JP2009238682A - クラッドフィルター材 - Google Patents
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Abstract
【課題】メタノールを使用する燃料電池に適用可能であり、液体燃料の透過速度を制御でき、耐久性にも優れたクラッドフィルター材を提供することを目的とする。
【解決手段】メタノールを使用する燃料電池の物質透過膜となる板状のクラッドフィルター材であって、微細貫通孔を厚さ方向に備える孔開き樹脂層を、フェルト状樹脂繊維層の少なくとも一方の面に積層させたクラッドフィルター材を採用し、物質の透過量を高精度に調整可能とした。
【選択図】図1
【解決手段】メタノールを使用する燃料電池の物質透過膜となる板状のクラッドフィルター材であって、微細貫通孔を厚さ方向に備える孔開き樹脂層を、フェルト状樹脂繊維層の少なくとも一方の面に積層させたクラッドフィルター材を採用し、物質の透過量を高精度に調整可能とした。
【選択図】図1
Description
本件発明は、メタノールを使用する燃料電池の構成材であり、物質透過膜となる板状のクラッドフィルター材に関する。
携帯型電子機器の駆動電源として燃料電池が注目されており、燃料としてのメタノールを直接電極で反応させるダイレクトメタノール形燃料電池(以下、「DMFC」と記す。)は、小型化に有利で注目されている。
DMFCでは、燃料極においてメタノールを水と反応させて水素イオンと電子を発生させ、この発生した水素イオンと電子とを、空気極において酸素と反応させることにより電流を発生させている。そのため、DMFCでは、燃料極側、電極、空気極側の全体に渡って物質が流通しており、その透過膜として各種多孔質体が用いられている。多孔質体は、多孔であるが故の細孔性と大きな表面積と表面特性、透過性等が特徴であり、分離膜、吸着剤、触媒等、多様な目的で利用されている。燃料電池用の多孔質体の例としては、多孔質カーボン、発泡金属、めっきされた不織布、電鋳材料、エキスパンドメタル、ポリビニルホルマール等の高分子多孔質体等が挙げられる。
DMFCでは、燃料極において、液体燃料であるメタノールから分解した水素イオンを電解質膜に透過させる。ところが、メタノールが分解しないままで電解質膜を透過して、空気極に達し、酸素と反応するクロスオーバー現象により、出力電圧低下や燃料損失が発生する場合があり、これらの解決方法が課題となっている。
メタノールのクロスオーバーを防止するために、例えば、特許文献1には、固体高分子形燃料電池、直接液体形燃料電池、直接メタノール形燃料電池の構成材料となる膜−電極接合体に関し、メタノール遮断性を有するプロトン伝導性高分子膜を用いて、メタノールのクロスオーバーを低減させるとともに、十分な接合強度を有する膜−電極接合体が開示されている。
また、特許文献2には、液体燃料電池に関し、負極と接する部分に、連続孔がある多孔体を含む液体燃料含浸部が配置されることにより、クロスオーバーを抑制しようとする技術が開示されている。具体的には、液体燃料貯蔵部の負極側の面に燃料供給孔を備え、この燃料供給孔内に、繊維状多孔体、発泡状多孔体等の多孔体を含む液体燃料含浸部を配置している。
燃料電池は、出力とエネルギー効率の向上が望まれており、このような課題に対して、液体燃料であるメタノールの濃度を高くすることが有効である。しかし、メタノールの濃度が高いと、クロスオーバーが発生しやすく、メタノールの高濃度化とクロスオーバー防止のバランスが課題となっていた。
特許文献2に開示の技術では、液体燃料貯蔵部に備える複数の燃料供給孔内に液体燃料含浸部を埋設配置する必要があり、作業性に問題がある。また、液体燃料含浸部の空隙率で透過量を調整しようとするので透過量の調整の精度が低く、高濃度メタノールを用いた場合のクロスオーバーの抑制には限界がある。
そこで、上記従来技術において、燃料電池の液体燃料を供給する場合に、メタノールクロスオーバーを防ぎ、所望の状態で水素イオンが電解質膜側に供給可能となるようにメタノールの供給量を制御した透過膜が望まれていた。本件発明は、メタノールを使用する燃料電池に適用可能であり、クロスオーバーを抑制し、電解質膜側への燃料供給を制御可能であり、耐久性にも優れたクラッドフィルター材を提供することを目的とする。
本発明者等は、鋭意研究を行った結果、以下のクラッドフィルター材を採用することで上記目的を達成するに到った。
本発明に係るクラッドフィルター材は、メタノールを使用する燃料電池の物質透過膜となる板状のクラッドフィルター材であって、微細貫通孔を厚さ方向に備える孔開き樹脂層を、フェルト状樹脂繊維層の少なくとも一方の面に積層させたことを特徴とする。
本発明に係るクラッドフィルター材は、微細貫通孔の形状や数の自由度が高く、物質透過量の調整が容易であり、特に、DMFCにおいて、高濃度メタノールを使用してもクロスオーバーを防ぐことができる。更に、メタノールを使用する燃料電池にて生じやすい蟻酸等に対する耐食性を備える。この結果、高濃度メタノールが使用可能となり、燃料効率を向上させることができ、燃料ロスを抑えるとともに、高出力化を図ることができる。
以下、本発明に係るクラッドフィルター材の最良の実施の形態に関して説明する。
本発明に係るクラッドフィルター材は、メタノールを使用する燃料電池の物質透過膜として好適な板状のクラッドフィルター材である。すなわち、クラッドフィルター材は、微細貫通孔を厚さ方向に備える孔開き樹脂層をフェルト状樹脂繊維層の少なくとも一方の面に積層させた多層材であり、厚さ方向に微細貫通孔を備える孔開き樹脂層を積層させることにより、その厚さ方向に気体又は液体を透過させることができるものである。
メタノールあるいはメタノール水溶液は各種燃料電池の燃料として用いられている。本発明に係るクラッドフィルター材は、メタノールあるいはメタノール水溶液の透過速度を長期間、精度良く制御すべく検討されたものであり、メタノールを燃料として用いた燃料電池の透過膜として好適に使用される。
DMFCでは、電解質膜の両面に、アノードとカソードを配置した電極膜接合体(MEA)を用い、MEAのアノード側にメタノール水溶液の液体燃料貯蔵部を備える。燃料貯蔵部に蓄えたメタノール水溶液を、透過膜等を用いて供給量を調整させながら透過させ、最終的に水素イオンを電解質膜に供給する。本発明に係るクラッドフィルター材を、特に、DMFCの燃料供給側とアノードとの間に設ける燃料の透過量制御膜として用いると、燃料供給量の制御に大きな効果を発揮し、液体燃料がMEAの電解質膜に達することを抑制してクロスオーバーを防止することができる。
フェルト状樹脂繊維層は、複数の樹脂繊維を主な構成材料とした織布又は不織布である。フェルト状樹脂繊維層は、気体又は液体との広い接触面積を確保して、液体燃料を含浸、滞留させ、且つ、気体又は液体の流通経路を確保する。
次に、フェルト状樹脂繊維層を形成する樹脂繊維としては、レーヨン繊維、セルロース繊維、架橋ポリビニルアルコール繊維、液晶ポリマー、ポリエステル等が挙げられる。
フェルト状樹脂繊維層に孔開き樹脂層を張り合わせる場合に、一般的なバインダーとしては、エポキシやアクリル系の樹脂が考えられる。しかし、このような樹脂を燃料電池のクラッドフィルター材のバインダーに用いると、メタノールを透過させる場合には、メタノールにバインダー成分が溶出する点が課題となる。しかし、自己融着性不織布を採用することにより、上述のようなバインダーが不要となり、バインダー成分がメタノールへ溶出することがない。
また、フェルト状樹脂繊維層は、その平均厚さが20μm〜500μmであることが好ましい。平均厚さが20μm未満であると、気体又は液体の接触面積が小さくなり、流通経路の確保が難しく、フェルト状樹脂繊維層の効果を発揮できない。一方、フェルト状樹脂繊維層の平均厚さが500μmを上回ると、小型化を図る点で適さない。
そして、フェルト状樹脂繊維層は、樹脂繊維の他に、触媒担持繊維、金属繊維を組み合わせた複合繊維製不織布を用いることができる。例えば、フェルト状樹脂繊維層に金属繊維を組み合わせて、フェルト状樹脂繊維層の目付量を調整したり、耐食性、触媒量の調整等を考慮した配合とすることができる。
更に、フェルト状樹脂繊維層は、その繊維表面に触媒成分を担持させた繊維として用いることもできる。本発明に係るクラッドフィルター材は、気体又は液体の透過速度の制御が可能であるので、触媒を担持した繊維からなるフェルト状樹脂繊維層を用いると、フェルト状樹脂繊維層に気体又は液体を滞留させている間に触媒作用を効果的に発揮させることができ、例えば、燃料の改質効果が得られる。
また、フェルト状樹脂繊維層に、親水化処理、極性基の導入等の表面改質処理を施しても良い。このような表面改質処理により、例えば、触媒担持性、保水性や、フェルト状樹脂繊維層と孔開き樹脂層又は孔開き金属層との密着性を向上させることができる。このような表面改質処理の例としては、グラフト化処理、スルホン化処理、プラズマ処理、UV処理、化学薬品処理、表面の機械研磨等が挙げられる。
孔開き樹脂層は、任意の形状及び開口率で厚さ方向に貫通する微細貫通孔を有する樹脂層である。孔開き樹脂層は、円形、楕円形、スリット等、用途に応じた形状の貫通孔を、穿設加工して形成された樹脂層である。孔開き樹脂層は、微細貫通孔の位置、形状及び開口率等、自在にパターン形成できるので、透過させる気体又は液体や、所望の透過速度等の条件に対する適応性に優れている。更に、フェルト状樹脂繊維層の厚さを薄くするのに適しているので、薄い上に、透過速度を精度良く制御することができる。
孔開き樹脂層の好ましい平均厚さは10μm〜50μmである。孔開き樹脂層の平均厚さが10μm未満であると、微細貫通孔の形状維持が難しくなり、液体燃料の流入圧力によって微細貫通孔が破損しやすくなる。一方、孔開き樹脂層の平均厚さが50μmより厚いと、貫通孔の成形精度が下がる上に小型化を図れない。
孔開き樹脂層に備える微細貫通孔の平均長径が10μm〜60μmである。微細貫通孔の平均長径とは、微細貫通孔の開口距離が最長となる部分の平均長さをいう。微細貫通孔の平均長径が60μmを上回ると、メタノール水溶液の透過を抑制することが難しい。なお、微細貫通孔は、メタノール成分が透過可能な大きさであれば良いが、メタノール成分の透過速度が遅すぎると発電効率が低下する。したがって、メタノール成分が透過可能であり、且つ適正な透過速度を考慮すると、微細貫通孔の平均長径の下限は10μm程度である。
加えて、孔開き樹脂層は、面積あたりの開口率を5%未満とすることが好ましい。孔開き樹脂層の面積あたりの開口率が5%以上だと、過量のメタノール水溶液が透過しやすくなる。なお、開口率の下限値は、使用するクラッドフィルター材の面積等、燃料電池の設計により変動するので、特に限定しない。しかし、面積あたり開口率が小さくなるほど、メタノール水溶液の透過を抑制できることが分かった。したがって、メタノール成分が透過可能であり、且つ適正な透過速度を考慮すると、孔開き樹脂層の面積あたり開口率は、好ましくは4%以下、より好ましくは1%以下、最も好ましくは0.3%以下で少なくとも気体透過性が得られれば良い。
孔開き樹脂層は、メタノールに不溶であり、且つ、膨潤しない熱可塑性樹脂からなる。例えば、ポリイミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等からなる樹脂フィルムが挙げられる。特に、ポリイミドフィルムは、メタノール水溶液への耐食性、発電過程で生じる熱への耐熱性、反応過程で生じる蟻酸等への耐食性の点で好ましい。
孔開き樹脂層は、予め孔開き樹脂フィルムを作製しておき、フェルト状樹脂繊維層に貼り合わせることにより形成する。孔開き樹脂フィルムの微細貫通孔の形成方法は、UVレーザー加工、レーザー穿設、印刷法、エッチング、液体レジスト法、パンチング、ドリル等により製造でき、製造すべき孔開き樹脂層の材料、厚さ、微細貫通孔の大きさや形状等の条件に従って適宜選択すれば良い。加工性及び作業効率を考慮すると、微細貫通孔の数が少ない場合には、レーザー穿設が好ましい。20μm程度の微細貫通孔を形成する場合は、YAGレーザーが好ましい。また、約60μm径の微細貫通孔とする場合は、炭酸ガスレーザーによる加工が好適である。
また、孔開き樹脂層は、フェルト状樹脂繊維層との接着面側に半硬化樹脂層を備えると、フェルト状樹脂繊維層との接着性に優れる。本発明に係るクラッドフィルター材では、孔開き樹脂層に半硬化樹脂層を積層した状態で厚さ方向に貫通する微細貫通孔を備えるので、半硬化樹脂層によって流通経路が塞がれることがない。
半硬化樹脂層は、フェルト状樹脂繊維層との接着後に、非水溶性であり、メタノールや蟻酸に対する耐食性を備えるものであれば良く、エポキシ系の樹脂等、ポリイミドの接着に用いられる従来品が使用できる。
フェルト状樹脂繊維層は、透過性も表面積も十分に備えるので、フェルト状樹脂繊維層単体で、透過制御膜として用いられてきた。しかし、本発明に係るクラッドフィルター材は、フェルト状樹脂繊維層の少なくとも一方の面に、孔開き樹脂層を張り合わせた構成とすることによって、メタノール水溶液もしくはメタノール成分の透過速度が異なる層を積層させた。この結果、液体燃料のフェルト状樹脂繊維層への流入量もしくは流出量を制御することができ、液体燃料の透過量を制御する精度を向上させることができる。この結果、高濃度メタノール水溶液を用いた場合でも、クロスオーバーを防止することができる。
本発明に係るクラッドフィルター材は、フェルト状樹脂繊維層の少なくとも一方の面に、上述の孔開き樹脂層を備えれば良い。そして、DMFCの液体燃料透過膜として用いる場合は、当該孔開き樹脂層が液体燃料貯蔵部側にあり、フェルト状樹脂繊維層が電極側に配置されると良い(図1参照)。孔開き樹脂層で、フェルト状樹脂繊維層への液体燃料の流入量を制御すると、フェルト状樹脂繊維層への含浸量を好適な状態に保つことができるからである。
本発明に係るクラッドフィルター材は、その用途に応じて、フェルト状樹脂繊維層の一面側のみに孔開き樹脂層を積層させた構成(図1参照)、フェルト状樹脂繊維層の両面に孔開き樹脂層を積層させた構成、いずれを用いても良い。
また、フェルト状樹脂繊維層の一面に孔開き樹脂層を積層させる場合は、他面に孔開き金属層を積層させた構成(図3参照)としても良い。
なお、フェルト状樹脂繊維層の各面に積層させる孔開き樹脂層または孔開き金属層の孔の位置、大きさ、形状はそれぞれ任意に設定可能である。フェルト状樹脂繊維層の両面に設ける各孔開き樹脂層または孔開き金属層の孔の位置や大きさを変えることにより、透過速度を細かく調整することができる。また、二酸化炭素等のガスを抜けやすくする場合や、逆に、滞留させたりするような場合等、必要に応じて任意のパターンを形成することができる。
また、フェルト状樹脂繊維層の両面に孔開き樹脂層を積層させる場合に、各面の開口率や厚さ等は各面毎に設定可能である。フェルト状樹脂繊維層の片面に孔開き樹脂層、他面に孔開き金属層を形成する場合も同様である。
そして、本発明に係るクラッドフィルター材の全体の平均厚さは20μm〜500μmであることが好ましい。クラッドフィルター材の強度を考慮すると、平均厚さの下限は20μm程度である。そして、本発明に係るクラッドフィルター材は、薄くて軽量でありながら、透過速度を制御可能であることが特徴であるので、500μmを上回るクラッドフィルター材は、小型化の課題が解決し難い。なお、平均厚さが20μm以上のクラッドフィルター材は、メタノールのクロスオーバーを防ぐことができるだけでなく、DMFCの燃料透過膜に用いた場合に、メタノールの分解で生じる二酸化炭素の脱ガス性能が良好になる。以下、上述のクラッドフィルター材の変形例について述べる。
耐食性金属被覆層を備えるクラッドフィルター材:上述のクラッドフィルター材において、図2に示すように、フェルト状樹脂繊維層の両面に孔開き樹脂層を備え、一面側の孔開き樹脂層の表面に耐食性金属被覆層が形成されるものとしても良い。耐食性金属とは、メタノールを使用する燃料電池の反応過程における副生成物である蟻酸や、MEAのアノードと接触しても腐食されないような耐食性を備える金属をいう。耐食性金属被覆層は、少なくともその表面をモリブデン、クロム、チタン、タンタル、ニオブ、タングステン、金の中のいずれか1種又は2種以上、あるいはニッケル合金、ニッケル及びスズを含む合金のいずれかで形成されたものが好ましい。耐食性金属被覆層を孔開き樹脂層の表面に備える構成とすると、燃料電池の使用環境における耐食性を備えながら、当該クラッドフィルター材を透過制御材と集電体とを兼ね備える態様で用いる場合に、端子としての接触抵抗を下げる効果や、金属の熱伝導性を利用して液体燃料のガス化を促進する機能等が得られる。更に、孔開き樹脂層の表面に銅又は銅合金からなる層を形成し、その表面を上述の耐食性金属で被覆し、多層構造とすることも考えられ、導電性を向上させられる。
片面に孔開き金属層を備えるクラッドフィルター材:本発明に係るクラッドフィルター材は、例えば、図3に示すように、フェルト状樹脂繊維層の一面に孔開き樹脂層を備え、他面には、厚さ方向に貫通する微細貫通孔が形成された孔開き金属層を積層した層構成としても良い。
この場合、孔開き樹脂層を燃料供給部に配置し、孔開き金属層を電極側に配置する。金属は形状加工、粗化処理、耐食処理等が行いやすいので、貫通孔の微細化や貫通孔の形状の自由度が高く、貫通孔の形状維持の点でも優れ、孔開き樹脂層に比べて開口幅がより小さい貫通孔の成形精度に優れる。したがって、フェルト状樹脂繊維層の一方の面を孔開き金属層とし、孔開き金属層を液体燃料の流出側に配置すると、メタノール水溶液の流出を防いでクロスオーバーを防止することができる。また、孔開き金属層に表面処理を施すことによって、燃料電池の集電体としての機能や、金属の熱伝導性を利用して液体燃料のガス化を促進する機能等を兼ね備えることができる。
孔開き金属層は、少なくともその表面がモリブデン、クロム、チタン、パラジウム、白金、タンタル、ニオブ、タングステン、金の中のいずれか1種又は2種以上からなる合金、あるいはニッケル及びスズを含む合金で被覆されたものが好ましい。孔開き金属層は、少なくともその表面が上記材料で形成されていればよいので、表面部分を形成する材料とその内側の基材を形成する材料とは、同一であっても、異なる材料からなる多層構造であっても良い。例えば、銅、銅合金、チタン、チタン合金、タンタル、タンタル合金、ニオブ、ニオブ合金、ニッケル、ニッケル合金、バナジウム、白金、パラジウム、耐熱アルミニウム、ステンレス鋼のいずれかの材質からなる基材を用い、その基材表面がスズ−ニッケル合金等で被覆されたものであっても良い。
孔開き金属層は、その表面粗さ(Rzjis)が0.5μm〜10μmであることが好ましい。孔開き金属層の表面粗さをこの範囲とすると、フェルト状樹脂繊維層との密着性に優れる。したがって、ここで言う孔開き金属層の表面粗さは、少なくともフェルト状樹脂繊維層との接触面側における表面粗さを言う。なお、フェルト状樹脂繊維層と接触しない部分の孔開き金属層の表面粗さについても、十分な表面積を確保することによりクロスオーバーを防ぐことができる。すなわち、上記表面粗さの孔開き金属層とすることにより、液体燃料が貫通孔からMEA側に透過した場合でも、孔開き金属層の表面積が広いために、孔開き金属層表面からメタノール水溶液の気化を促進させることもできるので、孔開き金属層から外部に液体燃料が透過することを抑制することができる。なお、表面粗さ(Rzjis)はJIS B 0601に準拠してTD方向に測定している。また、孔開き金属層の表面に粗化処理を施すことによって、表面粗さを調整することができる。粗化処理は、孔開き金属層の片面に施しても良いし、両面に施しても良い。
また、孔開き金属層は、その平均厚さが3μm〜50μmであることが好ましい。孔開き金属層の平均厚さは、クラッドフィルター材の用途、気体又は液体の透過速度等により上記範囲で任意に設定できる。孔開き金属層の平均厚さは、3μm未満であると強度が不足し、また流入する気体又は液体の圧力損失が大きすぎて、あらゆる用途での透過速度の調整が困難になる。一方、平均厚さが50μmを上回る孔開き金属層は、この厚さを超えるようにしてまでもクラッドフィルター材としての強度を向上させる必要もなく、小型軽量化の点でも実用に適さない。なお、孔開き金属層のより好ましい平均厚さは3μm〜30μmである。
なお、孔開き金属層の微細貫通孔は、フェルト状樹脂繊維層と孔開き金属層の接触面における開口面積より、孔開き金属層の外表面側における開口面積を大きくすることによりガス溜まりが形成されても良い。例えば、電解質膜側の面における微細貫通孔の厚さ方向の形状を変形させて、アノードにおいて生じる二酸化炭素を溜められるようにし、ガスバリアを形成することも考えられる。すなわち、開口径を厚さ方向において段階的に拡大した形状の微細貫通孔を形成する。この孔開き金属箔の微細貫通孔が、燃料貯蔵部側から電解質膜側に向けて、階段状に開口径が広がる形状となるように配置する。この結果、アノードにおいて生じる二酸化炭素が微細貫通孔の凹部に溜まり、このガス溜まりによって、メタノール水溶液が微細貫通孔を透過するのを防ぐことができる。
そこで、孔開き金属層に形成される微細貫通孔は、メタノール水溶液の流出を防ぐためには、少なくともフェルト状樹脂繊維層との接触面における平均長径が60μm以下にすると良い。微細貫通孔の平均長径が60μmを上回ると、メタノール水溶液の透過を抑制することが難しい。なお、微細貫通孔は、メタノール成分が透過可能な大きさであれば良いが、メタノール成分の透過速度が遅すぎると発電効率が低下する。したがって、メタノール成分が透過可能であり、且つ適正な透過速度を考慮すると、微細貫通孔の平均長径の下限は1μm程度である。
孔開き金属層は、予め作製した孔開き金属箔をフェルト状樹脂繊維層に貼り合わせることで形成される。孔開き金属層を構成する孔開き金属箔は、パンチング、レーザー穿設、乾式薄膜形成法等の方法を用いて製造することができるが、以下に示すレジスト法により製造すると、表面形状の自由度を高め、形状や大きさ等の幅広い設計条件に対応可能であり、且つ、微細孔を美麗に形成することができ、幅広い材料で経済的に製造可能である。
レジスト法を用いた孔開き金属箔の製造方法は、まず、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法等の印刷法やフォトレジストを用いて、厚みを有し、作製すべき孔開き金属箔の孔部分の形状に対応し、型枠となるエッチングレジスト層を支持金属表面に形成する。このエッチングレジスト層が支持金属表面に形成された状態で、電解めっき法により型枠となるエッチングレジスト層以外の部分に金属めっき層を電析させる。続いて、エッチングレジスト層を除去し、支持金属を剥離することにより、孔開き金属箔が得られる。
孔開き金属箔の面積あたりの開口率は5%以下が好ましい。孔開き金属箔の面積あたりの開口率が5%以上だと、メタノール水溶液が過剰透過しやすくなる。なお、この面積あたり開口率が小さくなるほどメタノール水溶液の透過量を抑制できることが分かった。したがって、孔開き金属箔の面積あたり開口率は、好ましくは4%以下、より好ましくは1%以下、最も好ましくは0.3%以下である。また、面積あたり開口率の下限値は、メタノール濃度、使用するクラッドフィルター材の面積等、燃料電池の設計により変動するので、特に限定を要しない。少なくとも物質透過性が得られ、且つ実用可能な透過速度を得るには、面積あたり開口率は少なくとも0.1%あれば良いと言える。
次に、本発明に係るクラッドフィルター材の基本的な製造形態を示す。本発明に係るクラッドフィルター材は、孔開き樹脂層を構成する孔開き樹脂フィルム又は孔開き金属箔を用意し、フェルト状樹脂繊維層の片面又は両面に、孔開き樹脂フィルムを当接させ積層状態とし、プレス加工により熱圧着する。これらのプレス加工時のプレス条件は、用いるフェルト状樹脂繊維層、孔開き樹脂フィルム、孔開き金属箔の種類や、接着剤を用いる場合はその種類により異なる。
なお、フェルト状樹脂繊維層の片面に孔開き金属層を形成するクラッドフィルター材の場合は、先にフェルト状樹脂繊維層の片面に孔開き金属箔を積層してプレス加工により熱融着させる。このとき、孔開き金属箔側から加熱すると、金属の熱伝導性を利用して孔開き金属箔とフェルト状繊維層との当接部分では両層が接合する。これに対し、孔開き金属箔の開口部分では、露出したフェルト状樹脂繊維層が溶けず、当該開口部分におけるフェルト状繊維層の物質透過性は確保される。
ここで、フェルト状樹脂繊維層は、金属と接着させる場合は、液晶ポリマー不織布、ポリエステル不織布等を採用すると、自己融着性を備え、バインダーを用いなくても、繊維同士の十分な接着強度を得ることができるので好適である。すなわち、自己融着性の不織布は、融点が高く、必然的に表面の軟化温度も高くなるので、高温下での熱圧着に適しており、異なる材料からなる孔開き樹脂層と、バインダーを用いなくても十分な接着強度を得ることができ、且つ、繊維層を維持できるので好適である。
積層状態を維持したままプレス圧をかけ、フェルト状樹脂繊維層表面の軟化温度以上の温度で加熱を行い、その後降温することで、フェルト状樹脂繊維層と孔開き金属箔とが張り合わせられる。フェルト状樹脂繊維層表面の軟化温度とは、当該フェルト状樹脂繊維の構成成分の軟化が始まり、少なくとも物理的な力を加えなくてもフェルト状樹脂繊維層の表面の変形が始まる温度を言う。なお、フェルト状繊維樹脂層と孔開き金属箔との接触面付近のみを熱融着すべく、加熱時間は10秒〜5分程度とすることが望ましい。
プレス加圧時の加熱温度はフェルト状樹脂繊維層の表面の軟化温度以上とする必要があるが、その温度はフェルト状樹脂繊維層の構成成分、繊維の径や、不織布の密度等の諸条件によって異なる。したがって、加熱温度は、採用する材料、圧力、湿度、雰囲気(大気、真空)時間等に応じて、フェルト状樹脂繊維層表面の軟化点より5℃〜15℃高温、好ましくは5℃〜10℃高温の範囲で適宜設定することが好ましい。加熱温度を上記範囲とすることにより、フェルト状樹脂繊維層の加熱された側の表面のみが溶融するので、繊維層が維持された状態で孔開き金属箔と融着する。
なお、フェルト状樹脂繊維層の繊維質を維持するために、フェルト状繊維層を構成する材料は、孔開き樹脂層または孔開き金属層を構成する材料より融点の低いものを選択することが好ましい。
フェルト状樹脂繊維層の片面に孔開き金属箔を張り付けた後、フェルト状樹脂繊維層の他面に孔開き樹脂フィルムを積層して真空プレスして製造する。孔開き樹脂フィルムとフェルト状樹脂繊維層との接着は、孔開き樹脂フィルムとフェルト状樹脂繊維層との界面に接着層として半硬化樹脂層を形成し、プレス圧着させる。半硬化樹脂層により孔開き樹脂フィルムとフェルト状樹脂繊維層とを接着させる場合は、樹脂フィルムと半硬化樹脂フィルムとを積層した後に、微細貫通孔を形成することにより、孔開き樹脂層の厚さ方向に貫通する微細貫通孔を形成する。こうすることにより、フェルト状樹脂繊維層と孔開き樹脂フィルムとの当接面において、プレス時に接着剤により両者が十分に接着されるが、孔開き樹脂フィルムの開口部分においてはフェルト状樹脂繊維層の透過性が確保される。この結果、燃料の透過経路を塞ぐことがなく接着性を保つことができる。
プレス圧は、積層材料の種類によって異なるが、孔開き樹脂フィルムまたは孔開き金属箔とフェルト状樹脂繊維層との接触面の部分が圧着され、且つ、フェルト状樹脂の繊維質が保たれた状態にするために、1kg/cm2〜60kg/cm2の範囲で圧力をかける。より好ましくは10kg/cm2前後の圧力をかけるのが好ましい。
孔開き金属箔や、金属被覆層を備える孔開き樹脂フィルムをプレス加圧する際、プレスプレートと積層材料とが接合するのを防ぎ、剥離後の仕上がりを良くするために離形フィルムを用いる。なお、プレス時に、プレスプレートと離形フィルムとの間に、プレス加工補助材として銅箔(不図示)を挟むと、熱伝導性に優れる効果を奏するのでプレス処理の仕上がりが良好となり好ましい。
また、金属被覆層を表面に備える孔開き樹脂層を更に金で被覆する場合は、当該孔開き樹脂層をフェルト状樹脂繊維層に接着させた後に、金めっき処理することにより、金属被覆層の表面に金を被覆させることができる。金めっき処理法としては、フラッシュ金めっき、電解金めっき等が考えられる。なお、金めっき処理前に、金の拡散防止層として、孔開き樹脂層と金との間にニッケル層を形成させると、より好ましい。
ここで、上記方法と異なり、樹脂層部または金属箔とフェルト状樹脂繊維層とを接合させた後、エッチング等により樹脂層又は金属箔に開口を設ける方法を用いると、開口部分におけるフェルト状樹脂繊維層が溶融する。この結果、開口部分におけるフェルト状繊維層の溶融状態にバラツキが生じ易く、透過性能の精度が劣るものとなる。
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。
実施例1は、図1に示すように、液晶ポリマーからなるフェルト状樹脂繊維層の片面に、プレスにより、孔開き樹脂層を積層させたクラッドフィルター材を示す。
最初に、孔開き樹脂層として、直径20μmの円形の貫通孔を複数備え、面積あたりの開口率が0.13%、平均厚さ29μmである孔開き樹脂フィルムを作製した。
まず、厚さ25μmのポリイミド(カネカ製 アピカル)に、半硬化樹脂層を平均厚さ4μmとなるように塗工した。その後、150℃で2分間オーブン乾燥し、溶剤を除去した。半硬化樹脂は、エポキシ樹脂(東都化成製 YD−128)100gと、硬化剤としてのジシアンジアミド4gと、硬化促進剤としてのイミダゾール化合物(四国化成工業製 2E4MZ)をエポキシ樹脂と硬化剤との合計に対して0.5wt%とを、溶剤(ジメチルフォルムアミド)に溶解させ、固形分濃度50%としたのものを用いた。
次に、微細貫通孔を形成する。半硬化樹脂層を塗工したポリイミド材に、ポリイミド層側から、波長355nm、定格平均出力3WのUVレーザーを直接照射して、半硬化樹脂層を含む厚さ方向に貫通する直径20μmの円形の微細貫通孔をその中心間の距離が等間隔となるように整列させて形成し、貫通孔形成部分の樹脂を除去して孔開き樹脂フィルムを製造した。
作製した孔開き樹脂フィルムを、プレス加工により、フェルト状樹脂繊維層の片面に張り付ける。フェルト状樹脂繊維層は、厚さ120μm、目付量40g/m2、密度0.341g/m2の液晶ポリマー不織布(株式会社クラレ製 ベクルスMBBK(商品名))を用いた。
プレス加工は、離形フィルム/孔開き樹脂フィルム/フェルト状樹脂繊維層/離形フィルム、の順に積層載置したものをプレスプレートに挟んだ状態で真空プレス装置にセットした。離形フィルムはポリイミドフィルムを用いた。そして、プレス圧10kg/cm2をかけ180℃で1時間プレスした。その後、降温することで、フェルト状樹脂繊維層2と孔開き樹脂フィルム3とが半硬化樹脂層4により張り合わせられたクラッドフィルター材1を得た。
実施例2は、フェルト状樹脂繊維層の両面に孔開き樹脂層を積層させたクラッドフィルター材の例を示す。フェルト状樹脂繊維層及び孔開き樹脂層は、実施例1と同じものを用いた。
プレス加工は、離形フィルム/孔開き樹脂フィルム/液晶ポリマー不織布/孔開き樹脂フィルム/離形フィルムの順に積層したものをプレスプレートに挟んだ状態で、実施例1と同様に真空プレス装置にセットした。そして、プレス圧10kg/cm2をかけ180℃で1時間プレスした。その後、降温することで、フェルト状樹脂繊維層の両面に孔開き樹脂層が張り合わせられたクラッドフィルター材が得られた。
実施例3は、実施例2のクラッドフィルター材の孔開き樹脂層のうちの片面のみの表面に、耐食性金属被覆層5を形成したクラッドフィルター材を示す(図2参照)。耐食性金属被覆層5は、孔開き樹脂層3の表面にニッケルクロム合金、銅、ニッケル、金を順次積層した構成とした。
孔開き樹脂フィルムは、片面は実施例1と同じものと、耐食性金属被覆層を形成した孔開き樹脂フィルムとをそれぞれ用意した。耐食性金属被覆層を形成した孔開き樹脂フィルムは、市販のポリイミド/NiCr/Cu複合箔(日鉱マテリアルズ製、商品名MAQINAS)を加工して用いた。この複合箔のポリイミド層側に、実施例1と同様に、半硬化樹脂層4としてエポキシ樹脂を厚さ4μmとなるまで塗工し、150℃で2分間オーブン乾燥させた。
次に、UVレーザー加工により、ポリイミド層側から、波長355nm、定格平均出力3WのUVレーザーを直接照射して、厚さ方向に貫通する微細貫通孔を形成した。更に、微細貫通孔形成後の樹脂フィルムの銅層側に、電解めっきにより、ニッケル層、金層を順次積層させて耐食性金属被覆層を形成した孔開き樹脂フィルムとした。この耐食性金属被覆層を形成した孔開き樹脂フィルムは、厚さ4μmのエポキシ樹脂層、厚さ25μmのポリイミド層、厚さ20nmのニッケルクロム合金層、厚さ0.3μmの銅層、厚さ2μmのニッケル層、厚さ0.5μmの金層を順次積層した構成とした。なお、各層の厚さは全て平均厚さである。
プレス加工は、離形フィルム/孔開き樹脂フィルム/液晶ポリマー不織布/ニッケルクロム合金層を形成した孔開き樹脂フィルム/離形フィルム、の順に積層したものをプレスプレートに挟んだ状態で、実施例1と同様に真空プレス装置にセットした。そして、プレス圧5.0kg/cm2をかけ、180℃で1時間プレスした。その後、降温することで、フェルト状樹脂繊維層と孔開き樹脂フィルムとが張り合わせられた。
実施例4は、図3に示すように、実施例1のクラッドフィルター材において、孔開き樹脂層が張り付けられていない他方の面に孔開き金属層を積層させたクラッドフィルター材を示す。
まず、孔開き樹脂フィルム及び孔開き金属箔をそれぞれ用意する。孔開き樹脂フィルムは実施例1と同じものを用いた。孔開き金属箔は、平均厚さ10μmの銅箔表面に、微細な凹凸を形成したものを基材として用い、この基材表面にスズ−ニッケル合金めっきを施した孔開き金属箔を用いた。
まず、基材となる孔開き銅箔を作製した。孔開き銅箔は、基板とするキャリア銅箔上にドライフィルム(ネガ型)をラミネート加工する。次に、微細貫通孔の位置、形状のパターンを描いたフィルムマスクを、ドライフィルムレジストの表面に積層し、フィルムマスクの上から露光、現像し、基板上に突起状のレジスト型枠を形成した後、電解めっきし、レジスト型枠を除去して厚さ10μmの孔開き銅箔とした。次に、孔開き銅箔表面の銅めっき層を酸洗処理し、その後、両面に粗化処理を行った。
粗化処理は、第1粗化処理層と、第2粗化処理層とからなる二段粗化処理とした。第1粗化処理層は、ヤケめっきにより微細銅粒を付着させた。第1粗化処理層のヤケめっきの浴組成は、銅13.7g/L、硫酸150g/Lとし、電解条件は、液温25℃、電流密度30A/dm2、静止浴、5秒間とした。第1粗化処理層を形成後、微細銅粒の脱落を防止させるとともに、凹凸を大きくするための被せめっきにより第2粗化処理層を形成した。第2粗化処理層の浴組成は、銅65g/L、硫酸90g/Lとし、電解条件は、液温48℃、電流密度20A/dm2で空気攪拌、10秒間とした。上記第1粗化処理層と第2粗化処理層のめっき処理を順に繰り返して2回行った。この孔開き銅箔の粗化処理面側の表面粗さはRzjis=5.8μmであった。
粗化処理後、キャリア銅箔を剥離して、孔開き銅箔(基材)を得た。この孔開き銅箔(基材)に、耐食性材料として、スズ−ニッケル合金めっきを両面にそれぞれ平均厚さが2μmとなるように施した。なお、スズ−ニッケル合金めっきは、微細貫通孔の開口縁端部も全てめっき処理され、基材である孔開き銅箔は、その表面を全てスズ−ニッケル合金で被覆させた。この結果、厚さ10μmの銅箔の両面に平均厚さ6μmの粗化処理層を備える基材の表面に平均厚さ2μmのスズ−ニッケル合金めっきされ、トータル平均厚さが26μmの孔開き金属箔を得た。
フェルト状樹脂繊維層の片面に孔開き金属箔を張り合わせた後、他方の面に孔開き樹脂層をそれぞれプレス加工により張り合わせた。最初に、離形フィルム/液晶ポリマー不織布/孔開き金属箔/離形フィルムの順に積層したものをプレスプレートに挟んだ状態で、プレス装置にセットした。そして、プレス圧5.0kg/cm2をかけ、250℃で5分間大気プレスした。その後、孔開き金属層が積層されたフェルト状樹脂繊維層の液晶ポリマー不織布側に孔開き樹脂フィルムが積層されるようにして配置し、その両面に離形フィルムを配置して、真空プレス装置にて、プレス圧5.0kg/cm2をかけ、180℃で1時間プレスした。その後、降温することで、フェルト状樹脂繊維層と孔開き樹脂フィルムならびに孔開き金属箔とが張り合わせられた。
実施例1〜実施例4のクラッドフィルター材の物質透過性を、DMFCの燃料として用いられるメタノール水溶液を用いて検証した。詳細には、ガラスタイプの減圧濾過用フィルターホルダー(ADVANTEC社製 KG25)に、少なくとも上面側が孔開き樹脂層となるようにクラッドフィルター材を挟んで固定し、クラッドフィルター材の上面側に配置された容量22mlのファンネルに濃度12.3mol/Lのメタノール水溶液(液温25℃)20mlを入れて、減圧せずに透過させた。これを目視で確認した結果、実施例1〜実施例4のクラッドフィルター材の下面側に液体のメタノール水溶液が透過することはなかった。
本発明に係るクラッドフィルター材は、従来技術では難しかった透過速度の制御が可能となり、その結果、クラッドフィルター材内の液滞留時間を制御可能であり、且つ、小型化を実現できる。例えば、燃料電池の燃料透過膜、燃料改質部材等に利用できる。この他、二次電池やキャパシターの集電体、化学反応を促進する触媒の担持体、固液分離処理材等、燃料電池の広範囲な分野にも使用可能である。また、本発明に係るクラッドフィルター材は、メタノールを用いる燃料電池に好適なものであるが、他にも水素、エタノール、ボロハイドライド、アンモニア、蟻酸、ブタン等の透過膜として利用可能である。
1・・・クラッドフィルター材
2・・・フェルト状樹脂繊維層
3・・・孔開き樹脂層
4・・・半硬化樹脂層
5・・・耐食性金属被覆層
6・・・孔開き金属層
2・・・フェルト状樹脂繊維層
3・・・孔開き樹脂層
4・・・半硬化樹脂層
5・・・耐食性金属被覆層
6・・・孔開き金属層
Claims (12)
- メタノールを使用する燃料電池の物質透過膜となる板状のクラッドフィルター材であって、
微細貫通孔を厚さ方向に備える孔開き樹脂層を、フェルト状樹脂繊維層の少なくとも一方の面に積層させたことを特徴とするクラッドフィルター材。 - 前記フェルト状樹脂繊維層は、平均厚さが20μm〜500μmである請求項1に記載のクラッドフィルター材。
- 前記孔開き樹脂層は、平均厚さが10μm〜50μmである請求項1又は請求項2に記載のクラッドフィルター材。
- 前記孔開き樹脂層に備える微細貫通孔の平均長径が10μm〜60μmである請求項1〜請求項3のいずれかに記載のクラッドフィルター材。
- 前記孔開き樹脂層は、メタノールに不溶であり、且つ、膨潤しない熱可塑性樹脂フィルムからなる請求項1〜請求項4のいずれかに記載のクラッドフィルター材。
- フェルト状樹脂繊維層の両面に前記孔開き樹脂層を備え、
一面側に備える当該孔開き樹脂層の表面に耐食性金属被覆層が形成された請求項1〜請求項5のいずれかに記載のクラッドフィルター材。 - 前記耐食性金属被覆層は、少なくともその表面が、モリブデン、クロム、チタン、タンタル、ニオブ、タングステン、金の中のいずれか1種又は2種以上、あるいはニッケル合金、ニッケル及びスズを含む合金のいずれかで形成された請求項6に記載のクラッドフィルター材。
- 前記フェルト状樹脂繊維層の片面に前記孔開き樹脂層を備え、
当該フェルト状樹脂繊維層の他面には、厚さ方向に貫通する微細貫通孔が形成された孔開き金属層を備える請求項1〜請求項5のいずれかに記載のクラッドフィルター材。 - 前記孔開き金属層は、少なくともその表面がモリブデン、クロム、チタン、パラジウム、白金、タンタル、ニオブ、タングステン、金の中のいずれか1種又は2種以上からなる合金、あるいはニッケル及びスズを含む合金で被覆された請求項8に記載のクラッドフィルター材。
- 前記孔開き金属層は、表面粗さ(Rzjis)が0.5μm〜10μmである請求項8又は請求項9に記載のクラッドフィルター材。
- 前記孔開き金属層は、その平均厚さが3μm〜50μmである請求項8〜請求項10のいずれかに記載のクラッドフィルター材。
- 前記孔開き金属層に形成される微細貫通孔の長径が60μm以下である請求項8〜請求項11のいずれかに記載のクラッドフィルター材。
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JP2015024624A (ja) * | 2013-07-29 | 2015-02-05 | アイシン精機株式会社 | 被覆部材及びその製造方法 |
JP2016153801A (ja) * | 2016-04-07 | 2016-08-25 | 株式会社住化分析センター | ガス透過度の測定方法および測定試料 |
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- 2008-03-28 JP JP2008085892A patent/JP2009238682A/ja active Pending
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