JP2009187922A - ダイヤモンド電子源の製造方法及びダイヤモンド電子源 - Google Patents

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喜之 山本
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Abstract

【課題】 大電流・高収束電子ビームを発生させるために望ましい先端形状である球面を制御性よく形成することができるダイヤモンド電子源の製造方法とダイヤモンド電子源を提供する。
【解決手段】 本発明が提供するダイヤモンドの電子放射点として先鋭部を有するダイヤモンド電子源の製造方法は、該先鋭部の先端形状を集束イオンビーム加工装置を用いて球面形状に補正する工程Aと、該工程Aによって形成された加工変質層をプラズマによって除去する工程Bとを有することを特徴とする。該工程A及び該工程Bをダイヤモンド電子源の製造工程で実施することによって、先端がダイヤモンド表面である球面形状となる結果、大電流・高収束電子ビームを発生させるために最適なダイヤモンド電子源となり、角電流密度や輝度といった電子源性能で従来電子源を凌駕することができる。
【選択図】 図7

Description

本発明は、電子顕微鏡、電子ビーム露光機やX線発生装置などの電子線装置に用いられる、電子放出部分として先鋭部を有するダイヤモンド電子源の製造方法及びダイヤモンド電子源に関する。特に、高輝度な電子ビームが発生可能なダイヤモンド電子源を作製する上で必須である、先鋭部の電子放出点である先端形状を補正加工する工程と、補正加工後の加工変質層を表面処理で除去してダイヤモンド表面にする工程に関する。また特に、該補正加工と該表面処理を実施して得られたダイヤモンド電子源に関する。
ダイヤモンドは電子親和力が負(NEA)の状態、あるいは小さな正(PEA)の状態が存在することから、良好な電子放出材料と考えられている。このダイヤモンドの性質を利用して、例えば特開2007−042604公報で開示されているような、ダイヤモンドを用いた電子源あるいはその製造方法に関する数々の提案がなされてきた。
電子顕微鏡や電子ビーム露光機などの電子ビーム装置では、次世代の半導体プロセスにおいてナノスケールの観察・微細加工で使用される装置として、大電流・高輝度電子源が求められている。ダイヤモンドを電子源としてこれらの装置に適用することを考えた場合、従来電子源の六ホウ化ランタンやジルコニアタングステンよりも大電流・高収束電子ビームの発生を実現するためには、電子放出部分の形状が重要である。
ダイヤモンドは加工が困難であるので、この電子放出部分の形状を作製することが難しいという問題がある。従来からの加工手法である機械研磨加工やレーザ加工では、電子放出部分で要求されるミクロンサイズ以下の加工精度を出すことが難しく適用できない。それゆえに、この問題を克服するための取り組みがなされており、先鋭部を形成する方法として、例えば、特開2002−075171号公報や特開2005−353449号公報にあるような、ドライエッチングを用いた微細加工方法が提案されてきた。
しかしながら、ドライエッチングを用いた加工手法でも大電流・高輝度電子源を実現することは困難である。なぜなら、ドライエッチングは垂直方向と水平方向のエッチング速度を完全に独立にコントロールすることができない。このため、目的の形状に近い先鋭部を作製することはできるが、大電流・高収束電子ビームを発生させるために望ましい先端形状である球面を制御性よく形成することができないからである。その結果として、ダイヤモンド電子源は、角電流密度や輝度といった電子源性能で従来電子源を凌駕することができていなかった。
特開2007−042604号公報 特開2002−075171号公報 特開2005−353449号公報
本発明は、かかる従来の事情に鑑みてなされたものであり、電子顕微鏡、電子ビーム露光機やX線発生装置などの電子ビーム装置で使用するダイヤモンド電子源に関する。輝度が高い電子ビームを発生させるために必要な、先鋭部の電子放出点である先端形状を補正加工する工程、補正加工によって発生する加工変質層をプラズマによる表面処理で除去して電子放出点表面をダイヤモンドにする工程、そしてこれらの工程を経て得られたダイヤモンド電子源を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するために、本発明が提供するダイヤモンドの電子放出点として先鋭部を有するダイヤモンド電子源の製造方法は、該先鋭部の先端形状を集束イオンビーム加工装置(FIB)を用いて球面形状に補正する工程Aと、該工程Aによって形成された加工変質層をプラズマによって除去する工程Bとを有することを特徴とする。該工程A及び該工程Bをダイヤモンド電子源の製造工程で実施することによって、先端の電子放出点がダイヤモンド表面である球面形状となる結果、大電流・高収束電子ビームを発生させるために最適なダイヤモンド電子源となり、角電流密度や輝度といった電子源性能で従来電子源を凌駕することができる。
上記本発明のダイヤモンド電子源の製造方法においては、前記プラズマは水素、酸素、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、ハイドロカーボン、パーフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、アルゴンのうち一種類のガスから生成されたプラズマであることが好ましい。このようなプラズマで前記工程Bを実施することによって、該工程Aによって形成された加工変質層を、球面形状を維持したまま除去することができる。
上記本発明のダイヤモンド電子源の製造方法においては、前記プラズマは水素、酸素、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、ハイドロカーボン、パーフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、アルゴンのうち少なくとも二種類の混合ガスから生成されたプラズマであることがより好ましい。このようなプラズマで前記工程Bを実施することによって、該工程Aによって形成された加工変質層を、球面形状を維持したまま除去することができる上に、前記工程A後の表面粗さ、すなわち輪郭度を改善することが可能である。その結果、より優れた電子源性能を引き出すことができる。
本発明のダイヤモンド電子源の製造方法においては、さらに、前記工程Bの後に残った最表面の非ダイヤモンド層を、フッ化水素酸を含む水溶液に浸して除去する工程Cを有することを特徴としても良い。前記工程Bで表面処理に使用したプラズマの発生条件によっては、加工変質層除去後も最表面には、アモルファスカーボン層といった非ダイヤモンド層が残る場合がある。この層は、フッ化水素酸を含む水溶液に浸して除去することができる。その結果、ダイヤモンドで期待される電子源性能を確実に引き出すことができる。
本発明が提供するダイヤモンドの電子放出点として先鋭部を有するダイヤモンド電子源は、該先鋭部の高さが10μm以上で先端形状は曲率半径が0.1μm以上5μm以下の球面であり、該球面の輪郭度は曲率半径の0.02倍未満で表面がダイヤモンドであることを特徴とする。ダイヤモンド電子源の製造工程において、前記工程A及び前記工程B、あるいは、追加工程として前記工程Cを実施することによって、このように制御された先端形状を有する先鋭部を持つダイヤモンド電子源となる。なお、前記球面とは、真球面のみならず、前記輪郭度の範囲で規定された楕円球面も含むものとする。これは、大電流・高収束電子ビームを発生させるために最適なダイヤモンド電子源であり、角電流密度や輝度といった電子源性能で従来電子源を凌駕することができる。
本発明によれば、集束イオンビーム加工装置(FIB)の任意の微細な三次元形状を加工する機能と、集束イオンビーム加工装置で加工した後の加工変質層を効果的に除去するプラズマによる表面処理とを組み合わせてダイヤモンド電子源の製造工程に適用することで、従来技術では得ることが困難であった、先端が球面の電子放出部分を持つダイヤモンド電子源を作製することができ、大電流且つ高輝度な電子ビームが発生可能なダイヤモンド電子源の提供が可能となる。従って、このダイヤモンド電子源を電子ビーム装置に搭載することによって、高倍率観察が可能な電子顕微鏡や、微細パターンを高スループットで描画可能な電子ビーム露光機などが実現できる。
本発明によるダイヤモンド電子源の製造方法及びダイヤモンド電子源の好適な実施形態について図面を参照して詳細に説明する。尚、図面においては、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づく変形、その他の実施形態は本発明に含まれる。
図1〜図7を参照して、本発明の実施形態を説明する。まず、工程(1)でダイヤモンド単結晶10を準備する。多結晶ダイヤモンドであっても本発明は適用可能であるが、一定性能のダイヤモンド電子源を安定に作製するためにはダイヤモンド単結晶の使用が好ましい。ダイヤモンド単結晶の形状は、直方体が好適に使用可能である。特に、直方体を構成する6面について、6面とも(100)面(オフ角7°以内)である単結晶か、4面が(110)面(オフ角7°以内)で且つ2面が(100)面(オフ角7°以内)である単結晶か、2面が(110)面(オフ角7°以内)、2面が(211)面(オフ角7°以内)、且つ2面が(111)面(オフ角7°以内)である単結晶が好ましい。
ダイヤモンド単結晶のサイズは、電子顕微鏡、電子ビーム露光機などの電子ビーム装置に搭載する観点から、50μm×50μm×100μm以上且つ1mm×1mm×5mm以下の直方体空間に収まるものが好適に使用可能である。50μm×50μm×100μm未満、あるいは、1mm×1mm×5mmより大きいと、従来の電子源である六ホウ化ランタンやジルコニアタングステンとの互換性確保が困難になり、電子ビーム装置への取り付けが困難である。また、電子源として十分な導電性を得るために、少なくとも一部にドナー又はアクセプタ不純物を1×1017cm−3以上含むことが好ましい。ドナー不純物としてはP(リン)が、アクセプタ不純物としてはB(ボロン)の使用が好ましい。具体的には、高温高圧合成ダイヤモンド単結晶にPドープダイヤモンド薄膜やBドープダイヤモンド薄膜をエピタキシャル成長したもの、あるいは気相合成Bドープダイヤモンド単結晶、高温高圧合成B入りダイヤモンド単結晶などが好適に使用可能である。
次に、工程(2)において、ダイヤモンド単結晶の少なくとも片方の端面を研磨し、図1に示すように、ダイヤモンド単結晶10の端面を滑らかな平面11にする。滑らかな平面11の大きさは、後の工程で滑らかな平面11上に電子源として十分な大きさ(高さ)の先鋭部を形成するために、差し渡し10μm以上であることが好ましい。また、滑らかな平面11は、表面粗さRaが100nm以下であることが好ましい。100nmより粗いと、後の工程で形成する先鋭部の電子放出点の表面が粗くなり、ダイヤモンド電子源として十分な輝度が得られない。
上記滑らかな平面11は、図1(a)に示すようにダイヤモンド単結晶10の片端の全面に形成してもよいし、図1(b)に示すように端面側面を研磨して、頂部に滑らかな平面11を持つ先細りの先鋭形状(略角錐台状)に形成してもよい。このような先細りの先鋭形状の頂部に滑らかな平面11を設けることによって、最終的に得られる先鋭部への電界集中がより大きくなり、より輝度が高いダイヤモンド電子源が得られる。
そして、工程(3)において、図2に示すように、滑らかな平面11上に電子放出部分である先鋭部をドライエッチングで形成するためのエッチングマスク12を形成する。エッチングマスク12の材質は、ダイヤモンドをドライエッチングする際に、エッチングマスクの水平方向の後退を利用して効率的に形状良くダイヤモンドを先鋭化させることができる材質が好ましい。具体的には、SiO、SiON、SiO、Al、AlOなどの絶縁物や、Fe、Co、Niなどの鉄系金属を使ったエッチングマスクが好適に使用できる。鉄系金属マスクはドライエッチングにおいて、ダイヤモンドに対して選択比が比較的大きいためにより高い先鋭部が形成できる結果、より優れた性能を有するダイヤモンド電子源が得られる。エッチングマスク12は直径1μmから10μmである円形の薄膜が好ましい。このサイズ以外では、高輝度が得られる先鋭部の作製は困難である。膜厚は、これをマスクとして選択比を考慮してダイヤモンドを先鋭化させることを考えると、1μm以上が好ましい。1μm未満であると、従来電子源と比較して高輝度を得るために十分な高さの先鋭突起を形成することは困難である。エッチングマスク12の形成には、スパッタリングやCVDなどの薄膜形成装置が好適に使用可能である。
その後、工程(4)において、上記エッチングマスク12を用いた反応性イオンエッチング(RIE)などのドライエッチングにより、ダイヤモンド単結晶10の端面の一部を先鋭化する。これにより、図3に示すように、ダイヤモンド単結晶10の片端に先鋭部13を形成することができる。電子ビーム装置用としては、先鋭部13はダイヤモンド単結晶10に一箇所のみ有することが好ましい。通常、電子顕微鏡や電子ビーム描画装置などの電子ビーム装置はシングルビームを利用する装置構成であるために、電子放出部分である先鋭部13は一箇所のみで十分である。この先鋭部13は、高さが10μm以上の円錐形状であることが好ましい。このような先端形状を有することによって、後の先鋭部の先端形状補正工程(球面形状加工工程)と表面処理工程により従来電子源を凌駕する電子源性能を有するダイヤモンド電子源が得られる。
次に、工程Aにおいて、図4に示すように、上記のごとく得られた先鋭部13の先端部14の形状を、集束イオンビーム加工装置を用いて球面形状に補正加工する。加工ビームのイオン種は、Gaイオンビームが好適に使用可能であるが、その他のPtあるいはNiあるいはArイオンビームなども使用することができる。加工ビームのエネルギーは5〜40kVが好ましく、この範囲のエネルギーにおいて、実用的なダイヤモンドの加工速度が得られる。工程(4)のドライエッチングのみで先端部14の形状を、大電流・高輝度な電子ビームを得るために必要な球面形状とすることは困難である。先鋭部13を形成するエッチングのメカニズムは複雑であり、エッチング条件やマスク形状の選定が難しい上にプロセスのバッチ間ばらつきがあるからである。そこで、任意の微細な三次元形状が加工可能な集束イオンビーム加工装置を用いて先端部14を球面形状に補正加工すれば、後の表面処理工程により従来電子源を凌駕する電子源性能を有するダイヤモンド電子源が得られる。
続いて、工程Bにおいて、図5に示すように、球面形状に補正加工した先端部14の加工変質層15を、プラズマ16に曝すことによって除去する。加工ビームのエネルギーが5〜40kVである場合、最表面から深さ40nm程度までが加工変質層15となる。加工変質層15は、ダイヤモンドの結晶性が乱れており、さらに加工ビームのイオン種が混入している。従って、ダイヤモンドの電子放出の容易性が失われているので、これをプラズマ16で除去する。プラズマ16は、水素、酸素、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、ハイドロカーボン、パーフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、アルゴンのうち一種類のガスから生成する。ここで、ハイドロカーボンの中ではメタンが、パーフルオロカーボンの中ではCFが、ハイドロフルオロカーボンの中ではCHFが、それぞれ特に好適に使用可能である。プラズマ16の生成条件は、ガス圧力10−1Paから2.6×10Paが好ましく、高周波やマイクロ波、あるいは直流高電圧によって放電させることが好ましい。放電のための投入電力は量産を考慮しても1kW以下、表面処理時間は10分以下で十分である。このようなプラズマ16には、活性化した水素原子、酸素原子、窒素原子、フッ素原子やアルゴン原子が含まれているので、加工変質層15を効率的に除去することができる。さらに、ガス圧力と高周波やマイクロ波、あるいは直流高電圧の投入電力などのプラズマ発生条件を最適に設定することにより、球面形状を維持したまま加工変質層15を除去することができ、設計通りのダイヤモンド表面を持つ球面の先鋭部13を作製することができる。
あるいは、工程Bで、図6に示すように、球面形状に補正加工した先端部14の加工変質層15を、プラズマ17に曝して除去することがより好ましい。プラズマ17は、水素、酸素、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、ハイドロカーボン、パーフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、アルゴンのうち少なくとも二種類の混合ガスから生成する。ここで、ハイドロカーボンの中ではメタンが、パーフルオロカーボンの中ではCFが、ハイドロフルオロカーボンの中ではCHFが、それぞれ特に好適に使用可能である。プラズマ17の生成条件は、ガス圧力10−1Paから2.6×10Paが好ましく、高周波やマイクロ波、あるいは直流高電圧によって放電させることが好ましい。放電のための投入電力は量産を考慮しても1kW以下、表面処理時間は10分以下で十分である。このようなプラズマ17には、活性化した水素原子、酸素原子、窒素原子、フッ素原子やアルゴン原子が、加工変質層15をさらに効率的に除去できる割合で含ませることができる。従って、球面形状を維持したまま加工変質層15を除去することができる。その上、工程A後の表面粗さ、すなわち輪郭度を改善することができるので、より優れた電子源性能を有するダイヤモンド電子源を作製することができる。
なお、加工変質層15の除去を確認するためには、工程Bの前後でラマン分光測定を実施すればよい。除去前には確認できないか小さいダイヤモンドのラマンピーク強度が、同時に測定する参照用のダイヤモンド単結晶程度にまで強くなれば、加工変質層15は除去できたと確認することができる。
前記工程Bで表面処理に使用したプラズマの発生条件を先端部14の球面形状の維持に最適化すると、加工変質層の除去後も最表面にはアモルファスカーボンといったような非ダイヤモンド層が残る場合がある。非ダイヤモンド層の有無は、前述のラマン分光測定では評価が困難であり、存在が懸念される場合はXPS測定で判断する。この非ダイヤモンド層を簡単に除去する方法を探索したところ、フッ化水素酸を含む水溶液(フッ化水素酸30%以上)に20分程度浸すことで除去できることを見出した。
以上の工程により、図7に示すように、先鋭部の高さが10μm以上で、先端形状は曲率半径が0.1μm以上5μm以下の球面であり、球面の輪郭度は曲率半径の0.02倍未満で表面がダイヤモンドであるようなダイヤモンド電子源を作製する。これは大電流・高収束電子ビームを発生させるために最適なダイヤモンド電子源であり、角電流密度や輝度といった電子源性能で従来電子源を凌駕することができる。角電流密度は0.5mA/sr以上で、輝度は5×10A/cmsr以上の高性能が得られる。一方、上記形状の範囲外であるダイヤモンド電子源では、従来電子源の性能を上回ることは困難である。
集束イオンビームで加工した後の最表面から深さ40nm程度までは、前記のようにダイヤモンドの結晶性が乱れている上に、加工ビームのイオン種が混入した加工変質層となる。このためダイヤモンドが本来有する電子放出の容易性が失われることから、電子放出点の加工方法として集束イオンビーム加工は避けられていた。しかしながら、電子顕微鏡や電子ビーム描画装置などの電子ビーム装置用のダイヤモンド電子源の開発を進めるうちに、大電流・高輝度電子ビームを発生させるためには、先鋭部の先端形状を高精度な球面に形状制御する必要があり、これを実現する手法として集束イオンビーム加工が最も優れているとわかった。従って、ダイヤモンド電子源の性能を十分に引き出すためには、必ず形成される加工変質層を除去することが必須であった。このような状況において、本発明者らによる鋭意研究の結果、加工変質層を除去する手法として、工程Bのプラズマを利用する方法、あるいは、さらに追加工程として工程Cフッ化水素酸を含む水溶液に先鋭部を浸す方法を見出したものである。こうして、大電流且つ高輝度な電子ビームが得られる電子放出点を有するダイヤモンド電子源の作製に成功し、角電流密度や輝度といった電子源性能で従来電子源を凌駕するに至った。
以上のように、本発明のダイヤモンド電子源の製造方法は、ダイヤモンド電子源の製造工程において、集束イオンビームによる電子放出部先端の補正加工工程と、プラズマによる表面処理工程とを実施することによって、大電流・高収束電子ビームを発生させるために最適なダイヤモンド電子源を作製することができる。また、本発明によるダイヤモンド電子源は、前記工程によって高精度な球面形状である電子放出点を有するので、角電流密度や輝度といった電子源性能で従来電子源を凌駕することができる。
本発明のダイヤモンド電子源の製造方法、及びダイヤモンド電子源について、実施例に基づいてさらに具体的に説明する。
工程(1)、工程(2)、工程(3)、工程(4)、工程A、工程Bの順で、ダイヤモンド電子源1aを作製した。まず、工程(1)では、2面が(110)面(オフ角7°以内)、2面が(211)面(オフ角7°以内)、2面が(111)面(オフ角7°以内)であり、大きさが0.6×0.6×2.5mmの直方体であって、(111)面にPドープエピタキシャルダイヤモンド薄膜(P濃度、1.7×1020cm−3)を気相成長させた高温高圧合成B入り(B濃度2.1×1019cm−3)ダイヤモンド単結晶を準備した。尚、0.6×0.6mmの面が(110)面であった。
次に、工程(2)で、0.6×0.6mmの(110)面を研磨して、表面粗さRaが30nmの滑らかな平面とし、さらに端面側面を研磨して、頂部に滑らかな平面を持つ角錐台状の先鋭形状を形成した。頂部の滑らかな平面は0.1×0.1mmの正方形であった。この滑らかな平面上に、工程(3)にて、スパッタリングでNiのエッチングマスクを正方形の真ん中に形成した。エッチングマスクのサイズは、直径10μm×厚さ2μmとした。
そして、工程(4)において、上記直径10μm×厚さ2μmのNiのエッチングマスクを用いて、ドライエッチングによりダイヤモンド単結晶の頂部の滑らかな正方形の平面上に一ヶ所の先鋭部を形成した。エッチング条件は、RIEによって、高周波電力300W、圧力40Pa、CF/Oガス流量比2%で、エッチング時間は10時間とした。得られた先鋭部は、高さが30μmの円錐状であった。
次に、工程Aによって、上記のごとく得られた円錐状の先鋭部の先端部の形状を、Ga集束イオンビームを用いて球面形状に補正加工した。Ga集束イオンビームのエネルギーは30kVを用いた。その上で、工程Bによって、補正加工で発生した加工変質層をプラズマによって除去した。プラズマは水素を使用し、圧力1.3×10Paでマイクロ波の電力を200W投入して水素を励起した。プラズマに加工変質層を曝した時間は5分間とした。
工程Bの実施後に、ラマン分光測定及びXPS測定によって、先端部の表面状態はダイヤモンドであることを確認した。こうして得られたダイヤモンド電子源の先鋭部の形状を走査型電子顕微鏡で観察した。その結果、先鋭部の高さは29μm、先端の曲率半径は0.5μm、球面の輪郭度は9.2nmであった。
得られたダイヤモンド電子源を評価装置に取り付けて電子ビームを引き出した。ビームの引き出し電圧4kV、ビームの加速電圧4kVにおいて角電流密度0.9mA/srと良好な結果が得られた。同じ評価条件で、従来の電子源であるジルコニアタングステンを評価したところ、角電流密度は0.2mA/srであった。
工程(1)から(4)までは、実施例1と同様にして、高さが30μmの円錐状の先鋭部を有するダイヤモンドを作製した。次に、工程Aによって、上記のごとく得られた円錐状の先鋭部の先端部の形状を、集束イオンビームを用いて球面形状に補正加工した。イオンビームのイオン種とエネルギーは表1に示す。次に、工程Bによって、補正加工で発生した加工変質層をプラズマによって除去した。プラズマ発生条件は、表1に示す。
その後、ラマン分光測定によって、加工変質層の除去を、XPSによって非ダイヤモンド層の有無をそれぞれ確認した。非ダイヤモンド層があった場合は、工程Cにより、フッ化水素酸を含む水溶液(フッ化水素酸50%)に20分間浸して非ダイヤモンド層を除去した。
Figure 2009187922
放電電力で、「M」はマイクロ波、「K」は高周波を示す。
また、ラマンとXPSの、「有」と「無」は、それぞれ加工変質層と非ダイヤモンド層の有無のことである。
こうして得られたダイヤモンド電子源の先鋭部の形状を走査型電子顕微鏡で観察した後、評価装置に取り付けて電子ビームを引き出した。引き出し電圧4kV、ビーム加速電圧4kVで角電流密度を評価した。これらの結果を表2に示す。なお、この評価条件で従来の電子源であるジルコニアタングステンを評価したところ、角電流密度は0.2mA/srであった。
Figure 2009187922
表2のすべてのダイヤモンド電子源において、従来電子源を凌駕する良好な結果が得られた。
工程(1)、工程(2)、工程(3)、工程(4)、工程A、工程Bの順で、ダイヤモンド電子源2aを作製した。まず、工程(1)では、2面が(110)面(オフ角7°以内)、2面が(211)面(オフ角7°以内)、2面が(111)面(オフ角7°以内)であり、大きさが0.6×0.6×2.5mmの直方体であって、(111)面にPドープエピタキシャルダイヤモンド薄膜(P濃度、1.7×1020cm−3)を気相成長させた高温高圧合成B入り(B濃度2.1×1019cm−3)ダイヤモンド単結晶を準備した。尚、0.6×0.6mmの面が(110)面であった。
次に、工程(2)で、0.6×0.6mmの(110)面を研磨して、表面粗さRaが30nmの滑らかな平面とし、さらに端面側面を研磨して、頂部に滑らかな平面を持つ角錐台状の先鋭形状を形成した。頂部の滑らかな平面は0.1×0.1mmの正方形であった。この滑らかな平面上に、工程(3)にて、スパッタリングでNiのエッチングマスクを正方形の真ん中に形成した。エッチングマスクのサイズは、直径10μm×厚さ2μmとした。
そして、工程(4)において、上記直径10μm×厚さ2μmのNiのエッチングマスクを用いて、ドライエッチングによりダイヤモンド単結晶の頂部の滑らかな正方形の平面上に一ヶ所の先鋭部を形成した。エッチング条件は、RIEによって、高周波電力300W、圧力40Pa、CF/Oガス流量比2%で、エッチング時間は10時間とした。得られた先鋭部は、高さが30μmの円錐状であった。
次に、工程Aによって、上記のごとく得られた円錐状の先鋭部の先端部の形状を、Ga集束イオンビームを用いて球面形状に補正加工した。Ga集束イオンビームのエネルギーは30kVを用いた。その上で、工程Bによって、補正加工で発生した加工変質層をプラズマによって除去した。プラズマは水素とCFを1:1の割合で混合したガスを使用し、圧力1.3×10Paでマイクロ波の電力を200W投入して水素とCFを励起した。
工程Bの実施後に、ラマン分光測定及びXPS測定によって、先端部の表面状態はダイヤモンドであることを確認した。こうして得られたダイヤモンド電子源の先鋭部の形状を走査型電子顕微鏡で観察した。その結果、先鋭部の高さは29μm、先端の曲率半径は0.5μm、球面の輪郭度は5.0nmであった。
得られたダイヤモンド電子源を評価装置に取り付けて電子ビームを引き出した。ビームの引き出し電圧4kV、ビームの加速電圧4kVにおいて角電流密度1.1mA/srと良好な結果が得られた。同じ評価条件で、従来の電子源であるジルコニアタングステンを評価したところ、角電流密度は0.2mA/srであった。
工程(1)から(4)までは、実施例3と同様にして、高さが30μmの円錐状の先鋭部を有するダイヤモンドを作製した。次に、工程Aによって、上記のごとく得られた円錐状の先鋭部の先端部の形状を、集束イオンビームを用いて球面形状に補正加工した。イオンビームのイオン種とエネルギーは表3に示す。次に、工程Bによって、補正加工で発生した加工変質層をプラズマによって除去した。プラズマ発生条件は、表3に示す。
その後、ラマン分光測定によって、加工変質層の除去を、XPSによって非ダイヤモンド層の有無をそれぞれ確認した。いずれの試料も加工変質層と非ダイヤモンド層は無かった。
Figure 2009187922
放電電力で、「M」はマイクロ波、「K」は高周波を示す。
こうして得られたダイヤモンド電子源の先鋭部の形状を走査型電子顕微鏡で観察した後、評価装置に取り付けて電子ビームを引き出した。引き出し電圧4kV、ビーム加速電圧4kVで角電流密度を評価した。これらの結果を表4に示す。なお、この評価条件で従来の電子源であるジルコニアタングステンを評価したところ、角電流密度は0.2mA/srであった。
Figure 2009187922
表4すべてのダイヤモンド電子源において、従来電子源を凌駕する良好な結果が得られた。
以上のように、本発明によれば、集束イオンビーム加工装置の任意の微細な三次元形状を加工する機能と、集束イオンビーム加工装置で加工した後の加工変質層を効果的に除去する表面処理とを組み合わせて利用することで、従来技術では得られなかった、先端が球面の電子放出部分を持つダイヤモンド電子源を作製することができ、大電流且つ高輝度な電子ビームが発生可能なダイヤモンド電子源の提供が可能となる。従って、このダイヤモンド電子源を電子ビーム装置に搭載することによって、高倍率観察が可能な電子顕微鏡や、微細パターンを高スループットで描画可能な電子ビーム露光機などが実現できる。
工程(1)、(2)を示す概念図 工程(3)を示す概念図 工程(4)を示す概念図 工程Aを示す概念図 工程Bを示す概念図 工程Bを示す別な概念図 本発明のダイヤモンド電子源の先端部
符号の説明
10 ダイヤモンド単結晶
11 滑らかな平面
12 エッチングマスク
13 先鋭部
14 先端部
15 加工変質層
16 プラズマ
17 プラズマ

Claims (5)

  1. ダイヤモンドの電子放出点として先鋭部を有するダイヤモンド電子源の製造方法であって、該先鋭部の先端形状を集束イオンビーム加工装置を用いて球面形状に補正する工程Aと、該工程Aによって形成された加工変質層をプラズマによって除去する工程Bとを有することを特徴とする、ダイヤモンド電子源の製造方法。
  2. 前記プラズマは水素、酸素、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、ハイドロカーボン、パーフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、アルゴンのうち一種類のガスから生成されたプラズマであることを特徴とする、請求項1に記載のダイヤモンド電子源の製造方法。
  3. 前記プラズマは水素、酸素、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、ハイドロカーボン、パーフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、アルゴンのうち少なくとも二種類の混合ガスから生成されたプラズマであることを特徴とする、請求項1に記載のダイヤモンド電子源の製造方法。
  4. 前記加工変質層の除去後に残った最表面の非ダイヤモンド層を、フッ化水素酸を含む水溶液に浸して除去する工程Cをさらに有することを特徴とする、ダイヤモンド電子源の製造方法。
  5. ダイヤモンドの電子放出点として先鋭部を有するダイヤモンド電子源であって、該先鋭部の高さは10μm以上で先端形状は曲率半径が0.1μm以上5μm以下の球面であり、該球面の輪郭度は曲率半径の0.02倍未満で表面がダイヤモンドであることを特徴とする、ダイヤモンド電子源。
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