[トラクタの全体構成]
図1〜図6に基づいて作業車の一例としてのトラクタの全体構成について説明する。図1は、トラクタの全体左側面図であり、図2は、ステアリング装置12の構造を示す概略図である。図3は、運転部4付近の平面図であり、図4は、トラクタの伝動構成を示す概略平面図である。図5は、伝動切換装置26及びサイドブレーキ41の操作構造を示す概略図であり、図6は、トラクタの制御装置50のブロック図である。
図1に示すように、車体1の前部にエンジン19が配設されており、車体1の前部及び後部に左右一対の操向自在な前輪2及び左右一対の後輪3が配設されて、運転部4の運転座席5に着座した運転者の操縦ハンドル6の操作に従ってトラクタが走行及び旋回するように構成されている。
車体1の後部にはミッションケース7が配設されている。ミッションケース7の後部上部には、左右一対のリフトアーム8が左右向きの軸心周りで上下揺動可能に連係されており、ミッションケース7の後部には、昇降リンク機構9を介してロータリ作業装置Rが連結されている。
昇降リンク機構9は、上部リンク9aと、左右一対の下部リンク9bとを備えて構成されており、昇降リンク機構9の下部リンク9bとリフトアーム8とに亘って連係リンク9cが連係されている。
ミッションケース7の上部には、リフトアーム8に連係された油圧式の昇降シリンダ10が内装されており、この昇降シリンダ10を操作することによってリフトアーム8を上下に揺動操作して、昇降リンク機構9の下部リンク9bの後端部に連結したロータリ作業装置Rを昇降駆動できるように構成されている。ロータリ作業装置Rには、ロータリ作業装置Rおける耕深の変動に伴って上下揺動する後部カバーRaが装備されている。
ミッションケース7の後部にエンジン19からの動力を取り出す後向きのPTO軸11が設けられており、このPTO軸11にロータリ作業装置Rを連動連結することで、ロータリ作業装置Rのロータリを回転駆動できるように構成されている。
昇降シリンダ10は油圧シリンダで構成されており、後述する制御装置50に接続された3位置切換式の電磁式である昇降制御弁47を介して(図6参照)、エンジン19からの動力により回転駆動する油圧ポンプ(図示せず)に接続されている。これにより、昇降制御弁47を上昇位置に操作することで、昇降シリンダ10を伸長させてロータリ作業装置Rを上昇させることができ、昇降制御弁47を下降位置に操作することで、昇降シリンダ10を短縮させてロータリ作業装置Rを下降させることができる。なお、昇降制御弁47を中立位置に操作することで、上昇又は下降させたロータリ作業装置Rの位置を保持できる。
図2に示すように、ステアリング装置12は、パワーシリンダ13と、操作バルブ14と、メータリングポンプ18とを備えて構成されている。なお、ステアリング装置12として異なる構成を採用してもよく、パワーシリンダ13等による油圧式のステアリング装置12ではなく、パワーシリンダ13を備えていないパワステ仕様ではないステアリング装置12や、パワーシリンダ13以外のアクチュエータを備えたステアリング装置12を採用してもよい。
パワーシリンダ13は左右の前輪2のナックルアーム2aに連動連結されており、このパワーシリンダ13が、操作バルブ14及び油圧回路15を介して、エンジン19に連動連結された油圧ポンプ16に接続されている。操作バルブ14には油圧回路17を介してメータリングポンプ18が接続されており、このメータリングポンプ18の入力軸18aが操縦ハンドル6のハンドル操作軸6aに連動連結されている。
これにより、操縦ハンドル6を操作して、メータリングポンプ18の入力軸18aが回転すると、この入力軸18aの操作量に応じて操作バルブ14が操作され、操作バルブ14からパワーシリンダ13に圧油が供給されて、パワーシリンダ13の作動により左右の前輪2を操縦ハンドル6の回転方向に応じた操向方向に、かつ、メータリングポンプ18の入力軸18aの操作量に応じた切れ角でナックルアーム2aを揺動操作する。そして、車体1を操縦ハンドル6の操作方向に対応する走行方向に、操縦ハンドル6の操作量に応じて走行するように操向操作する。
図4に示すように、エンジン19からの動力は主クラッチ20を介してミッションケース7の内部に備えたギア式の主変速装置21に伝達されている。主変速装置21によって変速された走行用の動力は、前後進切換装置22、及びギア式の副変速装置23を介して前輪伝動系24及び後輪伝動系25に伝達されている。
前輪伝動系24に伝達された動力は、伝動切換装置26及び前輪用の差動機構27を介して左右の前輪2に伝達されており、後輪伝動系25に伝達された動力は、後輪用の差動機構28を介して左右の後輪3に伝達されている。
主変速装置21からの動力の一部は、変速されずにPTOクラッチ29に伝達されており、このPTOクラッチ29からの動力がPTO変速装置30を介してミッションケース7の後部に装備されたPTO軸11に伝達されている。これにより、PTO軸11に連動連結されたロータリ作業装置Rのロータリが回転駆動されるように構成されている。
図3及び図4に示すように、主クラッチ20は、運転部4に装備されたクラッチペダル31と連係されており、このクラッチペダル31を踏み込むことで、主クラッチ20を入り側から切り側に操作できる。これにより、主クラッチ20を切り側に操作することで、主変速装置21側への動力の伝達を遮断できる。
主変速装置21は、運転座席5の左側部に配設された主変速レバー32に連係されている。主変速レバー32は、その揺動操作により操作位置が、前進側の複数の前進変速位置(又は後進側の複数の後進変速位置)と、前進中立位置(又は後進中立位置)とに切換自在に構成されており、主変速レバー32の操作位置に応じた変速状態に主変速装置21の状態が切り換わる。
副変速装置23は、主変速レバー32の後方に配設された副変速レバー33に連係されており、この副変速レバー33の揺動操作により、副変速レバー33の操作位置に応じた変速状態に切り換わる。
PTO変速装置30は、副変速レバー33の横外側に配設されたPTO変速レバー34に連係されており、このPTO変速レバー34の揺動操作により、PTO変速レバー34の操作位置に応じた変速状態に切り換わる。
前後進切換装置22は、操縦ハンドル6の左側部に配設されたシャトルレバー(前後進切換レバー)35に連係されている。シャトルレバー35は、その揺動操作により操作位置が、前進位置と、後進位置とに切り換え自在に構成されており、前進位置と後進位置との間の中立位置に中立付勢されている。これにより、シャトルレバー35を中立位置から前進位置に操作すると、前後進切換装置22が前進状態に切り換えられ、シャトルレバー35を中立位置から後進位置に操作すると、前後進切換装置22が後進状態に切り換えられる。
これにより、シャトルレバー35を前進位置に操作して、主変速レバー32を操作することで、主変速レバー32の前進変速位置に応じた変速状態で、車体1を前進させることができ、主変速レバー32を前進中立位置に操作することで、車体1を停止させることができる。シャトルレバー35を後進位置に操作して、主変速レバー32を操作することで、主変速レバー32の後進変速位置に応じた変速状態で、車体1を後進させることができ、主変速レバー32を後進中立位置に操作することで、車体1を停止させることができる。
なお、この実施形態におけるトラクタでは、主変速装置21としてギア式の変速装置を採用した例を示したが、主変速装置21を静油圧式無段変速装置(HST,図示せず)で構成してもよい。この場合、上述したシャトルレバー35及び前後進切換装置22を廃止し、上述した主変速レバー32に代えて静油圧式無段変速装置の前進位置、中立位置、及び後進位置を切り換えるHSTレバー(図示せず)を備えて、このHSTレバーの揺動操作により、車体1の前後進速度を無段階で変速するように構成してもよい。
図4及び図5に示すように、伝動切換装置26には、副変速装置23から左右の前輪2への動力の伝動を断接する第1及び第2クラッチ36,37を介して、ギア式の第1及び第2伝動機構38,39が装備されている。第1及び第2クラッチ36,37は、多板式の油圧クラッチで構成されており、後述する制御装置50に接続された3位置切換式の電磁弁である前輪状態切換弁40を介して、エンジン19からの動力により回転駆動する油圧ポンプ(図示せず)に接続されている。
前輪状態切換弁40を操作して、第1クラッチ36及び第1伝動機構38を介して左右の前輪2に動力を伝達すると、伝動切換装置26の状態が前輪駆動状態に切り換えられて、左右の前輪2の周速度が左右の後輪3の周速度と略同じ速度になるように回転駆動される。
前輪状態切換弁40を操作して、第2クラッチ37及び第2伝動機構39を介して左右の前輪2に動力を伝達すると、伝動切換装置26の状態が前輪増速状態に切り換えられて、左右の前輪2の周速度が左右の後輪3の周速度の略2倍の速度になるように増速駆動される。
前輪状態切換弁40を操作して、伝動切換装置26を中立位置に切り換えると、伝動切換装置26の状態が前輪従動状態に切り換えられて、左右の前輪2への動力の伝達が遮断される。
ミッションケース7の左右両側部には、多板式の左右のサイドブレーキ41が装備されている。左右のサイドブレーキ41は、運転部4の足元部に配設された左右一対のブレーキペダル42に、ブレーキシリンダ43及び連係ロッド44を介してそれぞれ別々に連係されている。これにより、左右のブレーキペダル42の踏み込み操作により、そのブレーキペダル42の踏み込み操作量に応じた制動力で対応する後輪3を制動する。
左右のブレーキシリンダ43は、単動式の油圧シリンダで構成されており、後述する制御装置50に接続された3位置切換式の電磁式であるブレーキ制動切換弁45を介して、エンジン19からの動力により回転駆動する油圧ポンプ(図示せず)に接続されている。ブレーキ制動切換弁45を操作することで、左右のブレーキシリンダ43をそれぞれ別々に短縮させて、左右のサイドブレーキ41をそれぞれ別々に制動側に操作できる。これにより、ブレーキペダル42が踏み込み操作されていない場合であっても、ブレーキ制動切換弁45の操作により、右又は左のブレーキシリンダ43を短縮させることで、右又は左のサイドブレーキ41を制動側に操作できる。
PTOクラッチ29は、多板式の油圧クラッチで構成されており、後述する制御装置50に接続された2位置切換式の電磁式であるPTO状態切換弁46に接続されている(図6参照)。これにより、PTO状態切換弁46を操作することで、PTOクラッチ29の状態を、主変速装置21からPTO変速装置30へ動力を伝達する入り状態と、主変速装置21からPTO変速装置30への動力の伝達を遮断する切り状態とに切り換えできる。
図6に示すように、このトラクタには、操舵角センサ60、シャトルレバーセンサ61、方位センサ62、車速センサ63、アームセンサ64、切れ角センサ65等の検出機器類が実装されている。
図3及び図6に示すように、操舵角センサ60は、操縦ハンドル6のハンドル操作軸6aに装備されており(図2参照)、基準位置からのハンドル操作軸6aの回転角を測定することにより操舵角を検出して、制御装置50により操縦ハンドル6の操作量(操舵操作量)及び操舵速度(操舵操作速度)を演算する。これにより、操舵角センサ60が操舵速度検出手段として機能する。
シャトルレバー35の根元部には、シャトルレバーセンサ61が装備されており、このシャトルレバーセンサ61によりシャトルレバー35の操作位置(前進位置、中立位置、後進位置)を検出できる。
車速検出手段の一例である車速センサ63は、副変速装置23と差動機構28との間の回転部に装備されており(図4参照)、回転部の回転角を検出して、制御装置50によりトラクタの車速Vを演算する。
向き検出手段の一例である方位センサ62は、車体1の左右中央部に配設されており、車体1の向き(車体1の走行方向)を検出する。リフトアーム8の揺動部には、リフトアーム8の上下揺動角度を検出するアームセンサ64が設けられている。
切れ角センサ65(切れ角検出手段に相当)は、前輪2に連係されたナックルアーム2aの回転部に装着されており(図2参照)、ステアリング装置12により操作された前輪2の切れ角を検出する。切れ角センサ65の検出結果に基づいて、前輪2の切れ角が制御装置50によって監視されており、例えばパワーシリンダ13の作動油のリーク等により前輪2の切れ角が変化した場合等に、切れ角センサ65からの検出結果に基づいて制御装置50で前輪2の切れ角を補正し、正確な前輪2の切れ角が制御装置50で把握され、この補正された前輪2の切れ角で後述する制御装置50による制御が実施されるように構成されている。
操縦ハンドル6の左側部には、モード切換スイッチ66が装備されている。モード切換スイッチ66には、二輪駆動モード、四輪駆動モード、小旋回モード、及び急旋回モードの4つの切換位置が設けられており、この4つの切換位置を切り換えることで、トラクタの4つの走行モードを切り換えることができる。
モード切換スイッチ66を二輪駆動モードに切り換えると、制御装置50から前輪状態切換弁40への出力により、伝動切換装置26の状態が前輪従動状態に切り換えられて、左右の後輪3のみが駆動する。モード切換スイッチ66を四輪駆動モードに切り換えると、制御装置50から前輪状態切換弁40への出力により、伝動切換装置26の状態が前輪駆動状態に切り換えられて、左右の前輪2と左右の後輪7とが等速駆動する。
モード切換スイッチ66を小旋回モードに切り換えた場合において、シャトルレバー35が後進位置に操作された場合には、制御装置50から前輪状態切換弁40への出力により、伝動切換装置26の状態が四輪駆動状態に切り換えられて、左右の前輪2と左右の後輪7とが等速駆動する。
モード切換スイッチ66を小旋回モードに切り換えた場合において、シャトルレバー35が前進位置に操作された場合には、制御装置50から前輪状態切換弁40への出力により、伝動切換装置26の状態が四輪駆動状態に切り換えられて、左右の前輪2と左右の後輪7とが等速駆動する。更に、後述する制御装置50による制御により所定の条件を満たすと、伝動切換装置26の状態がこの四輪駆動状態から前輪増速状態に切り換えられて、左右の前輪2が左右の後輪3の周速度の略2倍の周速度で増速駆動する。このように、制御装置50から前輪状態切換弁40への出力により、前輪2を後輪3の周速度の略2倍の周速度で増速駆動させる前輪増速手段51が構成されている。
モード切換スイッチ66を急旋回モードに切り換えた場合において、シャトルレバー35が後進位置に操作された場合には、制御装置50から前輪状態切換弁40への出力により、伝動切換装置26の状態が四輪駆動状態に切り換えられて、左右の前輪2と左右の後輪7とが等速駆動する。
モード切換スイッチ66を急旋回モードに切り換えた場合において、シャトルレバー35が前進位置に操作された場合には、制御装置50から前輪状態切換弁40への出力により、伝動切換装置26の状態が四輪駆動状態に切り換えられて、左右の前輪2と左右の後輪7とが等速駆動する。更に、後述する制御装置50による制御により所定の条件を満たすと、伝動切換装置26の状態がこの四輪駆動状態から前輪増速状態に切り換えられて左右の前輪2が左右の後輪3の周速度の略2倍の周速度で増速駆動すると共に、旋回内側のサイドブレーキ41が制動側に操作される。このように、制御装置50からブレーキ制動切換弁45への出力により、旋回内側の右又は左のサイドブレーキ41を制動側に操作することで、旋回内側の後輪3を制動する後輪制動手段52が構成されている。
運転座席5の右横側には、昇降レバー48が前後揺動自在に装備されており、この昇降レバー48の根元部に、昇降レバー48の操作位置を検出する昇降レバーセンサ67が装備されている。昇降レバー48を操作すると、昇降レバー48の操作位置を目標高さ位置とし、この目標高さ位置と、アームセンサ64により検出した検出値と、アームセンサ64の検出値をロータリ作業装置Rの実高さ位置と対応させた相関関係データとに基づいて、制御装置50から昇降制御弁47に出力し、昇降レバー48の操作位置に対応する任意の高さ位置までロータリ作業装置Rを昇降させる。
操作パネル70には、ロータリ作業装置Rの耕深を設定する耕深設定器71が装備されており、ロータリ作業装置Rの後部カバーRaには、後部カバーRaの上下揺動角度を検出するカバーセンサ68が装備されている。昇降レバー48がその揺動操作領域の最下降位置側に設けたフローティング領域内に揺動操作されたことが、昇降レバーセンサ67により検出されると、耕深設定器71の設定値と、後部カバーRaに装備されたカバーセンサ68の検出値と、カバーセンサ68の検出値をロータリ作業装置Rの実耕深と対応させた相関関係データとに基づいて、制御装置50から昇降制御弁47に出力し、耕深設定器71により設定した設定耕深に維持することができる。
操作パネル70には、ロータリ作業装置Rの上昇位置(上限位置)を設定する上限設定器72が装備されている。
操縦ハンドル6の右横側には、中立付勢された操作レバー49が上下揺動自在に装備されており、この操作レバー49の根元部に、操作レバー49の操作位置を検出する操作レバーセンサ69が装備されている。
操作レバー49を上方に揺動操作すると、上限設定器72の設定値と、アームセンサ64の検出値と、アームセンサ64の検出値をロータリ作業装置Rの実高さ位置と対応させた相関関係データとに基づいて、制御装置50から昇降制御弁47に出力し、上限設定器72により設定した上昇位置にロータリ作業装置Rを上昇させる。
操作レバー49を下方に揺動操作した場合において、昇降レバー48がフローティング領域外に操作されている場合には、昇降レバー48の操作位置を目標高さ位置とし、この目標高さ位置と、アームセンサ64により検出した検出値と、アームセンサ64の検出値をロータリ作業装置Rの実高さ位置と対応させた相関関係データとに基づいて、制御装置50から昇降制御弁47に出力し、昇降レバー48の操作位置に対応する任意の高さ位置にロータリ作業装置Rを下降させる。
操作レバー49を下方に揺動操作した場合において、昇降レバー48がフローティング領域内に操作されている場合には、耕深設定器71の設定値と、後部カバーRaに装備されたカバーセンサ68の検出値と、カバーセンサ68の検出値をロータリ作業装置Rの実耕深と対応させた相関関係データとに基づいて、制御装置50から昇降制御弁47への出力により、耕深設定器71で設定した設定耕深に自動的に下降させる。
操作パネル70には、入り側(ON)及び切り側(OFF)に操作可能な自動上昇スイッチ73が装備されている。自動上昇スイッチ73を入り側(ON)に押し操作すると、昇降レバー48がフローティング領域内に揺動操作されているか否か判断される。昇降レバー48がフローティング領域内に操作されている場合において、後述する制御装置50による制御により所定の条件を満たすと、上限設定器72の設定値と、アームセンサ64の検出値と、アームセンサ64の検出値をロータリ作業装置Rの実高さ位置と対応させた相関関係データとに基づいて、制御装置50から昇降制御弁47への出力により、上限設定器72で設定した上昇位置にロータリ作業装置Rを自動的に上昇させる。このように、制御装置50から昇降制御弁47への出力により、ロータリ作業装置Rを下降位置から上昇位置に自動的に上昇させる自動上昇手段53が構成されている。
なお、自動上昇スイッチ73を切り側(OFF)に押し操作すると、ロータリ作業装置Rは自動的に上昇せずに、操作レバー49の上方への揺動操作により、ロータリ作業装置Rを手動で上昇させることができる。
操作パネル70には、入り側(ON)及び切り側(OFF)に操作可能な後進上昇スイッチ74が装備されている。後進上昇スイッチ74を入り側(ON)に押し操作すると、昇降レバー48がフローティング領域内に揺動操作されているか否か判断される。昇降レバー48がフローティング領域内に操作されている場合において、シャトルレバー35が後進位置に操作された場合には、上限設定器72の設定値と、アームセンサ64の検出値と、アームセンサ64の検出値をロータリ作業装置Rの実高さ位置と対応させた相関関係データとに基づいて、制御装置50から昇降制御弁47への出力により、上限設定器72で設定した上昇位置まで、ロータリ作業装置Rを自動的に上昇させる。
操作パネル70には、PTOスイッチ75が装備されており、このPTOスイッチ75には、入り位置と、切り位置と、自動位置が備えられている。PTOスイッチ75を入り位置に切り換えると、制御装置50からPTO状態切換弁46への出力により、PTOクラッチ29を入り状態に操作し、PTOスイッチ75を切り位置に切り換えると、制御装置50からPTO状態切換弁46への出力により、PTOクラッチ29を切り状態に操作する。
PTOスイッチ75を自動位置に切り換えた場合において、カバーセンサ68からの検出結果に基づいてロータリ作業装置Rの接地が検出されると、制御装置50からPTO状態切換弁46への出力により、PTOクラッチ29が自動的に入り状態に操作される。PTOスイッチ75を自動位置に切り換えた場合において、カバーセンサ68からの検出結果に基づいてロータリ作業装置Rの浮上が検出されると、制御装置50からPTO状態切換弁46への出力により、PTOクラッチ29が自動的に切り状態に操作される。
操縦ハンドル6の前側には、表示装置80(表示画面、ランプ、ブザー等)が装備されており、制御装置50から表示装置80に出力することにより、表示画面に表示し、ランプを点灯させ、又はブザーを鳴らすことにより、運転者に視覚的又は聴覚的な情報を提供できる。
[トラクタの走行距離及び移動距離の算出方法]
図6及び図7に基づいて後述する作業内容判定及び障害物回避判定に用いるトラクタの基準位置aからの走行距離W及び移動距離Wx,Wyの算出方法について説明する。図7は、基準位置aからのトラクタの走行距離W及び移動距離Wx,Wyの算出方法を図示した概略平面図である。
図6に示すように、トラクタには、方位センサ62と車速センサ63とが備えられているので、方位センサ62により検出した車体の向きと、車速センサ63により検出した車速Vとを、基準位置aを基準として、図7中に図示すると、図7の太線の矢印のようになる。
ここで、トラクタが、基準位置aを基準として設定された基準座標上(x,y)を移動していると考えると、車速Vのx方向の成分はVx(=V・cosθ)となり、車速Vのy方向の成分はVy(=V・sinθ)となり、車体の向きが変更すると、車速Vのx方向の成分及びy方向の成分も変更する。
これにより、例えばトラクタが図7の基準位置aから所定時間経過後にb位置に移動した場合には、この所定時間内での車速Vのx方向の成分Vxを時間積分することで、トラクタの基準位置aからのx方向での移動距離Wxを算出することができる。同様に、所定時間内での車速Vのy方向の成分Vyを時間積分することで、トラクタの基準位置aからのy方向での移動距離Wyを算出することができる。また、所定時間内での車速Vを時間積分することで、図7の2点鎖線で示すトラクタの基準位置aからb位置までの移動軌跡の走行距離Wを算出することができる。
これにより、基準位置aからのトラクタの車体位置(W,Wx,Wy)を演算する位置演算手段56が構成されている。
なお、この実施形態では、方位センサ62により検出した車体1の向きと、車速センサ63により検出した車速Vとに基づいて、時間積分を用いて走行距離W及び移動距離Wx,Wyを演算し、基準位置aからの車体位置を演算する位置演算手段56を構成した例を示したが、異なる算出方法により基準位置aから車体位置を演算する位置演算手段56を構成してもよい。また、方位センサ62及び車速センサ63以外の検出手段により検出したトラクタの走行情報に基づいて基準位置からのトラクタの車体位置を演算するように構成してもよい。
具体的には、例えば、図示しないが、GPSアンテナと、このGPSアンテナに接続されたGPS受信機とを備えて、GPS衛星からの位置情報及び基準局からの補正情報を受信できるように構成し、これらの受信情報に基づいてトラクタの現在位置を検出し、基準位置からのトラクタの車体位置を演算できるように構成してもよい。この場合、GPS受信機を、SBAS(静止衛星型衛星航法補強システム)に対応するSBAS受信機で構成し、基準局からの航空用の補正情報を受信できるように構成してもよい。
[制御装置による制御の内容について]
図8〜図15に基づいて制御装置50による制御の内容について説明する。図8は、旋回モード切換制御のフローチャートであり、図9は、旋回判定制御のフローチャートである。図10は、旋回判定制御のうちの走行内容判定のフローチャートであり、図11は、旋回判定制御のうちの障害物回避判定のフローチャートである。
図12は、旋回判定制御のうちのしきい値判定のグラフであり、車速Vと、操縦ハンドル6の操舵速度(操作速度)のしきい値との関係を示すグラフである。図12の横軸は、車速V(km/時)であり、図12の縦軸は、操縦ハンドル6の操舵速度(度/秒)である。
図13は、第1及び第2所定上昇角度α1,α2、並びに、第1及び第2所定増速角度β1,β2について説明する概略図である。図14は、敏感モードに移行した場合のフローチャートであり、図15は、鈍感モードに移行した場合のフローチャートである。
まず、図8に基づいて旋回モード切換制御について説明する。図8に示すように、モード切換スイッチ66からの検出結果に基づいて、走行モードが小旋回モード又は急旋回モードに切り換えられているか否か判断される(ステップ#10)。走行モードが二輪駆動モード又は四輪駆動モードに切り換えられている場合には、後述する敏感モード及び鈍感モードのいずれのモードにも移行しない(ステップ#10・NO)。
なお、ステップ#10を廃止して、走行モードがいずれのモードに切り換えられているかに関わらず、ステップ#11以降のフローが実施されるように構成してもよい。この場合、後述する図14のステップ#64及び図15のステップ#74で、走行モードが小旋回モード又は急旋回モードに切り換えられているか否か判断するように構成してもよい。
走行モードが小旋回モード又は急旋回モードに切り換えられている場合には(ステップ#10・YES)、シャトルレバーセンサ61からの検出結果に基づいて、シャトルレバー35が前進位置に操作されているか否か判断される(ステップ#11)。シャトルレバー35が前進位置に操作されている場合には(ステップ#11・YES)、制御装置50からPTO状態切換弁46への出力状態により、PTOクラッチ29が入り状態に操作されているか否か判断される(ステップ#12)。
次に、PTOクラッチ29が入り状態に操作されている場合には(ステップ#12・YES)、車速センサ63からの検出結果に基づいて、車速Vが予め設定した作業速度範囲内(例えば0.2〜5.0km/hの間)であるか否かを判断される。
シャトルレバー35が前進位置に操作されていない場合(ステップ#11・NO)、PTOクラッチ29が切り状態に操作されている場合(ステップ#12・NO)、及び、車速Vが作業速度範囲外である場合には(ステップ#13・NO)、後述する敏感モード及び鈍感モードのいずれのモードにも移行しないように牽制されており、これにより、敏感モード及び鈍感モードへの移行を牽制する牽制手段が構成されている。
すなわち、これらの条件(ステップ#11〜#13)のいずれか一つでも満たさない場合には、トラクタが耕耘作業をしていない状態であるので(耕耘作業をしていない可能性が高い状態であるので)、このような状態での敏感モード及び鈍感モードへの移行を牽制することで、トラクタが耕耘作業をしていない状態であるにも関わらず自動上昇手段53、前輪増速手段51、及び後輪制動手段52が作動することを未然に防止できる。
なお、ステップ#11〜#13の条件のうちのいずれか1以上の条件によって、敏感モード及び鈍感モードへの移行を牽制するように構成してもよく、ステップ#11〜#13の条件を異なる順番で実行するように構成してもよい。
また、トラクタが耕耘作業をしていないことを判断できる条件であれば(耕耘作業をしていない可能性が高い条件であれば)、ステップ#11〜#13の条件に代えて異なる条件を採用してもよく、例えばエンジン19の回転数を検出する回転数検出手段(図示せず)を備えて、エンジン19の回転数が耕耘作業時の回転数でない場合には、敏感モード及び鈍感モードへの移行を牽制するように構成してもよく、例えばロータリ作業装置Rによる牽引負荷を検出する負荷検出手段(図示せず)を備えて、牽引負荷が小さい場合又は牽引負荷が検出されない場合には、敏感モード及び鈍感モードへの移行を牽制するように構成してもよい。
次に、車速Vが作業速度範囲内である場合には(ステップ#13・YES)、自動上昇スイッチ73が入り側(ON)に押し操作されているか否か判断される(ステップ#14)。自動上昇スイッチ73が切り側(OFF)に押し操作されている場合には(ステップ#14・NO)、後述する旋回判定制御(ステップ#15)には移行せずに、トラクタの旋回モードが敏感モードに切り換えられる。
自動上昇スイッチ72が入り側(ON)に押し操作されている場合には(ステップ#14.YES)、後述する旋回判定制御によりトラクタの状態が、旋回作業時の状態であるか(「旋回」)、旋回作業時の状態でないか(「非旋回」)、が判断される(ステップ#15)。
後述する旋回判定制御によりトラクタの状態が「旋回」と判断されると(ステップ#15・旋回)、トラクタの旋回モードが敏感モードに切り換えられ(ステップ#16)、後述する旋回判定制御によりトラクタの状態が「非旋回」と判断されると(ステップ#15・非旋回)、トラクタの旋回モードが鈍感モードに切り換えられる(ステップ#17)。
ここで、敏感モードの「敏感」とは、操縦ハンドル6の操作に対する作動感度が良く、操縦ハンドル6の操作に対して、自動上昇手段53、前輪増速手段51、及び後輪制動手段52が作動し易い(敏感である)ことを意味し、鈍感モードの「鈍感」とは、操縦ハンドル6の操作に対する作動感度が悪く、操縦ハンドル6の操作に対して、自動上昇手段53、前輪増速手段51、及び後輪制動手段52が作動し難い(鈍感である)ことを意味する。
次に、図9〜図12に基づいて旋回判定制御について説明する。図9に示すように、旋回判定制御おいては、走行内容判定(ステップ#20,図10)、障害物回避判定(ステップ#21,図11)、及び、しきい値判定(ステップ#22,図12)が実施されている。
まず、図9及び図10に基づいて走行内容判定について説明する。図10に示すように、走行内容判定では、制御装置50の推測手段54によりトラクタの走行が車体の作業走行経路に対する位置合わせ走行であるか否か推測される(ステップ#30)。ここで、作業走行経路に対する位置合わせ走行であるか否かの推測は、例えば、以下のように推測される。
例えば、シャトルレバーセンサ61からの検出結果に基づいて、シャトルレバー35が前進位置に操作されたことが検出された場合には、トラクタの走行が位置合わせであると推測される(ステップ#30・YES)。すなわち、シャトルレバー35を前進位置に操作して、車体1を後進させた直後に前進させる場合には、耕耘作業を開始する状況である可能性が高く、作業走行経路に対して位置合わせ走行させることが多いため(例えば発進直後の条合わせ作業等(図19(c)参照))、トラクタの走行が位置合わせ走行であると推測される。
この場合、異なる検出手段により車体1を後進させた直後の前進であることを検出してもよく、例えば、車速センサ63、主変速装置21の変速位置(変速段数)を検出する変速位置検出手段(図示せず)、又は主変速レバー32の操作位置を検出するレバーセンサ(図示せず)からの検出結果に基づいて、車体1を後進させた直後の前進であることを検出して、トラクタの走行が位置合わせ走行であると推測されるように構成してもよく、これらの検出手段の複数の組み合わせで、トラクタの走行が位置合わせ走行であると推測されるように構成してもよい。
また、例えば、アームセンサ64からの検出結果に基づいて、ロータリ作業装置Rが上限設定器72により設定した上昇位置に上昇したことが検出された場合には、トラクタの走行が位置合わせ走行であると推測される(ステップ#30・YES)。すなわち、ロータリ作業装置Rを上昇させて耕耘作業を一時的に中断する場合には、隣接する走行経路(隣接耕)への旋回が終了した可能性が高く、作業走行経路に対して位置合わせ走行させることが多いため(例えば旋回直後の条合わせ作業等(図19(d)参照))、トラクタの走行が位置合わせ走行であると推測される。
この場合、異なる検出手段によりロータリ作業装置Rの上昇を検出してもよく、例えば、制御装置50から昇降制御弁47への出力状態、制御装置50からPTO状態切換弁46への出力状態、カバーセンサ68からの検出結果、又は操作レバーセンサ69からの検出結果に基づいて、ロータリ作業装置Rの上昇を検出して、トラクタの走行が位置合わせ走行であると推測されるように構成してもよく、これらの検出手段の複数の組み合わせで、トラクタの走行が位置合わせ走行であると推測されるように構成してもよい。
トラクタの走行が位置合わせ走行であると推測されると(ステップ#30・YES)、トラクタの走行距離Wを算出するための基準位置aが設定される(ステップ#31)。そして、上述した走行距離Wの算出方法により、基準位置aからのトラクタの走行距離Wの算出が開始される。なお、基準位置aを設定するタイミングは、例えばシャトルレバー35の前進位置への操作を検出した時点、又は、ロータリ作業装置Rの上昇位置への上昇を検出した時点であってもよく、これらの時点から所定時間(例えば0.2秒)経過後であってもよく、ステップ#32の後であってもよい。
トラクタの走行が位置合わせ走行であると推測されると(ステップ#30・YES)、トラクタの走行が位置合わせ走行であると判定される(ステップ#32,ステップ#20・位置合わせ走行)。これにより、トラクタの状態が「非旋回」と判断されて(ステップ#24)、トラクタの旋回モードが鈍感モードに切り換えられる(ステップ#15・非旋回,ステップ#17)。
次に、基準位置aからのトラクタの走行距離Wが予め設定された所定距離(例えば2m)以上になったか否か判断される(ステップ#33)。基準位置aからのトラクタの走行距離Wが所定距離未満である場合には(ステップ#33・NO)、トラクタの走行が位置合わせ走行であると判定された状態が維持される(ステップ#33・NO,ステップ#32)。
基準位置aからのトラクタの走行距離Wが所定距離以上になると(ステップ#33・YES)、基準位置aからのトラクタの走行距離Wが初期値(0m)にリセットされて(ステップ#34)、トラクタの走行が旋回走行であると判定される(ステップ#35,ステップ#20・旋回走行)。これにより、後述する障害物回避判定により非回避と判定され(ステップ#21・非回避)、しきい値判定により操縦ハンドル6の操舵速度がしきい値以上であると判定されると(ステップ#22・YES)、トラクタの状態が「旋回」と判断されて(ステップ#23)、トラクタの旋回モードが敏感モードに切り換えられる(ステップ#15・旋回,ステップ#16)。
なお、基準位置aにおける基準座標(x,y)を設定すると共に、基準位置aからの移動距離Wx又は移動距離Wyを算出し、基準位置aからの移動距離Wx又は移動距離Wyが予め設定された所定距離以上になると、トラクタの移動距離Wx又は移動距離Wyを初期値(0m)にリセットするように構成してもよい。
トラクタの走行が位置合わせ走行でないと判定された場合には(ステップ#30・NO)、トラクタの走行が旋回走行であると判定された状態のままであり、位置合わせ走行であると判定されてから旋回走行であると判定されるまでの間を除き、トラクタの走行は旋回走行であると判定された状態のままである(ステップ#20・旋回走行)。
次に、図9,図11,図13に基づいて障害物回避判定について説明する。図11に示すように、障害物回避判定では、切れ角センサ65からの検出結果に基づいて、直進位置からの前輪2の切れ角が予め設定された所定切れ角e以上か否か判断される(ステップ#40)。このように、切れ角センサ65からの検出結果により、障害物回避方向への操縦ハンドル6の操作の開始を判断する操作開始判断手段55が構成されている。
図13に示すように、所定切れ角eは、直進走行時において圃場の凹凸や操縦ハンドル6の微調節等により前輪2の切れ角が直進位置から変更される角度(例えば2度〜3度)より、大きい角度(例えば4度,5度)に設定されている。これにより、障害物回避の可能性の高い場合に限定して、以降の制御(ステップ#41〜#50)に移行することができ、適切なタイミングで効率よく障害物回避判定を実施できる。
なお、所定切れ角eを異なる大きな角度又は小さな角度に設定してもよく、直進位置から左側への所定切れ角と、直進位置から右側への所定切れ角を異なる角度(大小関係)に設定してもよい。
また、この実施形態では、直進位置を基準位置として所定切れ角eを設定した例を示したが、直進位置から右側又は左側に前輪2の切れ角が所定角度操作された位置を基準位置として所定切れ角eを設定してもよい。また、変更される前輪2の切れ角を所定時間毎に検出して、この検出した前輪2の切れ角の位置を基準位置として設定し、この基準位置からの所定切れ角を所定時間毎に設定するように構成してもよい。
図11に示すように、前輪2の切れ角が所定切れ角e以上であると判断されると(ステップ#40・YES)、方位センサ62からの検出結果に基づいて、直進位置からの前輪2の切れ角が所定切れ角e以上であると判断された判断時点における、方位センサ62により検出した車体1の向きの延長線上が基準線Lとして設定される(ステップ#41)。
次に、トラクタの移動距離Wx,Wyを算出するための基準位置aが設定され(ステップ#42)、上述した移動距離Wx,Wyの算出方法を用いて、制御装置50の位置演算手段56により、方位センサ62及び車速センサ63からの検出結果に基づいて、基準線Lに直交する方向での基準線Lからのトラクタの移動距離Wyと、基準線Lの向く方向での基準位置aからのトラクタの移動距離Wxの算出が開始される。なお、基準位置aを設定するタイミングは、前輪2の切れ角が所定切れ角e以上であると判断された時点であってもよく、前輪2の切れ角が所定切れ角e以上であると判断された時点から所定時間(例えば0.2秒)経過後であってもよい。
ここで、基準線Lに直交する方向での基準線Lからのトラクタの移動距離Wyが、基準線Lに対するトラクタの車体位置の方向が前輪2の切れ角の方向と逆方向かの判断(基準位置aから見て基準線Lに対してトラクタの車体位置が右方向又は左方向のいずれの方向に位置するかの判断)に用いられ(ステップ#44)、基準線Lの向く方向での基準位置aからのトラクタの移動距離Wxが、基準線L、基準位置a、及び移動距離Wx,Wyのリセットの判断に用いられる(ステップ#49)。
次に、切れ角センサ65からの検出結果に基づいて、操縦ハンドル6が障害物回避方向とは逆方向に操作されたか否か判断される(ステップ#43)。ここで、例えば、障害物回避方向が左方向で、左方向への操縦ハンドル6の操作により前輪2の切れ角が所定切れ角e以上であると判断された場合には(ステップ#40・YES)、障害物回避方向とは逆方向の右方向へ操縦ハンドル6が操作されたか否か判断され、例えば、障害物回避方向が右方向で、右方向への操縦ハンドル6の操作により前輪2の切れ角が所定切れ角e以上であると判断された場合には(ステップ#40・YES)、障害物回避方向とは逆方向の左方向へ操縦ハンドル6が操作されたか否か判断される。
操縦ハンドル6が障害物回避方向とは逆方向に操作されたと判断されると(ステップ#43・YES)、基準線Lに直交する方向での基準位置aからのトラクタの移動距離Wyと、切れ角センサ65により検出された前輪2の切れ角とにより、基準線Lに対する車体位置の方向(基準位置aから見て基準線Lに対してトラクタの車体位置が右方向又は左方向のいずれの方向に位置するか)と、直進位置からの前輪2の切れ角の方向とが逆方向か否か判断される(ステップ#44)。
ここで、例えば基準線Lに直交する左方向(y方向)をプラスに設定した場合には、基準位置aからのトラクタの移動距離Wyがプラスの値を示す間は、基準線Lに対する車体位置の方向は、左方向であり、基準位置aからのトラクタの移動距離Wyがマイナスの値に転じた場合には、基準線Lに対する車体位置の方向は、右方向である。なお、基準位置aからのトラクタの移動距離Wyがゼロである場合には、基準線L上に車体位置が位置する状態であり、この状態では、基準位置aからのトラクタの移動距離Wyがプラスの値を示す場合と同様に取り扱う。
基準線Lに対する車体位置の方向と、前輪2の切れ角の方向とが逆方向であると判断されると(ステップ#44・YES)、操縦ハンドル6の操作が障害物の回避に伴うものであると判定される(ステップ#45,ステップ#21・回避)。これにより、トラクタの状態が「非旋回」と判断されて(ステップ#24)、トラクタの旋回モードが鈍感モードに切り換えられる(ステップ#15・非旋回,ステップ#17)。
この場合、基準線Lに対する車体位置の方向と、前輪2の切れ角の方向とが逆方向であると判断された時点で、操縦ハンドル6の操作が障害物の回避に伴うものであると判定されるように構成してもよく、基準線Lに対する車体位置の方向と、前輪2の切れ角の方向とが逆方向であると判断されてから予め設定された所定時間(例えば0.2秒)経過後に、操縦ハンドル6の操作が障害物の回避に伴うものであると判定されるように構成してもよい。
以上のように、操作開始判断手段55によって操縦ハンドル6の右側又左側の一方側への操作の開始を判断し、この操作の開始が判断された後に、操縦ハンドル6が右側又は左側の他方側に操作されると(ステップ#43)、一定の条件のもと(ステップ#44)、操縦ハンドル6の操作が障害物の回避に伴うものであると判定されるように構成されている(ステップ#45)。
次に、基準位置aからのトラクタの移動距離Wxが予め設定された所定距離(例えば6m)以上になったか否か判断されると共に(ステップ#47)、前輪2の切れ角が所定切れ角e未満になったか否か判断される(ステップ#48)。基準位置aからのトラクタの移動距離Wxが所定距離未満である場合(ステップ#47・NO)、又は、基準位置aからのトラクタの移動距離Wxが所定距離以上であるが前輪2の切れ角が所定切れ角e以上である場合であって(ステップ#48・NO)、操縦ハンドル6が障害物回避方向とは逆方向に操作された状態が維持され(ステップ#43・YES)、基準線Lに対する車体位置の方向と前輪2の切れ角の方向とが逆方向である状態が維持されると(ステップ#44・YES)、操縦ハンドル6の操作が障害物の回避の伴うものであると判定された状態が維持される(ステップ#45)。
操縦ハンドル6が障害物回避方向とは逆方向に操作されていない場合(ステップ#43・NO)、及び、操縦ハンドル6が再び障害物回避方向と同じ方向に操作された場合には(ステップ#47・NO又はステップ#48・NO,ステップ#43・NO)、操縦ハンドル6の操作が障害物の回避に伴うものではないと判定される(ステップ#46,ステップ#21・非回避)。これにより、後述するしきい値判定により操縦ハンドル6の操舵速度がしきい値以上であると判定されると(ステップ#22・YES)、トラクタの状態が「旋回」と判断されて(ステップ#23)、トラクタの旋回モードが敏感モードに切り換えられる(ステップ#15・旋回,ステップ#16)。
基準線Lに対する車体位置の方向と、前輪2の切れ角の方向とが逆方向ではない場合(ステップ#44・NO)、及び、基準線Lに対する車体位置の方向と、前輪2の切れ角の方向とが再び同じ方向になった場合には(ステップ#47・NO又はステップ#48・NO,ステップ#43・YES,ステップ#44・NO)、操縦ハンドル6の操作が障害物の回避に伴うものではないと判定される(ステップ#46,ステップ#21・非回避)。これにより、後述するしきい値判定により操縦ハンドル6の操舵速度がしきい値以上であると判定されると(ステップ#22・YES)、トラクタの状態が「旋回」と判断されて(ステップ#23)、トラクタの旋回モードが敏感モードに切り換えられる(ステップ#15・旋回,ステップ#16)。
操縦ハンドル6の操作が障害物の回避に伴うものであると判定されているか(ステップ#45)、操縦ハンドル6の操作が障害物の回避に伴うものでないと判定されているか(ステップ#46)に関わらず、基準位置aからのトラクタの移動距離Wxが予め設定された所定距離以上になり(ステップ#47・YES)、前輪2の切れ角が所定切れ角e未満になると(ステップ#48・YES)、基準位置a、基準線L、及び後述する旋回角がリセットされ、基準位置aからのトラクタの移動距離Wx,Wyが初期値(0m)にリセットされる(ステップ#49)。
なお、基準位置aからのトラクタの走行距離Wを算出し、走行距離Wが予め設定された所定距離以上になると、トラクタの走行距離Wを初期値(0m)にリセットするように構成してもよい。
そして、操縦ハンドル6の操作が障害物の回避に伴うものであると判定されている場合には、操縦ハンドル6の操作が障害物の回避に伴うものではないと判定される(ステップ#50,ステップ#21・非回避)。これにより、後述するしきい値判定により操縦ハンドル6の操舵速度がしきい値以上であると判定されると(ステップ#22・YES)、トラクタの状態が「旋回」と判断されて(ステップ#23)、トラクタの旋回モードが敏感モードに切り換えられる(ステップ#15・旋回,ステップ#16)。
なお、前輪2の切れ角が所定切れ角e以上であると判断されない場合には(ステップ#40・NO)、操縦ハンドル6の操作が障害物の回避に伴うものではないと判定された状態のままである(ステップ#21・非回避)。
次に、図9及び図12に基づいて操縦ハンドル6の操舵速度のしきい値判定について説明する。図12に示すように、車速Vが速くなるほど、車速Vの増加に比例して操縦ハンドル6の操舵速度のしきい値が直線状に連続的に増加するように、車速Vに対する操縦ハンドル6の操舵速度のしきい値が設定されており、図12においては、車速Vに対する操縦ハンドル6の操舵速度のしきい値がしきい値ラインKとして示されている。
しきい値ラインKにおける高速域では、操縦ハンドル6の操舵速度のしきい値が一定になる上限部分Kaが設けられており、車速Vが比較的高速になる高速域では、車速Vの増加とは無関係にしきい値が変更されないように構成されている。これにより、車速Vに対する操縦ハンドル6の操舵速度のしきい値が高すぎることによって、操縦ハンドル6を速く操作したのにも関わらず、非旋回と判断されることを防止できる。
これにより、車速センサ63により検出した車速Vと、操舵角センサ60により検出した操縦ハンドル6の操舵速度を、図12にプロットし、このプロットした点がしきい値ラインKの上側領域に入る場合(しきい値ラインK上を含む)には、操縦ハンドル6の操舵速度がしきい値以上であると判断される(ステップ#22・YES)。これにより、トラクタの状態が「旋回」と判断されて(ステップ#23)、トラクタの旋回モードが敏感モードに切り換えられる(ステップ#15・旋回,ステップ#16)。
一方、車速センサ63により検出した車速Vと、操舵角センサ60により検出した操縦ハンドル6の操舵速度を、図12にプロットし、このプロットした点がしきい値ラインKの下側領域に入る場合(しきい値ラインKを除く)には、操縦ハンドル6の操舵速度がしきい値未満であると判断される(ステップ#22・NO)。これにより、トラクタの状態が「非旋回」と判断されて(ステップ#24)、トラクタの旋回モードが鈍感モードに切り換えられる(ステップ#15・非旋回,ステップ#17)。
ここで、例えば畦が湾曲等する変形田で畦に沿って走行する場合や、圃場で直進走行する場合等には、比較的高速で走行させることが多く、操縦ハンドル6を比較的遅く操作することが多いため、車速Vが速く、かつ、操舵速度が遅い、しきい値ラインKの下側領域に高い確率で入り易くなる。従って、トラクタの旋回モードが鈍感モードに切り換えられ易くなり、後述するように、自動上昇手段53、前輪増速手段51及び後輪制動手段52が作動し難くなる。
一方、例えば枕地旋回(畦際での約180度の旋回)する場合等には、比較的低速で走行させることが多く、操縦ハンドル6を比較的速く操作することが多いため、車速Vが遅く、かつ、操舵速度が速い、しきい値ラインKの上側領域に高い確率で入り易くなる。従って、トラクタの旋回モードが敏感モードに切り換えられ易くなり、後述するように、自動上昇手段53、前輪増速手段51及び後輪制動手段52が作動し易くなる。
次に、図13に基づいて、旋回モードが鈍感モード及び敏感モードに切り換えられた場合に用いる、第1及び第2所定上昇角度α1,α2、並びに、第1及び第2所定増速角度β1,β2について説明する。
図13に示すように、第1所定上昇角度α1及び第1所定増速角度β1は、車体の走行方向と前輪2が略平行になった直進位置(図12の紙面上下向きの位置)を基準として設定されている。
第1所定増速角度β1は、第1所定上昇角度α1より大きい角度に設定されており、第2所定増速角度β2は、第2所定上昇角度α2より大きい角度に設定されている。
ここで、例えば第1所定上昇角度α1は、前輪2の切れ角が直進位置から右側に33度操作された位置に設定されており、前輪2の切れ角が直進位置から左側に33度操作された位置に設定されている。また、例えば第2所定上昇角度α2は、前輪2の切れ角が直進位置から右側に50度操作された位置に設定されており、前輪2の切れ角が直進位置から左側に50度操作された位置に設定されている。
また、例えば第1所定増速角度β1は、前輪2の切れ角が直進位置から右側に35度操作された位置に設定されており、前輪2の切れ角が直進位置から左側に35度操作された位置に設定されている。また、例えば第2所定増速角度β2は、前輪2の切れ角が直進位置から右側に52度操作された位置に設定されており、前輪2の切れ角が直進位置から左側に52度操作された位置に設定されている。
なお、第1及び第2所定上昇角度α1,α2の角度差は、第1及び第2所定増速角度β1,β2の角度差と同じ角度に設定されている。
次に、図8,図14,図15に基づいて、トラクタの旋回モードが敏感モード及び鈍感モードに切り換えられた場合の制御について説明する。図8及び図14に示すように、トラクタの旋回モードが敏感モードに切り換えられると(ステップ#16)、切れ角センサ65からの検出結果に基づいて、前輪2の切れ角が第1所定上昇角度α1以上か否か判断される(ステップ#60)。
図14に示すように、前輪2の切れ角が第1所定上昇角度α1以上になると(ステップ#60・YES)、自動上昇手段53によりロータリ作業装置Rを下降位置から上昇位置に自動的に上昇させる(ステップ#61)。なお、前輪2の切れ角が第1所定上昇角度α1未満である場合には、次のフローには移行しない(ステップ#60・NO)。
次に、切れ角センサ65からの検出結果に基づいて、前輪2の切れ角が第1所定増速角度β1以上か否か判断される(ステップ#62)。前輪2の切れ角が第1所定増速角度β1以上になると(ステップ#62・YES)、前輪増速手段51により伝動切換装置26の状態が前輪増速状態に切り換えられて、前輪2が後輪3の周速度の略2倍の周速度で増速駆動される(ステップ#63)。なお、前輪2の切れ角が第1所定増速角度β1未満である場合には、次のフローには移行しない(ステップ#62・NO)。
次に、モード切換スイッチ66からの検出結果に基づいて、走行モードが小旋回モード及び急旋回モードのどちらに切り換えられているか判断される(ステップ#64)。走行モードが急旋回モードに切り換えられている場合には(ステップ#64・急旋回)、後輪制動手段52により、旋回内側の右又は左のサイドブレーキ41が制動側に操作される(ステップ#65)。そして、図示しないが、方位センサ62からの検出結果に基づいて、車体が旋回を開始してから約180度旋回したと判断されると、前輪増速手段51の作動が自動的に解除されて伝動切換装置26の状態が四輪駆動状態に切り換えられると共に、後輪制動手段52の作動が自動的に解除されて旋回内側のサイドブレーキ41の制動側への操作が解除されるように構成されている。
走行モードが小旋回モードに切り換えられている場合には(ステップ#64・小旋回)、図示しないが、方位センサ62からの検出結果に基づいて、車体が旋回を開始してから約180度旋回したと判断されると、前輪増速手段51の作動が自動的に解除されて伝動切換装置26の状態が四輪駆動状態に切り換えられるように構成されている。
図8及び図15に示すように、トラクタの旋回モードが鈍感モードに切り換えられると(ステップ#17)、切れ角センサ65からの検出結果に基づいて、前輪2の切れ角が第2所定上昇角度α2以上か否か判断される(ステップ#70)。
図15に示すように、前輪2の切れ角が第2所定上昇角度α2以上になると(ステップ#70・YES)、自動上昇手段53によりロータリ作業装置Rを下降位置から上昇位置に自動的に上昇させる(ステップ#71)。なお、前輪2の切れ角が第2所定上昇角度α2未満である場合には、次のフローには移行しない(ステップ#70・NO)。
第2所定上昇角度α2は、第1所定上昇角度α1より大きい角度に設定されているので、トラクタの旋回モードが鈍感モードに移行した状態では、前輪2の切れ角が第1所定上昇角度α1以上になっても、前輪2の切れ角が第2所定上昇角度α2以上にならない限り、自動上昇手段53は作動しない。これにより、前輪2の切れ角が第1所定上昇角度α1以上になった場合に、自動上昇手段53が作動しないように制御する制御手段が構成されている。
次に、切れ角センサ65からの検出結果に基づいて、前輪2の切れ角が第2所定増速角度β2以上か否か判断される(ステップ#72)。前輪2の切れ角が第2所定増速角度β2以上になると(ステップ#72・YES)、前輪増速手段51により伝動切換装置26の状態が前輪増速状態に切り換えられて、前輪2が後輪3の周速度の略2倍の周速度で増速駆動される(ステップ#73)。なお、前輪2の切れ角が第2所定増速角度β2未満である場合には、次のフローには移行しない(ステップ#72・NO)。
次に、モード切換スイッチ66からの検出結果に基づいて、走行モードが小旋回モード及び急旋回モードのどちらに切り換えられているかが判断される(ステップ#74)。走行モードが急旋回モードに切り換えられている場合には(ステップ#74・急旋回)、後輪制動手段52により、旋回内側の右又は左のサイドブレーキ41が制動側に操作される(ステップ#75)。そして、図示しないが、方位センサ62からの検出結果に基づいて、車体1が旋回を開始してから約180度旋回したと判断されると、前輪増速手段51の作動が自動的に解除されて伝動切換装置26の状態が四輪駆動状態に切り換えられると共に、後輪制動手段52の作動が自動的に解除されて旋回内側のサイドブレーキ41の制動側への操作が解除されるように構成されている。
第2所定増速角度β2は、第1所定増速角度β1より大きい角度に設定されているので、トラクタの旋回モードが鈍感モードに移行した状態では、前輪2の切れ角が第1所定増速角度β1以上になっても、前輪2の切れ角が第2所定増速角度β2以上にならない限り、前輪増速手段51及び後輪制動手段52は作動しない。これにより、前輪2の切れ角が第1所定増速角度β1以上になった場合に、前輪増速手段51及び後輪制動手段52が作動しないように構成されている。
走行モードが小旋回モードに切り換えられている場合には(ステップ#74・小旋回)、図示しないが、方位センサ62からの検出結果に基づいて、車体1が旋回を開始してから約180度旋回したと判断されると、前輪増速手段51の作動が自動的に解除されて伝動切換装置26の状態が四輪駆動状態に切り換えられるように構成されている。
[障害物回避判定による障害物の回避状況]
図16〜図18に基づいて障害物回避判定による障害物Sの回避状況について説明する。図16は、障害物Sの回避状況を説明する概略平面図であり、図16の太線で示す矢印は、トラクタの移動地点A〜Iにおける操縦ハンドル6の操作方向である。図17は、図16でのトラクタの移動地点A〜Iにおける各パラメータの状況を示す表であり、図18は、障害物Sの回避時の作業状況を説明する概略平面図である。なお、図17における「旋回角」は、トラクタの移動地点A〜Iにおける方位センサ62により検出した車体1の向きが、基準線Lの向きに対して右又は左のどちらに向いているかを示すものである。
また、図16〜図18においては、操縦ハンドル6を左側に操作して、障害物Sを回避した場合、すなわち、障害物回避方向が左方向である場合を例にとって説明するが、障害物回避方向が右側である場合においては、勝手違いで同様の作用をする。また、図16〜図18に示す障害物S及び圃場の設定は、その一例として示すものであり、圃場の存在する他の障害物である場合も同様に適用でき、圃場の異なる位置に障害物が存在する場合であっても同様に適用できる。
図16及び図17に示すように、A地点は、トラクタを畦に沿って移動させながら、ロータリ作業装置Rにより畦際の圃場を耕耘している状態であり、モード切換スイッチ66が小旋回モード又は急旋回モードに切り換えられて、ロータリ作業装置Rが耕深設定器71により設定した設定耕深に下降し、PTOクラッチ29が入り状態に操作され、自動上昇スイッチ73が入り側(ON)に押し操作されている状態(畦際に沿って耕耘作業をしている状態)である。
A地点では、切れ角センサ65により検出した前輪2の切れ角が略ゼロ度の状態であり、方位センサ62により検出した車体1の向きが畦と略平行な状態である。
障害物Sの回避のために、操縦ハンドル6を左側に操作しながら、トラクタをA地点からB地点に走行させて、切れ角センサ65により検出した前輪2の切れ角が所定切れ角e以上になると、この前輪2の切れ角が所定切れ角eに達した時点における、方位センサ62により検出した車体1の向きが、判定基準方向に設定され、この判定基準方向の延長線上が図16の一点鎖線で示す基準線Lとして設定される。
また、前輪2の切れ角が所定切れ角eに達した時点(B地点)における、トラクタの車体位置が基準位置aとして設定され、この基準位置aからの基準線Lの向く方向(x方向)でのトラクタの移動距離Wx、及び基準位置aからの基準線Lに直交する方向(y方向)でのトラクタの移動距離Wyの算出が、前述の移動距離Wx,Wyの算出方法により開始される。なお、図16では、基準位置aがトラクタの中央部を基準として設定されており、前述の移動距離Wx,Wyの算出方法における基準座標(x,y)が、B地点でのトラクタの中央部を基準として設定されている。
C地点でのトラクタは、障害物Sを回避するために、操縦ハンドル6を更に左側に操作した状態である。D地点でのトラクタは、操縦ハンドル6を右側に操作し始めた状態であり、D地点では、旋回角がゼロ度になって、車体1の向きが基準線Lの向きと略平行になった状態である。このD地点で操縦ハンドル6の右側への操作が操舵角センサ60により検出されると、このD地点における操縦ハンドル6の右側への操作が、障害物Sの回避に伴うものであると判断されて、旋回モードが鈍感モードに切り換えられる。
なお、A地点からC地点の間では、旋回モードは敏感モードのままであるので、図16の(C’)で示すように、C地点から更に操縦ハンドル6を左側に操作して、前輪2の切れ角が第1所定上昇角度α1以上になると、モード切換スイッチ66が小旋回モード又は急旋回モードに切り換えられている場合には、ロータリ作業装置Rが自動的に上昇し、更に、前輪2の切れ角が第1所定増速角度β1以上になると、伝動切換装置26の状態が前輪増速状態に切り換えられる。また、モード切換スイッチ66が急旋回モードに切り換えられている場合には、前輪2の切れ角が第1所定増速角度β1以上になると、旋回内側(左側)のサイドブレーキ41が制動側に操作される。
E地点でのトラクタは、ロータリ作業装置Rと障害物Sとの接触を回避するために、操縦ハンドル6を右側に操作して、車体1の向きが障害物Sの側壁と略平行になった状態であり、F地点でのトラクタは、操縦ハンドル6を更に右側に操作した状態である。
B地点からF地点までの状態では、トラクタの車体位置が基準線Lより左側(図16の紙面上側)に位置し、操縦ハンドル6が右側に操作されて前輪2の切れ角が右向きの状態であるので、D地点からF地点まで状態における操縦ハンドル6の右側への操作は、障害物Sの回避に伴うものであると判定される。
G地点でのトラクタは、障害物Sを回避して車体1の向きが畦と平行になるように、操縦ハンドル6を左側に操作した状態である。G地点では、トラクタの車体位置が基準線Lより右側(図16の紙面下側)に位置し、操縦ハンドル6が左側に操作されて前輪2の切れ角が左向きの状態であるので、G地点での操縦ハンドル6の左側への操作は、障害物Sの回避に伴うものであると判定される。
上記のように、操縦ハンドル6の操作が障害物Sの回避に伴うものであると判定されると、トラクタの旋回モードが鈍感モードに切り換えられて、第1所定上昇角度α1が第2所定上昇角度α2に大きく変更されると共に、第1所定増速角度β1が第2所定増速角度β2に大きく変更されて、自動上昇手段53、前輪増速手段51、及び後輪制動手段52の作動が遅らされる。従って、例えば切れ角センサ65により検出した前輪2の切れ角が、D〜G地点において第1所定上昇角度α1以上になったとしても、自動上昇手段53は作動せず(ロータリ作業装置Rは上昇せず)、切れ角センサ65により検出した前輪2の切れ角が、D〜G地点において第1所定増速角度β1以上になったとしても、前輪増速手段51及び後輪制動手段52は作動しない。
図16の(F’)で示すように、F地点から更に操縦ハンドル6を右側に操作すると、トラクタの車体位置が基準線Lより右側(図16の紙面下側)に位置し、操縦ハンドル6が右側に操作されて前輪2の切れ角が右向きの状態になるので、操縦ハンドル6の操作が障害物の回避に伴うものではないと判定されて、旋回モードが敏感モードに切り換えられる。これにより、F地点から更に操縦ハンドル6を右側に操作して、前輪2の切れ角が第1所定上昇角度α1以上になると、モード切換スイッチ66が小旋回モード又は急旋回モードに切り換えられている場合には、ロータリ作業装置Rが自動的に上昇し、更に、前輪2の切れ角が第1所定増速角度β1以上になると、伝動切換装置26の状態が前輪増速状態に切り換えられる。また、モード切換スイッチ66が急旋回モードに切り換えられている場合には、前輪2の切れ角が第1所定増速角度β1以上になると、旋回内側(右側)のサイドブレーキ41が制動側に操作される。
H地点でのトラクタは、G地点から徐々に操縦ハンドル6を右側に戻し操作し、トラクタの車体位置が基準線Lより右側(図16の紙面下側)に位置し、切れ角センサ65により検出した前輪2の切れ角が所定切れ角e未満になって、車体1の向きが畦と略平行になった状態である。これにより、操縦ハンドル6の操作が障害物Sの回避に伴うものではないと判定されて、旋回モードが敏感モードに切り換えられる。
H地点では、B地点からのx方向での移動距離Wxが所定距離(6m)以上になるので、H地点に達すると、基準位置a及び基準線Lがリセットされ、基準位置aからの移動距離Wx,Wyが初期値(0m)にリセットされて、再び、前輪2の切れ角が所定切れ角e以上になると、基準位置a及び基準線Lが設定され、基準位置aからの移動距離Wx,Wyの算出が開始される。
なお、図示しないが、図16の(C’)及び(F’)において、自動上昇手段53、前輪増速手段51、及び後輪制動手段52が作動すると、基準位置a及び基準線Lがリセットされ、基準位置aからの移動距離Wx,Wyが初期値(0m)にリセットされるように構成されている。
これにより、障害物Sを回避して、I地点のように、畦際に沿って耕耘作業を連続的に行うことができる。
図18(a)に示すように、トラクタの耕耘作業においては、障害物Sの手前側(図18における障害物Sの左側)をなるべく広範囲で耕耘できるように、ロータリ作業装置Rを障害物Sの手前側にぎりぎりのところまで近づける場合が多い。この場合、障害物Sに車体1の前部を近づける際には、前方に障害物Sが位置する状態であり、ロータリ作業装置Rの幅に対して車体前部の幅は狭いため、操縦ハンドル6を比較的ゆっくりと左側に操作して、障害物Sとの接触を回避する。
しかし、図18(b)に示すように、ロータリ作業装置Rが障害物Sの直後方に位置する状態では、車体前部の幅に対してロータリ作業装置Rの幅は広いため、障害物Sへのロータリ作業装置Rの接触を回避するために、急に操縦ハンドル6を右側に操作する場合がある。この場合、ロータリ作業装置Rを左側に振るようにして障害物Sを回避する場合が多く、ロータリ作業装置Rにより耕耘した土等が後方に飛ばされ難くなって、障害物Sの手前側に、耕耘跡(耕耘穴)が形成されることが多い。
そのため、障害物Sへの接触は回避できるが、前輪2の切れ角が多く操作されることになるので、自動上昇手段53が作動してロータリ作業装置Rが上昇し、耕耘作業が中断してしまうといった不具合があり、また、前輪2の切れ角が多く操作されるので、前輪増速手段51及び後輪制動手段52が作動して車体1が急旋回し、障害物Sを回避してからの作業走行経路の修正等が困難になってしまうといった不具合があった。
このトラクタでは、制御装置50による制御が実施されているので、上記のような不具合の発生を防止でき、連続した耕耘作業が可能になって、耕耘作業の作業性を向上できるのである。
[旋回判定制御によるその他の作業状況]
図19に基づいて旋回判定制御によるその他の作業状況について説明する。図19は、トラクタの作業状況を説明する概略平面図である。
図19(a)に示すように、畦が湾曲等する変形田で畦に沿って走行させながら、耕耘作業を行う場合や、図19(b)に示すように、変形田ではないが圃場で湾曲走行させる場合においては、比較的高速で走行させることが多く、操縦ハンドル6を比較的遅く操作することが多いため、しきい値判定により操縦ハンドル6の操舵速度のしきい値が高く変更されて、操縦ハンドル6を比較的多く操作した場合であっても、自動上昇手段53、前輪増速手段51、及び後輪制動手段52が作動し難くなる。これにより、耕耘作業しているにも関わらず自動上昇手段53、前輪増速手段51、及び後輪制動手段52が作動することを防止でき、耕耘作業を中断することなく連続的に行うことができる。
なお、例えば枕地旋回(畦際での約180度の旋回)する場合等には、比較的低速で走行させることが多く、操縦ハンドルを比較的速く操作することが多いため、しきい値判定により操縦ハンドル6の操舵速度のしきい値が低く変更されて、自動上昇手段53、前輪増速手段51、及び後輪制動手段52が作動し易くなる。これにより、ロータリ作業装置Rを迅速に上昇させて、車体1を小回りで旋回させることができる。
図19(c)に示すように、発進直後に条合わせ作業を行う場合や、図19(d)に示すように、旋回直後に条合わせ作業を行う場合には、推測手段54によりトラクタの走行が位置合わせ走行であると推測されるので、旋回モードが鈍感モードに切り換えられて、自動上昇手段53、前輪増速手段51、及び後輪制動手段52が作動し難くなる。これにより、耕耘作業しているにも関わらず自動上昇手段53、前輪増速手段51、及び後輪制動手段52が作動することを防止でき、前輪2が増速駆動されていない状態で、作業車の位置合わせ走行を精度よく行うことができると共に、一度下降させたロータリ作業装置Rが位置合わせ走行時に上昇することを防止でき、再度のロータリ作業装置Rの下降が必要なくなる。
[発明の実施の第1別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]においては、第1所定上昇角度α1を大きな角度(第2所定上昇角度α2)に変更することで、前輪2の切れ角が第1所定上昇角度α1以上になった場合に、自動上昇手段53が作動しないように構成し、第1所定増速角度β1を大きな角度(第2所定増速角度β2)に変更することで、前輪2の切れ角が第1所定増速角度β1以上になった場合に、前輪増速手段51及び後輪制動手段52が作動しないように構成した例を示したが、自動上昇手段53、前輪増速手段51、及び後輪制動手段53が作動しない構成として、異なる構成を採用してもよい。以下、その一例を図20に基づいて説明する。図20は、この別実施形態での旋回モード切換制御のフローチャートである。なお、後述する以外の他の構成は、前述の[発明を実施するための最良の形態]と同様である。
図20に示すように、旋回判定制御(ステップ#15)によりトラクタの状態が「旋回」と判断されると(ステップ#15・旋回)、トラクタの旋回モードが敏感モードに切り換えられる(ステップ#16)。
このフローチャートでは、図8におけるステップ#17は廃止されており、旋回判定制御によりトラクタの状態が「非旋回」と判断されている場合には(ステップ#15・非旋回)、トラクタの旋回モードが敏感モードには移行しない(鈍感モードは廃止されているので、鈍感モードにも移行しない)。
これにより、敏感モードに移行しない限り、自動上昇手段53、前輪増速手段51、及び後輪制動手段53は作動しないので(図14参照)、旋回判定制御によりトラクタの状態が「非旋回」と判断されている状態では、前輪2の切れ角が第1所定上昇角度α1以上になったとしても、自動上昇手段53は作動せず、前輪2の切れ角が第1所定増速角度β1以上になったとしても、前輪増速手段51及び後輪制動手段52は作動しないように構成されている。
[発明の実施の第2別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]、及び[発明の実施の第1別形態]においては、自動上昇スイッチ73が入り側(ON)に押し操作されている場合に(ステップ#14・YES)、旋回判定制御(ステップ#15)に移行するように構成した例を示したが、図21及び図22に示すような旋回モード切換制御を構成してもよい。図21は、この別実施形態での旋回モード切換制御のフローチャートであり、図22は、この別実施形態における敏感モード及び鈍感モードに移行した場合のフローチャートの一部である。なお、後述する以外の他の構成は、前述の[発明を実施するための最良の形態]又は[発明の実施の第1別形態]と同様である。
図21に示すように、図8におけるステップ#14は廃止されており、ステップ#10〜#13の条件を満たすと(ステップ#13・YES)、自動上昇スイッチ73が入り側に操作されているか否かに関わらず、後述する旋回判定制御(ステップ#15)に移行するように構成されている。
図22(a)に示すように、敏感モード(ステップ#16)に移行すると、自動上昇スイッチ73が入り側(ON)に押し操作されているか否かを判断される(ステップ#59)。自動上昇スイッチ73が切り側(OFF)に操作されている場合には(ステップ#59・NO)、前輪2の切れ角が第1所定上昇角度α1以上か否か判断されずに、ステップ#62以降のフローに移行する。
自動上昇スイッチ73が入り側(ON)に操作されている場合には(ステップ#59・YES)、切れ角センサ65からの検出結果に基づいて、前輪2の切れ角が第1所定上昇角度α1以上か否か判断され(ステップ#60)、前輪2の切れ角が第1所定上昇角度α1以上になると(ステップ#60・YES)、自動上昇手段53によりロータリ作業装置Rを下降位置から上昇位置に自動的に上昇させる(ステップ#61)。
図22(b)に示すように、鈍感モード(ステップ#17)に移行すると、自動上昇スイッチ73が入り側(ON)に押し操作されているか否かを判断される(ステップ#69)。自動上昇スイッチ73が切り側(OFF)に操作されている場合には(ステップ#69・NO)、前輪2の切れ角が第2所定上昇角度α2以上か否か判断されずに、ステップ#72以降のフローに移行する。
自動上昇スイッチ73が入り側(ON)に操作されている場合には(ステップ#69・YES)、切れ角センサ65からの検出結果に基づいて、前輪2の切れ角が第2所定上昇角度α2以上か否か判断され(ステップ#70)、前輪2の切れ角が第2所定上昇角度α2以上になると(ステップ#70・YES)、自動上昇手段53によりロータリ作業装置Rを下降位置から上昇位置に自動的に上昇させる(ステップ#71)。
[発明の実施の第3別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]、及び[発明の実施の第1別形態]においては、第1所定増速角度β1を第1所定上昇角度α1より大きい角度に設定した例を示したが、第1所定増速角度β1を第1所定上昇角度α1と同じ角度に設定してもよい。この場合、図14におけるステップ#62を廃止し、図14におけるステップ#60において、前輪2の切れ角が第1所定上昇角度α1(及び第1所定増速角度β1)以上か否か判断するように構成してもよい。
前述の[発明を実施するための最良の形態]、及び[発明の実施の第1別形態]においては、第2所定増速角度β2を第2所定上昇角度α2より大きい角度に設定した例を示したが、第2所定増速角度β2を第2所定上昇角度α2と同じ角度に設定してもよい。この場合、図15におけるステップ#72を廃止し、図15におけるステップ#70において、前輪2の切れ角が第2所定上昇角度α2(及び第2所定増速角度β2)以上か否か判断するように構成してもよい。
また、第1所定増速角度β1を第1所定上昇角度α1と同じ角度に設定すると共に、第2所定増速角度β2を第2所定上昇角度α2と同じ角度に設定してもよい。この場合、上記と同様に、図14及び図15におけるフローチャートを変更してもよい。
[発明の実施の第4別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]、[発明の実施の第2別形態]、及び[発明の実施の第3別形態]においては、車体の作業走行経路に対する位置合わせ走行として、発進直後の条合わせ作業及び旋回直後の条合わせ作業を例に示したが、車体の作業走行経路に対する異なる位置合わせ走行において、推測手段54により位置合わせ走行を推測するように構成してもよい。
具体的には、例えば、シャトルレバーセンサ61からの検出結果に基づいて、車体1が直進走行中又は湾曲走行中であることが検出され、操舵角センサ60からの検出結果に基づいて、所定時間内での右側及び左側への操縦ハンドル6の操作が検出された場合に、トラクタの走行が位置合わせであると推測されるように構成してもよい。これにより、直進走行中又は湾曲走行中に、圃場の凹凸等により操縦ハンドル6をとられた場合において、推測手段54により位置合わせ走行を推測することができる。
具体的には、例えば、上述した障害物回避判定を走行内容判定の中に組み入れて、操縦ハンドル6の操作が障害物Sの回避に伴うものであると判定される場合には、トラクタの走行が位置合わせであると推測されるように構成してもよい。これにより、直進走行中又は湾曲走行中に、障害物Sを回避する場合において、推測手段54により位置合わせ走行を推測することができる。
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]、[発明の実施の第2別形態]、及び[発明の実施の第3別形態]においては、基準位置aからのトラクタの走行距離Wが所定距離未満であることを条件に(図10のステップ#33・NO)、トラクタの走行が位置合わせ走行であるとの判定が維持されるように構成した例を示したが、異なる条件により、トラクタの走行が位置合わせ走行であるとの判定が維持されるように構成してもよい。
具体的には、トラクタの走行が位置合わせ走行であると判断されると(ステップ#30・YES)、タイマーのカウントを開始し、このタイマーにより予め設定した所定時間(例えば3秒,5秒)以内であることを条件に、トラクタの走行が位置合わせ走行であるとの判定が維持されるように構成してもよい。
[発明の実施の第5別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]、[発明の実施の第2別形態]、[発明の実施の第3別形態]、及び[発明の実施の第4別形態]においては、前輪2の切れ角を切れ角センサ65により検出し、操縦ハンドル6の操舵速度を操舵角センサ60により検出した例を示したが、切れ角センサ65により、前輪2の切れ角及び操縦ハンドル6の操舵速度を検出するように構成してもよい。具体的には、例えば、切れ角センサ65により検出した前輪2の切れ角を時間微分することで、制御装置50において操縦ハンドル6の操舵速度を演算するように構成してもよい。
また、操舵角センサ60により、前輪2の切れ角及び操縦ハンドル6の操舵速度を検出するように構成してもよい。具体的には、例えば、操舵角センサ60により検出された操縦ハンドル6の操舵角と、操縦ハンドル6の操舵角と前輪2の切れ角との相関関係データとに基づいて、制御装置50において前輪2の切れ角を演算するように構成してもよい。
[発明の実施の第6別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]、[発明の実施の第2別形態]、[発明の実施の第3別形態]、[発明の実施の第4別形態]、及び[発明の実施の第5別形態]における自動上昇手段53、前輪増速手段51、及び後輪制動手段52に代えて、異なる車体状態切換手段を採用した場合においても同様に適用できる。
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]、[発明の実施の第2別形態]、[発明の実施の第3別形態]、[発明の実施の第4別形態]、及び[発明の実施の第5別形態]においては、トラクタに作業装置としてロータリ作業装置Rを装着した例に示したが、作業装置として、例えば、プラウ、薬剤散布装置、ハロー、代かき等の異なる作業装置を、トラクタに装着してもよい。
[発明の実施の第7別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]、[発明の実施の第2別形態]、[発明の実施の第3別形態]、[発明の実施の第4別形態]、[発明の実施の第5別形態]、及び[発明の実施の第6別形態]においては、走行装置として前輪2及び後輪3を装備したトラクタを例に示したが、異なる走行装置を装備したトラクタにおいても同様に適用でき、例えば後輪3に代えてクローラ走行装置(図示せず)を装備したトラクタにおいても同様に適用できる。
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]、[発明の実施の第2別形態]、[発明の実施の第3別形態]、[発明の実施の第4別形態]、[発明の実施の第5別形態]、及び[発明の実施の第6別形態]においては、作業車の一例としてトラクタを例に示したが、異なる作業車においても同様に適用でき、例えば乗用型田植機、多目的水田作業車等においても同様に適用できる。