JP2009185149A - 塗料組成物の製造方法および塗料組成物 - Google Patents

塗料組成物の製造方法および塗料組成物 Download PDF

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昌明 谷
Yoshiaki Fukushima
喜章 福嶋
Kenzo Fukumori
健三 福森
Masafumi Harada
雅史 原田
Keisuke Onishi
圭介 大西
Toshihisa Shimo
俊久 下
Kyoko Kumagai
京子 熊谷
Tetsuya Mitsuoka
哲也 三岡
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Abstract

【課題】M−O−M(Mは珪素原子または金属原子をそれぞれ独立に示す)で表される結合を含む酸化物からなり少なくとも一部の珪素原子に結合している有機基をもつ有機無機複合体を、効率よく塗料組成物に取り込むことが可能な塗料組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】アルコキシ基をもちラジカル重合可能な官能基を含む有機基と共有結合で結合した珪素原子を有するオルガノアルコキシシランおよび金属原子を含む金属化合物を極性溶媒である第一溶媒に溶解して原料溶液を調製し、オルガノアルコキシシランと金属化合物とを反応させて有機無機複合体を合成する。反応後の溶液に、その溶液と相溶しない第二溶媒を加えて有機無機複合体を第二溶媒に溶解させた後、第二溶媒と相溶しない溶液を除去する。得られた有機無機複合体が溶解した第二溶媒に、合成樹脂成分および各種添加剤を加えて塗料組成物を調製する。
【選択図】なし

Description

本発明は、有機材料と無機材料との性質をあわせもつ有機無機複合体を含む塗料組成物およびその製造方法に関するものである。
一般に、被膜の主成分材料あるいはフィラーとして用いられる無機材料は、高硬度、耐熱性などの特徴をもつ。無機材料を用いる場合、液相もしくは溶液から迅速に緻密な固相を形成するには、加熱焼成が必要である。また、これらの無機材料は、有機溶媒や有機物相との親和性がよくない。一方、有機材料は、可撓性や常温での迅速な成膜性などの特徴をもつが、硬度や耐熱性が劣るという欠点がある。このため、無機材料と有機材料の上記の特徴をあわせもち、さらに上記の欠点を可及的に制限した有機無機複合体およびその製造方法がこれまで検討されてきている。
たとえば、特許文献1および特許文献2には、珪素を中心原子とする4面体シートと金属を中心原子とする8面体シートとの2:1型または1:1型の積層体からなるフィロ珪酸塩鉱物型の層状構造を有し、珪素の少なくとも一部と共有結合する有機基をもつ層状珪素ポリマーが開示されている。特に、特許文献3には、特許文献1および2に記載の層状珪素ポリマーをフィラーとして用いた被覆材組成物(塗料組成物)が記載されている。この塗料組成物を用いて樹脂製の基材などの表面に硬化被膜を形成することで、耐摩耗性、耐擦傷性、耐熱性、耐薬品性、耐久性に優れる耐摩耗性物品が得られるため、各方面において有用である。各特許文献に記載されている層状珪素ポリマーの製造方法を以下に具体的に説明する。
はじめに、メタノ−ルに、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランと塩化マグネシウム6水和物を加えて撹拌して原料溶液を調製する。次に、原料溶液を撹拌しながら水酸化ナトリウム水溶液を添加すると、この混合液はゲル化する。こうして、フィロ珪酸塩鉱物型の結晶性の積層構造を有するメタクリルMg層状ポリマーが合成される。なお、図1に、2:1型のメタクリルMg層状ポリマーの構造の概要を示す。メタクリルMg層状ポリマーは、マグネシウム原子1を中心とする8面体シート2の両側に、珪素原子3(●で示す)を中心とする4面体シート4が形成されている。そして、珪素原子3には、4面体シート4の一部を構成するものとして、有機基Rが共有結合により結合している。図中、○は酸素原子を示す。
その後、ゲル化した混合溶液を濾過し、水洗したあと真空乾燥して、メタクリルMg層状ポリマーを粉末状で単離している。
特開平6−200034号公報 特開平7−126396号公報 特開平8−12899号公報
反応後の溶液は、ゲル化したり合成物が沈殿したりするため、通常、上記の製造方法のように濾過することで、副生成物である塩化ナトリウム等の不純物を含む溶液と合成された層状珪素ポリマーとを分離している。ところが、濾過により溶液から分離できる層状珪素ポリマーの大きさには限界がある。層状珪素ポリマーが微粒子である場合には、溶液とともに微粒子も流去されることがある。そのため、微細な層状珪素ポリマーを塗料組成物に配合して用いることが困難であった。
また、濾過後の乾燥方法としては、加熱してメタノールや水を蒸発させるのが最も簡単な方法であるが、層状珪素ポリマーの有機部分は熱に弱いため、加熱温度に制限がある。真空乾燥や凍結乾燥などを用いた乾燥方法もあるが、コストや装置の面から簡便な方法とは言い難い。
本発明は、上記の問題点に鑑み、層状珪素ポリマーのような有機無機複合体を含む塗料組成物を製造する際に、有機無機複合体を効率よく塗料組成物に取り込むことが可能な塗料組成物の製造方法および塗料組成物を提供することを目的とする。
本発明の塗料組成物の製造方法は、M−O−M(Mは珪素原子または金属原子をそれぞれ独立に示す)で表される結合を含む珪素および金属の酸化物からなるとともにラジカル重合可能な官能基を含み少なくとも一部の該珪素原子に結合している有機基をもつ有機無機複合体を含む塗料組成物の製造方法であって、
1以上のアルコキシ基をもち前記有機基と共有結合で結合した前記珪素原子を有するオルガノアルコキシシランおよび前記金属原子を含む金属化合物を極性溶媒である第一溶媒に溶解して原料溶液を調製する原料溶液調製工程と、
前記オルガノアルコキシシランと前記金属化合物とを加水分解するとともに脱水縮合させて前記有機無機複合体を合成する反応工程と、
前記反応工程後の溶液に該溶液と相溶しない第二溶媒を加えて前記有機無機複合体を該第二溶媒に溶解させた後、該第二溶媒と相溶しない溶液を除去する除去工程と、
前記除去工程で得られた前記有機無機複合体が溶解した前記第二溶媒に、少なくともラジカル重合開始剤および合成樹脂成分を加えて塗料組成物を調製する塗料組成物調製工程と、
を含むことを特徴とする。
なお、本明細書において、「溶解」とは、物質(溶質)が溶媒に溶けて均一混合物(溶液)となる現象であって、溶解後、溶質の少なくとも一部がイオンとなる場合、溶質がイオンに解離せず分子状で存在している場合、分子やイオンが会合して存在している場合、などが含まれる。
本発明の塗料組成物の製造方法は、従来の濾過の代わりとなる除去工程を含む。除去工程では、反応工程において合成された有機無機複合体を、反応工程後の溶液と相溶しない第二溶媒に溶解させる。合成された有機無機複合体は第二溶媒に溶解するが、副生成物などの不純物は極性溶媒に溶解したままである。そして、反応工程後の溶液と第二溶媒とは、互いに相溶せず分離するため、不純物を含む溶液を容易に除去することができ、有機無機複合体を含む溶液が回収される。有機無機複合体は、その大きさに関わらず第二溶媒に溶解するため、濾過で取り出せないような微小な有機無機複合体も除去工程後の第二溶媒に残留する。その結果、濾過により回収できないような微小な有機無機複合体をも回収して利用することが可能となる。
微小な有機無機複合体は、塗料組成物において分散性が高い。そのため、本発明の塗料組成物の製造方法により得られる塗料組成物を用いて形成された被膜は、従来よりも優れた機械的特性を発揮する。また、塗料組成物の硬化後には、有機無機複合体(フィラー)が小さいほど入射した光が反射や散乱されにくい被膜となる。そのため、本発明の塗料組成物の製造方法により得られる塗料組成物を用いれば、透明度の高い被膜が得られる。
除去工程後に得られる溶液は、有機無機複合体が第二溶媒に溶解する溶液(以下「有機無機複合体/第二溶媒溶液」と略記することもある)である。次の塗料組成物調製工程において、有機無機複合体/第二溶媒溶液に少なくともラジカル重合開始剤と合成樹脂成分とを加えるだけで、有機無機複合体をフィラー、合成樹脂成分をバインダー成分とした塗料組成物が得られる。もちろん、塗料組成物調製工程において、有機無機複合体/第二溶媒溶液に、必要に応じて他の添加剤を加えて塗料組成物を調製してもよい。
さらに、除去工程で用いられる多くの第二溶媒は有機系であることから、第二溶媒には有機的な性質が強い有機無機複合体が溶解しやすい傾向がある。そのため、塗料組成物に含まれる有機無機複合体は、合成樹脂成分との親和性に優れる。
なお、本発明の塗料組成物の製造方法では、除去工程において用いられる第二溶媒の多くは有機系で沸点が低いものであるため、有機無機複合体を単離する場合には、合成された有機無機複合体を高温に曝すことなく第二溶媒を除去できる。第二溶媒が除去され単離された有機無機複合体も、有機溶媒や樹脂ワニスに分散させたりすることで塗料組成物を製造することができる。
また、本発明の塗料組成物は、M−O−M(Mは珪素原子または金属原子をそれぞれ独立に示す)で表される結合を含む珪素および金属の酸化物からなるとともにラジカル重合可能な官能基を含み少なくとも一部の珪素原子に結合している有機基をもつ有機無機複合体とラジカル重合開始剤と合成樹脂成分とを少なくとも含む塗料組成物であって、
前記有機無機複合体の最大粒径は100nm未満であることを特徴とする。
本発明の塗料組成物は、従来法では得られない微細な有機無機複合体を含む。本発明の塗料組成物において有機無機複合体の分散性が高いため、本発明の塗料組成物を用いて形成された被膜は、従来よりも優れた機械的特性を発揮する。また、本発明の塗料組成物から形成される被膜は、フィラーとしての有機無機複合体が微小であるため光学的な悪影響を受けにくく、入射した光の反射や散乱が低減され透明度が高い。
なお、本発明の塗料組成物は、上記本発明の塗料組成物の製造方法により容易に得られる。
以下に、本発明の塗料組成物の製造方法(以下「本発明の製造方法」と略記することもある)および本発明の塗料組成物を実施するための最良の形態を説明する。
[塗料組成物の製造方法]
本発明の製造方法において製造される塗料組成物は、M−O−M(Mは珪素原子または金属原子をそれぞれ独立に示す)で表される結合を含む珪素および金属の酸化物からなるとともにラジカル重合可能な官能基を含み少なくとも一部の珪素原子に結合している有機基をもつ有機無機複合体を含み、以下に詳説する原料溶液調製工程、反応工程、除去工程および塗料調製工程を経て製造される。その後、従来の塗料組成物と同様に、基材の表面に塗布して光照射などを行い、基材の表面に被膜を形成することができる。以下に、各工程について説明する。
[原料溶液調製工程]
原料溶液調製工程は、オルガノアルコキシシランおよび金属化合物を第一溶媒に溶解して原料溶液を調製する工程である。なお、ここでの溶解は、オルガノアルコキシシランおよび/または金属化合物が粒子として第一溶媒に分散した状態も含む。
オルガノアルコキシシランは、1以上のアルコキシ基をもち有機基と共有結合で結合した珪素原子を有する。オルガノアルコキシシランは、一般式:RSi(OR’)4−n(nは1、2または3、Rはラジカル重合可能な官能基を含む有機基、OR’はアルコキシ基)で表されれば、特に限定はない。このとき、Siは有機無機複合体が有するM−O−M結合のMの一部に相当し、Rは有機無機複合体が有する珪素原子と結合する有機基に相当する。したがって、オルガノアルコキシシランは、アクリル基、メタクリル基、ビニル基などを有するアクリル系シラン、ビニル系シラン、であるのが望ましい。
オルガノアルコキシシランの具体例としては、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2−メタクリロキシエチルトリメトキシシラン、2−アクリロキシエチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシエチルトリエトキシシラン、3−アクリロキシエチルトリエトキシシラン、2−メタクリロキシエチルトリエトキシシラン、2−アクリロキシエチルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、4−ビニルブチルトリメトキシシラン、8−ビニルオクチルトリメトキシシラン、3−ビニルオキシプロピルトリメトキシシラン、スチリルシランなどが挙げられる。
以上列挙したオルガノアルコキシシランは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、Rとしてラジカル重合可能な官能基を含まない有機基をもつオルガノアルコキシシランを併用してもよい。
また、有機無機複合体が含有する有機基の量を調整するために、必要に応じて、有機基をもたないシリコンアルコキシドをオルガノアルコキシシランと併用することもできる。有機基をもたないシリコンアルコキシドの具体例としては、テトラメチルオルソシリケート、テトラエチルオルソシリケート、メチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。これらのうち1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ただし、シリコンアルコキシドの使用割合が多い場合には、無機的な性質が強い有機無機複合体が合成されやすい。無機的な性質が強い有機無機複合体は、有機溶媒や合成樹脂成分との親和性が悪いため、塗料組成物のフィラーとして望ましくない。また、無機的な性質が強い有機無機複合体が合成されると、後に詳説する除去工程において使用される第二溶媒が限定される。そのため、無機的な性質が強い有機無機複合体は、本発明の製造方法に適さない場合がある。そのため、シリコンアルコキシドをオルガノアルコキシシランと併用する場合には、モル数比で、オルガノアルコキシシラン:シリコンアルコキシド=1:0〜1:1さらには1:0〜2:1とするのが望ましい。
金属化合物は、有機無機複合体が有するM−O−M結合のMの残部に相当する金属原子を含む。金属化合物は、金属原子の無機塩、有機塩またはアルコキシドであるのが望ましい。また、金属原子としては、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、リチウム(Li)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)およびチタン(Ti)から選ばれる少なくとも一種であるのが望ましい。すなわち、金属化合物としては、これらの金属の塩化物、硫化物、硫酸物、硝酸物、酢酸物、メトキシド、エトキシド、プロポキシド、ブトキシド等が使用可能である。これらのうち1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、珪素原子および金属原子のうちの一部を他の金属原子で置換する場合には、その金属を含む塩やアルコキシドを併用してもよい。
使用するオルガノアルコキシシラン(必要に応じてシリコンアルコキシド)および金属化合物は、金属原子M’と珪素原子Siとのモル比(M’:Si)が1:0.5〜1:2となるように原料溶液を調製するのが望ましい。特に、有機無機複合体が、Siを中心原子とする4面体面構造をもつ4面体構造層と、金属原子M’を中心原子とする8面体面構造をもつ8面体構造層と、の2:1型または1:1型の積層体からなるフィロ珪酸塩鉱物型の層状構造を有する層状有機無機複合体である場合には、M’:Siを選択することにより、2:1型あるいは1:1型の層状有機無機複合体を選択的に製造することができる。たとえば、M’:Siが1:1〜2:1の比率では1:1型の層状有機無機複合体が、M’:Siが3:4〜1:2の比率では2:1型の層状有機無機複合体が合成される。
また、有機無機複合体は、1つの有機分子または有機分子の集合体であるコア粒子を内包する皮殻層を構成してもよい。このような複合粒子を得るには、たとえば、調製工程において、金属化合物としてチタンアルコキシドと、オルガノアルコキシシランと、紫外線吸収分子や色素分子といった有機分子と、を第一溶媒に溶解して原料溶液を調製すればよい。反応前の原料溶液中で、オルガノアルコキシシランがチタンアルコキシドに配位し、さらに、オルガノアルコキシシランが配位したチタンアルコキシドが有機分子の周囲に会合して会合体を形成することで、反応後に、コア粒子を内包する皮殻層が合成される。有機無機複合体が複合粒子である場合には、M’:Siが1:0.5〜1:2さらには1:0.8〜1:1.5の範囲で調製するのが望ましい。
オルガノアルコキシシランと金属化合物とを溶解する第一溶媒は、極性溶媒であれば特に限定はないが、無機系および有機系の極性溶媒から選ばれる1種あるいは2種以上の混合溶媒からなるとよい。具体的には、無機極性溶媒としての水、有機極性溶媒としてのアルコール、アセトン、有機酸および無機酸などのうち1種あるいは2種以上の混合溶媒が好ましく、より好ましくは、水および低級アルコール(炭素数が1〜5の鎖式アルコール)、アセトンのような水に可溶の有機溶媒のうちの1種あるいは2種以上の混合溶媒である。
[反応工程]
反応工程は、オルガノアルコキシシランと金属化合物とを加水分解するとともに脱水縮合させて有機無機複合体を合成する工程である。調製工程で調製した原料溶液に水が存在すると、オルガノアルコキシシランと金属化合物とが加水分解とともに脱水縮合する。特に、金属化合物として金属無機塩および/または金属有機塩を使用する場合、反応工程は、原料溶液のpHをアルカリ性に調整してオルガノアルコキシシランと金属化合物との反応を促進させるpH調整工程を含むとよい。pH調整工程では、原料溶液にアルカリを添加するとよい。添加するアルカリの種類に特に限定はなく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等を水溶液で添加するとよい。アルカリ添加によって調整されるpHは、所望の程度以上の速度で結晶化が起こるpHであり、かつ有機基が損なわれるような強アルカリ性でなければよい。オルガノアルコキシシランと金属化合物の種類に依存するため一律には規定できないが、層状有機無機複合体の合成であれば、たとえばpH8〜10程度であるのが望ましい。オルガノアルコキシシランと金属化合物は、水もしくは水とアルカリとの存在により、金属化合物が先に加水分解され、もしくは、金属水酸化物となり、どちらの場合においても−M’−OHを生ずる。この−M’−OHがオルガノアルコキシシランの加水分解を促してさらに結合することで,R−Si−O−M’であらわされる結合をもつ有機無機複合体が合成される。層状の有機無機複合体が形成される場合には、金属原子M’を中心原子とする8面体構造層の結晶構造が先行して成長しつつ、これに追従してオルガノアルコキシシランの珪素がアルコキシ基の加水分解の後の脱水縮合により8面体構造層に結合し、この珪素を中心に4面体構造層の結晶構造も成長して行くものと推定される。
すなわち、層状有機無機複合体は、珪素原子を中心原子とする4面体面構造が構成する4面体構造層と前記金属原子を中心原子とする8面体面構造が構成する8面体構造層との積層体からなる。このとき、珪素原子の少なくとも一部は、有機基と共有結合している。既に述べたように、調製工程において金属原子M’と珪素原子Siとのモル比(M’:Si)を調整することで、4面体構造層と前記8面体構造層との2:1型または1:1型の積層体からなる層状有機無機複合体が合成される。このような層状有機無機複合体は、フィロ珪酸塩鉱物型の層状構造を有する。なお、得られる層状有機無機複合体は、一般式:{RSiO(4−n)/2〔M’OZ/2〕〔HO〕で表される。ここで、Rは有機基、M’は金属原子、nは1〜3のいずれかの整数であり、xは0.5以上で2以下の整数に限定されない任意の数であり、zは金属原子M’の価数であって2または3の整数であり、wは(z/2)−1〜(z+1)/2の整数に限定されない構造水の分子数である。四面体構造にSi−OH結合が含まれている場合があるため、wは整数に限定されない。
また、反応工程では、オルガノアルコキシシランと金属化合物との反応は室温程度の温度でも十分に起こるが、有機基を損なわない程度の一定の高い温度条件下で行ってもよい。反応工程は、条件次第で、直ちに完了する場合もあり、ある程度(たとえば1〜2日間程度)のエージングを要する場合もある。
また、反応工程における原料溶液全体に対する、有機無機複合体の原料の含有量に特に限定はない。有機無機複合体の原料であるオルガノアルコキシシランおよび金属化合物(必要に応じてシリコンアルコキシド等)の分子量によっても異なるが、あえて規定するならば、反応工程における原料溶液の総質量(ただし、反応工程において水やアルカリを添加する場合はその量も含む)を100質量%としたときに、有機無機複合体の原料の総量を25質量%以下とするのが望ましい。さらに望ましくは、15質量%以下さらには5質量%以下である。有機無機複合体の原料の含有割合が少ないほど微細な有機無機複合体が合成されるが、本発明の合成方法によれば、濾過では回収できない微細な有機無機複合体も回収可能であるため、望ましい。
[除去工程]
除去工程では、反応工程後の溶液に第二溶媒を加えて、有機無機複合体を第二溶媒に溶解させる。第二溶媒は反応工程後の溶液と相溶しないため、両者は分離する。その後、第二溶媒と相溶しない溶液を除去する。なお、反応工程後の溶液は、通常、反応工程において多量の水が添加されるため、実質的に水溶液である。すなわち、第二溶媒は少なくとも水と相溶せず有機無機複合体を溶解する溶媒であればよい。以下の説明では、反応工程後の溶液を「水溶液」として説明する。
反応工程後の水溶液は、ゲル化した状態であったり合成物が沈殿した状態であったりするため、濾過して有機無機複合体(コロイド粒子や沈殿物)を回収するのが一般的である。一方、本発明の製造方法では、濾過を行わずに、反応後の水溶液に第二溶媒を加えて有機無機複合体を選択的に溶解させる。水溶液と第二溶媒とは、互いに相溶せず分離するため、第二溶媒に溶解した状態の有機無機複合体を回収することができる。
第二溶媒としては、水溶液と相溶せず、反応工程後の水溶液からの抽出溶媒として用いることができるものであれば特に限定はない。具体的には、n−ペンタン、2−メチルブタン、2,2−ジメチルプロパン、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、n−ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、n−オクタン、2,2,3−トリメチルペンタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−ノナン、n−デカン等の脂肪族炭化水素系、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、シクロオクタン等の脂環式炭化水素系、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル系、オルト蟻酸トリエチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエチレン、1,1,2,2,−テトラクロロエタン、クロロベンゼン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等のハロゲン系、等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を用いるとよい。なかでも、酢酸エチル、トルエンおよびクロロホルムが望ましい。有機無機複合体は親水的な無機部と疎水的な有機部を有するため溶液中で界面活性剤的に働くので、水溶液と第二溶媒との界面に取り付いて二層に分離するのを妨げる傾向がある。これは第二溶媒が完全な疎水性の溶媒である場合に顕著である。酢酸エチルのように水と若干相溶する第二溶媒を使用すれば、このような現象が抑制されるため望ましい。
反応工程後の溶液に第二溶媒を加えた後、十分に混合を行い、平衡状態となるように静置すると、溶液は、上層と下層の二層に分離する。通常、下層に水溶液、上層に第二溶媒を含む第二溶媒溶液が位置する。このとき、上層の第二溶媒溶液には主として有機無機複合体が溶質として存在する。下層の水溶液には不純物、たとえば、pH調整工程において生成した副生成物、必要以上に無機成分が多く含まれる有機無機複合体、未反応物など、が溶質として存在する。なお、第二溶媒がハロゲン系溶媒のように水より比重が重い溶媒である場合には、上層に水溶液、下層に第二溶媒溶液が位置する。そして、水溶液を除去することで、有機無機複合体/第二溶媒溶液が回収される。
また、除去工程では、第二溶媒の種類を変更するなどして、同様の手順を複数回繰り返し行ってもよい。
[塗料組成物調製工程]
塗料組成物調製工程は、除去工程で得られた有機無機複合体が溶解した第二溶媒(有機無機複合体/第二溶媒溶液)に、少なくともラジカル重合開始剤および合成樹脂成分を加えて塗料組成物を調製する工程である。
有機無機複合体/第二溶媒溶液に加えるラジカル重合開始剤に特に限定はなく、ラジカル反応に使用される公知の開始剤であればよい。具体的には、活性エネルギー線感応性ラジカル重合開始剤、アゾ系重合開始剤、過酸化物系重合開始剤、等が挙げられるが、なかでも、活性エネルギー線感応性ラジカル重合開始剤は、ラジカル発生速度が速く、低温でもラジカルが発生するので望ましい。
活性エネルギー線感応性ラジカル重合開始剤の具体例としては、ベンゾイン、ベンゾインモノメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アセトイン、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフ
ェニルエタン−1−オン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンなどの紫外線感応性カルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィドなどの硫黄化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドなどのアシルフォスフィンオキサイド;カンファーキノンなどの紫外線あるいは可視光線感応性のラジカル重合開始剤を挙げることができる。
アゾ系重合開始剤の具体例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、4,4’−アゾビスシアノ吉草酸、などが挙げられる。
過酸化物系重合開始剤の具体例としては、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド;ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド;過酸化ラウロイル、過酸化ベンゾイルなどのジアシルパーオキシド;1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)ブタン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサンなどのパーオキシケタール;1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノアート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノアート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノアート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエイト、t−ブチルパーオキシベンゾエイトなどのパーオキシエステル、などが挙げられる。
合成樹脂成分は、たとえば、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含むとよい。合成樹脂成分は、塗料組成物を硬化後の被膜において、フィラーである有機無機複合体のバインダー成分である。合成樹脂成分として分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を用いることで、被膜の耐久性、耐熱性等が向上するため望ましい。分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、モノアルコールのモノ(メタ)アクリレート、ポリアルコールのモノ(メタ)アクリレート、モノアルコールのポリ(メタ)アクリレート、ポリアルコールのポリ(メタ)アクリレート、ウレタンポリ(メタ)アクリレート、エポキシポリ(メタ)アクリレート、ポリエステルポリ(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらの化合物のうち1種を単独で用いてもよいし2種以上を混合して用いてもよい。また、これらの化合物は、脂肪族、脂環族および芳香族のいずれであってもよい。
これらの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、無水フタル酸と2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの付加物などのモノ(メタ)アクリレート化合物;1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(n=2〜15)ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=2〜15)ジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコール(n=2〜15)ジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、トリメチロ−ルプロパンジアクリレート、ビス(2−(メタ)アクリロキシエチル)−ヒドロキシエチル−イソシアヌレートなどのジ(メタ)アクリレート化合物;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(2−(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート化合物;ビスフェノールA型ジエポキシと(メタ)アクリル酸とを反応させたエポキシジ(メタ)アクリレート;イソホロンジイソシアネートと2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとを反応させたウレタンジ(メタ)アクリレート;ジシクロメタンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとを反応させたウレタンジ(メタ)アクリレート;トリメチロールエタンとコハク酸と(メタ)アクリル酸とを反応させたポリエステル(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパン、コハク酸、エチレングリコール、および(メタ)アクリル酸を反応させたポリエステル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの化合物のうち1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
なお、ラジカル重合開始剤の使用割合は、有機無機複合体、ラジカル重合開始剤および合成樹脂成分の合計を100質量%としたときに、0.1〜10質量%が望ましく、0.5〜5質量%、さらには1〜3質量%とするのが望ましい。合成樹脂成分の使用量が、0.1質量%未満では十分な硬度の被膜が得られず、10質量%を越えると被膜が黄変するため望ましくない。
また、合成樹脂成分の使用割合は、有機無機複合体と合成樹脂成分との合計を100質量%としたときに、5〜95質量%、10〜90質量%、さらには15〜85質量%であるのが望ましい。合成樹脂成分の使用量が、5質量%未満では十分な耐久性を有する被膜が得られず、95質量%を越えると耐摩耗性が低下する。
塗料組成物調製工程では、有機無機複合体/第二溶媒溶液に、ラジカル重合開始剤以外の添加剤を加えてもよい。添加剤の種類に特に限定はないが、顔料、可塑剤、酸化防止剤、黄変防止剤、紫外線吸収剤、ブルーイング剤、顔料、レベリング剤、沈降防止剤、消泡剤、増粘剤、帯電防止剤、防曇剤など、各種の添加剤が挙げられる。これら列挙した添加剤のうちの1種以上を使用すればよい。
塗料組成物調製工程は、有機無機複合体/第二溶媒溶液に、さらに、第二溶媒または第二溶媒と異なる第三溶媒を加える塗料粘度工程調整を含んでもよい。先の除去工程では、反応工程後の溶液に、反応工程にて合成された有機無機複合体を溶解するのに十分な量の第二溶媒を加えればよい。しかし、除去工程後に得られる有機無機複合体/第二溶媒溶液には、さらにラジカル重合開始剤や合成樹脂成分などを加える。そのため、塗料組成物中の溶媒の量が不十分となり、粘度が高くなることがある。この様な場合には、塗料組成物が基材の表面に塗布しやすい粘度となるように、ラジカル重合開始剤などとともにさらに溶媒を加えるとよい。このとき加える溶媒は、除去工程で用いた第二溶媒と同じ溶媒でもよいし、第二溶媒と相溶する溶媒であれば異なる種類の溶媒(第三溶媒)を用いてもよい。
また、塗料組成物調製工程は、第二溶媒を除去して有機無機複合体を回収した後、回収された有機無機複合体を第三溶媒に溶解するとともに少なくともラジカル重合開始剤および合成樹脂成分を加えて塗料組成物を調製する工程であってもよい。つまり、有機無機複合体/第二溶媒溶液から有機無機複合体を単離することで、有機無機複合体/第二溶媒溶液の第二溶媒を第三溶媒に置換してもよい。第二溶媒を除去する方法としては、エバポレータ等を用いて第二溶媒を蒸発させるとよい。特に、酢酸エチル、トルエンおよびクロロホルムから選ばれる第二溶媒であれば、有機無機複合体を高温に曝すことなく第二溶媒を蒸発させられる。
第三溶媒を用いる上記の手法は、塗料組成物の溶媒として第二溶媒のみでは不都合な場合、たとえば、被膜形成時に第二溶媒が被塗布面(基材)を劣化させる、第二溶媒と添加する樹脂成分との相性が悪い、といった場合に効果的である。
すなわち、第三溶媒は、塗料組成物に含まれる樹脂成分や基材の種類に応じて適宜選択すればよい。たとえば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノールといったアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノンといったケトン類;エチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルのようなエーテル類;フラン、ジベンゾフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサンのような環状エーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソペンチル、酢酸ペンチルのようなエステル類;N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドメチルアセトアミド、メチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンのようなアミド類;ピペリジン、ピリミジン、キノリンのような環式アミン類;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;などから選ばれる1以上を単独もしくは2以上を混合して利用できる。上記溶媒に、クロロホルム、トリクロルメタン、四塩化炭素、1,2−ジクロルエタン、1,2−ジクロルエチレン、1,1,2,2−テトラクロルエタン、トリクロルエチレンのようなハロゲン系;ベンゼン、トルエン、オルソキシレン、メタキシレン、パラキシレン、エチルベンゼン、クレゾールのような芳香族系;等の溶媒を混合した混合溶媒も使用可能である。
中でもポリカーボネート、メチルメタクリレート等からなる透明合成樹脂基板の表面に対して塗料組成物を塗布する場合には、上記有機溶媒のうち、低級アルコール類;ケトン類;プロピレングリコールモノメチルエーテル(1−メトキシ−2−プロパノール)、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールといったグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートのようなグリコールエステル;等のうちの一種以上、もしくはこれらのうちの一種以上を主成分として他の溶剤と混合して使用するとよい。
[塗料組成物]
本発明の塗料組成物は、M−O−M(Mは珪素原子または金属原子をそれぞれ独立に示す)で表される結合を含む珪素および金属の酸化物からなるとともにラジカル重合可能な官能基を含み少なくとも一部の珪素原子に結合している有機基をもつ有機無機複合体とラジカル重合開始剤と合成樹脂成分とを少なくとも含み、有機無機複合体の最大粒径は100nm未満である。有機無機複合体の最大粒径が100nm未満である塗料組成物からは、先に述べたように、光学的な悪影響が低減された透明な被膜が得られる。
本明細書において「最大粒径が100nm未満である」とは、直径が100nm未満の粒子を通す濾材により濾過を行った場合に、粒子が濾材を通過することを意味する。すなわち、塗料組成物からゴミ等を取り除くことを目的として孔径が0.1μmφのメンブランフィルター等を用いて塗料組成物を濾過すると、ゴミ等は濾材に濾物(残渣)として残り、有機無機複合体のほぼ全てが濾材を通過し塗料組成物自体が濾液として存在する。なお、有機無機複合体の粒径は、走査トンネル顕微鏡(STM)、原子間力顕微鏡(AFM)等の走査プローブ顕微鏡(SPM)で確認することも可能である。
本発明の塗料組成物に含まれる有機無機複合体は、既に説明した通りである。また、前述の通り、最大粒径が100nm未満の微細な有機無機複合体は、反応工程における原料溶液に含まれる原料の量を調整することで容易に得られる。具体的には、反応工程における原料溶液の総質量(ただし、反応工程において水やアルカリを添加する場合はその量も含む)を100質量%としたときに、有機無機複合体の原料の総量を15質量%以下さらには10質量%以下とすることで合成可能である。なお、従来のような濾過では回収できる有機無機複合体の大きさに限界があり、具体的には、最小粒径が100nm以上の大きな有機無機複合体を合成しないと回収することはできない。
また、本発明の塗料組成物に含まれる有機無機複合体以外の成分、すなわち、溶媒、ラジカル重合開始剤、合成樹脂成分などは、既に説明した通りである。
本発明の塗料組成物は、基材の表面に塗布してから必要に応じて加熱したり光照射したりすることで、基材の表面に被膜が形成される。基材の種類に特に限定はないが、ポリメチルメタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのプラスチック基材であれば、本発明の塗料組成物により基材の表面の機械的特性が向上する。機械的特性とは、具体的には、耐摩耗性、耐擦傷性、耐熱性、耐久性および基材との密着性などである。また、耐薬品性も付与される。
また、本発明の塗料組成物を基材に塗布する際には、ハケ塗り、スプレー法、ディッピング法、スピン法、カーテンフロー法などが用いられる。塗料組成物の第二溶媒(あるいは第三溶媒)の含有量を適宜選択することで、各々の方法に応じた液粘度の塗料組成物にするとよい。また、塗料組成物の塗布厚に特に限定はないが、塗料組成物を上記した各種の方法により、基材表面へ1〜500μm、好ましくは3〜100μmの厚さとなるように塗布するとよい。
本発明の塗料組成物は、基材に塗布した後、光照射または加熱により有機無機複合体同士、合成樹脂同士、または、有機無機複合体と合成樹脂成分とをラジカル重合させて架橋を行い、被膜を形成する。光照射には、化学反応用ケミカルランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、フュ−ジョンランプ、太陽光などの光源を用いて、波長が200〜600nmである活性エネルギー線を100〜5000mJ/cmとなるように照射するとよい。また、加熱温度は、80〜150℃が望ましい。光照射または加熱する雰囲気は、空気でもよいし、窒素、アルゴンなどの不活性ガス中でもよい。
上記した塗料組成物を基材に塗布した後、加熱または光照射により予め塗料組成物中の溶媒成分を除去してから塗料組成物を硬化させてもよい。あるいは、塗料組成物を基材に塗布した後、基材への密着性向上を目的として、遠赤外線エネルギーまたは熱風を用いて20〜120℃で1〜60分間の熱処理を行ってもよい。
以上、本発明の塗料組成物の製造方法および塗料組成物の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
以下に、本発明の塗料組成物の製造方法および本発明の塗料組成物の実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。
[実施例1]
250mlのメタノールに9.9g(0.05mol)の塩化鉄(II)四水和物を加えて撹拌した。塩化鉄(II)四水和物が溶解した後、24.8g(0.1mol)の3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを加えて30分撹拌して原料溶液を得た。
得られた原料溶液を1000mlのイオン交換水とともに、松下電器産業株式会社製業務用ミキサーMX−151Sを用いて攪拌して混合した。撹拌したまま1mol/lの水酸化ナトリウム溶液を100ml(NaOH:0.1mol)加え、その後2分間混合した。
混合された溶液をビーカーに移して1日静置すると、ビーカーの下部に茶色の沈殿物が得られた。このビーカー内に沈殿物を含む溶液が500ml残るように、上澄み液を取り除いた。
次に、ビーカーに残った溶液に500mlの酢酸エチルを加えて十分に撹拌し、分液ロートに移して静置した。その後、分液ロートの中の溶液は、上層と下層の二層に分離した。茶色の沈殿物は、その全てが酢酸エチルに溶解して上層に分離された。水溶液からなる下層を分液ロートのコックを開いて下部から流去し、分液ロートの上部より茶色の溶液(上層)を取り出した。
なお、得られた茶色の溶液に、ラジカル重合開始剤と合成樹脂成分とを添加した液体は、本発明の塗料組成物として用いることができる。
取り出された上層の溶液をロータリーエバポレータ(バス温:30℃)で濃縮し、酢酸エチルを完全に除去したところ、茶色のメタクリル鉄層状複合体が52.2g得られた。
なお、このメタクリル鉄層状複合体をラジカル重合開始剤および合成樹脂成分とともに所定の溶媒に溶解させて得られた液体は、本発明の塗料組成物として用いることができる。
[実施例2]
250mlのメタノールに12.1g(0.05mol)の塩化アルミニウム(III)六水和物を加えて撹拌した。塩化アルミニウム(III)六水和物が溶解した後、24.8g(0.1mol)の3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを加えて30分撹拌して原料溶液を得た。
得られた原料溶液を1000mlのイオン交換水とともに、上記業務用ミキサーを用いて攪拌して混合した。撹拌したまま1mol/lの水酸化ナトリウム溶液を150ml(NaOH:0.15mol)加え、その後1分間混合した。
混合された溶液をビーカーに移して1日静置すると、ビーカーの下部に白色の沈殿物が得られた。このビーカー内に沈殿物を含む溶液が100ml残るように、上澄み液を取り除いた。
次に、ビーカーに残った溶液に100mlの酢酸エチルを加えて十分に撹拌し、分液ロートに移して静置した。その後、分液ロートの中の溶液は、上層と下層の二層に分離した。白色の沈殿物は、その全てが酢酸エチルに溶解して上層に分離された。水溶液からなる下層を分液ロートのコックを開いて下部から流去した後、残った溶液(上層)に30mlの飽和食塩水を加えて十分に混合した。しばらく静置すると、ともに透明な上層と下層の二層に分離した。再度、食塩水からなる下層を分液ロートのコックを開いて下部から流去し、分液ロートの上部より上層を取り出した。
取り出された上層の溶液をロータリーエバポレータ(バス温:30℃)で濃縮し、酢酸エチルを完全に除去したところ、透明なメタクリルAl層状複合体が14.7g得られた。
なお、単離されたメタクリルAl層状複合体は、1−メトキシ−2−プロパノールに完全に溶解し、透明溶液となった。この透明溶液をガラス基板の表面に塗布して、乾燥させて、メタクリルAl層状複合体からなる透明皮膜が得られた。
次に、この透明皮膜のX線回折(XRD)測定を行った。XRD測定には、株式会社リガク製X線回折装置RINT2200を用い、CuKα線(加速電圧:40kV、電流:30mA)により2〜70°まで測定した。得られた回折図形を図2に示す。層状構造の面間隔を示す回折ピークが4.3°に観測された。この回折ピークより算出された層間距離は、20.5Å(2.05nm)であった。
さらに、単離されたメタクリルAl層状複合体を重クロロホルムに溶解し、水素(H)、炭素(13C)、珪素(29Si)、アルミニウム(27Al)の各核種について核磁気共鳴(NMR)スペクトルを測定した。測定結果を図3に示す。Hおよび13Cのスペクトルより、オルガノアルコキシシランがもつ有機構造(メタクリル基)がそのまま存在することが確認された。29Siのスペクトルより、加水分解および脱水縮合が十分に進行し完結していることが確認された。また、27Alのスペクトルより、複合体にアルミニウムが取り込まれ、その状態はアルミニウムを含有する代表的な層状ケイ酸塩であるスメクタイトとほぼ同様となっていることを確認した。
[比較例1]
実施例2と同様の手順で原料溶液を得た。得られた原料溶液を1000mlのイオン交換水とともに、上記業務用ミキサーを用いて攪拌して混合した。撹拌したまま1mol/lの水酸化ナトリウム溶液を150ml(NaOH:0.15mol)加え、その後2分間混合した。
混合された溶液をビーカーに移して1日静置すると、ビーカーの下部に白色の沈殿物が得られた。沈殿物を含む溶液全体をブフナーロートにより減圧濾過を行い、沈殿物を回収した。これを真空乾燥により24時間乾燥したところ、白色のメタクリルAl層状複合体粉末が10.3g得られた。
なお、この白色粉末を1−メトキシ−2−プロパノールに加えると、ある程度は溶解し、白濁した分散液が得られた。
[塗料組成物の調製]
1−メトキシ−2−プロパノール(PGM)に、実施例2または比較例1の手順で得られたメタクリルAl層状複合体を所定量溶解させ、メタクリルアルミニウム層状複合体/PGM溶液を得た。この溶液に、アクリルモノマーとしてペンタエリスリトールアクリレート(PETA)、N−ビニル−2−ピロリドン(NVP)およびメタクリル酸メチル(MMA)、光重合開始剤としてチバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製イルガキュア184(Irg184)およびイルガキュア819(Irg819)を所定量添加し、各成分の配合量の異なる7種類の塗料組成物を得た。このとき、いずれの塗料組成物も、固形分は25質量%であった。
各塗料組成物に含まれる成分の配合量(質量比)を、表1に示す。具体的には、たとえば、表1の試料#23(後述)に用いられる塗料組成物は、44.0gのPGMに7.2gのメタクリルAl層状複合体を溶解したメタクリルAl層状複合体/PGM溶液に、PETAを5.5g、NVPを0.7g、MMAを0.7g、Irg184を0.4g、Irg819を0.3g、添加して得た。なお、表1において、「その他の添加剤」とは紫外線吸収剤等である。
[硬質皮膜の形成]
ポリカーボネートからなる基材の表面に、カーテンフロー法により上記の各塗料組成物を8μmの厚さとなるように、それぞれ塗布した。1kW高圧水銀ランプにより、基材表面に対して116mW/cmで20秒の照射を2回行い、塗膜を硬化させ、基材の表面に透明な硬質被膜をもつ試料#21〜#24、また比較として#C0、#C2および#C3を作製した。なお、#C2の被膜には白化が見られた。それぞれの被膜の膜厚は7.7μmであった。
[評価1:耐傷付き性]
基材の表面に形成された硬質皮膜の曇価(ヘイズ値Hの変化)ΔHを測定した。ΔHは、テーバー摩耗試験を500回実施し、試験前後の光線透過率の測定値から求めた。得られた結果を表1に示す。実施例2の手順で得られたメタクリルAl層状複合体を含む塗料組成物から形成された被膜をもつ試料#21〜#24では、皮膜のΔHが10%未満であって、耐傷付き性に優れることがわかった。一方、比較例1の手順で得られたメタクリルAl層状複合体を含む塗料組成物から形成された被膜をもつ試料#C2および#C3では、優れた耐傷付き性は得られなかった。
[評価2:密着性]
基材と、基材の表面に形成された硬質皮膜と、の間の密着性をJIS K5400の碁盤目テープ剥離試験により評価した。試験には、セロハンテープ(ニチバン株式会社製CT24)を用いた。100マスの碁盤目を形成した硬質皮膜の表面に指の腹でテープを密着させた後、テープを剥離した。密着性は、100マスのうちテープの剥離とともに基材表面から剥離せずに基板表面に残ったマス目の数をXとしたとき、“X/100”として表した。結果を表1に示す。試料#22〜#24の硬質被膜は、ポリカーボネート基板に対して高い密着性を示した。試料#21は、高い耐傷付き性を有するもののポリカーボネート基材に対しては、密着性が低かった。
Figure 2009185149
[実施例3]
250mlのメタノールに122.5g(0.05mol)の硫酸銅(II)五水和物を加えて撹拌した。硫酸銅(II)五水和物がメタノールに分散させた後、24.8g(0.1mol)の3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを加えて30分撹拌して原料溶液を得た。
得られた原料溶液を1000mlのイオン交換水とともに、上記業務用ミキサーを用いて攪拌して混合したところ、青色透明の溶液が得られた。この溶液を撹拌したまま1mol/lの水酸化ナトリウム溶液を100ml(NaOH:0.1mol)加え、その後2分間混合しところ、青色の生成物が空気を巻き込み浮上した。
混合された溶液をビーカーに移して1日静置し、生成物を含む溶液を300ml汲み取った。汲み取った溶液に500mlの酢酸エチルを加えて十分に撹拌し、分液ロートに移して静置した。その後、分液ロートの中の溶液は、上層と下層の二層に分離した。青色の生成物は、その全てが酢酸エチルに溶解して上層に分離された。水溶液からなる下層を分液ロートのコックを開いて下部から流去し、分液ロートの上部より青色の溶液(上層)を取り出した。
なお、得られた青色の溶液に、ラジカル重合開始剤と合成樹脂成分とを添加した液体は、本発明の塗料組成物として用いることができる。
取り出された上層の溶液をロータリーエバポレータ(バス温:30℃)で濃縮し、酢酸エチルを完全に除去したところ、青色でゴム状のメタクリル銅層状複合体が23.6g得られた。
なお、このメタクリル銅層状複合体をラジカル重合開始剤および合成樹脂成分とともに所定の溶媒に溶解させて得られた液体は、本発明の塗料組成物として用いることができる。
単離されたメタクリル銅層状複合体は、1−メトキシ−2−プロパノールに完全に溶解し、透明溶液となった。この透明溶液をガラス基板の表面に塗布して、乾燥させて、青みを帯びた透明皮膜を得た。
次に、この透明皮膜のX線回折(XRD)測定を上記と同様の手順で行った。得られた回折図形を図4に示す。層状構造の面間隔を示す回折ピークが5.7°に観測された。この回折ピークより算出された層間距離は、15.5Å(1.55nm)であった。
2:1型の積層体からなるフィロ珪酸塩鉱物型の層状構造をもつメタクリルマグネシウム層状ポリマーの構造を示す説明図である。 メタクリルアルミニウム層状複合体のX線回折図形を示す。 メタクリルアルミニウム層状複合体の核磁気共鳴(NMR)スペクトルを示す。 メタクリル銅層状複合体のX線回折図形を示す。
符号の説明
1:マグネシウム原子
2:8面体シート
3:珪素原子
4:4面体シート

Claims (15)

  1. M−O−M(Mは珪素原子または金属原子をそれぞれ独立に示す)で表される結合を含む珪素および金属の酸化物からなるとともにラジカル重合可能な官能基を含み少なくとも一部の該珪素原子に結合している有機基をもつ有機無機複合体を含む塗料組成物の製造方法であって、
    1以上のアルコキシ基をもち前記有機基と共有結合で結合した前記珪素原子を有するオルガノアルコキシシランおよび前記金属原子を含む金属化合物を極性溶媒である第一溶媒に溶解して原料溶液を調製する原料溶液調製工程と、
    前記オルガノアルコキシシランと前記金属化合物とを加水分解するとともに脱水縮合させて前記有機無機複合体を合成する反応工程と、
    前記反応工程後の溶液に該溶液と相溶しない第二溶媒を加えて前記有機無機複合体を該第二溶媒に溶解させた後、該第二溶媒と相溶しない溶液を除去する除去工程と、
    前記除去工程で得られた前記有機無機複合体が溶解した前記第二溶媒に、少なくともラジカル重合開始剤および合成樹脂成分を加えて塗料組成物を調製する塗料組成物調製工程と、
    を含むことを特徴とする塗料組成物の製造方法。
  2. 前記反応工程は、前記原料溶液に水を添加して前記有機無機複合体を合成する工程であって、
    前記除去工程は、前記反応工程後の水溶液に少なくとも水と相溶しない前記第二溶媒を加えた後、該水溶液を除去する工程である請求項1記載の塗料組成物の製造方法。
  3. 前記合成樹脂成分は、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含む請求項1記載の塗料組成物の製造方法。
  4. 前記塗料組成物調製工程は、前記有機無機複合体が溶解した前記第二溶媒に、さらに、該第二溶媒または該第二溶媒と異なる第三溶媒を加える塗料粘度工程調整を含む請求項1記載の塗料組成物の製造方法。
  5. 前記塗料組成物調製工程は、前記第二溶媒を除去して前記有機無機複合体を回収した後、回収された該有機無機複合体を第三溶媒に溶解するとともに少なくとも前記ラジカル重合開始剤および前記合成樹脂成分を加えて塗料組成物を調製する工程である請求項1記載の塗料組成物の製造方法。
  6. 前記第一溶媒は、無機系および有機系の極性溶媒から選ばれる1種あるいは2種以上の混合溶媒である請求項1記載の塗料組成物の製造方法。
  7. 前記第一溶媒は、水、低級アルコールおよびアセトンから選ばれる1種あるいは2種以上の混合溶媒である請求項6記載の塗料組成物の製造方法。
  8. 前記第二溶媒は、酢酸エチル、トルエンおよびクロロホルムから選ばれる1種以上である請求項1記載の塗料組成物の製造方法。
  9. 前記反応工程は、前記原料溶液のpHをアルカリ性に調整して前記オルガノアルコキシシランと前記金属化合物との反応を促進させるpH調整工程を含む請求項1記載の塗料組成物の製造方法。
  10. 前記金属原子は、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、リチウム(Li)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)およびチタン(Ti)から選ばれる少なくとも一種である請求項1記載の塗料組成物の製造方法。
  11. 前記金属化合物は、前記金属原子の無機塩、有機塩またはアルコキシドである請求項1記載の塗料組成物の製造方法。
  12. M−O−M(Mは珪素原子または金属原子をそれぞれ独立に示す)で表される結合を含む珪素および金属の酸化物からなるとともにラジカル重合可能な官能基を含み少なくとも一部の珪素原子に結合している有機基をもつ有機無機複合体とラジカル重合開始剤と合成樹脂成分とを少なくとも含む塗料組成物であって、
    前記有機無機複合体の最大粒径は100nm未満であることを特徴とする塗料組成物。
  13. 請求項1〜11のいずれかに記載の製造方法により得られた請求項12記載の塗料組成物。
  14. 前記有機無機複合体は、前記珪素原子を中心原子とする4面体面構造が構成する4面体構造層と前記金属原子を中心原子とする8面体面構造が構成する8面体構造層との2:1型または1:1型の積層体からなるフィロ珪酸塩鉱物型の層状構造を有する層状有機無機複合体である請求項12記載の塗料組成物。
  15. 前記層状有機無機複合体は、一般式:{RSiO(4−n)/2〔M’OZ/2〕〔HO〕(ここでRは前記有機基、M’は前記金属原子、nは1〜3のいずれかの整数であり、xは0.5以上で2以下の整数に限定されない任意の数であり、zは金属原子M’の価数であって2または3の整数であり、wは(z/2)−1〜(z+1)/2の整数に限定されない構造水の分子数)で表される請求項14記載の塗料組成物。
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