAのG1のPCR産物,G2のPCR産物をそれぞれ準備し精製後,100,101,102,104,106,108copies/μLとなるよう濃度調整し,標的核酸配列として実験に用いた。
(プラスチック基板)
実施例1で示した市販のプラスチック基板のMPEX法対応基板を使用し,基板表面へ各種オリゴヌクレオチド鎖の一端を固定化し,実験に用いた。
実施例1で示した市販のプラスチック基板のMPEX法対応基板を使用し,基板表面へ各種オリゴヌクレオチド鎖の一端を固定化し,実験に用いた。
(比較評価)
実施例2における検出の比較対照として,実施例1での検出を同様に行った。また,バックグラウンドとしては,滅菌水を添加したもので実施した。
(オリゴヌクレオチド鎖の固定)
実施例2では,G1のPCR産物検出の為,下記に示すオリゴヌクレオチド鎖5及びオリゴヌクレオチド鎖6を合成した。オリゴヌクレオチド鎖5は,G1のPCR産物と相補的な配列となるようにした。また,オリゴヌクレオチド鎖5は,5’末端がアミノ基で修飾されたヌクレオチド(20塩基鎖)であり,これを0.25M炭酸バッファ(pH9.0)を用いて溶解し,1μMのオリゴヌクレオチド溶液を調製した。
実施例2における検出の比較対照として,実施例1での検出を同様に行った。また,バックグラウンドとしては,滅菌水を添加したもので実施した。
(オリゴヌクレオチド鎖の固定)
実施例2では,G1のPCR産物検出の為,下記に示すオリゴヌクレオチド鎖5及びオリゴヌクレオチド鎖6を合成した。オリゴヌクレオチド鎖5は,G1のPCR産物と相補的な配列となるようにした。また,オリゴヌクレオチド鎖5は,5’末端がアミノ基で修飾されたヌクレオチド(20塩基鎖)であり,これを0.25M炭酸バッファ(pH9.0)を用いて溶解し,1μMのオリゴヌクレオチド溶液を調製した。
一方,オリゴヌクレオチド鎖6も5’末端がアミノ基で修飾されたヌクレオチド(19塩基鎖)であり,これを0.25M炭酸バッファ(pH9.0)を用いて溶解し,1μMのオリゴヌクレオチド溶液を調製した。
また,G2のPCR産物検出の為,オリゴヌクレオチド鎖7及びオリゴヌクレオチド鎖8を合成した。オリゴヌクレオチド鎖7は,G2のPCR産物と相補的な配列となるようにした。また,オリゴヌクレオチド鎖7は,5’末端がアミノ基で修飾されたヌクレオチド(26塩基鎖)であり,これを0.25M炭酸バッファ(pH9.0)を用いて溶解し,1μMのオリゴヌクレオチド溶液を調製した。
一方,オリゴヌクレオチド鎖8も5’末端がアミノ基で修飾されたヌクレオチド(20塩基鎖)であり,これを0.25M炭酸バッファ(pH9.0)を用いて溶解し,1μMのオリゴヌクレオチド溶液を調製した。
そして,実施例2では,前記のオリゴヌクレオチド鎖5とオリゴヌクレオチド鎖6の溶液を混合し,スポッタ(日立ソフトウェアーエンジニアリング製Marks−I)を用い100μm径クロスカットピンでプラスチック基板の表面上にスポットした(スポット領域1〜8)。同様に前記のオリゴヌクレオチド鎖5とオリゴヌクレオチド鎖6の溶液を混合し,プラスチック基板の表面上にスポットした(スポット領域9〜16)。スポット領域17〜24には0.25M炭酸バッファ(pH9.0)をスポットした。上記の基板を基板2とした。基板の配置図は示さないが,図7と同様である。
一方,比較対照である実施例1も同様に,オリゴヌクレオチド鎖1と2の混合液をプラスチック基板の表面上にスポットし(スポット領域1〜8),オリゴヌクレオチド3と4の混合液もプラスチック基板の表面上にスポットした(スポット領域9〜16)。スポット領域17〜24には0.25M炭酸バッファ(pH9.0)をスポットした。上記の基板を基板1とした。
そして,基板2と基板1のそれぞれを,80℃で1時間加熱して,各オリゴヌクレオチド鎖を固定化させた。
上記したプラスチック基板に固定化したオリゴヌクレオチド鎖5〜8の核酸配列は次のとおりである。
・オリゴヌクレオチド鎖5(RING1−TP(a)):5’−AGATYGCGATCYCCTGTCCA−3’
・オリゴヌクレオチド鎖6(G1SKR):5’−CCAACCCARCCATTRTACA−3’
・オリゴヌクレオチド鎖7(COG2F):5’−CARGARBCNATGTTYAGRTGGATGAG−3’
・オリゴヌクレオチド鎖8(RING2AL−TP rc):5’−AGATYGCGATCWCCCTCCCA−3’
上記核酸配列のAGCT以外の記号は,IUB Codes(Codes of International Union of Biochemistry)に従い,その内容は,R=A or G ; B=C, G or T ; Y=C or T ; D=A, G or T ; K=G or T ; H=A, C or T ; M=A. or C ; V=A, C or G ; S=G or C ; W=A or T ; N=any baseである。
・オリゴヌクレオチド鎖5(RING1−TP(a)):5’−AGATYGCGATCYCCTGTCCA−3’
・オリゴヌクレオチド鎖6(G1SKR):5’−CCAACCCARCCATTRTACA−3’
・オリゴヌクレオチド鎖7(COG2F):5’−CARGARBCNATGTTYAGRTGGATGAG−3’
・オリゴヌクレオチド鎖8(RING2AL−TP rc):5’−AGATYGCGATCWCCCTCCCA−3’
上記核酸配列のAGCT以外の記号は,IUB Codes(Codes of International Union of Biochemistry)に従い,その内容は,R=A or G ; B=C, G or T ; Y=C or T ; D=A, G or T ; K=G or T ; H=A, C or T ; M=A. or C ; V=A, C or G ; S=G or C ; W=A or T ; N=any baseである。
そして,基板2に,Tris−HCl(pH8.0);20mM,KCl;10mM,(NH4)2SO4;8mM,Triton X−100;0.10%,betain;0.8M,dNTPs(ビオチン標識−dUTP);5.6mM(各1.4mM),Bst DNA poLymerase;25.6U,標的核酸配列;0〜108 copies/μLとなるように混合した混合液を80μL投入した。
次に,基板上にカバーガラスをかけ,200μLの0.25Mリン酸バッファ(pH8.5)で内部を湿らせた密閉容器(10cm×15cm×3cm)中において,65℃で90分間反応させた。
次に,カバーガラスをはずして洗浄後,0.01mg/mL濃度のアルカリフォスファターゼ標識ストレプトアビジンを8μL,10×MPEXバッファAを8.0μL,2×MPEXバッファBを40μL,滅菌水を24μLの割合で混合した混合液をプラスチック基板へ投入した。
次に,カバーガラスをかけ,200μLの0.25Mリン酸バッファ(pH8.5)で内部を湿らせた密閉容器(10cm×15cm×3cm)中において,37℃で30分間反応させた。それから基板を洗浄後,BCIP/NBT溶液(BCIP/NBT Phosphatase Substrate(1−Component System)(KPL製))に浸漬し,37℃で30分間反応させてから基板を洗浄し,青紫色のスポットを発色させた。
発色画像はイメージスキャナ(キヤノン製,PIXUS MP470)でパソコンへ取り込み,画像解析ソフト(住友ベークライト製,誰でもDNAアレイ解析ソフト)で発色を検出し,強度を数値化した。
基板1についての検出方法は,実施例1と同様に行った。
上記検出した発色を,標的核酸配列の濃度が0,100,101,102,104,106,108copies/μLの7水準の濃度について実施した(0copies/μLはバックグラウンド)。
そして,実施例2と実施例1での上記各濃度における発色シグナル量を比較した。比較結果を図9に示す。その結果,図9から分かるように,実施例1の基板1を用いた結果では,G1及びG2それぞれの標的核酸配列を検出する為には標的核酸配列濃度が108copies/μL以上が特に好ましいことが分かった。
これに対して,実施例2の基板2を用いた結果では,G1及びG2それぞれの標的核酸配列を検出する為には標的核酸配列濃度が1copies/μL以上あれば十分であり,極めて低濃度の標的核酸配列であっても検出が可能であることを確認した。
10…標的核酸配列,12…オリゴヌクレオチド鎖,14…オリゴヌクレオチド鎖,16…基板,18…架橋体,20…網目状空間,22…リガンド,24…第1のオリゴヌクレオチド鎖,26…第2のオリゴヌクレオチド鎖,28…第1の伸長反応産物,30…第1の伸長反応鎖(2本鎖),34…第2の伸長反応鎖(2本鎖),36…第2の伸長反応産物
Claims (18)
- 標的核酸配列に対して相補的または相同的な核酸配列を有する一対のオリゴヌクレオチド鎖の3’末端または5’末端を基板上に固定化した前記一対のオリゴヌクレオチド鎖と前記標的核酸配列の相補的部分を結合させ微細な網目状空間を有する架橋構造体を形成する工程と,
前記架橋構造体を形成する核酸配列に発光又は発色物質を取り込み,又は前記網目状空間にリガンドを取り込む工程と,
前記取り込んだ発光又は発色物質に反応する活性物質を用いて発色又は発光させる工程と,
前記発色又は発光信号を検出することにより前記標的核酸配列を検出する検出工程と,を備えたことを特徴とする核酸配列の検出方法。 - 前記標的核酸は隣接する固定化オリゴヌクレオチド鎖の距離同程度の長さを有する請求項1記載の核酸検出方法。
- 基板表面に5’末端又は3’を固定化したオリゴヌクレオチド鎖1に標的核酸配列をハイブリダイズする工程1と,
前記オリゴヌクレオチド鎖1をプライマーとし,標的核酸配列が第1の鋳型鎖となる核酸伸長反応により第1の伸長反応鎖を形成する工程2と,
前記第1の鋳型鎖の5’末端側と解離した第1の伸長反応鎖の3’末端側核酸配列が,基板表面に5’末端を固定化したオリゴヌクレオチド鎖2にハイブリダイズする工程3と,
前記オリゴヌクレオチド鎖2をプライマーとし,前記第1の伸長反応鎖が第2の鋳型鎖となる鎖置換型核酸伸長反応により第2の伸長反応鎖を形成する工程4と,
前記オリゴヌクレオチド鎖1側と解離した,前記第2の伸長反応鎖の3’末端側核酸配列が,前記基板表面に5’末端又は3’末端を固定化したオリゴヌクレオチド鎖3にハイブリダイズする工程5と,
前記オリゴヌクレオチド鎖3をプライマーとし,前記第2の伸長反応鎖が第3の鋳型鎖となる鎖置換型核酸伸長反応により第3の伸長反応鎖を形成する工程6と,
前記オリゴヌクレオチド鎖2側と解離した前記第3の伸長反応鎖の3’末端側核酸配列が,基板表面に5’末端または3’末端を固定化したオリゴヌクレオチド鎖4にハイブリダイズしてブリッジを形成する工程7と,
前記ブリッジ又はそのブリッジによって形成される空間内に発色又は発光物質を存在させる工程と
を有する核酸検出方法。 - 前記オリゴヌクレオチド鎖が5種類以上有り,前記工程7の後に工程4,5,6及び7を複数回繰り返すことを特徴とする請求項3の記載の核酸検出方法。
- 前記オリゴヌクレオチド鎖1および前記オリゴヌクレオチド鎖3の配列が同じであり,前記オリゴヌクレオチド鎖2および前記オリゴヌクレオチド鎖4の配列が同じであることを特徴とする請求項3記載の核酸検出方法。
- 前記伸長反応後に昇温処理することで,前記伸長反応鎖と前記鋳型を,鎖置換反応を用いずに解離させることを特徴とする請求項3,4及び5のいずれかに記載の核酸検出方法。
- 前記核酸伸長反応の基質となるdNTPに予めリガンドを修飾し,伸長反応産物である前記第1の鋳型鎖および第1の非鋳型鎖にリガンドを取り込み,このリガンドに活性物質を反応させることを特徴とする請求項1又は3〜6のいずれかに記載の核酸検出方法。
- 前記工程3,5及び7のハイブリダイゼーションにより,前記基板表面に架橋状態の核酸配列構造を形成させることにより微細な網目状空間を形成し,該空間へリガンドを取り込み,このリガンドに活性物質を反応させて伸長反応産物を検出することを特徴とする請求項3〜7のいずれかに記載の核酸検出方法。
- 前記リガンドがビオチン,アビジン,ストレプトアビジン,抗原,抗体,オリゴヌクレオチド,酵素よりなる群から選ばれた何れかである請求項7又は8に記載の核酸検出方法。
- 前記リガンドがビオチン化酵素,アビジン化酵素,ストレプトアビジン化酵素,酵素標識抗体,酵素標識オリゴヌクレオチドよりなる群から選ばれた何れかである請求項7又は8に記載の核酸検出方法。
- 前記リガンドに反応する活性物質が,酵素標識レセプター,蛍光物質標識レセプター及び基質よりなる群から選ばれた何れかであることを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載の核酸配列検出方法。
- 前記リガンドと前記活性物質を反応させることで発色もしくは発光信号を得ることを特徴とする請求項7〜11のいずれかに記載の核酸配列検出方法。
- 請求項3に記載の前記核酸伸長反応の基質となるdNTPに予め蛍光物質,またはラジオアイソトープを修飾し,伸長反応産物である前記鋳型鎖および非鋳型鎖に蛍光物質,またはラジオアイソトープを取り込み,この蛍光物質またはラジオアイソトープを活性化させ発光もしくは感光させることで伸長反応産物を検出することを特徴とする核酸検出方法。
- 基板表面に5’末端又は3’を固定化したオリゴヌクレオチド鎖1に標的核酸配列をハイブリダイズする工程1と,
リガンド修飾したdNTPの存在下で、前記オリゴヌクレオチド鎖1をプライマーとし,標的核酸配列が第1の鋳型鎖となる核酸伸長反応により第1の伸長反応鎖を形成するとともにリガンドを取り込む工程2と,
前記第1の鋳型鎖の5’末端側と解離した第1の伸長反応鎖の3’末端側核酸配列が,基板表面に5’末端を固定化したオリゴヌクレオチド鎖2にハイブリダイズする工程3と,
前記オリゴヌクレオチド鎖2をプライマーとし,前記第1の伸長反応鎖が第2の鋳型鎖となる鎖置換型核酸伸長反応により第2の伸長反応鎖を形成する工程4と,
前記オリゴヌクレオチド鎖1側と解離した,前記第2の伸長反応鎖の3’末端側核酸配列が,前記基板表面に5’末端又は3’末端を固定化したオリゴヌクレオチド鎖3にハイブリダイズする工程5と,
前記オリゴヌクレオチド鎖3をプライマーとし,前記第2の伸長反応鎖が第3の鋳型鎖となる鎖置換型核酸伸長反応により第3の伸長反応鎖を形成する工程6と,
オリゴヌクレオチド鎖と標的核酸の相補部分を結合させた後,前記リガンドに活性物質を反応させ発色又は発光させ,これを検出することを特徴とする核酸検出方法。 - 基板上に,標的核酸配列に対して相補的な核酸配列を含む多数のオリゴヌクレオチド鎖と相同的な核酸配列を含む多数のオリゴヌクレオチド鎖の5’末端又は3’末端が固定化され、該オリゴヌクレオチド鎖にリガンドが取り込まれていることを特徴とする核酸配列検出用基板。
- 基板上に,標的核酸配列に対して相補的な核酸配列を含む多数のオリゴヌクレオチド鎖と相同的な核酸配列を含む多数のオリゴヌクレオチド鎖の5’末端が固定化され,オリゴヌクレオチド鎖の伸長反応生産物にリガンドを含有することを特徴とする請求項15記載の核酸配列検出用基板。
- 基板上に,標的核酸配列に対して相補的な核酸配列を含む多数のオリゴヌクレオチド鎖と相同的な核酸配列を含む多数のオリゴヌクレオチド鎖の5’末端固定化され,オリゴヌクレオチド鎖の伸長反応生産物が他方オリゴヌクレオチド鎖に架橋してその空間内にリガンドが取り込まれていることを特徴とする請求項15又は16記載の核酸配列検出用基板。
- 前記伸長反応生産物が基板上で架橋していることを特徴とする請求項15〜17のいずれかに記載の核酸配列検出用基板。
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JPH10505492A (ja) * | 1994-08-03 | 1998-06-02 | モザイク・テクノロジーズ・インコーポレイテッド | 担体上で核酸の増幅を行う方法および装置 |
JP2006500954A (ja) * | 2002-10-01 | 2006-01-12 | ニンブルゲン システムズ インコーポレイテッド | 単一のアレイ特徴部に複数のオリゴヌクレオチドを有するマイクロアレイ |
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2008
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