JP2009207495A - カダベリン・脂肪族ジカルボン酸塩 - Google Patents

カダベリン・脂肪族ジカルボン酸塩 Download PDF

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Abstract

【課題】より簡単な製造プロセスにより高反応収率、高生産速度および高純度でカダベリン・ジカルボン酸塩を製造する。
【解決手段】本発明の課題は、L−リジン・ジカルボン酸塩水溶液に、L−リジン脱炭酸酵素遺伝子を導入した大腸菌もしくはL−リジン脱炭酸酵素を細胞表面に局在化させた大腸菌を接触させることにより解決される。更には、L−リジン・ジカルボン酸塩水溶液を、ジカルボン酸によりpHを制御しながら行ったL−リジン発酵液を用い、更にL−リジン脱炭酸酵素を同発酵液を用いることにより調整する。こうして得られたカダベリン・ジカルボン酸塩水溶液から、濃縮、有機溶媒添加、ろ過、晶析をすることによりカダベリン・ジカルボン酸塩を製造することによって解決される。
【選択図】なし

Description

本発明は、カダベリン・ジカルボン酸塩の製造法に関するものである。カダベリン・ジカルボン酸塩はポリアミドの原料として期待され、需要が高まりつつある。
従来、L−リジンを微量のテトラリン過酸化物を含むシクロヘキサノール中で煮沸することによりカダベリンが得られることが知られている(非特許文献1参照。)。しかしながら高温反応であるために大量のエネルギーおよび有機溶媒が必要であるうえに、反応収率が非常に低い(36%)。
また、2−シクロヘキセン−1−オンなどのビニルケトン類を触媒としてリジンから合成する方法が知られている(非特許文献2参照。)。
さらにL−リジンを、3−メチル−シクロヘキセノンを触媒にナトリウムメトキシド含むシクロヘキサノール中で155℃3時間加熱攪拌することによりカダベリンが得られることが知られている(特許文献1参照。)。
また、この方法によって得られるカダベリンには不純物として、トリ−n−ブチルアミンや2,3,4,5−テトラヒドロピリジンといった塩基性化合物が含有されている。
また、カダベリンは生体内に普遍的に存在する生体アミンであり、その生合成系が解明されつつある(非特許文献3参照。)。また、エシェリシア・コリ(Escherichia coli)由来のL−リジン脱炭酸酵素遺伝子が知られている(非特許文献4参照。)。
また、カダベリンの組み換え大腸菌での発酵による製造方法(特許文献2参照)および組み換え大腸菌での酵素法による製造方法(特許文献3参照)が知られている。
一方、細胞表面にタンパク質を局在化させる研究は、多くの細菌において行われている。大腸菌について細胞表面にタンパク質を局在化させる研究が活発に行われている(非特許文献5参照。)。
また、ポリアミドは、原料であるフリーのジアミンおよびフリーのジカルボン酸を、各々を精製した後、等モル混合し重合反応を行い製造していた。従来のジアミンおよびジカルボン酸は石油由来の原料を用いるため、溶媒を特に用いることなくフリーのジアミンおよびジカルボン酸が得られた(非特許文献6参照。)。そのため水溶液からのジアミン・ジカルボン酸の晶析を検討する必要はなかった。
しかし、化学合成法とは異なる発酵または酵素法によりポリアミド原料を製造するためには、溶媒として水を使うことが一般的であり、また発酵または酵素法を行うためには溶液のpHの調整が一般的に必要である。これら中和剤としてはアルカリ金属水酸化物または無機酸が一般的に用いられ、それらの塩としてジアミンまたはジカルボン酸が晶析されている。例えば、ジカルボン酸であるコハク酸の発酵による製法などでは、コハク酸カルシウムとして晶析し精製している(特許文献4参照。)。
しかしながら、カダベリン・ジカルボン酸塩の製造について実際的な製造技術は確立されておらず、副生廃棄物の少ない、高純度のカダベリン・ジカルボン酸塩を製造する方法の開発が望まれている。
特開昭60−23328号公報第11〜12頁 特開2002−223770号公報第5頁 特開2002−223771号公報第4〜5頁 特開昭62−294090号公報第6頁
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トリ−n−ブチルアミンおよび2,3,4,5−テトラヒドロピリジンが多く含有されているカダベリン・ジカルボン酸塩をポリマーの原料とする場合、たとえば、カダベリン・ジカルボン酸塩を含む原料からポリアミドを加熱重縮合で合成する際には、反応温度が高温であるため、カダベリン・ジカルボン酸塩に含まれるトリ−n−ブチルアミンや2,3,4,5−テトラヒドロピリジンなどの塩基性化合物がポリアミドの分解反応を起こし得られたポリアミドに耐熱性が不足するといった問題点がある。
さらに、トリ−n−ブチルアミンは、水性生物に有毒で、魚類に対する致死量は20−40mg/lであるといった問題点もある。
L−リジンを発酵法により製造する際に中和剤として塩酸を使用し、その発酵液から酵素法によりカダベリンを製造する際に中和剤として塩酸を使用すると、カダベリンを二塩酸塩として晶析することになる。そうするとカダベリン二塩酸塩をイオン交換法や抽出法などによりフリー化する必要があり、工程が複雑になり、溶媒が必要となったり副生成物などの廃棄処理が必要になったりする。
また、発酵装置および酵素調整装置は別々の反応器で行われることが一般的であり、装置のメンテナンスおよび管理が複雑になる。
また発酵液中にはアミノ酸が含まれているが、アミノ酸の水への溶解度は高く、また、カダベリン・ジカルボン酸塩の水への溶解度も高い。そのため水溶液から直接カダベリン・ジカルボン酸塩のみを晶析する事ができない。
またポリアミドに重合する際にカダベリン・ジカルボン酸塩中にアミノ酸が含まれていると、アミノ酸が重合されポリマーの分岐を起こしたり、ポリマーの結晶化度を低下させたりする。
本発明の課題は、このような不純物の少ないカダベリン・ジカルボン酸塩を、より簡単な製造プロセスで、発酵および酵素反応の際にアルカリ金属水酸化物または無機酸を中和剤に使用することなく、水溶液からカダベリン・ジカルボン酸塩を製造する方法を提供することである。
上記問題点を解決するために、本発明者らは、カダベリン・ジカルボン酸塩の製造方法について鋭意研究を行った結果、L−リジン・ジカルボン酸塩水溶液にL−リジン脱炭酸酵素を作用させることによりカダベリン・ジカルボン酸塩を効率的に得られることを見出した。
すなわち、本発明は、
「(1)L−リジン・ジカルボン酸塩水溶液に、L−リジン脱炭酸酵素を作用させ、反応液からカダベリン・ジカルボン酸塩を単離することを特徴とするカダベリン・ジカルボン酸塩の製造方法。
(2)2,3,4,5−テトラヒドロピリジンの含有量が1.4wt%以下のカダベリン・ジカルボン酸塩。
(3)トリ−n−ブチルアミンの含有量が0.006wt%以下のカダベリン・ジカルボン酸塩。
(4)上記(1)の方法で得られたカダベリン・ジカルボン酸塩または上記(2)あるいは(3)記載のカダベリン・ジカルボン酸塩を原料として含有するポリアミド。」である。
本発明によれば、一つの発酵装置で高反応収率、高生産速度および高純度でのカダベリン・ジカルボン酸塩の工業的製造方法およびカダベリン・ジカルボン酸塩の単離方法が提供される。
L−リジン脱炭酸酵素細胞内発現ベクターpLDC1のフィジカルマップを示す図である。 L−リジン脱炭酸酵素細胞表面発現ベクターpTM16のフィジカルマップを示す図である。 実施例4〜6における時間とカダベリン生産量の関係を示す図である。
カダベリンとは1,5−ペンタンジアミンのことであり、ポリマー原料として有用な化合物である。
本発明において、L−リジン脱炭酸酵素とは、少なくともL−リジンをカダベリンに転換させる酵素でありさえすれば、何等限定されるものではなく、L−リジン脱炭酸能以外の酵素作用も併せ持っていても良い。但し、その場合、本発明において、カダベリン・ジカルボン酸塩の製造に大きく支障をきたすような副反応等を引き起こすものは好ましくない。前記L−リジン脱炭酸酵素は、エシェリシア・コリ(Escherichia coli K12)株をはじめとするエシェリシア属微生物のみならず、多くの生物に存在することが知られている。
本発明において使用されるL−リジン脱炭酸酵素に特に制限はないが、例えば、バシラス・ハロドゥランス(Bacillus halodurans)、バシラス・サブチリス(Bacillus subtilis)、エシェリシア・コリ(Escherichia coli)、セレノモナス・ルミナンチウム(Selenomonas ruminantium)、ビブリオ・コレラ(Vibrio cholerae)、ビブリオ・パラヘモリティカス(Vibrio parahaemolyticus)、ストレプトマイセス・コエリカーラ(Streptomyces coelicolor)、ストレプトマイセス・ピロサス(Streptomyces pilosus)、エイケネラ・コロデンス(Eikenella corrodens)、イユバクテリウム・アシダミノフィルム(Eubacterium acidaminophilum)、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)、ハフニア・アルベイ(Hafnia alvei)、ナイセリア・メニンギチデス(Neisseria meningitidis)、テルモプラズマ・アシドフィルム(Thermoplasma acidophilum)、またはピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)由来のものが好ましく用いられる。さらに好ましくは安全性の認められているエシェリシア・コリ由来のものである。
本発明における生成物は、アルカリ性の化合物であるカダベリンであるために、反応が進行するにつれ、反応液のpHはアルカリ側に変化していく。しかし、L−リジン・ジカルボン酸塩水溶液に、L−リジン脱炭酸酵素を作用させれば、反応液のpHを制御する必要がなく効率よくカダベリンを生産できる。
リジン発酵において培養pH調整にはアンモニアおよびジカルボン酸を使用することが好ましく、これら中和剤を用い培養pHを5〜8に、特に好ましくはpH7に制御するのがよい。なお中和剤の状態に制限はなく、気体、液体、固体または水溶液で使用される。特に好ましくは水溶液である。
本発明においては、L−リジン・ジカルボン酸塩水溶液は、好ましくは、L−リジン発酵微生物を培養した発酵液、より好ましくは、L−リジン発酵微生物を培養する際に、ジカルボン酸により培養液のpHを調整しながら行った発酵液である。その際に、L−リジン脱炭酸酵素活性を有する細胞として使用する微生物も特に制限はなく、好ましくはコリネバクテリウム(Corynebacterium)属またはブレビバクテリウム(Brevibacterium)属に属する微生物であり、更に好ましくはコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)である。
使用する培地は、炭素源、窒素源、無機イオンおよび必要に応じその他有機成分を含有する培地が用いられる。例えば、炭素源としては、グルコース、ラクトース、ガラクトース、フラクトース、アラビノース、マルトース、キシロース、トレハロース、リボースや澱粉の加水分解物などの糖類、グリセロール、マンニトールやソルビトールなどのアルコール類、グルコン酸、フマル酸、クエン酸やコハク酸等の有機酸類を用いることができる。窒素源としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機アンモニウム塩、大豆加水分解物などの有機窒素、尿素、アンモニアガス、アンモニア水等を用いることができる。有機微量栄養素としては、各種アミノ酸、ビタミンB1等のビタミン類、RNA等の核酸類などの要求物質または酵母エキス等を適量含有させることが望ましい。それらの他に、必要に応じて、無機イオンとして、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、鉄イオン、マンガンイオン等が少量添加される。なお、前記に列記した、炭素源、窒素源、有機微量栄養素、無機イオンの例示は、以下、典型培地成分群という。
更に好ましくは、コリネバクテリウム・グルタミカムの場合硫酸マグネシウム、クエン酸、硫酸鉄、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、リン酸カリウム、リン酸水素カリウム、尿素、L−スレオニン、L−メチオニン、L−ロイシン、ビオチンおよびチアミンが含まれる培地である。
培養条件にも特に制限はなく、例えばコリネバクテリウム・グルタミカムの場合、好気条件下で16〜150時間程度実施するのが良く、培養温度は25℃〜42℃に、特に好ましくは30℃である。
中和剤として用いるジカルボン酸に特に制限はなく、好ましくは、官能基としては2つのカルボキシル基のみを有する脂肪族および/または芳香族のジカルボン酸である。官能基としては2つのカルボキシル基のみを有する脂肪族または芳香族のジカルボン酸とは、前記2つのカルボキシル基以外には、実質上、官能基が存在しないものである。ここでいう官能基とは、ポリアミド重合反応(反応条件としては、例えば、反応温度250〜270℃、圧力10〜20kg/cmで反応時間1から5時間)の際にアミノ基やカルボキシル基等と反応して、ポリマーの分岐を引き起こしたり、ポリマーの結晶化度を低下(結晶化度80%以下)させるような基を指す。例えばアミノ基やカルボキシル基がこれに該当するが、それ以外には、酸性基(スルホン酸基、リン酸基、フェノール性水酸基等)や塩基性基(ヒドラジノ基等)やプロトニックな極性基(水酸基等)や開裂性を有する基(エポシキ基、過酸化基等)やその他反応性の高い基(イソシアナート基等)が該当することが多い。一方、ハロゲン置換基や芳香族性置換基は比較的安定であり、エーテル、エステル、アミド等も安定であり、官能性が低い場合が多い。
ジカルボン酸として、より好ましくは、以下の一般式(1)、(2)または(3)で示されるジカルボン酸である。
HOOC−(CH)−COOH (1)
(但し、一般式(1)において、m=0〜16)
Figure 2009207495
Figure 2009207495
(但し、一般式(2)、(3)において、n,o,p,q=0〜5)
更に好ましくは一般式(1)において、m=0〜10、および/または、該一般式(2)および/または(3)において、n,o,p,q=0〜1である。
より更に好ましくは、アジピン酸、セバシン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、コハク酸、イソフタル酸、テレフタル酸である。
水溶液中のL−リジンおよびジカルボン酸のモル比に制限はない。L−リジンは塩酸との塩を形成する際1:1のモル比でL−リジン・塩酸塩を形成する。そのためL−リジン・ジカルボン酸塩の状態では水溶液中にはL−リジンとジカルボン酸のモル比は1:0.5であるはずである。しかし、用いるL−リジン脱炭酸酵素の至適pH付近になるように調整するために、ジカルボン酸をさらに添加(L−リジン:ジカルボン酸=1:0.55〜0.75[モル比])することが好ましい。またはアルカリを添加する必要がある場合はアンモニアで調整することが好ましい。
L−リジン脱炭酸酵素は本来ビタミンB6と結合し存在するが、L−リジン・ジカルボン酸塩水溶液にビタミンB6を添加することにより、生産速度および反応収率を向上させることができる。ビタミンB6を添加する方法には特に制限はない。反応中に適宜添加しても良い。好ましくはL−リジン脱炭酸酵素が溶液状態であれば、酵素溶液中に添加することが好ましい。反応液中でのビタミンB6の濃度については特に制限はなく。好ましくは反応液に0.05mMのビタミンB6濃度となるように加えればよい。用いるビタミンB6に特に制限はない。好ましくは、ピリドキシン、ピリドキサミン、ピリドキサルおよびピリドキサルリン酸から選ばれる少なくとも1種である。さらに好ましくはピリドキサルリン酸である。
本発明において使用されるL−リジン脱炭酸酵素または、L−リジン脱炭酸酵素活性を有する細胞としては、特に制限はないが、例えば、L−リジン脱炭酸酵素が細胞内で高発現した組換え細胞(細胞内発現組み換え細胞)などを適当な培地で培養し、増殖した細胞を遠心分離、または、更に酵素の分離などの通常の方法により回収したものなどが挙げられる。
また、これとは別に、L−リジン脱炭酸酵素が細胞表面で局在化した組み換え細胞(細胞表面発現組み換え細胞)などを適当な培地で培養し、増殖した細胞を回収したものでも良い。
L−リジン脱炭酸酵素が細胞表面で局在化した組み換え細胞とは、少なくともL−リジン脱炭酸酵素が細胞表面に局在化している状態であり、細胞内に同時にL−リジン脱炭酸酵素が存在していても良い。
一方、細胞表面にL−リジン脱炭酸酵素を局在化させる具体的な方法としては、例えば、分泌シグナル配列の一部、細胞表面局在タンパク質の一部をコードする遺伝子配列、L−リジン脱炭酸酵素の構造遺伝子配列をこの順で有するDNAを大腸菌に導入すればよい。
分泌シグナル配列の一部に制限はない。宿主においてタンパク質を分泌するために必要な配列であればよい。大腸菌においては、例えばリポプロテインの配列の一部であり、具体的には、アミノ酸配列としてMKATKLVLGAVILGSTLLAGCSSNAKIDQ(アミノ酸の一文字表記)と翻訳される遺伝子配列であることが好ましい。
細胞表面局在タンパク質の一部をコードする遺伝子配列に特に制限はない。大腸菌においては、例えば外膜結合タンパク質の配列の一部であり、具体的にはOmpA(外膜結合タンパク質)の46番目のアミノ酸から159番目のアミノ酸までの配列の一部であることが好ましい。
L−リジン脱炭酸酵素遺伝子、リポプロテイン遺伝子およびOmpA遺伝子をクローニングする方法に特に制限はない。既知の遺伝子情報に基づき、PCR(polymerase chain reaction)法を用いて必要な遺伝領域を増幅取得する方法、既知の遺伝子情報に基づきゲノムライブラリーやcDNAライブラリーより相同性や酵素活性を指標としてクローニングする方法などが挙げられる。例えばエシェリシア・コリK12株の染色体DNAよりPCR法を用いてL−リジン脱炭酸酵素をコードする遺伝子であるcadA遺伝子またはldc遺伝子をクローニングする。この際使用する染色体DNAはエシェリシア・コリ由来であればどの菌株由来でもよい。なお、本発明においては、これらの遺伝子は、遺伝的多形性などによる変異型も含む。遺伝的多形性とは、遺伝子上の自然突然変異により遺伝子の塩基配列が一部変化しているものをいう。
L−リジン脱炭酸酵素が細胞表面に局在化していることの確認は、例えばL−リジン脱炭酸酵素を抗原として作製した抗体により、細胞表面発現組み換え細胞を免疫反応後、包埋、薄切りし、電子顕微鏡(免疫電顕法)により観察することで確認できる。
本発明では、L−リジン脱炭酸酵素は、L−リジン脱炭酸酵素の細胞内もしくは細胞表面での活性が上昇した組換え細胞から調製されたものが好ましく使用できる。細胞内もしくは細胞表面でL−リジン脱炭酸酵素の活性を上昇させる方法に特に制限はない。具体的には、例えば、L−リジン脱炭酸酵素の酵素量を増加させる方法、もしくは酵素の構造遺伝子自体に変異を導入して、酵素そのものの比活性を上昇させることなどが挙げられる。
細胞内もしくは細胞表面の酵素量を増加させる手段としては、遺伝子の転写調節領域の改良、遺伝子のコピー数の増加、蛋白への翻訳の効率化などが挙げられる。
転写調節領域の改良とは、遺伝子の転写量を増加させる改変を加えることをいう。例えば、プロモーターに変異を導入することによってプロモーター強化を行い、下流にある遺伝子の転写量を増加させることができる。プロモーターに変異を導入する以外にも、宿主内で強力に発現するプロモーターを導入しても良い。例えば大腸菌においては、lac、tac、trpなどのプロモーターが挙げられる。また、エンハンサーを新たに導入することによって遺伝子の転写量を増加させることができる。染色体DNAのプロモーター等の遺伝子導入については、例えば特開平1−215280号公報に記載されている。
遺伝子のコピー数の上昇は、具体的には、遺伝子を多コピー型のベクターに接続して組換えDNAを作製し、該組換えDNAを宿主細胞に保持させることにより達成することができる。ここでベクターとは、プラスミドやファージ等広く用いられているものを含むが、これら以外にも、トランソポゾン(バーグ,D.E.(Berg,D.E)、外1名,「バイオ/テクノロジー(Bio/Technology)」,1983年,第1巻,p.417)やMuファージ(特開平2−109985号公報)も含む。遺伝子を相同組換え用プラスミド等を用いた方法で染色体に組み込んでコピー数を上昇させることも可能である。
蛋白の翻訳効率を上昇させる方法としては、例えば原核生物においてはSD配列、真核生物ではKozakのコンセンサス配列を導入、改変することや、使用コドンの最適化(特開昭59−125895号公報)などが挙げられる。
L−リジン脱炭酸酵素の細胞内もしくは細胞表面での活性を上昇させる手段としては、L−リジン脱炭酸酵素の構造遺伝子自体に変異を導入して、L−リジン脱炭酸酵素そのものの活性を上昇させることも挙げられる。
遺伝子に変異を生じさせるには、部位特異的変異法(クラマー,W.(Kramer,W.)、外1名,「メゾットインエンザイモロジー(Methods in Enzymology)」,1987年,第154巻,p.350)、リコンビナントPCR法、特定の部分のDNAを化学合成する方法、または当該遺伝子をヒドロキシアミン処理する方法や当該遺伝子を保有する菌株を紫外線照射処理、もしくはニトロソグアニジンや亜硝酸などの化学薬剤で処理する方法がある。
組換え細胞としては、微生物、動物、植物、または昆虫由来のものが好ましく使用できる。例えば動物を用いる場合、マウス、ラットやそれらの培養細胞などが用いられる。植物を用いる場合、例えばシロイヌナズナ、タバコやそれらの培養細胞が用いられる。また、昆虫を用いる場合、例えばカイコやその培養細胞などが用いられる。また、微生物を用いる場合、例えば、大腸菌などが用いられる。
また、L−リジン脱炭酸酵素を複数種組み合わせて使用しても良い。
L−リジン脱炭酸酵素を得るために、組換え細胞を培養する方法に特に制限はないが、例えば微生物を培養する場合、使用する培地は、炭素源、窒素源、無機イオンおよび必要に応じその他有機成分を含有する培地が用いられる。例えば、大腸菌の場合しばしばLB培地が用いられる。好ましい成分として、前記典型培地成分群があげられる。
更に好ましい培地は、L−リジン発酵を行った後の発酵液である。この発酵液にL−リジン脱炭酸酵素を得るために必要な栄養素を更に添加しても良い。
培養条件にも特に制限はなく、例えば大腸菌の場合、好気条件下で16〜72時間程度実施するのが良く、培養温度は30℃〜45℃に、特に好ましくは37℃に、培養pHは5〜8に、特に好ましくはpH7に制御するのがよい。なおpH調整には無機あるいは有機の酸性あるいはアルカリ性物質、さらにアンモニアガス等を使用することができる。
L−リジン脱炭酸酵素を高発現させた宿主がL−リジンまたはカダベリンまたはジカルボン酸を資化してしまう場合、L−リジン脱炭酸酵素を精製して用いる方が好ましい。
例えば、回収した細胞内発現組み換え細胞から細胞破砕液を調整するには、通常の方法が用いられる。すなわち、細胞内発現組み換え細胞を超音波処理、ダイノミル、フレンチプレス等の方法にて破砕し、遠心分離により細胞残渣を除去することにより細胞破砕液が得られる。
細胞破砕液からL−リジン脱炭酸酵素を精製するには、硫安分画、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、等電点沈殿、熱処理、pH処理など酵素の精製に通常用いられる手法が適宜組み合わされて用いられる。
工業的には精製方法は簡便な方がよく、部分的に精製したL−リジン脱炭酸酵素を作用させることが好ましい。部分的な精製とは、工業的に容易な処理のみ行うことであり例えば熱処理、pH処理等が挙げられる。好ましくは熱処理である。さらに好ましくは単離精製したL−リジン脱炭酸酵素を作用させることである。L−リジン脱炭酸酵素を部分的に精製、または単離精製することで、L−リジンの分解やカダベリンの分解またはジカルボン酸の分解を引き起こす酵素を取り除くことができる。
本発明で使用する精製されたL−リジン脱炭酸酵素は、固定化することで繰り返しカダベリン合成反応に使用することができ、酵素の調製に必要なコストを低減させることができる。固定化方法としては、アクリルアミドなどの合成高分子に包括する方法、セファロースやスチレン樹脂を骨格とするイオン交換性担体や疎水性担体に吸着させる方法、または、ガラス担体に共有結合で結合させる方法などが挙げられる。
さらに、L−リジン脱炭酸酵素が細胞表面に局在化している細胞を作用させれば、L−リジンの分解およびカダベリンの分解を抑制することができ、より高生産速度でカダベリンが得られる。さらにはその細胞を回収することで繰り返し酵素反応に利用することができる。しかも酵素の調整が非常に簡便である。
これらL−リジン脱炭酸酵素活性を有する細胞をゲル状担体により包括固定化すると、細胞および酵素が安定化し、酵素の繰り返し利用が簡便にできるようになる。
ゲル状担体としては、特に制限はない。高分子多糖類でも合成高分子でもよく、好ましくは高分子多糖類である。より好ましくは、アルギン酸、カッパーカラギーナンまたはポリアクリルアミドのいずれかであり、更に好ましくはカッパーカラギーナンである。
包括固定する方法に特に制限はない。L−リジン脱炭酸酵素活性が低下しない程度の穏和な条件で行うことが好ましい。
包括固定するゲル状担体の量に特に制限はない。調整したL−リジン脱炭酸酵素活性を有する細胞のすべてを包括固定できればよい。
一般的に酵素というものは本来あるべきアミノ酸配列で自然界に存在するため、人工的にアミノ酸配列を付与もしくは欠如させると酵素の活性を失うことが多い。しかし本発明において細胞内にL−リジン脱炭酸酵素を発現させる場合、L−リジン脱炭酸酵素のN末端アミノ酸配列に1から30個のアミノ酸配列を付与したL−リジン脱炭酸酵素が好ましく使用できる。ここで、N末端に付与するものは6から10個のヒスチジン残基が好ましい。このように、N末端アミノ酸配列にアミノ酸を付与することで、L−リジン脱炭酸酵素の精製を簡便にできるようにすることができる。N末端アミノ酸配列に1から30個のアミノ酸を付与する方法に特に制限はない。例えばL−リジン脱炭酸酵素遺伝子に付与したいアミノ酸配列に相当する塩基配列を遺伝子工学的手法を用い、組み換えればよい。用いる遺伝子工学的手法に特に制限はないが。好ましくはPCR法やDNA断片同士の連結による方法がある。
L−リジン脱炭酸酵素によるL−リジン・ジカルボン酸塩水溶液からカダベリンへの変換は、上記のようにして得られるL−リジン脱炭酸酵素を、L−リジン・ジカルボン酸塩水溶液に接触させることによって行うことができる。
用いるL−リジン脱炭酸酵素の量に特に制限はない。L−リジン・ジカルボン酸塩水溶液をカダベリン・ジカルボン酸塩水溶液に変換する反応を触媒するのに十分な量であればよい。好ましくは反応液中の酵素濃度が25から70mg/lである。好ましくは50mg/lである。一方、休止細胞を使用する際は、反応液中の細胞濃度が5から15g/lである。好ましくは10g/lである。
なお、本発明においてL−リジン脱炭酸酵素活性を有する細胞又はL−リジン脱炭酸酵素の活性は、後述の実施例6又は参考例1(2)の条件で,JM109/pTV118N株又はその細胞破砕液の活性の、好ましくは10(より好ましくは50)倍以上である。
反応温度は、通常、28〜55℃、好ましくは35〜48℃である。
反応液の状態に特に制限はない。好ましくは静置または攪拌状態である。攪拌状態にする方法には特に制限はない。好ましくは攪拌翼により攪拌する方法である。
反応時間は、使用する酵素活性、L−リジン・ジカルボン酸塩濃度などの条件によって異なるが、通常、1〜72時間である。また、反応は、L−リジン・ジカルボン酸塩を供給しながら連続的に行ってもよい。
このように生成したカダベリン・ジカルボン酸塩を反応終了後、反応液から採取する方法としては、通常の単離または晶析を用いれば良く、例えば、好ましくは反応液を濃縮し、有機溶媒を添加した晶析操作により採取できる。
晶析操作前に水溶液中のカダベリンとジカルボン酸を等モルに調整することが好ましい。更に好ましくはジカルボン酸を過剰に加える方がよい。
本発明で、反応液に添加する有機溶媒は、アルコール類、ケトン類またはニトリル類が好ましい。更に好ましくは、炭素数6以下の脂肪族アルコール類、炭素数6以下の脂肪族ケトン類または炭素数6以下の脂肪族ニトリル類である。
例えば有機溶媒の具体的例として、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、イソプロパノール、アセトニトリルまたはアセトン等が挙げられる。
その他、有機溶媒は単独である必要はなく、混合溶媒で有っても良い。例えば、エタノール・アセトン混合液等が挙げられる。
本発明で用いる有機溶媒量は特に限定されないが、カダベリン・ジカルボン酸塩を含む水溶液の重量に対して通常0.1〜5倍、本発明を特に効果的に実施するためには0.3〜2倍が使用される。あるいは、カダベリン・ジカルボン酸塩重量に対して、好ましくは1〜10(より好ましくは3〜7)倍である。
カダベリン・ジカルボン酸塩を含む水溶液と有機溶媒との接触方法は任意であり、バッチ法であっても連続法であってもよい。
晶析を効率的に行うために、および釜効率を良くするためにカダベリン・ジカルボン酸塩を含む水溶液は濃縮するのが好ましい。濃縮の程度は、無機塩およびカダベリン・ジカルボン酸塩が結晶として析出しない程度が好ましい。水溶液中のカダベリン・ジカルボン酸塩濃度、その他の塩濃度によって濃縮の程度は変わるが、重量基準で1/4〜1/30まで濃縮するのが好ましく、1/10〜1/20まで濃縮するのがより好ましい。
濃縮方法は常圧濃縮、減圧濃縮のいずれでもよいが、濃縮時の液温は通常、水の沸点以下で行われる。かかる液温とするとカダベリン・ジカルボン酸塩が分解する恐れがない。
このようにして、製造されたカダベリン・ジカルボン酸塩は、カダベリン1分子とジカルボン酸1分子よりなる塩であると考えて良いが、何等他の形態を排除するものでもなく、例えばカダベリン2分子とカルボン酸2分子より形成された塩等が含まれていても良い。
本発明の精製方法は、カダベリン・ジカルボン酸塩を含む水溶液に、不純物としてアミノ酸が含まれている場合の精製に特に有効である。含まれているアミノ酸に特に制限はない。好ましくは、非電荷・極性アミノ酸(グリシン、L−セリン、L−トレオニン、L−システイン、L−チロシン、L−アスパラギンおよびL−グルタミン)、酸性アミノ酸(L−アスパラギン酸およびL−グルタミン酸)および塩基性アミノ酸(L−リジン、L−アルギニンおよびL−ヒスチジン)のいずれかが含まれている場合の精製に特に有効である。更に好ましくは、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸およびL−リジンのいずれかが含まれている場合である。本発明において、水溶液中に含まれるアミノ酸濃度は、好適には0.01〜1重量%である。前記数値範囲の下限とを下回るとカダベリンの生成が困難となる可能性があり、一方、上限値を上回ると単離・晶析が困難となる恐れがあり、いずれも好ましくない。
次いで、濃縮工程で濃縮されたカダベリン・ジカルボン酸塩水溶液に有機溶媒を添加し、析出した結晶を遠心分離などの通常の固液分離の方法によって取り除き、この有機溶媒からカダベリン・ジカルボン酸塩を通常の晶析分離操作によりカダベリン・ジカルボン酸塩を単離する。例えば、有機溶媒を添加した濃縮液をそのまま冷却してカダベリン・ジカルボン酸塩を晶析した後、結晶を遠心分離などの通常の固液分離の方法によって単離すると高純度のカダベリン・ジカルボン酸塩を得ることができる。
晶析行程でカダベリン・ジカルボン酸塩から分離された有機溶媒は晶析操作にリサイクルすることが好ましい。
かくして単離したカダベリン・ジカルボン酸塩は再度既知の晶析精製方法で、つまり、有機溶媒で均一溶液とした後、その均一液を冷却したり、熱時ろ過したろ液を冷却したりしてカダベリン・ジカルボン酸塩を結晶化させ、高純度品にできる。
このようにして得られたカダベリン・ジカルボン酸塩は、トリ−n−ブチルアミンおよび2,3,4,5−テトラヒドロピリジンなどの不純物が少ない。本発明の方法で製造することで、以下の方法で分析した場合に、トリ−n−ブチルアミンの含有量が、0.006wt%以下のカタベリン・ジカルボン酸塩が得られる。さらに、以下の方法で分析した場合に、2,3,4,5−テトラヒドロピリジンの含有量が1.4wt%以下のものが得られる。さらに、トリ−n−ブチルアミンの含有量が、0.006wt%以下であり、かつ、2,3,4,5−テトラヒドロピリジンの含有量が1.4wt%以下のものが得られる。
トリ−n−ブチルアミンおよび2,3,4,5−テトラヒドロピリジンの分析は、GC−MS法によって以下の条件で行う。
GC−MS:HP6980/HP5973A
カラム:NUKOL 30m×0.24mmI.D. 0.2μm Film
オーブン:120℃(一定)
インジェクト:200℃(Split 10:1)
流速:He 2.4ml/min(一定)
MS:230℃(SCAN m/z=30から400)。
このようにして得られたカダベリン・ジカルボン酸塩は、ポリアミドの原料として有用である。
ポリアミドの製造方法としては、こうして得られたカダベリン・ジカルボン酸塩および水の混合物を、加熱して脱水反応を進行させる加熱重縮合法が用いられる。また、加熱重縮合後、固相重合することによって、分子量を上昇させることも可能である。固相重合は、100℃から融点の温度範囲で、真空中、あるいは不活性ガス中で加熱することにより進行し、加熱重縮合では分子量が不十分なポリアミドを高分子量化することができる。
本発明で得られるカダベリン・ジカルボン酸塩をポリアミドの原料とすることで、耐熱性の高いポリアミドが得られる。
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。
[L−リジン濃度およびカダベリン濃度のHPLCによる分析方法]
使用カラム:CAPCELL PAK C18(資生堂)
移動相:0.1%(w/w)リン酸水溶液:アセトニトリル=4.5:5.5
検出:UV360nm
サンプル前処理:分析サンプル25μlに内標として1,4−ジアミノブタン(0.03M)を25μl、炭酸水素ナトリウム(0.075M)を150μlおよび2,4−ジニトロフルオロベンゼン(0.2M)のエタノール溶液を添加混合し37℃で1時間保温する。上記反応溶液50μlを1mlアセトニトリルに溶解後、10,000rpmで5分間遠心した後の上清10μlをHPLC分析した。
[アジピン酸、コハク酸濃度のHPLCによる分析方法]
使用カラム:SCR−101H(島津製作所)
移動相:0.025%(v/v)硫酸水溶液
検出:UV214nm
サンプル前処理:分析サンプルを、検量線が直線性を有することができる範囲内の濃度となるように、水で希釈し、10μlをHPLC分析した。
参考例1(L−リジン脱炭酸酵素の調整)
(1)L−リジン脱炭酸酵素遺伝子のクローニングおよび細胞内発現ベクターの作製
L−リジン脱炭酸酵素を用いてL−リジン・ジカルボン酸塩からカダベリン・ジカルボン酸塩に変換させるために、エシェリシア・コリのL−リジン脱炭酸酵素遺伝子(cadA)のクローニングを行った。
データベース(GenBank)に登録されているL−リジン脱炭酸酵素遺伝子(Accession No.M76411)の塩基配列を参考にオリゴヌクレオチドプライマー5’−atgaacgttattgcaatattg−3’(配列番号:1)、5’−gctgatgggtgagatagaatg−3’(配列番号:2)を合成した。エシェリシア・コリK12株(ATCC10798)から常法に従い調整したゲノムDNAの溶液を増幅鋳型として0.2mlのミクロ遠心チューブに0.2μlづつ取り、各プライマーを20pmol、20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)、2.5mM塩化カリウム、100μg/mlゼラチン、50μM各dNTP、2単位 LATaqDNAポリメラーゼ(宝酒造製)となるように各試薬を加え、全量を50μlとした。DNAの変性条件を94℃、30秒、プライマーのアニーリング条件を55℃、30秒、DNAプライマーの伸長反応条件を72℃、3分の各条件でBioRad社のサーマルサイクラーを用い、30サイクル反応させた(ポリメラーゼ連鎖反応:以後、PCR法と記す)。尚、本実施例におけるPCR法は特に断らない限り、本条件にて行った。このPCR法により得られた産物を1%アガロースにて電気泳動し、cadA遺伝子を含む約2.1kbのDNA断片を常法に従い調整した。この断片を、プラスミドベクターpT7blue(Novagen社製)のEcoRV部位の3’−末端にT塩基が付加された間隙に、常法に従ったライゲーション反応により挿入し、得られたプラスミドをpT7−cadAと命名した。
このpT7−cadAを増幅鋳型として、オリゴヌクレオチド5’−cgccatgggccatcatcatcatcatcatcatcatatgaacgttattgcaatattg−3’(配列番号:3)、5’−cgcggatccgctgatgggtgagatagaatg−3’(配列番号:4)をプライマーセットとしたPCR法を行った。ここで得られる産物は、オリゴヌクレオチド(配列番号:3)由来の塩基配列と、オリゴヌクレオチド(配列番号:4)由来の塩基配列が、それぞれcadA遺伝子を含むDNA断片の5’末端、および3’末端に付加されている。この産物を1%アガロースにて電気泳動し、約2.1kbのDNA断片を常法に従い調整した。この断片を、プラスミドベクターpT7blue(Novagen社製)のEcoRV部位の3’−末端にT塩基が付加された間隙に、常法に従ったライゲーション反応により挿入し、得られたプラスミドをpT7−cadA1と命名した。
このpT7−cadA1をNcoI、及びBamHIで消化し、得られた2.1kbのNcoI−BamHI断片を、予めNcoI、及びBamHIで消化しておいたpTV118N(宝酒造製)のNcoI/BamHI間隙に常法に従ったライゲーション反応により挿入し、得られたプラスミドをpLDC1と命名した(図1)。このプラスミドを導入した大腸菌を培養することで、L−リジン脱炭酸酵素のN末端アミノ酸配列に6個のヒスジチン残基が付加された分子量約80kDaの組み換えL−リジン脱炭酸酵素を生産することができる。
(2)組み換えL−リジン脱炭酸酵素の産生
pLDC1でエシェリシア・コリJM109株をアンピシリン耐性に形質転換し、得られた形質転換体をJM109/pLDC1株と命名した。
次にJM109/pLDC1株で組み換えL−リジン脱炭酸酵素を産生させた。まず、JM109/pLDC1株をそれぞれ50μg/mlのアンピシリンナトリウムを含んだ滅菌したLB培地(ナカライテスク社製)(LB−amp培地)5mlに1白金耳植菌し、37℃で24時間振とうして前培養を行い、前培養液を得た。
この前培養液をLB−amp培地50mlに全量植菌し、37℃、振幅30cmで、180rpmの条件下で3時間培養した後にIPTG(イソプロピル−1−チオ−β−D−ガラクトシド)(1mM)添加し、更に4時間培養した。対照実験として、JM109株をpTV118Nで形質転換した形質転換体(以後、JM109/pTV118N株とする)を用い同様の培養を行った。こうして得られた菌体を集め、5mlのTBS緩衝液(宝酒造製)に再懸濁後、超音波破砕および遠心分離により細胞破砕液を調製した。これらのL-リジン脱炭酸酵素活性の測定を単位時間当たりに生成するカダベリンの濃度を測定することにより行った。その結果、対照実験であるJM109/pTV118N株由来の細胞破砕液に対して、JM109/pLDC1株においてはL−リジン脱炭酸酵素活性は約100倍に上昇していた。また、この細胞破砕液をSDS−PAGEで分画し、Penta−His Antibody抗体(QIAGEN社製)でウエスタンブロッティングを行った結果、JM109/pLDC1株由来の細胞破砕液のみから、分子量約80kDaの組み換えL-リジン脱炭酸酵素を検出した。
(3)組み換えL−リジン脱炭酸酵素の精製
この組み換えL−リジン脱炭酸酵素は、N末端アミノ酸配列に6個のヒスチジン残基があることこから、ニッケルイオンとの相互作用を利用した精製を行った。
まず10mlのキレーティング セファロース ファースト フロー(Chilating SepHarose Fast Flow)担体(アマシャム バイオサイエンス社製)を充填したカラムシステムを構築した。このカラムに50mlの50mM硫酸ニッケル水溶液、50mlのTBS緩衝液の順で流した後、(2)と同様の方法で得られたJM109/pLDC1株の500ml培養液由来の50ml細胞破砕液を流した。その後、100mlのイミダゾール(5mM)を含むTBS緩衝液、100mlのイミダゾール(50mM)を含むTBS緩衝液をこの順序で流した。更に50mlのイミダゾール(600mM)を含むTBS緩衝液を流した。カラムに流した各々の緩衝液のL−リジン脱炭酸酵素活性を(2)と同様の方法で測定したところ、イミダゾール(600mM)を含むTBS緩衝液のみに活性があった。また、カラムに流した各々の緩衝液をSDS−PAGEし、クマシーブリリアントブルーで染色たところ、イミダゾール(600mM)を含むTBS緩衝液から、約80kDaの単一バンドを検出した。また、カラムに流した各々の緩衝液を(2)と同様の方法でウエスタンブロッティングを行ったところ、イミダゾール(600mM)を含むTBS緩衝液のみに約80kDaタンパク質を検出し、この精製タンパク質はL−リジン脱炭酸酵素活性を有する組み換えL−リジン脱炭酸酵素であることを確認した。
(4)L−リジン脱炭酸酵素の細胞表面発現ベクターの作製
まず、リポプロテインの配列の一部および外膜結合タンパク質(OmpA)の46番目のアミノ酸から159番目のアミノ酸までの配列を一つのカセットとしてクローニングした。
即ち、データベース(GenBank)に登録されている外膜結合タンパク質(ompA)(Accession No.NC_000913)の塩基配列を参考にオリゴヌクレオチドプライマー5’−ataaagcttatgaaagctactaaactgg−3’(配列番号:5)5’−atagtcgacgttgtccggacgagtgccg−3’(配列番号:6)、5’−ataaagcttatgaaagctactaaactggtactgggcgcggtaatcctgggttctactctgctggcaggttgctccagcaacgctaaaatcgatcagaacccgta−3’(配列番号:7)を合成した。エシェリシア・コリK12株から常法に従い調整したゲノムDNAの溶液を増幅鋳型として(配列番号:5)(配列番号:6)(配列番号:7)をプライマーセットとしたPCR法を行った。このPCR法により得られた産物を2%アガロースにて電気泳動し、ompA遺伝子を含む約0.4kbのDNA断片を常法に従い調整した。この断片を、プラスミドベクターpT7blue(Novagen社製)のEcoRV部位の3’−末端にT塩基が付加された間隙に、常法に従ったライゲーション反応により挿入し、得られたプラスミドをpTM7と命名した。
このpTM7をHindIII、及びSalIで消化し、得られた約0.4kbのHindIII、SalI断片を、予めHindIII、及びSalIで消化しておいたpUC19(宝酒造製)のHindIII/SalI間隙に常法に従ったライゲーション反応により挿入し、得られたプラスミドをpTM14と命名した。
次に、エシェリシア・コリK12株のL−リジン脱炭酸酵素遺伝子(cadA)のクローニングを行った。
データベース(GenBank)に登録されているL−リジン脱炭酸酵素遺伝子の塩基配列を参考にオリゴヌクレオチドプライマー5’−tatgtcgacatgaacgttattgcaatat−3’(配列番号:8)、5’−ggagagctcttattttttgctttcttcttt−3’(配列番号:9)を合成した。エシェリシア・コリK12株から常法に従い調整したゲノムDNAの溶液を増幅鋳型として(配列番号:8)(配列番号:9)をプライマーセットとしたPCR法を行った。
このPCR法により得られた産物を1%アガロースにて電気泳動し、cadA遺伝子を含む約2.1kbのDNA断片を常法に従い調整した。この断片を、プラスミドベクターpT7blue(Novagen社製)のEcoRV部位の3’−末端にT塩基が付加された間隙に、常法に従ったライゲーション反応により挿入し、得られたプラスミドをpTM15と命名した。
これら調整したpTM15をSalI、及びSacIで消化し、得られた約2.1kbのSalI、SacI断片を、予めSalI、及びSacIで消化しておいたpTM14のSalI/SacI間隙に常法に従ったライゲーション反応により挿入し、得られたプラスミドをpTM16(図2)と命名した。
このプラスミドを導入した大腸菌を培養することで、L−リジン脱炭酸酵素が細胞表面に局在化され、その大腸菌を回収するだけでL−リジン脱炭酸酵素を調整することができるようになる。
(5)L−リジン脱炭酸酵素が細胞表面に局在化した細胞の調整
pTM16でエシェリシア・コリJM109株をアンピシリン耐性に形質転換し、得られた形質転換体をJM109/pTM16株と命名した。
次にJM109/pTM16株で組み換えL−リジン脱炭酸酵素を産生させた。まずJM109/pTM16株をそれぞれ50μg/mlのアンピシリンナトリウムを含んだ滅菌LB培地(LB−amp培地)5mlに1白金耳植菌し、37℃で24時間振とうして前培養を行った。
この前培養液をLB−amp培地50mlに全量植菌し、37℃、振幅30cmで、180rpmの条件下で3時間培養した後にIPTG(1mM)を添加し、更に4時間培養した。こうして得られた菌体を遠心回収し、10mlのTBS緩衝液(宝酒造製)で3回洗浄後、遠心し菌体を回収した。
実施例1,2、比較例1(L−リジン・ジカルボン酸水溶液を用いることの効果)
1,000mlのフラスコに、表1に示すようにL−リジンまたはL−リジンおよびジカルボン酸を水溶液500mlに加えた。その後、終濃度50mg/lになるように参考例1(3)で得た精製した組み換えL−リジン脱炭酸酵素および終濃度0.05mMになるようにピリドキサルリン酸を加え作用させた。45℃で48時間反応した後の反応液中に含まれるカダベリンの濃度を測定した。その結果を表1に示す。
Figure 2009207495
この結果、原料としてL−リジン・ジカルボン酸塩水溶液を用いると、pHの調整をしなくてもカダベリン・ジカルボン酸塩が得られた。
実施例3、比較例2(L−リジン発酵をジカルボン酸で中和することの効果)
コリネバクテリウム・グルタミカ ATCC13286株を滅菌LB培地5mlに1白金耳植菌し、30℃で24時間振とうして前々培養を行って、前々培養液を得た。
この前々培養液を滅菌LB培地50mlに全量植菌し、30℃、振幅30cmで、180rpmの条件下で24時間培養して前培養を行って、前培養液を得た。
次に表2に示す発酵培地950mlに前培養液全量を植菌し、滅菌した空気を1vvm(1分間に培養液体積と同等の体積の空気を通気する)で通気しながら、30℃、攪拌翼回転数800rpm、pHを7に調整しながら75時間培養を行った。中和剤として、滅菌したアジピン酸水溶液(10g/l)およびアンモニア水(3M)(実施例3の場合)、もしくは、塩酸水溶液(3M)およびアンモニア水(3M)(比較例2の場合)で行った。 培養終了後、4℃、8,000rpmで10分間遠心分離することで菌体を除去し、培養上清を回収した。この培養上清中に、実施例3および比較例2共に総量として10gのL−リジンを生成した。
Figure 2009207495
次にそれぞれの培養上清に終濃度50mg/lになるように参考例1(3)で得た精製した組み換えL−リジン脱炭酸酵素および終濃度0.05mMになるようにピリドキサルリン酸を加え、45℃で48時間作用させた。この反応液中に、実施例3および比較例2共に総量として6.6gのカダベリンを生成した。
次にそれぞれの反応液を2L3つ口フラスコ内で減圧下で水を留去した。スラリーの粘度が上昇し攪拌操作性が悪化し始めたところで濃縮を終了した。素早く80gのエタノールを加え、65℃まで加熱し溶解させた。溶解せずに析出した結晶をろ過により固液分離した。その後均一に溶解したエタノールを徐々に冷却し、晶析、固液分離、乾燥した。実施例3では、カダベリン・アジピン酸の等モル塩である結晶12.2gを得た。対して比較例2では、カダベリン二塩酸塩の結晶6.8gを得た。
比較例2ではこの後さらに、得られたカダベリン二塩酸塩の結晶を水に溶解し、水酸化ナトリウムを添加し、この水溶液のpHを13以上にした。次にクロロホルムを水溶液と等量加え、クロロホルム相にカダベリンを抽出した。最後にこのクロロホルム相を、減圧蒸留(30mmHg、80℃)することによりフリーのカダベリン3.6gを単離した。
この単離したカダベリンと等モルのアジピン酸5.1gを水に一旦溶解させ減圧下で水を留去し、乾燥することでカダベリン・アジピン酸の等モル塩である結晶8.7gを得た。
この結果、L−リジン発酵を塩酸で中和せずに、アジピン酸で中和することでカダベリン・アジピン酸塩を得る工程が簡略化される。そのため当然ながら対原料収率が向上する。
実施例4〜6(L−リジン脱炭酸酵素の状態の効果)
実施例3の方法と同様にL−リジン発酵を行い、総量として10gのL−リジンを含む培養上清を得た。
この培養上清に終濃度0.05mMになるようにピリドキサルリン酸を加え、最後に参考例1(2)および(5)に記載の方法により調整したJM109/pTV118N菌体(実施例6)、JM109/pLDC1菌体(実施例4)およびJM109/pTM16菌体(実施例5)を加え、45℃で24時間作用させた。経時的にカダベリンの濃度を測定した結果を図3に示す。
この結果、L−リジン脱炭酸酵素を細胞表面に局在化させることで高生産速度でカダベリンが得られた。
実施例7(L−リジン発酵培地でL−リジン脱炭酸酵素を調整する効果)
実施例3の方法と同様にL−リジン発酵を行い、総量として10gのL−リジンを含む培養上清を得た。
この培養上清に終濃度10g/lになるように滅菌したグルコースを添加し、JM109/pTM16菌体を1白金耳植菌し、滅菌した空気を1vvmで通気しながら、37℃、攪拌翼回転数400rpm、pHを7に調整しながら24時間培養を行った。中和剤として滅菌したアジピン酸水溶液(10g/l)およびアンモニア水(3M)を使用した。培養終了後、4℃、8,000rpmで10分間遠心分離することで菌体を除去し、培養上清を回収した。この培養上清中に、全量として6.8gのカダベリンを生成した。
この培養上清を実施例3に記載の方法でカダベリン・アジピン酸塩を精製し、カダベリン・アジピン酸の等モル塩である結晶12.5gを得た。
この結果一つの発酵装置を用いるだけでカダベリン・アジピン酸を得ることができた。
比較例3(既存の化学合成法によるカダベリンの調製)
L−リジン一塩酸塩20g(フルカ社製)シクロヘキサノール100ml(シグマアルドリッチジャパン製)に懸濁し、次いで28%ナトリウムメトキシド/メタノール溶液(シグマアルドリッチジャパン製)21.2ml、3−メチル−シクロヘキセノン1ml(シグマアルドリッチジャパン製)を加え、155℃で3時間加熱撹拌した。反応終了後、反応混合物に塩化水素4g(シグマアルドリッチジャパン製)を含むイソプロパノール溶液20ml(シグマアルドリッチジャパン製)を加え、析出した生成物を回収し、乾燥することによりカダベリン二塩酸塩を得た(特開昭60−23328号公報の実施例3記載の方法)。
得られたカダベリン二塩酸塩を水に溶解させ、この水溶液に、水酸化ナトリウム水溶液を添加することによってカダベリン二塩酸塩をカダベリンに変換し、クロロホルムで抽出して、減圧蒸留(30mmHg、80℃)することにより、カダベリンを得た。この単離したカダベリンと等モルのアジピン酸を水に一旦溶解させ減圧下で乾燥することでカダベリン・アジピン酸の等モル塩である結晶を得た。
実施例3,6、比較例3の不純物の同定
実施例3および6で得られたカダベリン・アジピン酸塩の不純物の分析を、下記に示す条件でGC−MS法により行い、比較例3で調製したカダベリン・アジピン酸塩の不純物分析と比較した結果を表3に示す。
GC−MS:HP6980/HP5973A
カラム:NUKOL 30m×0.24mmI.D. 0.2μm Film
オーブン:120℃(一定)
インジェクト:200℃(Split 10:1)
流速:He 2.4ml/min(一定)
MS:230℃(SCAN m/z=30から400)
Figure 2009207495
この結果、L−リジン脱炭酸酵素を用い生成したカダベリンをカダベリン・アジピン酸塩に精製することにより、水性生物に有毒で、また酸と接触すると反応してしまうトリ−n−ブチルアミンの含有量が0.006wt%以下かつ2,3,4,5−テトラヒドロピリジンの含有量が1.4wt%以下の高純度カダベリン・アジピン酸塩が得られた。
実施例7(ポリアミドの合成)
実施例3の方法で得られたカダベリン・アジピン酸の等モル塩を水に溶解させの50wt%水溶液50.0gを調整した。この溶液を試験管に仕込み、オートクレーブに入れて、密閉し、窒素置換した。ジャケット温度を265℃に設定し、加熱を開始した。缶内圧力が17.5kg/cm2に到達した後、缶内圧力を17.5kg/cm2で3時間保持した。その後、ジャケット温度を275℃に設定し、2時間かけて缶内圧力を常圧に放圧した。その後、缶内温度が245℃に到達した時点で、加熱を停止した。室温に放冷後、試験管をオートクレーブから取り出し、ポリアミドを得た。
比較例4
比較例3の方法で得られたカダベリン・アジピン酸の等モル塩を水に溶解させ50wt%水溶液50.0gを調整し用いる以外は、実施例7と全く同様の方法でポリアミドを得た。
実施例7、比較例4のポリアミドの評価
実施例7で得られたポリアミドおよび比較例4で得られたポリアミドを下記に示す方法で比較評価した。その結果を表4に示す。
[ポリアミド中の2,3,4,5−テトラヒドロピリジン、およびトリ−n−ブチルアミンの定量(GC−MS)]
ポリアミド約15gを精秤して、メタノールでソックスレー抽出し、その抽出液を、下記条件でGC−MS分析して、ポリアミド中に含まれる2,3,4,5−テトラヒドロピリジン、およびトリ−n−ブチルアミンを定量した。
装置:ヒューレットパッカード製 HP5890質量検出器
カラム:5%−ジフェニル−95%−ジメチルポリシロキサン
カラム温度:Initial 100℃
Final 250℃
昇温速度:10℃/min
注入口温度:230℃
検出器温度:280℃
キャリアガス:ヘリウム
注入口圧力:50kg/cm
試料注入量:1μl。
[DSC(示差走査熱量測定)]
セイコー電子工業製 ロボットDSC RDC220を用い、窒素雰囲気下、ポリアミドを約5mgを採取し、次の条件で測定した。融点+25℃に昇温して3分間保持し、ポリアミドを完全に融解させた後、20℃/分の降温速度で、30℃まで降温し、3分間保持した後、30℃から融点+25℃まで20℃/分の昇温速度で昇温したときに観測される吸熱ピークの温度、および熱量を求めた。
[相対粘度(ηr)]
98%硫酸中、0.01g/ml濃度、25℃でオストワルド式粘度計を用いて測定を行った。
[溶融滞留試験]
試験管にポリアミド約5gを仕込み、窒素雰囲気下、融点+20℃の温度のシリコンバスに浸漬し、ポリアミドが完全に溶融してから30分間放置した後、ポリアミドを回収して相対粘度測定を行った。
Figure 2009207495
その結果、本発明の方法によって得られた高純度カダベリン・ジカルボン酸塩を使用することにより、相対粘度(ηr)の保持率の高い(耐熱性の高い)ポリアミドが得られた。

Claims (19)

  1. L−リジン・ジカルボン酸塩水溶液に、L−リジン脱炭酸酵素を作用させ、反応液からカダベリン・ジカルボン酸塩を単離することを特徴とするカダベリン・ジカルボン酸塩の製造方法。
  2. L−リジン・ジカルボン酸塩水溶液に、L−リジン脱炭酸酵素を作用させ、反応液から晶析工程によりカダベリン・ジカルボン酸塩を回収することを特徴とするカダベリン・ジカルボン酸塩の製造方法。
  3. 該L−リジン・ジカルボン酸塩水溶液が、L−リジン発酵微生物を培養する際に、ジカルボン酸により培養液のpHを調整しながら行った発酵液であることを特徴とする請求項1または2に記載のカダベリン・ジカルボン酸塩の製造方法。
  4. 該L−リジン発酵微生物が、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属および/またはブレビバクテリウム(Brevibacterium)属であることを特徴とする請求項3記載のカダベリン・ジカルボン酸塩の製造方法。
  5. 該ジカルボン酸が、官能基としては2つのカルボキシル基のみを有する脂肪族および/または芳香族のジカルボン酸であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のカダベリン・ジカルボン酸塩の製造方法。
  6. ジカルボン酸が、以下の一般式(1)、(2)または(3)で示されるジカルボン酸のいずれかであることを特徴とする請求項5に記載のカダベリン・ジカルボン酸塩の製造方法。
    HOOC−(CH)−COOH (1)
    (但し、一般式(1)において、m=0〜16)
    Figure 2009207495
    Figure 2009207495
    (但し、一般式(2)、(3)において、n,o,p,q=0〜5)
  7. 該一般式(1)において、m=0〜10、および/または、該一般式(2)および/または(3)において、n,o,p,q=0〜1のいずれかであることを特徴とする請求項5に記載のカダベリン・ジカルボン酸塩の製造方法。
  8. 該ジカルボン酸が、アジピン酸、セバシン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、コハク酸、イソフタル酸またはテレフタル酸のいずれかであることを特徴とする請求項5に記載のカダベリン・ジカルボン酸塩の製造方法。
  9. 請求項3から8のいずれかに記載の発酵液を用い、L-リジン脱炭酸酵素を調製することを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のカダベリン・ジカルボン酸塩の製造方法。
  10. 該L−リジン脱炭酸酵素が、L−リジン脱炭酸酵素活性を有する細胞のL−リジン脱炭酸酵素であることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載のカダベリン・ジカルボン酸塩の製造方法。
  11. 該L−リジン脱炭酸酵素が、細胞表面に局在化しているL−リジン脱炭酸酵素であることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載のカダベリン・ジカルボン酸塩の製造方法。
  12. 反応後の該反応液から、カダベリン・ジカルボン酸塩を単離または晶析する際に、有機溶媒を添加することを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載のカダベリン・ジカルボン酸塩の製造方法。
  13. 該有機溶媒が、アルコール類、ケトン類またはニトリル類のいずれかであることを特徴とする請求項12に記載のカダベリン・ジカルボン酸塩の製造方法。
  14. 該有機溶媒が、炭素数6以下の脂肪族アルコール類、炭素数6以下の脂肪族ケトン類または炭素数6以下の脂肪族ニトリル類のいずれかであることを特徴とする請求項12に記載のカダベリン・ジカルボン酸塩の製造方法。
  15. 該有機溶媒が、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、イソプロパノール、アセトニトリルまたはアセトンのいずれかであることを特徴とする請求項12に記載のカダベリン・ジカルボン酸塩の製造方法。
  16. 2,3,4,5−テトラヒドロピリジンの含有量が1.4wt%以下のカダベリン・ジカルボン酸塩。
  17. トリ−n−ブチルアミンの含有量が0.006wt%以下のカダベリン・ジカルボン酸塩。
  18. 2,3,4,5−テトラヒドロピリジンの含有量が1.4wt%以下かつトリ−n−ブチルアミンの含有量が0.006%以下のカダベリン・ジカルボン酸塩。
  19. 請求項1から15のいずれか1項記載の方法で得られるカダベリン・ジカルボン酸塩もしくは請求項16から18のいずれか1項記載のカダベリン・ジカルボン酸塩を原料として得られたポリアミド。
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