JP2009185314A - Dlc膜の製造装置、部材及びその製造方法 - Google Patents

Dlc膜の製造装置、部材及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】CAT−CVD法により高硬度なビッカース硬度を有したDLC膜を安定に形成することが可能なDLC膜製造装置を提供すること。
【解決手段】CAT−CVD法により基材21にDLC膜を形成するDLC膜の製造装置10であって、基材21の被成膜面とは反対側に配置され、基材21を加熱するための第一手段11と、所定の温度範囲内で基材21の温度が変動するように、第一手段11を制御する第二手段12とを少なくとも備えたこと。
【選択図】図1

Description

本発明はDLC膜(Diamond Like Carbon)に係り、より詳しくは、高硬度なDLC膜を成膜することが可能なDLC膜の製造装置と、該DLC膜の製造装置によって得られるDLC膜を備えた部材、及びその製造方法とに関する。
炭素から合成されるダイヤモンド、及びグラファイトは結晶構造を有するが、DLC膜は、ダイヤモンドに起因するsp結合と、グラファイトに起因するsp結合からなっており、DLC膜はアモルファスである点が大きく異なっている。また、ダイヤモンドやグラファイトと比べ、低温で形成できる点が非常に優位である。さらに添加する水素量を変化させることにより様々にその特性を変化できることから、工学的な応用を進めていくうえで極めて潜在能力の高い材料である。
近年、切削加工において地球環境保全や作業環境改善の観点から切削油剤の使用を極力抑えることが求められている。DLC膜は炭素を主成分とするアモルファス膜であり、平面平滑性、高硬度を併せ持つユニークな硬質薄膜である。DLC膜をコーティングした切削工具では、切削抵抗の低減、加工面積精度・寸法精度の向上、及び切削油剤を使用しないドライ加工の容易化、などの優れた効果に加えて、工具段取り替え工数の低減や省エネルギーなどコストダウンにも大きく貢献している。
DLC膜のコーティングは、主にスパッタ法やCVD法により行われている。例えば特許文献1には、ガスイオン源を用いたDLC薄膜形成装置が開示されている。この装置によるDLC膜の成膜においては、プラズマを用いないため、基板に損傷等が生じ難く、平坦性のよいDLC膜が成膜できる。
しかしながら、従来のDLC膜の製造装置や特許文献1に記載のDLC薄膜形成装置を用いたDLC膜の成膜では、十分な硬度を安定して得ることが難しく、特に鉄を含む基材上にDLC膜を成膜し、切削工具等に適用するには十分なビッカース硬度が得られない場合があった。
特開平10−72289号公報
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、CAT−CVD法により高硬度なビッカース硬度を有したDLC膜を安定に形成することが可能なDLC膜製造装置を提供することを第一の目的とする。
高硬度なビッカース硬度のDLC膜を備えた部材を提供することを第二の目的とする。
高硬度なビッカース硬度のDLC膜を備えた部材を安定に製造することが可能な部材の製造方法を提供することを第三の目的とする。
本発明の請求項1に記載のDLC膜の製造装置は、CAT−CVD法により基材にDLC膜を形成するDLC膜の製造装置であって、前記基材の被成膜面とは反対側に配置され、該基材を加熱するための第一手段と、所定の温度範囲内で前記基材の温度が変動するように、前記第一手段を制御する第二手段とを少なくとも備えたことを特徴とする。
本発明の請求項2に記載のDLC膜の製造装置は、請求項1において、前記第二手段は、前記第一手段を用いて、前記基材の温度を正弦波状に変動させることを特徴とする。
本発明の請求項3に記載の部材は、基材上にDLC膜を配してなる部材であって、前記DLC膜は、ラマンスペクトルにおいて、波数が1550〜1600[cm―1]の範囲に観測されるグラファイトに起因したピーク(以下「Gピーク」という。)と、波数が1300〜1400[cm―1]の範囲に観測されるダイヤモンドに起因したピーク(以下「Dピーク」という。)とを備え、前記Gピークと前記Dピークとのラマン強度が同レベルであり、かつGピークとDピークとが互いに独立して観測されることを特徴とする。
本発明の請求項4に記載の部材は、請求項3において、前記DLC膜のビッカース硬度が4000HV以上6000HV以下であることを特徴とする。
本発明の請求項5に記載の部材は、請求項3または4において、前記基材は、少なくとも鉄を含むことを特徴とする。
本発明の請求項6に記載のDLC膜の製造方法は、基材上にDLC膜を配してなり、前記DLC膜は、ラマンスペクトルにおいて、波数が1550〜1600[cm―1]の範囲に観測されるグラファイトに起因したGピークと、波数が1300〜1400[cm―1]の範囲に観測されるダイヤモンドに起因したDピークとを備え、前記Gピークと前記Dピークとのラマン強度が同レベルであり、かつGピークとDピークとが互いに独立して観測される部材の製造方法であって、前記DLC膜を前記基材に成膜する際に、前記基材の温度を所定の温度範囲内で変動させることを特徴とする。
本発明の請求項7に記載のDLC膜の製造方法は、請求項6において、前記基材の温度を正弦波状に変動させることを特徴とする。
本発明のDLC膜の製造装置は、触媒化学気体相堆積法(Catalytic Chemical Vapor Deposition:CAT−CVD法)により基材にDLC膜を形成するDLC膜の製造装置であって、前記基材の被成膜面とは反対側に配置され、該基材を加熱するための第一手段と、所定の温度範囲内で前記基材の温度が変動するように、前記第一手段を制御する第二手段とを少なくとも備えている。
かかる構成によれば、DLC膜のラマンスペクトルにおいて、グラファイトに起因したGピークのラマン強度とダイヤモンドに起因したDピークのラマン強度とが、DLC膜の膜厚方向、及び面内方向において均一に観測されるDLC膜を安定に製造することができる。また、ビッカース硬度においても、DLC膜面内において、均一な硬度を有したDLC膜を安定に製造することが可能となる。
本発明の部材は、基材上にDLC膜を配してなる部材であって、前記DLC膜は、ラマンスペクトルにおいて、波数が1550〜1600[cm―1]の範囲に観測されるグラファイトに起因したGピークと、波数が1300〜1400[cm―1]の範囲に観測されるダイヤモンドに起因したDピークとを備え、前記Gピークと前記Dピークとのラマン強度が同レベルであり、かつGピークとDピークとが互いに独立して観測される。
かかる構成によれば、DLC膜は、基材の一面に秩序良く配されている。したがって、ビッカース硬度に優れたDLC膜を備えた部材を提供することができる。
本発明のDLC膜を備えた金属部材の製造方法は、基材上にDLC膜を配してなり、前記DLC膜は、ラマンスペクトルにおいて、波数が1550〜1600[cm―1]の範囲に観測されるグラファイトに起因したGピークと、波数が1300〜1400[cm―1]の範囲に観測されるダイヤモンドに起因したDピークとを備え、前記Gピークと前記Dピークとのラマン強度が同レベルであり、かつGピークとDピークとが互いに独立して観測される部材の製造方法であって、前記DLC膜を前記基材に成膜する際に、前記基材の温度を所定の温度範囲内で変動させる。
かかる構成によれば、変動させている各温度で、DLC膜を秩序良く基材上に形成することが可能となり、高硬度のDLC膜を基材の一面に成膜することができる。
以下、本発明を、図面を参照して詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
図1は、本発明のDLC膜の製造装置10を模式的に示した断面図である。本発明のDLC膜の製造装置10は、CAT−CVD法により基材21にDLC膜を形成するDLC膜の製造装置10であって、基材21の被成膜面21aとは反対側に配置され、基材21を加熱するための第一手段11と、所定の温度範囲内で基材21の温度が変動するように、第一手段11を制御する第二手段12とから概略構成されている。また、基材21を保持する支持手段13と、原料ガスを熱により分解する触媒体19と、内部を所定の真空度に保持して、支持手段13、第一手段11、及び触媒体19を収容する筐体14と、支持手段13に対向して筐体14に設けられた原料ガス吐出手段15、16と、筐体14に設けられ、筐体14内を所定の真空度にする排気手段17,18と、を備えている。以下、詳細に説明する。
第一手段11は、支持手段13を介して基材21を加熱するもので、例えばSiCヒータ等を用いることができる。またその形状は、支持手段13を介して基材21を均一に加熱できれば特に限定されるものではない。
本発明において、第一手段11は、DLC膜の成膜の際に第二手段12により所定の温度領域で温度が変動するものである。
第二手段12は、第一手段11の温度を所定の範囲内で変動するように制御するものである。第二手段12としては、第一手段11の温度を所定の範囲内で変動できれば特に限定されるものではなく、例えば第一手段11に加わる電力(単位面積あたりの電力)である。電力を変動させることで第一手段11の温度を所定の範囲内で変動させることができる。すなわち、電流または電圧を変えることで、電力を変動させ、第一手段11の温度を所定の範囲内で変動させることができる。電流、電圧ともに、直流であってもよいし、交流であってもよい。
所定の温度範囲内における第一手段11の温度の変動に関しては、例えば図3に示すような正弦波状で温度を変動させることができる。第一手段11の温度の変動の一例を示した図3において、所定の温度範囲内の最小温度をMmin、最大温度をMmaxとすると、MmaxとMminとの温度差としては、例えば300℃〜500℃程度の範囲が好ましい(なお、温度の測定位置はヒータの下とする)。また、Mmaxの温度としては、950℃を超えるとDLC膜が基材21上に成膜できなくなり、400℃より低すぎても高硬度なDLC膜を成膜できなくなることから、400℃以上950℃以下が好ましく、より好ましくは500℃以上900℃以下である。また、Mminとしては、高硬度なDLC膜が成膜できるように、Mmaxに応じて適宜調節することができる。Mminとしては、例えば200℃以上600℃程度の範囲が好ましい。
図3には、第一手段11の温度がMminとなった際にDLC膜の成膜を開始する一例を示したが、第一手段11の温度をMmaxより超える温度まで上昇させた後、Mmaxまで温度を降下させてから、成膜を開始することもできる。
また、図3において、成膜を開始する温度となった際の時間をts、温度がMmaxとなった際の時刻をtmax、温度がMminとなった際の時間をtminとする。この際、t1(tmin)からtmaxまでの時間、すなわち第一手段11の温度が最小から最大まで上がるのに要する時間t1と、tmaxからtminまでの時間、すなわち第一手段11の温度が最大から最小まで下がるのに要する時間t2とは、同じであってもよく、どちらか一方が長くてもよい。t1とt2の時間は、基材21の種類や、基材21と触媒体19までの距離、基材21と吐出手段15,16までの距離、吐出手段15,16と触媒体19までの距離、成膜温度等に応じ、適宜調節することができるが、例えば、t1、t2の時間としては、15分〜40分である。
また、図3のDにおける温度の変動する様態が、図4(a)に示すような矩形波状、図4(b)に示すような三角波状、図4(c)に示すような鋸歯状等の様態であってもよい。Mmax、Mmin、tmax、tmin、ts、t1、及びt2に関しては図3と同様である。
支持手段13は、基材21を支持すると共に、第一手段11により熱が加わり、基材21に熱を伝えるものでもある。このような支持手段13としては、熱膨張率が低いものが良く、かつ、均一に基材21に熱を伝えられるものがよい。このような支持手段11としては、例えば、透明基板が好ましく、特に耐熱性(石英)ガラス基板が好ましく用いられる。また、その厚さは、例えば0.5mm〜2mmである。
筐体14は、その一部に原料ガス吐出手段15,16と排気手段17,18が設けられ、かつ第一手段11と支持手段13を内包するものである。また、筐体14内は、排気手段17,18により真空状態となる。このような筺体14としては、通常CVD装置で使用するものであれば、特に限定されるものではない。
吐出手段15,16は、DLC膜22の原料ガスを基材21の一面21aに向かって吐出するもので、筺体14の一部に配されている。吐出手段15,16としては、通常のCVD装置で使用するものであれば、特に限定されるものではない。
排気手段17,18は、筺体14内を真空状態にするもので、筺体14の一部に配されている。排気手段17,18としては、通常のCVD装置で使用するものであれば、特に限定されるものではない。
触媒体19は、吐出手段17,18から基材21に向けて吐出された原料ガスを分解するものである。吐出手段17,18と支持手段13上に載置される基材21との間に設けられている。原料ガスが加熱された触媒体19に接触し、その表面での接触分解反応により分解され、その分解種が基材21上に輸送されてDLC膜22が形成される。このような触媒体19としては、例えば、タングステン、モリブデン、タンタル、ニッケル、白金等のフィラメントを、格子状、渦巻状等にしたものを用いることができる。
本発明のDLC膜の製造装置10によれば、第一手段11は、第二手段12によりDLC膜を形成する際に成膜温度を変動させることができる。したがって、このDLC膜の製造装置10を用いてDLC膜を形成すれば、連続的に温度を変化させることで基材21上に秩序良くDLC膜を形成することが可能となり、簡便に高硬度なDLC膜を形成することが可能となる。本発明の第一手段11と第二手段12とを各種のCVD装置、例えばプラズマCVD装置等に適用することによって、簡便に高硬度なDLC膜を成膜することが可能となる。
図2は、本発明の部材20を模式的に示す断面図である。本発明の部材20は、基材21と、基材21の一面21aに配されたDLC膜22とから概略構成されている。また、DLC膜22は、ラマンスペクトルにおいて、波数が1550〜1600[cm―1]の範囲に観測されるグラファイトに起因したGピークと、波数が1300〜1400[cm―1]の範囲に観測されるダイヤモンドに起因したDピークとを備え、GピークとDピークとのラマン強度が同レベルであり、かつGピークとDピークとが互いに独立して観測される。以下、それぞれについて詳細に説明する。
基材21は、通常DLC膜が成膜されるものであれば、特に限定されるものではない。特に、基材として鉄を含むものを用いることで、従来では困難であった鉄を含む基材上に高硬度なビッカース硬度を有したDLC膜22を形成することができる。鉄を含む基材21としては、例えばSKD11等のダイス鋼が挙げられる。
DLC膜22は、基材21の少なくとも一面21aに配された薄膜であり、本発明のDLC膜の製造装置10によって基材21の一面21aに成膜される。DLC膜22の厚さは、例えば10〜100μmである。また、ラマン分光光度計でそのラマンスペクトルを観察すると、ラマンスペクトルの1550〜1600[cm―1]の範囲に、グラファイトに起因するGピークと、ラマンスペクトルの1300〜1400[cm―1]の範囲に、ダイヤモンドに起因するDピークとが観測される。また、このGピークとDピークとは同レベルのラマン強度を有し、かつGピークとDピークとが互いに独立して観察される。このDLC膜22のラマンスペクトルにおいて、通常600〜700[cm―1]の半値幅は、後述する図5に示す様な非常に小さな値となった。したがって、DLC膜22は基材21上に秩序良く積層され、高いビッカース硬度を有している。ビッカース硬度としては、DLC膜22が鉄を含む基材21の一面に設けられた場合、そのDLC膜22のビッカース硬度は、例えば4000HV以上6000HV以下である。
本発明のDLC膜22を備えた部材20は、基材21上に秩序良くDLC膜22が積層されていることから、そのDLC膜22は高硬度であると共に、潤滑性に優れている。
次に、DLC膜の製造方法について説明する。
まず、基材21を支持手段13上に載置し、排出手段17,18により筺体14内を所定の真空状態、例えば1X10−2Pa程度の真空度にする。次いで、触媒体19に通電して熱を発生させると共に、第一手段11の温度を上昇させ、第一手段11が所定の温度に達したところで、吐出手段15,16から原料ガスを吐出し、DLC膜の成膜を開始する。所定の温度とは、第一手段11の温度が、上述した所定の温度範囲内に達した温度である。また、吐出圧力は、基材21や、吐出手段15,16から基材21までの距離、吐出手段15,16から加熱触媒体19までの距離、加熱触媒体19から基材21までの距離、等に応じて適宜調節することができるが、例えば10000Pa以上14000Pa以下である。また、吐出する原料ガスは、水素:メタンの比で、例えば10:1[sccm(standard cubic centi meter)]である。
次いで、第二手段12により第一手段11の温度を調節し、上述した所定の温度範囲内で変動するように温度を時間と共に可変させる。
その後、所定の膜厚となるまでDLC膜を成膜することで、本発明のDLC膜22を備えた部材20が作製される。
本発明のDLC膜の製造方法によれば、第一手段11を基材21の被成膜面と反対側に配することで、基材11表面の温度と原料ガスの温度とを適正な温度とすることができ、特に温度を正弦波状に変動させて成膜することで、各温度で積層するDLC膜を秩序良く基材上に積層させることができる。
このような製造方法によれば、通常、DLC膜を成膜する各種のCVD法、例えば、CAT−CVD法、プラズマCVD法、熱CVD法、に適用することで、高硬度でかつ潤滑性に優れたDLC膜を簡便に成膜することができる。
特にCAT−CVD法でDLC膜を成膜することが好ましい。CAT−CVD法は、加熱した触媒体に原料ガスを接触させることで分解種を生成し、薄膜を堆積させる化学気体相堆積法であり、プラズマを用いないで薄膜を低温で成膜できること、プラズマによる基板への損傷を与えることなく原料ガスの分解種を堆積できる等の利点を有する薄膜堆積方法として知られている。この方法は、原料ガスの利用効率が高く、薄膜を高速で堆積でき、堆積領域の大面積化も可能であるので、太陽電池や液晶ディスプレイ用薄膜トランジスタ等の大面積デバイスの形成法として期待されている。また、さらにプラズマ損傷がないことから表面の脆弱な化合物半導体用の薄膜形成法として実用化されつつある。したがって、CAT−CVD法に本発明を適用することで、高硬度で、かつ基材の損傷を抑制し、原料ガスを効率的に用いてDLC膜を基材に成膜することが可能となる。
<DLC膜の製造装置>
支持手段として、厚さ1mmの耐熱ガラスを用いた。
第一手段として、SiCからなる直径4.5cmのコイル状のヒータを用いた。
吐出手段から基材に向けて吐出された原料ガスを分解する触媒体を、吐出手段と支持手段上に載置される基材との間に設けた。触媒体としてはタングステンフィラメントをコイル状にして用いた。触媒体は、できるだけ高温となることが好ましく、本例においては電流が3.0A、電圧が18Vで通電を行った。
また、基材のDLC膜が成膜される面から触媒体までの距離を1cm、触媒体から原料ガス吐出手段までの距離を2cm、基材のDLC膜が成膜される面からから原料ガス吐出手段までの距離を3cmとした。
<DLC膜の形成>
上記DLC膜の製造装置の支持手段上に、鉄を含む金属基材として、厚さ7mm、1cm角のダイス鋼SKD11を載置した。次に、DLC膜の製造装置内を1X10−2Pa程度の真空度とし、触媒体と第一手段の温度を上昇させた第一手段の温度が500℃となったところで、水素:メタンを10:1(sccm)の割合で調整した原料ガスを、吐出手段から12000Paの圧力で吐出してDLC膜の成膜を開始した。その後、第一手段の温度が、最小温度500℃と最大温度900℃との間で正弦波状に変化するように第二手段によって第一手段を制御した。なお、20分から30分で第一手段の温度が500℃から900℃まで上昇、あるいは下降するようにした。6時間成膜を行って基材の一面にDLC膜が成膜された部材を得た。
<DLC膜の特性の評価>
上記で得られた部材のDLC膜に関して、DLC膜のラマンスペクトルをラマン分光装置(JOBINYVON社製、ORT−64000)により測定した。その結果得られたチャートを図5に示す。図5から、sp結合を有するGピークが1580cm−1付近に、sp結合を有するDピークが1350cm−1付近にそれぞれ独立して観察された。また、Dピークは十分なラマン強度を有し、Gピークのラマン強度とDピークとのラマン強度とは、ほぼ同レベルであった。Gピークの半値幅およびDピークの半値幅を図5中に示す。
上記で得られた部材のDLC膜に関して、ビッカース硬度計(OLYMPUS社製、BX−60)を用いてDLC膜のビッカース硬度を測定した。DLC膜の中心から各辺に対して3分割し、DLC膜の中心を含む領域を中央部分、この中央部分の外側の領域を中淵部分、この中淵部分の更に外側の領域を外淵部分とすると、DLC膜の外淵部分で4127.6HV、中淵部分で4362.5HV、中央部分で4547.5HVのビッカース硬度が観察され、DLC膜面内において、ほぼ同程度のビッカース硬度を有していた。また局所的には6000HVという硬質なDLC膜が成膜されていることが観察された。従来のCVD法でコーティングされたDLC薄膜のビッカース硬度は1000〜3500HVと言われているので、従来と比較し、高硬度なDLC膜が鉄を含む基材上に成膜されたことが確認された。
以上より、本発明のDLC膜の製造装置によれば、鉄を含む基材の一面に、高硬度なビッカース硬度を有したDLC膜が成膜されることが確認された。
本発明は、各種基材にDLC膜を成膜する際に有効であり、各種のCVD法に適用することで簡便に高硬度なDLC膜を成膜することができる。
本発明のDLC膜の製造装置を模式的に示した断面図である。 本発明の部材を模式的に示した断面図である。 第一手段11の温度の変動の一例を示した図である。 第一手段11の温度の変動の他の例を示した図である。 本発明の部材に関して、DLC膜のラマンスペクトルを示した図である。
符号の説明
10 DLC膜の製造装置、11 第一手段、12 第二手段、13 支持手段、14筐体、15,16 吐出手段、17,18 排気手段、19 触媒体、20 部材、21 基材、22 DLC膜。

Claims (7)

  1. CAT−CVD法により基材にDLC膜を形成するDLC膜の製造装置であって、
    前記基材の被成膜面とは反対側に配置され、該基材を加熱するための第一手段と、
    所定の温度範囲内で前記基材の温度が変動するように、前記第一手段を制御する第二手段とを少なくとも備えたことを特徴とするDLC膜の製造装置。
  2. 前記第二手段は、前記第一手段を用いて、前記基材の温度を正弦波状に変動させることを特徴とする請求項1に記載のDLC膜の製造装置。
  3. 基材上にDLC膜を配してなる部材であって、
    前記DLC膜は、ラマンスペクトルにおいて、波数が1550〜1600[cm―1]の範囲に観測されるグラファイトに起因したGピークと、波数が1300〜1400[cm―1]の範囲に観測されるダイヤモンドに起因したDピークとを備え、前記Gピークと前記Dピークとのラマン強度が同レベルであり、かつGピークとDピークとが互いに独立して観測されることを特徴とする部材。
  4. 前記DLC膜のビッカース硬度が4000HV以上6000HV以下であることを特徴とする請求項3に記載の部材。
  5. 前記基材は、少なくとも鉄を含むことを特徴とする請求項3または4に記載の部材。
  6. 基材上にDLC膜を配してなり、前記DLC膜は、ラマンスペクトルにおいて、波数が1550〜1600[cm―1]の範囲に観測されるグラファイトに起因したGピークと、波数が1300〜1400[cm―1]の範囲に観測されるダイヤモンドに起因したDピークとを備え、前記Gピークと前記Dピークとのラマン強度が同レベルであり、かつGピークとDピークとが互いに独立して観測される部材の製造方法であって、
    前記DLC膜を前記基材に成膜する際に、前記基材の温度を所定の温度範囲内で変動させることを特徴とするDLC膜の製造方法。
  7. 前記基材の温度を正弦波状に変動させることを特徴とする請求項6に記載のDLC膜の製造方法。
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