JP2009226338A - フッ化ビニリデン系樹脂中空糸多孔膜およびその製造方法 - Google Patents

フッ化ビニリデン系樹脂中空糸多孔膜およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】従来よりは小さな孔径と比較的大なる透水量を有し且つ逆洗および/またはバブリングによる汚染物除去効率も加味した耐汚染性の良好なフッ化ビニリデン系樹脂中空糸多孔膜を提供する。
【解決手段】重量平均分子量Mwが50万以上であり且つ重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比Mw/Mnが2.0以上であるフッ化ビニリデン系樹脂からなる中空糸形状の非延伸多孔膜であって、差圧100kPa、水温25℃の条件で測定した試長L=200mmでの透水量の空孔率v=70%への換算値F(L=200mm、v=70%)(m/day)と、ハーフドライ/バブルポイント法(ASTM・F316およびASTM・E1294)による孔径分布に基づく平均孔径Pm(μm)の四乗値Pmとの比F(L=200mm、v=70%)/Pmが5×10(m/day・μm)以上であるフッ化ビニリデン系樹脂中空糸多孔膜。
【選択図】図2

Description

本発明は、(濾)水処理性能に優れたフッ化ビニリデン系樹脂製の中空糸多孔膜(中空糸状の多孔膜)、特に従来よりは小さな孔径と比較的大なる透水量を有し且つ耐汚染性の良好なフッ化ビニリデン系樹脂中空糸多孔膜ならびにその製造方法に関する。
フッ化ビニリデン系樹脂は、耐候性、耐薬品性、耐熱性に優れることから分離用多孔膜への応用が検討されている。(濾)水処理用途、特に上水製造または下水処理用途に使用する場合、濾過装置の容積当りの膜面積を大きくすることが容易な中空糸多孔膜が用いられることが多く、その製造方法も含めて、数多くの提案がなされている(例えば特許文献1〜3)。
また、本発明者等も、特定の分子量特性を有するフッ化ビニリデン系樹脂を、該フッ化ビニリデン系樹脂の可塑剤および良溶媒とともに中空糸状に溶融押出しし、その後可塑剤を抽出除去し、更には延伸して多孔化する方法が適度の寸法と分布の微細孔を有し且つ機械的強度の優れたフッ化ビニリデン系樹脂多孔膜の形成に有効であることを見出して、一連の提案を行っている(特許文献4他)。しかしながら、中空糸多孔膜を濾過膜とし使用する場合に必要な濾過性能および機械的性能等を含む総合性能に関して、一層の改善の要求は強い。特に、被除去粒子を除くのに適当な大きさで、且つ大なる透水量(ろ過性能)を有すること、ならびにろ水運転の継続に伴う汚れの蓄積が少ないこと(良好な耐汚染性)が望まれる。
例えば、従来開発されているフッ化ビニリデン系樹脂中空糸多孔膜の殆どは、平均孔径(ハーフドライ/バブルポイント法(ASTM−F316およびASTM−E1294)による。以下、同様)が0.1μmを超えるMF(Microfiltration、精密ろ過)膜に属するものであり、より小さな孔径のUF(Ultrafiltration、限外ろ過)膜領域に入る孔径まで低下して、下限寸法が0.1μmまで分布するバクテリアの除去を確実にすることも望まれる。しかしながら、孔径の小さい膜を形成することには、孔ないしは導管を通過する透水量が孔径の四乗に比例することを示すハーゲン・ポアズイスの式から明らかなように、透水量の低下が避け難いという問題がある。
本発明者らは、上記特許文献4の方法において、溶融押出しする組成物中の良溶媒量を増大することにより、比較的小さな平均孔径を有するにも拘らず、大なる透水量を有するフッ化ビニリデン系樹脂中空糸多孔膜が得られることを見出し、一つの提案を行っている(特許文献5)。しかしながら、孔径の四乗則の制約は著しく、実用的な透水量を維持した範囲で実現された平均孔径は、依然として0.08μmを超えるレベルであった。
また、本発明者らの開発した一連のフッ化ビニリデン系樹脂中空糸多孔膜の製造技術(特許文献4、5他)は、透水量を増大するための重要な要素として延伸工程を採用しているが、その延伸の結果として、製品中空糸多孔膜の表面が粗面化し、それがろ水運転の継続に伴い多孔膜上に堆積する汚れの逆洗あるいはバブリングによる除去の障害になることが見出された(後記図2(a)および(b)参照)。
特開昭63−296939号公報 WO02/070115A公報 特開2003−210954号公報 WO2004/081109A公報 WO2007/010832A公報
従って、本発明の主要な目的は、従来よりは小さな孔径と比較的大なる透水量を有し且つ逆洗および/またはバブリングによる汚染物除去効率も加味した耐汚染性の良好なフッ化ビニリデン系樹脂中空糸多孔膜およびその製造方法を提供することにある。
本発明のフッ化ビニリデン系樹脂中空糸多孔膜は、上述の目的を達成するために開発されたものであり、重量平均分子量Mwが50万以上であり且つ重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比Mw/Mnが2.0以上であるフッ化ビニリデン系樹脂からなる中空糸形状の非延伸多孔膜であって、差圧100kPa、水温25℃の条件で測定した試長L=200mmでの透水量の空孔率v=70%への換算値F(L=200mm、v=70%)(m/day)と、ハーフドライ/バブルポイント法(ASTM・F316およびASTM・E1294)による孔径分布に基づく平均孔径Pm(μm)の四乗値Pmとの比F(L=200mm、v=70%)/Pmが5×10(m/day・μm)以上であることを特徴とするものである。
上記において、F(L=200mm、v=70%)(m/day)は、空孔率により変化する透水量を空孔率70%で規格化して評価した透水能を示すものであり、F(L=200mm,v=70%)/Pmは、バーゲン・ポアズイスの四乗則に抗して、透水能の低下が防止されていることを示すパラメータである。平面的な孔数の増減を加味し孔の連通性を評価するためPmの値を用いる特許文献5のパラメータに対して、より小孔径であることを重視する本発明ではPmの値を用いている。因みに特許文献5の典型的な一実施例に相当する後記比較例5では、上記F(L=200mm、v=70%)Pmは、2.4×10(m/day・μm)となっている。
上記特許文献5の技術から出発して本発明に到達した経緯について若干付言する。特許文献5の方法においては、溶融押出し組成物中の良溶媒を増大することにより、孔径分布を改良し、延伸による空孔率の増大を通じて、透水量の増大を図っている。しかしながら、上述したように、本発明者らの研究によれば、延伸による透水量の増大は、製品中空糸多孔膜の粗面化を通じて再生機能を加味した耐汚染性の低下につながり、また平均孔径の増大をも招くので好ましくない。本発明は、この延伸工程を含むことなく、平均孔径が比較的小であるにも拘らず、必要な透水量を確保したフッ化ビニリデン系樹脂中空糸多孔膜の製造技術を与えることを目的とする。
本発明者らは、上述の目的で、特に延伸工程を含むことなく透水量を確保する目的で、一連のフッ化ビニリデン系樹脂中空糸多孔膜の製造技術を見直した結果、以下の知見を得た。すなわち、特許文献4および5を含む中空糸状溶融押出し物の外部からの冷却−可塑剤抽出による中空糸多孔膜形成法においては、一般に外表面側にろ過性能を支配する緻密層(以下、緻密層あるいはろ過層と称する)が、また内表面側に強度支持に寄与する樹脂の疎な層(支持層)を有する傾斜構造膜が形成される。溶融押出し組成物中に含まれる可塑剤の増大は、空孔率、特に開口率の増大を通じて、透水量の増大に寄与するが、それだけでは、適切な溶融押出し特性を得るのに不適であり、過度の増大は冷却浴中での溶融押出し中空糸のつぶれを生ずる(後記比較例2)。また、仮に製膜できたとしても空孔率の過度の増大により、機械的強度が低下する。
他方、良溶媒の添加は、特許文献4においてはもっぱらフッ化ビニリデン系樹脂と可塑剤との相溶性改良を目的として行われてきた。また特許文献5においては孔径分布の改良を目的として行われ、膜モルフォロジーへの影響が示唆されたものの、良溶媒は可塑剤の抽出による効率的な空隙形成を阻害するため、良溶媒添加量を増やしても空隙の増加と、それによる透水量の増大に寄与するとは考えられていなかった。
また成型条件の観点から考慮すると、冷却温度の低下は、緻密層の更なる緻密化を生じ、平均孔径の低下に寄与する。しかし同時に、膜深部まで急冷が作用することにより緻密層の厚肉化をも生じ、平均孔径の低下とあいまって著しい透水量の低下を招く。したがって、延伸工程を含むことなしに、比較的小なる平均孔径と必要な透水量を確保したフッ化ビニリデン系樹脂多孔膜の製造は極めて困難である。
本発明者らは、フッ化ビニリデン系樹脂の結晶化制御を通しての膜のモルフォロジー制御を更に検討する過程において、良溶媒の割合が膜のモルフォロジー形成に何らかの影響をするとの観点からの検討を継続してきた。その結果、フッ化ビニリデン系樹脂に対する良溶媒の割合を、従来は試みられなかった程度に増大させることにより、(1)緻密層を薄肉化でき、(2)空孔率レベルが一定でも孔の連通性が改良されることにより透水量が増大する、との知見を得た。
更に、かかる良溶媒を増大させた組成であっても、原料フッ化ビニリデン系樹脂として、冷却浴中での適切な結晶化特性を確保するために広い分子量分布を有するとともに、従来は試みられなかったほどに高い重量平均分子量を有するフッ化ビニリデン系樹脂、簡便には結晶化特性向上成分として比較的少量用いられていた超高分子量成分を増量して、中高分子量成分と組み合わせたフッ化ビニリデン系樹脂組成物を用いれば、溶融押出中空糸の冷却浴中でのつぶれを防止可能であり、その後の可塑剤抽出工程を経て、延伸工程無しでも、比較的小なる平均孔径と、必要な透水量を確保したフッ化ビニリデン系樹脂中空糸多孔膜の製造が可能であるとの知見に到達した。
本発明のフッ化ビニリデン系樹脂中空糸多孔膜は、上述の知見に基づくものであり、従って本発明は別の観点に従って、重量平均分子量Mwが50万以上であり且つ重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比Mw/Mnが2.0以上であるフッ化ビニリデン系樹脂(A)、の100重量部に対し、可塑剤(B)とフッ化ビニリデン系樹脂の良溶媒(C)とを合計量で200〜350重量部、且つその内の前記良溶媒(C)が50〜100重量部となるように添加し、得られた組成物を中空糸状に溶融押出しし、0〜90℃の冷却液中に導いて冷却固化した後、可塑剤を抽出して、中空糸多孔膜を延伸することなく回収することを特徴とする、上記本発明の中空糸多孔膜の製造方法をも提供するものである。
以下、本発明のフッ化ビニリデン系樹脂中空糸多孔膜を、その好ましい製造方法である本発明の製造方法に従って順次説明する。
(フッ化ビニリデン系樹脂)
本発明において、主たる膜原料として用いるフッ化ビニリデン系樹脂としては、フッ化ビニリデンの単独重合体、すなわちポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンと共重合可能な他のモノマーとの共重合体あるいはこれらの混合物が用いられる。フッ化ビニリデンと共重合可能なモノマーとしては、四フッ化エチレン、六フッ化プロピレン、三フッ化エチレン、三フッ化塩化エチレン、フッ化ビニル等の一種又は二種以上を用いることができる。フッ化ビニリデン系樹脂は、構成単位としてフッ化ビニリデンを70モル%以上含有することが好ましい。なかでも機械的強度の高さからフッ化ビニリデン100モル%からなる単独重合体を用いることが好ましい。
本発明においては、上述したフッ化ビニリデン系樹脂のうち、重量平均分子量Mwが50万以上であり且つ重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比Mw/Mnが2.0以上であるものを用いる。Mwが50万以上であることは、製品中空糸多孔膜の機械的強度を高めるためだけではなく、後述するように比較的多量の可塑剤と良溶媒と混合して、溶融押出しをするに際して溶融押出し中空糸の溶融粘度を維持して、糸つぶれを防止するために必要である。Mwは50万以上、好ましくは50万〜80万である。
溶融押出し中の球状粒子の形成を抑制し、必要な特性の多孔質中空糸を本発明法に従い円滑に製造するために、フッ化ビニリデン系樹脂は、ある程度広い分子量分布を持つことが必要である。これは重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnが2.0以上であることで代表される。このような広い分子量分布のフッ化ビニリデン系樹脂は、簡便には、異なる平均分子量の少なくとも二種のフッ化ビニリデン系樹脂をそれぞれ重合法により得て、これらを混合することにより得られる。すなわち、本発明の好ましい態様によれば、重量平均分子量(Mw1)が40万〜120万、好ましくは60万〜120万である超高分子量フッ化ビニリデン系樹脂10〜70重量%と、重量平均分子量(Mw2)が15万〜60万、好ましくは20万〜50万、である中高分子量フッ化ビニリデン系樹脂30〜90重量%とを含有し、且つ超高分子量フッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量/中高分子量フッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量の比Mw1/Mw2が1.8以上、好ましくは1.9以上、特に好ましくは2.0以上である混合物を主たる膜原料として用いる。
超高分子量の第1のフッ化ビニリデン系樹脂成分は、中高分子量の第2のフッ化ビニリデン系樹脂と組み合されて、溶融押出し樹脂の結晶化温度Tcを上昇させ、且つ高可塑剤および良溶媒含量であるにも拘らず、溶融押出し組成物の粘度を上昇させて補強することにより、中空糸形状での安定押出しを可能にする。Tcを上昇させることにより、溶融押出により形成された中空糸膜の外側面からの優先的冷却に際して、膜表面に比べて冷却の遅い膜内部から内側面にかけてのフッ化ビニリデン系樹脂の固化を早めることが可能になり、球状粒子の成長を抑制することができる。Tcは、好ましくは143℃以上、より好ましくは145℃以上である。
また、超高分子量フッ化ビニリデン系樹脂成分の添加量が10重量%未満では溶融押出し組成物の増粘補強効果が十分でなく、一方、70重量%を超えると、フッ化ビニリデン系樹脂と可塑剤の相分離構造が過度に微細化して、得られる多孔膜の透水量が低下したり、更に加工時のメルトフラクチャー発生などにより安定した膜形成が困難になる、という傾向がある。
本発明で用いるフッ化ビニリデン系樹脂は、未架橋であることが後述する組成物の溶融押出しの容易化のために好ましく、またその融点(示差走査熱量計(DSC)により測定される樹脂の結晶融解に伴う吸熱ピーク温度)は、160〜220℃であることが好ましく、より好ましくは170〜180℃である。160℃未満では、生成する多孔膜の耐熱変形性が不充分となりがちであり、220℃を超えると、溶融混合性が低下し、均一な膜形成が難しくなる。
本発明法においては、上記のフッ化ビニリデン系樹脂に、フッ化ビニリデン系樹脂の可塑剤および良溶媒を比較的多量に加えて膜形成用の原料組成物を形成する。
(可塑剤)
本発明の中空糸多孔膜は、主として上記したフッ化ビニリデン系樹脂により形成されるが、その製造のためには上述したフッ化ビニリデン系樹脂に加えて、少なくともその可塑剤を孔形成剤として用いられる。可塑剤としては、一般に、二塩基酸とグリコールからなる脂肪族系ポリエステル、例えば、アジピン酸−プロピレングリコール系、アジピン酸−1,3−ブチレングリコール系等のアジピン酸系ポリエステル;セバシン酸−プロピレングリコール系、セバシン酸系ポリエステル;アゼライン酸−プロピレングリコール系、アゼライン酸−1,3−ブチレングリコール系等のアゼライン酸系ポリエステル等が用いられる。
(良溶媒)
また、本発明法による中空糸膜の冷却形成に際しての緻密層の厚肉化を防止し、比較的低粘度の溶融押出しを通じて形成するためには、上記可塑剤に加えてフッ化ビニリデン系樹脂の良溶媒が併用される。この良溶媒としては、20〜250℃の温度範囲でフッ化ビニリデン系樹脂を溶解できる溶媒が用いられ、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトン、アセトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸エチル、プロピレンカーボネート、シクロヘキサン、メチルイソブチルケトン、ジメチルフタレート、およびこれらの混合溶媒等が挙げられる。なかでも高温での安定性からN−メチルピロリドン(NMP)が好ましい。
(組成物)
中空糸膜形成用の原料組成物は、好ましくはフッ化ビニリデン系樹脂(A)100重量部に対し、可塑剤(B)とフッ化ビニリデン系樹脂の良溶媒(C)とを、合計量で200〜350重量部、より好ましくは200〜300重量部、且つそのうち良溶媒(C)が50〜100重量部、好ましくは65〜75重量部となるように添加して、混合することにより得られる。
可塑剤と良溶媒との合計量が少な過ぎると小孔径でも必要な透水量を確保した本発明の非延伸中空糸多孔膜が得られなくなり、多過ぎると粘度が過度に低下し、均質で適度に高い空孔率、従って濾過性能(透水量)を有する多孔質中空糸を得ることが困難となる。またフッ化ビニリデン系樹脂100重量部に対する良溶媒の割合が50重量部未満であると、緻密層の厚肉化防止、平均孔径の増大および内表面の孔径拡大という良溶媒の添加効果を得難い。また良溶媒が100重量部を超えると、冷却浴中での樹脂の結晶化が不充分となり、糸つぶれが発生しやすくなり、中空糸の形成自体が困難となる。これにより、最終的に得られる中空糸多孔膜の空孔率v(%)と、溶融押出組成物中の可塑剤(B)と良溶媒(C)の合計分率α(%)との比v/αが、従来よりは幾分低めの0.70〜0.94程度となるが、孔の連通性の改善により、必要な透水量は確保される。
(混合・溶融押出し)
溶融押出組成物は、一般に140〜270℃、好ましくは150〜200℃、の温度で、中空ノズルから押出されて膜状化される。従って、最終的に、上記温度範囲の均質組成物が得られる限りにおいて、フッ化ビニリデン系樹脂、可塑剤および良溶媒の混合並びに溶融形態は任意である。このような組成物を得るための好ましい態様の一つによれば、二軸混練押出機が用いられ、(好ましくは主体樹脂と結晶特性改質用樹脂の混合物からなる)フッ化ビニリデン系樹脂は、該押出機の上流側から供給され、可塑剤と良溶媒の混合物が、下流で供給され、押出機を通過して吐出されるまでに均質混合物とされる。この二軸押出機は、その長手軸方向に沿って、複数のブロックに分けて独立の温度制御が可能であり、それぞれの部位の通過物の内容により適切な温度調節がなされる。
(冷却)
次いで溶融押出された中空糸膜状物を0〜90℃、好ましくは10〜80℃、より好ましくは15〜60℃の冷却液浴中に導入して、その外側面から優先的に冷却して固化製膜させる。その際、中空糸膜状物の中空部に空気あるいは窒素等の不活性ガスを注入しつつ冷却することにより拡径された中空糸膜が得られ、長尺化しても単位膜面積当りの透水量の低下が少い中空糸多孔膜を得るのに有利である(WO2005/03700A公報)。冷却浴温度が0℃未満では、固化した中空糸が脆化するために引取りが困難となる難点がある。他方90℃を超えると、冷却浴中での樹脂の結晶化が不十分となり、糸つぶれが発生しやすくなり、中空糸の形成自体が困難となる。
フッ化ビニリデン系樹脂の結晶化を妨げる方向に作用する良溶媒および可塑剤を多く含む、本発明法により溶融押出しされた中空糸膜状物の冷却浴中でのつぶれを防止するために、溶融押出後、冷却浴に入るまでの経過時間(エアギャップ通過時間=エアギャップ/溶融押出物引取り速度)を従来よりも長く取ることが望ましく、一般に1.0秒以上、特に2.0〜10.0秒の範囲が好ましい。
冷却液としては、一般にフッ化ビニリデン系樹脂に対し不活性(すなわち非溶媒且つ非反応性)な液体、好ましくは水が用いられる。場合により、フッ化ビニリデン系樹脂の良溶媒(上記溶融押出組成物中に含まれるものと同様なもの)で、不活性液体と相溶性のもの(好ましくは水と相溶性のNMP)を冷却液中の30〜90重量%、好ましくは40〜80重量%、となるような割合で混入すると、最終的に得られる中空糸多孔膜の外表面側の孔径を増大し、エアスクラビングによる再生に有利な膜内部に最小孔径層を有する中空糸多孔膜を得ることも可能になる(WO2006/087963A1公報)。
(抽出)
冷却・固化された膜状物は、次いで抽出液浴中に導入され、可塑剤および良溶媒の抽出除去を受ける。抽出液としては、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を溶解せず、可塑剤や良溶媒を溶解できるものであれば特に限定されない。例えばアルコール類ではメタノール、イソプロピルアルコールなど、塩素化炭化水素類ではジクロロメタン、1,1,1−トリクロロエタンなど、の沸点が30〜100℃程度の極性溶媒が適当である。
(フッ化ビニリデン系樹脂中空糸多孔膜)
上記一連の工程を通じて得られる本発明の中空糸多孔膜は、差圧100kPa、水温25℃の条件で測定した試長L=200mmでの透水量の空孔率v=70%への換算値F(L=200mm,v=70%)(m/day)と、ハーフドライ/バブルポイント法による孔径分布に基づく平均孔径Pm(μm)の四乗値Pmとの比F(L=200mm,v=70%)/Pmが5×10(m/day・μm)以上、好ましくは7×10(m/day・μm)以上、最も好ましくは1×10(m/day・μm)以上、であることを特徴とする。これは、本発明の中空糸多孔膜が小孔径であるにも拘らず、透水量が高く維持されることを示す。空孔率70%換算の透水量(測定法は後述する)を用いるのは、空孔率による透水量への影響を除き、平均孔径と透水量のみによる中空糸多孔膜の性能評価を行うためである。上記特性の評価のために、本発明で行った測定法を説明する。
ハーフドライ/バブルポイント法は、ASTM・F316−86およびASTM・E1294−86に定められる多孔膜、特に中空糸多孔膜に適した最大孔径Pmaxおよび孔径分布の測定法である。より具体的には、バブルポイント法では、試液中に浸漬した中空糸多孔膜試料中に、徐々に増大する圧力の加圧空気を送り込み、試液からの最初のバブルの発生点(バブルポイント)の空気圧力から試料膜の最大孔径Pmax(μm)を求める。ハーフポイント法では、中空糸多孔膜試料を試液で濡らした状態での濡れ流量曲線(WET FLOW CURVE)と乾いた状態での乾き流量曲線(DRY FLOW CURVE)の1/2の傾きの曲線(HALF DRY CURVE)とが交わる点の空気圧力から試料膜の平均孔径Pm(μm)を求める。また、濡れ流量曲線と乾き流量曲線の一致点の空気圧力から求めた孔径を最小孔径Pmin(μm)として求める。本明細書の記載値は、測定器としてPorous Materials, Inc社製「パームポロメータCFP−2000AEX」を用い、また試液としてはパーフルオロポリエステル(商品名「Galwick」)を用いて行った測定結果に基づく。中空糸膜試料としては試長が10mm程度のものを用いる。
上記本発明の中空糸多孔膜の製造方法によれば、一般に平均孔径Pmが20μm以下のものが得られるが、本発明では特に平均孔径が0.08μm以下、特に0.03〜0.08μm、好ましくは0.04〜0.08μm、更に好ましくは0.05〜0.07μm、の小さな平均孔径を目標とする。
平均孔径Pmが0.03μm未満では、膜の透水量の低下が無視できず、他方0.08μmを超えると、膜の微粒子(汚濁原因物質ないし細菌等)除去能力が低下する恐れがあり、本発明の目的に沿わない。最大孔径は一般に、0.05〜0.20μm、好ましくは0.07〜0.18μm程度である。
本発明により得られる中空糸多孔膜の、他の一般的特徴を挙げると、空孔率が50〜85%、好ましくは50〜70%、SEM観察による外表面平均孔径が、外側表面で0.10〜0.40μm、好ましくは0.15〜0.30μm、内側表面で0.20〜0.50μm、好ましくは0.30〜0.40μm、引張り強度が6MPa以上、破断伸度が5%以上の特性が得られる。また厚さは、5〜800μm程度の範囲が通常であり、好ましくは50〜600μm、特に好ましくは150〜500μmである。中空糸としての外径は0.3〜3mm程度、特に1〜3mm程度が適当である。なお本発明の中空糸多孔膜が、延伸工程を経ることなしに得られていることは、X線回析法により容易に確認可能である。
本発明により得られる中空糸多孔膜については、WO2007/12509A1公報(その開示内容は、必要に応じて参照により、本願明細書に包含させるものとする)に記載されるように、外表面(好ましくは、原水供給側外表面平均孔径の2倍以上且つ膜厚さの1/2以下の深さ)を選択的に親水化することにより、膜強度を維持しつつ、原水中の汚れ成分による膜の汚染および孔の詰まりによる透水量の経時的低下を低減することも好ましい。
以下、実施例、比較例により、本発明を更に具体的に説明する。以下の記載を含め、本明細書に記載の上記(Pm,Pmax、Pmin)以外の特性は、以下の方法による測定値に基づくものである。
(重量平均分子量(Mw))
日本分光社製のGPC装置「GPC−900」を用い、カラムに昭和電工社製の「Shodex KD−806M」、プレカラムに「Shodex KD−G」、溶媒にNMPを使用し、温度40℃、流量10mL/分にて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によりポリスチレン換算分子量として測定した。
(結晶化温度Tc)
パーキンエルマー社製の示差走査熱量計DSC7を用いて、試料樹脂10mgを測定セルにセットし、窒素ガス雰囲気中で、温度30℃から10℃/分の昇温速度で250℃まで一旦昇温し、ついで250℃で1分間保持した後、250℃から10℃/分の降温速度で30℃まで降温してDSC曲線を求めた。このDSC曲線における降温過程における発熱ピーク温度を結晶化温度Tc(℃)とした。
(空孔率)
中空糸膜の長さ、並びに外径および内径を測定して中空糸膜の見掛け体積V(cm)を算出し、更に中空糸膜の重量W(g)を測定して次式より空孔率を求めた:
[数1]
空孔率v(%)=(1−W/(V×ρ))×100
ρ:PVDFの比重(=1.78g/cm)。
(SEM観察による外表面平均孔径測定)
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて中空糸多孔膜の外側および内側外表面を、観察倍率5000倍で写真撮影した。得られたSEM写真(観察範囲は約19μm四方)を画像処理装置「(株)ネクサス製「nexus New Qube Version4.01」を用いて二値化処理し、これにより、重合体相と空隙部の区分けを行い、観察範囲内における、前記ハーフドライ法により求めた最小孔径Pmin以上のすべての空隙部の円相当径D(その面積を円で与えると仮定したときの該円の直径)およびその個数nを計測し、それらの数平均値(=ΣnD/Σn)をそれぞれの外表面の平均孔径とした。ハーフドライ法による最小孔径Pmin未満のDを有する空隙部を除外するのは、これらは連通孔を形成しているろ過に有効な空隙部ではない(例えば樹脂相の凹凸)と考えられるからである。
(透水量)
試長L(図1参照)=200mmの試料中空糸多孔膜をエタノールに15分間浸漬し、次いで純水に15分間浸漬して親水化した後、水温25℃、差圧100kPaで測定した1日当りの透水量(m/day)を、中空糸多孔膜の膜面積(m)(=外径×π×試長Lとして計算)で除して得た。測定値は、F(100kPa,L=200mm)と表記し、単位はm/day(=m/m・day)で表わす。
試長L=200mmでの透水量F(100kPa,L=200mm)については、空孔率v=70%への換算値F(L=200mm,v=70%)を、
[数2]
F(L=200mm,v=70%)
=F(100kPa,L=200mm)×(70(%)/v(%))
の式により求め、さらに平均孔径Pmの四乗との比F(L=200mm,v=70%)/Pm(単位:m/day・μm)を求め、微粒子除去能力を加味した透水性能評価を行った。
(表面粗さRa)
試料中空糸膜を5mmの長さに切り取り、これを半割りにして、表面粗さ計(SEIKO Instruments社製「SPM(SPI3800N/SPA−300HV)」の試料台に半割した中空糸をその外側表面が上側になるように載せ、同表面粗さ計に付属するカンチレバー(「SI−Af01」、たわみ定数=0.18nN/nm)を用いて、同表面粗さ計のAMF(原子間力顕微鏡)モードで、中空糸表面の孔部と樹脂部の双方を観察可能な領域であり且つ試料全体のひずみの寄与しない測定範囲5×5μmについて、表面粗さ曲線f(x)を求め、同表面粗さ曲線の上半分と下半分の面積が同一となるように二分する中心線の上半分と下半分の面積の和を測定長さ(=5μm)で割った値として中心線平均表面粗さRaを求めた。実際には、Raは、AFMモード測定が終わった時点で、自動的に表示された測定値を用いている。
(引っ張り試験)
引っ張り試験機(東洋ボールドウィン社製「RTM−100」)を使用して、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気中で初期試料長100mm、クロスヘッド速度200mm/分の条件下で測定した。
(実施例1)
重量平均分子量(Mw2)が4.12×10の中高分子量ポリフッ化ビニリデン(PVDF)(粉体)と重量平均分子量(Mw1)が9.36×10の超高分子量ポリフッ化ビニリデン(PVDF)(粉体)を、それぞれ75重量%および25重量%となる割合で、ヘンシェルミキサーを用いて混合して、Mwが5.43×10であるPVDF混合物を得た。
脂肪族系ポリエステルとしてアジピン酸系ポリエステル可塑剤(旭電化工業株式会社製「PN−150」)と、溶媒としてN−メチルピロリドン(NMP)とを、71.7重量%/28.3重量%の割合で、常温にて撹拌混合して、可塑剤・溶媒混合物を得た。
同方向回転噛み合い型二軸押出機(プラスチック工学研究所社製「BT−30」、スクリュー直径30mm、L/D=48)を使用し、シリンダ最上流部から80mmの位置に設けられた粉体供給部からPVDF混合物を供給し、シリンダ最上流部から480mmの位置に設けられた液体供給部から温度160℃に加熱された可塑剤・溶媒混合物を、PVDF混合物/可塑剤・溶媒混合物=28.6/71.4(重量%)の割合で供給して、バレル温度220℃で混練し、混練物を外径6mm、内径4mmの円形スリットを有するノズルから吐出量8.3g/分で中空糸状に押し出した。この際、ノズル中心部に設けた通気孔から空気を流量4.0mL/分で糸の中空部に注入した。
押し出された混合物を溶融状態のまま、60℃の温度に維持され且つノズルから280mm離れた位置に水面を有する(すなわちエアギャップが280mmの)水冷却浴中に導き冷却・固化させ(冷却浴中の滞留時間:約6秒)、4.0m/分の引取速度で引き取った後、これを周長約1mのカセに巻き取って第1中間成形体を得た。
次に、この第1中間成形体をジクロロメタン中に振動を与えながら室温で30分間浸漬し、次いでジクロロメタンを新しいものに取り替えて再び同条件にて浸漬して、可塑剤と溶媒を抽出し、次いで温度120℃のオーブン内で1時間加熱してジクロロメタンを除去するとともに熱処理を行い本発明法によるポリフッ化ビニリデン系中空糸多孔膜(第2成形体)を得た。
得られたポリフッ化ビニリデン系中空糸多孔膜は、外径が1.19mmで、内径が0.54mm、膜厚が0.33mm、空孔率が66.0%、差圧100kPaでの純水透水量F(L,100kPa)は、試長L=200mmにおいてF(L=200mm,100kPa)=13.2m/day、その空孔率70%換算値F(L=200mm,v=70%)=14.0m/day、平均孔径Pm=0.071μm、純水透過流束F(L=200mm,v=70%)/Pm=5.5×10(m/day・μm)、引っ張り応力7.5MPa、引っ張り強力6.7N、引っ張り破断伸度259%であった。
製造条件および得られたポリフッ化ビニリデン系中空糸多孔膜の主要な物性を、以下の実施例の結果とともに、まとめて後記表1に記し、後記比較例の結果をまとめて後記表1に記す。
(実施例2)
冷却水浴温度を60℃から40℃に変化する以外は、実施例1と同様にして中空糸多孔膜を得た。
(実施例3)
冷却水浴温度を15℃に変化する以外は、実施例1と同様にして中空糸多孔膜を得た。
(実施例4)
ポリエステル可塑剤(「PNP−150」)と溶媒NMPの重量比を75/25に、混合物A(PVDF混合物)/混合物B(可塑剤・溶媒混合物)の供給重量比を26.1/73.9に、冷却水浴温度を30℃に、それぞれ変化する以外は、実施例1と同様にして中空糸多孔膜を得た。
(実施例5)
冷却水浴温度を15℃に変化する以外は、実施例4と同様にして中空糸多孔膜を得た。
(実施例6)
ポリエステル可塑剤(「PNP−150」)と溶媒NMPの重量比を68.6/31.4に、混合物A(PVDF混合物)/混合物B(可塑剤・溶媒混合物)の供給重量比を30.8/69.2に、冷却水浴温度を40℃に、それぞれ変化する以外は、実施例1と同様にして中空糸多孔膜を得た。
(比較例1)
Mw2=4.12×10の中高分子量PVDFとMw1=9.36×10の超高分子量PVDFの重量比を95/5に、ポリエステル可塑剤(「PNP−150」)と溶媒NMPとの重量比を87.4/12.6に、PVDF混合物/可塑剤・溶媒混合物の重量比を35.7/64.3に、冷却水浴温度を40℃に、それぞれ変化する以外は実施例1と同様にして中空糸多孔膜を得た。
(比較例2)
Mw2=4.12×10の中高分子量PVDFとMw1=9.36×10の超高分子量PVDFの重量比を95/5に、変化する以外は実施例7と同様にして中空糸多孔膜の製造を試みたが、溶融押出し中空糸のつぶれが生じ、中空糸多孔膜は得られなかった。
(比較例3)
冷却浴温度を15℃に低下する以外は、実施例7と同様にして中空糸多孔膜を得た。
(比較例4)
Mw2=4.12×10の中高分子量PVDFとMw1=9.36×10の超高分子量PVDFの重量比を95/5に、ポリエステル可塑剤(「PNP−150」)と溶媒NMPとの重量比を72.5/17.5に、PVDF混合物/可塑剤・溶媒混合物の重量比を35.7/64.3に、冷却水浴温度を50℃に、それぞれ変化する以外は実施例1と同様にして第2成形体を得た。
次いで、この第2成形体を第一のロール速度を8.4m/分にして、60℃の水浴中を通過させ、第二のロール速度を16.8m/分にすることで長手方向に2倍に延伸した。次いで温度90℃に制御した温水浴中を通過させて10%の緩和を、さらに空間温度140℃に制御した乾熱槽(2.0m長さ)を通過させ、4%の緩和を伴う熱処理を行った。これを巻き取ってポリフッ化ビニリデン系中空糸多孔膜(第3成形体)を得た。
(比較例5)
ポリエステル可塑剤と溶媒NMPとの重量比を82.5/17.5に、60℃での延伸倍率を1.85倍に、90℃温水中での緩和率を8%に、それぞれ変化する以外は、比較例4と同様にして中空糸多孔膜を得た。
上記実施例および比較例の製造条件の概要および製品中空糸多孔膜の主要な物性をまとめて、次の表1および2に示す。
Figure 2009226338
Figure 2009226338
上記表1の結果を見れば、超高分子量PVDFの割合を増大して、MwおよびMw/Mn比を上昇させたPVDF混合物を用い、可塑剤および/または良溶媒量の増加および適切な冷却水浴温度の調整により得られた本発明の中空糸多孔膜は、高いF(L=200mm、v=70%)/Pm比で示される良好な微粒子除去能と、概ね60nm以下の表面粗さRaで代表される表面平滑性を有していることがわかる。
これに対し、表2に示す結果によれば、超高分子量PVDFを少量に止めて可塑剤量を増大した比較例2および超高分子量PVDFを増大しても良溶媒量が過剰な比較例4においても、溶融押出し中空糸のつぶれが生じて、中空糸多孔膜が得られない。また超高分子量PVDFを少量にし且つ可塑剤・良溶媒量を抑制した比較例1および超高分子量PVDFを増大しても、良溶媒量が少なく、冷却水浴温度も低い比較例4では、透水量およびF(L=200mm、v=70%)/Pm比が低く止まる。
他方、比較例1に比べて延伸を行っている比較例5および6においては、透水量は増大しているが、F(L=200mm、v=70%)/Pm比の上昇は得られず、また表面粗さRaが80〜100と顕著に増大し、粗面化していることがわかる。
(ベントナイト懸濁水ろ過試験)
中空糸多孔膜のろ水使用後の逆洗およびエアバブリングによる再生能力の評価のために、実施例2、4および比較例4、5で得られた中空糸多孔膜について、ベントナイト懸濁水ろ過試験を以下のようにして行った。
ベントナイト(粒径0.05〜1μm、和光純薬(株)製)を純水1リットル当り100mgの割合で加えて、ベントナイト懸濁水を用意し、試料中空糸をセットした図1の透水量測定装置の圧力容器内に収容した。次いで透水量が3m/dayで一定となるように圧力制御を行いつつ、ろ過を行った。ろ過開始時および終了時に3m/dayの透水量を維持するために必要な膜間差圧(すなわち圧力計で読み取られるゲージ圧)を記録し、ろ過時の水温の粘度変化を考慮して、それぞれ25℃の値に温度補正した(すなわち、測定膜間差圧に(25℃の水の粘度/ろ過時の水の粘度)の比を乗じた)。
30分のろ過後、透水量4.5m/dayで5分間の純水による逆洗処理を行い、その後、通常のろ過を行い、その初期の3m/dayの透水量における膜間差圧を記録した。そして、いずれも25℃補正値に基づき、以下の式により回復率を求めた。
[数3]
回復率(%)=[(ろ過終了時(逆洗前)の差圧−逆洗終了後の差圧)
/(ろ過終了時の差圧)−ろ過開始時の差圧]×100。
上記(ろ過30分/逆洗)を更に2回繰り返した後、もう一度30分間ろ過を行い、その後5リットル/分の流量でエアバブリングを10分間行い、その後、上記のろ過運転を行って初期の3m/dayの透水量における膜間差圧を記録した。この値の25℃補正値に基づき、再び上記式(但し、逆洗の代りにエアバブリングとする)により回復率を求めた。
上記ベントナイト懸濁水ろ過試験の結果を次表3に示す。
Figure 2009226338
この結果を、図2(a)および(b)としてプロットする。
上記表3および図2(a)および(b)によれば、延伸なしに得られた本発明実施例2および4の中空糸多孔膜は、延伸を経て得られた比較例4および5の中空糸多孔膜に比べて、ろ過中の膜間差圧の上昇の程度にはそれほどの差は見られないが、顕著に低い表面粗さRa値を有し、これに対応して、顕著に高い逆洗およびエアバブリングによる再生能を示すことがわかる。
上述したように本発明によれば、広い分子量分布に加えて従来よりは大なる重量平均分子量のフッ化ビニリデン系樹脂を原料とし、これに増大した量の可塑剤および良溶媒を配合した原料組成物を用い、更に冷却浴温度を適切に制御することにより、延伸工程を経ることなしに、従来よりは小さな孔径と比較的大なる透水量を有し、且つ逆洗および/またはバブリングによる汚染物除去効率も加味した耐汚染性の良好なフッ化ビニリデン系樹脂中空糸多孔膜が提供される。
実施例および比較例で得られた中空糸多孔膜の水処理性能を評価するために用いた透水量測定装置の概略説明図。 中空糸多孔膜のろ過後の、再生処理((a)逆洗、(b)エアバブリング)による再生能(回復率)の表面粗さRaによる変化を示すプロット。

Claims (11)

  1. 重量平均分子量Mwが50万以上であり且つ重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比Mw/Mnが2.0以上であるフッ化ビニリデン系樹脂からなる中空糸形状の非延伸多孔膜であって、差圧100kPa、水温25℃の条件で測定した試長L=200mmでの透水量の空孔率v=70%への換算値F(L=200mm、v=70%)(m/day)と、ハーフドライ/バブルポイント法(ASTM・F316およびASTM・E1294)による孔径分布に基づく平均孔径Pm(μm)の四乗値Pmとの比F(L=200mm、v=70%)/Pmが5×10(m/day・μm)以上であるフッ化ビニリデン系樹脂中空糸多孔膜。
  2. フッ化ビニリデン系樹脂が、重量平均分子量Mw1が40万〜120万である超高分子量フッ化ビニリデン系樹脂10〜70重量%と、重量平均分子量Mw2が15万〜60万である中高分子量フッ化ビニリデン系樹脂30〜90重量%とを含有し、且つMw1/Mw2の比が、1.8以上である請求項1に記載の中空糸多孔膜。
  3. 任意の測定点5μm×5μmの範囲における表面粗さRaが60nm以下である請求項1または2に記載の中空糸多孔膜。
  4. F(L=200mm、v=70%)が10m/day以上である請求項1〜3のいずれかに記載の中空糸多孔膜。
  5. 空孔率が50〜70%である請求項1〜4のいずれかに記載の中空糸多孔膜。
  6. 中空糸多孔膜を形成するフッ化ビニリデン系樹脂全体の結晶化温度Tcが143℃以上である、請求項1〜5のいずれかに記載の中空糸多孔膜。
  7. 外表面にろ過性能を支配する緻密な層を、内表面に強度支持に寄与する疎な層を有し、外表面から内表面にかけて連続的に孔径が拡大する傾斜構造膜である請求項1〜6のいずれかに記載の中空糸多孔膜。
  8. 外表面平均孔径と内表面平均孔径の比が1.5〜5.0の範囲内にある請求項1〜7のいずれかに記載の中空糸多孔膜。
  9. 平均孔径Pmが0.08μm以下である請求項1〜6のいずれかに記載の中空糸多孔膜。
  10. 重量平均分子量Mwが50万以上であり且つ重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比Mw/Mnが2.0以上であるフッ化ビニリデン系樹脂(A)、の100重量部に対し、可塑剤(B)とフッ化ビニリデン系樹脂の良溶媒(C)とを合計量で200〜350重量部、且つその内の前記良溶媒(C)が50〜100重量部となるように添加し、得られた組成物を中空糸状に溶融押出しし、0〜90℃の冷却液中に導いて冷却固化した後、可塑剤を抽出して、中空糸多孔膜を延伸することなく回収することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のフッ化ビニリデン系樹脂中空糸多孔膜の製造方法。
  11. 回収された中空糸多孔膜の空孔率v(%)と、前記組成物中の可塑剤(B)と良溶媒(C)の合計分率α(%)との比v/αが0.70〜0.94である請求項10に記載の製造方法。
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