JP2009214162A - 鋳ぐるみ用中子および鋳ぐるみ鋳造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】特別のパッキン材に頼ることなく鋳ぐるみ材であるチューブ材との嵌合隙間に溶湯が侵入するのを抑えることができる鋳ぐるみ用中子を提供する。
【解決手段】金型内のキャビティ7に突出して配置されるボア中子6にシリンダライナ5を嵌合して鋳造を行い、該シリンダライナ5を鋳造金属で鋳ぐるむシリンダブロックの鋳造方法において、予めボア中子の先端部の外周面に少なくとも一つの環状溝10を形成し、鋳造中、ボア中子6とシリンダライナ5との嵌合隙間に侵入する溶湯を該環状溝10に流入させて、前記嵌合隙間の奥側への溶湯の侵入を抑える。
【選択図】図1
【解決手段】金型内のキャビティ7に突出して配置されるボア中子6にシリンダライナ5を嵌合して鋳造を行い、該シリンダライナ5を鋳造金属で鋳ぐるむシリンダブロックの鋳造方法において、予めボア中子の先端部の外周面に少なくとも一つの環状溝10を形成し、鋳造中、ボア中子6とシリンダライナ5との嵌合隙間に侵入する溶湯を該環状溝10に流入させて、前記嵌合隙間の奥側への溶湯の侵入を抑える。
【選択図】図1
Description
本発明は、チューブ材の鋳ぐるみに用いられる中子および該中子を用いて行う鋳ぐるみ鋳造方法に関する。
たとえば、自動車用シリンダブロックとしては、別体のシリンダライナ(チューブ材)を鋳造金属で鋳ぐるんでなる鋳造ブロックがある。このような鋳造ブロックは、鋳型内のキャビティに突出して配置される中子(ボア中子)にシリンダライナを嵌合して鋳造を行うことで製造される。この鋳造に際しては、ボア中子に対するシリンダライナの嵌合を容易にするため、通常、両者の間にある程度の隙間(クリアランス)を確保するようにしている。しかし、ボア中子およびシリンダライナの寸法のばらつきや熱膨張差などの影響で、両者の嵌合隙間が必要以上に大きくなることが往々にしてあり、この場合は、鋳造時に両者の嵌合隙間に溶湯が侵入する。そして、両者の嵌合隙間に溶湯が侵入すると、その凝固片がシリンダライナの内面にバリとして張り付き、後にバリ除去のための面倒な作業工程が必要になる。特にシリンダライナとしてアルミニウム系材料を選択して金型鋳造する場合は、金型の保有熱でシリンダライナが加熱されて大きく膨張するため、前記した嵌合隙間が拡大し、溶湯の侵入が顕著となってバリ除去に要するコスト負担が著しく増大する。
そこで、特許文献1に記載されるものでは、ボアピン(ボア中子)の先端側の外周面に、予め樹脂材、金属材等からなるパッキン材を装着し、該パッキン材によりボア中子とシリンダライナとの嵌合隙間に溶湯が侵入するのを防止するようにしている。
特開2002−236955号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載される溶湯侵入対策によれば、別体のパッキング材を用意しなければならないため、余分なコストがかかる、という問題がある。
本発明は、上記した従来の技術的背景に鑑みてなされたもので、その課題とするところは、特別のパッキン材に頼ることなく鋳ぐるみ材であるチューブ材との嵌合隙間に溶湯が侵入するのを抑えることができる鋳ぐるみ用中子を提供し,併せて該中子を用いて行う鋳ぐるみ鋳造方法を提供することにある。
以下に、上記課題を解決するための本発明の態様をいくつか例示し、それらについて項分けして説明する。
(1)鋳型のキャビティに突出して配置され、鋳造金属に鋳ぐるまれるチューブ材を嵌合保持する鋳ぐるみ用中子であって、先端部の外周面に、前記チューブ材との嵌合隙間に先端側から侵入した溶湯を溜める環状溝を少なくとも一つ設けたことを特徴とする鋳ぐるみ用中子。
本(1)項記載の鋳ぐるみ用中子においては、チューブ材との嵌合隙間に先端側から侵入した溶湯が環状溝内に溜まるので、該環状溝を設けた部位より深い側への溶湯の侵入が抑えられ、結果としてチューブ材の内面におけるバリの発生が抑えられる。
(2)前記環状溝は、先端側へ向けて傾斜して設けられていることを特徴とする(1)項に記載の鋳ぐるみ用中子。
本(2)項記載の鋳ぐるみ用中子においては、環状溝が先端側へ向けて傾斜しているので、環状溝内に溶湯が流入しやすくなる。
(3)前記鋳型が金型であり、前記チューブ材がアルミニウム系材料からなることを特徴とする(1)または(2)項に記載の鋳ぐるみ用中子。
アルミニウム系材料からなるチューブ材を金型鋳造で鋳ぐるむ場合は、金型の保有熱でチューブ材が加熱されて大きく膨張するため、該チューブ材と中子との嵌合隙間が大きくなる。したがって、(3)項に記載のようにアルミニウム系材料からなるチューブ材の金型鋳造に本発明の鋳ぐるみ用中子を適用した場合は特に有用となる。
(4)金型内のキャビティに突出して配置される中子にチューブ材を嵌合して鋳造を行い、該チューブ材を鋳造金属で鋳ぐるむ鋳造方法において、予め前記中子の先端部の外周面に少なくとも一つの環状溝を形成し、鋳造中、前記中子と前記チューブ材との嵌合隙間に侵入する溶湯を前記環状溝に流入させることを特徴とする鋳ぐるみ鋳造方法。
本(4)項記載の鋳ぐるみ鋳造方法においては、中子とチューブ材との嵌合隙間に侵入した溶湯が該中子の外周面に設けた環状溝内に溜まるので、該環状溝を設けた部位より深い側への溶湯の侵入が抑えられ、結果としてチューブ材の内面におけるバリの発生が抑えられる。
(5)前記中子の環状溝に流入して凝固した凝固金属をそのまま残し、該凝固金属を、次の鋳造に際して、前記中子と前記チューブ材との嵌合隙間に溶湯が侵入するのを抑えるメタルパッキンとして用いることを特徴とする(4)項に記載の鋳ぐるみ鋳造方法。
本(5)項記載の鋳ぐるみ鋳造方法においては、中子の環状溝内で凝固した凝固金属が、次の鋳造に際して中子とチューブ材との嵌合隙間に溶湯が侵入するのを抑えるメタルパッキンとして機能するので、別体のパッキン材を新たに中子に装着する必要はなくなる。
本発明に係る鋳ぐるみ用中子および鋳ぐるみ鋳造方法によれば、中子の先端部外周面に環状溝を設けるだけの簡単な対策で、中子と鋳ぐるみ材であるチューブ材との嵌合隙間内への溶湯の侵入を抑えることができ、特別のパッキン材に頼る場合に比し、コスト負担が低減する。
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一つの実施の形態としての鋳ぐるみ用中子を含む鋳造型を示したものである。本鋳造型は、アルミニウム合金製シリンダブロックをダイカスト鋳造するためのダイカスト金型として構成されており、固定型1と、固定型1に対して進退動可能に配置された可動型2と、可動型2の前面にその進退方向と交差する方向へ移動可能に配置された複数のスライド型3,3とから概略構成されている。可動型2は、ウォータジャケットを形成するウォータジャケット中子4と、鋳ぐるみ材としてのシリンダライナ(チューブ材)5を嵌合保持するボア中子(鋳ぐるみ用中子)6とを備えている。ウォータジャケット中子4は、必要気筒数に応じた数の筒状部4aを、紙面に垂直方向へ連設してなっており、ボア中子6は、このウォータジャケット中子4の各筒状部4a内に配置されている。
可動型2は、ダイカストマシン内の型締手段(図示略)により固定型1に対して進退動し、一方、各スライドコア3は、可動型2に付設した駆動手段(図示略)により相互に接近離間する方向へ移動するようになっている。このような鋳造型においては、可動型2に対してスライドコア3を前進位置決めした後、固定型1に対して可動型2を前進させることで、固定型1、可動型2およびスライドコア3の三者は型閉じされる。そして、この型閉じ状態で、前記三者の間には鋳造空間としてのキャビティ7が形成され、これと共にキャビティ7内に突出する状態でウォータジャケット中子4の筒状部4aとボア中子6とが配置される。なお、可動型2には、鋳造品としてのシリンダブロックを離型させるための押出ピンをはじめ、内部冷却のための冷却系が設けられるが、これらについては、図示を省略している。
上記シリンダライナ5は、固定型1に対して可動型2を後退させかつ可動型2に対してスライドコア3を後退させた型開き状態で、ボア中子6に嵌合セットされる。この場合、ボア中子6に対するシリンダライナ5の嵌合を容易にするため、ボア中子6は、その根元側よりも先端側がわずか小径となるようにテーパ形状に仕上げられている。これによりボア中子6とシリンダライナ5との嵌合隙間は、図2に示されるようにボア中子6の先端側に向かうに従って拡大し、結果として該嵌合隙間には先端側から溶湯が侵入しやすい状況となっている。本実施形態において上記シリンダライナ5の材種は任意であり、鉄系材料であってもアルミニウム系材料であってもよいが、シリンダライナ5がアルミニウム系材料からなる場合は、鋼製のボア中子6との熱膨張差により両者の嵌合隙間が拡大し、該嵌合隙間により一層溶湯が侵入しやすくなる。
本実施形態において、上記ボア中子6の先端部の外周面には、環状溝10が形成されている。この環状溝10は、ボア中子6とシリンダライナ5との嵌合隙間に先端側から侵入した溶湯を溜める溶湯溜まりとして機能するもので、一例として幅2〜3mm、深さ3〜4mm程度の大きさに形成されている。
ダイカスト鋳造(鋳ぐるみ鋳造)に際しては、型開き状態でボア中子6にシリンダライナ5が嵌合セットされる。そして、このシリンダライナ5のセット完了により、先ずスライド型が前進して可動型2に対して位置決めされ、続いて可動型2がスライドコア3と一体に固定型1に対して前進し、これにより、固定型1に対して可動型2とスライドコア3とが型締め(型閉じ)される。その後、キャビティ7内に溶湯が高速、高圧で供給される。このキャビティ7に供給された溶湯は、ボア中子6とシリンダライナ5との嵌合隙間内に先端側から浸入しようとする。しかし、ボア中子6の先端部外周面には環状溝10が存在するので、前記嵌合隙間に侵入した溶湯の大部分は、図2に矢印にて示すように環状溝10内に流入し、これによって該環状溝10の設置部位より奥側への溶湯の侵入が抑えられる。
キャビティ7内に充填された溶湯は急速に凝固し、これによってシリンダライナ5を鋳ぐるんでなるアルミニウム合金製のシリンダブロックが完成する。その後、型開きを待って、図示を略す押出ピンが作動し、鋳造品としてのシリンダブロックが可動型2から離型される。この離型に際しては、ボア中子6の環状溝10内で凝固した凝固金属が鋳造品からせん断されて、該環状溝10内に残る。一方、シリンダライナ5とボア中子6との嵌合隙間に侵入した溶湯の凝固片は、バリとしてシリンダライナ5の内面に張り付いて残る。しかし、バリの発生部分は、シリンダライナ5の先端側の狭い範囲に限定されているので、後のバリ除去は簡単となる。
ここで、上記実施の形態においては、ボア中子6に1つの環状溝10を設けたが、この環状溝10の数は任意であり、図3(A)に示すように2つ設けても、あるいは3つ以上設けてもよいものである。環状溝10を複数設けた場合は、シリンダライナ5としてアルミニウム系材料を選択して、ボア中子6との嵌合隙間が拡大する状況下でも、該嵌合隙間に侵入する溶湯を有効に溜めることができる。
また、上記環状溝10は、図3(B)に示すように、ボア中子6の先端側へ向けて傾斜する形態としてもよいものである。この場合は、先端側から侵入する溶湯が円滑に環状溝10内に流入し、嵌合隙間の奥側への溶湯侵入がより確実に抑えられるようになる。
また、上記実施形態においては、ボア中子6の先端部の外周面に環状溝10を設けたが、この環状溝は、ボア中子6の根元側にも設けてよいものである。このようにボア中子6の根元側にも環状溝を設けた場合は、シリンダライナ5と下型2との突合せ部の隙間を通じて嵌合隙間に不用意に侵入する溶湯も溜めることができるので、バリの発生抑制により一層効果的となる。
ところで、上記のようにボア中子6の環状溝10内に残った凝固金属は、適宜の工具を用いて環状溝10から除去してもよいが、本鋳ぐるみ鋳造においては、該凝固金属を環状溝10内に残したまま、次の鋳造を行ってもよいものである。図4は、前記環状溝10内に凝固金属11を残したボア中子6をそのまま次の鋳造に使用する場合の実施形態を示したもので、この場合は、環状溝10に残った凝固金属11が、リング状のメタルパッキンとしてシリンダライナ4との嵌合隙間を埋めるので、該嵌合隙間の奥側への溶湯の侵入が抑えられる。すなわち、別体のパッキン材に頼ることなく嵌合隙間への溶湯の侵入を抑えることができ、コスト的に有利となる。
なお、上記実施形態においては、ダイカスト鋳造によりシリンダブロックを製造するものとして説明したが、その鋳造方法は任意であり、重力鋳造はもとより、低圧鋳造であってもよい。また、その鋳造は、金型鋳造に限定されず、砂型鋳造であってもよい。さらに、上記実施の形態においては、鋳造金属としてアルミニウム合金を選択したが、この鋳造金属の種類も任意であり、マグネシウムまたはその合金、銅またはその合金、鉄系合金等を選択することができる。
本発明はまた、シリンダブロック以外にも、チューブを鋳ぐるみ材として鋳ぐるむ各種鋳造品の製造に適用できる。チューブを鋳ぐるむ鋳造品としては、たとえば、油路形成用パイプを鋳ぐるむようにしたパワーステアリング用ラックハウジングやプラグチューブを鋳ぐるむようにしたシリンダヘッドなどがある。
1 固定型
2 可動型
3 スライド型
5 シリンダライナ(鋳ぐるみ材)
6 ボア中子(鋳ぐるみ用中子)
7 キャビティ
10 環状溝
11 環状溝内の凝固金属
2 可動型
3 スライド型
5 シリンダライナ(鋳ぐるみ材)
6 ボア中子(鋳ぐるみ用中子)
7 キャビティ
10 環状溝
11 環状溝内の凝固金属
Claims (5)
- 鋳型のキャビティに突出して配置され、鋳造金属に鋳ぐるまれるチューブ材を嵌合保持する鋳ぐるみ用中子であって、先端部の外周面に、前記チューブ材との嵌合隙間に先端側から侵入した溶湯を溜める環状溝を少なくとも一つ設けたことを特徴とする鋳ぐるみ用中子。
- 前記環状溝は、先端側へ向けて傾斜して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の鋳ぐるみ用中子。
- 前記鋳型が金型であり、前記チューブ材がアルミニウム系材料からなることを特徴とする請求項1または2に記載の鋳ぐるみ用中子。
- 金型内のキャビティに突出して配置される中子にチューブ材を嵌合して鋳造を行い、該チューブ材を鋳造金属で鋳ぐるむ鋳造方法において、予め前記中子の先端部の外周面に少なくとも一つの環状溝を形成し、鋳造中、前記中子と前記チューブ材との嵌合隙間に侵入する溶湯を前記環状溝に流入させることを特徴とする鋳ぐるみ鋳造方法。
- 前記中子の環状溝に流入して凝固した凝固金属をそのまま残し、該凝固金属を、次の鋳造に際して、前記中子と前記チューブ材との嵌合隙間に溶湯が侵入するのを抑えるメタルパッキンとして用いることを特徴とする請求項4に記載の鋳ぐるみ鋳造方法。
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JP2008062713A JP2009214162A (ja) | 2008-03-12 | 2008-03-12 | 鋳ぐるみ用中子および鋳ぐるみ鋳造方法 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010221222A (ja) * | 2009-03-19 | 2010-10-07 | Honda Motor Co Ltd | 鋳ぐるみ用金型 |
CN105903925A (zh) * | 2016-06-16 | 2016-08-31 | 吴江市液铸液压件铸造有限公司 | 可调式圆环铸造模具 |
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2008
- 2008-03-12 JP JP2008062713A patent/JP2009214162A/ja active Pending
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