JP2009196859A - ガラス溶着方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 溶着部の気密性が確保されたガラス溶着体を簡易に製造することができるガラス溶着方法を提供する。
【解決手段】 レーザ光Lの照射によって、ガラス部材4とガラス部材5との間隙Sに臨む溶融領域7の露出面積が溶着予定領域Rの内側よりも外側で大きくなるように、ガラスフリット層3を溶融させる。これにより、ガラスフリット層3においては溶着予定領域Rの外側よりも内側で未溶融領域8が大きく残存することになるので、溶融領域7で発生した泡が溶着予定領域Rの外側から外部に逃がされる。そのため、溶融領域7が再固化した際に、その中央部に泡が殆ど残存せず、泡の連結による溶着部の気密性の低下が防止される。
【選択図】 図4

Description

本発明は、第1のガラス部材と第2のガラス部材とを溶着してガラス溶着体を製造するガラス溶着方法に関する。
上記技術分野における従来のガラス溶着方法として、第1のガラス部材と第2のガラス部材との間に、ガラスフリットを含むガラスフリット層を溶着予定領域に沿って配置する配置工程と、レーザ光を溶着予定領域に沿って照射し、第1のガラス部材と第2のガラス部材とを溶着する溶着工程と、を含むものが知られている。
溶着工程においては、特許文献1に記載されているように、溶着予定領域に沿ったガラスフリット層の中心線にレーザ光の光軸を一致させた状態で、レーザ光を溶着予定領域に沿って照射するのが一般的である。
特開2007−200839号公報
しかしながら、図8に示されるように、ガラス部材4とガラス部材5とを溶着するに際し、溶着予定領域Rに沿ったガラスフリット層3の中心線CLにレーザ光Lの光軸OAを一致させた状態で、レーザ光Lを溶着予定領域Rに沿って照射すると(図8では、溶着予定領域Rが紙面に対して垂直方向に延在している)、次のような問題が生じるおそれがある。すなわち、ガラスフリット層3がその中心線CLを基準として対称に溶融することになるので、溶融領域7で発生した泡が溶融領域7の両側の未溶融領域8によって外部に逃がされない。そのため、溶融領域7が再固化した際に、その領域に泡が一様に残存することになり、最悪の場合、泡の連結によって溶着部の気密性の低下を招くおそれがある。
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、溶着部の気密性が確保されたガラス溶着体を簡易に製造することができるガラス溶着方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係るガラス溶着方法は、第1のガラス部材と第2のガラス部材とを溶着してガラス溶着体を製造するガラス溶着方法であって、第1のガラス部材と第2のガラス部材との間に、複数のガラス片を含むガラス片層を溶着予定領域に沿って配置する配置工程と、第1のガラス部材に対して第2のガラス部材が押圧された状態で、レーザ光を溶着予定領域に沿って照射し、第1のガラス部材と第2のガラス部材とを溶着する溶着工程と、を含み、溶着工程では、第1のガラス部材と第2のガラス部材との間隙に臨む溶融領域の露出面積が溶着予定領域の一方の側よりも他方の側で大きくなるように、ガラス片層を溶融させることを特徴とする。
このガラス溶着方法では、第1のガラス部材と第2のガラス部材との間隙に臨む溶融領域の露出面積が溶着予定領域の一方の側よりも他方の側で大きくなるように、ガラス片層を溶融させる。これにより、ガラス片層においては溶着予定領域の他方の側よりも一方の側で未溶融領域が大きく残存することになるので、溶融領域で発生した泡が溶着予定領域の他方の側から外部に逃がされる。そのため、溶融領域が再固化した際に、その中央部に泡が殆ど残存せず、泡の連結による溶着部の気密性の低下が防止される。従って、このガラス溶着方法によれば、溶着部の気密性が確保されたガラス溶着体を簡易に製造することができる。
本発明に係るガラス溶着方法においては、溶着工程では、溶融領域の露出面積が一方の側でゼロとなるように、ガラス片層を溶融させることが好ましい。この場合、ガラス片層において溶着予定領域の一方の側に残存した未溶融領域がスペーサとして機能するため、第1のガラス部材と第2のガラス部材との間隙を確実に維持することができる。
本発明に係るガラス溶着方法においては、溶着工程では、溶着予定領域が環状に設定されている場合に、一方の側を溶着予定領域の内側とし、他方の側を溶着予定領域の外側とすることが好ましい。この場合、溶融領域で発生した泡が溶着予定領域の外側から外部に逃がされることになるため、第1のガラス部材、第2のガラス部材及びガラス片層によって囲まれた領域内に、ガスが進入するのを防止することができる。
本発明によれば、溶着部の気密性が確保されたガラス溶着体を簡易に製造することができる。
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、本発明に係るガラス溶着方法の一実施形態によって製造されたガラス溶着体の斜視図である。図1に示されるように、ガラス溶着体1は、ガラスフリット(ガラス片)2を含むガラスフリット層(ガラス片層)3を介して、ガラス部材(第1のガラス部材)4とガラス部材(第2のガラス部材)5とが溶着予定領域Rに沿って溶着されたものである。溶着予定領域Rは、ガラス部材4,5の外縁に沿うように環状に設定されている。なお、ガラス部材4,5は、例えば、無アルカリガラスからなる厚さ0.7mmの矩形板状の部材であり、後述するレーザ光Lに対して透過性を有している。一方、ガラスフリット2は、例えば、低融点ガラス(バナジウムリン酸系ガラス、鉛ホウ酸ガラス等)からなる粉末状の部材であり、後述するレーザ光Lに対して吸収性を有している。
次に、上述したガラス溶着体1を製造するためのガラス溶着方法について説明する。
まず、図2に示されるように、ガラス部材4にガラスフリット2を焼成によって固着させ、ガラスフリット層3を溶着予定領域Rに沿って形成する。具体的には、ディスペンサやスクリーン印刷等によって溶着予定領域Rに沿うようにフリットペースト(ガラスフリット2、有機溶剤及びバインダを混練したもの)をガラス部材4の表面に塗布した後、フリットペーストが塗布されたガラス部材4を乾燥機内で乾燥させて有機溶剤を除去し、更に加熱炉内で焼成(仮焼成)してバインダを除去する。
続いて、図3に示されるように、ガラスフリット層3を介してガラス部材4上にガラス部材5を配置し、ガラス部材4に対してガラス部材5が押圧されるように、ガラス部材4とガラス部材5とを双方が重ね合わされた状態で固定する。このとき、ガラス部材4とガラス部材5との間には、図3(b)に示されるように、間隙Sが形成される。なお、ガラス部材4に対してガラス部材5がその自重によって押圧されれば、ガラス部材4とガラス部材5とを固定せずに、ガラスフリット層3を介してガラス部材4上にガラス部材5を配置するだけでもよい。
続いて、図4に示されるように、ガラス部材4に対してガラス部材5が押圧された状態で、レーザ光Lを溶着予定領域Rに沿って照射し、ガラス部材4とガラス部材5とを溶着して、ガラス溶着体1を得る。このとき、ガラスフリット層3に集光スポットFSを合わせ、且つ溶着予定領域Rに沿ったガラスフリット層3の中心線CLに対して外側に光軸OAを偏倚させた状態で、ガラス部材5を介してレーザ光Lを溶着予定領域Rに沿って照射する。なお、溶着予定領域Rに沿ったガラスフリット層3の中心線CLに対して外側とは、環状に延在する中心線CLに対して、環状に設定された溶着予定領域Rの外側を意味する。
このレーザ光Lの照射によって生じる具体的現象について説明する。
まず、レーザ光Lが照射されると、レーザ光Lがガラス部材5を透過してガラスフリット層3に吸収される。これにより、ガラスフリット層3においてレーザ光Lが照射された部分が700℃〜800℃程度の温度に発熱してその部分及びその部分の周辺部分(ガラス部材4,5の表面部分)が溶融し、図4(b)に示されるように、溶融領域7が形成される。
このとき、レーザ光Lの光軸OAがガラスフリット層3の中心線CLに対して外側に偏倚させられているため、ガラス部材4とガラス部材5との間隙Sに臨む溶融領域7の露出面積が溶着予定領域Rの内側よりも外側で大きくなる。ここでは、溶着予定領域Rの内側において間隙Sに臨む溶融領域7の露出面積がゼロとなり、溶着予定領域Rの外側において間隙Sに臨む溶融領域7の露出面積7aのほうが大きくなるように、ガラスフリット層3を溶融させる。
これにより、ガラスフリット層3においては、溶着予定領域Rの外側よりも内側で未溶融領域8が大きく残存することになり、更にガラス部材4に対してガラス部材5が押圧されているので、溶融領域7には、その中央部から外側に向かう流れと共に、その中央部から内側を介して外側に向かう流れが生じる。そのため、溶融領域7で発生した泡が外側から外部に逃がされ、溶融領域7が再固化した際に、その中央部に泡が殆ど残存しない。
図5は、レーザ光入射側のガラス部材をガラス溶着体から剥離したときのガラスフリット層の表面写真を示す図である。図5に示されるように、ガラスフリット層3における溶融・再固化領域の外側には、中央部から外側に向かう溶融領域7内の流れ、及び中央部から内側を介して外側に向かう溶融領域7内の流れによって、発泡痕(白色部分)が多数存在する発泡層が形成されている。同様に、ガラスフリット層3における溶融・再固化領域の内側にも、中央部から内側を介して外側に向かう溶融領域7内の流れによって、発泡痕が多少存在する発泡層が形成されている。これらに対し、ガラスフリット層3における溶融・再固化領域の中央部には、発泡痕が殆ど存在しない。
なお、上記ガラス溶着方法によって製造されたガラス溶着体1には、図6に示されるように、ガラスフリット層3の中心線CLに対して外側に偏倚した溶融痕9が形成されている。このような溶融痕9が残存するのは、次の理由による。すなわち、レーザ光Lが照射されると、ガラスフリット層3だけでなくガラス部材4,5の表面部分も溶融する。このとき、急激な温度上昇によって体積が増加するため、ガラス部材4,5の表面部分における固体・液体界面に圧力が生じる。その直後、レーザ光Lが照射されなくなると、急激な温度下降によって急冷が起こるため、ガラス部材4,5の表面部分における固体・液体界面に生じた歪が緩和されることなく固化する。これにより、ガラス部材4,5の表面部分における固体・液体界面付近において密度が高まり、溶融痕9が形成される。
以上説明したように、上記ガラス溶着方法においては、ガラス部材4とガラス部材5との間隙Sに臨む溶融領域7の露出面積が溶着予定領域Rの内側よりも外側で大きくなるように、ガラスフリット層3を溶融させる。これにより、ガラスフリット層3においては溶着予定領域Rの外側よりも内側で未溶融領域8が大きく残存することになるので、溶融領域7で発生した泡が溶着予定領域Rの外側から外部に逃がされる。そのため、溶融領域7が再固化した際に、その中央部に泡が殆ど残存せず、泡の連結による溶着部の気密性の低下が防止される。従って、上記ガラス溶着方法によれば、溶着部の気密性が確保されたガラス溶着体1を簡易に製造することができる。
また、溶融領域7で発生した泡が溶着予定領域Rの外側から外部に逃がされることになるため、ガラス部材4,5及びガラスフリット層3によって囲まれた領域内に、ガスが進入するのを防止することができる。
また、間隙Sに臨む溶融領域7の露出面積が内側でゼロとなるように、ガラスフリット層3を溶融させるため、ガラスフリット層3において溶着予定領域Rの内側に残存した未溶融領域8がスペーサとして機能する。これにより、ガラス部材4とガラス部材5との間隙Sを確実に維持することができる。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。
例えば、上記実施形態では、レーザ光Lの照射によるガラスフリット層3の溶融に際し、溶着予定領域Rの内側において間隙Sに臨む溶融領域7の露出面積をゼロとしたが、図7に示されるように、溶着予定領域Rの内側において間隙Sに臨む溶融領域7の露出面積7bをゼロとしなくてもよい。この場合にも、溶着予定領域Rの外側において間隙Sに臨む溶融領域7の露出面積7aが露出面積7bよりも大きくなるようにガラスフリット層3を溶融させれば、溶融領域7が再固化した際にその中央部に泡が殆ど残存せず、溶着部の気密性が確保されたガラス溶着体1を簡易に製造することが可能である。なお、ガラス部材4に対してガラス部材5が押圧されているため、その押圧力次第で溶融領域7が押し潰されて、最終的には、溶着予定領域Rの内側において間隙Sに臨む溶融領域7の露出面積がゼロとなる場合がある。
また、ガラスフリット2は、低融点ガラスからなる粉末状の部材に限定されず、ガラス部材4,5と同程度の融点を有するガラスからなる部材であってもよい。ガラスフリット層3に集光スポットFSが合うようにレーザ光Lを集光することで、ガラスフリット層3が局所的に加熱されるからである。このように、本発明に係るガラス溶着方法によれば、ガラスフリット2に用いるガラス材料の選択の自由度を大きくすることができる。
また、ガラス部材4にガラスフリット2を固着させず、ガラス部材4とガラス部材5との間にガラスフリット2を介在させることで、ガラスフリット層3を溶着予定領域Rに沿って形成してもよい。
また、ガラスフリット層3が薄いときには、ガラス部材4を介してレーザ光Lを溶着予定領域Rに沿って照射してもよい。
本発明に係るガラス溶着方法の一実施形態によって製造されたガラス溶着体の斜視図である。 本発明に係るガラス溶着方法の一実施形態における配置工程の前半を説明するための図である((a):斜視図、(b):(a)のIIb−IIb線に沿っての断面図)。 本発明に係るガラス溶着方法の一実施形態における配置工程の後半を説明するための図である((a):斜視図、(b):(a)のIIIb−IIIb線に沿っての断面図)。 本発明に係るガラス溶着方法の一実施形態における溶着工程を説明するための図である((a):斜視図、(b):(a)のIVb−IVb線に沿っての断面図)。 レーザ光入射側のガラス部材をガラス溶着体から剥離したときのガラスフリット層の表面写真を示す図である。 図1のVI−VI線に沿っての断面図である。 本発明に係るガラス溶着方法の他の実施形態における溶着工程を説明するための図である。 従来のガラス溶着方法の溶着工程を説明するための図である。
符号の説明
1…ガラス溶着体、2…ガラスフリット(ガラス片)、3…ガラスフリット層(ガラス片層)、4…ガラス部材(第1のガラス部材)、5…ガラス部材(第2のガラス部材)、7…溶融領域、R…溶着予定領域、L…レーザ光。

Claims (3)

  1. 第1のガラス部材と第2のガラス部材とを溶着してガラス溶着体を製造するガラス溶着方法であって、
    前記第1のガラス部材と前記第2のガラス部材との間に、複数のガラス片を含むガラス片層を溶着予定領域に沿って配置する配置工程と、
    前記第1のガラス部材に対して前記第2のガラス部材が押圧された状態で、レーザ光を前記溶着予定領域に沿って照射し、前記第1のガラス部材と前記第2のガラス部材とを溶着する溶着工程と、を含み、
    前記溶着工程では、前記第1のガラス部材と前記第2のガラス部材との間隙に臨む溶融領域の露出面積が前記溶着予定領域の一方の側よりも他方の側で大きくなるように、前記ガラス片層を溶融させることを特徴とするガラス溶着方法。
  2. 前記溶着工程では、前記溶融領域の露出面積が前記一方の側でゼロとなるように、前記ガラス片層を溶融させることを特徴とする請求項1記載のガラス溶着方法。
  3. 前記溶着工程では、前記溶着予定領域が環状に設定されている場合に、前記一方の側を前記溶着予定領域の内側とし、前記他方の側を前記溶着予定領域の外側とすることを特徴とする請求項1又は2記載のガラス溶着方法。
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