JP2009197306A - 高温強度と靭性に優れるフェライト系ステンレス鋼 - Google Patents

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Abstract

【課題】高温強度に優れると共に、靭性にも優れるフェライト系ステンレス鋼を提供する。
【解決手段】C:0.015mass%以下、Si:0.10mass%以下、Mn:2.0mass%以下、P:0.040mass%以下、S:0.010mass%以下、Al:0.01〜0.10mass%、N:0.015mass%以下、Cr:12.0〜20.0mass%、Ni:1.0mass%以下、Cu:1.2〜1.8mass%、Mo:0.8〜3.0mass%、W:1.0〜5.0mass%かつ(Mo+W):3.0〜5.8mass%を満たして含有し、さらに、Nb:0.3mass%以上かつ0.25≦Nb−(93/12)×C−(93/14)×N≦0.50(ただし、上記式中のNb,CおよびNは、各元素のmass%)を満たして含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有するフェライト系ステンレス鋼。
【選択図】図1

Description

本発明は、フェライト系ステンレス鋼に関し、特に、自動車やオートバイ等の排気管や触媒外筒材ならびに火力発電プラントの排気ダクト等の高温環境下で使用される排気ガス経路部材(以下、「排気系部材」と略記する。)に用いられる、高温強度と靭性とを兼ね備えたフェライト系ステンレス鋼に関するものである。
自動車のエキゾーストマニホールドや排気パイプ、コンバータケース、マフラー等に代表される排気系部材に用いられる材料には、成形性と耐熱性に優れることが要求される。そのため、このような用途には、従来、室温での成形性に優れかつ高温での耐力も比較的高い、NbとSiを添加したType429(14Cr−0.9Si−0.4Nb系)鋼のようなCr含有鋼が多く使用されている。しかし、エンジン性能の向上に伴い、排ガス温度が上昇する傾向にあり、その温度が900℃近くまで上昇してくると、Type429鋼では、高温耐力が不足するようになってきている。
この問題に対しては、NbとMoを添加して高温耐力を向上させたCr含有鋼や、JIS G4305に規定されているSUS444(19Cr−0.2Nb−1.8Mo)鋼等が開発されている。しかし、自動車の燃費向上や排気ガスの規制強化に対応して、エンジンから排出されるガスの温度はさらに上昇する趨勢にあり、自動車の排気系部材に用いられる材料には、より優れた耐熱性が要求されるようになってきている。また、排気系部材に用いられる材料の高温強度を高めることは、部材の薄肉化を可能とし、自動車車体の軽量化にも寄与するため、高温強度の向上に対する要求はますます強くなっている。
このような状況下において、排気系部材用の材料が各種開発されている。例えば、特許文献1〜5には、Nb,Moの添加に加えてさらにWを添加することにより、高温強度や耐酸化性を向上させたCr含有鋼やフェライト系ステンレス鋼が開示されている。また、特許文献6には、Nb,Mo,Wの添加に加え、さらにCuを添加することにより、低熱膨張化して、熱疲労特性を向上した鋼が開示されている。また、特許文献7,8には、Nb,Mo,Wの添加に加えてさらにCuを添加することにより、高温強度を向上させたCr含有鋼やフェライト系ステンレス鋼が開示されている。
特開2002−212685号公報 特開2003−213377号公報 特開2004−018921号公報 特開2004−018914号公報 特開2004−076154号公報 特開2005−206944号公報 特開2001−303202号公報 特開2002−004011号公報
しかしながら、特許文献1〜5に開示されたCr含有鋼やフェライトステンレス鋼は、排気系部材に用いるには、耐熱性が不十分である。また、特許文献6〜8に開示されたCr含有鋼やフェライト系ステンレス鋼は、Nb,Mo,W,Cuのような合金元素を多量に添加する必要があるため、鋼板の加工性が低下し、部品への加工を温間で行わなければならないという問題がある。特に、Cuを1%超え添加すると、鋼板製造工程の最終焼鈍冷却時にε−Cuが析出し、室温加工性が低下するという問題がある。
そこで、本発明の目的は、従来技術が抱える上記問題点を有利に解決し、高温強度に優れると共に、靭性にも優れるフェライト系ステンレス鋼を提供することにある。ここで、本発明でいう「高温強度に優れる」とは、900℃における0.2%耐力が27MPa以上かつ650℃における0.2%耐力が280MPaであることをいう。また、「靭性に優れる」とは、0℃においてシャルピー衝撃試験を行ったときの脆性破面率が5%以下であることをいう。
発明者らは、上記課題を解決するために、フェライト系ステンレス鋼が有する成分系に着目し、鋭意検討を重ねた。その結果、フェライト系ステンレス鋼に、(Mo+W)を3.0〜5.8mass%添加し、さらにCuを1.2〜1.8mass%添加することにより幅広い温度域で高い高温強度を得ることができること、また、上記Cu添加に伴う靭性の低下をSi含有量の低減と適正量のAl添加により改善し得ることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、C:0.015mass%以下、Si:0.10mass%以下、Mn:2.0mass%以下、P:0.040mass%以下、S:0.010mass%以下、Al:0.01〜0.10mass%、N:0.015mass%以下、Cr:12.0〜20.0mass%、Ni:1.0mass%以下、Cu:1.2〜1.8mass%、Mo:0.8〜3.0mass%、W:1.0〜5.0mass%かつ(Mo+W):3.0〜5.8mass%を満たして含有し、さらに、Nb:0.3mass%以上かつ下記式;
0.25≦Nb−(93/12)×C−(93/14)×N≦0.50
ただし、上式中のNb,CおよびNは、各元素の質量(mass%)
を満たして含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有するフェライト系ステンレス鋼である。
本発明は、上記成分組成に加えてさらに、B:0.003mass%以下、Ti:0.25mass%以下、REM:0.08mass%以下、Zr:0.5mass%以下、V:0.5mass%以下およびCo:0.5mass%以下のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする。
本発明によれば、900℃という高温で高い強度を有し、しかも0℃における靭性に優れる自動車排気系部材に用いて好適なフェライト系ステンレス鋼を提供することができる。したがって、本発明のフェライト系ステンレス鋼は、同様の特性が要求される火力発電システムの排気経路部材や固体酸化物形の燃料電池用部材としても用いることができる。さらに、本発明のフェライト系ステンレス鋼は、耐食性の向上に有効なMo,Wを含有しているので、耐食性を要求される使途にも好適に用いることができる。
まず、本発明を開発する契機となった基礎実験について説明する。
C:0.006mass%、N:0.007mass%、Mn:0.4mass%、Cr:15mass%、Nb:0.45mass%、Mo:1.5mass%、W:2.7mass%、Cu:1.51mass%およびAl:0.041mass%をベース組成とし、Siの含有量を0〜0.4mass%の範囲で種々に変化させた鋼を溶製し、熱間圧延し、冷間圧延し、仕上焼鈍して板厚2mmの冷延鋼板を作製し、この冷延鋼板から幅2mmのサブサイズのシャルピー衝撃試験片を採取し、0℃の温度でシャルピー衝撃試験を行い、脆性破面率を求めた。なお、試験片のVノッチの方向は、圧延方向に対して90°方向(TD方向)とした。
図1は、上記試験の結果を示したものである。図1から、Siの含有量を低減することにより靭性が顕著に改善され、Si:0.10mass%以下では、脆性破面率が5%以下となることがわかる。
次に、上記と同様にして、C:0.006mass%、N:0.007mass%、Si:0.06mass%、Mn:0.4mass%、Nb:0.49mass%、Cr:16mass%、Mo:1.7mass%、W:2.3mass%およびCu:1.39mass%をベース組成とし、Alの含有量を0〜0.2mass%の範囲で種々に変化させた冷延鋼板(板厚:2mm)を作製し、シャルピー衝撃試験を行い、0℃における脆性破面率を求めた。
図2は、上記試験の結果を示したものであり、Alの含有量を0.01mass%以上とすることにより、靭性が改善され、脆性破面率が5%以下となることがわかる。以上の結果から、靭性を確保するためには、Siを0.1mass%以下とした上で、Alを0.01mass%以上添加する必要があることがわかった。
本発明は、上記知見に基づき、さらに検討を加えて開発されたものである。
次に、本発明のフェライトステンレス鋼が有すべき成分組成について説明する。
C:0.015mass%以下
Cは、鋼の強度を高めるのに有効な成分であり、所望の強度を確保するためには0.001mass%以上含有するのが好ましい。しかし、Cを0.015mass%超え含有すると、靭性および成形性の劣化が顕著となるため、本発明では、0.015mass%以下とする。なお、成形性を確保する観点からは、C含有量は低いほど望ましく、0.008mass%以下とするのが好ましい。より好ましくは、Cは0.002〜0.008mass%の範囲である。
Si:0.10mass%以下
Siは、本発明のフェライト系ステンレス鋼の靭性を向上させるために、含有量を厳しく制限する必要がある重要な元素である。図1に示したように、Si低減による靭性向上効果は、Alの含有量を0.01mass%以上とした上で、Si含有量を0.10mass%以下に規制することにより、初めて得られる。したがって、上限は0.10mass%とする。好ましくは、Si:0.08mass%以下である
Mn:2.0mass%以下
Mnは、脱酸剤として、また、鋼板強度を高める成分として添加されるが、過剰な添加は、高温でγ相を生成して耐熱性を低下させる。よって、本発明では、Mn含有量は2.0mass%以下とする。好ましくは1.5mass%以下である。
P:0.040mass%以下
Pは、鋼中に不可避に混入する不純物であり、靭性を低下させる有害な元素であるので、できるだけ低減するのが望ましい。よって、本発明では、0.040mass%以下とする。好ましくは0.030mass%以下である。
S:0.010mass%以下
Sは、鋼中に不可避に混入する不純物であり、鋼板の伸びおよびr値を低下させるほか、ラーベス相の析出を促進して鋼を硬質化し、成形性を低下させる元素である。また、ステンレス鋼の基本特性である耐食性を低下させる元素でもあるので、できるだけ低減するのが望ましい。よって、本発明では、Sを0.010mass%以下とする。
Al:0.01〜0.10mass%
Alは、本発明のフェライト系ステンレス鋼の靭性向上に必要な重要な元素であるが、図2に示したように、Siを0.10mass%以下に制限した上で、Alを0.01mass%以上添加することにより、初めてその効果が得られる。一方、0.10mass%を超え添加すると、靭性向上効果は飽和する他、冷延焼鈍後の脱スケール性が低下するため、製造性が悪くなる。よって、Alの含有量は0.01〜0.10mass%とする。好ましくは、0.015〜0.08mass%の範囲である。
N:0.015mass%未満
Nは、鋼の靭性および成形性を低下させる元素であり、0.015mass%超え含有すると、この影響が顕著となる。このため、Nは、できるだけ低減するのが望ましく、0.015mass%以下とする。好ましくは0.010mass%以下である。
Cr:12.0〜20.0mass%
Crは、フェライト系ステンレス鋼の耐食性、耐酸化性を確保するために必要な成分である。上記効果を得るためには、12.0mass%以上の添加が必要である。一方、Crは、鋼中に固溶して室温強度を高め、硬質化するので、延性の低下を招く。特に、Cr含有量が20.0mass%を超えると、この影響が顕著となるので、Crの上限は20.0mass%とする。よって、本発明では、Crは12.0〜20.0mass%の範囲とする。好ましくは14.0〜19.0mass%の範囲である。
Ni:1.0mass%以下
Niは、鋼の靭性を向上させる元素である。しかし、Niは、高価であるばかりでなく、強力なγ相形成元素であり、高温でγ相の生成を促進し、耐酸化性を低下させる。よって、Niは1.0mass%以下とする。好ましくは、0.05〜0.6mass%の範囲である。
Cu:1.2〜1.8mass%
Cuは、500〜750℃の温度域でε−Cuとして析出することにより、室温〜析出温度の広範な温度範囲での強度向上に寄与する重要な成分である。特に、本発明が目標とする650℃における0.2%耐力:280MPa以上を達成するためには、1.2mass%以上のCu添加が必要である。一方、Cu含有量が1.8mass%を超えると、鋼板製造における最終焼鈍での冷却時にε−Cuが多量に析出し、例えSiとAlの含有量の最適化を行っても、鋼板の靭性低下が顕著となる。よって、本発明では、Cu含有量は、強度向上と靭性確保を図る観点から、1.2〜1.8mass%の範囲とする。
Mo:0.8〜3.0mass%
Moは、鋼中に固溶状態で存在することにより、高温耐力を増加させ、耐食性や耐酸化性を向上させる効果を有する重要な成分である。このような効果は、0.8mass%以上の添加で認められる。一方、3.0mass%超え含有すると、ラーベス相の析出が顕著となり、固溶状態で存在するMo量が減少するため、高温耐力や耐食性向上への寄与が小さくなるとともに、常温での強度が増して加工性が低下する。よって、Moは0.8〜3.0mass%の範囲とする。好ましくは、1.0〜3.0mass%の範囲である。
W:1.0〜5.0mass%
Wは、Moと同様、鋼中に固溶状態で存在することにより、高温耐力を増加させ、耐食性や耐酸化性を向上させる効果を有するため、本発明では重要な成分である。このような効果は、1.0mass%以上の含有で認められる。一方、5.0mass%を超えるとラーベス相の析出が顕著となり、固溶状態で存在するW量が飽和し、また、靭性や加工性が低下する。よって、Wは1.0〜5.0mass%の範囲とする。好ましくは2.0〜4.0mass%の範囲である。
(Mo+W):3.0〜5.8mass%
MoおよびWは、上述したように同様の効果を有する成分である。しかし、本発明が目標とする高温強度、即ち、900℃における0.2%耐力:27MPa以上、650℃における0.2%耐力:280MPa以上を達成するためには、MoとWの合計量(Mo+W)は3.0mass%以上が必要である。一方、(Mo+W)が5.8mass%を超えると、上述した効果が飽和すると共に、靭性や加工性の低下が起こるようになる。よって、(Mo+W)は、3.0〜5.8mass%の範囲とする。好ましくは3.5〜5.0mass%の範囲である。
Nb:0.3mass%以上かつ、
Nb−(93/12)×C−(93/14)×N):0.25〜0.50mass%
Nbは、C,Nを固定し、高温強度や成形性、耐食性、溶接部の耐粒界腐食性を高める効果のある元素である。このような効果は、Nb:0.3mass%以上でかつ、
Nb−(93/12)×C−(93/14)×N):0.25mass%以上
で認められる。ここで、上記式は、添加されたNb量からC,Nの固定に消費されたNb量を差し引いたいわゆる「有効Nb」を意味する。一方、上記有効Nbが0.50mass%を超えて含有すると、ラーベス相が多量に析出し、Nbの高温強度向上効果が飽和するとともに、靭性や表面性状を劣化させる。このため、本発明では、Nbは0.3mass%以上、かつ、有効Nb:0.25〜0.50mass%の範囲とする。なお、特に優れた高温強度が要求される場合には、有効Nbは0.30mass%以上であることが好ましい。
本発明のフェライト系ステンレス鋼は、上記成分に加えてさらに、B,Ti,REM,Zr,VおよびCoのうちから選ばれる1種または2種以上を下記の範囲で含有することができる。
B:0.003mass%以下
Bは、加工性、特に2次加工性の向上に有効な元素である。この効果は、B:0.0005mass%以上で発現する。一方、0.003mass%を超える含有は、BNを多量に生成して加工性の低下を招く。よって、Bを添加する場合は、0.003mass%以下とするのが好ましい。
Ti:0.25mass%以下
Tiは、伸びやr値を向上させるのに有効な成分である。しかしながら、0.25mass%を超えて添加すると、本発明の成分系においても靭性の低下が顕著になるため、Tiを添加する場合は0.25mass%以下に限定される。
REM:0.08mass%以下、Zr:0.5mass%
REM(希土類元素),Zrは、いずれも耐酸化性を改善する元素であり、必要に応じて含有することができる。しかし、REM:0.08mass%を超える含有は、鋼を脆化させる。また、Zr:0.5mass%を超える含有は、Zr金属間化合物が析出し、やはり鋼を脆化させる。このため、REMを添加する場合は0.08mass%以下、Zrを添加する場合は0.5mass%以下とするのが好ましい。
V:0.5mass%以下
Vは、成形性の向上に有効な元素である。しかし、0.5mass%を超える過剰な含有は、粗大なV(C,N)が析出して表面性状を劣化させる。このため、Vを添加する場合は、0.5mass%以下とするのが好ましい。
Co:0.5mass%以下
Coは、靭性の向上に有効な元素であるが、0.5mass%超え添加しても、その効果は飽和する。また、Coは高価な成分でもあるので、添加する場合は0.5mass%以下が好ましい。
なお、本発明の鋼板は、上記成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。ただし、本発明の作用効果を害さない範囲であれば、上記以外の成分の含有を拒むものではない。
本発明に係るフェライト系ステンレス鋼の製造方法は、とくに限定されるものではなく、公知の方法を適用することができる。例えば、本発明に適合する成分組成を有する鋼を転炉や電気炉等の公知の方法で溶製し、さらに必要に応じて取鍋精錬、真空精錬等の2次精錬を施したのち連続鋳造法あるいは造塊−分塊圧延法で鋼片(スラブ)とする。その後、熱間圧延、熱延板焼鈍、酸洗、冷間圧延、仕上焼鈍、酸洗等の各工程を順次経て冷延焼鈍板とするのが好ましい。なお、上記冷間圧延は、1回または中間焼鈍を挟む2回以上行ってもよい。また、冷間圧延以外に、仕上焼鈍、酸洗工程も繰り返して行ってもよい。また、熱延板焼鈍は、省略してもよい。さらに、鋼板表面に光沢性が要求される場合には、スキンパス圧延を施してもよい。
表1に示したNo.1〜16の成分組成を有する鋼を真空溶解炉で溶製し、50kgの鋼塊とした後、これらの鋼塊を1170℃に加熱し、熱間圧延して板厚5mmの熱延板とした。次いで、これらの熱延板を、熱延板焼鈍(焼鈍温度:1040℃)し、酸洗し、冷間圧延(冷延圧下率:60%)し、仕上焼鈍(焼鈍温度:1050℃、平均冷却速度:20℃/sec)し、酸洗して、板厚2mmの冷延焼鈍板とした。なお、参考例として、特許文献6〜8に実施例として記載された鋼板についても、同様にして冷延焼鈍板を作製し、表1にNo.17〜20として示した。
上記のようにして得た各種冷延焼鈍板について、下記の評価試験に供した。
(1)高温強度
それぞれの冷延焼鈍板から、圧延方向を引張方向とした引張試験片を各2本ずつ採取し、JIS G0567の規定に準拠して、900℃および650℃の温度において、歪速度:0.3%/minで高温引張試験を行い、900℃における0.2%耐力(σ0.2at900℃)および650℃における0.2%耐力(σ0.2at650℃)を測定した。そして、高温強度の評価は、σ0.2at900℃は、27MPa以上を良(○)、27MPa未満を不良(×)と、また、σ0.2at650℃は、280MPa以上を良(○)、280MPa未満を不良(×)と判定した。
(2)靭性
それぞれの冷延焼鈍板より、幅2mmで、ノッチの方向を圧延方向に90°方向としたサブサイズのシャルピー衝撃試験片を採取し、0℃においてシャルピー衝撃試験をそれぞれ5本実施し、得られた破面を観察して脆性破面率の平均値を求めた。なお、靭性の評価は、脆性破面率が5%以下のものを良(○)、5%超えのものを不良(×)と判定した。
上記試験の結果を表2に示す。表2から、本発明例の鋼板は、いずれも900℃における0.2%耐力が27MPa以上、650℃における0.2%耐力が280MPa以上の優れた高温強度を有し、しかも、0℃における脆性破面率が5%以下と靭性にも優れていることがわかる。一方、本発明の範囲外である比較例あるいは先行技術の鋼板は、いずれも両特性のいずれか1以上を満足していないことがわかる。
Figure 2009197306
Figure 2009197306
本発明の鋼板は、自動車排気系部材の他、火力発電システムの排気経路部材や固体酸化物形の燃料電池用部材としても用いることができる。また、本発明の鋼板は、耐食性鋼板としても用いることができる。
0℃における脆性破面率とSi含有量との関係を示すグラフである。 0℃における脆性破面率とAl含有量との関係を示すグラフである。

Claims (2)

  1. C:0.015mass%以下、Si:0.10mass%以下、Mn:2.0mass%以下、P:0.040mass%以下、S:0.010mass%以下、Al:0.01〜0.10mass%、N:0.015mass%以下、Cr:12.0〜20.0mass%、Ni:1.0mass%以下、Cu:1.2〜1.8mass%、Mo:0.8〜3.0mass%、W:1.0〜5.0mass%かつ(Mo+W):3.0〜5.8mass%を満たして含有し、さらに、Nb:0.3mass%以上かつ下記式;
    0.25≦Nb−(93/12)×C−(93/14)×N≦0.50
    ただし、上式中のNb,CおよびNは、各元素の質量(mass%)
    を満たして含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有するフェライト系ステンレス鋼。
  2. 上記成分組成に加えてさらに、B:0.003mass%以下、Ti:0.25mass%以下、REM:0.08mass%以下、Zr:0.5mass%以下、V:0.5mass%以下およびCo:0.5mass%以下のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のフェライト系ステンレス鋼。
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