本発明は、光切断法による三次元形状の計測に際し、測定対象物(以下「ワーク」という。)に照射されるスリット状の光(以下「スリット光」という。)について、従来は理想的な平面であると仮定されているが光学系の問題により実際には曲面状となる(形状歪みが生じる)スリット面形状を、所定の曲面にモデル化するものである。
図10に、スリット光の形状歪みの一例(計測例)を示す。図10は、平面であることが計測等により保証されている基準板(平面基準板)の板面に対して照射されたスリット光の断面線(以下「スリット断面線」ともいう。)についての計測例である。本例に係る計測対象面は、前記のとおり平面であることが保証されていることから、そのスリット断面線は、理想的には直線となるはずである。しかし、図10に示す計測結果からわかるように、本例の計測によって得られたスリット断面線については、形状歪みが生じている。具体的には、本計測例に係るスリット断面線は、視野幅が約70mmで、平面度が約0.2mm(約±0.1mm)の凹状に反った曲線状となっている。このように、スリット光が平面に対して照射された場合におけるスリット断面線に形状歪みが生じることは、前記のとおり光学系の問題、例えばスリット光を形成するレーザ光がスリット状に変換されるために用いられるシリンドリカルレンズにおける収差等による。
そこで、本発明は、光切断法による三次元形状の計測に際し、図10に示すようなスリット光についての形状歪みの存在を認め、その曲面形状となるスリット面形状を陽に所定の曲面に近似的にモデル化するものである。以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る三次元形状計測装置1は、照射手段としてのレーザ投光部2と、撮像手段としてのカメラ3と、演算手段としての演算制御部5を含む制御装置4とを備える。
レーザ投光部2は、ワーク10に対してスリット光11を照射する。レーザ投光部2は、例えば赤外半導体レーザ等のレーザ光の光源であるレーザ発信器やシリンドリカルレンズ(円筒レンズ)等を有するレーザ出力ユニットとして構成される。すなわち、レーザ投光部2においては、レーザ発信器から発射されたレーザ光が、シリンドリカルレンズを透過することでスリット光(レーザシート)11に変換される。そして、レーザ投光部2から投光されるスリット光11が、ワーク10に照射される。レーザ投光部2からのスリット光11が照射されたワーク10の表面には、その断面形状に応じて光切断線(反射光の輝線)12が形成される。
カメラ3は、レーザ投光部2によって照射されるスリット光11によりワーク10の表面に形成される光切断線12を撮像する。カメラ3は、光切断線12、つまりワーク10の表面にて反射するレーザ光(反射光)を受光する受光センサであり、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等の撮像素子により構成される。そして、カメラ3は、ワーク10の表面に形成される光切断線12を受光して撮像することにより、光切断線12についての画像(以下「スリット画像」ともいう。)を、撮像素子の撮像面13(図2参照)において二次元画像として取得する。カメラ3は、撮像面13に対する光切断線12の結像に際してワーク10の表面からの反射光を受ける受光レンズ14(図2参照)を有する。
また、カメラ3は、レーザ投光部2からのスリット光11の照射方向(投光軸方向)に対して光軸(受光軸)が所定角度ずらされた状態で配置される。例えば、カメラ3は、ワーク10における水平面の部分に形成される光切断線12の部分が、画像上で水平方向となるような姿勢で配置される。カメラ3により撮像された光切断線12についての画像データは、制御装置4に送られる。
制御装置4に備えられる演算制御部5は、カメラ3によって撮像されたスリット画像から光切断線12上の各点の三次元座標を計測し、この三次元座標に基づいてワーク10の三次元形状を計測する。すなわち、演算制御部5は、カメラ3によって撮像されたスリット画像の画像データに基づいて、レーザ投光部2の位置や、受光レンズ14のレンズ中心O1の位置(図2参照)や、ワーク10の表面からの反射光のカメラ3に対する入射角度などから、三角測量の原理により、ワーク10の表面における光切断線12上の各点(照射点)についての三次元座標を計測する。つまり、この光切断線12上の各点の三次元座標が、演算制御部5による計測データ(ワーク10の断面形状に対応する位置データ)となる。一つの光切断線12についての計測データにより、ワーク10の物体としての輪郭線が計測されることとなる。そして、ワーク10に照射されるスリット光11の位置が走査(スキャニング)され所定間隔ごとに更新されることで、演算制御部5は、ワーク10に対するスリット光11の各走査位置(照射位置)における計測データを連続的に求め、ワーク10の三次元形状を計測する。
ワーク10に対するスリット光11の走査に際し、本実施形態の三次元形状計測装置1は、次のような構成を備える。すなわち、図1に示すように、本実施形態の三次元形状計測装置1においては、レーザ投光部2とカメラ3とが、互いに所定の位置関係となる状態で、ケース6内に収容される。ケース6は、レーザ投光部2から照射されるスリット光11のワーク10に対する走査方向に、図示せぬ移動手段によって移動可能に設けられる。
本実施形態では、図1に示すように、ワーク10は、平面部10aとこの平面部10a上に形成される直方体状の凸部10bとを有する。かかるワーク10に対して、レーザ投光部2からのスリット光11は、そのスリット面方向(光切断線12が形成される方向)が凸部10bの短手方向となるように略鉛直下向きに照射され、凸部10bの長手方向(図1における左右方向)に走査される。つまり、本実施形態では、凸部10bの長手方向がワーク10に対するスリット光11の走査方向となり、かかる方向が、ケース6の移動方向となる(矢印A1参照)。
なお、ワーク10に対するスリット光11の走査のための構成は、本実施形態に限定されるものではない。スリット光11の走査に際しては、例えば、回動可能に設けられスリット光11を反射させるミラーを備える構成が用いられてもよい。かかる構成においては、ミラーによるスリット光11の反射方向が、ミラーの角度によって偏向されることで、スリット光11がワーク10に対して走査されることとなる。
制御装置4は、前記のとおりワーク10の三次元形状を計測する演算制御部5に加え、入力部16と、表示部17とを備える。
演算制御部5は、三次元形状計測装置1の一連の動作を制御する。演算制御部5は、プログラム等を格納する格納部、プログラム等を展開する展開部、プログラム等に従って所定の演算を行う演算部、演算部による演算結果等を保管する保管部等を有する。前記格納部に格納されるプログラム等には、後述するスリット断面取得プログラムと、スリット面形状モデル化プログラムとが含まれる。
演算制御部5としては、具体的には、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成や、ワンチップのLSI等からなる構成が用いられる。演算制御部5としては、専用品のほか、市販のパーソナルコンピュータやワークステーション等に上記プログラム等が格納されたものが用いられる。
入力部16は、演算制御部5に接続され、演算制御部5に三次元形状計測装置1の動作に係る種々の情報・指示等を入力する。入力部16としては、専用品のほか、市販のキーボード、マウス、ポインティングデバイス、ボタン、スイッチ等が用いられる。
表示部17は、演算制御部5に接続され、三次元形状計測装置1の動作状況、入力部16から演算制御部5への入力内容、三次元形状計測装置1による計測結果等を表示する。表示部17による表示内容には、光切断線12についての画像であるスリット画像20が含まれる。具体的には、図1に示すように、前記のとおり平面部10aと凸部10bとを有するワーク10についてのスリット画像20は、平面部10aに対応する直線部20aと、凸部10bに対応する凸形状部20bとを有することとなる。表示部17としては、専用品のほか、市販のモニターや液晶ディスプレイ等が用いられる。
以上のような構成を備える三次元形状計測装置1が用いられて行われる本実施形態に係る三次元形状計測方法について説明する。本実施形態の三次元形状計測方法は、ワーク10に対してスリット光11を照射し、ワーク10の表面に形成される光切断線12を撮像し、撮像した光切断線12についての画像(スリット画像)から計測される光切断線12上の各点の三次元座標に基づいてワーク10の三次元形状を計測するものである。
そして、このような光切断法による三次元形状計測方法において、ワーク10に照射されるスリット光11のスリット面形状(レーザシートのシート面形状)について、所定の曲面へのモデル化が行われる。そして、所定の曲面にモデル化されたスリット光11が用いられ、ワーク10についての三次元形状の計測が行われる。したがって、本実施形態の三次元形状計測方法は、ワーク10に照射されるスリット光11のスリット面形状の曲面へのモデル化(以下スリット光11について「曲面モデル化」という。)が行われる曲面モデル化工程と、曲面モデル化されたスリット光11が用いられてワーク10の三次元形状の計測、つまりワーク10の形状についての三次元データ化が行われる形状計測工程とを含む。
本実施形態の三次元形状計測方法における曲面モデル化工程について説明する。曲面モデル化工程におけるスリット光11の曲面モデル化に際しては、図3に示すように、平面であることが既知の基準平面31を有する基準物体である平面基準板30が用いられる。
そして、平面基準板30が用いられて行われる曲面モデル化工程では、平面基準板30の基準平面31に対して一定のスリット光11が照射された状態で、基準平面31に形成される光切断線であるスリット光11の断面線(スリット断面線)22の撮像が、平面基準板30の複数の異なる位置姿勢について行われる。
すなわち、図3において(a)〜(e)に示すように、平面基準板30のレーザ投光部2およびカメラ3に対する様々な位置や姿勢から、平面基準板30の基準平面31についての計測(スリット光11の照射およびスリット断面線22の撮像)が行われる。レーザ投光部2およびカメラ3に対する平面基準板30の位置は、平面基準板30のレーザ投光部2およびカメラ3に対する相対的な距離に対応し、レーザ投光部2およびカメラ3に対する平面基準板30の姿勢は、平面基準板30の基準平面31のスリット光11に対する傾き度合いに対応する。
具体的には、例えば図3(a)〜(c)に示すように、レーザ投光部2およびカメラ3に対してスリット光11の照射方向(図3において下方向)を含む直線方向(図3において上下方向)に平面基準板30が移動させられることにより、平面基準板30のレーザ投光部2およびカメラ3に対する相対的な距離が変化させられる。ここで、スリット光11は、その照射方向側(図3において下側)にかけて略扇状に広がる形状を有するため、平面基準板30がスリット光11の照射方向側に位置するほど、スリット光11によって基準平面31上に形成されるスリット断面線22の長さは長くなる。つまり、図3においては、同図(a)〜(c)にかけて、平面基準板30がスリット光11の照射方向側に位置するので、各図におけるスリット断面線22の長さは、同図(a)に示されるスリット断面線22a、同図(b)に示されるスリット断面線22b、同図(c)に示されるスリット断面線22cの順に長くなっている。また、図3(d)、(e)に示すように、平面基準板30が回転させられること等により、平面基準板30が有する基準平面31のスリット光11に対する傾き度合いが変化させられる。
また、平面基準板30の各位置姿勢に対するスリット光11の照射およびスリット断面線22の撮像に際しては、レーザ投光部2から照射されるスリット光11は一定とされる。つまり、強度や照射方向等の照射条件が一定とされて照射された共通のスリット光11に対して、平面基準板30の位置姿勢が変化させられることで、各位置姿勢に対応するスリット断面線22の撮像が行われる。また、平面基準板30の各位置姿勢についてのスリット断面線22の撮像に際しては、前記のとおりレーザ投光部2とカメラ3とはケース6において所定の位置関係で収容されることから、レーザ投光部2(スリット光11)に対するカメラ3の撮像位置も一定となる。
こうした平面基準板30の各位置姿勢に対するスリット光11の照射およびスリット断面線22の撮像により、平面基準板30の各位置姿勢における基準平面31についてのスリット断面線22(22a〜22e)が取得される。すなわち、平面基準板30の各位置姿勢についてのスリット断面線22が、計測データとしてサンプリングされる。ここで取得される各スリット断面線22は、基準平面31が既知の平面であること、および基準平面31に照射されるスリット光11においては光学系の問題により形状歪みが生じることから、曲線状となる。
このような平面基準板30の各位置姿勢に対応するスリット断面線22の取得に際し、本実施形態の三次元形状計測装置1においては、図1に示すように、演算制御部5において、スリット断面取得部51が備えられる。
すなわち、スリット断面取得部51は、スリット断面取得手段の実施の一形態であり、基準平面31に対してレーザ投光部2により一定のスリット光11が照射された状態で、基準平面31に形成されるスリット断面線22の撮像が、カメラ3により平面基準板30の複数の異なる位置姿勢について行われることにより、平面基準板30の各位置姿勢における基準平面31についてのスリット断面線22(22a〜22e)を取得する。実体的には、演算制御部5が、その格納部に格納されたスリット断面取得プログラムに従って所定の演算等を行うことにより、スリット断面取得部51としての機能を果たす。
続いて、平面基準板30の各位置姿勢における基準平面31に対応するスリット断面線22に基づき、これら複数のスリット断面線22が近似的に適合する共通の曲面が導かれる。
すなわち、図4に示すように、平面基準板30の各位置姿勢(図3(a)〜(e)参照)についてのスリット断面線22a〜22eから、これらがベストフィットする曲面40が導かれる。つまり、各スリット断面線22a〜22eは、レーザ投光部2から照射されるスリット光11の異なる位置におけるスリット断面形状に対応するものである。そして、曲面40は、複数のスリット断面線22a〜22eのそれぞれが近似的に適合する(沿う状態となる)共通の(一つの)曲面となる。したがって、曲面40の形状は、スリット光11のスリット面形状に近似する形状となる。図4に示すように、本実施形態では、複数のスリット断面線22から導かれる曲面40の形状は、円筒面の一部形状とされている。
そして、このように複数のスリット断面線22から導かれた曲面40が、スリット光11についての曲面モデルとして用いられる。すなわち、ワーク10に照射されるスリット光11のスリット面形状が、曲面40としてモデル化(数式化)される。
このようなスリット光11の曲面モデル化に際し、本実施形態の三次元形状計測装置1においては、図1に示すように、演算制御部5において、スリット面形状モデル化部52が備えられる。
すなわち、スリット面形状モデル化部52は、スリット面形状モデル化手段の実施の一形態であり、レーザ投光部2によりワーク10に照射されるスリット光11のスリット面形状を、スリット断面取得部51により取得された、平面基準板30の各位置姿勢における基準平面31に対応するスリット断面線22に基づき、これら複数のスリット断面線22が近似的に適合する共通の曲面40としてモデル化する。実体的には、演算制御部5が、その格納部に格納されたスリット面形状モデル化プログラムに従って所定の演算等を行うことにより、スリット面形状モデル化部52としての機能を果たす。
以上のようにして、本実施形態の三次元形状計測方法における曲面モデル化工程が行われる。
なお、本実施形態では、図3(a)〜(e)および図4に示すように、スリット光11の曲面モデル化に際し、取得されるスリット断面線22の数が5本(スリット断面線22a〜22e)とされている(スリット断面線22が取得される平面基準板30の異なる位置姿勢が5つとされている)が、スリット光11の曲面モデル化に際して用いられるスリット断面線22の数は、特に限定されるものではない。例えば、本実施形態のように、スリット光11がモデル化される曲面40の形状が円筒面の一部形状とされる場合等においては、スリット光11の曲面モデル化に際して用いられるスリット断面線22の数は、曲面モデル化についての精度や生産性等との兼ね合いから、10〜20本程度が好ましいことが実験等によりわかっている。
また、スリット光11の曲面モデル化に際して用いられる曲面としては、本実施形態における曲面40のような円筒面のほか、円錐面であってもよい。また、スリット光11の曲面モデル化に際し、例えば円筒面や円錐面へのスリット光11のフィッティングが困難な場合などにおいては、スリット光11がフィッティングされる曲面として、NURBS曲面、Bスプライン曲面、Bezier(ベツィエ)曲面、グレゴリ曲面などのパラメトリック曲面が用いられてもよい。
ただし、スリット光11の曲面モデル化に際しては、曲面モデルとして用いられる曲面の形状は、円錐面または円筒面の一部形状であることが有利であると考えられる。すなわち、上記のようなNURBS曲面などのパラメトリック曲面は、円錐面や円筒面といった初等関数で表せる曲面に比べて、幾何学的に複雑となる。このため、演算制御部5が有する演算処理能力によっては、スリット光11の曲面モデル化やその後のワーク10についての三次元形状の計測における演算処理がやや重たくなる場合がある。この点、円錐面や円筒面といった基本形態は、数式的に簡潔に表現できるため、演算制御部5における処理についての負担が比較的少なく、良好な作業性が得られると考えられる。一方で、スリット光11の曲面モデル化に際しての汎用性の面からは、円錐面や円筒面に比べて形状自由度の高いNURBS曲面などのパラメトリック曲面の方が、円錐面や円筒面よりも好ましいともいえる。
また、本実施形態では、スリット光11の曲面モデル化に際して用いられる基準物体として、カメラ3についてのキャリブレーション用のキャリブレーションプレートが用いられる。つまり、基準物体として平面基準板30が用いられる本実施形態では、平面基準板30として、カメラ3のカメラキャリブレーション用のキャリブレーションプレートが用いられる。このように、本実施形態では、曲面モデル化工程においてスリット断面線22の取得に際してスリット光11が照射される基準平面31が、カメラ3についてのキャリブレーション用のキャリブレーションプレートが有する被撮影面とされる。
通常、光切断法による三次元形状の計測のように、二次元画像から三次元形状への復元が行われるに際して用いられるカメラについては、キャリブレーション(校正)が行われる。カメラのキャリブレーションの手法には、キャリブレーションプレートが用いられるものがある。かかる手法は、公知の技術であるため、その詳細な説明は省略するが、概略的には次のようにして行われる。
すなわち、カメラのキャリブレーションは、カメラが配置された世界座標系における三次元空間の点と、二次元画像の点との間の射影を定める射影行列から、カメラが有する固有のパラメータ(変数)を求めるプロセスである。カメラの変数には、焦点距離や画素サイズ(縦横比)や画像中心やレンズ歪み等のような内部パラメータ(内部変数)と、カメラの位置や姿勢(向き)を表す外部パラメータ(外部変数)とがある。こうしたカメラのパラメータが求められるに際して、キャリブレーションプレートが用いられる。
キャリブレーションプレートとは、三次元形状や表面属性が既知の物体である。このキャリブレーションプレートが、例えばカメラに対して異なる距離や姿勢で複数回撮影される。これにより、キャリブレーションプレートにおける三次元位置と、キャリブレーションプレートのカメラ画像における二次元位置との両者の位置関係が計測される。そして、かかる位置関係から、前記のような射影行列が求められ、この射影行列により、カメラの各種パラメータが算出される。キャリブレーションプレートの表面属性としては、大きさや形状等が全て既知のマーカや格子状のパターン等が用いられる。
本実施形態では、ワーク10の三次元形状の計測に際し、光切断線12を撮像するための手段であるカメラ3についてのキャリブレーションが行われる。そして、カメラ3のキャリブレーションに用いられるキャリブレーションプレートとして、平面基準板30が用いられる。キャリブレーションプレートとしての平面基準板30は、矩形状の板状部材であり、その一側の板面が、平面であることが既知の基準平面31となる。この平面基準板30が有する基準平面31が、カメラ3のキャリブレーションに際しての被撮影面となる。そして、このカメラ3のキャリブレーションに用いられる基準平面31上には、キャリブレーションプレートが有する表面属性として、所定の間隔で格子状に並ぶドット(白丸)32が、略全面にわたって描かれている(図3参照)。
このようなドット32が描かれた平面基準板30が用いられて行われるカメラ3のキャリブレーションの一例としては、基準平面31が、カメラ3の撮像面13と平行になるように撮影される。この撮影画像においては、基準平面31上のドット32が、カメラ3のレンズ(受光レンズ14)のレンズ歪み(樽型歪みや糸巻型歪みなどの歪曲収差)によって本来写るべき位置からずれる。こうしたカメラ3におけるレンズ歪みによるずれ量が、画像処理によって計算され、カメラ3の内部パラメータであるレンズ歪みが求められる。このようなレンズ歪みに基づくドット32のずれが、実際の平面基準板30におけるドット32の配置に対応するように、カメラ3における画像が修正される。この修正量は、演算制御部5における格納部などに予め格納される。
このように、本実施形態では、スリット光11の曲面モデル化に際して用いられる平面基準板30が、カメラ3のキャリブレーションプレートとして兼用される。これにより、スリット光11の曲面モデル化に際して、平面基準板30として機能する部材を別途用意する必要がなくなるとともに、スリット光11の曲面モデル化を、カメラ3について行われるキャリブレーションと関連させて行うことが可能となり、作業性の向上を図ることができる。以下の説明では、平面基準板30を指して「キャリブレーションプレート60」という。
曲面モデル化工程の次に、ワーク10の三次元形状の計測が行われる形状計測工程が行われる。つまり、曲面モデル化工程において曲面モデル化されたスリット光11が用いられて、ワーク10の三次元形状の計測が行われる。
具体的には、形状計測工程では、ワーク10の三次元形状が計測されるに際し、ワーク10に照射されるスリット光11のスリット面形状が、モデル化された曲面40とされ、ワーク10の表面に形成される光切断線12上の各点について三次元座標が計測される。なお、以下の説明では、曲面40として曲面モデル化されたスリット光11を、「スリット曲面モデル41」とする。
ワーク10の三次元形状の計測に際しては、前述したように、レーザ投光部2によりスリット光11がワーク10に照射され、カメラ3によって撮像されたスリット画像の画像データに基づいて、レーザ投光部2の位置などから、三角測量の原理により、ワーク10の表面における光切断線12上の各点についての三次元座標が計測される。この三次元座標が計測される光切断線12上の各点は、スリット光11のスリット面上の点となる。そこで、本実施形態の形状計測工程においては、図2に示すように、カメラ3における撮像面13上のスリット画像20(撮像された光切断線12についての画像)上の各点からの、光切断線12上の各点についての三次元座標の計測に際し、スリット曲面モデル41が用いられる。
したがって、本実施形態では、演算制御部5は、ワーク10の三次元形状を計測するに際し、スリット光11のスリット面形状を、スリット面形状モデル化部52によりモデル化された曲面40として、ワーク10の表面に形成される光切断線12上の各点の三次元座標を計測する。
以上のように、曲面モデル化工程と形状計測工程とを含む本実施形態の三次元形状計測方法について、図5に示すフロー図を用いて説明する。
本実施形態の三次元形状計測方法においては、まず、カメラ3の(受光レンズ14の)キャリブレーションが行われる(S110)。すなわち、カメラ3によってキャリブレーションプレート60の被撮影面となる基準平面31が撮影され、その撮影画像におけるドット32等に基づいて、カメラ3の各種パラメータが求められる。カメラ3のキャリブレーションによって求められた各種パラメータは、演算制御部5における格納部等に予め格納される。
次に、スリット光11の曲面モデル化が行われる(S120〜S140)。スリット光11の曲面モデル化に際しては、まず、キャリブレーションプレート60に対するスリット光11の照射が行われる(S120)。すなわち、前記のとおりカメラ3のキャリブレーションに用いられるキャリブレーションプレート60に対して、レーザ投光部2により、スリット光11が照射される。
次に、キャリブレーションプレート60を用いた複数のスリット断面線22の取得が行われる(S130)。すなわち、図3(a)〜(e)に示すように、スリット光11の照射を受けるキャリブレーションプレート60のレーザ投光部2およびカメラ3に対する位置姿勢が変化させられ、各位置姿勢についてのスリット断面線22が取得される。
そして、複数のスリット断面線22を用いたスリット曲面モデル41の構築が行われる(S140)。すなわち、図4に示すように、キャリブレーションプレート60の各位置姿勢について取得された複数のスリット断面線22a〜22eから、これらが近似的に適合する共通の曲面として、円筒面の一部形状を有する曲面40が導かれる。そして、ワーク10に照射されるスリット光11のスリット面形状が、曲面40としてモデル化(数式化)されることで、スリット曲面モデル41が構築される(図2参照)。
このように、スリット光11の曲面モデル化が行われる上記のステップS120〜S140が、本実施形態の三次元形状計測方法における曲面モデル化工程に対応する。ただし、スリット光11の曲面モデル化は、カメラ3のキャリブレーションと関連して行われてもよい。スリット光11の曲面モデル化がカメラ3のキャリブレーションと関連して行われるに際しては、本実施形態に係る方法は次のような態様となる。
すなわち、上記ステップS110におけるカメラ3のキャリブレーションに際しては、キャリブレーションプレート60が、カメラ3に対して異なる位置姿勢で複数回撮影され、各位置姿勢についての撮影画像が用いられる場合がある。かかる場合、そのカメラ3のキャリブレーションに際して撮影されるキャリブレーションプレート60の各位置姿勢について、スリット光11の曲面モデル化に用いられるスリット断面線22の取得が行われる。
つまり、レーザ投光部2およびカメラ3に対して、変化させられて異なるキャリブレーションプレート60の各位置姿勢について、カメラ3のキャリブレーション用の撮影と、キャリブレーションプレート60に対してレーザ投光部2からのスリット光11の照射が行われた状態でのスリット断面線22の取得とが行われる。したがって、この場合、キャリブレーションプレート60の位置姿勢が変化させられるたびに、キャリブレーションプレート60について、カメラ3による、スリット光11が照射されていない状態での撮像(カメラ3のキャリブレーション用の撮影)と、スリット光11が照射されている状態での撮像(スリット断面線22の取得)とが、交互に(順序問わず)行われることとなる。なお、カメラ3のキャリブレーション用のキャリブレーションプレート60の撮影は、スリット光11が照射された状態で行われてもよい。
このように、本実施形態では、スリット光11の曲面モデル化に際して用いられる平面基準板30が、カメラ3のキャリブレーション用のキャリブレーションプレート60として兼用されているため、スリット光11の曲面モデル化を、カメラ3のキャリブレーションと関連して行うことができる。これにより、変化させられるキャリブレーションプレート60の位置姿勢を、カメラ3のキャリブレーションとスリット光11の曲面モデル化とで共用することができるので、作業の効率化が図れる。
つまりは、キャリブレーションプレート60が用いられるスリット光11の曲面モデル化(スリット断面線22の取得)は、カメラ3のキャリブレーション工程の最中に(カメラ3のキャリブレーションと関連して)行われても、カメラ3のキャリブレーション工程の後に行われてもよい。
以上により、本実施形態の光切断法によるワーク10の三次元形状の計測に際しての、スリット光11の曲面モデル化を含むキャリブレーションが完了する。
続いて、スリット光11の曲面モデル化によって構築されたスリット曲面モデル41が用いられ、ワーク10の三次元形状の計測が行われる。ワーク10の三次元形状の計測に際しては、まず、ワーク10に対するスリット光11の照射が行われる(S210)。すなわち、ワーク10に対して、レーザ投光部2により、スリット光11が照射される(図1参照)。
次に、光切断線12の撮像およびスリット画像20の中心線(以下「スリット画像中心線」という。)の抽出が行われる(S220)。すなわち、カメラ3により、スリット光11が照射されたワーク10の表面に形成される光切断線12が撮像される。これにより、カメラ3の撮像面13にて光切断線12についての画像であるスリット画像20が得られる。そして、このスリット画像20についてのスリット画像中心線の抽出が行われる。
具体的には、例えば図6(a)に示すように、スリット光11の照射により形成される光切断線12についての撮像画像であるスリット画像20は、線状の画像となるが、撮像面13において有限の幅(線の太さ)を有する。つまり、スリット画像20の幅は、撮像面13における一つの画素(ピクセル)の長さよりも長く、複数の画素にわたることとなる。そこで、撮像面13におけるスリット画像20の幅方向の輝度分布(撮像素子の出力レベルの分布)に基づいて、スリット画像中心線20cが抽出される。
スリット画像20について、ある位置におけるスリット画像20の幅方向に沿う輝度Lの分布は、例えば図6(b)に示すグラフG1ようになる。このようなスリット画像20の幅方向(w方向)についての輝度分布から、その幅方向についての中心位置(中心点)が求められる。スリット画像20についての幅方向の中心位置としては、例えば、図6(b)において幅方向を示すw軸とグラフG1とで囲まれる面積が等しくなる幅方向の位置や、グラフG1における輝度についての所定の閾値以上の部分の加重平均となる位置や、輝度Lの分布を正規分布に近似させた場合の平均の位置などが用いられる。このようにして求められるスリット画像20についての幅方向の中心位置(中心点)の、スリット画像20の長さ方向(線方向)に沿う集合が、スリット画像中心線20cとして抽出される。
続いて、スリット画像中心線20c上の各点に対応するスリット曲面モデル41上の点の算出が行われる(S230)。すなわち、スリット画像中心線20c上の各点について、これら各点と受光レンズ14のレンズ中心O1とを結ぶ直線が算出され、この直線の、スリット曲面モデル41に対する交点が求められる。
具体的に、図2に示すように、例えばスリット画像中心線20c上の点P1について説明する。撮像面13において二次元座標で表される点P1の位置(x1、y1)や、受光レンズ14のレンズ中心O1の位置や、レンズ中心O1に対する撮像面13の位置などは、カメラ3のキャリブレーションによって求められたカメラ3のパラメータから測定される。また、スリット曲面モデル41の世界座標系における位置は、スリット光11の曲面モデル化に際して、実際のスリット光11との関係から測定される。これらの測定値から、スリット画像中心線20c上の点P1と、受光レンズ14のレンズ中心O1とを通る直線L1が算出され、この直線L1の、スリット曲面モデル41に対する交点となる点P2が求められる。このスリット曲面モデル41上の点P2が、二次元画像である撮像面13のスリット画像中心線20c上における点P1に対応する、世界座標系における三次元空間における計測点となる。
つまり、撮像面13上のスリット画像20は、ワーク10におけるスリット光11の光切断線12についての画像であり、また、スリット曲面モデル41は、スリット光11が曲面モデル化されたものである。したがって、スリット曲面モデル41上には、スリット画像中心線20c上の個々の点に対応する点が存在することとなる。このスリット画像中心線20c上の個々の点に対応するスリット曲面モデル41上の点が、三次元空間上の計測点となる。
次に、スリット曲面モデル41上の点の三次元座標の計測が行われる(S240)。すなわち、スリット画像中心線20c上の各点に対応するスリット曲面モデル41上の計測点の三次元座標が、レーザ投光部2の位置や、受光レンズ14のレンズ中心O1の位置や、ワーク10の表面からの反射光のカメラ3に対する入射角度などから、三角測量の原理により計測される。つまり、上記の例においては、スリット画像中心線20c上の点である点P1の位置(x1、y1)から、これに対応するスリット曲面モデル41上の点P2についての三次元座標(X、Y、Z)が計測される。ここで、図2に示すように、カメラ3の撮像面13における二次元座標で認識された点(スリット画像中心線20c上の点)は、円筒面の一部形状を有するスリット曲面モデル41において存在する高さデータとして演算される。
そして、このような計測点についての三次元座標の計測が、ワーク10について得られる全ての点群について行われる(S250)。すなわち、スリット画像中心線20c上の各点に対応する計測点についての三次元座標の計測が、ワーク10に対するスリット光11の全走査範囲について、所定間隔ごとに更新されるスリット光11の各走査位置(照射位置)にて行われる。したがって、ここでのワーク10について得られる全ての点群とは、ワーク10に対するスリット光11の走査範囲において、全ての走査位置にて得られるスリット画像中心線20c上の全ての点となる。このような点群における各点に対応する計測点についての三次元座標の計測値は、演算制御部5において随時記憶される。
このようにしてワーク10について得られる全ての点群についての三次元座標の計測データから、ワーク10の三次元形状が計測される。すなわち、前記のとおりスリット画像中心線20c上の点はスリット曲面モデル41において高さデータとして演算されることから、スリット光11のある走査位置(照射位置)に対応するスリット画像中心線20c上の点群についてのスリット断面モデル41上の計測データ(計測点の集合)により、その走査位置におけるワーク10の断面形状に対応する輪郭線45が計測される(図2参照)。このようなワーク10についての輪郭線45が、スリット光11の走査方向に連続的に取得されることで、これらの輪郭線45の集合から、ワーク10の三次元形状が計測される。
そして、ワーク10についての全ての計測点の統合、および三次元点群としてのファイル保存が行われる(S260)。すなわち、三次元座標が計測されたワーク10について得られる全ての点群についての計測点が、輪郭線45およびこれらの集合として統合され、ワーク10の三次元点群、つまりワーク10の三次元形状として、演算制御部5において保存される。
このように、ワーク10の三次元形状の計測が行われる上記のステップS210〜S260が、本実施形態の三次元形状計測方法における形状計測工程に対応する。形状計測工程によって計測されたワーク10の三次元形状は、制御装置4における表示部17において表示される。
以上のようにして計測されたワーク10についての三次元形状が用いられ、図面等との比較による解析、品質検査が行われる(S270)。すなわち、前記のとおり表示部17に表示されるワーク10についての三次元形状について、CAD図面等の設計図面や試作品等から選出されたマスターワーク等との比較が行われる。これにより、計測対象であるワーク10についての三次元形状の解析や、品質の良否判定等の品質検査が行われる。
以上説明した本実施形態の三次元形状計測装置1および三次元形状計測方法によれば、光切断法による三次元形状計測において、ワーク10に照射されるスリット光11について存在する曲がり等の形状歪みに対する処置をシステマチックにすることができるとともに、スリット光11の形状歪みに起因する計測誤差を低減することができ、計測の安定性や汎用性を向上することができる。
すなわち、本実施形態によって説明したように、光切断法による三次元形状計測において、光学系の問題により形状歪みを有し曲面となるスリット光11を、陽に所定の曲面にモデル化することにより、従来のようにスリット光11が平面としてモデル化される場合に比べて計測性能を向上することができる。
また、スリット光11が、スリット曲面モデルとしてモデル化(数式化)されることから、そのスリット曲面モデルを表す数式についてのパラメータの調整により、カメラ3のパラメータ等の計測条件の変更等に対してパラメトリックに容易に対応することができるとともに、計測に必要となる必要となるデータ量を少なくすることができる。これにより、スリット光11の形状歪みに対応した三次元形状の計測を行うに際し、従来技術のように光切断線が撮像される撮像面において区分された領域ごとに個別のパラメータが用いられる方式に比べ、計測がシステマチックで管理しやすくなり、計測について高い安定性や汎用性が得られる。
本実施形態の三次元形状計測装置1および三次元形状計測方法の適用例およびその効果について、図1、図7、図8および図9を用いて説明する。本適用例は、本実施形態の三次元形状計測が、機械加工部品の三次元形状についてのインライン検査に用いられる場合についてのものである。
まず、インラインでの直進スキャンによる検査の例について説明する。すなわち、図1に示すように、インライン検査の検査対象となる三次元形状の計測対象(ワーク10)に対するスリット光11の走査に際し、スリット光11が直進移動させられる場合について説明する。また、本例に係るワーク10は、反りのない機械加工部品である場合とする。この場合、前述したようにワーク10における凸部10bの長手方向がスキャン方向となり、かかる方向が、スリット光11の直進移動方向となる。また、ワーク10は、前記のとおり反りのない機械加工部品であるため、ワーク10を形成する面がいずれも平面となる。
このようなワーク10についての直進スキャンによる検査において、ワーク10の三次元形状計測に際してスリット光11についての曲面モデル化が行われない場合、つまりスリット光11のスリット面形状について所定の曲面とする補正が行われずにスリット面形状が平面であるとして計測が行われる場合、計測されるワーク10の三次元形状について生じる計測誤差が大きくなる。具体的には、例えば図7(a)に示すように、ワーク10の三次元形状についての計測誤差が大きくなることにより、計測結果として表示部17において表される三次元形状画像70aにおいて、三次元形状に反り(図示では凹状の反り)が生じた計測結果が得られる。つまりこの場合、計測結果に反映されることとなるスリット光11が有する形状歪みとしての反りによる影響が大きくなり、十分な計測精度が得られない。
一方、ワーク10についての直進スキャンによる検査において、ワーク10の三次元形状計測に際してスリット光11についての曲面モデル化が行われる場合、つまりスリット光11のスリット面形状について所定の曲面とする補正が行われる場合、計測されるワーク10の三次元形状について生じる計測誤差が低減される。具体的には、図7(b)に示すように、ワーク10の三次元形状についての計測誤差が低減されることにより、計測結果として表示部17において表される三次元形状画像70bにおいて、三次元形状における反りが補正された計測結果が得られる。つまりこの場合、計測結果に反映されることとなるスリット光11が有する形状歪みとしての反りによる影響が低減され、十分な計測精度が得られる。
次に、インラインでの回転スキャンによる検査の例について説明する。図8に示すように、本例に係るワーク80は、円筒形状を有する機械加工部品である。そして、このインライン検査の検査対象となる三次元形状の計測対象(ワーク80)に対するスリット光11の走査に際しては、ワーク80の円筒面にスリット光11が照射された状態で、ワーク80が円筒形状の筒軸方向(軸心線C1参照)を回転軸方向として回転させられる。したがって、本例においては、ワーク80の回転方向と反対の方向が、ワーク80が有する円筒面に対するスキャン方向となる。
このようなワーク80についての回転スキャンによる検査において、前述したワーク10についての直進スキャンの場合と同様に、ワーク80の三次元形状計測に際して、スリット光11についての曲面モデル化が行われない場合と、曲面モデル化が行われる場合とのそれぞれについての計測結果例を図9に示す。
図9(a)に示すように、スリット光11についての曲面モデル化が行われない場合、ワーク80の三次元形状についての計測誤差が大きくなることにより、計測結果として表示部17において表される三次元形状画像90aにおいて、例えば円筒形状が糸巻き状に反った計測結果が得られる。一方、図9(b)に示すように、スリット光11についての曲面モデル化が行われる場合、ワーク80の三次元形状についての計測誤差が低減されることにより、計測結果として表示部17において表される三次元形状画像90bにおいて、三次元形状が円筒面形状として正しく計測された計測結果が得られる。
このように、機械加工部品の三次元形状についてのインライン検査において、本実施形態の三次元形状計測が適用されることにより、三次元形状の計測に際し、計測結果に反映されることとなるスリット光11が有する形状歪みによる影響が低減され、十分な計測精度が得られる。
以上説明した本発明に係る三次元形状計測は、例えば自動車業界において、ボディパネル等の曲面が計測検査される場合において、従来方式に比べて正確な形状ディジタイズが可能になる。そして、その計測結果が、より厳密なボディのプレス成形の品質検査において適用できる可能性が出てくる。
また、本発明に係る三次元形状計測が用いられることで、自動車部品としての軸状やパイプ状の部品の検査に際して三次元形状が計測される場合、より正確に三次元形状(例えば直径など)を捕えることが可能となる。また、スリット光の曲面モデル化というシステマチックな手法が用いられることにより、前述したような部品のインライン検査における管理調整が容易となる。特に、インライン検査においては、ワークに照射されるスリット光の形状歪みに対する処置として、時間のかかる再キャリブレーションは実現しにくいため、本発明に係る三次元形状計測のように、スリット光の曲面モデル化に際してパラメトリックで効率的な校正を行うことができる手法が有効となる。