JP2009185357A - 無方向性電磁鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】Siを0.1〜4mass%含有する、板厚が0.10〜1.0mmで特定の磁気特性を有する無方向性電磁鋼板の表面に、5MPa以上の圧縮応力を付与する。
【選択図】なし
Description
記
J100≧1.75T
J10/J100≦0.80
W20≦3.0W/kg
(J100およびJ10は、それぞれ、磁化力10000A/mおよび1000A/mにおける磁気分極、W20は2000A/mおよび50Hzで磁化した場合の鉄損)
この点、発明者らは、鋼板の内部に適度な応力を残留させることにより、1.4〜1.5T付近の常用的な磁束密度域での透磁率を低下させることなく、200A/m付近での透磁率を減少させて磁化曲線の非線形性を軽減することが可能であるとの知見を得た。
(1)Siを0.1〜4mass%含有する板厚が0.10〜1.0mmの無方向性電磁鋼板であって、鋼板表面に5MPa以上の圧縮応力が付与、さらに磁気特性が下記の条件を満たすことを特徴とする無方向性電磁鋼板。
記
B1≧0.4T
B10≧1.45T
B2/B10≦0.78
ここで、B1、B2およびB10はそれぞれ、磁化力100A/m、200A/mおよび1000A/mにおける磁束密度
記
B1≧0.4T
B10≧1.45T
B2/B10≦0.78
ここで、B1、B2およびB10はそれぞれ、磁化力100A/m、200A/mおよび1000A/mにおける磁束密度
まず、成分の限定理由から順に説明する。
[Si:0.1〜4mass%]
Siは、電気抵抗率を増加させることにより渦電流損を低減し、鉄損の低減に寄与する成分元素である。Si含有量が0.1mass%未満では上記の効果が得られず、一方4mass%を超えて含有させると、圧延性などの加工性を著しく劣化させるため、上記範囲に限定した。
電磁鋼板の鉄損は、板厚の減少に伴って低下することが知られており、板厚が薄いほど機器の低損失化には有利であるが、反面、板厚が薄いと圧延や焼鈍といった材料の製造コストの上昇や鉄心の積み数が多くなるなどの問題点があり、コスト面や製造性の観点からは板厚の厚い材料が適している。本発明は、モータや小型変圧器用の鉄心として一般に用いられている電磁鋼板に適用可能であり、これらの範囲は0.10〜1.0mmである。
従来、圧縮応力は電磁鋼板の磁気特性を劣化させる要因として知られていたが、本発明では、これを適度に残留させることにより200A/m付近の透磁率を低下させ、磁化曲線の非線形性が改善されることを見出した。このためには、磁化方向に適度な圧縮応力を存在せしめることが透磁率の制御に最も適しているが、磁化方向以外の圧縮応力での同様の効果を有するため、圧縮応力の方向としては特に限定しない。
また、鋼板内部の圧縮応力は均一である必要はなく、むしろ部分的である方が鉄損の劣化量が過度とならないので望ましい。このような圧縮応力は鋼板表面で最大値をとるが、鋼板表面での圧縮応力が5MPaを下回ると、圧縮応力の導入による最大透磁率付近における透磁率の減少量が十分でないことから5MPa以上に限定した。なお、最大値が50MPaを超えると、鉄損の増加と低磁場から高磁場に亘る全域での透磁率の減少が生じるため、50MPa以下とすることが望ましい。
により求めることができる(「残留応力とゆがみ」須藤 一著;内田老鶴圃、p.46)。ここで、Eはヤング率、νはポアソン比である。
近年、用いられているモータの多くでは、固定子のティースやヨークといった部分の最大磁束密度は1.4〜1.5T程度である。このような磁束密度は素材側では磁化力1000A/mでの磁束密度B10に概ね相当する。従って、B10が低下した場合には、モータ鉄心の場合にトルクの低下が、変圧器鉄心の場合に一次電流の増加が、それぞれ問題となる。従って、実用域でのトルクや一次電流の劣化防止の観点から、B10としては1.45T以上である必要がある。
前述のように、電磁鋼板は磁化力50〜200A/m付近で透磁率が最大となる。従って、B10の減少を最小限としながら200A/m付近での磁束密度を減じることにより、磁化曲線の非線形性を軽減することが可能である。このためには、B2とB10との比B2/B10が0.75以下である必要がある。すなわち、B2/B10≦0.78とすることにより、モータでの無負荷損失や引きずり損失、あるいは小型変圧器での二次電圧波形の歪みを改善することが可能である。
本発明の主旨は、特定の磁界域での透磁率を適度に低下させることにより電磁鋼板の磁化曲線における非線形性を軽減しようとするものである。このためB10といった鉄心が実際に使用される条件での磁束密度は低下させずに、B2に相当する磁束密度をB10に対する比として適度なレベルにまで低下させる。ただし、鉄心内部では部分的もしくは時間的に低磁場となる部分が生じるため、B1〜B2程度に相当する磁束密度が過度に低下した場合はトルクの低下を招く。また、B1が過度に低下した場合は磁化曲線の立ち上がりが悪くなり、磁化曲線が非線形となる。従って、B1が0.4T以上あれば、このような劣化を防止することが可能であるため、B1≧0.4Tとした。
上述した残留応力を導入した場合、いくばくかの鉄損増加が生じる。これを防止するには結晶粒径を増加させるのが適しており、このために平均の結晶粒径が20μm以上とすることが好ましい。すなわち、平均の結晶粒径が20μmを下回ると、鉄損改善の効果を十分に得ることが難しくなる。平均の結晶粒径としてさらに望ましいのは、50μm以上である。
200A/m付近の透磁率を有効に減少させるためには、鋼板内部に応力を残留させることが有効であり、高温での曲げ変形により応力を残留させることができる。このような場合、板厚方向の応力分布が生じる。このような応力が鋼板内部に残留している場合、鋼板片面から中心までの地鉄を除去して残った部分には、応力による反り(曲がり)が生じる。この場合、鋼板片面の地鉄を板厚中心面まで除去したとき(以下、減厚とも称す)の曲がり量は、板厚の増加に従って減少する。
ここで、後述の実施例1(板厚0.5mm)および実施例2(板厚0.35mm)に示されるように、鋼板の表面に5MPa以上の圧縮応力を残留させようとする場合、減厚時の曲り量は1.5/t(t:製品板厚)以上とすることが必要である。従って、鋼板表面に5MPa以上の応力が存在し、かつ板厚方向の応力分布が板厚中心に対して対称な鋼板について、片面から板厚中心までを歪みの導入無く除去した場合の曲がり量は、1.5/t(tは製品板厚:mm)以上となる。
なお、減厚する前に製品鋼板が圧延方向の曲がりを有している場合には、上記の地鉄を板厚中心面まで除去したときの曲がり量は、前記製品鋼板での曲がり量と減厚時の曲がり量との差によって表すこととする。
仕上げ焼鈍後の鋼板を巻き取るに際し、円筒状のロールに巻き付ける処理を高温で行うことにより鋼板表面が高温で延ばされ、高温で延ばされた部分は、平坦にした際に弾性的な圧縮応力が付与された状態となる。このような処理を鋼板の片面に対して行った場合は、製品に反りがもたらされ、モータ等の鉄心に組んで平坦な状態となった際に元の素材の凹面側には引張応力が、凸面側には圧縮応力がかかることになる。
r1+r2+r3+・・・≧1/8
となる。
以上の製造工程の仕上げ焼鈍の最終部分において、図3に示した形態にて連続焼鈍中に鋼板をロールに巻き付ける処理を行った。その際、ロール1、2の温度および直径を表1に示すように変化させた。
なお、ロールへの鋼板の巻き付け量は、ロール1とロール2への巻き付け角度の合計値で60°(ロール1周長の17%)とした。
次に、この材料から圧延方向(L方向)および圧延直角方向(C方向)を長手方向(=磁化特性の測定方向)とする、280mm×100mmのSST試験片を切り出し、圧延方向および圧延直角方向の磁気特性を単板磁気試験器(SST)により測定した。圧延方向および圧延直角方向の測定結果について平均したものを、この材料の磁気特性とした。これら磁気特性を表2に示す。
この測定結果を表2に示すように、本発明の請求項1の条件に適合する電磁鋼板ではトルク乗数の劣化を招くことなく、無負荷損失の低いモータが得られていることが分かる。また、本発明の請求項5の方法によって同請求項1に従う電磁鋼板が得られていることが分かる。また、記号Dの改善量がそれほど大きくないのは、ロール巻き付け処理の温度が700℃と低いために、ロール巻き付け処理により導入された転位が十分に抜けていないことが原因と考えられ、従って750℃以上でロール巻き付け処理を行うことが推奨される。
この鋼板について、板の片面から20μmの厚みだけ地鉄を化学研磨により除去したときの曲がり量から、この部分の圧縮応力を求めた。さらに、板厚中心まで地鉄を除去し、試料長500mm当たりの曲がり量を測定した。これらの測定結果を表3に示す。
表4にモータ特性の測定結果を示す。なお、表中の備考欄では、「鋼板に5MPa以上の圧縮応力が存在すること」の要件に適合ものに「発明例(1)」と、「平均の結晶粒径:20μm以上」の要件に適合ものに「発明例(2)」と、「仕上げ焼鈍後の750℃以上の温度域において、直径1000mm以下の円筒状ロールに対する巻き付け処理」の要件に適合するものに「発明例(3)」と記載した。
2 ロール
3 ロール
4 ロール
Claims (4)
- Siを0.1〜4mass%含有する板厚が0.10〜1.0mmの無方向性電磁鋼板であって、鋼板表面に5MPa以上の圧縮応力が付与され、さらに磁気特性が下記の条件を満たすことを特徴とする無方向性電磁鋼板。
記
B1≧0.4T
B10≧1.45T
B2/B10≦0.78
ここで、B1、B2およびB10はそれぞれ、磁化力100A/m、200A/mおよび1000A/mにおける磁束密度 - Siを0.1〜4mass%含有する板厚0.10〜1.0mmの無方向性電磁鋼板であって、鋼板片面の地鉄を板厚中心面まで除去したときの鋼板の曲がり量が鋼板の長さ500mm当たり板厚t(mm)に関して1.5/t以上であり、さらに磁気特性が下記の条件を満たすことを特徴とする無方向性電磁鋼板。
記
B1≧0.4T
B10≧1.45T
B2/B10≦0.78
ここで、B1、B2およびB10はそれぞれ、磁化力100A/m、200A/mおよび1000A/mにおける磁束密度 - 平均の結晶粒径が20μm以上であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の無方向性電磁鋼板。
- Siを0.1〜4mass%含有する板厚0.10〜1.0mmの無方向性電磁鋼板を製造するに際して、仕上げ焼鈍後の750℃以上の温度域において、直径1000mm以下の円筒状のロールに巻き付ける処理を施すことを特徴とする無方向性電磁鋼板の製造方法。
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