JP2009216201A - 密封構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】軟質材料を用いたハウジング又は軸の摩耗を抑制できる密封構造を提供する。
【解決手段】軟質材料からなるハウジング2の軸孔20に設けられた環状溝22に装着された軟質樹脂材料からなるシールリング3が、密封対象領域側Oからの圧力Pによって軸1の表面10と環状溝22の側壁面23にそれぞれ密着することでハウジング2と軸1との間の隙間を密封し、シールリング3とハウジング2との間の各接触面31、23には、山部と谷部とが交互に設けられてなる凹凸を設け、シールリング3の凹凸とハウジング2の凹凸は、シールリング3とハウジング2との相対回転を抑制せしめるべく互いにかみ合うことが可能に山部と谷部が各接触面上31、23を延び、密封対象領域側Oからの圧力Pによって各接触面31、23が押圧されたときの変形によって互いの隙間を埋めることが可能な微小な高さで山部が形成される。
【選択図】図2

Description

本発明は、シールリングを用いた密封構造に関するものである。
自動車用の自動変速機等において軸とハウジングとの間の環状隙間を密封するために用いられる密封構造としては、図7に示すような密封構造が知られている。図7は、従来技術に係る密封構造の模式的断面図である。
図7に示すように、この種の密封構造は、概略、軸100と、該軸100が挿入される軸孔が設けられたハウジング200と、これらの間の環状隙間を密封するためのシールリング300と、から構成される。ここで、軸100とハウジング200は互いに相対回転自在に設けられている。また、軸100には環状溝101が形成されており、この環状溝101に樹脂材料からなるシールリング300が装着される。
密封対象領域側Oから反密封対象領域側Aに向けて図中矢印P方向に作用する圧力によってシールリング300が反密封対象領域側Aに押圧されると、シールリング300の反密封対象領域側Aの側面301が環状溝101の側壁面101aに密着し、シールリング300の外周面302が軸孔の内周面201に密着する。これにより、軸100とハウジング200との間の環状隙間が密封される。
なお、密封構造の構成としては、この他にも以下の文献に示すものがある。
特許第2681865号公報 特開平8−219292号公報 特開平11−44363号公報
近年、自動変速機等の燃費向上を主な目的とした軽量化が進められており、構造部品の材質を従来の鉄からアルミニウム合金等の軽量な軟質材料に変更する流れがある。
したがって、軽量化等のため、例えば、ハウジング200の材料としてアルミや圧延軟鋼等の軟質材料を採用した場合には、軸100とハウジング200とが相対回転すると、ハウジング200がシールリング300との摺動によって摩耗を生じ、シールリング300の密封性能が低下してしまう。
また、これらの間に、密封対象流体である潤滑油中に存在する異物がかみ込まれたり摩耗紛が蓄積した場合には、ハウジング200の摩耗をさらに助長し、異常摩耗を発生することがあった。
本発明は上記の従来技術の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、軟質材料を用いたハウジング又は軸の摩耗を抑制することができる密封構造を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明における密封構造は、
軟質材料からなるハウジングの軸孔と該軸孔に挿入される軸のいずれか一方の部材に設けられた環状溝に軟質樹脂材料からなるシールリングを装着し、密封対象領域側からの圧
力によって前記シールリングが他方の部材の表面と前記環状溝における反密封対象領域側の側壁面にそれぞれ密着することにより、前記ハウジングと前記軸との間の隙間を密封する密封構造であって、
前記シールリングと前記ハウジングとの間の各接触面には、それぞれ山部と谷部とが交互に設けられて構成される凹凸が設けられており、
前記シールリングの凹凸と前記ハウジングの凹凸は、前記シールリングと前記ハウジングとの相対回転を抑制せしめるべく互いにかみ合うことができるように山部と谷部が前記各接触面上を延びるとともに、密封対象領域側からの圧力によって前記各接触面が押圧されたときの変形によって互いの隙間を埋めることができるような微小な高さで前記山部が形成されることを特徴とする。
このように、ハウジングに軟質材料を用いる場合には、シールリングにおけるハウジングとの接触面の凹凸と、ハウジングにおけるシールリングとの接触面の凹凸とが、シールリングとハウジングの相対回転を抑制するようにかみ合うことにより、ハウジングと軸との相対回転時にハウジングとシールリングとが摺動することが抑制される。したがって、軟質材料からなるハウジングの摩耗の発生が抑制される。
また、凹凸の山部が密封対象領域側からの圧力によって押圧変形することにより各接触面間の隙間を埋めることができる程度の微小な高さで設けられているので、シールリングとハウジングの接触面間から密封対象流体が漏れるのを抑制することができる。
前記凹凸は、山部と谷部が前記ハウジングと前記軸との相対回転方向に対して直交する方向に延びているとよい。
これにより、シールリングの凹凸とハウジングの凹凸とが、ハウジングと軸との相対回転方向に対して直交する方向に互いにかみ合う状態となり、シールリングとハウジングとの摺動を抑制させる力を分散させることなく効果的な摺動抑制を図ることができる。
ここで、シールリングが装着される環状溝をハウジングの軸孔内周面に設ける場合には、前記凹凸は、前記環状溝の反密封対象領域側の側壁面と該側壁面に接触する前記シールリングの側面とにそれぞれ設けられ、山部と谷部が前記各接触面上をそれぞれ径方向に延びるとよい。また、環状溝を軸の外周面に設ける場合には、前記凹凸は、前記ハウジングの軸孔内周面と該軸孔内周面に接触する前記シールリングの外周面とにそれぞれ設けられ、山部と谷部が前記各接触面上をそれぞれ軸方向に延びるとよい。
これにより、ハウジングとシールリングとの間の接触面同士が、ハウジングと軸との相対回転時において回転方向に対してかみ合う構成となり、ハウジングとシールリングとの摺動が抑制される。
上記目的を達成するために、本発明における密封構造は、
ハウジングの軸孔と該軸孔に挿入される軟質材料からなる軸のいずれか一方の部材に設けられた環状溝に軟質樹脂材料からなるシールリングを装着し、密封対象領域側からの圧力によって前記シールリングが他方の部材の表面と前記環状溝における反密封対象領域側の側壁面にそれぞれ密着することにより、前記ハウジングと前記軸との間の隙間を密封する密封構造であって、
前記シールリングと前記軸との間の各接触面には、それぞれ山部と谷部とが交互に設けられて構成される凹凸が設けられており、
前記シールリングの凹凸と前記軸の凹凸は、前記シールリングと前記軸との相対回転を抑制せしめるべく互いにかみ合うことができるように山部と谷部が前記各接触面上を延びるとともに、密封対象領域側からの圧力によって前記各接触面が押圧されたときの変形に
よって互いの隙間を埋めることができるような微小な高さで前記山部が形成されることを特徴とする。
このように、軸に軟質材料を用いる場合には、シールリングにおける軸との接触面の凹凸と、軸におけるシールリングとの接触面の凹凸とが、シールリングと軸の相対回転を抑制するようにかみ合うことにより、ハウジングと軸との相対回転時に軸とシールリングとが摺動することが抑制される。したがって、軟質材料からなる軸の摩耗の発生が抑制される。
また、凹凸の山部と谷部は、密封対象領域側からの圧力によって押圧変形することにより各接触面間の隙間を埋めることができる程度の微小な高さで設けられているので、シールリングと軸の接触面間から密封対象流体が漏れるのを抑制することができる。
前記凹凸は、山部と谷部が前記ハウジングと前記軸との相対回転方向に対して直交する方向に延びているとよい。
これにより、シールリングの凹凸と軸の凹凸とが、ハウジングと軸との相対回転方向に対して直交する方向に互いにかみ合う状態となり、シールリングと軸との摺動を抑制させる力を分散させることなく効果的な摺動抑制を図ることができる。
ここで、シールリングが装着される環状溝をハウジングの軸孔内周面に設ける場合には、前記凹凸は、前記軸の外周面と該外周面に接触する前記シールリングの内周面とにそれぞれ設けられ、山部と谷部が前記各接触面上をそれぞれ軸方向に延びるとよい。また、環状溝を軸の外周面に設ける場合には、前記凹凸は、前記環状溝の反密封対象領域側の側壁面と該側壁面に接触する前記シールリングの側面とにそれぞれ設けられ、山部と谷部が前記各接触面上をそれぞれ径方向に延びるとよい。
これにより、軸とシールリングとの間の接触面同士が、ハウジングと軸との相対回転時において回転方向に対してかみ合う構成となり、軸とシールリングとの摺動が抑制される。
以上説明したように、本発明により、軟質材料を用いたハウジング又は軸の摩耗を抑制することができる。
以下に図面を参照して、この発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
<密封構造の基本構成>
まず、図1を参照して、密封構造の基本構成について説明する。図1は密封構造の基本構成を示す模式的半断面図であり、(a)はシールリングが装着される環状溝がハウジングの軸孔内周面に設けられる場合、(b)はシールリングが装着される環状溝が軸の外周面に設けられる場合をそれぞれ示している。
これらの密封構造は、軸1と該軸1が挿入される軸孔を有するハウジング2との間の環状隙間をシールリング3によって密封するものである。ここで、軸1とハウジング2は互いに相対回転自在に設けられている。
図1(a)に示す構成においては、ハウジング2の軸孔20の内周面21に環状溝22が設けられている。シールリング3は、環状溝22に装着され、密封対象領域側Oから作用する圧力Pによって反密封対象領域側Aに押圧されると、内周面30が軸1の外周面10に密着するとともに反密封対象領域側Aの側面31が環状溝22の反密封対象領域側Aの側壁面23に密着する。これにより、軸1とハウジング2の軸孔20との間の環状隙間が密封される。
図1(b)に示す構成においては、軸1の外周面10に環状溝11が設けられている。シールリング3は、環状溝11に装着され、密封対象領域側Oから作用する圧力Pによって反密封対象領域側Aに押圧されると、外周面32がハウジング2の軸孔20の内周面21に密着するとともに反密封対象領域側Aの側面31が環状溝11の反密封対象領域側Aの側壁面12に密着する。これにより、軸1とハウジング2の軸孔20との間の環状隙間が密封され、密封対象流体である作動油や潤滑油等が反密封対象領域側Aへ漏れるのが抑制される。
特に図示はしないが、シールリング3は、円周上の一箇所で分離された有端状のリングからなり、このような分離部を設けることにより環状溝への装着を容易にしている。分離部の形状としては、従来から知られた種々の形状(例えば、ストレートカット、ステップカット等)を採用することができる。
(実施例1)
次に、図2及び図3を参照して、本発明の実施例1に係る密封構造について説明する。図2は、本実施例に係る密封構造の構成について説明する模式図であって、(a)は本実施例に係る密封構造の模式的断面図であり、(b)は(a)のAA断面を反密封対象領域側Aから密封対象領域側Oに向かってみたシールリングの模式的側面図であり、(c)は(a)のAA断面を密封対象領域側Oから反密封対象領域側Aに向かってみたハウジングの模式的断面図であって環状溝の側壁面を示す図である。図3は、ハウジングとシールリングとの間の接触面の様子を説明する模式的断面図であって、(a)は図1(b)のBB断面であり、(b)は図1(c)のCC断面であり、(c)はハウジングとシールリングとの間の各接触面がかみ合った状態を示す図である。
図2(a)に示すように、本実施例に係る密封構造の基本構成は、図1(a)に示す密封構造と同様の構成、すなわち、シールリング3が装着される環状溝がハウジング2の軸孔20の内周面21に設けられた構成であり、その詳細や使用時の状態等についての説明は省略する。
本実施例では、ハウジング2にアルミや圧延軟鋼等の軟質材料が使用されており、シールリング3にPTFE等の軟質樹脂材料が用いられている。
図2(c)、図3(b)に示すように、ハウジング2においてシールリング3との接触面となる環状溝22の反密封対象領域側Aの側壁面23には、径方向に放射状に延びるスジ状の山部23aと谷部23bとから構成された凹凸が設けられている。
同様に、図2(b)、図3(a)に示すように、シールリング3においてハウジング2との接触面となる反密封対象領域側Aの側面31には、径方向に放射状に延びるスジ状の山部31aと谷部31bとから構成された凹凸が設けられている。
図3(c)に示すように、密封対象領域側Oから作用する圧力によってシールリング3が環状溝22の反密封対象領域側Aの側壁面23に押圧されると、環状溝22の側壁面2
3における山部23a及び谷部23bと、シールリング3の側面31における山部31a及び谷部31bとが、かみ合った状態になる。この状態になると、軸1とハウジング2が相対回転を生じたときのハウジング2の回転方向に対して、山部23a及び谷部23bと山部31a及び谷部31bとが互いに干渉を生じ、シールリング3がハウジング2と一体となって回転する状態となる。これにより、軸1とハウジング2の相対回転時にシールリング3とハウジング2が摺動するのが抑制される。
また、ハウジング2とシールリング3との間の各接触面における凹凸の大きさ(すなわち、各山部23a、31aの高さや間隔、あるいは各谷部23b、31bの深さや間隔)は、ハウジング2やシールリング3の全体的な大きさと比較して、それぞれ微小な大きさとなっている。具体的には、密封対象領域側Oから作用する密封対象流体の圧力を受けてシールリング3の側面31が環状溝22の側壁面23に押圧されたときに生じる変形によって、各接触面の間の隙間が埋まるように各接触面の凹凸が変形できる程度の大きさである。
すなわち、図3(c)では各接触面間(各凹凸の間)に隙間があるように図示しているが、実際には、密封対象流体の圧力によって各接触面が互いに押圧されると、軟質樹脂材料からなるシールリング3の山部31a及び谷部31bが、環状溝22の側壁面23における山部23a及び谷部23bに対して隙間なく密着するように変形する(つぶれる)。これにより、ハウジング2とシールリング3との間の接触面における密封対象流体の漏れを抑制することができる。
したがって、本実施例に係る密封構造によれば、軟質材料からなるハウジング2の摩耗の発生を抑制することにより、装置の長寿命化を図ることができとともに、装置に軟質材料の採用を可能にすることにより、装置の軽量化に寄与することができる。
(実施例2)
次に、図4を参照して、本発明の実施例2に係る密封構造について説明する。図4は、本実施例に係る密封構造の構成について説明する模式図であって、(a)は本実施例に係る密封構造の模式的断面図であり、(b)はシールリング及びハウジングの模式的斜視図であり、(c)は(a)のDD断面であり、ハウジングとシールリングとの間の各接触面がかみ合った状態を示す図である。
図4(a)に示すように、本実施例に係る密封構造の基本構成は、図1(b)に示す密封構造と同様の構成、すなわち、シールリング3が装着される環状溝が軸1の外周面に設けられた構成であり、その詳細や使用時の状態等についての説明は省略する。
本実施例では、ハウジング2にアルミや圧延軟鋼等の軟質材料が使用されており、シールリング3にPTFE等の軟質樹脂材料が用いられている。
図4(b)、(c)に示すように、ハウジング2においてシールリング3との接触面となる軸孔20の内周面21には、軸方向に延びるスジ状の山部21aと谷部21bとから構成された凹凸が、内周面21の全周にわたって設けられている。
同様に、図4(b)、(c)に示すように、シールリング3においてハウジング2との接触面となる外周面32には、軸方向に延びるスジ状の山部32aと谷部32bとから構成された凹凸が、外周面32の全周にわたって設けられている。
図4(c)に示すように、密封対象領域側Oから作用する圧力によってシールリング3がハウジング2の軸孔20の内周面21に押圧されると、ハウジング2の軸孔20の内周
面21における山部21a及び谷部21bと、シールリング3の外周面32における山部32a及び谷部32bとが、かみ合った状態になる。この状態になると、軸1とハウジング2が相対回転を生じたときのハウジング2の回転方向に対して、山部21a及び谷部21bと山部32a及び谷部32bとが互いに干渉を生じ、シールリング3がハウジング2と一体となって回転する状態となる。これにより、軸1とハウジング2の相対回転時にシールリング3とハウジング2が摺動するのが抑制される。
また、ハウジング2とシールリング3との間の各接触面における凹凸の大きさ(すなわち、各山部21a、32aの高さや間隔、あるいは各谷部21b、32bの深さや間隔)は、ハウジング2やシールリング3の全体的な大きさと比較して、それぞれ微小な大きさとなっている。具体的には、密封対象領域側Oから作用する密封対象流体の圧力を受けてシールリング3の外周面32がハウジング2の軸孔20の内周面21に押圧されたときに生じる変形によって、各接触面の間の隙間が埋まるように各接触面の凹凸が変形できる程度の大きさである。
すなわち、図4(c)では各接触面間(各凹凸の間)に隙間があるように図示しているが、実際には、密封対象流体の圧力によって各接触面が互いに押圧されると、軟質樹脂材料からなるシールリング3の山部32a及び谷部32bが、軸孔20の内周面21における山部21a及び谷部21bに対して隙間なく密着するように変形する(つぶれる)。これにより、ハウジング2とシールリング3との間の接触面における密封対象流体の漏れを抑制することができる。
したがって、本実施例に係る密封構造によれば、軟質材料からなるハウジング2の摩耗の発生を抑制することにより、装置の長寿命化を図ることができとともに、装置に軟質材料の採用を可能にすることにより、装置の軽量化に寄与することができる。
(実施例3)
次に、図5を参照して、本発明の実施例3に係る密封構造について説明する。図5は、本実施例に係る密封構造の構成について説明する模式図であって、(a)は本実施例に係る密封構造の模式的断面図であり、(b)はシールリング及び軸の模式的斜視図であり、(c)は(a)のEE断面であり、シールリングと軸との間の各接触面がかみ合った状態を示す図である。
図5(a)に示すように、本実施例に係る密封構造の基本構成は、図1(a)に示す密封構造と同様の構成、すなわち、シールリング3が装着される環状溝がハウジング2の軸孔20の内周面21に設けられた構成であり、その詳細や使用時の状態等についての説明は省略する。
本実施例では、軸1にアルミや圧延軟鋼等の軟質材料が使用されており、シールリング3にPTFE等の軟質樹脂材料が用いられている。
図5(b)、(c)に示すように、軸1においてシールリング3との接触面となる外周面10には、軸方向に延びるスジ状の山部10aと谷部10bとから構成された凹凸が、外周面10の全周にわたって設けられている。
同様に、図5(b)、(c)に示すように、シールリング3において軸1との接触面となる内周面30には、軸方向に延びるスジ状の山部30aと谷部30bとから構成された凹凸が、内周面30の全周にわたって設けられている。
図5(c)に示すように、密封対象領域側Oから作用する圧力によってシールリング3
が軸1の外周面10に押圧されると、軸1の外周面10における山部10a及び谷部10bと、シールリング3の内周面30における山部30a及び谷部30bとが、互いにかみ合った状態になる。この状態になると、軸1とハウジング2が相対回転を生じたときの軸1の回転方向に対して、山部10a及び谷部10bと山部30a及び谷部30bとが互いに干渉を生じ、シールリング3が軸1と一体となって回転する状態となる。これにより、軸1とハウジング2の相対回転時にシールリング3と軸1が摺動するのが抑制される。
また、軸1とシールリング3との間の各接触面における凹凸の大きさ(すなわち、各山部10a、30aの高さや間隔、あるいは各谷部10b、30bの深さや間隔)は、軸1やシールリング3の全体的な大きさと比較して、それぞれ微小な大きさとなっている。具体的には、密封対象領域側Oから作用する密封対象流体の圧力を受けてシールリング3の内周面30が軸1の外周面10に押圧されたときに生じる変形によって、各接触面の間の隙間が埋まるように各接触面の凹凸が変形できる程度の大きさである。
すなわち、図5(c)では各接触面間(各凹凸の間)に隙間があるように図示しているが、実際には、密封対象流体の圧力によって各接触面が互いに押圧されると、軟質樹脂材料からなるシールリング3の山部30a及び谷部30bが、軸1の外周面10における山部10a及び谷部10bに対して隙間なく密着するように変形する(つぶれる)。これにより、軸1とシールリング3との間の接触面における密封対象流体の漏れを抑制することができる。
したがって、本実施例に係る密封構造によれば、軟質材料からなる軸1の摩耗の発生を抑制することにより、装置の長寿命化を図ることができとともに、装置に軟質材料の採用を可能にすることにより、装置の軽量化に寄与することができる。
(実施例4)
次に、図6を参照して、本発明の実施例4に係る密封構造について説明する。図6は、本実施例に係る密封構造の構成について説明する模式図であって、(a)は本実施例に係る密封構造の模式的断面図であり、(b)は(a)のFF断面を反密封対象領域側Aから密封対象領域側Oに向かってみたシールリングの模式的側面図であり、(c)は(a)のFF断面を密封対象領域側Oから反密封対象領域側Aに向かってみた軸の模式的断面図であって環状溝の側壁面を示す図であり、(d)は(a)のGG断面であり、軸とシールリングとの間の各接触面がかみ合った状態を示す図である。
図6(a)に示すように、本実施例に係る密封構造の基本構成は、図1(b)に示す密封構造と同様の構成、すなわち、シールリング3が装着される環状溝が軸1の外周面に設けられた構成であり、その詳細や使用時の状態等についての説明は省略する。
本実施例では、軸1にアルミや圧延軟鋼等の軟質材料が使用されており、シールリング3にPTFE等の軟質樹脂材料が用いられている。
図6(c)、(d)に示すように、軸1においてシールリング3との接触面となる環状溝11の反密封対象領域側Aの側壁面12には、径方向に放射状に延びるスジ状の山部12aと谷部12bとから構成された凹凸が設けられている。
同様に、図6(b)、(d)に示すように、シールリング3において軸1との接触面となる反密封対象領域側Aの側面31には、径方向に放射状に延びるスジ状の山部31aと谷部31bとから構成された凹凸が設けられている。
図6(d)に示すように、密封対象領域側Oから作用する圧力によってシールリング3
が環状溝11の反密封対象領域側Aの側壁面12に押圧されると、環状溝11の側壁面12における山部12a及び谷部12bと、シールリング3の側面31における山部31a及び谷部31bとが、かみ合った状態になる。この状態になると、軸1とハウジング2が相対回転を生じたときの軸1の回転方向に対して、山部12a及び谷部12bと山部31a及び谷部31bとが互いに干渉を生じ、シールリング3が軸1と一体となって回転する状態となる。これにより、軸1とハウジング2の相対回転時にシールリング3と軸1が摺動するのが抑制される。
また、軸1とシールリング3との間の各接触面における凹凸の大きさ(すなわち、各山部12a、31aの高さや間隔、あるいは各谷部12b、31bの深さや間隔)は、軸1やシールリング3の全体的な大きさと比較して、それぞれ微小な大きさとなっている。具体的には、密封対象領域側Oから作用する密封対象流体の圧力を受けてシールリング3の側面31が環状溝11の側壁面12に押圧されたときに生じる変形によって、各接触面の間の隙間が埋まるように各接触面の凹凸が変形できる程度の大きさである。
すなわち、図6(d)では各接触面間(各凹凸の間)に隙間があるように図示しているが、実際には、密封対象流体の圧力によって各接触面が互いに押圧されると、軟質樹脂材料からなるシールリング3の山部31a及び谷部31bが、環状溝11の側壁面12における山部12a及び谷部12bに対して隙間なく密着するように変形する(つぶれる)。これにより、軸1とシールリング3との間の接触面における密封対象流体の漏れを抑制することができる。
したがって、本実施例に係る密封構造によれば、軟質材料からなる軸1の摩耗の発生を抑制することにより、装置の長寿命化を図ることができとともに、装置に軟質材料の採用を可能にすることにより、装置の軽量化に寄与することができる。
ここで、上記各実施例においては、凹凸の山部と谷部がハウジングと軸の相対回転方向に対して直交する方向にスジ状に真っ直ぐ延びる構成としているが、摺動抑制効果を発揮することができるのであれば、多少傾いた方向の延びる構成であってもよいし、屈曲したり湾曲して延びる構成であってもよい。
また、上記各実施例においては、軟質材料からなるハウジング又は軸とシールリングとの間の接触面に設ける凹凸について、環状溝の側壁面またはシールリングの側面もしくは内外周面の全ての領域に設けているが、実際に相手部材と接触する領域に限定して設ける構成であってもよい。すなわち、各部材表面のうち相手部材と接触しない領域には凹凸を設けなくてもよい。さらに、摺動抑制効果を発揮することができるのであれば、凹凸を相手部材と接触する領域の全域に設けなくてもよく、接触領域の一部に部分的に設ける構成であってもよい。
また、図に示すように、上記各実施例においては、凹凸の断面形状を鋸歯状としているが、これ限定されるものではなく、互いにかみ合って摺動抑制効果を発揮することができるとともに、密封対象流体から受ける圧力によって互いに密着変形することができるような形状であれば適宜採用することができる。
また、上記各実施例における微小凹凸の成形方法としては、軸の外周面に成形する場合にはいわゆるローレット加工、シールリングの外周面に成形する場合にはローレット加工や型による成形、ハウジングの軸孔内周面に成形する場合にはブローチ加工、環状溝の測壁面に成形する場合にはV字のバイトによる切削加工などが挙げられる。
また、微小凹凸の具体的な大きさとしては、高さや深さや幅などを10μm〜100μ
mの範囲の大きさとするのが好適である。特に、シール性(密着性)を重視する場合には、かかる範囲のうち小さい寸法を採用するのが好ましく、まわり止め(摺動抑制)機能を重視する場合には、かかる範囲のうち大きい寸法を採用するのが好ましい。
ただし、以上述べた実施例の構成は、本発明の一具体例にすぎず、これらに限定されることなく、その技術的思想の範囲でさまざまな変形が可能である。例えば、微小凹凸の具体的な成形方法や形状や寸法などは、密封構造の使用環境や相手部材の仕様などに応じて適宜設計すればよい。また、上記実施例で述べた構成は、互いに組み合わせてもよい。
密封構造の基本構成を示す模式的半断面図である。 実施例1に係る密封構造の構成について説明する模式図である。 ハウジングとシールリングとの間の接触面の様子を説明する模式的断面図である。 実施例2に係る密封構造の構成について説明する模式図である。 実施例3に係る密封構造の構成について説明する模式図である。 実施例4に係る密封構造の構成について説明する模式図である。 従来技術に係る密封構造の模式的断面図である。
符号の説明
1 軸
10 外周面
10a 山部
10b 谷部
11 環状溝
12 側壁面
12a 山部
12b 谷部
13 溝底面
2 ハウジング
20 軸孔
21 内周面
21a 山部
21b 谷部
22 環状溝
23 側壁面
23a 山部
23b 谷部
24 溝底面
3 シールリング
30 内周面
31 側面
31a 山部
31b 谷部
32 外周面
32a 山部
32b 谷部

Claims (8)

  1. 軟質材料からなるハウジングの軸孔と該軸孔に挿入される軸のいずれか一方の部材に設けられた環状溝に軟質樹脂材料からなるシールリングを装着し、密封対象領域側からの圧力によって前記シールリングが他方の部材の表面と前記環状溝における反密封対象領域側の側壁面にそれぞれ密着することにより、前記ハウジングと前記軸との間の隙間を密封する密封構造であって、
    前記シールリングと前記ハウジングとの間の各接触面には、それぞれ山部と谷部とが交互に設けられて構成される凹凸が設けられており、
    前記シールリングの凹凸と前記ハウジングの凹凸は、前記シールリングと前記ハウジングとの相対回転を抑制せしめるべく互いにかみ合うことができるように山部と谷部が前記各接触面上を延びるとともに、密封対象領域側からの圧力によって前記各接触面が押圧されたときの変形によって互いの隙間を埋めることができるような微小な高さで前記山部が形成されることを特徴とする密封構造。
  2. 前記凹凸は、山部と谷部が前記ハウジングと前記軸との相対回転方向に対して直交する方向に延びていることを特徴とする請求項1に記載の密封構造。
  3. 前記環状溝は、前記ハウジングの軸孔内周面に設けられており、
    前記凹凸は、前記環状溝の反密封対象領域側の側壁面と該側壁面に接触する前記シールリングの側面とにそれぞれ設けられ、山部と谷部が前記各接触面上をそれぞれ径方向に延びることを特徴とする請求項1または2に記載の密封構造。
  4. 前記環状溝は、前記軸の外周面に設けられており、
    前記凹凸は、前記ハウジングの軸孔内周面と該軸孔内周面に接触する前記シールリングの外周面とにそれぞれ設けられ、山部と谷部が前記各接触面上をそれぞれ軸方向に延びることを特徴とする請求項1または2に記載の密封構造。
  5. ハウジングの軸孔と該軸孔に挿入される軟質材料からなる軸のいずれか一方の部材に設けられた環状溝に軟質樹脂材料からなるシールリングを装着し、密封対象領域側からの圧力によって前記シールリングが他方の部材の表面と前記環状溝における反密封対象領域側の側壁面にそれぞれ密着することにより、前記ハウジングと前記軸との間の隙間を密封する密封構造であって、
    前記シールリングと前記軸との間の各接触面には、それぞれ山部と谷部とが交互に設けられて構成される凹凸が設けられており、
    前記シールリングの凹凸と前記軸の凹凸は、前記シールリングと前記軸との相対回転を抑制せしめるべく互いにかみ合うことができるように山部と谷部が前記各接触面上を延びるとともに、密封対象領域側からの圧力によって前記各接触面が押圧されたときの変形によって互いの隙間を埋めることができるような微小な高さで前記山部が形成されることを特徴とする密封構造。
  6. 前記凹凸は、山部と谷部が前記ハウジングと前記軸との相対回転方向に対して直交する方向に延びていることを特徴とする請求項5に記載の密封構造。
  7. 前記環状溝は、前記ハウジングの軸孔内周面に設けられており、
    前記凹凸は、前記軸の外周面と該外周面に接触する前記シールリングの内周面とにそれぞれ設けられ、山部と谷部が前記各接触面上をそれぞれ軸方向に延びることを特徴とする請求項5または6に記載の密封構造。
  8. 前記環状溝は、前記軸の外周面に設けられており、
    前記凹凸は、前記環状溝の反密封対象領域側の側壁面と該側壁面に接触する前記シールリングの側面とにそれぞれ設けられ、山部と谷部が前記各接触面上をそれぞれ径方向に延びることを特徴とする請求項5または6に記載の密封構造。
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