JP2009187912A - Alめっき鋼線および圧着接合構造ならびにワイヤーハーネス - Google Patents

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Abstract

【課題】端子部品との圧着部において、従来のCu素線と同等以上の耐久性を安定して呈し、かつリサイクル性にも優れたワイヤーハーネス用の素線を提供する。
【解決手段】 鋼芯線の周囲にAlめっき被覆を有する直径(円相当径)Dが0.1〜0.6mmのAlめっき鋼線であって、(1)当該Alめっき鋼線(直径=D)の単位長さあたりの常温での電気抵抗をρ1(Ω/m)、直径(円相当径)がDであるCu線の単位長さあたりの常温での電気抵抗をρCu(Ω/m)と表すとき、ρ1/ρCu≦6が成立し、(2)引張強さσ1が250N/mm2以上であり、好ましくは(3)長手方向に垂直な断面において、断面全体に占める鋼芯線の面積率が60%未満である、ワイヤーハーネス用Alめっき鋼線。
【選択図】図7

Description

本発明は、自動車のワイヤーハーネス用素線に適した径の細いAlめっき鋼線、およびそれを複数本束ねた状態で端子部品に圧着にて固定してなる圧着接合構造、ならびにその圧着接合構造を有するワイヤーハーネスに関する。
自動車のワイヤーハーネスは多数の導線により構成されており、それぞれの導線はさらに数本〜数十本の「素線」を束ねることによって作られている。近年、軽量化、コンパクト化のニーズが高まり、ワイヤーハーネスにも細線化の要求が強くなっている。また、自動車解体時の分別回収作業をできるだけ不要にするために、ワイヤーハーネス用の導線にはリサイクル性の良い構成のものが強く望まれるようになってきた。
ワイヤーハーネスを構成する各導線は接続用の端子部品に「かしめ加工」により圧着で締結されることが多く、圧着部で容易に破断することがないように、個々の素線にはある程度の強度が要求される。現状の信号用ワイヤーハーネス導線用の素線には、Cu素線の場合は直径約0.3mm以上、Al素線の場合には直径1mm以上の線径を確保することが望まれている。それより細い場合は強度不足により圧着部の固定端部近傍での素線破断が問題となりやすい。
リサイクル性の観点では、鉄のリサイクルにとって阻害元素となるCuよりも、鉄スクラップとともに溶解可能なAlの方が優れている。電気伝導性の面では、AlはCuに比べ体積抵抗率が大きいが、微弱電流を流す信号用ワイヤーハーネスの場合、Al素線でも問題ない。しかしながら、Al素線は上記のように強度不足を解消するために太い線径のものを採用せざるを得ず、コンパクト化のニーズに十分応えられない。
一方、高強度・高耐食性が要求される用途において、鋼線を芯線とするAlめっき鋼線が知られている(特許文献1〜3)。特許文献1には漁網ロープ用、送電線の補強用、海底光ファイバーケーブル補強用等のワイヤーに使用するAlめっき鋼線が記載されている。特許文献1の実施例に開示されている鋼線は線径2〜13mmと太いものであり、Alめっきの目的は耐食性改善である。特許文献2のAlめっき鋼線も金網等の海水耐食用途等を想定したものであり、線径3.5mmという太径のものが例示されている(段落0008、0009)。特許文献3のAlめっき線材は高強度ボルト用であり、その図2には7mm径のものが示されている。ワイヤーハーネスの素線に使用できるような低抵抗かつ細径のAlめっき鋼線はまだ実現されていない。
特開平3−219025号公報 特開2002−294427号公報 特開2004−360022号公報
本発明は、ワイヤーハーネスに適した細径の素線であって、端子部品との圧着部において、従来のCu素線と同等以上の耐久性を安定して呈し、かつリサイクル性にも優れた線材を提供しようというものである。また、その線材を端子部品に固定してなる耐久性の高い圧着接合構造、およびその圧着接合構造を有するワイヤーハーネスを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明では、鋼芯線の周囲にAlめっき被覆を有する直径(円相当径)Dが0.1〜0.6mmのAlめっき鋼線であって、
(1)当該Alめっき鋼線(直径=D)の単位長さあたりの常温での電気抵抗をρ1(Ω/m)、直径(円相当径)がDであるCu線の単位長さあたりの常温での電気抵抗をρCu(Ω/m)と表すとき、ρ1/ρCu≦6が成立し、
(2)引張強さσ1が250N/mm2以上である、
ワイヤーハーネス用Alめっき鋼線が提供される。
ここで、ρCuはCu線の体積抵抗率を1.72μΩ・cmとして算出される値を採用する。当該Alめっき鋼線の長手方向に垂直な断面の断面積をS(mm2)、円周率をπとするとき、S=πD2/4によって定まるD(mm)を当該Alめっき鋼線の円相当径という。「Alめっき被覆」は、Si含有量が0〜15質量%、Fe含有量が0〜3質量%の溶融Alめっき浴に浸漬することにより形成されるめっき被覆層である。
また、上記(1)(2)の要件に加え、さらに、
(3)長手方向に垂直な断面において、断面全体に占める鋼芯線の面積率が60%未満である、
Alめっき鋼線がより好適な対象となる。
また、本発明では、上記のAlめっき鋼線からなる素線を複数本束ねた状態で端子部品に圧着にて固定してなる圧着接合構造であって、上記複数本の個々の素線がすべて、圧着部引張強さσAが200N/mm2以上で端子部品に固定されている圧着接合構造が提供される。さらに、その圧着接合構造を有するワイヤーハーネスが提供される。
「端子部品」は、導線の端部において他の通電部材との間に電気的接続をとるための金具であり、例えば銅合金にSnめっきしたものが代表的である。
図1に、ワイヤーハーネス先端における端子部品と導線の締結形態の一例を模式的に示す。導線は複数本(例えば5〜12本)の素線により構成され、導線の先端部で絶縁被覆から露出した素線の束は、かしめ加工によって端子部品に圧着接合され、圧着部において圧着バレルが形成される。導線の絶縁被覆の部分も端子部品に軽く固定される。
図2に、圧着部引張強さ測定試料の形態を模式的に例示する。端子部品に複数本の素線の束がかしめ加工により圧着接合され、圧着部が形成されている。実際のワイヤーハーネスでは絶縁被覆の部分も軽く固定されているが、圧着部引張強さ測定試料では絶縁被覆のない裸の素線束が圧着部で固定されており、絶縁被覆固定用の爪による拘束を受けない状態となっている。ワイヤーハーネスから採取したサンプルを測定する場合は、絶縁被覆固定用の爪を機械的に開いて、その部分での拘束を解くとともに、絶縁被覆を除去することによって圧着部引張強さ測定試料を作製することができる。
圧着部引張強さσAの測定では、試料を構成する端子部品の圧着部より先端側の部位を引張試験機の一方のチャックに固定するとともに、圧着接合された素線束のうち1本の素線を引張試験機の他方のチャックに緩衝材を介して固定する。この状態で引張試験を行い、その引張強さの値をその素線の圧着部引張強さσA(N/mm2)とする。素線は通常、圧着部の固定端部近傍(図2中、※印付きの矢印で表示)で破断するか、あるいは破断前に圧着部から抜けてしまう(線抜け)。このような引張試験を、その圧着部引張強さ測定試料の全ての個々の素線について順次実施することによって、圧着部を構成する個々の素線がすべて、圧着部引張強さσAが200N/mm2以上で当該圧着部に固定されているか否かを評価することができる。
本発明のAlめっき鋼線は、これを素線として複数本束ねた状態で端子部品に圧着接合したとき、その圧着部の固定端部近傍における素線の破断強度(圧着部引張強さσA)が、従来のCu素線と同等以上に高く、耐久性に優れたワイヤーハーネスが構築できる。その耐久性はAl素線を用いた場合よりも極めて安定しており、素線を細径化した場合においてもワイヤーハーネスの信頼性向上を図ることができる。また、かしめ加工での圧着負荷が変動した場合の圧着部引張強さσAも比較的安定しており、かしめ加工条件の許容範囲は十分に実用的である。さらに、本発明のAlめっき鋼線を用いたワイヤーハーネスは、Cu素線を用いたものとは異なり、鉄スクラップともに溶解可能であるからリサイクル性にも優れる。
本発明のAlめっき鋼線は、鋼芯線の周囲にAlめっき被覆を有する直径(円相当径)Dが0.1〜0.6mmのものである。Dは0.15〜0.4mmであることがより好ましい。Alめっき鋼線の直径Dが小さすぎるとワイヤーハーネスとして使用した場合の耐久性を十分に確保することが難しくなる。すなわち、たとえ単位断面積あたりの引張強さσ1あるいは圧着部引張強さσAが高くても、個々の素線が破断にいたる引張荷重は小さいものとなり、ワイヤーハーネス取扱い時に断線を起こしやすくなる。一方、Alめっき鋼線の直径Dがあまり大きいとワイヤーハーネスのコンパクト化にとって不利となる。
本発明のAlめっき鋼線は下記(1)の要件を満たすものである。
(1)当該Alめっき鋼線(直径=D)の単位長さあたりの常温での電気抵抗をρ1(Ω/m)、直径(円相当径)がDであるCu線の単位長さあたりの常温での電気抵抗をρCu(Ω/m)と表すとき、ρ1/ρCu≦6が成立すること。
ただし、ρCuは、焼鈍標準軟銅(IACS)からなる直径=DのCu線を想定し、その常温での体積抵抗率を1.72μΩ・cmとして、当該Cu線の単位長さあたりの電気抵抗を算出することによって求めることができる。
発明者らの検討によれば、ワイヤーハーネスの導線としては、Cu線に対して1/6程度の導電性を有していれば使用可能である。つまり、導線の電気抵抗はCu線の6倍程度までは許容できる。そこで、本発明ではρ1/ρCu≦6であることを要件とする。ρ1/ρCu≦5であることがより好ましく、ρ1/ρCu≦4であることが一層好ましい。
鋼芯線の材質が同じであれば、長手方向に垂直な断面における鋼芯線の面積率が小さいほど、ρ1/ρCuの値も小さくなる。すなわちρ1/ρCu値はAlめっき付着量によってコントロールすることが可能である。
さらに本発明のAlめっき鋼線は下記(2)の要件を満たすものである。
(2)引張強さσ1が250N/mm2以上であること。
この引張強さσ1は、所定長さのAlめっき鋼線を、緩衝材を介して引張試験機のチャックに固定して引張試験を行い、チャック間の中間部で破断させた場合の引張強さである。引張強さσ1が安定して250N/mm2以上の値を示す材料でないと、これを束ねて端子部品に圧着接合した圧着部の固定端部近傍における最も破断しやすい箇所での耐久性が不十分となる場合がある。引張強さσ1は280N/mm2以上であることがより好ましく、300N/mm2以上であることが一層好ましい。
鋼芯線の材質が同じであれば、長手方向に垂直な断面における鋼芯線の面積率が大きいほど、Alめっき鋼線の引張強さσ1は大きくなる。すなわち引張強さσ1はAlめっき付着量によってコントロールすることが可能である。
本発明のAlめっき鋼線は下記(3)の要件を満たすものであることがより好ましい。
(3)長手方向に垂直な断面において、断面全体に占める鋼芯線の面積率が60%未満であること。
Alめっき鋼線の長手方向に垂直な断面における鋼芯線の面積率が大きくなること、すなわち換言すれば、同断面において鋼芯線以外の部分(Alめっき層や、鋼芯線/Alめっき層界面に介在するFe−Al系合金層など)の面積率が小さくなることは、Alめっき鋼線の引張強さσ1を増大させるためには有利に働く。その一方で、Alめっき層の面積率低減により電気抵抗ρ1が低下する要因となる。これらの点に関しては上述した。
ところが、鋼芯線の表面を覆うAlめっき被覆は、端子部品との圧着部において、空隙の少ない圧着接合構造を形成するうえで極めて有効に作用することが新たに明らかとなった。すなわち、Alめっき鋼線を複数本束ねて端子部品にかしめ加工により圧着接合した際、圧着部において、硬質の鋼芯線はほとんど変形しない一方、軟質のAlめっき被覆層の部分が潰されて大きく変形し、圧着部のバレル内で鋼芯線の存在領域の残部をAlめっき被覆層由来のAl系相がほぼ埋めつくす圧着接合構造が形成される。Alめっき被覆層が優先的に変形することにより、鋼芯線自体については当該圧着部のバレル内と、その近傍のバレル外とで断面形状や径(断面積)には大きな変化が生じないと考えられる。
ここで、「バレル」とは、圧着部において、かしめ加工により塑性変形して素線束を囲むように把持している金具の部分である。
このように、本発明のAlめっき鋼線を素線に使用すると、
(i)バレル内の空隙が少ないこと、
(ii)鋼芯線の断面形状および径はバレル内とその近傍のバレル外とで大きな変化を生じないこと、
を特徴とする圧着部が形成される。上記(i)(ii)の特徴点がもたらす相乗作用によって、後述の圧着部引張強さσAが高く、耐久性に優れた圧着接合が可能になるものと考えられる。
種々検討の結果、このような相乗効果を十分に発揮させるうえで、本発明のAlめっき鋼線は上記(3)の要件を満たすこと、すなわち、長手方向に垂直な断面において、断面全体に占める鋼芯線の面積率が60%未満であることが、より効果的である。50%以下であることがさらに効果的であり、40%以下であることがさらに一層効果的である。ただし、その下限については上記(2)の要件により制限を受けるので、特に設定する必要はない。
芯線となる鋼線については、例えばJIS G3505に規定される軟鋼線材、G3532に規定される鉄線、G3506に規定される硬鋼線材などが適用可能である。
本発明のAlめっき鋼線は、このような鋼芯線に、溶融Alめっきを施すことにより得ることができる。その際、上記(1)(2)の要件、あるいはさらに(3)の要件を満たすに足る量の溶融めっき層を付着させるようにめっき条件をコントロールする。
本明細書でいう「Alめっき」としては、Si含有量0(無添加)〜15質量%のAlめっきが対象となる。Si以外には3質量%以下の範囲でFeの含有が許容される。溶融Alめっき浴にSiを添加するとめっき浴の融点が低下するので、めっき浴温を低くすることができる点で有利となる。Alめっき浴にSiを添加する場合は、通常、Si含有量15質量%以下の範囲で行われる。ただし、Alめっき被覆中におけるSiは、めっき被覆層の加工性を低下させる要因となる。また、導電性低下にも繋がる。このため、溶融めっき浴中のSi含有量は9質量%以下であることが望ましく、6質量%以下であることがより望ましい。
本発明のAlめっき鋼線からなる素線を複数本束ねた状態で端子部品に圧着にて固定してなる圧着接合構造においては、一般的なかしめ加工度の範囲において、上記複数本の個々の素線がすべて、圧着部引張強さσA;200N/mm2以上、あるいはさらに250N/mm2以上で端子部品に固定されている状態を実現させることができる。個々の素線がすべて、200N/mm2以上という高い圧着部引張強さσAで固定されている圧着接合構造は、従来のCu素線を用いたものと同等以上の高い耐久性を呈するものである。
《実施例1(Alめっき鋼線)》
直径0.2mmの鋼線(C:0.27質量%)を用意し、これに実験室の溶融Alめっき装置を用いて溶融Alめっきを施した。溶融Alめっきの前処理としてガス還元を行った。ガス還元条件は、ガス組成:50体積%H2−N2、露点:−40℃、温度:750℃、処理時間:10秒である。Alめっき浴は、組成:Al−2.2質量%Fe、温度:680℃とした。この浴中にガス還元を終えた鋼線を1秒浸漬したのち、垂直に引き上げる方法で溶融Alめっきを施した。めっき付着量は気体絞り法により調整した。めっき後の線径は平均0.35mmであった。この線材をダイスで伸線加工することにより、線径0.32mmのAlめっき鋼線(本発明相当品)を得た。
この伸線加工後のAlめっき鋼線について、溶融法により単位長さあたりのAlめっき被覆の付着量を求めたところ、0.15g/mであった。また、長手方向に垂直な断面を光学顕微鏡で観察し、その画像から当該断面に占める鋼芯線の面積率を求めたところ、32%であった。また、このAlめっき鋼線の円相当径Dは0.32mmであった。
D=0.32mmの上記Alめっき鋼線について、4端子法による電気抵抗測定結果から常温での単位長さあたりの電気抵抗ρ1を求めたところ、0.66Ω/mであった。一方、D=0.32mmのCu線を想定して、体積抵抗率1.72μΩ・cmを用いて単位長さあたりの当該Cu線の電気抵抗ρCuを算出したところ、0.21Ω/mであった。したがって、ρ1/ρCuの値は3.1となる。
また、D=0.32mmの上記Alめっき鋼線について、常温での引張強さを求めた。チャック間距離が概ね100mmとなるように、緩衝材(厚紙)を介してAlめっき鋼線を引張試験機のチャックに取り付け、引張速度10mm/minにて破断するまで引張試験を行った。試験数n=10で行ったところ、いずれもチャック間の中間部(ほぼ中央位置)で破断した。n=10での引張強さの平均値を求め、これを当該Alめっき鋼線の引張強さσ1とした。引張強さσ1は366N/mm2と求まった。
次に、D=0.32mmの上記Alめっき鋼線を素線として、これを7本束ねた状態で、図3に示す寸法形状の端子部品にかしめ加工により圧着接合することにより、図2に示したような形態の圧着部引張強さ測定試料を作製した。かしめ加工の加工度(付与する圧着負荷の程度)については、一般に圧着後のクリンプハイト(圧着部高さ)によって管理され、導体断面積(各素線の断面積の総和)に応じて、その端子部品における標準的なクリンプハイトの範囲が定められている。ここでは、標準的なクリンプハイトのものから、加工度の低い(すなわちクリンプハイトが標準より大きい)ものまで、種々のクリンプハイトのものを試作した。
得られた各圧着部引張強さ測定試料において、その圧着接合構造を構成している個々の素線について1本ずつ圧着部引張強さσAを測定した。すなわち、試料における端子部品の圧着部より先端側の部位を引張試験機の一方のチャックに固定するとともに、当該部品に圧着接合された素線束のうち1本の素線を引張試験機の他方のチャックに緩衝材(厚紙)を介して固定し、この状態で引張試験を行った。圧着部の固定端部(図2参照)から、素線を掴んだチャックまでの距離は約50mm程度とした。
図4に、本発明のAlめっき鋼線を使用した圧着接合構造のクリンプハイトと圧着部引張強さσAの関係を示す。図4中には各クリンプハイト毎に素線7本すべての測定結果をプロットしてある。「線抜け」と表示したプロットは、素線が破断前に圧着部から抜けてしまったものである(図5、図6において同じ)。
図8に、クリンプハイトの異なるいくつかの試料について、圧着部断面(圧着バレルの横断面)の光学顕微鏡写真を参考のために例示する(以下の各例において同じ)。Alめっき鋼線の例では、バレル内部の濃い色に見える7個の略円形の部分が鋼芯線であり、その周囲の白っぽく見える部分がAlめっき被覆が加工により潰れてバレル内を充填しているAlめっき層である。
《比較例1(Cu線)》
自動車用極薄肉低圧電線(AVSS)7本撚り、公称導体断面積0.5mm2のビニル被覆銅線を入手し、ビニル被覆を除去してCu素線を取り出した。このCu線の直径は、実測の結果0.31mmであった。
このCu線を素線として7本束ねた状態で、実施例1と同様の端子部品に圧着接合することにより、圧着部引張強さ測定試料を作製した。ここでも種々のクリンプハイトのものを試作した。
得られた各圧着部引張強さ測定試料において、実施例1と同様の方法で、その圧着接合構造を構成している個々の素線について1本ずつ圧着部引張強さσAを測定した。
図5に、Cu線を使用した圧着接合構造のクリンプハイトと圧着部引張強さσAの関係を示す。図5中には各クリンプハイト毎に素線7本すべての測定結果をプロットしてある。
《比較例2(Al合金素線)》
Al合金線として、JISに規定されるA5056に相当するAl合金(Al−5%Mg)の線材を入手した。このAl合金線の直径は、実測の結果0.30mmであった。
このAl合金線を素線として7本束ねた状態で、実施例1と同様の端子部品に圧着接合することにより、圧着部引張強さ測定試料を作製した。ここでも種々のクリンプハイトのものを試作した。
得られた各圧着部引張強さ測定試料において、実施例1と同様の方法で、その圧着接合構造を構成している個々の素線について1本ずつ圧着部引張強さσAを測定した。
図6に、Al合金線を使用した圧着接合構造のクリンプハイトと圧着部引張強さσAの関係を示す。図6中には各クリンプハイト毎に素線7本すべての測定結果をプロットしてある。
《各例の対比》
図7に、図4〜図6に示したデータのうち、各クリンプハイトでの圧着部引張強さが最も低い測定値をプロットしたグラフを示す。図7からわかるように、本発明のAlめっき鋼線を使用した圧着接合構造では、広いクリンプハイトの範囲でCu線を使用したものおよびAl合金線を使用したものより高い圧着部引張強さσAが安定して得られた。
なお、Al合金線を使用した場合には、1つの圧着接合構造を構成する個々の素線における圧着部引張強さσAのバラツキが非常に大きい(図6)。したがって、Al合金線の場合は圧着部近傍における耐久性を十分に確保するためには、より線径の太い素線を使用する必要があり、ワイヤーハーネスの細線化のニーズには十分対応しきれない。
ワイヤーハーネス先端における端子部品と導線の締結形態の一例を模式的に示した図。 圧着部引張強さ測定試料の形態を模式的に例示した図。 実施例で使用した端子部品の寸法形状を示した図。 本発明のAlめっき鋼線を使用した圧着接合構造のクリンプハイトと圧着部引張強さσAの関係を示したグラフ。 Cu線を使用した圧着接合構造のクリンプハイトと圧着部引張強さσAの関係を示したグラフ。 Al合金線を使用した圧着接合構造のクリンプハイトと圧着部引張強さσAの関係を示したグラフ。 図4、図5、図6に示したデータのうち、各クリンプハイトでの圧着部引張強さσAが最も低い測定値をプロットしたグラフ。 クリンプハイトの異なるいくつかの試料についての圧着部断面(圧着バレルの横断面)の光学顕微鏡写真。

Claims (4)

  1. 鋼芯線の周囲にAlめっき被覆を有する直径(円相当径)Dが0.1〜0.6mmのAlめっき鋼線であって、
    (1)当該Alめっき鋼線(直径=D)の単位長さあたりの常温での電気抵抗をρ1(Ω/m)、直径(円相当径)がDであるCu線の単位長さあたりの常温での電気抵抗をρCu(Ω/m)と表すとき、ρ1/ρCu≦6が成立し、
    (2)引張強さσ1が250N/mm2以上である、
    ワイヤーハーネス用Alめっき鋼線。
    ただし、ρCuはCu線の体積抵抗率を1.72μΩ・cmとして算出される値を採用する。
  2. さらに、
    (3)長手方向に垂直な断面において、断面全体に占める鋼芯線の面積率が60%未満である、
    請求項1に記載のAlめっき鋼線。
  3. 請求項1または2に記載のAlめっき鋼線からなる素線を複数本束ねた状態で端子部品に圧着にて固定してなる圧着接合構造であって、上記複数本の個々の素線がすべて、圧着部引張強さσAが200N/mm2以上で端子部品に固定されている圧着接合構造。
  4. 請求項3に記載の圧着接合構造を有するワイヤーハーネス。
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