JP2009230811A - 金型部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】歪みが発生しにくい金型部材を作製することが可能な金型部材の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】スタンパ1は、樹脂製の磁気記録媒体用基板を作製するための金型の表面に設置される部材である。スタンパ1の固定面6は、スタンパ1を金型の表面に設置した場合に、その金型の表面に接する面である。樹脂成形面5は、固定面6とは反対側の面であり、成形時に樹脂に接する面である。このスタンパ1を対象として、樹脂成形面5と固定面6とを同時に研磨することで、樹脂成形面5の表面性状と固定面6の表面性状とをほぼ同一にする。
【選択図】図2
【解決手段】スタンパ1は、樹脂製の磁気記録媒体用基板を作製するための金型の表面に設置される部材である。スタンパ1の固定面6は、スタンパ1を金型の表面に設置した場合に、その金型の表面に接する面である。樹脂成形面5は、固定面6とは反対側の面であり、成形時に樹脂に接する面である。このスタンパ1を対象として、樹脂成形面5と固定面6とを同時に研磨することで、樹脂成形面5の表面性状と固定面6の表面性状とをほぼ同一にする。
【選択図】図2
Description
この発明は、磁気ディスク記録装置の基板に用いられる磁気記録媒体用基板を作製するための金型に設置される金型部材の製造方法に関する。
ハードディスクドライブ装置(HDD)などの磁気ディスク装置の基板(磁気記録媒体用基板)には、アルミニウム基板やガラス基板が用いられている。この磁気記録媒体用基板は、円板状の形状を有し、基板の中心に、基板の厚さ方向に貫通する貫通孔が形成されている。この基板上に金属磁気薄膜を形成し、金属磁気薄膜を磁気ヘッドで磁化することによりデータが記録される。
磁気ディスク装置の記録容量は大容量化される傾向にあり、記録方式として、いわゆる垂直記録方式が採用されつつある。垂直記録方式は、磁気記録媒体の記録層面に対して磁性体を垂直方向に磁化させることによって情報を記録する方式である。この垂直記録方式によると、従来に比べて非常に高密度な記録が可能となり、例えば、500Gbit/in2以上の記録密度も達成可能とされている。
記録密度が高くなるにつれて、磁気記録媒体の記録磁区のサイズは益々微小化していくため、磁気記録媒体用基板の表面粗さ、微小うねり、及び極微小うねりなどの表面性状の特性を、さらに向上させることが要求されている。
一方、ハードディスクドライブ装置(HDD)などの磁気ディスク装置は、パソコンの記録媒体として発展してきたが、安価で高記録密度の特性を有するため、HDDレコーダー、カーナビゲーション、ゲーム機、ビデオカメラ、及び携帯用端末などにも、記録装置として採用され、汎用の記録装置として用いられている。このように多様の用途に用いられているため、磁気ディスク装置の低価格化、耐衝撃性、及びエネルギー消費抑制などの要求も高まっている。そのため、それらの要求を満たす可能性がある磁気記録媒体用基板が要望されている。
ところで、樹脂製基板を磁気記録媒体用基板に用いる試みがなされている。樹脂製基板を磁気記録媒体用基板に用いる場合であっても、表面性状の向上が要求される。従来においては、成形用金型内の最表面の表面粗さRaを0.1[μm]以下にすることで、樹脂成形体の表面性状を向上させている(例えば特許文献1)。また、成形に用いるスタンパの表面に保護膜を形成し、そのスタンパを用いて成形を行うことで、微小うねりを小さくした樹脂成形体を作製していた(例えば特許文献2)。
しかしながら、従来技術に係る方法では、記録磁区の微小化に伴って要求されるレベルの表面性状を有する磁気記録媒体用基板を簡便に作製することは困難であった。
さらに、磁気記録媒体用基板の成形時に用いられ、樹脂に接触して表面形状を付与するスタンパにおいては、その転写面(樹脂成形面)の精度を非常に高く維持することが重要である。しかしながら、樹脂成形面の表面性状のみを向上させた場合、加工履歴に起因する残存ダメージと形状因子とによって、スタンパの表裏面に残存する応力のバランスが崩れてしまい、その結果、スタンパの面精度が徐々に又は急激に低下してしまう。そして、面精度が低下したスタンパを用いて成形を行った場合、表面性状が良好な磁気記録媒体用基板を作製することが困難になる。例えば、特許文献3に係る従来技術では、エッチング方法によって効率的にスタンパを作製しているが、スタンパの表面と裏面とにおいて表面性状が異なるため、表裏面に残存する応力のバランスが崩れてしまい、面精度が低下する問題があった。
この発明は上記の問題を解決するものであり、歪みが発生しにくい金型部材を作製することが可能な金型部材の製造方法を提供することを目的とする。
この発明の第1の形態は、樹脂製の磁気記録媒体用基板を作製するための金型であって、内部に樹脂を注入する空間を有する金型の前記内部の一部に設置される膜状又は薄板状の金型部材の製造方法であって、前記内部の表面の一部に設置した場合に前記内部の表面に接する固定面と、前記固定面とは反対側の面であって前記空間に面する樹脂成形面とを有する金型部材を対象として、前記樹脂成形面と前記固定面とを同時に研磨する研磨工程を含むことを特徴とする金型部材の製造方法である。
また、この発明の第2の形態は、第1の形態に係る金型部材の製造方法であって、前記研磨工程では、平坦な表面を有する第1定盤と、平坦な表面を有する第2定盤とを、互いの平坦な表面を対向させて配置し、前記第1定盤と前記第2定盤とで前記金型部材を挟んで押圧し、研磨剤を介在して前記第1定盤と前記第2定盤と前記金型部材とを摺動させることで、前記樹脂成形面と前記固定面とを同時に研磨することを特徴とする。
また、この発明の第3の形態は、第1の形態又は第2の形態のいずれかに係る金型部材の製造方法であって、前記研磨工程では、異なる研磨条件で複数回、前記金型部材を研磨することを特徴とする。
また、この発明の第4の形態は、第1から第3の形態のいずれかに係る金型部材の製造方法であって、前記樹脂成形面の表面硬度Hvと前記固定面の表面硬度Hvとが、400以上、1000未満であることを特徴とする。
また、この発明の第5の形態は、第1から第4の形態のいずれかに係る金型部材の製造方法であって、前記金型部材のヤング率が、60[GPa]以上、120[GPa]未満であることを特徴とする。
また、この発明の第6の形態は、第1から第5の形態のいずれかに係る金型部材の製造方法であって、前記研磨工程では、原子間力顕微鏡により測定した前記樹脂成形面の表面粗さRaと前記固定面の表面粗さRaとが、0.2[nm]未満になるまで研磨を行うことを特徴とする。
また、この発明の第7の形態は、第6の形態に係る金型部材の製造方法であって、前記研磨工程では、前記樹脂成形面の表面粗さの最大値Rmaxと前記固定面の表面粗さの最大値Rmaxとが、2.0[nm]未満になるまで研磨を行うことを特徴とする。
また、この発明の第8の形態は、第6の形態又は第7の形態のいずれかに係る金型部材の製造方法であって、前記研磨工程では、前記固定面と前記樹脂成形面とにおいて、凹凸の周期が30[μm]〜200[μm]の微小うねりの平均高さμWaが、1.0[nm]未満になるまで研磨を行うことを特徴とする。
また、この発明の第9の形態は、第6から第8の形態のいずれかに係る金型部材の製造方法であって、前記研磨工程では、前記固定面と前記樹脂成形面とにおいて、凹凸の周期が1[μm]〜30[μm]の極微小うねりの平均高さnWaが、1.0[nm]未満になるまで研磨を行うことを特徴とする。
また、この発明の第10の形態は、第1から第9の形態のいずれかに係る金型部材の製造方法であって、前記金型部材の耐熱温度が300[℃]以上であることを特徴とする。
また、この発明の第11の形態は、第1から第10の形態のいずれかに係る金型部材の製造方法であって、前記金型部材の厚さtmと、前記金型によって作製される前記磁気記録媒体用基板の厚さtpとが、0.3×tp<tm<3×tpの関係を満たすことを特徴とする。
また、この発明の第2の形態は、第1の形態に係る金型部材の製造方法であって、前記研磨工程では、平坦な表面を有する第1定盤と、平坦な表面を有する第2定盤とを、互いの平坦な表面を対向させて配置し、前記第1定盤と前記第2定盤とで前記金型部材を挟んで押圧し、研磨剤を介在して前記第1定盤と前記第2定盤と前記金型部材とを摺動させることで、前記樹脂成形面と前記固定面とを同時に研磨することを特徴とする。
また、この発明の第3の形態は、第1の形態又は第2の形態のいずれかに係る金型部材の製造方法であって、前記研磨工程では、異なる研磨条件で複数回、前記金型部材を研磨することを特徴とする。
また、この発明の第4の形態は、第1から第3の形態のいずれかに係る金型部材の製造方法であって、前記樹脂成形面の表面硬度Hvと前記固定面の表面硬度Hvとが、400以上、1000未満であることを特徴とする。
また、この発明の第5の形態は、第1から第4の形態のいずれかに係る金型部材の製造方法であって、前記金型部材のヤング率が、60[GPa]以上、120[GPa]未満であることを特徴とする。
また、この発明の第6の形態は、第1から第5の形態のいずれかに係る金型部材の製造方法であって、前記研磨工程では、原子間力顕微鏡により測定した前記樹脂成形面の表面粗さRaと前記固定面の表面粗さRaとが、0.2[nm]未満になるまで研磨を行うことを特徴とする。
また、この発明の第7の形態は、第6の形態に係る金型部材の製造方法であって、前記研磨工程では、前記樹脂成形面の表面粗さの最大値Rmaxと前記固定面の表面粗さの最大値Rmaxとが、2.0[nm]未満になるまで研磨を行うことを特徴とする。
また、この発明の第8の形態は、第6の形態又は第7の形態のいずれかに係る金型部材の製造方法であって、前記研磨工程では、前記固定面と前記樹脂成形面とにおいて、凹凸の周期が30[μm]〜200[μm]の微小うねりの平均高さμWaが、1.0[nm]未満になるまで研磨を行うことを特徴とする。
また、この発明の第9の形態は、第6から第8の形態のいずれかに係る金型部材の製造方法であって、前記研磨工程では、前記固定面と前記樹脂成形面とにおいて、凹凸の周期が1[μm]〜30[μm]の極微小うねりの平均高さnWaが、1.0[nm]未満になるまで研磨を行うことを特徴とする。
また、この発明の第10の形態は、第1から第9の形態のいずれかに係る金型部材の製造方法であって、前記金型部材の耐熱温度が300[℃]以上であることを特徴とする。
また、この発明の第11の形態は、第1から第10の形態のいずれかに係る金型部材の製造方法であって、前記金型部材の厚さtmと、前記金型によって作製される前記磁気記録媒体用基板の厚さtpとが、0.3×tp<tm<3×tpの関係を満たすことを特徴とする。
この発明によると、金型部材(スタンパ)の両面を同時に研磨することで、樹脂成形面の表面性状と固定面の表面性状とをほぼ同一にすることが可能となる。そのことにより、表裏面の応力のバランスが保たれ、歪みが発生しにくい金型部材を作製することが可能となる。その結果、金型部材の経年変化と品質劣化とを改善することが可能となる。
この発明の実施形態に係るスタンパ(金型部材)について図1と図2とを参照して説明する。図1は、この発明の実施形態に係るスタンパ(金型部材)の斜視図である。図2は、この発明の実施形態に係るスタンパ(金型部材)の断面図であり、図1のII−II断面図である。
スタンパ1は、樹脂製の磁気記録媒体用基板を金型によって作製するときに、その金型の表面に設置される金型部材である。このスタンパ1は、円板状の形状を有する膜状又は薄板状の部材である。スタンパ1の中央には、厚さ方向に貫通する貫通孔4が形成されている。
また、図2に示すように、スタンパ1は、円板状の形状を有する基材2と、その基材2の表面に形成された金属膜3とを備えている。基材2の中央には、基材2の厚さ方向に貫通する貫通孔が形成されている。
基材2は、耐熱温度が300[℃]以上の材料によって構成されている。例えば、基材2には、ステンレスやインコネル(登録商標)、ハステロイ(登録商標)、コルモノイ(登録商標)、アンビロイ(登録商標)などの耐熱合金、Ti(チタン)、V(バナジウム)、Cr(クロム)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Zr(ジルコニウム)、Nb(ニオブ)、Mo(モリブデン)、Hf(ハフニウム)、Ta(タンタル)、W(タングステン)などの金属およびその合金、ガラス、セラミックス、カーボン、カーボンセラミックス、Siウエハーなどの単結晶基板やそれらの複合材料が用いられる。スタンパ1は樹脂の成形に用いられるため、その成形時の温度に耐えられる材料を基材2に用いる。また、基材2の厚さは特に限定されないが、耐久性の観点から0.5[mm]以上であることが好ましい。
また、金属膜3はめっきによって成膜された薄膜である。この金属膜3には、Ni、Ni−P(ニッケルリン)、Ni−Cu−P(ニッケル銅リン)、Cr、Zn、Cr−Znなどの一般的なめっき材料を用いることができるが、機械特性および加工性の面でNiを主体としためっき材料が好ましい。
スタンパ1の一方の面である固定面6は、成形用の金型の表面に設置される面である。固定面6とは反対側の面である樹脂成形面5は、成形時において樹脂と接する面である。
ここで、スタンパが設置された金型について図3を参照して説明する。図3は、この発明の実施形態に係るスタンパと金型とを示す断面図である。射出成形用金型100は、樹脂製の磁気記録媒体用基板を成形するための第1金型110と第2金型120とを備えている。そして、図示しない型締装置によって第2金型120を第1金型110に対して接離させることにより、型閉じ、型締め及び型開きを行うようになっている。
第1金型110において、樹脂を成形する面は平坦な面となっている。一方、第2金型120には、第1金型110に対向する表面に平坦な溝部121が形成されている。この溝部121の形状は、成形によって形成すべき磁気記録媒体用基板の形状に対応している。例えば、溝部121は円形状の形状を有している。そして、溝部121を内側にして第1金型110と第2金型120とを対向して配置することで、第1金型110と第2金型120との間に、溝部121によって円柱状のキャビティ(空間)を形成する。また、第1金型110には、外部から溝部121によるキャビティに樹脂を充填するためのスプルー111が形成されている。このスプルー111は、第1金型110の厚さ方向に貫通した貫通孔である。
第1金型110の平坦な表面に、この実施形態に係るスタンパ1を設置する。スタンパ1は、図示しない保持部材によって第1金型110の表面に固定されている。例えば、第1金型110のスプルー111の周縁部に爪状の突起部を設け、その突起部によってスタンパ1を狭持することで、スタンパ1を第1金型110の表面に設置する。この実施形態では、スタンパ1の固定面6を第1金型110の表面に接触させることでスタンパ1を第1金型110に設置する。これにより、樹脂成形面5は、溝部121によって形成されたキャビティ(空間)に面することになる。
成形するときには、第2金型120を第1金型110に密着させ、第2金型120の溝部121と第1金型110とで囲まれたキャビティ(空間)を形成する。これにより、射出成形用金型100の内部に円柱状のキャビティ(空間)が形成され、内部の表面であって、柱方向の一端の表面にスタンパ1が設けられた状態となる。型締め状態において、図示しない射出ノズルを第1金型110に形成されたスプルー111に接触させ、その状態で射出ノズルから所定の射出圧で樹脂を射出する。射出ノズルから射出された樹脂はスプルー111を通って、第1金型110と第2金型120との間に形成されたキャビティに充填される。キャビティに樹脂を充填した後、硬化させて基板形状を成形する。基板を成形した後、型内において、溝部121の厚さ方向に移動可能なカット機構(図示しない)によって穴あけ加工が行われ、中央に貫通孔が形成された磁気記録媒体用基板が作製される。この穴あけ加工に伴って、スプルー111の形状に相当する成形体が、型内において、磁気記録媒体用基板から切り離される。
射出成形用金型100によって作製された磁気記録媒体用基板は円板状の形状を有し、基板の中央に貫通孔が形成されている。そして、磁気記録媒体用基板の表面に、スパッタリングなどの成膜方法によってCo系合金などの磁性膜を成膜することで、磁気ディスク装置に用いられる磁気記録媒体を作製する。
この実施形態では、樹脂成形面5の表面性状と固定面6の表面性状とが、ほぼ同一となっている。具体的には、表面粗さRaや、最大値Rmaxや、微小うねりμWaや、極微小うねりnWaなどの値が、樹脂成形面5と固定面6とでほぼ一致している。
樹脂成形面5と固定面6とで表面性状が異なる場合、表面性状の差に起因する歪が他方の面に発生するおそれがある。例えば、樹脂成形面5の表面性状のみを向上させた場合、加工履歴に起因する残存ダメージと形状因子とによって、表裏面に残存する応力のバランスが崩れてしまい、その結果、スタンパの面精度が徐々に又は急激に低下してしまう。そして、面精度が低下したスタンパを用いて成形を行った場合、表面性状が良好な磁気記録媒体用基板を作製することが困難になる。そのため、樹脂成形面5の表面性状と固定面6の表面性状とが、ほぼ同一であることが好ましい。これにより、表裏面の応力のバランスが保たれ、歪みが発生しにくくなる。その結果、スタンパ1の経年変化と品質劣化とを大幅に改善することが可能となる。
なお、表面粗さRaと最大値Rmaxとは原子間力顕微鏡(AFM)によって測定される。また、微小うねりμWaと極微小うねりnWaとは、光学的な干渉(ニュートンリング)によって測定され、基準平面と実際の平面とのずれ量を干渉縞として計測する。微小うねりμWaと極微小うねりnWaとは、「Zygo Corporation」の非接触表面形状測定機(New View 5000)を用いて測定することができる。測定原理は、基板の表面に白色光を照射し、位相の異なる参照光と測定光の干渉の強度変化を測定することで、表面の微妙な形状変化を測定する方法である。得られた測定データから、30[μm]〜200[μm]の周期の凹凸を抽出した表面うねり高さの平均値を微小うねりμWaと定義する。また、測定データから、1[μm]〜30[μm]の周期の凹凸を抽出した表面うねり高さの平均値を極微小うねりnWaと定義する。
1例として、固定面6の表面粗さRaと、樹脂成形面5の表面粗さRaとの差が、±30%未満であることが好ましい。また、固定面6の表面粗さRaと、樹脂成形面5の表面粗さRaとの差が、±20%未満であることがより好ましい。さらに好ましくは、固定面6の表面粗さRaと、樹脂成形面5の表面粗さRaとの差が、±15%未満であることが好ましい。表面粗さRaの差が±30%未満であれば、表面性状がほぼ同一となり、表面性状の差に起因する歪が他方の面に発生しにくくなる。また、表面粗さRaの差が±20%未満であれば、さらに表面性状の差に起因する歪が他方の面に発生しにくくなる。さらに、表面粗さRaの差が±15%未満であれば、より一層に表面性状の差に起因する歪が他方の面に発生しにくくなる。また、固定面6の表面粗さの最大値Rmaxと、樹脂成形面5の表面粗さの最大値Rmaxとの差が、±30%未満であることが好ましい。より好ましくは、固定面6の表面粗さの最大値Rmaxと、樹脂成形面5の表面粗さの最大値Rmaxとの差が、±20%未満であることが好ましい。さらに好ましくは、固定面6の表面粗さの最大値Rmaxと、樹脂成形面5の表面粗さの最大値Rmaxとの差が、±15%未満であることが好ましい。また、固定面6の微小うねりμWaの高さと、樹脂成形面5の微小うねりμWaの高さとの差が、±30%未満であることが好ましい。より好ましくは、固定面6の微小うねりμWaと、樹脂成形面5の微小うねりμWaとの差が、±20%未満であることが好ましい。さらに好ましくは、固定面6の微小うねりμWaと、樹脂成形面5の微小うねりμWaとの差が、±15%未満であることが好ましい。また、固定面6の極微小うねりnWaの高さと、樹脂成形面5の極微小うねりnWaの高さとの差が、±30%未満であることが好ましい。より好ましくは、固定面6の極微小うねりnWaと、樹脂成形面5の極微小うねりnWaとの差が、±20%未満であることが好ましい。さらに好ましくは、固定面6の極微小うねりnWaと、樹脂成形面5の極微小うねりnWaとの差が、±15%未満であることが好ましい。
また、スタンパ1の樹脂成形面5の表面粗さRaは、原子間力顕微鏡(AFM)で測定した場合に、0.2[nm]未満となっていることが好ましい。1例として、スタンパ1において10μm角の範囲をAFMで測定した場合に、表面粗さRaが0.2[nm]未満となっていることが好ましい。より好ましくは、表面粗さRaは、原子間力顕微鏡(AFM)で測定した場合に、0.1[nm]未満となっていることが好ましい。さらに好ましくは、表面粗さRaは、原子間力顕微鏡(AFM)で測定した場合に、0.08[nm]未満となっていることが好ましい。
以上のように、樹脂成形面5の表面粗さRaを0.2[nm]未満としているため、スタンパ1を設置した射出成形用金型100によって成形を行うことで、表面粗さRaが0.2[nm]未満となる樹脂製の磁気記録媒体用基板を作製することが可能となる。また、スタンパ1を用いることで、磁気記録媒体用基板の表面を研磨しなくても表面性状を向上させることが可能となる。そのため、磁気記録媒体用基板の研磨工程を省くことができ、より少ない工程数で比較的簡易に、表面性状が良好な磁気記録媒体用基板を作製することができる。その結果、磁気記録媒体用基板の製造コストを低減することが可能となる。
なお、磁気記録媒体用基板を研磨することで表面性状を向上させる場合、磁気記録媒体用基板が成形によって作製される度に、磁気記録媒体用基板の表面を研磨する必要がある。そのため、作製される磁気記録媒体用基板の枚数に応じて、研磨の累積時間が長くなり、また、研磨にコストが高くなってしまう。特に、大量に磁気記録媒体用基板を作製する場合には研磨の累積時間が膨大になり、研磨コストが高くなってしまうため、磁気記録媒体用基板を研磨する方法は大量生産には向かない。また、金型の表面を研磨することで表面粗さRaの値を小さくすることもできるが、金型の研磨は作業性が悪く、一個単位でしか研磨することができないため、スタンパに比べて非常にコストがかかってしまう。
これに対して、この実施形態では、スタンパを研磨してスタンパの表面性状を向上させ、そのスタンパ1を用いることで、表面性状が良好な磁気記録媒体用基板を作製することができる。そのことにより、磁気記録媒体用基板が作製される度に、磁気記録媒体用基板を研磨する必要がないため、研磨の時間を削減し、研磨に要するコストを低減することが可能となる。すなわち、スタンパのみを研磨すれば、表面性状が良好な磁気記録媒体用基板が作製できるため、磁気記録媒体用基板の量産性に優れている。また、金型を研磨するよりも低コストでスタンパを研磨することができるため、磁気記録媒体用基板の製造コストを低減することができる。
また、樹脂成形面5の表面粗さの最大値Rmaxは、2.0[nm]未満であることが好ましい。これにより、表面粗さの最大値Rmaxが2.0[nm]未満となる樹脂製の磁気記録媒体用基板を作製することが可能となる。また、樹脂成形面5において、凹凸の周期が30[μm]〜200[μm]の微小うねりμWaの高さが、1.0[nm]未満であることが好ましい。これにより、微小うねりμWaの高さが1.0[nm]未満となる樹脂製の磁気記録媒体用基板を作製することが可能となる。また、樹脂成形面5において、凹凸の周期が1[μm]〜30[μm]の極微小うねりnWaの高さが、1.0[nm]未満であることが好ましい。これにより、極微小うねりnWaの高さが1.0[nm]未満となる樹脂製の磁気記録媒体用基板を作製することが可能となる。
また、スタンパ1の厚さを厚さtmとし、成形によって作製される磁気記録媒体用基板の厚さを厚さtpとした場合に、以下の式を満たすことが好ましい。
0.3×tp<tm<3×tp
0.3×tp<tm<3×tp
スタンパ1の厚さが成形される磁気記録媒体用基板よりも厚すぎると、成形時に加えられる熱が樹脂に伝わりにくくなるため、成形が良好に行われないおそれがある。また、スタンパ1の厚さが薄すぎると、成形時に加えられる圧力にスタンパ1が耐えられなくなるため、スタンパ1が変形してしまうおそれがある。この実施形態では、スタンパ1の厚さtmと、成形によって作製される磁気記録媒体用基板の厚さtpとが、上記の式を満たすことで、成形時の熱を樹脂に良好に伝えることができ、その結果、成形を良好に行うことが可能となる。また、上記の式を満たすことで、成形時の圧力によるスタンパ1の変形を防止することが可能となる。
(製造方法)
次に、この実施形態に係るスタンパ1の製造方法について、図4と図5とを参照して説明する。図4は、この発明の実施形態に係る金型部材の製造方法に用いられる研磨装置の一部を示す断面図である。図5は、研磨装置に設置されるキャリアと金型部材とを示す上面図である。
次に、この実施形態に係るスタンパ1の製造方法について、図4と図5とを参照して説明する。図4は、この発明の実施形態に係る金型部材の製造方法に用いられる研磨装置の一部を示す断面図である。図5は、研磨装置に設置されるキャリアと金型部材とを示す上面図である。
まず、中央に貫通孔が形成された基材2の表面に、めっき法によって金属膜3を成膜することで、研磨前のスタンパを作製する。その後、両面研磨機を用いたポリッシング工程によって、スタンパの両面を同時に研磨することにより、この実施形態に係るスタンパ1を作製する。以下、ポリッシング工程について説明する。
ポリッシング工程に用いられる両面研磨装置について図4と図5とを参照して説明する。この実施形態に係る両面研磨装置は、主に、下定盤10と、上定盤20と、太陽歯車30と、内歯歯車40と、キャリア50と、研磨液供給部60とを備え、それらによって遊星歯車方式の研磨加工部を構成している。
下定盤10は、円環状の平坦な上面を有する円盤部材であり、上定盤20と対向する上面には研磨パット11が貼り付けられている。下定盤10の下面は、垂直軸A(研磨加工部の中心を通る垂直軸)を中心として回転可能な下部支持部材12に固定されている。下部支持部材12は下定盤回転駆動部13と連係されており、その駆動によって、下定盤10と下部支持部材12とが回転させられる。
上定盤20は、円環状の平坦な下面を有する円盤部材であり、下定盤10と対向する下面には、研磨パット21が貼り付けられている。上定盤20の上面は、垂直軸Aを中心として回転可能な上部支持部材22に固定されている。上部支持部材22は上定盤回転駆動部23に連係されており、その駆動によって、上定盤20と上部支持部材22とが回転させられる。
そして、下定盤10の上面と上定盤の下面とを対向させて下定盤10と上定盤20とを配置し、下定盤10と上定盤20とでスタンパ1を挟んで押圧する。スタンパ1と研磨パット11、12との間には、研磨剤のスラリーが供給される。なお、下定盤10がこの発明の「第1定盤」の1例に相当し、上定盤20がこの発明の「第2定盤」の1例に相当する。
太陽歯車30は、研磨加工部の中央位置に回転可動に設けられており、太陽歯車回転駆動部31の駆動に応じて、垂直軸Aを中心として回転させられる。
内歯歯車40は、内周側に歯列を有するリング状の歯車であり、太陽歯車30の外方に同心円状に配置されている。
キャリア(遊星歯車)50は、外周部に歯列を有する薄板状の円盤部材であり、スタンパ1を保持するためのワーク保持孔50aが1個又は複数個形成されている。
図5に示すように、内歯歯車40は、下定盤10と上定盤20とキャリア50とを包含して、キャリア50に対向する内向きに歯車が切られている。キャリア50の外周には歯車が切られており、キャリア50は、内歯歯車40と回転軸の太陽歯車30とに係合している。太陽歯車30と内歯歯車40とが回転することによりキャリア50は自転し、太陽歯車30と内歯歯車40との周速の差によってキャリア50は公転する。その動作によって、スタンパ1は、下定盤10と上定盤20とに設置された研磨パットの間で自転と公転とを行う。その自転と公転とによって、スタンパ1と下定盤10と上定盤20とが摺動し、スタンパ1の両面が研磨される。また、研磨加工部には、通常、複数個のキャリア50が配置される。1例として図5に示すように、4つのキャリア50が研磨加工部に配置されている。これらのキャリア50は、太陽歯車30と内歯歯車40とに噛み合い、太陽歯車30及び/又は内歯歯車40の回転に応じて、太陽歯車30の周囲を公転しつつ自転する。つまり、キャリア50に保持されたスタンパ1を下定盤10と上定盤20とで挟持し、この状態でキャリア50を公転及び自転させることにより、スタンパ1の上下両面を同時に研磨する。
このような研磨加工部では、下定盤10及び上定盤20の外径が内歯歯車40の内径よりも小さくなっており、太陽歯車30と内歯歯車40との間で、かつ下定盤10と上定盤20とに挟まれる領域が実際の研磨領域となる。
また、研磨液供給部60は、研磨液を貯溜する研磨液供給樋61と、研磨液供給樋61に貯溜された研磨液を、下定盤10と上定盤20との間の研磨領域に供給するチューブ62を備えて構成されている。研磨液供給樋61は、複数の支柱部材63を介して、上部支持部材22の上方位置に設けられている。また、研磨液供給樋61には、上部に開口部が形成されており、その開口部から研磨液が供給される。
上部支持部材22、上定盤20及び研磨パット21には、互いに連通する貫通孔22a、20a、21aが複数形成されており、貫通孔22a、20a、21aを通して各チューブ62の下端部が接続される。これにより、研磨液供給樋61に貯溜された研磨液が、チューブ62及び貫通孔22a、20a、21aを介して、上定盤20と下定盤10との間の研磨領域に供給される。
研磨液としては、微粒子状の研磨剤を液体中に分散されたものが用いられる。例えば、研磨剤には、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化ジリコニウム、酸化チタン、シリカ、酸化セリウム、酸化ランタン、ダイヤモンド、及び炭化珪素のなかから選択される少なくとも1つ又は複数の組み合わせ微粒子が用いられ、研磨材をスラリー状にして使用する。
この実施形態では、ポリッシング工程は、2回以上のポリッシング工程を含んでいる。それぞれのポリッシング工程では、定盤の回転数や研磨圧力や加工時間などの研磨条件を変えて研磨を行う。すなわち、異なる研磨条件で複数回、ポリッシング工程を行う。1例として、ポリッシング工程を第1ポリッシング工程と第2ポリッシング工程とに分けて、それぞれ異なる研磨条件でスタンパの両面を研磨する。第1ポリッシング工程は、めっき工程での表面の変質層やダメージを除去し、平面度やうねり、表面粗さを大まかに整えるための工程である。第2ポリッシング工程は、その第1ポリッシング工程で残存するダメージを除去し、表面の形態を最終的な表面品位に整えるための工程である。
以上のように、スタンパの両面を同時に研磨することにより、同じ環境下(条件下)で、スタンパの樹脂成形面5と固定面6とを研磨することが可能となる。例えば、研磨液、研磨時間、加工圧、及び研磨量が、樹脂成形面5と固定面6とで同じになるため、樹脂成形面5の表面性状と固定面6の表面性状とをほぼ同一にすることが可能となる。すなわち、樹脂成形面5と固定面6とを同時に加工することで、表裏面の応力のバランスが均一に保つことができるため、樹脂成形面5の表面性状と固定面6の表面性状とをほぼ同一にして、歪みが発生しにくくすることが可能となる。その結果、経年変化や品質劣化が発生しにくく、かつ、表面性状が良好なスタンパを作製することが可能となる。
一方、片面ずつ別々に研磨した場合には、後に行われた研磨が先に研磨された面に影響を与えてしまう。従って、同じ条件で研磨した場合であっても、先に研磨された面に、後の研磨に起因する歪などが発生するおそれがあり、その結果、両面の表面性状をほぼ同一にすることは困難である。これに対して、この実施形態では、両面研磨機を用いてスタンパの両面を同時に研磨しているため、同じ環境下で両面が研磨されたスタンパ1を作製することができる。これにより、樹脂成形面5の表面性状と固定面6の表面性状とをほぼ同一にすることが可能となる。
なお、スタンパは、両面研磨に耐えられる程度の硬さを有していることが好ましい。1例として、スタンパの表面における表面硬度Hvが、400以上、1000未満であることが好ましい。また、スタンパのヤング率が、60[Gpa]以上、120[GPa]未満であることが好ましい。また、研磨工程で必要な厚さを確保するために、研磨前のスタンパの厚さは、0.5[mm]〜2[mm]であることが好ましい。
(磁気記録媒体用基板の材料)
この実施形態に係る射出成形用金型100によって作製される磁気記録媒体用基板には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又は活性線硬化性樹脂の他、様々な樹脂を用いることができる。
この実施形態に係る射出成形用金型100によって作製される磁気記録媒体用基板には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又は活性線硬化性樹脂の他、様々な樹脂を用いることができる。
熱可塑性樹脂として、磁気記録媒体用基板には、例えば、ポリカーボネイト、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK樹脂)、環状ポリオレフィン樹脂、メタクリルスチレン樹脂(MS樹脂)、ポリスチレン樹脂(PS樹脂)、ポリエーテルイミド樹脂(PEI樹脂)、ABS樹脂、ポリエステル樹脂(PET樹脂、PBT樹脂など)、ポリオレフィン樹脂(PE樹脂、PP樹脂など)、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂(PES樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアミド樹脂、又は、アクリル樹脂などを用いることができる。また、熱硬化性樹脂として、例えば、フェノール樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂(BMC樹脂など)、シリコン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、又は、ポリベンゾイミダゾール樹脂などを用いることができる。その他、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN樹脂)などを用いることができる。
活性線硬化性樹脂として、例えば、紫外線硬化性樹脂が用いられる。紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化性アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化性ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化性エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化性ポリオールアクリレート系樹脂、紫外線硬化性エポキシ樹脂、紫外線硬化シリコン系樹脂、又は、紫外線硬化アクリル樹脂などを挙げることができる。
また、塗説された硬化前の層に活性線を照射することによって硬化するときに、光開始剤を用いて硬化反応を促進させることが好ましい。このとき光増感剤を併用しても良い。
また、空気中の酸素が上記硬化反応を抑制する場合は、酸素濃度を低下させる、または除去するために、例えば不活性ガス雰囲気下で活性線を照射することもできる。活性線としては、赤外線、可視光、紫外線などを適宜選択することができるが、硬化速度などの生産性の面で紫外線を選択することが好ましいが、特に限定されるものではない。また、活性線の照射中、または前後に加熱によって硬化反応を強化させても良い。
さらに、磁気記録媒体用基板には、液晶ポリマー、有機/無機ハイブリッド樹脂(例えば、高分子成分にシリコンを骨格として取り込んだもの)などを用いても良い。なお、上記に挙げた樹脂は磁気記録媒体用基板に用いられる樹脂の1例であり、この発明に係る基板がこれらの樹脂に限定されることはない。2種以上の樹脂を混合して樹脂製の基板としても良く、また、別々の層として異なる成分を隣接させた基板としても良い。
また、母材としての樹脂は、極力、耐熱温度又はガラス転移温度Tgが高い方が望ましい。樹脂製の磁気記録媒体用基板にはスパッタリングにより磁性層が形成されるため、耐熱温度又はガラス転移温度Tgは、そのスパッタリングにおける温度以上であることが望ましい。例えば、耐熱温度又はガラス転移温度Tgが150℃以上である樹脂を用いることが好ましく、200℃以上である樹脂を用いることがより好ましい。
耐熱温度又はガラス転移温度Tgが150℃以上の代表的な樹脂として、耐熱性ポリカーボネイト、シリコン樹脂、テフロン樹脂、無機フィラーを充填したフェノール、メラニン、エポキシ、ポリフェニレンスルファイド、不飽和ポリエステルなどの樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂(PES樹脂)、ポリエーテルイミド樹脂(PEI樹脂)、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、BMC樹脂、又は、液晶ポリマーなどが挙げられる。より具体的には、ポリエーテルスルホン樹脂(PES樹脂)として、ユーデル(ソルベイアデバンストポリマーズ)、ポリエーテルイミド樹脂(PEI樹脂)として、ウルテム(日本GEプラスチック)、ポリアミドイミド樹脂として、トーロン(ソルベイアデバンストポリマーズ)、ポリイミド樹脂(熱可塑性)として、オーラム(三井化学)、ポリイミド(熱硬化性)として、ユーピレックス(宇部興産)、又は、ポリベンゾイミダゾール樹脂として、PBI/Celazole(クラリアントジャパン)が挙げられる。また、液晶ポリマーとして、スミカスーパーLCP(住友化学)、ポリエーテルエーテルケトンとして、ビクトレックス(ビクトレックスMC)が挙げられる。
以上のように、樹脂によって磁気記録媒体用基板を作製することで、磁気記録媒体の耐衝撃性を向上させることができる。さらに、樹脂は金属に比べると軽量であるため、磁気ディスク装置において、エネルギー消費の抑制を図ることが可能となる。
[実施例]
次に、具体的な実施例について説明する。
次に、具体的な実施例について説明する。
(スタンパの作製)
まず、中央に貫通孔が形成された円板状の基材2の表面に、めっき法によって金属膜3を成膜することで、研磨前のスタンパを作製した。この実施例では、基材2には、SUS303を用い、金属膜3には、Ni−P(P10%添加)を用いた。基材2のサイズと金属膜3の厚さとを以下に示す。
基材2の外径=75[mm]
基材2の厚さ=1.5mm
貫通孔の径=20[mm]
金属膜3の膜厚=25[μm]
まず、中央に貫通孔が形成された円板状の基材2の表面に、めっき法によって金属膜3を成膜することで、研磨前のスタンパを作製した。この実施例では、基材2には、SUS303を用い、金属膜3には、Ni−P(P10%添加)を用いた。基材2のサイズと金属膜3の厚さとを以下に示す。
基材2の外径=75[mm]
基材2の厚さ=1.5mm
貫通孔の径=20[mm]
金属膜3の膜厚=25[μm]
(研磨工程)
そして、図4に示す両面研磨装置を用いて第1ポリッシング工程と第2ポリッシング工程とを施すことで、スタンパの両面を同時に研磨した。
そして、図4に示す両面研磨装置を用いて第1ポリッシング工程と第2ポリッシング工程とを施すことで、スタンパの両面を同時に研磨した。
第1ポリッシング工程の条件を以下に示す。
定盤の回転数:50[rpm]
研磨圧力:100[g/cm2]
加工時間:25[分]
定盤の回転数:50[rpm]
研磨圧力:100[g/cm2]
加工時間:25[分]
上述の条件で研磨した後、第2ポリッシング工程を施した。第2ポリッシング工程の条件を以下に示す。
定盤の回転数:30[rpm]
研磨圧力:50[g/cm2]
加工時間:10[分]
定盤の回転数:30[rpm]
研磨圧力:50[g/cm2]
加工時間:10[分]
この実施例で用いた研磨機、研磨布、及び研磨材を以下に示す。
研磨機:「浜井産業」製の16B型両面研磨機
研磨布:第1ポリッシング工程では、「カネボウ」製の発砲ウレタンパッドを用い、第2ポリッシング工程では、「FILWEL」製のスエードタイプ研磨布を用いた。
研磨材:第1ポリッシング工程では、「昭和電工」製のアルミナ研磨材(平均粒子径0.5[μm])を用い、第2ポリッシング工程では、「フジミ」製のコロイダルシリカ(平均粒子径50[nm])を用いた。
研磨機:「浜井産業」製の16B型両面研磨機
研磨布:第1ポリッシング工程では、「カネボウ」製の発砲ウレタンパッドを用い、第2ポリッシング工程では、「FILWEL」製のスエードタイプ研磨布を用いた。
研磨材:第1ポリッシング工程では、「昭和電工」製のアルミナ研磨材(平均粒子径0.5[μm])を用い、第2ポリッシング工程では、「フジミ」製のコロイダルシリカ(平均粒子径50[nm])を用いた。
(スタンパ1の表面性状の測定)
上記の条件で研磨することで得られたスタンパ1の表面性状を測定した。AFMによって表面粗さRaと最大値Rmaxとを測定し、非接触表面形状測定機によって微小うねりμWaと極微小うねりnWaとを測定した。ここでは、スタンパ1の樹脂成形面5の表面性状と固定面6の表面性状とを測定した。以下に、樹脂成形面5の表面性状の値と、固定面6の表面性状の値とを示す。
上記の条件で研磨することで得られたスタンパ1の表面性状を測定した。AFMによって表面粗さRaと最大値Rmaxとを測定し、非接触表面形状測定機によって微小うねりμWaと極微小うねりnWaとを測定した。ここでは、スタンパ1の樹脂成形面5の表面性状と固定面6の表面性状とを測定した。以下に、樹脂成形面5の表面性状の値と、固定面6の表面性状の値とを示す。
(樹脂成形面5の表面性状)
表面粗さRa=0.12nm、最大値Rmax=1.25nm、微小うねりμWa=0.75nm、極微小うねりnWa=0.83nm
表面粗さRa=0.12nm、最大値Rmax=1.25nm、微小うねりμWa=0.75nm、極微小うねりnWa=0.83nm
(固定面6の表面性状)
表面粗さRa=0.12nm、 最大値Rmax=1.18nm、微小うねりμWa=0.81nm、極微小うねりnWa=0.85nm
表面粗さRa=0.12nm、 最大値Rmax=1.18nm、微小うねりμWa=0.81nm、極微小うねりnWa=0.85nm
以上のように、表面粗さRaを0.2[nm]未満とすることができた。また、樹脂成形面5の表面性状と固定面6の表面性状とを、ほぼ同一にすることができた。すなわち、樹脂成形面5と固定面6とにおいて、表面粗さRaの差、最大値Rmaxの差、微小うねりμWaの差、及び極微小うねりnWaの差をそれぞれ、±30[%]未満とすることができた。なお、第2ポリッシング工程の条件を変えることで、表面粗さRaの大きさを変えることができる。
(磁気記録媒体用基板の作製)
そして、この実施例に係るスタンパ1を用いて、射出成形によって磁気記録媒体用基板を作製した。具体的には、樹脂材料として耐熱ポリカーボネイトを用い、外径が65[mm]、内径20[mm]、厚み0.8[mm]の磁気記録媒体用基板を作製した。スタンパ1を第1金型110の表面に設置して、第1金型110と第2金型120とを用いて磁気記録媒体用基板を作製した。
そして、この実施例に係るスタンパ1を用いて、射出成形によって磁気記録媒体用基板を作製した。具体的には、樹脂材料として耐熱ポリカーボネイトを用い、外径が65[mm]、内径20[mm]、厚み0.8[mm]の磁気記録媒体用基板を作製した。スタンパ1を第1金型110の表面に設置して、第1金型110と第2金型120とを用いて磁気記録媒体用基板を作製した。
(磁気記録媒体用基板の表面性状の測定)
スタンパ1を用いた金型によって成形された磁気記録媒体用基板の表面性状を測定した。スタンパ1と同様に、AFMによって表面粗さRaと最大値Rmaxとを測定し、非接触表面形状測定機によって微小うねりμWaと極微小うねりnWaとを測定した。以下に、磁気記録媒体用基板の表面性状の値を示す。
表面粗さRa=0.13nm、最大値Rmax=1.08nm、微小うねりμWa=0.88nm、極微小うねりnWa=0.78nm
スタンパ1を用いた金型によって成形された磁気記録媒体用基板の表面性状を測定した。スタンパ1と同様に、AFMによって表面粗さRaと最大値Rmaxとを測定し、非接触表面形状測定機によって微小うねりμWaと極微小うねりnWaとを測定した。以下に、磁気記録媒体用基板の表面性状の値を示す。
表面粗さRa=0.13nm、最大値Rmax=1.08nm、微小うねりμWa=0.88nm、極微小うねりnWa=0.78nm
以上のように、表面粗さRaが0.2[nm]未満となるスタンパ1を用いることで、磁気記録媒体用基板の表面粗さRaを0.2[nm]未満にすることができた。このように、この実施例によると、表面性状が良好な磁気記録媒体用基板を簡便に作製することができた。また、スタンパの両面を同時に研磨することで、樹脂成形面5の表面性状と固定面6の表面性状とをほぼ同一にすることができた。
さらに、作製したスタンパ1を用いて、磁気記録媒体用基板を連続して3000枚作製したが、成形後もスタンパ1の表面性状は良好な状態を維持していた。また、成形して得られた磁気記録媒体用基板の表面形状も、成形初期から3000枚目まで良好な状態のものが得られた。そして、スタンパ1の面精度の低下や平面度の劣化など加工歪による経時変化は見られなかった。
(比較例)
次に、上記の実施例に対する比較例について説明する。
次に、上記の実施例に対する比較例について説明する。
(スタンパの作製)
基材と金属膜とについては、上述した実施例と同じ材料を用い、めっき法によって金属膜を基材の表面に成膜した。そして、第1ポリッシング工程では、実施例と同じ条件でスタンパを研磨した。第2ポリッシング工程では、ムサシノ電子製の超精密研磨システムを用いて、スタンパの樹脂成形面のみを研磨した。すなわち、第2ポリッシング工程では、スタンパの一方の表面のみを研磨した。
第2ポリッシング工程の研磨条件を以下に示す。
定盤の回転数:80[rpm]
研磨圧力:45[g/cm2]
加工時間:30[分]
また、研磨布および研磨材は、実施例の第2ポリッシング工程で用いたものと同じものを使用した。
基材と金属膜とについては、上述した実施例と同じ材料を用い、めっき法によって金属膜を基材の表面に成膜した。そして、第1ポリッシング工程では、実施例と同じ条件でスタンパを研磨した。第2ポリッシング工程では、ムサシノ電子製の超精密研磨システムを用いて、スタンパの樹脂成形面のみを研磨した。すなわち、第2ポリッシング工程では、スタンパの一方の表面のみを研磨した。
第2ポリッシング工程の研磨条件を以下に示す。
定盤の回転数:80[rpm]
研磨圧力:45[g/cm2]
加工時間:30[分]
また、研磨布および研磨材は、実施例の第2ポリッシング工程で用いたものと同じものを使用した。
(樹脂成形面の表面性状)
第2ポリッシング工程が施されたスタンパの樹脂成形面の表面性状を測定した。測定結果を以下に示す。
表面粗さRa=0.15nm、最大値Rmax=1.35nm、微小うねりμWa=0.72nm、極微小うねりnWa=0.71nm
第2ポリッシング工程が施されたスタンパの樹脂成形面の表面性状を測定した。測定結果を以下に示す。
表面粗さRa=0.15nm、最大値Rmax=1.35nm、微小うねりμWa=0.72nm、極微小うねりnWa=0.71nm
(固定面の表面性状)
また、第2ポリッシング工程では研磨されていない固定面の表面性状を測定した。測定結果を以下に示す。
表面粗さRa=0.24nm、最大値Rmax=2.87nm、微小うねりμWa=1.12nm、極微小うねりnWa=1.45nm
また、第2ポリッシング工程では研磨されていない固定面の表面性状を測定した。測定結果を以下に示す。
表面粗さRa=0.24nm、最大値Rmax=2.87nm、微小うねりμWa=1.12nm、極微小うねりnWa=1.45nm
そして、作製したスタンパを用いて、磁気記録媒体用基板を連続して作製した。その結果、750枚を超えた時点で、成形品(磁気記録媒体用基板)の平面度が劣化し始めた。そして、1500枚を成形した時点で、スタンパを金型から取り出して確認したところ、成形前に比べてスタンパの平面度が2倍以上大きくなっており、微小うねりμWaも1.5[nm]以上に劣化していた。また、得られた成形品の平面度も成形初期に比べ非常に悪くなっていた。
以上のように、この実施例によると、スタンパの経時変化を抑えることが可能となる。また、この実施例に係るスタンパを用いることで、平面度が良好な磁気記録媒体用基板を作製することが可能となる。
なお、上述した実施例はこの発明の1例である。例えば、基材2に、実施形態で説明した別の材料を用い、金属膜3に、実施形態で説明した別の材料を用いても、この実施例と同様の効果を奏することができる。また、磁気記録媒体用基板に用いる樹脂についても、実施形態で説明した別の樹脂を用いても、この実施例と同様の効果を奏することができる。
1 スタンパ
2 基材
3 金属膜
4 貫通孔
5 樹脂成形面
6 固定面
100 射出成形用金型
110 第1金型
111 スプルー
120 第2金型
121 キャビティ(溝部)
2 基材
3 金属膜
4 貫通孔
5 樹脂成形面
6 固定面
100 射出成形用金型
110 第1金型
111 スプルー
120 第2金型
121 キャビティ(溝部)
Claims (11)
- 樹脂製の磁気記録媒体用基板を作製するための金型であって、内部に樹脂を注入する空間を有する金型の前記内部の一部に設置される膜状又は薄板状の金型部材の製造方法であって、
前記内部の表面の一部に設置した場合に前記内部の表面に接する固定面と、前記固定面とは反対側の面であって前記空間に面する樹脂成形面とを有する金型部材を対象として、前記樹脂成形面と前記固定面とを同時に研磨する研磨工程を含むことを特徴とする金型部材の製造方法。 - 前記研磨工程では、平坦な表面を有する第1定盤と、平坦な表面を有する第2定盤とを、互いの平坦な表面を対向させて配置し、前記第1定盤と前記第2定盤とで前記金型部材を挟んで押圧し、研磨剤を介在して前記第1定盤と前記第2定盤と前記金型部材とを摺動させることで、前記樹脂成形面と前記固定面とを同時に研磨することを特徴とする請求項1に記載の金型部材の製造方法。
- 前記研磨工程では、異なる研磨条件で複数回、前記金型部材を研磨することを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の金型部材の製造方法。
- 前記樹脂成形面の表面硬度Hvと前記固定面の表面硬度Hvとが、400以上、1000未満であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の金型部材の製造方法。
- 前記金型部材のヤング率が、60[GPa]以上、120[GPa]未満であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の金型部材の製造方法。
- 前記研磨工程では、原子間力顕微鏡により測定した前記樹脂成形面の表面粗さRaと前記固定面の表面粗さRaとが、0.2[nm]未満になるまで研磨を行うことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の金型部材の製造方法。
- 前記研磨工程では、前記樹脂成形面の表面粗さの最大値Rmaxと前記固定面の表面粗さの最大値Rmaxとが、2.0[nm]未満になるまで研磨を行うことを特徴とする請求項6に記載の金型部材の製造方法。
- 前記研磨工程では、前記固定面と前記樹脂成形面とにおいて、凹凸の周期が30[μm]〜200[μm]の微小うねりの平均高さμWaが、1.0[nm]未満になるまで研磨を行うことを特徴とする請求項6又は請求項7のいずれかに記載の金型部材の製造方法。
- 前記研磨工程では、前記固定面と前記樹脂成形面とにおいて、凹凸の周期が1[μm]〜30[μm]の極微小うねりの平均高さnWaが、1.0[nm]未満になるまで研磨を行うことを特徴とする請求項6から請求項8のいずれかに記載の金型部材の製造方法。
- 前記金型部材の耐熱温度が300[℃]以上であることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれかに記載の金型部材の製造方法。
- 前記金型部材の厚さtmと、前記金型によって作製される前記磁気記録媒体用基板の厚さtpとが、0.3×tp<tm<3×tpの関係を満たすことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれかに記載の金型部材の製造方法。
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