JP2009207367A - イネ科植物の種子の皮性・裸性を支配する遺伝子の利用 - Google Patents

イネ科植物の種子の皮性・裸性を支配する遺伝子の利用 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、新規な植物の皮性・裸性遺伝子の提供、該遺伝子を利用した植物の皮性・裸性の改変方法の提供、及び該遺伝子を標的とした植物の皮性又は裸性の判定方法の提供を課題とする。
【解決手段】ポジショナルクローニングによりオオムギの皮性・裸性遺伝子を単離することに成功した。該遺伝子に変異を導入することにより植物の皮性・裸性を改変し得ることを見出した。さらに、機能的な該遺伝子の有無を検出することにより植物の皮性・裸性を評価し得ることを見出した。
【選択図】なし

Description

本発明は、植物の皮性または裸性に関与する遺伝子および該遺伝子を利用した植物の皮性または裸性の改変に関する。植物の皮性または裸性の改変は、植物の品種改良などの分野において有用である。
オオムギ(Hordem vulgare L.)は、世界でコムギ、イネ、およびトウモロコシに次ぐ第4の重要な穀物である。栽培オオムギの顕著な植物学的特色は、ほとんどの栽培品種が、内外頴(外花頴と内花頴)が成熟時に果皮表皮にしっかりと接着している皮性の(内外頴を有する)頴果を有する点である。しかし少数の栽培品種は、はだか(内外頴を有しない)麦と呼ばれる頴と頴果が分離できる変種である(図1)。他のイネ科(Poacea)の穀物はそのような外頴-頴果の接着の多様性を示さない。オオムギの双方の頴果型は、作物として価値があり、異なる目的で利用されている。皮麦は主に、動物飼料および醸造に用いられる。皮麦の外頴は、機械による収穫の際の損傷から胚を保護して、同様に麦芽加工の際に発酵抽出物(麦汁)の分離における濾過媒体となる(非特許文献1)。対照的に、はだか麦は、頴を除去するための大量の精白が不要であることから、ヒトの食品にとって好ましい。現在では、可溶性の繊維に富むオオムギ製品の健康効果が公式に認められており(非特許文献2、3)、消費者の現在の栄養に関する関心により、ヒトの食品としてのオオムギの地位は高まる可能性がある。
食用部分の加工が容易なことは、食用穀物を栽培化する際の主な選択形質となりうる(非特許文献4、5)。その結果、裸性頴果は、オオムギにおける重要な栽培化形質であると考えられる(非特許文献5−8)。オオムギの野生型前駆植物であるHordem vulgare subsp. spontaneumは、皮性の穀粒を有する。したがって、皮性の穀粒は野生において適応的であると考えられる:外頴は、様々な生物学的および非生物学的ストレスから穀果を保護し、外頴の遠位末端に密着した芒により、種子の分散および土に埋もれることが促進される(非特許文献9)。考古学的証拠によれば(非特許文献4)、オオムギにおける最も初期の栽培植物化事象は、現在より約10,500〜9,500年前(yBP)に小穂非脱落性を獲得したことであり、その後約8,800〜8,000年前に6条性の穂が出現した。次に、はだか麦が約8,000年前に出現した。ほとんどが6条穂を有するはだか麦は、近東およびインド西部における新石器時代の多くの農業定住地から発掘されている(非特許文献4、8)。古代に、はだか麦の急速な散布が起こり、トルコ、ヨーロッパ西部および北部、スカンジナビア、アジア全体およびエチオピアのような広い地域に達したと考えられている(非特許文献6)。今日、はだか麦は世界中に分布しているが、東アジアに多く、特にネパールおよびチベットの高地において多く見られる。コムギより早期に成熟することにより、生育期間が短い高地での適応が促進された。はだか麦の起源に関して、異なる解釈(単系対多系起源)が提唱されている(非特許文献6、10)。容易に認識可能な裸性の頴果形質がヒトの選択を受けやすいことから、はだか麦の現在の分布はその地理的起源を正確に反映していない可能性がある(非特許文献5)。nud座に密接に連鎖するマーカーの分子変種に基づく本発明者らのこれまでの研究(非特許文献11)は、はだか麦が単系起源であることを示唆しているが、問題はなおも解明されていない。オオムギ穀物における最近の包括的な分子進化的研究は、全体として、異なる地域で多数の栽培植物化事象が起こったという解釈を支持する(非特許文献11、12)。
オオムギにおける皮性/裸性頴果は、7HL染色体長腕上に存在する単一の遺伝子座(裸(nudum)からnud)によって制御される(非特許文献14):皮性頴果対立遺伝子(Nud)は、裸性対立遺伝子(nud)に対して優性である。Harlan(非特許文献15)は、皮性オオムギにおいて、開花後10日目に頴果表面に粘着性の接着物質が出現して、この物質は外頴ではなくて頴果によって産生されると報告した。透過型電子顕微鏡により、開花後2日目に果皮表皮から接合物質が分泌されることが示された。その厚さは、穀粒の発達と共に増加するが、その化学組成は不明である(非特許文献1)。本発明者らは、Nud/nud遺伝子のマップに基づく単離を試みたが(非特許文献16、17)、これまでNud/nud遺伝子のクローニングは行われていなかった。
尚、本出願の発明に関連する先行技術文献情報を以下に示す。
Gaines RL, Bechtel DB, Pomeranz Y (1985) Cereal Chem 62 : 35-40 Newman CW, Newman RK (2006) Cereal Foods World 51 : 4-7 Pins JJ, Kaur H (2006) Cereal Foods World 51: 8-11 Zohary D, Hopf M (2000) Domestication of Plants in the Old World (Oxford Univ. Press, New York) Staudt G (1961) Economic Bot 15 : 203-212 Helbeck H (1959) Science 130 : 365-372 Harlan JR (1995) in Evolution of crop plants 2nd edn, eds Smartt J, Simmonds NW (Longman, London) pp 140-147 Salamini F, Ozkan H, Brandolini A, Schafer-Pregl R, Martin W (2002) Nature Rev Genet 3:429-441 Harlan JR (1968) in Barley: Origin, Botany, Culture, Winterhardiness, Genetics, Utilization, Pests (U.S. Department of Agriculture, Washington, DC), Agriculture Handbook No. 338, pp 9-31 Takahashi R, Yamamoto J (1950) Nogaku Kenkyu 39: 32-36 (in Japanese) Taketa S et al. (2004) Theor Appl Genet 108:1236-1242 Morrell PL, Clegg MT (2007) Proc Natl Acad Sci USA 104:3289-3294 Saisho D, Purugganan MD (2007) Genetics 177:1765-1776 Franckowiack JD, Konishi T (1997) Barley Genet Newsletter 26:51-52 Harlan HV (1920) J Agric Res 19:393-429 Kikuchi S, Taketa S, Ichii M and Kawasaki S (2003) Theor Appl Genet 108:73-78 Taketa S, Awayama T, Amano S, Sakurai Y, Ichii M (2006) Plant Breed 125:337-342
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、新規な植物の皮性・裸性遺伝子を提供することにある。また、本発明は、該遺伝子を利用して植物の皮性又は裸性を改変することを目的とする。さらに、本発明は、該遺伝子を標的とした植物の皮性又は裸性の判定方法を提供することをも目的とする。
本発明者等は、植物の中でも、皮性・裸性を改変する簡便な方法の開発が望まれているオオムギに着目し、その皮性又は裸性に関与する遺伝子を単離すべく鋭意研究を行った。
その結果、(i)調べた裸性の栽培品種100系統全てにおいて、ERF遺伝子を含む17 kbの欠失すること、(ii)異なる部位でDNA突然変異を有する2つのX-線誘発nud対立遺伝子が、それぞれが推定の機能的モチーフに影響を及ぼすこと、および(iii)ERF遺伝子発現が種皮に厳密に限局されることが明らかとなった。このことより、本発明者らは、皮性/裸性の頴果は7HL染色体長腕上の単一の座(nud)によって制御され、ERFファミリー転写因子遺伝子が、皮性/裸性頴果表現型を制御することを明らかにした。
即ち、本発明者らは、植物の皮性又は裸性に関与する新たな遺伝子を単離することに成功すると共に、該遺伝子を利用して植物の皮性又は裸性を改変させることが可能であること、さらには該遺伝子を利用して植物が皮性又は裸性のどちらであるかを判定することが可能であることを見出し、これにより本発明を完成するに至った。
本発明は、より具体的には、下記〔1〕〜〔21〕の発明を提供するものである。
〔1〕下記(a)から(d)のいずれかに記載のDNA。
(a)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA、
(b)配列番号:1に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA、
(c)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において1または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA、
(d)配列番号:1に記載の塩基配列からなるDNAの相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA
〔2〕植物の皮性を誘起させる機能を有する植物由来のタンパク質をコードする特徴を有する、〔1〕に記載のDNA。
〔3〕オオムギ由来である、〔1〕に記載のDNA。
〔4〕〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のDNAの転写産物と相補的なRNAをコードするDNA。
〔5〕〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のDNAの転写産物を特異的に開裂するリボザイム活性を有するRNAをコードするDNA。
〔6〕植物細胞における発現時に、共抑制効果により、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のDNAの発現を抑制させるRNAをコードするDNA。
〔7〕〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のDNAを含むベクター。
〔8〕〔7〕に記載のベクターが導入された宿主細胞。
〔9〕〔7〕に記載のベクターが導入された植物細胞。
〔10〕〔9〕に記載の植物細胞を含む形質転換植物体。
〔11〕〔10〕に記載の形質転換植物体の子孫またはクローンである、形質転換植物体。
〔12〕〔10〕または〔11〕に記載の形質転換植物体の繁殖材料。
〔13〕〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のDNAを植物細胞に導入し、該植物細胞から植物体を再生させる工程を含む、形質転換植物体の製造方法。
〔14〕〔1〕に記載のDNAによりコードされるタンパク質。
〔15〕〔8〕に記載の宿主細胞を培養し、該細胞またはその培養上清から組換えタンパク質を回収する工程を含む、〔14〕に記載のタンパク質の製造方法。
〔16〕〔14〕に記載のタンパク質に結合する抗体。
〔17〕配列番号:1のいずれかに記載の塩基配列またはその相補配列に相補的な少なくとも15の連続する塩基を含むポリヌクレオチド。
〔18〕〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のDNAを植物体の細胞内で発現させる工程を含む、植物の皮性を誘起させる方法。
〔19〕〔4〕〜〔6〕のいずれかに記載のDNAを植物体の細胞内で発現させる工程を含む、植物の裸性を誘起させる方法。
〔20〕〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のDNA、もしくは〔7〕に記載のベクターを有効成分とする、植物の皮性を改変する薬剤。
〔21〕以下の(a)〜(c)の工程を含む、植物の皮性又は裸性を判定する検査方法。
(a)被検植物体および繁殖媒体からDNA試料を調製する工程、
(b)該DNA試料から〔1〕に記載のDNA領域を増幅する工程、
(c)皮性品種から〔1〕に記載のDNA領域を増幅したDNA断片と、該DNA試料から増幅したDNA断片の分子量または塩基配列を比較する工程
オオムギの種子にはイネやコムギには少量しか含まれていない食物繊維が10倍以上含まれ、血圧やコレステロール値の低減効果および心臓病や大腸ガンを抑制する作用があることがアメリカ合衆国では公式に認可され、健康食品として見直されている。はだか麦は食用に適した形態であることから、本研究の成果は今後食用に適したはだか麦育種を加速するために大きく貢献すると期待される。たとえば、本発明の知見を用いれば、世界の各地に適した皮麦品種の中に裸性遺伝子を交雑育種で導入する際に、マーカー選抜育種(MAS)が可能になる。
皮裸性は登熟しないと判別できない形質のため、マーカー利用により育種初期段階における選抜効率の飛躍的な向上が見込まれる。
〔発明の実施の形態〕
本発明は、オオムギ由来のNudタンパク質をコードするDNAを提供する。ゲノムDNAの塩基配列を配列番号:1に、cDNAの塩基配列を配列番号:2に、該DNAがコードするタンパク質のアミノ酸配列を配列番号:3に示す。
これまでNud遺伝子は、植物の皮性/裸性に関与する遺伝子として、これまでオオムギ7HL染色体長腕上に存在する単一の遺伝子座nudという広大な領域のいずれかの場所に存在するものとして知られていたが、その同定および単離には至っていなかった。本発明者らは、複雑なステップを経て遂にその存在領域を解明し、単一の遺伝子として該遺伝子を単離することに初めて成功した。
Nudタンパク質は、植物の皮性を誘起する作用を有していることから、該タンパク質をコードするDNAで植物を形質転換又は交配により該遺伝子を導入することにより、植物の皮性を引き起こすことが可能である。一方、アンチセンス法やリボザイム法などを利用して該DNAの発現制御を行うことにより、裸性を誘起させることが可能である。例えば、Nud遺伝子の機能が消失した植物にこの遺伝子をセンス鎖で形質転換することにより、皮性を誘起させることができる。一方、Nud遺伝子の機能が保持されている植物にアンチセンス方向にNud遺伝子を導入することにより、裸性を誘起させることができる。
本発明のNudタンパク質をコードするDNAには、ゲノムDNA、cDNA、および化学合成DNAが含まれる。ゲノムDNAおよびcDNAの調製は、当業者にとって常套手段を利用して行うことが可能である。ゲノムDNAは、例えば、皮性遺伝子を有するオオムギ品種からゲノムDNAを抽出し、ゲノミックライブラリー(ベクターとしては、プラスミド、ファージ、コスミド、BAC、PACなどが利用できる)を作成し、これを展開して、本発明タンパク質をコードするDNA(例えば、配列番号:2)を基に調製したプローブを用いてコロニーハイブリダイゼーションあるいはプラークハイブリダイゼーションを行うことにより調製することが可能である。また、本発明タンパク質をコードするDNA(例えば、配列番号:2)に特異的なプライマーを作成し、これを利用したPCRをおこなうことによって調製することも可能である。また、cDNAは、例えば、Nud遺伝子を有するイネ品種から抽出したmRNAを基にcDNAを合成し、これをλZAP等のベクターに挿入してcDNAライブラリーを作成し、これを展開して、上記と同様にコロニーハイブリダイゼーションあるいはプラークハイブリダイゼーションを行うことにより、また、PCRを行うことにより調製することが可能である。
本発明は、配列番号:3に記載のNudタンパク質と機能的に同等なタンパク質をコードするDNAを包含する。ここで「Nudタンパク質と同等の機能を有する」とは、対象となるタンパク質が植物の皮性を誘起させる機能を有することを指す。このようなDNAは、好ましくは単子葉植物由来であり、より好ましくはイネ科植物由来であり、最も好ましくはオオムギ由来である。
このようなDNAには、例えば、配列番号:3に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数(好ましくは数個)のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする変異体、誘導体、アレル、バリアントおよびホモログが含まれる。
アミノ酸配列が改変されたタンパク質をコードするDNAを調製するための当業者によく知られた方法としては、例えば、site-directed mutagenesis法(Kramer, W.& Fritz,H.-J. (1987) Oligonucleotide-directed construction of mutagenesis via gapped duplex DNA.Methods in Enzymology, 154: 350-367)が挙げられる。また、塩基配列の変異によりコードするタンパク質のアミノ酸配列が変異することは、自然界においても生じ得る。このように天然型のNudタンパク質をコードするアミノ酸配列において1もしくは複数(好ましくは数個)のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加したアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNAであっても、天然型のNudタンパク質(配列番号:3)と同等の機能を有するタンパク質をコードする限り、本発明のDNAに含まれる。また、たとえ、塩基配列が変異した場合でも、それがタンパク質中のアミノ酸の変異を伴わない場合(縮重変異)もあり、このような縮重変異体も本発明のDNAに含まれる。
あるDNAが植物の皮性を誘起させるタンパク質をコードするか否かは以下のようにして評価することができる。最も一般的な方法としては、該DNAが導入された植物を、グロースチャンバーで栽培し、頴果が皮性又は裸性であるかを調べる手法である。
配列番号:3に記載のNudタンパク質と機能的に同等なタンパク質をコードするDNAを調製するために、当業者によく知られた他の方法としては、ハイブリダイゼーション技術(Southern, E.M. (1975) Journal of Molecular Biology, 98, 503)やポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術(Saiki, R. K. et al. (1985) Science, 230, 1350-1354、Saiki, R. K. et al. (1988) Science, 239, 487-491)を利用する方法が挙げられる。即ち、当業者にとっては、Nud遺伝子の塩基配列(配列番号:2)もしくはその一部をプローブとして、またNud遺伝子(配列番号:2)に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドをプライマーとして、オオムギや他の植物からNud遺伝子と高い相同性を有するDNAを単離することは通常行いうることである。このようにハイブリダイズ技術やPCR技術により単離しうるNudタンパク質と同等の機能を有するタンパク質をコードするDNAもまた本発明のDNAに含まれる。
このようなDNAを単離するためには、好ましくはストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーション反応を行う。本発明においてストリンジェントなハイブリダイゼーション条件とは、6M尿素、0.4%SDS、0.5xSSCの条件またはこれと同等のストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件を指す。よりストリンジェンシーの高い条件、例えば、6M尿素、0.4%SDS、0.1xSSCの条件を用いることにより、より相同性の高いDNAの単離を期待することができる。これにより単離されたDNAは、アミノ酸レベルにおいて、Nudタンパク質のアミノ酸配列(配列番号:3)と高い相同性を有すると考えられる。高い相同性とは、アミノ酸配列全体で、少なくとも50%以上、さらに好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上(例えば、95%,96%,97%,98%,99%以上)の配列の同一性を指す。アミノ酸配列や塩基配列の同一性は、カーリンおよびアルチュールによるアルゴリズムBLAST(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-2268, 1990、Proc Natl Acad Sci USA 90: 5873, 1993)を用いて決定できる。BLASTのアルゴリズムに基づいたBLASTNやBLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている(Altschul SF, et al: J Mol Biol 215: 403, 1990)。BLASTNを用いて塩基配列を解析する場合は、パラメーターは、例えばscore=100、wordlength=12とする。また、BLASTXを用いてアミノ酸配列を解析する場合は、パラメーターは、例えばscore=50、wordlength=3とする。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合は、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。これらの解析方法の具体的な手法は公知である。
本発明のDNAは、例えば、組換えタンパク質の調製や皮性が誘起された形質転換植物体の作出などに利用することが可能である。
組換えタンパク質を調製する場合には、通常、本発明のタンパク質をコードするDNAを適当な発現ベクターに挿入し、該ベクターを適当な細胞に導入し、形質転換細胞を培養して発現させたタンパク質を精製する。組換えタンパク質は、精製を容易にするなどの目的で、他のタンパク質との融合タンパク質として発現させることも可能である。例えば、大腸菌を宿主としてマルトース結合タンパク質との融合タンパク質として調製する方法(米国New England BioLabs社発売のベクターpMALシリーズ)、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として調製する方法(Amersham Pharmacia Biotech社発売のベクターpGEXシリーズ)、ヒスチジンタグを付加して調製する方法(Novagen社のpETシリーズ)などを利用することが可能である。宿主細胞としては、組換えタンパク質の発現に適した細胞であれば特に制限はなく、上記の大腸菌の他、例えば、酵母、種々の動植物細胞、昆虫細胞などを用いることが可能である。宿主細胞へのベクターの導入には、当業者に公知の種々の方法を用いることが可能である。例えば、大腸菌への導入には、カルシウムイオンを利用した導入方法(Mandel, M. & Higa, A. (1970) Journal of Molecular Biology, 53, 158-162、Hanahan, D. (1983) Journal of Molecular Biology, 166, 557-580)を用いることができる。宿主細胞内で発現させた組換えタンパク質は、該宿主細胞またはその培養上清から、当業者に公知の方法により精製し、回収することが可能である。組換えタンパク質を上記のマルトース結合タンパク質などとの融合タンパク質として発現させた場合には、容易にアフィニティー精製を行うことが可能である。また、後述する手法で、本発明のDNAが導入された形質転換植物体を作成し、該植物体から本発明のタンパク質を調製することも可能である。従って、本発明の形質転換植物体には、後述する、皮性を改変するために本発明のDNAが導入された植物体のみならず、本発明のタンパク質の調製のために本発明のDNAが導入された植物体も含まれる。
得られた組換えタンパク質を用いれば、これに結合する抗体を調製することができる。例えば、ポリクローナル抗体は、精製した本発明のタンパク質若しくはその一部のペプチドをウサギなどの免疫動物に免疫し、一定期間の後に血液を採取し、血ぺいを除去することにより調製することが可能である。また、モノクローナル抗体は、上記タンパク質若しくはペプチドで免疫した動物の抗体産生細胞と骨腫瘍細胞とを融合させ、目的とする抗体を産生する単一クローンの細胞(ハイブリドーマ)を単離し、該細胞から抗体を得ることにより調製することができる。これにより得られた抗体は、本発明のタンパク質の精製や検出などに利用することが可能である。本発明には、本発明のタンパク質に結合する抗体が含まれる。これらの抗体を用いることにより、植物体におけるNudタンパク質の発現部位の判別、もしくは植物種がNudタンパク質を発現するか否かの判別を行うことが出来る。
本発明のDNAを利用して皮性が誘起した形質転換植物体を作製する場合には、本発明のタンパク質をコードするDNAを適当なベクターに挿入して、これを植物細胞に導入し、これにより得られた形質転換植物細胞を再生させる。本発明者等により単離された皮性遺伝子は、オオムギの頴果の皮性を誘起する作用を有するが、このNud遺伝子を任意の植物(例えばイネ科植物)に導入し発現させることによりそれらの植物の皮性を調節することが可能である。この形質転換に要する期間は、従来のような交配による遺伝子移入に比較して極めて短期間であり、また、他の形質の変化を伴わない点で有利である。
一方、裸性が誘起した形質転換植物体を作製する場合には、本発明のタンパク質をコードするDNAの発現を抑制するためのDNAを適当なベクターに挿入して、これを植物細胞に導入し、これにより得られた形質転換植物細胞を再生させる。「本発明のタンパク質をコードするDNAの発現を抑制」には、遺伝子の転写の抑制およびタンパク質への翻訳の抑制が含まれる。また、DNAの発現の完全な停止のみならず発現の減少も含まれる。
植物における特定の内在性遺伝子の発現の抑制は、例えば、本発明のタンパク質をコードするDNAの転写産物と相補的なRNAをコードするDNAを利用して行なうことができる。
「本発明のタンパク質をコードするDNAの転写産物と相補的なRNAをコードするDNA」の一つの態様は、本発明のタンパク質をコードするDNAの転写産物と相補的なアンチセンスRNAをコードするDNAである。植物細胞におけるアンチセンス効果は、エッカーらが一時的遺伝子発現法を用いて、電気穿孔法で導入したアンチセンスRNAが植物においてアンチセンス効果を発揮することで初めて実証した(J.R.Eckerand R.W.Davis, (1986) Proc.Natl.Acad.USA.83:5372)。その後、タバコやペチュニアにおいても、アンチセンスRNAの発現によって標的遺伝子の発現を低下させる例が報告されており(A.R.van der Krol et al. (1988) Nature 333:866)、現在では植物における遺伝子発現を抑制させる手段として確立している。
アンチセンス核酸が標的遺伝子の発現を抑制する作用としては、以下のような複数の要因が存在する。すなわち、三重鎖形成による転写開始阻害、RNAポリメラーゼによって局部的に開状ループ構造がつくられた部位とのハイブリッド形成による転写抑制、合成の進みつつあるRNAとのハイブリッド形成による転写阻害、イントロンとエキソンとの接合点でのハイブリッド形成によるスプライシング抑制、スプライソソーム形成部位とのハイブリッド形成によるスプライシング抑制、mRNAとのハイブリッド形成による核から細胞質への移行抑制、キャッピング部位やポリ(A)付加部位とのハイブリッド形成によるスプライシング抑制、翻訳開始因子結合部位とのハイブリッド形成による翻訳開始抑制、開始コドン近傍のリボソーム結合部位とのハイブリッド形成による翻訳抑制、mRNAの翻訳領域やポリソーム結合部位とのハイブリッド形成によるペプチド鎖の伸長阻止、および核酸とタンパク質との相互作用部位とのハイブリッド形成による遺伝子発現抑制などである。これらは、転写、スプライシング、または翻訳の過程を阻害して、標的遺伝子の発現を抑制する。
本発明で用いられるアンチセンス配列は、上記のいずれの作用で標的遺伝子の発現を抑制してもよい。一つの態様としては、遺伝子のmRNAの5'端近傍の非翻訳領域に相補的なアンチセンス配列を設計すれば、遺伝子の翻訳阻害に効果的であろう。しかし、コード領域もしくは3'側の非翻訳領域に相補的な配列も使用し得る。このように、遺伝子の翻訳領域だけでなく非翻訳領域の配列のアンチセンス配列を含むDNAも、本発明で利用されるアンチセンスDNAに含まれる。使用されるアンチセンスDNAは、適当なプロモーターの下流に連結され、好ましくは3'側に転写終結シグナルを含む配列が連結される。このようにして調製されたDNAは、公知の方法で、所望の植物へ形質転換できる。アンチセンスDNAの配列は、形質転換する植物が持つ内在性遺伝子またはその一部と相補的な配列であることが好ましいが、遺伝子の発現を有効に阻害できる限り、完全に相補的でなくてもよい。転写されたRNAは、標的とする遺伝子の転写産物に対して好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の相補性を有する。アンチセンス配列を用いて、効果的に標的遺伝子の発現を阻害するには、アンチセンスDNA の長さは、少なくとも15塩基以上であり、好ましくは100塩基以上であり、さらに好ましくは500塩基以上である。通常、用いられるアンチセンスDNAの長さは5kbよりも短く、好ましくは2.5kbよりも短い。
内在性遺伝子の発現の抑制は、また、リボザイムをコードするDNAを利用して行うことも可能である。リボザイムとは触媒活性を有するRNA分子のことをいう。リボザイムには種々の活性を有するものがあるが、中でもRNAを切断する酵素としてのリボザイムの研究により、RNAの部位特異的な切断を目的とするリボザイムの設計が可能となった。リボザイムには、グループIイントロン型や、RNasePに含まれるM1RNAのように400ヌクレオチド以上の大きさのものもあるが、ハンマーヘッド型やヘアピン型と呼ばれる40ヌクレオチド程度の活性ドメインを有するものもある。
また、ヘアピン型リボザイムも、本発明の目的のために有用である。ヘアピン型リボザイムは、例えばタバコリングスポットウイルスのサテライトRNAのマイナス鎖に見出される(J.M.Buzayan Nature 323:349,1986)。このリボザイムも、標的特異的なRNA切断を起こすように設計できることが示されている(Y.Kikuchi and N.Sasaki (1992) Nucleic Acids Res. 19:6751)。
標的を切断できるよう設計されたリボザイムは、植物細胞中で転写されるようにカリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーターなどのプロモーターおよび転写終結配列に連結される。しかし、その際、転写されたRNAの5'末端や3'末端に余分な配列が付加されていると、リボザイムの活性が失われてしまうことがある。このようなとき、転写されたリボザイムを含むRNAからリボザイム部分だけを正確に切り出すために、リボザイム部分の5'側や3'側に、トリミングを行うためのシスに働く別のトリミングリボザイムを配置させることも可能である(K.Taira et al. (1990) Protein Eng. 3:733、A.M.Dzianottand J.J.Bujarski (1989) Proc.Natl.Acad.Sci.USA. 86:4823、 C.A.Grosshansand R.T.Cech (1991) Nucleic Acids Res. 19:3875、 K.Taira et al. (1991) Nucleic Acids Res. 19:5125)。また、このような構成単位をタンデムに並べ、標的遺伝子内の複数の部位を切断できるようにして、より効果を高めることもできる(N.Yuyama et al. Biochem.Biophys.Res.Commun.186:1271,1992)。このようなリボザイムを用いて本発明で標的となる遺伝子の転写産物を特異的に切断し、該遺伝子の発現を抑制することができる。
「本発明のタンパク質をコードするDNAの転写産物と相補的なRNAをコードするDNA」の他の一つの態様は、本発明のタンパク質をコードするDNAの転写産物と相補的なdsRNAをコードするDNAである。RNAiは、標的遺伝子配列と同一もしくは類似した配列を有する二重鎖RNA(以下dsRNA)を細胞内に導入すると、導入した外来遺伝子および標的内在性遺伝子の発現がいずれも抑制される現象である。細胞に約40〜数百塩基対のdsRNAが導入されると、ヘリカーゼドメインを持つダイサー(Dicer)と呼ばれるRNaseIII様のヌクレアーゼがATP存在下で、dsRNAを3’末端から約21〜23塩基対ずつ切り出し、siRNA(short interference RNA)を生じる。このsiRNAに特異的なタンパク質が結合して、ヌクレアーゼ複合体(RISC:RNA-induced silencing complex)が形成される。この複合体はsiRNAと同じ配列を認識して結合し、RNaseIII様の酵素活性によってsiRNAの中央部で標的遺伝子のmRNAを切断する。また、この経路とは別にsiRNAのアンチセンス鎖がmRNAに結合してRNA依存性RNAポリメラーゼ(RsRP)のプライマーとして作用し、dsRNAが合成される。このdsRNAが再びダイサーの基質となって、新たなsiRNAを生じて作用を増幅する経路も考えられている。
本発明のDNAは、標的遺伝子mRNAのいずれかの領域に対するアンチセンスRNAをコードしたアンチセンスコードDNAと、前記標的遺伝子mRNAのいずれかの領域のセンスRNAをコードしたセンスコードDNAを含み、前記アンチセンスコードDNAおよび前記センスコードDNAより前記アンチセンスRNAおよび前記センスRNAを発現させることができる。また、これらのアンチセンスRNAおよびセンスRNAよりdsRNAを作成することもできる。
本発明のdsRNAの発現システムを、ベクター等に保持させる場合の構成としては、同一のベクターからアンチセンスRNA、センスRNAを発現させる場合と、異なるベクターからそれぞれアンチセンスRNA、センスRNAを発現させる場合がある。例えば、同一のベクターからアンチセンスRNA、センスRNAを発現させる構成としては、アンチセンスコードDNAおよびセンスコードDNAの上流にそれぞれpolIII系のような短いRNAを発現し得るプロモータを連結させたアンチセンスRNA発現カセット、センスRNA発現カセットをそれぞれ構築し、これらカセットを同方向にあるいは逆方向にベクターに挿入することにより構成することができる。また、異なる鎖上に対向するようにアンチセンスコードDNAとセンスコードDNAと逆向きに配置した発現システムを構成することもできる。この構成では、アンチセンスRNAコード鎖とセンスRNAコード鎖とが対となった一つの二本鎖DNA(siRNAコードDNA)が備えられ、その両側にそれぞれの鎖からアンチセンスRNA、センスRNAとを発現し得るようにプロモータを対向して備えられる。この場合には、センスRNA、アンチセンスRNAの下流に余分な配列が付加されることを避けるために、それぞれの鎖(アンチセンスRNAコード鎖、センスRNAコード鎖)の3'末端にターミネーターをそれぞれ備えることが好ましい。このターミネーターは、A(アデニン)塩基を4つ以上連続させた配列などを用いることができる。また、このパリンドロームスタイルの発現システムでは、二つのプロモータの種類を異ならせることが好ましい。
また、異なるベクターからアンチセンスRNA、センスRNAを発現させる構成としては、例えば、アンチセンスコードDNAおよびセンスコードDNAの上流にそれぞれ polIII系のような短いRNAを発現し得るプロモータを連結させたアンチセンスRNA発現カセット、センスRNA発現カセットをそれぞれ構築し、これらカセットを異なるベクターに保持させることにより構成することができる。
本発明のRNAiにおいては、dsRNAとしてsiRNAが使用されたものであってもよい。「siRNA」は、細胞内で毒性を示さない範囲の短鎖からなる二重鎖RNAを意味し、Tuschlら(前掲)により報告された全長21〜23塩基対に限定されるものではなく、毒性を示さない範囲の長さであれば特に限定はなく、例えば、15〜49塩基対と、好適には15〜35塩基対と、さらに好適には21〜30塩基対とすることができる。あるいは、発現されるsiRNAが転写され最終的な二重鎖RNA部分の長さが、例えば、15〜49塩基対、好適には15〜35塩基対、さらに好適には21〜30塩基対とすることができる。
本発明のDNAとしては、標的配列のインバーテッドリピートの間に適当な配列(イントロン配列が望ましい)を挿入し、ヘアピン構造を持つダブルストランドRNA(self-complementary ‘hairpin’ RNA(hpRNA))を作るようなコンストラクト(Smith, N.A. et al. Nature, 407:319, 2000、Wesley, S.V. et al. Plant J. 27:581, 2001、Piccin, A. et al. Nucleic Acids Res. 29:E55, 2001)を用いることもできる。
RNAiに用いるDNAは、標的遺伝子と完全に同一である必要はないが、少なくとも70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上(96%、97%、98%、99%以上)の配列の同一性を有する。また、配列の同一性は上述した手法により決定できる。
dsRNAにおけるRNA同士が対合した二重鎖RNAの部分は、完全に対合しているものに限らず、ミスマッチ(対応する塩基が相補的でない)、バルジ(一方の鎖に対応する塩基がない)などにより不対合部分が含まれていてもよい。本発明においては、dsRNAにおけるRNA同士が対合する二重鎖RNA領域中に、バルジおよびミスマッチの両方が含まれていてもよい。
内在性遺伝子の発現の抑制は、さらに、標的遺伝子配列と同一もしくは類似した配列を有するDNAの形質転換によってもたらされる共抑制によっても達成されうる。「共抑制」とは、植物に標的内在性遺伝子と同一若しくは類似した配列を有する遺伝子を形質転換により導入すると、導入する外来遺伝子および標的内在性遺伝子の両方の発現が抑制される現象のことをいう。共抑制の機構の詳細は明らかではないが、植物においてはしばしば観察される。例えば、Nud遺伝子が共抑制された植物体を得るためには、Nud遺伝子若しくはこれと類似した配列を有するDNAを発現できるように作製したベクターDNAを目的の植物へ形質転換し、得られた植物体からNud変異体の形質を有する植物、即ち裸性が誘起した植物を選択すればよい。共抑制に用いる遺伝子は、標的遺伝子と完全に同一である必要はないが、少なくとも70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上(例えば、95%,96%,97%,98%,99%以上)の配列の同一性を有する。
さらに、本発明における内在性遺伝子の発現の抑制は、標的遺伝子のドミナントネガティブの形質を有する遺伝子を植物へ形質転換することによっても達成することができる。ドミナントネガティブの形質を有する遺伝子とは、該遺伝子を発現させることによって、植物体が本来持つ内在性の野生型遺伝子の活性を消失もしくは低下させる機能を有する遺伝子のことをいう。
また、本発明は、上記本発明のDNAや本発明のDNAの発現を抑制するDNAが挿入されたベクターを提供する。本発明のベクターとしては、組換えタンパク質の生産に用いる上記したベクターの他、形質転換植物体作製のために植物細胞内で本発明のDNAあるいは本発明のDNAの発現を抑制するDNAを発現させるためのベクターも含まれる。このようなベクターとしては、植物細胞で転写可能なプロモーター配列と転写産物の安定化に必要なポリアデニレーション部位を含むターミネーター配列を含んでいれば特に制限されず、例えば、プラスミド「pBI121」、「pBI221」、「pBI101」(いずれもClontech社製)などが挙げられる。植物細胞の形質転換に用いられるベクターとしては、該細胞内で挿入遺伝子を発現させることが可能なものであれば特に制限はない。例えば、植物細胞内での恒常的な遺伝子発現を行うためのプロモーター(例えば、カリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーター)を有するベクターや外的な刺激により誘導的に活性化されるプロモーターを有するベクターを用いることも可能である。ここでいう「植物細胞」には、種々の形態の植物細胞、例えば、懸濁培養細胞、プロトプラスト、葉の切片、カルスなどが含まれる。
本発明のベクターは、本発明のタンパク質を恒常的または誘導的に発現させるためのプロモーターを含有しうる。恒常的に発現させるためのプロモーターとしては、例えば、カリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーター、イネのアクチンプロモーター、トウモロコシのユビキチンプロモーターなどが挙げられる。
また、誘導的に発現させるためのプロモーターとしては、例えば糸状菌・細菌・ウイルスの感染や侵入、低温、高温、乾燥、紫外線の照射、特定の化合物の散布などの外因によって発現することが知られているプロモーターなどが挙げられる。このようなプロモーターとしては、例えば、糸状菌・細菌・ウイルスの感染や侵入によって発現するイネキチナーゼ遺伝子のプロモーターやタバコのPRタンパク質遺伝子のプロモーター、低温によって誘導されるイネの「lip19」遺伝子のプロモーター、高温によって誘導されるイネの「hsp80」遺伝子と「hsp72」遺伝子のプロモーター、乾燥によって誘導されるシロイヌナズナの「rab16」遺伝子のプロモーター、紫外線の照射によって誘導されるパセリのカルコン合成酵素遺伝子のプロモーター、嫌気的条件で誘導されるトウモロコシのアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子のプロモーターなどが挙げられる。また、イネキチナーゼ遺伝子のプロモーターとタバコのPRタンパク質遺伝子のプロモーターはサリチル酸などの特定の化合物によって、「rab16」は植物ホルモンのアブシジン酸の散布によっても誘導される。
また、本発明は、本発明のベクターが導入された形質転換細胞を提供する。本発明のベクターが導入される細胞には、組換えタンパク質の生産に用いる上記した細胞の他に、形質転換植物体作製のための植物細胞が含まれる。植物細胞としては特に制限はなく、例えば、オオムギ、シロイヌナズナ、イネ、トウモロコシ、ジャガイモ、タバコ、またはユーカリなどの細胞が挙げられる。本発明の植物細胞には、培養細胞の他、植物体中の細胞も含まれる。また、プロトプラスト、苗条原基、多芽体、毛状根も含まれる。植物細胞へのベクターの導入は、ポリエチレングリコール法、電気穿孔法(エレクトロポーレーション)、アグロバクテリウムを介する方法、パーティクルガン法など当業者に公知の種々の方法を用いることができる。
形質転換植物細胞からの植物体の再生は、植物細胞の種類に応じて当業者に公知の方法で行うことが可能である。例えば、オオムギに関する形質転換植物体を作出する手法としては、Tingayら(Tingay S. et al. (1997) Plant J. 11:1369-1376)、Murrayら(Murray F et al. (2004) Plant Cell Report 22:397-402)、及びTravallaら(Travalla S et al. (2005) Plant CellReport 23:780-789)に記載された方法を挙げることができる。また、イネにおいては、形質転換植物体を作出する手法については、ポリエチレングリコールによりプロトプラストへ遺伝子導入し、植物体(インド型イネ品種が適している)を再生させる方法(Datta,S.K. (1995) In Gene Transfer To Plants(Potrykus I and Spangenberg Eds.) pp66-74)、電気パルスによりプロトプラストへ遺伝子導入し、植物体(日本型イネ品種が適している)を再生させる方法(Toki et al. (1992) Plant Physiol. 100, 1503-1507)、パーティクルガン法により細胞へ遺伝子を直接導入し、植物体を再生させる方法(Christou et al. (1991) Bio/technology, 9: 957-962.)およびアグロバクテリウムを介して遺伝子を導入し、植物体を再生させる方法(Hiei et al. (1994) Plant J. 6: 271-282.)など、いくつかの技術が既に確立し、本願発明の技術分野において広く用いられている。本発明においては、これらの方法を好適に用いることができる。
形質転換された植物細胞は、再分化させることにより植物体を再生させることが可能である。再分化の方法は植物細胞の種類により異なるが、例えば、イネであればFujimuraら(Plant Tissue Culture Lett. 2:74 (1995))の方法が挙げられ、トウモロコシであればShillitoら(Bio/Technology 7:581 (1989))の方法やGorden-Kammら(Plant Cell 2:603(1990))が挙げられ、ジャガイモであればVisserら(Theor.Appl.Genet 78:594 (1989))の方法が挙げられ、タバコであればNagataとTakebe(Planta 99:12(1971))の方法が挙げられ、シロイヌナズナであればAkamaら(Plant Cell Reports12:7-11 (1992))の方法が挙げられ、ユーカリであれば土肥ら(特開平8-89113号公報)の方法が挙げられる。
一旦、ゲノム内に本発明のDNAあるいは本発明のDNAの発現を抑制するDNAが導入された形質転換植物体が得られれば、該植物体から有性生殖または無性生殖により子孫を得ることが可能である。また、該植物体やその子孫あるいはクローンから繁殖材料(例えば、種子、果実、切穂、塊茎、塊根、株、カルス、プロトプラスト等)を得て、それらを基に該植物体を量産することも可能である。本発明には、本発明のDNAが導入された植物細胞、該細胞を含む植物体、該植物体の子孫およびクローン、並びに該植物体、その子孫、およびクローンの繁殖材料が含まれる。
このようにして作出された皮性・裸性が改変された植物体は、野生型植物体と比較して、頴果の皮性・裸性が変化している。例えば、Nudタンパク質をコードするDNAが導入された植物体は、頴果の皮性が誘起し、一方、アンチセンスDNAなどの導入によりNudタンパク質をコードするDNAの発現が抑制された植物体は、頴果の裸性が誘起される。本発明の手法を用いれば、有用農作物であるイネ科植物(例えば、オオムギ)においては、頴果の皮性・裸性を調節することができ、食用方法に適した形質で、食用穀物を生産することができる。
また、本発明は、配列番号:1または2に記載の塩基配列またはその相補配列に相補的な少なくとも15の連続する塩基を含むポリヌクレオチドを提供する。ここで「相補配列」とは、A:T、G:Cの塩基対からなる2本鎖DNAの一方の鎖の配列に対する他方の鎖の配列を指す。また、「相補的」とは、少なくとも15個の連続したヌクレオチド領域で完全に相補配列である場合に限られず、少なくとも70% 、好ましくは少なくとも80% 、より好ましくは90% 、さらに好ましくは95% 以上(96%、97%、98%、99%以上)の塩基配列の同一性を有すればよい。このようなDNAは、本発明のDNAの検出や単離を行なうためのプローブとして、また、増幅を行なうためのプライマーとして有用である。本発明においてマーカーとして使用されるポリヌクレオチドとしては、表2または表4に記載のポリヌクレオチド(配列番号:9〜69のいずれかに記載のポリヌクレオチド)を挙げることができる。
本発明は、該DNA、もしくは該ベクターを有効成分とする、植物の皮性を改変する薬剤に関する。
本発明の薬剤においては、有効成分であるDNAまたはベクター以外に、例えば、滅菌水、生理食塩水、植物油、界面活性剤、脂質、溶解補助剤、緩衝剤、保存剤等が必要に応じて混合されていてもよい。
さらに、本発明は、植物の皮性・裸性を判定する遺伝子診断方法を提供する。植物の皮性・裸性の形質は植物の収穫に密接に係わり、植物の皮性・裸性を判定することは、収穫方法又は食用方法に適応したイネ科植物の品種育成において非常に重要なことである。
本発明において「植物の皮性・裸性を判定」とは、これまでに栽培されていた品種における皮性・裸性の判定のみならず、交配や遺伝子組換え技術による新しい品種における皮性・裸性の判定も含まれる。
本発明の植物の皮性・裸性を評価する方法は、植物が機能的なNudタンパク質をコードするDNAを保持しているか否かを検出することを特徴とする。植物が機能的なNudタンパク質をコードするDNAを保持しているか否かは、ゲノムDNAのNudに相当する領域の分子量の違い、または塩基配列の違いを検出することにより評価することが可能である。
一つの態様としては、被検植物体および繁殖媒体におけるNud遺伝子に相当するDNA領域と、皮性品種におけるNud遺伝子のDNA領域の分子量を比較する方法である。「皮性品種」とは、皮性が誘起された品種のことを示す。
まず、被検植物体および繁殖媒体からDNA試料を調製する。次いで、該DNA試料からNud遺伝子に相当するDNA領域を増幅する。さらに、皮性品種(例えば、はるな二条、Bowman)におけるNud遺伝子のDNA領域を増幅したDNA断片と、該DNA試料から増幅したDNA断片の分子量を比較し、分子量が皮性品種よりも有意に低い場合に被検植物の皮性は消失、すなわち裸性が誘起していると判定する。
具体的には、まず、本発明のNud遺伝子のDNA領域をPCR法等によって増幅する。本発明における「Nud遺伝子のDNA領域」とは、Nud遺伝子のゲノムDNA領域に相当する部分であり、増幅される範囲としてはゲノムDNA全長であってもよいし、ゲノムDNAの一部分であってもよい。PCRは、当業者においては反応条件等を適宜選択して行うことができる。PCRの際に、32P等のアイソトープ、蛍光色素、またはビオチン等によって標識したプライマーを用いることにより、増幅DNA産物を標識することができる。あるいはPCR反応液に32P等のアイソトープ、蛍光色素、またはビオチン等によって標識された基質塩基を加えてPCRを行うことにより、増幅DNA産物を標識することも可能である。さらに、PCR反応後にクレノウ酵素等を用いて、32P等のアイソトープ、蛍光色素、またはビオチン等によって標識された基質塩基を、増幅DNA断片に付加することによっても標識を行うことができる。
こうして得られた標識されたDNA断片を、熱を加えること等により変性させ、尿素やSDSなどの変性剤を含むポリアクリルアミドゲルによって電気泳動を行う。変性剤としてSDSを利用したSDS-PAGEは、本発明において有利な分離手法であり、SDS-PAGEはLaemmliの方法(Laemmli (1970) Nature 227, 680-685)に準じて行うことができる。電気泳動後、DNA断片の移動度を、X線フィルムを用いたオートラジオグラフィーや、蛍光を検出するスキャナー等で検出し、解析を行う。標識したDNAを使わない場合においても、電気泳動後のゲルをエチジウムブロマイドや銀染色法などによって染色することによって、バンドを検出することができる。例えば、実施例でも記載されているように本発明の配列番号:9〜69のいずれかに記載のポリヌクレオチド対をプライマーとして、皮性品種(例えば、はるな二条、Bowman)および被検植物からDNA断片を増幅し、分子量を比較することで皮性・裸性を判定することが出来る。この場合、皮性が消失(裸性が誘起)している品種は、皮性品種より分子量の低下したDNA断片が増幅される。
また、本発明のDNAに相当する被検植物体のDNA領域の塩基配列を直接決定し、皮性品種の塩基配列と比較することにより、植物の皮性・裸性を判定することもできる。
例えば、Nud遺伝子の機能を喪失させる変異が被検植物のDNAに見出されれば、この被検植物は皮性が消失(裸性が誘起)していると判定される。
本発明の方法による植物の皮性の評価は、例えば、植物の交配による品種改良を行なう場合において利点を有する。例えば、皮性の形質の導入を望まない場合に、皮性を有する品種との交配を避けることができ、逆に、皮性の形質の導入を望む場合に、皮性を有する品種との交配を行うことができる。また交雑後代個体から望ましい個体を選抜する際にも有効である。植物の皮性・裸性を、その表現型により判断することに比して、遺伝子レベルで判断することは簡便で確実であるため、本発明の皮性・裸性の評価方法は、植物の品種改良において大きく貢献し得ると言える。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
〔実施例1〕植物材料
遺伝地図作製は、2つの集団からnudに関して分離する植物2828例において行った。遺伝地図作製のための2つの集団は、コビンカタギ(Kobinkatagi、nud、岡山大学アクセッション番号OUJ369)×Triunmph(Nud、Dr. DA Laurie, UKからの寄贈)および樺太在来Karafuto Zairai(Nud、OUJ301)×会津裸3Aizu Hadaka 3(nud、OUJ328)であった。前者の交配において、本発明者らは、nudに関して分離するF2およびF3植物を用いたが、後者の交配では、F2植物を地図作製のために用いた。本発明者らのこれまでの研究と比較して(Taketa S, Awayama T, Amano S, Sakurai Y, Ichii M (2006) Plant Breed 125:337-342)、さらなるF2植物94個体および814個体をそれぞれ、前者および後者の交配のために調べた。
Nudの対立遺伝子変種の分析に関して、後述の表5において記載される2つの誘発型裸性変異体(Scholz F (1955) Kulturpflanze 3:69-89)および33系統を用いた。
機能的分析に関して、Bowmanおよびその同質遺伝子系の裸性系統(nud-Bowmanとして省略される)を用いた。Bowmanは、二条皮麦栽培品種である。nud-Bowmanは、nud遺伝子を有するBowmanの同質遺伝子系統であり、これは8回の戻し交配によって作出された(Dr. J. Franckowiack, Hermitage Research Station, Australiaからの寄贈)。nud-Bowmanに関するnud遺伝子源は、その複雑な系譜のために単一の裸性栽培品種まで戻って追跡することができない。Bowmanおよびその同質遺伝子の裸性系統(nud-Bowman)は、集合的に「Bowman同質遺伝子系統」と呼ばれる。植物を自然光の下で15℃の一定温度で制御された環境を有する部屋で生育させた。Bowman同質遺伝子系統は、ほぼ光周期非感受性であり、この生育条件において播種後約2ヶ月で開花を開始する。下穂の中央部の葯が開くと、下穂にタグをつけた。穀粒試料を夏から秋にかけて開花した植物から収穫して、そのあいだに昼間の長さは14.5から10.5時間まで変化した。この生育条件で、穀粒は開花後約3週間まで容易に外頴を除去でき、さらに3〜4週間後生理的成熟に達した。
〔実施例2〕Nudのポジショナルクローニング
本発明者らは、既に開発された隣接マーカー(Taketa S, Awayama T, Amano S, Sakurai Y, Ichii M (2006) Plant Breed 125:337-342)を用いて、2つの交配の組み合わせからの形質に関して分離する子孫2828個体をスクリーニングしたところ、nudは、マーカーsKT3とsKT9のあいだの0.64-cMの間隔に範囲が絞り込まれた(図2A)。次に本発明者らは、さらに位置を特定するために、オオムギ/イネのマイクロシンテニーを利用した。
隣接するマーカーを、高密度のオオムギ発現配列タグ(EST)マップに組み込んで(Sato K, Nankaku N, Motoi Y, Takeda K (2004) Proc 9th Int Barley Genet Symp (Brno) pp 79-85)、nud座に隣接する2つのオオムギEST(アクセッション番号、マーカー3G12に関してBJ462032および82C6に関してAV935407)を選択した。オオムギnud座を含む領域がイネ染色体のどの部分に対応するかを解明するためには、オオムギゲノム断片由来のマーカーであるsKT3およびsKT9ではイネで類似の配列を特定することができず、種間で保存性の高い遺伝子領域から新たなnudに連鎖したマーカーを開発する必要があった。この目的のために、前述のSatoらのオオムギ高密度EST遺伝地図の情報が不可欠であった。BLASTN分析により、イネ第6染色体長腕上に370kb離れたそのそれぞれの相同的なイネEST(AK068856およびAK070667)が同定された。同一直線領域内での2つのイネ遺伝子(AK061163およびAK121264)をマーカーとして用いて、より近いオオムギマーカー(ABRS3およびABRS9)を開発することに成功した。
〔実施例3〕BACコンティグの作成
次に、本発明者らは、マーカーsKT9およびABRS3から開始して、皮麦栽培品種はるな二条(Saisho D, Myoraku E, Kawasaki S, Sato K, Takeda K (2007) Breed Sci 57:29-38)の細菌人工染色体(BAC)ライブラリをスクリーニングした。
nud座近傍のBACクローンを、DNAプールのPCRスクリーニングによって、または整列させたBACコロニーフィルターをジゴキシゲニン(DIG)標識プローブとハイブリダイズさせることのいずれかによって選択した。BAC DNAは、標準的なアルカリ-SDS技法を用いて抽出して、NotI、AscI、またはPmeIによる消化後にパルスフィールド電気泳動を用いてインサートの大きさを分析した。BACクローンは全て、M13プライマーを用いてエンドシークエンシングした。選択されたBACクローンは6-bp制限酵素消化によるフィンガープリンティング後にサブクローニングに供した。独自のバンドがゲルから抽出され、これをシークエンシングのためにプラスミドベクターにクローニングした。重なり合うBACをサザンハイブリダイゼーションまたはPCRマーカー分析のいずれかによって同定した。末端配列から設計されたプライマーを用いてPCR反応を行い、BAC最小タイリングパスを構築した。
* はるな二条BAC(HNB)クローンID名。シークエンシングに供するクローンを黒色囲みで印し、図2Aにおいて示される他の重要なBACクローンに斜線網がけで印をつけた。
† HYBは、高密度コロニーメンブレンとのハイブリダイゼーションを示す;PCRはPCRスクリーニングを示す。
‡ インサートの大きさは、完全にショットガンシークエンシングされた3つのクローン(106O20、035P04、および233N01)を除き、パルスフィールドゲル電気泳動を用いて推定した。
§ BACの方向は、M13シークエンシングプライマーに基づいてF末端/R末端であり;Icは低コピーを示し、およびrepは反復配列を示す。
¶ BAC endはBAC末端シークエンシングを示す;文字FまたはRは、マーカーが開発されたBACインサート末端側を示す。
近位部位で組換えが同定されるまで7回の染色体歩行を行って、BACクローン20個を選択して(表1)、Nud座に及ぶ500 kbのコンティグを構築した(BAC コンティグアセンブリングのために用いられるマーカーに関しては表2を参照)。約235kbの領域がnudと共分離した。物理地図において、nud座は、重なり合う4個のBACクローンによって完全に包含された(図2A)。
〔実施例4〕BACシークエンシングおよびアノテーション
4個のBACクローンをショットガンシークエンシングした。BACクローンHNB106O20をTaKaRa Dragon Genomics Center(http://www.takara.bio.co.jp)によって、約7倍範囲でショットガンシークエンシングした。ギャップをPCRプライマー歩行によって埋めた。他の3つのBAC(HNB233N01、035P04、および589B20)を、Rice Genome Research Programの標準的なジデオキシターミネーター化学プロトコール(International Rice Genome Sequencing Project (2005) Nature 436: 793-800)に従ってショットガンシークエンシングした(10倍範囲)が、HNB 589B20はごく部分的にシークエンシングして、クローン035P04および106O20のあいだの小さいギャップを埋めた。
アノテーション分析は以下のように実施した。第一に、全配列を、Repeat Masker(http://www.repeatmasker.org/cgi-bin/RepeatProteinMaskRequest)を用いてプロセシングした。次に、マスクされた配列を遺伝子予測プログラム、RiceGAAS(http://ricegaas.dna.affrc.go.jp)およびGeneMark.hmm ver 2.2a(http://opal.biology.gatech.edu/GeneMark/eukhmm.cgi)を用いて分析した。反復配列を同定するために、コムギ連(Triticeae)Repeatデータベース(TREP:http://wheat.pw.usda.gov/ITMI/Repeats)に対するBLASTN探索を用いて非マスク配列データを分析した。得られた結果を、e-20の閾値E値によって手動で選別した。予測遺伝子をまた、シロイヌナズナ(Arabidopsis)、イネ、トウモロコシ、コムギ、およびオオムギを含む植物種のDDBJ ESTデータベースを用いてBLASTNによって分析した。栽培品種はるな二条(Matsumoto et al.原稿作製中)に由来するオオムギcDNA末端配列約170,000個のデータベースも同様に、BLASTN分析に委託した。上記の分析の組み合わせ結果に基づいて遺伝子を予測した。
配列解読されたBACコンティグのアノテーションにより、予想遺伝子2個が示された。コンティグ配列の約50%が反復配列であると分類された(表3)。エチレン応答因子(ERF)ファミリー転写因子は、遺伝地図作製および物理地図作製によって境界が絞り込まれた領域に存在する唯一の遺伝子であり、したがって、Nud候補遺伝子であると考えられた。
〔実施例5〕ロングPCRおよびRACE
裸性栽培品種から候補遺伝子を単離するために、本発明者らは、表2において示されるプライマー対ABRS3を用いてPCR-増幅を試みた。しかし、調べたいかなる裸性栽培品種においても断片は増幅されなかった。同様に、ERFの10.8kb上流および2.8kb下流のあいだの領域で2-kb毎の間隔で設計された他の全てのPCRプライマー対が、裸性栽培品種において特異的に増幅することができなかった。
裸性栽培品種における欠失の程度を決定するために、Phusion高忠実度 DNAポリメラーゼ(Finnzymes)およびプライマー対HNB32C2 F13-R8(図2Bおよび表4)を用いて、ロングPCRを試みた。その結果、裸性栽培品種から3.6 kb断片が増幅されたが、鋳型としてBAC HNB 106O20のDNAを用いた対照PCRは、予想される約20 kbのバンドを増幅した。
3.6 kb断片をPCRクローニングキット(Zero Blunt TOPO;Invitrogen)を用いてクローニングした。
2つの裸性系統から得られた独立したクローン3個の3.6 kb断片のシークエンシング[コビンカタギ(Kobinkatagi、日本の在来品種)およびnud-Bowman(皮性栽培品種Bowmanの遺伝的背景においてnud対立遺伝子を有する同質遺伝子系統)]を行ったところ、はるな二条BACコンティグ配列の対応する領域と比較して16,680 bpの欠失が明らかとなった(図2B)。
3つのプライマー、wF2-kR1-tR2を用いて、PCRにより、アンプリコン長多型として17-kb欠失の有無を検出した(皮麦に関して853 bpおよびはだか麦に関して785 bp)。
Nud遺伝子の完全長のcDNA配列を3’および5’ RACEによって決定した(表4)。
総RNAをBowmanの1週齢頴果から単離した。3’ RACEに関して、SuperScript II RNase H-逆転写酵素(Invitrogen)を用いて製造元のプロトコールに従ってcDNAを総RNAから合成した。5’ RACEに関して、cDNAエンドキット(ver.2;Invitrogen)の5’ RACE急速増幅系を、製造元のプロトコールに従って用いた。RACEプライマーを表4に示す。
上記の配列決定により、16,680 bpの欠失(以降、17-kb欠失と呼ぶ)には、全ERF遺伝子が含まれることが明らかとなった。このように、裸性栽培品種の遺伝子構造分析は、ERF遺伝子が候補遺伝子であることを支持している。
〔実施例6〕Nud対立遺伝子の配列分析
次に本発明者らは、2つのX-線誘発裸性変異体(Scholz F (1955) Kulturpflanze 3:69-89)における候補遺伝子配列を分析した。本発明者らは、交配実験を通してnud座に対するその対立性を確認した。
コード領域、イントロン、ならびに5’および3’非コード領域を含む約1.7-kb Nud領域の対立遺伝子変種を、シークエンシングキット(BigDye Terminator v3.1 Cycle;Applied Biosystems)およびDNAシークエンサー(Model 3100;Applied Biosystems)を用いて直接シークエンシングによって調べた。シークエンシング領域を表4において記述されるプライマー対を用いて、異なる重なり合う4つの断片として増幅した。
配列分析により、2つの誘発型裸性変異体のそれぞれが、ERF遺伝子の推定の機能的モチーフにおいて異なる一塩基変異を有するが、その野生型品種(それぞれ、Haisa およびAckermann’s Donaria)は、はるな二条と同一のヌクレオチド配列を有することが示された(図2Cおよび図6)。変異体4129は、第二のエキソンにおいてTからAのヌクレオチド置換を有し、それによって134位でのバリン(V)からアスパラギン酸(D)への変化が起こった。変異体3041/6aは第二のエキソンにおいて1-bpの欠失を有し、これはフレームシフトを引き起こして未成熟な終始コドンを生じ、それによってC-末端が切断されたアミノ酸199個のタンパク質が得られた。誘発変異体の配列分析により、ERF遺伝子がnud座を含むことが確認され、したがってその遺伝子を以降nudと呼ぶ。本発明者らは、Franckowiack and Konishi(Franckowiack JD, Konishi T (1997) Barley Genet Newsletter 26:51-52)に従って、裸性栽培品種における無効ヌル(欠失)対立遺伝子をnud1.aと指定し、誘発型裸性変異体対立遺伝子をnud 1.b(Mut 4129)およびnud 1.c (Mut.3041/6a)とそれぞれ指定した。
〔実施例7〕RT-PCRおよびRNAインサイチューハイブリダイゼーション
本発明者らは、以下に記載の手法によりRT-PCRおよびRNAインサイチューハイブリダイゼーションを行った。
総RNAを、Bowman同質遺伝子系統の外頴、頴果、および葉身からキット(Isogen;Nippon Gene)を用いて抽出した。試料を開花日(0週目)および開花後3週目まで1週間間隔で採取した。頴果に関して、胚および内胚乳を指で挟むことによって除去して、他の部分からのmRNA混入が最小限となるように紙上にブロットした。次に、DNAをDNアーゼIによる消化によって除去した後逆転写を行った。ビーズ(Ready-To-Go(商標) You-Prime First-strand Beads;GE Healthcare)を用いて製造元の説明書に従って、cDNAを合成した。次に、ExTaq DNAポリメラーゼ(TaKaRa)および対照としてのアクチンプライマーを用いてRT-PCRを行った。Nudおよびアクチン対照に関して、増幅サイクル30および25回をそれぞれ用いた。用いたプライマー対を表4に示す。
若い穀粒を、上記のようにFAAにおいて固定して、脱水し、Paraplast(Oxford Labware)において包埋した。RNAインサイチューハイブリダイゼーションを、Maiら(Mai HT et al. (2006) Plant Cell Physiol 47:829-838)によって用いられる改変を加えてKouchi and Hata(Kouchi H, Hata S (1993) Mol Gen Genet 238:106-119)によって記述されるとおりに行った。全5’-UTRプラスNud遺伝子のコード領域の最初の84 bpを含む262-bpの配列をプローブとして用いて、DIG標識センスおよびアンチセンスRNAプローブを調製した(TOPO TA Cloning Kit Dual Promoter with TOP;Invitrogen)。
〔実施例8〕nud座の自然変異
多様な起源のさらに6種類の裸性栽培品種[イラン1種、トルコ2種、エチオピア2種、およびネパール系統1種]を、表4において示されるプライマー対を用いて欠失点を含む約1.4-kb領域に関して直接シークエンシングした。それらは全て、2つの標準的な裸性系統と同一のヌクレオチド配列を共有した。本発明者らは、17-kb欠失の有無を決定するために単純なPCRアッセイを開発した(図2B、実施例6に記載の方法、および表4)。Taketaら(Taketa S et al. (2004) Theor Appl Genet 108:1236-1242)が選択した世界のオオムギ259系統の調査により、裸性栽培品種は100系統全てが17-kb欠失(nud1.a対立遺伝子)を共有し、皮性系統159個はいずれも欠失を有しないことが判明した。これらの結果は、はだか麦が単系起源であることを示している。
Nudの自然変異を、多様な起源の皮性系統33(栽培種12系統および野生種11系統)において調べた。5’-非コードおよび3’-非コード領域を含むNudの約1.7-kb領域のシークエンシングにより、はるな二条の標準配列と比較して16の部位で様々なタイプのヌクレオチド多形が検出された(表5)。コード領域において、11のタイプのSNPsが検出され、全て第二エキソンに存在した。4つの非同義置換は全て、AP2/ERFドメイン、「mm」、または「cm」モチーフ外に存在した(図2C)。ヌクレオチド変化はまた、第一のイントロン、ならびに5’-非コード領域および3’-非コード領域においても観察された。多様なマイクロサテライトも同様に見いだされた。3’-非コード領域において、84-bpの直列型重複がほとんどの栽培種において検出されたが、シークエンシングされた野生種はこれを有しなかった。併せて考慮すると、天然の対立遺伝子変種に関する本発明者らの調査により、nud遺伝子の同一性が支持された。
〔実施例9〕Nud遺伝子の構造
Nud遺伝子は、2つのエキソンと1つのイントロンからなり、オープンリーディングフレームは、アミノ酸227個の推定タンパク質をコードする(図2Cおよび図6)。Nudの推定アミノ酸配列は、シロイヌナズナWAX INDUCER1/SHINE1(WIN1/SHN1)タンパク質(Aharoni A et al. (2004) Plant Cell 16:2463-2480, Broun P, Poindexter P, Osborne E, Jiang CZ Riechmann JL (2004) Proc Natl Acad Sci USA 101:4706-4711)およびイネ第6染色体上の推定ERFタンパク質(Os06ERF)に対してそれぞれ、59%および74%同一である(図7)。イネ相同遺伝子も、Nudと同じく、開始コドンから83 bpに存在するAP2/ERFドメインにイントロンを有したが、シロイヌナズナ相同体(WIN1/SHN1、SHN2、およびSHN3)は3つ全てが開始コドンから80 bpで3 bp上流に存在する単一のイントロンを含んだ(Aharoni A et al. (2004) Plant Cell 16:2463-2480)。
〔実施例10〕系統発生分析
皮性栽培品種Bowmanの同質遺伝子系統およびその裸性型系統(nud-Bowman)を以下の分析において用いた。
本発明者らは、CLUSTAL W(Thompson JD, Higgins DG, Gibson TJ (1994) Nucleic Acids Res 22:4673-4680)によって提供される近隣結合法を用いて、シロイヌナズナおよびイネのNudおよびその相同体の推定アミノ酸配列に基づく系統発生樹を構築した。
RT-PCRにより、Bowmanでは、Nudが開花後約2週間をピークとして頴果特異的発現されるが、外頴または葉では発現が検出されないことが示された(図3A)。nud-Bowmanでは、調べたいかなる組織においても発現は検出されなかった。空間的発現を知るために、アンチセンスプローブを用いるRNAインサイチューハイブリダイゼーションを行った。結果は、Bowmanにおいて、Nudは腹側の種皮において主に発現し、背側での発現は非常に弱いことを示している(図3B、3D、および3F)。nud-Bowmanでは、バックグラウンドを超えるシグナルは検出されなかった(図3C、3E、および3G)。これらの結果により、Nudは、接着が起こる組織において発現されることが判明した。
〔実施例11〕組織化学分析
本発明者らは、固定穀粒の切片形成およびトルイジンブルーOまたはスダンブラックBによる切片または脱頴頴果の染色を行った。
外頴を有する頴果をFAA溶液(3.7%p-ホルムアルデヒド、5%酢酸)によって減圧下で固定した後、包埋した(Technovit-7100;Heraeus Kulzer)。ミクロトームを用いて、厚さ10μmの穀粒切片を調製して、1%トルイジンブルーOまたは0.1%スダンブラックB(Wako)による染色を行った。頴果のスダンブラックB染色に関して、頴および脱頴頴果を、70%エタノールに溶解した0.1%スダンブラックB溶液において10分間染色した後、50%エタノールにおいて2分間すすいだ。
WIN1/SHN1がシロイヌナズナにおいて過剰発現される場合、光ってねじれた葉の表現型が出現した。葉および花は異なる組成物を蓄積すると共に、表皮にはロウおよびクチンの増加量が蓄積する(Aharoni A et al. (2004) Plant Cell 16:2463-2480, Broun P, Poindexter P, Osborne E, Jiang CZ Riechmann JL (2004) Proc Natl Acad Sci USA 101:4706-4711, Kannangara R et al. (2007) Plant Cell 19:1278-1294)。ロウおよびクチンは、クチクラの2つの主成分である(Sieber P et al. (2000) Plant Cell 12:721-738)。ロウおよびクチンの生合成は、同じ脂肪酸前駆体から始まる共通の脂質経路を当初共有するが、後に異なる脂肪酸改変経路に分かれる(Schnurr J, Shockey J, Browse J (2004) Plant Cell 16:629-642)。生育途中のオオムギの頴果がその表面に脂質を蓄積するか否かを決定するために、本発明者らは、脂肪親和性色素スダンブラックBによる染色を試みた(図4A)。Bowmanにおいて、1週齢の外頴を除去された頴果は染色されなかったが、2週齢および3週齢の外頴除去頴果は胚の上部の領域を除いてその表面上に強い染色を示した。nud-Bowmanの頴果は、調べたいかなる段階においても染色されなかった。オオムギの穀粒において、果皮および種皮は、外頴と最も外側のアリューロン層のあいだに存在する。果皮は、柔細胞および横走クロス(cross)細胞を含む数層の細胞からなる。果皮の内側は2層の細胞からなる種皮である(Freeman PL, Palmer GH (1984) J Inst Brew 90:88-94)。2週齢頴果の縦方向切片のスダンブラックB染色により、Bowmanに限り、果皮表皮上に明瞭な脂質層が検出された(図4B-4E)。双方の遺伝子型において、外花頴および内花頴の内側の染色は弱かった。同様に、2つの誘発型裸性変異体の2週齢の脱頴頴果は、スダンブラックBによって染色されなかったが、原品種の頴果は強く染色された(データは示していない)。したがって、果皮表皮における脂質層の有無は、皮性および裸性オオムギを区別する重要な差である。
〔実施例12〕葉緑素の溶脱および水分喪失分析
葉緑素の溶脱および水分喪失分析は、Ahanoriら(Aharoni A et al. (2004) Plant Cell 16:2463-2480)に従って実施した。葉緑素の溶脱および水分喪失分析において、Bowman同質遺伝子系統からの開花後2週目での外頴除去頴果を用いた。実験は全て、1試料あたり2個ずつ行った。葉緑素溶脱アッセイにおいて、外頴除去頴果30個を、暗所の室温で軽く撹拌しながら80%エタノール7.5 mlを含むプラスチックバイアルに入れた。各試料に関してエタノール500μlを吸光度測定の固定された時間で除去した。葉緑素濃度をAhanoriら(Aharoni A et al. (2004) Plant Cell 16:2463-2480)に従って計算した。水分喪失実験に関して、外頴除去頴果15個をペトリ皿に入れて30℃に維持されるインキュベーターに48時間入れた後、乾燥物質重量を測定するために60℃で48時間さらに乾燥させた。試料の重量を定期的に測定した。水分喪失はAhanoriら(Aharoni A et al. (2004) Plant Cell 16:2463-2480)に従って計算した。
シロイヌナズナのWIN1/SHN1過剰発現植物では、葉緑素溶出および水分喪失がいずれも増強された(Aharoni A et al. (2004) Plant Cell 16:2463-2480)。本発明者らは、開花後2週間の脱頴頴果を用いて類似の実験を行った。果皮表皮を通しての葉緑素溶出および水分喪失はいずれも、Bowmanではnud-Bowmanより速く(図5)、皮麦における果皮表皮が透過性の増強を有することを示唆している。
〔実施例13〕表面脂質分析
Tsukagoshiら(Tsukagoshi H, Morinaka A, Nakamura K (2007) Proc Natl Acad Sci USA 104:2543-2547)に従って薄層クロマトグラフィーを用いて脂質を分離し、図8において記述される検出法を用いて可視化した。3週齢の穀粒を各Bowman同質遺伝子系統の穂から採取した。外頴を有するおよび外頴除去頴果の表面脂質を、2:1(v/v)クロロホルム/メタノールを用いて軽く撹拌しながら浸すことによって室温で5分間個々に抽出した。
表面脂質の薄層クロマトグラフィーにより、それぞれのBowman同質遺伝子系統において頴果と外頴とのあいだに明確な差があることが判明した。しかし、外頴の脂質も頴果の脂質もBowman同質遺伝子系統のあいだで明白な差を示さなかった(図8)。抽出処置後の頴果がスダンブラックBによってなおも強く染色されたことから、本発明者らは、皮麦の脱頴頴果の表面上の脂質が、本明細書において用いた抽出プロトコールに対して抵抗性である(抽出できない)と仮定する。
〔実施例14〕考察
ポジショナルクローニングを用いて、本発明者らは、オオムギにおけるNudとしてERFファミリー転写因子遺伝子を同定した。この結論は、(i)高解像度遺伝地図作製および物理地図作製によって境界が絞られた候補領域のアノテーション、(ii)調べた裸性栽培品種100例全てにおけるERF遺伝子を有する17-kb欠失の固定、(iii)2つのX-線誘発nud対立遺伝子におけるERF遺伝子の推定の機能的モチーフに影響を及ぼす非同義置換の発見、および(iv)種皮特異的遺伝子発現、によって確認された。後に考察するように、シロイヌナズナWIN1/SHN1からの情報は、劣性nud変異の結果としてオオムギにおける皮性から裸性頴果への劇的な形態学的変化を説明するために役立ちうる。
(1)オオムギNud遺伝子の機能
シロイヌナズナゲノムには、ERFファミリー転写因子122個が含まれる(Nakano T, Suzuki K, Fujimura T, Shinshi H (2006) Plant Physiol 140:411-432)。その中のいくつかは、植物形態形成およびストレス反応におけるその重要な役割が示唆されている(Nakano T, Suzuki K, Fujimura T, Shinshi H (2006) Plant Physiol 140:411-432, Riechmann JL, Meyerowitz EM (1998) Biol Chem 379:633-646, Sakuma Y et al. (2002) Biochem Biophys Res Commun 290:998-1009, Hirota A, Kato T, Fukaki H, Aida M, Tasaka, M (2007) Plant Cell 19:2156-2168)。ERFファミリーは、10のサブファミリーに分類され、WIN1/SHN1はサブファミリーVに属する(Nakano T, Suzuki K, Fujimura T, Shinshi H (2006) Plant Physiol 140:411-432)。シロイヌナズナWIN1/SHN1の機能に関しては現在、集中的に研究されている。今日まで、35S:WIN1/SHN1過剰発現系統は、葉および花の双方において、組成の変化と共に表皮脂質の蓄積の増加を示したが、発現が野生型の1/3までサイレンスされたWIN1/SHN1 RNAi系統は、脂質減少の効果を示した(Aharoni A et al. (2004) Plant Cell 16:2463-2480, Broun P, Poindexter P, Osborne E, Jiang CZ Riechmann JL (2004) Proc Natl Acad Sci USA 101:4706-4711, Kannangara R et al. (2007) Plant Cell 19:1278-1294)。不思議なことに、WIN1/SHN1過剰発現系統は、表皮における脂質蓄積の増加にもかかわらず、光沢葉の表現型を示した。この矛盾は、表皮クチクラの組成の変化のためであった(Aharoni A et al. (2004) Plant Cell 16:2463-2480, Riechmann JL, Meyerowitz EM (1998) Biol Chem 379:633-646)。一方、プロモーター:GUSレポーター実験から、正常な植物においてWIN1/SHN1遺伝子が、器官離脱および離層のような細胞分離領域において主に発現されることが示された。これらの知見は、WIN1/SHN1遺伝子が脂質生合成経路の調節(Kannangara R et al. (2007) Plant Cell 19:1278-1294)のみならず、発生の際の適切な組織分離の制御(Aharoni A et al. (2004) Plant Cell 16:2463-2480)においても重要な二重の役割を有することを示唆している。
先に概要したシロイヌナズナWIN1/SHN1の推定される機能の類推により、オオムギのNud遺伝子はおそらく果皮表皮に沈着する脂質の組成を調節する(図4A)。疎水性の脂質は細胞内のプラスチドにおいて合成される。それらは、細胞内および細胞間を移動して、様々な転移システムの媒介を通して、最終的に表皮に分泌される必要がある(Kunst L, Samuels AL (2003) Prog in Lipid Res 42:51-80)。Pighinら(Pighin JA et al. (2004) Science 306:702-704)は、シロイヌナズナ茎表皮からのクチクラ脂質輸送が、アデノシン三リン酸結合カセット(ABC)輸送体を必要とすることを示した。種皮におけるNud転写部位と果皮表皮における重度の脂質蓄積の相違は、以下のように説明される。Nud転写因子タンパク質は、種皮における特殊な脂質の産生を活性化する可能性があり、そこで産生された最終的または中間的な脂質のいずれかが果皮層を通して輸送されて、果皮表皮から分泌される。
植物における表皮脂質は、防水性の保護カバーを提供し、発達の際の異常な組織接着を防止する、撥水剤として作用すると考えられている(Sieber P et al. (2000) Plant Cell 12:721-738)。しかし、皮性オオムギにおいて、頴果における表皮脂質層は、反対の効果を生じるように思われる。裸性オオムギでは、脂質層の欠損はおそらく接着を遮断し、それによって脱穀不要な頴果となる。表皮細胞壁のあいだに異常な接着を示す器官癒着変異体は、様々な植物において報告されている。周知の例は、より若い葉とより古い葉との癒着を示すトウモロコシのadherent 1(ad1)(Sinha N, Lynch M (1998) Planta 206:184-195)、ならびに葉および花の器官に不規則な癒着を示すシロイヌナズナfiddlehead(fdh)である。ほとんどの器官癒着変異体は、葉緑素透過性の増強およびエピクチクラロウ組成の変化を伴う(Lolle SJ, Pruitt RE (1999) Trend in Plant Sci 4:14-20)。本発明者らは、皮性オオムギ頴果において類似の症状を認めた(図4Aおよび図5)。本発明者らは、皮麦における外頴-頴果接着は、器官癒着変異体において存在すると推測されるメカニズムと類似のメカニズムによって引き起こされる可能性があると推量する。
(2)脂質調節試験におけるオオムギの長所
オオムギにおいて、異なる部分においてロウの低減の程度が異なる1580個より多いeceriferum(cer)変異体を、79の相補群に分類して、その21群に座乗染色体が割付される(Lundqvist U, Lundqvist A (1988) Hereditas 108:1-12, von Wettstein-Knowles P (1992) in Barley Genetics VI vol II, ed Munck L, pp 753-771)。3つのオオムギcer変異体(cer-zv、cer-yl、およびcer-ym)は、弱い外頴-頴果接着と共に、節を除く全ての地上部におけるロウの低減を示す;それらは乾燥条件で生育不良および稔性の低減を示す(Lundqvist U, Franckowiack JD (2003) in Diversity in Barley (Hordeum vulgare), eds von Bothmer R, Knupffer H, van Hintum T, Sato K (Elsevier, Amsterdam) pp 77-96)。これらのcer変異体は、nudに対して非対立遺伝子であるが、スダンブラックBによって染色されない頴果を有した(データは示していない)。このように、それらはまた、表皮脂質と外頴-頴果接着とのあいだに関連があることを示唆している。
シロイヌナズナの研究から、AP2/ERFドメインは、DNA結合モチーフとして機能すると考えられるが、WIN1/SHN転写因子遺伝子における「mm」および「cm」モチーフの機能的重要性は、変異体を利用できないことおよび3つの相同体における機能的重複性のために、明確にされていない。nud変異体と共に、広く発現されるシロイヌナズナ相同体とは異なる組織特異的遺伝子発現を利用できることにより、オオムギはWIN1/SHN転写因子のさらなる機能的分析のための理想的な系となる可能性がある。本研究は、脂質生合成経路を調節するこの新規ERF転写因子の「mm」モチーフにおける高度に保存されたバリン残基(134位)の機能的重要性に関する最初の証拠を提供する。
(3)穀物の栽培化における意味
先に記述したように、オオムギにおいて、裸性頴果表現型を発現するいくつかの可能性がある遺伝子座が存在する。しかし、他の作物特徴に対して多面的な欠失効果を示すことなく重要な農業的価値を有するのはnudのみであり、これはオオムギの栽培植物化の際のこの形質に関する選択の唯一の標的となる。nud変異に関連する有害な効果がないことは、おそらく種皮に局在する遺伝子発現の厳密な制御に帰することができる。本発明のnud座分析は、厳密に連鎖したマーカーに基づく栽培植物化裸性オオムギの単系起源に関する本発明者らのこれまでの解釈を強化する(Taketa S et al. (2004) Theor Appl Genet 108:1236-1242)。最近の分子進化的研究(Morrell PL, Clegg MT (2007) Proc Natl Acad Sci USA 104:3289-3294, Saisho D, Purugganan MD (2007) Genetics 177:1765-1776)は、オオムギ作物全体としては多数の栽培化事象があったという解釈を支持することから、全Nud遺伝子の完全な欠失という一つの偶然の変異事象のみが昔の注意深い農夫によって選択されて、世界中に広まったことは驚くべきことである。裸性頴果形質が単系起源であることは、オオムギにおける六条の起源が多系であることと鋭い対比をなす(Komatsuda T et al. (2007) Proc Natl Acad Sci USA 104:1424-1429)。
食用部分を効率的に回収するための栽培化遺伝子がいくつかの穀物においてクローニングされている。祖先野生型のブタモロコシからのトウモロコシの栽培植物化において、キンギョソウ-プロモーター結合タンパク質(SBP)ファミリー転写因子におけるtga1(teosinte glume architecture1)変異によって、穂軸上に露出した穀粒が得られた(Wang H et al. (2005) Nature 436:714-719)。イネにおいて、脱粒性を制御する2つの遺伝子が、脱粒を制御する転写因子をコードすることが見いだされたが、それらは異なるファミリーに属する:sh4(shattering 4)はMyb3ファミリー(Li C, Zhou A, Sang T (2006) Science 311:1936-1939)であり、qSH1はBEL1-型ホメオボックス遺伝子である(Konishi S et al. (2006) Science 312:1392-1396)。マカロニおよびパンコムギにおいて、5A染色体のQ遺伝子は、AP2ファミリー転写因子(Simons KJ et al. (2006) Genetics 172:547-555)をコードすることが同定された。コムギにおける優性なQ遺伝子は、頴の頑強さおよび穂軸の脆弱性を低減させることによって裸性にするが、劣性のq対立遺伝子は頑強な頴および脆弱な葉軸(「外頴を有する」コムギとも呼ばれる)を示す。オオムギにおいて、劣性のnud変異は裸性頴果を表す。「皮性」コムギは、外頴-頴果接着を決して示さないことから、「皮性」という用語の意味は、コムギとオオムギのあいだで全く異なることを強調すべきである。オオムギにおける本発明のnud遺伝子の例は、Doebley(Doebley J (2006) Science 312:1318-1319)によって提唱されているように、穀物の栽培化において転写因子における変異が重要な役割を有することに対するさらなる支持を提供する可能性がある。
オオムギにおけるNudのクローニングは、皮性穀粒および農業的可能性を有するHordeum属または他の野生のイネ科草本のより遠縁の野生種に対して裸性頴果形質を付与するために役立つ可能性がある。ヒトによって栽培植物化に成功している草本種の中でも、オオムギのみが、主要な型として外頴を有する頴果をどのようにして獲得したかを解明するために、Nud相同体および可能性があるNud標的遺伝子のイネ科全体の比較分析が進行中である。
Bowman同質遺伝子系統によって表される皮性(Nud)および裸性(nud)オオムギの形態を示す写真である。(A)皮性(左の2つ)および裸性(右の2つ)オオムギの成熟頴果。それぞれの対において、背面(左)および下面(右)側を示す(尺度:5 mm)。(B)皮性(左)および裸性(右)オオムギの成熟穂の一部(尺度:1 cm)。 オオムギにおける裸性頴果遺伝子(nud)のポジショナルクローニングの結果を示す図である。(A)高解像度遺伝地図および物理地図を示す図である。太線は、シークエンシングした4つのBACクローンを示す。組換えの数を遺伝地図の下に示す。(B)皮麦(はるな二条)とはだか麦(コビンカタギ)のあいだのnud座近傍の構造の差を示す図である。黒い矢印は、PCRプライマーの適当な位置を示す。(C)はるな二条Nud遺伝子(標準)の構造、および2つの放射線誘発裸性変異体対立遺伝子、nud1.b(大矢印)およびnud1.c(中矢印)において見いだされるヌクレオチドの変化。四角い枠はエキソンを示し、枠のあいだの黒い線はイントロンを示す。推定される機能的に重要なドメイン/モチーフをカラーで示す。モチーフの名称、「mm」(中央部のモチーフ)および「cm」(C-末端モチーフ)は、Aharoniら(21)に従う。星印は、フレームシフト(F.S.)に起因する終始コドンを示す。皮性系統33個において見いだされる天然の対立遺伝子変種は、小矢印(同義置換および非同義置換)によって示される。 Bowman同質遺伝子系統におけるNudの発現パターンを示す写真および図面である。(A)Nud発現のRT-PCR分析の結果を示す。レーンMは、100-bpのラダーマーカーである(矢印の先および矢印はそれぞれ、1,000 bpおよび500 bpを示す)。レーンgは、鋳型としてオオムギゲノムDNAを用いるアンプリコンを表す。数は開花後の週(wk)を示す。(B-E)2-週齢頴果の縦方向切片に対するアンチセンスプローブとのRNAインサイチューハイブリダイゼーションの結果を示す。(BおよびD)Bowman頴果の頴果全体および珠孔先端のクローズアップ写真である。(CおよびE)nud-Bowmanの対応する領域。(FおよびG)Bowman(F)およびnud-Bowman(G)におけるトルイジンブルーO染色下面頴果切片を示す写真である。d、背面;v、下面;em、胚;se、デンプン質の内胚乳;al、アリューロン層;t、種皮;p、果皮;h、外頴(内花頴)(BおよびCにおける尺度は1 mm、DおよびEにおける尺度は500μm、FおよびGにおける尺度は200μm)。 脂肪親和性色素スダンブラックBによって染色した頴果を示す写真である。(A)開花後1から3週間の皮性および裸性の頴果。p:内頴、v:頴果の腹側、d:背側、l:外頴(B,C)はトルイジンブルー染色、(D,E)はズダンブラックB染色で背側切片の染色結果を示す。図中の各文字はhが外頴を示すことを除き、図3に同じ。矢印はBowmanだけで見られた脂質層を示す。バーは全て200 μm。 Bowman同質遺伝子系統における2週齢の外頴除去頴果の果皮透過性の比較結果を示す図である。(A)80%エタノールに浸すことによる葉緑素溶脱アッセイの結果を示す。(B)30℃のインキュベーターにおける水分喪失アッセイの結果を示す。C.値は2つの同じ実験の平均値(±SD)である。 標準的な栽培品種はるな二乗のNud候補遺伝子のヌクレオチドおよび推定アミノ酸配列(アミノ酸227個)を示す図である。TATAボックス、5’-UTR(178 bp)、エキソン1(83 bp)、イントロン(200 bp)、エキソン2(598 bp)、および3’-UTR(374 bp)を下線で示す。推定のポリアデニル化シグナル(AATAAA)を四角で囲む。3’非コード領域における84-bpタンデム複製を、各反復タンパク質を描写するために点線で囲まれた配列(1567番目から1650番目までの塩基配列)および破線で囲まれた配列(1651番目から1734番目までの塩基配列)で示す。変異体対立遺伝子nud1.bにおける1-bpの変化を下線(955番目のT)で示す。変異体対立遺伝子nud1.cにおける1-bp欠失部位を二重下線(1045番目のC)で示す。異なるモチーフ、(GTAT)n、(ACTC)n、および(CT)nを有するマイクロサテライト領域に灰色囲み文字(6番目から49番目までの塩基配列、229番目から248番目までの塩基配列、および454番目から467番目までの塩基配列)で示す。 シロイヌナズナWIN/SHNクレードメンバーおよびイネ相同体のERFファミリータンパク質と、Nud候補体の推定アミノ酸配列の類似性を示す図である。第6染色体上のイネ相同タンパク質BAD35470(座のid Os06g0604000 http://rapdb.dna.affirc.go.jp/を参照されたい)および第2染色体上のもう一つの相同なイネタンパク質BAD15859(座のid Os02g0202000)はそれぞれ、Os06ERFおよびOs02ERFと省略された。(A)推定アミノ酸配列のアラインメント。アミノ酸の同一性および類似性を星印および点で示す。この図において、「mm」および「cm」はそれぞれ、保存された中央のモチーフおよび保存されたC-末端モチーフを指す。Mut. 4129(nud 1.b)における一ヌクレオチド変化は、「mm」モチーフ内でV134→Dアミノ酸置換(太字で示す)を引き起こす。Mut.3041/6a(nud 1.c)における1-bp欠失は、164位で始まるフレームシフト(T164→S)を引き起こし、初期終始コドンは、「cm」モチーフにおいて200で現れる。(B)ERFファミリー転写因子遺伝子の推定アミノ酸配列の全領域に基づく近隣結合樹。樹は、MEGA3.1ソフトウェアを用いて作製した。接合点に関する信頼推定値は、複製物1000個による自動検査に由来する。 表面脂質の薄層クロマトグラフィー(TLC)の結果を示す写真である。表面脂質を、Bowman(Nと印されるレーン)およびnud-Bowman(nと印されるレーン)のそれぞれの脱頴頴果、または脱頴した頴果から抽出した。分析した材料は、3週齢穀粒であった。TLC分離後、脂質を(A)50%硫酸噴霧、(B)ヨウ素蒸気曝露、(C)0.7%ニンヒドリン噴霧、または(D)0.05%アントロン試薬噴霧、を用いて検出した。噴霧したプレートはホットプレート上でその後の加熱を必要とした。レーンあたりにローディングされた脂質抽出物の量を、各レーンが穀粒10個に相当する量を含むように穀粒数によって調節した。Mと印をつけられた第一のレーンは、グリセリルトリリノレエート(標準物質)である。右上のバーは、溶媒先端を示し、下のバーは、起点を示す。

Claims (21)

  1. 下記(a)から(d)のいずれかに記載のDNA。
    (a)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA、
    (b)配列番号:1に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA、
    (c)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において1または複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA、
    (d)配列番号:1に記載の塩基配列からなるDNAの相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA
  2. 植物の皮性を誘起させる機能を有する植物由来のタンパク質をコードする特徴を有する、請求項1に記載のDNA。
  3. オオムギ由来である、請求項1に記載のDNA。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のDNAの転写産物と相補的なRNAをコードするDNA。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載のDNAの転写産物を特異的に開裂するリボザイム活性を有するRNAをコードするDNA。
  6. 植物細胞における発現時に、共抑制効果により、請求項1〜3のいずれかに記載のDNAの発現を抑制させるRNAをコードするDNA。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載のDNAを含むベクター。
  8. 請求項7に記載のベクターが導入された宿主細胞。
  9. 請求項7に記載のベクターが導入された植物細胞。
  10. 請求項9に記載の植物細胞を含む形質転換植物体。
  11. 請求項10に記載の形質転換植物体の子孫またはクローンである、形質転換植物体。
  12. 請求項10または11に記載の形質転換植物体の繁殖材料。
  13. 請求項1〜6のいずれかに記載のDNAを植物細胞に導入し、該植物細胞から植物体を再生させる工程を含む、形質転換植物体の製造方法。
  14. 請求項1に記載のDNAによりコードされるタンパク質。
  15. 請求項8に記載の宿主細胞を培養し、該細胞またはその培養上清から組換えタンパク質を回収する工程を含む、請求項14に記載のタンパク質の製造方法。
  16. 請求項14に記載のタンパク質に結合する抗体。
  17. 配列番号:1のいずれかに記載の塩基配列またはその相補配列に相補的な少なくとも15の連続する塩基を含むポリヌクレオチド。
  18. 請求項1〜3のいずれかに記載のDNAを植物体の細胞内で発現させる工程を含む、植物の皮性を誘起させる方法。
  19. 請求項4〜6のいずれかに記載のDNAを植物体の細胞内で発現させる工程を含む、植物の裸性を誘起させる方法。
  20. 請求項1〜6のいずれかに記載のDNA、もしくは請求項7に記載のベクターを有効成分とする、植物の皮性を改変する薬剤。
  21. 以下の(a)〜(c)の工程を含む、植物の皮性又は裸性を判定する検査方法。
    (a)被検植物体および繁殖媒体からDNA試料を調製する工程、
    (b)該DNA試料から請求項1に記載のDNA領域を増幅する工程、
    (c)皮性品種から請求項1に記載のDNA領域を増幅したDNA断片と、該DNA試料から増幅したDNA断片の分子量または塩基配列を比較する工程
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