JP2009205157A - トナー組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】印刷した画像に蛍光特性を付与することが可能な蛍光剤を有する樹脂を使用したトナー組成物を提供する。
【解決手段】樹脂と、ランタニドイオンと配位子とを含むランタニド錯体を含む、少なくとも1つの蛍光剤と、随意のワックスとを含むトナー。
【選択図】なし

Description

本開示は、一般にトナープロセスに関し、より詳細には、文書のセキュリティのために有用であり得る蛍光成分を有するトナー組成物の調製に関する。
蛍光インク及び染料は、文書セキュリティ業界において認証特徴として用いることができる。安全な文書、例えば偽造が困難な文書は、従来から、蛍光剤を単独で、又は通常のインク及び/又は顔料と組み合わせて含むインクを用いて作成することができる。蛍光インクを用いて印刷された特徴は、セキュリティインクの無色の性質のため、又は文書中の他の着色剤によってマスキングされるため、通常、可視光の下では眼に見えない。しかしながら、紫外照明の下では、文書の蛍光特徴は、可視スペクトル内の蛍光染料による明るい発光の形状で現れる。例えば、ある種の紙幣は、ホログラフィーのパッチ、マイクロプリント及び微細構造といった目に見える特徴を、紙幣の中に埋め込まれ、特定の光の波長の下でのみ現れる付加的な蛍光性のスレッド及び/又は多色エンブレムを隠すために利用する。これらの特徴は、そのような文書の複製プロセスをより困難にすることによって、偽造者に対抗する、より高レベルのセキュリティを提供する。
蛍光インクは入手可能であるが、セキュリティ特徴のゼログラフィ及び静電的な印刷のための蛍光トナーの入手可能性は、現時点では限定されている。さらに、入手可能な蛍光トナーは、可視光の下で着色されて見えることがあり、これは、隠されたセキュリティ特徴としてのそれらの有用性を無効にする。
米国特許第5,227,460号 米国特許出願公開第2007/0141494号 米国特許第2,874,063号 米国特許第4,265,990号 米国特許第4,584,253号 米国特許第4,563,408号
セキュリティ文書の作成における使用に適した改良された蛍光トナーを生成するための改良された方法が、依然として求められている。
本開示は、トナー組成物及びそれを調製するための方法を提供する。幾つかの実施形態において、本開示のトナーは、樹脂と、ランタニドイオンと配位子とを含むランタニド錯体を含む少なくとも1つの蛍光剤と、随意のワックスとを含む、トナー粒子を含むことができる。幾つかの実施形態において、このようなトナーは、随意の顔料を含むこともできる。
他の実施形態において、本開示のトナーは、樹脂と、ランタニドイオンと配位子とを含むランタニド錯体を含む少なくとも1つの蛍光剤と、随意のワックスとを含み、このトナーのトナー粒子は、約1ミクロンから約20ミクロンまでの粒径と、約0.9から約0.99までの真円度とを有する。
幾つかの実施形態において、蛍光剤は、可視光の下で眼に見えないものとすることができる。そのような蛍光剤を有する本開示のトナーは、紫外線に露光されると半値幅が約5nmから約25nmまでの蛍光バンドを放出することができ、且つ約0.5ミリ秒から約10ミリ秒の蛍光寿命を有することができる。
本開示のプロセスは、樹脂と、随意の顔料と、ランタニド錯体を含む少なくとも1つの蛍光剤とを接触させて蛍光ラテックスを形成し、蛍光ラテックスにワックスを添加し、蛍光トナー粒子を回収するステップを含むことができる。
本開示は、改良された蛍光特性を有する、トナーと、トナー粒子の調製のためのプロセスとを提供する。本開示のトナーは、幾つかの実施形態において、ランタニド蛍光剤を含むことができる。
本明細書に記載されるランタニド蛍光剤は、当業者の範囲内のいずれのトナーと共に用いることもできる。幾つかの実施形態において、本明細書に記載されるランタニド蛍光剤は、樹脂と、随意の着色剤と、随意のワックスとを溶融混合し、凝集粒子を形成し、凝集粒子を粉砕又はそれと同様に処理して、トナー粒子を形成することによって生成される従来のトナーと共に用いられることができる。他の実施形態において、本明細書に記載されるランタニド蛍光剤は、エマルション凝集トナー、及びケミカルミリングによって懸濁液中で生成されるトナー、それらの組み合わせなどを含む、化学合成法によって生成されるトナーと共に用いられることができる。
本開示のトナーは、ランタニド蛍光剤と、随意の着色剤と、随意のワックスと組み合わされた、樹脂ラテックスから調製することができる。樹脂ラテックスは当業者の範囲内のいずれの方法によって調製することもできるが、幾つかの実施形態において、樹脂ラテックスは、半連続的エマルション重合を含むエマルション重合法によって調製することができ、トナーは、エマルション凝集トナーを含むことができる。エマルション凝集は、サブミクロンのラテックスと顔料粒子の両者を凝集させてトナーサイズの粒子とすることを伴い、粒径の成長は、例えば、幾つかの実施形態において、約0.1ミクロンから約15ミクロンまでである。
ラテックスを調製するのに適したいずれのモノマーも、本プロセスにおいて用いることができる。
幾つかの実施形態において、ラテックスの樹脂は少なくとも1つのポリマーを含むことができる。幾つかの実施形態において、少なくとも1つとは、約1から約12であり、幾つかの実施形態において、約3から約10である。
さらに、ビスフェノールAとプロピレンオキシド又はプロピレンカーボネートとの反応から得られるポリエステル樹脂を、特に、(特許文献1に開示されているように)その後で、得られた生成物とフマル酸との反応を伴うようなポリエステルを含めて、用いることもできる。
幾つかの実施形態において、不飽和ポリエステル樹脂をラテックス樹脂として用いることができる。
幾つかの実施形態において、用いることができる適切なポリエステル樹脂は、約12から約240の重合度を有するポリ(プロポキシ化ビスフェノールA−コ−フマレート)樹脂とすることができる。
不飽和ポリエステル樹脂は、(i)有機ジオールと環式アルキレンカーボネートとを第1の触媒の存在下で反応させることによってポリアルコキシジオールを形成し、(ii)そこに、随意の追加量の環式アルキレンカーボネートを第2の触媒の存在下で添加し、(iii)その後、得られた混合物をジカルボン酸と重縮合させることによって、調製することができる。
ラテックス樹脂として利用することができる、直鎖プロポキシ化ビスフェノールAフマレート樹脂は、ブラジル国Sao PauloのResana S/A Industrias Quimicasから商品名SPARIIとして入手可能である。他の利用することができる市販されているプロポキシ化ビスフェノールAフマレート樹脂としては、日本国の花王株式会社のGTUF及びFPESL−2、ノースカロライナ州、Research Triangle ParkのReichholdのEM181635などが挙げられる。
幾つかの実施形態において、分枝ポリエステル樹脂を用いることができる。
幾つかの実施形態において、ラテックス樹脂を形成するためにエマルション重合プロセスを利用することができる。エマルション重合プロセスにおいて、樹脂を形成するための反応物は、混合容器のような適切な反応器に添加されることができる。適切な量の、モノマー、安定剤、界面活性剤、もしあれば開始剤、もしあれば連鎖移動剤、もしあればワックス、などを反応器中で組み合わせることができ、エマルション重合プロセスを開始させることができる。エマルション重合を達成するために選択される反応条件は、例えば約45℃から約120℃まで、幾つかの実施形態においては約60℃から約90℃までの温度を含む。幾つかの実施形態において、重合は、ワックスを軟化させることによってエマルション中への分散及び取り込みを促進させるために、存在するいずれかのワックスの融点の約10パーセント以内に上昇された温度、例えば、約60℃から約85℃まで、幾つかの実施形態においては約65℃から約80℃までの温度で行われることができる。
例えばBrookhavenナノサイズ粒子分析器によって求められた容量平均直径が約50nmから約800nmまでの、幾つかの実施形態では容量平均直径が約100nmから約400nmまでの、ナノメートルサイズの粒子を形成することができる。ラテックス粒子の形成後、このラテックス粒子を用いてトナーを形成することができる。
他の実施形態において、予め形成された又は予め作製された樹脂を入手し、これを利用して、当業者の範囲内の方法を用いてトナーを形成することができる。
トナー粒子
いったん得られたら、上記のラテックス樹脂を用いてトナーを形成することができる。幾つかの実施形態において、本開示のラテックスは、ランタニド蛍光剤を含む着色剤と、随意のワックスと、随意の界面活性剤と、他の任意成分と組み合わされて、エマルション凝集、転相、溶媒フラッシング、それらの組み合わせなどを含むがそれらに限定されない上記の方法を利用する当業者の範囲内のプロセスによって、トナーを形成することができる。例えば、幾つかの実施形態において、ラテックス樹脂は、本開示のランタニド錯体を含む着色剤と任意のワックス及び他の成分と組み合わされて、ランタニド蛍光剤を有する樹脂を生成することができ、次に、追加の界面活性剤、安定剤、他の任意成分などのような追加成分と組み合わされ、凝集、合体、及び/又は洗浄されて、トナーを生成することができる。
ランタニド蛍光剤
本開示によれば、トナーは、ランタニド錯体を含む着色剤を有する。蛍光剤として使用されるためのランタニド錯体は、どのランタニド元素からも調製することができる。
より詳細には、緑色、橙色、赤色、又は近赤外(NIR、これは約800nmから約1500nmまでのスペクトル)の蛍光色を放出するランタニド錯体が用意され、広い色範囲に及ぶ広範囲なカスタムメイドの蛍光色トナーを提供する。
通常の可視光照明の下では、ランタニドイオンは効率よく光を吸収しないので、ランタニドイオンは事実上、ヒトの眼には見えない。ランタニドイオンを配位子、幾つかの実施形態では有機配位子と組み合わせると、その結果得られた錯体は光を吸収するようになり、そのエネルギーをランタニドイオンへと移動させる。それゆえ、本開示のランタニド錯体は、通常の光の下では無色に見えるが、ランタニドイオンに結合した場合には、エネルギー移動を受けて、吸収された光の波長から大きく隔たった波長の蛍光をもたらす。この大きな波長の隔たりは、ランタニドに特有の特徴であり、これが無色のランタニド蛍光剤を可能にする。対照的に、青色蛍光有機染料のみが、通常の照明の下で完全に無色となることができる。黄色又は赤色を発する有機染料を通常の照明の下で無色に見えるようにすることは、不可能ではないとしても非常に困難である。
ランタニド錯体の吸収及び蛍光スペクトルは、それに匹敵する蛍光放出範囲の有機染料由来の蛍光ピークよりも狭い蛍光ピークを示す。例えば、ランタニド錯体は、多数の明確なピークを持つ鋭い蛍光スペクトルを有する。この特徴により、ランタニド錯体に基づくセキュリティ・トナーは、普通の蛍光染料を用いて偽造又は複製することが困難となる。蛍光性の像又は文字列は表面的には同様であり得るが、半値幅が約5nmから約25nmの、幾つかの実施形態においては約10nmから約20nmの鋭いランタニドバンドと、有機染料で得られる、約100nmのバンド幅を有することがある広いバンドとの間の明白な差異は、簡単な分光蛍光計を用いた評価によって明らかとなる。ピークが狭いほど、明白に限定可能な色の放出を表すので、ランタニドイオンの狭い蛍光バンドによって、より容易な蛍光分析が可能になる。蛍光発光の間にランタニドイオンが放出する色はより容易に同定されるので、この性質は、これらの化合物をセキュリティ染料及び/又はトナーにおける使用に適したものとする。
幾つかの実施形態において、ランタニド由来のNIR蛍光は、この形態の蛍光が肉眼では見えないので、文書のセキュリティのために有用であり得る。NIRランタニド蛍光剤をトナーに組み入れることで、UV励起(蛍光を発生させるため)及びNIR感受性検出(その波長に応答する市販の電荷結合デバイス(CCD)又はデジタルカメラを使用)の組み合わせによってのみ検出することができるセキュリティ特徴を含む文書をゼログラフィで印刷することが可能になる。
さらに、幾つかの実施形態において、特有の蛍光シグニチャを有する複数のランタニド錯体を組み合わせてトナーの成分として用いて、文書のフィンガープリント作成(fingerprinting)を可能にすることができ、例えば、幾つかの実施形態において、文書が真正であり、且つ当初発行された文書と同一であることを照合するために、UV光に露光されたときに読み取り可能な、又は識別確認(identity−checking)装置によって読みとり可能な、眼に見えない特定の識別マークの文書上での使用を可能にすることができる。単一のセキュリティ印刷方式内で複数のランタニド蛍光剤を組み合わせることによって、更なるセキュリティ上の利点を得ることができる。ランタニド蛍光から生じる狭い単色の蛍光バンドを適用して、ランタニド蛍光剤のカスタマイズされた組み合わせ(独自のセキュリティ「バーコード」)を単一のゼログラフィトナー内で作成することができる。広範囲の発光特性を有する眼に見えない蛍光トナーは、セキュリティ印刷分野で特に有用となる。例えば、2つ又はそれ以上のランタニド蛍光剤を含むトナーにおいて、各蛍光剤の蛍光スペクトルの特徴(ピーク位置、強度、及び幅)の組み合わせは、特定のランタニド蛍光剤の組み合わせに特有の全体としての蛍光スペクトルをもたらし、これは、使用されたランタニド蛍光剤の正体及び割合を知らずに再現することは困難である。その結果得られた特有の蛍光特徴は、幾つかの実施形態において「バーコード」と呼ばれることがあり、これは、セキュリティ特徴として価値のあるものとなる。
ランタニド錯体をラテックス樹脂と組み合わせると、蛍光ラテックスが形成される。この蛍光ラテックスは、トナー粒子の更なる成分と組み合わされると、蛍光トナーを生成するために用いられることができる。
ワックス
蛍光トナーを形成するために、ワックス分散体を、エマルション凝集合成におけるラテックスの形成の際に、又はラテックスと組み合わされるときに、ランタニド錯体に添加することもできる。適切なワックスは、例えば、水及びイオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、又はそれらの組み合わせの水相中に分散された、容量平均直径が約50ナノメートルから約1000ナノメートルまでの、幾つかの実施形態においては約100ナノメートルから約500ナノメートルまでのサイズ範囲のサブミクロンのワックス粒子を含む。イオン性界面活性剤又は非イオン性界面活性剤は、ワックスの約0.1から約20重量パーセント、幾つかの実施形態においては約0.5から約15重量パーセントの量で存在することができる。
本開示の実施形態によるワックス分散体は、例えば、天然植物性ワックス、天然動物性ワックス、ミネラルワックス、及び/又は合成ワックスを含むことができる。
界面活性剤
本開示のプロセスによる樹脂及びトナーの調製に用いられることができる界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、及び/又は非イオン性の界面活性剤を含む。そのような界面活性剤は、エマルション重合合成法でラテックス樹脂を形成する際の用途を見いだすことができ、また、エマルション凝集プロセス、転相プロセスなどでトナー粒子を形成する際の用途を見いだすこともできる。
利用することができるアニオン性界面活性剤としては、硫酸塩及びスルホン酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルナフタレン硫酸ナトリウム、ジアルキルベンゼンアルキル硫酸塩及びスルホン酸塩、Aldrichから入手可能なアビエチン酸(abitic acid)のような酸類、第一工業製薬株式会社から入手されるNEOGEN R(商品名)、NEOGEN SC(商品名)、それらの組み合わせなどが挙げられる。
安定剤
幾つかの実施形態において、より良好なエマルション重合の結果を達成するために、ラテックス樹脂及び/又はトナーを形成するために用いられる材料に安定剤を添加することが望ましいことがある。利用することができる追加の安定剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、及び随意のそれらの組み合わせを含む、金属水酸化物のような塩基が挙げられる。炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、それらの組み合わせなどもまた安定剤として有用である。幾つかの実施形態において、安定剤は、水酸化アンモニウムを含むことができる。
存在する場合、安定剤は、樹脂の約0.01から約5重量パーセントまで、幾つかの実施形態においては、樹脂の約0.05から約2重量パーセントまでの量で添加することができる。
追加の着色剤
幾つかの実施形態において、本開示のトナーは、追加の着色剤を含むことができる。そのような着色剤は、例えば、トナーに配合されることができる、染料、顔料、染料の混合物、顔料の混合物、染料と顔料の混合物などのような種々の公知の適切な着色剤を含む。着色剤は、トナー中に、例えば、トナーの約0.1から約35重量パーセントまで、又はトナーの約1から約15重量パーセントまで、又はトナーの約3から約10重量パーセントまでの量で含まれることができる。
反応条件
本開示の蛍光ランタニド錯体は、トナー粒子を形成するために、当業者の範囲内のいずれかの方法を用いて、ラテックス樹脂、任意のワックス、安定剤、界面活性剤、及び他の添加物と組み合わされることができる。幾つかの実施形態において、エマルション凝集(EA)法を用いることができ、この方法では、トナーは、着色剤をエマルション重合で形成されたラテックスポリマーと凝集させることによって形成されることができる。
他の実施形態において、トナーを形成するために、転相プロセスを用いることができる。そのようなプロセスは、第1の組成物を有する分散相と、トナー組成物の1つ又はそれ以上の溶融した成分を含む連続相とを含むエマルションを形成し、転相を行って、トナー組成物の1つ又はそれ以上の溶融した成分を有するトナーサイズの小滴を含む分散相と、第2の組成物を含む連続相とを含む、転相されたエマルションを作製し、トナーサイズの小滴を固化してトナー粒子を得るステップを含むことができる。分散相及び連続相は、樹脂を溶解するための、ケトン及び/又はアルコールを含む溶媒を有することができ、又は幾つかの実施形態においては、無溶媒とすることができ、その場合、水性組成物を用いることができる。そのような無溶媒プロセスは、例えば特許文献2に開示されている。そのような転相エマルションは、トナー組成物の溶融成分を有するトナーサイズの小滴を含む分散相と、水性組成物を含む連続相とを含むことができる。
幾つかの実施形態において、ポリエステル樹脂エマルションは、例えば、ポリエステルをケトン及び/又はアルコールのような溶媒に溶解することによって、溶媒フラッシング法で生成することができる。他の実施形態において、ポリエステルは、アセトン、テトラヒドロフラン、それらの組み合わせなどのような水混和性溶媒に溶解されることができる。樹脂及び溶媒は、幾つかの実施形態において、例えば約70℃から約90℃まで、幾つかの実施形態では約75℃から約84℃までの温度で水と混合され、それによって溶媒はその蒸留によって除去され、これにより水中で安定なエマルションとしてポリエステルが形成され、その後、得られたポリエステルを着色剤と混合し、本明細書で例証されるように、それらの凝集及び合体が達成される。
凝集及び合体
ラテックス、ランタニド錯体、任意のワックス、及び任意の追加の着色剤の混合物は、その後、処理されて、トナー粒子を形成することができる。
混合物のpHは、トナー凝集物を合体させるために、約2.5から約6まで、幾つかの実施形態では約3.3から約5.5まで、例えば酸によって下げることができる。適切な酸としては、例えば、硝酸、硫酸、塩酸、クエン酸又は酢酸が挙げられる。添加される酸の量は、混合物の約4から約30重量パーセントまで、幾つかの実施形態では混合物の約5から約15重量パーセントまでとすることができる。
混合物は合体させることができる。合体は、追加の界面活性剤及び水を供給し、約60℃から約99℃までの温度で、約0.5時間から約6時間まで、幾つかの実施形態では約2時間から約5時間までの間、撹拌及び加熱するステップを含むことができる。合体は、追加の撹拌によって促進することができる。
混合物を冷却、洗浄及び乾燥することができる。冷却は、約20℃から約40℃まで、幾つかの実施形態では約22℃から約30℃までの温度で、1時間から約8時間まで、幾つかの実施形態では約1.5時間から約5時間までの期間にわたって行うことができる。
幾つかの実施形態において、合体されたトナースラリーの冷却は、例えば氷、ドライアイスなどのような冷却媒体を加えて、約20℃から約40℃まで、幾つかの実施形態では約22℃から30℃までの温度への急速な冷却をもたらすことによって、クエンチすることを含む。
合体されたトナーを、次に洗浄することができる。洗浄は、約7から約12までのpHで、幾つかの実施形態では約9から約11までのpHで行うことができる。洗浄は、約20℃から約70℃まで、幾つかの実施形態では約25℃から約50℃までの温度で行われる。洗浄は、濾過し、トナー粒子を含む濾過ケークを随意の追加の界面活性剤を加えた脱イオン水中で再スラリー化することを含む。濾過ケークは、脱イオン水で1回又はそれ以上の回数洗浄することができ、或いは、スラリーのpHを酸で調節してpH約4の洗浄液で一回洗浄し、その後、随意に1回又はそれ以上の回数、脱イオン水の洗浄液で洗浄することができる。
洗浄されたスラリーを、次に乾燥することができる。乾燥は、約20℃から約75℃まで、幾つかの実施形態では約45℃から約60℃までの温度で行うことができる。乾燥は、粒子の水分レベルが約1重量%未満の設定目標を下回るまで、幾つかの実施形態では約0.7重量%未満になるまで、続けることができる。
幾つかの実施形態において、本開示のトナー粒子の形成の際に、凝集剤を含めることができる。複合体形成を引き起こすことが可能ないずれの凝集剤も、本開示のトナーの形成に用いられる。幾つかの実施形態において、ポリエステルコロイドと着色剤とを凝集させてトナー複合体を形成できるようにするために、多価塩を選択することができる。塩は、処理条件に応じて、約1分から約60分まで、幾つかの実施形態では約1.25分から約20分までの時間にわたって添加することができる。
他の添加剤
トナーに組み合わせることができる更なる任意の添加剤は、トナー組成物の性質を向上させるためのいかなる添加剤をも含む。含まれるのは、表面添加剤(surface additives)、発色増強剤(color enhancers)などである。
幾つかの実施形態において、それによりラテックス樹脂粒子が形成される凝集法を用いることができ、その後、ランタニド錯体及び任意のワックス及び他の添加剤と凝集及び合体されて、トナー粒子を形成することができる。幾つかの実施形態において、そのようなプロセスは、約100グラムから約500グラムまでの少なくとも1つの樹脂、幾つかの実施形態では約150グラムから約250グラムまでの少なくとも1つの樹脂を、約0.5グラムから約50グラムのランタニド錯体、幾つかの実施形態では約1グラムから約10グラムまでのランタニド錯体、及び約50グラムから約150グラムまでのワックス、幾つかの実施形態では約75グラムから約125グラムまでのワックスと組み合わせることを含むことができる。成分は、ケトン、アルコール、エステル、それらの組み合わせなどのような適切な溶媒と組み合わされることができ、約50℃から約90℃まで、幾つかの実施形態では約60℃から約80℃まで、ある実施形態では約70℃の温度まで加熱されることができる。
このように生成された溶液は、次に、幾つかの実施形態では安定剤及び界面活性剤を脱イオン水中に含む、別の水性溶液と組み合わされて、ランタニド蛍光剤を有するラテックスのエマルションを生成することができる。幾つかの実施形態において、この2つの溶液は、高剪断で、幾つかの実施形態では約8,000rpmから約12,000rpmで、他の実施形態では約9,000rpmから約11,000rpmで、他の実施形態では約10,000rpmで、約15分間から約60分間、幾つかの実施形態では約20分間から約45分間、幾つかの実施形態では約30分間、混合することによって均一化されることができる。次に、反応混合物を約60℃から約100℃まで、幾つかの実施形態では約70℃から約90℃まで、ある実施形態では約80℃までの温度で、約1時間から約3時間、幾つかの実施形態では約2時間の間、蒸留することができる。得られたエマルションを、約12時間から約18時間の間、撹拌することができ、得られたラテックスは、濾過、遠心分離、デカンテーション、それらの組み合わせなどによって単離されるランタニド錯体を有する。得られた粒子は、約20nmから約500nmまで、幾つかの実施形態では約50nmから約250nmまでの粒径と、約20%から約25%まで、幾つかの実施形態では約21%から約24%まで、幾つかの実施形態では約23.5%の固形分含量とを有する。
本開示のラテックスを用いて生成されるトナー粒子は、約1ミクロンから約20ミクロンまで、幾つかの実施形態ではでは2ミクロンから約15ミクロンまで、幾つかの実施形態ではでは約3ミクロンから約7ミクロンまで、ある実施形態では約5.9ミクロンのサイズを有することができる。本開示のトナー粒子は、約0.9から約0.99まで、幾つかの実施形態では約0.92から約0.98まで、ある実施形態では約0.94の真円度を有することができる。
利点
本開示の方法に従うことで、従来のトナーと比べて幾つもの利点を有するトナー粒子を得ることができる。本開示による蛍光トナーは、UV光に露光したときに、約0.5ミリ秒から約10ミリ秒までの蛍光寿命を有するが、一方、従来の蛍光染料は、約1ナノ秒から約10ナノ秒までの蛍光寿命を有する。さらに、上記のように、本開示に従って用いられるランタニド錯体は、有機染料(約100nmという、より広いバンド幅を有する)で得られる広いバンドと比べて、半値幅が約5nmから約25nmの、幾つかの実施形態では約10nmから約20nmの、狭いバンドピークを有する。
有機染料の寿命よりも1,000,000倍長いこともあるランタニド錯体の長い寿命と、ランタニド錯体の狭いバンドピークは、ランタニド蛍光剤を有するトナーの検出及び同定をより容易にし、これにより、従来の蛍光デバイスの使用を可能にし、高価な実験装置の使用を不必要にすることができる。例えば、ルミネセンス寿命の測定は、単純な装置、例えばMolecular Devices Gemini EMによって行うことができ、それゆえ、ルミネセンス寿命を、文書セキュリティ設定において、偽造された有機染料の蛍光からランタニド蛍光錯体を識別するために用いることもできる。
さらに、ランタニド錯体は、比較的広いストークス・シフト、即ち、吸収波長と励起波長との間の隔たりを有する。広いストークス・シフトにより、ランタニド錯体は、通常の照明の下では無色のままであり、紫外照明の下では蛍光を通じて色を表示することが可能になる。対照的に、従来の有機ベースの蛍光染料は、狭いストークス・シフトを有するので、その結果として、類似した振動数の光を吸収し、放出する。従って、通常の照明条件下で無色に見える黄色及び/又は赤色の蛍光有機染料を作るのは非常に困難であるが、それは、そのような染料による約400nmから約700nmまでの範囲の可視光の吸収が強いからである。青色発光蛍光染料のみが、通常の照明の下で無色に見えるが、これは、それらの吸収がもっぱらスペクトルの紫外領域にあり、可視波長まで延びていないからである。従って、広いストークス・シフトは、ランタニド錯体を有機ベースの染料に比べてセキュリティ文書作成により適したものとする、これらの化合物の更なる性質である。
更なる利点は、特に赤色及びNIR領域における、ランタニド蛍光剤の耐光堅牢度に起因するものである。それに匹敵する有機染料は容易に光退色し、それは、紫外線又は可視光によって繰り返し照明された後で、その蛍光が薄れることを意味する。従って、ランタニド蛍光剤の蛍光は紫外線又は可視光による検査の繰り返しの後でも、より持続しそうなので、ランタニド蛍光剤の耐光堅牢度は、それらをセキュリティ文書作成により適したものとする。
用途
本開示によるランタニド蛍光錯体を有する樹脂は、プリンタ、コピー機などを含む種々の画像形成装置において用いることができる種々のタイプのトナーの製造に用いることができる。ランタニド蛍光錯体を有するトナーは、偽造が困難な特有の蛍光識別コードを形成する、機械又はそれ以外で読み取り可能な、発光グリフ、バーコード、及び他のセキュリティ印刷方式の作成用といった種々のセキュリティ文書の作成用に用いることができる。印刷された文書は、その後、通常の照明条件下では見えないセキュリティ特徴をUV照明の下で明らかにすることによって、真正性について検査されることができる。
本開示に従って生成されるトナーは、画像形成プロセス用として優れており、優れた画像分解能、許容できる信号対雑音比、画像の均一性、及びUVエネルギーを印加することによって明らかにすることができるセキュリティ特徴を有する。さらに、本開示のトナーは、デジタル画像形成システム及びプロセスのような静電的な画像形成及び印刷プロセスのために選択されることができる。
現像剤組成物は、本明細書で開示されるプロセスで得られるトナーを、鋼、フェライトなどのようなコーティングされたキャリアを含む、公知のキャリア粒子と混合することによって調製することができる。キャリアは、トナーの約2重量パーセントから約8重量パーセントまで、幾つかの実施形態ではトナーの約4重量パーセントから約6重量パーセントまで、存在することができる。キャリア粒子は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)のようなポリマーコーティングで覆われ、その中に導電性カーボンブラックのような導電性成分が分散されたコアを含むこともできる。キャリアのコーティングとしては、メチルシルセスキオキサンのようなシリコーン樹脂、フッ化ポリビニリデンのようなフルオロポリマー、フッ化ポリビニリデンとアクリルといった、摩擦電気系列表中で近接していない樹脂の混合物、アクリルのような熱硬化性樹脂、それらの組み合わせ、及び他の公知成分が挙げられる。
現像は、放電領域現像を通じて起こり得る。放電領域現像において、感光体が帯電され、次いで、現像される領域が放電される。現像域とトナーの電荷は、トナーが感光体上の帯電領域には反発し、放電領域に誘引されるような電荷とされる。この現像プロセスは、レーザスキャナにおいて用いられる。
現像は、特許文献3に開示されている磁気ブラシ現像プロセスによって達成することができる。この方法は、本開示のトナーと磁気キャリア粒子とを含む現像剤物質を磁石によって搬送することを伴う。磁石の磁場は、磁気キャリアのブラシ状の形状での整列を引き起こし、この「磁気ブラシ」は感光体の静電像を帯びた表面に接触させられる。トナー粒子は、感光体の放電領域に対する静電引力によってブラシから静電像へと引き寄せられ、その結果、像が現像される。幾つかの実施形態において、導電性磁気ブラシプロセスが用いられ、この場合、現像剤は導電性キャリア粒子を含み、バイアスをかけられた磁石からキャリア粒子を通じて感光体へと電流を流すことが可能である。
画像形成
画像形成方法も、本明細書で開示されるトナーで想定されている。そのような方法は、例えば、上記の特許のうちの幾つか、並びに特許文献4、特許文献5及び特許文献6を含む。画像形成プロセスは、電子式印刷磁気画像文字認識装置(electronic printing magnetic image character recognition apparatus)で像を生成することと、その後で本開示のトナー組成物で像を現像することとを含む。静電的手段で光導電性材料の表面上で像を形成及び現像することは、周知である。基本的なゼログラフィ・プロセスは、光導電性絶縁層の上に均一な静電荷を置き、その層を光と影の像に露光して、露光された層の領域上の電荷を散逸させ、得られた静電潜像を、像の上に微細な検電器的(electroscopic)材料、例えばトナーを堆積させることによって現像することを伴う。トナーは、通常、層の電荷を保持した領域に誘引されるので、静電潜像に対応するトナー像が形成される。次に、この粉末の像を、紙のような支持体表面に転写することができる。転写された像は、その後、熱によって支持体表面に永久に固定される。光導電層を均一に帯電させ、次いで光と影の像に層を露光させて潜像を形成する代わりに、層を像の形状に直接帯電させることによって潜像を形成することができる。その後、粉末像の転写を省いて、粉末像を光導電層に固定することができる。溶媒又はオーバーコーティング処理のような他の適切な固定手段で、前述の熱固定ステップを置き換えることができる。

Claims (4)

  1. 樹脂と、
    ランタニドイオンと配位子とを含むランタニド錯体を含む、少なくとも1つの蛍光剤と、
    随意のワックスと
    を含むことを特徴とするトナー。
  2. 前記樹脂は、ポリエステル、スチレン、アクリレート、メタクリレート、ブタジエン、イソプレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、及びそれらの組み合わせから成る群から選択され、
    前記樹脂は、少なくとも1つのアモルファス樹脂を含み、
    前記樹脂は、ポリ(プロポキシ化ビスフェノールA−コ−フマレート)樹脂、分枝ポリ(プロポキシ化ビスフェノールA−コ−フマレート)樹脂、及びそれらの組み合わせから成る群から選択され、
    前記ランタニドイオンは、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びそれらの組み合わせから成る群から選択され、
    前記少なくとも1つの蛍光剤は、可視光の下で眼に見えず、
    前記トナーは、紫外光に露光されると半値幅が約5nmから約25nmまでの蛍光バンドを放出し、且つ約0.5ミリ秒から約10ミリ秒の蛍光寿命を有する
    ことを特徴とする請求項1に記載のトナー。
  3. 樹脂と、
    ランタニドイオンと配位子とを含むランタニド錯体を含む、少なくとも1つの蛍光剤と、
    随意のワックスと
    を含むトナーであって、
    前記トナーを含むトナー粒子が、約1ミクロンから約20ミクロンまでの粒径と、約0.9から約0.99までの真円度とを有することを特徴とする、トナー。
  4. 樹脂と、随意の顔料と、ランタニド錯体を含む少なくとも1つの蛍光剤とを接触させて蛍光ラテックスを形成し、
    前記蛍光ラテックスにワックスを添加し、
    蛍光トナー粒子を回収する
    ステップを含むことを特徴とする方法。
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