以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態における画像形成装置の概略構成図である。
図において、10は電子写真装置としての画像形成装置であり、例えば、電子写真式プリンタ、ファクシミリ機、複写機、プリンタ、ファクシミリ機及び複写機の機能を併せ持つ複合機等であるが、いかなる種類の画像形成装置であってもよい。なお、本実施の形態においては、前記画像形成装置10がカラー電子写真式プリンタである場合について説明する。
そして、前記画像形成装置10の内部には、積層された用紙、すなわち、被転写体としての印字媒体34を収容する給紙カセット25が配設され、さらに、印字媒体34を給紙カセット25から取り出して給紙する給紙ローラ26と、給紙カセット25から給紙された印字媒体34を搬送する搬送ローラ27及び28とが配設されている。また、印字媒体34の搬送方向における搬送ローラ27及び28の下流側には、印字媒体34を搬送する転写ベルト23が配設され、該転写ベルト23の下流側にはトナーを印字媒体34に定着させる定着装置24が配設されている。さらに、該定着装置24の下流側には搬送ローラ31と、画像形成装置10の外部の排出部33に印字媒体34を排出する排出ローラ32とが配設されている。これにより、概ねS字状の用紙搬送経路が形成される。
前記画像形成装置10は、いわゆるタンデム方式のカラー電子写真式プリンタであって、各色のトナー像を形成するID(Image Drum)ユニット21が、用紙搬送経路を構成する転写ベルト23に沿って、順次並んで配設されている。IDユニット21は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)及びK(ブラック)の画像を形成する4つのIDユニット21Y、21M、21C及び21Kを含むものである。なお、該IDユニット21Y、21M、21C及び21Kの各々は、同じ構成を備えており、統合的に説明する場合には、IDユニット21として説明する。
各IDユニット21は、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの各色の現像剤としてのトナーが充填(てん)されたトナーカートリッジ17とドラムカートリッジ18とを有する。そして、該ドラムカートリッジ18は、像担持体である感光体としての感光体ドラム11、該感光体ドラム11の表面に電荷を供給して帯電させる帯電手段としての帯電ローラ12、前記感光体ドラム11上に形成された静電潜像をトナーによって現像し、トナー像を形成する現像手段としての現像ローラ14、トナーを攪拌(かくはん)帯電するスポンジローラ15、及び、転写後の感光体ドラム11の表面に残留したトナーを除去するクリーニング手段としてのクリーニングブレード16を有する。
また、各感光体ドラム11の周囲には、露光手段としての露光LED(Light Emitting Diode)ヘッド13が配設されている。該露光LEDヘッド13は、画像形成装置10の本体に取り付けられ、ドラムカートリッジ18の所定位置から帯電された感光体ドラム11の表面に、画像データに基づいて選択的に光を照射して、静電潜像を形成する。
さらに、各感光体ドラム11に対向する位置には、転写ベルト23を挟んで、転写手段としての転写ローラ22が配設されている。そして、感光体ドラム11表面上のトナー像は、前記印字媒体34が各感光体ドラム11と転写ベルト23との間を通過するとき、該転写ベルト23と転写ローラ22との接点部分において転写される。
なお、前記画像形成装置10は、該画像形成装置10本体内に配設される各種ローラ等の可動部材を駆動するための図示されない駆動モータ、駆動ギヤ、駆動ベルト等を備える駆動装置も有する。
次に、前記感光体ドラム11の構成について詳細に説明する。
図2は本発明の第1の実施の形態における感光体ドラムの構成図である。なお、図において、(a)は斜視図、(b)は(a)におけるA部拡大図である。
図に示されるように、感光体ドラム11は、一端に形成されたドラムギヤ41及び他端に形成されたドラムフランジ42を有する。前記ドラムギヤ41が、図示されない駆動ギヤと噛(か)み合い、駆動モータから伝達される駆動力を受けることによって、前記感光体ドラム11は回転する。
また、該感光体ドラム11は、アルミニウム合金等の導電性金属から成る円筒形の導電性支持体44と、該導電性支持体44の外周面上に形成された感光層43とを有する。さらに、該感光層43は、導電性支持体44の外周面側からブロッキング層45、電荷発生層46及び電荷輸送層47の順で積層された積層体となっている。
次に、前記感光体ドラム11の製造工程について説明する。
図3は本発明の第1の実施の形態における感光体ドラムの製造工程のフローチャートである。
まず、アルミニウム素管押出成形を行う。この工程では、導電性支持体44の原材料であるアルミニウム合金、好ましくは、Al−Si系合金であるJIS6063で規定されたアルミニウムピレットをポートホール法によって押出し、管を成形する。これにより、アルミニウム素管を得ることができる。
次に、アルミニウム素管表面研磨を行う。この工程では、前記アルミニウム素管を所定の肉厚及び外径寸法を備える円筒とするために、切削加工による鏡面加工を行う。本実施の形態においては、前記アルミニウム素管押出成形の工程によって得られたアルミニウム素管から、外径30〔mm〕、長さ351〔mm〕及び肉厚1.0〔mm〕の円筒である導電性支持体44を得ることができた。
次に、洗浄を行う。この工程では、前記アルミニウム素管押出成形の工程を経たアルミニウム素管を洗浄槽内に搬入し、表面洗浄処理を行って前記アルミニウム素管表面の油分、空気中の各種塵埃(じんあい)等を十分に落とす。
次に、ブロッキング層形成を行う。この工程では、前記洗浄の工程を経て十分に洗浄されたアルミニウム素管、すなわち、導電性支持体44の表面上にブロッキング層45を形成する。本実施の形態においては、導電性支持体44の表面に陽極酸化処理を行い、その後、酢酸ニッケルを主成分とする封孔(こう)処理を行うことによって、約6〔μm〕の陽極酸化皮膜としてのアルマイト層から成るブロッキング層45を形成した。
次に、電荷発生層浸漬塗布を行う。この工程では、前記ブロッキング層形成の工程によって形成されたアルマイト層から成るブロッキング層45上に電荷発生層46を形成する。この場合、該電荷発生層46は、あらかじめ調合された電荷発生層用塗布液で満たされた液槽に、ブロッキング層45が形成されたアルミニウム素管である導電性支持体44を浸すことによって電荷発生層用塗布液を塗布する浸漬塗布方法により、形成される。本実施の形態においては、電荷発生層46の厚さが約0.3〔μm〕になるように、電荷発生層用塗布液の塗布を行った。
なお、本実施の形態における電荷発生層用塗布液は、CuKα線によるX線回折においてブラッグ角(20±0.2)27.3度に最大回折ピークを示すオキソチタニウムフタロシアニン10部を、1,2−ジメトキシエタン150部に加え、サンドグラインドミルによって粉砕分散処理を行って作成した顔料分散液160部に、ポリビニルブチラール5部を1,2−ジメトキシエタン95部に溶解し、固形分濃度5〔%〕のバインダー溶液100部を混ぜ合わせ、適量の1,2−ジメトキシエタンと、適量の4−メトキシ−4−メチルペンタノン−2とを加え、固形分濃度4〔%〕、1,2−ジメトキシエタン:4−メトキシ−4−メチルペンタノン−2=9:1となるように調合された液体である。
次に、乾燥を行う。この工程では、前記電荷発生層浸漬塗布の工程を経て、アルマイト層から成るブロッキング層45上に電荷発生層46が塗布されたアルミニウム素管である導電性支持体44を乾燥させる。これにより、電荷発生層46内の余分な溶媒を除去し、ブロッキング層45上に電荷発生層46を定着させる。
次に、電荷輸送層浸漬塗布を行う。この工程では、前記乾燥の工程を経てブロッキング層45上に定着した電荷発生層46上に電荷輸送層47を形成する。この場合、該電荷輸送層47は、あらかじめ調合された電荷輸送層用塗布液で満たされた液槽に、ブロッキング層45及び電荷発生層46が形成されたアルミニウム素管である導電性支持体44を浸すことによって電荷輸送層用塗布液を塗布する浸漬塗布方法により、形成される。本実施の形態においては、電荷輸送層47の厚さが約18〔μm〕になるように、電荷輸送層用塗布液の塗布を行った。
なお、本実施の形態における電荷輸送用塗布液は、次の構造式(1)で示される電荷輸送性化合物47部、構造式(2)で示される酸化防止剤8部、構造式(4)で示されるポリエステル樹脂2部、及び、構造式(3)で示されるポリカーボネイト樹脂(粘度平均分子量約30000)100部を、テトラヒドロフラン:トルエン=80:20の混合溶媒に溶解させた液体である。
次に、乾燥を行う。この工程では、前記電荷輸送層浸漬塗布の工程を経て電荷発生層46上に電荷輸送層47が塗布されたアルミニウム素管である導電性支持体44を乾燥させる。これにより、電荷輸送層47内の余分な溶媒を除去し、電荷発生層46上に電荷輸送層47を定着させる。これにより、感光体ドラム11を得ることができる。
次に、フローチャートについて説明する。
ステップS1 アルミニウム素管押出成形を行う。
ステップS2 アルミニウム素管表面研磨を行う。
ステップS3 洗浄を行う。
ステップS4 ブロッキング層形成を行う。
ステップS5 電荷発生層浸漬塗布を行う。
ステップS6 乾燥を行う。
ステップS7 電荷輸送層浸漬塗布を行う。
ステップS8 乾燥を行い、処理を終了する。
なお、前記電荷輸送層浸漬塗布の工程から乾燥の工程までの間に、電荷輸送層47が塗布された導電性支持体44を移動させるための時間が生じるが、本実施の形態においては、前記電荷輸送層浸漬塗布の工程からの乾燥の工程までの移行時間を調整することによって、乾燥後の感光体ドラム11最表面の電荷輸送層47の表面粗さを変化させることができることに着目し、次のようなサンプル1A〜1Dを作成した。
ここで、前記移行時間中の環境について説明する。電荷輸送層用塗布液の塗布室から、電荷輸送層47を乾燥する乾燥室までは、電荷輸送層用塗布液の蒸気で満たされていた。導電性支持体44上に電荷輸送層47を浸漬塗布し、電荷輸送層用塗布液中から引き上げ、乾燥室までの運搬時間は約2分であった。
サンプル1A:前記移行時間を2分とし、乾燥条件を温度125〔℃〕、相対湿度10〔%〕とし、乾燥時間を30分として乾燥させた。得られた感光体ドラム11の電荷輸送層47の表面粗さは、接触式粗さ計で測定すると、最大表面粗さRy=0.235〔μm〕であった。
サンプル1B:前記移行時間を5分とし、乾燥条件及び乾燥時間をサンプル1Aと同様にした。得られた感光体ドラム11の電荷輸送層47の表面粗さは、接触式粗さ計で測定すると、最大表面粗さRy=0.286〔μm〕であった。
サンプル1C:前記移行時間を10分とし、乾燥条件及び乾燥時間をサンプル1Aと同様にした。得られた感光体ドラム11の電荷輸送層47の表面粗さは、接触式粗さ計で測定すると、最大表面粗さRy=0.322〔μm〕であった。
サンプル1D:前記移行時間を15分とし、乾燥条件及び乾燥時間をサンプル1Aと同様にした。得られた感光体ドラム11の電荷輸送層47の表面粗さは、接触式粗さ計で測定すると、最大表面粗さRy=0.415〔μm〕であった。
また、前記導電性支持体44の材質は、特に限定されるものではないが、アルミニウム又はアルミニウム合金が好適に使用される。アルミニウム製の導電性支持体44の材質としては、例えば、JIS1050、JIS1070、JIS1080等で規定される純アルミニウム、又は、Al−Mg系合金、Al−Cu系合金、Al−Si系合金、Al−Mg−Si系合金、Al−Cu−Si系合金等の種々のアルミニウム合金が挙げられ、より好ましくは、JIS3003で規定されるAl−Mn系合金、JIS6063で規定されるAl−Si系合金等が挙げられる。
なお、本実施の形態において、「アルミニウム」は、アルミニウム合金と分けて表現しない限り、通常、アルミニウム合金も含めた総称を表す。
これらのアルミニウム製の導電性支持体44の製造法は、特に限定されないが、例えば、アルミニウムビレットをポートホール法、マンドレル法等によって押出し、管を成形し、続いて、該管を所定の肉厚及び外径寸法の円筒とするために、引抜加工、インパクト加工、しごき加工、又は、切削による鏡面加工を施す。導電性支持体44表面には引抜油、切削油、防錆(さび)油、空気中の各種塵埃等が付着しているため、通常、感光層43を形成する前に洗浄処理が行われる。導電性支持体44の直径は、感光体ドラム11が用いられる画像形成装置10に合わせて決定されるが、通常、16〜300〔mm〕の範囲とすることが好適である。
また、ブロッキング層45は、公知の陽極酸化皮膜から成るものであってもよいし、少なくとも結着樹脂と粒子とから構成される公知の下引き層から成るものであってもよいし、陽極酸化皮膜と下引き層とを積層したものであってもよい。
なお、下引き層用の結着樹脂としては、ポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール、セルロース、ポリアミド、エポキシ、ウレタン、アクリル酸、メタクリル酸等の熱可塑性樹脂、又は、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等を挙げることができるが、導電性支持体44表面との接着性、耐溶剤性、電気的バリア性、塗工性、乾燥性等の観点から、アルコール可溶性樹脂が好ましく、特にアルコール可溶性ポリアミド樹脂が好ましい。その中でも下引き層としての性能、塗布液の安定性、及び、下引き層と導電性支持体44との接着性の面で、ジアミン成分を構成成分として有する共重合ポリアミド樹脂が特に好ましい。
また、粒子は、下引き層の要求特性を満足させるために加えられる。粒子としては、金属酸化物等の無機粒子を挙げることができる。特に、疎水化のための表面処理を施した金属酸化物が好ましい。
さらに、下引き層塗布液には、塗布性及び分散粒子の分散性を改良する目的で、各種の界面活性剤を添加してもよい。また、レベリング剤や酸化防止剤を含んでいても良い。
なお、下引き層塗布液は、次のようにして得ることができる。
有機化合物処理された金属酸化物粒子に、ボールミル、コボールミル、サンドミル等で分散処理を施した後、適度な濃度に希釈してスラリーを作成する。続いて、該スラリーに、あらかじめ溶媒で溶解しておいたバインダー溶解液を加えて混合し、下引き層塗布液を得る。また、前記スラリーにバインダーペレット及び粉末を直接添加し、混合及び攪拌して前記バインダーを溶解し、下引き層塗布液とすることもできる。また逆に、バインダー溶解液に有機化合物処理された金属酸化物粒子を添加し、前記分散処理を施すことによっても作成することができる。これらの過程において、各種添加物は、任意に添加することができる。また、必要に応じて、加熱処理、超音波処理等を施してもよい。
このようにして作成された下引き層塗布液は、導電性支持体44上に塗布され、乾燥させることによって下引き層が形成される。この場合の塗布方法としては、スプレー塗布、ノズル塗布、ブレード塗布、スピンコート、浸漬塗布等のいずれの方法を用いてもよいが、これらのうち、浸漬塗布が特に好ましい。
また、電荷発生層46は、電荷発生物質と結着樹脂とから成る。そして、電荷発生物質としては、セレン及びその合金、ヒ素−セレン、硫化カドミウム、酸化亜鉛、その他の無機光導電体、フタロシアニン類、アゾ系、キナクリドン系、多環キノン系、ペリレン系、インジゴ系、スクアリリウム色素系、アズレニウム色素系、チアピリリウム系、ベンズイミダゾール系などの有機顔料を使用することができる。特に、銅、塩化インジウム、塩化カリウム、スズ、オキシチタニウム、亜鉛、バナジウム等の金属又はその酸化物若しくは塩化物の配位したフタロシアニン類、無金属フタロシアニン類、又は、モノアゾ、ビスアゾ、トリスアゾ、ポリアゾ類などのアゾ顔料が好ましい。これらのうち、アゾ顔料又はフタロシアニン類がより好ましく、オキシチタニウムフタロシアニンがより好ましく、いわゆるY型オキシチタニウムフタロシアニンが高感度を得ることができるため、特に好ましい。
なお、電荷発生物質は、単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。例えば、いわゆるY型オキシチタニウムフタロシアニンと、いわゆるβ型オキシチタニウムフタロシアニンやα型オキシチタニウムフタロシアニンとの混合物を電荷発生物質として用いてもよい。いわゆるY型オキシチタニウムフタロシアニンとは、CuKα線によるX線回折においてブラッグ角(20±0.2)27.3度、9.2度、14.3度及び24.0度に回折ピークを示すものである。
さらに、電荷発生物質を分散する分散媒の量は、分散を十分に行うことができ、かつ、分散液中に有効量の電荷発生物質が含まれる限り、いかなる量であってもよいが、通常は、分散時の分散液中の電荷発生物質の濃度にして3〜20〔重量%〕、より好ましくは4〜20〔重量%〕が好ましい。
また、結着樹脂としては、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリエステル、ポリカーボネイト、ポリスチレン、ポリエステルカーボネイト、ポリスルホン、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、フェノール樹脂、ブチラール樹脂、ポリ塩化ビニル等のビニル重合体及びその共重合体、フェノキシ、エポキシ、シリコーン樹脂等、並びに、これらの部分的架橋硬化物等を、単独で又は2種類以上用いることができる。
そして、結着樹脂と電荷発生物質との混合方法としては、例えば、電荷発生物質を分散処理中に結着樹脂を粉末のままで又はそのポリマー溶液を加え同時に分散する方法、分散液を結着樹脂のポリマー溶液中に混合する方法、逆に分散液中にポリマー溶液を混合する方法等のいずれの方法を用いてもよい。
さらに、このようにして得られた混合液を、塗布をするのに適した液物性にするために、種々の溶剤を用いて希釈してもよい。このような溶剤としては、例えば、前記分散媒として例示した溶媒を使用することができる。
なお、電荷発生物質と結着樹脂との割合は、特に制限はないが、一般には、結着樹脂100重量部に対して電荷発生物質が5〜500重量部の範囲である。
また、電荷輸送層47は電荷輸送物質と結着樹脂とから成る。そして、電荷輸送物質としては、例えば、2,4,7−トリニトロフルオレノン、テトラシアノキシジメタン等の電子吸引性物質、セルバゾール、インドール、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、オキサジアゾール、ピラゾリン、チアジアゾール等の複素環化合物、アニリン誘導体、ヒドラゾン化合物、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、又は、これらの化合物からなる基を主鎖若しくは側鎖に有する重合体等の電子供与性物質が挙げられる。
さらに、結着樹脂としては、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリエステル、ポリカーボネイト、ポリスチレン、ポリエステルカーボネイト、ポリスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、フノール樹脂、ブチラール樹脂、ポリ塩化ビニル等のビニル重合体及びその共重合体、フェノキシ、エポキシ、シリコーン樹脂等又はこれらの部分的架橋硬化物等を単独で又は2種類以上用いることができる。これらのうちで、ポリアミド又はポリカーボネイトが好ましい。
なお、電荷輸送物質と結着樹脂との割合は、結着樹脂100重量部に対して電荷輸送物質が5〜500重量部の範囲になるように調整されることが好ましい。
また、電荷輸送層用塗布液に用いる溶媒としては、種々の溶媒を用いることが可能である。例えば、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類を単独で又は2種類以上混合して用いることができる。これらの中でも、エーテル類がより好ましく、テトラヒドロフランと1,4−ジオキサンとの混合物が特に好ましい。溶媒としてテトラヒドロフランと1,4−ジオキサンとを用いる場合は、テトラヒドロフラン対1,4−ジオキサンの比が、重量比で1:1〜99:1であることが好ましく、65:35〜95:5であることがより好ましく、75:25〜90:10であることが特に好ましい。
さらに、電荷輸送層用塗布液には、滑剤が含まれていることが好ましい。該滑剤としては、例えば、公知のワックス(ろう)を用いることができる。なお、滑剤としては、オレフィン系、エステル系の滑剤が好ましく、一分子内に少なくとも1つ以上エステル結合を有する滑剤がより好ましい。また、滑剤の一分子当たりの炭素数としては、10〜200が好ましく、20〜100であればより好ましく、25〜80であれば更に好ましい。
なお、滑剤は、電荷輸送層47表面を滑りやすくし、画像形成装置10内で感光体ドラム11が使用された場合に、該感光体ドラム11表面とクリーニングブレード16等との摩擦を抑え、膜減りを抑制する効果がある。一方、このような電荷輸送層47内の滑剤成分は、塗布液を乾燥する際に、表面領域へ移動すると考えられ、乾燥状況によっては表面が凹凸となる一原因となる。滑剤の添加量としては、電荷輸送層47としての機能を損なわない程度であれば特に限定されるものではないが、電荷輸送層用塗布液全重量部の0.05〜4〔重量%〕が好ましく、0.1〜2〔重量%〕であればより好ましく、0.2〜1〔重量%〕であれば特に好ましい。
さらに、電荷輸送層用塗布液は、その他公知の複数の副資材を含んでいてもよい。該副資材としては、公知の酸化防止剤、可塑剤、帯電防止剤等を挙げることができる。
また、電荷輸送層用塗布液は、例えば、次のようにして調整される。まず、結着樹脂を、溶媒に注入する。その後、結着樹脂と溶媒との混合液にサンドグラインドミル、ポールミル、ホモジナイザー等で分散処理を施す。その後、あらかじめ略均一な粒径となるように調整された電荷輸送物質を分散後の混合液に注入し、さらに、分散処理を施して調整する。
なお、電荷輸送層用塗布液の粘度は、50〜500〔mPa・s〕であることが好ましく、100〜300〔mPa・s〕であることがより好ましく、150〜250〔mPa・s〕であることが更に好ましい。このような粘度であれば、好適に塗布することができるからである。
また、電荷輸送層用塗布液の温度は、15〜30〔℃〕であることが好ましく、18〜27〔℃〕であることがより好ましく、20〜24〔℃〕であることが更に好ましい。電荷輸送層用塗布液の温度があまりに低いと塗布された電荷輸送層用塗布液中から溶媒が揮発せず、逆にあまりに高いと、必要以上に溶媒が揮発し、好ましい電荷輸送層47の表面が得られないからである。特に電荷輸送層用塗布液がワックス等の滑剤を含む場合、電荷輸送層用塗布液が高温であると、塗布された電荷輸送層用塗布液中の滑剤が急激に表面付近に近付くため乾燥後の電荷輸送層47の表面に凹凸ができやすい。
なお、電荷輸送層用塗布液の塗布方法としては、特に限定されるものではないが、スプレー塗布、ノズル塗布、ブレード塗布、スピンコート、浸漬塗布等の方法を用いてもよいが、これらのうち、浸漬塗布が特に好ましい。
また、電荷輸送層47に含まれる固形分の重量を100〔%〕とした場合、電荷輸送層塗布後の導電性支持体44を乾燥させる工程の直前における電荷輸送層47に含まれる溶媒の量は、20〜100〔%〕であることが好ましく、25〔%〕以上100〔%〕以下であることがより好ましく、30〜100〔%〕であることが特に好ましい。溶解性、膜厚形状、生産性等を考慮すると、適当な固形分濃度とすることが好ましいからである。
なお、電荷輸送層47に含まれる固形分とは、電荷輸送物質、ポリマー及び添加剤の不揮発分を意味する。
そして、電荷輸送層塗布液を塗布された導電性支持体44は、例えば、乾燥室へ運ばれて乾燥させられるが、電荷輸送層用塗布液を塗布してから、電荷輸送層47を乾燥させる工程までに要する時間(移行時間)は、1〜10分であることが好ましく、1〜5分であることがより好ましく、1〜3分であることが更に好ましい。乾燥の工程までの時間が短いと、電荷輸送層47に波立ち等が生じ、逆に乾燥の工程までの時間が長いと、電荷輸送層47に凹凸が生ずるからである。
また、電荷輸送層47を乾燥させる工程における温度は、100〜150〔℃〕であることが好ましく、120〜140〔℃〕であることがより好ましく、125〜135〔℃〕であることが更に好ましい。温度が低いと電荷輸送層47中に溶媒が残留し、温度が高いと感材が熱の影響を受け、いずれも特性か劣化するからである。
さらに、電荷輸送層47を乾燥させる工程における湿度は、RH40以下であることが好ましく、RH35以下であることがより好ましい。湿度が高いと空気中の水分が結露し塗膜欠陥となるからである。
さらに、電荷輸送層47を乾燥させる工程における乾燥時間は、100〔℃〕以上のゾーンにおいて10〜60分であることが好ましく、20〜50分であることがより好ましい。前述のような適当な温度において残留溶媒量を下げる必要があるからである。
さらに、電荷輸送層47の塗布後の膜厚は、10〜40〔μm〕であることが好ましく、15〜35〔μm〕であることがより好ましい。
次に、前記構成の画像形成装置10による連続印字評価について説明する。
図4は本発明の第1の実施の形態におけるデューティ3〔%〕の印字サンプルを示す図、図5は本発明の第1の実施の形態におけるデューティ50〔%〕の印字サンプルを示す図、図6は本発明の第1の実施の形態におけるデューティ100〔%〕の印字サンプルを示す図、図7は本発明の第1の実施の形態におけるデューティ50〔%〕の印字画像を示す図、図8は本発明の第1の実施の形態におけるデューティ100〔%〕の印字画像を示す図、図9は本発明の第1の実施の形態における連続印字評価の結果を示す図である。
前述のようにして作成した感光体ドラム11のサンプル1A〜1Dを装着した画像形成装置10を使用し、次の条件(1)〜(3)に従って連続印字評価を行った。なお、条件(1)〜(3)は、本出願の出願人が印字評価のために採用している条件である。
(1)図4に示されるように、1枚のA4サイズの印字媒体34中に、K、Y、M及びCの各色から成る横棒をデューティ(duty)3〔%〕で印字したサンプルを、A4媒体間欠印字で1日2000枚ずつ、6日間作成する。なお、デューティ3〔%〕の印字は、印字媒体34の面積に対して3〔%〕の面積に印字することであり、デューティ3〔%〕の横棒の印字パターンは、領域内ベタ印字(ドット抜けなし)である。
(2)実施環境は、温度25〔℃〕で湿度55〔%〕の環境が2日間、温度28〔℃〕度で湿度80〔%〕の環境が2日間、温度10〔℃〕で湿度20〔%〕の環境が2日間、の順である。
(3)印字サンプルの採取は、初期と2K毎にK、Y、M及びCの各色毎に、図5に示されるようなデューティ50〔%〕のハーフトーン印字のサンプルと、図6に示されるようなデューティ100〔%〕のベタ印字のサンプルとを取得する。なお、デューティ50〔%〕のハーフトーン印字は、印字媒体34の面積に対して50〔%〕の面積で印字する1ドットおきのハーフトーン印字である。
このような連続印字評価において取得したハーフトーン印字のサンプルとベタ印字のサンプルとを目視によって確認した。ハーフトーン印字の場合、図7に示されるようなドラムフィルミングに起因する特徴的な印字上の不具合、すなわち、大きさ約0.5〜1〔mm〕程度の五月雨模様又は斑(はん)点模様の白抜けの発生の有無を確認した。また、ベタ印字の場合、図8に示されるようなドラムフィルミングに起因する特徴的な印字上の不具合、すなわち、大きさ約0.5〜1〔mm〕程度の五月雨模様又は斑点模様の白抜けの発生の有無を確認した。
確認の結果は、図9に示される表のようになった。なお、該表においては、ドラムフィルミングに起因する特徴的な印字上の不具合が発生したものを×とし、前記不具合が軽微なものを△とし、前記不具合が未発生のものを○とした。
図9に示される結果から、最大表面粗さRy=0.286〔μm〕である感光体ドラム11のサンプル1Bを装着した画像形成装置10では、軽微なフィルミング印字画像が認識されたが、最大表面粗さRy=0.322〔μm〕である感光体ドラム11のサンプル1Cを装着した画像形成装置10では、フィルミング印字画像を認識することができない良好な印字結果を得ることができた。
このように、本実施の形態においては、感光体ドラム11の電荷輸送層47の表面粗さを示す最大表面粗さRyが0.322〔μm〕以上であれば、感光体ドラム11上でのドラムフィルミングの発生が確実に防止され、ドラムフィルミングに起因する画像不良を含むフィルミング印字画像を認識することができない良好な印字結果を得ることができることが分かる。
なお、前記最大表面粗さRyの上限値は、感光体ドラム11の製造条件によって定まる。本実施の形態において説明したような製造条件では、前記最大表面粗さRyの上限値は約0.6〔μm〕である。したがって、最大表面粗さRyが0.322〔μm〕以上0.6〔μm〕以下の範囲であれば、良好な印字結果を得ることができる、と言える。
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによって、その説明を省略する。また、前記第1の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
図10は本発明の第2の実施の形態における硬さ測定によって感光体ドラムの表面に形成される窪(くぼ)みを示す図である。なお、図において、(a)は窪みの上面図、(b)は窪みの断面図である。
本実施の形態においては、画像形成装置10の構成及び感光体ドラム11の構成については、前記第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略し、感光体ドラム11の製造工程について説明する。
なお、感光体ドラム11の製造工程において、アルミニウム素管押出成形の工程から電荷輸送層浸漬塗布の工程までについては、前記第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
本実施の形態においては、電荷輸送層浸漬塗布の工程からの乾燥の工程までの移行時間を15分に固定し、乾燥の工程における乾燥条件としての乾燥時間を調整することによって、感光体ドラム11最表面の電荷輸送層47の硬さを変化させることができることに着目し、サンプルを作成した。
なお、硬さは、ビッカース硬度計での測定値、すなわち、ビッカース硬度(Hv)によって定義した。ここで、ビッカース硬度について説明する。
まず、ビッカース硬度は、感光体ドラム11の電荷輸送層47の表面に頂点角θ=135度のダイヤモンド四角錐(すい)の針を加重F=10〔gf〕で、リード時間25秒間押し付けたときに前記表面に形成される窪みの大きさによって定義される。この場合、図10に示されるような窪みの大きさから、次の式(5)によって定義することができる。
ビッカース硬度Hv=2F*sin(θ/2)/d2 ・・・式(5)
そして、本実施の形態においては、次のようなサンプル2A〜2Eを作成した。
サンプル2A:前記移行時間を15分とし、乾燥条件を温度125〔℃〕、相対湿度10〔%〕とし、乾燥時間を5分として乾燥させた。得られた感光体ドラム11の電荷輸送層47の表面粗さは、接触式粗さ計で測定すると、最大表面粗さRy=0.403〔μm〕であった。また、前記電荷輸送層47の表面の硬さは、ビッカース硬度Hv=20.8〔gf/μm2 〕であった。
サンプル2B:前記乾燥時間を15分とし、移行時間及び乾燥条件をサンプル2Aと同様にした。得られた感光体ドラム11の電荷輸送層47の表面粗さは、接触式粗さ計で測定すると、最大表面粗さRy=0.382〔μm〕であった。また、前記電荷輸送層47の表面の硬さは、ビッカース硬度Hv=21.2〔gf/μm2 〕であった。
サンプル2C:前記乾燥時間を30分とし、移行時間及び乾燥条件をサンプル2Aと同様にした。得られた感光体ドラム11の電荷輸送層47の表面粗さは、接触式粗さ計で測定すると、最大表面粗さRy=0.415〔μm〕であった。また、前記電荷輸送層47の表面の硬さは、ビッカース硬度Hv=22.3〔gf/μm2 〕であった。
サンプル2D:前記乾燥時間を60分とし、移行時間及び乾燥条件をサンプル2Aと同様にした。得られた感光体ドラム11の電荷輸送層47の表面粗さは、接触式粗さ計で測定すると、最大表面粗さRy=0.428〔μm〕であった。また、前記電荷輸送層47の表面の硬さは、ビッカース硬度Hv=22.7〔gf/μm2 〕であった。
サンプル2E:前記乾燥時間を90分とし、移行時間及び乾燥条件をサンプル2Aと同様にした。得られた感光体ドラム11の電荷輸送層47の表面粗さは、接触式粗さ計で測定すると、最大表面粗さRy=0.391〔μm〕であった。また、前記電荷輸送層47の表面の硬さは、ビッカース硬度Hv=22.6〔gf/μm2 〕であった。
次に、本実施の形態における画像形成装置10による連続印字評価について説明する。
図11は本発明の第2の実施の形態における連続印字評価の結果を示す図である。
前述のようにして作成した感光体ドラム11のサンプル2A〜2Eを装着した画像形成装置10を使用し、前記第1の実施の形態において説明した条件(1)〜(3)に従って連続印字評価を行った。
このような連続印字評価において取得したハーフトーン印字のサンプルとベタ印字のサンプルとを目視によって確認した。ハーフトーン印字の場合、図7に示されるようなドラムフィルミングに起因する特徴的な印字上の不具合、すなわち、大きさ約0.5〜1〔mm〕程度の五月雨模様又は斑点模様の白抜けの発生の有無を確認した。また、ベタ印字の場合、図8に示されるようなドラムフィルミングに起因する特徴的な印字上の不具合、すなわち、大きさ約0.5〜1〔mm〕程度の五月雨模様又は斑点模様の白抜けの発生の有無を確認した。
確認の結果は、図11に示される表のようになった。なお、該表においては、ドラムフィルミングに起因する特徴的な印字上の不具合が発生したものを×とし、前記不具合が軽微なものを△とし、前記不具合が未発生のものを○とした。
図11に示される結果から、ビッカース硬度Hv=21.2〔gf/μm2 〕である感光体ドラム11のサンプル2Bを装着した画像形成装置10では、軽微なフィルミング印字画像が認識されたが、ビッカース硬度Hv=22.3〔gf/μm2 〕である感光体ドラム11のサンプル2Cを装着した画像形成装置10では、フィルミング印字画像を認識することができない良好な印字結果を得ることができた。
このように、本実施の形態においては、感光体ドラム11の電荷輸送層47の硬さを示すビッカース硬度Hvが22.3〔gf/μm2 〕以上であれば、感光体ドラム11上でのドラムフィルミングの発生が確実に防止され、ドラムフィルミングに起因する画像不良を含むフィルミング印字画像を認識することができない良好な印字結果を得ることができることが分かる。
なお、前記第1の実施の形態における感光体ドラム11のサンプル1A〜1Dは、いずれも、電荷輸送層47の乾燥時間を30分としたものであるから、本実施の形態における感光体ドラム11のサンプル2Cと同様に、電荷輸送層47の表面が良好な印字結果を得るのに十分なほど硬いものであると考えられる。したがって、前記第1の実施の形態は、電荷輸送層47の表面が十分に硬い場合において、該表面の粗さがフィルミングに及ぼす影響を見出したものである、と言える。
一方、本実施の形態における感光体ドラム11のサンプル2A〜2Eは、いずれも、移行時間を15分としたものであるから、前記第1の実施の形態における感光体ドラム11のサンプル1Dと同様に、電荷輸送層47の表面が良好な印字結果を得るのに十分なほど粗いものであると考えられる。したがって、本実施の形態は、電荷輸送層47の表面が十分に粗い場合において、該表面の硬さがフィルミングに及ぼす影響を見出したものである、と言える。
なお、本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ機、MFP(複合型プリンタ:Multi Function Printer)等の電子写真方式を用いた電子写真装置に適用可能である。
また、前記第1及び第2の実施の形態においては、画像形成装置10が負帯電感光体を用いた電子写真装置である場合について説明したが、画像形成装置10は、反転現像方式の電子写真装置であれば、正帯電感光体を用いた電子写真装置でもよい。
さらに、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。