JP2009204971A - 電子写真感光体およびそれを備えた画像形成装置 - Google Patents

電子写真感光体およびそれを備えた画像形成装置 Download PDF

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Abstract

【課題】表面を硬化させるなど特別な工程を必要とせず、湿式現像方式において炭化水素系溶剤に浸漬させても、劣化することのない耐溶剤性を有し、かつ十分な耐オゾン効果を有する電子写真感光体およびそれを備えた画像形成装置を提供することを課題とする。
【解決手段】導電性支持体上に、電荷発生物質と電荷輸送物質とを含有する単層型感光層、または電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とがこの順で積層された積層型感光層が積層されてなる電子写真感光体であって、前記単層型感光層または前記積層型感光層の電荷輸送層を構成するバインダ樹脂が、少なくとも芳香族ポリカーボネート樹脂からなり、該芳香族ポリカーボネート樹脂が、特定の構成単位を含む共重合体であることを特徴とする電子写真感光体により、上記の課題を解決する。
【選択図】なし

Description

本発明は、電子写真感光体(以下「感光体」ともいう)およびそれを用いた画像形成装置(以下「電子写真装置」ともいう)に関する。さらに詳しくは、本発明は、特定の構成単位を含む芳香族ポリカーボネート樹脂を含有する、オゾン雰囲気下での耐久性に優れた感光体およびそれを用いた、耐溶剤性に優れ、湿式現像用に好適な画像形成装置に関する。
カールソンプロセスを利用した電子写真現像方式は、乾式現像方式と湿式現像方式に大別される。
乾式現像方式を用いた画像形成装置は、現在、複写機やプリンタなどとして、ほとんどの事務所、学校、店舗などに普及し、ますますその利便性が向上してきている。
一方、湿式現像方式を用いた画像形成装置も古くから開発、製品化されているが、トナーを溶剤に分散した色材を用いるために、溶剤の取り扱いが難しく、乾式現像方式を用いた画像形成装置が広く普及している。
しかし、近年、高画質化、高精細化(高解像度化)のためにトナーの小粒径化が進み、乾式現像方式では微粒子の飛散が健康上の問題となり、かつ高解像度化についても限界にきている。
そこで、微粒子の飛散の問題がない湿式現像方式が再び脚光を浴びようとしている。
また、湿式現像方式では、一般に炭化水素系溶剤中に分散させるトナーの粒径を1μm以下にすることができるので、得られる画像は非常に高画質となり、高解像度化の流れに対しては乾式現像方式の限界を超えるものとして、特に高画質が要求され、近年、市場拡大のめざましいフルカラープリンターへの効用に期待されている。
湿式現像方式を用いた画像形成装置では、前述のように現像溶液として、例えばアイソパーと呼ばれる脂肪族系炭化水素やパラフィン系溶剤など炭化水素系溶剤を用いられるので、感光体ドラムの全部または一部が炭化水素系溶剤に浸漬される。
したがって、感光体としては、一般にこのような炭化水素系溶剤に感光層成分が溶出しないセレン、アモルファスシリコンなどの無機感光体が用いられていた。
一方、有機感光体は、従来の無機感光体に比べて製造が容易であり、コストが安く、電荷輸送物質、電荷発生物質、結着樹脂などの感光体材料の選択肢が多様で、機能設計の自由度が高く、毒性がないという利点を有し、近年、無機感光体よりも広く用いられている。
しかしながら、有機感光体を湿式現像方式に適用する場合には、溶剤に対する耐久性が重要な問題となる。
そこで、電荷輸送物質として溶剤に対する溶解性の低い材料を用いる方法(特許第3198710号公報:特許文献1参照)、電荷輸送物質として溶剤に対する溶解性の低い、比較的高分子量の材料を用いる方法(特許第3999762号公報:特許文献2参照)、電荷輸送物質を結着樹脂の高分子鎖の一部とする方法(特開2006−47404号公報:特許文献3参照)などが提案されている。
また、感光体の酸化防止機能を高めるために、結着樹脂としてヒンダードアミン構造を末端に付加したポリカーボネート樹脂を用いる方法(特許第3228177号公報:特許文献4参照)が提案されている。
しかしながら、ヒンダードアミン単体の状態で有していた酸化防止機能が十分発揮されず、未だ十分な効果を有するものが提案されていない。
さらに、特定のアミン化合物が、オゾン雰囲気による感光体の劣化を防止する効果に優れていることが知られている(特開平5−158258号公報:特許文献5参照)。
しかしながら、特定のアミン化合物はかなり低分子量の化合物であるために、湿式現像方式に適用した場合には現像液に溶出してしまい、そのすぐれた酸化防止効果が発揮されない。
また、現像液への溶出防止対策として、側鎖構造が特定のアミン化合物構成単位である硬化型表面層を用いる方法(特開2007−293247号公報:特許文献6参照)が提案されている。
しかしながら、この側鎖構造は隣接側鎖置換基間でエキサイマーを生成し、これがトラップとなって電荷の輸送(移動)を阻害するので好ましくない。
特許第3198710号公報 特許第3999762号公報 特開2006−47404号公報 特許第3228177号公報 特開平5−158258号公報 特開2007−293247号公報
以上のように、湿式現像方式を用いた画像形成装置に有機感光体を用いた場合には、感光体ドラムの全部または一部が炭化水素系溶剤に浸漬され、感光体表面にヒビ割れなどの外観変化が起こり、電荷輸送物質、添加剤などの低分子量物質が炭化水素系溶剤に溶出し、帯電性が低下する、感度が悪化するといった現象が生じ、良好な画像が得られ難くなる問題がある。
そこで、有機感光体に、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂の表面保護層(硬化型表面保護層)を設けることにより、炭化水素系溶剤に対する耐久性を発現させ、低分子化合物の溶出を防ぐことが提案されている。しかしながら、硬化型表面保護層を設けることにより感光体の感度が著しく悪化し、また製造コストが高くなるという大きな問題が新たに生じる。
したがって、本発明は、表面を硬化させるなど特別な工程を必要とせず、湿式現像方式において炭化水素系溶剤に浸漬させても、劣化することのない耐溶剤性を有し、かつ十分な耐オゾン効果を有する感光体およびそれを備えた画像形成装置を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、特定のアミン化合物を構成単位として含む芳香族ポリカーボネート樹脂を得ることに成功し、この芳香族ポリカーボネート樹脂が良好な耐オゾン性能を有するだけでなく、機械的強度、電気的特性、耐久性などに優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
かくして、本発明によれば、導電性支持体上に、電荷発生物質と電荷輸送物質とを含有する単層型感光層、または電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とがこの順で積層された積層型感光層が積層されてなる感光体であって、前記単層型感光層または前記積層型感光層の電荷輸送層を構成するバインダ樹脂が、少なくとも芳香族ポリカーボネート樹脂からなり、該芳香族ポリカーボネート樹脂が、一般式(I):
Figure 2009204971
[式中、
[式中、
Ar1およびAr4は、同一または異なって、置換基を有してもよいアリレン基、置換基を有してもよいシクロアルキレン基または置換基を有してもよい2価の複素環残基であり、
Ar2およびAr3は、同一または異なって、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいシクロアルキル基または置換基を有してもよい1価の複素環残基であり;
1、Y2、Y3、Y4、Y5およびY6は、同一または異なって、置換基を有してもよい鎖状のアルキレン基であり;
Zは、i)−Ar5−、ii)−Ar5−Ar6−またはiii)−Ar5−W−Ar6−(式中、Ar5およびAr6は、同一または異なって、置換基を有してもよいアリレン基または置換基を有してもよい2価の複素環残基であり;Wは、置換基を有してもよいシクロアルキリデン基、置換基を有してもよい鎖状もしくは枝分かれ状のアルキレン基、酸素原子または硫黄原子である)である]
で示される構成単位を含む共重合体であることを特徴とする感光体が提供される。
また、本発明によれば、上記の感光体と、前記感光体を帯電させる帯電手段と、帯電された前記感光体をその画像情報に応じた光で露光して静電潜像を形成する露光手段と、露光によって形成された静電潜像を現像して可視像化する現像手段と、現像によって可視像化された画像を記録媒体上に転写する転写手段とを備えることを特徴とする画像形成装置が提供される。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は、良好な耐オゾン性能を有するだけでなく、機械的強度、電気的特性、耐久性(耐摩耗性も含む)などに優れ、単層型感光体における単層型感光層、積層型感光体における積層型感光層の電荷輸送層、単層型および積層型感光体における表面保護層などのバインダ樹脂として好適に用いられる。また、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は、電荷輸送物質との相溶性が良好であるために、単層型感光層、積層型感光層の電荷輸送層などにおいて均一な電荷輸送性能が発揮される。
さらに、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は、感光体におけるマトリックス樹脂のみならず、センサ材料、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子、有機フォトリフラクティブ素子などにも好適に用いられる。
したがって、本発明によれば、表面を硬化させるなど特別な工程を必要とせず、湿式現像方式において炭化水素系溶剤に浸漬させても、劣化することのない耐溶剤性を有し、かつ十分な耐オゾン効果を有する感光体およびそれを備えた画像形成装置を提供することができる。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂を含有する感光体を備えた画像形成装置、特に湿式現像用画像形成装置では、高精細画像を形成することができる。
本発明の感光体は、導電性支持体上に、電荷発生物質と電荷輸送物質とを含有する単層型感光層、または電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とがこの順で積層された積層型感光層が積層されてなる感光体であって、前記単層型感光層または前記積層型感光層の電荷輸送層を構成するバインダ樹脂が、少なくとも芳香族ポリカーボネート樹脂からなり、該芳香族ポリカーボネート樹脂が、一般式(I)で示される構成単位を含む共重合体であることを特徴とする。
このような一般式(I)の構成単位の中でも、原料入手および製造(合成)の容易性、化合物としての安定性ならびに原料コストなどの点で、一般式(I)のAr1およびAr4がフェニレン基、Ar2およびAr3がフェニル基、Y1、Y2、Y3、Y4、Y5およびY6がメチレン基である構成単位、すなわち副式(II):
Figure 2009204971
(式中、Zは、一般式(I)と同義である)
で示される構成単位が好ましく、副式(II)のZがビフェニレン基およびフェニレン基である構成単位、すなわち式(III):
Figure 2009204971
で示される構成単位および式(IV):
Figure 2009204971
で示される構成単位が特に好ましい。
一般式(I)および副式(II)における置換基について説明する。
Ar2およびAr3の置換基を有してもよいアリール基としては、例えば炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数2〜6のジアルキルアミノ基またはハロゲン原子で置換されていてもよいアリール基が挙げられる。
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基などが挙げられる。
炭素数1〜4のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基などが挙げられる。
炭素数2〜6のジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基などが挙げられる。
ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
置換基を有してもよいアリール基としては、具体的には、フェニル基、o−トリル基、2,4−キシリル基、4−メトキシフェニル基、3−メトキシ−4−メチルフェニル基、t−ブチルフェニル基、4−ジエチルアミノフェニル基、4−クロロフェニル基、4−フルオロフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などが挙げられ、これらの中でも、フェニル基、o−トリル基、4−メトキシフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基が特に好ましい。
Ar2およびAr3の置換基を有してもよいシクロアルキル基としては、例えば炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよいシクロアルキル基が挙げられる。
具体的には、シクロへキシル基、シクロペンチル基、4、4−ジメチルシクロへキシル基などが挙げられ、これらの中でも、シクロへキシル基が特に好ましい。
Ar2およびAr3の置換基を有してもよい1価の複素環残基としては、例えば炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい1価の複素環残基が挙げられる。
具体的には、テトラヒドロフリル基、テトラメチルテトラヒドロフリル基、フリル基、4−メチルフリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチオフェニル基などが挙げられ、これらの中でも、フリル基、ベンゾフリル基が特に好ましい。
Ar1およびAr4の置換基を有してもよいアリレン基(arylene group)としては、Ar2およびAr3の置換基を有してもよいアリール基からさらに1個の水素原子を取り除いて生ずる2価基、例えば炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、フェノキシ基またはフェニルチオ基で置換されていてもよいアリレン基が挙げられる。
具体的には、p−フェニレン基、m−フェニレン基、メチル−p−フェニレン基、メトキシ−p−フェニレン基、1,4−ナフチレン基、ベンゾオキサゾレン基、ビフェニリレン基、ピレニレン基、フェノキシフェニレン基、フェニルチオフェニレン基などが挙げられ、これらの中でも、p−フェニレン基、m−フェニレン基、メチル−p−フェニレン基、メトキシ−p−フェニレン基、1,4−ナフチレン基が好ましく、p−フェニレン基、1,4−ナフチレン基が特に好ましい。
Ar1およびAr4の置換基を有してもよいシクロアルキレン基としては、Ar2およびAr3の置換基を有してもよいシクロアルキル基からさらに1個の水素原子を取り除いて生ずる2価基、例えば炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよいシクロアルキレン基が挙げられる。
具体的には、シクロへキシレン基、シクロペンチレン基、4、4−ジメチルシクロへキシレン基などが挙げられ、これらの中でも、シクロへキシレン基が特に好ましい。
Ar1およびAr4の置換基を有してもよい2価の複素環基としては、Ar2およびAr3の置換基を有してもよい1価の複素環残基からさらに1個の水素原子を取り除いて生ずる2価基、例えば炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい2価の複素環残基、具体的には、テトラヒドロフリレン基、テトラメチルテトラヒドロフリレン基、フリル基、4−メチルフリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチオフェニル基などが挙げられ、これらの中でも、フリル基、ベンゾフリル基が特に好ましい。
1、Y2、Y3、Y4、Y5およびY6の置換基を有してもよい鎖状のアルキレン基としては、例えば炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよいアルキレン基が挙げられる。
具体的には、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、2、2−ジメチルトリメチレン基などが挙げられ、これらの中でも、メチレン基、エチレン基が特に好ましい。
ZにおけるAr5およびAr6の置換基を有してもよいアリレン基としては、Ar1およびAr4の置換基を有してもよいアリレン基に例示のものが挙げられ、p−フェニレン基、m−フェニレン基、メチル−p−フェニレン基、メトキシ−p−フェニレン基、1,4−ナフチレン基が好ましく、p−フェニレン基、1,4−ナフチレン基が特に好ましい。
ZにおけるAr5およびAr6の置換基を有してもよい2価の複素環残基としては、Ar1およびAr4の置換基を有してもよい2価の複素環基に例示のものが挙げられ、例えば1,4−フランジイル基、1,4−チオフェンジイル基、2,5−ベンゾフランジイル基、2,5−ベンゾオキサゾールジイル基およびN−エチルカルバゾール−3,6−ジイル基などが挙げられる。
ZにおけるWの置換基を有してもよいシクロアルキリデン基としては、例えば炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよいシクロアルキリデン基が挙げられる。
具体的には、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基、4,4−ジメチルシクロヘキシリデニル基などが挙げられる。
ZにおけるWの置換基を有してもよい鎖状もしくは枝分かれ状のアルキレン基としては、例えば炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよいアルキレン基が挙げられる。
具体的には、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、2、2−ジメチルトリメチレン基などが挙げられ、これらの中でもメチレン基、エチレン基が特に好ましい。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂が含有する一般式(I)で示されるジアミン構成単位の具体例を表1−1〜1−3および表2−1〜2−6に示すが、これらの例示により本発明が限定されるものではない。
なお、表1および2において置換基を次のような略号で示す。
−Me−:メチレン基
−Et−:エチレン基
−Tr−:トリメチレン基
−Dm−:2,2−ジメチルトリメチレン基
Figure 2009204971
Figure 2009204971
Figure 2009204971
Figure 2009204971
Figure 2009204971
Figure 2009204971
Figure 2009204971
Figure 2009204971
Figure 2009204971
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は、さらに一般式(V):
Figure 2009204971
(式中、Xは、置換基を有してもよい2価の鎖状もしくは環状の脂肪族炭化水素残基、置換基を有してもよい2価の芳香族残基、置換基を有してもよい2価の複素環残基、またはこれらの残基もしくはこれらの残基と酸素原子および/または硫黄原子が連結した2価基である)
で示される構成単位を含む共重合体であるのが好ましい。
Xの置換基を有してもよい2価の鎖状もしくは環状の脂肪族炭化水素残基としては、置換基を有してもよいアルキル基やAr1およびAr4の置換基を有してもよいシクロアルキレン基に例示のものなどが挙げられる。
Xの置換基を有してもよい2価の芳香族残基としては、Ar1およびAr4の置換基を有してもよいアリレン基に例示のものなどが挙げられる。
Xの置換基を有してもよい2価の複素環残基としては、Ar1およびAr4の置換基を有してもよい2価の複素環基に例示のものなどが挙げられる。
これらの置換基Xについては、芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法の項目で具体的に説明する。
共重合体である本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂における一般式(I)で示される構成単位(構成単位(I)ともいう)と前記一般式(V)で示される構成単位(構成単位(V)ともいう)との比率は、特に制限されないが、通常、2〜95:98〜5(モル比)、好ましくは3〜60:97〜40(モル比)、さらに好ましくは4〜45:96〜55(モル比)である。
構成単位の比率が上記の範囲内であれば、本発明の効果が発揮され易く、特に本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂が構成単位(V)を含有することにより、構成単位(I)のみを含有する場合よりも機械的強度が向上する。
また、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、通常1000〜500000、好ましくは10000〜500000である。
数平均分子量が上記の範囲内であれば、本発明の効果が発揮され易い。
本発明の構成単位(I)を含む芳香族ポリカーボネート樹脂は、原料化合物として、ビスヒドロキシアミン化合物の1種または2種以上と、カーボネート化合物の1種または2種以上とを用いること以外は、従来のポリカーボネートの重合と同様にして製造できる。
また、本発明の構成単位(I)および構成単位(V)を含む芳香族ポリカーボネート樹脂は、原料化合物として、ビスヒドロキシアミン化合物の1種または2種以上と、カーボネート化合物の1種または2種以上と、ジヒドロキシ化合物の1種または2種以上とを用いること以外は、従来のポリカーボネートの重合と同様にして製造できる。
ビスヒドロキシアミン化合物としては公知のものを使用でき、例えば、一般式(I)で示される構成単位、好ましくは副式(II)で示される構成単位、より好ましくは式(III)および(IV)で示される構成単位を含む化合物が挙げられる。
カーボネート化合物としては、ポリカーボネートの製造に用いられる公知ものを使用でき、例えば、ビスフェニルカーボネートなどのビスアリールカーボネート類、ビスクロロホーメートなどのハロゲン化ホーメート類、ホスゲン、トリクロロメチルクロロホーメート(ホスゲンの2量体)、ビス(トリクロロメチル)カーボネート(ホスゲンの3量体)、ホスゲンの多量体などのハロゲン化カーボネート類などが挙げられる。なお、ホスゲンの3量体は、熱的および化学的に安定で、反応制御および取り扱いが容易であるという利点を有する。また、ハロゲン化ホーメート類は下記のジヒドロキシ化合物から誘導することもできる。
ジヒドロキシ化合物としては、例えば、一般式(V)で示される構成単位を含む化合物、より具体的には、一般式(VI)
HO−X−OH (VI)
(式中、Xは、一般式(V)と同義である)
で表されるジヒドロキシ化合物が挙げられる。
ジヒドロキシ化合物の具体例としては、例えば、
4,4'−(1−メチルエチリデン)ビスフェノール、4,4'−(1−メチルエチリデン)ビス(2−メチルフェノール)、4,4'−シクロヘキシリデンビスフェノール、4,4'−エチリデンビスフェノール、4,4'−(1,3−ジメチルブチリデン)ビスフェノール、4,4'−(1−メチルエチリデン)ビス(2,6−ジメチルフェノール)、4,4'−(1−フェニルエチリデン)ビスフェノール、4,4'−(2−エチルヘキシリデン)ビスフェノール、5,5'−(1−メチルエチリデン)(1,1'−ビフェニル)−2−オール、1,1'−ビフェニル−4,4'−ジオール、4,4'−メチリデンビスフェノール、4,4'−メチレンンビス[2−(2−プロペニル)フェノール]、4,4'−メチリデンビス(2−メチルフェノール)、
4,4'−プロパンジイルビスフェノール、4,4'−(1−メチルプロピリデン)ビスフェノール、4,4'−(2−メチルプロピリデン)ビスフェノール、4,4'−(3−メチルブチリデン)ビスフェノール、4,4'−シクロペンチリデンビスフェノール、4,4'−(フェニルメチリデン)ビスフェノール、4,4'−(1−メチルヘプチリデン)ビスフェノール、4,4'−シクロヘキシリデンビス(3−メチルフェノール)、4,4'−(1−メチルエチリデン)ビス[2−(2−プロペニル)フェノール]、4,4'−(1−メチルエチリデン)ビス[2−(1−メチルエチル)フェノール]、4,4'−(1−メチルオクチリデン)ビスフェノール、4,4'−(1−フェニルエチリデン)ビス(2−メチルフェノール)、4,4'−シクロヘキシリデンビス(2,6−ジメチルフェノール)、4,4'−(1−メチル)ノニリデンビスフェノール、4,4'−デシリデンビスフェノール、
4,4'−(1−メチルエチリデン)ビス[2−(1,1−メチルプロピル)フェノール]、4,4'−(1−メチルエチリデン)ビス[2−(1,1−ジメチルエチル)フェノール]、4,4'−(ジフェニルメチリデン)ビスフェノール、4,4'−シクロヘキシリデンビス[2−(1,1−ジメチルエチル)フェノール]、4,4'−(2−メチルプロピリデン)ビス[3−メチル−6−(1,1−ジメチルエチル)フェノール]、
4,4'−(1−メチルエチリデン)ビス(2−シクロヘキシルフェノール)、4,4’−メチレン−ビス[2,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)フェノール]、4,4'−メチレンビス(2,6−ジ−sec−ブチルフェノール)、5,5'−(1,1−シクロヘキシリデン)ビス−(1,1'−ビフェニル)−2−オール、4,4'−シクロヘキシリデンビス(2−シクロヘキシルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−ノニルフェノール)、4,4'−(1−メチルエチリデン)ビス[2,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)フェノール]、5,5'−(1−フェノールエチリデン)(1,1'−ビフェニル)−2−オール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタノン、4,4'−メチレンビス(2−フルオロフェノール)、4,4'−[2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチリデン]ビスフェノール、
4,4'−イソプロピリデンビス(2−フルオロフェノール)、4,4'−[(4−フルオロフェニル)メチレン]ビス(2−フルオロフェノール)、4,4'−(フェニルメチレン)ビス(2−フルオロフェノール)、4,4'−[(4−フルオロフェニル)メチレン]ビスフェノール、4,4'−(1−メチルエチリデン)ビス(2−クロロ−6−メチルフェノール)、4,4'−(1−メチルエチリデン)ビス(2,6−ジクロロフェノール)、4,4'−(1−メチルエチリデン)ビス(2−クロロフェノール)、4,4'−メチレンビス(2,6−ジブロモフェノール)、4,4'−(1−メチルエチリデン)ビス(2,6−ジブロモフェノール)、4,4'−(1−メチルエチリデン)ビス(2−ニトロフェノール)、3,3'−ジメチル−1,1'−ビフェニル−4,4'−ジオール、
3,3',5,5'−テトラメチル−1,1'−ビフェニル−4,4'−ジオール、3,3',5,5'−テトラ−t−ブチル−1,1'−ビフェニル−4,4'−ジオール、3,3'−ジフルオロ−1,1'−ビフェニル−4,4'−ジオール、3,3',5,5'−テトラフルオロ−1,1'−ビフェニル−4,4'−ジオール
などが挙げられ、これらは2種類以上併用してもよい。
これらの中でも、反応性の観点から、4,4'−(1−メチルエチリデン)ビスフェノール、4,4'−(1−メチルエチリデン)ビス(2−メチルフェノール)、4,4'−シクロヘキシリデンビスフェノールが特に好ましい。
ビスヒドロキシアミン化合物とカーボネート化合物との重合およびビスヒドロキシアミン化合物とカーボネート化合物とジヒドロキシ化合物との重合は、例えば、「プラスチック材料講座5 ポリカーボネート樹脂」(松金幹夫、田原省吾、加藤修士共著、日刊工業新聞社、1969年発行)などに記載の、公知の方法により実施できる。
例えば、カーボネート化合物としてビスアリールカーボネート類を用いる場合には、エステル交換法により本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂を製造できる。また、カーボネート化合物としてハロゲン化カーボネート類を用いる場合は、溶液重合法、界面重合法などにより本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂を製造できる。
例えば、界面重合法によれば、ビスヒドロキシアミン化合物を含む水相と、カーボネート化合物およびポリカーボネート生成触媒を含み、さらに必要に応じてジヒドロキシ化合物を含む油相とを混合し、2相間でビスヒドロキシアミン化合物と、カーボネート化合物と、必要に応じてジヒドロキシ化合物とを重合させることにより、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂を製造できる。
ビスヒドロキシアミン化合物、ジヒドロキシ化合物およびカーボネート化合物の使用割合は特に限定されないが、構成単位(I)と構成単位(V)とのモル比が前述の範囲内になるように用いればよい。
ビスヒドロキシアミン化合物を含む水相は、ビスヒドロキシアミン化合物がアルカリ性で水に溶解することから、公知の塩基を用いて、ビスヒドロキシアミン化合物の水溶液を得る。
公知の塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩などが挙げられ挙げられ、これらは2種類以上併用してもよい。これらの中でも、塩基性が強い点で水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物が特に好ましい。
ここで用いる水は蒸留水、イオン交換水などであり、塩基の使用量は、使用されるビスヒドロキシアミン化合物の全量が、使用される水に対して安定的に溶解する量とすればよい。
油相を構成する有機溶剤は、当該分野で常用されるもの、すなわち水に対する溶解度が重合反応に悪影響を及ぼさない程度に低くかつ生成する芳香族ポリカーボネート樹脂を溶解し得るものであれば特に限定されない。
例えば、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ジクロロプロパンなどのハロゲン化脂肪族炭化水素類、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素類、およびこれらの1種または2種の混合物などが挙げられる。
これらの中でも、溶解性の点でジクロロメタン、クロロベンゼンが特に好ましい。
上記の有機溶剤に、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、ヘキサン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素類などから選ばれる1種または2種以上をさらに混合してもよい。
有機溶剤の使用量は特に制限されないが、各モノマー化合物の種類および使用量、有機溶剤自体の種類、反応温度、反応時間などの反応条件に応じて重合反応が円滑に進行する量を適宜選択すればよい。
ポリカーボネート生成触媒は、当該分野で常用されるものであれば特に限定されない。
例えば、3級アミン、4級アンモニウム塩、3級ホスフィン、4級ホスホニウム塩、含窒素複素環化合物およびその塩、イミノエーテルおよびその塩、アミド基含有化合物などが挙げられる。これらの中でも触媒効率の点で3級アミンが好ましく、炭素数3〜30の3級アミンがより好ましく、トリエチルアミンが特に好ましい。
ポリカーボネート生成触媒の反応系への添加時期は、カーボネート化合物を反応系へ添加する前および添加した後のいずれでもよく、添加前後の2度でもよい。
界面重合法では、クロマトグラフィーなどの手法により生成するポリカーボネートの分子量を追跡し、所望の分子量になった時点で反応系に分子量調節剤としての末端停止剤を添加して分子量を調製することができる。末端停止剤を用いる場合、得られる芳香族ポリカーボネート樹脂のC末端およびO末端には、末端停止剤に由来する1価の置換基が結合する。
末端封止剤は、当該分野で常用されるものであれば特に限定されない。
例えば、1価の芳香族ヒドロキシ化合物、1価の芳香族ヒドロキシ化合物のハロホーメート誘導体、1価のカルボン酸、1価のカルボン酸のハライド誘導体などが挙げられる。
これらの中でも、反応性の点で1価の芳香族ヒドロキシ化合物が好ましく、フェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノールなどがより好ましい。
界面重合法では、得られる芳香族ポリカーボネート樹脂の機械的特性をさらに向上させるために、分岐化剤を適量添加してもよい。
分岐化剤は、当該分野で常用されるものであれば特に限定されない。
例えば、フェノール性水酸基、ハロホーメート基、カルボン酸基、カルボン酸ハライド基、活性なハロゲン原子などから選択される同種または異種の反応基を3つ以上有する化合物などが挙げられる。
界面重合法では、高速撹拌、乳化剤の添加などによって反応媒体を乳化させて反応を実施することによって、短時間で分子量分布の狭い芳香族ポリカーボネート樹脂を得ることができる。
界面重合法は、例えば、0〜40℃の温度下で実施することができ、数分〜5時間程度で終了する。また、反応系における水相のpHは、例えば、塩基の添加などによって、通常10以上に保つことが好ましい。
また、溶液重合法によれば、適当な溶剤中にて、脱酸剤の存在下に、ビスヒドロキシアミン化合物およびカーボネート化合物ならびに必要に応じてジヒドロキシ化合物を重合させることにより、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂を製造できる。
具体的には、ビスヒドロキシアミン化合物および必要に応じてジヒドロキシ化合物を溶剤に溶解し、この溶液に脱酸剤を添加し、さらにビスクロロホーメート、ホスゲン、ホスゲンの2〜3量体、ホスゲンの多量体などのカーボネート化合物を添加し、重合反応を実施することにより、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂が得られる。
ビスヒドロキシアミン化合物、ジヒドロキシ化合物およびカーボネート化合物の使用割合は特に限定されないが、構成単位(I)と構成単位(V)とのモル比が前述の範囲内になるように用いればよい。
溶剤は、当該分野で常用されるもの、すなわち重合反応に不活性でありかつ3種の反応基質および脱酸剤を溶解または分散し得るものであれば特に限定されない。
例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類、ピリジンなどが挙げられる。
脱酸剤は、当該分野で常用されるものであれば特に限定されず、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミンなどの第3級アミン類、ピリジンなどが挙げられる。
また、溶液重合法においても、界面重合法の場合と同様に、分子量調節剤、分岐化剤などを用いてもよい。
溶液重合法は、例えば、0〜40℃の温度下で実施することができ、数分〜5時間程度で終了する。
さらに、エステル交換法によれば、例えば、不活性ガス雰囲気中にてビスヒドロキシアミン化合物およびビスアリールカーボネート(カーボネート化合物)ならびに必要に応じてジヒドロキシ化合物を混合し、通常減圧下にかつ120〜350℃の温度下に反応させることにより、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂を製造できる。
ビスヒドロキシアミン化合物、ジヒドロキシ化合物およびカーボネート化合物の使用割合は特に限定されないが、構成単位(I)と構成単位(V)とのモル比が前述の範囲内になるように用いればよい。
減圧度は段階的に変化させ、最終的には1mmHg以下にし、副生するフェノール類を系外に留去させる。
反応時間は通常1〜4時間程度であり、必要に応じて、分子量調節剤、酸化防止剤などを用いてもよい。
上記の各重合法において、重合操作を適宜選択することによって、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、ランダム交互共重合体またはランダムブロック共重合体を選択的に製造できる。
ランダム共重合体は、例えば、ビスヒドロキシアミン化合物とジヒドロキシ化合物とを均一に混合した後、ホスゲンなどのカーボネート化合物との縮合反応を行うことにより得られる。
ランダムブロック共重合体は、例えば、重合反応の途中で、反応系に数種のビスヒドロキシアミン化合物をさらに添加することにより得られる。
交互共重合体は、例えば、ジヒドロキシ化合物から誘導されるビスクロロホーメートとビスヒドロキシアミン化合物との縮合反応を行うことにより得られる。
また、交互共重合体は、例えば、ビスヒドロキシエナミン化合物から誘導されるビスクロロホーメートとジヒドロキシ化合物との縮合反応によっても得られる。
ランダム交互共重合体は、例えば、ビスクロロホーメートとビスヒドロキシアミン化合物またはジヒドロキシ化合物との縮合反応の際に、ビスクロロホーメート、ビスヒドロキシアミン化合物またはジヒドロキシ化合物の2種以上使用することにより得られる。
上記の各重合法において得られる本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は、抽出、クロマトグラフィー、遠心分離、再結晶化、洗浄などの一般的な精製手段により、重合反応終了後の反応混合物中から容易に単離精製できる。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の末端構造は、安定性の点でパラヒドロキシ安息香酸−n−ブチル、パラヒドロキシ−n−プロピル、パラヒドロキシ安息香酸エチルが特に好ましい。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は、本発明の効果を阻害しない範囲で必要に応じて、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤、滑剤、可塑剤などの一般的な樹脂添加剤が添加されていてもよい。
次に、本発明の感光体の構成について具体的に説明する。
図1〜図8は、本発明の感光体における要部の構成を示す模式断面図である。
図1〜4は、感光層が一層からなる単層型感光層である単層型感光体の要部の構成を示す模式断面図である。
また、図5〜8は、感光層が電荷発生層と電荷輸送層とからなる積層型感光層(「機能分離型感光層」ともいう)である積層型感光体の要部の構成を示す模式断面図である。本発明の感光体は、電荷発生層と電荷輸送層とを逆順で形成した逆二層型積層構造であってもよいが、前記積層型が好ましい。
図1の感光体11は、導電性支持体1の表面に単層型感光層2が形成されている。
図2の感光体12は、導電性支持体1の表面に単層型感光層2と表面保護層5とがこの順で形成されている。
図3の感光体13は、導電性支持体1の表面に下引層6と単層型感光層2とがこの順で形成されている。
図4の感光体14は、導電性支持体1の表面に下引層6と単層型感光層2と表面保護層5とがこの順で形成されている。
図5の感光体15は、導電性支持体1の表面に、電荷発生層3と電荷輸送層4とがこの順で積層された積層型感光層7が形成されている。
図6の感光体16は、導電性支持体1の表面に、電荷発生層3と電荷輸送層4とがこの順で積層された積層型感光層7と、表面保護層5とがこの順で形成されている。
図7の感光体17は、導電性支持体1の表面に、下引層6と、電荷発生層3と電荷輸送層4とがこの順で積層された積層型感光層7とがこの順で形成されている。
図8の感光体18は、導電性支持体1の表面に、下引層6と、電荷発生層3と電荷輸送層4とがこの順で積層された積層型感光層7と、表面保護層5とがこの順で形成されている。
図1〜8に示す感光体を構成する各層は、具体的には次の通りである。
[導電性支持体1(感光体用素管)]
導電性支持体の構成材料は、当該分野で用いられる材料であれば特に限定されない。
具体的には、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、亜鉛、ステンレス鋼、チタンなどの金属材料:ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエステル、ポリオキシメチレン、ポリスチレンなどの高分子材料、硬質紙、ガラスなどからなる基体表面に金属箔をラミネートしたもの、金属材料を蒸着したもの、導電性高分子、酸化スズ、酸化インジウムなどの導電性化合物の層を蒸着もしくは塗布したものなどが挙げられる。
導電性支持体の形状は、図1〜8に示すようなシート状に限定されず、円筒状、円柱状、無端ベルト状などであってもよい。
導電性支持体1の表面には、必要に応じて、画質に影響のない範囲内で、陽極酸化皮膜処理、薬品、熱水などによる表面処理、着色処理、表面を粗面化するなどの乱反射処理を施されていてもよい。
乱反射処理は、レーザを露光光源として用いる電子写真プロセスにおいて本発明による感光体を用いる場合に特に有効である。すなわち、レーザを露光光源として用いる電子写真プロセスでは、レーザ光の波長が揃っているので、感光体の表面で反射されたレーザ光と感光体の内部で反射されたレーザ光とが干渉を起こし、この干渉による干渉縞が画像に現れて画像欠陥の発生することがある。そこで、導電性支持体の表面に乱反射処理を施すことにより、波長の揃ったレーザ光の干渉による画像欠陥を防止することができる。
[単層型感光層2]
単層型感光層は、電荷発生物質と電荷輸送物質と本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂とを含有する。本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂はバインダ樹脂として機能する。単層型感光層は、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂以外のバインダ樹脂、他の酸化防止剤などを含有してもよい。
電荷発生物質は、光を吸収することにより電荷を発生する能力を有する。
電荷発生物質としては、当該分野で用いられる化合物を使用できる。
具体的には、アゾ系顔料(モノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料、トリスアゾ系顔料など)、インジゴ系顔料(インジゴ、チオインジゴなど)、ペリレン系顔料(ペリレンイミド、ペリレン酸無水物など)、多環キノン系顔料(アントラキノン、ピレンキノンなど)、フタロシアニン系顔料(金属フタロシアニン、X型無金属フタロシアニンなど)、スクアリリウム色素、ピリリウム塩類、チオピリリウム塩類、トリフェニルメタン系色素などの有機顔料または染料、さらにセレン、非晶質シリコンなどの無機材料などが挙げられる。これらの電荷発生物質は1種を単独でまたは2種以上を組み合せて使用することができる。
電荷発生物質は、増感染料と組み合せて使用することができる。
このような増感染料としては、例えばメチルバイオレット、クリスタルバイオレット、ナイトブルーおよびビクトリアブルーなどに代表されるトリフェニルメタン系染料;エリスロシン、ローダミンB、ローダミン3R、アクリジンオレンジおよびフラペオシンなどに代表されるアクリジン染料;メチレンブルーおよびメチレングリーンなどに代表されるチアジン染料;カプリブルーおよびメルドラブルーなどに代表されるオキサジン染料;シアニン染料;スチリル染料;ピリリウム塩染料およびチオピリリウム塩染料などが挙げられる。
電荷輸送物質は、電荷発生物質で発生した電荷を受入れ輸送する能力を有し、ホール輸送物質および電子輸送物質を包含する。
ホール輸送物質としては、当該分野で用いられる化合物を使用できる。
具体的には、カルバゾール誘導体、ピレン誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ビスイミダゾリジン誘導体、スチリル化合物、ヒドラゾン化合物、多環芳香族化合物、インドール誘導体、ピラゾリン誘導体、オキサゾロン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリアリールアミン誘導体、トリアリールメタン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、エナミン誘導体、ベンジジン誘導体、これらの化合物から誘導される基を主鎖または側鎖に有するポリマー(ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリ−1−ビニルピレン、エチルカルバゾール−ホルムアルデヒド樹脂、トリフェニルメタンポリマー、ポリ−9−ビニルアントラセンなど)などが挙げられる。
また、電子輸送物質としては、当該分野で用いられる化合物を使用できる。
具体的には、ベンゾキノン誘導体、テトラシアノエチレン誘導体、テトラシアノキノジメタン誘導体、フルオレノン誘導体、キサントン誘導体、フェナントラキノン誘導体、無水フタール酸誘導体、ジフェノキノン誘導体などの有機化合物、アモルファスシリコン、アモルファスセレン、テルル、セレン−テルル合金、硫化カドミウム、硫化アンチモン、酸化亜鉛、硫化亜鉛などの無機材料が挙げられる。これらの電荷輸送物質は1種を単独でまたは2種以上を組み合せて使用することができる。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂以外のバインダ樹脂としては、例えば、単層型感光層の機械的強度、耐久性などを向上させる目的で使用され、当該分野で用いられる結着性を有する樹脂を使用でき、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂との相溶性に優れるものが好ましい。
具体的には、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルなどのビニル系樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリアミド、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテル、ポリアクリルアミド、ポリフェニレンオキサイドなどの熱可塑性樹脂;フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマールなどの熱硬化性樹脂、これらの樹脂の部分架橋物、これらの樹脂に含まれる構成単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂(塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂などの絶縁性樹脂)などが挙げられる。これらのバインダ樹脂は1種を単独でまたは2種以上を組み合せて使用することができる。
これらの樹脂の中でも、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレートおよびポリフェニレンオキサイドは、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂との相溶性に特に優れ、さらに体積抵抗値が1013Ω以上であって電気絶縁性に優れ、かつ成膜性、電位特性などにも優れるので好ましく、ポリカーボネートは特に好適に使用できる。
また、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂はそれ自体が酸化防止機能を有するが、別途、酸化防止剤を加えてもよい。酸化防止剤は、感光層形成用塗工液としての安定性を高め、液寿命を延長させると共に、塗工液で製造した感光体も酸化性不純物が軽減され、感光体の帯電時に発生するオゾン、NOxなどの活性物質の付着による表面層の劣化が軽減され、感光体の繰返し使用時の耐久性が向上するので好ましい。
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール誘導体、ヒンダードアミン誘導体などが挙げられる。
酸化防止剤との使用量は特に限定されないが、電荷輸送物質100重量部に対して0.1〜10重量部が好ましい。酸化防止剤の使用量が0.1重量部未満では、後述する感光層形成用塗工液の安定性および感光体の耐久性を向上効果が不充分になることがあり、また、10重量部を超えると、感光体の電気特性に悪影響を及ぼすことがある。
なお、本発明の感光体を湿式現像方式の画像形成装置に用いる場合には、酸化防止剤は、現像剤の溶剤に不溶であることが必須である。
電荷発生物質、電荷輸送物質、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂および必要に応じて加えられる本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂以外のバインダ樹脂、他の酸化防止剤などの添加剤の使用割合は特に制限されないが、好ましくは全量において本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂およびバインダ樹脂が30〜80重量%程度である。
バインダ樹脂の割合が30重量%未満では、単層型感光層の膜強度が低下するおそれがあり、逆にバインダ樹脂の割合が80重量%を超えると、単層型感光層の機能が低下するおそれがある。ただし、表面保護層が構成されている場合、バインダ樹脂の割合を30重量%未満にすることも可能である。
単層型感光層2は、電荷発生物質、電荷輸送物質、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂および必要に応じて加えられる本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂以外のバインダ樹脂、他の酸化防止剤などの添加剤を適当な有機溶剤に溶解および/または分散して単層型感光層形成用塗工液を調製し、この塗工液を導電性支持体1の表面に、または導電性支持体1上に形成された下引層6の表面に塗布し、次いで乾燥して有機溶剤を除去することによって形成できる。より具体的には、例えば、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂およびバインダ樹脂を有機溶剤に溶解してなる樹脂溶液に構成物質を溶解および/または分散させることにより、単層型感光層形成用塗工液を調製する。
有機溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、ジフェニルメタン、ジメトキシベンゼン、ジクロルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロプロパンなどのハロゲン化炭化水素;テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジベンジルエーテル、ジメトキシメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、イソホロンなどのケトン類;安息香酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、ジフェニルスルフィドなどの含イオウ溶剤;ヘキサフロオロイソプロパノールなどのフッ素系溶剤;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどの非プロトン性極性溶剤などが挙げられ、これらは単独または混合溶剤として使用できる。また、このような溶剤に、アルコール類、アセトニトリルまたはメチルエチルケトンを加えた混合溶剤を使用することもできる。
構成物質を樹脂溶液に溶解または分散させるに先立ち、電荷発生物質およびその他の添加剤を予備粉砕してもよい。
予備粉砕は、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライタ、振動ミル、超音波分散機などの一般的な粉砕機を用いて行うことができる。
構成物質の樹脂溶液への溶解または分散は、例えば、ペイントシェーカ、ボールミル、サンドミルなどの一般的な分散機を用いて行うことができる。このとき、容器および分散機を構成する部材から摩耗などによって不純物が発生し、塗工液中に混入しないように、分散条件を適宜設定するのが好ましい。
単層型感光層形成用塗工液の塗布方法としては、ロール塗布、スプレー塗布、ブレード塗布、リング塗布、浸漬塗布などが挙げられる。
単層型感光層の膜厚は特に限定されないが、5〜100μmが好ましく、10〜50μmが特に好ましい。単層型感光層の膜厚が5μm未満では、感光体表面の帯電保持能が低下するおそれがあり、逆に単層型感光層の膜厚が100μmを超えると、感光体の生産性が低下するおそれがある。
[積層型感光層7]
積層型感光層は、電荷発生層3と電荷輸送層4とからなる。
[電荷発生層3]
電荷発生層3は、電荷発生物質とバインダ樹脂とを含有する。
電荷発生物質は、単層型感光層に含まれるものと同様の電荷発生物質の1種または2種以上を使用できる。
バインダ樹脂は、単層型感光層に含まれるものと同様の、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂以外のバインダ樹脂の1種または2種以上を使用できる。
電荷発生物質とバインダ樹脂との使用割合は特に制限されないが、好ましくは、電荷発生物質とバインダ樹脂との合計量の全量において、電荷発生物質を10〜99重量%含有し、かつ残部がバインダ樹脂である。
電荷発生物質の割合が10重量%未満では、感度が低下するおそれがあり、逆に電荷発生物質の割合が99重量%を超えると、電荷発生層の膜強度が低下するだけでなく、電荷発生物質の分散性が低下して粗大粒子が増大し、露光によって消去されるべき部分以外の表面電荷が減少し、画像欠陥、特に白地にトナーが付着し微小な黒点が形成される黒ポチと呼ばれる画像のかぶりが多く発生するおそれがある。
電荷発生層は、前記2種の必須成分のほかに、必要に応じて、ホール輸送物質、電子輸送物質、酸化防止剤、分散安定剤、増感剤などから選ばれる1種または2種以上のそれぞれ適量を含んでもよい。これによって、電位特性が向上するとともに、後述する電荷発生層形成用塗工液の安定性が高まり、感光体の繰返し使用時の疲労劣化を軽減し、耐久性を向上させることができる。
電荷発生層3は、電荷発生物質、バインダ樹脂および必要に応じて他の添加剤を適当な有機溶剤に溶解または分散して電荷発生層形成用塗工液を調製し、この塗工液を導電性支持体1の表面に、または導電性支持体1上に形成された下引層6の表面に塗布し、次いで乾燥して有機溶剤を除去することによって形成できる。より具体的には、例えば、バインダ樹脂を有機溶剤に溶解してなる樹脂溶液に電荷発生物質および必要に応じて他の添加剤を溶解または分散させることにより、電荷発生層形成用塗工液を調製する。
その他の工程およびその条件は、単層型感光層の形成に準ずる。
有機溶剤は、単層型感光層の形成用塗工液の調製に用いられるものと同様の溶剤の1種または2種以上を使用できる。
電荷発生層3の膜厚は特に限定されないが、0.05〜5μmが好ましく、0.1〜1μmが特に好ましい。これは、電荷発生層の膜厚が0.05μm未満では、光吸収の効率が低下し、感度が低下するおそれがあり、逆に電荷発生層の膜厚が5μmを超えると、電荷発生層内部での電荷輸送が感光体表面の電荷を消去する過程の律速段階となり、感度が低下するおそれがある。
[電荷輸送層4]
電荷輸送層4は、電荷輸送物質と本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂とを含有する。本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂はバインダ樹脂として機能する。電荷輸送層は、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂以外のバインダ樹脂、他の酸化防止剤などを含有してもよい。
電荷輸送物質は、単層型感光層に含まれるものと同様の電荷輸送物質の1種または2種以上を使用できる。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂以外のバインダ樹脂は、単層型感光層に含まれるものと同様のバインダ樹脂の1種または2種以上を使用できる。
電荷発生物質とバインダ樹脂との使用割合は、単層型感光層と同様である。
電荷輸送層は、前記3種の必須成分のほかに、必要に応じて、単層型感光層に含まれるものと同様の酸化防止剤などの添加剤を含むことができる。
電荷輸送層4は、電荷輸送物質、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂以外のバインダ樹脂および必要に応じて他の添加剤を適当な有機溶剤に溶解および/または分散して電荷輸送層形成用塗工液を調製し、この塗工液を電荷発生層3の表面に塗布し、次いで乾燥して有機溶剤を除去することによって形成できる。より具体的には、例えば、バインダ樹脂を有機溶剤に溶解してなる樹脂溶液に電荷輸送物質、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂、バインダ樹脂および必要に応じて他の添加剤を溶解および/または分散させることにより、電荷輸送層形成用塗工液を調製する。
その他の工程およびその条件は、単層型感光層の形成に準ずる。
電荷輸送層4の膜厚は特に限定されないが、5〜50μmが好ましく、10〜40μmが特に好ましい。電荷輸送層の膜厚が5μm未満では、感光体表面の帯電保持能が低下するおそれがあり、逆に電荷輸送層の膜厚が50μmを超えると、感光体の解像度が低下するおそれがある。
[表面保護層]
本発明の感光体は、単層型感光層2上または積層型感光層7上に表面保護層5を有し、表面保護層を構成するバインダ樹脂が少なくとも本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂からなるのが好ましい。
表面保護層5は、感光体の耐久性を向上させる機能を有し、電荷輸送物質とバインダ樹脂、好ましくは少なくとも本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂からなる。
電荷輸送物質は、単層型感光層に含まれるものと同様の電荷輸送物質の1種または2種以上を使用できる。
バインダ樹脂は、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂、単層型感光層に含まれるものと同様の、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂以外のバインダ樹脂の1種または2種以上を使用でき、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂が特に好ましい。
表面保護層5は、例えば、適当な有機溶剤に電荷輸送物質、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂およびバインダ樹脂などを溶解および/または分散させて表面保護層形成用塗工液を調製し、この表面保護層形成用塗工液を単層型感光層2または積層型感光層7の表面に塗布し、乾燥により有機溶剤を除去することによって形成できる。ここで用いられる有機溶剤としては、感光層2の形成に用いられる有機溶剤と同様のものを使用できる。
その他の工程およびその条件は、単層型感光層の形成に準ずる。
有機溶剤は、単層型感光層の形成用塗工液の調製に用いられるものと同様の溶剤の1種または2種以上を使用できる。
表面保護層5の膜厚は特に制限されないが、0.5〜10μmが好ましく、1〜5μmが特に好ましい。表面保護層5の膜厚が0.5μm未満では、感光体表面の耐擦過性が劣り、耐久性が不十分になるおそれがあり、逆に10μmを超えると、感光体の解像度が低下するおそれがある。
[下引層6(中間層)]
本発明の感光体は、導電性支持体と単層型感光層または積層型感光層との間に下引層を有するのが好ましい。
下引層は、導電性支持体から単層型感光層または積層型感光層への電荷の注入を防止する機能を有する。すなわち、単層型感光層または積層型感光層の帯電性の低下が抑制され、露光によって消去されるべき部分以外の表面電荷の減少が抑えられ、かぶりなどの画像欠陥の発生が防止される。特に、反転現像プロセスによる画像形成の際に、白地部分にトナーからなる微小な黒点が形成される黒ポチと呼ばれる画像かぶりが発生するのが防止される。
また、下引層で導電性支持体の表面を被覆する下引層は、導電性支持体の表面の欠陥である凹凸の度合を軽減して表面を均一化し、単層型感光層または積層型感光層の成膜性を高め、導電性支持体と単層型感光層または積層型感光層との密着性(接着性)を向上させることができる。
下引層は、例えば、樹脂材料を適当な溶剤に溶解させて下引層形成用塗工液を調製し、この塗工液を導電性支持体の表面に塗布し、乾燥により有機溶剤を除去することによって形成できる。
樹脂材料としては、単層型感光層に含まれるものと同様の本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂以外のバインダ樹脂に加えて、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、エチルセルロースなどの天然高分子材料などが挙げられ、これらの1種または2種以上を使用できる。
樹脂材料を溶解または分散させる溶剤としては、例えば、水、メタノール、エタノール、ブタノールなどのアルコール類、メチルカルビトール、ブチルカルビトールなどのグライム類、これらの溶剤を2種以上混合した混合溶剤などが挙げられる。
その他の工程およびその条件は、単層型感光層の形成に準ずる。
また、下引層形成用塗工液は、金属酸化物粒子を含んでいてもよい。
金属酸化物粒子は、下引層の体積抵抗値を容易に調節でき、単層型感光層または積層型感光層への電荷の注入をさらに抑制できると共に、各種環境下において感光体の電気特性を維持できる。
金属酸化物粒子としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化スズなどが挙げられる。
下引層形成用塗工液における樹脂材料と金属酸化物粒子との合計含有量をC、溶剤の含有量をDとするとき、両者の容量比率(C/D)は、1/99〜40/60(重量比率=0.01〜0.67)が好ましく、2/98〜30/70(重量比率=0.02〜0.43)が特に好ましい。
また、樹脂材料の含有量(E)と金属酸化物粒子の含有量(F)との容量比率(E/F)は、1/99〜90/10(重量比率=0.01〜9.0)が好ましく、5/95〜70/30(重量比率=0.05〜2.33)が特に好ましい。
下引層の膜厚は特に限定されないが、0.01〜20μmが好ましくは、0.1〜10μmが特に好ましい。下引層の膜厚が0.01μm未満では、下引層として実質的に機能しなくなり、導電性支持体の欠陥を被覆して均一な表面が得られないおそれがあり、下引層の膜厚が20μmを超えると、均一な下引層を形成し難く、また感光体の感度も低下するおそれがある。
なお、導電性支持体の構成材料がアルミニウムの場合には、アルマイトを含む層(アルマイト層)を形成し、下引層とすることができる。
本発明の画像形成装置は、本発明の感光体と、感光体を帯電させる帯電手段と、帯電された感光体をその画像情報に応じた光で露光して静電潜像を形成する露光手段と、露光によって形成された静電潜像を現像して可視像化する現像手段と、現像によって可視像化された画像を記録媒体上に転写する転写手段とを備えることを特徴とする。
図面を用いて本発明の画像形成装置について説明するが、以下の記載内容に限定されるものではない。
図9は、本発明の画像形成装置の構成を示す模式側面図である。
図9の画像形成装置20は、本発明の感光体21(例えば、図1〜8の感光体11〜18のいずれか1つ)と、帯電手段(帯電器)24と、露光手段28と、現像手段(現像器)25と、転写器26と、クリーナ27と、定着器31とを含んで構成される。図番30は転写紙を示す。
感光体21は、図示しない画像形成装置20本体に回転自在に支持され、図示しない駆動手段によって回転軸線22回りに矢符23方向に回転駆動される。駆動手段は、例えば電動機と減速歯車とを含んで構成され、その駆動力を感光体21の芯体を構成する導電性支持体に伝えることによって、感光体21を所定の周速度で回転駆動させる。帯電器24、露光手段28、現像器25、転写器26およびクリーナ27は、この順序で、感光体21の外周面に沿って、矢符23で示される感光体21の回転方向上流側から下流側に向って設けられる。
帯電器24は、感光体21の外周面を所定の電位に帯電させる帯電手段である。本実施の形態では、帯電器24は、接触式の帯電ローラ24aと、帯電ローラ24aに電圧を印加するバイアス電源24bとによって実現される。
帯電手段としてはチャージャーワイヤも使用できるが、感光体表面の高い耐摩耗性が要求される帯電ローラにおいて、本発明による表面保護層が形成された感光体は耐久性向上により大きな効果を発揮する。
したがって、本発明の画像形成装置においては、帯電手段は接触帯電手段であるのが好ましい。
露光手段28は、例えば半導体レーザなどを光源として備え、光源から出力されるレーザビームなどの光28aを、感光体21の帯電器24と現像器25との間に照射することによって、帯電された感光体21の外周面に対して画像情報に応じた露光を施す。光28aは、主走査方向である感光体21の回転軸線22の延びる方向に繰返し走査され、これに伴って感光体21の表面に静電潜像が順次形成される。
現像器25は、露光によって感光体21の表面に形成される静電潜像を、現像剤によって現像する現像手段であり、感光体21を臨んで設けられ、感光体21の外周面にトナーを供給する現像ローラ25aと、現像ローラ25aを感光体21の回転軸線22と平行な回転軸線まわりに回転可能に支持すると共にその内部空間にトナーを含む現像剤を収容するケーシング25bとを備える。
図9の画像形成装置は乾式現像方式であるが、本発明の画像形成装置における感光体は耐久性に優れた感光層または表面保護層を有するので、現像手段が炭化水素系溶剤にトナーを分散した液体現像剤を用いる湿式現像である場合であっても、高品質の画像を形成することができる。
転写器26は、現像によって感光体21の外周面に形成される可視像であるトナー像を、図示しない搬送手段によって矢符29方向から感光体21と転写器26との間に供給される記録媒体である転写紙30上に転写させる転写手段である。転写器26は、例えば、帯電手段を備え、転写紙30にトナーと逆極性の電荷を与えることによってトナー像を転写紙30上に転写させる非接触式の転写手段である。
クリーナ27は、転写器26による転写動作後に感光体21の外周面に残留するトナーを除去し回収する清掃手段であり、感光体21の外周面に残留するトナーを剥離させるクリーニングブレード27aと、クリーニングブレード27aによって剥離されたトナーを収容する回収用ケーシング27bとを備える。また、このクリーナ27は、図示しない除電ランプと共に設けられる。
また、画像形成装置20には、感光体21と転写器26との間を通過した転写紙30が搬送される下流側に、転写された画像を定着させる定着手段である定着器31が設けられる。定着器31は、図示しない加熱手段を有する加熱ローラ31aと、加熱ローラ31aに対向して設けられ、加熱ローラ31aに押圧されて当接部を形成する加圧ローラ31bとを備える。
この画像形成装置20による画像形成動作は、次のようにして行われる。まず、感光体21が駆動手段によって矢符23方向に回転駆動されると、露光手段28による光28aの結像点よりも感光体21の回転方向上流側に設けられる帯電器24によって、感光体21の表面が正または負の所定電位に均一に帯電される。
次いで、露光手段28から、感光体21の表面に対して画像情報に応じた光28aが照射される。感光体21は、この露光によって、光28aが照射された部分の表面電荷が除去され、光28aが照射された部分の表面電位と光28aが照射されなかった部分の表面電位とに差異が生じ、静電潜像が形成される。
露光手段28による光28aの結像点よりも感光体21の回転方向下流側に設けられる現像器25から、静電潜像の形成された感光体21の表面にトナーが供給されて静電潜像が現像され、トナー像が形成される。
感光体21に対する露光と同期して、感光体21と転写器26との間に、転写紙30が供給される。転写器26によって、供給された転写紙30にトナーと逆極性の電荷が与えられ、感光体21の表面に形成されたトナー像が、転写紙30上に転写される。
トナー像の転写された転写紙30は、搬送手段によって定着器31に搬送され、定着器31の加熱ローラ31aと加圧ローラ31bとの当接部を通過する際に加熱および加圧され、トナー像が転写紙30に定着されて堅牢な画像となる。このようにして画像が形成された転写紙30は、搬送手段によって画像形成装置20の外部へ排紙される。
一方、転写器26によるトナー像の転写後も感光体21の表面上に残留するトナーは、クリーナ27によって感光体21の表面から剥離されて回収される。このようにしてトナーが除去された感光体21の表面の電荷は、除電ランプからの光によって除去され、感光体21の表面上の静電潜像が消失する。その後、感光体21はさらに回転駆動され、再度帯電から始まる一連の動作が繰返されて連続的に画像が形成される。
本発明による画像形成装置20は、適度な導電性を有し、かつ耐久性に優れた感光層または表面保護層を有する感光体21を備えるので、各種の環境下において高品質の画像を形成することができる。
以下に製造例、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、これらの製造例および実施例により本発明が限定されるものではない。
製造例で得られた化合物の化学構造、分子量および元素分析は、以下の装置および条件により測定した。
(分子量)
分子量測定装置:LC−MS(サーモクエスト社製、
フィネガン LCQ Deca マススペクトロメーターシステム)
LCカラム GL-Sciences Inertsil ODS-3 2.1×100mm
カラム温度 40℃
溶離液 メタノール:水=90:10
サンプル注入量 5μl
検出器 UV254nmおよびMS ESI
(元素分析)
元素分析装置:パーキン エールマー社製、Elemental Analysis 2400
サンプル量: 約2mgを精秤
ガス流量(ml/分):He=1.5、O2=1.1、N2=4.3
燃焼管温度設定:925℃
還元管温度設定:640℃
なお、元素分析は、差動熱伝導度法による炭素(C)、水素(H)および窒素(N)同時定量法に分析した。
(製造例1)ビスヒドロキシジアミン化合物(例示化合物A)の合成
Figure 2009204971
無水1,4−ジオキサン50ml中に、4,4’−ビス(クロロメチル)フェニル4.19g(1.0当量)および4-ヒドロキシフェニル、フェニルアミン9.93g(2.1当量)を加え、アイスバスにて氷冷下に冷却した。得られた溶液中に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン6.86g(2.2当量)を徐々に加えた。その後、得られた溶液を徐々に加熱して、100〜110℃の温度に保持しながら、溶液を4時撹拌した。その後、反応溶液を放冷し、生じた沈殿を濾取し、充分に水洗した後、エタノールと酢酸エチルとの混合溶剤(エタノール:酢酸エチル=8:2〜7:3)で再結晶を行うことによって、白色粉末状化合物11.4gを得た。
得られた白色粉末状化合物の差動熱伝導度法による炭素(C)、水素(H)、窒素(N)および酸素(O)の元素分析値は以下のとおりであった。
<例示化合物Aの元素分析値>
理論値 C:81.79%、H:6.86%、N:5.30%、O:6.05%
実測値 C:81.51%、H:6.98%、N:5.48%、O:6.03%
また、得られた白色粉末状化合物をLC−MSで分析した結果、目的とする化学構造式で表される化合物(分子量の計算値:528.68)にプロトンが付加した分子イオン[M+H]+に相当するピークが529.9に観測された。
元素分析およびLC−MSの分析結果から、得られた白色粉末状化合物が例示化合物Aのビスヒドロキシジアミン化合物であることがわかった(収率:90%)。また、LC−MSの分析結果から、得られた化合物の純度は99.4%であることがわかった。
(製造例2)芳香族ポリカーボネート樹脂(P−1)の合成
水酸化ナトリウム1.62gおよびナトリウムハイドロサルファイト0.075gを水60mlに溶解させた水溶液の中に、製造例1で得られたビスヒドロキシジアミン化合物(例示化合物A)0.324g(0.5ミリモル)、4,4’−(1−メチルエチリデン)ビスフェノール2.50g(11ミリモル)および4−tert−ブチルフェノール0.030gを加え、アルゴンガス気流下で撹拌した。得られた混合液に、氷冷下および激しい撹拌下にトリホスゲン2.11gのジクロロメタン40ml溶液を徐々に滴下し、エマルションを形成しながら反応を行った。滴下終了後、反応溶液を室温まで戻し、水酸化ナトリウム0.25gを加え、さらにトリエチルアミンを0.45ml加えた。その後、液温を25〜30℃の範囲に保持しながら3時間反応させた。反応終了後、ジクロロメタン200mlを加えて有機層を抽出した。得られた有機層を3%水酸化ナトリウム水溶液、2%塩酸水溶液およびイオン交換水により順次洗浄した後、メタノール中に再沈させ、芳香族ポリカーボネート樹脂(P−1)4.04gを得た。
得られた芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したところ、数平均分子量23400、重量平均分子量73000(いずれもポリスチレン換算)であった。また、得られた芳香族ポリカーボネート樹脂の赤外吸収スペクトルには、1775cm-1にカーボネートのC=O伸縮振動に基づく吸収が認められた。
さらに、分析結果から、得られた芳香族ポリカーボネート樹脂は、構成単位(I)および構成単位(V)を有するランダム共重合体であることがわかった。
(製造例3)ビスヒドロキシジアミン化合物(例示化合物A)の合成
下記構造式で示される、例示化合物Bを製造した。
Figure 2009204971
無水1,4−ジオキサン50ml中に、4,4’−ビス(クロロメチル)ビフェニレン6.06g(1.0当量)および4-ヒドロキシフェニル、フェニルアミン9.93g(2.1当量)を加え、アイスバスにて氷冷下に冷却した。得られた溶液中に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン6.86g(2.2当量)を徐々に加えた。その後、得られた溶液を徐々に加熱して、100〜110℃の温度に保持しながら、溶液を4時撹拌した。その後、反応溶液を放冷し、生じた沈殿を濾取し、充分に水洗した後、エタノールと酢酸エチルとの混合溶剤(エタノール:酢酸エチル=8:2〜7:3)で再結晶を行うことによって、白色粉末状化合物13.34gを得た。
得られた白色粉末状化合物の差動熱伝導度法による炭素(C)、水素(H)、窒素(N)および酸素(O)の元素分析値は以下のとおりであった。
<例示化合物Bの元素分析値>
理論値 C:83.41%、H:6.67%、N:4.63%、O:5.29%
実測値 C:83.21%、H:6.95%、N:4.42%、O:5.42%
また、得られた白色粉末状化合物をLC−MSで分析した結果、目的とする化学構造式で表される化合物(分子量の計算値:604.31)にプロトンが付加した分子イオン[M+H]+に相当するピークが605.7に観測された。
元素分析およびLC−MSの分析結果から、得られた白色粉末状化合物が例示化合物Bのビスヒドロキシジアミン化合物であることがわかった(収率:92%)。また、LC−MSの分析結果から、得られた化合物の純度は99.1%であることがわかった。
(製造例4)芳香族ポリカーボネート樹脂(P−2)の合成
水酸化ナトリウム1.62gおよびナトリウムハイドロサルファイト0.075gを水60mlに溶解させた水溶液の中に、製造例2で得られたビスヒドロキシゾアミン化合物(例示化合物B)0.302g(0.5ミリモル)、4,4’−(1−メチルエチリデン)ビスフェノール2.50g(11ミリモル)および4−tert−ブチルフェノール0.030gを加え、アルゴンガス気流下で撹拌した。得られた混合液に、氷冷下および激しい撹拌下にトリホスゲン2.11gのジクロロメタン40ml溶液を徐々に滴下し、エマルションを形成しながら反応を行った。滴下終了後、反応溶液を室温まで戻し、水酸化ナトリウム0.25gを加え、さらにトリエチルアミンを0.45ml加えた。その後、液温を25〜30℃の範囲に保持しながら3時間反応させた。反応終了後、ジクロロメタン200mlを加えて有機層を抽出した。得られた有機層を3%水酸化ナトリウム水溶液、2%塩酸水溶液およびイオン交換水により順次洗浄した後、メタノール中に再沈させ、芳香族ポリカーボネート樹脂(P−2)3.01gを得た。
得られた芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したところ、数平均分子量21400、重量平均分子量72500(いずれもポリスチレン換算)であった。また、得られた芳香族ポリカーボネート樹脂の赤外吸収スペクトルには、1775cm-1にカーボネートのC=O伸縮振動に基づく吸収が認められた。
さらに、分析結果から、得られた芳香族ポリカーボネート樹脂は、構成単位(I)および構成単位(V)を有するランダム共重合体であることがわかった。
(実施例1)
酸化チタン(商品名:TTO55A、石原産業(株)製)7重量部および共重合ナイロン樹脂(商品名:CM8000、東レ(株)製)13重量部を、メチルアルコール159重量部と1,3−ジオキソラン106重量部との混合溶剤に加え、ペイントシェーカにて8時間分散処理し、下引層形成用塗工液を調製した。この下引層形成用塗工液を塗布槽に満たし、直径30mm、長さ340mmのアルミニウム製ドラム状支持体を浸漬し、引き上げて自然乾燥して膜厚1μmの下引層を形成した。
次いで、CuKα1.541ÅのX線に対するブラッグ角(2θ±0.2°)が、27
.3°に主要なピークを示すX線回折スペクトルを有するチタニルフタロシアニン1重量部およびブチラール樹脂(商品名:#6000−C、電気化学工業(株)製)1重量部をメチルエチルケトン98重量部に混合し、ペイントシェーカにて分散処理して電荷発生層形成用塗工液を調製した。この電荷発生層形成用塗工液を、下引層形成の場合と同様の方法で下引層表面に塗布し、自然乾燥して膜厚0.4μmの電荷発生層を形成した。
次いで、電荷輸送物質として下記構造を有するエナミン化合物100重量部、製造例2で合成した芳香族ポリカーボネート樹脂(P−1)150重量部、シリコンオイル0.02重量部を混合し、テトラヒドロフランを溶剤として固形分25重量%の電荷輸送層形成用塗工液を調製した。この電荷輸送層形成用塗工液を浸漬法により、先に設けた電荷発生層表面に塗布し、130℃で1時間乾燥して膜厚25μmの電荷輸送層を形成した。このようにして、図3に示す積層型感光体を作製した。
Figure 2009204971
(実施例2)
芳香族ポリカーボネート樹脂(P−1)に代えて、製造例4で合成した芳香族ポリカーボネート樹脂(P−2)を用いること以外は実施例1と同様にして、積層型感光体を作製した。
(比較例1)
芳香族ポリカーボネート樹脂(P−1)に代えて、Z型ポリカーボネート(商品名:ユーピロンZ400、三菱ガス化学株式会社製)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、積層型感光体を作製した。
(比較例2)
芳香族ポリカーボネート樹脂(P−1)に代えて、Z型ポリカーボネート(商品名:ユーピロンZ400、三菱ガス化学株式会社製)を用い、さらに下記構造を有する化合物5重量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、積層型感光体を作製した。
Figure 2009204971
(比較例3)
芳香族ポリカーボネート樹脂(P−1)に代えて、Z型ポリカーボネート(商品名:ユーピロンZ400、三菱ガス化学株式会社製)を用い、さらに下記構造を有する化合物5重量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、積層型感光体を作製した。
Figure 2009204971
(比較例4)
芳香族ポリカーボネート樹脂(P−1)に代えて、Z型ポリカーボネート(商品名:ユーピロンZ400、三菱ガス化学株式会社製)を用い、さらにヒンダードアミン系酸化防止剤(商品名:チヌビン622LD、チバスペシャリティケミカルズ社製)5重量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして、積層型感光体を作製した。
以上のようにして作製した実施例1〜2および比較例1〜4の各感光体について、以下のようにして、初期およびオゾン暴露試験+耐溶剤性試験後の電気特性、現像液への酸化防止剤の溶出の有無を評価した。
<評価方法>
1.電気特性
静電特性試験機(型式:CYNTHIA、ジェンテック社製)を用いて、感光体を帯電させて5秒後の暗減衰量DD(%)および感光体を−600Vに帯電させた後の半減露光量E1/2(μJ/cm2)を測定した。
2.オゾン暴露(耐オゾン)試験
初期の電気特性を測定した後、感光体をオゾン発生機に接続した容器に入れ、温度25℃、湿度50%、オゾン濃度5ppmで20時間放置した。
3.耐溶剤性試験
液体現像用キャリア溶剤(商品名:アイソパーH、エクソンモービルケミカルズ社製)を入れたメスシリンダーに、オゾン暴露試験後の感光体をその長さの3分の1程度浸漬させ、浸漬されない部分には遮光紙を巻いた。次いで、このメスシリンダーを温度25℃、湿度50%の暗中で7日間放置した。期間終了後、感光層の外観変化(変色の有無とクラックの有無)を観察した。また、薄層クロマトグラフィー(Thin Layer Chromatography:TLC)により溶剤を分析し、酸化防止剤のスポットの有無を確認し、スポット「有」を酸化防止剤の溶出「有」とした。
4.電気特性
上記1.と同様にして、オゾン暴露試験+耐溶剤性試験後の電気特性を測定した。
以上の評価結果を表3に示す。
Figure 2009204971
表3の結果から、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂を含有する実施例1〜2の感光体は、湿式現像用の溶剤中でまったく変化せず、電気特性も変化しないことがわかる。
一方、従来のポリカーボネートを含有する比較例1の感光体は、オゾン暴露試験+耐溶剤試験後の電気特性(暗減衰特性)が劣化することがわかる。
また、本発明の構成単位(I)および(V)を有する酸化防止剤を添加した比較例2および3の感光体では、酸化防止剤が湿式現像用の溶剤に溶出し、オゾン暴露試験+耐溶剤試験後の電気特性(暗減衰特性)が劣化することがわかる。
さらに、ヒンダードアミン系酸化防止剤を添加した比較例4の感光体でも、酸化防止剤が湿式現像用の溶剤に溶出し、オゾン暴露試験+耐溶剤試験後の電気特性(暗減衰特性)が劣化することがわかる。
本発明の単層型感光体の要部の構成を示す模式断面図である。 本発明の単層型感光体の要部の構成を示す模式断面図である。 本発明の単層型感光体の要部の構成を示す模式断面図である。 本発明の単層型感光体の要部の構成を示す模式断面図である。
本発明の積層型感光体の要部の構成を示す模式断面図である。 本発明の積層型感光体の要部の構成を示す模式断面図である。 本発明の積層型感光体の要部の構成を示す模式断面図である。 本発明の積層型感光体の要部の構成を示す模式断面図である。
本発明の画像形成装置の構成を示す模式側面図である。
符号の説明
1 導電性支持体
2 単層型感光層
3 電荷発生層
4 電荷輸送層
5 表面保護層
6 中間層
7 積層型感光層
11〜18、21 感光体
20 画像形成装置
22 回転軸線
23、29 矢符
24 帯電手段(帯電器)
24a 帯電ローラ
24b バイアス電源
25 現像手段(現像器)
25a 現像ローラ
25b ケーシング
26 転写器
27 クリーナ
27a クリーニングブレード
27b 回収用ケーシング
28 露光手段
28a 光
30 転写紙
31 定着器
31a 加熱ローラ
31b 加圧ローラ

Claims (10)

  1. 導電性支持体上に、電荷発生物質と電荷輸送物質とを含有する単層型感光層、または電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とがこの順で積層された積層型感光層が積層されてなる電子写真感光体であって、前記単層型感光層または前記積層型感光層の電荷輸送層を構成するバインダ樹脂が、少なくとも芳香族ポリカーボネート樹脂からなり、該芳香族ポリカーボネート樹脂が、一般式(I):
    Figure 2009204971
    [式中、
    Ar1およびAr4は、同一または異なって、置換基を有してもよいアリレン基、置換基を有してもよいシクロアルキレン基または置換基を有してもよい2価の複素環残基であり、
    Ar2およびAr3は、同一または異なって、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいシクロアルキル基または置換基を有してもよい1価の複素環残基であり;
    1、Y2、Y3、Y4、Y5およびY6は、同一または異なって、置換基を有してもよい鎖状のアルキレン基であり;
    Zは、i)−Ar5−、ii)−Ar5−Ar6−またはiii)−Ar5−W−Ar6−(式中、Ar5およびAr6は、同一または異なって、置換基を有してもよいアリレン基または置換基を有してもよい2価の複素環残基であり;Wは、置換基を有してもよいシクロアルキリデン基、置換基を有してもよい鎖状もしくは枝分かれ状のアルキレン基、酸素原子または硫黄原子である)である]
    で示される構成単位を含む共重合体であることを特徴とする電子写真感光体。
  2. 前記一般式(I)で示される構成単位が、副式(II):
    Figure 2009204971
    (式中、Zは、一般式(I)と同義である)
    で示される請求項1に記載の電子写真感光体。
  3. 前記一般式(I)で示される構成単位が、式(III):
    Figure 2009204971
    で示される請求項2に記載の電子写真感光体。
  4. 前記一般式(I)で示される構成単位が、式(IV):
    Figure 2009204971
    で示される請求項2に記載の電子写真感光体。
  5. 前記芳香族ポリカーボネート樹脂が、さらに一般式(V):
    Figure 2009204971
    (式中、Xは、置換基を有してもよい2価の鎖状もしくは環状の脂肪族炭化水素残基、置換基を有してもよい2価の芳香族残基、置換基を有してもよい2価の複素環残基、またはこれらの残基もしくはこれらの残基と酸素原子および/または硫黄原子が連結した2価基である)
    で示される構成単位を含む共重合体である請求項1〜4のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
  6. 前記一般式(I)で示される構成単位と前記一般式(V)で示される構成単位との比率が2〜95:98〜5である請求項5に記載の電子写真感光体。
  7. 前記芳香族ポリカーボネート樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリスチレン換算の数平均分子量が1000〜500000である請求項1〜6のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
  8. 前記電子写真感光体が、前記単層型感光層上または前記積層型感光層上に表面保護層を有し、該表面保護層を構成するバインダ樹脂が、少なくとも前記芳香族ポリカーボネート樹脂からなる請求項1〜7のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
  9. 請求項1〜8のいずれ1つに記載の電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電された前記電子写真感光体をその画像情報に応じた光で露光して静電潜像を形成する露光手段と、露光によって形成された静電潜像を現像して可視像化する現像手段と、現像によって可視像化された画像を記録媒体上に転写する転写手段とを備えることを特徴とする画像形成装置。
  10. 前記現像手段が、炭化水素系溶剤にトナーを分散した液体現像剤を用いる湿式現像方式である請求項9に記載の画像形成装置。
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