JP2009208932A - エレベータのメンテナンスシステム - Google Patents

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Abstract

【課題】エレベータのメンテナンスにかかる保守員の負担を軽減すると共に、良好な乗り心地を維持して運転サービスを継続する。
【解決手段】エレベータ10側に異常監視制御装置30を設ける。異常監視制御装置30は、データ収集部31にて収集した監視対象機器の動作データを現状データ記憶部33に記憶する。演算部34は、初期データ記憶部32に記憶された初期データと現状データ記憶部33に記憶された現状データとの差分値を算出する。調整部35は、監視対象機器の上限値として設定された第1の閾値と、この第1の閾値よりも低く設定された第2の閾値とを有し、上記差分値が上記第2の閾値を超えた場合に、予め設定されたパラメータを調整し、上記動作データの差分値の絶対値を下げるように当該動作データを変更して運転を継続する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、エレベータのメンテナンスシステムに関する。
エレベータは縦の交通機関として重要な役割を果たしており、一旦エレベータに故障等が発生して利用できなくなると、利用客に多大な迷惑をかけてしまう。そのため、エレベータの状態を常時監視し、故障を未然に防ぐことが重要となる。
従来、エレベータの状態監視を行うものとして、例えば特許文献1に開示されているエレベータの管理システムがある。この管理システムは、エレベータ制御装置と管理部(監視センタ)とからなり、エレベータ制御装置側にエレベータの異常を点検する点検装置を設け、管理部側にその点検装置からのデータを収集して処理する機能を設けたものである。
特許第3016933号公報
エレベータ機器の故障を未然に防止するためには、正確に機器の状態を把握し、いち早く状態変化を捉える必要がある。そのため、上記特許文献1では、機器の動作パラメータの変化を計測し、所定の値(閾値)を超えた時点で、その旨を発報して点検を行うようにしている。
ところが、閾値を超えるまでは機器が正常であると判定されるため、その間、機器の劣化により乗り心地に影響が出て、利用者に迷惑をかけることがある。この場合、乗り心地が低下した状態での運転を極力抑えるために、異常判断の閾値を下げることも考えられるが、閾値を下げると、まだ故障に至らない機器であっても異常と判定されて、保守員の出役回数が増えてしまうといった問題がある。一方、閾値を上げれば、保守員の出役回数を減らせるが、乗り心地が低下した状態での利用を長期に強いることになり、サービス的にも好ましくない。
本発明は上記のような点に鑑みなされたもので、エレベータのメンテナンスにかかる保守員の負担を軽減すると共に、良好な乗り心地を維持して運転サービスを継続することのできるエレベータのメンテナンスシステムを提供することを目的とする。
すなわち、本発明に係るエレベータのメンテナンスシステムは、監視対象機器の動作データを収集するデータ収集手段と、上記監視対象機器の初期データを記憶する第1の記憶手段と、上記データ収集手段によって収集された上記監視対象機器の動作データを現状データとして記憶する第2の記憶手段と、上記第1の記憶手段に記憶された初期データと上記第2の記憶手段に記憶された現状データとの差分値を算出する演算手段と、上記監視対象機器の上限値として設定された第1の閾値と、この第1の閾値よりも低く設定された第2の閾値とを有し、上記演算手段によって算出された差分値が上記第2の閾値を超えた場合に、予め設定されたパラメータを調整し、上記動作データの差分値の絶対値を下げるように当該動作データを変更して運転を継続する調整手段とを具備したことを特徴とする。
本発明によれば、エレベータのメンテナンスにかかる保守員の負担を軽減すると共に、良好な乗り心地を維持して運転サービスを継続することができる。
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係るエレベータのメンテナンスシステムの構成を示す図である。
エレベータ10の主ロープ11の一端に乗りかご12が連結され、他端にカウンタウエイト13が連結されている。巻上機14を駆動すると、その巻上機14のシーブに巻回された主ロープ11を介して乗りかご11とカウンタウエイト13が昇降路内をつるべ式に移動する。
乗りかご12は、利用者が乗り込むかご室15と、そのかご室15を支えるかご枠16とで構成される。かご室15は、その下部に設置された防振ゴム17を介してかご枠16に支持されている。このかご室15の底部には、かご室15とかご枠16を連結するようにして荷重計18が取付けられている。この荷重計18は、かご室15とかご枠16の上下方向の相対変位からかご室15の積載荷重を算出する。
乗りかご12の運行制御は、機械室などに設置された制御盤19によって行われる。制御盤19は、CPU、ROM、RAMなどを有する汎用のコンピュータからなる。また、この乗りかご12の下端にはテールコード20が取付けられている。乗りかご12と制御盤19との間の制御信号の伝送や乗りかご12に対する電源供給などは、このテールコード20を介して行われる。
ここで、本システムでは、エレベータ側に異常監視制御装置30が設けられている。この異常監視制御装置30は、機器の動作異常を監視するための制御装置であって、データ収集部31、初期データ記憶部32、現状データ記憶部33、演算部34、調整部35、調整結果記録部36、通信部37を備える。
データ収集部31は、制御盤19から監視対象とする機器の動作データを収集する。初期データ記憶部32は、監視対象機器の初期データを記憶する。現状データ記録部33は、データ収集部31によって収集した監視対象機器の動作データを現状データとして記憶する。演算部34は、初期データ記憶部32に記憶された初期データと現状データ記憶部33に記憶された現状データとの差分値を算出する。調整部35は、演算部34によって算出された差分値に基づいて、予め当該監視対象機器に対して設定された制御用のパラメータを調整する。調整結果記録部36は、調整部35によるパラメータの調整結果を記録する。通信部37は、監視センタ40との間の通信処理を行う。
一方、監視センタ40は、遠隔地に存在しており、ネットワーク50を介してエレベータ10の運転状態を遠隔監視している。なお、図1の例では、1台のエレベータ10しか示されていないが、実際には各地に点在する多数のエレベータがネットワーク50を介して監視センタ40に接続されている。監視センタ40は、これらのエレベータの運転状態を常時監視しており、何らかの異常が検出された場合に保守員をその現場に派遣する。
この監視センタ40には、通信部41、制御部42、データベース43が設けられている。
通信部41は、異常監視制御装置30との間のデータ通信を行う。制御部42は、遠隔監視に関わる各種処理を行う。データベース43は、通信部41にて受信されたデータを保存する。
このような構成において、以下では、乗りかご12に設置された荷重計18を監視対象機器とし、その荷重計18にて計測される荷重データの状態を診断する場合を想定して説明する。
乗りかご12に利用者が乗車すると、かご室15の積載荷重が増加し、その積載荷重に比例して防振ゴム17が収縮し、かご室15とかご枠16との相対変位が小さくなる。その変化量を荷重計18で検知し、荷重相当の値に換算することで、かご室15の積載荷重が算出される。
一方、エレベータ10には、主ロープ11の一端に乗りかご12が取付けられ、他端にカウンタウエイト13が取付けられている関係で、巻上機14のシーブの両側に乗りかご12の重量による張力とカウンタウエイト13の重量による張力が作用している。したがって、乗りかご12の静止状態に保つためには、その張力差分のトルクを巻上機14に与えておく必要がある。
エレベータ10を運転する場合には、まず、図示せぬブレーキにて巻上機14の回転を停止させた状態で、現在の積載条件に見合ったトルクを巻上機14に与えて、その後、ブレーキを開放する。これにより、ブレーキを開放したときに、乗りかご12が停止状態からスムーズに昇降動作することができる。
ところが、何らかの原因で荷重計18の計測精度が低下していると、動作前の巻上機14に与えるべきトルクと実際の積載荷重との間にずれが生じる。そのため、ブレーキを開放した際に、上昇の際に一瞬下がってから上昇する「吊り落し現象」や、下降の際に一瞬上がってから下降する「吊り上り現象」が発生し、乗り心地を悪化させる。
ここで、エレベータ10の中で荷重が変動するのは積載荷重のみであるので、基本的に乗りかご12が無積載状態であれば、荷重計18の出力は初期値に戻るはずである。しかし、荷重計18は防振ゴム17の伸縮量から現在の積載荷重を算出する構成となっているため、経年変化で防振ゴム17のばね定数が変化した状態にあると、無積載状態でも初期値にならないことがある。
なお、防振ゴム17のばね定数は気温の変化の影響を受け易いため、季節によっても変わる。例えば、夏の気温の高いときには防振ゴム17のばね定数は低下するのでばねの収縮量が多くなり、見かけ上の荷重値が高めに出る。これに対し、冬の気温の低いときには防振ゴム17のばね定数は高くなるのでばねの収縮量が低くなり、見かけ上の荷重値が低めに出る。
通常、荷重計18に対する異常判断は、予め設定された閾値との比較によって行われる。しかし、異常と判断されるまでの間、その荷重計18にて計測される荷重データがそのまま使われるため、上述した「吊り落し現象」や「吊り上り現象」の発生により乗り心地が低下した状態で長期期間利用しなければならない。この場合、閾値を下げると、異常と判断される時期が早まるなどして、保守員の出役回数が増えてしまう。
そこで、本実施形態では、以下のような方法にて荷重計18の荷重データを調整しながら、保守員の出役回数を減らして、できるだけ長くエレベータを継続的に使用すると共に、適切な時期に異常発報を行ってエレベータの安全性を確保するものである。
図2は本システムに設けられた異常監視制御装置30の処理動作を説明するためのフローチャートであり、荷重計18を監視対象機器とした場合の処理が示されている。なお、このフローチャートで示される処理は、コンピュータである異常監視制御装置30が所定のプログラムを読み込むことにより実行される。
まず、異常監視制御装置30は、初期設定として、制御盤19から無積載状態の荷重データをデータ収集部31によって収集し、これを初期データF0として初期データ記憶部32に保存する(ステップA11〜A13)。これは、乗りかご12がスムーズに動作できるよう調整した後の荷重データであり、例えばエレベータの据付け調整時の荷重データか、保守点検時に再調整したときの荷重データを用いているものとする。
また、エレベータ10の運転中において、異常監視制御装置30は、荷重計18にて計測される無積載状態の荷重データを定期的に収集して、これを現状データFcとして現状データ記憶部33に保存する(ステップA14)。
この場合、データ収集は乗りかご12が無積載状態(つまり、無人の状態)で行う必要がある。そこで、乗りかご12が所定の時間以上停止した状態で、ホール呼びがあった場合に無積載状態であるとみなして、そのときの荷重データを判定用に収集して現状データ記憶部33に保存するものとする。
ここで、異常監視制御装置30は、演算部14によって初期データF0と現状データFcとを比較し、その差分ΔF=Fc−F0を算出する(ステップA15)。その差分の絶対値|ΔF|が予め設定された第1の閾値δ1を超える場合には(ステップA16のNo)、変化量が大き過ぎるため、荷重計18あるいは防振ゴム17に何らかの異常が発生している可能性が考えられる。その場合には、異常監視制御装置30は、パラメータ調整を行わずに、通信部37を通じて直ちに監視センタ40に対して異常を発報する(ステップA17)。監視センタ40では、この異常発報を受けると、現場に保守員を派遣するなどの対応を行う。
上記閾値δ1は、荷重データに対する限界値に相当する。従来は、この限界値を基準にして異常の有無だけを判断していた。これに対し、本実施形態では、さらに第2の閾値δ2を有する。この閾値δ2は乗り心地を維持するために設定された閾値であり、図3に示すように閾値δ1よりも低く設定されている。
なお、閾値δ1,δ2は、調整部35の中にセットされているものとする。この閾値δ1,δ2は任意に設定可能であり、特に閾値δ2については、上述した季節の温度変化による影響を考慮して適宜設定することが可能である。
一方、差分|ΔF|が閾値δ1以下であった場合には(ステップA16のYes)、異常監視制御装置30は、演算部34にて閾値δ2との比較を行う(ステップA18)。その結果、差分|ΔF|が閾値δ2を超えている場合には(ステップA18のNo)、異常監視制御装置30は、調整部35により、予めトルク制御用として設定されたパラメータを変更する(ステップA22)。
具体的には、荷重計18にて測定される荷重データFcを初期データF0に戻すか、あるいは、荷重データFcからΔFを差し引くなどしてオフセットし、見かけ上の値を下げてトルク制御する。エレベータ10の運転中は、このオフセット後の荷重データに基づいて巻上機14のトルク制御を行うことで、「吊り落し現象」や「吊り上り現象」を生じさせずに乗りかご12を昇降動作させることができる。
この調整部35による調整結果は調整結果記録部36に保存され(ステップA23)、定期的に通信部37を介して監視センタ40に送られる(ステップA24)。監視センタ40では、これをデータベース43に保存しておき、当該エレベータ10の機器動作の検証などに用いる(ステップA25)。
なお、乗りかご12が無積載状態にあるときの荷重データを収集するようにしているが、かご室15内に人や荷物が残っていることも考えられる。そこで、閾値δ2を超えた段階で即座にパラメータを調整するのではなく、閾値δ2を連続で所定回超えたときにパラメータ調整を行うことが好ましい。
また、パラメータ調整により乗り心地を維持させたとしても、実際には防振ゴム17の劣化等により荷重計18の計測精度は低下している状態にある。そこで、パラメータ調整時の差分ΔFを調整結果記録部36に履歴として蓄積しておき、その累積値Σ(ΔF)を演算部34にて求める(ステップA19)。そして、上記累積値Σ(ΔF)が閾値δ1を超えるようであれば(ステップA20のNo)、異常監視制御装置30は、防振ゴム17または荷重計18に異常があると判断し、パラメータ調整を行わずに、直ちに監視センタ40へ異常を発報する(ステップA21)。監視センタ40では、この異常発報を受けると、現場に保守員を派遣するなどの対応を行う。
図3は荷重データFcと閾値δ1,δ2との関係を示す図である。閾値δ1は限界値、閾値δ2は乗り心地を維持するために設置された閾値である。
無積載状態にて荷重計18にて計測される荷重データFcは、F0から徐々に精度が低下していく。ここで、差分ΔF=Fc−F0が閾値δ2を超えた場合に、パラメータ調整によりFc→F0に変更してトルク制御を行う。これにより、乗り心地を維持して運転を継続できる。なお、従来方式では、図中の点線で示すように、荷重データFcが閾値δ2を超えるまで、そのまま使用するために、その間に乗り心地が低下して乗客に迷惑をかける可能性がある。
また、パラメータ調整によりFc→F0に変更した後、再び、F0から徐々に精度が低下していく。その間、実際には点線のように劣化が進んでいるわけであるから、パラメータ調整時の差分ΔF1,ΔF2…累積して、その累積値が閾値δ1を超えた時点で異常発報を行う。
このように本実施形態によれば、限界値である第1の閾値δ1とは別に第2の閾値δ2を低めに設定しておき、その閾値δ2を基準にしてエレベータ側でパラメータ調整を行うことで、エレベータのメンテナンスにかかる保守員の負担を軽減すると共に、良好な乗り心地を維持して運転サービスを継続することができる。
また、パラメータの調整結果を記憶しておき、その累積値が閾値δ1を超えた場合に異常発報を行うことで、エレベータの安全性を確保することができる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
上記第1の実施形態では、無積載での荷重データの変化によりパラメータ調整を行う構成としたが、第2の実施形態では、走行開始直後の荷重変動によりパラメータ調整を行うものである。
図4は本発明の第2の実施形態に係るエレベータのメンテナンスシステムの構成を示す図である。なお、上記第1の実施形態における図1の構成と同じ部分には同一符号を付して、その説明は省略するものとする。
第2の実施形態では、異常監視制御装置30に荷重変動記憶部38が追加されている。この荷重変動記憶部38は、走行開始直後の荷重変動量Frを記憶する。調整部35は、このFrの絶対値が荷重変動の基準値として設定された第3の閾値δ3を超えている場合にパラメータ調整を行う。
なお、閾値δ3は、上記閾値δ1,δ2と同様に調整部35の中にセットされているものとする。この閾値δ3は任意に設定可能である。
図5は荷重データの変化を示した概略図である。図5(a)は荷重データが正常の状態で乗りかご12が走行した時の変化を示したものであり、図5(b)は荷重データがずれた状態で乗りかご12が走行した時の変化を示したものである。
荷重計18によって計測される荷重データが実際の積載荷重とずれていると、動作直前のトルク値を正しく設定できない。このため、ブレーキ開放直後に「吊り落し現象」あるいは「吊り上げ現象」が生じ、図5(b)に示すように荷重データが瞬間的に変動する。第2の実施形態では、このときの荷重変動量Frが閾値δ3を超えている場合に、荷重計18に対するパラメータ調整を行う。
なお、吊り落し等の現象は乗りかご12の上下振動でも計測できるため、上下方向の加速度センサを用いて荷重変動を検出する構成にしても良い。
以下に、第2の実施形態における動作を説明する。
図6は本システムに設けられた異常監視制御装置30の処理動作を示すフローチャートであり、荷重計18を監視対象機器とした場合の処理が示されている。なお、このフローチャートで示される処理は、コンピュータである異常監視制御装置30が所定のプログラムを読み込むことにより実行される。
上記第1の実施形態と同様に、まず、異常監視制御装置30は、初期設定として、制御盤19から無積載状態の荷重データをデータ収集部31によって収集し、これを初期データF0として初期データ記憶部32に保存する(ステップB11〜B13)。
また、エレベータ10の運転中において、異常監視制御装置30は、荷重計18にて計測される無積載状態の荷重データを定期的に収集して、これを現状データFcとして現状データ記憶部33に保存する(ステップB14)。
ここで、第2の実施形態では、異常監視制御装置30は、走行開始直後の荷重データの変動を検出し、その荷重変動量Frを荷重変動記憶部38に保存しておく(ステップB15)。この場合、荷重計18にて積載荷重が正しく計測されていれば、荷重データは図5(a)のようになるため、走行開始直後の荷重変動は基本的にゼロである。しかし、荷重データにずれが生じていれば、巻上機14に対するトルク設定にずれが生じて、図5(b)のように走行開始直後に荷重データが瞬間的に変動する。つまり、ブレーキを開放したときに「吊り落し現象」あるいは「吊り上げ現象」が生じることになる。
異常監視制御装置30は、演算部14によって初期データF0と現状データFcとを比較し、その差分ΔF=Fc−F0を算出する(ステップB16)。その差分の絶対値|ΔF|が予め設定された第1の閾値δ1を超える場合には(ステップB17のNo)、異常監視制御装置30は、パラメータ調整を行わずに、直ちに通信部37を介して監視センタ40に対して異常を発報する(ステップB18)。監視センタ40では、この異常発報を受けると、現場に保守員を派遣するなどの対応を行う。
一方、差分|ΔF|が閾値δ1以下であった場合には(ステップB17のYes)、異常監視制御装置30は、演算部34にて荷重変動量の絶対値|Fr|と閾値δ3との比較を行う(ステップB19)。その結果、荷重変動量|Fr|が閾値δ3を超えている場合には(ステップB19のNo)、異常監視制御装置30は、予めトルク制御用として設定されたパラメータを変更する(ステップB23)。
具体的には、荷重計18にて測定される荷重データFcを初期データF0に戻すか、あるいは、荷重データFcからΔFを差し引くなどしてオフセットし、見かけ上の値を下げてトルク制御する。エレベータ10の運転中は、このオフセット後の荷重データに基づいて巻上機14のトルク制御を行うことで、「吊り落し現象」や「吊り上り現象」を生じさせずに乗りかご12を昇降動作させることができる。
この調整部35による調整結果は調整結果記録部36に保存され(ステップB24)、定期的に通信部37を介して監視センタ40に送られる(ステップB25)。監視センタ40では、これをデータベース43に保存しておき、当該エレベータ10の機器動作の検証などに用いる(ステップB26)。
また、パラメータ調整により乗り心地を維持させたとしても、実際には防振ゴム17の劣化等により荷重計18の計測精度は低下している状態にある。そこで、上記第1の実施形態と同様に、パラメータ調整時の差分ΔFを調整結果記録部36に履歴として蓄積しておき、その累積値Σ(ΔF)を演算部34にて求める(ステップB20)。その累積値Σ(ΔF)が閾値δ1を超えるようであれば(ステップB21のNo)、異常監視制御装置30は、防振ゴム17または荷重計18に異常があると判断し、パラメータ調整を行わずに、直ちに監視センタ40へ異常を発報する(ステップB22)。監視センタ40では、この異常発報を受けると、現場に保守員を派遣するなどの対応を行う。
このように、第2の実施形態によれば、走行開始直後の荷重変動を判定基準としてパラメータ調整を行うことでも、上記第1の実施形態と同様に、エレベータのメンテナンスにかかる保守員の負担を軽減すると共に、良好な乗り心地を維持して運転サービスを継続することができる。また、走行開始直後の荷重変動に判定基準とすることで、乗り心地の変化をより重視した直接的な診断が可能となる。
なお、上記各実施形態では、制御盤19とは別に異常監視制御装置30を設けたが、この異常監視制御装置30を制御盤19と一体で構成することも可能である。
また、監視対象機器は荷重計18に限らず、他の機器であっても、同様の手法にて動作状態を診断することができる。
要するに、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の形態を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を省略してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
図1は本発明の第1の実施形態に係るエレベータのメンテナンスシステムの構成を示す図である。 図2は同実施形態における異常監視制御装置の処理動作を説明するためのフローチャートである。 図3は同実施形態における荷重データFcと閾値δ1,δ2との関係を示す図である。 図4は本発明の第2の実施形態に係るエレベータのメンテナンスシステムの構成を示す図である。 図5は同実施形態における荷重データの変化を示した概略図である。 図6は同実施形態における異常監視制御装置の処理動作を示すフローチャートである。
符号の説明
10…エレベータ、11…主ロープ、12…乗りかご、13…カウンタウエイト、14…巻上機、15…かご室、16…かご枠、17…防振ゴム、18…荷重計、19…制御盤、20…テールコード、30…異常監視制御装置、31…データ収集部、32…初期データ記憶部、33…現状データ記憶部、34…演算部、35…調整部、36…調整結果記録部、37…通信部、38…荷重変動記憶部、40…監視センタ、41…通信部、42…制御部、43…データベース、50…ネットワーク。

Claims (8)

  1. 監視対象機器の動作データを収集するデータ収集手段と、
    上記監視対象機器の初期データを記憶する第1の記憶手段と、
    上記データ収集手段によって収集された上記監視対象機器の動作データを現状データとして記憶する第2の記憶手段と、
    上記第1の記憶手段に記憶された初期データと上記第2の記憶手段に記憶された現状データとの差分値を算出する演算手段と、
    上記監視対象機器の上限値として設定された第1の閾値と、この第1の閾値よりも低く設定された第2の閾値とを有し、上記演算手段によって算出された差分値が上記第2の閾値を超えた場合に、予め設定されたパラメータを調整し、上記動作データの差分値の絶対値を下げるように当該動作データを変更して運転を継続する調整手段と
    を具備したことを特徴とするエレベータのメンテナンス。
  2. 上記調整手段は、上記演算手段によって算出された差分値が上記第1の閾値を超えた場合に異常状態であると判断し、パラメータ調整を行わずに所定の場所に異常状態を発報することを特徴とする請求項1記載のエレベータのメンテナンス。
  3. 上記調整手段によってパラメータ調整が行われたときの差分値を調整結果の履歴として記録する記録手段を備え、
    上記調整手段は、上記記録手段に記録された各差分値を加算した値が上記第1の閾値を超えた場合に異常状態であると判断し、パラメータ調整を行わずに所定の場所に異常状態を発報することを特徴とする請求項1記載のエレベータのメンテナンス。
  4. 上記所定の場所とは、ネットワークを介してエレベータの状態を遠隔監視する監視センタであることを特徴とする請求項2または3記載のエレベータのメンテナンス。
  5. 上記監視対象機器は、乗りかごの積載荷重を計測するための荷重計であることを特徴とする請求項1記載のエレベータのメンテナンス。
  6. 上記調整手段は、上記乗りかごが無積載状態のときの荷重データを判定基準としてパラメータ調整を行うことを特徴とする請求項5記載のエレベータのメンテナンス。
  7. 上記調整手段は、上記乗りかごが無積載状態で走行開始直後の荷重変動を判定基準としてパラメータ調整を行うことを特徴とする請求項5記載のエレベータのメンテナンス。
  8. 上記調整手段は、荷重変動の判定基準用に設定された第3の閾値を有し、上記乗りかごの走行開始直後の荷重変動が上記第3の閾値を超えた場合に予め設定されたパラメータを調整し、上記動作データの差分値の絶対値を下げるように当該動作データを変更して運転を継続することを特徴とする請求項7記載のエレベータのメンテナンス。
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