JP2009210506A - 免疫クロマトグラフィー用展開溶媒 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】検出物質と特異的に結合する第1抗体または第1抗原が固定された膜担体と、該被検出物質と特異的に結合する第2抗体または第2抗原が固定された不溶性担体とを備えた免疫クロマトグラフィー用試験片を用いて該被検出物質を免疫学的に測定する方法において、該被検出物質と該第2抗体または第2抗原を介して特異的に結合した該不溶性担体を、熱変性アルブミンを含有する展開溶媒で展開せしめる免疫学的測定方法。
【選択図】なし
Description
この問題を解決するために、特許文献1は、展開用溶媒中にアルギニンを存在させる方法が開示されている。この方法において得られる高感度も未だ改善される余地がある。
一方、ラテックス凝集法等の免疫学的凝集反応においては、特許文献2記載のように、抗原抗体反応時に熱変性アルブミンを存在させることで非特異的反応を抑制できることは知られていた。しかし、免疫クロマトグラフ法において抗体または抗原が担持された不溶性担体が膜担体上を展開しているときに熱変性アルブミンを存在させることで高感度化できることは知られていなかった。
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第3に、熱変性アルブミンを含有する水溶液の免疫クロマトグラフィー用展開溶媒としての使用によって達成される。
本発明に用いる熱変性アルブミンの作用機序は必ずしも明確ではないが、高分子化されたアルブミンと不溶性担体との間で何らかの相互作用により、凝集を促進し、感度増強に作用しているものと思われる。
原料アルブミンは、好ましくは50〜100℃、より好ましくは60〜80℃の温度で熱処理され、上記熱変性アルブミンを与える。50℃未満では熱処理の効果が弱く長時間の処理を要し、100℃より高い場合ではアルブミンの凝集が著しく析出してしまう。温度以外の熱処理の諸条件および変性アルブミンの精製法はそれ自体公知であり、例えば特開平11−23573号公報に開示されている。
免疫クロマトグラフィーの手法は公知であるが、その原理を模式的に図1に示す。
図1の試料添加部位(1)に、検査対象となる被検出物質についての検体の試料が滴下される。
また、検体から検出する被検出物質としては、例えばインフルエンザウイルス抗原、アデノウイルス抗原、RSウイルス抗原、HBc抗原、HCV抗原、HIV抗原等のウイルス抗原、クラミジア・トラコマティス抗原、溶連菌抗原、百日咳菌抗原、ヘリコバクター・ピロリ抗原、レプトスピラ抗原、トレポネーマ・パリダム抗原、トキソプラズマ・ゴンディ抗原、ボレリア抗原、炭疽菌抗原、MRSA抗原等の細菌抗原、PSA、CEA、AFP等の腫瘍マーカー、抗HIV抗体、抗HBV抗体、抗HCV抗体、抗ダニアレルゲン抗体、抗スギ花粉アレルゲン抗体等の免疫グロブリン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの検体は、それ自体公知の方法により採取することができる。あるいは、採取した検体を公知の検体処理試薬組成物により処理して試料しても良い。
検体はそれ自体公知の検体処理試薬組成物により処理して試料とすることができる。
試料添加部位(1)に滴下された試料は、被検出物質と特異的に結合する抗体または抗原(それぞれ第2抗体、第2抗原という)が固定された不溶性担体が保持された標識物質保持部位(2)を経てクロマトグラフィー媒体(3)を介して吸収部位(5)の方向に試料が展開される。検出部位(4)には被検出物質と特異的に結合する抗体または抗原(それぞれ、第1抗体、第1抗原という)が固定されている。被検出物質をクロマトグラフィー媒体(3)で展開するための、そして検出部位(4)を有する担体は膜担体からなる。
検体中に対象とする被検出物質が混入している場合には、被検出物質と第2抗体あるいは第2抗原が反応し、これらの複合体が検出部位(4)で第1抗原または第1抗体によって補足され、着色のバンドが現れる。(4)に現れたバンドの色調等により、検体中に含まれる被検出物質の量を概略的に把握することができる。
標識物質保持部位(2)に使用する第2抗原または第2抗体、及び検出部位(4)に使用する第1抗原または第1抗体は、被検出物質の異なる部位と結合するものであれば良い。
具体的には、抗PSA抗体、抗AFP抗体、抗CEA抗体、抗アデノウイルス抗体、抗インフルエンザウイルス抗体、抗HCV抗体、抗IgG抗体、抗ヒトIgE抗体等、及びこれらの断片(抗原と結合能を有するもの;例えばF(ab)’2又はFab’等のいずれでも良い。)が挙げられる。
また、抗原としても、被検出物質と特異的に結合する抗原が用いられる。例えばアデノウイルス、インフルエンザウイルス、C型肝炎ウイルス等のウイルス由来蛋白質、ヒトアルブミン、リウマチ因子等の血液由来たん白質、ダニアレルゲン、スギ花粉アレルゲン等が挙げられる。
また、クロマトグラフィー媒体のための膜担体としては、毛細管現象により試料検体を吸収し流動させることができるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ナイロン、ポリエーテルスルホン、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ガラス繊維、ポリオレフィン、セルロース、これらの混合繊維からなる人工ポリマーからなる群から選択される。
(1)クロマトグラフィー媒体上への判定部の作製
膜担体としてニトロセルロースからなるシート(ミリポア社製、商品名:HF120,300mm×25mm)を用いた。5重量%のイソプロピルアルコールを含むリン酸緩衝液(pH7.4)で1.0mg/mlの濃度になるようにマウス由来抗前立腺癌特異抗原(PSA)モノクローナル抗体(第1抗体)を希釈した。この溶液150μLを膜担体上に1mmの幅で塗布し、50℃で30分間乾燥させた。乾燥後、0.5重量%のカゼイン(和光純薬工業社製)を含むリン酸緩衝液(pH7.4)100mlに室温で30分間浸漬し、ブロッキングを行った。ブロッキング後、0.05重量%のTween20を含有するリン酸緩衝液(pH7.4)で洗浄し、室温で一晩乾燥させ、クロマトグラフィー媒体を作製した。
金コロイド懸濁液(田中貴金属工業(株)製:LC40nm)0.5mlに、リン酸緩衝液(pH7.4)で0.1mg/mlの濃度になるように希釈したマウス由来抗PSAモノクローナル抗体(第2抗体)を0.1ml加え、室温で10分間静置した。次いで、10重量%の牛血清アルブミン(BSA)を含むリン酸緩衝液(pH7.4)を0.1ml加え、更に室温で10分間静置した。その後、十分撹拌した後、8,000×gで15分間遠心分離を行い、上清を除去した後、1重量%のBSAを含むリン酸緩衝液(pH7.4)を0.1ml加えた。以上の手順で第2抗体が固定された不溶性担体の溶液、つまり標識物質溶液を作製した。
上記作製した標識物質溶液300μLに300μLの10重量%トレハロース水溶液と1.8mLの蒸留水を加えたものを15mm×300mmのグラスファイバーパッド(ミリポア社製)に均一になるように添加した後、真空乾燥機にて乾燥させ、標識保持部材を作製した。
次に、バッキングシートから成る基材に、上記作製したクロマトグラフィー媒体、標識物質保持部材、試料を添加する部分に用いるサンプルパッド(ミリポア社製:300mm×30mm)、展開した試料や標識物質を吸収するための吸収パッドを貼り合わせた。そして、裁断機で幅が5mmとなるように裁断し、免疫クロマトグラフィー用試験片とした。
150mMのNaClを含むHEPES緩衝液(pH8.0)10mLに10重量%となるように牛血清アルブミン(BSA)を入れ、70℃で1時間、インキュベーションした。この熱変性BSAの分子量をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動で確認したところ、20kDa以上であった。この熱変性BSAを150mMのNaClを含むHEPES緩衝液(pH8.0)に1.5重量%となるように加え、展開用溶媒とした。
上記作製した免疫クロマトグラフィー用試験片を用いて、以下の方法で血液中のPSAの存在の有無を測定した。
即ち、血清中のPSA濃度が0.1ng/mL未満のものを陰性検体、PSA濃度が0.5ng/mLのものを陽性検体1、PSA濃度が5ng/mLのものを陽性検体2として、60μLの展開用溶媒をサンプルパッド上に載せた後、陰性検体または陽性検体80μLを免疫クロマトグラフィー用試験片のサンプルパッド上に載せて展開させ、15分後に目視判定をした。テストラインの赤い線を確認できるものを「+」、赤い線は確認できるが、非常に色が薄いものを「±」、赤い線を確認できないものを「−」とした。その結果を表1に示す。
実施例1で用いた熱変性BSAに代えて、BSAを50℃で5時間、インキュベーションした熱変性BSAを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で測定を行った。尚、この熱変性BSAの分子量は20kDa以上であった。結果を表1に示す。
実施例1で用いた熱変性BSAに代えて、BSAを100℃で15分間、インキュベーションした熱変性BSAを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で測定を行った。尚、この熱変性BSAの分子量は20kDa以上であった。結果を表1に示す。
実施例1で用いた熱変性BSAに代えて、熱変性処理していないBSAを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で測定を行った。結果を表1に示す。
実施例1で膜担体に塗布した抗体を、マウス由来抗癌胎児性抗原(CEA)モノクローナル抗体(第1抗体)に変更し、金コロイドに固定した抗体をマウス由来抗CEAモノクローナル抗体(第2抗体)に変更し、さらに測定に用いた被検体を、陰性検体がCEA濃度0.5ng/mL未満の血液、陽性検体1がCEA濃度2ng/mLの血液および陽性検体2がCEA濃度10ng/mLの血液に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で測定を行った。結果を表2に示す。
実施例4で用いた熱変性BSAの代わりに、熱変性処理していないBSAを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で測定を行った。結果を表2に示す。
2 標識物質保持部位
3 クロマトグラフィー媒体
4 検出部位
5 吸収部位
Claims (5)
- 熱変性アルブミンを含有することを特徴とする免疫クロマトグラフィー用展開溶媒。
- 熱変性アルブミンが50〜100℃の間の温度で変性されたアルブミンである請求項1に記載の展開溶媒。
- 被検出物質と特異的に結合する第1抗体または第1抗原が固定された膜担体と、該被検出物質と特異的に結合する第2抗体または第2抗原が固定された不溶性担体とを備えた免疫クロマトグラフィー用試験片を用いて該被検出物質を免疫学的に測定する方法において、該被検出物質と該第2抗体または第2抗原を介して特異的に結合した該不溶性担体を、熱変性アルブミンを含有する展開溶媒で展開せしめることを特徴とする免疫学的測定方法。
- 熱変性アルブミンが50〜100℃の間の温度で変性されたアルブミンである請求項3に記載の免疫学的測定方法。
- 熱変性アルブミンを含有する水溶液の免疫クロマトグラフィー用展開溶媒としての使用。
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