JP2009211077A - 色回折ピグメントおよびホイル - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた光学効果を有するピグメントを提供すること。
【解決手段】回折構造を上に有する、多層色回折ピグメントフレークおよびホイルが提供される。回折ピグメントフレークは、反射コア層の反対側に対称的に積み重なったコーティング構造を有し得るか、反射層の1つの側に非対称的に積み重なったコーティング構造を有し得るか、または反射コア層の周りで、1つ以上のカプセル化コーティングを用いて形成され得る。回折ピグメントフレークは、液体媒体(例えば、ペイントまたはインク)に分散されて、種々の物体に対する引き続く適用のための回折組成物を生成し得る。ホイルは、種々の物体に積層され得るかまたはキャリア基材上に形成され得る。回折ピグメントフレークおよびホイルは、その上に種々の回折構造を有して形成されて、選択された光学的効果を生成し得る。
【選択図】図6B

Description

(発明の属する技術分野)
本発明は、一般に、光学効果ピグメントおよびホイルに関する。特に、本発明は、色回折性ピグメントのフレークおよびホイルに関し、これらは、選択された光学効果を生じるために、その表面に種々の回折構造体を有し得る。
(従来の技術)
種々のピグメント、着色料、およびホイルが、広範な種々の適用のために開発されてきた。例えば、回折性ピグメントは、パターン化された表面、およびセキュリティーデバイスの作製のような適用において使用するために、開発されてきた。回折性のパターンおよびエンボス加工は、それらの美的かつ実利的な視覚効果に起因して、広範な実用的な適用を有する。
1つの非常に所望される装飾効果は、回折格子によって生じる虹色の視覚的効果である。この目立つ視覚的効果は、光が回折格子からの反射によってその色成分に回折される場合に起こる。一般に、回折格子は、山および谷の構造を形成する、材料における線または溝から作製される、本質的に反復的な構造である。可視スペクトル内での所望の光学効果は、回折格子が、反射表面上に、規則的に間隔を空けた特定の深さの溝を有する場合に起こる。
回折格子および類似の構造体の色変化特性は、特に、連続的なホイル上にホログラフィー画像を形成するために使用される場合に、周知である。上で記載されるような回折表面の1つの特徴は、これらが可視化されるために直接照射される場合に、より良好に作用するということである。優先的な、十分に平行化された光源のもとでの、視角または照射角による、色の連続的変化および急速な変化は、回折された光線の次数の各々における波長による、光の角度分散に起因する。対照的に、拡散光源(例えば、通常の室内光または曇り空からの光)は、回折着色剤または画像を照射するために使用される場合、この回折着色剤または画像に含まれる可視的情報の大部分を明らかにせず、そして代表的に見られるものは、エンボス加工された表面からの、着色されたかまたは着色されていない反射のみである。
透明なビヒクル中の回折性粒子の小さな断片を、不規則に印刷された表面上に分散させることによって、このようなデバイスによって作製される光学効果を調査する試みがなされた。これらの努力には、広範な種々の回折構造体が関与し、この構造体は、可視光の分散を生じ、その結果、観察者は、この回折表面に対する観察者の配向または照射の幾何学に依存して、異なる色を知覚する。しかし、現在までに作製された各構造体は、その限界(例えば、光沢のある外観であり、これは、多くの目的において、美的に望ましくない)を有する。
例えば、Los Angeles,CaliforniaのSpectratek Technologies Inc.は、比較的大きな回折フレークを製造し、これは、照射の配向または観察の配向に依存して変化する色を生じる。しかし、大きなサイズのフレークはまた、はっきりしたきらめき、すなわち「光沢のある」外観に寄与する。厚いフレークはまた、高い角度において互いに積み重なる傾向があり、光沢として働くクローマおよび色の変化の損失を引き起こす。このようなフレークは、従来技術において、「プリズム小板18が光を多くの角度で反射する独自の能力は、観察者の位置の線が変化するにつれて、画像を一定に変化させる。この全体の効果は、最良には、水晶、砕けたガラスの輝くきらめき、または星明りの輝きとさえ類似の、無数の小さな明るい反射であると説明される。」と記載されている(特許文献1参照)。
これらの粒子は、Spectratekの文献には、50×50ミクロンの最小サイズを有すると記載されている。この比較的大きなサイズに起因して、これらの粒子は個々の粒子として見える傾向がある。さらに、フレークの厚みが約12ミクロンであるので、50ミクロンの粒子は、ほんの約4:1のアスペクト比を有し、そしてなお比較的大きな100ミクロンの粒子は、ほんの約8:1のアスペクト比を有し、従って、互いにおよび基材に対する協動配向を妨げる。多くの塗装方法および印刷方法において、50ミクロンより小さな粒子に対する必要性が十分に認識されているにもかかわらず、粒子サイズの減少とアスペクト比の増加(すなわち、約8:1より大)のいずれも、市場で利用可能ではない。これらの市販のフレークの分析により、これらのフレークは、プラスチックフィルムの厚い層によって保護された金属ホイルを含むことが明らかである。この金属層は、回折性の構造を形成し、これは、1mmあたり約1,700〜1,800本の線(ln/mm)に対応する間隔で、約140nmの起伏深さを有する、線状の起伏を含む。
特定の応用において、回折格子の形態の連続的なホイルにおいて達成され得る、色の連続的な変化は、現在までにフレークに基づくピグメントによって達成されたものより好ましい。回折格子を表面に有する従来の粒子の構造体およびこれらの粒子を製造する方法は、このような粒子を、ホイル構造によって達成され得る光学特徴を達成するために不適切にしてきた。現在まで、1つの構造パラメータの改変は、光学性能に対して潜在的に有利であるが、必然的に、別の重要な特徴に対して不利な影響を有した。粒子が大きい場合、配向が乱れることにより、光沢の影響が生じる。粒子が小さく、そして良好には配向していない場合、複数の色がもはやはっきりせず、外観が混ざる傾向がある。従って、高度に平行化された照射のもとでさえも、観察者は、連続的なホイルに特徴的な明るいはっきりした色ではなく、損なわれた色の範囲を知覚する。
より均一な色(例えば、カラーシフトセキュリティーインクにおいて必要とされる)を提供するための1つの試みが、記載されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2は、溝の頻度が1,600〜2,000ln/mm(0.4〜0.6ミクロンの溝幅)の間の円形配置を有する回折特性の粒子が、均一な外観を得るために必要であることを開示する。1つの好ましい実施形態において、特許文献2は、色の外観の均一性を改善する1つの方法は、溝の間隔を、各粒子の中心からの距離に関して調節することであることを開示している。しかし、円形の格子構造は、非常に低い輝度によって影響を受けやすい。これは、単純な線状格子型の構造を有する同じ大きさの粒子と比較して、限られた数の有効な線(これは、非常に小さな20ミクロンの粒子のほんのサブ領域を示す)に起因する。さらに、特許文献2は、粒子の厚みまたは溝の深さに関して、教示しておらず、そしてこのような複合粒子を製造するための効率的方法または経済的方法を開発する動機付けを提供し得る性能を数量化しない。
金属ホイルを保護および補強するための、無機誘電層の使用が教示されている(例えば、特許文献3参照)。特許文献3は、最終的な粒子の厚みが約2.5ミクロンと3ミクロンとの間になるように、1ミクロンのかなり厚い誘電層を必要とする。所望の粒子サイズは25〜45ミクロンであるので、これは、約10:1〜22:1のアスペクト比を生じる。このようなアスペクト比の下限において、コーティングまたは印刷された物品の表面に対する、粒子の配向の乱れがより優勢であり、この配向の乱れは、比較的大きな厚みと一緒になって、より粗い外側表面を生じる。より粗い表面は、外観を損ない、そして特に、多くの適用(例えば、自動車の塗装)において問題である。より厚いトップ光沢コーティングは、この粗さを部分的にマスクし得るが、これは費用および製造サイクル時間を増加させる。粒子サイズを増加させてアスペクト比を改善することは、このような粒子を、塗装スプレーの適用のためには大きくしすぎ、そして観察可能な光沢効果を増加させる。このような粒子は、他の塗装方法または印刷方法に耐えられ得るが、金像層の厚みが無機材料の破壊靭性を増加させるためには不十分であるので、これらの粒子は、高度に脆弱であり、そして破砕性である。従って、より高いアスペクト比の利点は、得られる製品において達成不可能であり得る。
金属フレークをエンボス加工することは、回折粒子を製造するための1つの慣用的なアプローチである。しかし、永久的な変調高さを得るために、このようなフレークを可塑的に変形させることの必要性は、明るいはっきりした色を生じるために必要な光学特性を有さない粒子を生じる。例えば、従来技術は、金属フレークを、回折性のレリーフパターンでエンボス加工する方法を開示する(例えば、特許文献4参照)。特許文献4の図7は、約800nmの深さで、約1,300ln/mmを有すると測定された溝の頻度を有する、フレークの実際の顕微鏡写真を描写する。このフレークは、金属層の実際の厚み(これは、0.4〜1ミクロンの範囲内であると提唱されている)が溝の深さより小さい点で、波形であるように見える。光学性能は、安定な表面微細構造を必要とするので、エンボス加工プロセスは、可塑的にこの金属ホイルを変形させなければならず、ホイルの厚みに関して有意な溝深さを生じる。得られる波形構造は、溝の硬化(stiffening)効果に起因して、溝の方向を横切って平坦なままであると予測され得、このフレークはまた、これらの溝の方向に、はっきりした曲率を有するように見える。
同様に、インク(例えば、金属フレークインク、金属効果インク、または光学スタックから形成されるピグメントを有するインク)の、エンボス加工された金属薄片(liefing)上への適用によって、着色剤の光学効果を増強する方法が開示されている(例えば、特許文献5および6参照)。特許文献5および6は、このようなエンボス加工された金属薄片ピグメントが、塗装技術または印刷技術との適合性のためには、10〜50ミクロンの間の粒子サイズを有するべきであることを示唆する。正弦波形を有する線状の溝の場合の回折特徴の頻度は、約600ln/mmより大きく、深さは約500nm未満であるべきと開示される。
金属の厚みが10〜50nmである、エンボス加工された薄い明るい金属粒子を形成するためのプロセスが開示されている(例えば、特許文献7〜10参照)。これは、エンボス加工された剥離表面をアルミニウムで金属化することによって、達成される。特許文献7〜10は、回折特徴の頻度が500〜1,100ln/mmの範囲内であるべきであること、および同じプロセスが、エンボス加工されたキャリアフィルムまたは基材に対応する構造を有する多層薄膜光学スタックを作製するために使用され得ることを提唱する。しかし、エンボス加工技術は、薄いフレークにおいては、制限されている。なぜなら、フレークの所望でない変形(曲率または平坦からの逸脱)および/または破損を導き得、これによって、粒子の角度分解能および全体の輝度を低下させるからである。
要約として、従来の技術は、回折格子型の構造を有し、そして再構築されて物体の表面に塗布される場合に、何らかの色分散を集合的に生じる粒子を作製する、種々の様式を教示する。従来の回折微細構造は、波長に従って、可視光の特徴的な角度分布を生じるが、粒子の微細構造の他の局面および微視的力学は、さほど所望されない光沢またはきらめきの外観を有するような粒子のアセンブリに有利である。これは、従来の粒子を印刷または塗装された物品の最終的な外観に見られる。このような印刷または塗装された物品は、粒子のサイズ、厚みおよび脆弱さにより明らかに制限された外観を有する。
米国特許第6,242,510号明細書(第5欄、第56行〜第62行) 米国特許第5,912,767号明細書 米国特許第6,112,388号明細書 米国特許第6,168,100号明細書 米国特許第5,549,774号明細書 米国特許第5,629,068号明細書 米国特許第5,672,410号明細書 米国特許第5,624,076号明細書 米国特許第6,068,691号明細書 米国特許第5,650,248号明細書
本発明の課題は、優れた光学効果を有するピグメントを提供することである。
本発明によると、以下の項目1〜25が提供され、上記目的が達成される。
(項目1.)複数の層を含む回折ピグメントフレークであって、このピグメントフレークは、層全体にわたって、1mm当たり少なくとも1,400格子線および少なくとも約100nmの格子深さを有する回折格子を有する、回折ピグメントフレーク。
(項目2.)項目1に記載の回折ピグメントフレークであって、このピグメントフレークが、
第1主表面、反対側の第2主表面および少なくとも1つの側面を有する中心誘電層;
この誘電層のこの第1主表面の上の第1吸収材層;ならびに
この誘電層のこの第2主表面の上の第2吸収材層、
を備える、回折ピグメントフレーク。
(項目3.)項目1に記載の回折ピグメントフレークであって、このピグメントフレークが、
第1主表面、反対側の第2主表面、および少なくとも1つの側面を有する、中心反射材層、
この中心反射材層の主表面のうちの1つの上の、少なくとも1つの誘電層、
を備え、
ここで、このピグメントフレークは、層全体にわたって、1mm当たり少なくとも1,400格子線および少なくとも約100nmの格子深さを有する回折格子パターンを有する、回折ピグメントフレーク。
(項目4.)項目3に記載の回折ピグメントフレークであって、この回折ピグメントフレークが、
上記反射材層の第1主表面の上の第1誘電層、
この反射材層の第2主表面の上の第2誘電層、
を備え、
ここで、この第1誘電層およびこの第2誘電層が、約1.3よりも大きな屈折率を有する誘電材料を含む、
回折ピグメントフレーク。
(項目5.)項目4に記載のピグメントフレークであって、ここで、上記第1誘電層およびこの第2誘電層が、上記反射材層を実質的に取り囲む連続的な誘電層の一部である、ピグメントフレーク。
(項目6.)項目3に記載のピグメントフレークであって、このピグメントフレークが、さらに、
上記誘電層の上の、吸収材層、
を備える、ピグメントフレーク。
(項目7.)項目3に記載のピグメントフレークであって、ここで、上記反射材層が、固有の色を有する反射材料を備え、そしてこの反射材料が、銅、金、銀−銅合金、黄銅、青銅、窒化チタン、およびこれらの化合物、組み合わせまたは合金からなる群から選択される、ピグメントフレーク。
(項目8.)項目3に記載のピグメントフレークであって、ここで、上記反射材層が、約10〜約200nmの物理的厚さを有する、ピグメントフレーク。
(項目9.)項目6に記載のピグメントフレークであって、このピグメントフレークが、
上記反射材層の上記第1主表面の上の、第1誘電層、
この反射材層の上記第2主表面の上の、第2誘電層、
この第1誘電層の上の、第1吸収材層、および
この第2誘電層の上の、第2吸収材層、
を備える、ピグメントフレーク。
(項目10.)項目9に記載のピグメントフレークであって、ここで、上記第1誘電層および上記第2誘電層が、約1.65以下の屈折率を有する誘電材料を含む、ピグメントフレーク。
(項目11.)項目9に記載のピグメントフレークであって、ここで、上記第1誘電層および上記第2誘電層が、約1.65より大きい屈折率を有する誘電材料を含む、ピグメントフレーク。
(項目12.)回折組成物であって、ピグメント媒体、およびこのピグメント媒体中に分散された項目2に記載の複数の回折ピグメントフレークを含む、回折組成物。
(項目13.)項目12に記載の回折組成物であって、上記ピグメント媒体中に分散された項目4に記載の複数の回折ピグメントフレークを含む、回折組成物。
(項目14.)項目12に記載の回折組成物であって、上記ピグメント媒体中に分散された項目8に記載の複数の回折フレークを含む、回折組成物。
(項目15.)項目12に記載の回折組成物であって、上記ピグメント媒体中に分散された項目9に記載の複数の回折フレークを含む、回折組成物。
(項目16.)回折ホイルであって、この回折ホイルが、
反射材層、および
この反射材層の上の、誘電層、
を備え、
ここで、このホイルが、その上に回折構造を有し、そして背景色およびこの背景色を越える光学的回折効果を示す、
回折ホイル。
(項目17.)項目16に記載の回折ホイルであって、この回折ホイルが、
基材であって、上に回折構造を有する表面を有し、上記反射材層が、この基材の表面の上にある、基材、および
上記誘電層の上の、吸収材層、
を備え、
ここで、この誘電層は、このホイルが第1角度の入射光または視線において、少なくとも第1背景色を示すように、選択された設計波長における光学的厚さを有し、そして
ここで、この反射材層、誘電層および吸収材層のそれぞれが、その中に反復された回折構造を有する、
回折ホイル。
(項目18.)項目16に記載の回折ホイルであって、この回折ホイルが、
基材であって、上に回折構造を有する表面を有し、上記反射材層が、この基材の表面の上にある、基材
を備え、
ここで、この反射材層および誘電層のそれぞれが、その中に反復された回折構造を有する、
回折ホイル。
(項目19.)項目16に記載のホイルであって、ここで、上記回折構造が、回折格子パターンまたはホログラフィー画像パターンである、ホイル。
(項目20.)項目19に記載のホイルであって、ここで、上記回折格子パターンが、1mm当たり約1100より多い格子線を有する、ホイル。
(項目21.)コーティングされた物品であって、この物品が、
1つ以上の表面を有する、物体、
この1つ以上の表面の少なくとも一部の上の回折コーティング層であって、このコーティング層が、回折組成物を含む、回折コーティング層、
を含み、この回折組成物が、
ピグメント媒体;および
複数のピグメントフレークであって、上に回折構造を有し、そしてこのピグメント媒体内に分散された、複数のピグメントフレーク、
を含み、このピグメントフレークが、多層構造を有し、この多層構造が、
反射材層であって、第1主表面、および反対側の第2主表面を有する、反射材層;
第1誘電層であって、この反射材層のこの第1主表面の上の、第1誘電層;
第2誘電層であって、この反射材層のこの第2主表面の上の、第2誘電層;
第1吸収材層であって、この第1誘電層の上の、第1吸収材層;および
第2吸収材層であって、この第2誘電層の上の、第2吸収材層、
を含み、
ここで、この第1誘電層および第2誘電層は、このピグメントフレークが、第1角度の入射光または視線において、少なくとも第1背景色を示すように、選択された設計波長における光学的厚さを有する、
コーティングされた物品。
(項目22.)項目21に記載のコーティングされた物品であって、ここで、上記ピグメントフレークが、第2角度の入射光または視線において、上記第1背景色とは異なる第2背景色を有する、コーティングされた物品。
(項目23.)項目21に記載のコーティングされた物品であって、上記回折コーティング層の上の透明トップコーティング層をさらに含む、コーティングされた物品。
(項目24.)項目21に記載のコーティングされた物品であって、上記回折コーティング層の上に部分的に重なる非回折コーティング層をさらに含む、コーティングされた物品。
(項目25.)項目21に記載のコーティングされた物品であって、さらに、上記回折コーティング層の下の非回折コーティング層をさらに含む、コーティングされた物品。
本発明は、回折効果と薄膜干渉効果技術とを組み合わせて一緒にし、以前には見られなかった新たな色効果を生じる。さらに、インク、ペイント、コーティング、および化粧品処方物、ならびに押出し成形されたプラスチックにおいて有用である層状フレークが、これらの組み合わせ技術から調製された。この色効果は独特である。なぜなら、拡散光の状態において、色は、視角が増加するにつれて高波長から低波長へと移動するからである。しかし、高度に指向性の照射条件(例えば、太陽光)において、色は、視角が増加するにつれて、低波長から高波長へと逆の方向に移動する。組み合わせた照明条件を用いるいくつかの状況において、色は、通常でない様式で移動する。なぜなら、両方の物理的色シフト現象(すなわち、回折および薄膜干渉効果)が同時に見られ得るからである。
具体的には、本発明は、色の(すなわち、着色した)多層回折ピグメントのフレークおよびホイル、ならびにこれらのピグメントフレークを組み込む回折組成物に関する。回折ピグメントのフレークおよびホイルは、その表面に回折構造(例えば、回折格子パターンまたはホログラフィー画像パターン)を有し、これらは、回折構造を有する下にある基材(これの上に、フレークまたはホイルが形成される)から複製される。この回折ピグメントのフレークおよびホイルは、種々の回折構造をその表面に有して形成されて、選択された光学効果を生じ得る。
具体的には、これらの回折ピグメントのフレークおよびホイルは、特定の回折表面微細構造を、物理的属性および微視的力学的属性(これらは、増強された光学効果を提供する)と共に有して作製され得る。所望の光学効果に依存して、適切な格子を付けた微細構造が、最適な回折効果を有するフレークおよびホイルの製造のために選択される。このような光学効果は、回折オプティクスと反射オプティクスとの正しい組み合わせによって作製されて、例えば、観察者が位置を変える場合に変化または閃光する、強い、人目を引く光学効果を生じる。
拡散光において、本発明のフレークおよびホイルに対して観察される色は、吸収による固有の色によって、または光学的な薄膜干渉からの光学的に可変の効果からの色によって、支配される。点光源(例えば、太陽)の存在下で観察される色は、拡散照射(背景色)および回折された光のもとでの光学効果の組み合わせである。
種々の実施形態において、光回折効果は、回折組成物またはホイルが物体に塗布される場合に、1つ以上の背景色を越えて視覚的に知覚される。例えば、色シフト背景は、回折組成物または薄によって示され得る。このような色シフトは、第1の視角における第1の背景色、および第2の視角における、第1の背景色とは異なる第2の背景色を生じる。回折組成物またはホイルはまた、第1および第2の背景色を越えて、光回折効果を生じる。
回折ピグメントフレークは、反射コア層の反対側に対称的にスタックされたコーティング構造体、または反射材層の片面における非対称的にスタックされたコーティング構造体を有するよう形成され得るか、あるいは反射コア層の周囲にカプセル化された1つ以上のコーティングを有するよう形成され得る。回折ピグメントフレークは、ペイントまたはインクのような液体媒体中に散在して、回折組成物(これは引き続いて、種々の物体に塗布される)を生成し得る。これらのホイルは、種々の物体に積層され得るか、またはキャリア基材上に形成され得る。回折組成物およびホイルは、種々の物体に塗布されて、独自の装飾特徴、および視覚的知覚と非視覚的知覚との両方の、セキュリティー特徴を追加し得る。
本発明のこれらおよび他の特徴は、以下の説明および添付の特許請求の範囲からより十分に明らかとなるか、または本発明の実施によって習得され得る。
本発明の、上に列挙した利点および特徴、ならびに他の利点および特徴が得られる様式を説明する目的で、上に簡単に記載される本発明のより特定の説明が、添付の図面に示されるその特定の実施形態の参照によって与えられる。これらの図面は、本発明の代表的な実施形態を示すのみであること、従って、本発明の範囲の限定であるとはみなされないことを理解して、本発明を、添付の図面の使用によって、さらに具体的かつ詳細に記載し、そして説明する。
本発明により、優れた光学効果を有するピグメントが提供される。
図1は、多色光の、回折格子によるその成分波長への分離を示す図である。 図2は、多色光の、回折格子によるその成分波長への分離を示す、別の図である。 図3は、本発明の回折性ピグメントのフレークまたはホイルを形成するために使用され得る、ウェブまたはホイル格子の概略図である。 図4は、本発明の1つの実施形態による回折性のピグメントフレークのコーティング構造の概略図である。 図5は、本発明の別の実施形態による回折性のピグメントフレークのコーティング構造の概略図である。 図6Aは、本発明のさらなる実施形態による、回折ピグメントフレークのコーティング構造の概略図である。 図6Bは、本発明のさらなる実施形態による、回折ピグメントフレークのコーティング構造の概略図である。 図7は、本発明のさらなる実施形態による、回折ピグメントフレークのコーティング構造の概略図である。 図8は、本発明の別の実施形態による、回折ピグメントフレークのコーティング構造の概略図である。 図9は、多重コーティングされた物品の概略図であり、ここで、これらのコーティング層のうちの1つは、回折ピグメントフレークを組み込み、そして他のコーティング層は、非回折フレークを有する。 図10は、多重コーティングされた物品の概略図であり、ここで、これらのコーティング層のうちの1つは、回折ピグメントフレークを組み込み、そして他のコーティング層は、非回折フレークを有する。 図11は、回折フレークを含む少なくとも1つのコーティング層および必要に応じて非回折フレークを有する、コーティングされた物品の概略図である。 図12は、本発明の1つの実施形態による、回折ホイルのコーティング構造の概略図である。 図13は、ウェブ上に形成された、本発明による回折ホイルの代替の概略構成である。 図14は、ウェブ上に形成された、本発明による回折ホイルの代替の概略構成である。 図15は、500ln/mmを有する回折格子に対して垂直および45°での入射における、種々の波長についての回折角を示すグラフである。 図16は、1000ln/mmを有する回折格子に対して垂直および45°での入射における、種々の波長についての回折角を示すグラフである。 図17は、1400ln/mmを有する回折格子に対して垂直および45°での入射における、種々の波長についての回折角を示すグラフである。 図18は、2000ln/mmを有する回折格子に対して垂直および45°での入射における、種々の波長についての回折角を示すグラフである。 図19は、2400ln/mmを有する回折格子に対して垂直および45°での入射における、種々の波長についての回折角を示すグラフである。 図20は、2500ln/mmを有する回折格子、および3000ln/mmを有する回折格子に対して、垂直および45°での入射における、種々の波長についての回折角を示すグラフである。 図21は、種々の波長の光に対する、垂直および60°の入射における、種々の溝深さの1400ln/mmのアルミニウム化した正弦波格子の理論効率を示すグラフである。 図22は、種々の波長の光に対する、垂直および60°の入射における、種々の溝深さの1400ln/mmのアルミニウム化した正弦波格子の理論効率を示すグラフである。 図23は、種々の溝深さにおける、1000ln/mmのアルミニウム化した正弦波格子の理論効率を示すグラフである。 図24は、種々の溝深さにおける、1000ln/mmのアルミニウム化した方形波格子の理論効率を示すグラフである。 図25は、本発明に従って製造された回折ピグメントフレークの、走査電子顕微鏡を用いて撮影した写真である。 図26は、本発明に従って製造された回折ピグメントフレークの、走査電子顕微鏡を用いて撮影した写真である。 図27は、本発明に従って製造された回折ピグメントフレークの、走査電子顕微鏡を用いて撮影した写真である。 図28は、本発明に従って製造された回折ピグメントフレークの、走査電子顕微鏡を用いて撮影した写真である。 図29は、本発明に従って製造された回折ピグメントフレークの、走査電子顕微鏡を用いて撮影した写真である。 図30は、本発明の回折ピグメントフレークのコーティング微細構造を示す、断面透過電子顕微鏡写真である。 図31は、本発明の回折ピグメントの色軌跡および色度をプロットする、a図である。 図32は、本発明の回折ピグメントの色軌跡および色度をプロットする、a図である。 図33は、本発明の回折ピグメントの色軌跡および色度をプロットする、a図である。 図34は、本発明の色シフト回折ピグメントの色軌跡および色度をプロットする、a図である。 図35は、本発明の色シフト回折ピグメントの色軌跡および色度をプロットする、a図である。 図36は、本発明の色シフト回折ピグメントの色軌跡および色度をプロットする、a図である。 図37は、本発明の、銅に基づく回折ピグメントの色軌跡および色度をプロットする、a図である。 図38は、本発明の回折ピグメントの色軌跡および色度をプロットする、a図である。 図39は、本発明の回折ピグメントの色軌跡および色度をプロットする、a図である。 図40は、色シフト非回折ピグメントの色軌跡および色度をプロットする、a図である。
(発明の実施の形態)
本発明は、色回折ピグメント(pigment)フレークおよびホイル、ならびにこのピグメントフレークを組み込んだ回折組成物に関する。本明細書で使用される場合、用語「色(の)(chromatic)」とは、このピグメントフレークまたはホイルにより生成される色の強度または彩度をいう。本発明のフレークおよびホイルの背景色は、カラーシフトし得るか、またはノンシフト単色であり得る。
本明細書中で使用される場合、用語「ノンシフト(non−shifting)」とは、観察者の位置に依存しない、本質的に固定された背景色を有するピグメントおよびホイルを示す。このようなピグメントおよびホイルは、多層干渉ピグメントであり得、この場合、背景色は、干渉効果により生成されるか、または固有の色を有する非干渉ピグメントおよびホイルであり得る。
本発明の回折ピグメントフレークおよびホイルを使用して、製品に独特の装飾的特徴を付与し得、そして種々の物体に、視覚的に認知できるセキュリティー上の特徴かまたは視覚的に認知できないセキュリティー上の特徴の両方を付与し得る。この回折ピグメントフレークおよびホイルは、それらの上に回折構造(例えば、回折格子パターンまたはホログラフィック画像パターン)を有し、これらの回折構造は、フレークまたはホイルが形成される回折構造を有する、下層の基材から複写される。回折ピグメントフレークおよびホイルは、選択された光学効果を生じるために、種々の回折構造をこれらのフレークおよびホイルの上に形成され得る。
所望の背景色を達成するための設計の選択の際に、干渉反射オプティクス(optics)により得られるカラーシフトは、観察角度が増加する場合、長波長から短波長に移行するとみなすことが重要である。対照的に、回折オプティクスにより得られる色の変化は、観察角度が増加する場合、短波長から長波長へと移行する。これらの光学的現象が組み合わされる場合、観察角度が変化するにつれて、混合着色光線のいくつかの異常な状態を生じる。これらの状態は、新しい光学効果を創生するように変更され得る。従って、回折オプティクスがピグメントフレークまたはホイルに組み込まれる場合、独特の色範囲(color dimension)が、回折構造から得られる多くの異なる回折効果と合わせて、干渉コーティングにより与えられる背景色効果の広い選択の範囲から生成される。さらに、回折構造を干渉コーティングと組み合わせることにより、高い観察角度でさえ、高い彩度を維持する光学効果を生じる。
いくつかの実施形態において、カラーシフト回折ピグメントは、観察角度が変化するにつれてカラーシフトを生じる干渉ピグメントが回折表面と組み合わされる場合に得られ、これは、全ての観察角度から強く見える、虹色のカラーシフト効果を生じる。このような構造は、カラーシフト効果および回折効果が集束光(例えば、直射日光)においてのみ視覚的に認知できるというさらなる特徴を有する。拡散光において、多様な角度からの種々の次数の回折は、互いに相殺し、そして単一の視覚的に認知可能な色を生じる。
ノンシフト背景色かまたはカラーシフト背景色の本発明のフレークおよびホイルは、選択的もしくは非選択的な、単一もしくは組み合わせた光学特性(例えば、吸収、発光、反射、散乱、蛍光など)との、有機層または無機層の任意の組合せにより得られ得る。ノンシフト干渉多層構造とカラーシフト干渉多層構造との間の構造的差異は、選択された材料および所望の色に依存して変化するが、代表的にはこの多層構造内の誘電材料の厚みおよび屈折率における差異により特徴付けられる。例えば、選択された設計波長における光学的厚みを有する、約1.65より大きい屈折率の誘電材料は、Bradley,Jrらの米国特許第6,243,204号B1(本明細書に参考として援用される)において議論されるように、代表的には、ノンシフト構造またはわずかにカラーシフトする構造を生じる。少数の四分の一波長(すなわち、約1〜2QW)を含む光学的厚みを有する、約2以上の屈折率の誘電材料は、代表的には低いカラーシフトを生じるか、または全くカラーシフトを生じない。選択された設計波長における光学的厚みを有する約1.65以下の屈折率の誘電材料は、代表的には、入射光の角度または観察角度が変化するにつれて、2つの異なる背景色の間の別個のシフトを示す、カラーシフト構造を生じる。
所望の光学的効果に依存して、適切な格子状微細構造が、所望の最適な回折効果を有する回折フレークおよびホイルの生成のために選択される。例えば、このピグメントフレークまたはホイルは、広範な光学的効果を生じるために、より高周波数の回折格子微細構造(例えば、1mmあたり約1100本より多い格子線(ln/mm)を有する回折格子パターン)を含み得る。このような回折格子パターンは、少なくとも約100nmの格子深さを有し得る。
本発明のいくつかの実施形態において、回折フレークおよびホイルは、非常に目立つ光学的効果を与え、この光学的効果は、回折オプティクスと反射オプティクスとの適切な組合せにより生じ、これは、観察者が位置を変更するにつれて変化し、そして光る。このような目立つ光学的効果としては、虹色効果および必要に応じてカラーシフト効果が挙げられ、そしてこれらの効果を使用して装飾的特徴および視覚的に認知可能なセキュリティー上の特徴の両方を生じ得る。
本発明の他の実施形態において、回折ピグメントフレークまたはホイルにおいて、隠されたセキュリティー上の特徴が提供され得る。このような実施形態において、回折効果は、可視波長範囲の外側(例えば、紫外(UV)波長範囲または赤外(IR)波長範囲)でのみ認知可能である。この隠された特徴は、UVまたはIR波長範囲において回折効果のみを優先して生じる格子を使用することにより与えられる。例えば、垂直入射において、約500ln/mm未満の格子周波数を有するフレークは、可視スペクトルにおいてヒトの目に認知されない回折効果を生じるが、約800nm〜約1600nmの波長範囲における回折効果(これは、分析機器で読み取り可能である)を示す。従って、従来のIR検出装置を配置して迅速かつ正確にこのような回折フレークの存在を検出し得るが、ヒトの肉眼は、この回折構造の存在を検出することができない。
本発明のフレークは、約500nm〜約6ミクロン(6,000nm)、好ましくは約800nm〜約1400nm(1.4ミクロン)の物理的厚みを有するように形成され得る。本発明のフレークは、均一な形状のフレークではないが、このフレークは、約50ミクロン以下、および好ましくは約25ミクロン以下の、平均粒径またはその主表面を横切る「幅」を有し得る。本発明のフレークについてのフレーク幅対フレーク厚みのアスペクト比は、少なくとも約10:1、そして好ましくは少なくとも約25:1である。
本発明の回折ホイルは、約12.5ミクロン〜約200ミクロン、および好ましくは約12.5ミクロン〜約50ミクロンの物理的厚みを有するように形成され得る。
フレークおよびのホイル上の回折構造の線周波数は、好ましくは約1,200ln/mmより大きく、その結果、一次またはより高次の回折ビームにおける可視波長の範囲に対応する光は、垂直入射で照射される場合のより高次の回折ビームにおける同じ範囲の波長と、垂直入射から少なくとも約60度まで、実質的に角度を分離される。さらに、回折構造振幅(格子における回折構造振幅は、溝の深さである)は、ゼロ次回折ビームが実質的に強度を抑制され、その結果より高次のビームの強度が、所望の範囲の波長および/または所望の範囲の入射角度にわたって増強されるような振幅である。
従って、本発明の一実施形態において、回折構造は、少なくとも約1,400ln/mmの周波数および約140nmより大きい溝深さを有する、線形ブレーズ(blazed)(すなわち、鋸波形状)格子である。本発明の別の実施形態において、回折構造は、少なくとも約2,000ln/mmの周波数および約140nmより大きい溝深さを有する線形正弦波形格子である。
このような条件下、フレークに最適なアスペクト比および粒径における高反射率および剛性は、好ましくは、適切なサイズのフレークが、その形状を複製する基材表面から落ちる(defoliate)ように、取り外し可能な中間コーティング層を有する構造化表面を有する基材上に複数の薄膜層を堆積させることにより得られる。本発明の回折フレークおよびホイルは、従来の薄膜堆積技術(これらは、薄いコーティング構造体を形成する技術分野で周知である)を使用して形成され得る。このような薄膜堆積技術の非限定的な例としては、物理蒸着法(PVD)、化学蒸着法(CVD)、これらのプラズマ強化(PE)バリエーション(例えば、PECVDまたは下流PECVD)、スパッタリング、電着、および別個の均一な薄膜層を形成させるその他の堆積方法が挙げられる。物理蒸着法および化学蒸着法は、所望でない表面粗さを導入することなく、滑らかに起伏変化する基材の適切な複製を提供する。
いくつかの実施形態において、回折ピグメントフレークは、増強された光学効果を与える物理的属性および微細機械的(micro−mechanical)属性を伴う、特定の回折表面微細構造を有するように製造され、これにより先行する従来の回折ピグメントにおける欠点を克服する。従来の回折粒状ピグメントにおいて、反射された色は、観察条件および照射条件に対して高度に感受性なので、回折粒子は、以下の、相互排除的な特徴を前もって有していなければならない:1)小さい粒径、剛性、およびコーティングされた物品表面に対して実質的に平行な、全粒子の協同配向、またはその他の好ましい配向に有利な高いアスペクト比;2)特徴的な色の角度範囲および/または強度における限界;ならびに3)小さい粒径から生じる固有の減少を克服する、反射した色の輝度の増強。その他の特性が最適化される場合、本発明のフレーク上の単純な線形格子構造は、先行技術において提案されてきた格子構造におけるより複雑な変形(例えば、同心円状格子または空間変調格子)よりも高い輝度を提供する。
従って、回折粒子は、回折構造(例えば、(小板またはフレークの長軸により規定される基準面に対する)高さの空間変調)を含む少なくとも1つの高度反射層を有する、剛性小板またはフレーク様の粒子を、好ましくは含む。このフレークは、反射層、剛性透明オーバーコーティングまたは剛性中心層のいずれかの機械的特性に起因して、実質的に剛性である。
本明細書中の議論の大半は、回折格子に関するが、ホログラフィック画像パターンの代わりに多くの実施形態において格子を用い得ることが、当業者に理解される。
(回折格子設計技術)
本発明の1つの局面において、回折格子理論を利用して、所望の回折特性を有するフレークまたはホイルの製造に適切な微細構造を選択する設計技術が提供される。この技術において、種々の格子形状を、従来の光学ソフトウエアを用いてモデリングして、最適な格子設計を得るために、鏡面反射強度および回折次数の空間配置を抑圧および/または制御し得る。種々の格子形状を、モデリングのために選択し得る(例えば、三角形対称格子、三角形ブレーズ格子、種々の頂部プラトーサイズを有する方形波格子、ならびに種々の溝周波数および深さプロフィールを有する正弦波形格子)。次いで、モデリング結果を使用して、コーティング層の堆積のための格子基材を選択して、本明細書の以下に記載されるようなピグメントおよびホイルを形成し得る。具体的なモデリング結果を本明細書の以下の実施例の項に記述する。
回折格子理論は、ゼロ次および連続した次数の効率を最適化し得、それにより所望の光学特性を有する格子状フレークまたはホイルの生成が可能になるということを示す。これらのフレークまたはホイルは、回折光学特性を有し、この特性は、最終的に所望される光学効果に依存して変更され得る。伝統的なピグメントの色は、高い観察角度では顕著に退色するので、伝統的なピグメントの、組み合わせられた屈折、反射、吸収などの光学特性に加えて、回折効果が導入され得る。結果として、回折ピグメントは、高い観察角度においてさえ、回折光の強いビームを生成する。
図1および2は、従来の回折格子10の作用の模式図であり、成分波長(レインボー)への多色光(白色光)の分離(回折)を示す。図1に図示されるように、表面に対して垂直ではない角度で格子表面上に入射する光は、ミラー効果色であるゼロ次反射または鏡面反射を生じる。回折格子10は、このゼロ次反射の周囲の一次回折(−1次および1次)を生じる。同様に、二次回折は、一次回折よりも高い角度で生じる。
図2はさらに、回折表面上に入射する光から生じる色効果を図示する。この場合、この入射光は、格子に対して垂直である。色のレインボーに対応する一次の色は、鏡面反射の周りの種々の角度で生じる。
個別の角度の固有のセットについて、および格子ピーク間の所定の間隔「d」について、格子の各切子面からの回折光は、任意の他の切子面からの回折光と同相であり、従ってこれらの光は、以下の等式1:
Gmλ=sinα + sinβ (等式1)
(等式中、G=1/dは、溝密度またはピッチであり、αは、入射光と格子に対する直角との間の角度であり、βは、回折ビームと格子に対する直角との間の角度であり、そしてmは、回折次数と呼ばれる整数である)に記載されるように、強め合って(constructively)結合する。m=0の場合、全波長(λ)についてβ=−αであり、そしてこの格子は、ミラーとして作用し、波長は互いに分離しない。これは、鏡面反射またはゼロ次と呼ばれる。
角分散は、波長λとλ+∂λとの間のm次のスペクトルの角の広がり∂βの尺度である。これは、∂β/∂λ=m/dcosβと定義され、そして溝間の間隔が狭くなる(より高周波数)ほど、角分散がより強くなるということを示す。換言すると、波長間の角度分離は、溝周波数が高くなるにつれて、所定の次数mについて増加する。
所定の格子周波数について、連続した各次数はより広い(より強い角分散)が、より低い周波数の格子についてスペクトルの重なりが生じる。これはまた、次数間の標的角分散をもたらす。溝間の間隔が狭くなるにつれて、回折次数はさらに分離する。換言すると、格子の溝間の間隔により、次数分離が決まる。
より大きなサイズの粒子上の格子は、種々の次数の規定を改善し、より良好な解像力を生じる。なぜならば、多重格子線がこの粒子上に存在するからである。この解像力Rは、格子が、隣接するスペクトル線を分離する能力の尺度である。平面回折格子について、解像力は、R=mNで与えられ、ここでmは、回折次数であり、そしてNは、格子の表面上で照射される溝の総数である。等式1からGmをNdと置き換えて、より意味のある表現が獲得され得る:
R=Nd(sinα + sinβ)/λ (等式2)
ここで数量Ndは、単純に格子幅(W)である。等式2により表されるように、Rは、明らかに、次数または溝の数に依存せず;これらのパラメータは、格子幅ならびに入射角および回折角内に含まれる。従って、到達可能な最大の解像力は、Rmax=2W/λである。理論的に解像力が到達される程度はまた、格子表面の光学的性質に依存する。一般的に、平面格子に関する平面性からのλ/10より大きな任意の離脱(departure)は、解像力の損失を生じるとみなされる。
P−偏光またはTE偏光は、光が格子溝と平行に偏光される場合に規定され、一方S−偏光またはTM偏光は、格子溝と垂直に偏光される。
等式1は、入射光線および回折光線が溝に対して垂直である場合(分光学的装置において通常位置付けられる場合、そして面内回折と呼ばれる場合)に適用可能である。入射光が溝に対して垂直でない場合、等式1は、以下のように改変されなければならない:
Gmλ=cosε(sinα + sinβ) (等式3)
ここでεは、入射光路と、格子中心において溝に対して垂直な面との間の角度である。εがゼロと異なるジオメトリー(格子の方位回転)に関して、回折スペクトルは、面内ではなく円錐上にあるので、このような場合は、円錐回折と称される。さらに、所定の格子周波数に関して、溝の深さは、種々の次数の相対強度を決定する。
回折格子理論に関連する前述の点は、本発明のフレークおよびホイルを製造するための、適切な回折格子構造のモデリングおよび設計の際に使用され得る。例えば、解像力の定義は、回折フレークの場合、より小さなフレーク粒子がより高い溝周波数を必要とし得ることを示す。さらに、ゼロ次効果の低減および1次の強度の増加は、回折効果の増強を達成し得、一方で連続した次数のスペクトルの重なりは、回折光における視覚的回折効果の損失(彩度の損失)を生じ得る。
さらに、格子が基材の面に対して垂直な軸の周りに方位回転される場合、鏡面反射(ゼロ次)の周囲の回折した次数の円錐が現れる。大部分のフレークベースのピグメント適用において、塗料またはインク媒体は、無作為に配向した小さい方位ピグメントフレークの集合を含む。回折格子微細構造を有するフレークの場合、フレークサイズおよび無作為配向は、この集合の光学的性能における強い要因である。従って、塗料またはインクのようなピグメント媒体内の無作為方位配向の回折ピグメントフレークは、回折光の環を生成し、この環は、非回折フレークでは存在しない。
さらに、格子は、透過と同様に反射においても作用する。従って、複雑な光路は、回折構造がスタック上に積載された場合に、光学的に可変かまたはカラーシフトするスタックにおいて発生する。それにより生じる光学的効果は、薄膜干渉効果および回折干渉効果の組合せである。
前述のように、格子の入射エネルギーに対するエネルギーの量(効率)は、溝周波数、形状、および深さの関数として変化する。結果として、この格子は、モデリングにより特定の波長について最適化され得る。従って、本発明のフレークおよびホイルの形成の際の使用に適切な回折格子構造は、この格子が特定の色特徴に関して最適化されるような、特定の線周波数、溝形状、および溝深さを有するように選択され得る。格子周波数および深さは、本明細書上記の概説した等式および考察に基づいて、特定の格子について決定される。
本発明のいくつかの実施形態において、約1000〜約4000格子ln/mm、好ましくは約1400〜約3500格子ln/mm、より好ましくは約1400〜約2000格子ln/mmの振動数を有する回折格子パターンを有する格子構造が使用される。さらに、この格子は、約20nm〜約300nm、好ましくは約100nm〜約250nmの溝深さを有し得る。
種々の形状の格子(例えば、三角形の対称的な格子、三角形のブレーズ(blazed)格子、方形波格子、正弦波格子など)が、本発明において使用される格子構造について選択される。あるいは、この格子は、垂直または非垂直の交差溝部を有する交差格子であり得、これは異なる面で様々な角度の複数の回折パターンを同時に作製する。
適切な格子構造の選択に関するさらなる詳細は、米国特許出願09/919,346(2001年7月31日出願)(この開示は本明細書中で参考として援用される)に開示される。
ここで図面を参照すると(この図面において、同じ構造は同じ参照名で示される)、これらの図面は、本発明を理解するために必要な構造を示すのみである。図3は、本発明に従って回折ピグメントフレークまたはホイルを形成するために使用され得る、ウェブまたはホイルの回折格子20の上面に回折構造22を有するウェブまたはホイルの回折格子20の概略図である。この格子の線周波数および深さは、前記の式および考察に基づいて、使用される特定の格子について決定され得る。例えば、回折格子が用いられ、その結果、形成されるフレークまたはホイルは、少なくとも1より大きいオーダーの回折光ビームの強度およびカラーコントラストを増加するために、0オーダーの回折光ビームの強度を減少するように選択されるピッチおよび振幅を有する回折構造を、このフレークまたはホイルの上に有する。一実施形態において、この回折構造は、少なくとも約1,400ln/mmのピッチ、および少なくとも約100nmの表面深さの変化により提供される振幅変調を有する。さらなる実施形態において、この回折構造は、約3,000ln/mm以下であり得、そして表面深さにおける変化は、約220nm以下であり得る。
多層コーティング24は、例えば、従来の蒸着技術によって、格子20の上面で形成され、その結果、回折構造22は、薄膜構造を形成するコーティング24において複製される。例示されるように、コーティング24は、格子20のトポグラフィーを複製し、その結果、格子の頂部および溝部は、コーティング24の反対の表面26上に存在する。コーティング24の薄膜構造がフレークを形成するために使用される場合、コーティング24は、続いて破壊され、そして例えば、溶媒に溶解することによってかまたは剥離層によってのいずれかで、格子20から除去されて、複数の回折ピグメントフレークを形成する。回折構造は、このピグメントフレークの主表面の一方または両方の少なくとも一部の上に形成される。コーティング24の薄膜構造がホイルを形成するために使用される場合、この薄膜構造は、非剥離性回折格子基材に適用され得る。
コーティング24は、一般に、反射材層、および反射材層の反射性材料よりも実質的に大きな弾性率を有する異なる材料の1つ以上の層(この層は、回折ピグメントフレークの剛性を増加させる)を含む。例えば、誘電層は、反射材層の主表面の一方または両方の上に形成され得る。この誘電層は、実質的に透明な誘電性材料から構成され得る。吸収材層のようなさらなる層が、この誘電層上に形成され得る。
入射光がこのフレークまたはホイルに対して垂直であり、その結果、一次オーダーまたは二次オーダーの回折光ビーム内に約400nm〜約800nmの波長の角の重ね合わせが存在しない場合、このフレークまたはホイル上の回折構造は、一次オーダーおよび二次オーダーの回折光ビームの角分離を生じ得る。この回折構造はまた、垂直入射において、少なくとも約0.25の一次オーダーの強度に対する0オーダーの比、および少なくとも約30°の0オーダーの回折光または反射光と一次オーダーの回折光または反射光との間の角分離によって特徴付けられる。
フレークまたはホイル上の回折構造は、少なくとも約1,400ln/mmを有する回折格子パターン、および少なくとも100nmの格子深さであり得る。好ましくは、この回折格子パターンは、約1400〜約3500ln/mmを有し得、約100nm〜約300nmの格子深さを有し得る。より好ましくは、この回折格子パターンは、約1400〜約2000ln/mmを有し得、そして約140nm〜約220nmの格子深さを有し得る。
使用されるウェブまたはホイル格子は、種々の市販の供給源から得られ得る。さらに、このウェブまたはホイル格子は、フィルムの表面を熱軟化し、このフィルムをエンボスロール(これはこの軟化した表面に回折格子またはホログラフィックイメージを与える)に通すことによって、エンボス加工された熱可塑性フィルムから製造され得る。このように、効果的には制限されていない長さのシートは、その上に回折格子またはホログラフィックイメージを有して形成され得る。あるいは、ウェブまたはホイル上の回折構造は、UV硬化性ポリマー(例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA))でコーティングされたプラスチックフィルムのロールを、UV透過性ローラーのセットに通すことによって作製され得、それによりこのローラーは、回折構造をUV硬化性ポリマーに固定し、そしてこのポリマーは、このUV透明性ローラーを通過するUV光によって硬化される。基材上にエンボス表面を形成する他の方法は、Miekkaらの米国特許第5,549,774号(これは本明細書中で参考として援用される)に開示される。
(回折ピグメントフレーク)
図4は、ノンシフト(nonshifting)回折フレーク30のコーティング構造を示し、この構造は、吸収または干渉により固有の色のみを有する多層コーティングから製造されている。フレーク30は、中央反射材層3、ならびに反射材層32の少なくとも一方の面ではなく、この反射材層32の反対側の主表面上に誘電層34および36を含む、ほぼ対称の薄膜構造を有する三層設計を有し得る。あるいは、フレーク30は、反射材層32および誘電層34または36の1つを含む、二層設計を有して形成され得る。この誘電層は、フレーク30に増大した剛性および耐久性を提供する。この実施形態において、フレークのノンシフト背景色は、干渉効果によって提供され、そしてこのフレークは、その表面上の回折構造に起因して、回折効果を示す。フレーク30の回折構造の格子周波数および深さは、上記のようにして決定され、そして形成され得る。
反射材層32は、好ましくは、高い反射性および使用の容易さに起因して、反射性材料(例えば、種々の金属または金属合金)から構成されるが、非金属性の反射性材料もまた使用され得る。適切な金属製材料の非限定的な例としては、アルミニウム、銀、銅、金、白金、スズ、チタン、パラジウム、ニッケル、コバルト、ロジウム、ニオブ、クロム、およびそれらの化合物、組み合わせまたは合金が挙げられる。適切な反射性合金および化合物の例としては、青銅、黄銅、窒化チタンなど、ならびに上で列挙した金属の合金(例えば、銀−パラジウム)が挙げられる。反射材層32は、好ましくは、固有の色を有する反射性材料(例えば、銅、金、銀−銅合金、黄銅、青銅、窒化チタン、およびそれらの化合物、組み合わせまたは合金)を含む。
誘電層34および36は、種々の誘電性材料(例えば、約1.3より大きい屈折率を有する材料)を含み得る。例えば、誘電層34および36は、約1.65より大きい、好ましくは約2より大きい、「高い」屈折率を有する誘電性材料から構成され得る。適切な高い屈折率の誘電性材料の非限定的な例としては、以下が挙げられる:硫化亜鉛(ZnS)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ジルコニウム(ZnO)、二酸化チタン(TiO)、ダイヤモンド様炭素、酸化インジウム(In)、インジウム−スズ酸化物(ITO)、五酸化タンタル(Ta)、酸化セリウム(CeO)、酸化イットリウム(Y)、酸化ユーロピウム(Eu)、酸化鉄(例えば、酸化二鉄(II)(Fe)および酸化鉄(III)(Fe))、窒化ハフニウム(hfN)、炭化ハフニウム(HfC)、酸化ハフニウム(HfO)、酸化ランタン(La)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ネオジム(Nd)、酸化プラセオジム(Pr11)、酸化サマリウム(Sm)、三酸化アンチモン(Sb)、ケイ素、一酸化ケイ素(SiO)、三酸化セレン(Se)、酸化スズ(SnO)、三酸化タングステン(WO)、それらの組み合わせなど。他の適切な高い屈折率の誘電性材料としては、混合酸化物(例えば、Coombsらの米国特許第5,989,626号(この開示は本明細書中で参考として援用される)に記載される酸化物が挙げられる。米国特許第5,989,626号の材料が誘電層として使用される場合、これらは最も一般的には、その化学量論的状態(例えば、ZrTiO)まで酸化される。このような混合酸化物の非限定的な例としては、ジルコニウムチタン酸化物、ニオブチタン酸化物、それらの組み合わせなどが挙げられる。
さらに、「低い」屈折率を有する誘電性材料(例えば、約1.65以下の屈折率を有する材料)が使用され得る。適切な低い屈折率の誘電性材料の非限定的な例としては、以下が挙げられる:二酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、金属フッ化物(例えば、フッ化マグネシウム(MgF)、フッ化アルミニウム(AlF)、フッ化セリウム(CeF)、フッ化ランタン(LaF)、フッ化アルミニウムナトリウム(例えば、NaAlFまたはNaAl14)、フッ化ネオジム(NdF)、フッ化サマリウム(SmF)、フッ化バリウム(BaF)、フッ化カルシウム(CaF)、フッ化リチウム(LiF))、それらの組み合わせ、または約1.65以下の屈折率を有する任意の他の低い屈折率の材料。例えば、有機モノマーおよびポリマー(ジエンまたはアルケン(例えば、アクリレート(例えば、メタクリレート))、ペルフルオロアルケン、ポリテトラフルオロエチレン(Teflon)、フッ化エチレンプロピレン(FEP)、それらの組み合わせなどを含む)は、低い屈折率の材料として使用され得る。
上記の誘電性材料のいくつかは、代表的に、しばしば、この誘電性材料をコーティング層として蒸着するために使用される特定の方法に依存して、非化学量論形態で存在し、そして上記の化合物名は、おおよその化学量論を示すことが理解されるべきである。例えば、一酸化ケイ素および二酸化ケイ素は、それぞれ、名目上1:1および1:2のケイ素:酸素の比を有するが、特定の誘電性コーティング層の実際のケイ素:酸素の比は、これらの名目上の値と幾分か異なる。このような非化学量論的な誘電性材料もまた、本発明の範囲内である。
反射材層32は、約10nm〜約200nmの物理的厚みを有し得る。不透明が所望される場合、この反射材層32は、約40nm〜約200nm、好ましくは、約80nm〜約160nmの物理的厚みを有し得る。しかし、所望される場合、半不透明の反射材層が提供され得ることが理解されるべきである。代表的に、反射性金属層は、約35〜40nmで、不透明になる。従って、半不透明が所望される場合、この反射材層は、約50nm未満、好ましくは、約40nm未満の物理的厚みを有し得る。好ましくは、10nmの厚みが、半不透明反射材層を提供するために効果的に使用され得る。
誘電層34および36の各々は、約10ミクロン以下、好ましくは約5ミクロン以下、より好ましくは約3ミクロン以下(例えば、約200nm〜約600nm、好ましくは約250nm〜約450nm)の物理的厚みを有し得る。フレーク30の全厚みは、約1500nm未満、好ましくは約1,400nm未満、より好ましくは約500nm〜約900nmである。
フレーク30に対応する複数の回折フレークを製造するための方法において、誘電層および反射材層は、所望の二層または三層のフレーク設計に従って連続的な様式で、ウェブまたはホイル格子上に蒸着されて、薄膜構造を有する多層コーティングを形成する。この薄膜構造は、引き続いて、破壊されて、この格子から除去され、複数の回折ピグメントフレークを形成する。
図5は、本発明の代替の実施形態に従う回折フレーク40のコーティング構造を示す。このフレーク40は、中央反射材層44を実質的に取り囲みそしてこれをカプセル化する連続した誘電層42を有する二層設計を有する。フレーク40の誘電層および反射材層は、同じ材料から構成され得、そしてフレーク30において対応する層について上で記載された厚みと同じ厚みを有し得る。フレーク40の回折構造の格子周波数および深さは、本明細書中上記のようにして決定され、そして形成され得る。
フレーク40に対応する複数の回折フレークを製造するための方法において、少なくとも反射材層を含む1つ以上の薄膜層が、ウェブまたはホイル格子上に蒸着されて、回折薄膜構造を形成し、これは続いて破壊され、そしてこの格子から除去されて、反射材層44に対応する複数の回折ピグメントプレフレーク(preflake)を形成する。このプレフレークは、所望される場合、粉砕によってさらに断片化され得る。このプレフレークは、次いで、カプセル化プロセスによって誘電層42によりコーティングされて、複数の回折ピグメントフレークを形成する。カプセル化プロセスが使用される場合、このカプセル化している層は、1つの材料からなる連続層であり、フレーク構造の周りで実質的に同じ厚みを有することが理解される。
ここで図6Aを参照すると、本発明の別の実施形態に従うカラーシフト回折ピグメントフレーク50が示される。このフレーク50は、反射材層52の反対側の面上にコーティング層を有するほぼ対称的な多層薄膜構造を有する。例示されるように、第1および第2の誘電層54a、54bは、反射材層52の反対側の面の上に存在し、そして第1および第2の吸収材層56a、56bは、それぞれ、第1および第2の誘電層54a、54bの上に存在する。回折格子構造58は、フレーク50の層全てにおいて、複製される。回折格子構造58の格子周波数および深さは、本明細書中上で記載されるようにして決定され、そして形成され得る。
回折格子構造と組み合わせたピグメントフレーク50のコーティング設計は、回折の光学的効果が観察され得るカラーシフト背景色を生成する。例えば、フレーク50の誘電層は、選択された設計の波長で光学的厚みで形成され得、その結果、ピグメント組成物(これはフレーク50に対応する複数のフレークを含有する)は、目的物に適用された場合に、カラーシフト背景に対して光沢のある回折効果を示す。
フレーク50の反射材層52は、種々の反射材料(例えば、フレーク30の反射材層32に関して上で考察された材料)から構成され得る。この反射材層52は、約40nm〜約200nm、好ましくは約40nm〜約160nmの適切な物理的厚みを有するように形成され得る。あるいは、この反射材層は、部分的に透明であり(例えば、半不透明)、その結果、その物理的厚みは、約10nm〜約40nmの範囲になる。
この誘電層54a、54bは、フレーク50の薄膜スタック構造におけるスペーサーとして働く。これらの層は、干渉色および所望のカラーシフト特性を与えるために効果的な光学的厚みを有するように形成される。この誘電層は、必要に応じて透明であり得るか、または選択的に吸収して、ピグメントの色効果に寄与し得る。この光学的厚みは、積ηdとして定義された周知の光学的パラメータである。ここで、ηは、この層の屈折率であり、そしてdはこの層の物理的な厚みである。代表的に、この層の光学的厚みは、4ηd/λに等しい、1/4波長光学厚みという形で表現され、ここでλは、QWOT条件が生じる波長である。誘電層の光学的厚みは、所望のカラーシフトに依存して、選択された設計の波長において、約2QWOT〜約9QWOTの範囲であり得、好ましくは、約2QWOT〜約6QWOTの範囲であり得る。誘電層は代表的に、所望の色特性に依存して、約60nm〜約1000nm、好ましくは約200nm〜約700nmの物理的厚みを有する。
フレーク50における誘電層54aおよび54bは、種々の誘電性材料(例えば、フレーク30の誘電層34および36に関して上で記載された高い屈折率の誘電性材料または低い屈折率の誘電性材料)から構成され得る。誘電層の各々は、単一の材料から形成され得るか、または種々の材料の組み合わせおよび構成で形成され得る。例えば、誘電層は、低い屈折率の材料のみ、または高い屈折率の材料のみ、2つ以上の低い屈折率の材料の混合物または多サブ層、2つ以上の高い屈折率の材料の混合物または多サブ層、あるいは低い屈折率の材料および高い屈折率の材料の混合物または多サブ層から形成され得る。
誘電層の各々は、同じ材料または異なる材料から構成され得、そして各層について同じかまたは異なる光学的厚みまたは物理的厚みを有し得る。誘電層が異なる材料から構成されるか、または異なる厚みを有する場合、フレークは、その各面上で異なる色を示し、そしてピグメントまたはペイント混合物中の生じるフレークの混合物は、2つの色の組み合わせである新しい色を示すことが理解される。この得られた色は、フレークの2つの面に由来する2つの色の加色理論に基づく。フレークの多重度において、得られる色は、観察者に向かって配向された異なる面を有するフレークのランダムな分布から生じる2つの色の相加的な和である。
フレーク50の吸収材層56aおよび56bは、所望の吸収特性を有する任意の吸収材料(すなわち、可視的に一定の吸収係数を有する材料(nがほとんどkに等しい)、または吸収定数が電磁領域にわたって変化する材料(nがkと異なり、変数である)から構成され得る。従って、選択的吸収材料または非選択的吸収材料が使用され得る。例えば、吸収材層は、吸収材層が少なくとも部分的に吸収する、すなわち、半不透明である厚みになるまで蒸着された非選択性吸収金属製材料から形成され得る。
吸収材層56aおよび56bに適切な吸収材料の非限定的な例としては、金属製吸収材(例えば、クロム、ニッケル、アルミニウム、銀、銅、パラジウム、白金、チタン、バナジウム、コバルト、鉄、スズ、タングステン、モリブデン、ロジウムおよびニオブ、ならびに対応する金属酸化物、金属硫化物、金属炭化物、金属窒化物および金属リン化物)が挙げられる。他の適切な吸収材料としては、炭素、グラファイト、ケイ素、ゲルマニウム、サーメット、誘電性マトリクスに混合された金属、および可視スペクトルにおいて均一または選択的な吸収材として働き得る他の物質が挙げられる。上記の吸収材料の種々の組み合わせ、混合物、化合物および合金は、フレーク50の吸収材層を形成するために使用され得る。
上記の吸収材料の適切な合金の例としては、Inconel(Ni−Cr−Fe)、ステンレス鋼、Hastalloys(例えば、Ni−Mo−Fe;Ni−Mo−Fe−Cr;Ni−Si−Cu)およびチタンベースの合金(例えば、炭素と混合したチタン(Ti/C)、タングステンと混合したチタン(Ti/W)、ニオブと混合したチタン(Ti/Nb)、およびケイ素と混合したチタン(Ti/Si))ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。上記のように、この吸収材層はまた、吸収性の金属酸化物、金属硫化物、金属炭化物、金属窒化物、金属リン化物、またはそれらの組み合わせから構成され得る。例えば、1つの好ましい吸収性の硫化物材料は、硫化銀である。吸収材層に適切な化合物の他の例としては、チタンベースの化合物(例えば、窒化チタン(TiN)、チタニウムオキシニトリド(TiN)、炭化チタン(TiC)、チタニウムニトリドカーバイド(TiN)、チタニウムオキシニトリドカーバイド(TiN)、ケイ化チタン(TiSi)、ホウ化チタン(TiB)およびそれらの組み合わせ)が挙げられる。TiNおよびTiNの場合、好ましくはx=0〜1、y=0〜1、そしてz=0〜1であり、ここでx+y=1(TiNの場合)、そしてx+y+z=1(TiNの場合)である。TiNの場合、好ましくはx=0〜1、そしてz=0〜1であり、ここでx+z=1である。あるいは、吸収材層は、Tiのマトリックスに蒸着されたチタンベースの合金から構成され得るか、またはチタンベースの合金の混合物中に蒸着されたTiから構成され得る。
吸収材層は、約3nm〜約50nmおよび好ましくは約5nm〜約20nmの物理的厚みを有するように形成され得る。吸収材層は、それぞれ、同じ材料または異なる材料から構成され得、そしてそれぞれの層について同じかまたは異なる物理的厚みを有し得る。
ピグメントフレーク50に対応する複数の回折フレークは、ウェブコーティングプロセスによって形成され得、ここで、種々の層が、回折表面構造を有するウェブ材料上に連続的に堆積されて、薄膜構造を形成する。この薄膜構造は、連続的に破砕され、そしてウェブから除去されて、複数の回折フレークを形成する。
図6Aは、さらに、回折ピグメント50についての代替のコーティング構造(想像線を用いる)を示し、ここで、吸収材層および誘電層のうちの1つ以上が、カプセル化プロセスにおいて、反射材層52の周りにコーティングされる。例えば、カプセル化プロセスが、外側吸収材層を形成するために使用される場合、吸収材層56aおよび56bは、その下のフレーク構造を実質的に取り囲む連続的な吸収コーティング層56の一部として形成される。同様に、カプセル化プロセスはまた、下にある誘電層を形成する際に使用され得、その結果、誘電層54aおよび54bは、反射材層52を実質的に取り囲む連続的な誘電コーティング層54の一部として形成される。
従って、回折ピグメントフレーク50は、多層薄膜スタックフレークとして、または多層薄膜カプセル化粒子(1つ以上のカプセル化層を周りに有する)としてのいずれかで具体化され得る。
種々のコーティングプロセスは、カプセル化によって、誘電層および吸収材コーティング層を形成する際に利用され得る。例えば、誘電層を形成するための適切な好ましい方法としては、真空蒸着、ゾル−ゲル加水分解、流動床におけるCVD、粒子を充填された振動トレイ上への下流プラズマ、および電気化学蒸着が挙げられる。適切なSiOゾル−ゲルプロセスは、Andesらに対する米国特許第5,858,078号(この開示は、本明細書中において、参考として援用される)に記載される。本発明において有用な適切なゾル−ゲルコーティング技術の他の例は、Brodallaに対する米国特許第4,756,771号;Zinkら、Optical Probes and Properties of Aluminosilicate Glasses Prepared by the Sol−Gel Method,Polym.Mater.Sci.Eng.,61,204−208頁(1989);およびMcKiernanら、Luminescence and Laser Action of Coumarin Dyes Doped in Silicate and Aluminosilicate Glasses Prepared by the Sol−Gel Technique,J.Inorg.Organomet.Polym.,1(1),87−103頁(1991)(これらのそれぞれの開示は、本明細書中において参考として援用される)に開示される。
吸収材層を形成するための適切な好ましい方法としては、Phillipsらに対する米国特許第6,241,858 B1号(本明細書中において参考として援用される)に開示されるような、真空蒸着、および機械的に振動する床への粒子のスパッタリングが挙げられる。あるいは、吸収材層は、Schmidらに対する米国特許第5,364,467号および同第5,763,086号(これらの開示は、本明細書中において参考として援用される)に記載されるような、流動床上で実行され得る金属−有機化合物または関連CVDプロセスの熱分解による分解によって堆積され得る。さらなる粉砕が実行されない場合、これらの方法は、周りに誘電物質および吸収材物質を有するカプセル化されたコアフレークを生じる。上記のコーティングプロセスの種々の組み合わせは、複数カプセル化コーティングを用いるピグメントフレークの製造の間に利用され得る。適切な吸収材は、所望の場合、単一材料、または下にある異なる吸収材材料の上の外側キャッピング層のいずれかとして塗布され得る。
本発明の代替の実施形態において、図6Aに示されるようなフレーク50の反射材層52の1つの側面と同じ層を有する薄膜スタック構造を含む、非対称性カラーシフト(color shifting)回折フレークが提供され得る。このような薄膜スタック構造は、本明細書中において後に考察されるホイルの構造に類似する。従って、非対称性フレークは、例えば、反射材層、反射材層の上の誘電層、および誘電層の上の吸収材層を含む。これらの層のそれぞれは、同じ材料から構成され得、そしてフレーク50の対応する層について上記された厚みと同じ厚みを有し得る。非対称性カラーシフト回折フレークはまた、反射材層のいずれかの側面上の誘電層が、異なる厚みを有するか、または異なる材料から構成される、図6Aにおけるフレーク50に示されるような薄膜スタック構造の形態で提供され得る。非対称性フレークは、ウェブコーティングプロセスによって形成され得、ここで、種々の層は、ウェブ材料上に回折表面を有して連続的に堆積されて、薄膜構造を形成し、これは、続いて、ウェブから破砕および除去されて、複数の回折フレークを形成する。
ピグメント媒体中に分散されたホイル用構造を有する非対称性回折フレークは、対称性回折フレークのみを含む回折組成物よりも明るい回折組成物を生成する。これは、反射材層が外側に面する回折組成物中に配置される非対称性フレークのうちのいくつかから生じる。さらに、対称性回折フレークおよび非対称性回折フレークの両方が、種々の量で一緒にピグメント媒体中に分散されて、種々のレベルの明るさおよび色の組み合わせを有する回折組成物を生成し得る。
ここで、図6Bを参照すると、本発明の別の実施形態に従う、カラーシフト回折ピグメントフレーク150が示される。フレーク150は、反射材層152の反対側面上にコーティング層を有する、ほぼ対称性多層薄膜構造を有する。図示されるように、第1誘電層154aおよび第2誘電層154bは、反射材層152の反対側面の上にあり、そして第1吸収材層156aおよび第2吸収材層156bは、それぞれ、第1誘電層154aおよび第2誘電層154bの上にある。さらに、第3誘電層158aおよび第4誘電層158bは、それぞれ、第1吸収材層156aおよび第2吸収材層156bの上にある。回折格子構造159は、フレーク150の層の全てにおいて反復される。回折格子構造159の格子周波数(grating frequency)および深さは、本明細書中において上記のように決定され得、形成され得る。
回折格子構造と組み合わせたピグメントフレーク150のコーティング設計は、カラーシフト背景色(この上で、回折光学効果が観測可能である)を生成する。例えば、フレーク150の誘電層は、ピグメント組成物(フレーク150に対応する複数のフレークを含む)が、物体に塗布された場合に、カラーシフト背景の上に光彩(iridescent)回折効果を示すように、選択された設計波長において光学的厚みを有して形成される。
ピグメントフレーク150に対応する複数の回折フレークは、以前に記載されるように、ウェブコーティングによって形成され得、ここで、種々の層が、回折表面構造を有するウェブ材料上に連続的に堆積されて、薄膜構造を形成する。この薄膜構造は、連続的に粉砕され、そしてウェブから除去されて、回折フレークを形成する。ピグメントフレーク150の層のそれぞれは、同じ材料から構成され得、そしてフレーク50の対応する層について上記される厚みと同じ厚みを有し得る。
図6Bは、さらに、回折ピグメントフレーク150についての代替的なコーティング構造(想像線を用いる)を示し、ここで、吸収材層および誘電層のうちの1つ以上が、カプセル化プロセスにおいて反射材層152の周りにコーティングされる。例えば、カプセル化プロセスが外側誘電層を形成するために使用される場合、誘電層158aおよび158bは、フレーク構造の下でこのフレーク構造を実質的に取り囲む連続的なコーティング層158の一部として形成される。同様に、カプセル化プロセスは、フレーク150中に、1つ以上の下にある吸収材層および誘電層を形成する際に使用され得る。例えば、吸収材層156aおよび156bは、フレーク構造の下でこのフレーク構造を実質的に取り囲む連続的なコーティング層156の一部として形成され得る。カプセル化プロセスはまた、下にある誘電層を形成する際に使用され得、その結果、誘電層154aおよび154bが、反射材層152を実質的に取り囲む連続的な誘電コーティング層154の一部として形成される。
従って、回折ピグメントフレーク150は、1つ以上のカプセル化層を周りに有する、多層薄膜スタックフレークまたは多層薄膜カプセル化粒子のいずれかとして具体化され得る。
フレーク150の代替の実施形態において、図6Bに示されるように、フレーク150の反射材層152の1つの側面上と同じ層を有する薄膜スタック構造を含む非対称性カラーシフト回折フレークが提供され得る。非対称性カラーシフト回折フレークはまた、図6Bのフレーク150について示されるような薄膜スタック構造の形態で提供され得、ここで、この反射材層のいずれかの側面上および吸収材層の上の誘電層は、異なる厚みを有するかまたは異なる材料から構成される。
ここで、図7を参照すると、回折ピグメントフレーク60が、本発明の別の実施形態に従って示される。フレーク60は、その主表面の反対側に第1反射材層64aおよび第2反射材層64bを有する中心支持層62を備える。反射材層の間に支持層を挿入することによって、フレーク60は、有意に安定化され、そして強化され、増加した剛性を有する。
反射材層64aおよび反射材層64bは、以前に記載された反射材材料のいずれかから、フレーク30の反射材層32について先に記載されたと同じ厚みで形成され得る。フレーク60は、その少なくとも1つの表面上に形成された回折構造66を有する。回折構造66の格子周波数および深さは、本明細書中において上記されるように決定および形成され得る。
ピグメントフレーク60に対応する複数の回折フレークは、ウェブコーティングプロセスによって形成され得、ここで、種々の層が、ウェブ材料上に連続的に堆積されて、薄膜構造を形成する。この薄膜構造は、連続的に粉砕され、そしてウェブから除去されて、複数のフレークを形成する。
フレーク60は、それ自体でピグメントフレークとして使用され得るか、または上に塗布される1つ以上のさらなる層68a、68bを有する反射材コアセクションとして使用され得る。例えば、さらなる誘電層は、必要に応じて、反射材層54aおよび54bの上にあるように追加され得る。これらのさらなる誘電層は、フレーク60に、耐久性、剛性、および環境耐性を追加し得る。
さらなる層68a、68bはまた、フレーク50について記載されるような誘電層、フレーク50について記載されるようなその上にある吸収材層を含み得る。以前に記載されるように、このようなコーティング構造は、カラーシフト背景(この上で、回折光学効果が視覚的に認知される)を生成する。
さらなる層68a、68bは、ウェブコーティングプロセスの一部として形成され得、ここで、この種々の層は、連続的に、ウェブ材料上に堆積され、そして放されて、薄膜スタックフレーク構造を形成する。あるいは、1つ以上のさらなる層68a、68b(例えば、誘電層および吸収材層)が、カプセル化プロセスにおいて、下でフレーク構造を実質的に取り囲む連続的コーティング層68の一部として形成され得る。
誘電材料は、好ましくは、支持層62のために使用される。誘電材料は、好ましくは、無機物質である。なぜなら、誘電材料は、Coulterらの米国特許第6,013,370号およびCoulterらの米国特許第6,150,022号(これらの開示は、本明細書中において参考として援用される)に示されるように、脆性および剛性について良好な特性を有することが見出されているからである。利用され得る種々の誘電材料としては、金属フッ化物、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、金属炭化物、およびこれらの組み合わせなどが挙げられる。誘電材料は、結晶状態、非晶質状態、または半結晶状態のいずれかであり得る。これらの材料は、容易に入手可能であり、そして物理蒸着プロセス、化学蒸着プロセス、または他の湿式化学プロセス(例えば、ゾル−ゲルコーティング)によって容易に塗布される。
支持層62についての適切な誘電材料の非制限的な例としては、フッ化マグネシウム、一酸化ケイ素、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化タングステン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ホウ素、炭化タングステン、炭化チタン、窒化チタン、窒化ケイ素、硫化亜鉛、ガラスフレーク(例えば、剥離層を用いてロールコーターで作製されるガラスフレーク)(例えば、合成小板(platelet)、ダイヤモンド様炭素)、それらの組み合わせなどが挙げられる。あるいは、支持層62は、ガラス、アルミナ、二酸化ケイ素、炭素、雲母(micaeous)酸化鉄、コーティッドマイカ(coated mica)、窒化ホウ素、炭化ホウ素、グラファイト、オキシ塩化ビスマス、これらの種々の組み合わせなどから形成される合成小板のような高いアスペクト比(aspect ratio)を有する、予め形成された誘電またはセラミックプレフレーク材料から構成され得る。
代替の実施形態において、誘電支持層の代わりに、種々の半導体材料および導体材料(圧縮強さに対する引張り強さの、十分な比を有する)は、支持層として機能し得る。このような材料の例としては、ケイ素、ケイ化金属、III族元素、IV族元素、またはV族元素のいずれかから形成される半導体化合物、体心立方結晶構造を有する金属、サーメット組成物または化合物、半導体ガラス、これらの種々の組み合わせなどが挙げられる。しかし、本明細書中に記載される機能を提供し、そしてガラス様の品質を有する剛性層として機能し得る任意の支持材料が、これらの材料のうちの1つに対する受容可能な置換物であることが、本明細書中の教示から明かである。
支持層62の厚みは、約10nm〜約1,000nm、好ましくは、約50〜約200nmの範囲であり得るが、これらの範囲は、限定として解釈されるべきではない。
あるいは、フレーク60は、図7の想像線によって示されるように、カプセル化された粒子として形成され得る。粒子は、支持層62を実質的に取り囲み、そしてカプセル化する反射材層64を有する2層設計であり得る。カプセル化粒子は、それ自体でピグメント粒子として使用され得るか、またはそれらの上に塗布される1つ以上のさらなるコーティング層68を有する回折コアセクションとして使用され得る。例えば、外側誘電層は、反射材層64の上にあり、そしてこの反射材層をカプセル化するために添加され得る。この外側層は、カプセル化粒子に対して、耐久性、剛性、および環境耐性を加える。さらなる層68はまた、フレーク50について記載された誘電層のような誘電層、およびその上の吸収材層を備え得る。以前に議論したように、例えば、コーティング構造は、カラーシフト背景(この上で、回折光学効果が視覚的に認知される)を生成する。
図8をここで参照して、本発明の別の実施形態に従うカラーシフトピグメントフレーク70が示される。フレーク70は、誘電コア層72の反対側面上に、ほぼ対称多層薄膜構造を有する3層設計である。従って、第1吸収材層74aおよび第2吸収材層74bは、誘電コア層72の主表面上の反対側に形成される。フレーク70は、その少なくとも1つの表面に形成される回折構造76を有する。回折構造76の格子周波数および深さは、本明細書中において上記されるように決定および形成され得る。フレーク70の層は、以前に記載のように、ウェブコーティングプロセスおよびフレーク除去プロセスによって形成され得る。
図8は、フレーク70についての代替のコーティング構造(想像線を用いる)を示し、ここで、吸収材層は、カプセル化プロセスにおいて、コア層72の周りにコーティングされる。従って、吸収材層74aおよび74bは、コア層72を実質的に取り囲む連続的コーティング層74の一部として形成される。
従って、ピグメントフレーク70は、多層薄膜スタックフレークとして、または多層薄膜カプセル化粒子としてのいずれかで具体化され得る。フレーク70の誘電層および吸収材層についての適切な材料および厚みは、フレーク50について、本明細書中において上で教示されるものと同じである。
上記実施形態の種々の改変および組み合わせもまた、本発明の範囲内と考えられる。例えば、さらなる誘電コーティング、吸収材コーティングおよび/または他の光学的コーティングが、上記フレーク実施形態のそれぞれの周りに、またはフレーク形成前の複合反射フィルム上に形成されて、さらなる所望の光学的特性を与える。このようなさらなるコーティングは、ピグメントに対する増強した光学的効果を提供し得る。ピグメントについての新しい色は、Coombsらの米国特許第5,214,530号(この開示は、本明細書中において、参考として援用される)に議論されるように、ピーク抑制設計を使用して得られ得る。
好ましくは、本発明のフレークは、約3μm未満、より好ましくは、約2μm未満の厚みを有する。長さおよび幅に関して、それぞれのフレークは、フレークを形成するために使用される粉砕プロセスに起因する異なる寸法を有する。しかし、中央フレークサイズ(幅および長さの両方)は、好ましくは、約5μm〜約200μm、より好ましくは、約5μm〜約100μm、最も好ましくは、約18μm〜約22μmである。
フレークの背景色は、異なる原因(例えば、蛍光、リン光、固有吸収、および薄膜干渉)によって生成される。可視回折効果の程度は、格子周波数とともに変化する。例えば、500ln/mm周波数を有するフレークを用いるペイントは、視覚的回折効果を失うが、一方、回折効果は、1400lm/mmまたは2000lm/mmのようなより高い周波数を有するフレークについて高められる。実際に、約3000lm/mmまでの格子微小構造周波数は、多層光学スタックから得られるフレーク上で達成され得る。フレークによって作製される光学的効果は、フレークの幾何学的微小構造に依存して、あつらえられ得る。
(回折組成物)
本発明の回折ピグメントフレークは、インク、ペイントなどのような回折組成物を作製するためにピグメント媒体内に分散され得、これは、幅広い種々の物体または紙に塗布され得る。ピグメントフレークはまた、プラスチック材料のようなピグメント媒体内に分散され得、これは、鋳型成形されるかまたは押出されて、回折効果を有する物体を形成し得る。ピグメントフレークはまた、美容処方物または自動車ペイントのようなピグメント媒体中に分散され得る。
ピグメント媒体に添加される回折ピグメントフレークは、凝固した媒体の表面上に入射する放射線を介して所定の光学的応答を生成する。好ましくは、ピグメント媒体は、熱架橋、熱硬化(therm setting)、または熱溶媒蒸発のような熱的プロセスによって、あるいは光化学架橋によって、乾燥または硬化され得る、樹脂または樹脂の混合物を含む。有用なピグメント媒体としては、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ビニル樹脂、エポキシ、スチレンなどのような種々のポリマー性組成物または有機結合材が挙げられる。これらの樹脂の適切な例としては、メラミン、アクリレート(例えば、メチルメタクリレート)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂、インクおよびペイント処方物(アルキドに基づく)、およびこれらの種々の混合物が挙げられる。ピグメント媒体と組み合わされるフレークは、ペイント、インク、または鋳造可能プラスチック材料として直接的に使用され得る回折組成物を生成する。この回折組成物はまた、従来のペイント、インクまたはプラスチック材料として利用され得る。
ピグメント媒体はまた、好ましくは、樹脂のための溶媒を含む。溶媒について、一般的に、有機溶媒または水のいずれかが使用され得る。揮発性溶媒はまた、媒体内で使用され得る。揮発性溶媒について、揮発性および希釈可能の両方である溶媒(例えば、シンナー)を使用することが好ましい。特に、ピグメント媒体のより速い乾燥は、低沸点組成物(例えば、メチルエチルケトン(MEK))を有する溶媒の量を増加することによって、達成され得る。
さらに、本発明の回折フレークは、種々の添加材料(例えば、異なる色相、色(chroma)、および輝度の従来の非回折フレーク、粒子、または色素)と必要に応じて混合して、所望の色特性を達成し得る。例えば、フレークは、他の従来のピグメント(干渉型または非干渉型のいずれか)とともに混合されて、他の色の範囲を生成し得る。次いで、予め混合された組成物は、従来の様式での使用のために、ペイント、インク、プラスチックまたは他のポリマーピグメントビヒクルのようなポリマー媒体に分散され得る。
本発明の回折フレークと混合され得る適切な添加剤の例としては、以下が挙げられる:層状ピグメント(例えば、多層カラーシフトフレーク、アルミニウムフレーク、グラファイトフレーク、ガラスフレーク、酸化鉄、窒化ホウ素、雲母フレーク、干渉ベースのTiOコート雲母フレーク、多重コート板様ケイ酸材料ベースの干渉ピグメント、金属誘電性干渉ピグメントまたは全誘電性干渉ピグメントなど);および非層状ピグメント(例えば、アルミニウム粉末、カーボンブラック、群青、コバルトベースのピグメント、有機ピグメントまたは有機染料、金紅石または尖晶石ベースの無機ピグメント、天然に存在するピグメント、無機ピグメント(例えば、二酸化チタン、タルク、チャイナクレーなど));ならびにこれらの種々の混合物。例えば、ピグメント(例えば、アルミニウム粉末またはカーボンブラック)は、明るさおよび他の色特性を制御するために添加され得る。
本発明の色回折ピグメントフレークはまた、他の回折フレーク(例えば、2001年7月31日出願の同時係属中の米国出願番号09/919,346(この開示は、以前に本明細書中に参考として援用された)に開示される高反射率無色回折フレーク)とブレンドされ得る。本発明の色ピグメントフレークはまた、種々の暗い無色回折フレーク(例えば、2001年12月20日出願の同時係属中の米国出願番号10/029,405(この開示は、本明細書中に参考として援用される)に開示されるもの)と混合され得る。本発明のフレークと混合され得るこれらのさらなる回折フレークは、対称的なフレーク層構造を有してもよいし、非対称的なフレーク層構造を有してもよい。
本発明のピグメントフレークは、種々の物体または紙(例えば、電動車、貨幣および有価証券、家庭用具、建造物、フローリング、織物、スポーツ用品、エレクトロニックパッケージング/エレクトロニックハウジング、製品の包装、飲料容器など)に適用され得るペイントおよびインキにおいて容易かつ経済的に利用され得る。このフレークはまた、着色プラスチック材料、コーティング組成物、押出し部品、静電コーティング、ガラス、およびセラミック材料の形成において利用され得る。
この回折ピグメントフレークは、凹版印刷、石版印刷、シルクスクリーン、グラビア、ドクターブレード、および湿式コーティングのような印刷プロセスにおける使用に適切なインキを生成するために、ピグメント媒体における予め選択されたサイズおよび充填を有し得る。この回折ピグメントフレークはまた、従来のペイントビヒクルまたは樹脂(例えば、従来の塗装方法に適合性の(特に、ベースコート、ミドルコート、トップコートなどを必要とする電動車または他の構造物を塗装するための)ビヒクルまたは樹脂)中の分散体に適切である。この回折ピグメントはまた、美容処方物、積層フィルムなどにおける装飾用途に適切である。
本発明に従うコート物品としては、表面およびこの表面の少なくとも一部を覆う回折コーティング層を有する物体が挙げられる。このコーティング層は、以前に記載したピグメント媒体およびこのピグメント媒体中に分散した複数の回折ピグメントフレークを含む回折組成物を含む。コート物品は、さらに、回折コーティング層の塗布前に物体に塗布されるベースコーティング層(これは、プレコート、プライムコート、および/またはシーラーコートを含み得る)を含み得る。透明のトップコーティング層(例えば、クリアコート)は、回折コーティング層の上に塗布され得る。このようなコーティング層構造は、代表的に、自動車のような自走車の塗装において生成される。このようなコーティング層構造のさらなる詳細は、Phillipsらの米国特許第5,571,624号(これは、本明細書中に参考として援用される)に記載される。
あるいは、このコート物品は、さらに、回折コーティング層の下の非回折コーティング層、または回折コーティング層を部分的に覆う非回折コーティング層を含み得、これによってこの物体上に回折パターンを形成する。このようなコーティング構造は、図9および10に示されており、これらは、コーティング層の1つが本発明に従う回折フレークを組み込み、そして他のコーティング層が非回折フレークを有する、多重コーティングの塗布を示す。例えば、図9は、表面部分102およびその上の回折コーティング層104を備えるコート物品100を示す。非回折コーティング層106は、部分的に回折コーティング層104を覆い、これによって回折コーティング層104の露出した表面に従う回折パターンを生じる。図10は、逆のコーティング構成を有するコート物品110を示し、ここで、回折コーティング層104が、非回折コーティング層106を覆う。
なおさらなる実施形態において、コート物品は、内部に回折フレークが分散した単一コーティング層を含み得る。必要に応じて、非回折フレークはまた、回折フレークを有するコーティング層中に分散され得る。例えば、図11は、表面部分122およびその上のコーティング層124を含むコート物品120を示す。このコーティング層124は、ピグメント媒体に分散した複数の回折フレーク126および任意の非回折フレーク128を含む。必要に応じて、特定の適用について所望される場合、透明なトップコーティング層130は、コーティング層124上に塗布される。さらに、ベースコーティング層132は、必要に応じて、コーティング層124の塗布の前に表面部分122に塗布され得る。回折ピグメントコーティングまたは彩色を有する印刷物体または不規則な形状の物体は、この物体の領域の主要な呈色が、照射源の並列および観察者の関数であるように、この物体上に連続的なホログラムホイルまたは回折格子ホイルを有する外観を有する。物体上に塗布される本発明の回折組成物はまた、実質的に連続的なトーン光彩回折効果を生じる。この組成物はまた、湾曲した物体に塗布される場合、拡散照射および反射照射または方向性照射の混合下で観察可能な、実質的に均一かつ連続的な色範囲を生じる。
この回折ピグメントフレークは、有価証券におけるさらなる偽造および写真複写を防ぐ特徴、ならびに高価および/または重大な部品および供給品における認証の特徴の提供に適切である。例えば、このピグメントフレークは、第1の領域、第2の領域、ならびにこの第1および第2の領域の少なくとも1つにおけるピグメントフレークのアセンブリを備える、視覚的セキュリティーデバイスを形成するために使用され得る。このピグメントフレークは、このセキュリティーデバイスの外見が、1次またはより高次の反射による光の分散によって支配されるように、ゼロ次の回折光ビームの減少および1次またはより高次の回折光ビームの十分な増加を提供する、実質的に等しく間隔を空けた直線の特徴の配列を備える回折構造を有する。
(回折ホイル)
ここで図12を参照すると、カラーシフト回折ホイル200のコーティング構造が示される。この回折ホイル200は、基板202上に形成され、この基板は、任意の適切な材料(例えば、可撓性PETウェブ、キャリア基板、または他のプラスチック材料)であり得、この上に回折構造(例えば、回折格子パターンまたはホログラフイメージパターン)が形成される。基板202についての適切な厚みは、例えば、0.5ミル〜約7ミルである。
この回折ホイル200は、基板202を覆う反射材層204、反射材層204を覆う誘電層206、および誘電層206を覆う任意の吸収材層208を含む。回折ホイル200の反射材層、誘電層、および吸収材層の各々は、その中で折り返された基板202の回折構造を有する。回折ホイル200の反射材層、誘電層、および吸収材層は、同じ材料で構成され得、そしてフレーク30および50における対応する層について上記した厚みと同じ厚みを有し得る。
この回折ホイル200は、反射材層の材料それ自体が色吸収を有する場合、吸収材層208なしで形成され得る。従って、このような実施形態において、ホイルは、基板202上の反射材層204、および反射材層204上の誘電層206を含む。このようなホイルは、背景色およびこの背景色上の光学的回折効果を示す。このホイルの反射材層および誘電層の各々は、その中で折り返された基板の回折構造を有する。このようなホイルの1つの好ましい実施形態において、誘電層はフッ化マグネシウムを含み、そして反射材層は銅を含む。
この回折ホイル200は、その中に回折構造を有するウェブ上に連続して堆積された上記のような種々の層を用いて、ウェブコーティングプロセスによって形成され得る。種々の層は、このウェブの回折構造上に、従来のCVDまたはPVD蒸着技術によって蒸着されて、このホイルの層において折り返された回折構造を有する薄膜ホイルを形成し得る。この回折ホイル200は、キャリア基板(これは、剥離層のないウェブであり得る)上に形成され得る。あるいは、ホイル200は、このホイルが連続的に除去され、そして物体の表面に付着されるように、ウェブの剥離層上に形成され得る。
例えば、図13は、回折構造およびその上の任意の剥離層224を有するウェブ222上に形成された回折ホイル200を示す。この反射材層204は、任意の剥離層224上に堆積され、続いて誘電層206および吸収材層208が堆積される。このホイル200は、剥離層が使用されない場合に、キャリアとしてウェブ222に付着するように用いられ得る。あるいは、ホイル200は、剥離層が使用される場合、任意の接着層232(例えば、透明な接着剤または紫外(UV)硬化可能接着剤)を介して、透明な基板(示さず)上に積層され得る。この接着層232は、積層の前に、吸収材層208および/または透明な基板上に適用され得る。
ここで図14を参照すると、カラーシフト回折ホイル240(ホイル200と同じ薄膜層を有する)が、回折構造およびその上の任意の剥離層224を有するウェブ222上に形成される代替的実施形態が示される。このホイル240は、吸収材層208がウェブ222上に堆積され、続いて誘電層206および反射材層204が堆積されるように形成される。このホイル240は、キャリアとしてウェブ222に付着するように利用され得、このホイルは、剥離層が用いられない場合、好ましくは透明である。このホイル240はまた、剥離層が使用される場合、接着層244(例えば、ホットスタンプ可能な接着剤、圧感接着剤、永久的な接着剤など)を介して基板(例えば、カウンター表面(countersurface)242)に付着され得る。この接着層244は、反射材層204および/またはカウンター表面242上に適用され得る。
ホットスタンプ適用が用いられる場合、このホイルの光学的積み重ねは、光学的外面が剥離層に隣接するように配置される。従って、例えば、図14のホイル240がウェブ222から剥離される場合、吸収材層208は、光学的にはカウンター表面242の外部にある。1つの好ましい実施形態において、剥離層224は、ウェブ222からの移動後に下の層を保護するために、吸収材層208上に留まる透明なハードコートである。ホットスタンプホイルとしての光学的積み重ねの実行および使用のさらなる詳細は、米国特許第5,648,165号、同第5,002,312号、同第4,930,866号、同第4,838,648号、同第4,779,898号、および同第4,705,300号(これらの開示は、本明細書中に参考として援用される)において見出され得る。
本発明のピグメントフレークおよびホイルは、多くの利益および利点を提供する。このピグメントフレークおよびホイルは、回折効果および薄膜干渉効果の両方を有する。小さすぎて人の眼では解像できないピグメント粒子でさえ、このような粒子がコーティング組成物中に分散されそして物体に適用される場合には、視角と共に変化する回折効果および薄膜干渉効果の両方を示す。
さらに、非干渉薄膜層(例えば、薄膜銅層または特徴的な色を有する化合物(例えば、TiN))は、本発明のフレークおよびホイルの作製の際に回折成分と共に使用され得る。折り返された回折格子との光学的積み重ねからなるピグメントフレークは、エアレススプレー、印刷プロセス、コーティングデバイスなどを使用して、任意のインキ、ペイント、またはコーティングと同様に適用され得る。
本発明のピグメントフレークは、このフレークを含むコーティングにおいて、このフレークの溝配向がランダムであっても、予期しなかった回折色を生じる。さらに、先行技術においては見られなかった新しい色の軌道が、本発明のフレークを含む回折ホイルおよびコーティングの両方によって生じる。このホイルおよびフレークにおける薄膜干渉コーティングの色の軌道は、光学的積み重ねにおける重ね合わせた回折構造の存在によって改変される。大きな色の変化が、拡散状態から高度に方向性の状態への照射変化として、回折ホイルおよびこの回折ピグメントを含むコーティングにおいて見られる。分散光(例えば、蛍光で明るくされた建造物の内部)から鏡面光(例えば、太陽光またはスポットライト)へ移動する場合に、このようなピグメントを含むホイルまたはコーティングにおける、背景色から明るい色への色のバーストが現れる。さらに、本発明のホイルおよびコーティングによって、明るい色が鏡面光下で非常に高視角で生じる。
以下の実施例は、本発明を例示するために提供され、そして本発明の範囲を限定するようには意図されない。
(実施例)
特定の物体の色の特徴を数量化するために、Commission Internationale de l’Eclairage(CIE 1976)によって開発されたL色座標システムを行使することは有用であり、これは、色の値を正確に記載するために産業における標準として現在使用されている。このシステムにおいて、Lは、明るさを示し、そしてaおよびbは、色度座標を示す。選択した回折ピグメントの色の軌道および色度をプロットする以下の実施例のいくつかにおいて記載される種々のa図を作成するために、このLシステムを使用した。
このL色システムは、パラメータΔE abを介して2つの測定値間の色の差異の比較を可能にし、このΔE abは、L色空間において測定される色の変化(例えば、2つの異なるピグメント設計の色の差異)を示す。ΔE abの数値を、測定されたL値を使用して以下の等式:
ΔE ab=[(ΔL+(Δa+(Δb1/2
を介して計算し、ここで、記号Δは、比較される測定値における差異を示す。
以下の実施例のいくつかにおいて記載されるLaneta展色を、Murakamiゴニオスペクトロフォトメーターを使用して分析した。「展色(drawdown)」とは、色を評価するために、紙上に広げたペイントまたはインキのサンプルである。代表的に、展色は、パテナイフまたはスパチュラの縁を用いて、ペイントまたはインキの小球を「ドローダウン(drawing down)」してこのペイントまたはインキの薄膜を得ることによって、形成される。あるいは、この展色は、Lanetaカードを横切り、そしてペイントの小球を通って引くMayerロッドを使用して行った。このMurakamiデバイスは、選択した構成において、測定したサンプルについてのL色空間におけるサンプルの明るさ(L)およびa、b色度座標と関連した、固定した照射位置(45°)および可変の観察者の角度(viewer angle)(−80°〜80°)の情報を提供する。
(実施例1〜7)
回折格子の入射エネルギーと比較したエネルギーの量(効率)は、格子の型およびその溝深さの関数として変化する。結果として、格子は、特定の波長に対して最適化され得る。任意の波長についての種々の回折次数における光のスペクトル分布は、以前に示した式1によって与えられる。
500ln/mm〜3000ln/mmの種々の回折格子(実施例1〜7)を、従来の光学的ソフトウエアを使用してモデリングして、最適な格子の構成を決定した。図15〜20は、モデリングの結果のグラフであり、実施例1〜7の種々の回折格子についての種々の波長の関数としての回折角を示す。特に、図15〜20は、垂直および45°の入射での種々の可視波長(400nmのスミレ色〜700nmの赤)についての回折角を示す。以下の表1は、対応する図番号と共に特定の実施例番号、およびモデリングした格子構造を示す。
Figure 2009211077
図15に示される500ln/mm格子(実施例1)について、所定の回折角(例えば40度(垂直の入射で))での3次垂直入射曲線は、2次垂直入射曲線と重複した色を有する。同じ効果が、45度の入射について生じる。1000ln/mm格子(実施例2)の場合において、重複する色は、図16に示されるように、垂直および45°の入射で1次および2次について生じる。図17〜20において示されるように、1400ln/mm以上の回数(実施例3〜7)では、重複は観察されない。
(実施例8)
アルミニウム処理した1400ln/mmの正弦回折格子を、従来の光学的ソフトウエアを使用してモデリングした。図21および22は、400、550および700nmの波長の光についての、垂直および60°の入射での、種々の溝深さでの回折の理論効率(反射度のパーセント)を示すグラフである。このモデリングの結果は、約160nmに近い溝深さが、最小のゼロ次および最大の1次の寄与を得るための良好な折り合いであることを示し、これによってこの格子の回折効果が増大する。
同じ基準を使用して、最適な溝深さが、2000ln/mm格子については約220nmであり、そして3000ln/mm格子については約116nmであることを決定した。
(実施例9〜10)
アルミニウム処理した1000ln/mmを有する正弦回折格子(実施例9)、およびアルミニウム処理した1000ln/mmを有する方形波回折格子(実施例10)を、従来の光学的ソフトウエアを使用してモデリングした。実施例10の格子は対称的であり、線の頂部の長さと格子周期との間の比が0.5に等しい。図23および24は、550nmについての、種々の溝深さおよびある程度垂直な入射での、実施例9および10の格子の理論効率を示すグラフである。
このモデリングは、1000ln/mmを有する方形波格子について、その次数の最大値が、約150nmの溝深さで得られ、この溝深さはゼロ次の最小値に対応することを示した。同じ回数で、正弦格子は、約200nmの溝深さで、1次の最大値およびゼロ次の最小値を示す。しかし、方形波構成とは対称的に、正弦格子における連続的な次数は、同じパターンに従わない。溝の回数、形状、深さなどの賢明な構成によって、ピグメント適用における類似の回折効果を達成し得る。
(実施例11)
図25〜27は、本発明に従って作製された種々の粉砕回折フレークの走査電子顕微鏡によって撮影した写真である。詳細には、図25は、1400ln/mmの線形格子を用いたフレークを示し、図26は、1400ln/mmの交差格子を用いたフレークを示し、そして図27は、2000ln/mmの線形格子を用いたフレークを示す。全ての場合において得られる微小構造は、非常に均一であり、格子基材の良好な複製が示される。
(実施例12)
図28〜29は、3000ln/mmの線形格子を有する粉砕回折フレークの走査電子顕微鏡によって撮影した写真であり、以下のコーティング設計により作製されている:
2QWOT ZnS(687nm)/160nm Al/2QWOT ZnS(687nm)
図28および図29により、高い格子周波数に対してでさえ、格子パターンを、格子フレークを作製するための使用される薄膜スタック(stack)に移すことが可能であることが確証される。得られた微小構造は、非常に均一であり、格子基材の良好な複製が示される。
(実施例13)
図30は、格子基材から離層された回折ピグメント粒子のコーティングの微小構造を示す、透過型電子顕微鏡写真の断面である。特に、この顕微鏡写真は、2000ln/mmの格子402を使用して、誘電層406および反射層408を含む多層コーティング構造を形成したことを示す。離層領域404は、格子402と誘電層406との間に示される。この誘電層406は、550nmにてZnSの7 QWOT層であり、そして反射層408は、80nmのAl層である。ZnS層の物理的厚みは、約410nmであり、従って、約490nmの物理コーティングの厚みを有する薄膜スタックが提供される。この顕微鏡写真は、格子402のプロフィールに従うコーティング層を示し、従って、コーティングされていない格子の回折の光学的効果を維持する。
(実施例14)
回折ピグメントは、以下の薄膜層を50nmのNaCl剥離層(これは線形の回折格子ポリマーウェブ基材を覆っている)上に堆積(deposit)することによって形成される:
5nm Cr/2QWOT MgF(600nm)/160nm Al/2QWOT MgF(600nm)/5nm Cr
堆積層は、温水に曝され、剥離層を溶解し、それによって、薄膜スタックをフレークに転換する。このフレークは、物体に塗布される場合、回折の光学的効果とともに、金から銀へのカラーシフト背景を示す。
(実施例15)
回折ピグメントは、以下の薄膜層を、60nmのNaCl剥離層(これは1400ln/mmの線形の格子ホイル基材を覆っている)上に堆積することによって形成された:
8nm Cr/X QWOT ZnS(Ynm)/160nm Al/X QWOT ZnS(Ynm)/8nm Cr
各サンプルについて表2に列挙された、それぞれのペアー値(pare value)(X,Y)を伴う、上記の光学的コーティング設計を有する3つのピグメントサンプル(A〜C)が、形成された。
Figure 2009211077
格子ホイル基材および堆積層は、水に曝され、NaCl層を溶解し、それによって、薄膜スタックを大きく広範な粒子サイズを有するフレークに変換し、このフレークは続いて断片化されて、回折フレークを形成した。このフレークは、約20ミクロンの平均粒子サイズを有するように超音波的に粉砕される。粉砕された後、このフレークは、ペイントビヒクルに添加され、展色(drawdown)の際にLanetaカードに塗布される。ペイントビヒクル中の回折フレークのいくつかはまた、異なる形状で物体に噴霧され、装飾的な外観を示す。
ピグメントサンプルA、BおよびCは、それぞれ、赤色、緑色および紫色の背景色を有した。サンプルが厳密に散光(diffuse light)で観察される場合、最も強い色とみなされる背景色は、回折したウェーブレットビームのいくつかに対するフィルタとして働く。回折効果と組み合わせたこの背景色の結果として、コーティングされた物体が異なる角度で観察される場合、色の特有の全範囲が生じる。
図31〜33は、それぞれ、ピグメントサンプルA〜Cの色軌跡(color
trajectory)および色度をプロットするa図である。測定を、Murakamiゴニオスペクトロフォトメーターを用いて行った。背景色からの「フィルタリング」効果は、図31〜33のaプロットに示される色移動(color travel)で明確に示される。例えば、ピグメントサンプルA(図31)は、図の第一象限(+b、+a)および第四象限(+a,−b)において移動し、黄色、緑色および青色をフィルタリングする。ピグメントサンプルB(図32)は、図の第二象限(+b、−a)および第三象限(−a,−b)に基本的にとどまり、オレンジ色、赤色、および紫色の大部分をフィルタリングする。このピグメントサンプルC(図33)は、図の4つ全ての象限における色移動を示す。
サンプルA〜Cにおける背景色は、干渉回折効果(干渉屈折効果)によって生成される。赤色および緑色(サンプルAおよびB)が、スペクトル的に純粋な(saturated)色であるが、紫色(サンプルC)は、紫色光ビームおよび赤色光ビームを混合することによって得られる、非スペクトル的にあまり純粋でない色であることが、図31〜33のa図から明らかになり得る。
(実施例16)
カラーシフト回折ピグメントを、以下の薄膜層を60nmのNaCl剥離層(これは1400ln/mmの線形格子ホイル基材を覆っている)上に堆積することによって形成する:
8nm Cr/X QWOT MgF(Ynm)/160nm Al/X QWOT MgF(Ynm)/8nm Cr
各サンプルについて表3に列挙された、それぞれのペアー値を有する、上記の光学的コーティング設計を有する3つのピグメントサンプル(D〜F)を、形成した。
Figure 2009211077
格子ホイル基材および堆積層は、水に曝され、NaCl層を溶解し、それによって、薄膜スタックを大きく広範な粒子サイズを有するフレークに変換し、このフレークを続いて断片化して、回折フレークを形成した。このフレークは、約20ミクロンの平均粒子サイズを有するように超音波的に粉砕される。粉砕された後、このフレークを、ペイントビヒクルに添加し、展色の際にLanetaカードに塗布する。ペイントビヒクル中の回折フレークのいくつかはまた、異なる形状で物体に噴霧され、装飾的な外観を示す。
ピグメントサンプルD、EおよびFは、それぞれ、緑色/青色、マゼンタ色/緑色、および赤色/金色のカラーシフト背景色を有した。観察角度が0°からより高い角度に変化する場合、ピグメントサンプルにおける背景色は、対応するより高い波長(例えば、緑色)からより低い波長(例えば、青色)に移動する。
図34〜36は、それぞれ、ピグメントサンプルD〜Fの色軌跡および色度をプロットしているa図である。測定を、Murakamiゴニオスペクトロフォトメーターを用いて行った。「フィルタリング」効果は、図34〜36のa図に示される色移動で明確に示される。例えば、ピグメントサンプルD(図34)は、第二象限(+b、−a)にとどまったままである。ピグメントサンプルE(図35)およびF(図36)は、第一象限(+b、+a)および第四象限(+a,−b)において移動するが、それらの軌跡は、非常に異なる。
特定のカラーシフトコーティング設計について、非格子ペイント展色は、高い角度についての0に近い値(退色、ほとんど非色度)と45°照射/観測鏡面反射における特定の設計の色相の特徴のプロットの点との間の線を示すにすぎない。回折効果なしに、平坦な小板様ピグメントについて、カラーシフトコーティング設計は、光干渉によってカラーシフトピグメントを生成する。回折がカラーシフト干渉現象に追加される場合、これら2つの異なる現象の重ね合わせによって得られる光学的印象は、珍しく、そして非常に魅力的である。わずかにシフトする回折ピグメントの場合、背景色は、回折したウェーブレットビームのいくつかについてのフィルタとして作用し、フィルタの色が、観測角度とともに変化する。
(実施例17〜19)
銅に基づく回折ピグメントは、薄膜層を剥離層(これは、1400ln/mmの周波数を有する線形回折格子ポリマーウェブ基材を覆っている)の上に堆積することによって形成された。銅ベースの回折ピグメントを形成する際に使用されるコーティング設計は、以下の通りである:
2QWOT ZnS(450nm)/Cu/2QWOT ZnS(450nm)(実施例17);
2QWOT ZnS(750nm)/Cu/2QWOT ZnS(750nm)(実施例18);および
8nm Cr/2QWOT ZnS(750nm)/Cu/2QWOT ZnS(750nm)/8nm Cr(実施例19)。
Cu層の厚みは、実施例17〜19のコーティング設計について、約60nmと約100nmとの間である。堆積された層を、温水に曝し、剥離層を溶解させ、それによって、薄膜フィルムをフレークに変換する。
実施例17のピグメントフレークは、物体に塗布した場合に、回折光学的効果とともに、青銅色の背景色を示し、一方、実施例18のピグメントフレークは、物体に塗布される場合、回折光学的効果とともに、薄緑色(olive)背景色を示した。実施例18のピグメントフレークは、ZnS層の光学的厚みの変化に起因して、実施例17のピグメントフレークとは異なる背景色を示す。実施例19のピグメントフレークは、物体に塗布される場合、回折光学的効果を有する緑色がかった青色(teal)/青色背景色を示した。
図37は、実施例17〜19のピグメントフレークの色軌跡および色度をプロットする図である。図37のa図は、実施例17および18におけるZnS層の異なる光学的厚みに起因する背景色の変化、および部分的な吸収材(Cr)がコーティング設計に添加される場合の色の変化(実施例19)を示す。実施例18と実施例19との間の回折色移動の違いが、光のいくつかに部分的に反射するCr層に起因することに注目するべきである。Cr層が部分的に透過性であるので、いくつかの光は、誘電/反射材(ZnS/Cu)スタックに入る前に、この層によって、反射/回折される。
(実施例20〜22)
色回折ピグメントを、1400ln/mmの周波数を有する裏打ち回折格子ポリマーウェブ基材を覆う剥離層上に、薄膜層を堆積することによって形成した。回折ピグメントを形成する際に用いられるコーティング設計は、以下である:
8nm Cr/4QWOT ZnS(500nm)/Al/4QWOT ZnS(500nm)/8nm Cr(実施例20);
8nm Cr/4QWOT MgF(530nm)/Al/4QWOT MgF(530nm)/8nm Cr(実施例21)
非回折カラーシフトピグメントを、比較の目的で、1400ln/mmの周波数を有する平滑なポリマーウェブ基材を覆う剥離層上に、薄膜層を堆積することによって形成した。非回折カラーシフトピグメントを形成する際に用いられるコーティング設計は、以下である:
8nm Cr/4QWOT MgF(530nm)/Al/4QWOT MgF(530nm)/8nm Cr(実施例22)
実施例20のピグメントフレークは、回折光学効果と共にわずかにシフトしている緑の背景色を示し、一方、実施例21のピグメントフレークは、回折光学効果と共にわずかにシフトしている緑/青の背景色を示した。実施例22のピグメントフレークは、回折光学効果なしで、カラーシフトしている緑/青の背景色を示した。
図38〜40は、実施例20〜22のピグメントフレークのカラー軌跡および色度を、それぞれプロットした、a図である。測定を、Murakamiゴニオスペクトロフォトメーターを用いて行った。図38〜40のa図は、入射光が、サンプル物体の垂線に関して0〜70°に変化する場合の、実施例20〜22のそれぞれのピグメントフレーク組成物でコーティングした固定されたサンプル物体、および固定された観察者の角度(12〜70°)についての、色(a軸、b軸)の変化を示す。
ピグメントの対応する色の変化を、一連の線または軌跡として、図38〜40のa図にプロットする。この一連の線または軌跡は、これらのピグメントでコーティングした湾曲した物体を見る場合に、観察者が経験し得る色の変化を理解する際の補助として用い得る。各々の軌跡は、一連の照明の角度で測定された色の値に関連している軌跡の連続した線と共に、観察者の方向の一定値の角度を示し、ここで、実際に測定された値は、線上のシンボルマークの位置に対応する。a図における異なるシンボルマークは、特定の軌跡について、12°、20°、30°、40°、50°、60°、および70°の固定された観察者の方向を示す。カラーコーディネーションを、機器の照明源方向を各観察者の方向に対して0°から70°まで10°ずつ段階的に増加させた場合の、ピグメントの完全なスペクトル応答から計算した。特定の軌跡上の共通するシンボルマークは、照明源方向に対応する各々の増加を示す。従って、照明源の角度の固有の値を、各々の軌跡の末端の始まりまたは終わり(これは図において0または70のいずれかとして標識される)のいずれかから計数することにより、各々のシンボルマークで決定し得る。従って、平面に関する観察者の所定の方向について、垂線の方向から70°の入射角まで照明源を掃引することは、軌跡に対応して観察される色を生じる。
観察者によるピグメントでコーティングした湾曲した物体の認識を適切なものとするためには、単一の軌跡は、観察者および照明の角度変化の両方として不十分である。観察者および照明の条件において増分変化を伴ってトラバースする、a図におけるカラースペースは、所定の表面湾曲に対応する。このことは、本発明のピグメントの1つの利点およびそのペイントにおける用途を示す。このペイントとは、ある範囲の光の条件にわたって物体の湾曲を強調するためのものである。カラースペースを、第1の軌跡上の任意の点でプロットまたは誘導し得、ここで、軌跡上の移動は、表面垂線に関する照明源の傾きの変化を示す。隣接する軌跡は、固定した観察者が、ある物体の湾曲を見る場合に生じるような、観察者の方向の変化に対応する。
図38のa図に示した軌跡は、実施例20の非シフト回折ピグメントの緑の背景色に特徴的なカラーコーディネートに関して中心をおいたカラースペースの領域に向かってオフセットされている。これらの軌跡はまた、鏡面反射点に近接する各々のループの頂点と共に、外向きに広がるループを形成する。これらの軌跡の間の分離は、特に、鏡面反射に対応する領域における、より高いカラーコントラストを予想する。実施例20の非シフトピグメントは、散乱光において満足のいく色を有するのみならず、輝く日光のような強力な照明源が存在する場合に、湾曲した領域について高いレベルのコントラストもまた提供する。
非回折カラーシフト緑/青ピグメント(実施例22)について、図40のa図に示した軌跡は、反射条件で頂点を有する楕円様形を形成し、そして起点に関して固定された反対の頂点を有する、規則正しい反時計回りの様式で進行する。軌跡の規則正しい進行は、より広い範囲の照明および観察者の条件を通して高いカラーコントラストを予想する。
回折カラーシフト緑/青ピグメント(実施例21)について、図39のa図に示した軌跡は、規則正しい形でも普通の形でもなく、これらの方向または移動に関してパターンも存在しない。これらの軌跡の不規則な経路は、最小限の重なりを有する、より広い領域のカラースペースを網羅しており、このことは、湾曲した表面に沿って、より高いカラーコントラストならびに独特の色を提供する。従って、回折カラーシフト緑/青ピグメントでコーティングした湾曲した表面に沿った種々の領域は、異なる組の色を示す。
回折効果および干渉効果が合わさる場合、色の範囲は、一般的に、点に関して対称ではなく、むしろ観察者および照明の各位置について固有である。カラーシフト効果と回折色とを合わせることにより、物体の湾曲および深さは、拡散する光条件および非常にコリメートされた光条件の両方において変化する、固有のカラースキームにおいて強調される。
本発明は、その精神または本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具現化され得る。記載された実施形態は、全ての点で、単なる例示とみなされるべきであり、限定とみなすべきではない。従って、本発明の範囲は、先の記載によりむしろ、添付の特許請求の範囲によって示される。特許請求の範囲の意味および等価な範囲の中で起こる全ての変化は、特許請求の範囲の範囲内に含まれる。
回折構造を上に有する、多層色回折ピグメントフレークおよびホイルが提供される。回折ピグメントフレークは、反射コア層の反対側に対称的に積み重なったコーティング構造を有し得るか、反射層の1つの側に非対称的に積み重なったコーティング構造を有し得るか、または反射コア層の周りで、1つ以上のカプセル化コーティングを用いて形成され得る。回折ピグメントフレークは、液体媒体(例えば、ペイントまたはインク)に分散されて、種々の物体に対する引き続く適用のための回折組成物を生成し得る。ホイルは、種々の物体に積層され得るかまたはキャリア基材上に形成され得る。回折ピグメントフレークおよびホイルは、その上に種々の回折構造を有して形成されて、選択された光学的効果を生成し得る。
20 回折格子
22 回折構造
24 多層コーティング
26 表面
30 回折フレーク
100 コート物品
106 非回折コーティング層
104 回折コーティング層
102 表面部分
110 コート物品
104 回折コーティング層
106 非回折コーティング層
102 表面部分
122 表面部分
124 コーティング層
120 コート物品
126 回折フレーク
128 非回折フレーク
130 トップコーティング層
132 ベースコーティング層
200 回折ホイル

Claims (5)

  1. 回折ホイルであって、該回折ホイルが、
    反射材層、および
    該反射材層の上の、誘電層、
    を備え、
    ここで、該ホイルが、その上に回折構造を有し、そして背景色および該背景色を越える光学的回折効果を示す、
    回折ホイル。
  2. 請求項に記載の回折ホイルであって、該回折ホイルが、
    基材であって、上に回折構造を有する表面を有し、前記反射材層が、該基材の表面の上にある、基材、および
    前記誘電層の上の、吸収材層、
    を備え、
    ここで、該誘電層は、該ホイルが第1角度の入射光または視線において、少なくとも第1背景色を示すように、選択された設計波長における光学的厚みを有し、そして
    ここで、該反射材層、誘電層および吸収材層のそれぞれが、その中に反復された回折構造を有する、
    回折ホイル。
  3. 請求項に記載の回折ホイルであって、該回折ホイルが、
    基材であって、上に回折構造を有する表面を有し、前記反射材層が、該基材の表面の上にある、基材
    を備え、
    ここで、該反射材層および誘電層のそれぞれが、その中に反復された回折構造を有する、
    回折ホイル。
  4. 請求項に記載のホイルであって、ここで、前記回折構造が、回折格子パターンまたはホログラフィー画像パターンである、ホイル。
  5. 請求項に記載のホイルであって、ここで、前記回折格子パターンが、1mm当たり約1100より多い格子線を有する、ホイル。
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