JP2009209453A - 錫めっき膜および該錫めっき膜を形成する錫めっき浴 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】リード基材22を被覆する錫めっき膜26には、非イオン性の高分子微粒子28が含有されている。高分子微粒子28は、錫めっき膜26の加わる応力によって変形して、該応力を緩和する。これによって、ウィスカの生成を抑制することができ、錫めっき膜26で被覆した外部リードを備える電子部品においては、ウィスカに起因する短絡の発生を防止し得る。
【選択図】図1
Description
従って、請求項1に係る発明によれば、ウィスカの生成原因となる錫めっき膜に加わる応力を、該錫めっき膜に含有されている高分子微粒子が変形して緩和することでウィスカの生成を抑制し得る。すなわち、鉛やビスマスを用いることなくウィスカの生成を抑制することができるから、環境を汚染することはなく、かつコストを低廉に抑えることができる。
円形度=〔粒子を撮像した画像の周囲長と同じ投影面積の真円の直径から算出した周囲長〕/〔粒子を撮像した画像の周囲長〕
としたときに、該円形度が0.8〜1.0であることを要旨とする。
従って、請求項2に係る発明によれば、高分子微粒子の高い球状性および錫間への取り込まれ易さによって、錫めっき膜に加わる多方向からの応力を緩和することができる。
従って、請求項3に係る発明によれば、ウィスカの生成を好適に抑制すると共に、高分子微粒子に起因する錫めっき膜の剥離を防止し得る。
従って、請求項4に係る発明によれば、ウィスカの生成を好適に抑制し得る。
従って、請求項5に係る発明によれば、被めっき部に、高分子微粒子を含有する錫めっき膜を低コストで付与することができる。また、アノードに析出するビスマス等の金属系含有物を用いていないので、アノードおよび錫めっき浴の管理を容易化し得る。
円形度=〔粒子を撮像した画像の周囲長と同じ投影面積の真円の直径から算出した周囲長〕/〔粒子を撮像した画像の周囲長〕
としたときに、該円形度が0.8〜1.0であることを要旨とする。
従って、請求項6に係る発明によれば、高分子微粒子の高い球状性および錫間への取り込まれ易さによって、錫めっき浴中で安定的に分散するから、錫めっき膜の全体に高分子微粒子を均等に分散して含有させることができる。
従って、請求項7に係る発明によれば、ウィスカの生成を好適に抑制すると共に、高分子微粒子に起因する剥離が防止される錫めっき膜を被めっき部に付与し得る。
円形度=〔粒子を撮像した画像の周囲長と同じ投影面積の真円の直径から算出した周囲長〕/〔粒子を撮像した画像の周囲長〕・・・式1
で定義した値としたときに、該円形度が0.8〜1.0であるのが好ましく、より好ましくは0.9〜1.0の範囲である。なお、円形度は、真円が「1」で、形状が複雑になるほど小さい値になる。すなわち、円形度が0.9〜1.0の範囲では、粒子の球状性は極めて高く、錫めっき浴中においては極めて安定的に分散して、リード基材22に形成される錫めっき膜26の全体に均等に分散させて含有させ得る。また、球状性の高い高分子微粒子28は、錫めっき膜26内に存在している状態で、該錫めっき膜26に係る多方向からの応力に対して良好に変形して応力緩和に寄与し得る。これに対し、円形度が0.9未満であると、粒子が球形でなくなるため、錫めっき膜26内での高分子微粒子28の安定した分散が阻害されたり、錫めっき膜26内に高分子微粒子28が存在している状態で、該粒子28における径が短かい部分と長い部分とによって応力緩和の度合が異なってしまう。
J.Appl.Polym.Sci.,71,747-759(1999)
(1)ポリエチレンやポリプロピレンを高分子として用いる場合は、水中で分散剤や乳化剤と共に高分子を融点以上の温度で攪拌した後、該高分子の融点未満まで冷却して球状の微粒子状に分散して得た分散体をろ過、乾燥して、所要の平均粒子径とされた高分子微粒子28を得ることができる。
(2)ポリブタジエンを高分子として用いる場合は、下記の非特許文献2に記載の懸濁蒸発法によって高分子微粒子28の好適な製造が可能である。
(3)ポリアク(メタ)クリロイルポリマーまたはポリカルボン酸ビニルを高分子として用いる場合は、夫々のモノマーを相分離する粘性媒体中に添加し、懸濁重合により高分子微粒子28を得ることができる。またモノマーを相分離する際に、粘性媒体中にジビニルベンゼンのような架橋モノマーを添加してもよい。
(4)ポリイミド、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン6およびナイロン6,6を高分子として用いる場合は、下記の非特許文献3に記載のように、モノマーの重縮合過程において触媒と分散媒とを添加することで高分子微粒子28を製造可能である。
J.Chromatography A,1082,185(2005) 高分子論文集、64,50(2007)
(1)実施例において高分子微粒子28の製造方法は例示であって、その他各種の方法を採用可能である。また、前記高分子微粒子28の形状については、球状粒子が好ましいが、錫めっき膜26に加わる応力に対して変形可能であり、該応力を緩和できるものであれば、例えばドーナツ状の扁平粒子、金平糖状粒子その他不定形粒子を採用することが可能である。
(2)実施例で外部リード20の断面形状は矩形形状であったが、これに限定されるものではなく、例えば、円形状または六角形等の多角形状等、その他の形状であってもよい。
(3)実施例における電子部品10である半導体装置のパッケージは、SOP(Small Outline Package)である(図5参照)が、本発明はこれに限定されるものではない。例えばQFP(Quad Flat Package)等の表面実装型のパッケージや、DIP(Dual in Line Package)等の挿入型のパッケージの半導体装置にも適用可能であって、パッケージ形態について限定されない。
(4)実施例では、錫めっき膜26は外部リード20に付与されたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、プリント基板等の電子部品を搭載する部材に形成された配線を被覆するように錫めっき膜26を付与する等、通常の錫めっき膜と同様に幅広く用いることが可能である。
以下に、本発明に係る錫めっき膜についての実験例1を示す。
・高分子微粒子A:セルロース(平均粒子径5μm or 8μm)
・高分子微粒子B:でんぷん(平均粒子径5μm)
・高分子微粒子C:酸化錫担持セルロース(平均粒子径5μm)
・高分子微粒子D:ポリエチレン(平均粒子径4μm)
・高分子微粒子E:アクリル(平均粒子径4μm)
・錫めっき浴:106Ω/cm程度の純水に市販の外部リード錫めっき用の原液、スルホン酸および市販の添加剤を、汎用的な体積比で混合した汎用の錫めっき浴を使用
(使用装置)
・走査型電子顕微鏡(SEM):商品名 JSM−6380LA;JOEL製
本実験で実施される前記荷重試験AおよびB並びに温度サイクル試験は、何れも錫めっき膜26に加わる応力を高め、ウィスカの生成を促進するためのものである。なお、前記各試験は、外部リード20のリード基材22に錫めっき膜26を付与し、外部リード20を図5に示すように曲げる前の状態で実施した。
・荷重試験AおよびB
各荷重試験は、前述の各実施例1〜10または比較例1〜4の条件によって錫めっき膜26が付与された各外部リード20を、図4に示すように、下側荷重板32上に載置した状態で、上方から上側荷重板34で2000g/mm2の条件で荷重を加えて、常温下で所要時間放置するものである。前記所要時間は、荷重試験Aでは500時間に、荷重試験Bでは1500時間に夫々設定される。なお、前記両荷重板32および34は、何れもアクリル樹脂製である。
・温度サイクル試験
温度サイクル試験は、高温保持条件を125℃、30分、低温保持条件を−40℃、30分として、この高温保持条件および低温保持条件を夫々1回ずつ実施するサイクルを1サイクルとして、これを100サイクル繰り返すものである。なお、高温保持条件から低温保持条件への移行および低温保持条件から高温保持条件への移行は、何れも昇降温レート3℃/分で、55分の時間を掛けて実施した。
温度サイクル試験の結果から分かるように、比較例1の純錫めっき膜ではウィスカ長が略25μmまで成長しているのに対し、実施例1,3,6,7,9の錫めっき膜については、ウィスカ長は何れも略15μm以下であった。すなわち、錫めっき膜に高分子微粒子を含有させることで、ウィスカの成長を抑制し得ることが確認された。また、比較例2および4の錫めっき膜のウィスカ長も略15μm以下であることから、錫めっき膜に高分子微粒子を含有させることで、ビスマスを添加した場合と同程度のウィスカ抑制効果が得られることが確認された。
荷重試験Aの結果から分かるように、比較例1の純錫めっき膜ではウィスカ長が略35μmまで成長しているが、実施例1,2,5〜10および比較例2ではウィスカ長が略30μm以下に抑制されている。すなわち、荷重試験Aにおいても、錫めっき膜に高分子微粒子を含有させることで、ウィスカの成長を抑制し得ることが確認された。また、無機材料を坦持した高分子微粒子を用いた実施例6および7においては、他の実施例に比べて高分子微粒子の含有量は少ないが、ウィスカ長は略10μm以下であり、無機材料を坦持することで、ウィスカの成長をより抑制し得ることが分かる。なお、実施例2は、錫めっき膜に対する高分子微粒子の含有量が0.01重量部未満(0.008重量部)であるため、高分子微粒子を含有しない比較例1よりはウィスカの成長抑制効果はあるものの、高分子微粒子の含有量が0.1重量部以上とした他の実施例に比べてウィスカの成長抑制効果が劣っている。また実施例5は、高分子微粒子の円形度が0.9未満(0.662)であるため、高分子微粒子を含有しない比較例1よりはウィスカの成長抑制効果はあるものの、高分子微粒子の円形度を0.9以上とした他の実施例に比べてウィスカの成長抑制効果は劣っている。この結果から、錫めっき膜に対する高分子微粒子の含有量は、0.01以上とするのが好ましく、また高分子微粒子の円形度は0.9以上とするのが好ましいといえる。
高分子微粒子の円形度を0.9未満とし、その他の条件を前記実施例10と同一とした比較例5について、前記荷重試験Aを実施し、そのSEM写真(倍率1000倍)を図10に示す。この比較例5では、最長のウィスカは略30μmであり、高分子微粒子を含有しない比較例1よりはウィスカの成長抑制効果はある。但し、実施例10と比較例5とを比較すると、高分子微粒子の円形度を0.9以上とすることで、ウィスカの成長をより抑制し得ることが認められる。なお、図11は、実施例10における高分子微粒子を前記SEMにより倍率3000倍で撮像した写真を示し、図12は、比較例5における高分子微粒子を前記SEMにより倍率3000倍で撮像した写真を示す。
高分子微粒子の錫めっき膜に対する含有量を0.01重量部未満とし、その他の条件を前記実施例10と同一とした比較例6、高分子微粒子の錫めっき膜に対する含有量を5重量部より多くし、その他の条件を実施例10と同一とした比較例7、前記実施例10および前記比較例1について、荷重試験Cを実施した。なお、荷重試験Cは、前記上側荷重板34での荷重条件を4000g/mm2に変更したもので、その他の条件は前記荷重試験Aと同じである。
1リットルの錫めっき浴に対する高分子微粒子の投入量を10グラム未満とし、その他の条件を前記実施例10と同一とした比較例8、投入量を100グラムより多くし、その他の条件を実施例10と同一とした比較例9および実施例10について、前記荷重試験Cを実施した。
実験例1と同様に、図5に示すような電子部品10を準備して、該電子部品10のリード基材22に錫めっき膜26を付与するに際して、錫めっき浴を下記する表4の条件に従って調整して、実施例11〜14および比較例10〜11に係る錫めっき膜26が付与された外部リード20を備える電子部品10を得た。なお、実施例11〜14および比較例10〜11における錫めっき膜26の膜厚については、電流密度5A/dm2の条件で10μmの膜厚を形成した。
・高分子微粒子F:微細粒子化不溶性でんぷん(平均粒子径5μm)
高分子微粒子Fは、液体窒素で凍結したでんぷんを高速ミルによって微細化したものである。
・高分子微粒子G:破砕不溶性でんぷん(平均粒子径5μm)
高分子微粒子Gは、でんぷんを高速ミルによって乾式で粉砕したものである。
・錫めっき浴:106Ω/cm程度の純水に市販の外部リード錫めっき用の原液、スルホン酸および市販の添加剤を、汎用的な体積比で混合した汎用の錫めっき浴を使用した。
(使用装置)
・走査型電子顕微鏡(SEM):商品名 JSM−6380LA;JOEL製
荷重試験Aの結果から分かるように、高分子微粒子やビスマスを含有していない比較例1の純錫めっき膜ではウィスカ長が略35μmまで成長しているが、高分子微粒子FおよびGを含有している実施例11〜14および比較例10〜11では、ウィスカ長が20μm以下に抑えられている。すなわち、実験例5においても、錫めっき膜に高分子微粒子を含有させることで、ウィスカの成長を抑制し得ることが確認された。また、荷重試験Aの結果から分かるように、円形度が0.8未満の比較例10および11の純錫めっき膜ではウィスカ長が20μmまで成長しているが、円形度が0.8以上、0.9、未満の範囲にある実施例11〜14ではウィスカ長が10μm以下に抑制されている。すなわち、高分子微粒子の円形度が0.8以上、0.9未満の範囲であっても、ウィスカの成長を抑制し得ることが確認された。
Claims (7)
- 被めっき部(22)に付与された錫めっき膜(26)は、非イオン性の高分子微粒子(28)を含有している
ことを特徴とする錫めっき膜。 - 前記高分子微粒子(28)の円形度を、
円形度=〔粒子を撮像した画像の周囲長と同じ投影面積の真円の直径から算出した周囲長〕/〔粒子を撮像した画像の周囲長〕
としたときに、該円形度が0.8〜1.0である請求項1記載の錫めっき膜。 - 前記高分子微粒子(28)は、100重量部の前記錫めっき膜(26)に対して、0.01〜5重量部含有される請求項1または2記載の錫めっき膜。
- 前記高分子微粒子(28)の平均粒子径は、前記錫めっき膜(26)の厚さ未満にされる請求項1〜3の何れか一項に記載の錫めっき膜。
- 被めっき部(22)に錫めっき膜(26)を付与するために使用される錫めっき浴は、非イオン性の高分子微粒子(28)を含有している
ことを特徴とする錫めっき浴。 - 前記高分子微粒子(28)の円形度を、
円形度=〔粒子を撮像した画像の周囲長と同じ投影面積の真円の直径から算出した周囲長〕/〔粒子を撮像した画像の周囲長〕
としたときに、該円形度が0.8〜1.0である請求項5記載の錫めっき浴。 - 前記高分子微粒子(28)は、1リットルの前記錫めっき浴に対して、10〜100グラム含有される請求項5または6記載の錫めっき浴。
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Citations (4)
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JPS6277493A (ja) * | 1985-09-30 | 1987-04-09 | Kuraray Co Ltd | 電析液および電析方法 |
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-
2009
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