JP2009208635A - 動力伝達装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】差動部と無段変速部とを動力伝達経路に直列に備えている動力伝達装置において、無段変速部の変速遅れや変速の進み過ぎなどで差動部の回転要素が所定の高回転になることを防止する。
【解決手段】ステップSS2で第2変速部(無段変速部)20の変速速度SγCVT のずれ量が所定の許容範囲を超えたか否かを判断し、許容範囲を超えた場合にはステップSS3以下を実行し、第1変速部(差動部)14を構成している所定の回転要素が高回転になることを防止する高回転防止制御を実施するため、入力回転要素(キャリアCA0)に連結されたエンジン8や回転機連結要素(サンギヤS0)に連結された第1回転機M1、出力回転要素(リングギヤR0)に連結された第2回転機M2、或いはキャリアCA0に対する遊星歯車P0の相対回転速度ΔNPなどが、変速速度SγCVT のずれに起因して高回転となり、耐久性が損なわれることが抑制される。
【選択図】図13
【解決手段】ステップSS2で第2変速部(無段変速部)20の変速速度SγCVT のずれ量が所定の許容範囲を超えたか否かを判断し、許容範囲を超えた場合にはステップSS3以下を実行し、第1変速部(差動部)14を構成している所定の回転要素が高回転になることを防止する高回転防止制御を実施するため、入力回転要素(キャリアCA0)に連結されたエンジン8や回転機連結要素(サンギヤS0)に連結された第1回転機M1、出力回転要素(リングギヤR0)に連結された第2回転機M2、或いはキャリアCA0に対する遊星歯車P0の相対回転速度ΔNPなどが、変速速度SγCVT のずれに起因して高回転となり、耐久性が損なわれることが抑制される。
【選択図】図13
Description
本発明は、差動部と無段変速部とを動力伝達経路に直列に備えている動力伝達装置に係り、特に、無段変速部の変速遅れや変速の進み過ぎなどで差動部の回転要素が所定の高回転になることを防止する制御に関するものである。
(a) 差動機構の回転要素に連結された回転機の運転状態が制御されることにより、駆動源に連結された入力軸の回転速度と出力軸の回転速度との差動状態が制御される差動部と、(b) その差動部の前記出力軸の回転速度を無段階に変速することができる無段変速部と、を動力伝達経路に直列に備えている動力伝達装置が知られている。特許文献1に記載の装置はその一例で、ハイブリッド車両の動力伝達装置に関するものであり、差動部として発電機等の回転機によって回転要素の回転を制御する遊星歯車式の電気式差動部が備えられ、無段変速部として変速比を機械的に無段階で変化させることができるベルト式の機械式無段変速機が備えられている。
特開平11−217025号公報
ところで、このような従来の動力伝達装置において、無段変速部の変速速度(変速比の変化速度)が設計的に定められた値からずれると、その前方すなわち動力伝達経路の上流側に設けられた差動部を構成している回転要素の一部が高回転となり、入力軸に連結されたエンジン等の駆動源や発電機等の回転機などが高回転になって耐久性が損なわれる可能性があった。差動部の回転要素そのもの、例えば遊星歯車のキャリアに対する相対回転速度などが高回転となって、その歯車や軸受等の耐久性が損なわれる恐れもある。このような課題は、差動部と無段変速部とを動力伝達経路に直列に備えている動力伝達装置に特有の新規なものである。
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、差動部と無段変速部とを動力伝達経路に直列に備えている動力伝達装置において、無段変速部の変速遅れや変速の進み過ぎなどで差動部の回転要素が所定の高回転になることを防止することにある。
かかる目的を達成するために、第1発明は、(a) 差動機構の回転要素に連結された回転機の運転状態が制御されることにより、駆動源に連結された入力軸の回転速度と出力軸の回転速度との差動状態が制御される差動部と、(b) その差動部の前記出力軸の回転速度を無段階に変速することができる無段変速部と、を動力伝達経路に直列に備えている動力伝達装置において、(c) 前記無段変速部の変速状態に基づいて、前記差動部を構成している回転要素が高回転になることを防止する高回転防止制御を実施する高回転防止手段を設けたことを特徴とする。
第2発明は、第1発明の動力伝達装置において、前記高回転防止手段は、前記無段変速部の変速速度に基づいて前記高回転防止制御を実施することを特徴とする。
第3発明は、第2発明の動力伝達装置において、前記高回転防止手段は、前記無段変速部の変速速度のずれに基づいて前記高回転防止制御を実施することを特徴とする。
第4発明は、第1発明の動力伝達装置において、前記高回転防止手段は、前記無段変速部の変速比に基づいて前記高回転防止制御を実施することを特徴とする。
第5発明は、第4発明の動力伝達装置において、前記高回転防止手段は、前記無段変速部の変速比のずれに基づいて前記高回転防止制御を実施することを特徴とする。
このような動力伝達装置においては、無段変速部の変速状態すなわち例として変速速度や変速比のずれ等に基づいて、差動部を構成している回転要素が高回転になることを防止する高回転防止制御を実施するため、入力軸に連結されたエンジン等の駆動源や発電機等の回転機などが、無段変速部の変速状態に起因して高回転となり、耐久性が損なわれることが抑制される。また、遊星歯車のキャリアに対する相対回転速度など差動部の回転要素そのものの回転速度が高回転となって、その歯車や軸受等の耐久性が損なわれることを抑制することもできる。
本発明は、車両用の動力伝達装置に好適に適用されるが、駆動源の回転速度を変速して出力する他の動力伝達装置にも適用され得る。車両用の場合、駆動源としてガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関、或いは電動モータ等を備えている車両や、内燃機関に加えて電動モータやモータジェネレータ等を備えているハイブリッド車両など、種々の車両に適用され得る。
無段変速部としては、例えばベルト式やトロイダル式等の機械式無段変速機が好適に用いられるが、差動作用を有する電気式の無段変速機を採用することもできる。無段変速部は、例えば駆動源を所定の動作線(燃費最適動作線など)上で作動させる上で、変速比を無段階で連続的に変化させることが望ましいが、有段変速機と同様に変速比を段階的に変化させる態様で使用することも可能である。
差動部としては、例えば(a) 3つの回転要素を有する遊星歯車装置等の差動機構と、(b) その1つの回転要素に連結された発電機等の第1回転機と、(c) 出力回転要素に連結された電動モータ等の第2回転機と、を有する電気式差動部(電気式無段変速機)が好適に採用され、第2回転機は駆動源としても機能する。回転機は、回転電気機械のことで、具体的には電動モータや発電機、或いはそれ等の両方の機能を選択的に発揮することができるモータジェネレータである。
上記差動機構が遊星歯車装置にて構成されている場合、例えば遊星歯車装置のキャリアは入力回転要素として機能して入力軸を介して駆動源に連結され、サンギヤは第1回転機に連結され、リングギヤは出力回転要素として機能して出力軸を介して無段変速部に連結されるとともに、そのリングギヤに第2回転機が接続されるが、それ等の連結形態は適宜変更することができるし、必要に応じてクラッチ等の断続機構を介して接続することも可能である。上記遊星歯車装置は、シングルピニオン型でもダブルピニオン型でも差し支えないし、複数の遊星歯車装置を組み合わせて差動機構を構成することもできる。
上記第2回転機が、主として力行制御されて回転トルクを発生させるものである場合には、差動部と別個に設けることが可能で、例えば差動部および無段変速部よりも動力伝達経路の下流側、例えば駆動輪側に接続しても良いとともに、変速機や遊星歯車装置等を介して動力伝達経路に接続することもできる。
上記第2回転機を回生制御して発電機として用いることがある場合には、クラッチ等の断続機構を介して前記差動機構の出力回転要素に連結するとともに、同じくクラッチ等の断続機構を介して差動機構の入力回転要素或いは駆動源に連結可能とし、駆動源により直接回転駆動されるようにして発電するとともに、その電気エネルギーで第1回転機を力行制御することにより、例えば出力回転要素を介して回転駆動されて発電する場合に比較して電気パスによるエネルギーロスを低減できる。
駆動源を所定の動作線上で作動させる場合、その動作線は、例えば駆動源単独で燃費が最少となるように回転速度およびトルク等をパラメータとして定められた燃費最適動作線であるが、差動部および無段変速部を含む動力伝達装置のシステム全体のトータルのエネルギー効率、例えば電気パス等のエネルギー循環の効率や各部のフリクションロス等を含めたエネルギー効率が最も良くなるように駆動源の動作線(システム最適動作線)を設定することもできる。上記燃費最適動作線は、車両走行等に必要な所定のトルク特性を満足しつつ燃費が最適になるように定められた動作線で、必ずしも現実に燃費が最適すなわち最少であることを意味するものではない。また、基本的には駆動源を上記燃費最適動作線上等で作動させるように変速比を制御しつつ、各部の伝達効率やエネルギー効率等に基づいて変速比を補正するようにしても良いなど、種々の態様が可能である。上記駆動源は、内燃機関等の燃料の燃焼で動力を発生する場合だけでなく、電気エネルギーで動力を発生する電動モータなどでも良い。電動モータも、燃費すなわち電気エネルギーの消費が最少となるように定められた燃費最適動作線上で作動させることが望ましい。燃費は、駆動源の作動によるエネルギーの消費量を意味する。
差動部の差動状態(出力回転速度に対する入力回転速度の変速比など)および無段変速部の変速比は、例えば駆動源を燃費最適動作線等の所定の動作線上で作動させるように設定されるが、システム全体のトータルのエネルギー効率や伝達効率の点で動作線から外れた運転点で作動させることが望ましい場合があり、その動作線から外れた運転点で駆動源を作動させるような差動状態や変速比を選択するようにしても良い。
駆動源を所定の動作線上で作動させるために、無段変速部は、例えば車速をパラメータとして予め定められた変速比マップ等に基づいて変速比が設定され、差動部は、例えば電気パス量が所定の許容範囲内となるように、言い換えれば伝達効率が所定値以上になるように差動状態が制御される。差動部の回転機の回転速度が略0になるように制御すれば、電気パスのエネルギー効率すなわち伝達効率が良くなる。無段変速部の変速比および車速に応じて差動部の出力側の回転速度は定まるため、その差動部の変速制御すなわち差動状態の制御は、駆動源や回転機の回転速度を制御して行なうことができる。
無段変速部についても、差動部の差動状態および無段変速部の伝達効率、或いはトータルの伝達効率などをパラメータとして予め定められた変速比マップ等に基づいて変速比が設定されるようにすることができる。このように無段変速部の変速比が制御されるとともに、駆動源が予め定められた動作線上で作動させられることにより、差動部の差動状態が結果的に所定の状態、例えば回転機の回転速度が略0となる状態に制御されるようになっていても良い。
エンジンが駆動源として用いられる場合、理論空燃比の混合気を燃焼させるストイキ燃焼方式と理論空燃比よりも燃料が希薄な混合気を燃焼させるリーン燃焼方式との2つの燃焼方式を切り換えて使用する場合があるが、その場合には、前記燃費最適動作線や、その燃費最適動作線上で駆動源を作動させるための無段変速部の変速比マップ等は、燃焼方式毎にそれぞれ設定することが望ましい。軽負荷時にはエンジンを4気筒で駆動し、高負荷時には8気筒で駆動するような可変気筒の運転方式など、複数の運転方式を切り換えてエンジンを作動させる場合には、同様に構成することができる。
エンジン等の駆動源は、例えば前記差動部の入力回転要素に一体的に連結しても良いが、クラッチ等の断続機構を介して連結したり、トルクコンバータ等の流体式動力伝達装置を介して連結したりしても良い。
高回転防止手段は、例えば(a) 前記無段変速部の変速ずれを判定する変速ずれ判定手段と、(b) その変速ずれ判定手段によって変速ずれであると判定された場合に、前記差動部の所定の回転要素の回転速度を低下させる回転低減手段と、を有して構成される。
変速ずれ判定手段は、例えば無段変速部の実際の変速速度と予め設計的に定められた基準変速速度とのずれ量が予め定められた許容範囲を超えているか否か、或いは実際の変速比と目標変速比とのずれ量が予め定められた許容範囲を超えているか否か、等によって変速ずれを判定するように構成される。許容範囲は予め一定値が定められても良いが、変速比が大きい程差動部側の回転速度が高くなり、僅かな変速ずれで所定の回転要素が高回転になる可能性が高くなるため、その変速比をパラメータとするマップや演算式などで設定することが望ましい。車速が高くなる程差動部の回転速度も高くなり、僅かな変速ずれで所定の回転要素が高回転になる可能性が高くなるため、車速等の運転状態をパラメータとして設定することもできるなど、種々の態様が可能である。
上記変速ずれ判定手段により変速ずれを判定するのに先立って車両が走行状態であるか否かを判定する走行状態判定手段を設け、その走行状態判定手段により走行状態であると判定された場合に、変速ずれ判定手段による判定処理を実行するようにしても良い。走行状態判定手段は、例えばシフトレバーの操作位置が車両を走行させる駆動ポジションか否かによって判定できるが、車速が所定値以上か否か、等によって判定することも可能である。
前記回転低減手段は、例えば前記入力回転要素に連結された駆動源や出力回転要素に連結された第2回転機のトルクを低下させ、或いは回生トルクを発生させたり、差動部の差動を制限する差動制限クラッチを有する場合にはその差動制限クラッチを係合させたりすることにより、所定の回転要素の回転速度を低下させるように構成される。
前記変速ずれ判定手段により変速ずれであると判定された場合に、上記回転低減手段により回転低減制御を行なうのに先立って前記差動部の回転要素の何れかが所定の高回転防止域に達しているか否かを判断する高回転判定手段を設け、その高回転判定手段によって高回転防止域に達していると判定された場合だけ、回転低減手段による回転低減制御を実行するようにしても良い。高回転判定手段は、例えば高回転が問題になる予め定められた回転要素の回転速度が所定の高回転防止域に達しているか否かを判定するように構成されるが、その回転速度に対して一定の関係を有する他の部材の回転速度で判定することも可能である。
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例である車両用動力伝達装置10を説明する骨子図である。この車両用動力伝達装置10は、ハイブリッド車両において縦置きされるFR(フロントエンジン・リヤドライブ)型車両に好適に用いられるもので、入力回転部材として入力軸12を備えている第1変速部14、その第1変速部14の出力回転部材である中間軸18、その中間軸18に連結された第2変速部20、および出力回転部材である出力軸22が、同一の軸線上にその順番で車両前側から後方に向かって配設されている。第1変速部14の入力軸12は、駆動源として設けられたガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関であるエンジン8のクランク軸に、直接或いは図示しない脈動吸収ダンパー(振動減衰装置)を介して連結されて回転駆動されるようになっている。本実施例では、エンジン8と第1変速部14とが直結、すなわちトルクコンバータやフルードカップリング等の流体式伝動装置を介することなく連結されている。また、第2変速部20はカウンタ軸152を備えており、出力歯車150からカウンタ軸152を介して出力軸22に動力が伝達されるようになっており、その出力軸22からは、図示しないプロペラシャフトや差動歯車装置(終減速装置)、左右の車軸等を介して左右の駆動輪に動力が伝達される。
図1は、本発明の一実施例である車両用動力伝達装置10を説明する骨子図である。この車両用動力伝達装置10は、ハイブリッド車両において縦置きされるFR(フロントエンジン・リヤドライブ)型車両に好適に用いられるもので、入力回転部材として入力軸12を備えている第1変速部14、その第1変速部14の出力回転部材である中間軸18、その中間軸18に連結された第2変速部20、および出力回転部材である出力軸22が、同一の軸線上にその順番で車両前側から後方に向かって配設されている。第1変速部14の入力軸12は、駆動源として設けられたガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関であるエンジン8のクランク軸に、直接或いは図示しない脈動吸収ダンパー(振動減衰装置)を介して連結されて回転駆動されるようになっている。本実施例では、エンジン8と第1変速部14とが直結、すなわちトルクコンバータやフルードカップリング等の流体式伝動装置を介することなく連結されている。また、第2変速部20はカウンタ軸152を備えており、出力歯車150からカウンタ軸152を介して出力軸22に動力が伝達されるようになっており、その出力軸22からは、図示しないプロペラシャフトや差動歯車装置(終減速装置)、左右の車軸等を介して左右の駆動輪に動力が伝達される。
第1変速部14は、電気式無段変速機としても機械式の有段変速機としても機能するもので、第1回転機M1と、入力軸12の動力すなわちエンジン8の動力を第1回転機M1および前記中間軸18に機械的に分配する動力分配機構16と、中間軸18と一体的に回転するように設けられている第2回転機M2とを備えている。第1回転機M1および第2回転機M2は、本実施例では電動モータ(電動機)およびジェネレータ(発電機)の両方の機能を択一的に発揮できるモータジェネレータである。但し、第1回転機M1を、反力を発生させるためだけに用いる場合にはジェネレータを採用しても良いし、第2回転機M2を、駆動源として駆動力を出力するためだけに用いる場合には、電動モータを採用しても良い。
上記動力分配機構16は、所定のギヤ比(サンギヤの歯数/リングギヤの歯数)ρ0のシングルピニオン型の遊星歯車装置24と、切換クラッチC0および切換ブレーキB0とを備えている。遊星歯車装置24は、差動歯車機構として機能するもので、サンギヤS0、遊星歯車P0を自転および公転可能に支持するキャリアCA0、遊星歯車P0を介してサンギヤS0と噛み合うリングギヤR0を、回転要素(要素)として備えている。
この動力分配機構16においては、キャリアCA0が入力回転要素でリングギヤR0が出力回転要素であり、キャリアCA0は入力軸12すなわちエンジン8に連結され、リングギヤR0は出力軸に相当する中間軸18に連結され、サンギヤS0は第1回転機M1に連結されている。また、切換ブレーキB0は、サンギヤS0と固定部材であるトランスミッションケース(以下、単にケースという)11との間に設けられ、切換クラッチC0は、サンギヤS0とキャリアCA0との間に設けられている。これ等の切換クラッチC0および切換ブレーキB0は、単板式、多板式、或いはベルト式等の油圧式摩擦係合装置で、油圧アクチュエータにより任意に係合、解放されるようになっており、切換クラッチC0および切換ブレーキB0が共に解放されることにより、動力分配機構16は、遊星歯車装置24の3つの回転要素であるサンギヤS0、キャリアCA0、およびリングギヤR0がそれぞれ相互に相対回転可能となり、差動作用が作動可能な状態すなわち差動作用が働く差動状態とされる。
このような差動状態では、エンジン8の出力が第1回転機M1と中間軸18とに分配され、その分配されたエンジン8の出力で回転駆動される第1回転機M1が発電制御されることにより、その回生制動によってサンギヤS0の回転速度が制限され、サンギヤS0の回転速度に応じて中間軸18の回転速度N18がエンジン8の回転速度NE に拘わらず連続的に変化させられるため、第1変速部14(動力分配機構16)が電気的な差動装置として機能する。すなわち、第1変速部14の変速比γ0(入力軸12の回転速度NIN/中間軸18の回転速度N18)が最小値γ0min から最大値γ0max まで連続的に変化させられる電気的な無段変速機として機能する無段変速状態とされるのである。このように動力分配機構16が差動状態とされると、動力分配機構16(第1変速部14)に動力伝達可能に連結された第1回転機M1、第2回転機M2、およびエンジン8の運転状態が制御されることにより、動力分配機構16の差動状態、すなわち入力軸12の回転速度NINと中間軸18の回転速度N18との差動状態が任意に制御される。なお、第1回転機M1の発電制御で得られた電気エネルギーで第2回転機M2が回転駆動(力行制御)され、或いは蓄電装置94(図5参照)が充電される。この状態の第1変速部14は差動部として機能する。
上記差動状態から切換クラッチC0或いは切換ブレーキB0が係合させられると、動力分配機構16は前記差動作用をしないすなわち差動作用が不能な非差動状態とされる。具体的には、切換クラッチC0が係合させられてサンギヤS0とキャリアCA0とが一体的に係合させられると、動力分配機構16は遊星歯車装置24のサンギヤS0、キャリアCA0、およびリングギヤR0が一体回転させられるロック状態とされ、前記差動作用が不能な非差動状態とされることから、第1変速部14も非差動状態となる。また、エンジン8の回転速度NE と中間軸18の回転速度N18とが一致する状態となるので、第1変速部14は変速比γ0が「1」に固定された変速機として機能する定変速状態すなわち有段変速状態とされる。この切換クラッチC0は、第1変速部14の差動作用を制限する差動制限クラッチとして機能する。
上記切換クラッチC0に代えて切換ブレーキB0が係合させられ、サンギヤS0がケース11に固定されて回転停止させられると、動力分配機構16は前記差動作用が不能な非差動状態とされることから、第1変速部14も非差動状態となる。また、リングギヤR0はキャリアCA0よりも増速回転させられるので、動力分配機構16は増速機構として機能するようになり、第1変速部14は変速比γ0が「1」より小さい一定値(例えば0.7程度等)に固定された増速変速機として機能する定変速状態すなわち有段変速状態とされる。
このように、本実施例では、上記切換クラッチC0および切換ブレーキB0が、第1変速部14の変速状態を差動状態すなわち非ロック状態と、非差動状態すなわちロック状態とに選択的に切り換える差動状態切換装置として機能する。これにより、第1変速部14は、変速比γ0を電気的に連続的に変化させることができる電気式無段変速機として機能する状態と、変速比γ0=1と1より小さい増速状態との2段の有段変速機として機能する状態とに選択的に切り換えられる。
また、第1変速部14は、切換クラッチC0および切換ブレーキB0が何れも解放され、且つ第1回転機M1が反力を発生させない自由回転状態とされた場合には、第1変速部14内の動力伝達経路の動力伝達を遮断する動力伝達遮断状態(ニュートラル状態)とされ、第1回転機M1が反力を発生させ或いは切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れか一方が係合された場合には、第1変速部14内の動力伝達経路の動力伝達を可能とする動力伝達可能状態とされる。そして、第1変速部14が動力伝達遮断状態または動力伝達可能状態とされることにより、車両用動力伝達装置10全体が動力伝達遮断状態または動力伝達可能状態とされる。但し、本実施例では第2回転機M2と駆動輪との間の動力伝達経路は遮断されることがないので、車両用動力伝達装置10全体が動力伝達遮断状態とされるためには第2回転機M2も自由回転状態にされる。
前記第2変速部20は、その変速比γCVT を機械的作用により連続的に変化させることができる機械式無段変速機として機能する所謂トロイダル式無段変速機である。この第2変速部20は、中間軸18に一体的に連結されるとともに軸線方向において相対向するように配設された一対の入力ディスク142a、142b(以下、特に区別しない場合には単に入力ディスク142という)と、その一対の入力ディスク142a、142bの間において入力ディスク142a、142bのそれぞれに対向するように同軸上に配設されて出力歯車150に一体的に連結された一対の出力ディスク144a、144b(以下、特に区別しない場合には単に出力ディスク144という)と、相対向するそれぞれの入力ディスク142a、142bと出力ディスク144a、144bとの間に複数個ずつ配設されたパワーローラ146a、146b(以下、特に区別しない場合には単にパワーローラ146という)とを備えている。相対向する入力ディスク142および出力ディスク144は、その対向面に円弧状断面の環状溝が中間軸18と同心に設けられているとともに、互いに接近する方向に押圧されており、その環状溝にパワーローラ146の外周面が所定の摩擦力を有して接触させられ、且つその接触を維持しつつパワーローラ146の回転軸が揺動可能とされている。
このように構成された第2変速部20では、第1の動力伝達経路を成す一組の入力ディスク142a、パワーローラ146a、出力ディスク144aと、第2の動力伝達経路をなす一組の入力ディスク142b、パワーローラ146b、出力ディスク144bとが機械的配置としては中間軸18の軸線上に直列に、動力伝達経路としては並列に設けられており、中間軸18から入力された駆動トルクは第2変速部20内の並列な2つの動力伝達経路でそれぞれ入力ディスク142、パワーローラ146、出力ディスク144の順に伝達され、出力歯車150からカウンタ軸152および出力軸22を経て図示しない駆動輪へ伝達される。
第2変速部20では、入力ディスク142および出力ディスク144の各々に対して外周面が摩擦接触する複数のパワーローラ146の回転軸を、中間軸18の軸線方向すなわち図1における左右方向に同時に揺動させることが可能で、その回転軸と中間軸18の軸線との成す傾斜角度θPRを連続的に変化させることができる。すなわち、この第2変速部20は、油圧シリンダ等の変速アクチュエータ154(図5参照)を備えており、油圧制御回路62から供給される油圧によって変速アクチュエータ154が作動させられることにより、パワーローラ146の傾斜角度θPRが連続的に変化させられるとともに、所定の傾斜角度θPRに維持されるようになっている。これにより、入力ディスク142におけるパワーローラ146との接触点の半径(有効径)と出力ディスク144におけるパワーローラ146との接触点の半径(有効径)との比、すなわち第2変速部20の変速比γCVT (=中間軸18の回転速度N18/出力軸22の回転速度NOUT )が連続的に変化する。具体的には、上記傾斜角度θPRが小さくされるほど、入力ディスク142における上記接触点の半径は大きくなるとともに出力ディスク144における上記接触点の半径は小さくなり、第2変速部20の変速比γCVT は小さくなってハイギヤ側へ変化する。なお、この変速比γCVT は、カウンタ軸152による変速を含んだ値で、カウンタ軸152を含んで第2変速部20が構成されている。この第2変速部20は無段変速部に相当する。
このような車両用動力伝達装置10において、第1変速部14および第2変速部20を合わせたトータル変速比(総合変速比)γT(=入力軸12の回転速度NIN/出力軸22の回転速度NOUT )は、第1変速部14の変速比γ0と第2変速部20の変速比γCVT との積(γ0×γCVT )で表され、第1変速部14が有段変速状態か無段変速状態かに拘らず、第2変速部20の無段変速作用により無段階で変化させられる。
図2は、第1変速部14の各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表すことができる共線図で、各回転要素を示す縦軸と相対的回転速度を示す横軸とから成る二次元座標であり、2本の横線のうちの下側の横線X1が回転速度0を示し、上側の横線X2が回転速度「1.0」すなわち入力軸12に連結されたエンジン8の回転速度NE を表している。また、縦線Y1はサンギヤS0および第1回転機M1を含む第2回転要素RE2を、縦線Y2はキャリアCA0およびエンジン8を含む第1回転要素RE1を、縦線Y3はリングギヤR0、第2回転機M2、および中間軸18を含む第3回転要素RE3を、それぞれ表しており、縦線Y1とY2との間の間隔と、縦線Y2とY3との間の間隔との比は、遊星歯車装置24のギヤ比ρ0を用いて1:ρ0となる。
上記図2の共線図において、直線L0は第1変速部14における各回転要素RE1〜RE3の回転速度の関係を表しており、切換クラッチC0および切換ブレーキB0が何れも解放されて第1変速部14が無段変速状態(差動状態)とされている場合には、第1回転機M1の回転速度を制御することによって、直線L0と縦線Y1との交点で示される第2回転要素RE2すなわちサンギヤS0の回転速度が上昇或いは下降させられる。したがって、直線L0と縦線Y3との交点で示される第3回転要素RE3の回転速度、すなわち車速Vおよび第2変速部20の変速比γCVT に応じて定まる中間軸18の回転速度N18が略一定であれば、直線L0と縦線Y2との交点で示される第1回転要素RE1すなわちエンジン回転速度NE が、第1回転機M1の回転速度に応じて連続的に変化させられ、第1変速部14の変速比γ0(=NE /N18)が変化する。
また、切換クラッチC0の係合によりサンギヤS0とキャリアCA0とが連結されると、動力分配機構16はサンギヤS0、キャリアCA0、およびリングギヤR0が一体回転する非差動状態とされるので、直線L0は横線X2と一致させられ、エンジン回転速度NE と同じ回転で中間軸18が回転させられるようになり、第1変速部14の変速比γ0(=NE /N18)は1になる。また、切換ブレーキB0の係合によってサンギヤS0の回転が停止させられると、動力分配機構16は増速機構として機能する非差動状態とされるので、直線L0は図2に示す状態となり、その直線L0と縦線Y3との交点で示されるリングギヤR0すなわち中間軸18の回転速度N18は、エンジン回転速度NE よりもギヤ比ρ0に応じて増速された値となり、第1変速部14の変速比γ0(=NE /N18)は1/(1+ρ0)になる。
図3は、車両用動力伝達装置10が備えている制御系統の要部を説明するブロック線図で、電子制御装置60に入力される信号及びその電子制御装置60から出力される信号を例示している。この電子制御装置60は、CPU、ROM、RAM、及び入出力インターフェースなどから成る所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、エンジン8、第1回転機M1、第2回転機M2に関するハイブリッド制御、第2変速部20の変速制御等を実行するもので、必要に応じてハイブリッド制御用や変速制御用等に分けて構成される。
電子制御装置60には、図3に示す各センサやスイッチなどから、エンジン水温TEMPW を示す信号、シフトポジションPSHを表す信号、第1回転機M1の回転速度NM1(以下、第1回転機回転速度NM1という)を表す信号、第2回転機M2の回転速度NM2(以下、第2回転機回転速度NM2という)を表す信号、エンジン8の回転速度であるエンジン回転速度NE を表す信号、Mモード(手動変速走行モード)を指令する信号、エアコンの作動状態を表すエアコン信号、出力軸22の回転速度NOUT (以下、出力軸回転速度NOUT という)に対応する車速Vを表す信号、CVT油温センサにより検出される第2変速部20等の作動油温度TEMPCVT を表す油温信号、サイドブレーキ操作の有無を表す信号、フットブレーキ操作の有無を表す信号、触媒温度を表す触媒温度信号、運転者の出力要求量に対応するアクセルペダルの操作量であるアクセル開度Accを表すアクセル開度信号、カム角信号、スノーモード設定の有無を表すスノーモード設定信号、車両の前後加速度を表す加速度信号、オートクルーズ走行の設定の有無を表すオートクルーズ信号、車両の重量を表す車重信号、各車輪の車輪速を表す車輪速信号、エンジン8の空燃比A/Fを表す信号、エンジン8の吸気管95(図5参照)に備えられた電子スロットル弁96の開度(スロットル弁開度)θTHを表す信号などが、それぞれ供給される。
また、上記電子制御装置60からは、エンジン出力を制御するエンジン出力制御装置64(図5参照)への制御信号、例えばスロットル弁開度θTHを制御するスロットルアクチュエータ97への駆動信号や、燃料噴射装置98によるエンジン8の各気筒内への燃料供給量を制御する燃料供給量信号、点火装置99によるエンジン8の点火時期を指令する点火信号、過給圧を調整するための過給圧調整信号、電動エアコンを作動させるための電動エアコン駆動信号、回転機M1およびM2の作動を指令する指令信号、シフトインジケータを作動させるためのシフトポジション(操作位置)表示信号、トータル変速比γT等の変速比を表示させるための変速比表示信号、スノーモードであることを表示させるためのスノーモード表示信号、制動時の車輪のスリップを防止するABSアクチュエータを作動させるためのABS作動信号、Mモードが選択されていることを表示させるMモード表示信号、第1変速部14及び第2変速部20の油圧アクチュエータを制御するために油圧制御回路62(図5参照)に含まれる電磁ソレノイド弁を作動させるバルブ指令信号、その電磁ソレノイド弁に供給されるライン圧を調整するためのライン圧コントロールソレノイド弁を作動させるバルブ指令信号、油圧制御回路62の油圧源である電動オイルポンプを作動させるための駆動指令信号、電動ヒータを駆動するための信号、クルーズコントロール制御用コンピュータへの信号等が、それぞれ出力される。
図4は複数種類のシフトポジションPSHを人為的操作により切り換える切換装置としてのシフト操作装置66の一例を示す図である。このシフト操作装置66は、例えば運転席の横に配設され、複数のシフトポジションPSHを選択するために操作されるシフトレバー68を備えている。シフトレバー68は、車両用動力伝達装置10内の動力伝達経路が遮断されたニュートラル状態すなわち中立状態とし且つ出力軸22をロックするための駐車ポジション「P(パーキング)」、後進走行のための後進走行ポジション「R(リバース)」、車両用動力伝達装置10内の動力伝達経路が遮断された中立状態とするための中立ポジション「N(ニュートラル)」、車両用動力伝達装置10の変速可能なトータル変速比γTの変化範囲内で自動変速制御を実行させる前進自動変速走行ポジション「D(ドライブ)」、または手動変速走行モード(手動モード)を成立させて上記自動変速制御における高速側の変速比を制限する所謂変速レンジを設定するための前進手動変速走行ポジション「M(マニュアル)」へ手動操作されるように設けられている。そして、このシフトレバー68の手動操作により選択されたシフトポジションPSHに応じて油圧制御回路62が電気的に切り換えられ、車両用動力伝達装置10内の動力伝達経路が上記選択されたシフトポジションPSHに応じたものに変更される。
図5は、電子制御装置60による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図で、ハイブリッド制御手段74、切換制御手段80、第2変速部制御手段82、および高回転防止手段84を機能的に備えており、ハイブリッド制御手段74は更に、エンジン始動停止制御手段76および第1変速部制御手段78を機能的に備えている。
ハイブリッド制御手段74は、第1変速部14の差動状態においてエンジン8を効率のよい作動域で作動させる一方で、エンジン8と第2回転機M2との駆動力の配分や第1回転機M1の発電による反力を最適になるように変化させて第1変速部14の電気的な無段変速機としての変速比γ0を制御する。例えば、その時の車速Vにおいて、運転者の出力要求量としてのアクセル開度(アクセルペダル操作量)Accや車速Vから車両の目標(要求)出力を算出し、車両の目標出力と充電要求値から必要なトータル目標出力を算出し、そのトータル目標出力が得られるように伝達損失、補機負荷、第2回転機M2のアシストトルク等を考慮して目標エンジン出力を算出し、その目標エンジン出力が得られるエンジン回転速度NE およびエンジントルクTE となるようにエンジン8を制御するとともに第1回転機M1の発電量を制御する。
ハイブリッド制御手段74は、その制御を動力性能や燃費向上などのために第2変速部20の変速比γCVT を考慮して実行する。このようなハイブリッド制御では、エンジン8を効率のよい作動域で作動させるために定まるエンジン回転速度NE と、車速Vおよび第2変速部20の変速比γCVT で定まる中間軸18の回転速度N18とを整合させるために、第1変速部14が電気的な無段変速機として機能させられる。すなわち、ハイブリッド制御手段74は例えば図6の燃費マップに示すようなエンジン回転速度NE とエンジン8の出力トルク(エンジントルク)TE とをパラメータとする二次元座標内において無段変速走行の時に運転性と燃費性とを両立するように、すなわちエンジン8の燃費向上のために予め実験的に定められたエンジン8の動作曲線である燃費最適動作線LEFを予め記憶しており、その燃費最適動作線LEFに沿ってエンジン8が作動させられるように、例えば目標出力(トータル目標出力、要求駆動力)を充足するために必要なエンジン出力を発生するためのエンジントルクTE およびエンジン回転速度NE となるように車両用動力伝達装置10のトータル変速比γTの目標値を定め、その目標値となるように第1変速部14の変速比γ0を制御する。具体的には、第2変速部20の変速比γCVT および車速Vに応じて定まる中間軸18の回転速度N18に応じて、第1回転機M1の発電制御などでサンギヤS0の回転速度を制御し、エンジン回転速度NE が上記燃費最適動作線LEF上の所定の目標回転速度となるようにする。
このとき、ハイブリッド制御手段74は、第1回転機M1により発電された電気エネルギーをインバータ92を通して蓄電装置94や第2回転機M2へ供給するので、エンジン8の動力の主要部は機械的に中間軸18へ伝達されるが、エンジン8の動力の一部は第1回転機M1の発電のために消費されて電気エネルギーに変換されるとともに、インバータ92を通して第2回転機M2へ供給され、その第2回転機M2が駆動されて中間軸18へ伝達される。この電気エネルギーの発生から第2回転機M2で消費されるまでに関連する機器により、エンジン8の動力の一部を電気エネルギーに変換し、その電気エネルギーを機械的エネルギーに変換するまでの電気パスが構成される。
ここで、本実施例のエンジン8は、理論空燃比の混合気を燃焼させるストイキ燃焼方式と理論空燃比よりも燃料が希薄な混合気を燃焼させるリーン燃焼方式との燃料消費特性が異なる2つの燃焼方式を備えており、走行状態に適した燃焼方式が採用される。すなわち、スロットル弁開度θTHやエンジン回転速度NE などからエンジン負荷を推定し、予め実験的に設定された条件に従ってエンジン8の燃焼方式をそのエンジン負荷に応じてストイキ燃焼方式またはリーン燃焼方式に切り換える。この燃焼方式の違いによりエンジン8の燃費最適動作線LEFも相違するため、燃焼方式に応じて2種類の燃費最適動作線LEF(最適燃費率曲線LEF、燃費マップ)が設定されており、図6の実線はストイキ燃焼方式の場合で、破線はリーン燃焼方式の場合である。そして、ハイブリッド制御手段74は、エンジン8の燃焼方式に応じた燃費最適動作線LEFを選択した上で、その選択した燃費最適動作線LEF上でエンジン8を作動させるように第1変速部14の変速比γ0を制御する。
なお、本実施例では、エンジン8単独で所定のトルク特性を満足しつつ燃費が最少となるようにエンジン回転速度NE およびエンジントルクTE をパラメータとして燃費最適動作線LEFが定められ、その燃費最適動作線LEF上でエンジン8が作動するように第1変速部14および第2変速部20の変速制御が互いに関連付けて行なわれるが、第1変速部14および第2変速部20を含む車両用動力伝達装置10のシステム全体のトータルのエネルギー効率、例えば電気パス等のエネルギー循環の効率や各部のフリクションロス等を含めたエネルギー効率が最も良くなるようにエンジン8の動作線(システム最適動作線)を設定し、そのシステム最適動作線上でエンジン8が作動するように第1変速部14および第2変速部20の変速制御を互いに関連付けて行なうこともできる。図6の一点鎖線は、このようなシステム最適動作線の一例である。
ハイブリッド制御手段74はまた、スロットル制御のためにスロットルアクチュエータ97により電子スロットル弁96を開閉制御する他、燃料噴射制御のために燃料噴射装置98による燃料噴射量や噴射時期を制御し、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置99による点火時期を制御する指令を単独で或いは組み合わせてエンジン出力制御装置64に出力し、必要なエンジン出力を発生するようにエンジン8の出力制御を実行するエンジン出力制御手段を機能的に備えている。例えば、ハイブリッド制御手段74は、基本的には図示しない予め記憶された関係からアクセル開度Accに基づいてスロットルアクチュエータ97を駆動し、アクセル開度Accが増加するほどスロットル弁開度θTHを増加させるようにスロットル制御を実行する。
図7の実線Aは、車両の発進/走行用(以下、走行用という)の駆動源をエンジン8と第2回転機M2とで切り換えるための、言い換えればエンジン8を走行用の駆動源として車両を発進/走行(以下、走行という)させる所謂エンジン走行と第2回転機M2を走行用の駆動源として車両を走行させる所謂モータ走行とを切り換えるための、エンジン走行領域とモータ走行領域との境界線である。この図7に示すエンジン走行とモータ走行とを切り換えるための境界線(実線A)を有する予め記憶された関係は、車速Vとアクセル開度Accとをパラメータとする二次元座標で構成された駆動源切換線図(駆動源マップ)の一例である。この駆動源切換線図はROM等に予め記憶されている。
そして、ハイブリッド制御手段74は、例えば図7の駆動源切換線図から車速Vとアクセル開度Accとで示される車両状態に基づいてモータ走行領域とエンジン走行領域との何れであるかを判断してモータ走行或いはエンジン走行を実行する。モータ走行領域は、一般に高トルク域に比較してエンジン効率が悪いとされる低アクセル開度で且つ比較的低車速の領域、すなわち低負荷域に設定される。このモータ走行領域におけるモータ走行時には、エンジン8が停止して引き摺り回転が抑制され、燃費が向上させられる。
上記モータ走行領域であっても、蓄電装置94の充電残量SOCが所定値以下となった場合や、温度が所定値以下で蓄電装置94の充放電効率が著しく低下する場合等には、第2回転機M2を力行制御することなく、エンジン8を駆動源として走行する。すなわち、車両の停止状態又は低車速状態に拘わらず、第1変速部14の電気的CVT機能(差動作用)によってエンジン8の運転状態を継続することが可能である。必要に応じて、車両停止時等にエンジン8により第1回転機M1を回転駆動するとともに、その第1回転機M1を発電制御することにより、発生した電気エネルギーで蓄電装置94を充電することもできる。
上記モータ走行とエンジン走行とを選択的に切り換えるために、ハイブリッド制御手段74は、エンジン8の始動および停止を行うエンジン始動停止制御手段76を備えており、例えばモータ走行領域からエンジン走行領域へ変化した場合には、第1回転機M1に通電して力行により第1回転機回転速度NM1を引き上げることで、すなわち第1回転機M1をスタータとして機能させることにより、エンジン8が自律回転可能な回転速度にまでエンジン回転速度NE を引き上げ、点火装置99により点火するなどしてエンジン8を始動し、モータ走行からエンジン走行へ切り換える。逆に、エンジン走行領域からモータ走行領域へ変化した場合には、燃料噴射装置98による燃料供給を停止させることにより、すなわちフューエルカットによりエンジン8を停止し、エンジン走行からモータ走行へ切り換える。
ハイブリッド制御手段74は、エンジン走行領域であっても、上述した電気パスによる第1回転機M1からの電気エネルギーおよび/または蓄電装置94からの電気エネルギーを第2回転機M2へ供給し、その第2回転機M2を駆動してエンジン8の動力を補助するトルクアシストが可能である。よって、本実施例ではエンジン8と第2回転機M2との両方を走行用の駆動源とする車両の走行はモータ走行ではなくエンジン走行に含まれるものとする。
前記切換制御手段80は、車両状態に基づいて前記差動状態切換装置(切換クラッチC0、切換ブレーキB0)の係合/解放を切り換えることにより、第1変速部14の前記無段変速状態と有段変速状態とを、すなわち前記差動状態と前記ロック状態とを選択的に切り換える。例えば、前記図7と同じ座標系に表された破線、一点鎖線及び二点鎖線で示す差動状態切換線図(差動状態切換マップ)を予め記憶しており、その差動状態切換線図から車速Vおよびアクセル開度Accで示される車両状態に基づいて切換ブレーキB0および切換クラッチC0をそれぞれ係合(ロック)させるべきか否かを判断して、油圧制御回路62へ指令信号を出力することにより切換ブレーキB0および切換クラッチC0をそれぞれ係合し、或いは解放する。例えば、アクセル開度Accが図7の判定アセル開度Acc1を超えた高開度である場合には車両状態がC0ロック領域にあるので、切換制御手段80は切換クラッチC0を係合させ、第1変速部14の変速比γ0を1に固定する。また、アクセル開度Accが比較的低いため車両状態が上記C0ロック領域には入らず、車速Vが判定車速V1を超えた高車速である場合には、車両状態がB0ロック領域にあるので、切換制御手段80は切換ブレーキB0を係合させ、第1変速部14を変速比γ0が0より小さい所定の値に固定された増速変速機として機能させる。そして、切換ブレーキB0または切換クラッチC0を係合させた場合には、ハイブリッド制御手段74に対して第1変速部14を電気的な無段変速機として機能させるハイブリッド制御を禁止し、車両状態が上記B0ロック領域にもC0ロック領域にも属さない無段変速領域である場合、すなわち図7においてアクセル開度Accが比較的小さい低アクセル開度で且つ車速Vが比較的低い低車速の領域では、切換ブレーキB0および切換クラッチC0を共に解放し、ハイブリッド制御手段74に対して上記ハイブリッド制御を許可する。
図7の太い破線および二点鎖線は第1変速部14を無段変速状態或いは有段変速状態(B0ロック状態)から有段変速状態(C0ロック状態)に切り換える判定アクセル開度Acc1を示し、太い一点鎖線は第1変速部14を無段変速状態から有段変速状態(B0ロック状態)に切り換える判定車速V1を示しており、判定アクセル開度Acc1を超えた高アクセル開度領域は、車速Vが判定車速V1を超えた高車速域か否かに拘らずC0ロック領域とされている。また、図7の細い破線は第1変速部14を有段変速状態(C0ロック状態)から無段変速状態に切り換える判定線で、細い一点鎖線は第1変速部14を有段変速状態(B0ロック状態)から無段変速状態に切り換える判定線で、細い二点鎖線は第1変速部14を有段変速状態(C0ロック状態)から有段変速状態(B0ロック状態)に切り換える判定線で、それぞれ太い破線、一点鎖線、二点鎖線で示される逆向きの判定線に対して所定のヒステリシスが設けられている。
上記判定車速V1は、高速走行において第1変速部14が差動状態とされると却って燃費が低下するため、これを抑制するために高速走行では第1変速部14が非差動状態とされるように設定されている。また、判定アクセル開度Acc1は、車両の高出力走行において第1回転機M1の反力トルクをエンジン8の高出力域まで対応させないで第1回転機M1を小型化するために、例えば第1回転機M1からの電気エネルギーの最大出力を小さくして配設可能とされた第1回転機M1の特性に応じて設定されている。なお、この差動状態切換マップすなわち切換条件は、エンジン8や回転機M1、M2の出力特性等を考慮して適宜設定することが可能で、例えばアクセル開度Accおよび車速Vの両方をパラメータとして変化する切換判定線を設定することもできるし、アクセル開度Accおよび車速Vの何れか一方のみ、或いはその他の車両状態に基づいて切り換えるようにすることもできる。
第2変速部制御手段82は、油圧制御回路62へ指令信号を出力して変速アクチュエータ154に対する作動油の供給、排出状態を切り換えたり、その作動油の油圧を制御したりすることにより、前記パワーローラ146の傾斜角度θPRを連続的に変化させて変速比γCVT を無段階に変更する変速制御手段として機能するものである。
ここで、ハイブリッド制御手段74による第1変速部14の変速比γ0の制御によってエンジン走行中は燃費向上のため、エンジン回転速度NE 及びエンジントルクTE などで示されるエンジン8の動作状態を示すエンジン運転点PEG(図6参照)が燃費最適動作線LEF上に位置するようにエンジン8が作動させられるが、更に、第1変速部14におけるエンジン8からの出力(駆動エネルギー)の伝達効率η11を向上させてシステム全体としての燃費向上が図られており、上記第2変速部制御手段82も、このような観点で第2変速部20の変速比γCVT を制御する。
すなわち、第2変速部制御手段82は、上述のように第2変速部20の変速制御を実行するが、エンジン走行中において第1変速部14が差動状態(無段変速状態)である場合には、図8に示される車速Vと第2変速部20の変速比γCVT との関係を定める第2変速部変速比マップから車速Vに基づいて第2変速部20の変速比γCVT を決定(設定)する。この図8の第2変速部変速比マップは、その第2変速部変速比マップに従って車速Vから上記変速比γCVT が決定され、燃費最適動作線LEF上のエンジン運転点PEGでエンジン8が作動させられた場合に、理想的には第1回転機回転速度NM1が0乃至は0付近になり、図2の共線図でサンギヤS0が回転停止するメカニカルロック点になるように、予め実験等により求められた車速Vと変速比γCVT との関係である。従って、図8の第2変速部変速比マップに従って第2変速部20の変速比γCVT を決定する第2変速部制御手段82は、車速Vおよび燃費最適動作線LEFに基づき、その燃費最適動作線LEF上にエンジン運転点PEGが位置するように第2変速部20の変速比γCVT を設定すると言える。そして、第1回転機回転速度NM1が0に近付くほど第1変速部14の伝達効率η11は向上するので、図8に従って決定される第2変速部20の変速比γCVT は、上記第1変速部14の伝達効率η11が充分に高くなるように、具体的に表現すればその伝達効率η11が予め定められた下限値以上になるように設定(決定)された変速比であると言える。
上記図8の第2変速部変速比マップは、2種類の燃焼方式に応じてそれぞれ設定された前記燃費最適動作線LEFに対応して、その2種類の燃焼方式に応じてそれぞれ設定され、ROM等に予め記憶されている。実線はストイキ燃焼方式の場合で、破線はリーン燃焼方式の場合であり、何れも、その第2変速部変速比マップに従って車速Vから変速比γCVT が決定されることにより、燃費最適動作線LEF上でエンジン8が作動させられた場合に第1回転機回転速度NM1が0乃至は0付近(メカニカルロック点)になるように予め実験等により求められて設定されている。このように燃焼方式に応じて図8の第2変速部変速比マップにより第2変速部20の変速比γCVT が決定された場合、第2変速部20の入力側の回転速度すなわち中間軸18の回転速度(第3回転要素RE3の回転速度)は変速比γCVT の相違に応じて相違するため、第1変速部14の各回転要素RE1〜RE3の相対回転速度を示す共線図は図9のようになり、第1回転機回転速度NM1は理想的にはメカニカルロック点からずれないように運転されるが、エンジン回転速度NE はそれぞれの燃焼方式の燃費最適動作線LEFに沿ったエンジン運転点PEGに対応した異なった回転速度になる。
ハイブリッド制御手段74はまた、第1変速部14の伝達効率η11を一層高めるために第1変速部制御手段78を機能的に備えている。エンジン走行中において第1変速部14が差動状態(無段変速状態)である場合に、第2変速部制御手段82が図8の第2変速部変速比マップに従って第2変速部20の変速比γCVT を決定すると、第1変速部制御手段78は、第1変速部14におけるエンジン8からの出力の伝達効率η11を高めるように第1回転機回転速度NM1を制御して第1変速部14の変速比γ0を決定(設定)し、変更する。第1変速部14の伝達効率η11は、第1回転機M1と第2回転機M2との間の電気パスで伝達される電気エネルギーである電気パス量、すなわち第1回転機M1の消費電力又は出力電力が0に近付くほど向上するので、第1変速部制御手段78は、差動用回転機である第1回転機M1の消費電力又は出力電力を0に近付けることによって上記第1変速部14の伝達効率η11を高める。
具体的には、第1変速部14の伝達効率η11が充分に高いと見ることができる予め定められた電気パス許容範囲内に第1回転機M1の消費電力又は出力電力(電気パス量)が入っているか否かを判断し、その判断が肯定的である場合、すなわち電気パス量が電気パス許容範囲内に入っている場合には、第1変速部制御手段78は現状の第1回転機回転速度NM1を維持する。一方、上記判断が否定的である場合には、第1変速部制御手段78は、図10に示されるような第1回転機回転速度NM1を0に近付ける方向に補正するための第1回転機回転速度変更値ΔNM1と上記電気パス量との予め設定された関係から、その電気パス量すなわち第1回転機M1の消費電力又は出力電力に基づいて第1回転機回転速度変更値ΔNM1を決定し、第1回転機回転速度NM1を0に近付ける方向すなわち上記電気パス量を0に近付ける方向に第1回転機回転速度NM1を第1回転機回転速度変更値ΔNM1だけ補正する。第1回転機回転速度変更値ΔNM1と上記電気パス量との関係は、図10では上記電気パス量が蓄電装置94の放電側或いは充電側に大きくなるほど第1回転機回転速度変更値ΔNM1が大きくなるように定められているが、電気パス量の大きさに拘らず第1回転機回転速度を予め定められた一定値だけ増加または減少させるようにしても良いなど、種々の態様が可能である。第1変速部制御手段78は、上記第1回転機回転速度NM1についての補正をした場合には、再び前記電気パス許容範囲内に第1回転機M1の消費電力又は出力電力(電気パス量)が入っているか否かを判断する。このように第1変速部制御手段78は、上記第1回転機M1の消費電力又は出力電力(電気パス量)についての判断が肯定されるまで、その判断と上記第1回転機回転速度NM1についての補正とを繰り返す。第1回転機M1の消費電力や出力電力すなわち電気パス量は、例えば第1回転機M1の消費電流や発生電流、発生電圧などから求められる。
上述のように第1変速部制御手段78は、第1回転機M1の消費電力又は出力電力を0に近付けることによって上記第1変速部14の伝達効率η11を高めるが、第1回転機回転速度NM1が0に近付くほど上記第1回転機M1の消費電力又は出力電力は0に近付くので、第1変速部制御手段78は第1回転機回転速度NM1を0に近付けることによって上記第1変速部14の伝達効率η11を高めてもよい。そのような場合には、第1変速部制御手段78が行う判断における前記電気パス許容範囲は、第1回転機回転速度NM1についての許容範囲である第1回転機回転速度許容範囲に置き換わり、第1変速部制御手段78は、その第1回転機回転速度許容範囲内に第1回転機回転速度NM1が入っているか否かを判断し、必要に応じて第1回転機回転速度NM1を補正する。第1回転機回転速度変更値ΔNM1を決定するための図10では、横軸が前記電気パス量から第1回転機回転速度NM1に置き換わる。
このように、第2変速部制御手段82が図8の第2変速部変速比マップにより第2変速部20の変速比γCVT を決定し、更に第1変速部制御手段78が前記電気パス量または第1回転機回転速度NM1を0に一層収束させることによって、第1変速部14の伝達効率η11が高められることとなる。
図11は、上記第1変速部制御手段78および第2変速部制御手段82による制御作動の要部、すなわちエンジン走行中において第1変速部14が差動状態(無段変速状態)である場合に、第1変速部14の伝達効率η11を向上させるための信号処理を具体的に説明するフローチャートで、例えば数msec〜数十msec程度のサイクルタイムで繰り返し実行される。図11のステップSA1、SA3〜SA5は第1変速部制御手段78に相当し、ステップSA2は第2変速部制御手段82に相当する。
図11のステップSA1では、前記第1回転機回転速度変更値ΔNM1を初期化する。具体的には、第1回転機回転速度変更値ΔNM1を0に設定する。ステップSA2では、図8の第2変速部変速比マップから車速Vに基づいて第2変速部20の変速比γCVT を決定し、その変速比γCVT が実現されるように、トロイダル式無段変速機にて構成されている第2変速部20のパワーローラ146の傾斜角度θPRを変速アクチュエータ154によって変更する。続くステップSA3では、第1回転機回転速度NM1を0に近付ける方向すなわち前記電気パス量を0に近付ける方向に、第1回転機回転速度NM1を第1回転機回転速度変更値ΔNM1だけ補正する。具体的には、現在の第1回転機回転速度NM1に第1回転機回転速度変更値ΔNM1を加算して目標とする第1回転機回転速度NM1を求め、その目標とする第1回転機回転速度NM1になるように第1回転機M1の力行トルク或いは発電トルク(回生トルク)を制御する。
次のステップSA4では、第1回転機M1の消費電力又は出力電力(電気パス量)が前記電気パス許容範囲内に入っているか否かを判断する。電気パス許容範囲は、その範囲内に0を含み、その上限値および下限値の絶対値が予め実験的に定められた閾値XE とされており、電気パス量の絶対値がその閾値XE 以下か否かを判断する。ここで、電気パス量としては第1回転機M1の消費電力又は出力電力が用いられているが、別の物理量、例えば第1回転機M1の制御電流値が上記電気パス量として用いられてもよい。第1回転機M1の制御電流値とは、上記消費電力に対応する駆動電流値(消費電流値)または上記出力電力に対応する発電電流値をいう。この判断が肯定的である場合、すなわち、第1回転機M1の消費電力又は出力電力(電気パス量)が前記電気パス許容範囲内に入っている場合には、本フローチャートを終了する。一方、この判断が否定的である場合にはステップSA5に移る。
上記ステップSA4の判断対象は、第1回転機M1の消費電力又は出力電力(電気パス量)であるが、それに代えて第1回転機回転速度NM1について判断してもよい。その場合には、ステップSA4は図12のように置き換わり、例えば上限値および下限値の絶対値が予め実験的に定められた閾値XNM1 とされた第1回転機回転速度許容範囲内に第1回転機回転速度NM1が入っているか否か、言い換えれば、第1回転機回転速度NM1の絶対値が上記閾値XNM1 以下か否かを判断すれば良い。
ステップSA5では、前記図10に示されるような第1回転機回転速度変更値ΔNM1と前記電気パス量との予め設定された関係から、その電気パス量すなわち第1回転機M1の消費電力又は出力電力に基づいて第1回転機回転速度変更値ΔNM1を決定する。そして、その第1回転機回転速度変更値ΔNM1を用いて前記ステップSA3以下の実行を繰り返し、電気パス量の絶対値が所定の閾値XE 以下になってステップSA4の判断が肯定されたら、一連の信号処理を終了する。
このようにすれば、図8により第2変速部20の変速比γCVT を決定する第2変速部制御手段82は、車速Vおよび燃費最適動作線LEFに基づき、その燃費最適動作線LEFにエンジン運転点PEGが沿うように第2変速部20の変速比γCVT を設定すると言えるので、上記エンジン8を最適燃費で運転することが可能であり、エンジン8の動作状態に起因した燃費低下を抑制できる。また、第2変速部20は、変速比γCVT を連続的に変化させることができるトロイダル式無段変速機にて構成されているため、その第2変速部20の変速比γCVT を変化させることにより、エンジン回転速度NE が車速Vに拘束されないようにすることが可能であり、第1変速部14をその伝達効率η11が充分に高い所定の差動状態に維持しつつ、燃費最適動作線LEFにエンジン運転点PEGが沿うようにエンジン8を運転させることができる。
また、第1変速部制御手段78は、第1変速部14におけるエンジン8からの出力の伝達効率η11を高めるように第1回転機回転速度NM1を制御して第1変速部14の変速比γ0を決定し変更するので、第1変速部14の伝達効率η11低下による燃費低下を抑制できる。
また、第1変速部制御手段78は、第1回転機M1の消費電力又は出力電力を0に近付けることによって第1変速部14の伝達効率η11を高めるので、その消費電力又は出力電力、すなわち電圧一定であればその制御電流値等を検出することにより、上記伝達効率η11を高めることを容易に実施し得る。
また、第1変速部制御手段78は第1回転機回転速度NM1を0に近付けることによって第1変速部14の伝達効率η11を高めてもよく、そのようにした場合には、第1回転機回転速度NM1を検出することにより上記伝達効率η11を高めることを容易に実施し得る。
図5に戻って、前記高回転防止手段84は、第2変速部20の変速状態すなわち変速速度SγCVT のずれに基づいて、第1変速部14を構成している回転要素、具体的にはサンギヤS0、リングギヤR0、キャリアCA0の回転速度が高回転になったり、キャリアCA0に対する遊星歯車P0の相対回転速度ΔNP(図15参照)が高回転になったりすることを防止する高回転防止制御を実施するもので、走行状態判定手段86、変速ずれ判定手段87、高回転判定手段88、および回転低減手段89を機能的に備えている。走行状態判定手段86は車両が走行状態か否かを判定するもので、変速ずれ判定手段87は第2変速部20の変速ずれを判定するもので、高回転判定手段88は第1変速部14の回転要素の何れかが所定の高回転防止域に達しているか否かを判定するもので、回転低減手段89は第1変速部14の所定の回転要素が高回転とならないように回転速度を低下させるものである。
すなわち、例えば加速時に車速Vの上昇に伴って第2変速部20の変速比γCVT が小さくなるハイギヤ側へアップシフトされる際に、その時の変速速度SγCVT が設計的に定められた正規の変速速度よりも遅いと、入力側の中間軸18の回転速度N18の低下が遅くなり、図14の(a) に示すように、第1変速部14のキャリアCA0やリングギヤR0、更にはそれ等に連結されたエンジン8、第2回転機M2の回転速度が車速Vの上昇に伴って上昇し、予め定められた制限速度(上限値)を超える高回転防止域に達する可能性がある。また、アクセルペダルが踏込み操作された加速要求時に、第2変速部20の変速比γCVT が大きくなるローギヤ側へダウンシフトされる際に、その時の変速速度SγCVT が設計的に定められた正規の変速速度よりも速いと、入力側の中間軸18の回転速度N18の上昇が速くなり、図14の(b) に示すように、第1変速部14のキャリアCA0やリングギヤR0、更にはそれ等に連結されたエンジン8、第2回転機M2の回転速度がその変速に伴って上昇し、予め定められた制限速度(上限値)を超える高回転防止域に達する可能性がある。高回転防止域は、例えば遊星歯車装置24の各部の軸受や歯車等の耐久性、エンジン8や第2回転機M2の規格、仕様等に基づいて定められる。
また、第1変速部14における遊星歯車P0の回転速度NP0を共線図に示すと図15のようになり、直線L0と縦線Y4との交点が回転速度NP0で、キャリアCA0に対する相対回転速度ΔNPが大きくなると、その遊星歯車P0や軸受等の耐久性が損なわれる可能性がある。図15の縦線Y2とY4との間の間隔δ0は、縦線Y1とY2との間の間隔を1.0とした時、ギヤ比ρ0を用いて2ρ0/(1−ρ0)で表され、サンギヤS0の回転速度が略0に維持されると、回転速度NP0はキャリアCA0やリングギヤR0に比較して高回転になり、強度や耐久性等もそれに応じて設定されるが、相対回転速度ΔNPが制限速度を超えて高回転になると耐久性が損なわれる可能性がある。
図13は、前記高回転防止手段84によって実行される制御作動(信号処理)の要部を具体的に説明するフローチャートで、第1変速部14が差動状態か非差動状態(定変速状態)か、或いはエンジン走行時かモータ走行時かを問わず、例えば数msec〜数十msec程度のサイクルタイムで繰り返し実行される。図13のステップSS1は走行状態判定手段86に相当し、ステップSS2は変速ずれ判定手段に相当し、ステップSS3は高回転判定手段88に相当し、ステップSS4は回転低減手段89に相当する。
図13のステップSS1では、シフトレバー68のシフトポジション(操作位置)PSHが車両を走行させる駆動ポジションか否か、具体的には前進自動変速走行ポジション「D」、前進手動変速走行ポジション「M」、および後進走行ポジション「R」の何れかであるか否かにより、車両が走行状態であるか否かを判定する。このステップSS1の判断がYES(肯定)の場合には、続いてステップSS2を実行し、第2変速部20の実際の変速速度SγCVT と予め設計的に定められた基準変速速度とのずれ量の絶対値が予め定められた許容範囲を超えているか否かを判断し、変速ずれが発生しているか否かを判定する。変速速度SγCVT は、実際の変速比γCVT すなわち(中間軸18の回転速度N18/出力軸22の回転速度NOUT )の変化速度で、例えば本フローチャートを実行するサイクルタイム毎の変速比γCVT の変化量を用いることができる。また、上記許容範囲は、予め一定値が定められても良いが、第2変速部20の変速比γCVT が大きいローギヤ側程、入力側すなわち第1変速部14側の回転速度が高くなり、僅かな変速ずれで所定の回転要素が高回転になる可能性が高くなるため、本実施例では図16に示すように、車速V等に応じて設定される第2変速部20の変速比γCVT (設定値)をパラメータとしてその変速比γCVT が大きいローギヤ側程小さくなるようにマップや演算式等により設定されている。
上記ステップSS2の判断がYES(肯定)の場合には、更にステップSS3を実行し、第1変速部14の回転要素の何れかが予め定められた高回転防止域に達しているか否かを判断する。具体的には、第1変速部14のキャリアCA0やリングギヤR0、サンギヤS0、或いはそれ等に連結されたエンジン8、第2回転機M2、第1回転機M1の回転速度が設計値以上に高回転になる領域に達しているか否か、またはその可能性があるか否か等を判断する。また、遊星歯車P0に関しても、キャリアCA0に対する相対回転速度ΔNPが、軸受等に応じて定められた設計値以上に高回転になる領域に達しているか否か、またはその可能性があるか否か等を判断する。なお、必ずしも常に全ての回転要素について判定する必要はなく、例えば第1変速部14が差動状態か否か等により高回転が問題になる所定の回転要素についてだけ判定するようにしても良い。また、判定を要する回転要素の回転速度に対して一定の関係を有する他の部材の回転速度で判定を行なうことも可能である。
そして、上記ステップSS3の判断がYES(肯定)の場合、すなわちステップSS1〜SS3の判断が総てYES(肯定)の場合には、ステップSS4を実行し、ステップSS3で高回転防止域に達していると判定された回転要素の回転速度を低下させるための回転低減制御を実行する。この回転低減制御は、例えば前記入力回転要素であるキャリアCA0に連結されたエンジン8のスロットル弁開度θTHを強制的に低減してエンジントルクを低下させたり、出力回転要素であるリングギヤR0に連結された第2回転機M2の力行トルクを強制的に低下させ、或いは回生トルクを発生させたりして行なう。また、第1変速部14の差動を制限する差動制限クラッチ、具体的には切換クラッチC0を所定の係合トルクでスリップ係合させ、或いは完全係合させることにより、複数の回転要素の差動を制限して回転速度を低下させることもできる。遊星歯車P0については、エンジン8の回転速度NE や第1回転機M1の回転速度NM1を上昇させて、相対回転速度ΔNPを低下させることもできる。
図17は、第1変速部14が差動状態でのエンジン走行時で、アクセルペダルが踏込み操作されたアクセル踏込み状態での加速中に、第2変速部20の変速比γCVT が小さくなるようにアップシフトされる際に、実際の変速比γCVT (=N18/NOUT )のアップシフト変化が遅くなり、図13のフローチャートに従って高回転防止制御が実行された場合のタイムチャートの一例である。第2変速部変速比γCVT の欄に示す破線は正規の変化で、実線は、変速比γCVT のアップシフト変化が遅くなった場合であり、時間t1は、変速速度SγCVT のずれ量が許容範囲を超えてステップSS2、SS3の判断が何れもYESとなり、ステップSS4の回転低減制御の実行が開始された時間である。回転低減制御は、この例ではエンジン8のスロットル弁開度θTHが強制的に低減されてエンジントルクが低下させられるとともに、第2回転機M2の力行トルクが強制的に低下させられ、それ等の回転速度NE およびNM2が共に低減されて、高回転になることが防止される。
一方、ステップSS1〜SS3の何れか一つでもNO(否定)の場合には、上記ステップSS4の回転低減制御を実行することなく、ステップSS5を実行する。ステップSS5では、前記第1変速部制御手段78によって決定された変速比γ0および第2変速部制御手段82によって決定された変速比γCVT に基づく変速制御など通常の制御をそのまま許可する。これにより、基本的にはエンジン8が燃費最適動作線LEF上で作動させられるとともに、第1変速部14が伝達効率η11が充分に高い所定の差動状態に維持され、優れた燃費効率、エネルギー効率で車両が走行させられる。
このように、本実施例の車両用動力伝達装置10においては、ステップSS2で第2変速部20の変速速度SγCVT のずれ量が所定の許容範囲を超えたか否かを判断し、許容範囲を超えた場合にはステップSS3以下を実行し、第1変速部14を構成している所定の回転要素が高回転になることを防止する高回転防止制御を実施するため、入力回転要素(キャリアCA0)やそれに連結されたエンジン8、回転機連結要素(サンギヤS0)やそれに連結された第1回転機M1、出力回転要素(リングギヤR0)やそれに連結された第2回転機M2、或いはキャリアCA0に対する遊星歯車P0の相対回転速度ΔNP、などが変速速度SγCVT のずれに起因して高回転となり、それ等の歯車や軸受、エンジン8、回転機M1、M2等の耐久性が損なわれることが抑制される。
また、本実施例では、ステップSS2で第2変速部20の変速速度SγCVT のずれ判定が為された後、ステップSS3を実行し、実際に所定の回転速度が高回転防止域に達しているか否かを判断し、高回転防止域に達している場合にステップSS4で回転低減制御を実行するため、回転低減制御の実行が必要最小限に抑制され、その実行に伴う燃費悪化や走行性能の悪化が必要最小限に抑制される。また、ステップSS2で変速速度SγCVT のずれ判定が為された時だけステップSS3以下を実行するため、ステップSS3を常に実行する場合に比較して信号処理等の制御負荷が軽減される。
また、本実施例では、ステップSS2で第2変速部20の変速速度SγCVT のずれ判定を行なう際に、図16に示すように第2変速部20の入力側すなわち第1変速部14側の回転速度が高くなるローギヤ側程許容範囲が小さくされているため、その第2変速部20の変速比γCVT の相違に拘らず、所定の回転要素が高回転になるような変速ずれを適切に判定することができる。
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の実施例において前記実施例と実質的に共通する部分には同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
図18は、前記図13に対応するフローチャートで、前記変速ずれ判定手段87は、ステップSS2に代えてステップSS2−1を実施する点が前記実施例と相違している。すなわち、前記実施例では変速速度SγCVT のずれ量に基づいて変速状態を判断していたが、本実施例では第2変速部20の実際の変速比γCVT (=中間軸18の回転速度N18/出力軸22の回転速度NOUT )と前記第2変速部制御手段82により車速V等に応じて設定された変速比γCVT (目標変速比)とのずれ量に基づいて変速状態を判断する点が相違する。具体的には、変速比γCVT のずれ量の絶対値が、予め定められた許容範囲を超えているか否かを判断する。許容範囲は、予め一定値が定められても良いが、第2変速部20の変速比γCVT が大きいローギヤ側程、入力側すなわち第1変速部14側の回転速度が高くなり、変速比γCVT の僅かなずれで所定の回転要素が高回転になる可能性が高くなるため、本実施例では図19に示すように、第2変速部20の変速比γCVT (設定値)をパラメータとしてその変速比γCVT が大きいローギヤ側程小さくなるようにマップや演算式等により設定されており、その許容範囲を超えているか否かによって変速ずれが発生しているか否かを判定する。
図20は、第1変速部14が差動状態でのエンジン走行時で、アクセルペダルが踏込み操作されたアクセル踏込み状態での加速中に、第2変速部20の変速比γCVT が小さくなるようにアップシフトされる際に、実際の変速比γCVT (=N18/NOUT )のアップシフト変化が遅くなり、図18のフローチャートに従って高回転防止制御が実行された場合のタイムチャートの一例である。第2変速部変速比γCVT の欄に示す破線は正規の変化で、実線は、実際の変速比γCVT のアップシフト変化が遅くなった場合であり、時間t1は、実際の変速比γCVT のずれ量が許容範囲を超えてステップSS2−1、SS3の判断が何れもYESとなり、ステップSS4の回転低減制御の実行が開始された時間である。回転低減制御は、この例ではエンジン8のスロットル弁開度θTHが強制的に低減されてエンジントルクが低下させられるとともに、第2回転機M2の力行トルクが強制的に低下させられ、それ等の回転速度NE およびNM2が共に低減されて、高回転になることが防止される。本実施例においても、前記実施例と同様の作用効果が得られる。
図21は前記図5に対応する機能ブロック線図で、この車両用動力伝達装置110は、前記実施例1に比較して第1変速部制御手段78、第2変速部制御手段82の代わりに第1変速部制御手段112、第2変速部制御手段114を備えている点が相違する。
第2変速部制御手段114は、前記実施例の第2変速部制御手段82と同様に第2変速部20の変速を行う変速制御手段として機能し、エンジン走行中において第1変速部14が差動状態(無段変速状態)である場合には、前記図8の第2変速部変速比マップから車速Vに基づいて第2変速部20の変速比γCVT を基本変速比として決定(設定)するとともに、第1変速部14の伝達効率η11と第2変速部20における伝達効率ηCVT との乗算値ηP (以下、「全体効率ηP 」という)を高めるように、その第2変速部20の変速比γCVT を変更する。具体的には、図22に示すような第1変速部14の変速比γ0に応じて変化する上記変速比γCVT と全体効率ηP との関係である伝達効率マップが実験的に求められてROM等に予め記憶されており、第2変速部制御手段114は、第1変速部14の変速比γ0をエンジン回転速度NE と第2回転機回転速度NM2とから検出するとともに、図22の伝達効率マップからその検出された変速比γ0に基づいて現在の第2変速部20の変速比γCVT に対応する全体効率ηP を把握する。その上で、図22の伝達効率マップ上でその全体効率ηP がより高くなるように、図8の第2変速部変速比マップにより決定された第2変速部20の前記基本変速比に対して補正を行い、最終的な変速比γCVT を決定(設定)する。
ここで、図8の第2変速部変速比マップに従って第2変速部20の変速比γCVT が基本変速比に設定されることで、第1変速部14においては理想的には第1回転機回転速度NM1が0乃至は0付近になってその伝達効率η11は高められるので、上記基本変速比に対する変速比γCVT の補正は上記全体効率ηP (η11×ηCVT )がより高くなるようにすることではあるが、専ら第2変速部20の伝達効率ηCVT (以下、「CVT効率ηCVT 」という)がより高くなるようにすることである。
上記第2変速部制御手段114の機能を更に具体的に説明すると、図8の第2変速部変速比マップにより第2変速部20の変速比γCVT を決定した後、図22の伝達効率マップから現在の第1変速部14の変速比γ0に対応する伝達効率曲線Lηを選択し、その選択された伝達効率曲線Lηにおいて現在の第2変速部20の変速比γCVT に対応する全体効率ηP が点PMAX (図22参照)で示される最高効率から所定量低い伝達効率下限判定値以上であるか否かを判断する。この伝達効率下限判定値は、全体効率ηP が充分に高いと見ることができる全体効率ηP の目標範囲の下限値である。その判断が肯定的である場合、すなわち上記全体効率ηP が上記伝達効率下限判定値以上である場合には、現状の第2変速部20の変速比γCVT を維持する。一方、上記判断が否定的である場合、すなわち全体効率ηP が上記伝達効率下限判定値を下回っている場合には、最高効率を示す点PMAX に対応した目標となる変速比γCVT と現状の変速比γCVT との差に応じて、その最高効率点PMAX に近付く方向に第2変速部20の変速比γCVT を所定の変速比変更値ΔγCVT だけ補正する。変速比変更値ΔγCVT は、最高効率点PMAX における変速比γCVT と現状の変速比γCVT との差をそのまま用いることもできるが、本実施例では、第2変速部20の変速比γCVT が急に大きく変動することを防止するため、変速比変更値ΔγCVT の上限値である補正ガード値が予め設けられており、変速比変更値ΔγCVT (絶対値)がその補正ガード値を超えない範囲内で第2変速部20の変速比γCVT を補正する。すなわち、図22から求めた変速比変更値ΔγCVT の絶対値が上記補正ガード値を超えた場合には、その絶対値がその補正ガード値にまで小さくされるガード処理をした上で、上記第2変速部20の変速比γCVT を補正をする。図22に例示されるように、第2変速部20の変速比γCVT が変速比変更値ΔγCVT だけ一度補正されただけでは、その補正後の全体効率ηP が上記伝達効率下限判定値に達しない場合がある。第2変速部制御手段114は、上記第2変速部20の変速比γCVT の補正をした場合には、再び全体効率ηP が上記伝達効率下限判定値以上であるか否かを判断し、全体効率ηP が伝達効率下限判定値以上となるまで第2変速部20の変速比γCVT の補正をを繰り返す。
第2変速部制御手段114が上記第2変速部20の変速比γCVT の補正をすることは、前述したように、専ら第2変速部20のCVT効率ηCVT がより高くなるようにすることでもあるので、この第2変速部制御手段114は、その判断対象を全体効率ηP ではなくCVT効率ηCVT としてもよい。そのようにした場合には、図22の伝達効率マップは、その縦軸を第2変速部20のCVT効率ηCVT とした伝達効率マップに置き換わり、第2変速部制御手段114は、全体効率ηP についてではなく、現在の第2変速部20の変速比γCVT に対応するCVT効率ηCVT が点PMAX (図22参照)で示される最高効率から所定量低いCVT効率下限判定値以上であるか否かを判断する。
図23は、上記第2変速部制御手段114によって実行される制御作動の要部、すなわちエンジン走行中において第1変速部14が差動状態(無段変速状態)である場合に、前記全体効率ηP を向上させるための制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec〜数十msec程度のサイクルタイムで繰り返し実行される。
先ず、ステップSB1では、第2変速部20の変速比γCVT が補正される場合の補正量である前記変速比変更値ΔγCVT を初期化する。具体的には、変速比変更値ΔγCVT を0に設定する。ステップSB2では、第2変速部20の前記基本変速比として図8の第2変速部変速比マップから車速Vに基づいて第2変速部20の変速比γCVT を決定し、ステップSB3では、後述のステップSB5およびステップSB6で設定される変速比変更値ΔγCVT を現在の第2変速部20の変速比γCVT に加算して補正する。具体的には、目標とする第2変速部20の変速比γCVT として、現在の変速比γCVT に変速比変更値ΔγCVT を加算した変速比を設定し、その目標とする変速比γCVT になるように、トロイダル式無段変速機にて構成されている第2変速部20のパワーローラ146の傾斜角度θPRを変速アクチュエータ154によって変更する。
ステップSB4では、図22の伝達効率マップから現在の第1変速部14の変速比γ0に対応する伝達効率曲線Lηを選択し、その選択した伝達効率曲線Lηにおいて現在の第2変速部20の変速比γCVT に対応する全体効率ηP が前記伝達効率下限判定値以上であるか否かを判断する。ここで、本来的にはその全体効率ηP が図22の伝達効率マップでの前記最高効率点PMAX に達していないか否かを判断すべきところ、制御負荷軽減のため上記伝達効率下限判定値を用いて判断する。この判断が否定的である場合、すなわち、上記全体効率ηP が伝達効率下限判定値より低い場合にはステップSB5を実行する一方、この判断が肯定的である場合には本フローチャートを終了する。
上記ステップSB4の判断対象は上記全体効率ηP であるが、それに代えて第2変速部20のCVT効率ηCVT について判断してもよい。その場合にはステップSB4は図24のように置き換わり、図22において縦軸を第2変速部20のCVT効率ηCVT として予め設定された伝達効率マップに基づいて、現在の第2変速部20の変速比γCVT に対応するCVT効率ηCVT がCVT効率下限判定値以上であるか否かを判断する。
ステップSB5では、最高効率点PMAX (図22参照)に対応した目標となる変速比γCVT と現状の変速比γCVT との差を求め、その差を変速比変更値ΔγCVT とする。また、ステップSB6では、その変速比変更値ΔγCVT のガード処理を行い、変速比変更値ΔγCVT の絶対値が予め定められた補正ガード値を超えた場合には、変速比変更値ΔγCVT をその補正ガード値に修正する。従って、ステップSB5にて決定された変速比変更値ΔγCVT はステップSB6を経て確定する。そして、その変速比変更値ΔγCVT を用いて前記ステップSB3以下の実行を繰り返し、全体効率ηP が前記伝達効率下限判定値以上となってステップSB4の判断が肯定されたら、一連の信号処理を終了する。
図21に戻って、前記第1変速部制御手段112は、上記第2変速部制御手段114によって制御される第2変速部20の変速比γCVT に応じて変化する中間軸18の回転速度N18に基づいて、エンジン8を前記燃費最適動作線LEF上で作動させる第1回転機回転速度NM1を算出し、その第1回転機回転速度NM1となるように第1回転機M1を回生或いは力行制御する。蓄電装置94の充電残量SOCが所定値以下になるなどして第1回転機M1の力行制御が不可の場合には、その第1回転機M1のトルクを0とし、第2変速部20の変速比γCVT の変化に伴う中間軸18すなわちリングギヤR0の回転速度変化に伴って、燃費最適動作線LEF上で作動させられるエンジン8の回転速度NE に対して第1回転機回転速度NM1が従動的に負側へ回転させられるようにするだけでも良い。
本実施例によれば、第2変速部制御手段114は、第1変速部14における伝達効率η11と第2変速部20における伝達効率ηCVT との乗算値である全体効率ηP を高めるように第2変速部20の変速比γCVT を決定(設定)し変更するので、第1変速部14または第2変速部20の伝達効率低下による燃費低下を抑制できる。
また、上記全体効率ηP (CVT効率ηCVT )がより高くなるように、図8の第2変速部変速比マップにより決定された第2変速部20の前記基本変速比に対して変速比γCVT の補正を行い、その変速比γCVT を決定し変更するので、図8による上記基本変速比の決定により上記全体効率ηP がある程度高い状態から上記補正が開始されることとなり、効率的に第2変速部20の変速比γCVT を補正し設定できる。
また、第2変速部制御手段114は、現在の第2変速部20の変速比γCVT に対応する全体効率ηP が点PMAX (図22参照)で示される最高効率から所定量低い伝達効率下限判定値以上であるか否かを判断し、その判断が否定的である場合には、上記点PMAX に近付く方向に第2変速部20の変速比γCVT を変速比変更値ΔγCVT だけ補正するので、充分に第2変速部20の伝達効率γCVT が高くなったところで上記補正が終了し制御負荷を軽減できる。
また、上記変速比変更値ΔγCVT には予め補正ガード値が設けられており、第2変速部制御手段114は変速比変更値ΔγCVT (絶対値)がその補正ガード値を超えない範囲内で第2変速部20の変速比γCVT を補正するので、第2変速部20の変速比γCVT が急に大きく変化することが回避され、乗員に違和感を生じさせないようすることが可能である。
また、図22に示すような伝達効率マップが実験的に求められて予め記憶されており、第2変速部制御手段114は、その伝達効率マップに基づいて第2変速部20の変速比γCVT を補正し、その変速比γCVT を決定(設定)し変更するので、いちいち全体効率ηP を算出する場合に比較して制御負荷を軽減できる。
一方、このような車両用動力伝達装置110においても、前記実施例と同様に高回転防止手段84によって図13または図18のフローチャートに従って信号処理が行なわれ、第2変速部20の変速速度SγCVT のずれ量または変速比γCVT のずれ量が所定の許容範囲を超えたか否かを判断し、許容範囲を超えた場合にステップSS3以下を実行して高回転防止制御を実施することにより、第1変速部14の各部の回転要素やそれに連結されたエンジン8、回転機M1、M2等の高回転による耐久性の低下が抑制されるなど、前記実施例と同様の効果が得られる。
図25は、本発明が好適に適用される他の車両用動力伝達装置160を説明する図で、前記図1に対応する骨子図であり、この車両用動力伝達装置160は、前記実施例1に比較してトロイダル式無段変速機から成る第2変速部20に代えて、ベルト式無段変速機から成る第2変速機162が設けられている点が主として相違する。第1回転機M1および第2回転機M2の配設位置等も相違しているが、機能的には実施例1と変わらないため、以下、第2変速部162について具体的に説明する。
この図25の車両用動力伝達装置160は、ハイブリッド車両において横置きされるFF(フロントエンジン・フロントドライブ)型車両に好適に用いられるもので、前記中間軸18と平行に出力軸164が配設されており、それ等の中間軸18と出力軸164との間にベルト式無段変速機から成る第2変速部162が配設されている。そして、エンジン8から第1変速部16、第2変速部162を経て出力軸164に伝達された駆動力は、更に、互いに噛み合うデフドライブギヤ32およびデフリングギヤ34、差動歯車装置(終減速機)36、および一対の車軸37等を順次介して左右の駆動輪38へ伝達される。
第2変速部162は、その変速比γCVT (=中間軸18の回転速度N18/出力軸164の回転速度NOUT )を機械的作用により連続的に変化させることができるもので、中間軸18に連結された入力側プーリ40と、その入力側プーリ40と並列に出力軸164に設けられた出力側プーリ42と、それ等一対のプーリ40、42の間に巻き掛けられて摩擦力により動力伝達可能に連結する伝動ベルト44とを備えている。入力側プーリ40は、回転軸方向にスライド可能な円錐状の入力側スライドプーリ46とスライド不能に固定された円錐状の入力側フィックスプーリ48とから構成されており、それ等の間に伝動ベルト44が接触するV字状の入力側プーリ溝50が形成されている。出力側プーリ42も入力側プーリ40と同様に構成されており、出力側スライドプーリ52および出力側フィックスプーリ54を備えているとともに、両者の間に伝動ベルト44が接触するV字状の出力側プーリ溝56が形成されている。
このような第2変速部162においては、例えば出力側プーリ42のスライドプーリ52が図示しない油圧シリンダによってフィックスプーリ54に対して押圧されることにより、それ等のスライドプーリ52とフィックスプーリ54との間で伝動ベルト44が挟圧されて所定の張力が付与され、動力伝達のための摩擦力が発生させられる。また、入力側プーリ40のスライドプーリ46が図示しない油圧シリンダによってフィックスプーリ48に対して押圧されると、その入力側プーリ40のベルト接触径(有効径)が大きくなるとともに、それに同期して出力側プーリ42のベルト接触径が小さくなり、第2変速部162の変速比γCVT がハイギヤ側へ連続的に小さくされる一方、油圧シリンダの油圧が低下してスライドプーリ46がフィックスプーリ48から離間させられると、入力側プーリ40のベルト接触径が小さくなるとともに、それに同期して出力側プーリ42のベルト接触径が大きくなり、第2変速部162の変速比γCVT がローギヤ側へ連続的に大きくされる。
このように、第2変速部162としてベルト式無段変速機を備えている車両用動力伝達装置160においても、トロイダル式無段変速機を備えている前記実施例1や実施例2と同様に、その第2変速部162の変速速度SγCVT のずれ量や変速比γCVT のずれ量に基づいて高回転防止制御が実施されることにより、前記実施例1や実施例2と同様の作用効果が得られる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
8:エンジン(駆動源) 10、110、160:車両用動力伝達装置(動力伝達装置) 12:入力軸 14:第1変速部(差動部) 18:中間軸(出力軸) 20、162:第2変速部(無段変速部) 60:電子制御装置 84:高回転防止手段 S0:サンギヤ(回転要素) CA0:キャリア(回転要素) R0:リングギヤ(回転要素) P0:ピニオンギヤ(回転要素) M1:第1回転機 M2:第2回転機 γCVT :変速比(無段変速部の変速比) SγCVT :変速速度
Claims (5)
- 差動機構の回転要素に連結された回転機の運転状態が制御されることにより、駆動源に連結された入力軸の回転速度と出力軸の回転速度との差動状態が制御される差動部と、
該差動部の前記出力軸の回転速度を無段階に変速することができる無段変速部と、
を動力伝達経路に直列に備えている動力伝達装置において、
前記無段変速部の変速状態に基づいて、前記差動部を構成している回転要素が高回転になることを防止する高回転防止制御を実施する高回転防止手段を設けた
ことを特徴とする動力伝達装置。 - 前記高回転防止手段は、前記無段変速部の変速速度に基づいて前記高回転防止制御を実施する
ことを特徴とする請求項1に記載の動力伝達装置。 - 前記高回転防止手段は、前記無段変速部の変速速度のずれに基づいて前記高回転防止制御を実施する
ことを特徴とする請求項2に記載の動力伝達装置。 - 前記高回転防止手段は、前記無段変速部の変速比に基づいて前記高回転防止制御を実施する
ことを特徴とする請求項1に記載の動力伝達装置。 - 前記高回転防止手段は、前記無段変速部の変速比のずれに基づいて前記高回転防止制御を実施する
ことを特徴とする請求項4に記載の動力伝達装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2008053853A JP2009208635A (ja) | 2008-03-04 | 2008-03-04 | 動力伝達装置 |
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JP2018001868A (ja) * | 2016-06-29 | 2018-01-11 | トヨタ自動車株式会社 | ハイブリッド車両 |
-
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- 2008-03-04 JP JP2008053853A patent/JP2009208635A/ja active Pending
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