JP2009200001A - 有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法、有機エレクトロルミネセンス素子、有機エレクトロルミネセンス表示装置及び成膜装置 - Google Patents

有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法、有機エレクトロルミネセンス素子、有機エレクトロルミネセンス表示装置及び成膜装置 Download PDF

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Abstract

【課題】減圧雰囲気下で蒸着源にプラズマを照射することにより成膜を行う手法を用いて作製された有機エレクトロルミネセンス素子の特性、なかでも発光効率を向上することができる有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法、有機エレクトロルミネセンス素子、有機エレクトロルミネセンス表示装置及び成膜装置を提供する。
【解決手段】上部電極側から発光する有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法であって、酸素を含む減圧雰囲気下で蒸着源にプラズマを照射して基板上に透明導電膜層を形成する透明導電膜層形成工程が、プラズマ導入部から酸素導入部までの距離がプラズマ導入部から蒸着源までの距離以上であるという第一条件と、基板から酸素導入部までの距離が基板から蒸着源までの距離以上であるという第二条件とを満たした状態で行われる有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法、有機エレクトロルミネセンス素子、有機エレクトロルミネセンス表示装置及び成膜装置に関する。より詳しくは、透明導電膜及び保護膜の少なくとも一方を有する有機エレクトロルミネセンス素子に好適な有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法、有機エレクトロルミネセンス素子、有機エレクトロルミネセンス表示装置及び成膜装置に関するものである。
有機エレクトロルミネセンス(Electroluminescence;以下、「EL」ともいう。)素子は、少なくとも一方が透光性を有する一対の電極間に、有機化合物からなる発光層と、必要に応じてホ−ル注入輸送層及び電子注入輸送層等の電荷輸送層とを挟持してなる構造を有するものである。このような有機エレクトロルミネセンス素子は、低電圧駆動及び高輝度の発光が可能であるといった特長を有することから、その研究開発が盛んに行われている。
有機エレクトロルミネセンス素子を備える有機エレクトロルミネセンス表示装置は、素子の駆動方法の違いにより、単純マトリクス方式とアクティブマトリクス方式とがある。単純マトリクス方式は、デューティー比の増加に応じて各画素の瞬間発光輝度を高くする必要があるため、大型パネルに用いた場合には消費電力の増大を招いてしまう。このため、特に大型パネルでは、アクティブマトリクス方式が主流になりつつある。
アクティブマトリクス方式は、マトリクス状に配置された各画素に設けられる薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor;以下、「TFT」ともいう。)を制御信号でONとOFFとを切り換えることにより、各々の有機EL素子の発光状態を制御し、画像表示する方式である。しかしながら、アクティブマトリクス方式に必須のTFTは光を透過しないポリシリコン、アモルファスシリコン等で形成され、配線等も光を透過しない金属で形成されるため、従来の基板側から発光を取り出す方式(ボトムエミッション方式)では、画素面積に対する発光面積の割合(開口率)が小さくなる。とりわけ、画素毎の素子特性のばらつきを抑え、かつEL材料の劣化によるパネル表示輝度の低下をより少なくするうえで有機EL素子を用いた表示パネルに適しているとされる電流駆動方式を採用した場合では、画素毎にTFTを4つ程度配置する必要があり、より単純だが画素毎の素子特性のばらつき抑制等で劣る電圧駆動方式において必要なTFT(2つ)の数の倍となるため、開口率が更に小さくなってしまう。
これを解決する手段として、基板と反対側(上部の電極側)から発光を取り出す方式(トップエミッション方式)が考案されている。トップエミッション方式では、上部の電極を透光性材料で形成する必要があり、通常では、インジウム錫酸化物(Tin−doped Indium Oxide;以下、「ITO」ともいう。)やインジウム亜鉛酸化物(Zinc−doped Indium Oxide;以下、「IZO」ともいう。)等が用いられる。一般的に、ITO膜やIZO膜の形成にはスパッタ法が用いられる。しかしながら、スパッタ法は、成膜時において真空チャンバ内に高エネルギー粒子を発生させるため、先に形成されている有機層や電子注入層等に損傷を与え、有機EL素子の特性を劣化させてしまうという点で改善の余地があった。
そこで、有機層や電子注入層等に損傷を与えない成膜手法として、減圧雰囲気下で蒸着源にプラズマを照射することにより成膜を行うイオンプレーティング法が考案されている。イオンプレーティング法に関連した技術としては、電子注入層を形成した基板を真空雰囲気下で搬送した後、透明電極層をイオンプレーティング装置で形成する有機EL装置の製造方法技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、透明導電膜を酸素を遮断した環境下で行うイオンプレーティング法によって形成する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。更に、基板上に薄膜を形成する成膜領域と、基板を待機させる待機領域と、成膜領域と待機領域の間に設けられたプラズマ遮蔽手段と、成膜領域と待機領域とを連通させる連通部とを具備している薄膜形成装置が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
特開2005−222725号公報 特開2005−123124号公報 特開2005−330509号公報
本発明者らは、減圧雰囲気下で蒸着源にプラズマを照射することにより成膜を行う手法として、イオンプレーティング法を用いた成膜について検討したところ、従来のイオンプレーティング装置を用いて形成された(上部)透明電極を備えるトップエミッション型有機エレクトロルミネセンス素子は、真空蒸着法で電極形成したボトムエミッション型有機エレクトロルミネセンス素子と比較して、同一輝度の発光を得るための電圧が高く、発光効率が低いことが判明した。
また、有機エレクトロルミネセンス素子に含まれる保護膜として、イオンプレーティング法により酸素を含む絶縁層を形成した場合にも、上記透明電極と同様に、発光効率が低くなることが判明した。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、減圧雰囲気下で蒸着源にプラズマを照射することにより成膜を行う手法を用いて作製された有機エレクトロルミネセンス素子の特性、なかでも発光効率を向上することができる有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法、有機エレクトロルミネセンス素子、有機エレクトロルミネセンス表示装置及び成膜装置を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、減圧雰囲気下で蒸着源にプラズマを照射することにより成膜を行う手法を用いて作製された有機エレクトロルミネセンス素子の特性、なかでも発光効率を向上することができる有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法、有機エレクトロルミネセンス素子、有機エレクトロルミネセンス表示装置及び成膜装置について種々検討したところ、上記手法を用いる成膜装置の一つであるイオンプレーティング装置の構造について着目した。
ここで、図を参照して従来の有機エレクトロルミネセンス素子の製造に用いられるイオンプレーティング装置の構造について説明する。図4は、従来のイオンプレーティング装置の構造を示す模式図であり、(a)は断面図であり、(b)は平面図である。図4(a)及び(b)に示すように、従来のイオンプレーティング装置60では、通常、酸化物膜を成膜するための酸素等の反応性ガスは、プラズマ12を照射するプラズマガン13のプラズマ導入部Qと蒸着源15との間で、かつ蒸着源15と被処理基板101との間に配置されたガス配管11の先端部にある酸素導入位置である酸素導入部Rから成膜室10内に導入される。これは、蒸着源15を照射するプラズマ12のエネルギーを効率よく利用し、酸素等の反応性ガスを効果的に活性化及び解離させることで、容易に酸化物膜を形成するためである。
有機エレクトロルミネセンス素子に用いられる有機層や低仕事関数金属は酸化されることで、容易に有機エレクトロルミネセンス素子の発光特性等の特性劣化を引き起こすことが知られているが、本発明者らの検討において、プラズマが無い状態で成膜に必要とされる量の酸素に有機エレクトロルミネセンス素子を曝しても、有機エレクトロルミネセンス素子の特性劣化が生じないことが判明した。つまり、減圧雰囲気下で蒸着源にプラズマを照射することにより成膜を行う手法を用いて作製された有機エレクトロルミネセンス素子の特性劣化は、プラズマによって活性化された高エネルギーの酸素によって引き起こされることを見いだした。
そして、更に検討したところ、プラズマ導入部から酸素導入部までの距離がプラズマ導入部から蒸着源までの距離以上であるという第一条件と、基板から酸素導入部までの距離が基板から蒸着源までの距離以上であるという第二条件とを満たした状態で有機層や低仕事関数金属上に、透明導電膜層や、保護膜として酸素を含む絶縁層を成膜することにより、プラズマによって活性化された高エネルギーを有する酸素の過剰な発生が抑制され、減圧雰囲気下で蒸着源にプラズマを照射することにより成膜を行う手法を用いて作製された有機エレクトロルミネセンス素子の特性劣化を低減することができることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
すなわち、本発明は、基板上に、第一電極と、少なくとも発光層を含む有機層と、第二電極とが基板側からこの順に積層され、第二電極側から発光する有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法であって、上記第二電極は、少なくとも透明導電膜層を含み、上記製造方法は、酸素を含む減圧雰囲気下で蒸着源にプラズマを照射して基板上に透明導電膜層を形成する透明導電膜層形成工程を含み、上記透明導電膜層形成工程は、プラズマ導入部から酸素導入部までの距離がプラズマ導入部から蒸着源までの距離以上であるという第一条件と、基板から酸素導入部までの距離が基板から蒸着源までの距離以上であるという第二条件とを満たした状態で行われる有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法である。
これにより、透明導電膜層の成膜時に蒸着源に照射されるプラズマによって活性化された高エネルギーを有する酸素が過剰に発生することを抑制し、有機エレクトロルミネセンス素子の特性、なかでも発光効率を向上することができる。これは、プラズマ導入部から酸素導入部までの距離がプラズマ導入部から蒸着源までの距離以上であるという第一条件と、基板から酸素導入部までの距離が基板から蒸着源までの距離以上であるという第二条件とを満たすことにより、蒸着源に照射されるプラズマの影響を受ける酸素の量が低減されるとともに、活性化され高エネルギーを有する酸素の基板へ到達する量が抑制されるためであると考えられる。また、基板から酸素導入部までの距離を基板から蒸着源までの距離以上とした場合、基板から酸素導入部までの距離を成膜条件における粒子の平均自由工程(例えば、成膜条件が0.1Pa、室温の場合の酸素分子の平均自由工程は略10cm)に対してより大きくすることが可能となり、基板に到達する活性化され高エネルギーを有する酸素、電子、イオン等の量を抑制することができると考えられる。このように、酸素導入部は、プラズマ導入部に対して蒸着源より遠い位置で、かつ基板に対して蒸着源より遠い位置に配置されることがより好ましい。また、酸素導入部は蒸着源上に配置されないことが好ましい。
本発明はまた、基板上に、第一電極と、少なくとも発光層を含む有機層と、第二電極と、保護膜とが基板側からこの順に積層された構造の有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法であって、上記保護膜は、少なくとも絶縁層を含み、上記製造方法は、酸素を含む減圧雰囲気下で蒸着源にプラズマを照射して基板上に絶縁層を形成する絶縁層形成工程を含み、上記絶縁層形成工程は、プラズマ導入部から酸素導入部までの距離がプラズマ導入部から蒸着源までの距離以上であるという第一条件と、基板から酸素導入部までの距離が基板から蒸着源までの距離以上であるという第二条件とを満たした状態で行われる有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法である。
これにより、保護膜として、前述の透明導電膜と同様の課題を有する酸素を含む絶縁層を成膜したとしても、蒸着源に照射されるプラズマによって活性化された高エネルギーを有する酸素に起因する有機エレクトロルミネセンス素子の特性劣化を低減し、有機エレクトロルミネセンス素子の特性を向上させることができる。すなわち、絶縁層形成工程において、プラズマ導入部から酸素導入部までの距離がプラズマ導入部から蒸着源までの距離以上であるという第一条件と、基板から酸素導入部までの距離が基板から蒸着源までの距離以上であるという第二条件とを満たすことにより、絶縁層成膜時に蒸着源に照射されるプラズマによって活性化された高エネルギーを有する酸素に起因する有機エレクトロルミネセンス素子の特性劣化を低減し、有機エレクトロルミネセンス素子の特性を向上させることができる。
なお、本明細書において、保護膜とは、有機層に含まれる有機物や陰極に含まれる低仕事関数金属等の化学的に不安定な物質を、水分や酸素等による劣化から保護することを目的に形成される膜である。また、上記有機層は、単層であってもよいし、積層であってもよい。すなわち、少なくとも発光層を含む単層又は複数層の有機層であってもよい。
本発明の有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法は、それぞれ上記工程を有するものである限り、その他の工程により特に限定されるものではない。
本発明の半導体装置の製造方法における好ましい態様について以下に詳しく説明する。なお、以下に示す態様は、適宜組み合わせて用いてもよい。
上記絶縁層は、上記透明導電膜層を有する有機エレクトロルミネセンス素子の保護膜として形成されることが好ましい。すなわち、本発明は、基板上に、第一電極と、少なくとも発光層を含む有機層と、第二電極と、保護膜とが基板側からこの順に積層され、第二電極側から発光する有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法であって、上記第二電極は、少なくとも透明導電膜層を含み、上記保護膜は、少なくとも絶縁層を含み、上記製造方法は、酸素を含む減圧雰囲気下で蒸着源にプラズマを照射して基板上に透明導電膜層を形成する透明導電膜層形成工程と、酸素を含む減圧雰囲気下で蒸着源にプラズマを照射して基板上に絶縁層を形成する絶縁層形成工程とを含み、上記透明導電膜層形成工程及び絶縁層形成工程は、プラズマ導入部から酸素導入部までの距離がプラズマ導入部から蒸着源までの距離以上であるという第一条件と、基板から酸素導入部までの距離が基板から蒸着源までの距離以上であるという第二条件とを満たした状態で行われる有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法であることが好ましい。
なお、本明細書において、プラズマ導入部から蒸着源までの距離は、プラズマ導入部の中心から蒸着源表面の中心までの距離であることが好ましい。また、プラズマ導入部の中心とは、プラズマ導入部の形状には依らず、ある大きさを有するプラズマ導入部の略中央となる位置であることが好ましい。同様に、蒸着源表面の中心とは、蒸着源の形状には依らず、ある大きさを有する蒸着源表面の略中央となる位置であることが好ましい。更に、プラズマ導入部から蒸着源までの距離は、プラズマ導入部の中心から蒸着源のプラズマが照射される部分の中心までの距離であってもよく、蒸着源のプラズマが照射される部分の中心とは、プラズマが照射される部分の形状には依らず、ある大きさを有する蒸着源のプラズマが照射される部分の略中央となる位置であることが好ましい。
また、本明細書において、酸素導入部は、酸素導入位置であってもよく、より具体的には、例えば、酸素を導入するガス配管の先端部(先端の開口部)であってもよいし、酸素を導入するガス配管の先端部以外の部分(先端以外の開口部)であってもよいし、成膜室の壁面に設けられた開口部であってもよい。更に、酸素導入部は一つであってもよいし、複数設けてもよい。酸素導入部を複数設けた場合は、全ての酸素導入部が、第一条件及び第二条件を満たすことが好ましい。
また、本明細書において、プラズマ導入部から酸素導入部までの距離は、プラズマ導入部の中心から酸素導入部の中心までの距離であることが好ましい。また、酸素導入部の中心とは、酸素導入部の形状には依らず、ある大きさを有する酸素導入部の略中央となる位置であることが好ましい。
また、酸素を導入するガス配管は、蒸着源上に配置されないことが好ましい。これにより、酸素を導入するガス配管がプラズマに晒されることを防止することができるため、プラズマの不安定化及び異常放電の発生を抑制するとともに、ガス配管に膜が付着することを防止し、ガス配管に付着した膜が剥離することによる膜質への影響を回避することができる。
また、上記第一条件において、プラズマ導入部から酸素導入部までの距離は、プラズマ導入部から蒸着源までの距離の2倍以下であることが好ましい。同様に、上記第二条件において、基板から酸素導入部までの距離は、基板から蒸着源までの距離の1.5倍以下であることが好ましい。これにより、過大な装置を必要とすることなく膜質分布に優れた成膜が可能となり、かつ蒸着源に照射されるプラズマの影響を受ける酸素の量が低減するとともに、効率よく酸素を活性化及び解離させることができるため、蒸着源に照射されるプラズマによって活性化された高エネルギーを有する酸素の過剰な発生を抑制しながら効率よく成膜を行うことができる。
上記透明導電膜層は、上述したように、酸素を含む雰囲気下で形成することから、酸素を含むことが好ましく、より具体的には、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、アルミニウム亜鉛酸化物、ガリウム亜鉛酸化物、インジウムタングステン酸化物及び錫酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一つの金属酸化物を含むことが好ましい。これにより、トップエミッション型有機エレクトロルミネセンス素子に好適な透光性及び導電性を備えた透明導電膜層を形成することができる。なお、透明導電膜層は、単層であってもよいし、上記金属酸化物を一種あるいは複数種含む積層であってもよい。
上記絶縁層は、上述したように、酸素を含む雰囲気下で形成することから、酸素を含むことが好ましく、より具体的には、ケイ素、アルミニウム、チタン及びタンタルからなる群より選ばれる少なくとも一つの物質の酸化物及び窒素酸化物の少なくとも一方を含むことが好ましい。これにより、トップエミッション型有機エレクトロルミネセンス素子に好適な透明な絶縁層を形成することができる。酸化物及び窒素酸化物の例としては、SiO、SiON、Al、AlON、TiO、TiON、Ta、TaON等が挙げられる。なお、絶縁層は、単層であってもよいし、酸化物及び窒素酸化物を一種あるいは複数種含む積層であってもよいし、他の無機絶縁膜材料や樹脂材料等との積層であってもよい。上記酸化物及び/又は窒素酸化物を用いて形成した絶縁層は透明膜であり、トップエミッション型有機エレクトロルミネセンス素子において好適に用いられるが、ボトムエミッション型有機エレクトロルミネセンス素子においても用いることができる。
上記酸素導入部は、基板までの距離が酸素分子の平均自由工程以上となる領域に配置されることが好ましい。これにより、蒸着源に照射されるプラズマによって活性化された高エネルギーを有する酸素、電子、イオン等が基板に到達する量を低減することができるため、有機エレクトロルミネセンス素子の特性劣化をより確実に低減し、有機エレクトロルミネセンス素子の特性を向上させることができる。なお、平均自由工程は、圧力、温度等の成膜条件により変動するので、上記酸素導入部は、成膜条件に基づいて、基板までの距離が酸素分子の平均自由工程以上となる領域に配置されることがより好ましい。
上記酸素導入部は、蒸着源よりも基板側に配置されないことが好ましい。これにより、過大な装置を必要とすることなく、蒸着源に照射されるプラズマによって活性化された高エネルギーを有する酸素の過剰な発生を抑制しながら効率よく成膜を行うことができる。
本発明はまた、成膜室と、成膜室内に酸素を導入する酸素導入部と、成膜室内にプラズマを導入するプラズマ導入部と、蒸着源が装填される蒸着源装填容器とを備えた成膜装置であって、上記成膜装置は、プラズマ導入部から酸素導入部までの距離がプラズマ導入部から蒸着源までの距離以上であるという第一条件と、基板から酸素導入部までの距離が基板から蒸着源までの距離以上であるという第二条件とを満たすように酸素導入部が配置される成膜装置でもある。これにより、蒸着源に照射されるプラズマによって活性化された高エネルギーの酸素の過剰な発生を抑制した条件で成膜を行うことができるため、本発明の有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法に好適に用いることができる。なお、本発明の成膜装置は、イオンプレーティング装置であってもよい。
本発明の成膜装置の構成としては、上述の構成要素を必須として形成されるものである限り、その他の構成要素を含んでいても含んでいなくてもよく、特に限定されるものではない。
本発明の成膜装置における好ましい形態について以下に詳しく説明する。なお、以下に示す各種の形態は、適宜組み合わせて用いてもよい。
本発明の製造方法と同様の観点から、上記酸素導入部は、基板までの距離が酸素分子の平均自由工程以上となる領域に配置されることが好ましい。また、上記酸素導入部は、蒸着源よりも基板側に配置されないことが好ましい。
なお、これらの形態の他、本発明の有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法において説明した各種の形態についても、本発明の成膜装置に適宜適用することができる。
本発明は更に、本発明の成膜装置によって形成された透明導電膜層及び絶縁層の少なくとも一方を有する有機エレクトロルミネセンス素子でもある。これにより、発光効率に優れた有機エレクトロルミネセンス素子を実現することができる。
本発明はそして、本発明の有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法により製造された有機エレクトロルミネセンス素子、又は、本発明の成膜装置によって形成された透明導電膜層及び絶縁層の少なくとも一方を有する有機エレクトロルミネセンス素子を備える有機エレクトロルミネセンス表示装置でもある。これにより、高精細で明るい表示が可能な有機エレクトロルミネセンス表示装置を実現することができる。また、画素ごとの輝度のばらつきが少ない、高品位な表示を得ることができる。更に、絶縁層を形成して保護膜とした場合、水分や酸素等に起因する有機エレクトロルミネセンス素子の特性劣化を抑制することができるため、高い信頼性を有する有機エレクトロルミネセンス表示装置を実現することができる。
本発明の有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法によれば、酸素を含む減圧雰囲気下で蒸着源にプラズマを照射して基板上に透明導電膜層を形成する透明導電膜層形成工程が第一条件及び第二条件を満たした状態で行われることにより、プラズマにより活性化され高エネルギーを有する酸素の被処理基板へ到達する量が抑制されるため、被成膜部材への損傷を低減することができる。これにより、減圧雰囲気下で蒸着源にプラズマを照射することにより成膜を行う手法を用いて作製された有機エレクトロルミネセンス素子の特性、なかでも発光効率を向上することができる。同様にして、酸素を含む減圧雰囲気下で蒸着源にプラズマを照射して基板上に絶縁層を形成する絶縁層形成工程においても、被成膜部材への損傷を低減し、減圧雰囲気下で蒸着源にプラズマを照射することにより成膜を行う手法を用いて作製された有機エレクトロルミネセンス素子の特性、なかでも発光効率を向上することができる。本発明により形成された透明導電膜層及び絶縁層は、例えば、トップエミッション型有機エレクトロルミネセンス素子の上部電極や保護膜等に好適に用いることができるものである。
以下に本発明の実施形態を掲げ、図面を参照して本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。
(実施形態1)
本発明に係る減圧雰囲気下の成膜室内で蒸着源にプラズマを照射して膜材料を蒸発させることにより被処理基板に成膜を行う手法に用いる実施形態1の成膜装置(イオンプレーティング装置)について、図1を参照して説明する。図1は実施形態1のイオンプレーティング装置の構造を示す模式図であり、(a)は断面図であり、(b)は平面図である。図1(a)及び(b)に示すように、本実施形態のイオンプレーティング装置50は、成膜室10内の下方に蒸着源15を、成膜室10内の上方に被処理基板(基板)101を配置し、蒸着源15を照射するプラズマ12は蒸着源15と被処理基板101との間で成膜室10内の側壁部に取り付けられたプラズマガン13のプラズマ導入部Qより射出される。プラズマ導入部Qから射出されたプラズマ12は蒸着源15を照射し、膜材料を蒸発又は昇華させることで蒸着源15上方に配置した被処理基板101に膜堆積を行う。蒸着源15は、銅等で作製された蒸着源装填容器であるハース14内に装填され、透明導電膜層用の蒸着源15としては、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、アルミニウム亜鉛酸化物(AZO)、ガリウム亜鉛酸化物(GZO)、インジウムタングステン酸化物(IWO)、錫酸化物(SnO)等が用いられ、保護膜である絶縁層の蒸着源15としては、SiO、SiON、Al、AlON、TiO、TiON、Ta、TaON等が用いられる。蒸着源15は一般的には焼結体が用いられるが、本発明はこれに何ら制限されるものではなく、粉末状、粒状、ペレット状等の形態でも用いることができる。プラズマ12生成のためにプラズマガン13に導入されるガスとしてはArガスが用いられ、酸化物等の酸素を含んだ膜を成膜するためには別途反応させるための酸素をガス配管11の先端部にある酸素導入位置である酸素導入部Rから成膜室10内に導入する。酸素導入部Rは、蒸着源15上に配置されないことが好ましく、酸素を導入するガス配管11も、蒸着源15上に配置されないことがより好ましい。これにより、酸素を導入するガス配管11がプラズマ12に晒されることを防止することができるため、プラズマ12の不安定化及び異常放電の発生を抑制するとともに、ガス配管11に膜が付着することを防止し、ガス配管11に付着した膜が剥離することによる膜質への影響を回避することができる。
なお、図4に示すように、従来のイオンプレーティング装置60においては、蒸着源15に照射するプラズマ12のエネルギーを効率よく利用し、酸素等の反応性ガスを効果的に活性化及び解離させることで、容易に酸化物膜を形成するべく、酸素導入部Rは、蒸着源15と被処理基板101との間で、かつ蒸着源15とプラズマ導入部Qとの間に配置される。また、酸素導入部Rは、蒸着源15と被処理基板101との間又は蒸着源15とプラズマ導入部Qとの間に配置されることもある。
一方、本実施形態のイオンプレーティング装置50においては、蒸着源15に照射されるプラズマ12の影響を受ける酸素の量を低減するとともに、活性化され高エネルギーを有する酸素の被処理基板101へ到達する量を抑制することで、減圧雰囲気下で蒸着源15にプラズマ12を照射することにより成膜を行う手法を用いて作製された有機エレクトロルミネセンス素子の特性、なかでも発光効率を向上するべく、プラズマ導入部Qの中心から酸素導入部Rの中心までの距離(k1)がプラズマ導入部Qの中心から蒸着源15表面の中心Pまでの距離(k2)以上で、かつ被処理基板101から酸素導入部Rの中心までの距離(d1)が被処理基板101から蒸着源15までの距離(d2)以上になるように酸素導入部Rを配置した。
形成される透明導電膜層は、ITO膜、IZO膜、AZO膜、GZO膜、IWO膜からなる群より選ばれる少なくとも一つの膜が用いられ、単層であってもよいし、上記膜を一種あるいは複数種含む積層であってもよい。
また、酸素を含む絶縁層の形成工程においても、少なくとも酸素の導入において、蒸着源15に照射されるプラズマ12の影響を受ける酸素の量を低減するとともに、活性化され高エネルギーを有する酸素の基板101へ到達する量を抑制することで、減圧雰囲気下で蒸着源15にプラズマ12を照射することにより成膜を行う手法を用いて作製された有機エレクトロルミネセンス素子の特性、なかでも発光効率を向上するべく、プラズマ導入部Qの中心から酸素導入部Rの中心までの距離(k1)がプラズマ導入部Qの中心から蒸着源15表面の中心Pまでの距離(k2)以上で、かつ被処理基板101から酸素導入部Rの中心までの距離(d1)が被処理基板101から蒸着源15までの距離(d2)以上になるように酸素導入部Rを配置した。
なお、酸素以外の別のガス(例えば、Ar、N等)を導入する場合は、酸素との混合ガスを酸素導入部Rからガス導入することも可能であるし、酸素と異なる別の場所からガス導入することも可能である。酸素以外のガスの導入位置は、蒸着源15と被処理基板101との間及び/又はプラズマ導入部Qと蒸着源15の間に配置されたとしても、酸素導入部Rの場合のように、有機EL素子の陰極に含まれる低仕事関数金属の酸化等に影響は与えないと考えられるが、酸素以外のガスもプラズマによって有機EL素子に含まれる部材に影響を与えることが懸念される。したがって、酸素導入部Rと同様に、酸素以外のガスの導入位置についても、プラズマ導入部Qの中心から酸素以外のガスの導入位置の中心までの距離がプラズマ導入部Qから蒸着源15表面の中心Pまでの距離以上で、かつ被処理基板101から酸素以外のガスの導入位置の中心までの距離が被処理基板101から蒸着源15までの距離以上とすることが好ましい。更に、酸素を導入するガス配管11と同様に、酸素以外のガスを導入する配管も蒸着源15上に配置されないことが好ましい。これにより、酸素以外のガスを導入する配管がプラズマ12に晒されることを防止することができるため、プラズマ12の不安定化及び異常放電の発生を抑制するとともに、酸素以外のガスを導入する配管に膜が付着することを防止し、酸素以外のガスの導入位置を含む配管に付着した膜が剥離することによる膜質への影響を回避することができる。
形成する絶縁層は、SiO、SiON、Al、AlON、TiO、TiON、Ta、TaONからなる群より選ばれる少なくとも一つの酸素を含む材料を用いることができ、単層であってもよいし、上記材料を一種あるいは複数種含む積層であってもよい。また、他の無機絶縁膜材料や樹脂材料等との積層であってもよい。トップエミッション方式においては、保護膜である絶縁層は透明であることが必要であるため、透明膜である上記の絶縁層は、トップエミッション型有機EL素子において好適に用いられるが、ボトムエミッション型有機EL素子においても用いることができる。
本発明に係る有機EL素子の製造工程について説明する。具体的には、有機EL素子の製造工程のうち、第二電極(陰極)の透明電極層形成工程において、酸素を含む減圧雰囲気下の成膜室10内で蒸着源15にプラズマ12を照射して膜材料を蒸発させることによって被処理基板101に透明導電膜層を形成する際に、プラズマ導入部Qの中心から酸素導入部Rの中心までの距離(k1)がプラズマ導入部Qの中心から蒸着源15表面の中心Pまでの距離(k2)以上で、かつ被処理基板101から酸素導入部Rの中心までの距離(d1)が被処理基板101から蒸着源15までの距離(d2)以上になるように酸素導入部Rを配置する。更に、上述の透明導電膜層形成工程と同様に、保護膜である絶縁層形成工程においても、酸素を含む減圧雰囲気下の成膜室10内で蒸着源15にプラズマ12を照射して膜材料を蒸発させることによって被処理基板101に絶縁層を形成する際に、プラズマ導入部Qの中心から酸素導入部Rの中心までの距離(k1)がプラズマ導入部Qの中心から蒸着源15表面の中心Pまでの距離(k2)以上で、かつ被処理基板101から酸素導入部Rの中心までの距離(d1)が被処理基板101から蒸着源15までの距離(d2)以上になるように酸素導入部Rを配置し、透明電極層(透明導電膜層)の上方に保護膜として酸素を含む絶縁層を形成する。
本発明に係る実施形態1の有機EL素子を図2を参照して説明する。図2は、実施形態1の有機EL素子の断面構成の一例を示す模式図である。図2に示すように、本実施形態の有機EL素子100は、基板101上に第一電極(陽極)102と、有機層105と、第二電極(陰極)108と、保護膜(絶縁層)109とが基板101側からこの順に積層された構造を有する。第二電極108は透光性を有する金属層106と透明電極層(透明導電膜層)107とからなる。
有機層105を構成する材料は、低分子材料であっても高分子材料であってもよい。本実施形態においては、図2に示すように、有機層105は正孔注入層103と有機発光層(発光層)104との積層構造としているが、単層構造であっても上述した以外の多層構造であってもよく、例えば、以下に示す(1)〜(5)のような構造であってもよい。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
(1)有機発光層
(2)正孔輸送層/有機発光層
(3)有機発光層/電子輸送層
(4)正孔輸送層/有機発光層/電子輸送層
(5)正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/電子輸送層
上記(1)〜(5)に示す有機発光層104は、単層構造であっても多層構造であってもよい。また、母体材料に添加共存物質(ドーパント)を添加(ドープ)した層であってもよい。以下、本実施形態では、有機EL素子100の有機発光層104の形成に高分子材料を用いた場合について記載するが、本発明は何らこれに限定されるものではない。
図2に示す有機発光層104は、従来公知の方法で成膜することが可能であり、例えば有機発光層形成用塗液を用いて、スピンコート法、ドクターブレード法、吐出コート法、スプレーコート法、インクジェット法、凸版印刷法、凹版印刷法、スクリーン印刷法、マイクログラビアコート法等のウェットプロセスで成膜することが可能である。
有機発光層形成用塗液は、発光材料を含有する溶液である限り、含有する発光材料は一種類であっても多種類であってもよい。また、その他に湿潤浸透剤(レベリング剤)、発光アシスト(EA)剤、添加剤(ドナー、アクセプター等)、電荷輸送剤、発光ドーパント等を含有していてもよい。発光材料としては、有機EL素子用の従来公知の発光材料を用いることができる。このような発光材料は、高分子発光材料、高分子発光材料の前駆体等に分類される。以下に具体的な化合物を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
高分子発光材料としては、例えば、ポリ(2−デシルオキシ−1,4−フェニレン)(DO−PPP)、ポリ[2,5−ビス−[2−(N,N,N−トリエチルアンモニウム)エトキシ]−1,4−フェニル−アルト−1,4−フェニルレン]ジブロマイド(PPP−NEt3+)、ポリ[2−(2’−エチルヘキシルオキシ)−5−メトキシ−1,4−フェニレンビニレン](MEH−PPV)等が挙げられる。また、高分子発光材料の前駆体としては、例えば、ポリ(p−フェニレンビニレン)前駆体(Pre−PPV)、ポリ(p−ナフタレンビニレン)前駆体(Pre−PNV)等が挙げられる。また、塗液用溶剤としては、発光材料を溶解又は分散できるものであればよく、例えば、純水、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルム、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン等が挙げられる。
正孔輸送層103及び電子輸送層(以下、両者を合わせて「電荷輸送層」ともいう。)は、単層構造であってもよいし多層構造であってもよい。電荷輸送層は有機発光層104と同様、従来公知の方法で成膜が可能である。電荷輸送材料としては、従来公知の材料が使用可能である。以下に具体的な化合物を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
正孔輸送材料としては、例えば、ポルフィリン化合物、N,N’−ビス−(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス−(フェニル)−ベンジジン(TPD)、N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン(NPD)等の芳香族第三級アミン化合物、ヒドラゾン化合物、キナクリドン化合物、スチルアミン化合物等の低分子材料、ポリアニリン、3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンサルスルフォン酸(PEDOT/PSS)、ポリ(トリフェニルアミン誘導体)、ポリビニルカルバゾール(PVCz)等の高分子材料、ポリ(p−フェニレンビニレン)前駆体(Pre−PPV)、ポリ(p−ナフタレンビニレン)前駆体(Pre−PNV)等の高分子材料前駆体が挙げられる。電子輸送材料としては、例えば、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ベンゾキノン誘導体、ナフトキノン誘導体、フルオレノン誘導体等の低分子材料、ポリ[オキサジアゾール]等の高分子材料が挙げられる。また、溶剤としては、発光材料の形成に使用する溶剤が使用可能である。
陽極102及び陰極108には、それぞれ従来公知の電極材料を用いることが可能である。また、陽極102及び有機層105の界面と陰極108及び有機層105の界面とには必要に応じてキャリア注入層等の膜を挿入することも可能である。
陽極102としては、仕事関数の大きな金属材料(アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)等)や導電性金属酸化物(ITO、IZO、ZnO、SnO等)からなる単層膜又は複数の材料の積層膜を用いることができる。また、陽極102上に導電性を大きく妨げない程度の厚み(例えば1nm程度)の酸化物を有機層105に接する側に積層したものを用いてもよい。例えば、SiO等の薄い酸化物層の付加により、有機発光材料塗液やキャリア輸送材料塗液の被覆性を更に良好なものにすることができる。
陰極108としては、例えば、カルシウム(Ca)、セリウム(Ce)、セシウム(Cs)、ルビジウム(Rb)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、マグネシウム(Mg)、リチウム(Li)等の仕事関数が4.0eV以下の低仕事関数金属を用いることができるが、有機発光層104として高分子有機発光層を適用した場合には、上記低仕事関数金属の中でもCa、Baを好適に用いることができる。また、通常、陰極108は、酸素や水等による低仕事関数金属の変質を抑え、かつ電極としての導電性を得るために、ニッケル(Ni)、オスミウム(Os)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、アルミニウム(Al)、金(Au)、ロジウム(Rh)等の化学的に比較的安定で、かつ導電性の高い金属と低仕事関数金属との合金からなる単層膜又は複数の材料の積層膜とすることが好ましい。また、陰極108の金属層106の部分に、例えば銅フタロシアニン(CuPc)等の有機材料に上記の低仕事関数金属をドーパントとして用いた電子注入性を有する有機材料を用いることもできる。
また、トップエミッション型有機EL素子では、陰極108に透光性を与えるために薄く形成し、かつ電極として充分な導電性を確保する必要があるため、ITO、IZO、ZnO、IWO、SnO等の導電性金属酸化物を透明電極層107として透光性を有する金属層106上に形成する。透明電極層107は、単層であってもよいし、複数の材料の積層であってもよい。
また、保護膜109である絶縁層としては、SiO、SiON、Al、AlON、TiO、TiON、Ta、TaON等の酸化物及び窒素酸化物の層を用いることができ、第二電極108上方に形成する。これらの絶縁層は、透明であることからトップエミッション型有機EL素子に好適に用いられるが、ボトムエミッション型有機EL素子でも用いることができる。保護膜109は上記の絶縁層の単層であってもよいし、単一又は複数の材料の積層であってもよい。また、保護膜109を積層体とする場合は、第二電極108の直上に酸素を含む絶縁層を形成してもよいし、第二電極108と酸素を含む絶縁層との間にSiN等の無機絶縁膜やアクリル樹脂等の他の材料を挿入してもよい。保護膜109を積層構造とすることで、基板101表面の凹凸に対するカバレージ性の改善や平坦性の改善をもたらすとともに、パーティクル等の欠陥に対する冗長となり、高い信頼性を有する有機EL素子100の作製が可能となる。
本発明の有機EL素子の構成としては、第一電極と、少なくとも有機発光層を含む有機層と、第二電極とを有するものであればよく、例えば上述した第一電極及び有機層の界面に挿入される酸化物層(SiO層)のように、第一電極、有機層、第二電極以外の層を含んでいてもよい。
以下に実施例を掲げ、本発明について図面を参照して更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
図2を参照しながら、実施例1の有機EL素子の製造方法について説明する。
5cm×5cm角の絶縁性の基板101上に、電子ビーム(EB)蒸着装置を用い、第一電極102として厚さ略150nmのPt電極を幅2mm、長さ5cmのストライプ状に形成した。次に、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)とポリスチレンスルフォン酸(PSS)との混合水溶液をスピンコート法により塗布し、150℃で20分間乾燥して、正孔注入層103を形成した。正孔注入層103の膜厚は溶液の濃度、スピンコート時の回転数を制御することにより、略60nmの厚さにした。次に、ポリフルオレン誘導体の溶液も同様にスピンコート法で塗布し、乾燥することにより、有機発光層104を形成した。次に、透光性を有する金属層106として、カルシウム(Ca)を5wt%含むアルミニウム(Al)からなる膜を抵抗加熱蒸着法でPt電極のストライプパターンに直交するようなパターンで成膜し、膜厚を10nmとした。最後に、図1に示す成膜装置50を用いて透明導電膜層107としてITO電極を100nmの膜厚で透光性を有する金属層106と同じパターンで成膜した。
ITO電極の成膜について更に詳細に説明する。具体的には、図1に示すイオンプレーティング装置50を用いて、プラズマガン13のプラズマ導入部QからArガスを用いたプラズマ12をハース14内に装填された蒸着源15に照射することで透明導電膜層107であるITO電極を成膜した。ITO焼結体を粒状に粉砕したものを蒸着源15として用い、直径16cmのハース14に蒸着源15を装填した。ハース14の中心上に位置する蒸着源15表面の中心Pは、プラズマ導入部Qから成膜室10の水平方向で20cmの距離である。すなわち、プラズマ導入部Qの付設されている面から蒸着源15表面の中心Pまでの距離(h2)は20cmとした。酸素を導入するガス配管11は、プラズマ導入部Qの付設されている面と相対する面の容器壁から蒸着源15に向かって配管し、プラズマ導入部Qの付設されている面からガス配管11の先端部にある酸素導入位置である酸素導入部Rの中心までの距離(h1)は34cmとした。このとき、プラズマ導入部Qの中心から蒸着源15表面の中心Pまでの距離(k2)は22.4cmとなり、プラズマ導入部Qの中心から酸素導入部Rの中心までの距離(k1)は36.6cmとなる。被処理基板101は蒸着源15より50cm上方に配置し、酸素導入部Rは被処理基板101に対して蒸着源15と同様に50cm離れた位置に配置して酸素を導入した。すなわち、被処理基板101から蒸着源15までの距離(d2)を50cmとし、被処理基板101から酸素導入部Rの中心までの距離(d1)を50cmとした。蒸着源15に照射するプラズマ12は、被処理基板101と蒸着源15の間で蒸着源15より10cm上方の成膜室10の側壁に位置するプラズマ導入部Qから射出した。プラズマ12は、蒸着源15表面の中心Pを照射するように設定した。このように、プラズマ導入部Qから酸素導入部Rまでの距離がプラズマ導入部Qから蒸着源15までの距離以上であるという第一条件と、被処理基板101から酸素導入部Rまでの距離が被処理基板101から蒸着源15までの距離以上であるという第二条件とを満たした状態でITO電極を成膜した。
本実施例におけるイオンプレーティング装置50を用いたITO電極形成の詳細な成膜条件について、表1に示す。なお、表1中のスパッタガス流量単位sccmは、標準条件(standard;1013hPa、25℃)におけるcc(cm)/minの略称である。
Figure 2009200001
このようにして作製した有機EL素子100に、Pt電極が正、ITO電極が負になるように直流電圧を印加すると、発光層104からの緑色発光が蛍光灯下で観察された。この有機EL素子100では、8.2cd/Aの電流効率が得られた。なお、電流効率は、輝度計を用いて測定した有機EL表示装置の発光輝度と、輝度測定時の有機EL表示装置に流れている電流値と、有機EL表示装置の発光面積とから、下記式より算出した。
電流効率(cd/A)=発光輝度(cd/m)/{電流値(A)×発光面積(m)}
(実施例2)
透明導電膜層107の材料として蒸着源15にIZOの焼結体を粒状にしたものを用い、成膜時の酸素導入部Rを被処理基板101から53cm離れた位置、すなわち、被処理基板101から酸素導入部Rの中心までの距離(d1)が53cmとなる位置に配置し、プラズマ導入部Qの中心から酸素導入部Rの中心までの距離(k1)を37.5cmにした以外は、実施例1と同様にして、実施例2の有機EL素子を作製した。このようにして作製した有機EL素子に、Pt電極が正、IZO電極が負になるように直流電圧を印加すると、発光層104からの緑色発光が蛍光灯下で観察された。この有機EL素子では、8.3cd/Aの電流効率が得られた。
(実施例3)
透明導電膜層107の材料として蒸着源15にIZOの焼結体を粒状にしたものを用い、成膜時の酸素導入部Rをプラズマ導入部Qの付設されている面から成膜室10の水平方向で20cm離れた位置、すなわち、プラズマ導入部Qの付設されている面から酸素導入部Rの中心までの距離(h1)が20cmとなる位置に配置し、プラズマ導入部Qの中心から酸素導入部Rの中心までの距離(k1)を24.1cmとした以外は、実施例1と同様にして、実施例3の有機EL素子を作製した。この際、酸素を導入するガス配管11は、ハース14上にこないように配置した。このようにして作製した有機EL素子に、Pt電極が正、IZO電極が負になるように直流電圧を印加すると、発光層104からの緑色発光が蛍光灯下で観察された。この有機EL素子では、7.9cd/Aの電流効率が得られた。
(比較例1)
透明導電膜層107の成膜時、酸素導入部Rを被処理基板101から45cm離れた位置、つまり成膜室10内の高さ方向において、プラズマ導入部Qと蒸着源15との間に配置し、被処理基板101から酸素導入部Rの中心までの距離(d1)を45cmとし、プラズマ導入部Qの中心から酸素導入部Rの中心までの距離(k1)を35.5cmとした。それ以外は、実施例1と同様にして、ITO電極を成膜し、比較例1の有機EL素子を作製した。このようにして作製した有機EL素子に、Pt電極が正、ITO電極が負になるように直流電圧を印加すると、発光層104からの緑色発光が蛍光灯下で観察された。この有機EL素子では、3.9cd/Aの電流効率が得られた。
(比較例2)
透明導電膜層107の成膜時、酸素導入部Rを被処理基板101から20cm離れた位置、つまり成膜室10内の高さ方向において、プラズマ導入部Qと蒸着源15との間に配置し、被処理基板101から酸素導入部Rの中心までの距離(d1)を20cmとし、プラズマ導入部Qの中心から酸素導入部Rの中心までの距離(k1)を40.5cmとした。それ以外は、実施例1と同様にして、ITO電極を成膜し、比較例2の有機EL素子を作製した。このようにして作製した有機EL素子に、Pt電極が正、ITO電極が負になるように直流電圧を印加すると、発光層104からの緑色発光が蛍光灯下で観察された。この有機EL素子では、4.1cd/Aの電流効率が得られた。
(比較例3)
透明導電膜層107の成膜時、酸素導入部Rをプラズマ導入部Qの付設されている面から10cm離れた位置、つまり成膜室10内の水平方向において、プラズマ導入部Qと蒸着源15との間に配置し、プラズマ導入部Qの付設されている面から酸素導入部Rの中心までの距離(h1)を10cmとし、プラズマ導入部Qの中心から酸素導入部Rの中心までの距離(k1)を16.8cmとした。それ以外は、実施例1と同様にして、ITO電極を成膜し、比較例3の有機EL素子を作製した。このようにして作製した有機EL素子に、Pt電極が正、ITO電極が負になるように直流電圧を印加すると、発光層104からの緑色発光が蛍光灯下で観察された。この有機EL素子では、3.8cd/Aの電流効率が得られた。
比較例1、2及び3の有機EL素子は、実施例1、2及び3の有機EL素子に比べていずれも低い発光効率となった。この理由は、比較例1及び2の有機EL素子では、酸素導入部Rが蒸着源15から基板101の間に配置されており、比較例3の有機EL素子では、酸素導入部Rがプラズマ導入部Qから蒸着源15までの間に配置されていたため、プラズマ導入部Qから蒸着源15に照射されるプラズマ12の影響を受けて成膜室10に導入された酸素が活性化し、高エネルギーを有する酸素が過剰に発生して被処理基板101へ到達することによって、有機層105等の被処理部材を損傷し、有機EL素子の特性劣化を招いたと考えられる。
(実施例4)
実施例1と同様にして、ITO電極まで形成した有機EL素子上に、イオンプレーティング装置50を用いて、保護膜109として酸素を含む絶縁層であるSiON膜を形成した。SiON膜は、発光に必要な電流を印加するために、被処理基板101の端部周辺の略5mm幅の領域に成膜されないようにマスキングを行い、その他の領域は有機EL素子を覆うように100nmの膜厚で形成した。
SiON膜の形成を更に詳細に説明する。具体的には、図1に示すイオンプレーティング装置50を用いて、プラズマガン13のプラズマ導入部QからArガスを用いたプラズマ12をハース14内に装填された蒸着源15に照射することで絶縁層であるSiON膜を成膜した。SiO焼結体を粒状に粉砕したものを蒸着源15として用い、直径16cmのハース14に蒸着源15を装填した。ハース14の中心上に位置する蒸着源15表面の中心Pは、プラズマ導入部Qの付設されている面から成膜室10の水平方向で20cmの距離である。すなわち、プラズマ導入部Qの付設されている面から蒸着源15表面の中心Pまでの距離(h2)は20cmとした。酸素を導入するガス配管11は、プラズマ導入部Qの付設されている面と相対する面の容器壁から蒸着源15に向かって配管し、プラズマ導入部Qの付設されている面からガス配管11の先端部にある酸素導入位置である酸素導入部Rの中心までの距離(h1)は34cmとした。このとき、プラズマ導入部Qの中心から蒸着源15表面の中心Pまでの距離(k2)は22.4cmとなり、プラズマ導入部Qの中心から酸素導入部Rの中心までの距離(k1)は36.6cmとなる。被処理基板101は蒸着源15より50cm上方に配置し、酸素導入部Rは被処理基板101に対して蒸着源15と同様に50cm離れた位置に配置して酸素を導入した。すなわち、被処理基板101から蒸着源15までの距離(d2)を50cmとし、被処理基板101から酸素導入部Rの中心までの距離(d1)を50cmとした。蒸着源15に照射するプラズマ12は、被処理基板101と蒸着源15との間で蒸着源15より10cm上方の成膜室10の側壁に位置するプラズマ導入部Qから射出した。プラズマ12は、蒸着源15表面の中心Pを照射するように設定した。このように、プラズマ導入部Qから酸素導入部Rまでの距離がプラズマ導入部Qから蒸着源15までの距離以上であるという第一条件と、被処理基板101から酸素導入部Rまでの距離が被処理基板101から蒸着源15までの距離以上であるという第二条件とを満たした状態でSiON膜を成膜した。
本実施例におけるイオンプレーティング装置50を用いたSiON膜形成の詳細な成膜条件を表2に示す。
Figure 2009200001
このようにして作製した有機EL素子に、Pt電極が正、ITO電極が負になるように直流電圧を印加すると、発光層104からの緑色発光が蛍光灯下で観察された。この有機EL素子では、7.7cd/Aの電流効率が得られた。
(実施例5)
実施例2と同様にして、IZO電極まで形成した有機EL素子上に、図1に示す成膜装置50を用いて保護膜109として絶縁層であるAl膜を形成した。Al膜は、発光に必要な電流を印加するために、被処理基板101の端部周辺の略5mm幅の領域に成膜されないようにマスキングを行い、有機EL素子のその他の領域を覆うように100nmの膜厚で形成した。
Al膜の形成を更に詳細に説明する。具体的には、図1に示すイオンプレーティング装置50を用いて、プラズマガン13のプラズマ導入部QからArガスを用いたプラズマ12をハース14内に装填された蒸着源15に照射することで絶縁層であるAl膜を成膜した。Al焼結体を粒状に粉砕したものを蒸着源15として用い、直径16cmのハース14に蒸着源15を装填した。ハース14の中心上に位置する蒸着源15表面の中心Pは、プラズマ導入部Qの付設されている面から成膜室10の水平方向で20cmの距離である。すなわち、プラズマ導入部Qの付設されている面から蒸着源15表面の中心Pまでの距離(h2)は20cmとした。酸素を導入するガス配管11は、プラズマ導入部Qの付設されている面と相対する面の容器壁から蒸着源15に向かって配管し、プラズマ導入部Qの付設されている面からガス配管11の先端部にある酸素導入位置である酸素導入部Rの中心までの距離(h1)は34cmとした。このとき、プラズマ導入部Qの中心から蒸着源15表面の中心Pまでの距離(k2)は22.4cmとなり、プラズマ導入部Qの中心から酸素導入部Rの中心までの距離(k1)は37.5cmとなる。被処理基板101は蒸着源15より50cm上方に配置し、酸素導入部Rは被処理基板101に対して53cm離れた位置に配置して酸素を導入した。すなわち、被処理基板101から蒸着源15までの距離(d2)を50cmとし、被処理基板101から酸素導入部Rの中心までの距離(d1)を53cmとした。蒸着源15に照射するプラズマ12は、被処理基板101と蒸着源15との間で蒸着源15より20cm上方の成膜室10の側壁に位置するプラズマ導入部Qから射出した。プラズマ12は、蒸着源15表面の中心Pを照射するように設定した。このように、プラズマ導入部Qから酸素導入部Rまでの距離がプラズマ導入部Qから蒸着源15までの距離以上であるという第一条件と、被処理基板101から酸素導入部Rまでの距離が被処理基板101から蒸着源15までの距離以上であるという第二条件とを満たした状態でAl膜を成膜した。このようにして作製した実施例5の有機EL素子に、Pt電極が正、IZO電極が負になるように直流電圧を印加すると、発光層104からの緑色発光が蛍光灯下で観察された。この有機EL素子では、7.8cd/Aの電流効率が得られた。
(実施例6)
保護膜109として絶縁層であるSiON膜を成膜する際に、成膜時の酸素導入部Rをプラズマ導入部Qの付設されている面から成膜室10の水平方向で20cm離れた位置、すなわち、プラズマ導入部Qの付設されている面から酸素導入部Rの中心までの距離(h1)が20cmとなる位置に配置し、プラズマ導入部Qの中心から酸素導入部Rの中心までの距離(k1)を24.1cmとした以外は、実施例4と同様にして、実施例6の有機EL素子を作製した。この際、酸素を導入するガス配管11は、ハース14上にこないように設置した。このようにして作製した有機EL素子に、Pt電極が正、IZO電極が負になるように直流電圧を印加すると、発光層104からの緑色発光が蛍光灯下で観察された。この有機EL素子では、7.5cd/Aの電流効率が得られた。
(比較例4)
SiON膜の成膜時、酸素導入部Rを被処理基板101から45cm離れた位置、つまり成膜室10内の高さ方向において、プラズマ導入部Qと蒸着源15との間に配置し、被処理基板101から酸素導入部Rの中心までの距離(d1)を45cmとし、プラズマ導入部Qの中心から酸素導入部Rの中心までの距離(k1)を35.5cmとした。それ以外は、実施例4と同様にして、比較例4の有機EL素子を作製した。このようにして作製した有機EL素子に、Pt電極が正、ITO電極が負になるように直流電圧を印加すると、発光層104からの緑色発光が蛍光灯下で観察された。この有機EL素子では、3.7cd/Aの電流効率が得られた。
(比較例5)
Al膜成膜時、酸素導入部Rを被処理基板101から20cm離れた位置、つまり成膜室10内の高さ方向において、プラズマ導入部Qと蒸着源15との間に配置し、被処理基板101から酸素導入部Rの中心までの距離(d1)を20cmとし、プラズマ導入部Qの中心から酸素導入部Rの中心までの距離(k1)を40.5cmとした。それ以外は、実施例4と同様にして、比較例5の有機EL素子を作製した。このようにして作製した有機EL素子に、Pt電極が正、IZO電極が負になるように直流電圧を印加すると、発光層104からの緑色発光が蛍光灯下で観察された。この有機EL素子では、3.9cd/Aの電流効率が得られた。
(比較例6)
SiON膜成膜時、酸素導入部Rをプラズマ導入部Qの付設されている面から10cm離れた位置、つまり成膜室10内の水平方向において、プラズマ導入部Qから蒸着源15表面の中心Pまでの間に酸素導入部Rを配置し、プラズマ導入部Qの付設されている面から酸素導入部Rの中心までの距離(h1)を10cmとし、プラズマ導入部Qの中心から酸素導入部Rの中心までの距離(k1)を16.8cmとした。それ以外は、実施例6と同様にして、比較例6の有機EL素子を作製した。このようにして作製した有機EL素子に、Pt電極が正、ITO電極が負になるように直流電圧を印加すると、発光層104からの緑色発光が蛍光灯下で観察された。この有機EL素子では、3.5cd/Aの電流効率が得られた。
比較例4、5及び6の有機EL素子は、本発明の実施例4、5及び6の有機EL素子と比べていずれも低い発光効率となった。この理由は、比較例4及び5の有機EL素子では、酸素導入部Rが蒸着源15から基板101の間に配置されており、比較例6の有機EL素子では、酸素導入部Rがプラズマ導入部Qから蒸着源15までの間に配置されていたため、プラズマ導入部Qから蒸着源15に照射されるプラズマ12の影響を受けて、成膜室10に導入された酸素が活性化し、高エネルギーを有した酸素が過剰に発生し、被処理基板101へ到達することによって、有機層105等の被処理部材を損傷し、有機EL素子の特性劣化を招いたと考えられる。
(実施例7)
以下、図3を参照して、本発明に係る有機EL素子を備える有機EL表示装置の構成を説明する。図3は、実施例7の有機EL表示装置の断面構成の一例を示す模式図である。図3に示すように、本実施例の有機EL表示装置200は、アクティブマトリクス基板201の上に有機EL素子100が形成されている。アクティブマトリクス基板201は、基板101と、基板101上に画素ごとに形成された複数のTFT202と、これらのTFT202を覆う平坦化膜203とを有している。各TFT202は、それぞれゲート電極204と、ゲート電極204の上にゲート絶縁膜205を介して形成された島状半導体層(図示せず)と、島状半導体層の両端部をそれぞれ覆うように設けられたソース電極206及びドレイン電極207とを有している。すなわち、TFT202はボトムゲート構造である。各TFT202は、それぞれソース配線208及びゲート配線209と接続されている。平坦化膜203には、各TFT202のドレイン電極207に達するスルーホール210が設けられている。平坦化膜203の上層には、有機EL素子100が形成されている。有機EL素子100の陽極102は、平坦化膜203上及びスルーホール210の内部に堆積された導電層をパターニングすることにより、画素ごとに形成されている。各陽極102は、それぞれ対応するTFT202のドレイン電極207とスルーホール210を介して接続されている。これらの陽極102は、各陽極102のエッジ部及びスルーホール210を覆うように形成された絶縁膜(エッジカバー、バンク)211によって互いに絶縁されている。この陽極102及び絶縁膜211の上層に、正孔注入層103と、発光層104と、金属層106であるCaドープAl層と、透明導電膜層107であるITO膜と、保護膜109とが基板101側からこの順で形成されている。
透明導電膜層107であるITO膜は、実施例1と同様にして成膜した。具体的には、本発明に係るイオンプレーティング装置50を用いて、プラズマガン13のプラズマ導入部QからArガスを用いたプラズマ12をハース14内に装填された蒸着源15に照射することで透明導電膜層107であるITO電極を成膜した。ITO焼結体を粒状に粉砕したものを蒸着源15として用い、直径16cmのハース14に蒸着源15を装填した。ハース14の中心上に位置する蒸着源15表面の中心Pは、プラズマ導入部Qから成膜室10の水平方向で20cmの距離である。すなわち、プラズマ導入部Qの付設されている面から蒸着源15表面の中心Pまでの距離(h2)は20cmとした。酸素を導入するガス配管11は、プラズマ導入部Qの付設されている面と相対する面の容器壁から蒸着源15に向かって配管し、プラズマ導入部Qの付設されている面からガス配管11の先端部にある酸素導入位置である酸素導入部Rの中心までの距離(h1)は34cmとした。このとき、プラズマ導入部Qから蒸着源15表面の中心Pまでの距離(k2)は22.4cmとなり、プラズマ導入部Qの中心から酸素導入部Rの中心までの距離(k1)は36.6cmとなる。被処理基板101は蒸着源15より50cm上方に配置し、酸素導入部Rは被処理基板101に対して蒸着源15と同様に50cm離れた位置に配置して酸素を導入した。すなわち、被処理基板101から蒸着源15までの距離(d2)を50cmとし、被処理基板101から酸素導入部Rの中心までの距離(d1)を50cmとした。蒸着源15に照射するプラズマ12は、被処理基板101と蒸着源15の間で蒸着源15より10cm上方の成膜室10の側壁に位置するプラズマ導入部Qから射出した。プラズマ12は、蒸着源15表面の中心Pを照射するように設定した。このように、プラズマ導入部Qから酸素導入部Rまでの距離がプラズマ導入部Qから蒸着源15までの距離以上であるという第一条件と、被処理基板101から酸素導入部Rまでの距離が被処理基板101から蒸着源15までの距離以上であるという第二条件とを満たした状態でITO電極を成膜した。保護膜109は、イオンプレーティング装置50を用いて、酸素を含む絶縁層であるSiON膜を実施例4と同様にして成膜した。
図3に示す有機EL表示装置200は、透明導電膜層107と保護膜109である酸素を含む絶縁層との成膜において、酸素を含む減圧雰囲気下の成膜室10内で蒸着源15にプラズマ12を照射して膜材料を蒸発させることによって被処理基板101に成膜する際に、プラズマ導入部Qから酸素導入部Rまでの距離がプラズマ導入部Qから蒸発源15までの距離以上で、かつ被処理基板101から酸素導入部Rまでの距離が被処理基板101から蒸着源15までの距離以上となるように酸素導入部Rを配置したことにより、蒸着源15に照射されるプラズマ12の影響によって、活性化され高エネルギーを有する粒子(酸素)の被処理基板101への到達を抑制することにより、活性化され高エネルギーを有した粒子(酸素)による発光層104等の下地層の損傷を抑制し、電子注入効率の低下を抑え、高い発光効率を得ることができた。これにより、高精細で明るい表示を実現することができた。また、画素ごと(すなわち有機EL素子100ごと)の輝度のばらつきも小さく、高品位な表示が得ることができた。更に、図1に示すイオンプレーティング装置50を用いて保護膜109を成膜した有機EL表示装置200は、水分や酸素等に起因する有機EL素子100の劣化を抑えることができるので、高い信頼性を得ることができた。
以上、実施形態及び実施例により本発明について説明したが、本発明の有機EL表示装置の構成は、上記に限定されない。例えば、TFTはトップゲート構造であっても良い。本発明の有機EL素子の構成も上記に限定されず、図2を参照して説明したような様々な構成を適用できる。また、本発明の有機EL素子を用いて単純マトリクス方式の表示装置を構成することもできる。更に、本発明の有機EL表示装置には、画素ごとに2個のTFTを必要とする電圧駆動方式を採用してもよいし、画素ごとに4個のTFTを必要とする電流駆動方式を採用してもよい。
実施形態1のイオンプレーティング装置の構造を示す模式図であり、(a)は断面図であり、(b)は平面図である。 実施形態1の有機EL素子の断面構成の一例を示す模式図である。 実施例7の有機EL表示装置の断面構成の一例を示す模式図である。 従来のイオンプレーティング装置の構造を示す模式図であり、(a)は断面図であり、(b)は平面図である。
符号の説明
10:成膜室
11:ガス配管
12:プラズマ
13:プラズマガン
14:ハース
15:蒸着源
50、60:イオンプレーティング装置
100:有機EL素子
101:被処理基板(基板)
102:第一電極(陽極)
103:正孔注入層
104:有機発光層(発光層)
105:有機層
106:金属層
107:透明電極層(透明導電膜層)
108:第二電極(陰極)
109:保護膜
200:有機EL表示装置
201:アクティブマトリクス基板
202:TFT
203:平坦化膜
204:ゲート電極
205:ゲート絶縁膜
206:ソース電極
207:ドレイン電極
208:ソース配線
209:ゲート配線
210:スルーホール
211:絶縁膜(エッジカバー、バンク)
d1:被処理基板101から酸素導入部Rの中心までの距離
d2:被処理基板101から蒸着源15までの距離
h1:プラズマ導入部Qの付設されている面から酸素導入部Rの中心までの距離
h2:プラズマ導入部Qの付設されている面から蒸着源15表面の中心Pまでの距離
k1:プラズマ導入部Qの中心から酸素導入部Rの中心までの距離
k2:プラズマ導入部Qの中心から蒸着源15表面の中心Pまでの距離
P:蒸着源15表面の中心
Q:プラズマ導入部
R:酸素導入部

Claims (12)

  1. 基板上に、第一電極と、少なくとも発光層を含む有機層と、第二電極とが基板側からこの順に積層され、第二電極側から発光する有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法であって、
    該第二電極は、少なくとも透明導電膜層を含み、
    該製造方法は、酸素を含む減圧雰囲気下で蒸着源にプラズマを照射して基板上に透明導電膜層を形成する透明導電膜層形成工程を含み、
    該透明導電膜層形成工程は、プラズマ導入部から酸素導入部までの距離がプラズマ導入部から蒸着源までの距離以上であるという第一条件と、基板から酸素導入部までの距離が基板から蒸着源までの距離以上であるという第二条件とを満たした状態で行われることを特徴とする有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法。
  2. 前記透明導電膜層は、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、アルミニウム亜鉛酸化物、ガリウム亜鉛酸化物、インジウムタングステン酸化物及び錫酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一つの金属酸化物を含むことを特徴とする請求項1記載の有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法。
  3. 基板上に、第一電極と、少なくとも発光層を含む有機層と、第二電極と、保護膜とが基板側からこの順に積層された構造の有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法であって、
    該保護膜は、少なくとも絶縁層を含み、
    該製造方法は、酸素を含む減圧雰囲気下で蒸着源にプラズマを照射して基板上に絶縁層を形成する絶縁層形成工程を含み、
    該絶縁層形成工程は、プラズマ導入部から酸素導入部までの距離がプラズマ導入部から蒸着源までの距離以上であるという第一条件と、基板から酸素導入部までの距離が基板から蒸着源までの距離以上であるという第二条件とを満たした状態で行われることを特徴とする有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法。
  4. 前記絶縁層は、ケイ素、アルミニウム、チタン及びタンタルからなる群より選ばれる少なくとも一つの物質の酸化物及び窒素酸化物の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項3記載の有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法。
  5. 前記酸素導入部は、基板までの距離が酸素分子の平均自由工程以上となる領域に配置されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法。
  6. 前記酸素導入部は、蒸着源よりも基板側に配置されないことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法により製造された有機エレクトロルミネセンス素子を備えることを特徴とする有機エレクトロルミネセンス表示装置。
  8. 成膜室と、成膜室内に酸素を導入する酸素導入部と、成膜室内にプラズマを導入するプラズマ導入部と、蒸着源が装填される蒸着源装填容器とを備えた成膜装置であって、
    該成膜装置は、プラズマ導入部から酸素導入部までの距離がプラズマ導入部から蒸着源までの距離以上であるという第一条件と、基板から酸素導入部までの距離が基板から蒸着源までの距離以上であるという第二条件とを満たすように酸素導入部が配置されることを特徴とする成膜装置。
  9. 前記酸素導入部は、基板までの距離が酸素分子の平均自由工程以上となる領域に配置されることを特徴とする特徴とする請求項8記載の成膜装置。
  10. 前記酸素導入部は、蒸着源よりも基板側に配置されないことを特徴とする請求項8又は9記載の成膜装置。
  11. 請求項8〜10のいずれかに記載の成膜装置によって形成された透明導電膜層及び絶縁層の少なくとも一方を有することを特徴とする有機エレクトロルミネセンス素子。
  12. 請求項11記載の有機エレクトロルミネセンス素子を備えることを特徴とする有機エレクトロルミネセンス表示装置。
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