JP2009207367A - イネ科植物の種子の皮性・裸性を支配する遺伝子の利用 - Google Patents
イネ科植物の種子の皮性・裸性を支配する遺伝子の利用 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2009207367A JP2009207367A JP2008050901A JP2008050901A JP2009207367A JP 2009207367 A JP2009207367 A JP 2009207367A JP 2008050901 A JP2008050901 A JP 2008050901A JP 2008050901 A JP2008050901 A JP 2008050901A JP 2009207367 A JP2009207367 A JP 2009207367A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- dna
- plant
- gene
- nud
- protein
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Granted
Links
Landscapes
- Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)
- Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
- Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
- Peptides Or Proteins (AREA)
- Breeding Of Plants And Reproduction By Means Of Culturing (AREA)
Abstract
【解決手段】ポジショナルクローニングによりオオムギの皮性・裸性遺伝子を単離することに成功した。該遺伝子に変異を導入することにより植物の皮性・裸性を改変し得ることを見出した。さらに、機能的な該遺伝子の有無を検出することにより植物の皮性・裸性を評価し得ることを見出した。
【選択図】なし
Description
Gaines RL, Bechtel DB, Pomeranz Y (1985) Cereal Chem 62 : 35-40 Newman CW, Newman RK (2006) Cereal Foods World 51 : 4-7 Pins JJ, Kaur H (2006) Cereal Foods World 51: 8-11 Zohary D, Hopf M (2000) Domestication of Plants in the Old World (Oxford Univ. Press, New York) Staudt G (1961) Economic Bot 15 : 203-212 Helbeck H (1959) Science 130 : 365-372 Harlan JR (1995) in Evolution of crop plants 2nd edn, eds Smartt J, Simmonds NW (Longman, London) pp 140-147 Salamini F, Ozkan H, Brandolini A, Schafer-Pregl R, Martin W (2002) Nature Rev Genet 3:429-441 Harlan JR (1968) in Barley: Origin, Botany, Culture, Winterhardiness, Genetics, Utilization, Pests (U.S. Department of Agriculture, Washington, DC), Agriculture Handbook No. 338, pp 9-31 Takahashi R, Yamamoto J (1950) Nogaku Kenkyu 39: 32-36 (in Japanese) Taketa S et al. (2004) Theor Appl Genet 108:1236-1242 Morrell PL, Clegg MT (2007) Proc Natl Acad Sci USA 104:3289-3294 Saisho D, Purugganan MD (2007) Genetics 177:1765-1776 Franckowiack JD, Konishi T (1997) Barley Genet Newsletter 26:51-52 Harlan HV (1920) J Agric Res 19:393-429 Kikuchi S, Taketa S, Ichii M and Kawasaki S (2003) Theor Appl Genet 108:73-78 Taketa S, Awayama T, Amano S, Sakurai Y, Ichii M (2006) Plant Breed 125:337-342
〔1〕下記(a)から(d)のいずれかに記載のDNA。
(a)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA、
(b)配列番号:1に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA、
(c)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において1または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA、
(d)配列番号:1に記載の塩基配列からなるDNAの相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA
〔2〕植物の皮性を誘起させる機能を有する植物由来のタンパク質をコードする特徴を有する、〔1〕に記載のDNA。
〔3〕オオムギ由来である、〔1〕に記載のDNA。
〔4〕〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のDNAの転写産物と相補的なRNAをコードするDNA。
〔5〕〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のDNAの転写産物を特異的に開裂するリボザイム活性を有するRNAをコードするDNA。
〔6〕植物細胞における発現時に、共抑制効果により、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のDNAの発現を抑制させるRNAをコードするDNA。
〔7〕〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のDNAを含むベクター。
〔8〕〔7〕に記載のベクターが導入された宿主細胞。
〔9〕〔7〕に記載のベクターが導入された植物細胞。
〔10〕〔9〕に記載の植物細胞を含む形質転換植物体。
〔11〕〔10〕に記載の形質転換植物体の子孫またはクローンである、形質転換植物体。
〔12〕〔10〕または〔11〕に記載の形質転換植物体の繁殖材料。
〔13〕〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のDNAを植物細胞に導入し、該植物細胞から植物体を再生させる工程を含む、形質転換植物体の製造方法。
〔14〕〔1〕に記載のDNAによりコードされるタンパク質。
〔15〕〔8〕に記載の宿主細胞を培養し、該細胞またはその培養上清から組換えタンパク質を回収する工程を含む、〔14〕に記載のタンパク質の製造方法。
〔16〕〔14〕に記載のタンパク質に結合する抗体。
〔17〕配列番号:1のいずれかに記載の塩基配列またはその相補配列に相補的な少なくとも15の連続する塩基を含むポリヌクレオチド。
〔18〕〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のDNAを植物体の細胞内で発現させる工程を含む、植物の皮性を誘起させる方法。
〔19〕〔4〕〜〔6〕のいずれかに記載のDNAを植物体の細胞内で発現させる工程を含む、植物の裸性を誘起させる方法。
〔20〕〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のDNA、もしくは〔7〕に記載のベクターを有効成分とする、植物の皮性を改変する薬剤。
〔21〕以下の(a)〜(c)の工程を含む、植物の皮性又は裸性を判定する検査方法。
(a)被検植物体および繁殖媒体からDNA試料を調製する工程、
(b)該DNA試料から〔1〕に記載のDNA領域を増幅する工程、
(c)皮性品種から〔1〕に記載のDNA領域を増幅したDNA断片と、該DNA試料から増幅したDNA断片の分子量または塩基配列を比較する工程
皮裸性は登熟しないと判別できない形質のため、マーカー利用により育種初期段階における選抜効率の飛躍的な向上が見込まれる。
本発明は、オオムギ由来のNudタンパク質をコードするDNAを提供する。ゲノムDNAの塩基配列を配列番号:1に、cDNAの塩基配列を配列番号:2に、該DNAがコードするタンパク質のアミノ酸配列を配列番号:3に示す。
組換えタンパク質を調製する場合には、通常、本発明のタンパク質をコードするDNAを適当な発現ベクターに挿入し、該ベクターを適当な細胞に導入し、形質転換細胞を培養して発現させたタンパク質を精製する。組換えタンパク質は、精製を容易にするなどの目的で、他のタンパク質との融合タンパク質として発現させることも可能である。例えば、大腸菌を宿主としてマルトース結合タンパク質との融合タンパク質として調製する方法(米国New England BioLabs社発売のベクターpMALシリーズ)、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として調製する方法(Amersham Pharmacia Biotech社発売のベクターpGEXシリーズ)、ヒスチジンタグを付加して調製する方法(Novagen社のpETシリーズ)などを利用することが可能である。宿主細胞としては、組換えタンパク質の発現に適した細胞であれば特に制限はなく、上記の大腸菌の他、例えば、酵母、種々の動植物細胞、昆虫細胞などを用いることが可能である。宿主細胞へのベクターの導入には、当業者に公知の種々の方法を用いることが可能である。例えば、大腸菌への導入には、カルシウムイオンを利用した導入方法(Mandel, M. & Higa, A. (1970) Journal of Molecular Biology, 53, 158-162、Hanahan, D. (1983) Journal of Molecular Biology, 166, 557-580)を用いることができる。宿主細胞内で発現させた組換えタンパク質は、該宿主細胞またはその培養上清から、当業者に公知の方法により精製し、回収することが可能である。組換えタンパク質を上記のマルトース結合タンパク質などとの融合タンパク質として発現させた場合には、容易にアフィニティー精製を行うことが可能である。また、後述する手法で、本発明のDNAが導入された形質転換植物体を作成し、該植物体から本発明のタンパク質を調製することも可能である。従って、本発明の形質転換植物体には、後述する、皮性を改変するために本発明のDNAが導入された植物体のみならず、本発明のタンパク質の調製のために本発明のDNAが導入された植物体も含まれる。
本発明の薬剤においては、有効成分であるDNAまたはベクター以外に、例えば、滅菌水、生理食塩水、植物油、界面活性剤、脂質、溶解補助剤、緩衝剤、保存剤等が必要に応じて混合されていてもよい。
本発明において「植物の皮性・裸性を判定」とは、これまでに栽培されていた品種における皮性・裸性の判定のみならず、交配や遺伝子組換え技術による新しい品種における皮性・裸性の判定も含まれる。
例えば、Nud遺伝子の機能を喪失させる変異が被検植物のDNAに見出されれば、この被検植物は皮性が消失(裸性が誘起)していると判定される。
〔実施例1〕植物材料
遺伝地図作製は、2つの集団からnudに関して分離する植物2828例において行った。遺伝地図作製のための2つの集団は、コビンカタギ(Kobinkatagi、nud、岡山大学アクセッション番号OUJ369)×Triunmph(Nud、Dr. DA Laurie, UKからの寄贈)および樺太在来Karafuto Zairai(Nud、OUJ301)×会津裸3Aizu Hadaka 3(nud、OUJ328)であった。前者の交配において、本発明者らは、nudに関して分離するF2およびF3植物を用いたが、後者の交配では、F2植物を地図作製のために用いた。本発明者らのこれまでの研究と比較して(Taketa S, Awayama T, Amano S, Sakurai Y, Ichii M (2006) Plant Breed 125:337-342)、さらなるF2植物94個体および814個体をそれぞれ、前者および後者の交配のために調べた。
Nudの対立遺伝子変種の分析に関して、後述の表5において記載される2つの誘発型裸性変異体(Scholz F (1955) Kulturpflanze 3:69-89)および33系統を用いた。
機能的分析に関して、Bowmanおよびその同質遺伝子系の裸性系統(nud-Bowmanとして省略される)を用いた。Bowmanは、二条皮麦栽培品種である。nud-Bowmanは、nud遺伝子を有するBowmanの同質遺伝子系統であり、これは8回の戻し交配によって作出された(Dr. J. Franckowiack, Hermitage Research Station, Australiaからの寄贈)。nud-Bowmanに関するnud遺伝子源は、その複雑な系譜のために単一の裸性栽培品種まで戻って追跡することができない。Bowmanおよびその同質遺伝子の裸性系統(nud-Bowman)は、集合的に「Bowman同質遺伝子系統」と呼ばれる。植物を自然光の下で15℃の一定温度で制御された環境を有する部屋で生育させた。Bowman同質遺伝子系統は、ほぼ光周期非感受性であり、この生育条件において播種後約2ヶ月で開花を開始する。下穂の中央部の葯が開くと、下穂にタグをつけた。穀粒試料を夏から秋にかけて開花した植物から収穫して、そのあいだに昼間の長さは14.5から10.5時間まで変化した。この生育条件で、穀粒は開花後約3週間まで容易に外頴を除去でき、さらに3〜4週間後生理的成熟に達した。
本発明者らは、既に開発された隣接マーカー(Taketa S, Awayama T, Amano S, Sakurai Y, Ichii M (2006) Plant Breed 125:337-342)を用いて、2つの交配の組み合わせからの形質に関して分離する子孫2828個体をスクリーニングしたところ、nudは、マーカーsKT3とsKT9のあいだの0.64-cMの間隔に範囲が絞り込まれた(図2A)。次に本発明者らは、さらに位置を特定するために、オオムギ/イネのマイクロシンテニーを利用した。
隣接するマーカーを、高密度のオオムギ発現配列タグ(EST)マップに組み込んで(Sato K, Nankaku N, Motoi Y, Takeda K (2004) Proc 9th Int Barley Genet Symp (Brno) pp 79-85)、nud座に隣接する2つのオオムギEST(アクセッション番号、マーカー3G12に関してBJ462032および82C6に関してAV935407)を選択した。オオムギnud座を含む領域がイネ染色体のどの部分に対応するかを解明するためには、オオムギゲノム断片由来のマーカーであるsKT3およびsKT9ではイネで類似の配列を特定することができず、種間で保存性の高い遺伝子領域から新たなnudに連鎖したマーカーを開発する必要があった。この目的のために、前述のSatoらのオオムギ高密度EST遺伝地図の情報が不可欠であった。BLASTN分析により、イネ第6染色体長腕上に370kb離れたそのそれぞれの相同的なイネEST(AK068856およびAK070667)が同定された。同一直線領域内での2つのイネ遺伝子(AK061163およびAK121264)をマーカーとして用いて、より近いオオムギマーカー(ABRS3およびABRS9)を開発することに成功した。
次に、本発明者らは、マーカーsKT9およびABRS3から開始して、皮麦栽培品種はるな二条(Saisho D, Myoraku E, Kawasaki S, Sato K, Takeda K (2007) Breed Sci 57:29-38)の細菌人工染色体(BAC)ライブラリをスクリーニングした。
nud座近傍のBACクローンを、DNAプールのPCRスクリーニングによって、または整列させたBACコロニーフィルターをジゴキシゲニン(DIG)標識プローブとハイブリダイズさせることのいずれかによって選択した。BAC DNAは、標準的なアルカリ-SDS技法を用いて抽出して、NotI、AscI、またはPmeIによる消化後にパルスフィールド電気泳動を用いてインサートの大きさを分析した。BACクローンは全て、M13プライマーを用いてエンドシークエンシングした。選択されたBACクローンは6-bp制限酵素消化によるフィンガープリンティング後にサブクローニングに供した。独自のバンドがゲルから抽出され、これをシークエンシングのためにプラスミドベクターにクローニングした。重なり合うBACをサザンハイブリダイゼーションまたはPCRマーカー分析のいずれかによって同定した。末端配列から設計されたプライマーを用いてPCR反応を行い、BAC最小タイリングパスを構築した。
† HYBは、高密度コロニーメンブレンとのハイブリダイゼーションを示す;PCRはPCRスクリーニングを示す。
‡ インサートの大きさは、完全にショットガンシークエンシングされた3つのクローン(106O20、035P04、および233N01)を除き、パルスフィールドゲル電気泳動を用いて推定した。
§ BACの方向は、M13シークエンシングプライマーに基づいてF末端/R末端であり;Icは低コピーを示し、およびrepは反復配列を示す。
¶ BAC endはBAC末端シークエンシングを示す;文字FまたはRは、マーカーが開発されたBACインサート末端側を示す。
4個のBACクローンをショットガンシークエンシングした。BACクローンHNB106O20をTaKaRa Dragon Genomics Center(http://www.takara.bio.co.jp)によって、約7倍範囲でショットガンシークエンシングした。ギャップをPCRプライマー歩行によって埋めた。他の3つのBAC(HNB233N01、035P04、および589B20)を、Rice Genome Research Programの標準的なジデオキシターミネーター化学プロトコール(International Rice Genome Sequencing Project (2005) Nature 436: 793-800)に従ってショットガンシークエンシングした(10倍範囲)が、HNB 589B20はごく部分的にシークエンシングして、クローン035P04および106O20のあいだの小さいギャップを埋めた。
アノテーション分析は以下のように実施した。第一に、全配列を、Repeat Masker(http://www.repeatmasker.org/cgi-bin/RepeatProteinMaskRequest)を用いてプロセシングした。次に、マスクされた配列を遺伝子予測プログラム、RiceGAAS(http://ricegaas.dna.affrc.go.jp)およびGeneMark.hmm ver 2.2a(http://opal.biology.gatech.edu/GeneMark/eukhmm.cgi)を用いて分析した。反復配列を同定するために、コムギ連(Triticeae)Repeatデータベース(TREP:http://wheat.pw.usda.gov/ITMI/Repeats)に対するBLASTN探索を用いて非マスク配列データを分析した。得られた結果を、e-20の閾値E値によって手動で選別した。予測遺伝子をまた、シロイヌナズナ(Arabidopsis)、イネ、トウモロコシ、コムギ、およびオオムギを含む植物種のDDBJ ESTデータベースを用いてBLASTNによって分析した。栽培品種はるな二条(Matsumoto et al.原稿作製中)に由来するオオムギcDNA末端配列約170,000個のデータベースも同様に、BLASTN分析に委託した。上記の分析の組み合わせ結果に基づいて遺伝子を予測した。
配列解読されたBACコンティグのアノテーションにより、予想遺伝子2個が示された。コンティグ配列の約50%が反復配列であると分類された(表3)。エチレン応答因子(ERF)ファミリー転写因子は、遺伝地図作製および物理地図作製によって境界が絞り込まれた領域に存在する唯一の遺伝子であり、したがって、Nud候補遺伝子であると考えられた。
裸性栽培品種から候補遺伝子を単離するために、本発明者らは、表2において示されるプライマー対ABRS3を用いてPCR-増幅を試みた。しかし、調べたいかなる裸性栽培品種においても断片は増幅されなかった。同様に、ERFの10.8kb上流および2.8kb下流のあいだの領域で2-kb毎の間隔で設計された他の全てのPCRプライマー対が、裸性栽培品種において特異的に増幅することができなかった。
裸性栽培品種における欠失の程度を決定するために、Phusion高忠実度 DNAポリメラーゼ(Finnzymes)およびプライマー対HNB32C2 F13-R8(図2Bおよび表4)を用いて、ロングPCRを試みた。その結果、裸性栽培品種から3.6 kb断片が増幅されたが、鋳型としてBAC HNB 106O20のDNAを用いた対照PCRは、予想される約20 kbのバンドを増幅した。
3.6 kb断片をPCRクローニングキット(Zero Blunt TOPO;Invitrogen)を用いてクローニングした。
2つの裸性系統から得られた独立したクローン3個の3.6 kb断片のシークエンシング[コビンカタギ(Kobinkatagi、日本の在来品種)およびnud-Bowman(皮性栽培品種Bowmanの遺伝的背景においてnud対立遺伝子を有する同質遺伝子系統)]を行ったところ、はるな二条BACコンティグ配列の対応する領域と比較して16,680 bpの欠失が明らかとなった(図2B)。
3つのプライマー、wF2-kR1-tR2を用いて、PCRにより、アンプリコン長多型として17-kb欠失の有無を検出した(皮麦に関して853 bpおよびはだか麦に関して785 bp)。
Nud遺伝子の完全長のcDNA配列を3’および5’ RACEによって決定した(表4)。
総RNAをBowmanの1週齢頴果から単離した。3’ RACEに関して、SuperScript II RNase H-逆転写酵素(Invitrogen)を用いて製造元のプロトコールに従ってcDNAを総RNAから合成した。5’ RACEに関して、cDNAエンドキット(ver.2;Invitrogen)の5’ RACE急速増幅系を、製造元のプロトコールに従って用いた。RACEプライマーを表4に示す。
上記の配列決定により、16,680 bpの欠失(以降、17-kb欠失と呼ぶ)には、全ERF遺伝子が含まれることが明らかとなった。このように、裸性栽培品種の遺伝子構造分析は、ERF遺伝子が候補遺伝子であることを支持している。
次に本発明者らは、2つのX-線誘発裸性変異体(Scholz F (1955) Kulturpflanze 3:69-89)における候補遺伝子配列を分析した。本発明者らは、交配実験を通してnud座に対するその対立性を確認した。
コード領域、イントロン、ならびに5’および3’非コード領域を含む約1.7-kb Nud領域の対立遺伝子変種を、シークエンシングキット(BigDye Terminator v3.1 Cycle;Applied Biosystems)およびDNAシークエンサー(Model 3100;Applied Biosystems)を用いて直接シークエンシングによって調べた。シークエンシング領域を表4において記述されるプライマー対を用いて、異なる重なり合う4つの断片として増幅した。
配列分析により、2つの誘発型裸性変異体のそれぞれが、ERF遺伝子の推定の機能的モチーフにおいて異なる一塩基変異を有するが、その野生型品種(それぞれ、Haisa およびAckermann’s Donaria)は、はるな二条と同一のヌクレオチド配列を有することが示された(図2Cおよび図6)。変異体4129は、第二のエキソンにおいてTからAのヌクレオチド置換を有し、それによって134位でのバリン(V)からアスパラギン酸(D)への変化が起こった。変異体3041/6aは第二のエキソンにおいて1-bpの欠失を有し、これはフレームシフトを引き起こして未成熟な終始コドンを生じ、それによってC-末端が切断されたアミノ酸199個のタンパク質が得られた。誘発変異体の配列分析により、ERF遺伝子がnud座を含むことが確認され、したがってその遺伝子を以降nudと呼ぶ。本発明者らは、Franckowiack and Konishi(Franckowiack JD, Konishi T (1997) Barley Genet Newsletter 26:51-52)に従って、裸性栽培品種における無効ヌル(欠失)対立遺伝子をnud1.aと指定し、誘発型裸性変異体対立遺伝子をnud 1.b(Mut 4129)およびnud 1.c (Mut.3041/6a)とそれぞれ指定した。
本発明者らは、以下に記載の手法によりRT-PCRおよびRNAインサイチューハイブリダイゼーションを行った。
総RNAを、Bowman同質遺伝子系統の外頴、頴果、および葉身からキット(Isogen;Nippon Gene)を用いて抽出した。試料を開花日(0週目)および開花後3週目まで1週間間隔で採取した。頴果に関して、胚および内胚乳を指で挟むことによって除去して、他の部分からのmRNA混入が最小限となるように紙上にブロットした。次に、DNAをDNアーゼIによる消化によって除去した後逆転写を行った。ビーズ(Ready-To-Go(商標) You-Prime First-strand Beads;GE Healthcare)を用いて製造元の説明書に従って、cDNAを合成した。次に、ExTaq DNAポリメラーゼ(TaKaRa)および対照としてのアクチンプライマーを用いてRT-PCRを行った。Nudおよびアクチン対照に関して、増幅サイクル30および25回をそれぞれ用いた。用いたプライマー対を表4に示す。
若い穀粒を、上記のようにFAAにおいて固定して、脱水し、Paraplast(Oxford Labware)において包埋した。RNAインサイチューハイブリダイゼーションを、Maiら(Mai HT et al. (2006) Plant Cell Physiol 47:829-838)によって用いられる改変を加えてKouchi and Hata(Kouchi H, Hata S (1993) Mol Gen Genet 238:106-119)によって記述されるとおりに行った。全5’-UTRプラスNud遺伝子のコード領域の最初の84 bpを含む262-bpの配列をプローブとして用いて、DIG標識センスおよびアンチセンスRNAプローブを調製した(TOPO TA Cloning Kit Dual Promoter with TOP;Invitrogen)。
多様な起源のさらに6種類の裸性栽培品種[イラン1種、トルコ2種、エチオピア2種、およびネパール系統1種]を、表4において示されるプライマー対を用いて欠失点を含む約1.4-kb領域に関して直接シークエンシングした。それらは全て、2つの標準的な裸性系統と同一のヌクレオチド配列を共有した。本発明者らは、17-kb欠失の有無を決定するために単純なPCRアッセイを開発した(図2B、実施例6に記載の方法、および表4)。Taketaら(Taketa S et al. (2004) Theor Appl Genet 108:1236-1242)が選択した世界のオオムギ259系統の調査により、裸性栽培品種は100系統全てが17-kb欠失(nud1.a対立遺伝子)を共有し、皮性系統159個はいずれも欠失を有しないことが判明した。これらの結果は、はだか麦が単系起源であることを示している。
Nudの自然変異を、多様な起源の皮性系統33(栽培種12系統および野生種11系統)において調べた。5’-非コードおよび3’-非コード領域を含むNudの約1.7-kb領域のシークエンシングにより、はるな二条の標準配列と比較して16の部位で様々なタイプのヌクレオチド多形が検出された(表5)。コード領域において、11のタイプのSNPsが検出され、全て第二エキソンに存在した。4つの非同義置換は全て、AP2/ERFドメイン、「mm」、または「cm」モチーフ外に存在した(図2C)。ヌクレオチド変化はまた、第一のイントロン、ならびに5’-非コード領域および3’-非コード領域においても観察された。多様なマイクロサテライトも同様に見いだされた。3’-非コード領域において、84-bpの直列型重複がほとんどの栽培種において検出されたが、シークエンシングされた野生種はこれを有しなかった。併せて考慮すると、天然の対立遺伝子変種に関する本発明者らの調査により、nud遺伝子の同一性が支持された。
Nud遺伝子は、2つのエキソンと1つのイントロンからなり、オープンリーディングフレームは、アミノ酸227個の推定タンパク質をコードする(図2Cおよび図6)。Nudの推定アミノ酸配列は、シロイヌナズナWAX INDUCER1/SHINE1(WIN1/SHN1)タンパク質(Aharoni A et al. (2004) Plant Cell 16:2463-2480, Broun P, Poindexter P, Osborne E, Jiang CZ Riechmann JL (2004) Proc Natl Acad Sci USA 101:4706-4711)およびイネ第6染色体上の推定ERFタンパク質(Os06ERF)に対してそれぞれ、59%および74%同一である(図7)。イネ相同遺伝子も、Nudと同じく、開始コドンから83 bpに存在するAP2/ERFドメインにイントロンを有したが、シロイヌナズナ相同体(WIN1/SHN1、SHN2、およびSHN3)は3つ全てが開始コドンから80 bpで3 bp上流に存在する単一のイントロンを含んだ(Aharoni A et al. (2004) Plant Cell 16:2463-2480)。
皮性栽培品種Bowmanの同質遺伝子系統およびその裸性型系統(nud-Bowman)を以下の分析において用いた。
本発明者らは、CLUSTAL W(Thompson JD, Higgins DG, Gibson TJ (1994) Nucleic Acids Res 22:4673-4680)によって提供される近隣結合法を用いて、シロイヌナズナおよびイネのNudおよびその相同体の推定アミノ酸配列に基づく系統発生樹を構築した。
RT-PCRにより、Bowmanでは、Nudが開花後約2週間をピークとして頴果特異的発現されるが、外頴または葉では発現が検出されないことが示された(図3A)。nud-Bowmanでは、調べたいかなる組織においても発現は検出されなかった。空間的発現を知るために、アンチセンスプローブを用いるRNAインサイチューハイブリダイゼーションを行った。結果は、Bowmanにおいて、Nudは腹側の種皮において主に発現し、背側での発現は非常に弱いことを示している(図3B、3D、および3F)。nud-Bowmanでは、バックグラウンドを超えるシグナルは検出されなかった(図3C、3E、および3G)。これらの結果により、Nudは、接着が起こる組織において発現されることが判明した。
本発明者らは、固定穀粒の切片形成およびトルイジンブルーOまたはスダンブラックBによる切片または脱頴頴果の染色を行った。
外頴を有する頴果をFAA溶液(3.7%p-ホルムアルデヒド、5%酢酸)によって減圧下で固定した後、包埋した(Technovit-7100;Heraeus Kulzer)。ミクロトームを用いて、厚さ10μmの穀粒切片を調製して、1%トルイジンブルーOまたは0.1%スダンブラックB(Wako)による染色を行った。頴果のスダンブラックB染色に関して、頴および脱頴頴果を、70%エタノールに溶解した0.1%スダンブラックB溶液において10分間染色した後、50%エタノールにおいて2分間すすいだ。
WIN1/SHN1がシロイヌナズナにおいて過剰発現される場合、光ってねじれた葉の表現型が出現した。葉および花は異なる組成物を蓄積すると共に、表皮にはロウおよびクチンの増加量が蓄積する(Aharoni A et al. (2004) Plant Cell 16:2463-2480, Broun P, Poindexter P, Osborne E, Jiang CZ Riechmann JL (2004) Proc Natl Acad Sci USA 101:4706-4711, Kannangara R et al. (2007) Plant Cell 19:1278-1294)。ロウおよびクチンは、クチクラの2つの主成分である(Sieber P et al. (2000) Plant Cell 12:721-738)。ロウおよびクチンの生合成は、同じ脂肪酸前駆体から始まる共通の脂質経路を当初共有するが、後に異なる脂肪酸改変経路に分かれる(Schnurr J, Shockey J, Browse J (2004) Plant Cell 16:629-642)。生育途中のオオムギの頴果がその表面に脂質を蓄積するか否かを決定するために、本発明者らは、脂肪親和性色素スダンブラックBによる染色を試みた(図4A)。Bowmanにおいて、1週齢の外頴を除去された頴果は染色されなかったが、2週齢および3週齢の外頴除去頴果は胚の上部の領域を除いてその表面上に強い染色を示した。nud-Bowmanの頴果は、調べたいかなる段階においても染色されなかった。オオムギの穀粒において、果皮および種皮は、外頴と最も外側のアリューロン層のあいだに存在する。果皮は、柔細胞および横走クロス(cross)細胞を含む数層の細胞からなる。果皮の内側は2層の細胞からなる種皮である(Freeman PL, Palmer GH (1984) J Inst Brew 90:88-94)。2週齢頴果の縦方向切片のスダンブラックB染色により、Bowmanに限り、果皮表皮上に明瞭な脂質層が検出された(図4B-4E)。双方の遺伝子型において、外花頴および内花頴の内側の染色は弱かった。同様に、2つの誘発型裸性変異体の2週齢の脱頴頴果は、スダンブラックBによって染色されなかったが、原品種の頴果は強く染色された(データは示していない)。したがって、果皮表皮における脂質層の有無は、皮性および裸性オオムギを区別する重要な差である。
葉緑素の溶脱および水分喪失分析は、Ahanoriら(Aharoni A et al. (2004) Plant Cell 16:2463-2480)に従って実施した。葉緑素の溶脱および水分喪失分析において、Bowman同質遺伝子系統からの開花後2週目での外頴除去頴果を用いた。実験は全て、1試料あたり2個ずつ行った。葉緑素溶脱アッセイにおいて、外頴除去頴果30個を、暗所の室温で軽く撹拌しながら80%エタノール7.5 mlを含むプラスチックバイアルに入れた。各試料に関してエタノール500μlを吸光度測定の固定された時間で除去した。葉緑素濃度をAhanoriら(Aharoni A et al. (2004) Plant Cell 16:2463-2480)に従って計算した。水分喪失実験に関して、外頴除去頴果15個をペトリ皿に入れて30℃に維持されるインキュベーターに48時間入れた後、乾燥物質重量を測定するために60℃で48時間さらに乾燥させた。試料の重量を定期的に測定した。水分喪失はAhanoriら(Aharoni A et al. (2004) Plant Cell 16:2463-2480)に従って計算した。
シロイヌナズナのWIN1/SHN1過剰発現植物では、葉緑素溶出および水分喪失がいずれも増強された(Aharoni A et al. (2004) Plant Cell 16:2463-2480)。本発明者らは、開花後2週間の脱頴頴果を用いて類似の実験を行った。果皮表皮を通しての葉緑素溶出および水分喪失はいずれも、Bowmanではnud-Bowmanより速く(図5)、皮麦における果皮表皮が透過性の増強を有することを示唆している。
Tsukagoshiら(Tsukagoshi H, Morinaka A, Nakamura K (2007) Proc Natl Acad Sci USA 104:2543-2547)に従って薄層クロマトグラフィーを用いて脂質を分離し、図8において記述される検出法を用いて可視化した。3週齢の穀粒を各Bowman同質遺伝子系統の穂から採取した。外頴を有するおよび外頴除去頴果の表面脂質を、2:1(v/v)クロロホルム/メタノールを用いて軽く撹拌しながら浸すことによって室温で5分間個々に抽出した。
表面脂質の薄層クロマトグラフィーにより、それぞれのBowman同質遺伝子系統において頴果と外頴とのあいだに明確な差があることが判明した。しかし、外頴の脂質も頴果の脂質もBowman同質遺伝子系統のあいだで明白な差を示さなかった(図8)。抽出処置後の頴果がスダンブラックBによってなおも強く染色されたことから、本発明者らは、皮麦の脱頴頴果の表面上の脂質が、本明細書において用いた抽出プロトコールに対して抵抗性である(抽出できない)と仮定する。
ポジショナルクローニングを用いて、本発明者らは、オオムギにおけるNudとしてERFファミリー転写因子遺伝子を同定した。この結論は、(i)高解像度遺伝地図作製および物理地図作製によって境界が絞られた候補領域のアノテーション、(ii)調べた裸性栽培品種100例全てにおけるERF遺伝子を有する17-kb欠失の固定、(iii)2つのX-線誘発nud対立遺伝子におけるERF遺伝子の推定の機能的モチーフに影響を及ぼす非同義置換の発見、および(iv)種皮特異的遺伝子発現、によって確認された。後に考察するように、シロイヌナズナWIN1/SHN1からの情報は、劣性nud変異の結果としてオオムギにおける皮性から裸性頴果への劇的な形態学的変化を説明するために役立ちうる。
シロイヌナズナゲノムには、ERFファミリー転写因子122個が含まれる(Nakano T, Suzuki K, Fujimura T, Shinshi H (2006) Plant Physiol 140:411-432)。その中のいくつかは、植物形態形成およびストレス反応におけるその重要な役割が示唆されている(Nakano T, Suzuki K, Fujimura T, Shinshi H (2006) Plant Physiol 140:411-432, Riechmann JL, Meyerowitz EM (1998) Biol Chem 379:633-646, Sakuma Y et al. (2002) Biochem Biophys Res Commun 290:998-1009, Hirota A, Kato T, Fukaki H, Aida M, Tasaka, M (2007) Plant Cell 19:2156-2168)。ERFファミリーは、10のサブファミリーに分類され、WIN1/SHN1はサブファミリーVに属する(Nakano T, Suzuki K, Fujimura T, Shinshi H (2006) Plant Physiol 140:411-432)。シロイヌナズナWIN1/SHN1の機能に関しては現在、集中的に研究されている。今日まで、35S:WIN1/SHN1過剰発現系統は、葉および花の双方において、組成の変化と共に表皮脂質の蓄積の増加を示したが、発現が野生型の1/3までサイレンスされたWIN1/SHN1 RNAi系統は、脂質減少の効果を示した(Aharoni A et al. (2004) Plant Cell 16:2463-2480, Broun P, Poindexter P, Osborne E, Jiang CZ Riechmann JL (2004) Proc Natl Acad Sci USA 101:4706-4711, Kannangara R et al. (2007) Plant Cell 19:1278-1294)。不思議なことに、WIN1/SHN1過剰発現系統は、表皮における脂質蓄積の増加にもかかわらず、光沢葉の表現型を示した。この矛盾は、表皮クチクラの組成の変化のためであった(Aharoni A et al. (2004) Plant Cell 16:2463-2480, Riechmann JL, Meyerowitz EM (1998) Biol Chem 379:633-646)。一方、プロモーター:GUSレポーター実験から、正常な植物においてWIN1/SHN1遺伝子が、器官離脱および離層のような細胞分離領域において主に発現されることが示された。これらの知見は、WIN1/SHN1遺伝子が脂質生合成経路の調節(Kannangara R et al. (2007) Plant Cell 19:1278-1294)のみならず、発生の際の適切な組織分離の制御(Aharoni A et al. (2004) Plant Cell 16:2463-2480)においても重要な二重の役割を有することを示唆している。
オオムギにおいて、異なる部分においてロウの低減の程度が異なる1580個より多いeceriferum(cer)変異体を、79の相補群に分類して、その21群に座乗染色体が割付される(Lundqvist U, Lundqvist A (1988) Hereditas 108:1-12, von Wettstein-Knowles P (1992) in Barley Genetics VI vol II, ed Munck L, pp 753-771)。3つのオオムギcer変異体(cer-zv、cer-yl、およびcer-ym)は、弱い外頴-頴果接着と共に、節を除く全ての地上部におけるロウの低減を示す;それらは乾燥条件で生育不良および稔性の低減を示す(Lundqvist U, Franckowiack JD (2003) in Diversity in Barley (Hordeum vulgare), eds von Bothmer R, Knupffer H, van Hintum T, Sato K (Elsevier, Amsterdam) pp 77-96)。これらのcer変異体は、nudに対して非対立遺伝子であるが、スダンブラックBによって染色されない頴果を有した(データは示していない)。このように、それらはまた、表皮脂質と外頴-頴果接着とのあいだに関連があることを示唆している。
先に記述したように、オオムギにおいて、裸性頴果表現型を発現するいくつかの可能性がある遺伝子座が存在する。しかし、他の作物特徴に対して多面的な欠失効果を示すことなく重要な農業的価値を有するのはnudのみであり、これはオオムギの栽培植物化の際のこの形質に関する選択の唯一の標的となる。nud変異に関連する有害な効果がないことは、おそらく種皮に局在する遺伝子発現の厳密な制御に帰することができる。本発明のnud座分析は、厳密に連鎖したマーカーに基づく栽培植物化裸性オオムギの単系起源に関する本発明者らのこれまでの解釈を強化する(Taketa S et al. (2004) Theor Appl Genet 108:1236-1242)。最近の分子進化的研究(Morrell PL, Clegg MT (2007) Proc Natl Acad Sci USA 104:3289-3294, Saisho D, Purugganan MD (2007) Genetics 177:1765-1776)は、オオムギ作物全体としては多数の栽培化事象があったという解釈を支持することから、全Nud遺伝子の完全な欠失という一つの偶然の変異事象のみが昔の注意深い農夫によって選択されて、世界中に広まったことは驚くべきことである。裸性頴果形質が単系起源であることは、オオムギにおける六条の起源が多系であることと鋭い対比をなす(Komatsuda T et al. (2007) Proc Natl Acad Sci USA 104:1424-1429)。
オオムギにおけるNudのクローニングは、皮性穀粒および農業的可能性を有するHordeum属または他の野生のイネ科草本のより遠縁の野生種に対して裸性頴果形質を付与するために役立つ可能性がある。ヒトによって栽培植物化に成功している草本種の中でも、オオムギのみが、主要な型として外頴を有する頴果をどのようにして獲得したかを解明するために、Nud相同体および可能性があるNud標的遺伝子のイネ科全体の比較分析が進行中である。
Claims (21)
- 下記(a)から(d)のいずれかに記載のDNA。
(a)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA、
(b)配列番号:1に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA、
(c)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において1または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA、
(d)配列番号:1に記載の塩基配列からなるDNAの相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA - 植物の皮性を誘起させる機能を有する植物由来のタンパク質をコードする特徴を有する、請求項1に記載のDNA。
- オオムギ由来である、請求項1に記載のDNA。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のDNAの転写産物と相補的なRNAをコードするDNA。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のDNAの転写産物を特異的に開裂するリボザイム活性を有するRNAをコードするDNA。
- 植物細胞における発現時に、共抑制効果により、請求項1〜3のいずれかに記載のDNAの発現を抑制させるRNAをコードするDNA。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のDNAを含むベクター。
- 請求項7に記載のベクターが導入された宿主細胞。
- 請求項7に記載のベクターが導入された植物細胞。
- 請求項9に記載の植物細胞を含む形質転換植物体。
- 請求項10に記載の形質転換植物体の子孫またはクローンである、形質転換植物体。
- 請求項10または11に記載の形質転換植物体の繁殖材料。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のDNAを植物細胞に導入し、該植物細胞から植物体を再生させる工程を含む、形質転換植物体の製造方法。
- 請求項1に記載のDNAによりコードされるタンパク質。
- 請求項8に記載の宿主細胞を培養し、該細胞またはその培養上清から組換えタンパク質を回収する工程を含む、請求項14に記載のタンパク質の製造方法。
- 請求項14に記載のタンパク質に結合する抗体。
- 配列番号:1のいずれかに記載の塩基配列またはその相補配列に相補的な少なくとも15の連続する塩基を含むポリヌクレオチド。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のDNAを植物体の細胞内で発現させる工程を含む、植物の皮性を誘起させる方法。
- 請求項4〜6のいずれかに記載のDNAを植物体の細胞内で発現させる工程を含む、植物の裸性を誘起させる方法。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のDNA、もしくは請求項7に記載のベクターを有効成分とする、植物の皮性を改変する薬剤。
- 以下の(a)〜(c)の工程を含む、植物の皮性又は裸性を判定する検査方法。
(a)被検植物体および繁殖媒体からDNA試料を調製する工程、
(b)該DNA試料から請求項1に記載のDNA領域を増幅する工程、
(c)皮性品種から請求項1に記載のDNA領域を増幅したDNA断片と、該DNA試料から増幅したDNA断片の分子量または塩基配列を比較する工程
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2008050901A JP5205674B2 (ja) | 2008-02-29 | 2008-02-29 | イネ科植物の種子の皮性・裸性を支配する遺伝子の利用 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2008050901A JP5205674B2 (ja) | 2008-02-29 | 2008-02-29 | イネ科植物の種子の皮性・裸性を支配する遺伝子の利用 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2009207367A true JP2009207367A (ja) | 2009-09-17 |
JP5205674B2 JP5205674B2 (ja) | 2013-06-05 |
Family
ID=41181141
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2008050901A Expired - Fee Related JP5205674B2 (ja) | 2008-02-29 | 2008-02-29 | イネ科植物の種子の皮性・裸性を支配する遺伝子の利用 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP5205674B2 (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN112760339A (zh) * | 2021-02-02 | 2021-05-07 | 中国科学院遗传与发育生物学研究所 | 一种快速驯化四倍体野生稻落粒性的方法 |
Citations (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008502358A (ja) * | 2004-06-11 | 2008-01-31 | プラント・リサーチ・インターナショナル・ビー.・ブイ. | 転写因子のshineクレードおよびその使用 |
-
2008
- 2008-02-29 JP JP2008050901A patent/JP5205674B2/ja not_active Expired - Fee Related
Patent Citations (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008502358A (ja) * | 2004-06-11 | 2008-01-31 | プラント・リサーチ・インターナショナル・ビー.・ブイ. | 転写因子のshineクレードおよびその使用 |
Non-Patent Citations (4)
Title |
---|
JPN6012052419; Database Genbank [online] , 20011022, Accession No. BI958226 * |
JPN6012052421; BIO INDUSTRY Vol. 26, No. 4, 20090412, pp. 60-67 * |
JPN6013004182; Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America Vol. 105, No. 10, 20080311, pp. 4062-4067 * |
JPN6013004184; 育種学研究 第14巻、別冊1号, 20120329, 第18頁 * |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN112760339A (zh) * | 2021-02-02 | 2021-05-07 | 中国科学院遗传与发育生物学研究所 | 一种快速驯化四倍体野生稻落粒性的方法 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP5205674B2 (ja) | 2013-06-05 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
KR100861330B1 (ko) | 식물 데옥시하이퓨신 신타제, 식물 진핵생물 개시 인자5a를 코딩하는 dna, 트랜스제닉 식물 및 식물에서의노화 및 세포예정사멸 제어 방법 | |
US10611808B2 (en) | Isolated polypeptides and polynucleotides encoding same for generating plants with increased cuticlar water permeability | |
CN102057045B (zh) | 转基因糖用甜菜植物 | |
KR101856272B1 (ko) | 4-hppd 억제제에 대한 저항성 또는 감수성이 높은 식물 | |
JP5774478B2 (ja) | 生合成に関与する新規の遺伝子 | |
Morcillo et al. | Somaclonal variation in micropropagated oil palm. Characterization of two novel genes with enhanced expression in epigenetically abnormal cell lines and in response to auxin | |
UA115768C2 (uk) | Спосіб підвищення стійкості рослини до абіотичного стресу | |
CN106164254A (zh) | 用于诱导一种无融合生殖即孤雌繁殖的基因 | |
CN111926097B (zh) | 抗虫抗除草剂玉米转化事件及其创制方法和检测方法 | |
EA031178B1 (ru) | Гены резистентности | |
US20120030784A1 (en) | Beta-glucan-deficient gene in barley, synthetic gene, and use of same | |
JP6293660B2 (ja) | 着粒数が増加したコムギ及びその生産方法、並びにコムギの着粒数を増加させるための薬剤 | |
TW201041900A (en) | Isoforms of eIF-5A: senescence-induced eIF5A; wounding-induced eIF-5A; growth eIF-5A; and DHS | |
JP2000507445A (ja) | 果実成熟 | |
CN110172465B (zh) | 一种黄曲霉致病基因wprA的应用 | |
JP5769341B2 (ja) | 植物の開花性/閉花性を支配する遺伝子およびその利用 | |
JP5205674B2 (ja) | イネ科植物の種子の皮性・裸性を支配する遺伝子の利用 | |
WO2014208508A1 (ja) | 作物の収量に関わる遺伝子及びその利用 | |
WO2007069677A1 (ja) | オオムギ条性遺伝子とその利用 | |
JP4399605B2 (ja) | イネに耐虫性を付与するGrh2遺伝子及びその利用 | |
NL2011980C2 (en) | New effects of plant ahl proteins. | |
Houlne et al. | Alteration of the expression of a plant defensin gene by exon shuffling in bell pepper (Capsicum annuum L.) | |
KR100832257B1 (ko) | 식물 디옥시하이푸신 신타제, 식물 진핵성 개시 인자5에이를 인코딩하는 디엔에이, 형질전환 식물 및식물에서의 프로그램화된 노화와 세포 사멸의 조절방법 | |
JP5303713B2 (ja) | 冠水応答関連遺伝子及びその利用 | |
CA2916187A1 (en) | Gene encoding enzyme that oxidizes position 16 of steroid skeleton and plant in which expression level of the gene is lowered |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20110223 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20110311 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20121004 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20121120 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20130107 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20130109 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20130130 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20130201 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20160301 Year of fee payment: 3 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
S533 | Written request for registration of change of name |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533 |
|
S533 | Written request for registration of change of name |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees | ||
S111 | Request for change of ownership or part of ownership |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |