図1において、形状測定装置10は、光切断法により測定対象Sの断面輪郭の形状を測定するものである。形状測定装置10は、測定ヘッド12、測定演算部13、表示部14を有している。この形状測定装置10は、測定対象Sとして、例えば図示される軌条(レール)のように長尺物の断面輪郭を長手方向に連続的に測定するものであり、測定ヘッド12に対して測定対象Sがその長手方向に相対的に移動する。測定ヘッド12は、レーザ照射部16とカメラ17とを備えている。レーザ照射部16とカメラ17とは、それらの間隔や光軸同士の角度等が変化しないように互いに固定されている。
以下、測定対象S等が置かれる物体空間の座標(以下、物体空間座標という)を、図示されるようにxyzの直交座標で表すものとする。すなわち、互いに直交するx軸、y軸、z軸のうち、y軸がレーザ照射部16の光軸P1に平行であり、z軸が測定対象Sの長手方向に平行であって、測定対象Sのxy平面の断面輪郭を形状測定装置10が測定する。
光源としてレーザ照射部16は、レーザ光をx軸方向に広げた線状レーザ光(線状光)を測定対象Sに向けて照射する。カメラ17は、焦点距離fの撮像レンズ17aが取り付けられており、二次元イメージセンサ(図示省略)で撮像する構成である。このカメラ17の二次元イメージセンサの撮像面には、Nw、Nvをいずれも2以上の自然数として、Nw行Nv列で画素(受光素子)がマトリックス状に配列されている。
カメラ17は、その撮像レンズ17aの光軸P2がレーザ照射部16の光軸P1を含むyz平面にあり、レーザ照射部16の光軸P1に対して傾斜角θだけ傾けられている。また、カメラ17は、二次元イメージセンサの行方向がx軸と平行となる姿勢に調整されている。カメラ17は、線状レーザ光が照射されている測定対象Sの測定面を撮像し、得られる光切断像を測定演算部13に送る。
測定演算部13は、カメラ17から得られる光切断像に基づき、断面輪郭線を算出する。測定演算部13には、表示部14が接続されており、表示部14には、断面輪郭線等が表示される。
線状レーザ光を測定対象Sに照射した場合、測定対象Sの表面には、x軸に沿って明るい光切断線が生じ、これを含む光切断像がカメラ17で撮像される。測定演算部13は、光切断像内の光切断線の画素位置(座標)を物体空間座標のxy座標平面に変換することで、断面輪郭線を求める。この測定演算部13による変換は、射影変換により行われる。
以下、射影変換について説明する。図2に示すように、レーザ照射部16の光軸P1と撮像レンズ17aの光軸P2との交点を物体空間座標の原点とする。また、光軸P2が通るカメラ17の撮像面IMの中心を原点として、撮像面IM上の座標(以下、撮像面座標という)をXY座標で示すものとする。XY座標は、X軸とY軸が互いに直交しかつXY平面に対して光軸P2が垂直な直交座標である。撮像面座標のX軸と物体空間座標のx軸とは平行である。したがって、この例では、撮像面IMの行方向がX軸方向であり、列方向がY軸方向である。
光切断線上の任意の点Paの物体空間座標(x,y)と、この点Paが撮像面IMに結像した点の撮像面座標(X,Y)との関係は、撮像レンズ17aの焦点距離f、傾斜角θ及び拡大率Mを用いて、式(1)、(2)で示される。拡大率Mは、物体空間座標の原点を含む撮像面IMに平行な射影平面PLに撮像レンズ17aを視点として点Paを射影した際の、物体空間座標の原点から点Paまでの距離の、撮像面座標の原点から撮像面IM上の点Paに対応する像までの距離(像高)に対する比率である。この拡大率Mは、撮像レンズ17aと射影平面PLとの距離Lとすると「M=(L-f)/f」で示すことができる。
測定演算部13は、カメラ17で撮像された光切断像から抽出される光切断線の撮像面座標(X,Y)を、式(1)、(2)により物体側座標(x,y)に射影変換することで、線状レーザ光が照射されている測定対象Sの部分の断面輪郭線を得る。
上記式(1)、(2)に含まれる傾斜角θと拡大率Mは、計測等によりある程度の精度で知ることはできるが、正確な値は未知である。測定演算部13には、校正時に、後述する校正装置21(図3参照)で求める射影変換パラメータ(傾斜角θと拡大率M)が設定される。これにより、測定対象Sの断面輪郭を正確に復元した断面輪郭線を得る。
なお、測定演算部13では、カメラ17の撮像面IMの行方向がX軸方向、列方向がY軸方向であるから、n行m列(n=1、2・・・Nw、m=1、2・・・Nv)の画素のX軸方向、Y軸方向の画素位置Xn,Ymを、式(3)、式(4)により、撮像面座標(X,Y)に変換する。式(3)、式(4)中の値dXは、1個の画素のX軸方向の長さ、値dYは、1個の画素のY軸方向の長さである。
次に、形状測定装置10に対する校正について説明する。図3に示すように、校正の際には、測定ヘッド12が校正装置21に組み付けられる。測定ヘッド12のレーザ照射部16とカメラ17とは、測定対象Sを測定するときと同じ状態に相互に固定された状態とされ、レーザ照射部16の光軸P1が垂直となる姿勢で校正装置21に組み付けられる。なお、以下の説明では、物体空間座標を測定対象Sの測定時と同様に表す。したがって、図3の紙面と垂直な方向がx軸方向であり、図3において上下方向がy軸方向、左右方向がz軸方向である。
校正装置21は、制御部22、データ取得部23及びパラメータ演算部24からなる校正処理部25と、変位計26、第1走査ステージ27、第2走査ステージ28、表示部29等を備えている。また、この校正装置21は、校正パラメータとしての射影変換パラメータの他、後述する回転並進パラメータ、補正量算出関数を出力する。射影変換パラメータを求める際には、台形溝校正片31(図4参照)と平板校正片32(図5参照)とが用いられる。
レーザ照射部16から測定対象Sに照射されるレーザ光は、厳密に直線であることが好ましいが、実際にはレーザ光に曲がりが生じて僅かに曲がっていることがある。校正装置21は、このようなレーザ光の曲がりを考慮した射影変換パラメータを求める。
校正処理部25は、例えばコンピュータに校正用プログラムをインストールすることで、そのコンピュータが制御部22、データ取得部23、パラメータ演算部24等として機能する。表示部29は、カメラ17で撮像されている画像や校正結果等が表示される。制御部22は、校正装置21の各部及び測定ヘッド12のレーザ照射部16とカメラ17とを制御する。
第1走査ステージ27には、台形溝校正片31と平板校正片32とが選択的に載置される。第1走査ステージ27は、y軸走査機構27a及びz軸走査機構27bを備えている。y軸走査機構27aは、第1走査ステージ27をy軸方向、すなわちレーザ照射部16によるレーザ光の照射方向(光軸P1の方向)に移動する。これにより、台形溝校正片31及び平板校正片32を第1走査ステージ27と一体に上下動させ、その高さを変えることができる。z軸走査機構27bは、第1走査ステージ27をy軸走査機構27aと一体にz軸方向に移動させる。y軸走査機構27aは、平板校正片32の上面を、測定ヘッド12のy軸方向の測定範囲内の任意の位置に移動することができるものが好ましい。
変位計26は、この例では一次元レーザ変位計等と称される測定対象までの距離を高い精度で測定するものが用いられている。変位計26は、第2走査ステージ28に固定されている。第2走査ステージ28は、x軸走査機構28aに取り付けられている。変位計26は、x軸走査機構28aによって、第2走査ステージ28と一体にx軸方向に移動される。x軸走査機構28aによる変位計26の移動方向は、線状レーザ光の広がるx軸方向に一致するように調整されている。x軸走査機構28aによって変位計26をx軸方向に移動することで、台形溝校正片31、平板校正片32をx軸方向に走査して距離を測定し、xy平面による断面輪郭を測定できる。x軸走査機構28aは、測定ヘッド12によるx軸方向の測定範囲の全範囲を変位計26で測定できるものが好ましい。
変位計26は、距離を測定する際に測定対象(この例では校正片)に向けてレーザ光を照射する。このレーザ光の光軸P3がレーザ照射部16の光軸P1に平行にされ、z軸方向には光軸P1とは距離z0だけ離れて配置されている。変位計26は、レーザ光が照射される位置、すなわち光軸P3が交差する測定対象までの距離を測定し、その測定データを出力する。
なお、レーザ照射部16とカメラ17は、校正パラメータを求める処理の実施に先立って、線状レーザ光の像が、変位計26の走査方向であるx軸と平行となるように、また、線状レーザ光の像が、撮像面上でX軸に平行になる角度に、予め調整されている。具体的には、校正片の両端部にマーキングをしておき、当該マーキングがx軸と一致するように校正片を配置した後、線状レーザ光を校正片に照射して、その線状レーザ光がマーキングの位置を通過するように、レーザ照射部16やカメラ17の位置や傾きが事前に調整される。
第1校正片としての台形溝校正片31は、図4に示すように、直方体のブロックの上面側に溝31aを形成したものである。溝31aは、台形溝校正片31の上面での開口幅(x軸方向の長さ)が底部より広い断面台形に形成されている。これにより、台形溝校正片31の各上面及び溝31aの各面からなる5面の測定面にレーザ照射部16からのレーザ光が照射され、また各測定面に形成される光切断線が遮られることなくカメラ17で撮像される。また、溝31aは、断面形状が台形であり、後述する対応点として検出可能な4点の頂部を有する断面形状である。この台形溝校正片31は、溝31aが形成された面を上向きにして、溝31aが延びた方向をz軸方向と平行になるように第1走査ステージ27に載置される。なお、第1校正片としては、対応点として検出可能な3点以上の頂部を断面形状に有するものであればよい。
第2の校正片としての平板校正片32は、図5に示すように、矩形の平板状であり、上面が平坦にされている。この平板校正片32は、レーザ光の曲がり量を算出するための断面輪郭線及び光切断線を取得するために用いられる。平板校正片32の上面は、第1走査ステージ27に載置したときに、その上面が高い精度で水平(xz平面に平行)であることが好ましいが、多少の湾曲等があってもよい。平板校正片32は、測定ヘッド12のx軸方向の測定範囲をカバーできるサイズのものを用いることが好ましい。なお、第2の校正片は、上面が平坦なものが好ましいが、例えば台形溝校正片31のように高さの異なる面で形成されたものを第2校正として用いることもできる。
データ取得部23は、カメラ17から光切断像を取得し、光切断像から断面輪郭に対応した光切断線を抽出して、パラメータ演算部24に出力する。光切断線の個々の点は、撮像面における画素位置で示される。この例では、台形溝校正片31、平板校正片32をz軸方向に所定長だけ移動するごとにカメラ17による撮像を行って、複数の光切断像を得る。データ取得部23は、複数の光切断像から得られる各光切断線の平均をパラメータ演算部24に出力する光切断線とする。これにより、ノイズの影響を低減している。
また、データ取得部23は、変位計26からの測定データと、制御部22を介してx軸走査機構28aから取得する変位計26のx軸方向の位置とを用いて台形溝校正片31または平板校正片32の断面輪郭の形状を示す断面輪郭線をパラメータ演算部24に出力する。断面輪郭線は、物体空間座標のxy座標で示される。
パラメータ演算部24は、データ取得部23からの光切断線と断面輪郭線とを用いてレーザ光の曲がりを考慮した射影変換パラメータを校正パラメータとして算出する。
以下、校正装置21による射影変換パラメータを求める処理について説明する。校正装置21は、図6に示すように、光切断線及び断面輪郭線を取得する取得処理と、取得した光切断線及び断面輪郭線から射影変換パラメータを算出するためのパラメータ演算処理とを行う。取得処理は、制御部22の制御下で測定ヘッド12、変位計26、各走査機構27a、27b、28bを駆動し、データ取得部23から光切断線及び断面輪郭線を得る。パラメータ演算処理は、パラメータ演算部24によって実施される。この例では、パラメータ演算処理をN(2以上の整数)回繰り返す。複数回のパラメータ演算処理のうち1回目のパラメータ演算処理が第1のパラメータ演算工程に対応し、2回目以降のパラメータ演算処理が第2のパラメータ演算工程に対応する。
取得処理では、測定ヘッド12と変位計26とにより、最初に、例えば台形溝校正片31の同一断面の測定を行って、台形溝光切断線と台形溝断面輪郭線を取得する(第1工程)。z軸走査機構27bを駆動して、第1走査ステージ27をレーザ照射部16の下方に移動し、またy軸走査機構27aを駆動して、第1走査ステージ27をy軸方向の可動範囲の中立位置にセットする。この第1走査ステージ27に台形溝校正片31を載置する。このときに、溝31aの延在する方向をz軸方向とし、レーザ照射部16の光軸P1(線状レーザ光の中心)が台形溝校正片31のz軸方向の例えば中心と一致するように載置する。なお、z軸走査機構27bにより、第1走査ステージ27を移動して台形溝校正片31のz軸方向の位置を調整することができる。
また、この例における台形溝校正片31は、第1走査ステージ27に載置されたときに、溝31aの深さ方向(y軸方向)の中心の高さが、レーザ照射部16の光軸P1とカメラ17の光軸P2との交点の高さとおおよそ一致、すなわち溝31aの深さ方向の中心のy座標が「0」となるように作製されている。これにより、校正や測定で見ることが必要な高さの範囲を、y座標「0」の周りに含むようにしている。
z軸走査機構27bを駆動し、第1走査ステージ27とともに台形溝校正片31を距離z0だけ-z軸方向(図3中左方向)に移動させる。これにより、台形溝校正片31が変位計26の直下にセットされる。また、x軸走査機構28aにより、変位計26を第2走査ステージ28とともにx軸方向に移動して初期位置にする。初期位置は、例えば台形溝校正片31のx軸方向の一端の僅かに外側を光軸P3が通る位置である。
この後、変位計26による測定が行われる。この測定の後にx軸走査機構28aにより第2走査ステージ28と一体に変位計26がx軸方向に所定長だけ移動して停止する。この停止中に、変位計26による測定が行われる。以降、同様にして、x軸走査機構28aにより、x軸方向に所定長ずつ変位計26をx軸方向に移動し、移動ごとの停止中に変位計26による測定を行う。変位計26は、このように測定を行いながら、例えば台形溝校正片31のx軸方向の他端の僅かに外側を光軸P3が通る終了位置まで移動される。このようにして、台形溝校正片31の溝31aをx軸方向に横切るように断面輪郭の測定を行う。このときに、距離z0がレーザ照射部16の光軸P1と変位計26の光軸P3とのz軸方向の距離であるから、台形溝校正片31のz軸方向の中心の位置における断面輪郭が測定される。
データ取得部23は、上記のように変位計26から測定するごとに、変位計26からの測定データと、制御部22を介して取得するx軸走査機構28aから取得する変位計26のx軸方向の位置を用いて、測定した断面輪郭の形状を示す第1断面輪郭線としての断面輪郭線(以下、台形溝断面輪郭線と称する)を生成する。
変位計26による台形溝校正片31の測定終了後に、測定ヘッド12での台形溝校正片31の測定を行う。ここで、ノイズを低減するためのz軸方向の走査長をzLとすると、z軸走査機構27bにより、台形溝校正片31が距離「z0-zL/2」だけ+z軸方向(図3中の右方向)に移動され、z方向走査開始位置にされる。
この後、測定ヘッド12を駆動し、レーザ照射部16から台形溝校正片31に線状レーザ光を照射した状態で、カメラ17による1回目の撮像を行う。1回目の撮像後、z軸走査機構27bにより、+z軸方向に所定長だけ第1走査ステージ27とともに台形溝校正片31が移動されて停止される。この停止中に、カメラ17による2回目の撮像を行う。以降、同様にして、z軸走査機構27bにより、z軸方向に所定長ずつ台形溝校正片31を移動し、移動ごとの停止中にカメラ17による撮像を行う。このようにして台形溝校正片31を走査長zLだけ移動している間に、カメラ17で複数回の撮像を行う。カメラ17の撮像ごとに、台形溝校正片31の断面輪郭に応じた光切断線の像を含む光切断像が得られる。
データ取得部23は、カメラ17が撮像するごとに光切断像を取得し、各光切断像から光切断線をそれぞれ抽出する。データ取得部23は、複数の光切断線を平均することで、以降の処理で用いる第1光切断線としての台形溝光切断線を生成する。この例では、このように生成する台形溝光切断線を、変位計26が測定した台形溝校正片31と同一の部分を測定ヘッド12が測定して得られるものとしている。なお、台形溝校正片31に対する測定は、測定ヘッド12で測定してから、変位計26で測定してもよい。
次に、平板校正片32を測定ヘッド12及び変位計26で測定して、第1~第Q高さの平板光切断線及び参照断面輪郭線を取得する(第2工程)。台形溝校正片31に代えて平板校正片32が第1走査ステージ27に載置される。このときに、平板校正片32は、線状レーザ光の照射範囲よりも長い辺がx軸方向になるように載置される。また、レーザ照射部16の光軸P1が平板校正片32の上面の例えば中心(x軸方向及びz軸方向の中心)と一致するように載置する。このときに、z軸走査機構27bにより、第1走査ステージ27を移動して平板校正片32のz軸方向の位置を調整することができる。なお、この例では、第1~第Q高さがy軸方向の各移動位置である。
また、表示部29を観察しながら、レーザ照射部16によって平板校正片32の上面に照射されている線状レーザ光が撮像面の中心を通るようにy軸走査機構27aによって平板校正片32の高さを調整する。このようにして、平板校正片32の上面の高さすなわちy座標をおおよそ「0」に調整する。これにより、校正や測定で見ることが必要な高さの範囲を、y座標「0」の周りに含むようにしている。
z軸走査機構27bを駆動し、第1走査ステージ27とともに平板校正片32を距離z0だけ-z軸方向に移動させる。これにより、平板校正片32が変位計26の直下にセットされる。また、x軸走査機構28aにより、変位計26を第2走査ステージ28と一体にx軸方向に移動して初期位置にする。この場合の初期位置は、例えば平板校正片32のx軸方向の一端部を光軸P3が通る位置である。
台形溝校正片31を変位計26で測定する場合と同様にして、変位計26による平板校正片32の測定を行う。すなわち、x軸走査機構28aにより変位計26をx軸方向に所定長ずつ移動し、移動ごとの停止中に変位計26による測定を行う。このようにして、変位計26による平板校正片32の断面輪郭の測定を行う。
データ取得部23は、上記のように変位計26から測定するごとに、変位計26からの測定データと、制御部22を介してx軸走査機構28aから取得する変位計26のx軸方向の位置を用いて、測定した平板校正片32の断面輪郭の形状を示す断面輪郭線(以下、参照断面輪郭線という)を生成する。
変位計26による平板校正片32の測定終了後に、測定ヘッド12での平板校正片32の測定を行う。z軸走査機構27bにより、平板校正片32は、距離「z0-zL/2」だけ+z軸方向に移動して、z方向走査開始位置にされる。平板校正片32は、y軸走査機構27aにより、高さ方向(y軸方向)の走査範囲の下限(以下、この高さを第1高さという)まで移動される。高さ方向の走査範囲は、形状測定装置10が測定対象とする測定対象Sのy軸方向の全範囲を含むように予め決められている。なお、高さ方向の走査範囲は、平板校正片32の上面の移動範囲として決められる。
平板校正片32を第1高さに移動してから、測定ヘッド12が駆動されて測定が開始される。台形溝校正片31を測定ヘッド12で測定した場合と同様に、z軸走査機構27bにより、+z軸方向に所定長ずつ平板校正片32を移動しながら、移動ごとの停止中にカメラ17による撮像を行う。このようにして、平板校正片32を走査長zLだけ移動している間に、カメラ17で複数回の撮像を行う。カメラ17の撮像ごとに、平板校正片32の断面輪郭に応じた光切断線の像を含む光切断像が得られる。
データ取得部23は、平板校正片32を第1高さとした状態で、カメラ17が撮像した各光切断像から光切断線をそれぞれ抽出し、その平均を平板光切断線として生成する。このように生成する平板光切断線を、変位計26が測定した平板校正片32と同一の部分を、第1高さとした状態で、測定ヘッド12が測定して得られるものとしている。
測定ヘッド12での第1高さの平板校正片32に対する測定の終了後、z軸走査機構27bにより、平板校正片32は、z方向走査開始位置に戻される。また、平板校正片32は、z軸走査機構27bにより、高さ方向に所定長だけ移動されて、その上面の高さが第2高さとされる。この第2高さについても、第1高さのときと同様に、+z軸方向に所定長ずつ平板校正片32を移動しながらカメラ17による撮像を行う。そして、得られる各光切断像から第2高さの平板光切断線がデータ取得部23によって生成される。
以降同様にして、高さ方向(y軸方向)の走査範囲の上限まで平板校正片32の上面の高さを所定長ずつ高くした第3~第Q高さのそれぞれについて、測定ヘッド12での測定を行って、第3~第Q高さの平板光切断線が生成される。
さらに、データ取得部23は、図7に示すように、上記のように平板校正片32を1回だけ測定して得られる参照断面輪郭線(図7(A))に、参照断面輪郭線を測定した際の高さと、上述の第1~第Q高さの差分を加算することにより、平板校正片32を仮想的に変位計26で測定した第1~第Q高さの参照断面輪郭線(図7(B))をそれぞれ生成する。なお、参照断面輪郭線を測定した際の高さと第1~第Q高さとは、例えば制御部22からデータ取得部23に与えられる。第1~第Q高さの参照断面輪郭線を算術的に求めるのは、これらを逆変換して得られる、曲り補正時の基準線を求めるためである。
なお、上記では台形溝校正片31の測定を行ってから平板校正片32の測定を行っているが、いずれの測定を先に行ってもよい。また、測定ヘッド12による測定と変位計26による測定とについても、どちらを先に行ってもよい。さらに、第1~第Q高さの平板光切断線は、それぞれ第2光切断線であり、第1~第Q高さの参照断面輪郭線は、それぞれ第2断面輪郭線である。
上記のようにデータ取得部23で生成される台形溝光切断線、各平板光切断線、各平板光切断線及び各参照断面輪郭線は、データ取得部23に設けた記憶部に記憶されており、必要なタイミングでデータ取得部23からパラメータ演算部24に入力される。
上記のように取得処理を行った後に、パラメータ演算部24によるパラメータ演算処理を開始する。なお、取得処理の途中で、パラメータ演算処理を開始してもよい。図8に、パラメータ演算部24を機能ブロックで示すように、パラメータ演算部24は、対応点検出部33、射影変換パラメータ算出部34、回転並進パラメータ算出部35、逆変換部37、曲がり量算出部38、曲がり量定量化部39、曲がり補正部40として機能する。
まず、1回目のパラメータ演算処理について説明する。この1回目のパラメータ演算処理では、対応点検出部33は、データ取得部23から台形溝光切断線と台形溝断面輪郭線とが入力される。すなわち、曲がり補正部40によって曲がり補正がされていない台形溝光切断線を用いて対応点検出部33による処理が行われる。この対応点検出部33は、上記式(3)、(4)により、入力される台形溝光切断線の各画素位置を撮像面座標に変換する。対応点検出部33は、撮像面座標に変換された台形溝光切断線と、台形溝断面輪郭線との間で互いに対応関係にある対応点を検出する。すなわち、台形溝校正片31の同一の部分から得られた台形溝光切断線における点と台形溝断面輪郭線における点とを対応点として検出する。
台形溝校正片31を測定ヘッド12及び変位計26でそれぞれ測定した場合には、いずれの場合においても、溝31aの各面を含む台形溝校正片31の面の測定面が直線状の輪郭として測定される。このため、対応点検出部33は、まず座標が変換された台形溝光切断線から、上記5面の輪郭に対応する範囲をそれぞれ特定し、特定した各範囲のそれぞれについて直線近似をする。対応点検出部33は、この直線近似により得られる5本の直線を用い、隣接する直線同士の4個の交点をそれぞれ台形溝光切断線の対応点とする。対応点検出部33は、台形溝断面輪郭線からも同様に、4個の対応点を得る。このように得られる4個の対応点は、溝31aの断面形状である台形の各頂点に対応している。
この対応点検出部33による処理と、続く射影変換パラメータ算出部34及び回転並進パラメータ算出部35の各処理が第4工程に対応している。
射影変換パラメータ算出部34は、台形溝光切断線と台形溝断面輪郭線とからそれぞれ得られた対応点を用いて、射影変換パラメータを求める。台形溝光切断線と台形溝断面輪郭線は、同一の断面輪郭を測定して得られたものである。このため、上記の式(1)、式(2)を用いて台形溝光切断線(図形)を射影変換することで得られる断面輪郭線と、台形溝断面輪郭線とが合同になる。そこで、射影変換パラメータ算出部34は、このような合同になるという条件に基づいて、射影変換パラメータである拡大率M、傾斜角θを求める。
射影変換パラメータ算出部34は、この例では対応点検出部33で台形溝光切断線から検出された4個の対応点を各頂点とする図形を、上記式(1)、式(2)を用いて射影変換して得られる図形が、台形溝断面輪郭線から検出された4個の対応点を各頂点とする図形とを合同にする、射影変換パラメータとしての拡大率M、傾斜角θを求める。1回目のパラメータ演算処理では、レーザの曲がりの補正をしていない台形溝光切断線を用いているため、この1回目のパラメータ演算処理で算出される射影変換パラメータは暫定的なもの(暫定値)であり、上記各図形を正確に合同にするものではない。
より具体的には、射影変換パラメータ算出部34は、台形溝光切断線から得られた対応点を、上記の式(1)、式(2)を用いて、断面輪郭線と同じ物体空間座標のxy座標平面(第1座標平面)に射影変換したときの各対応点を結ぶ線分の長さと、台形溝断面輪郭線の各対応点を結ぶ線分の長さとの対応する線分同士の差分の二乗和を最小にする拡大率M、傾斜角θを求める。このように求められる拡大率M、傾斜角θが1回目のパラメータ演算処理での射影変換パラメータとされる。なお、このような手法の詳細は、例えば特開2018―59768号公報に記載されている。
射影変換後の台形溝光切断線と台形溝断面輪郭線とが合同であっても、相互に位置ズレが生じている可能性がある。この位置ズレには、回転と並進とに分けられる。後述するように、レーザ光の曲がり量を算出する上では、このような位置ズレを補正する必要がある。このため、回転並進パラメータ算出部35は、物体空間座標に射影変換した台形溝光切断線と、台形溝断面輪郭線とを位置ズレをなくし一致させるための回転並進パラメータである回転角αと回転中心(x0,y0)を求める。
物体空間座標のxy座標平面において、射影変換後の台形溝光切断線上の任意の点を座標(x,y)としたとき、この点の回転並進パラメータによる回転並進後の座標(u’,v’)は、式(5)、式(6)で表される。
回転並進パラメータ算出部35は、射影変換及び回転並進を施した台形溝光切断線の4個の対応点と、台形溝断面輪郭線の対応点との対応する対応点同士の位置が一致するように回転角αと回転中心(x0,y0)を求める。このため、回転並進パラメータ算出部35は、射影変換及び回転並進を施した台形溝光切断線の4個の対応点と、台形溝断面輪郭線の対応点との対応する対応点同士の間の対応点間距離の二乗和を最小化するように、回転角αと回転中心(x0,y0)を求める。回転並進パラメータ算出部35が射影変換を行う場合に、同一回のパラメータ演算処理で射影変換パラメータ算出部34が算出した射影変換パラメータを用いる。したがって、この1回目のパラメータ演算処理においては、1回目のパラメータ演算処理で直前に射影変換パラメータ算出部34が算出した射影変換パラメータを用いる。
射影変換及び回転並進を施した台形溝光切断線の4個の対応点の回転並進後の座標を(ui’,vi’)(i=1,2,3,4)とし、これらに対応する台形溝断面輪郭線の対応点の座標を(ui,vi)とすると、対応点間距離の二乗和Eは、式(7)によって求められる。なお、式(7)中の値Wは、対応点の個数であり、この例では「4」である。
対応点間距離の二乗和Eを最小化する回転角α、回転中心(x0,y0)は、次のように表すことができる。
逆変換部37は、射影変換パラメータ算出部34、回転並進パラメータ算出部35でそれぞれ算出された射影変換パラメータと回転並進パラメータとを用いて、データ取得部23から入力される第1~第Q高さの参照断面輪郭線を逆変換し、第1~第Q高さの基準切断線を生成する。この逆変換部37の処理は、第5工程に対応する。逆変換部37は、回転並進の逆変換を行ってから射影変換の逆変換を行う。基準切断線は、射影変換の逆変換により、物体空間のxy座標平面にある参照断面輪郭線を、平板光切断線像と同じ撮像面座標のXY座標平面(第2座標平面)上に変換したものとなる。
参照断面輪郭線上の点を座標(u,v)としたとき、この点の回転並進の逆変換後の座標(x,y)は、式(8)、式(9)で求められる。また、この座標(x,y)の点の射影変換の逆変換後、すなわち基準線における撮像面座標(X,Y)は、式(10)、式(11)で求められる。
さらに、逆変換部37は、第1~第Q高さの基準切断線を、式(12)、式(13)により、撮像面座標(X,Y)から画素位置(Xn,Ym)に変換する。なお、逆変換部37は、この変換の際に、求められるXn,Ymは、四捨五入して整数値とする。
曲がり量算出部38は、レーザ光の曲がりに起因する光切断線の曲がり量として、第1~第Q高さの基準切断線と平板光切断線とについて、同じ高さの線同士でY軸方向(第1方向)の差分を求める。すなわち、曲がり量算出部38は、第q(qは、1、2・・・Q)高さの平板光切断線上の点を画素位置(Xn,Ym’)、これとX軸方向の画素位置が同じである第q高さの基準切断線上の点を画素位置(Xn,Ym)としたときに、画素位置Ym’から画素位置Ymを差し引いたΔYm(=Ym’-Ym)を求め、これを画素位置Xnにおける画素位置Ymについての曲がり量とする。曲がり量ΔYmは、全てのX軸方向の画素位置(X1~XNW)について求められる。第1~第Q高さのそれぞれについて、曲がり量ΔYmが求められるから、各画素位置X1~XNWに対して、平板校正片32の高さの設定数と同じ個数の曲がり量ΔYmが求められる。この曲がり量算出部38の処理は、第6工程に対応する。xy平面内にあるレーザ光がその曲がりによってxy平面からz軸方向にずれたときの、そのずれの撮像面上での方向は、平板校正片32をレーザ光の照射方向に移動したときの撮像面上で線状レーザ光(光切断線)が移動する方向に同じであり、この例ではY軸方向に移動する。したがって、この例では、Y軸方向が第1方向であり、Y軸方向に直交するX軸方向が第2方向である。
曲がり量定量化部39は、X軸方向の各々の画素位置について、曲がり量算出部38で得られる画素位置Ymと曲がり量ΔYmの関係を近似する補正量算出関数を導出することで曲がり量ΔYmを定量化する。例えば、補正量算出関数を多項式として最小二乗近似して曲がりを定量化する。この例では、補正量算出関数を4次多項式で近似する。この補正量算出関数により、光切断線の画素位置(Xn,Ym)に応じた曲がり量ΔYmを算出できる。この曲がり量定量化部39の処理は、第7工程に対応する。
上記のようにして、1回目のパラメータ演算処理が完了すると、2回目のパラメータ演算処理が開始される。2回目のパラメータ演算処理では、最初に曲がり補正部40により、台形溝光切断線に対する曲がり補正を曲がり量定量化部39で定量化された曲がり量を用いて行う。この曲がり補正では、データ取得部23からの取得した当初の台形溝光切断線を用いる。この曲がり補正部40の処理は、第3工程に対応する。
データ取得部23から取得した台形溝光切断線上の点を画素位置(Xn,Ym0)とし、曲がり補正後のその点を画素位置(Xn,Ym1)とすると、曲がり補正部40は、画素位置Xnに対応した1つの補正量算出関数を特定し、この特定した補正量算出関数に画素位置Ym0を適用することによって、その点に対する曲がり量ΔYmを算出する。そして、曲がり補正部40は、算出される曲がり量ΔYmを画素位置Ym0から差し引くことで、曲がり補正された画素位置Ym1(=Ym0-ΔYm)を求める。
台形溝光切断線上の各点について、曲がり補正部40によって曲がり補正が行われことにより、1回目のパラメータ演算処理で定量化された曲がり量で補正された新たな台形溝光切断線が生成される。
2回目のパラメータ演算処理では、データ取得部23から取得した当初の台形溝光切断線に代えて、上記のように2回目のパラメータ演算処理の開始時に新たに生成された台形溝光切断線を用いて、1回目のパラメータ演算処理と同じ手順で、対応点検出部33による対応点を検出し、その対応点に基づいて射影変換パラメータ算出部34による射影変換パラメータの算出と、回転並進パラメータ算出部35による回転並進パラメータの算出とを行う。回転並進パラメータを算出する際に用いる射影変換パラメータは、2回目のパラメータ演算処理で求められたものである。そして、これら算出された射影変換パラメータ及び回転並進パラメータを用いて逆変換部37による逆変換を行い、曲がり量算出部38による曲がり量の算出、曲がり量定量化部39による曲がり量の定量化を行う。逆変換に用いる第1~第Q高さの参照断面輪郭線、曲がり量の算出に用いる第1~第Q高さの平板光切断線は、1回目のパラメータ演算処理と同じものが用いられ、3回目以降のパラメータ演算処理でも同様である。
曲がり量の定量化の後には、3回目のパラメータ演算処理が開始され、開始時に曲がり補正部40により曲がり補正を行う。このときには、曲がり補正部40は、データ取得部23から取得した当初の台形溝光切断線に対して、2回目のパラメータ演算処理で定量化された曲がり量で曲がり補正を行う。2回目のパラメータ演算処理と同じ手順で、対応点検出部33、射影変換パラメータ算出部34、回転並進パラメータ算出部35による各処理が行われ、これらで算出された射影変換パラメータ及び回転並進パラメータを用いて逆変換部37による逆変換が行われる。逆変換後には、曲がり量算出部38と曲がり量定量化部39との各処理を行う。
したがって、N回のパラメータ演算処理を行う場合では、J(J=2、3・・・N)回目のパラメータ演算処理においては、(J-1)回目のパラメータ演算処理で定量化された曲がり量で曲がり補正された台形溝光切断線の対応点を用いて、射影変換パラメータ及び回転並進パラメータの算出、逆変換を行い、逆変換で得られる第1~第Q高さの基準切断線を用いて、曲がり量の定量化を行う。
以上のようにして、1~N回目のパラメータ演算処理を行い、N回目(最終回)のパラメータ演算処理において得られる射影変換パラメータ、回転並進パラメータ、定量化された曲がり量(補正量算出関数)の最終値が校正パラメータとして出力される。射影変換パラメータが測定演算部13に設定される。なお、回転並進パラメータ、定量化された曲がり量(補正量算出関数)の最終値が不要な場合は、N回目のパラメータ演算処理において、回転並進パラメータの算出以降の処理を省略することができる。また、補正量算出関数を出力する代わりに、補正量算出関数の係数を出力してもよい。
以上のように、上記の校正装置21によれば、レーザ光の曲がりによる誤差を含んでカメラ17で測定される台形溝光切断線と変位計26で測定される台形溝断面輪郭線とを用いて、暫定的に射影変換パラメータ及び回転並進パラメータを算出して、変位計26の平板校正片32の測定結果から得られる各高さの参照断面輪郭線を、算出された射影変換パラメータ及び回転並進パラメータ用いて逆変換した各基準切断線と、カメラ17で測定される各高さの平板光切断線の差から曲がり量を定量化し、その定量化された曲がり量で台形溝光切断線を補正したものを用いて同様な処理を1回以上行うことで、射影変換パラメータ及び回転並進パラメータの誤差を減らして正しい値に収束させている。これにより、精度よい校正をより簡易に行うことができる。
また、画素分解能以下の高い精度が要求される場合においても、上記校正装置21により、簡易な校正片を用いた測定にて、レーザ線の曲がりを考慮した校正することができる。さらに、一般的なレーザ装置とカメラとの組み合わせで測定ヘッド12を構成しても、精度の高い校正が可能である。このため、測定範囲が広い、測定対象Sの速度が速い等で、一般的な測定ヘッドが対応できない測定環境においても、高精度での測定が実現できる。また、レーザ装置とカメラの自由な組み合わせにより、種々の測定環境に対応が可能である。
上記では、予め設定した回数(N回)のパラメータ演算処理を行う例について説明しているが、例えば、平板光切断線と基準切断線との差が所定の閾値以下となったときに、そのときのパラメータ演算処理で終了するようにしてもよい。また、このような誤差を用い、J-1回目のパラメータ演算処理における差に対するJ回目のパラメータ演算処理における差や差の変化率が所定の閾値以下となったときに、そのJ回目のパラメータ演算処理で終了するようにしてもよい。平板光切断線と基準切断線との差としては、例えば平板光切断線と基準切断線との差分の平均を用いることができる。
図3に示される校正装置21を用いて測定ヘッド12の校正パラメータを求めた。カメラ17の二次元イメージセンサとして、撮像面の横画素数Nwが1920、縦画素数Nvが1080、画素サイズdX、dYがそれぞれ0.0074mmのものを用いた。また、撮像レンズ17aとして、焦点距離fが50mmの単焦点レンズを用いた。さらに、レーザ照射部16としては、レーザ光の広がり角が30°で、出力35mWのものを用いた。変位計26は、基準距離が150mmで、高さ方向の測定範囲が±40mmの1次元レーザ変位計を用いた。変位計26は、ステッピングモータ駆動のx軸走査機構28aを備える第2走査ステージ28に固定した。レーザ照射部16の光軸P1と変位計26とのz軸方向の距離z0を100mmとし、測定ヘッド12による測定と変位計26による測定とを切り替える際には、z軸走査機構27bにより、第1走査ステージ27をz軸方向に100mm移動させた。
第1の校正片及び第2の校正片として、深さ50mmの溝31aが形成された台形溝校正片31を用いた。また、台形溝校正片31の測定面には、拡散反射性の白色スプレー塗料を塗布し、光切断線の輝度分布によるノイズの低減を図った。
台形溝校正片31の高さ(y)を-20mm~+20mmの範囲において0.1mm間隔で変えながら、測定ヘッド12による測定を行い、パラメータ演算処理に用いる401個の台形溝光切断線を取得した。光切断線の輝度分布によるノイズを低減するため、各高さにおいてz軸方向に0.05mmずつ台形溝校正片31を移動し、移動ごとの停止中にカメラ17での撮像を行った。これによる合計41回の撮像で得られた光切断線の平均化したものをパラメータ演算処理に用いる台形溝光切断線とした。
上記高さの異なる401個の台形溝光切断線のうち、「y=0mm」に対応する台形溝光切断線を、第1校正片を測定した台形溝光切断線とした。また、401個の台形溝光切断線を、第2校正片を測定した光切断線。すなわち曲がりを定量化する際の光切断線として用いた。曲がりを定量化する際には、曲がり量ΔYmを画素位置Ymの4次多項式で最小二乗近似して、曲がりを定量化した。
変位計26で取得した台形溝断面輪郭線(以下、断面輪郭線Aという)と、1回目のパラメータ演算処理において算出した射影変換パラメータと回転並進パラメータを用いて、台形溝光切断線を射影変換した後に回転並進して取得した断面輪郭線Bとの比較を図9に示す。図9(A)及び図9(C)が溝31aの外側の各測定面についてのものであり、図9(B)が溝31aの底面のものである。また、図10に、断面輪郭線Aと断面輪郭線Bとの差分を示す。測定ヘッド12で取得した断面輪郭線Bは、変位計26で取得した第2断面輪郭に比べ、高さ方向に0.04mm(0.2画素)程度の平均値とのずれが見られた。これは、レーザ光の曲がりに起因する光切断線の曲がりによる偏差である。
図11は、断面輪郭線Aと、2回目のパラメータ演算処理において算出した射影変換パラメータと回転並進パラメータを用いて取得した断面輪郭線Cとの差分を示している。この結果によれば、断面輪郭線Aと断面輪郭線Cとの間の平均値のずれは見られなくなったことが分かる。さらに、断面輪郭線Aと、3回目のパラメータ演算処理において算出した射影変換パラメータと回転並進パラメータを用いて取得した断面輪郭線Dとの差分を図12に示す。断面輪郭線Aと断面輪郭線Dとの差分は、断面輪郭線Aと断面輪郭線Cの差分とほとんど変わらない結果となった。この実施例では、この結果から3回目のパラメータ演算処理で算出された3回目の射影変換パラメータ、回転並進パラメータ及び定量化された曲がり量を最終値とした。
表1に、1回目~3回目のパラメータ演算処理において得られた、傾斜角θ、拡大率M、距離L、回転角α、回転中心(x0、y0)をそれぞれ示す。また、表1には、撮像面中心における分解能をあわせて示す。
以上より、曲がり補正とパラメータ算出とを繰り返し行うことで、測定ヘッド12と変位計26で取得した断面輪郭線の平均値とのずれはなくなり、射影変換パラメータ、回転並進パラメータ及び定量化された曲がり量をより正確なものへと収束でき、精度よく校正できることがわかる。また、画素分解能以下の高い精度が求められる測定にも対応して、精度よく校正できることがわかった。