JP2009185319A - 分散強化銅及びその製造方法 - Google Patents

分散強化銅及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2009185319A
JP2009185319A JP2008024891A JP2008024891A JP2009185319A JP 2009185319 A JP2009185319 A JP 2009185319A JP 2008024891 A JP2008024891 A JP 2008024891A JP 2008024891 A JP2008024891 A JP 2008024891A JP 2009185319 A JP2009185319 A JP 2009185319A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
dispersion
compound
strengthened copper
forming element
boride
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2008024891A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5293996B2 (ja
Inventor
Akira Tanji
亮 丹治
Tetsuya Kuwabara
鉄也 桑原
Taichiro Nishikawa
太一郎 西川
Yoshihiro Nakai
由弘 中井
Yasuyuki Otsuka
保之 大塚
Masato Inoue
正人 井上
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sumitomo Wiring Systems Ltd
AutoNetworks Technologies Ltd
Sumitomo Electric Industries Ltd
Original Assignee
Sumitomo Wiring Systems Ltd
AutoNetworks Technologies Ltd
Sumitomo Electric Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Wiring Systems Ltd, AutoNetworks Technologies Ltd, Sumitomo Electric Industries Ltd filed Critical Sumitomo Wiring Systems Ltd
Priority to JP2008024891A priority Critical patent/JP5293996B2/ja
Publication of JP2009185319A publication Critical patent/JP2009185319A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5293996B2 publication Critical patent/JP5293996B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Manufacture Of Alloys Or Alloy Compounds (AREA)
  • Powder Metallurgy (AREA)
  • Conductive Materials (AREA)

Abstract

【課題】母材に炭化物及びホウ化物が分散され、強度と導電率とをバランスよく具える分散強化銅、その製造方法、及びこの分散強化銅からなる電線用導体を提供する。
【解決手段】母材となるCu又はCu合金と、Tiといった化合物形成元素と、炭素ホウ素源とが混合した溶湯を炭素ホウ素源の融点以上に加熱して、上記化合物形成元素と炭素ホウ素源のC及びBとを反応させて炭化物及びホウ化物を生成する。この溶湯を撹拌して、生成した炭化物及びホウ化物を溶湯中に均一的に分散させて凝固する。この工程により、母材に微細な炭化物粒子及びホウ化物粒子が分散した分散強化銅が得られる。
【選択図】図1

Description

本発明は、母材中に炭化物粒子及びホウ化物粒子が分散した分散強化銅、この分散強化銅の製造方法、及びこの分散強化銅からなる電線用導体に関する。特に、強度と導電率とをバランスよく具える分散強化銅に関するものである。
従来より、電線用導体の材料に銅や銅合金が用いられている。また、強度を向上させるために、母材中にアルミナといったセラミックス粒子を分散させた分散強化銅が開発されてきている。分散強化銅は、代表的には、上記セラミックス粉末と母材粉末とを混合して焼結したり(焼結法)、母材溶湯にセラミックス粉末を混合して鋳造する(溶製法)ことで製造される。その他、特許文献1は、ホウ素及び炭素源粉末と、Zr粉末と、銅粉末とを混合して溶融した後冷却すること(粉末冶金法)で、Zrの炭化物及びZrのホウ化物が分散した分散強化銅を開示している。
特開平11-100625号公報
しかし、溶製法は、セラミックス粒子が凝集し易いことから撹拌しても均一的に分散させ難く、粒子の偏在による特性のムラが生じ易い。一方、焼結法や粉末冶金法は、連続的な生産に適しておらず、電線用導体の素材を効率よく生産することが難しい。
また、電線用導体は、導電率が高く、高強度であることが望まれるが、従来、この要求に対して十分に検討されていない。特に、軽量化のために導体径を細した場合であっても、高強度である電線用導体の開発が望まれる。
そこで、本発明の目的の一つは、導電率と強度とをバランスよく具える分散強化銅を提供することにある。また、本発明の他の目的は、分散強化銅を連続的に生産することができる製造方法を提供することにある。更に、本発明の他の目的は、導電率と強度とをバランスよく具える電線用導体を提供することにある。
本発明者らは、母材溶湯に分散材となるセラミックス粉末をそのまま添加するのではなく、分散材となる化合物の原料(化合物形成元素及び炭素ホウ素源)を母材原料と共に溶融して作製した溶湯を用いて、製造過程で分散材を生成することで、導電率が高く、高強度な分散強化銅を連続的に生産できる、との知見を得た。この知見に基づき、本発明は、鋳造法による分散強化銅の製造方法を規定する。
本発明は、母材に化合物粒子が分散した分散強化銅を製造する製造方法であって、以下の工程を具える。
(1) 純Cu、又は純Cuと添加元素とからなるCu合金と、以下の化合物形成元素とC及びBを含有する炭素ホウ素源とが混合した溶湯を準備する工程。化合物形成元素は、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,及びWからなる群から選択される少なくとも1種の元素とする。
(2) 上記溶湯を上記炭素ホウ素源の融点以上として化合物形成元素と炭素ホウ素源中のC及びBとを反応させて炭化物及びホウ化物を生成すると共に、溶湯を撹拌する工程。
(3) 炭化物及びホウ化物の生成及び撹拌を行った溶湯を冷却して凝固する工程。
上記鋳造法による製造により、Cu又はCu合金からなる母材に化合物粒子、具体的には炭化物粒子及びホウ化物粒子が均一的に分散された組織を有する本発明分散強化銅が得られる。より具体的には、本発明分散強化銅は、Cを0.001〜1.0質量%、Bを0.001〜2.0質量%、上記化合物形成元素を0.004〜16質量%含有する。母材中には、実質的にCと上記化合物形成元素とからなる炭化物の粒子と、実質的にBと上記化合物形成元素とからなるホウ化物の粒子とが分散している。特に、本発明分散強化銅は、上記炭化物中の化合物形成元素と上記ホウ化物中の化合物形成元素とが同じ元素である炭化物及びホウ化物を含む。
上記構成を具える本発明分散強化銅は、導電率が高く、高強度である。このように導電率と強度とをバランスよく具えることから本発明分散強化銅は、電線用導体の材料に好適に利用できる。特に、本発明分散強化銅は、細くしても強度に優れることから、軽量化のためなどで細径であることが望まれる電線用導体の材料に好適に利用できる。また、上記本発明製造方法によれば、本発明分散強化銅を連続的に生産可能であることから、例えば、電気用導体の素材などの長尺材を生産性よく製造することができる。以下、本発明をより詳細に説明する。
[分散強化銅]
<組成>
《母材》
本発明分散強化銅は、純Cu又は純Cuに添加元素を添加したCu合金を主成分(母材)とする。添加元素は、Sn,Ni,Si,Fe,P,Ag,Crなどが挙げられる。例えば、公知の組成のCu-Sn合金、Cu-Ni-Si合金、Cu-Fe-P合金、Cu-Ag合金、Cu-Cr合金、Cu-Si合金を母材に利用できる。本発明分散強化銅は、炭化物及びホウ化物分散組織とすることで強度を高められるため、先に列記した公知の組成のCu合金よりも添加元素の含有量を低減可能である。本発明分散強化銅は、この純Cu又はCu合金からなる母材に、C、B及び化合物形成元素を含む組成である。具体的な組成を以下に挙げる。
組成(I) Cを0.001質量%以上1.0質量%以下、Bを0.001質量%以上2.0質量%以下、化合物形成元素を0.004質量%以上16質量%以下含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる
組成(II) Cを0.001質量%以上1.0質量%以下、Bを0.001質量%以上2.0質量%以下、化合物形成元素を0.004質量%以上16質量%以下含有し、更に、所定量の添加元素を含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる
分散強化銅中の組成は、例えば、誘導結合プラズマ(ICP:Inductively
Coupled Plasma)発光分光分析やX線光電子分光法(XPS)により調べられる。分散強化銅中の炭化物及びホウ化物の存在は、例えば、X線回折(XRD)やエネルギー分散型X線分析(EDX)により調べられる。
《C(炭素)及びB(ホウ素)》
本発明分散強化銅中のC及びBの大部分又は全部は、母材中に分散される炭化物、ホウ化物として存在する。本発明では、C及びBの一部がそれぞれ、Cu又はCu合金中に固溶していたり、結晶粒界に析出していたりすることを許容する。C及びBの含有量はそれぞれ、母材中に分散される炭化物、ホウ化物を形成するもの、Cu又はCu合金中に固溶しているもの、Cu又はCu合金に析出しているものの合計とする。Cが0.001質量%未満又はBが0.001質量%未満では、母材中に炭化物及びホウ化物が十分に存在せず、化合物粒子の分散による特性の向上効果が得られない。Cが1.0質量%超又はBが2.0質量%超では、元素が単独で結晶粒界に大量に析出して、逆に特性の低下を招く。Cのより好ましい含有量は、0.01質量%以上0.5質量%以下、Bのより好ましい含有量は、0.1質量%以上1.5質量%以下である。
《炭化物形成元素》
本発明分散強化銅は、周期律表4A族,5A族,及び6A族の元素、具体的には、Ti,
Hf,V,Cr,Mo,及びWからなる群から選択される少なくとも1種の元素を化合物形成元素として含有する。化合物形成元素は、1種でも、2種以上でもよく、複数種とする場合、合計含有量が0.004質量%以上16質量%以下を満たす。化合物形成元素は、Cuと比較して炭化物及びホウ化物を形成し易い元素であり、その大部分又は全部が上記C及びBとそれぞれ反応して形成された炭化物及びホウ化物として母材中に存在する。本発明では、化合物形成元素の一部がCu又はCu合金中に固溶又は析出していることを許容する。化合物形成元素の含有量は、化合物を形成するもの、固溶しているもの、析出しているものの合計とする。化合物形成元素が0.004質量%未満では、母材中に炭化物及びホウ化物が十分に存在せず、化合物粒子の分散による特性の向上効果が得られない。化合物形成元素が16質量%超では、導電率が低下する。化合物形成元素のより好ましい含有量は、0.01質量%以上4.0質量%以下であり、より好ましい元素は、Tiである。Tiは、強度の向上効果が大きい。好ましい含有量は、化合物形成元素の種類によって異なる。表1に各元素の好ましい上限値、下限値を示す。複数種の化合物形成元素を含有する場合、例えば、3種の元素とするとき、各元素の含有量は、各元素における表1に示す範囲の平均値の1/3が目安となるが、実際に実験をして各元素の最適な含有量を求めてもよい。含有量は、添加量を調整することで適宜調整する。母材をCu合金とする場合、添加元素の一部を化合物形成元素とすることができる。大まかな傾向として、化合物形成元素やB,Cの含有量が多くなると強度が高くなり、含有量が少なくなると導電率が高くなる。
<組織>
《炭化物及びホウ化物》
本発明分散強化銅は、実質的にCと上記化合物形成元素とから構成される炭化物、及び実質的にBと上記化合物元素とから構成されるホウ化物が母材中に分散されている。上記炭化物は、代表的には、Cと上記化合物形成元素からなるもの、具体的には、TiC,HfC,VC,Cr3C2,Mo2C,WCの1種以上が挙げられ、上記ホウ化物は、代表的には、Bと上記化合物形成元素からなるもの、具体的には、TiB2,
HfB2,VB2,CrB,CrB2,MoB2,Mo2B5,MoB,W2B5の1種以上が挙げられる。上記炭化物やホウ化物中に、上記炭化物やホウ化物の他、Tiといった化合物形成元素をそのまま含有していたり、CuやPといった母材に含有される元素を含有していたりすることを許容する。
特に、本発明分散強化銅は、同じ化合物形成元素からなる炭化物及びホウ化物を含む。全ての炭化物及びホウ化物が共通の化合物形成元素からなるものでもよい。これら炭化物及びホウ化物は、Cuと比較して高硬度で高強度であることから、これらが母材中に分散された組織を有する本発明分散強化銅は、母材が強化される。つまり、本発明分散強化銅は、化合物粒子分散組織とすることで、母材に固溶させる添加元素の種類の追加や含有量の増加を行うことなく、導電率の低下を抑制しながら、効果的に強度が向上される。また、本発明分散強化銅の母材をCu合金とする場合、化合物粒子分散組織とすることで、強度が不足している固溶型合金(添加元素の含有量が少ないもの)や時効型合金の特性を向上できる。
炭化物及びホウ化物の合計含有量は、0.006〜19質量%が好ましく、炭化物及びホウ化物の種類によって適宜調整する。含有量は、化合物形成元素の添加量、CやBの添加量を調整することで行える。表2に炭化物及びホウ化物の好ましい上限値、下限値を示す。
本発明製造方法により得られる本発明分散強化銅は、粗大な化合物粒子が存在せず、炭化物粒子及びホウ化物粒子のいずれも微細である。具体的には、炭化物粒子の平均粒径が3μm以下、ホウ化物粒子の平均粒径が5μm以下である。これら微細な粒子は、本発明分散強化銅が凝固材の状態から圧延や伸線などの塑性加工を受けた塑性加工材(例えば、伸線材)の状態でも維持される。
各粒子は、球形状(断面円形状)、断面楕円状、断面矩形状などの種々の形状で存在する。平均粒径は、本発明分散強化銅の断面における35μm四方の3000倍の顕微鏡写真を画像解析し、この断面における全粒子の直径を測定し、その平均値とする。各粒子の直径は、断面における粒子の面積から、この面積と等しい円の径(円相当径)を算出し、この円相当径を直径とし、この直径に基づいて平均粒径を求める。後述する試験例もこの手法で平均粒径を求める。
[製造方法]
<溶湯の作製>
本発明分散強化銅は、原料を用意して溶融し、母材となる純Cu又はCu合金と、上記化合物形成元素と、C及びBを含有する炭素ホウ素源とが混合した溶湯を準備する。溶湯は、全ての原料を混合してから溶融して作製してもよいし、まず、Cu又はCu合金の溶湯を作製して、この溶湯に化合物形成元素や炭素ホウ素源を添加して作製してもよい。化合物形成元素は、単体で添加してもよいし、この元素を含有する化合物、例えばCuとの合金で添加してもよい。炭素ホウ素源は、上記溶湯中で化合物形成元素と反応して炭化物及びホウ化物を形成可能なものを利用する。炭素ホウ素源は炭素源とホウ素源とを別個とした複数種としてもよく、例えば、C単体(例えば、グラファイト)、Cを含有する合金や化合物(例えば、Fe-C合金,SiC,CaC2などの炭化物)や、B単体、Bを含有する合金や化合物(例えば、Cu-B合金,B4Cなどのホウ化物)が利用できる。単体で添加するよりも合金や化合物で添加する方が歩留まりが高くなり、ばらつきも小さくなる傾向にある。特に、炭素ホウ素源として炭化ホウ素(B4C)を用いると、炭素源とホウ素源とを別個に用意しなくて済み、かつ余分な元素を含んでいないため、母材に余分な元素が固溶して導電率が低下するなどの悪影響を防止できる。なお、母材に固溶した炭素ホウ素源のうち、B及びC以外の元素は、導電率の低下を防止するために、析出させることが好ましい。
上記溶湯の作製は、大気雰囲気で行ってもよいが、窒素ガスやアルゴンガスといった不活性ガス雰囲気で行うと、溶湯中にスラグ(酸化物)が発生することを抑制できる。上記不活性ガスに水素ガスを5〜15体積%加えた混合ガス雰囲気とすると、不可避的に存在する酸素を除去することができる。
<溶湯の加熱>
作製した上記溶湯は、炭素ホウ素源の融点(炭素ホウ素源が複数種の場合、最も融点が高いものの融点)以上の温度に加熱する。上記温度に加熱することで、炭素ホウ素源を完全に溶解させて、化合物形成元素と炭素ホウ素源中のC及びBとを十分に反応させて、炭化物及びホウ化物を形成できる。但し、形成される炭化物及びホウ化物の粒成長による粗大化を防止するため、溶湯の温度は、形成される炭化物及びホウ化物の融点を超えないことが好ましい。通常、炭素ホウ素源の融点は、母材となるCuやCu合金の融点よりも高いため、炭素ホウ素源の融点以上の温度に加熱することで母材は溶融状態にある。
<溶湯の撹拌>
溶湯は、上記加熱と共に、撹拌フィンなどで撹拌する。撹拌によりC及びBと化合物形成元素との反応を促進できると共に、溶湯中に形成された炭化物及びホウ化物を母材中に均一的に分散させ、炭化物粒子及びホウ化物粒子が母材中に均一的に分散された本発明分散強化銅を製造できる。
<溶湯の凝固>
上記加熱及び撹拌した溶湯を凝固させて凝固材を作製する。凝固時の冷却速度を速くして急冷する、具体的には100℃/sec以上、特に150℃/sec以上とすることで、生成された化合物粒子の粒成長を抑制して粗大粒子の出現を低減し、化合物粒子を微細にできる。かつ、急冷することで、撹拌により化合物粒子が均一的に分散した状態の溶湯をほぼそのままの状態で凝固することができる。従って、微細な炭化物粒子及びホウ化物粒子が均一的に分散した組織を有する分散強化銅が得られる。上記冷却速度を満たす急冷は、強制冷却、例えば、水冷、冷風の吹き付けなどを行うことで実現できる。
<熱処理>
上記凝固工程以降において、適宜熱処理を行ってもよい。例えば、凝固材、この凝固材に伸線といった塑性加工を施した塑性加工材(伸線後の伸線材、又は伸線途中の加工材)に熱処理を施す。凝固後伸線前、多パスの伸線加工を行う場合は伸線途中、及び伸線後のいずれかにおいて少なくとも1回の熱処理を行うことで、以下の(1)〜(3)の効果が得られる。なお、得られた凝固材は、微細な化合物粒子が母材中に均一的に分散している組織を有することで、凝固後や伸線途中、伸線後に熱処理を施した際、粒子のピン止め効果により母材を構成する結晶粒の粗大化を阻止でき、粗大な結晶粒が伸線時に割れや破断の起点となったり、粗大な結晶粒により伸線材の靭性が低下する、といった不具合を防止できる。
(1)凝固材中に炭素やホウ素、化合物形成元素が固溶している場合、熱処理により化合物の生成を促進して、分散強化に寄与する化合物粒子を増加させることができる。
(2)母材が時効型合金や2相型合金である場合、熱処理により、母材に固溶している添加元素の析出を促進して、母材そのものの導電率と強度を高められる。
(3)伸線材や伸線途中の加工材に熱処理を施す場合、伸線加工による歪みを除去して、伸線材の伸びを回復させることができる。
熱処理の加熱温度は、250℃以上が好ましい。250℃未満では、加熱対象材中の原子の移動が僅かであり、上記効果が十分に得られない。より好ましくは、250〜650℃である。保持時間は、0.1〜10時間が好ましい。
上述した製造方法により、効果的に母材の分散強化を行え、強度と導電率とのバランスがとれた本発明分散強化銅を製造することができる。具体的には、引張強さ:550MPa以上、導電率:40%IACS以上の分散強化銅、或いは引張強さ:520MPa以上、導電率:90%IACS以上の分散強化銅を製造することができる。
なお、本発明の製造方法は、化合物形成元素としてZr,Nb,Taを用いることも可能である。各元素の好ましい含有量は、質量%で、Zr:0.008〜7.6、Nb:0.008〜7.7、Ta:0.015〜15.1である。また、これらの元素を添加する際の具体的な形態としては、Cu-Zr合金のインゴット(Zrの含有量:30質量%)、Nbフレーク、Ta粒が挙げられる。
<用途>
上記本発明分散強化銅は、導電率が高く、高強度であることから、電線用導体の材料に好適に利用できる。本発明分散強化銅からなる凝固材を所望の径となるように伸線して得られた伸線材を導体に利用する。この電線用導体は、φ0.2mm以下といった細径であっても高強度であり、引張強さ:550MPa以上、導電率:40%IACS以上を満たす。このような電線用導体は、例えば、ワイヤーハーネス用電線の導体に利用できる。
本発明分散強化銅及びこの分散強化銅からなる電線用導体は、強度と導電率とをバランスよく具える。また、本発明製造方法は、強度と導電率とをバランスよく具える本発明分散強化銅を生産性良く製造することができる。
[試験例]
純銅からなる母材に炭化物及びホウ化物が分散した分散強化銅を作製し、導電率と引張強さを調べた。
<試料No.1〜4>
純Cu(OFC)粒、化合物形成元素としてスポンジTi粒、炭素ホウ素源として炭化ホウ素粒(B4C)を用意して坩堝に入れ、アーク溶解炉で溶解した。溶融は、原料の酸化防止のため、アルゴン雰囲気で行った。得られた溶湯を炭化ホウ素の融点(約2350℃)以上にすると共に、撹拌フィンで撹拌した。この混合溶湯を水冷Cu製鋳型に鋳込み、100℃/sec以上の冷却速度(180℃/sec)で急冷して凝固し、幅40mm×厚さ20mm×長さ70mmの凝固材を得た。上記Ti及びB4Cの添加量を異ならせて、組成の異なる凝固材を得た(試料No.1〜4)。得られた凝固材を表面切削して、直径φ12mmの棒状体とし、この棒状体をφ6mmまでスウェージ加工を施した。得られた直径φ6mmの加工材を直径φ0.2mmになるまで伸線した。試料No.1は、伸線材に450℃×8hの熱処理(時効処理)を施し(冷却:炉冷)、試料No.2〜4は、伸線材のままとした。
<試料No.100>
純Cu(OFC)粒、化合物形成元素としてスポンジTi粒、炭素源としてグラファイトを用意して坩堝に入れ、試料No.1〜4と同様にアーク溶解炉で溶解した。得られた溶湯を2300℃にすると共に、撹拌フィンで撹拌した後、試料No.1〜4と同様にして同じ大きさの凝固材を得た(試料No.100)。得られた凝固材を試料No.1〜4と同様にして、直径φ0.2mmの伸線材を作製し、試料No.1と同様の時効処理を施した。
<試料No.101>
純Cu(OFC)粒、化合物形成元素としてスポンジTi粒、ホウ素源としてCu-B合金(Bの含有量:2質量%)を用意して坩堝に入れ、試料No.1〜4と同様にアーク溶解炉で溶解した。得られた溶湯を1150℃にすると共に、撹拌フィンで撹拌した後、試料No.1〜4と同様にして同じ大きさの凝固材を得た(試料No.101)。得られた凝固材を試料No.1〜4と同様にして直径φ0.2mmの伸線材とした。
得られた各凝固材の組成をICP発光分光分析により調べた。その結果を表3に示す。
また、得られた各凝固材の断面をEDXが付属されている走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した。図1は、試料No.1〜4の凝固材の断面の顕微鏡写真(35μm四方、3000倍)を示す。図1において薄い灰色部分(背景である比較的明るい部分)は母材、粒状で濃い灰色部分(比較的暗い部分)は炭化物(TiC)及びホウ化物(TiB2)である。化合物の存在は、EDXにより確認した。図1に示すように試料No.1〜4のいずれの凝固材も、母材に微細な炭化物及びホウ化物が均一的に分散していることが分かる。また、図1から、母材に含有するC,B,Tiは、実質的に炭化物(TiC)及びホウ化物(TiB2)として存在することが分かる。更に、試料No.1〜4について、炭化物粒子及びホウ化物粒子の平均粒径を測定したところ、例えば、試料No.3は、炭化物粒子:0.5μm、ホウ化物粒子:1.2μmであり、その他の試料も、炭化物粒子が3μm以下、ホウ化物粒子が5μm以下であった。
上記試料No.1〜4及び100,101の伸線材、及び熱処理材の引張強さ(MPa)、及び導電率(%IACS)を調べた。その結果を表4に示す。
表4に示すように試料No.1〜4は、導電率及び引張強さが高いことが分かる。特に、試料No.2〜4は、非常に導電率が高く、強度も高い。試料No.1は、Tiが多いことから、試料No.2〜4と比較すると導電率が低いものの、時効処理を施すことで、導電率の低下が低減されている。また、導電率が同程度である試料No.100と比較して試料No.1は、高強度であることが分かる。
このような結果となった理由は、試料No.1〜4の伸線材及び熱処理材は、微細な炭化物粒子及びホウ化物粒子が均一的に分散した組織が維持されているためと推測される。また、伸線後の熱処理の際、母材を構成する結晶粒の成長をこれら微細な炭化物やホウ化物のピン止め効果により抑えることができたためであると推測される。このように強度及び導電率をバランスよく具える試料No.1〜4は、電線用導体に好適に利用することができると考えられる。なお、上記試験例では、試験のために短尺材を作製したが、連続鋳造により長尺材も作製可能である。
上記試験例において各原料を以下のように変更することができる。
《母材》
母材をCu合金とする場合、上記純Cu(OFC)粒に代えて、Cu-Cr合金のインゴット(Crの含有量:5質量%)、Cu-Si合金のインゴット(Siの含有量:11質量%)、Cu-Sn合金のインゴット(Snの含有量:0.3質量%)などを用いることができる。
《化合物形成元素》
上記スポンジTi粒に代えて、或いは上記スポンジTi粒に加えて、例えば、スポンジHf粒、バナジウムフレーク、Cr粒、Mo粉末(粒径300μm程度)、W粉末(粒径150μm程度)を用いることができる。MoやWなど融点の高い金属は、溶け難いため、粒径の小さい粉末を用いて時間をかけて加熱することが望ましい。
なお、上述した実施形態は、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能であり、上述した構成に限定されるものではない。例えば、炭素やホウ素の含有量、化合物形成元素の種類や含有量を変更することができる。
本発明分散強化銅は、高強度で高導電率が望まれる電線用導体の材料に好適に利用することができる。本発明分散強化銅の製造方法は、上記高強度で高導電率の分散強化銅の製造に好適に利用することができる。本発明電線用導体は、例えば、ワイヤーハーネス用電線の導体に好適に利用することができる。
母材に炭化物及びホウ化物が分散した分散強化銅の断面の顕微鏡写真であり、(I)が試料No.1、(II)が試料No.2、(III)が試料No.3、(IV)が試料No.4を示す。

Claims (6)

  1. 母材に化合物粒子が分散した分散強化銅であって、
    母材は、Cu又はCu合金からなり、
    Cを0.001〜1.0質量%、Bを0.001〜2.0質量%、Ti,Hf,V,Cr,Mo,及びWからなる群から選択される少なくとも1種の化合物形成元素を0.004〜16質量%含有し、
    実質的にCと前記化合物形成元素とからなる炭化物の粒子と、実質的にBと前記化合物形成元素とからなるホウ化物の粒子とが母材中に分散しており、
    前記炭化物中の化合物形成元素と前記ホウ化物中の化合物形成元素とが同じ元素である炭化物及びホウ化物を含むことを特徴とする分散強化銅。
  2. 前記炭化物の粒子の平均粒径は、3μm以下であり、
    前記ホウ化物の粒子の平均粒径は、5μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の分散強化銅。
  3. 前記同じ化合物形成元素は、Tiであることを特徴とする請求項1又は2に記載の分散強化銅。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の分散強化銅からなることを特徴とする電線用導体。
  5. 母材に化合物粒子が分散した分散強化銅を製造する分散強化銅の製造方法であって、
    純Cu、又は純Cuと添加元素とからなるCu合金と、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,及びWからなる群から選択される少なくとも1種の化合物形成元素と、C及びBを含有する炭素ホウ素源とが混合した溶湯を準備する工程と、
    前記溶湯を前記炭素ホウ素源の融点以上として化合物形成元素と炭素ホウ素源中のC及びBとを反応させて炭化物及びホウ化物を生成すると共に、溶湯を撹拌する工程と、
    炭化物及びホウ化物の生成及び撹拌を行った溶湯を冷却して凝固する工程とを具えることを特徴とする分散強化銅の製造方法。
  6. 前記凝固工程は、溶湯を100℃/sec以上の冷却速度で冷却することを特徴とする請求項5に記載の分散強化銅の製造方法。
JP2008024891A 2008-02-05 2008-02-05 分散強化銅、分散強化銅の製造方法、及び電線用導体 Expired - Fee Related JP5293996B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008024891A JP5293996B2 (ja) 2008-02-05 2008-02-05 分散強化銅、分散強化銅の製造方法、及び電線用導体

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008024891A JP5293996B2 (ja) 2008-02-05 2008-02-05 分散強化銅、分散強化銅の製造方法、及び電線用導体

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2009185319A true JP2009185319A (ja) 2009-08-20
JP5293996B2 JP5293996B2 (ja) 2013-09-18

Family

ID=41068846

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2008024891A Expired - Fee Related JP5293996B2 (ja) 2008-02-05 2008-02-05 分散強化銅、分散強化銅の製造方法、及び電線用導体

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5293996B2 (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN104372196A (zh) * 2014-10-09 2015-02-25 河海大学 一种原位反应生成TiC弥散强化Cu合金的方法
JP2016053190A (ja) * 2014-09-03 2016-04-14 住友電気工業株式会社 分散強化銅含有材料の製造方法
CN111304485A (zh) * 2020-03-07 2020-06-19 福达合金材料股份有限公司 一种铜基带状电接触材料及其制备方法

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH049439A (ja) * 1990-04-27 1992-01-14 Leotec:Kk 硼化物分散強化合金の製法
JPH04246139A (ja) * 1991-01-30 1992-09-02 Toyota Motor Corp 金属基複合材料の製造方法
JPH11100625A (ja) * 1997-09-26 1999-04-13 Yazaki Corp ホウ化物及び炭化物分散強化銅及びその製造方法
JP2005307345A (ja) * 2004-03-24 2005-11-04 Honda Motor Co Ltd 粒子分散金属間化合物の製造方法

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH049439A (ja) * 1990-04-27 1992-01-14 Leotec:Kk 硼化物分散強化合金の製法
JPH04246139A (ja) * 1991-01-30 1992-09-02 Toyota Motor Corp 金属基複合材料の製造方法
JPH11100625A (ja) * 1997-09-26 1999-04-13 Yazaki Corp ホウ化物及び炭化物分散強化銅及びその製造方法
JP2005307345A (ja) * 2004-03-24 2005-11-04 Honda Motor Co Ltd 粒子分散金属間化合物の製造方法

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016053190A (ja) * 2014-09-03 2016-04-14 住友電気工業株式会社 分散強化銅含有材料の製造方法
CN104372196A (zh) * 2014-10-09 2015-02-25 河海大学 一种原位反应生成TiC弥散强化Cu合金的方法
CN111304485A (zh) * 2020-03-07 2020-06-19 福达合金材料股份有限公司 一种铜基带状电接触材料及其制备方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP5293996B2 (ja) 2013-09-18

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Liu et al. Microstructure and tensile properties of FeMnNiCuCoSnx high entropy alloys
JP5376604B2 (ja) 鉛フリー黄銅合金粉末、鉛フリー黄銅合金押出材およびその製造方法
EP4083244A1 (en) Heat-resistant powdered aluminium material
JP2005314806A (ja) 高硬度で高導電性を有するナノ結晶銅金属及びナノ結晶銅合金の粉末、高硬度・高強度で高導電性を有する強靱なナノ結晶銅又は銅合金のバルク材並びにそれらの製造方法
JP6880203B2 (ja) 付加製造技術用のアルミニウム合金
CN108998729B (zh) 一种高强韧钢及其制备方法
KR101310622B1 (ko) 마그네슘 합금 칩 및 그것을 이용한 성형품의 제조 방법
JP5546196B2 (ja) 時効析出型銅合金、銅合金材料、銅合金部品および銅合金材料の製造方法
Rajkovic et al. Properties of copper matrix reinforced with various size and amount of Al2O3 particles
JP5759426B2 (ja) チタン合金及びその製造方法
JP2009167450A (ja) 銅合金及びその製造方法
JP2004353011A (ja) 電極材料及びその製造方法
Bozic et al. Multiple strengthening mechanisms in nanoparticle-reinforced copper matrix composites
JP2021507088A5 (ja)
Ružić et al. Strengthening effects in precipitation and dispersion hardened powder metallurgy copper alloys
Xu et al. Study of the preparation of Cu-TiC composites by reaction of soluble Ti and ball-milled carbon coating TiC
JP5293996B2 (ja) 分散強化銅、分散強化銅の製造方法、及び電線用導体
KR20120123685A (ko) 입자성 알루미늄 나노 복합재와 그 생산 공정
JP6259978B2 (ja) Ni基金属間化合物焼結体およびその製造方法
JP4956266B2 (ja) 分散強化銅及びその製造方法、伸線材、自動車用ワイヤーハーネス
JPH0625774A (ja) TiB2 分散TiAl基複合材料の製造方法
Du et al. Effects of copper addition on the in-situ synthesis of SiC particles in Al–Si–C–Cu system
JP2009185320A (ja) 銅合金及びその製造方法
JP5376389B2 (ja) 窒化物分散強化Cu合金とその製造方法及び導体ワイヤ
JP2008255461A (ja) 金属間化合物分散型Al系材料及びその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20110113

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20130207

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130403

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20130516

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20130529

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees