以下、図面を適宜参照して、本発明の各実施形態におけるカラー部材を用いたかしめ構造体につき詳細に説明する。なお、図中、x軸、y軸及びz軸は、3軸直交座標系をなす。
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態におけるカラー部材を用いたかしめ構造体につき、図1〜13を参照して、詳細に説明する。
図1は、本実施形態におけるかしめ構造体の側面図であり、図2は、図1のA−A線による断面図である。また、図3は、本実施形態におけるかしめ構造体が適用されたトーションビーム式サスペンション装置の部分上面図である。また、図4は、図3のX矢視図あり、図5は、図3のB−B線による断面図であり、図6は、図3のC−C線による断面図である。
図1及び2に示すように、本実施形態におけるかしめ構造体1は、金属製のカラー部材10及び金属製で中実状のロッド部材20を備える。カラー部材10は、それをx軸方向に貫通する貫通孔10hを有する管状部材であり、x軸方向に延在してx軸に直交する方向に一定の径を有するロッド部材20が、カラー部材10の貫通孔10hに挿通されている。ここに、図中では、カラー部材10は、1つのみ示されるが、より詳細には、カラー部材10は、ロッド部材20のx軸方向における両端に対して各々用意され、ロッド部材20は、その両端において各々カラー部材10の貫通孔10hに挿通されている。なお、カラー部材10の金属材としては、必要な強度を確保し、かつ良好な溶接性を確保するために炭素鋼等の鉄材が用いられる。また、ロッド部材20の金属材としては、特にx軸まわりのモーメントが繰り返して印加されることを考慮した充分な強度を確保し、かつ重量も適度に軽量化する必要があることをも考慮して、焼き入れ性が良好なボロン鋼等の鉄材が用いられる。また、ロッド部材20は、円柱状のロッド部材であるとして説明するが、同レベルのかしめ強度等が得られるものであれば、他の中実形状のロッド部材であっても適用可能である。
かかるカラー部材10は、全体形状としては長手方向であるx軸方向に延在する円筒形状を有するが、カラー部材10の外周部には、カラー部材10の第1の径方向であるz軸方向において対向しx−y平面に平行な平面状の一対の第1の押圧変形部10a、10aと、カラー部材10の第2の径方向であるy軸方向において対向しx−z平面に平行な平面状の一対の第2の押圧変形部10b、10bとが形成されている。具体的には、第1の押圧変形部10a、10aは、カラー部材10の外周部が、第1の径方向であるz軸方向に関して凹むように押圧されて形成されたものである。また更に、第2の押圧変形部10b、10bは、第1の押圧変形部10a、10aがこのように形成される際に、カラー部材10の外周部が、第1の径方向であるz軸方向に関して凹むように押圧されることに起因して、カラー部材10の外周部が、第2の径方向であるy軸方向に関して凹むように押圧されて形成されたものである。
ここに、カラー部材10において、第1の押圧変形部10a、10a及びその形成に起因して形成される第2の押圧変形部10b、10bが形成されることにより、カラー部材10の貫通孔10hの壁面10sとロッド部材20の表面20sとは、貫通孔10hの範囲内において、互いに接触されて密に圧着された境界部iを形成し、カラー部材10は、かかる境界部iにおいてロッド部材20に対して強固にかしめられている。図2の断面形状で示すように、かかる境界部iを目視にて観察したところ、圧着面が確認できないほど、貫通孔10hの壁面10sとロッド部材20の表面20sとが密に圧着されていた。このように、カラー部材10が、ロッド部材20に対して強固にかしめられることにより、カラー部材10とロッド部材20とは、ロッド部材20に対してx軸まわりのモーメント等が繰り返して印加された場合であっても、不意に結合状態が解かれることはない実用上充分な耐久性を呈する。より具体的には、図2で示す断面形状において、カラー部材10は、z軸方向に関しては、第1の押圧変形部10a、10a間の距離が、押圧前の初期径に対して、20%±5%の範囲内で減少されている。また一方で、第2の押圧変形部10b、10b間の距離は、押圧前の初期径と実質同じである。また、これに伴って、カラー部材10の貫通孔10hは、z軸方向には圧縮され、かつy軸方向には伸張されて断面長円状に変形し、対応してロッド部材20もかかる断面長円状に変形しており、同様に境界部iも断面長円状となっている。このように、断面形状で長円状の境界部iが形成されることにより、ロッド部材20に対してx軸まわりのモーメント等が繰り返して印加された場合における結合耐久性を、より確実に向上できる。
かかる構成のかしめ構造体1は、車両のトーションビーム式サスペンション装置30に対して好適に適用される。具体的には図3〜6に示すように、サスペンション装置30は、車両の長手方向(便宜上y軸方向に対応させる)に延在する左右一対のトレーリングアーム30a、30a(便宜上左側のみ示す)と、車両の車幅方向(便宜上x軸方向に対応させる)に延在してトレーリングアーム30a、30aを連結し、断面形状が車両の下方(便宜上z軸の負方向に対応させる)に開いたU字状であるトーションビーム30bと、を備える。かかるトレーリングアーム30a及びトーションビーム30bは、鉄等の金属鋼板をプレス成型することにより各々製造され、溶接により一体化されるものであるが、必要応じて、アルミ等の金属材料を鋳造等することにより製造することも可能である。
より具体的には、かしめ構造体1におけるロッド部材20は、トーションビーム30bのU字状断面の内方に収容されながら車幅方向に延在されており、かかるロッド部材20に対してその車幅方向の両端においてかしめられているカラー部材10は、対応するトレーリングアーム30aに対して、溶接部40において溶接されることにより固設されている。つまり、かしめ構造体1は、サスペンション装置30を固定部材として、車両に装着され、かかる場合、ロッド部材20を含むかしめ構造体1は、左右一対のトレーリングアーム30a、30aの動作に応じて捻り反力を作用するスタビライザ装置として機能する。
ここに、カラー部材10には、第1の押圧変形部10a、10a及びその形成に起因して形成される第2の押圧変形部10b、10bが形成されているが、カラー部材10の材質は、ロッド部材20の材質よりも溶接性が良好な炭素鋼等の金属材であるので、カラー部材10が、トレーリングアーム30aに対して、充分な強度及び耐久性を呈する溶接性でもって、かつ、かしめの信頼性も損なうこともなく、溶接部40において溶接され得る。また同時に、ロッド部材20の材質に、焼き入れにより強度を増大したボロン鋼等の金属材を用いた場合であっても、トレーリングアーム30aに対して溶接されるのはカラー部材10であるので、ロッド部材20の焼き入れ強度に不要な影響が与えられることはなく、かつ、かしめの信頼性も損なわれることもない。このように、カラー部材10が、ロッド部材20に対して強固にかしめられたかしめ構造体1を、カラー部材10を介してサスペンション装置30に溶接して装着することにより、ロッド部材20に対してx軸まわりのモーメント等が繰り返して印加された場合であっても、不意にサスペンション装置30、カラー部材10及びロッド部材20間の結合状態が解かれることはない実用上充分な耐久性を呈する。
次に、以上の構成のかしめ構造体を製造するためのかしめ工程を含む製造方法につき、更に図7〜11を参照しつつ、詳細に説明する。
図7は、本実施形態のかしめ構造体におけるカラー部材の側面図であり、押圧前の状態を示し、図8は、図7のD−D線による断面図である。また、図9は、本実施形態のかしめ構造体におけるカラー部材を押圧する状態を示す側面図であり、図10は、図9のE−E線による断面図であり、図11は、図9のF−F線による断面図である。
まず、図7及び8に示すように、貫通孔50hを有する円筒形状のカラー部材50を用意する。この初期状態においては、カラー部材50には、第1及び第2の押圧変形部は形成れておらず、その外径はD1である。なお、貫通孔50hの径はd1であり、その壁面を50sで示す。
かかる初期状態のカラー部材50を用意したならば、図9〜11に示すように、カラー部材50の貫通孔50hに、ロッド部材20を挿通させる。ここにおいて、ロッド部材20の径はd2であり、カラー部材50の貫通孔50hの径d1とロッド部材20の径d2とは、カラー部材50の貫通孔50hの径d1が、ロッド部材20の径d2に対して、製造時の公差を見積もっても大径であるガタ設定の関係に設定されている。具体的にガタ設定とは、単にカラー部材50の貫通孔50hの径d1をロッド部材20の径d2よりも大きく設定するというのではなく、ロッド部材20及びカラー部材50についての製造時の公差を見積もっても、ロッド部材20を確実にカラー部材50の貫通孔50hに挿通できる作業性を維持しながら、カラー部材50を押圧してロッド部材20に対して確実にかしめられたかしめ構造を実現とするための径d1及びd2に関する設定をいう。
より具体的には、かかるガタ設定をするには、例えば、ロッド部材20の径d2の設計値が11mm±0.2mmである場合に、カラー部材50の外径D1を21.0mm±0.1mmの設計値に設定し、かつ、カラー部材50に対する押圧力f1を所定値に設定したとすれば、カラー部材50の貫通孔50hの径d1は11.4mm±0.1mmの設計値に設定するが如く、量産上採用し得るロッド部材20の径d2を基準とし、これに対して、ロッド部材20及びカラー部材50の製造公差、カラー部材50に対するロッド部材20の挿通性及びロッド部材20に対するカラー部材50のかしめ性を満足し得るカラー部材50の外径D1、カラー部材50への押圧力f1や押圧ストロークの最大値、及びカラー部材50の貫通孔50hの径d1の各設定値を予め用意しておくことが必要となる。かかる各設定値は、予めテーブル等の対応形式でデータとしてまとめてメモリに記憶しておくことも必要となる。かかる例では、カラー部材50の貫通孔50hの径d1と、ロッド部材20の径d2との間のガタ設定量は、0.1mm以上0.7mm以下の範囲内の微小値に設定されることになる。
そしてこのように、初期状態のカラー部材50の貫通孔50hに、これとガタ設定の関係にあるロッド部材20を挿通した後、図9〜11に示すように、押圧型60上に載置する。ここで、押圧型60は、特に図10及び11に示すような、その断面が上方(便宜上z軸の正方向に対応させる)に開いたU字状を呈するような凹部を有する本体型部60aと、かかる凹部の内方に組み合わせて設置される一対の両端型部60b、60d及び60c、60eと、カラー部材50を押圧自在な移動型部60fと、を備える。両端型部の一方60b、60dにおける下方型部60bは、本体型部60aの凹部の内方に収容されて載置され、更に上方型部60dは、下方型部60b上に載置されて、これらは協働してロッド部材20の外形状と整合する内孔を形成し、図示を省略する連結部材により、本体型部60aに対して係脱自在である。また同様に、両端型部の他方60c、60eにおける下方型部60cは、本体型部60aの凹部の内方に収容されて載置され、更に上方型部60eは、下方型部60c上に載置されて、これらは協働してロッド部材20の外形状と整合する内孔を形成し、図示を省略する連結部材により、本体型部60aに対して係脱自在である。また、より具体的には、本体型部60aのU字状断面を呈する凹部は、平面状の底面(x−y平面に平行な面)とそれに連続して対向する一対の平面状の側面(x−z平面に平行な面)と、を有する。また、移動型部60fの下部は、平面状の押圧面(x−y平面に平行な面)を有し、移動型部60fは、本体型部60aの上端面に当接するところまで、下降自在である。
より具体的には、下方型部60b、60cを本体型部60aのU字状断面を呈する凹部の内方に収容して載置した後、貫通孔50hにロッド部材20を挿通した状態のカラー部材50を、カラー部材50のx軸方向における両端部の部分が下方型部60b、60cに挟持された状態で、押圧型60の本体型部60aの凹部の内方に収容し、併せてロッド部材20の部分を下方型部60b、60c上に載置する。その後、上方型部60d、60eを、ロッド部材20の部分を跨いでかつカラー部材50をx軸方向で挟持するように、下方型部60b、60c上に対応して載置して、一対の両端型部60b、60d及び60c、60eを本体型部60aに対して固定することにより、ロッド部材20を挿通した状態のカラー部材50を押圧型60に対して固定する。ここで、カラー部材50のロッド部材20に対するかしめの確実性を考慮して、カラー部材50は、図10で示す断面において、その外径の20%±5%の範囲内で、本体型部60aの上端面から上方(z軸の正方向)に突出した突出部をなすように設定されることが必要であり、かかるカラー部材50の突出部が、移動型部60fが下降することにより潰されることになる。また、本体型部60aの凹部におけるU字状断面のy軸方向の2面幅lは、かかる凹部内へのカラー部材50の載置性を考慮して、カラー部材50に対してガタ設定になるように、カラー部材50の外径に対して0.2mm以上0.3mm以下の範囲内の微小値であるガタ設定量でもって大きく設定されている。
そしてこのように、貫通孔50hにロッド部材20を挿通した状態のカラー部材50を、押圧型60上に固定した後、移動型部60fを下降させてその平面状の押圧面をカラー部材50の上部に当接して型押し、カラー部材50に対し、上方から下方、つまりz軸の負方向に向いた押圧力f1を印加しながら、更に移動型部60fを下降させていく。ここに、かかる押圧力f1が印加されると、カラー部材50は、原理的にはx軸、y軸及びz軸の3軸について潰れて変形しようとするが、押圧型60に拘束されているため、その型構成に依存した変形を生じる。具体的には、カラー部材50は、上端では移動型部60fから下向きの押圧力f1を受けると共に、下端では本体型部60aのU字状断面を呈する凹部の底部からの反力としての上向きの押圧力f1を受けるから、カラー部材50は、その上部は移動型部60fの平面状の押圧面に従い、かつその下部は本体型部60aのU字状断面を呈する凹部の平面状の底面に従って、共にx−y平面に平行な平面状に変形されていく。この際、カラー部材50は、上下方向で圧縮されて内圧f1'を生じさせ、対応してカラー部材50の貫通孔50hの壁面50sが、ロッド部材20の表面20sに向かってz軸方向である上下方向に押圧されていく。
一方で、このようにカラー部材50が上下方向で圧縮されて内圧f1'を生じさせると、かかる内圧f1'により、カラー部材50は、y軸方向に対応する横方向に拡張しようとするが、カラー部材50の横方向は、本体型部60aのU字状断面を呈する凹部の両側面(x−z平面に平行な面)で拘束されているから、カラー部材50は、横方向に拡張しようとするにつれて、内圧f1'に抗する反力として、本体型部60aの凹部の両側面からy軸の正負各々の方向に押圧力f2を受ける。このように、カラー部材50が横方向で押圧力f2を受けると、カラー部材50の両側部は、本体型部60aの凹部の両側面で拘束されながら、本体型部60aのU字状断面の平面状の両側面に従って、x−z平面に平行な平面状に変形されていき、同時にカラー部材50は、その周囲における本体型部60aの凹部の上下に開いた空間を埋めるようにもその材料が流れて変形されていく。また、このような内圧f1'を生じさせたカラー部材50の変形に対応して、カラー部材50の貫通孔50hの壁面50sは、ロッド部材20の表面20sに向かって上下方向のみならずy軸方向である横方向でも押圧されて、カラー部材50の貫通孔50h及びロッド部材20は、共にy−z断面において長円状に変形されていく。ここで、厳密には、カラー部材50の貫通孔50hの径d1は、ロッド部材20の径d2に対してガタ設定とされているが、前述したように、かかるガタ設定量は0.1mm以上0.7mm以下の範囲内の微小値であると評価できることから、カラー部材50の貫通孔50hとロッド部材20との間の間隙部は微小空間であると評価でき、カラー部材50が押圧されていくに伴い、カラー部材50はロッド部材20の周囲の間隙部を確実に埋めるようにその材料が流れて変形されていき、結果として、カラー部材50の貫通孔50h及びロッド部材20は共にy−z断面において長円状に変形されて、y−z断面において長円状の境界部iが形成されていくことになる。
つまりこのように、移動型部60fを下降して、貫通孔50hにロッド部材20を挿通した状態のカラー部材50を、内圧f1'を生じさせながら、上下方向の押圧力f1と、それに起因する横方向の押圧力f2と、で押圧して変形させていき、移動型部60fが、カラー部材50の突出部を潰しきって本体型部60aの上端面に当接したところで、その押圧ストロークは最大値となって、移動型部60fの下降を停止する。すると、図1及び2で示すように、z軸方向において対向しx−y平面に平行な平面状の一対の第1の押圧変形部10a、10aと、y軸方向において対向しx−z平面に平行な平面状の一対の第2の押圧変形部10b、10bと、が形成され、これに対応して貫通孔50hの壁面50sが、ロッド部材20の表面20sに向かって上下方向及び横方向で押圧されて変形され、結果的に、貫通孔10hの壁面10s及びロッド部材20の表面20sが、貫通孔10hの範囲内において、互いにy−z断面において長円状に変形されて、密に接触され圧着された境界部iを形成し、得られるカラー部材10は、かかる長円状の境界部iにおいてロッド部材20に対して強固にかしめられることとなる。ここに、かしめ工程後に得られるカラー部材10は、図2で示す断面形状において、z軸方向に関しては、第1の押圧変形部10a、10a間の距離が、初期状態であるカラー部材50の外径に対して、20%±5%の範囲内で減少されている。一方で、y軸方向に関しては、厳密には、ガタ設定量を有する本体型部60aのU字状断面を呈する凹部の両側面で拘束されるため、第2の押圧変形部10b、10bの距離は、初期状態のカラー部材50の外径にガタ設定量を加えたものとなるが、かかるガタ設定量は、前述の如く、カラー部材50の外径に対して0.2mm以上0.3mm以下の範囲内の微小値であるので、初期状態のカラー部材50の外径と実質同じであると評価できるものである。
ここに、かかる押圧工程においては、カラー部材50を、上下方向の押圧力f1及び横方向の押圧力f2とで押圧して圧縮していくため、カラー部材50は、x軸方向である長手方向にも潰れ変形をしようとするが、カラー部材50の長手方向両端の各々には、本体型部60aに固定された両端型部60b、60d及び60c及び60eが接して、カラー部材50の長手方向両端を拘束しているため、長手方向の潰れ変形は発生することはなく、カラー部材10とロッド部材20とのかしめ性には影響を与えない。
そして、カラー部材10がロッド部材20にかしめられたならば、押圧型60の一対の両端型部60b、60d及び60c及び60eを本体型部60aから解放して、かしめ構造体1を押圧型60から取り外して、かしめ工程は終了する。なお、以上の一連のかしめ工程は、ロッド部材20の一端について説明したが、他端についても同様のかしめ工程が行われることはもちろんである。かかる他端のかしめ工程は、一端のかしめ工程が終了した後に別途行ってもよいし、必要に応じて同時に行ってもよい。
以上の本実施形態の構成によれば、カラー部材に、押圧変形部、つまり一対の第1の径方向押圧変形部と、それに起因する第2の径方向に形成された一対の第2の径方向押圧変形部と、が形成されることに応じて、カラー部材が、ロッド部材に対して確実にかしめられる簡便な構成のかしめ構造体が実現され得て、ロッド部材を含むカシメ構造体を固定部材に対して、信頼性及び設計自由度高く装着できる。
また、カラー部材の押圧変形部が形成された部分に対し、カラー部材が固定部材に対して溶接される溶接部が形成自在であることにより、溶接という簡便で信頼性の高い構成で、ロッド部材を含むカシメ構造体を固定部材に対して装着できる。
また、カラー部材とロッド部材とは、カラー部材の貫通孔の径が、ロッド部材の径に対して、製造時の公差を見積もっても大径であるガタ設定の関係に設定されることにより、カラー部材の貫通孔に対して、ロッド部材を簡便かつ確実に挿通することができる状態を確保しながら、カラー部材が、ロッド部材に対して確実にかしめられることができる。
また、ロッド部材は、車両のスタビライザ装置の構成部材であり、固定部材は車両のシャーシの構成部材であることにより、車両のスタビライザ装置を構成する構成部品であるロッド部材を、車両のシャーシを構成する構成部品である固定部材に対して、信頼性及び設計自由度高く装着できる。
次に、本実施形態におけるかしめ構造体におけるカラー部材の変形例につき、更に図12及び13を参照して、詳細に説明する。
図12は、本実施形態のかしめ構造体における変形例のカラー部材の側面図であり、押圧前の状態を示す。また、図13は、本実施形態のかしめ構造体における別の変形例のカラー部材の側面図であり、押圧前の状態を示す。
図12に示すように、本変形例の初期状態のカラー部材70は、その外径D2が、上述した初期状態のカラー部材50の外径D1に比べて小径であることが相違点であり、貫通孔70hの構成、つまり貫通孔径d3の大きさや壁面70sの状態は同一である。また、ロッド部材に対するかしめ性も、カラー部材70への押圧力等を調整することで、実質同一に設定されている。
このように初期状態のカラー部材70の外径D2を、上述した初期状態のカラー部材50の外径D1に比べて小径に設定し得ることにより、押圧変形部が形成されたかしめ構造体の構成部品としてのカラー部材を小径に設定し得る。よって、固定部材であるサスペンション装置30のトレーリングアーム30aの仕様上、小径の溶接部しか許容されない場合であっても、同一のかしめ性を維持したかしめ構造体を実現した上で、そのかしめ構造体をトレーリングアーム30aに確実に溶接して装着可能となる。
一方で、図13に示すように、別の変形例の初期状態のカラー部材80は、その外径D3が、上述した初期状態のカラー部材50の外径D1に比べて大径であることが相違点であり、貫通孔80hの構成、つまり貫通孔径d4の大きさや壁面80sの状態は同一である。また、ロッド部材に対するかしめ性も、カラー部材80への押圧力等を調整することで、実質同一に設定されている。
このように初期状態のカラー部材80の外径D3を、上述した初期状態のカラー部材50の外径D1に比べて大径に設定し得ることにより、押圧変形部が形成されたかしめ構造体の構成部品としてのカラー部材を大径に設定し得る。よって、固定部材であるサスペンション装置30のトレーリングアーム30aの仕様上、大径の溶接部が許容される場合であれば、同一のかしめ性を維持したかしめ構造体を実現した上で、そのかしめ構造体をトレーリングアーム30aに溶接領域を広くとりつつ溶接して装着可能となる。
以上の変形例の構成によれば、カラー部材の外径を自由度高く設定ができ、かしめ構造体を固定部材に対して、設計自由度高く装着できる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態におけるカラー部材を用いたかしめ構造体につき、図14〜24を参照して、詳細に説明する。なお、本実施形態においては、第1の実施形態と同様な構成要素には同じ符号を用い、その詳細な説明は適宜省略する。
図14は、本実施形態におけるカラー部材を有するかしめ構造体の側面図であり、図15は、図14のG−G線による断面図であり、図16は、図14のH−H線による断面図である。また、図17は、本実施形態のかしめ構造体が適用されたトーションビームの断面図であり、図5の位置関係に対応する。
本実施形態においては、図14〜17に示すように、第1の実施形態で説明した構成に対し、かしめ構造体100のカラー部材110の両端において、更に、一対の軸方向変形防止部114、114を備えることが主たる相違点であり、残余の構成は同様である。
より詳しくは、図14〜16に示すように、本実施形態におけるかしめ構造体100は、金属製のカラー部材110及び金属製のロッド部材20を備え、ロッド部材20は、第1の実施形態で用いたものと同一である。カラー部材110は、それをx軸方向に貫通する貫通孔110hを有し、x軸方向に延在するロッド部材20が、カラー部材10の貫通孔110hに挿通されている。かかるカラー部材110は、ロッド部材20のx軸方向における両端に用意されて、ロッド部材20が、その両端の各々でカラー部材110の貫通孔110hに挿通されている。なお、カラー部材110の金属材としては、炭素鋼等の鉄材が用いられる。
更に、かかるカラー部材110は、本体部112に加え、その長手方向である軸方向(x軸方向)の両端において、一対の軸方向変形防止部114、114を備えている。本体部112の外周部には、カラー部材110の第1の径方向であるz軸方向において対向しx−y平面に平行な平面状の一対の第1の押圧変形部112a、112aと、カラー部材110の第2の径方向であるy軸方向において対向しx−z平面に平行な平面状の一対の第2の押圧変形部112b、112bとが形成されており、かかる構成は、主として図14及び15に示すように、第1の実施形態における一対の第1の押圧変形部10a、10a及び一対の第2の押圧変形部10b、10bと同一である。一方で、一対の軸方向変形防止部114、114には、主として図14及び16に示すように、かかる押圧変形部は形成されてはいない。また、本体部112と一対の軸方向変形防止部114、114との間には、それらをスムースに連絡した傾斜部112c、112cが形成されている。なお、本体部112と軸方向変形防止部114、114とが同径である場合には、傾斜部112c、112cを設ける必要はない。
ここに、カラー部材110の本体部112において、第1の押圧変形部112a、112a及びその形成に起因して形成される第2の押圧変形部112b、112bが形成されることにより、カラー部材110の貫通孔110hの壁面110sとロッド部材20の表面20sとは、特に本体部112の貫通孔110hの範囲内において、互いに密に接触されて圧着された境界部iを形成し、カラー部材110は、かかる境界部iにおいてロッド部材20に対して強固にかしめられている。また、図15で示す断面形状において、カラー部材110は、z軸方向に関しては、第1の押圧変形部112a、112a間の距離が、押圧前の初期径に対して、20%±5%の範囲内で減少されて、y軸方向に関しては、第2の押圧変形部112b、112b間の距離は、押圧前の初期径と実質同じに維持され、かつ、カラー部材110の貫通孔110h及びロッド部材20が長円状に変形され、境界部iも長円状に形成されることは、第1の実施形態と同様である。
また同時に、かかる第1の押圧変形部112a、112a及び第2の押圧変形部112b、112bが形成される際には、カラー部材110の本体部112の長手方向であるx軸方向に向けて、本体部112が潰れて肉が逃げる潰れ変形が発生しようとするが、その長手方向には一対の軸方向変形防止部114、114が設けられているため、かかる潰れ変形は実質発生せず、カラー部材110とロッド部材20とのかしめ性には不要の影響を与えない。これは、カラー部材110の軸方向変形防止部114、114によって、本体部112のx軸方向の両端部の強度が向上されているため、そもそも潰れ変形が発生し難いためであると考えられ、また、仮に本体部112の軸方向の両端部で微少に肉の流れが生じているとしても、軸方向変形防止部114、114によって吸収し得るため、本体部112の潰れ変形が、全体として実質無視し得るレベルに抑えられているとも考えられる。なお、軸方向変形防止部114、114のx軸方向の長さは、かかる本体部112における潰れ変形の発生を防止し得る長さに設定すればよい。
また、かかる軸方向変形防止部114、114は、そもそもかしめる必要がなく押圧されないので、軸方向変形防止部114、114の範囲内における貫通孔110hの壁面110sとロッド部材20の表面20sとの境界部iの密着性は、本体部112の範囲内におけるものよりも劣るとも考えられ、境界部iに水分等の異物が侵入する事態も考えられる。そこで、かかる事態をも考慮して、一対の軸方向変形防止部114、114における軸方向の環状外方端部には、端部押圧変形部114aが各々設けられる。かかる端部押圧変形部114aは、一対の軸方向変形防止部114、114における環状外方端部の各々に、その軸方向(x軸方向)に交差するような押圧力を環状外方端部にわたって印加することにより形成されたものであり、結果、端部押圧変形部114aは、軸方向変形防止部114、114における軸方向の環状外方端部の各々が斜めに凹んだ形状を有し、特に、軸方向変形防止部114、114の両端部における貫通孔110hの壁面110sとロッド部材20の表面20sとの境界部iの密着性を向上させている。
かかる構成のかしめ構造体100は、図17に示すように、車両のトーションビーム式サスペンション装置30に対して好適に適用されることは、第1の実施形態と同様であり、溶接性が良好な炭素鋼等からなるカラー部材110の軸方向変形防止部114、114の一方が、対応するトレーリングアーム30aに対して、溶接部40において溶接されることにより固設される。また、カラー部材110の軸方向変形防止部114、114の両端部の各々には、端部押圧変形部114aが設けられて、貫通孔110hの壁面110sとロッド部材20の表面20sとの境界部iの密着性を向上させているため、かかる両端部からの水分等の異物の侵入を防止し得る。
次に、以上の構成のかしめ構造体を製造するためのかしめ工程を含む製造法につき、更に図18〜22を参照しつつ、詳細に説明する。
図18は、本実施形態のかしめ構造体におけるカラー部材の側面図であり、押圧前の状態を示し、図19は、図18のI−I線による断面図である。また、図20は、本実施形態のかしめ構造体におけるカラー部材を押圧する状態を示す側面図であり、図21は、図20のJ−J線による断面図である。また、図22は、本実施形態のかしめ構造体におけるカラー部材の端部を押圧する状態を示す断面図である。
まず、図18及び19に示すように、径がd5である貫通孔150hを有する円筒形状のカラー部材150を用意する。この初期状態においては、カラー部材150は、本体部152と、その長手方向である軸方向(x軸方向)の両端において、一対の軸方向変形防止部154、154とを備える。ここに、カラー部材150の本体部152には、未だ第1及び第2の押圧変形部は形成されておらず、軸方向変形防止部154、154の外径はD4である。また、本体部152と一対の軸方向変形防止部154、154との間には、それらをスムースに連絡した傾斜部152c、152cが形成されている。なお、一対の軸方向変形防止部154、154には、端部押圧変形部の形成を容易にするために、軸方向変形防止部154、154をより薄肉化してその外径D4より小径の外径D4'を有する薄肉部154aが形成されていてもよい。
かかる初期状態のカラー部材150を用意したならば、図20及び21に示すように、カラー部材150の貫通孔150hに、ロッド部材20を挿通させる。ここにおいて、ロッド部材20の径はd2であり、カラー部材150の貫通孔150hの径d5とロッド部材20の径d2とは、第1の実施形態と同様にガタ設定の関係に設定されている。
そしてこのように、初期状態のカラー部材150の貫通孔150hに、ロッド部材20を挿通した後、押圧型160上に載置する。ここで、押圧型160は、その断面がz軸の正方向に対応する上方に開いたU字状の凹部を有するが、第1の実施形態とは異なり、両端型部は設けられてはいない。
より具体的には、貫通孔150hにロッド部材20を挿通した状態のカラー部材150を、押圧型160のU字状断面を呈する凹部の内方に収容するように載置した後、カラー部材150の本体部152に対して、移動型部160fの下部の平面状の押圧面(x−y平面に平行な面)を下降させて当接し、上方から下方、つまりz軸の負方向に向いた押圧力f1を印加する。ここに、移動型部160fの押圧面のx軸方向の長さは、カラー部材150の本体部152を押圧すれば足りるので、本体部152の長さl1と実質等しく設定されている。このように押圧力f1が印加されると、本体部152は、図21に示すように、上端では下向きの押圧力f1を受けると共に、下端では押圧型160のU字状断面を呈する凹部の底部からの反力としての上向きの押圧力f1を受けるから、本体部152は上下方向で圧縮されて内圧f1'を生じさせながら、本体部152の貫通孔150hの壁面150sが、ロッド部材20の表面20sに向かって上下方向に押圧される。一方で、このように本体部152が上下方向で圧縮されて内圧f1'を生じさせると、かかる圧縮に起因する内圧f1'により、本体部152は、y軸方向に対応する横方向に拡張しようとするが、本体部152の横方向(y軸方向)は、押圧型160のU字状断面を呈する凹部の両側面で拘束されているから、本体部152は、横方向に拡張しようとするにつれて、内圧f1'に抗する反力として、y軸の正負各々の方向に押圧力f2を受けることとなって、本体部152は横方向でも押圧され、本体部152において貫通孔150hの壁面150sは、ロッド部材20の表面20sに向かって横方向でも押圧される。
つまりこのように、貫通孔150hにロッド部材20を挿通した状態のカラー部材150の本体部152を、上下方向の押圧力f1と、それに起因する横方向の押圧力f2とで押圧して圧縮することにより、図14等で示すように、z軸方向において対向しx−y平面に平行な平面状の一対の第1の押圧変形部112a、112aと、y軸方向において対向しx−z平面に平行な平面状の第2の押圧変形部112b、112bと、が形成されていき、これに対応して貫通孔150hの壁面150sが、ロッド部材20の表面20sに向かって上下方向及び横方向で長円状に押圧されて、結果的に、貫通孔110hの壁面110s及びロッド部材20の表面20sが、本体部112の貫通孔110hの範囲内において、互いに密に接触されて圧着された長円状の境界部iを形成し、得られるカラー部材110は、かかる境界部iにおいてロッド部材20に対して強固にかしめられることとなる。ここで、図15で示す断面形状において、かしめ工程後に得られるカラー部材110は、z軸方向に関しては、第1の押圧変形部112a、112a間の距離が、初期状態であるカラー部材150の径に対して、20%±5%の範囲内で減少され、第2の押圧変形部112b、112b間の距離は、初期状態のカラー部材110の径と実質同じであり、かつ、かしめ工程後に得られるカラー部材110の貫通孔110h及びロッド部材20は長円状に変形し、境界部iも長円状に形成されることは、第1の実施形態と同様である。
ここに、かかる押圧工程においては、カラー部材150の本体部152を、上下方向の押圧力f1及び横方向の押圧力f2とで押圧して圧縮していくため、本体部152は、x軸方向である長手方向にも潰れ変形をしようとするが、本体部152の長手方向両端の各々には、軸方向変形防止部154、154が延在しているため、長手方向の潰れ変形は発生せず、カラー部材110の本体部112とロッド部材20とのかしめ性には不要な影響を与えない。
そして、カラー部材110がロッド部材20にかしめられたならば、かしめ構造体100を押圧型160から取り外して、かしめ工程は終了する。
このように、かしめ構造体100のかしめ工程は、本来的には終了するのであるが、本実施形態では、上述したように、軸方向変形防止部114、114には、押圧変形部が設けられることがないので、軸方向変形防止部114、114の範囲内における貫通孔110hの壁面110sとロッド部材20の表面20sとの境界部iの密着性を向上させる工程を付加した方が好ましい。
具体的には、図22に示すように、かしめ工程が終了したかしめ構造体100を、端部押圧型165に侵入させ、カラー部材110の軸方向変形防止部114におけるx軸方向の環状外方端部を押圧型165の侵入端部に押圧させる。ここに、端部押圧型165は、x軸について対称であり、その侵入端部には、典型的には45度である角度αの傾斜面が、x軸について対称に設けられているため、カラー部材110の軸方向変形防止部114の環状外方端部は、かかる傾斜面で押圧されて端部押圧変形部114aが形成される。このように軸方向変形防止部114の環状外方端部に端部押圧変形部114aが形成される差異には、軸方向変形防止部114の環状外方端部に、その軸方向(x軸方向)に交差するような押圧力が印加されるため、特に、軸方向変形防止部114の環状外方端部における貫通孔110hの壁面110sとロッド部材20の表面20sとの境界部iの密着性が向上される。また、ここに、一対の軸方向変形防止部154、154に、軸方向変形防止部154、154を薄肉化してその外径D4より小径の外径D4'を有する薄肉部154aが形成しておけば、端部押圧変形部114a、114aの形成を容易にすることができ、より好ましい。
なお、以上の一連のかしめ工程及びこれに付加される端部押圧変形部の形成工程は、ロッド部材20の一端について説明したが、他端についても同様のかしめ工程や端部押圧変形部の形成工程が行われることはもちろんである。かかる他端のかしめ等の工程は、一端のかしめ等の工程が終了した後に別途行ってもよいし、必要に応じて同時に行ってもよい。また、端部押圧変形部を形成するための傾斜面を、かしめ工程で用いる押圧型に設ければ、かしめ工程及び端部押圧変形部の形成工程を同時に行うことも可能である。
以上の本実施形態の構成によれば、カラー部材に、押圧変形部、つまり一対の第1の径方向押圧変形部と、それに起因する第2の径方向に形成された一対の第2の径方向押圧変形部と、が形成されることに加えて、カラー部材が、更に、軸方向変形防止部を、カラー部材の軸方向の両端に備えることにより、押圧変形部が形成されることに起因して、カラー部材を構成する材料がカラー部材の軸方向に逃げてカラー部材が変形するのを確実に防止することができる簡便な構成のかしめ構造体が実現され得て、ロッド部材を固定部材に対して、信頼性及び設計自由度高く装着できる。
また、カラー部材の軸方向変形防止部が形成された部分に対し、カラー部材が固定部材に対して溶接される溶接部が形成自在であることにより、溶接という簡便で信頼性の高い構成で、ロッド部材を固定部材に対して装着できる。
また、カラー部材の軸方向変形防止部の端部が、カラー部材の軸方向に交差する方向に押圧されて形成された端部押圧変形部を備えることにより、特に、軸方向変形防止部の端部において、カラー部材を、ロッド部材に対してより密着させることができ、かかる端部における水分等の異物の侵入を防止できる。
次に、本実施形態におけるかしめ構造体におけるカラー部材の変形例につき、更に図23及び24を参照して、詳細に説明する。
図23は、本実施形態のかしめ構造体における変形例のカラー部材の側面図であり、押圧前の状態を示す。また、図24は、本実施形態のかしめ構造体における別の変形例のカラー部材の側面図であり、押圧前の状態を示す。
図23に示すように、本変形例の初期状態のカラー部材170の軸方向変形防止部の一方174aは、その外径D5が、上述した初期状態のカラー部材150の軸方向変形防止部154の外径D4に比べて小径であることが相違点であり、貫通孔170hの構成、つまり貫通孔径d5の大きさや壁面170sの状態は同一であり、ロッド部材に対するかしめ性も、実質同一に設定されている。なお、カラー部材170の軸方向変形防止部の他方174bは、その外径が、上述した初期状態のカラー部材150の軸方向変形防止部154の外径D4と同一であり、本体部172と一対の軸方向変形防止部174a、174bとの間には、それらをスムースに連絡した傾斜部172c、172cが形成されている。
このように初期状態のカラー部材170の一対の軸方向変形防止部の一方174aの外径D5を、上述した初期状態のカラー部材150の外径D4に比べて小径に設定し得ることにより、押圧変形部が形成されたかしめ構造体の構成部品としてのカラー部材における軸方向変形防止部を小径に設定し得る。よって、固定部材であるサスペンション装置30のトレーリングアーム30aの仕様上、小径の溶接部しか許容されない場合であっても、同一のかしめ性を維持したかしめ構造体を実現した上で、そのかしめ構造体をトレーリングアーム30aに確実に溶接して装着可能となる。
一方で、図24に示すように、本変形例の初期状態のカラー部材180の軸方向変形防止部の一方184aは、その外径D6が、上述した初期状態のカラー部材150の軸方向変形防止部154の外径D4に比べて、本体部182の外径よりも大きくなるように大径であることが相違点であり、貫通孔180hの構成、つまり貫通孔径d6の大きさや壁面180sの状態は同一であり、ロッド部材に対するかしめ性も、実質同一に設定されている。なお、カラー部材180の軸方向変形防止部の他方184bは、その外径が、上述した初期状態のカラー部材150の軸方向変形防止部154の外径D4と同一であり、本体部182と一対の軸方向変形防止部184a、184bとの間には、それらをスムースに連絡した傾斜部182c、182cが形成されている。
このように初期状態のカラー部材180の一対の軸方向変形防止部の一方184aの外径D6を、上述した初期状態のカラー部材150の外径D4に比べて大径に設定し得ることにより、押圧変形部が形成されたかしめ構造体の構成部品としてのカラー部材における軸方向変形防止部を大径に設定し得る。よって、固定部材であるサスペンション装置30のトレーリングアーム30aの仕様上、大径の溶接部が許容される場合であれば、同一のかしめ性を維持したかしめ構造体を実現した上で、そのかしめ構造体をトレーリングアーム30aに溶接領域を広くとりつつ溶接して装着可能となる。
以上の変形例の構成によれば、カラー部材における押圧変形部の形成された本体部及び軸方向変形防止部の形成された部分のうちの一方が、大径部であり、他方が小径部であるような設定が可能であり、軸方向変形防止部の形成された部分の外径を自由度高く設定ができて、かしめ構造体を固定部材に対して、設計自由度高く装着できる。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態におけるカラー部材を用いたかしめ構造体につき、図25及び26を参照して、詳細に説明する。なお、本実施形態においては、第1の実施形態と同様な構成要素には同じ符号を用い、その詳細な説明は適宜省略する。
図25は、本実施形態におけるカラー部材を有するかしめ構造体の側面図であり、図26は、図25のK−K線による断面図である。
本実施形態においては、図25及び26に示すように、第1の実施形態で説明した構成に対し、かしめ構造体200のロッド部材210が中空状であることが主たる相違点であり、残余の構成は同様である。つまり、本実施形態においては、ロッド部材210が、中実状ではなく中空状であっても、第1の実施形態と原理的に同様のかしめ構造を適用すれば、同レベルのかしめ強度等が得られることを見いだして、中空状のロッド部材210を有するかしめ構造体を完成したものである。
より詳しくは、図25及び26に示すように、本実施形態におけるかしめ構造体200においては、金属製のロッド部材210は、x軸方向に延在する貫通孔210hを有する管状部材であって、その肉厚(径方向の厚さ)は一定である。かかる中空状のロッド部材210は、金属製のカラー部材10の貫通孔10hに挿通され、ロッド部材210の貫通孔210hには、金属製でx軸方向に延在する中実ロッド状の芯部材220が挿通されている。かかる芯部材220のx軸方向の長さ及び位置は、ロッド部材210の貫通孔210hに芯部材220が重複するものであれば足りる。なお、カラー部材10の貫通孔10hの径とロッド部材210の径とは、第1の実施形態と同様にガタ設定の関係にあり、ロッド部材210の貫通孔210hと芯部材220の径とも、ガタ設定の関係にある。
かかる芯部材220は、ロッド部材210が挿通されたカラー部材10が押圧されてかしめられる際に、中空状のロッド部材210が、その径方向に不要に座屈変形しないように、ロッド部材210を貫通孔210h内で支持する支持部材として機能する。なお、ロッド部材210としては、圧延鋼管や電縫鋼管等が使用可能であり、その金属材としては、強度を確保すべく高炭素鋼やクロモリ鋼等の鉄材が用いられ得る。また、芯部材220の金属材としては、カラー部材10と同様に炭層鋼が用いられる。
ここにカラー部材10には、一対の第1の押圧変形部10a、10a及び一対の第2の押圧変形部10b、10bが形成され、カラー部材10の貫通孔10hの壁面10sとロッド部材210の表面210sとは、貫通孔10hの範囲内において、互いに接触されて密に圧着された境界部iを形成し、カラー部材10は、かかる境界部iにおいてロッド部材210に対して強固にかしめられており、貫通孔10hの壁面10sとロッド部材210の表面210sとが密に圧着されている。また、ロッド部材210と芯部材220とも、互いに接触されて密に圧着された境界部i'を形成している。
より具体的には、かしめ工程においては、ロッド部材210が、カラー部材10の貫通孔10hに挿通され、芯部材220が、ロッド部材210の貫通孔210hに挿通された状態で、第1の実施形態と同様に押圧型で押圧されることになるが、図26で示す断面形状において、カラー部材10、その層通孔10hに挿通された中空状のロッド部材210及びその貫通孔210hに挿通された中実状の芯部材220が押圧力を受けることになるが、中空状のロッド部材210は、その径方向の強度が、中実状である芯部材220の径方向の強度よりも小さいものであるため、芯部材220がカラー部材10の押圧変形を規定することとなる。ここで、かかるかしめ工程においては、間に中空状のロッド部材210が介在はしているが、カラー部材10と中実状の芯部材220とで発生する変形は、第1の実施形態におけるカラー部材10と中実状のロッド部材20とで発生する変形と同様であると考えられるから、中空状のロッド部材210は、それらの間でかかる変形にならって変形するものと評価できる。
つまり、カラー部材10は、z軸方向に関しては、第1の押圧変形部10a、10a間の距離が、押圧前の初期径に対して減少され、一方で、第2の押圧変形部10b、10b間の距離は、押圧前の初期径と実質同じである。また、これに伴って、カラー部材10の貫通孔10hは、z軸方向には圧縮され、かつy軸方向には伸張されて断面長円状に変形し、対応してロッド部材210もかかる断面長円状に変形し、それらの間でかかる変形にならって変形する中空状のロッド部材210は、断面長円環状に変形することとなり、カラー部材10とロッド部材210との境界部i及びロッド部材210と芯部材220との境界部i'も断面長円状となっている。このように、断面形状で長円状の境界部i及びi'が形成されることにより、ロッド部材210に対してx軸まわりのモーメント等が繰り返して印加された場合における結合耐久性を、より確実に向上できる。かかる構成のかしめ構造体200が、車両のトーションビーム式サスペンション装置に対して好適に適用されることは、第1の実施形態と同様である。
なお、本実施形態においては、中空状のロッド部材210を第1の実施形態の構成に適用したが、もちろん第2の実施形態の構成にも同様に適用できるものである。
以上の本実施形態の構成によれば、中空状のロッド部材を用いた場合であっても、カラー部材が、ロッド部材に対して確実にかしめられる簡便な構成のかしめ構造体が実現され得て、ロッド部材を含むカシメ構造体を固定部材に対して、信頼性及び設計自由度高く装着できる。
なお、本発明は、部材の種類、配置、個数等は前述の実施形態に限定されるものではなく、その構成要素を同等の作用効果を奏するものに適宜置換する等、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることはもちろんである。