JP2009197306A - 高温強度と靭性に優れるフェライト系ステンレス鋼 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】C:0.015mass%以下、Si:0.10mass%以下、Mn:2.0mass%以下、P:0.040mass%以下、S:0.010mass%以下、Al:0.01〜0.10mass%、N:0.015mass%以下、Cr:12.0〜20.0mass%、Ni:1.0mass%以下、Cu:1.2〜1.8mass%、Mo:0.8〜3.0mass%、W:1.0〜5.0mass%かつ(Mo+W):3.0〜5.8mass%を満たして含有し、さらに、Nb:0.3mass%以上かつ0.25≦Nb−(93/12)×C−(93/14)×N≦0.50(ただし、上記式中のNb,CおよびNは、各元素のmass%)を満たして含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有するフェライト系ステンレス鋼。
【選択図】図1
Description
0.25≦Nb−(93/12)×C−(93/14)×N≦0.50
ただし、上式中のNb,CおよびNは、各元素の質量(mass%)
を満たして含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有するフェライト系ステンレス鋼である。
C:0.006mass%、N:0.007mass%、Mn:0.4mass%、Cr:15mass%、Nb:0.45mass%、Mo:1.5mass%、W:2.7mass%、Cu:1.51mass%およびAl:0.041mass%をベース組成とし、Siの含有量を0〜0.4mass%の範囲で種々に変化させた鋼を溶製し、熱間圧延し、冷間圧延し、仕上焼鈍して板厚2mmの冷延鋼板を作製し、この冷延鋼板から幅2mmのサブサイズのシャルピー衝撃試験片を採取し、0℃の温度でシャルピー衝撃試験を行い、脆性破面率を求めた。なお、試験片のVノッチの方向は、圧延方向に対して90°方向(TD方向)とした。
本発明は、上記知見に基づき、さらに検討を加えて開発されたものである。
C:0.015mass%以下
Cは、鋼の強度を高めるのに有効な成分であり、所望の強度を確保するためには0.001mass%以上含有するのが好ましい。しかし、Cを0.015mass%超え含有すると、靭性および成形性の劣化が顕著となるため、本発明では、0.015mass%以下とする。なお、成形性を確保する観点からは、C含有量は低いほど望ましく、0.008mass%以下とするのが好ましい。より好ましくは、Cは0.002〜0.008mass%の範囲である。
Siは、本発明のフェライト系ステンレス鋼の靭性を向上させるために、含有量を厳しく制限する必要がある重要な元素である。図1に示したように、Si低減による靭性向上効果は、Alの含有量を0.01mass%以上とした上で、Si含有量を0.10mass%以下に規制することにより、初めて得られる。したがって、上限は0.10mass%とする。好ましくは、Si:0.08mass%以下である
Mnは、脱酸剤として、また、鋼板強度を高める成分として添加されるが、過剰な添加は、高温でγ相を生成して耐熱性を低下させる。よって、本発明では、Mn含有量は2.0mass%以下とする。好ましくは1.5mass%以下である。
Pは、鋼中に不可避に混入する不純物であり、靭性を低下させる有害な元素であるので、できるだけ低減するのが望ましい。よって、本発明では、0.040mass%以下とする。好ましくは0.030mass%以下である。
Sは、鋼中に不可避に混入する不純物であり、鋼板の伸びおよびr値を低下させるほか、ラーベス相の析出を促進して鋼を硬質化し、成形性を低下させる元素である。また、ステンレス鋼の基本特性である耐食性を低下させる元素でもあるので、できるだけ低減するのが望ましい。よって、本発明では、Sを0.010mass%以下とする。
Alは、本発明のフェライト系ステンレス鋼の靭性向上に必要な重要な元素であるが、図2に示したように、Siを0.10mass%以下に制限した上で、Alを0.01mass%以上添加することにより、初めてその効果が得られる。一方、0.10mass%を超え添加すると、靭性向上効果は飽和する他、冷延焼鈍後の脱スケール性が低下するため、製造性が悪くなる。よって、Alの含有量は0.01〜0.10mass%とする。好ましくは、0.015〜0.08mass%の範囲である。
Nは、鋼の靭性および成形性を低下させる元素であり、0.015mass%超え含有すると、この影響が顕著となる。このため、Nは、できるだけ低減するのが望ましく、0.015mass%以下とする。好ましくは0.010mass%以下である。
Crは、フェライト系ステンレス鋼の耐食性、耐酸化性を確保するために必要な成分である。上記効果を得るためには、12.0mass%以上の添加が必要である。一方、Crは、鋼中に固溶して室温強度を高め、硬質化するので、延性の低下を招く。特に、Cr含有量が20.0mass%を超えると、この影響が顕著となるので、Crの上限は20.0mass%とする。よって、本発明では、Crは12.0〜20.0mass%の範囲とする。好ましくは14.0〜19.0mass%の範囲である。
Niは、鋼の靭性を向上させる元素である。しかし、Niは、高価であるばかりでなく、強力なγ相形成元素であり、高温でγ相の生成を促進し、耐酸化性を低下させる。よって、Niは1.0mass%以下とする。好ましくは、0.05〜0.6mass%の範囲である。
Cuは、500〜750℃の温度域でε−Cuとして析出することにより、室温〜析出温度の広範な温度範囲での強度向上に寄与する重要な成分である。特に、本発明が目標とする650℃における0.2%耐力:280MPa以上を達成するためには、1.2mass%以上のCu添加が必要である。一方、Cu含有量が1.8mass%を超えると、鋼板製造における最終焼鈍での冷却時にε−Cuが多量に析出し、例えSiとAlの含有量の最適化を行っても、鋼板の靭性低下が顕著となる。よって、本発明では、Cu含有量は、強度向上と靭性確保を図る観点から、1.2〜1.8mass%の範囲とする。
Moは、鋼中に固溶状態で存在することにより、高温耐力を増加させ、耐食性や耐酸化性を向上させる効果を有する重要な成分である。このような効果は、0.8mass%以上の添加で認められる。一方、3.0mass%超え含有すると、ラーベス相の析出が顕著となり、固溶状態で存在するMo量が減少するため、高温耐力や耐食性向上への寄与が小さくなるとともに、常温での強度が増して加工性が低下する。よって、Moは0.8〜3.0mass%の範囲とする。好ましくは、1.0〜3.0mass%の範囲である。
Wは、Moと同様、鋼中に固溶状態で存在することにより、高温耐力を増加させ、耐食性や耐酸化性を向上させる効果を有するため、本発明では重要な成分である。このような効果は、1.0mass%以上の含有で認められる。一方、5.0mass%を超えるとラーベス相の析出が顕著となり、固溶状態で存在するW量が飽和し、また、靭性や加工性が低下する。よって、Wは1.0〜5.0mass%の範囲とする。好ましくは2.0〜4.0mass%の範囲である。
MoおよびWは、上述したように同様の効果を有する成分である。しかし、本発明が目標とする高温強度、即ち、900℃における0.2%耐力:27MPa以上、650℃における0.2%耐力:280MPa以上を達成するためには、MoとWの合計量(Mo+W)は3.0mass%以上が必要である。一方、(Mo+W)が5.8mass%を超えると、上述した効果が飽和すると共に、靭性や加工性の低下が起こるようになる。よって、(Mo+W)は、3.0〜5.8mass%の範囲とする。好ましくは3.5〜5.0mass%の範囲である。
Nb−(93/12)×C−(93/14)×N):0.25〜0.50mass%
Nbは、C,Nを固定し、高温強度や成形性、耐食性、溶接部の耐粒界腐食性を高める効果のある元素である。このような効果は、Nb:0.3mass%以上でかつ、
Nb−(93/12)×C−(93/14)×N):0.25mass%以上
で認められる。ここで、上記式は、添加されたNb量からC,Nの固定に消費されたNb量を差し引いたいわゆる「有効Nb」を意味する。一方、上記有効Nbが0.50mass%を超えて含有すると、ラーベス相が多量に析出し、Nbの高温強度向上効果が飽和するとともに、靭性や表面性状を劣化させる。このため、本発明では、Nbは0.3mass%以上、かつ、有効Nb:0.25〜0.50mass%の範囲とする。なお、特に優れた高温強度が要求される場合には、有効Nbは0.30mass%以上であることが好ましい。
B:0.003mass%以下
Bは、加工性、特に2次加工性の向上に有効な元素である。この効果は、B:0.0005mass%以上で発現する。一方、0.003mass%を超える含有は、BNを多量に生成して加工性の低下を招く。よって、Bを添加する場合は、0.003mass%以下とするのが好ましい。
Tiは、伸びやr値を向上させるのに有効な成分である。しかしながら、0.25mass%を超えて添加すると、本発明の成分系においても靭性の低下が顕著になるため、Tiを添加する場合は0.25mass%以下に限定される。
REM(希土類元素),Zrは、いずれも耐酸化性を改善する元素であり、必要に応じて含有することができる。しかし、REM:0.08mass%を超える含有は、鋼を脆化させる。また、Zr:0.5mass%を超える含有は、Zr金属間化合物が析出し、やはり鋼を脆化させる。このため、REMを添加する場合は0.08mass%以下、Zrを添加する場合は0.5mass%以下とするのが好ましい。
Vは、成形性の向上に有効な元素である。しかし、0.5mass%を超える過剰な含有は、粗大なV(C,N)が析出して表面性状を劣化させる。このため、Vを添加する場合は、0.5mass%以下とするのが好ましい。
Coは、靭性の向上に有効な元素であるが、0.5mass%超え添加しても、その効果は飽和する。また、Coは高価な成分でもあるので、添加する場合は0.5mass%以下が好ましい。
なお、本発明の鋼板は、上記成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。ただし、本発明の作用効果を害さない範囲であれば、上記以外の成分の含有を拒むものではない。
(1)高温強度
それぞれの冷延焼鈍板から、圧延方向を引張方向とした引張試験片を各2本ずつ採取し、JIS G0567の規定に準拠して、900℃および650℃の温度において、歪速度:0.3%/minで高温引張試験を行い、900℃における0.2%耐力(σ0.2at900℃)および650℃における0.2%耐力(σ0.2at650℃)を測定した。そして、高温強度の評価は、σ0.2at900℃は、27MPa以上を良(○)、27MPa未満を不良(×)と、また、σ0.2at650℃は、280MPa以上を良(○)、280MPa未満を不良(×)と判定した。
(2)靭性
それぞれの冷延焼鈍板より、幅2mmで、ノッチの方向を圧延方向に90°方向としたサブサイズのシャルピー衝撃試験片を採取し、0℃においてシャルピー衝撃試験をそれぞれ5本実施し、得られた破面を観察して脆性破面率の平均値を求めた。なお、靭性の評価は、脆性破面率が5%以下のものを良(○)、5%超えのものを不良(×)と判定した。
Claims (2)
- C:0.015mass%以下、Si:0.10mass%以下、Mn:2.0mass%以下、P:0.040mass%以下、S:0.010mass%以下、Al:0.01〜0.10mass%、N:0.015mass%以下、Cr:12.0〜20.0mass%、Ni:1.0mass%以下、Cu:1.2〜1.8mass%、Mo:0.8〜3.0mass%、W:1.0〜5.0mass%かつ(Mo+W):3.0〜5.8mass%を満たして含有し、さらに、Nb:0.3mass%以上かつ下記式;
0.25≦Nb−(93/12)×C−(93/14)×N≦0.50
ただし、上式中のNb,CおよびNは、各元素の質量(mass%)
を満たして含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有するフェライト系ステンレス鋼。 - 上記成分組成に加えてさらに、B:0.003mass%以下、Ti:0.25mass%以下、REM:0.08mass%以下、Zr:0.5mass%以下、V:0.5mass%以下およびCo:0.5mass%以下のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のフェライト系ステンレス鋼。
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