JP2009200239A - ZnO系半導体素子 - Google Patents

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謙太郎 田村
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Shunsuke Akasaka
俊輔 赤坂
Masashi Kawasaki
雅司 川崎
Akira Otomo
明 大友
Atsushi Tsukasaki
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Abstract

【課題】製造過程での条件に左右されない良質の電子デバイスとなり得るZnO系半導体素子を提供する。
【解決手段】
ZnO系半導体素子を構成する薄膜のうち、アクセプタドープ層又はアクティブ機能層のいずれか、あるいは、アクセプタドープ層及びアクティブ機能層の両方をZnO単体で構成せずに、ZnOと他の元素を含むZnO系化合物で構成する。ZnO単体以外のZnO系化合物で構成した方が、余計な発光準位がなくなるため、最適化が容易で、成長条件の許容範囲が広く、適切なデバイス材料となる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、主としてZnO単体からなる半導体層以外のZnO系半導体層を用いたZnO系半導体素子に関する。
照明、バックライト等用の光源として使われる紫外LEDや高速電子デバイス、表面弾性波デバイス等に酸化物の一種であるZnO系半導体素子を用いることが研究されている。ZnOはその多機能性、発光ポテンシャルの大きさなどが注目されていながら、なかなか半導体デバイス材料として成長しなかった。その最大の難点は、アクセプタドーピングが困難で、p型ZnOを得ることができなかったためである。しかし、近年、非特許文献1や2に見られるように、技術の進歩により、p型ZnOを得ることができるようになり、発光も確認されるようになり、非常に研究が盛んである。
また、非特許文献3によると、単結晶ZnOを用いると電界効果移動度が、250cm/V・Sに達するとの記載があり、非特許文献4には、ほぼアルモファスZnOで電界効果移動度が7cm/V・S(アモルファスSiは1cm/V・S以下)に達するとの報告があり、ZnOは電子デバイス材料としても有用であることがわかってきた。
A.Tsukazaki et al., Jpn.J.Appl.Phys. 44 (2005) L643 A.Tsukazaki et al., Nature Material 4 (2005) 42 日経エレクトロニクス2007-8/27号p.52 Jpn.J.Appl.Phys. Vol.42 (2003)pp.L347-L349
ところが、ZnOには物性的に厄介な問題がいくつかある。一般的に良く知られているのが、アニールによる電気特性の変化である。低酸素状態では電子濃度が増加して低抵抗化し、酸素がある状態では電子濃度と移動度が共に減り高抵抗化する。これはZnOを成長させた時点からデバイスを完成させるまでのプロセスの間や動作中にZnOの膜特性が変わりかねないこと、および膜成長温度で膜の性質が変わりやすいことを意味し、特に電子デバイスで問題になる性質である。
これはZnOが組成ズレを起こしやすいということを表わしている。酸化物には、良くあることだが、ZnOは、Zn1+δ1−δのように、Znリッチ側にずれる性質がある。そのため、低酸素状態アニールによりZnリッチの程度が高くなり、高酸素状態アニールではZnリッチの程度が低くなる。半導体デバイスでは、意図した通りの導電性制御のために、アンドープ状態の安定が必要であるが、アンドープZnOはやや安定性に欠ける。このために、特に窒素ドープのようなアクセプタドープを行った場合、自動的に補償準位を形成したり(自己補償効果)、点欠陥増殖による表面原子マイグレーションの抑制によって、膜表面の荒れ等を引き起こしやすい。
また、ZnOはc軸配向が非常に高く、六角柱の集まりのような膜を作ることが多い。このとき六角柱の間に粒界と呼ばれる領域が存在し、ここにポテンシャルバリアが発生する。この性質をうまく使ったのがZnOバリスタであるが、結晶欠陥を発生させるので、通常は動作電圧の上昇やリーク電流の原因となり、その上昇の度合いができた膜によって違うと言う現象が起こり、これも特に電子デバイスで問題になってくる。
この他にも、我々が発見した事実であり、既出願の特願2007−221198に詳しいが、p型化に必要な窒素ドープでZnO膜表面が荒れやすく、膜表面あれが特にMBE成長の場合、Si等の意図しない不純物の混入を招くという問題もある。根拠が明確ではないが、これもZnOにおける欠陥が発生しやすいことと関係がある可能性が高いと考えている。
本発明は、上述した課題を解決するために創案されたものであり、製造過程での条件に左右されない良質の電子デバイスとなり得るZnO系半導体素子を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、ZnO系基板上に少なくとも1層のZnO系半導体層が積層されたZnO系半導体素子であって、前記ZnO系半導体層のうち、素子の目的とする機能を発揮するアクティブ機能層がZnOと他の元素を含むZnO系化合物で構成されていることを特徴とするZnO系半導体素子である。
また、請求項2記載の発明は、ZnO系基板上に少なくとも1層のZnO系半導体層が積層されたZnO系半導体素子であって、前記ZnO系半導体層のうち、アクセプタドープ層少なくとも1層がZnOと他の元素を含むZnO系化合物で構成されていることを特徴とするZnO系半導体素子ある。
また、請求項3記載の発明は、ZnO系基板上に少なくとも1層のZnO系半導体層が積層されたZnO系半導体素子であって、前記ZnO系半導体層のうち、アクセプタドープ層の少なくとも1層及び素子の目的とする機能を発揮するアクティブ機能層とが、ZnOと他の元素を含むZnO系化合物で構成されていることを特徴とするZnO系半導体素子である。
また、請求項4記載の発明は、前記ZnOと他の元素を含むZnO系化合物は、MgZn1−YO(0<Y<1)であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のZnO系半導体素子窒素である。
本発明によれば、ZnO系半導体素子を構成する薄膜のうち、アクセプタドープ層又はアクティブ機能層のいずれか、あるいは、アクセプタドープ層及びアクティブ機能層の両方をZnO単体で構成せずに、ZnOと他の元素を含むZnO系化合物で構成することにより、製造過程でのパラメータに依存しにくい高性能なZnO系半導体素子を作製することができる。
本発明では、ZnO系半導体素子を作製する場合には、ZnO単体からなる薄膜よりも、ZnOと他の元素とが結合したZnO系化合物からなる薄膜の方が製造過程でのパラメータに依存しにくいことを見出し、特に、発光層やチャネル層等、素子の目的とする機能を発揮するアクティブ機能層(Operating Layer)や、アクセプタドープ層に用いると、最適であることを示す。ここで、ZnO系化合物は、ZnO又はZnOを含む化合物から構成されるものであり、具体例としては、ZnOの他、IIA族元素とZn、IIB族元素とZn、またはIIA族元素およびIIB族元素とZnのそれぞれの酸化物を含むものを意味する。なお、アクティブ機能層の具体的内容については後述する。
これまでの研究ではZnO系半導体(ZnO系化合物半導体)のp型化というと、ZnOのp型が研究されるのが専らであった。ZnO系半導体の代表格はCdZnOとMgZnOであるが、ナローギャップ材料のCdZnOはCdの毒性からその研究が忌避される傾向にあった。ワイドギャップ半導体のMgZnOはワイドギャップの通例の傾向としてアクセプタエネルギーの活性化エネルギーが大きくなる(すなわちホールが発生しにくくなる)こと、MgZnOは焼結体から作られることが多いため、純度があげにくいこと、以上のような理由からp型化の研究対象とはなっていなかった。
しかし、我々は、ZnO系半導体の一種であるMgZn1−YO(0<Y<1)にそれまで知られていなかった自己補償効果を低減する効果があることを見出しており、既出願の特願2007−251482号に詳しい。この内容について、再度要点を説明する。図15は、MgZnOが特に自己補償効果を低減、緩和する作用があることを示す。図15は、絶対温度12K(ケルビン)で測定された窒素ドープZnOと窒素ドープMgZnOのフォトルミネッセンス(PL)測定によるスペクトル分布を示す。PL測定は、図2(a)に示すように、ZnO基板1上に窒素ドープMgZnO層2(0≦X<1)を結晶させた構造とし、窒素ドープMgZnOについては、ZnO基板1上に窒素ドープMgZnO層2(X≠0)を結晶成長させたものを用い、窒素ドープZnOについては、窒素ドープMgZnO層の替わりに窒素ドープZnO層2(X=0)を結晶成長させたものを用いた。
また、フォトルミネッセンス測定装置は、既出願の特願2007−251482に記載した装置を用いた。簡単に説明すると、励起光源としてHe−Cdレーザを使用し、He−Cdレーザの出力は30〜32mWとした。励起光源から発生した励起光強度は、1〜10W/cm程度、試料直前の励起光出力は、250〜400μW程度となった。分光器の焦点距離は50cm、分光器の回折格子の刻線本数1200本/mm、ブレーズ波長(回折効率最大の波長)330nmである。冷凍機の冷凍温度は絶対温度10〜200ケルビンに設定可能なものを用いた。光検出器は、CCD検出器による構成で1024ch、液体窒素冷却方式である。分光器と光検出器とを含めた全体のシステムは、SPECTRUM1システム(HORIBA JOVIN YVON社製)と呼ばれるものを用いた。
測定結果は、白丸(○)で描かれている曲線が窒素ドープZnOで、他の2本の曲線が、窒素ドープMgZnOである。ZnOは、窒素ドープ濃度を2×1019cm−3に形成し、MgZnOは、Mg0.1ZnOについては窒素ドープ濃度2×1019cm−3、Mg0.11ZnOについては窒素ドープ濃度7×1018cm−3に形成して測定した。図15の横軸は発光エネルギー(単位:eV)を、縦軸はPL強度を示し、PL測定のときに通常用いられる任意単位(対数スケール)で表す。各スペクトルの形状を比較しやすくするため、各スペクトルの原点位置はずらせている。
また、図17は、図15のグラフの横軸のスケールを3.05〜3.65eVの範囲から2.1〜3.7eVの範囲に拡大した図を、図16は、図15のグラフの横軸のスケールを2.7〜3.7eVに拡大した図を表わす。図15〜図17に示されているP1、P2、P3は、各々バンド端発光を表わす。
窒素ドープZnOについては、これまでに知られているように、図15〜図17のP1に示されるバンド端発光ピークエネルギーより低エネルギー側にドナー・アクセプタペア(Donor-Acceptor Pair:DAP)と呼ばれる、アクセプタドープ時特有の発光ピークが現れる。DAP発光の位置というのは、以下のように決まる。
DAP発光のエネルギーをEDAP、最低励起エネルギーをE、ドナー準位をE、アクセプタ準位をE、ドナーとアクセプタとの距離をrDA、真空誘電率ε、比誘電率ε、電子の電荷をe、プランク定数をh、LO(Longitudinal Optical)フォノンの振動数をωLOとすると、
DAP=E−E−E+(e/4πεεDA)−(mhωLO/2π)
となる。ここで、mは0以上の整数である。
DAPの発光ピーク位置というのは、上記式のように決定されるので、通常はドナー、アクセプタの種類、およびその濃度が決まれば、決定されるものである。
3.3eVをバンド端発光領域とDAP発光領域との境界とすると、3.3eVよりも低エネルギー側にDAP発光領域が現われている。一方、図17に示されるように、DAP領域よりもさらに低エネルギー側では、エネルギーが低下するほどにPL強度が上がっていく領域が存在し、窒素ドープ特有の深い準位発光が見られる。図に示すA付近のエネルギー領域になると、ZnOでは、この深い準位発光強度が非常に大きくなる。この深い準位発光の起源は、まだ同定されていないが、欠陥由来であることはわかっており、深い準位発光が強いということは、欠陥が多く発生していることを表している。他方、MgZnOでは深い準位発光強度は、一桁以上小さくなり、MgZnOの著しい特徴が見られる。MgZnOでは、窒素ドープに伴う欠陥発生の程度が小さい。
DAP発光はPLの励起光密度を上げていくと発光ピークがブルーシフトすることが良く知られており、主にこの現象を用いて同定される。実線と破線の曲線はMgZnOのものであるが、MgZnOがワイドギャップであるため、MgZnOの曲線上で、ZnOのバンド端発光ピークP1と同じ位置にZnOのバンド端発光ピークと同じピークが少し見えている。これを見ると、窒素ドープZnOについては、3.3eVを境にしてDAP発光がZnOバンド端発光に比べて強いことがすぐにわかる。アクセプタドープ時にバンド端発光が弱まり、DAP発光が強くなるのはZnSe、GaNでも普通に見られることであり、特別異常なことではない。この事実の裏づけがあるため、ZnOでp型化を試みるのが一般的になっていた。
ところが、図15〜図17に示されるように、MgZnOでは全く振る舞いが異なる。図の破線と実線が窒素ドープMgZnOであるが、どちらも、DAP発光よりも、バンド端発光P2、P3近傍の発光の方が強い。特に実線のデータはZnOの曲線と窒素濃度が全く同じであるにも関わらず、DAP発光が非常に弱い。これはMgZnOの著しい特徴であり、自己補償効果が低減されているものと考えられる。
一方、上述したように、窒素ドープMgZnOでは、窒素ドープZnOよりも、深い準位発光強度が非常に小さくなる。これは、窒素ドープにおいて点欠陥発生がMgZnOで小さいことを示すが、アンドープMgZnOとアンドープZnOでも同じ傾向が見られる。ZnOよりもMgZnOの方がバンド近傍以外の余計な準位が少ないことを図1に示す。図1は、時間分解フォトルミネセンス(TRPL)と呼ばれるもので、外部レーザで励起した後の時間経過を横軸に、ある任意に選んだ波長のPL光強度(この場合は、ZnOとMgZnOのバンド端の強度)を縦軸に取り、PL光強度の減衰具合を示したものである、発光成分、非発光成分を見積もる時に用いられる。
図1(a)は、MgZnOのTRPLスペクトルを、図1(b)は、ZnOのTRPLスペクトルを表わす。また、図1の(a)、(b)ともに、横軸は最初のPL発光からの経過時間(単位:ns)を、縦軸はPL強度を示し、PL測定のときに通常用いられる任意単位(対数スケール)で表す。
PL強度の時間変化で、PL強度が指数関数的に減衰していることが、余計な発光準位がないことを表す。グラフ上ではPL強度の対数を取った場合、1直線状になっているものが良い。実線が測定曲線を、複数の指数関数の組み合わせでフィットした場合のフィッティング結果を示す。1直線ならば指数関数は1つだけ用いられる。図1(b)のように、ZnOでは1直線にならないが、図1(a)のように、MgZnOは1直線になる。したがって、MgZnOの方が余計な準位の発生が少なく、最適化が容易で、成長条件の許容範囲が広く、デバイス材料として適していることがわかる。また、ZnOよりもMgZnOの方が、自己補償効果の低減により、アクセプタドープによりp型化しやすいと考えられ、以下にそのことを示す。
図2(a)の構成で、窒素ドープMgZnO層2上に、Hg(水銀)からなる電極3と電極4を設けている。電極3は電極4を中心として、その電極4を囲むように環状に形成されている。電極3、4と窒素ドープZnO層2とがショットキー接触をしているが、電極3は面積が1桁以上大きく、オーミック接触と見なし得る。電極3に対して電極4が正にバイアスされているときの電圧を正としてグラフを描いたのが、図2(b)である。図2(b)は、図2(a)の構成の電流−電圧特性(IV特性)を示し、横軸が電圧(単位:V)、縦軸は電流(単位:A)を表わす。
仮に、窒素ドープMgZnO層2がn型の場合、電極4に正電圧がかかると電極側の電子に対するポテンシャルバリアを下げることになり、電子が窒素ドープMgZnO層2側から流れる。一方、窒素ドープMgZnO層2がp型の場合、電極4に正電圧をかけると正孔に対するポテンシャルバリアを上げることになり、電流は流れない。逆に電極4に負電圧をかけると正孔に対するポテンシャルバリアが下がるので電流が流れる。
したがって、窒素ドープMgZnO層2がp型化されたときの理想的な曲線は、点線で示されるSのような曲線となる。窒素ドープMgZnO層2の窒素ドープ量を1×1019程度とし、Mg組成を変化させ、X=0にして、窒素ドープZnO層2とした場合と、X=0.14にして、窒素ドープMg0.14ZnO層2とした場合とでIV特性を比較した。図中の「:N」は、窒素ドープを表す。図2(b)からわかるように、1×1019程度の窒素ドープ量があるときは、ZnOはn型のままだが、MgZnOでは、Sの曲線に近い特性、すなわちp型挙動をする。したがって、窒素ドープの活性化はMgZnOの方が起こりやすい。
次に、結晶成長温度(基板温度)と窒素濃度との関係を図3に示す。縦軸は窒素をドープしたときにMgZnOに取り込まれる窒素濃度(cm−3)を示し、横軸は成長温度(基板温度:単位ケルビン)を示す。図3に示すように、ZnO系薄膜では、+C面を用いても温度依存性があり、ドープされる窒素濃度は低温度ほど上昇する。したがって、十分窒素を取り込んで、ZnO系薄膜をp型化するには、基板温度を下げれば良いのであるが、以下のような問題が発生する。
図4及び図5のデータは、図2(a)のように、ZnO基板上に窒素ドープのMgZnO層をラジカルセルを有するMBE(Molecular Beam Epitaxy)装置によってエピタキシャル成長させて調べた。また、MgZnO層中のシリコン濃度、窒素濃度を二次イオン質量分析法(Secondary Ion Mass Spectroscopy:SIMS)で測定した。
図4(a)は、基板温度750℃で、一酸化窒素(NO)プラズマによる窒素ドープにより、ZnO(X=0)に窒素を3×1019cm−3ドープしたときの表面画像を示す。一方、図4(b)は、基板温度750℃で、一酸化窒素(NO)プラズマによる窒素ドープにより、Mg0.1ZnOに窒素を1×1019cm−3ドープしたときの表面画像を示す。これらの表面画像は、AFM(原子間力顕微鏡)を用い、図4(a)、(b)ともにスキャン範囲は10μm四方で、図中の数字はRMS(Root Mean Square)値である。
これらを比較すれば、わかるように、窒素ドープZnOは低温度で表面荒れを起こしてしまう。ところが、同じ低温での窒素ドープであっても、Mg0.1ZnOの方には表面荒れが発生しておらず、アクセプタドープする場合、平坦な膜を作製する上でも、Mgの成分が含まれたMgZnOの方が好ましい。
ZnO系半導体において、表面荒れは意図しない不純物ドープの原因になり、p型化の障害になることを図5に示す。既出願の特願2007−221198でも説明したが、不純物のうち、特に、Siについては、ラジカルセル内の放電管の構成元素であり、最も多く混入するので、図4では、Siを例にとっている。図5(a)は、図4(a)のZnO層中における窒素ドープ濃度とSiの混入濃度を示す。一方、図5(b)は、図4(b)のMg0.1ZnO層中における窒素ドープ濃度とSiの混入濃度を示す。
図5(a)、(b)ともに、左側縦軸がSi濃度又はN濃度、右側縦軸がZnO二次イオン強度を示し、横軸が深さ(μm)を示す。図中の縦の点線がZnO基板とMgZnO薄膜との境界を示し、窒素濃度やシリコン濃度が上昇している領域がZnO層又はMg0.1ZnO層、0近くまで落ちている領域がZnO基板である。
この図からわかるように、図4(a)に示された表面平坦性が悪い(表面の荒れた)ZnO層の方が薄膜中のSi混入濃度が高くなっていることがわかる。Siは取り込まれると、ドナーとして働くので、Si混入濃度が高くなると、p型化が困難になる。したがって、膜表面を平坦化し、不純物の取り込みを防ぐ観点からもMgの成分が含まれたMgZnOの方が好ましい。
次に、TRPL以外にも、MgZnOを用いると、結晶欠陥密度が減少することを説明する。結晶欠陥密度は、上記表面平坦性の問題と同様、意図しない不純物混入の原因になるので、できるだけ低下させておくことが望ましい。
図6は、図6(b)の右下に描かれているように、ZnO基板上にZnO薄膜を成長させて、その表面をAFMで観察したものである。一方、図7は、図7(b)の右下に描かれているように、ZnO基板上にGa(ガリウム)ドープのMgZnO薄膜を成長させ、さらにその上にZnO薄膜を形成して、ZnO基板/GaドープMgZnO/ZnOという積層構造にして、ZnO薄膜表面をAFMで観察したものである。
各画像の左上に示されている数字は、AFMの視野範囲を示すもので、20μm四方、又は1μm四方となっている。いずれの場合も、成長温度は800℃とした。また、これらの各構成で、PL(フォトルミネッセンス)測定を行った結果を示すのが、図6(c)と図7(c)である。横軸は波長(nm)を、縦軸は発光強度(任意単位)を示す。このスペクトル曲線のうち、測定曲線Mは絶対温度12Kでの結果、室温での結果がFである。また、IQEは、内部量子効率を表す。(a)の図で、黒い点が見えるが、これが、転位欠陥が表面に現われたものであり、測定の結果、図6の場合では、欠陥密度は3.6×10cm−2、図7の場合では、欠陥密度は6.1×10cm−2となった。図6と図7とを比較すればわかるように、ZnO薄膜の結晶成長の下地としてMgZnOを用いた方が、結晶欠陥密度が低下するとともに、内部量子効率が6.8%から20%と大幅に上昇していることがわかる。
図8は、(b)に示すように、ZnO基板/GaドープMgZnO/MQW層の積層構造を、成長温度870℃で形成したときのMQW層表面の状態を示す。ここで、MQW層は、膜厚2nmのアンドープZnO膜と膜厚2nmのアンドープMgZnO膜とを交互に10周期積層した積層体で構成した。前述したように、AFMを用い、20μm四方の視野と1μm四方の視野でMQW層表面撮影した。結晶欠陥密度は、7.2×10cm−2となった。また、PL測定結果を(c)に示しているが、内部量子効率(IQE)は、36%であった。PL測定の結果に現われているように、MQW(多重量子井戸構造)を用いることによって、内部量子効率は、図7の場合よりも、大きく向上している。
図9は、(b)に示すように、ZnO基板/アンドープMgZnOを成長温度870℃で形成して、MgZnOの表面をAFMで撮影したものである。結晶欠陥密度は、7.4×10cm−2となった。一方、図10は、図9のアンドープMgZnO膜の上にアンドープZnO膜を成長温度870℃で形成したもので、同様に、アンドープZnO膜の表面をAFMで撮影した。結晶欠陥密度は、3.2×10cm−2となった。
他方、図11は、下地にMgZnOを用いずに、成長温度870℃で、ZnO基板上に直接アンドープZnO膜を結晶成長させて、ZnO基板/アンドープZnOとした場合のアンドープZnO膜表面におけるAFM測定画像を示す。この場合、欠陥密度は、1.2×10cm−2となった。
図9〜図11の測定でわかるように、比較的高温で結晶成長させた場合、ZnO基板上に結晶成長させたMgZnO膜の欠陥が一番小さく、ZnO基板上にZnOのみを結晶成長させると、欠陥密度は2桁の増加を示している。また、下地にMgZnOを用いると、MgZnO上のZnO膜の欠陥密度増大が抑制されることがわかる。
図12(a)は、成長温度748℃で、窒素ドープMg0.1ZnOをZnO基板上に形成し、その表面をAFMで測定した画像である。一方、図12(b)は、成長温度790℃で、ZnO基板上に、膜厚10nmの窒素ドープZnOと膜厚10nmの窒素ドープMg0.08ZnOを交互に20周期積層した場合の窒素ドープZnO表面をAFMで測定した画像である。このように、積層体にZnOを繰り返して用いると、ZnO表面の荒れが、最上層にまで影響を与えるために、欠陥密度は増加する。しかし、MgZnOを下地にしているために、欠陥密度の増加はかなり抑制されている。
上記のように、MgZnO層を用いることによって、MgZnO層よりも後に形成する上層の結晶欠陥を減少させることができ、MgZnO層上に形成される薄膜のフォトルミネッセンス強度が飛躍的に増大するため、発光素子にとっても発光効率が良くなる。
以上説明したように、最適化が容易で、成長条件の許容範囲が広く、デバイス材料として適している点、アクセプタドープによりp型化しやすい点、膜表面の荒れが少ない点、結晶欠陥を減少させる効果がある点等から、ZnO結晶単体を用いずに、Mg等の成分を含んだZnO系化合物で、デバイスの機能的な働きをするアクティブ機能層を形成した方がプロセス安定性に有利である。
ここで、アクティブ機能層とは、受動的ではなく、能動的な働きをする層をいい、例えば、以下のような構成のものを指すものとする。第一に、LED(発光ダイオード)やLD(レーザダイオード)における発光層又は発光領域部分である。これには、発光領域がpn接合により形成されている場合のp型層とn型層が相当する。また、MQW(Multi Quantum Well)活性層又はSQW(Single Quantum Well)活性層のように、量子井戸構造を有する積層体等も含まれる。第二に、MOS(Metal Oxide Semiconductor)構造やMIS(Metal Insulator Semiconductor)構造等で構成される電界効果トランジスタ(FET)において、反転分布を起こすチャネル層である。第三に、フォトダイオード(PD)における吸光層や整流作用を発生させる層である。例えば、金属と半導体層とを接触させたときには、ショットキー接合となるが、このときの半導体層が相当する。以上述べたアクティブ機能層に、Mg成分が含まれたMgZnOを用い、ZnO結晶単体は用いない構造を形成する。TFTでチャネル部分をMgZnOにする。
図13は、アクティブ機能層にMgZnOを用いたLED(発光ダイオード)構造の一例を示す。ZnO基板11上にn型MgZnO層12、活性層13、p型MgZnO層14が形成されている。活性層13は、MgZnO単層で構成されるか、又は、MgZnO層(0<Y<1)を、MgZnO層よりもバンドギャップの大きなMgZnO層(0<Z<1、Y<Z)で挟んだ多重量子井戸構造(MQW)で構成される。また、p型MgZnO層14上には、Ni膜15aとAu膜15bとで形成されたp電極15が、ZnO基板11の裏面には、Ti膜16aとAu膜16bとで形成されたn電極16が設けられる。p電極15上にはNi膜17aとAu膜17bとで構成されたワイヤーボンディング用電極17が形成されている。ここで、アクティブ機能層は、発光層となる活性層13が相当する。
図14は、アクティブ機能層にMgZnOを用いたフォトダイオード構造の一例を示す。ZnO基板21上にn型MgZnO層22、有機物電極であるPEDOT:PSS23が形成されている。PEDOT:PSS23の膜厚は、例えば50nm程度形成され、PEDOT:PSS23上にはワイヤーボンディング用のAu膜24が形成されている。一方、ZnO基板21の裏面には、Ti膜25aとAu膜25bからなる電極25が形成されている。ここで、PEDOT:PSS23とn型MgZnO層22とはショットキー接合状態となっているため、n型MgZnO層22は吸光層や整流作用を発生させる層の役割を果たし、これがアクティブ機能層に該当する。
MgZnOとZnOのPL発光強度の時間経過に伴う変化を示す図である。 MgZnOとZnOのIV特性を比較する図である。 窒素濃度の成長温度依存性を示す図である。 窒素添加時のMgZnOとZnOの表面形状を示す図である。 図4に示す表面平坦性とSiの混入濃度との関連性を示す図である。 ZnO基板/ZnOと積層した場合の表面状態とPL発光スペクトルを示す図である。 ZnO基板/MgZnO/ZnOと積層した場合の表面状態とPL発光スペクトルを示す図である。 ZnO基板/MgZnO/MQW層と積層した場合の表面状態とPL発光スペクトルを示す図である。 ZnO基板/MgZnOと積層した場合の表面状態を示す図である。 ZnO基板/MgZnO/ZnOと積層した場合の表面状態を示す図である。 ZnO基板/ZnOと積層した場合の表面状態を示す図である。 MgZnO単層と、ZnO/MgZnOの多層膜との表面状態を示す図である。 MgZnO層を用いたLED構造の一例を示す図である。 MgZnO層を用いたPD構造の一例を示す図である。 窒素が添加されたMgZnOとZnOのPL発光スペクトルを示す図である。 窒素が添加されたMgZnOとZnOのPL発光スペクトルを示す図である。 窒素が添加されたMgZnOとZnOのPL発光スペクトルを示す図である。
符号の説明
1 ZnO基板
2 窒素ドープMgZnO層
3 電極
4 電極

Claims (4)

  1. ZnO系基板上に少なくとも1層のZnO系半導体層が積層されたZnO系半導体素子であって、
    前記ZnO系半導体層のうち、素子の目的とする機能を発揮するアクティブ機能層がZnOと他の元素を含むZnO系化合物で構成されていることを特徴とするZnO系半導体素子。
  2. ZnO系基板上に少なくとも1層のZnO系半導体層が積層されたZnO系半導体素子であって、
    前記ZnO系半導体層のうち、アクセプタドープ層の少なくとも1層がZnOと他の元素を含むZnO系化合物で構成されていることを特徴とするZnO系半導体素子。
  3. ZnO系基板上に少なくとも1層のZnO系半導体層が積層されたZnO系半導体素子であって、
    前記ZnO系半導体層のうち、アクセプタドープ層の少なくとも1層及び素子の目的とする機能を発揮するアクティブ機能層とが、ZnOと他の元素を含むZnO系化合物で構成されていることを特徴とするZnO系半導体素子。
  4. 前記ZnOと他の元素を含むZnO系化合物は、MgZn1−YO(0<Y<1)であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のZnO系半導体素子。
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